説明

地図表示制御装置および地図表示制御用プログラム

【課題】表示地図に含める建造物の強調度合いを新規な方法で設定する地図表示制御装置を提供する。
【解決手段】車両用ナビゲーション装置は、立体地図画像表示において、施設データに基づいて、現在位置から近隣距離D1内の領域(第1の地域に相当する)内にある建造物のそれぞれについて(ステップ110、115、120、135、140)、その施設の基準位置の基準高さから見た仰角が、ユーザの設定に基づく仰角H1/D1より高ければ、その建造物を描画し(ステップ125→ステップ130)、仰角H1/D1より低ければ、その建造物を描画しない(ステップ125→ステップ135)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図表示制御装置および地図表示制御用プログラムに関し、立体地図表示を行うナビゲーション装置に用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、地図表示制御装置(例えば車両用ナビゲーション装置)において、多数の建造物を含む複雑な地図表示(例えば実際の建造物形状などを立体的に描画する立体地図表示)が行われることがあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、表示された地図にあまりにも建造物が多くなると、ユーザにとっては却ってそれら建造物が認識しづらくなる場合がある。本発明は上記点に鑑み、表示地図に含める建造物の強調度合いを新規な方法で設定する地図表示制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記目的を達成するために、人は近くの建造物には目が行き易いが、遠く小さな建造物には注意が向き難いこと、遠くても高い建造物は目に入って目印となり易いこと等に着目したものである。
【0005】
まず、請求項1に記載の発明は、複数の建造物のそれぞれについて、その位置および高さのデータに基づき、基準位置からの距離が短い方が満たされるのに有利であると共に高い方が満たされるのに有利である強調基準を、その建造物が満たすか否かを判定する判定手段と、前記判定手段によって前記強調基準が満たされると判定された建造物を、前記判定手段によって前記強調基準が満たされないと判定された建造物よりも強調した地図画像を、画像表示装置に表示させる表示制御手段と、を備えた地図表示制御装置である。
【0006】
このようになっているので、地図表示制御装置は、基準位置からより近く、またより高い建造物を、より強調して表示させるようになるので、ユーザにとって目印となり易い建造物がより強調された地図表示が行われる。
【0007】
なお、基準位置は、当該地図表示制御装置の通過位置(具体的に現在位置、直後に進入する交差点位置、予想通過位置等)、ユーザの指定する位置等、どのような位置でもよい。
【0008】
また、強調基準が満たされる建造物を満たされない建造物よりも強調するとは、強調基準が満たされる建造物「のすべて」を、満たされない建造物「のすべて」よりも強調する場合のみならず、強調基準が満たされる建造物「の一部」を、満たされない建造物「の一部」よりも強調する場合も含む概念である。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の地図表示制御装置において、前記表示制御手段は、前記判定手段によって前記強調基準が満たされると判定された建造物を描画すると共に前記判定手段によって前記強調基準が満たされないと判定された建造物を描画しない地図画像を、画像表示装置に表示させることを特徴とする。
【0010】
このようになっているので、地図表示制御装置は、ユーザにとって目印となり易い建造物を選択的に含めた地図表示を行わせることができる。
【0011】
なお、強調基準が満たされる建造物を描画すると共に満たされない建造物を描画しないとは、強調基準が満たされる建造物「のすべて」を描画すると共に満たされない建造物「を1つも」を描画しない場合のみならず、強調基準が満たされる建造物「の一部」を描画すると共に、満たされない建造物「を全部は」描画しない場合も含む概念である。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の地図表示制御装置において、前記表示制御手段は、建造物を立体的に描画する地図画像を、画像表示装置に表示させることを特徴とする。
【0013】
このように、立体的な建造物の表示において、より目印になり易い建造物を強調して表示させることで、立体的表示のリアル感の低減を抑えつつ、かつ建造物の情報が地図画像中で過多になることを抑えることができるようになる。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の地図表示制御装置において、前記判定手段が判定に用いる前記強調基準は、第1の地域内の建造物と、前記第1の地域と異なる第2の地域内の建造物とで、その基準位置からの距離と高さの組に課す基準が異なることを特徴とする。
【0015】
このように、異なる地域に異なる強調基準を適用することで、地域毎の特徴に応じた地図画像表示の制御を行うことができる。
【0016】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の地図表示制御装置において、前記判定手段は、前記基準位置に対する位置関係に基づいて、第1の地域と前記第2の地域とを区別することを特徴とする。
【0017】
このように、地域毎の特徴として、基準位置に対する位置関係を用いることもできる。
【0018】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の地図表示制御装置において、前記判定手段が判定に用いる前記強調基準は、前記基準位置における基準高さの点からの建造物の仰角が大きい方が満たされるのに有利であることを特徴とする。
【0019】
このようになっているので、基準位置における視点からの仰角がより大きい、すなわちユーザにとって見え易い建造物がより強調されて表示される。
【0020】
また、請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の地図表示制御装置において、前記強調基準を満たす、前記基準位置における前記基準高さの点からの建造物の仰角範囲は、前記基準位置から基準距離内の建造物に対する仰角範囲よりも、前記前記基準位置から前記基準距離外の建造物に対する仰角範囲の方が広いことを特徴とする。
【0021】
このようになっているので、遠方の建造物に対して極度に大きな高さの基準を課してしまう傾向を緩和することができる。
【0022】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の地図表示制御装置において、前記判定手段は、ユーザの操作によって設定された前記強調基準を判定に用いることを特徴とする。
【0023】
このようになっているので、ユーザの好みに応じた強調基準の設定が可能となる。
【0024】
また、請求項9に記載の発明は、複数の建造物のそれぞれについて、その位置および高さのデータに基づき、基準位置からの距離が短い方が満たされるのに有利であると共に高いほど満たされるのに有利である強調基準を、その建造物が満たすか否かを判定する判定手段、および、前記判定手段によって前記強調基準が満たされると判定された建造物を、前記判定手段によって前記強調基準が満たされないと判定された建造物よりも強調した地図画像を、画像表示装置に表示させる表示制御手段として、コンピュータを機能させる地図表示制御用プログラムである。
【0025】
このように、請求項1に記載の発明は、プログラムとしても捉えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態について説明する。図1に、本実施形態に係る車両用ナビゲーション装置1のハードウェア構成を示す。以下詳述する通り、この車両用ナビゲーション装置1は、立体道路地図の表示において、建造物の立体図形をその地図中に描画するか否かを、その建造物の自車位置からの仰角に基づいて決定する。
【0027】
このような車両用ナビゲーション装置1は、位置検出器11、操作スイッチ群12、画像表示装置13、音声回路14、スピーカ14a、マイク14b、VICS受信機15、RAM16、ROM17、外部記憶部18、制御回路19、を有している。
【0028】
位置検出器11は、いずれも周知の図示しない地磁気センサ、ジャイロスコープ、車速センサ、およびGPS受信機等のセンサを有しており、これらセンサの各々の性質に基づいた、車両の現在位置や向きを特定するための情報を制御回路19に出力する。
【0029】
操作スイッチ群12は、車両用ナビゲーション装置1に設けられた複数のメカニカルスイッチ、画像表示装置13の表示面に重ねて設けられたタッチパネル等の入力装置から成り、ユーザによるメカニカルスイッチの押下、タッチパネルのタッチに基づいた信号を制御回路19に出力する。
【0030】
画像表示装置13は、制御回路19から出力された映像信号に基づいた映像をユーザに表示する。表示映像としては、例えば現在地を中心とする地図等がある。
【0031】
音声回路14は、制御回路19から受けた音声データに基づく音声信号をスピーカ14aに出力し、マイク14bが検出した音声信号に基づく音声データを制御回路19に出力する。
【0032】
VICS受信機15は、道路沿いに設置された路上機から無線送信された道路の渋滞情報、交通規制情報等を受信して制御回路19に出力する無線受信機である。
【0033】
外部記憶部18は、DVD、CD、HDD等の不揮発性の記憶媒体およびそれら記憶媒体に対してデータの読み出し(および可能ならば書き込み)を行う装置から成り、制御回路19が読み出して実行するプログラム、経路案内用の地図データ等を記憶している。
【0034】
地図データは、リンクおよびノードの位置、種別、ノードとリンクとの接続関係情報等を含む道路データ、および施設データを有している。施設データは、施設毎のエントリを複数有しており、各エントリは、対象とする施設の名称情報、所在位置情報、施設種類情報、3次元形状情報、占有領域情報、高さ情報等を有している。占有領域情報は、対象とする施設の占有する地理領域の形状、位置範囲、面積等を示す情報である。高さ情報は、対象とする施設の最も高い位置の高さであってもよいし、その施設の占有領域の各位置におけるその施設の高さであってもよい。
【0035】
制御回路(コンピュータに相当する)19は、ROM17および外部記憶部18から読み出した車両用ナビゲーション装置1の動作のためのプログラムを実行し、その実行の際にはRAM16、ROM17、および外部記憶部18から情報を読み出し、RAM16および外部記憶部18に対して情報の書き込みを行い、位置検出器11、操作スイッチ群12、画像表示装置13および音声回路14と信号の授受を行う。
【0036】
制御回路19がプログラムを実行することによって行う具体的な処理としては、描画基準受付処理、現在位置特定処理、誘導経路算出処理、経路案内処理等がある。
【0037】
描画基準受付処理は、経路案内時に用いる描画基準(強調基準に相当する)の、ユーザ操作による設定を受け付けるための処理であり、ユーザの操作スイッチ群12に対する所定の操作があったことに基づいて開始される。制御回路19は、この描画基準受付処理において、図2に示すような描画基準設定画面30を画像表示装置13に表示させる。この設定画面中には、近隣距離D1、近隣高さH1、遠方距離D2、遠方高さH2という4つの値をメートル表示で入力するよう促す入力ボックス31〜34が含まれている。ユーザが、この表示を利用して操作スイッチ群12を操作することで、これら4つの値を入力すると、制御回路19は、この入力されたデータを外部記憶部18中のHDD等の不揮発性記憶媒体に記録する。後述する通り、この4つのデータH1、H2、D1、D2は、建造物を地図中に描画するために満たされなければならない、その建造物の高さと距離の組み合わせに課された基準である。
【0038】
現在位置特定処理は、位置検出器11からの信号に基づいて、周知のマップマッチング等の技術を用いて車両の現在位置や向きを(例えば0.1秒間隔で)繰り返し特定する処理である。なお、以下に示す制御回路19の処理において用いる現在位置は、この現在位置特定処理によって特定された最新の位置であるものとする。
【0039】
誘導経路算出処理は、操作スイッチ群12からユーザによる目的地の入力を受け付け、現在位置から当該目的地までの最適な誘導経路を算出する処理である。
【0040】
経路案内処理は、外部記憶部18から地図データを読み出し、現在位置を含む地図画像を、定期的(例えば10メートル走行毎に)に更新させながら画像表示装置13に表示させ、案内交差点の手前に自車両が到達した等の必要時に、右折、左折等を指示する案内音声信号を音声回路14に出力し、交差点拡大図を画像表示装置13に表示させる処理である。
【0041】
この経路案内処理において、画像表示装置13に表示させる地図は、立体地図である。立体地図は、地図データに含まれる道路や建造物の3次元形状情報等に基づいて、それら道路や建造物が立体的に見えるような技法を用いて描画される地図画像である。具体的には、制御回路19は、立体画像表示のために、ある視点を特定し、その視点から人が周囲を見たときの風景に近い画像を構成するための道路や建造物の描画データを画像表示装置13に出力する。この描画データの画像表示装置13への出力を、以下単に描画という。なお、視点としては、例えば車両の現在位置におけるドライバーの頭部の高さの位置がある。
【0042】
そして制御回路19は、1つの立体地図画面中の複数の建造物の描画のために、図3に示す建造物描画プログラム100を実行するようになっている。この制御回路19の実行において、制御回路19は、まずステップ110で、現在位置から前方の距離D1内に存在する建造物を、外部記憶部18中の施設データから抽出する。ここで、距離D1は、描画基準受付処理によって受け付けた近隣距離D1である。また、自車両の前方がどちらの方向であるかは、位置検出器11からの自車の向きの情報に基づいて特定する。そして抽出した施設の名称を、RAM16中の配列変数bにb(1)から順に格納していき、その格納した総数を変数N1に代入する。
【0043】
図4に、車両用ナビゲーション装置1を搭載する車両の位置35周辺の建造物B11〜B35の平面的配置の一例を示す。この図においては、位置35における自車両は、図中右方向に走行しているものとする。また、曲線36は、位置35を中心とする半径D1の円弧であり、曲線37は、位置35を中心とする半径D2の円弧である。ここで、D2は、描画基準受付処理によって受け付けた遠方距離D2である。この場合、建造物B11、B12、B13、B21、B22、B23、B31、B32、B33が、ステップ110において抽出されることになる。
【0044】
続いてステップ115では、施設データに基づいて、各建造物b(i)(ただしi=1、2、…、N1)について、その建造物b(i)の、基準位置からの距離を算出し、その算出値を、RAM16中の配列変数dのi番目の値d(i)に格納する。なお、基準位置とは、本実施形態においては自車両の現在位置である。また、施設データに基づいて、各建造物b(i)(ただしi=1、2、…、N1)について、その建造物b(i)の高さを特定し、その特定した値をRAM16中の配列変数hのi番目の値h(i)に格納する。
【0045】
なお、基準位置からの距離を求めるために用いる建造物b(i)の位置としては、施設データ中の所在位置情報の示す位置を採用してもよいし、占有領域情報に基づいて特定した、その施設の占有する領域のうち、当該基準位置から最も近い位置を採用してもよい。また、建造物b(i)の高さとしては、施設データ中の、対象とする施設の最も高い位置の高さでもよいし、上述のように特定した基準位置からの距離を求めるために用いる建造物b(i)の位置における、その施設の高さであってもよい。
【0046】
続いてステップ120では、RAM16中の変数Mに1を代入し、その後ステップ125〜140のループ処理に入る。このループ処理において、ステップ125では、値h(M)/d(M)が、値H1/D1より大きいか否かを判定する。なお、この値H1は、描画基準受付処理によって受け付けた近接高さH1である。この値h(M)/d(M)は、基準位置の地面(ゼロの基準高さに相当する)から施設b(M)を見た仰角θのタンジェント(すなわちtanθ)に相当する。そして、この仰角と比較する対象である値H1/D1は、基準位置から距離D1の位置における高さH1の点を、基準位置の地面から見た仰角θ1のタンジェント(すなわちtanθ1)に相当する。したがってステップ125では、施設b(M)の仰角θが仰角θ1(以降、第1の基準仰角という)より大きいか否かを判定していることになる。
【0047】
ここで、図5に、施設データに基づく、図4に示した建造物B11〜B35の、自車位置35からの距離(横軸)に対する高さ(縦軸)の関係を、図5に示す。図中、線分41が、第1の基本仰角θ1に相当する距離−高さ関係を示す線である。したがって、ステップ110で抽出された建造物のうち、建造物B11、B12、B21、B22、B13の仰角は、第1の基準仰角θ1よりも高く、建造物B23、B31、B32、B33の仰角は、第1の基準仰角θ1よりも低い。
【0048】
ステップ125で仰角θが第1の基本仰角θ1より高いと判定した場合、続いてステップ130を実行し、低いと判定した場合、続いてステップ135を実行する。ステップ130では、仰角θが第1の基本仰角θ1より高いと判定した対象の施設b(M)を、立体地図に含めるよう描画する。ステップ130に続いてはステップ135を実行する。
【0049】
ステップ135では、変数Mの値を1だけ増加させ、続いてステップ140では、変数Mの値が値N1以下であるか否かを判定し、N1以下であれば再びステップ125を実行し、N1を超えていれば続いてステップ145を実行する。
【0050】
このようなステップ125〜140のループ処理のM=1からM=N1までの繰り返しにより、画像表示装置13が表示する立体地図に含まれる、基準位置から距離D1内の建造物は、仰角θが第1の基本仰角θ1より高いもののみとなり、基準位置から距離D1内の建造物で、仰角θが第1の基本仰角θ1より低いものは、立体地図に含まれなくなる。
【0051】
また、ステップ145では、現在位置から前方の距離D1以上距離D2以内に存在する建造物を、外部記憶部18中の施設データから抽出する。ここで、距離D2は、描画基準受付処理によって受け付けた遠方距離D2である。そして抽出した施設の名称を、RAM16中の配列変数bにb(1)から順に格納していき、その格納した総数を変数N2に代入する。図4に示した例の場合、建造物B14、B24、B34、B15、B25、B35が、ステップ145において抽出されることになる。
【0052】
続いてステップ150では、ステップ115と同様に、各建造物b(i)(ただしi=1、2、…、N2)について、その建造物b(i)の、基準位置からの距離を、RAM16中の配列変数dのi番目の値d(i)に格納し、また、その建造物b(i)の高さの値を配列変数hのi番目の値h(i)に格納する。
【0053】
続いてステップ155では、RAM16中の変数Mに1を代入し、その後ステップ160〜175のループ処理に入る。このループ処理において、ステップ160では、値h(M)/d(M)が、値H2/D2より大きいか否かを判定する。なお、この値H2は、描画基準受付処理によって受け付けた遠方高さH2である。この値h(M)/d(M)は、基準位置の地面から施設b(M)を見た仰角θのタンジェント(すなわちtanθ)に相当する。そして、この仰角と比較する対象である値H2/D2は、基準位置から距離D2の位置における高さH2の点を、基準位置の地面から見た仰角θ2のタンジェント(すなわちtanθ2)に相当する。したがってステップ160では、施設b(M)の仰角θが仰角θ2(以降、第2の基準仰角という)より大きいか否かを判定していることになる。なお、この第2の基準仰角θ2は、通常は第2の基準仰角θ1よりも小さい値として設定される。
【0054】
図5においては、線分42が、第2の基本仰角θ2に相当する距離−高さ関係を示す線である。したがって、ステップ145で抽出された建造物のうち、建造物B15、B35の仰角は、第2の基準仰角θ2よりも高く、建造物B14、B24、B34、B25の仰角は、第2の基準仰角θ2よりも低い。
【0055】
ステップ160で仰角θが第2の基本仰角θ2より高いと判定した場合、続いてステップ165を実行し、低いと判定した場合、続いてステップ170を実行する。ステップ165では、仰角θが第2の基本仰角θ2より高いと判定した対象の施設b(M)を、立体地図に含めるよう描画する。ステップ165に続いてはステップ170を実行する。
【0056】
ステップ170では、変数Mの値を1だけ増加させ、続いてステップ175では、変数Mの値が値N2以下であるか否かを判定し、N2以下であれば再びステップ160を実行し、N2を超えていれば建造物描画プログラム100の1回分の実行を終了する。
【0057】
このようなステップ160〜175のループ処理のM=1からM=N2までの繰り返しにより、画像表示装置13が表示する立体地図に含まれる、基準位置から距離D1以上D2以内の建造物は、仰角θが第2の基本仰角θ2より高いもののみとなり、基準位置から距離第1以上D2内の建造物で、仰角θが第2の基本仰角θ2より低いものは、立体地図に含まれなくなる。
【0058】
図6および図7に、図4に示した建造物B31〜B35の立体地図の例を示す。図6の立体地図は、建造物B11〜B35がすべて描画された立体地図である。また、図7の立体地図は、本実施形態の車両用ナビゲーション装置1が表示する立体地図である。この2つの図の違いからわかるように、図6の地図中に含まれている建造物B14、B23、B24、B31、B32は、図7の地図中には含まれていない。これら建造物B14、B23、B24、B31、B32は、建造物描画プログラム100のステップ125および160において、その仰角θが第1または第2の基本仰角よりも低いと判定された建造物である。したがって、図7においては、ドライバーにとって目立つ建造物が選択的に表示されていることになる。
【0059】
以上のような建造物描画プログラム100を制御回路19が実行することで、車両用ナビゲーション装置1は、立体地図画像表示において、外部記憶部18中の施設データに基づいて、現在位置から近隣距離D1内の領域(第1の地域に相当する)にある建造物のそれぞれについて(ステップ110、115、120、135、140参照)、その施設の基準位置の地面から見た仰角が、ユーザの設定に基づく第1の基準仰角より高ければ、その建造物を描画し(ステップ125→ステップ130参照)、第1の基準仰角より低ければ、その建造物を描画しない(ステップ125→ステップ135参照)。また、制御回路19は、外部記憶部18中の施設データに基づいて、現在位置から近隣距離D1内の領域(第1の地域に相当する)内にある建造物のそれぞれについて(ステップ145、150、155、170、175参照)、その施設の基準位置の基準高さから見た仰角が、ユーザの設定に基づく第2の基準仰角(第1の基準仰角より小さい)より高ければ、その建造物を描画し(ステップ160→ステップ165参照)、第2の基準仰角より低ければ、その建造物を描画しない(ステップ160→ステップ170参照)。
【0060】
このようになっているので、車両用ナビゲーション装置1は、基準位置からより近く、またより高い建造物を、より優先的に画像表示装置13に表示させるようになるので、ユーザにとって目印となり易い、仰角の大きい建造物が選択的に描画された地図表示が行われる。したがって、地図の立体的表示のリアル感の低減を抑えつつ、かつ建造物の情報が地図画像中で過多になることを抑えることができるようになる。
【0061】
また車両用ナビゲーション装置1は、基準位置からの距離によって地域分けを行い、基準位置から近接距離D1(基準距離に相当する)内の建造物に対する第1の基準仰角よりも、前記基準位置から前記基準距離外の建造物に対する第2の基準仰角の方が小さいようになっているので、遠方の建造物に対して極度に大きな高さの基準を課してしまう傾向を緩和することができる。
【0062】
また、制御回路19は、描画基準受付処理を実行することで、ユーザの好みに応じた描画基準の設定が可能となる。
【0063】
なお、上記の実施形態において、車両用ナビゲーション装置1が地図表示制御装置に相当し、建造物描画プログラム100が地図表示制御用プログラムに相当する。また、制御回路19が建造物描画プログラム100のステップ125および160を実行することで、判定手段として機能する。また制御回路19が建造物描画プログラム100のステップ130および165を実行すること、ステップ125に続いてステップ135を実行すること、およびステップ160に続いてステップ170を実行することにより、表示制御手段として機能する。
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の各発明特定事項の機能を実現し得る種々の形態を包含するものである。
【0064】
例えば、建造物描画プログラム100の実行において用いられる近隣距離D1、近隣高さH1、遠方距離D2、および遠方高さH2は、固定値でもよいし、位置検出器11から取得した車速やVICS受信機15から取得した渋滞度等の物理量に応じて変化するようになっていてもよいし、一定の範囲内でランダムに変化するようになっていてもよい。
【0065】
また、上記実施形態においては、強調基準の一例として、第1の(または第2の)基準仰角よりも仰角が大きいという基準を採用しているが、このようなものに限らず、強調基準は、基準位置からの距離が短い施設の方が満たされるのに有利であると共に高い施設方が満たされるのに有利であるようになっていれば足りる。
【0066】
また、上記実施形態においては、施設b(M)の仰角としては、基準位置の地面から施設b(M)を見た仰角h(M)/d(M)を用いているが、必ずしもこのようになっておらずともよく、例えば施設b(M)の仰角としては、基準位置の(地面よりも高い)基準高さの位置から施設b(M)を見た仰角を採用し、また、第1の基準仰角(または第2の基準仰角)は、基準位置から距離D1(またはD2)の位置における高さH1(またはH2)の点を、基準位置の(地面よりも高い)基準高さの位置から見た仰角を採用するようになっていてもよい。このようにするには、ステップ125において、制御回路19が、(h(M)−V)/d(M)が(H1−V)/D1より大きいか否か(または(h(M)−V)/d(M)が(H2−V)/D2より大きいか否か)を判定するようになっていればよい。なおここでは、値Vが基準高さである。
【0067】
この基準高さは、あらかじめ記憶された一定値(例えば地上1メートル、地上10メートル)であってもよいし、各種条件(例えば乗員の身長データ、ユーザの設定、等)に基づいて変動する値であってもよいし、一定の範囲内でランダムに決まる値であってもよい。また、この基準高さは、表示する地図の、立体表示における視点の高さと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0068】
また、各建造物までの距離の算出の基準となる基準位置は、現在の車両の位置に限らず、これから進入しようとする交差点、誘導経路上の特定の位置等、未来に通過することが予測される位置であってもよいし、ユーザの選択操作に基づいて決定された位置でもよい。
【0069】
また、建物描画プログラム100の実行は、必ずしも経路案内処理内において行う必要はない。例えば、制御回路19は、誘導経路算出処理の直後に、その経路に沿った所定距離の地点毎に1回ずつ、建物描画プログラム100を実行し、各地点について、その地点に自車両がさしかかったときに描画する建造物と描画しない建造物をあらかじめ決定しておくようになっていてもよい。
【0070】
また、制御回路19は、上記実施形態のような強調基準を満たさない建造物であっても、有名な建造物であることが施設データに記載されている場合、道路に面していて基準位置との間に障害物がない場合等、別の条件によって描画すべきであると判定した場合は、その建造物を描画するようになっていてもよい。また逆に、制御回路19は、上記実施形態のような描画基準を満たす建造物であっても、表示すべきでない旨が施設データに記載されている場合等、別の条件によって描画すべきでないと判定した場合は、その建造物を描画しないようになっていてもよい。
【0071】
また、地域分けは、基準位置からの距離に基づくものに限らない。例えば、基準位置からの方角で地域分けを行い、その地域ごとに強調基準を変化させてもよい。例えば、基準位置から太陽の方向上にある領域については、他の方向上にある領域よりも、近隣高さH1および遠方高さH2を高くして、逆光で見えにくい領域の強調基準をより厳しくするようになっていてもよい。また、地域ごとの強調基準(基準仰角等)が、あらかじめ地図データに記録されていてもよい。
【0072】
また、制御回路19は、建物描画プログラム100の実行を短時間で連続的に更新しなくてもよい。例えば制御回路19は、交差点を通過する毎に建物描画プログラム100を実行するようになっていてもよいし、ユーザの実行要求操作があったときのみ建物描画プログラム100を実行するようになっていてもよい。
【0073】
また、車両用ナビゲーション装置1は必ずしも施設データを有する必要はなく、施設データはすべて必要時にネットワーク経由で取得してもよい。
【0074】
また、上記実施形態においては、車両用ナビゲーション装置1は、立体地図表示において、強調基準を満たす施設を画像表示装置13に表示させ、満たさない施設を画像表示装置13に表示させないようになっているが、必ずしもこのようになっておらずともよい。例えば、車両用ナビゲーション装置1は、立体地図表示において、強調基準を満たす施設をはっきりした色で画像表示装置13に表示させ、満たさない施設を透過的な淡い色で画像表示装置13に表示させるようになっていてもよい、すなわち、車両用ナビゲーション装置1は、立体地図表示において、強調基準を満たす施設を、満たさない施設よりも強調して画像表示装置13に表示させれば足りる。
【0075】
また、上記実施形態では、車両用ナビゲーション装置1は、立体地図表示でなく平面地図表示において、強調基準を満たす施設を、満たさない施設よりも強調して画像表示装置13に表示させるようになっていてもよい。
【0076】
また、上記実施形態においては、地図表示制御装置の具体例として車両用ナビゲーション装置1を示しているが、地図表示制御装置は車両用ナビゲーション装置である必要はなく、人が携帯するナビゲーション装置であってもよいし、仮想的にナビゲーション機能を実行するプログラムを実行する据え置き型コンピュータであってもよい。また、地図表示制御装置は、ユーザ端末からネットを介して位置の指定を受け、その指定の位置における立体地図画像を、そのユーザ端末の画像表示装置に表示させるために送信するサーバであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用ナビゲーション装置1のハードウェア構成図である。
【図2】描画基準設定画面30を示す図である。
【図3】制御回路19が実行する建造物描画プログラム100のフローチャートである。
【図4】自車位置35周辺の建造物B11〜B35の平面的配置を示す図である。
【図5】建造物B11〜B35の自車位置35からの距離および高さを示す棒グラフである。
【図6】建造物B11〜B35のすべてが描画された立体地図である。
【図7】建造物B11〜B35の一部が描画された立体地図である。
【符号の説明】
【0078】
1…車両用ナビゲーション装置、11…位置検出器、12…操作スイッチ群、
13…画像表示装置、14…音声回路、14a…スピーカ、14b…マイク、
15…VICS受信機、16…RAM、17…ROM、18…外部記憶部、
19…制御回路、30…描画基準設定画面、31〜34…入力ボックス、
35…自車位置、100…建物描画プログラム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の建造物のそれぞれについて、その位置および高さのデータに基づき、基準位置からの距離が短い方が満たされるのに有利であると共に高い方が満たされるのに有利である強調基準を、その建造物が満たすか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記強調基準が満たされると判定された建造物を、前記判定手段によって前記強調基準が満たされないと判定された建造物よりも強調した地図画像を、画像表示装置に表示させる表示制御手段と、を備えた地図表示制御装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は、前記判定手段によって前記強調基準が満たされると判定された建造物を描画すると共に前記判定手段によって前記強調基準が満たされないと判定された建造物を描画しない地図画像を、画像表示装置に表示させることを特徴とする請求項1に記載の地図表示制御装置。
【請求項3】
前記表示制御手段は、建造物を立体的に描画する地図画像を、画像表示装置に表示させることを特徴とする請求項1または2に記載の地図表示制御装置。
【請求項4】
前記判定手段が判定に用いる前記強調基準は、第1の地域内の建造物と、前記第1の地域と異なる第2の地域内の建造物とで、その基準位置からの距離と高さの組に課す基準が異なることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の地図表示制御装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記基準位置に対する位置関係に基づいて、第1の地域と前記第2の地域とを区別することを特徴とする請求項4に記載の地図表示制御装置。
【請求項6】
前記判定手段が判定に用いる前記強調基準は、前記基準位置における基準高さの点からの建造物の仰角が大きい方が満たされるのに有利であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の地図表示制御装置。
【請求項7】
前記強調基準を満たす、前記基準位置における前記基準高さの点からの建造物の仰角範囲は、前記基準位置から基準距離内の建造物に対する仰角範囲よりも、前記前記基準位置から前記基準距離外の建造物に対する仰角範囲の方が広いことを特徴とする請求項6に記載の地図表示制御装置。
【請求項8】
前記判定手段は、ユーザの操作によって設定された前記強調基準を判定に用いることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の地図表示制御装置。
【請求項9】
複数の建造物のそれぞれについて、その位置および高さのデータに基づき、基準位置からの距離が短い方が満たされるのに有利であると共に高いほど満たされるのに有利である強調基準を、その建造物が満たすか否かを判定する判定手段、および、
前記判定手段によって前記強調基準が満たされると判定された建造物を、前記判定手段によって前記強調基準が満たされないと判定された建造物よりも強調した地図画像を、画像表示装置に表示させる表示制御手段として、コンピュータを機能させる地図表示制御用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−317764(P2006−317764A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−141063(P2005−141063)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】