説明

地理情報システム及び地理情報管理方法

【課題】過去に存在した建物及びテナントを検索することができる地理情報システムを提供する。
【解決手段】地図データ及び地図上の物の属性データを用いて地理情報を管理する地理情報システムであって、検索対象の地理的範囲及び検索キーの入力を受け付ける情報取込部と、前記入力された検索対象の地理的範囲と、前記形状データが表す範囲の少なくとも一部が重なる形状データを前記地図データから抽出する地図検索部と、前記入力された検索キーと一致し、かつ前記抽出された形状データが表す範囲と前記位置情報が重なる属性データを、前記形状データ及び前記属性データに付された時間情報に従って、前記形状データと対応付ける対応付け部と、前記対応付けられた形状データ及び属性データを出力する出力部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地理情報システムに関し、特に、目標とするランドマークが消滅していても、過去のデータを参照することによって、ランドマークを探すことができる地理情報管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地理情報システムの地図データの管理は、最新のデータに更新することが重視されており、データが更新されると古い地図データは廃棄されていた。例えば、特許文献1は、地図上の建物及び属性データを時系列的に管理する方法を開示する。これは、指定された特定の時間における建物の形状及び属性を検索することはできる。しかし、目標とする建物の存在した時間が不明である場合に、異なる時間に跨って検索することは困難であった。
【0003】
また、特許文献2は、図形内に付加された代表点に属性データを対応付ける方法を開示する。そして、属性が変更された場合、その点に新しい属性データを対応付ける。前述した特許文献1と同様に、この方式も異なる時間に跨って検索することは困難である。
【特許文献1】特開2003−252035号公報
【特許文献2】特開2003−157287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した背景技術では、地理情報システムを用いてランドマーク(建物、建設構造物等)を照合する場合に、そのランドマークが地図上から消滅していることがある。通常、地理情報システムによって利用される地図データは、常に最新のデータに更新されていく。このため、過去の建物の形状や属性は消去されることが多い。よって、人が記憶している過去に存在したランドマークを検索することは困難である。実際、特に都市部では、都市計画の変更等によって、建物は変化する。
【0005】
さらに、時間を特定することなく、建物に対する属性を検索することは困難である。例えば、建物に入っているテナント等は頻繁に変化する。特定された期間に存在したテナントを検索するニーズはあるが、従来の地理情報システムは最新の属性データのみを管理しているので、過去の属性データを検索できない。
【0006】
地理情報システムが過去のデータを保持していれば、保持された過去のデータを用いて、特定の時間(例えば、最新時間から1年間等)に存在する建物及び建物の属性を検索することが可能である。しかし、いつ存在したか分からない建物を検索することは困難である。
【0007】
本発明では、過去に存在した建物及びテナントを検索することができる地理情報システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、時間情報が付された形状データを含む地図データ、及び、前記地図データに含まれる対象物の属性であって位置情報及び時間情報が付された属性データを用いる地理情報システムであって、プロセッサ、前記プロセッサに接続されるメモリ、前記プロセッサに接続される通信インターフェース、及び前記プロセッサに接続されるユーザインターフェースを備え、検索対象の地理的範囲及び検索キーの入力を受け付ける情報取込部と、前記入力された検索対象の地理的範囲と、前記形状データが表す範囲の少なくとも一部が重なる形状データを前記地図データから抽出する地図検索部と、前記入力された検索キーと一致し、かつ前記抽出された形状データが表す範囲と前記位置情報が重なる属性データを、前記形状データ及び前記属性データに付された時間情報に従って、前記形状データと対応付ける対応付け部と、前記対応付けられた形状データ及び属性データを出力する出力部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施の形態によると、過去のデータを使用して、過去に存在した建物を検索可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
まず、本発明の実施の形態の概要について説明する。本発明の実施の形態では、過去に存在した建物の図形形状データを廃棄することなく、そのまま時間情報(存在期間、すなわち、開始時間及び終了時間)を付加して保存する。形状及び/又は属性による検索がされる場合に、現在の図形形状及び/又は属性に加え、時間情報を参照して、過去の図形形状及び/又は属性を検索し、目標とする建物の存在を確認する。
【0011】
特定の場所(地理的範囲)を指定して検索をする場合、最新の地図及び属性を検索しても、最新のデータの中に目標とする建物が含まれているとは限らない。更に、同じ建物であっても、テナント及び住居者がそこに入居しているとは限らない。しかし、本実施の形態によると、形状や属性に時間情報を持たせ、時間を跨って検索することによって、所望の建物及び属性を検索する。
【0012】
このため、まず、地理的範囲を指定して検索し、得られた結果について時間リストを作成する。作成される時間リストは、図形形状データ及び属性データへのポインタ(例えばデータが記憶されているアドレス)及び時間情報を含む。そして、時間リストの中の時間情報を順に検索することによって、目標とする所望の建物及び属性が存在するかを検索する。そして、これらのデータが存在する場合には、検索者に、検索結果である、異なる時間に存在した建物及び属性の情報を提示することができる。
【0013】
より具体的には、本発明の実施の形態の地理情報システムは、時系列によって管理された地図データ及び属性データを格納した地図サーバ計算機、及び位置座標及び検索したい建物の名称を送るクライアント計算機を備える。サーバ計算機及びクライント計算機は、インターネットなどの有線及び/又は無線のネットワークによる通信機能が備わっている。クライアント計算機は、入力された位置座標(地理的検索範囲)及び検索キー(名称)をサーバ計算機に送り、建物形状及び名称を履歴地図データベース及び履歴属性データベースから検索し、検索結果をサーバ計算機から取得し、取得した検索結果を表示する。
【0014】
次に、本発明の実施の形態の地理情報システムの構成について説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態の地理情報システムの構成を示すブロック図である。
【0016】
本発明の実施の形態の地理情報システムは、サーバ計算機群406及びクライアント計算機群407を備える。
【0017】
サーバ計算機群406は、履歴地図サーバ401、履歴属性サーバ402及び時空間検索サーバ403を含む。履歴地図サーバ401は、履歴を含む地図データベース101(図2参照)及び領域データベース102を格納する。履歴属性サーバ402は、履歴を含む属性データベース103(図2参照)を格納する。時空間検索サーバ403は、履歴地図サーバ401及び履歴属性サーバ402にアクセスし、時間を現在から過去に遡りながら、地図データ及び属性データを検索し、所定の目標データを取得する。
【0018】
各サーバは、プロセッサ、メモリ、通信インターフェース及びユーザインターフェースを備える計算機であり、プロセッサがメモリに記憶されたプログラムを実行することによって、以後に説明する処理が行われる。例えば、検索機能はソフトウエアによって実装される。これらのサーバの機能は、複数の計算機(ハードウェア)に実装されても、1台の計算機に実装されてもよい。
【0019】
地理情報システムの利用者は、携帯電話機等の携帯端末404、携帯用の小型計算機であるモバイルPC(Personal Computer)405を用いて、地図情報や名称を問い合わせる。クライアント計算機404及び405は、各々、プロセッサ、メモリ、通信インターフェース、ユーザインターフェース及び位置取得手段(GPS等)を備える計算機であり、プロセッサがメモリに記憶されたプログラムを実行することによって、以後に説明する処理が行われる。
【0020】
GPSによって取得された位置情報、及び検索したい名称情報がクライアント計算機に入力されると、入力された情報は有線及び/又は無線の通信回線を経由して時空間検索サーバ403に送られる。
【0021】
時空間検索サーバ403は、領域データベース102、地図データベース101及び属性データベース103を参照して、図形形状及び建物の名称を検索する。時空間検索サーバ403によって検索された図形形状の情報及び建物の名称の情報は、通信回線を経由してクライアント計算機に送られる。クライアント計算機に送られる。
【0022】
クライアント計算機に送られた情報は、クライアント計算機の画面に表示される。
【0023】
なお、図1には、一例として、サーバ・クライアント構成の地理情報システムの構成を示したが、履歴地図サーバ401、履歴属性サーバ402及び時空間検索サーバ403の各機能、及び携帯端末404の機能の両方を1台の端末装置に実装することによって、本携帯型の地理情報システムを実現することができる。
【0024】
さらに、履歴地図サーバ401及び履歴属性サーバ402の機能を除いた、携帯端末404に時空間検索サーバ403の機能を実装することによっても、本実施の形態の地理情報システムを実現することができる。この場合、携帯端末404は、通信回線を介して、履歴地図サーバ401及び履歴属性サーバ402に格納されるデータベースにアクセスし、地図データ、領域データ及び属性データを取得することができる。
【0025】
図2は、本発明の実施の形態の地理情報システムの機能ブロック図である。
【0026】
本実施の形態の地理情報システムは、地図データベース101、領域データベース102、属性データベース103、地図検索部104、地図属性データ出力部105、時空間形状データ検索部106、位置情報・名称情報読取部107、地図座標変換部108、時間リスト作成部109、時空間目標物照合部110、時空間属性データ検索部111及び変化物データ指示部112を備える。
【0027】
なお、履歴地図管理サーバ401は地図データベース101及び領域データベース102を備え、履歴属性サーバ402は属性データベース103を備え、時空間検索サーバ403は地図検索部104から変化物データ指示部112の各構成を備える。
【0028】
地図データベース(DB)101は、過去のデータを含む履歴地図データを格納するデータベースである。地図データは、建物を示す図形形状データ及び建物が存在した時間の情報を含み、図4で説明する形式(フォーマット)301で、地図データベース101に格納される。
【0029】
領域データベース(DB)102は、1区画の地図の領域と、地図データ、属性データとを関連付ける領域管理データを格納するデータベースである。具体的には、各地図データの4隅の座標を領域データベース102に格納することによって、ある座標がどの地図に含まれるかの情報を提供し、各地図の隣接関係を提供する。すなわち、領域データベース102を利用することによって、ある点(座標)が、どの区画の地図に含まれるか、どの区画の属性データに含まれるか、を知ることができる。
【0030】
属性データベース(DB)103は、地図データに含まれる建物(図形形状)の属性を格納する。属性データは、建物の名称(家屋、テナント名等)及び位置情報(例えば、代表点座標)を含み、位置情報によって図形形状データと結びつけられる。属性データは、図4で説明する形式(フォーマット)302で、属性データベース103に格納される。
【0031】
地図検索部104は、領域データベース102に格納された領域管理データを参照し、参照すべき区画の地図データを地図データベース101から読み出し、読み出した地図データを計算機のメモリ上に展開する。時空間形状データ検索部106は、所定の領域において、現存又は過去に存在した建物の図形形状データを検索する。すなわち、時間を遡って、過去に存在した建物の図形形状データを検索する。
【0032】
属性データ検索部113は、領域データベース102に格納された領域管理データを参照し、参照すべき属性データを属性データベース103から読み出し、読み出した属性データを計算機のメモリ上に展開する。時空間属性データ検索部111は、所定の領域において、現存又は過去に存在した建物の属性データを検索する。すなわち、時間を遡って、過去に存在した建物の属性データを検索する。
【0033】
位置情報・名称情報読取部107は、GPS(Global Positioning System:汎用測位システム)等の位置計測装置から得られる位置情報(位置座標)を取得し、属性の検索キーとなる名称を取得する。これらの情報はクライアント計算機から無線通信回線を経由して送られる。GPSによって得られた位置情報は、世界座標系に準拠している。地図座標変換部108は、GPSによって使用される世界座標系に準拠する座標を、必要に応じて、地図データベース101に格納された地図の座標系に変換する。
【0034】
時間リスト作成部109は、時空間形状データ検索部106によって検索された図形形状データ及び時空間属性データ検索部111によって検索された属性データを含み、これらの検索されたデータが時間情報に従って並べられた時間リストを作成する。
【0035】
時空間目標物照合部110は、地理的な検索範囲において時空間形状データ検索部106によって検索された図形形状データ、及び時空間属性データ検索部111によって検索された属性データから、指定された名称に関するデータを選択する。
【0036】
変化物データ指示部112は、時間リスト作成部109によって作成された時間リストから、検索条件に合致した図形形状データ及び属性データを抽出し、抽出された属性データを、XML(Extensible Markup Language)等の機器間でデータ交換可能な形式に変換する。地図・属性データ出力部105は、検索された図形形状データや属性データを、クライアント計算機に送信する。
【0037】
本発明の実施の形態の地理情報システムは、現在地と地図と照合することによって、自分の位置を地図を用いて把握することが可能になる。特に、ナビゲーションシステムにおいては、地図を利用することによって位置が特定され、さらに、自分自身の現在位置から特定の目標物を特定する。
【0038】
しかし、目標物となる建物の名称情報(例えば、名称)を送っても、その名称を有する建物が現実には存在しないことがある。これは建物が建て替わったり、テナントが入れ替わったりするためである。その多くは、都市部における再開発、テナントの変更に起因する。しかし、検索対象が実在しない場合でも、ナビゲーションシステムの利用者は、現在存在しない建物も検索できることを望んでいる。このような場合、検索キーとなる建物の名称は、その建物が存在したという人間の記憶に基づくものである。本実施の形態では、このような人の記憶に基づく過去の属性を検索キーとして建物を検索する。
【0039】
例えば、ある時点に存在した複数の建物が、一つの建物にまとめて改築されることがある。また、都市計画により区画が変化することもある。建物の老朽化により建物の構造が変化することもある。以下に、このような状況を説明する。
【0040】
図3Aから図3Cは、履歴地図を用いた位置の時空間照合の説明図であり、図3Aは、最新(2007年)の地図を示し、図3Bは、1990年の地図を示し、図3Cは、最古(1985年)の地図を示す。
【0041】
図示するように、時間が変わると地図に表された建物の形状及び名称は変化する。2007年の地図(図3A)では、1999年の地図(図3B)に存在していた「HH商店」207は、建物の形状が変わって(建物が建て替えられており)、名称も「CC商店」203に変わっている。さらに、1985年の地図(図3C)によると、この場所には「GG八百屋」210がある。
【0042】
1985年の地図(図3C)の「EE酒屋」208は、1990年の地図(図3B)では「FF銀行」206に建て変わっている。また、1990年の地図(図3B)の「FF銀行」206は、2007年の地図(図3A)では「AA銀行」201になっており、銀行の名称が変わっている。
【0043】
1985年の地図の「DD商店」209は、2006年には「BB産業」202に建て替わっている。
【0044】
このような建物の形状及び名称の変化は必然的に生じる。しかし、時間管理機能を備えない地理情報システムでは、過去の地図データを管理することができない。そのため、過去の建物の形状や名称を照合することはできなかった。また、建物、建物名及びテナント名等は、地域ごとにまとめて変化するわけではない。このため、建物の形状及び/又は名称の変化を、それぞれの時間ごとに管理すると、全体地図のデータ量が非常に大きくなる。また、特定の建物を検索する場合、データの読み出しに時間がかかることから、検索に時間がかかる。
【0045】
このため、過去の建物の形状及び/又は名称による検索を可能とするため、家屋の変化のみを地理情報システムによって経時的に管理する必要がなる。以下に、データの管理方法について説明する。
【0046】
最初に、時間履歴管理方法について示す。図4に示すように、図形形状データは座標列によって記述される図形データテーブル301に格納される。また、その属性データは属性データテーブル302に格納される。図形形状データと属性データとは、通常別のテーブルに格納されている。図4では、「BB産業」202と、「DD商店」209の例について示す。両者は同じ時間には存在しない。「DD商店」の図形形状209は、図形データ303に対応し、「BB産業」の図形形状202は図形データ304に対応する。また、「DD商店」は、図形形状307の属性データ305であり、「BB産業」は、図形形状202の属性データ306である。
【0047】
図形データテーブル301に格納される図形形状データは、図形を構成する座標の数を示す座標数、建物、道路などの種別を示す識別子(例えば、所定の番号)、対象が存在した時間範囲を示す開始時間及び終了時間、及び図形を構成する複数の点の実座標(2次元の場合は(X,Y)、3次元の場合は(X,Y,Z))による図形形状データを含む。
【0048】
属性データテーブル302に格納される属性データは、属性データセットの大きさを示すデータ数、図形を代表する代表点の座標、属性が有効な時間範囲を示す開始時間及び終了時間、及び属性データの内容を含む。代表点は、図形形状データ内又は図形形状データ上に存在するように設定される。これによって、属性データと図形形状データとを関係付けることができる。なお、図4では、図形形状202の代表点は点309であり、図形形状209の代表点は点310である。
【0049】
図形形状データ及び属性データは、開始時間及び終了時間データを含むので、データが有効な期間を特定することができる。さらに、同一の地理的範囲に含まれていても、同じデータテーブル内に格納することが可能である。これによって、図形形状307、308は、同じ領域に重なっている建物であるにもかかわらず、適切にデータを管理することができる。
【0050】
このようなデータ構造を用いることによって、空間的な照合に加え、時間的な照合(時空間照合)によって、データを照合することができる。
【0051】
図3Aを参照しながら例を示す。特定の場所(例えば、現在地)204の周辺に「EE酒屋」があり、目的地に到達するためにはEE酒屋の交差点を曲がることを覚えていた場合、該特定の場所204において「EE酒屋」の検索を試みる。2007年の最新地図(図3A)では、その場所にはAA銀行201がある。
【0052】
該特定の場所204を中心に所定の領域(検索範囲)205に含まれる建物を探す範囲検索を行った場合、「AA銀行」201が検索されるが、「EE酒場」は検索されない。これは最新の地図のデータには「EE酒屋」が含まれないからである。しかし、過去の時間属性を有する形状を含め、時間を過去に遡って形状を検索する。具体的には、図形形状データ303及び304に含まれる開始時間属性及び終了時間属性を参照して過去に遡って属性データの内容を検索する。これによって、「EE酒屋」208を検索することができ、曲がるべき交差点を特定することができる。
【0053】
また、建物に入っているテナントが替わっている場合も、同様の検索によって適切な情報を得ることができる。具体的には、存在したと思われるテナントの名称をキーとして属性データの内容を検索する。例えば、図3Aにおいて、操作者は、「FF銀行」があったことを思い出し、「FF銀行」の名称を入力する。しかし、「FF銀行」は「AA銀行」201に名称が替わっているため、領域205を用いて、「AA銀行」201に対応する図形形状データを検索し、図形形状の内部に含まれる代表点から属性データを検索しても「AA銀行」の名称しか記述されていない。
【0054】
しかし、属性の存在時間のデータを含む属性データを管理することによって、過去に遡って、「FF銀行」206を検索することができる。具体的には、領域205と重なる図形形状を有する建物を、過去の時間に遡って検索する。
【0055】
なお、テナントの名称と同様に、建物に付された看板の情報も属性データとして格納するとよい。これによって看板に記載された内容に基づいて検索することができる。
【0056】
次に、本発明の実施の形態の履歴地図検索方法について説明する。
【0057】
図5は、本発明の実施の形態の地理情報システムによる履歴地図検索方法の概要を示すフローチャートである。
【0058】
まず、クライアント計算機(携帯端末404、モバイルPC405)が、検索対象である目標の名称及び位置を取得する。位置の取得は、GPS等によって位置座標を取得してもよい(ステップ501)。クライアント計算機は、取得した名称及び位置のデータを時空間検索サーバ403へ転送する(ステップ502)
時空間検索サーバ403は、検索対象の名称及び位置のデータを、クライアント計算機から受信すると、履歴地図サーバ401及び履歴属性サーバ402にアクセスし、転送された位置データを用いて地図データ及び属性データの検索を開始する。
【0059】
履歴地図サーバ401は、指定された位置(図3の204)から定められる領域(図3の領域205)における履歴地図データを検索する。履歴属性サーバ402は、指定された位置から定められる領域における履歴属性データを検索する。時空間検索サーバ403は、履歴地図中に含まれる図形形状データ、及び履歴属性中に含まれる属性データを特定し、特定された図形形状データ及び属性データを時間によって対応付け、対応付けられた図形形状データ及び属性データへのポインタ(例えば、データへアクセスするためのメモリアドレス)を、時間順にソートしてリスト化した時間リスト615(図9)を作成する(ステップ503)。
【0060】
次に、時空間検索サーバ403は、作成された時間リスト615に含まれるデータを、最新の図形形状データ、属性データから順番に照合し、検索対象として入力された名称と一致する属性データ及び、当該属性データに対応する図形形状データを選択する(ステップ504)。
【0061】
次に、時空間検索サーバ403は、選択された属性データ及び図形形状データをクライアント計算機に転送する。クライアント計算機は、時空間検索サーバ403から転送されたデータを表示する(ステップ505)。
【0062】
図6から図8は、本発明の実施の形態の地理情報システムによる履歴地図検索方法の詳細を示すフローチャートである。
【0063】
ユーザは、クライアント計算機(携帯端末404、モバイルPC405)に、検索対象である目標の名称を入力する(ステップ701)。
【0064】
クライアント計算機は、GPS等の位置情報取得装置を用いて自分(クライアント計算機)の位置を計測することができる。なお、GPSを用いることによって、地球上のいずれでも位置を計測することができる。位置情報取得装置には、GPSの他、ジャイロセンサや速度センサを用いてもよい。また、いずれの位置情報取得装置も利用できない場合は、ユーザが地図上で指定する、住所等の情報を名称を入力する等の位置情報取得装置を利用してもよい(ステップ702)。
【0065】
その後、クライアント計算機は、ステップ701で入力された名称、及びステップ702で取得した位置情報を時空間検索サーバ403へ転送する(ステップ703)。これらの情報は、サーバ計算機群406の時空間検索サーバ403に無線等の通信回線を介して送られる。
【0066】
時空間計算サーバ403の位置・名称情報取込部107が転送された名称及び位置情報を受信すると、地図座標変換部108は、転送された位置情報が準拠する座標系の変換が必要か否かを判定する(ステップ704)。これは、履歴地図サーバ401に保持される地図データの座標系がGPSの世界座標系とは異なる場合、座標系の変換が必要であると判定し、転送された位置情報の座標系を変換する(ステップ705)。一方、座標変換が必要でない場合は、ステップ706に進む。
【0067】
ステップ705では、座標変換が行われる。例えば、GPSによる世界座標系を日本の公共座標系に変換する。この座標変換は既知の方法を用いることができる。
【0068】
次に、地図検索部104は、地図データベース101にアクセスして、指定された範囲を含む地図データを取得する。履歴地図サーバ401に保持される地図データの範囲は、領域データベース102に格納されている領域データによって管理されている。
【0069】
ステップ701で指定された位置座標204から探索領域205を定める。例えば、探索領域205は、指定された位置座標204を中心とした円によって定めることができる。なお、探索領域の広さを示すパラメータ(円の半径)は予め定めておく。そして、探索領域205が含まれる1又は複数の地図データを取得する。
【0070】
次に、領域データを参照して、探索領域205と重複する地図データを特定し、探索領域205と重複する地図データを読み出す(ステップ706)。地図データには、図4の303及び304に示すような、時間情報(開始時間、終了時間)を含む図形形状データが含まれている。
【0071】
次に、時空間形状データ検索部106は、ステップ706において読み出された地図データから、探索領域205と重複する図形形状データを検索する(ステップ707)。
【0072】
ステップ706において読み出された地図データには、各図形形状の代表点座標(図9の(X1,Y1)〜(X5,Y5))が含まれる。属性データ検索部113は、属性データベース103にアクセスして、代表点に対応する属性データを取得する。
【0073】
履歴属性サーバ402に保持される属性データの範囲は、地図データと同様に、領域データベース102に格納されている領域データによって管理されている。このため、領域データを参照して、探索領域205と重複する地図データを特定し、特定された地図データに対応する属性データを読み出す(ステップ708)。属性データには、図4の305及び306に示すような、時間情報(開始時間、終了時間)を含む属性データが含まれている。
【0074】
次に、時空間属性データ検索部111は、ステップ708において検索された属性データの代表点座標が、ステップ707において取得した図形形状データに含まれるかを照合する。そして、図形形状データに含まれる代表点がある場合、図形形状データと属性データとが対応すると判定し、図形形状データ及び属性データのアドレス(ポインタ)を取得する(ステップ709)。
【0075】
次に、時間リスト作成部109は、ステップ707において時空間形状データ検索部106によって検索された図形形状データに含まれる時間データ、及び、ステップ709において時空間属性データ検索部111によって検索された属性データに含まれる時間データを参照し、終了時間が最新の順に並べ替えることによって時間リスト615を作成する(ステップ710)。
【0076】
時間リスト615は、図9に示すように、一つ以上のデータセットを含む。すなわち、時間リスト615に含まれる一つのデータセットは、開始時間・終了時間619、その期間における図形形状データへのポインタ620、及び属性データへのポインタ621を含む。図形形状データへのポインタ620及び属性データへのポインタ621は、各データが格納されたアドレスを用いるとよい。なお、各データへのポインタではなく、データ自体を時間リスト615に含めてもよい。
【0077】
そして、終了時間が現在の時間に近い順に、時間リストに含まれるデータセットを並べ替える。そして、並び替えられた順(現在の時間に近い順)に、属性データへのポインタ619に従って、検索対象の名称と属性データとを照合する。このように時間順にソートする理由は、人間の記憶は、最近から過去にいくにしたがって薄れていくため、現在に近い過去のデータを優先して照合することによって、目標となる対象のヒットを早めるためである。
【0078】
次に、時空間目標物照合部110は、ステップ710において作成された時間リスト615を用いて、検索の対象となる名称データを検索する(ステップ711)。名称は、属性データへのポインタ(アドレス2)621をたどって(すなわち、属性データベース103のアドレス2に格納された属性データを読み出して)、名称データと属性データとを照合する。その結果、検索対象の名称データが存在する場合は、ステップ713に進む。一方、検索対象の名称が存在しない場合は、ステップ714に進む(ステップ712)。
【0079】
ステップ714では、時間リスト作成部109は、検索期間を変更する(ステップ714)。例えば、検索期間を5年とすれば、最初は、現在〜5年前の範囲を検索する。しかし、その中に属性データが含まれていなければ、さらに5年遡り、5年前〜10年前の範囲を検索する。その後、新たに定められた期間で、ステップ706以後の処理を実行する。
【0080】
一方、ステップ713では、時空間目標照合部110は、名称と一致する属性データが存在する場合には、この属性データに対応する図形形状データを読み出す。形状データは、図形形状データへのポインタ(アドレス1)620をたどって、地図データベース101のアドレス1に格納されたデータが読み出される(ステップ713)。時空間目標照合部110は、時間リストに含まれる図形形状データへのアドレス620、属性データへのアドレス621を参照して、図形形状データ、属性データを特定する。時間リストのデータセット622からは、図形形状データ606、属性データ611が特定され、特定されたデータが読み出される。
【0081】
その後、変化物データ指示部112は、ステップ713において読み出された図形形状データ及び属性データを抽出し、データを転送するための形式(例えば、XML形式)に変換する(ステップ715)。
【0082】
データの形式が変換された図形形状データ及び属性データは、変化地図・属性出力部105を経由して、クライアント計算機に送られる(ステップ716)。属性データの代表点座標も送ることによって、属性データが付与された建物の位置を表示することができる。
【0083】
以上のようにして、時間履歴まで考慮して検索された名称データ及び形状データが表示される。
【0084】
次に、時間リスト615の作成方法の詳細を説明する。図9は、時間リスト615の構造及びその作成方法を説明する図である。
【0085】
時間リスト615には、前述したように、図形形状データ及び属性データが対応付けられて格納される。
【0086】
現在位置204の周囲の建物を検索する場合、まず、現在位置204に基づいて検索範囲205が設定される(ステップ706)。さらに、ステップ706において、図形形状データベース301から、探索領域205と重複する形状データ604〜607が検索される。
【0087】
また、ステップ708において、属性データテーブル302から、属性データ609〜613が検索される。なお、ステップ708では、属性データ609〜613以外の属性データも検索されるが、属性データ609〜613以外の属性データは、ステップ709で代表点座標が一致しないので破棄されることから、図示は省略した。
【0088】
検索された図形形状615、616、617、618は、それぞれ、図形形状データ606、605、607、604に対応する。また、名称「AA銀行」「FF銀行」「EE酒屋」「BB産業」「DD商店」は、それぞれ、属性データ611、609、613、610、612に対応する。
【0089】
次に、ステップ709において、属性データの代表点座標が図形形状データに含まれるかが照合される。属性データは、時間情報及び代表点座標によって、図形形状データと対応付けられる。代表点座標は構造物データの内部又は図形線上に配置されているので、形状データと属性データとを対応付けることができる。
【0090】
例えば、属性データ「FF銀行」609は、その属性データの座標(X2,Y2)が形状データ606の内部に含まれることから、形状データ606と対応付けることができる。
【0091】
また、同じ座標点に関係する複数の図形形状データ及びこの形状データに関係する複数の属性データは、時間情報(開始時間、終了時間)によって一意に対応付けることができる。すなわち、形状データ及び属性データのいずれも変化しない期間で一つのデータセットを作成される。属性データ「AA銀行」611が対応する図形形状データは、属性データ「FF銀行」609が対応する図形形状データと同一である。よって、時間リストのデータセット622及び623は、図形形状データへのポインタ(アドレス1)が共通である。
【0092】
なお、時間情報をそのまま用いることなく、所定の時間間隔で時間情報を参照して、図形形状データ及び属性データを対応付けてもよい。例えば、図形形状データ及び属性データを1年単位で参照して、両データを対応付ける。具体的には、時間情報の月日を無視し、年のみを参照すればよい。
【0093】
建物の形状(図形形状データ)及び属性データは、その変化のタイミング及びデータを収集するタイミングの違いによって、同じタイミングで変化するとは限らない。よって、このように所定の時間間隔で図形形状データ及び属性データを参照すれば、図形形状データ及び属性データを対応付けるための演算量を削減することができる。
【0094】
時間リスト615にデータを格納する際は、まず、図形形状データと対応付けられた属性データの時間情報を参照し、予め定められた期間(例えば、現在から5年間)に含まれる属性データを選択する。そして、選択された属性データを、その終了時間が現在に近い順にソートする。そして、ソートされた時間順に、図形形状データへのポインタ(アドレス1)及び属性データへのポインタ(アドレス2)を対応付け、その後、時間リスト615に格納する。
【0095】
予め定められた期間内に、図形形状データと対応付けられた属性データが存在しない場合は、さらに過去に時間を遡った期間を定め、当該期間に含まれる属性データを選択する。
【0096】
属性データの代表点が図形形状に包含されるかは、具体的には、以下の計算によって判断することができる。まず、図形形状データに外接する四角形を求める。求められた外接四角形の中に代表点が含まれるか否かを調べる。代表点が外接四角形に含まれない場合は、この代表点はこの図形形状データには含まれない。
【0097】
また、代表点から座標軸と並行に線分を延ばし、この線分と図形形状データとが交差する回数を計算することによって、代表点が図形形状に包含されるか否かを判断することができる。例えば、延伸された線分と図形形状データとが交差する回数が奇数回の場合、代表点は図形形状に包含されると判断される。一方、延伸された線分と図形形状データとが交差する回数が偶数回の場合、代表点は図形形状の外にあると判断される。
【0098】
図形形状データ及び名称データを表示する場合、過去のデータを重ね合わせて表示することができる。図10に、過去と現在の図形形状データ及び名称データを重ね合わせて表示する例を示す。
【0099】
図10は、「FF銀行」及び「DD商店」が入力された場合の例を示す。「FF銀行」の形状は、現存する「AA銀行」の形状と同一である。しかし、現在は、建物の名称が「AA銀行」に変更されているため、図形形状データ1001を太線で表示し、名称「FF銀行」を枠で囲んで表示することによって、検索によってヒットしたデータを強調して表示してする。一方、現在の名称「AA銀行」1003は強調せずに表示する。
【0100】
また、「DD商店」の図形形状データ1007を太線で表示し、名称「DD商店」1006を枠で囲んで表示することによって、「DD商店」のデータを強調して表示する。
【0101】
一方、過去の図形形状データ1002を点線等の異なる線種で表示し、過去の名称「BB産業」1004は強調せずに表示する。過去の図形形状データも表示するため、同一の場所に異なる時間に存在する形状同士の重畳を計算する必要がある。この図形の重畳は、形状データに外接する四角形を求め、外接四角形の辺同士が交差するか否かを判定することによって、簡単に計算することができる。
【0102】
このように、過去と現在の図形形状データ及び名称データを重ね合わせて表示することによって、利用者は、現在の地図と過去の名称とを、容易に対応付けることができる。
【0103】
次に、本発明の履歴地図検索をカーナビゲーションシステム等に使用される経路探索に適用した例について説明する。図11Aは、カーナビゲーションにおける現在の地図1110を示し、図11Bは、過去の地図1120を示す。
【0104】
経路を探索する場合、目的地及び中継地が入力される。目的地及び中継地が存在しない場合、又は名称が変わっている場合がある。このため、目的地及び中継地の過去の履歴を検索する必要がある。
【0105】
カーナビゲーションシステムは、現在地1101から、「RR石油」、「YY産業」及び「UUビル」を経由し、目的地「PPホール」までの経路を探索する。しかし、最新の
地図データには、「RR石油」は含まれているものの、「YY産業」、「UUビル」及び「PPホール」は含まれていない。このため、カーナビゲーションシステムは、現在地1101から「RR石油」1103までの経路しか探索することができない。すなわち、「RR石油」1103から先には、入力された中継地及び目的地は存在しないので、「PPホール」までの経路を求めることはできない。
【0106】
このように、従来のカーナビゲーションシステムでは、適切な経路を案内することができなかったが、本発明の履歴地図検索を用いると、適切な経路を探索することができる。
【0107】
すなわち、前述した履歴地図検索方法を用いると、過去の地図データ及び属性データを参照することによって、現在の「KK商店」1104の位置には、「YY産業」1107があったことが検索できる。現在の「TTマンション」1105の位置には、「UUビル」1108があったことが検索できる。現在の「LL会館」1106の位置には、「PPホール」1109があったことが検索できる。このように検索された位置情報を用いると、現在地1101から、「RR石油」、「YY産業」及び「UUビル」を経由し、目的地「PPホール」までの経路を探索することができる。
【0108】
このように中継地が指定される場合は、この経路を通ると有利(例えば、近道になる、渋滞を避けられる)ことが分かっている場合なので、中継地を辿った経路を案内することが重要である。
【0109】
さらに、経路案内中に特定の場所に近づいたとき、人間の記憶にある建物名が入力されても、付近に指定された名称の建物が存在しない場合がある。このような場合でも、時系列地図を用いた履歴地図検索を用いることによって、過去に存在した建物の場所を検索することができる。
【0110】
さらに、過去の建物の情報を検索した場合、検索された過去の建物の位置及び名称をカーナビゲーションの地図に格納しておくことによって、検索された過去の建物の位置及び名称を繰り返し利用することができる。具体的には、「KK商店」1104と「YY産業」1107とが、同じ位置に関係する名称として格納される。同様に、「UUビル」及び「PPホール」も格納される。これによって、次回の経路探索時に、「YY産業」、「UUビル」及び「PPホール」を利用することができる。
【0111】
また、本発明の時系列地図を用いた履歴地図検索方法は、店舗が移転している場合にも、移転先を検索することができる。例えば、図12に示すように、A市AA町1丁目の「KK商店」の位置を検索しようとしたが、現在は「KK商店」はB市BB町4丁目に移転している。従来の地図検索では、A市AA町1丁目付近の地図において名称「KK商店」を検索しても、「KK商店」が存在した場所は「YY産業」1203になっているので、目的とする建物は見つけることはできない。
【0112】
そこで、「KK商店」が移転した際、「KK商店」の属性データに移転先の代表点座標を格納しておく。過去に存在した「KK商店」が履歴検索によって検索された後、領域データベース102を参照して、移転先の代表点を包含する領域を検索し、検索された領域の地図を読み出して、代表点座標に対応する属性データを照合して、移転先の場所を特定する。
【0113】
さらに、過去の属性データを検索することによって、複数世代にわたって、移転先を追いかけることができる。
【0114】
これより、現存する「YY産業」1203と共に、過去に存在した「KK商店」1204も、画面1201に表示する。なお、検索対象である「KK商店」は四角で囲って強調して表示される。さらに、サブ画面1202が表示され、その中に現在の「KK商店」1205の場所が強調して表示される。
【0115】
本発明の履歴地図検索は地表面の建物だけに限定されない。例えば、図13に示すように地下街地図1301にも、本発明の履歴地図検索を適用することができる。
【0116】
すなわち、テナントの名称を属性データに格納しておき、名称をキーとして属性データを検索することによって、代表点座標が見つかり、過去にその場所が存在したことがわかれば、テナントの存在を認識することができる。
【0117】
例えば、予め作成されている地下街の地図を利用して、複数の異なる版の地図1301を持っているユーザがナビゲーションをする場合、過去に存在した「L書店」1303を待ち合わせ場所に指定しても、「L書店」1303は現在「F屋」1103になっているので、従来のナビゲーションでは「L書店」を見つけることはできない。しかし、本発明の履歴地図検索を用いることによって、図13に示すように過去に存在したテナントの「L書店」1303を検索することができる。
【0118】
なお、地下街はGPS衛星からの電波が届かないため、GPS以外の位置情報取得手段を、自分の位置座標の特定のために用いる必要がある。例えば、GPS以外の位置情報取得手段として、無線LANシステムやセンサネットシステムを用いて、電波発信源の近くを通過したときに、位置情報(地下内部での座標データ)を取得すればよい。
【0119】
地下街では、建物の形状が変わることは少ないが、テナントの名称は頻繁に変化する。従って、履歴地図データ及び履歴属性データを検索することによって、過去に存在したテナントを確認することができる。
【0120】
なお、履歴地図において管理される図形形状データ及び属性データは、現在と過去の図形形状データ及び属性データに限定する必要はない。例えば、将来の建物の図形形状データ及び属性データを、各々、地図データベース101及び属性データベース103に格納することによって、将来の時間においても検索することができる。具体的には、図形形状データ303、304及び属性データ305、306に、建設予定の建物の概略の形状、名称及び時間情報を登録すればよい。
【0121】
これによって、過去、現在、将来も含めて、建物を検索することができる。
【0122】
ここまで、図形形状データ及び属性データに時間情報を含めることによって、現在だけでなく、過去に存在した建物及び将来に存在する建物のデータの管理について説明した。しかし、時間変化情報が蓄積するとデータも大きくなり検索に時間がかかる。このため、図14に示す構成でデータを管理することによって、検索を効率化する。
【0123】
図14に示す例では、地図データは所定の期間毎に分割された地図データテーブルに格納される。同様に、属性データは所定の期間毎に分割された属性データテーブルに格納される。例えば、図14に示すように、1970年〜1980年、1981年〜1990年、1991年〜2000年、2001年以降のように、データを分割することができる。そして、過去に遡って図形形状データ及び属性データを検索する場合、まず、最近(2001年以降)のデータから検索する。そして、検索対象のデータがその期間に存在しない場合、検索された期間と隣接する過去の期間(1991年〜2000年)に遡って検索をする。
【0124】
また、図14は、地図データベース101に格納された地図データ及び属性データベース103に格納された属性データが、時間によって分割されている状態(1401、1402、1403、1404)を示す。この場合、複数の期間にわたって存在する図形形状データ及び属性データは、複数のデータテーブルに重複して格納される。
【0125】
図14に示す例では、前述した図2と異なり、時間管理部1406が新たに追加されている。時間管理部1406は、参照すべき地図データテーブル及び属性データテーブルの期間を管理する。そして、時空間目標照合部110から、検索未終了(検索したが、検索対象の図形形状データ及び属性データが検索されなかった状態)の信号1409が送られた場合に、時間管理部1406は、次に検索すべき過去の地図データテーブル及び属性データテーブルを指定して、地図検索部104及び時空間形状データ検索部106、さらに属性検索部113および時空間属性データ検索部111による検索範囲を指定する。これは前述したステップ714(図7参照)に相当する。
【0126】
また、属性を検索キーとして検索するのではなく、形状を検索キーとして検索することも考えられる。例えば、図15に示すように、概略の形状1506を入力して、その入力された形状と一致する形状を、過去に遡って検索する。検索キーとなる形状は、ペン入力等の方法によって、計算機の画面に直接入力する方法が採用できる。
【0127】
このような形状をキーとした検索は、特徴的な形状の建物が存在する場合に有効である。データのフォーマット及びデータ間の関係は、図4に示すものと同一のものを用いることができる。
【0128】
例えば、図15に示すように、検索キーとなる形状1506の入力を受け付ける。検索キーとなる形状には、二つの円形1503、1504及び一つの四角形1505が入力されている。そして、検索キーとなる形状1506は、一つの四角形と近接した二つの円形を含むことが、計算機によって判定できる。そこで、地図データを参照すると、現在の地図データには検索キーとなる形状と一致する図形形状データはないが(現在は形状1501である)、過去の地図データには検索キーとなる形状と一致する図形形状データが登録されている。この形状の照合には、一般的な公知のパターンマッチング技術を用いることができる。
【0129】
そして、検索された形状に代表点座標が含まれる属性データを検索し、名称「BBBビル」1502を探し出すことが可能となる。このように、履歴地図検索を用いることにより、過去に存在した建物の形状を照合することが可能となる。
【0130】
このとき、現在の建物の形状データ1501(点線表示)、及びその名称「AAA社」を、過去の図形形状データ及び名称と重畳して表示することによって、建物やその属性が変更されていることを表示することができる。
【0131】
なお、一つの四角形と2個の円形状の存在期間が異なる場合であっても、検索することができる。具体的には、まず、円形状の形状キーとして過去の地図データを検索し、検索された円形に近接してもう一つの円形及び四角形が存在したかを、別の期間も検索範囲に含めて地図データを検索する。そして、存在期間が重複しなくても、検索キーとなる形状の一部が各期間で一致した場合に、検索ヒットとすることができる。
【0132】
地図は、最新の情報に更新されると、過去の情報が失われてしまう。しかし、以上説明した実施の形態によると、時間情報が付加されたデータを管理することによって、過去のデータを廃棄することなく、保持して、検索に利用できるようになる。
【0133】
さらに、同じ場所が異なるテナントになっている場合でも、過去のテナント名を検索キーとして、過去に存在したテナントを検索することができる。
【0134】
これによって、検索目標の名称(及び、その名称を有する建物)が現存しなくても、検索対象とする期間を指定することなく、過去に遡って検索が可能となる。また、異なる時間に存在した建物の属性データ(名称等)を用いて、ナビゲーション等の機能を実現することができる。
【0135】
また、地図データと属性データの両方を用いて過去の建物を特定していくので、ある期間のデータが欠落していても、過去に遡って検索をすることができる。
【0136】
さらに、検索対象の地理的範囲と属性データとを直接照合するのではなく、検索対象の地理的範囲と建物の形状データとを照合し、その後、建物の形状データと属性データの位置情報(代表点)とを照合する。このため、属性データの位置情報が検索対象の地理的範囲に含まれない場合でも、検索目標の属性データの検索が可能となる。例えば、建物が大きい場合には、代表点は建物の一端から離れた場所にある。本実施の形態によると、大きな建物の一部が地理的検索範囲と重なれば、建物とリンクされた代表点を検索することができる。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】本発明の実施の形態の地理情報システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態の地理情報システムの機能ブロック図である。
【図3A】本発明の実施の形態の履歴地図を用いた位置の時空間照合の説明図である。
【図3B】本発明の実施の形態の履歴地図を用いた位置の時空間照合の説明図である。
【図3C】本発明の実施の形態の履歴地図を用いた位置の時空間照合の説明図である。
【図4】本発明の実施の形態の時間履歴管理方法の説明図である。
【図5】本発明の実施の形態の履歴地図検索方法の概要を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態の履歴地図検索方法の詳細を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態の履歴地図検索方法の詳細を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態の履歴地図検索方法の詳細を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態の時間リスト作成方式の説明図である。
【図10】本発明の実施の形態の地図の表示例を示す図である。
【図11A】本発明の実施の形態の経路検索への適用例を示す図である。
【図11B】本発明の実施の形態の経路検索への適用例を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態のテナントの移転先の表示例を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態の地下街における履歴地図検索への適用例を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態の履歴地図データ/属性データの別な構成を示すブロック図である。
【図15】本発明の実施の形態の形状データを検索キーとした検索の説明図である。
【符号の説明】
【0138】
101 地図データベース
102 領域データベース
103 属性データベース
104 地図検索部
105 地図・属性データ出力部
106 時空間形状データ検索部
107 位置・名称情報読取部
108 地図座標変換部
109 時間リスト作成部
110 時空間目標物照合部
111 時空間属性データ検索部
112 変化物データ指示部
113 属性データ検索部
401 履歴地図サーバ
402 履歴属性サーバ
403 時空間検索サーバ
404 携帯端末(携帯電話機)
405 モバイルPC
406 サーバ計算機群
407 クライアント計算機群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間情報が付された形状データを含む地図データ、及び、前記地図データに含まれる対象物の属性であって位置情報及び時間情報が付された属性データを用いる地理情報システムであって、
プロセッサ、前記プロセッサに接続されるメモリ、前記プロセッサに接続される通信インターフェース、及び前記プロセッサに接続されるユーザインターフェースを備え、
検索対象の地理的範囲及び検索キーの入力を受け付ける情報取込部と、
前記入力された検索対象の地理的範囲と、前記形状データが表す範囲の少なくとも一部が重なる形状データを前記地図データから抽出する地図検索部と、
前記入力された検索キーと一致し、かつ前記抽出された形状データが表す範囲と前記位置情報が重なる属性データを、前記形状データ及び前記属性データに付された時間情報に従って、前記形状データと対応付ける対応付け部と、
前記対応付けられた形状データ及び属性データを出力する出力部と、を備えることを特徴とする地理情報システム。
【請求項2】
前記形状データ及び属性データに付された時間情報は、前記対象物が存在した又は存在予定の期間であって、
前記地図データは、複数の区画に区分されて格納されており、
前記地図検索部は、前記入力された検索対象の地理的範囲が含まれる地図データの区画を特定して、前記特定された区画において形状データを検索し、
前記対応付け部は、
前記形状データの検索範囲と前記位置情報が重なる属性データを抽出し、
前記抽出された形状データと属性データとを、前記属性データに付された位置情報を用いて照合し、
前記照合された形状データ及び属性データのうち、前記形状データ及び前記属性データに付された時間情報が重なるものを対応付け、
前記形状データと対応付けられた属性データから、前記入力された検索キーと一致するものを選択することを特徴とする請求項1に記載の地理情報システム。
【請求項3】
前記属性データに付された位置情報は、前記属性データが付された対象物の代表点座標であって、
前記対応付け部は、前記代表点座標が前記形状データが表す範囲に含まれるかによって、前記形状データと前記属性データとを照合することを特徴とする請求項2に記載の地理情報システム。
【請求項4】
前記対応付け部は、
前記対応付けられた形状データ及び属性データのいずれも変化しない期間に対応するデータセットを作成し、前記作成されたデータセットが時間順に並べられた時間リストを作成し、
前記作成された時間リストから、前記入力された検索キーと一致する属性データを選択することを特徴とする請求項2に記載の地理情報システム。
【請求項5】
前記出力部は、前記対応付けられた形状データ及び属性データの、過去及び現在のデータとを、前記形状データの地図上の位置に重畳して表示するためのデータを出力することを特徴とする請求項1に記載の地理情報システム。
【請求項6】
さらに、地図上で経路を探索する経路探索部を備え、
前記対応付け部は、前記形状データと対応付けられた属性データの前記地図上の位置を特定し、
前記経路探索部は、前記位置が特定された属性データを用いて経路を探索し、
前記出力部は、前記探索された経路を出力することを特徴とする請求項1に記載の地理情報システム。
【請求項7】
前記属性データは、前記対象物の移転先の情報を含み、
前記対応付け部は、前記入力された検索キーと属性データが一致する対象物の移転先の情報が、前記属性データに含まれている場合は、前記対象物の移転先の情報を取得し、
前記出力部は、前記取得した情報を地図上に表示するためのデータを出力することを特徴とする請求項1に記載の地理情報システム。
【請求項8】
前記地図データ及び前記属性データは予め定められた期間によって区分されており、
前記対応付け部は、前記区分された前記地図データ及び前記属性データを、最新の期間のものから順に対応付けることを特徴とする請求項1に記載の地理情報システム。
【請求項9】
前記情報取込部は、前記検索キーとして形状の入力を受け付け、
前記対応付け部は、検索キーと属性データとの一致を判定することなく、前記抽出された形状データであって前記入力された形状と一致する形状の形状データと重なる属性データを、前記形状データ及び前記属性データに付された時間情報に従って、前記形状データと対応付けることを特徴とする請求項1に記載の地理情報システム。
【請求項10】
前記地理情報システムは、
第1プロセッサ、前記第1プロセッサに接続されるメモリ、及び前記第1プロセッサに接続される通信インターフェースを備えるサーバと、
第2プロセッサ、前記第2プロセッサに接続されるメモリ、前記第2プロセッサに接続される通信インターフェース、及び前記第2プロセッサに接続されるユーザインターフェースを備える端末と、を備え、
前記サーバは、前記地図検索部、前記対応付け部及び前記出力部を備え、
前記端末は、前記情報取込部、及び、前記出力部から出力されたデータを表示する表示部を備えることを特徴とする請求項1に記載の地理情報システム。
【請求項11】
前記地理情報システムは、前記プロセッサ、前記メモリ、前記通信インターフェース及び前記ユーザインターフェースを備える端末によって構成され、
前記端末は、前記情報取込部、前記地図検索部、前記対応付け部、前記出力部、及び、前記出力部から出力されたデータを表示する表示部を備えることを特徴とする請求項1に記載の地理情報システム。
【請求項12】
時間情報が付された形状データを含む地図データ、及び、前記地図データに含まれる対象物の属性であって位置情報及び時間情報が付された属性データを用いて地理情報を管理する方法であって、
検索対象の地理的範囲及び検索キーの入力を受け付け、
前記入力された検索対象の地理的範囲と、前記形状データが表す範囲の少なくとも一部が重なる形状データを前記地図データから抽出し、
前記入力された検索キーと一致し、かつ前記抽出された形状データが表す範囲と前記位置情報が重なる属性データを、前記形状データ及び前記属性データに付された時間情報に従って、前記形状データと対応付け、
前記対応付けられた形状データ及び属性データを出力することを特徴とする地理情報管理方法。
【請求項13】
前記形状データ及び属性データに付された時間情報は、前記対象物が存在した又は存在予定の期間であって、
前記地図データは、複数の区画に区分されて格納されており、
前記形状データを抽出するステップでは、前記入力された検索対象の地理的範囲が含まれる地図データの区画を特定して、前記特定された区画において形状データを検索し、
前記属性データを前記形状データと対応付けるステップでは、
前記形状データの検索範囲と前記位置情報が重なる属性データを抽出し、
前記抽出された形状データと属性データとを、前記属性データに付された位置情報を用いて照合し、
前記照合された形状データ及び属性データのうち、前記形状データ及び前記属性データに付された時間情報が重なるものを対応付け、
前記形状データと対応付けられた属性データから、前記入力された検索キーと一致するものを選択することを特徴とする請求項12に記載の地理情報管理方法。
【請求項14】
前記属性データに付された位置情報は、前記属性データが付された対象物の代表点座標であって、
前記形状データと前記属性データとを前記位置情報を用いて照合するステップでは、前記代表点座標が前記形状データが表す範囲に含まれるかによって、前記形状データと前記属性データとを照合することを特徴とする請求項13に記載の地理情報管理方法。
【請求項15】
前記時間情報が重なる形状データと前記属性データとを対応付けるステップでは、前記対応付けられた形状データ及び属性データのいずれも変化しない期間に対応するデータセットを作成し、前記作成されたデータセットが時間順に並べられた時間リストを作成し、
前記属性データを選択するステップでは、前記作成された時間リストから、前記入力された検索キーと一致する属性データを選択することを特徴とする請求項13に記載の地理情報管理方法。
【請求項16】
前記データを出力するステップでは、前記対応付けられた形状データ及び属性データの、過去及び現在のデータとを、前記形状データの地図上の位置に重畳して表示することを特徴とする請求項12に記載の地理情報管理方法。
【請求項17】
前記形状データと対応付けられた属性データの地図上の位置を特定し、
前記位置が特定された属性データを用いて経路を探索し、
前記探索された経路を出力することを特徴とする請求項12に記載の地理情報管理方法。
【請求項18】
前記属性データは、前記対象物の移転先の情報を含み、
前記方法は、前記入力された検索キーと属性データが一致する対象物の移転先の情報が、前記属性データに含まれている場合は、前記対象物の移転先の情報を取得し、
前記データを出力するステップでは、前記取得した移転先の情報を地図上に表示することを特徴とする請求項12に記載の地理情報管理方法。
【請求項19】
前記地図データ及び前記属性データは予め定められた期間によって区分されており、
前記属性データを前記形状データと対応付けるステップでは、前記区分された前記地図データ及び前記属性データを、最新の期間のものから順に対応付けることを特徴とする請求項12に記載の地理情報管理方法。
【請求項20】
前記受付ステップでは、前記検索キーとして形状の入力を受け付け、
前記属性データを前記形状データと対応付けるステップでは、検索キーと属性データとの一致を判定することなく、前記抽出された形状データであって前記入力された形状と一致する形状の形状データと重なる属性データを、前記形状データ及び前記属性データに付された時間情報に従って、前記形状データと対応付けることを特徴とする請求項12に記載の地理情報管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−58252(P2009−58252A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−223789(P2007−223789)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】