説明

基板および発光ダイオード

【課題】基板の上にCVDでLEDのための結晶成長させるとき、結晶成長の種結晶を形成することと、基板と結晶層の界面にランダムな凹みを設けることを同時に満たす基板を提供する。
【解決手段】結晶の粉を付着させた基板の上にCVDで結晶層を成長をさせる。結晶の粉が種結晶となり、それが大きくなり結晶グレインを形成する。結晶欠陥の数または密度が当該結晶粉に依存してグレインが安定に成長する。従って、当該粉を水溶液から安定に再現性よく付着させることで、結晶の成長層のグレイン密度を制御できる。また、前記粉をマスクにしてプラズマエッチングし、ランダムに凹みを形成したサファイア基板91にLEDのためのGaN結晶層85を成長させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガリュムナイトライド(GaN)を成長させるための基板と、この基板に発光ダイオード(LED)を製造する技術に係る。
【背景技術】
【0002】
ガリュムナイトライド(GaN)の基板はLED(Light Emitting Diode)を製造するときに使われる。しかし、通常は大きなGaN基板の製造が難しいために、サファイア基板またはシリコンカーバイド(SiC)基板の表面にGaN薄膜を化学気相成長(Chemical Vapor Depsition:CVDという)させたものを用いる。これら基板は高価である。安価にGaNを成長させた基板を製作したいという要求がある。
【0003】
シリコン(Si)基板を用いるLSI(Large Scale Integrated Circuit)では基板の結晶欠陥密度は0.1個/cm以下であるが、LED(発光ダイオード)を製造するために用いるGaNの結晶は多くの結晶欠陥を含んでいても実用上用いることができる。そのために、サファイアの上に20nmほどの厚みでアモルファスのGaNを500℃で成長させ、それを1000℃ほどの高温にして、GaNが凝集して結晶島を作る方法で自然核を形成し、その自然核を種結晶としてGaN結晶層を成長させるGaN結晶の成長方法がある。
【0004】
この方法で形成したGaN結晶層は通常10個/cm以上の密度で結晶欠陥を含む。しかし、これでもLEDを作製することは可能である。この密度を減らすとLEDの明るさや電力消費、製造歩留まりを改善できる。
【0005】
欠陥密度を減らす公知例として、例えば、ボロン(B)を添加したGaNのアモルファス層を加熱して結晶島を形成し、これを核として表面の平坦なGaN層を形成し、結晶欠陥密度を通常と言われている値の1/100の密度2x10個/cmを得たという報告がある(非特許文献1参照)。
【0006】
また他の公知例として、サファイア基板に凹凸のパターンを形成する方法がある。酸化膜などの異種材料の成長ブロック層を成長させ、レジストとプラズマドライエッチング技術でこれに窓明けを行う。酸化膜の上の成長はインキュベイション時間があるために成長の開始が遅いのを利用して、窓の開いた部分から優先的に成長させる。特に横方向成長速度の速いAlを含むGaNの混晶(AlGaN)を選び成長させ、表面の平坦酸化膜の上にも覆うようにAlGaNを成長させて(横方向成長という)、この上にGaNを成長させて、結晶欠陥を減らす(特許文献1参照)。これが欠陥を減らす一つの方法である。
【0007】
作製した酸化膜を残さず、これをハードマスクとしてプラズマエッチングしてサファイア基板表面に規則正しく凹凸パターンを形成したサファイア基板(Patterned Sapphire Substrate、すなわちPSS基板と呼ぶ)を用いる方法もある。PSS基板には欠陥を減らす効果が期待されているが、他の大きな効果としてLEDから取り出す光の量を増加させる効果がある。
【0008】
当該効果が大きいために、表面に凹凸を形成したサファア基板(PSS)がLED製造に良く用いられる。
【0009】
PSS基板に規則正しいパターンを形成すると、そのパターンに依存して特定の方向に光が反射される。GaNの屈折率(2.4)はサファイア基板の屈折率(1.8)より大きいために、LEDの量子井戸で発光した光のうち、特定の方向に反射した光は再び特定方向に反射されてGaN結晶の外に抜けられない割合がある。この割合を減らす構造が効率の高いLED作製に必要になる。
【0010】
特定の方向を持たない構造はPSSのパターンが特定の規則正しいパターンを持たないことである。即ち、ランダムパターンがPSSに求められる。ランダムなパターンを発生させる発明がある(特許文献2参照).この発明では、サファイア基板に例えばニッケル(Ni)の薄膜(20nm程度)を蒸着して、これをアニールしてニッケルの突起島を形成させ、これをマスクにしてサファア基板をエッチングして、ランダムな凹凸をサファイア基板に形成した。この発明はパターン発生のための高価な露光技術を必要としないメリットがあるが、ニッケルの蒸着とアニール、その除去などの工程が必要である。
【0011】
安価に、かつ安定な方法で結晶欠陥を減らし、発光した光が基板表面でランダムに反射されて効率よく取り出されるGaN結晶成長のための基板が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001-057463 窒素化合物半導体膜構造及び窒素化合物半導体素子並びにそれらの製造方法
【特許文献2】特開2010-225787 サファイア基板の製造方法、および半導体装置
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】T. Akasaka and T. Makimoto, Jpn. J. Appl. Phys. (JJAP ExpressLetter) 44 (2005) L1506
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
図1と2は自然核の形成を示す模式図である。例えばサファイア基板の上に500℃程度の低温でGaNのアモルファス膜を成長させる。使用するガスは水素(H2)、アンモニア(NH3)、トリメチルガリューム(TMG)である。
【0015】
これらのガスを例えば常圧で導入して加熱分解反応をさせ、水素を含むアモルファスのGaN膜を例えば20nmの厚みで基板の上に成長する(図1参照)。これを1000℃程度に加熱すると水素元素(H)やカーボン元素(C)が膜から離脱しながら膜が凝集してGaN結晶の島ができる(図2参照)。この結晶の島が、次に続く約1000℃で行うGaNのCVD結晶成長の核となる。即ち、この核を種結晶として結晶成長が起きるので、種結晶の密度が欠陥密度を制御する。
【0016】
当該核を用いる方法は、装置依存や装置の成長履歴、基板表面の清浄度に依存して、再現性に乏しい。清浄度は基板の洗浄や保存、基板の加工履歴などに依存する。即ち、サファイア基板メーカー依存でGaN成長結果が異なるので、製造管理が困難になる。
【0017】
このようなことが起きる理由は当該核ができる場所は基板表面のゴミや粒子、金属汚染などがある場所であるからである。
【0018】
欠陥密度を減らし、かつ量子井戸層からの発光を外部に取り出すために用いられる基板として、凹凸パターン形成したサファイア基板(PSS)がある。このときの課題は高コストである余計なマスク膜成長工程、リソグラフィー工程、サファイア基板エッチング工程、マスク除去工程が必要であることである。
【0019】
またパターンは特定のパターン(四角、丸、ストライプなど)であるために、発光した光のうち、当該パターンに依存して特定方向の反射を起こし、高い屈折率のGaN層から外部に取り出せない光がある。この取り出せない光の割合を減らすためには、パターンは不規則(ランダム)であることが望ましい。サファイア基板表面に凹凸をランダムに安価に作製することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
図3に課題を解決する本発明の第1の基本構造を示す。即ち、当該核となる原因物を制御されてない汚染物でなく、制御された原因物を制御された密度で付与した基板構造が本発明である。
【0021】
制御された当該原因物は粉である。粉は結晶の粉である。この結晶の粉の表面は結晶面(結晶のファセット面と呼ぶ)であるので、成長面として期待する面がファセット面として露出している。この上にアモルファスGaNをMOCVDで例えば500℃で成長させる。MOCVDのキャリアーガスは水素である。MOCVD原料ガスはアンモニアとトリメチルガリューム(TMG)である。500℃で成長させるとアモルファスのGaN膜が成長する。これを1000℃に加熱して結晶島33を形成する。
【0022】
結晶島の成長面は結晶粉のファセット面を反映した面になるので、安定面(成長速度が遅い面)として残る。この上に、追加してn型GaN層、InGaN量子井戸層、p型GaN層(Alを含むGaN)をMOCVDで成長させると、LEDの構造が出来上がる。このとき、n型のGaNを成長させる前に横方向成長速度のはやいアルミニュームナイトライド(AlN)とGaNの混晶を成長させても良い。
【0023】
n型にドープするときはシランガスを添加する。p型にドープするときはCp2Mgガスを添加する。
【0024】
このように結晶の粉を制御して基板の上に付着させ,これを種結晶とすることで核の形成が制御される。従って結晶粉の密度を制御して付着させることにより核の密度を制御できる。
【0025】
このときに用いる基板はサファイア基板のほかに、シリコン基板の上にシリコン酸化膜やシリコン窒化膜を成長させた基板であっても良い。また基板はシリコンの拡散を防ぐSiCや窒化アルミニューム(AlN)、ジルコニュームボロンオキサイド(ZrBO)、酸化アルミニューム(Al)などのセラミクスの膜を成長させたシリコン基板であっても良い。
【0026】
このとき用いる結晶粉はシリコンのほかGaN,AlGaN、AlN、SiC、人工ダイヤモンド、サファイアの粉であっても良い。
【0027】
以上の基板表面の構造は結晶欠陥を減らす効果がある。このほかに、基板表面にランダムな光の反射面を安価に作製することが同時に要求されている。そのための構造が本発明の第2の基本構造である。その構造を図4に模式的に示す。
【0028】
図4は予めアルミニュームの膜44を20nmの厚みでサファイア基板41に蒸着させ粉42を付着させこれをマスクに当該膜44と当該基板41をプラズマエッチングした後の断面構造の模式図である。この場合、粉42は例えばシリコン結晶の粉である。この粉をマスクにして臭化水素ガス(HBrガス)プラズマエッチングするとアルミニュームがエッチングされる。そのあと、塩素を含む塩素系ガス(例えばHCl)を用いてサファイア基板41をエッチングし、粉に依存した凹み43を形成する。粉42の大きさと形は不規則(ランダム)なので、凹み43のパターンもランダムである。
【0029】
当該の構造を製作するのに、高価なリソグラフィーの工程を必要としてない。従って、安価にランダムな凹みパターンをサファイア基板41の上に作製できる。
【0030】
当該のランダムな凹み構造は膜44だけをエッチングしてサファイア基板はエッチングしなくても作製可能である。また材料の組み合わせによっては、粉42も残したままでも良い。即ち、点線で示した粉42と膜44は洗浄で取り除いても、取り除かなくて良い。
【0031】
粉42としてはプラズマエッチングに対してマスクとしての機能を持つ材料であれば良い。従って、膜44までをエッチングするときと、さらにサファイア基板をもエッチングするかで、当該粉42の材料を選ぶことはプロセス設計で自由に選べる。
【0032】
エッチングの選択比(被エッチング膜とマスクのエッチング速度の比)が1ならば、膜44と粉42は同じ材料でよい。
【0033】
粉42として、シリコンの結晶を用いた例を述べたがGaNやAlNの結晶、それらの混晶AlGaNであっても良い。また人口のダイヤモンドやシリコンカーバイド、サファイアの結晶の粉であっても良い。
【0034】
これらの結晶の粉42はそのまま残しておいて、それをGaNの結晶成長のための基板として用いることができる。
【0035】
一方、洗浄して粉42を、または粉42と膜44を取り除いたサファイア基板をGaN成長基板として用いることができる。取り除く粉42は膜44またはサファイア基板41のエッチングのマスクになれば良いので、結晶である必要はない。
【0036】
粉42は従ってレジストを噴霧して残したレジスト痕を含む有機物であってもよい。また粉42は石英の粉を含む絶縁物の粉であっても良い。
【0037】
膜44は、これを取り除かないときはサファイア基板41に優先的に成長を起こさせる絶縁物(成長のマスク材料)、例えばシリコン酸化膜やシリコン窒化膜であっても良い。
【0038】
LEDを照明として用いるとき可視光の分散をよくする必要があるので、可視光の波長の大きさの凹み形状が含まれていることが有効である。当該凹みの幅形状の大きさとして、例えば、可視光の波長を含む1000nm以下の大きさのものが含まれているように、粉42の密度を調整することが求められる。
【0039】
そして、請求項1に係る発明は、結晶の粉を付着させてある基板である。
【0040】
請求項2に係る発明は、前記結晶の粉がシリコン、GaN、シリコンカーバイド(SiC)、人工ダイヤモンド(C)、窒化アルミニューム(AlN)、サファイアのいずれか一つ、またはこれらの少なくとも一つを含む結晶の粉であることを特徴とする請求項1記載の基板である。
【0041】
請求項3に係る発明は、前記結晶の粉が、大きさ1000nm以下の粉を含むことを特徴とする請求項1,2記載の基板である。
【0042】
請求項4に係る発明は、前記基板がシリコン、サファイアを含む半導体基板であることを特徴とする請求項1〜3記載の基板である。
【0043】
請求項5に係る発明は前記基板の上に、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜を含む絶縁膜を付着させてあることを特徴とする請求項1〜4記載の基板である。
【0044】
請求項6に係る発明は、前記基板がSiCや窒化アルミニューム(AlN)、ジルコニュームボロンオキサイド(ZrBO)、酸化アルミニューム(Al2O3)などのセラミクスの膜を成長させたシリコン基板あることを特徴とする請求項1〜5記載の基板である。
【0045】
請求項7に係る発明は、前記結晶の粉が溶液に分散してあり、前記基板を当該溶液に接触させて、当該粉を当該基板に転写付着させたことを特徴とする請求項1〜6記載の基板である。
【0046】
請求項8に係る発明は、前記溶液が水溶液であることを特徴とする請求項1〜7記載の基板である。
【0047】
請求項9に係わる発明は、サファイア基板に粉を付着させ、当該粉をマスクに当該サファイア基板をエッチングし、当該基板にランダムな凹みを作製したことを特徴とするサフファイア基板である。
【0048】
請求項10に係わる発明は、予めシリコン酸化膜やシリコン窒化膜を含む絶縁膜を成長させてあるサファイア基板に粉を付着させ、当該粉をマスクに当該絶縁膜を、または当該絶縁膜と当該サファイア基板をエッチングし、当該基板にランダムな凹みを作製したことを特徴とするサフファイア基板である。
【0049】
請求項11に係わる発明は、前記粉がレジスト痕を含む有機物や、または石英の粉を含む絶縁物の粉、またはシリコンやGaN、AlNの結晶、それらの混晶AlGaN、人工ダイヤモンド、シリコンカーバイド、サファイアを含む結晶の粉、またはアルミニュームやニッケルを含む金属、または金属で覆われた粉であることを特徴とする請求項9、10記載のサファイア基板である。
【0050】
請求項12に係わる発明は、前記粉を除去してあることを特徴とする請求項9〜11記載のサファイア基板である。
【0051】
請求項13に係る発明は、前記ランダムな凹みは1000nm以下の幅の凹みを含むことを特徴とする請求項9〜12記載のサファイア基板である。
【0052】
請求項14に係る発明は、前記基板に作製したLEDである。
【発明の効果】
【0053】
本発明は成分としてアルミニューム、インジュームを含むGaNの結晶(GaN系結晶)の結晶成長に用いる基板の発明である。この結晶を用いるGaN系結晶の結晶欠陥の密度が10〜10/cmの密度あるいはそれ以上でも、LEDに用いるならば十分に実用になることが分かっている。そのとき再現性よくGaN系の結晶成長をCVDで行うために、種結晶を基板の上に再現性よく安定に分布させて形成することが製造管理の立場から必要である。
【0054】
請求項1〜4に係わる発明によれば、結晶の粉が表面に分布した基板を種結晶形成に用いる。アモルファスのGaN膜を当該粉結晶の上に成長させて、これを1000℃程度の高温にすることにより、アモルファス相はこの粉結晶を種に結晶化する。結晶化したGaNは結晶の島になる。当該結晶島は粉結晶の密度で島を形成するので、粉結晶を制御して付着させると、GaN島結晶の方位、密度は制御される。
【0055】
粉結晶は結晶面(ファセット面)をもっている。結晶面と基板は密着する性質があるので、当該結晶島の結晶方位は一定の方向にそろう性質がある。但し、基板主面の法線を軸としての回転は制御することはできないので、回転双晶の発生は原理的に制御できない。
【0056】
このような粉結晶を用いないとき、当該の結晶核は基板の汚染物質や傷など制御してない物質に依存するので、種結晶の形成の再現性は無い。これに対して、本発明では溶液に分散した結晶の粉を基板に付着させる。当該粉は結晶成長の核として作用する。当該核の付着は制御できるので、その密度や方位の再現性が高くなる。
【0057】
請求項5,6に係わる発明によれば、基板として膜を付着させた基板,例えばシリコン基板を用いることができる。この付着させた膜で基板とGaN系結晶成長層を分離することが可能である。例えばSiCなどの膜を付着させた基板を用いると、LEDとなる結晶層を成長させた後、KOHなどの薬品で光の不透明層となるSi基板を溶かして除去できる。またシリコン酸化膜(SiO)を形成したシリコン基板を用いると、シリコン基板を研磨除去したあと(バックグラインドという)残りのシリコンをKOHのなどの薬品で除去できる。
【0058】
請求項7と8に係わる発明によれば、結晶の粉を一様に分散した水溶液から当該結晶粉を基板に平均的に一様に付着させることが可能である。酸化された表面はCVD装置の中で水素中加熱することで除去できる。結晶粉の濃度や粒度を制御することで、結晶粉が制御されて配置された基板を提供できる。
【0059】
請求項9〜13に係わる発明によれば、光の散乱効果の高い基板表面を提供できる。当該基板の上にLEDの基本構造の層、即ちGaNのバッファー層、n型GaN層、量子井戸層、p型GaN層を成長させて得たLEDからの発光は当該基板表面でよく散乱される。このことにより外部に取り出せる光の量が増加する。
【0060】
請求項14に係わる発明によれば、再現性の高いLEDの製造管理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1はアモルファスGaNをCVDで成長させた基板である。
【図2】図2はアモルファスGaNを加熱して核となる結晶島を形成した基板の模式図である。
【図3】図3はサファイア基板の上に付着させたシリコン結晶粉を核としてアモルファスGaNを結晶化させて結晶島を形成した基板の模式図である。
【図4】図4は粉を付着させ、当該粉をマスクとしてプラズマエッチングをしたサファイア基板の模式図である。
【図5】図5はシリコン結晶の粉を付着させたサファイア基板の模式図である。
【図6】図6はシリコン結晶の粉を付着させたシリコン基板の模式図である。
【図7】図7はシリコン結晶の粉を付着させたシリコン酸化膜つきシリコン基板の模式図である。
【図8】図8はシリコン結晶の粉を付着させたシリコンカーバイド膜付きリコン基板の上にGaN結晶を成長させたあと、シリコン基板を除去したGaN結晶層の模式図である。GaNの結晶層の基本構造は、GaN結晶島、n型GaN結晶層、InGaN/GaNの量子井戸層、p型GaN層からなる。
【図9】図9は粉を付着させ、それをマスクにプラズマエッチングをしてランダムな凹みを形成したサファイア基板にLEDの基本結晶構造をMOCVDで作製した基板の模式図である。GaNの結晶層の基本構造は、n型GaN結晶層、InGaN/GaNの量子井戸層、p型GaN層からなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、これら添付図面中、同一または相当部分には同一符号を付した。
【0063】
実施例1を図5で説明する。図5はシリコンの粉52,53を付着させたサファイア基板41の模式図である。シリコンの粉43は平坦な表面を持つ例である。シリコンの粉はシリコンの結晶を乳鉢ですり潰して作製した。
【0064】
粉の大きさは50nm以下から5umくらいまで分布している。粉の大きさを一定の大きさ以下に揃える必要があるときは、例えばフィルターでろ過する方法がある。乳鉢ですり潰したシリコンの粉を純水に分散させ、シリコン粉の分散水溶液を作製し、その中に2インチのサファイア基板11を浸し、その後それを引く抜き、水を乾燥させるとシリコンの粉が分散して付着したサファイア基板41が得られる。
【0065】
平均的な付着密度は当該溶液に分散させるシリコンの粉の量を制御することで制御可能である。粉の大きさが小さいものは数えることができないので、制御の方法は、例えば、表面密度が1000nm以上の粉が100000000個/cm以下、1000000個/cm以下、10000個/cm以下という指標を用いて、分類することが可能であった。
【0066】
粉の個数のカウントは1個/cm以下の清浄なシリコン基板上に付着したパーティクルをパーティクル測定器で測定して溶液指標を得た。また時間がたつと粉は沈殿するので、溶液内で濃度分布が生じる。一定濃度のものを作製したら、それを水で希釈し、攪拌することで、濃度の再現性の制御が可能であった。
【0067】
ここではシリコン結晶の粉の例を示したが、当該粉は、このほか、GaN、シリコンカーバイド(SiC)、人工ダイヤモンド(C)、窒化アルミニューム(AlN)、AlNとGaNの混晶、サファイアの粉であっても良い。またこれらのいずれか一つを含む混合の粉であっても良い。
【0068】
実施例2を図6で説明する。図5はシリコンの粉62,63を付着させた4インチのシリコン基板61の模式図である。
【0069】
同様にしてシリコン粉の分散水溶液を作製し、その中に4インチのシリコン基板61を浸し、その後それを引く抜き、水を乾燥させるとシリコンの粉が分散して付着したシリコン基板61が得られる。
【0070】
平均的な付着密度は当該溶液に分散させるシリコンの粉の量を制御することで制御可能である。
【0071】
実施例3を図7で説明する。図7はシリコンの粉72,73を付着させた4インチのシリコン基板71の模式図である。シリコン基板71の上には予め、厚さ200nmのシリコン窒化膜74を形成させてある。シリコン結晶粉の粉73は当該シリコン窒化膜74の上に付着して面が平坦である。
【0072】
当該シリコン窒化膜74の代わりに、シリコン酸化膜(SiO)やシリコンカーバイド膜(SiC)を用いることも可能である。
【0073】
実施例4を図8で説明する。図8はシリコンカーバイド膜84を200nmの厚みに成長させたシリコン基板81にシリコンの粉62,63を付着させ、この上にアモルファスGaNを通常の市販のMOCVD装置で500℃で成長させた。MOCVDのキャリアーガスは水素である。MOCVD原料ガスはアンモニア(NH)とトリメチルガリューム(TMG)である。500℃で成長させるとアモルファスのGaN膜が成長する。
【0074】
これを1000℃に昇温して結晶島33を形成する。結晶島33の成長面は結晶粉のファセット面を反映した面になるので、安定面(成長速度が遅い面)として残る。
【0075】
それを種結晶として標準的な基本構造、即ち、n型GaN結晶層85を前述のMOCVDで成長させ、次にInGaN/GaNの量子井戸層86を3層成長させ、次にp型GaN結晶層87を成長させた。
【0076】
そのあと、シリコン基板81表面を接着剤でアクリル板に接着し、グラインダーで基板背面研削し(バックグラインド)、基板を約50umの厚みまで薄くし、残ったシリコンをKOHの薬品に接触させて溶かす。シリコンカーバイド膜84は水酸化カリューム(KOH)に溶けないので溶解はシリコンカーバイド84で止まる。破線で示したのは除かれたシリコン基板81である。
【0077】
KOHを洗い流すとLEDとして働く3つの層、n型GaN結晶層85、InGaN/GaNの量子井戸層86、p型GaN結晶層87が残る。量子井戸層75から発する光はシリコン基板で遮蔽されないので、有効に光を取り出せる。
【0078】
実施例5を図9で説明する。図9はランダムな凹みを作製したサファイア基板91の上に図8に示したLEDの基本構造を作製した断面の模式図である。サファイア基板91をサファイアの粉の水溶液に浸し、引き上げると、図示しないサファイア粉が付着する。当該基板の表面を塩素系ガスを用いてプラズマエッチング装置でエッチグすると、凹み43がランダムに形成される。
【0079】
これを洗浄して、表面にLEDの基本構造をMOCVD装置で作製した。MOCVDのキャリアーガスは水素である。MOCVD原料ガスはアンモニア(NH)とトリメチルガリューム(TMG)である。
【0080】
500℃で成長させるとアモルファスのGaN膜が成長する。これを1000℃に昇温して凹みのファセット面にアラインした種結晶層を成長させ、清浄なファセット面を出した。
【0081】
それを種結晶として、n型GaN結晶層85を成長させ、次にInGaN/GaNの量子井戸層86を3層成長させ、次にp型GaN結晶層87を成長させ、標準的なLEDの基本構造を得た。
【0082】
当該のランダムな凹み43を設けない、平坦なサファイア基板を用いた場合のLEDに比べて、約15%の明るさの改善があった。
【0083】
凹みの形成に用いたフ゜ラス゛マエッチングのマスクの役目をする粉は支障が無ければ残しておいても良い。サファイアは基板と同じ材料なので、残しても良い材料である。
【0084】
また、サファイアのほかにエッチングガスと対応してエッチングの選択比が得られるなら、マスクは他の材料であっても良い。例えば、粉はアルミニュームやニッケルの粉またはそれらで被覆した粉であっても良い。この場合、粉は除去する必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明はGaN結晶層を成長させる基板を提供する。種結晶をランダムな配置と形、密度を基板に付着させる粉で与える本発明は、GaN結晶層の結晶成長を安定に制御できる。当該粉が成長してできる種結晶の表面濃度はこれを分散させる水溶液の粉の濃度制御に依存する。
【0086】
種結晶の密度に対応して結晶のグレイン領域(種結晶が大きく成長したのをグレインと呼ぶ)の密度を一定に制御できることは、製造管理と製造原価の管理に有効である。当該粉をマスクにプラズマエッチングの方法で凹みを形成した基板は結晶層と基板界面での光散乱を効果的に起こさせる。
【0087】
2インチ、4インチ、6インチと基板が大型化した場合でも粉の水溶液の粉密度を制御することで、基板表面の種結晶密度の制御が可能である。特別な開発なしでも大口径化への対応が可能であるのは、当該産業の発展を速やかにする。
【符号の説明】
【0088】
11 サファイア基板
12 アモルファスGaN
22 GaN結晶島
32、52 シリコン結晶の粉
33 GaN結晶島
41 サファイア基板
42 粉
43 粉をマスクにプラズマエッチされたランダムな凹み
44 膜
52 シリコン結晶の粉
53 表面の平坦なシリコン結晶の粉
61 結晶の粉を付着させたシリコン基板
62,63,72,73 シリコン結晶粉
74 シリコン窒化膜
81 除去されたシリコン基板
84 シリコンカーバイド膜
85 n型GaN
86 InGaN/GaNの量子井戸層
87 p型GaN
91 ランダムな凹みをもつサファイア基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶の粉を付着させたことを特徴とする基板。
【請求項2】
前記結晶の粉がシリコン、GaN、シリコンカーバイド(SiC)、人工ダイヤモンド(C)、窒化アルミニューム(AlN)、サファイアのいずれか一つ、またはこれらの少なくとも一つを含む結晶の粉であることを特徴とする請求項1記載の基板。
【請求項3】
前記結晶の粉が、大きさ1000nm以下の粉を含むことを特徴とする請求項1,2記載の基板。
【請求項4】
前記基板がシリコン、サファイアを含む半導体基板であることを特徴とする請求項1〜3記載の基板。
【請求項5】
前記基板の上に、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜を含む絶縁膜を付着させてあることを特徴とする請求項1〜4記載の基板。
【請求項6】
前記基板がSiCや窒化アルミニューム(AlN)、ジルコニュームボロンオキサイド(ZrBO)、酸化アルミニューム(Al2O3)などのセラミクスの膜を成長させたシリコン基板あることを特徴とする請求項1〜5記載の基板。
【請求項7】
前記結晶の粉が溶液に分散してあり、前記基板を当該溶液に接触させて、当該粉を当該基板に転写付着させたことを特徴とする請求項1〜6記載の基板。
【請求項8】
前記溶液が水溶液であることを特徴とする請求項1〜7記載の基板。
【請求項9】
サファイア基板に粉を付着させ、当該粉をマスクに当該サファイア基板をエッチングし、当該基板にランダムな凹みを作製したことを特徴とするサフファイア基板。
【請求項10】
予めシリコン酸化膜やシリコン窒化膜を含む絶縁膜を成長させてあるサファイア基板に粉を付着させ、当該粉をマスクに当該絶縁膜を、または当該絶縁膜と当該サファイア基板をエッチングし、当該基板にランダムな凹みを作製したことを特徴とするサフファイア基板。
【請求項11】
前記粉がレジスト痕を含む有機物や、または石英の粉を含む絶縁物の粉、またはシリコンやGaN、AlNの結晶、それらの混晶AlGaN、人工ダイヤモンド、シリコンカーバイド、サファイアを含む結晶の粉、またはアルミニュームやニッケルを含む金属、または金属で覆われた粉であることを特徴とする請求項9、10記載のサファイア基板。
【請求項12】
前記粉を除去してあることを特徴とする請求項9〜11記載のサファイア基板。
【請求項13】
前記ランダムな凹みは1000nm以下の幅の凹みを含むことを特徴とする請求項9〜12記載のサファイア基板。
【請求項14】
前記基板に作製したLED。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−240866(P2012−240866A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110417(P2011−110417)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(305054854)株式会社フィルテック (45)
【Fターム(参考)】