基板の周縁部の処理方法および装置
【課題】表面荒れや欠陥、または汚染源となる不要な付着材などの発生した基板の周縁部を効率良くかつ効果的に処理すること。
【解決手段】基板の周縁部における基板面の処理を行う基板の周縁部の処理方法であって、前記基板の周縁部の表面状態をモニタする表面状態モニタ工程と、前記基板面の処理を実行するための条件であって前記基板面の処理の必要性の有無を含む基板面処理条件を、前記表面状態のモニタ結果に基づいて決定する処理条件決定工程と、前記基板面処理条件に基づいて、前記基板面の処理の必要性がある場合に前記基板の周縁部に対して前記基板面の処理を実行する基板面処理工程と、を含む。
【解決手段】基板の周縁部における基板面の処理を行う基板の周縁部の処理方法であって、前記基板の周縁部の表面状態をモニタする表面状態モニタ工程と、前記基板面の処理を実行するための条件であって前記基板面の処理の必要性の有無を含む基板面処理条件を、前記表面状態のモニタ結果に基づいて決定する処理条件決定工程と、前記基板面処理条件に基づいて、前記基板面の処理の必要性がある場合に前記基板の周縁部に対して前記基板面の処理を実行する基板面処理工程と、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の周縁部の処理方法および装置に関するものであり、特に、半導体ウェハなどの基板の周縁部に発生する表面荒れや欠陥、または後工程において汚染源となる可能性を有する不要な付着材を効率良く基板から除去するための基板の周縁部の処理方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の微細化、半導体装置の高密度化に伴い、半導体装置の製造工程におけるパーティクルの管理は益々重要になりつつある。パーティクルを管理する上での大きな問題の1つとして、半導体装置の製造工程中に半導体ウェハ(基板)の周縁部におけるベベル部及びエッジ部に生じる表面荒れに起因する発塵がある。ここで、ベベル部とは、半導体ウェハの端縁角部において曲率を有する部分を意味し、エッジ部とは、ベベル部からウェハの内周側に向かった数mm程度の表面が平坦な部分を意味する。
【0003】
例えば、トレンチキャパシタのトレンチ(ディープトレンチ)をSiウェハの表面に形成するRIE(Reactive Ion Etching)工程においては、エッチング中に生じる副生成物がSiウェハの周縁部(ベベル部及びエッジ部)に付着する。そして、これがエッチングのマスクとして作用するため、Siウェハの周縁部に針状突起が形成されることがある。特に、マスクの開口径がサブミクロンオーダーであり、アスペクト比が数十と非常に高いディープトレンチを精度良く形成しようとした場合には、そのプロセス条件により上述した針状突起が周縁部に必然的に発生する。
【0004】
針状突起の高さは位置によりばらつきがあるが、最大で10μm近くにもなり、Siウェハの搬送時あるいはプロセス時に破損してパーティクルが発生する原因となる。このようなパーティクルは歩留りの低下につながるため、周縁部に形成された針状突起を除去する必要がある。
【0005】
また、半導体装置の製造工程中においては、半導体ウェハの周縁部に付着した材料膜が汚染源となる。すなわち、周縁部に付着した材料膜が剥がれてSiウェハのデバイス面に乗り、露光不良や加工不良を引き起こす。このため、これらの不要な材料膜を半導体ウェハから除去する必要がある。そこで、このような針状突起や材料膜を除去するために、ウエットエッチング(Wet Etching)法を始め、CDE(Chemical Dry Etching)法、研磨テープやスラリによる研磨法、最近では、マイクロトーチを利用した方法など様々な手法が使用されている。特に、研磨法は、半導体ウェハの周縁部に発生する表面荒れや、周縁部に付着し汚染源となる膜を、短時間に除去することができ、かつ処理領域の制御性が高いのが特徴である。
【0006】
研磨法を用いた技術としては、例えば研磨テープと、基板の所定の箇所に前記研磨テープを押圧する研磨ヘッドとを備え、前記研磨テープと前記基板との摺動により前記基板の研磨を行うことにより、基板の周縁部に発生する表面荒れや欠陥、または後工程において汚染源となる可能性を有する不要な膜を除去するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
ところで、研磨において問題となるのがベベル部の形状である。すなわち、半導体ウェハの周縁部を研磨する際、周縁部の形状によって研磨面とテープとの当たり方が大きく変化するため、当たり方にばらつきが生じる。そこで、実際の製造工程においてはこれらのばらつきなどを考慮し、オーバー研磨時間を長くして削り残しのないようにしている。ここで、オーバー研磨時間は、当たり方にばらつき等がない場合の本来の研磨時間から延長された時間である。
【0008】
一方、半導体装置製造時の各工程において、半導体ウェハのエッジ部からベベル部にかけての処理状態については、あまり制御されていないのが現状である。また、元の半導体ウェハの形状もばらつきが大きいため、実際のウェハエッジ部からベベル部にかけての状態は非常に不安定である。このため、通常、ウェハエッジ部からベベル部にかけての研磨処理プロセスにおいては、非常に長いオーバー処理時間を設定しなければならず、処理効率が良くない、という問題がある。
【0009】
【特許文献1】特開2003−234314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、表面荒れや欠陥、または汚染源となる不要な付着材などの発生した基板の周縁部を効率良くかつ効果的に処理することができる基板の周縁部の処理方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本願発明の一態様によれば、基板の周縁部における基板面の処理を行う基板の周縁部の処理方法であって、前記基板の周縁部の表面状態をモニタする表面状態モニタ工程と、前記基板面の処理を実行するための条件であって前記基板面の処理の必要性の有無を含む基板面処理条件を、前記表面状態のモニタ結果に基づいて決定する処理条件決定工程と、前記基板面処理条件に基づいて、前記基板面の処理の必要性がある場合に前記基板の周縁部に対して前記基板面の処理を実行する基板面処理工程と、を含むことを特徴とする基板の周縁部の処理方法が提供される。
【0012】
また、本願発明の一態様によれば、基板の周縁部における基板面の処理を行う基板の周縁部の処理装置であって、前記基板の周縁部の表面状態に関する前記表面状態情報に基づいて前記基板面の処理を実行するための条件であって前記基板面の処理の必要性の有無を含む基板面処理条件を決定する際に参照される決定基準情報を記憶する記憶部と、前記表面状態情報と、前記決定基準情報とを用いて前記基板面処理条件を決定する処理条件決定部と、前記基板面処理条件に基づいて、前記基板面の処理の必要性がある場合に前記基板の周縁部に対して前記基板面の処理を実行する基板面処理部と、を備えることを特徴とする基板の周縁部の処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、基板の周縁部に発生する表面荒れや欠陥、または汚染源となる不要な付着材などの発生した基板の周縁部を効率良くかつ効果的に処理することができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、本発明の実施の形態にかかる基板の周縁部の処理方法および装置を詳細に説明する。なお、本発明は以下の記述により限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0015】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる基板の周縁部の処理システム10の構成を示すブロック図である。実施の形態1にかかる基板の周縁部の処理システム10は、基板の周縁部の処理装置100(以下、処理装置100と呼ぶ)と基板状態検出装置200とを備える。処理装置100は、基板である半導体ウェハ(基板)の周縁部の基板面を処理するものであり、記憶部101と、処理条件決定部102と、基板面処理部103と、を備える。
【0016】
基板状態検出装置200は、処理対象となる半導体ウェハの周縁部の表面状態をモニタし、取得した表面状態に関する情報(表面状態情報)を処理装置100に出力する。半導体ウェハの周縁部とは、図2に示すような半導体ウェハ300(以下、ウェハ300と呼ぶ)の上面エッジ部301、上面ベベル部302、アペックス(端面)303、下面ベベル部304および下面エッジ部305を含む範囲である。図2は、基板の一例である半導体ウェハ300の周縁部を説明する図である。ここで、上面とはウェハ300においてデバイスが形成される側の面(デバイス面)である。下面とはウェハ300においてデバイスが形成される側と反対側の面(裏面)である。また、上面エッジ部301および下面エッジ部305は、アペックス(端面)303から数ミリ程度の領域である。
【0017】
第1の実施の形態の基板状態検出装置200においては、CCD(Charge Coupled Device)カメラを用いて、ウェハ300の周縁部の画像を取り込む。そして取り込んだ画像のデータを、付着材(膜)の付着位置(不要膜の残留位置)に関する情報(表面状態情報)として、処理装置100に出力する。
【0018】
記憶部101は、基板状態検出装置200から取得した表面状態情報を記憶する。また、記憶部101は、ウェハ300の周縁部の基板面に対する処理を実行するための条件である基板面処理条件を決定するための基準情報である決定基準情報を、例えばテーブル形式等により記憶する。
【0019】
処理条件決定部102は、基板状態検出装置200より出力された表面状態情報を記憶部101に記憶させる。また、処理条件決定部102は、表面状態情報と決定基準情報とに基づいて基板面処理条件を決定し、該基板面処理条件を基板面処理部103に出力する。この基板面処理条件には、基板面に対する処理の必要性の有無を含む。なお、記憶部101や処理条件決定部102は、図1に示される基板の周縁部の処理システム10において、処理装置100の外部の例えばホストコンピュータ等に設けられても良い。また逆に、基板状態検出装置200を処理装置100内に取り込んで、基板面処理部103とユニット化しても良い。
【0020】
基板面処理部103は、処理条件決定部102で決定した基板面処理条件に基づいてウェハ300の周縁部に対する基板面処理として例えば除去処理を実行する。第1の実施の形態においては、基板面処理部103として図3に示すような研磨装置400を用いる。図3は、ウェハ300の周縁部を研磨テープによって研磨可能な研磨装置400を説明する模式図である。
【0021】
研磨装置400においては、ウェハ300を吸着させたウェハステージ401が高速で回転し、研磨ヘッドを含むバックパットユニット402がウェハ300に研磨テープ403を押し付ける。また、ノズル404からウェハ300の上面に洗浄液405を供給する。そして、このバックパットユニット402がウェハ300に対してチルトすることで、ウェハ300の周縁部の各エリアを選択的に研磨する。
【0022】
つぎに、上述した基板の周縁部の処理システム10の動作について、図4に示すような半導体装置の製造工程においてウェハ300の周縁部の基板面に対する不要部の除去処理を行う場合を例に説明する。図4は、半導体装置の製造工程の一例を説明するためのフローチャートである。半導体装置の製造工程中において、ウェハ300には例えば図4に示すように、SiN(窒化シリコン)成膜(ステップS101)、a−Si(アモルファスシリコン)成膜(ステップS102)、裏面(下面)SiN剥離(ステップS103)、および、ウェハ300の周縁部の不要部除去(ステップS104)の処理がこの順で施される。
【0023】
図5は、ウェハ300におけるSiN膜の付着状態を説明する断面図である。ステップS102のa−Si成膜の工程後のウェハ300の周縁部においては、図5(a)に示すようにウェハ300の全面にSiN膜311が付着し、上面エッジ部301および上面ベベル部302のSiN膜311上にa−Si膜312が付着している。そして、ステップS103の裏面(下面)SiN剥離の工程において、アペックス(端面)303、下面ベベル部304および下面エッジ部305のSiN膜311を剥離する。ステップS103の裏面(下面)SiN剥離の工程後における好ましい状態は、図5(b)に示すようにアペックス(端面)303、下面ベベル部304および下面エッジ部305のSiN膜311が全て剥離されている状態である。
【0024】
しかしながら、下面エッジ部305近傍のSiN膜311の除去が剥離プロセスとエッジ形状のばらつきとに起因する剥離処理の不安定性によって、実際には必ずしも図5(b)に示すような状態とはならず、膜残りにばらつきが生じて図5(c)に示すようにアペックス(端面)303にSiN膜311が残存する状態、図5(d)に示すようにアペックス(端面)303および下面ベベル部304にSiN膜311が残存する状態が発生する。半導体装置の製造工程中においては、このように残存したSiN膜311が汚染源となるため、これらの膜をウェハ300から除去する必要がある。
【0025】
そこで、ウェハ300の周縁部の基板面の処理としてステップS104のウェハ300の周縁部の不要部除去処理を行う。以下、図6を参照して、ウェハ300の周縁部の不要部除去について説明する。図6は、ウェハ300の周縁部の不要部除去処理を説明するためのフローチャートである。まず、基板状態検出装置200では、ウェハ300の周縁部の状態をCCDカメラにより撮像して画像を取り込む。撮像は例えば、上方斜め方向、側面(端面)方向、下方斜め方向の3方向からウェハ300の周方向の全周にわたって行い、この3方向からの画像を取り込む。そして、基板状態検出装置200では、この3方向からの画像を画像処理により合成して合成画像を得る。この合成画像から、基板状態検出装置200は、除去すべきSiN膜311がウェハ300の周縁部のどの領域に残存しているかを検出してSiN膜311の残存位置データを生成し、これを表面状態情報として処理装置100に出力する。
【0026】
処理装置100は、基板状態検出装置200からSiN膜311の残存位置データを受け取ることで、表面状態情報を取得する(ステップS201)。処理装置100は、基板状態検出装置200から表面状態情報を取得すると、処理条件決定部102が該表面状態情報を記憶部101に記憶させる。また、処理条件決定部102は、この表面状態情報と、記憶部101に予め記憶している決定基準情報と、に基づいて基板面処理条件を決定し(ステップS202)、該基板面処理条件を基板面処理部103に出力する。
【0027】
ここで、決定基準情報は、例えば図7に示すようなテーブル形式で、記憶部101に予め記憶している。図7に示す決定基準情報においては、下面ベベル部304およびアペックス(端面)303におけるSiN膜311の残存状態と基板面処理条件が対応づけられている。
【0028】
処理条件決定部102は、表面状態情報(SiN膜311の残存位置データ)と、図7に示す決定基準情報とに基づいて基板面処理条件を決定する。例えば下面ベベル部304にSiN膜311が残存し、アペックス(端面)303にSiN膜311が残存していない場合には、図7に示す決定基準情報を参照して基板面処理条件を「基板面処理条件3」に決定し、基板面処理部103に出力する。「基板面処理条件3」の内容は、「基板面処理の必要性が要、基板面処理の対象領域は下面ベベル部」である。
【0029】
また、例えば下面ベベル部304にSiN膜311が残存せず、アペックス(端面)303にSiN膜311が残存している場合には、図7に示す決定基準情報を参照して基板面処理条件を「基板面処理条件2」に決定し、基板面処理部103に出力する。「基板面処理条件2」の内容は、「基板面処理の必要性が要、基板面処理の対象領域はアペックス(端面)」である。
【0030】
なお、さらに詳細に、例えば下面ベベル部304におけるSiN膜311の残存状態が予め決められた所定のレベル未満の場合には、「SiN膜311の基板面処理の必要性無し」と決定するような決定基準情報を設けても良い。
【0031】
基板面処理部103は、この基板面処理条件に基づいて、ウェハ300の周縁部に対して基板面処理として不要部の除去処理を実行する。すなわち、研磨装置400が、基板面処理条件に基づいてウェハ300の周縁部に対して研磨を行う(ステップS203)。
【0032】
以上の処理を行うことにより、本実施の形態にかかる処理装置100によるウェハ300の周縁部の基板面に対するSiN膜311の除去処理として、SiN膜311が残存しており除去の必要性のある領域のみを選択的に研磨することができる。SiN膜311は除去しにくい材料であるため、上述したようにウェハ300の周縁部においてSiN膜311が残存している領域のみを選択的に研磨することで、不要部であるSiN膜311の除去処理に要する処理時間を大幅に短縮することが可能となる。また、ウェハ300のノッチ部についても、表面状態情報によりノッチ部の位置を特定し、SiN膜311が残存している領域に研磨テープ403を傾けて研磨することで、SiN膜311を選択的に研磨することができ、無駄な研磨をなくすことが可能となる。
【0033】
上述したように、第1の実施の形態にかかる基板の周縁部の処理システム10においては、ウェハ300の周縁部の基板面に対する不要部の除去処理を行う前に、該周縁部の表面状態についての評価を行うことにより適切な基板面処理条件を決定し、この基板面処理条件に基づいて除去処理を行う。すなわち、表面状態情報(SiN膜311の残存位置データ)と、決定基準情報(SiN膜311の残存位置と基板面処理条件との対応づけ)と、に基づいて基板面処理条件を決定する。そして、基板面処理部103が、基板面処理条件に基づいてウェハ300の周縁部の不要なSiN膜311の除去処理を実行する。これにより、ウェハ300の周縁部の不要なSiN膜311の除去処理に要する処理時間を大幅に短縮することができ、ウェハ300における不要部を効率良く短時間で除去することができる。
【0034】
また、後の半導体装置の製造工程において有害なSiN膜311を選択的にかつ確実に除去することができるため、SiN膜311が剥がれてウェハ300のデバイス形成面に乗り、露光不良や加工不良を引き起こすなどの不具合の発生を効果的に防止することができる。これにより、各基板に適した安定したプロセスで、歩留まり良く、安価に半導体装置を製造することができる。
【0035】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、ウェハ300の周縁部の形状をモニタして、その情報を基に基板面処理条件を決定する場合について説明する。第2の実施の形態にかかる基板の周縁部の処理システムの基本構成は、第1の実施の形態の場合と同様である。すなわち、第2の実施の形態にかかる基板の周縁部の処理システム10は、図1に示すように処理装置100と基板状態検出装置200とを備える。また、処理装置100は記憶部101と、処理条件決定部102と、基板面処理部103と、を備える。なお、基板状態検出装置200および処理条件決定部102の機能が第1の実施の形態の場合と異なるため、以下では基板状態検出装置200および処理条件決定部102を中心に説明する。
【0036】
ウェハ300の周縁部の形状には、ウェハ間においてばらつきが存在する。これは、半導体装置の製造工程においては、ウェハ300のエッジ部からベベル部にかけての処理状態について、あまり制御されていないため、このような製造工程を経たウェハ300間で、周縁部の形状に差異が生じたことによる。また、製造工程前の元のウェハ300についても、ウェハ300の種類が異なれば、一般に形状のばらつきが大きい。このため、第1の実施の形態で示したようなウェハの不要部の除去方法の場合には、例えば200nmの膜厚のSiN膜311を除去する際、実際にはウェハ300のSiを30μmの深さで削り込む。具体的には、例えばウェハ300の周方向において、研磨姿勢角0度(基準位置):30秒、±30度:20秒、±60度:15秒の時間の研磨を行い、合計100秒程度の研磨が必要である。なお、研磨姿勢角については後述する。
【0037】
そこで、研磨時間の短縮を図るために、第2の実施の形態では、ウェハ300の周縁部の形状をモニタして、その情報を基に基板面処理条件を決定する。ウェハ300の周縁部の形状のモニタは、基板状態検出装置200において行う。
【0038】
図8は、ウェハ300の周縁部の形状のモニタ方法を説明するための図である。ウェハ300の周縁部の形状のモニタは、まず、図8に示すように例えばLED等の光源411により、ウェハ300の側方からウェハ300の周縁部に対して照射光Lを照射する。そして、ウェハ300に対して光源411とは反対側に設けた反射ミラー412とフォーカスレンズ413を介して照射光LをCCDカメラ414により撮像して画像を取り込む。画像の取得は、例えばウェハ300を該ウェハ300の中心軸を軸として回転させながらウェハ300の周方向の全周にわたって行う。
【0039】
つぎに、基板状態検出装置200は、この画像に対してソフトウェア的に輪郭処理を行い、例えば図9に示すようなウェハ300の周縁部の形状415を表すデータ(形状データ)を得る。図9は、輪郭処理を行って得られたウェハ300の周縁部の形状415を示す図である。そして、基板状態検出装置200は、形状データを表面状態情報として処理装置100に出力する。
【0040】
処理装置100は、基板状態検出装置200から形状データを受け取ることで、表面状態情報を取得する。処理装置100は、基板状態検出装置200から形状データ(表面状態情報)を取得すると、処理条件決定部102が該形状データ(表面状態情報)を記憶部101に記憶させる。
【0041】
また、処理条件決定部102は、この形状データを基に、ウェハ300のアペックス(端面)303から上面ベベル部302および下面ベベル部304の接線方向における研磨長さ(研磨テープとSiN膜311との接触長さ)を研磨姿勢角毎に算出する。図10は、ウェハ300の下面ベベル部304の接線方向における研磨長さを説明するための図である。ここで研磨姿勢角は、図10に示すようにウェハ300の面内方向(X方向)と垂直な方向(Z方向)を0度(基準角度)として、研磨面がZ方向となす角度である。なお、アペックス(端面)303の面が0度(基準角度)に該当する。また、研磨長さは、ウェハ300の周方向において例えば45度おきの8ポイントにおいて個々の研磨長さを算出し、その平均値を以下の処理において用いる。
【0042】
例えば図10に示す例では、研磨姿勢角が0度(基準角度)における研磨長さ:100μm、20度における研磨長さ:200μm、40度における研磨長さ:100μm、60度における研磨長さ:300μm、70度における研磨長さ:100μm、である。なお、ここでは、研磨姿勢角として0度(基準角度)、20度、40度、60度、70度を選択した場合について説明するが、研磨姿勢角は任意に設定可能である。
【0043】
研磨テープによる研磨の際、研磨長さにより研磨処理時の研磨抵抗が異なり、研磨長さが長いほど研磨抵抗が高くなり、研磨に時間を要する。そこで、この研磨長さによる研磨抵抗の変化の影響を考慮するために、処理条件決定部102は、研磨時間の算出式である下記(1)式により各研磨姿勢角における研磨時間を算出する。
研磨時間(sec)=研磨長さ×係数 ・・・(1)
ここで、係数は、例えば研磨テープの材質等の諸条件や実験値の統計等により研磨姿勢角毎に異なる数値が与えられる。なお、上記(1)式および研磨姿勢角、係数は、決定基準情報として例えば図11に示すテーブル形式で記憶部101に予め記憶している。
【0044】
例えば図10に示す例の場合に、上記(1)式を用いて各研磨姿勢角毎に算出した研磨時間を決定基準情報とともに図11に示す。例えば、研磨姿勢角が0度(基準角度)のときは、研磨長さが100μmであり、係数が0.2であるので、これらの数値と上記(1)式とにより、研磨時間は20(sec)となる。また、研磨姿勢角が±20度のときは、研磨長さが200μmであり、係数が0.04であるので、これらの数値と上記(1)式とにより、研磨時間は8(sec)となる。
【0045】
処理条件決定部102は、上記のように表面状態情報と記憶部101に予め記憶している決定基準情報(上記(1)式および係数)とに基づいて基板面処理条件(研磨時間)を決定して、該基板面処理条件を基板面処理部103に出力する。
【0046】
処理条件決定部102は、例えば算出した研磨時間が予め決められた所定のレベル未満の場合には、「基板面処理の必要性無し」と決定する。そして、処理条件決定部102は、「基板面処理の必要性無し」の旨の情報を基板面処理条件として基板面処理部103に出力する。
【0047】
また、処理条件決定部102は、例えば算出した研磨時間が予め決められた所定のレベル以上の場合には、「基板面処理の必要性有り」と決定する。そして、処理条件決定部102は、「基板面処理の必要性有り」の旨の情報および「研磨姿勢角、研磨時間」に関する情報を基板面処理条件として基板面処理部103に出力する。
【0048】
基板面処理部103は、この基板面処理条件に基づいてウェハ300の周縁部の基板面に対する処理を実行する。すなわち、研磨装置400が、基板面処理条件に基づいてウェハ300の周縁部に対して研磨を行う。
【0049】
以上の処理を行うことにより、本実施の形態にかかる処理装置100によるウェハ300の周縁部の基板面に対する研磨処理を、ウェハ300の形状に応じて研磨時間を考慮しながら選択的に実施することができる。SiN膜311は除去しにくい材料であるため、上述したようにウェハ300の周縁部においてウェハ300の形状に応じて研磨姿勢角毎に研磨時間を変えながら選択的に研磨することで、それぞれのウェハに適した研磨時間で周縁部の基板面に対する研磨処理を行うことができ、研磨処理に要する処理時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0050】
上述したように、第2の実施の形態にかかる基板の周縁部の処理システム10においては、ウェハ300の周縁部の基板面に対する処理を行う前に、該周縁部の表面状態についてモニタを行うことにより適切な基板面処理条件を決定し、この基板面処理条件に基づいて基板面に対する処理を行う。すなわち、表面状態情報(ウェハ300の形状データ)と、決定基準情報(研磨時間算出式および係数)と、に基づいて処理条件決定部102がそれぞれのウェハ300に適した基板面処理条件(研磨時間)を決定する。そして、基板面処理部103は、基板面処理条件に基づいてウェハ300の周縁部の不要なSiN膜311の除去処理を実行する。これにより、ウェハ300の周縁部の不要なSiN膜311の除去処理に要する処理時間を大幅に短縮することができ、ウェハ300における不要部を効率良く短時間で除去することができる。
【0051】
また、後の半導体装置の製造工程において有害な不要なSiN膜311を選択的にかつ確実に除去することができるため、不要なSiN膜311が剥がれてウェハ300のデバイス形成面に乗り、露光不良や加工不良を引き起こすなどの不具合の発生を効果的に防止することができる。これにより、各基板に適した安定したプロセスで、歩留まり良く、安価に半導体装置を製造することができる。
【0052】
また、上記の第2の実施の形態においては、ウェハ300の1枚毎に基板面処理条件を求める場合について説明しているが、例えばウェハ300の製造ロット毎に基板面処理条件を1回求めて、通常は全て同じ種類のウェハ300からなる同一ロット内では、全てのウェハ300に対してこの基板面処理条件を用いて基板面処理を実行しても良い。この場合には、半導体装置の製造工程で生じる程度の周縁部の形状のばらつきは吸収可能な基板面処理条件とすることで、周縁部の形状が大きくなるウェハ300の種類に応じた各ロット毎の基板面処理条件を設定して、より効率的にウェハ300の基板面処理を行うことができる。
【0053】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態では、レーザ散乱光による半導体ウェハの周縁部の欠陥検出を通じて、除去すべき欠陥が半導体ウェハの周縁部のどの領域にあるかを検出し、その情報を基に基板面処理条件を決定する場合について説明する。
【0054】
第3の実施の形態にかかる基板の周縁部の処理システムの基本構成は、第1の実施の形態の場合と同様である。すなわち、第3の実施の形態にかかる基板の周縁部の処理システム10は、図1に示すように処理装置100と基板状態検出装置200とを備える。また、処理装置100は記憶部101と、処理条件決定部102と、基板面処理部103と、を備える。なお、基板状態検出装置200および処理条件決定部102の機能が第1の実施の形態の場合と異なるため、以下では基板状態検出装置200および処理条件決定部102を中心に説明する。
【0055】
半導体装置の製造工程中においては、熱処理工程などウェハにストレスのかかる工程が存在する。ここで、熱処理の前にウェハの周縁部に欠陥が存在すると、この欠陥を起点としてウェハに割れが生じるおそれがある。そこで、熱処理工程等のウェハにストレスのかかる工程における、ウェハの周縁部の欠陥に起因したウェハの割れを防止するために、第3の実施の形態ではウェハの周縁部の欠陥を検出して、その情報を基に基板面処理条件を決定する。ウェハの周縁部の欠陥検出は、基板状態検出装置200において行う。
【0056】
図12は、ウェハ300の周縁部の欠陥検出方法を説明する模式図である。ウェハ300の周縁部の欠陥検出は、まず、図12に示すように例えばウェハ300のアペックス(端面)303と対向するようにウェハ300と同じ水平面内に配置されたレーザ装置421により、ウェハ300の側面方向からウェハ300の周縁部に対してレーザL1を照射する。そして、レーザL1がウェハ300の周縁部における上面ベベル部302、アペックス(端面)303、下面ベベル部304で反射した回折散乱レーザ光L2を、楕円鏡422を用いてディテクタ423に集光する。
【0057】
また、ウェハ300の上面ベベル部302の鉛直上方に配置された図示しないレーザ装置により、上面からウェハ300の周縁部に対してレーザを照射する。そして、レーザがウェハ300の周縁部における上面ベベル部302で反射した回折散乱レーザ光を、楕円鏡422を用いてディテクタ423に集光する。
【0058】
さらに、ウェハ300の下面ベベル部304の鉛直下方に配置された図示しないレーザ装置により、下面からウェハ300の周縁部に対してレーザを照射する。そして、レーザがウェハ300の周縁部における下面ベベル部304で反射した回折散乱レーザ光を、楕円鏡422を用いてディテクタ423に集光する。これにより、側面方向、上面方向、下面方向の回折散乱レーザ光L2の強度データを得る。なお、側面方向、上面方向、下面方向この回折散乱レーザ光L2の強度データの測定は、例えばウェハ300を回転させながらウェハ300全周の周方向位置にわたって行う。
【0059】
つぎに、基板状態検出装置200は、側面方向、上面方向、下面方向の回折散乱レーザ光L2の強度データを分析し、上面ベベル部302、アペックス(端面)303、下面ベベル部304の各領域の回折散乱レーザ光L2の分析強度データを生成する。例えば、上面方向および下面方向については、それぞれ上面ベベル部302、下面ベベル部304で反射した回折散乱レーザ光L2のみを集光することで、上面方向、下面方向の回折散乱レーザ光L2の強度データに検出される強度ピークをそのまま上面ベベル部302、下面ベベル部304の欠陥と関連する回折散乱レーザ光L2の強度データとする。
【0060】
一方、側面方向に関しては、アペックス(端面)303のみならず上面ベベル部302、下面ベベル部304で反射した回折散乱レーザ光L2も集光しているので、ある周方向位置(ウェハ300の回転角)において、側面方向の回折散乱レーザ光L2の強度データには検出される強度ピークが、上面方向や下面方向の回折散乱レーザ光L2の強度データには検出されない場合には、アペックス(端面)303に由来する強度ピークであるとしてその回転角の回折散乱レーザ光L2の強度データをアペックス(端面)303の欠陥と関連する回折散乱レーザ光L2の強度データとする。このように、上面方向と側面方向、側面方向と下面方向、において回折散乱レーザ光L2の強度データを分析することにより、上面ベベル部302、アペックス(端面)303、下面ベベル部304の領域毎の回折散乱レーザ光L2の分析強度データを生成する。
【0061】
ここで、回折散乱レーザ光L2の強度(分析強度データ)とウェハ300の表面の欠陥の程度(大きさや数)とには相関があるため、回折散乱レーザ光L2の強度(分析強度データ)からウェハ300の周縁部の表面の欠陥に関する情報を得ることができる。具体的に、基板状態検出装置200は、回折散乱レーザ光L2の分析強度データのソフト的な処理により、例えば図13(a)、(b)、(c)に示すようにグラフ化した、欠陥位置情報を生成する。図13は、周方向位置(回転角)と回折散乱レーザ光L2の分析強度との関係を示す特性図である。回折散乱レーザ光L2の分析強度の大きい位置が欠陥位置に該当するため、回折散乱レーザ光L2の分析強度ピークの位置を欠陥位置として検出できる。
【0062】
つぎに、基板状態検出装置200は、上記のようにして生成した上面ベベル部302の領域、アペックス(端面)303の領域、下面ベベル部304の領域毎の欠陥位置情報を表面状態情報として処理装置100に出力する。
【0063】
処理装置100は、基板状態検出装置200から欠陥位置情報を受け取ることで、表面状態情報を取得する。処理装置100は、基板状態検出装置200から欠陥位置情報(表面状態情報)を取得すると、処理条件決定部102が該欠陥位置情報(表面状態情報)を記憶部101に記憶させる。
【0064】
また、図13(a)、(b)、(c)に示すようにグラフ化した欠陥位置情報に対し、所定のスレッショルド値を追加する。スレッショルド値は、除去処理が必要な欠陥であるかどうかを決定するための閾値であり、決定基準情報として記憶部101に予め記憶している。
【0065】
処理条件決定部102は、図13(a)、(b)、(c)に示すようなグラフに基づいて、基板面処理条件(研磨対象領域)を決定する。処理条件決定部102は、上面ベベル部302の領域、アペックス(端面)303の領域、下面ベベル部304の領域の各領域について、例えば回折散乱レーザ光L2の強度がウェハ300の全周にわたってスレッショルド値に満たない場合には、除去処理が必要な欠陥が無く、「基板面処理の必要性無し」と決定する。そして、処理条件決定部102は、「基板面処理の必要性無し」の旨の情報を基板面処理条件として基板面処理部103に出力する。
【0066】
例えば図13(a)に示す上面ベベル部302の場合には、回折散乱レーザ光L2の強度がウェハ300の全周(全回転角)にわたってスレッショルド値に達していない。この場合には、処理条件決定部102は、「上面ベベル部302における基板面処理の必要性無し」と決定する。そして、処理条件決定部102は、「上面ベベル部302における基板面処理の必要性無し」との旨の情報を基板面処理条件として基板面処理部103に出力する。
【0067】
同様に例えば図13(b)に示すアペックス(端面)303の場合には、回折散乱レーザ光L2の強度がウェハ300の全周(全回転角)にわたってスレッショルド値に達していない。この場合には、処理条件決定部102は、「アペックス(端面)303における基板面処理の必要性無し」と決定する。そして、処理条件決定部102は、「アペックス(端面)303における基板面処理の必要性無し」との旨の情報を基板面処理条件として基板面処理部103に出力する。
【0068】
また、処理条件決定部102は、上面ベベル部302の領域、アペックス(端面)303の領域、下面ベベル部304の領域の各領域について、例えば回折散乱レーザ光L2の強度が1つでもスレッショルド値に達している場合には、除去処理が必要な欠陥が存在するため、「基板面処理の必要性有り」と決定する。そして、処理条件決定部102は、「基板面処理の必要性有り」との旨の情報を基板面処理条件として基板面処理部103に出力する。
【0069】
例えば図13(c)に示す下面ベベル部304の場合には、回折散乱レーザ光L2の強度ピークA〜Hがスレッショルド値に達している。この場合には、処理条件決定部102は、「下面ベベル部304における基板面処理の必要性有り」と決定する。そして、処理条件決定部102は、「下面ベベル部304における基板面処理の必要性有り」の旨の情報を基板面処理条件として基板面処理部103に出力する。
【0070】
基板面処理部103は、これらの基板面処理条件に基づいてウェハ300の周縁部における基板面処理を実行する。すなわち、研磨装置400が、基板面処理条件に基づいてウェハ300の周縁部に対して研磨を行う。ウェハ300の周縁部に対する研磨処理は、ウェハ300の全回転角について行っても良く、欠陥が存在する全回転角についてのみ行っても良い。
【0071】
なお、上記においては、理解の容易のため、欠陥位置情報としてグラフ化した場合について説明したが、回折散乱レーザ光L2の分析強度データをそのまま欠陥位置情報として使用し、これとスレッショルド値とを比較することで、除去処理が必要な欠陥であるかどうかを決定することもできる。
【0072】
以上の処理を行うことにより、本実施の形態にかかる処理装置100によるウェハ300の周縁部の基板面に対する研磨処理を、ウェハ300の周縁部の欠陥の存在状況に応じて選択的に実施することができる。そしてウェハ300の周縁部においてウェハ300の欠陥の存在状況に応じて、上面ベベル部302、アペックス(端面)303および下面ベベル部304の領域を領域毎に選択的に研磨することで、それぞれのウェハにおいて研磨が必要とされる領域のみ研磨処理を行うことができ、研磨処理に要する処理時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0073】
上述したように、第3の実施の形態にかかる基板の周縁部の処理システム10においては、ウェハ300の周縁部の基板面に対する処理を行う前に、該周縁部の表面状態についての評価を行うことにより適切な基板面処理条件を決定し、この基板面処理条件に基づいて基板面に対する処理を行う。すなわち、表面状態情報(欠陥位置情報または回折散乱レーザ光L2の分析強度データ)と、決定基準情報(スレッショルド値)と、に基づいて基板面処理条件を決定する。そして、基板面処理部103は、基板面処理条件に基づいてウェハ300の周縁部の欠陥の除去処理を実行する。これにより、ウェハ300の周縁部の欠陥の除去処理に要する処理時間を大幅に短縮することができ、ウェハ300の周縁部における欠陥を効率良く短時間で除去することができる。
【0074】
また、後の半導体装置の製造工程において有害な欠陥を選択的にかつ確実に除去することができるため、熱処理工程等の半導体ウェハにストレスのかかる工程における、半導体ウェハの周縁部の欠陥に起因した半導体ウェハの割れを効果的に防止することができる。これにより、各基板に適した安定したプロセスで、歩留まり良く、安価に半導体装置を製造することができる。
【0075】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態では、レーザ散乱光による半導体ウェハの周縁部の表面粗さのモニタを通じて、基板面の処理が必要な表面状態の部分がどの領域にあるかを検出し、その情報を基に基板面処理条件を決定する場合について説明する。
【0076】
第4の実施の形態にかかる基板の周縁部の処理システムの基本構成は、第1の実施の形態の場合と同様である。すなわち、第4の実施の形態にかかる基板の周縁部の処理システム10は、図1に示すように処理装置100と基板状態検出装置200とを備える。また、処理装置100は記憶部101と、処理条件決定部102と、基板面処理部103と、を備える。なお、基板状態検出装置200および処理条件決定部102の機能が第1の実施の形態の場合と異なるため、以下では基板状態検出装置200および処理条件決定部102を中心に説明する。
【0077】
半導体装置の製造工程中においては、液浸露光工程を実施する場合がある。液浸露光では、ウェハ300の周縁部側から露光レンズがスキャンされる。ここで、ウェハ300の周縁部に表面荒れがある場合、すなわち表面粗さが荒い部分がある場合には、この表面荒れのある部分に泡が発生する。そして、液浸露光時にこの泡が露光レンズに付着し、その状態でスキャンされることより泡がデバイス面に引きずられて露光不良を起こす場合がある。このため、液浸露光においては、使用する液の性質や露光レンズの移動スピードなどを調整しているが、あまり効果的な改善策とはなっていない。
【0078】
そこで、ウェハ300の周縁部の表面荒れに起因した液浸露光時の露光不良を防止するために、第4の実施の形態では半導体ウェハの周縁部の表面粗さを検出して、その情報を基に基板面処理条件を決定する。半導体ウェハの周縁部の表面粗さの検出は、基板状態検出装置200において行う。
【0079】
ウェハ300の表面粗さの検出は、図12に示すようなレーザ装置421を用いることにより、第3の実施の形態と同様にして表面状態情報として使用する上面ベベル部302、アペックス(端面)303、下面ベベル部304の領域毎の回折散乱レーザ光L2の分析強度データを生成する。
【0080】
回折散乱レーザ光L2の分析強度データにおける強度(分析強度)とウェハ300の表面の粗さとには相関があるため、回折散乱レーザ光L2の分析強度からウェハ300の周縁部の表面の粗さの量を見積もることができる。そこで、回折散乱レーザ光L2の分析強度を表面粗さ指標として用いて、基板状態検出装置200は、回折散乱レーザ光L2の分析強度データのソフト的な処理により、例えば図14(a)、(b)、(c)に示すようにグラフ化した、表面粗さ指標情報を生成する。図14は、周方向位置(回転角)と回折散乱レーザ光L2の分析強度との関係を示す特性図である。図14において、回折散乱レーザ光L2の分析強度の大きい位置が表面粗さの大きい位置に該当する。
【0081】
つぎに、基板状態検出装置200は、上記のようにして生成した上面ベベル部302、アペックス(端面)303、下面ベベル部304の領域毎の表面粗さ指標情報を表面状態情報として処理装置100に出力する。
【0082】
処理装置100は、基板状態検出装置200から表面粗さ指標情報を受け取ることで、表面状態情報を取得する。処理装置100は、基板状態検出装置200から表面粗さ指標情報(表面状態情報)を取得すると、処理条件決定部102が該表面粗さ指標情報(表面状態情報)を記憶部101に記憶させる。
【0083】
また、図14(a)、(b)、(c)に示すようにグラフ化した表面粗さ指標情報に対し、所定のスレッショルド値を追加する。スレッショルド値は、基板面の処理が必要な表面粗さであるかどうかを決定するための閾値であり、決定基準情報として記憶部101に予め記憶している。
【0084】
処理条件決定部102は、図14(a)、(b)、(c)に示すようなグラフに基づいて、上面ベベル部302の領域、アペックス(端面)303の領域、下面ベベル部304の領域の各領域について、基板面処理条件(研磨対象領域)を決定する。処理条件決定部102は、例えば図14(c)に示すように回折散乱レーザ光L2の分析強度がウェハ300の全周にわたって所定のスレッショルド値未満の場合には、有害な表面荒れが無く、「基板面処理の必要性無し」と決定する。そして、処理条件決定部102は、「基板面処理の必要性無し」の旨の情報を基板面処理条件として基板面処理部103に出力する。
【0085】
また、処理条件決定部102は、例えば図14(a)、(b)に示すように所定のスレッショルド値以上の回折散乱レーザ光L2の分析強度が存在する場合には、有害な表面荒れが有り、「基板面処理の必要性有り」と決定する。そして、処理条件決定部102は、つぎに、処理時間の決定を行う。
【0086】
研磨テープによる研磨の際、ウェハ300の周縁部の表面粗さの量の大きさによって必要な研磨時間が異なり、表面粗さの量が大きいほど研磨に時間を要する。また、回折散乱レーザ光L2の分析強度(表面粗さ指標)と表面粗さとの間には、図15に示すような関数の相関関係がある。図15は、回折散乱レーザ光L2の分析強度(表面粗さ指標)と表面粗さとの相関関係を説明する特性図である。そこで、表面粗さの研磨時間への影響を考慮するために、処理条件決定部102は、まず、図14(a)、(b)、(c)に示すグラフと図15に示す関数に基づいて、表面粗さの量を算出する。なお、図15に示す関数は、決定基準情報として記憶部101に予め記憶している。
【0087】
ここで、表面粗さの量は、図14(a)、(b)、(c)に示すグラフにおいて、有効と認められる最大(MAX)の回折散乱レーザ光L2の分析強度(表面粗さ指標)を用いて求める。例えば上面ベベル部302に関しては、図14(a)において回折散乱レーザ光L2の分析強度ピークJが、有効と認められる最大(MAX)の回折散乱レーザ光L2の分析強度である。そして、回折散乱レーザ光L2の分析強度:1000の場合の表面粗さの量としては、図15に示す関数から2.5が得られる。
【0088】
つぎに、処理条件決定部102は、得られた表面粗さの量と、研磨時間の算出式である下記(2)式により研磨時間を算出する。
研磨時間(sec)=表面粗さ×20 ・・・(2)
ここで、係数20は、例えば研磨テープの材質等の諸条件や実験値の統計等により与えられる。なお、上記(2)式は、決定基準情報として記憶部101に予め記憶している。
【0089】
上面ベベル部302に関しては、表面粗さの量が2.5であるので、上記(2)式より、研磨時間は50(sec)となる。このように、処理条件決定部102は、「基板面処理の必要性有り」と決定した場合には、表面状態情報と記憶部101に予め記憶している決定基準情報(図15の関数および上記(2)式)とに基づいて基板面処理条件(研磨時間)を決定して、該基板面処理条件を基板面処理部103に出力する。
【0090】
基板面処理部103は、これらの基板面処理条件に基づいてウェハ300の周縁部に対する研磨処理を実行する。すなわち、研磨装置400が、基板面処理条件に基づいてウェハ300の周縁部における表面粗さの荒い部分に対して研磨を行う。ウェハ300の周縁部に対する研磨処理は、ウェハ300の全回転角について行っても良く、回折散乱レーザ光L2の分析強度におけるピークが存在する全回転角についてのみ行っても良い。
【0091】
なお、上記においては、理解の容易のため、表面粗さ指標情報としてグラフ化した場合について説明したが、回折散乱レーザ光L2の分析強度データをそのまま表面粗さ指標情報として使用し、これとスレッショルド値とを比較することで、研磨処理が必要な表面粗さであるかどうかを決定し、また研磨時間を算出することもできる。
【0092】
以上の処理を行うことにより、本実施の形態にかかる処理装置100によるウェハ300の周縁部の基板面に対する研磨処理を、ウェハ300の周縁部の表面粗さに応じて選択的に行うことができる。そしてウェハ300の周縁部においてウェハ300の表面粗さに応じて、上面ベベル部302、アペックス(端面)303および下面ベベル部304の領域を領域単位で、研磨処理の必要な領域のみを研磨時間を変えながら選択的に研磨することで、それぞれのウェハにおいて研磨が必要とされる領域のみそれぞれのウェハに適した研磨時間で処理を行うことができ、表面粗さの荒い部分の研磨処理に要する処理時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0093】
上述したように、第4の実施の形態にかかる基板の周縁部の処理システム10においては、ウェハ300の周縁部の基板面に対する処理を行う前に、該周縁部の表面状態についての評価を行うことにより適切な基板面処理条件を決定し、この基板面処理条件に基づいて基板面に対する処理を行う。すなわち、表面状態情報(回折散乱レーザ光L2の分析強度(表面粗さ指標))と、決定基準情報(スレッショルド値、回折散乱レーザ光L2の強度と表面粗さとの相関関数および研磨時間の算出式)と、に基づいて処理条件決定部102が基板面処理条件(研磨すべき領域および研磨時間)を決定する。そして、基板面処理部103が、この基板面処理条件に基づいてウェハ300の周縁部の研磨処理を実行する。これにより、ウェハ300の周縁部の基板面における表面粗さの荒い部分の研磨処理に要する処理時間を大幅に短縮することができ、ウェハ300における表面粗さの荒い部分を効率良く短時間で除去することができる。
【0094】
また、後の半導体装置の製造工程において有害な部分を選択的にかつ確実に研磨することができるため、液浸露光時における、半導体ウェハの周縁部の表面荒れに起因した露光不良を効果的に防止することができる。これにより、各基板に適した安定したプロセスで、歩留まり良く、安価に半導体装置を製造することができる。
【0095】
なお、上述した第1〜第4の実施の形態においては、基板面処理部103において研磨テープを用いた研磨により半導体ウェハの周縁部に対する基板面処理を行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、ウエットエッチング法、CDE法、スラリによる研磨法、マイクロトーチを利用した方法など様々な手法を用いることが可能である。また、上述したウェハ300の周縁部における基板面処理は、半導体装置の製造工程中において必要に応じて任意に実行することが可能である。
【0096】
また、いずれの実施の形態においても、基板面処理条件を例えばウェハ300の製造ロット毎に1回求め、同一ロット内では同じ基板面処理条件を用いてウェハ300の周縁部における基板面処理を実行しても良い。この場合には、より効率的にウェハ300の周縁部における基板面処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】この発明の一実施形態に従った基板の周縁部の処理システムの構成を示すブロック図。
【図2】この発明の一実施形態に従った基板であるウェハの周縁部を説明する図。
【図3】この発明の一実施形態に従った研磨装置を説明する模式図。
【図4】半導体装置の製造工程の一例を説明するためのフローチャート。
【図5】ウェハにおけるSiN膜の付着状態の一例を説明する断面図。
【図6】この発明の一実施形態に従ったウェハの周縁部における基板面の処理を説明するためのフローチャート。
【図7】この発明の一実施形態に従った決定基準情報を示す図。
【図8】この発明の一実施形態に従ったウェハの周縁部における形状のモニタ方法を説明するための図。
【図9】この発明の一実施形態に従って得られたウェハの周縁部の形状を示す図。
【図10】この発明の一実施形態に従ったウェハの下面ベベル部の接線方向における研磨長さを説明する図。
【図11】この発明の一実施形態に従った決定基準情報および研磨時間を示す図。
【図12】この発明の一実施形態に従った半導体ウェハの周縁部の欠陥検出方法の一例を説明する模式図。
【図13】この発明の一実施形態に従ったウェハの回転角と回折散乱レーザ光の分析強度との関係を示す特性図。
【図14】この発明の一実施形態に従ったウェハの回転角と回折散乱レーザ光の分析強度との関係を示す特性図。
【図15】この発明の一実施形態に従った回折散乱レーザ光の分析強度と表面粗さとの相関関係を説明する特性図。
【符号の説明】
【0098】
100 基板の周縁部の処理装置
101 記憶部
102 処理条件決定部
103 基板面処理部
300 半導体ウェハ
301 上面エッジ部
302 上面ベベル部
303 アペックス
304 下面ベベル部
305 下面エッジ部
311 SiN膜
312 a−Si膜
400 研磨装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の周縁部の処理方法および装置に関するものであり、特に、半導体ウェハなどの基板の周縁部に発生する表面荒れや欠陥、または後工程において汚染源となる可能性を有する不要な付着材を効率良く基板から除去するための基板の周縁部の処理方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の微細化、半導体装置の高密度化に伴い、半導体装置の製造工程におけるパーティクルの管理は益々重要になりつつある。パーティクルを管理する上での大きな問題の1つとして、半導体装置の製造工程中に半導体ウェハ(基板)の周縁部におけるベベル部及びエッジ部に生じる表面荒れに起因する発塵がある。ここで、ベベル部とは、半導体ウェハの端縁角部において曲率を有する部分を意味し、エッジ部とは、ベベル部からウェハの内周側に向かった数mm程度の表面が平坦な部分を意味する。
【0003】
例えば、トレンチキャパシタのトレンチ(ディープトレンチ)をSiウェハの表面に形成するRIE(Reactive Ion Etching)工程においては、エッチング中に生じる副生成物がSiウェハの周縁部(ベベル部及びエッジ部)に付着する。そして、これがエッチングのマスクとして作用するため、Siウェハの周縁部に針状突起が形成されることがある。特に、マスクの開口径がサブミクロンオーダーであり、アスペクト比が数十と非常に高いディープトレンチを精度良く形成しようとした場合には、そのプロセス条件により上述した針状突起が周縁部に必然的に発生する。
【0004】
針状突起の高さは位置によりばらつきがあるが、最大で10μm近くにもなり、Siウェハの搬送時あるいはプロセス時に破損してパーティクルが発生する原因となる。このようなパーティクルは歩留りの低下につながるため、周縁部に形成された針状突起を除去する必要がある。
【0005】
また、半導体装置の製造工程中においては、半導体ウェハの周縁部に付着した材料膜が汚染源となる。すなわち、周縁部に付着した材料膜が剥がれてSiウェハのデバイス面に乗り、露光不良や加工不良を引き起こす。このため、これらの不要な材料膜を半導体ウェハから除去する必要がある。そこで、このような針状突起や材料膜を除去するために、ウエットエッチング(Wet Etching)法を始め、CDE(Chemical Dry Etching)法、研磨テープやスラリによる研磨法、最近では、マイクロトーチを利用した方法など様々な手法が使用されている。特に、研磨法は、半導体ウェハの周縁部に発生する表面荒れや、周縁部に付着し汚染源となる膜を、短時間に除去することができ、かつ処理領域の制御性が高いのが特徴である。
【0006】
研磨法を用いた技術としては、例えば研磨テープと、基板の所定の箇所に前記研磨テープを押圧する研磨ヘッドとを備え、前記研磨テープと前記基板との摺動により前記基板の研磨を行うことにより、基板の周縁部に発生する表面荒れや欠陥、または後工程において汚染源となる可能性を有する不要な膜を除去するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
ところで、研磨において問題となるのがベベル部の形状である。すなわち、半導体ウェハの周縁部を研磨する際、周縁部の形状によって研磨面とテープとの当たり方が大きく変化するため、当たり方にばらつきが生じる。そこで、実際の製造工程においてはこれらのばらつきなどを考慮し、オーバー研磨時間を長くして削り残しのないようにしている。ここで、オーバー研磨時間は、当たり方にばらつき等がない場合の本来の研磨時間から延長された時間である。
【0008】
一方、半導体装置製造時の各工程において、半導体ウェハのエッジ部からベベル部にかけての処理状態については、あまり制御されていないのが現状である。また、元の半導体ウェハの形状もばらつきが大きいため、実際のウェハエッジ部からベベル部にかけての状態は非常に不安定である。このため、通常、ウェハエッジ部からベベル部にかけての研磨処理プロセスにおいては、非常に長いオーバー処理時間を設定しなければならず、処理効率が良くない、という問題がある。
【0009】
【特許文献1】特開2003−234314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、表面荒れや欠陥、または汚染源となる不要な付着材などの発生した基板の周縁部を効率良くかつ効果的に処理することができる基板の周縁部の処理方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本願発明の一態様によれば、基板の周縁部における基板面の処理を行う基板の周縁部の処理方法であって、前記基板の周縁部の表面状態をモニタする表面状態モニタ工程と、前記基板面の処理を実行するための条件であって前記基板面の処理の必要性の有無を含む基板面処理条件を、前記表面状態のモニタ結果に基づいて決定する処理条件決定工程と、前記基板面処理条件に基づいて、前記基板面の処理の必要性がある場合に前記基板の周縁部に対して前記基板面の処理を実行する基板面処理工程と、を含むことを特徴とする基板の周縁部の処理方法が提供される。
【0012】
また、本願発明の一態様によれば、基板の周縁部における基板面の処理を行う基板の周縁部の処理装置であって、前記基板の周縁部の表面状態に関する前記表面状態情報に基づいて前記基板面の処理を実行するための条件であって前記基板面の処理の必要性の有無を含む基板面処理条件を決定する際に参照される決定基準情報を記憶する記憶部と、前記表面状態情報と、前記決定基準情報とを用いて前記基板面処理条件を決定する処理条件決定部と、前記基板面処理条件に基づいて、前記基板面の処理の必要性がある場合に前記基板の周縁部に対して前記基板面の処理を実行する基板面処理部と、を備えることを特徴とする基板の周縁部の処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、基板の周縁部に発生する表面荒れや欠陥、または汚染源となる不要な付着材などの発生した基板の周縁部を効率良くかつ効果的に処理することができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、本発明の実施の形態にかかる基板の周縁部の処理方法および装置を詳細に説明する。なお、本発明は以下の記述により限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0015】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる基板の周縁部の処理システム10の構成を示すブロック図である。実施の形態1にかかる基板の周縁部の処理システム10は、基板の周縁部の処理装置100(以下、処理装置100と呼ぶ)と基板状態検出装置200とを備える。処理装置100は、基板である半導体ウェハ(基板)の周縁部の基板面を処理するものであり、記憶部101と、処理条件決定部102と、基板面処理部103と、を備える。
【0016】
基板状態検出装置200は、処理対象となる半導体ウェハの周縁部の表面状態をモニタし、取得した表面状態に関する情報(表面状態情報)を処理装置100に出力する。半導体ウェハの周縁部とは、図2に示すような半導体ウェハ300(以下、ウェハ300と呼ぶ)の上面エッジ部301、上面ベベル部302、アペックス(端面)303、下面ベベル部304および下面エッジ部305を含む範囲である。図2は、基板の一例である半導体ウェハ300の周縁部を説明する図である。ここで、上面とはウェハ300においてデバイスが形成される側の面(デバイス面)である。下面とはウェハ300においてデバイスが形成される側と反対側の面(裏面)である。また、上面エッジ部301および下面エッジ部305は、アペックス(端面)303から数ミリ程度の領域である。
【0017】
第1の実施の形態の基板状態検出装置200においては、CCD(Charge Coupled Device)カメラを用いて、ウェハ300の周縁部の画像を取り込む。そして取り込んだ画像のデータを、付着材(膜)の付着位置(不要膜の残留位置)に関する情報(表面状態情報)として、処理装置100に出力する。
【0018】
記憶部101は、基板状態検出装置200から取得した表面状態情報を記憶する。また、記憶部101は、ウェハ300の周縁部の基板面に対する処理を実行するための条件である基板面処理条件を決定するための基準情報である決定基準情報を、例えばテーブル形式等により記憶する。
【0019】
処理条件決定部102は、基板状態検出装置200より出力された表面状態情報を記憶部101に記憶させる。また、処理条件決定部102は、表面状態情報と決定基準情報とに基づいて基板面処理条件を決定し、該基板面処理条件を基板面処理部103に出力する。この基板面処理条件には、基板面に対する処理の必要性の有無を含む。なお、記憶部101や処理条件決定部102は、図1に示される基板の周縁部の処理システム10において、処理装置100の外部の例えばホストコンピュータ等に設けられても良い。また逆に、基板状態検出装置200を処理装置100内に取り込んで、基板面処理部103とユニット化しても良い。
【0020】
基板面処理部103は、処理条件決定部102で決定した基板面処理条件に基づいてウェハ300の周縁部に対する基板面処理として例えば除去処理を実行する。第1の実施の形態においては、基板面処理部103として図3に示すような研磨装置400を用いる。図3は、ウェハ300の周縁部を研磨テープによって研磨可能な研磨装置400を説明する模式図である。
【0021】
研磨装置400においては、ウェハ300を吸着させたウェハステージ401が高速で回転し、研磨ヘッドを含むバックパットユニット402がウェハ300に研磨テープ403を押し付ける。また、ノズル404からウェハ300の上面に洗浄液405を供給する。そして、このバックパットユニット402がウェハ300に対してチルトすることで、ウェハ300の周縁部の各エリアを選択的に研磨する。
【0022】
つぎに、上述した基板の周縁部の処理システム10の動作について、図4に示すような半導体装置の製造工程においてウェハ300の周縁部の基板面に対する不要部の除去処理を行う場合を例に説明する。図4は、半導体装置の製造工程の一例を説明するためのフローチャートである。半導体装置の製造工程中において、ウェハ300には例えば図4に示すように、SiN(窒化シリコン)成膜(ステップS101)、a−Si(アモルファスシリコン)成膜(ステップS102)、裏面(下面)SiN剥離(ステップS103)、および、ウェハ300の周縁部の不要部除去(ステップS104)の処理がこの順で施される。
【0023】
図5は、ウェハ300におけるSiN膜の付着状態を説明する断面図である。ステップS102のa−Si成膜の工程後のウェハ300の周縁部においては、図5(a)に示すようにウェハ300の全面にSiN膜311が付着し、上面エッジ部301および上面ベベル部302のSiN膜311上にa−Si膜312が付着している。そして、ステップS103の裏面(下面)SiN剥離の工程において、アペックス(端面)303、下面ベベル部304および下面エッジ部305のSiN膜311を剥離する。ステップS103の裏面(下面)SiN剥離の工程後における好ましい状態は、図5(b)に示すようにアペックス(端面)303、下面ベベル部304および下面エッジ部305のSiN膜311が全て剥離されている状態である。
【0024】
しかしながら、下面エッジ部305近傍のSiN膜311の除去が剥離プロセスとエッジ形状のばらつきとに起因する剥離処理の不安定性によって、実際には必ずしも図5(b)に示すような状態とはならず、膜残りにばらつきが生じて図5(c)に示すようにアペックス(端面)303にSiN膜311が残存する状態、図5(d)に示すようにアペックス(端面)303および下面ベベル部304にSiN膜311が残存する状態が発生する。半導体装置の製造工程中においては、このように残存したSiN膜311が汚染源となるため、これらの膜をウェハ300から除去する必要がある。
【0025】
そこで、ウェハ300の周縁部の基板面の処理としてステップS104のウェハ300の周縁部の不要部除去処理を行う。以下、図6を参照して、ウェハ300の周縁部の不要部除去について説明する。図6は、ウェハ300の周縁部の不要部除去処理を説明するためのフローチャートである。まず、基板状態検出装置200では、ウェハ300の周縁部の状態をCCDカメラにより撮像して画像を取り込む。撮像は例えば、上方斜め方向、側面(端面)方向、下方斜め方向の3方向からウェハ300の周方向の全周にわたって行い、この3方向からの画像を取り込む。そして、基板状態検出装置200では、この3方向からの画像を画像処理により合成して合成画像を得る。この合成画像から、基板状態検出装置200は、除去すべきSiN膜311がウェハ300の周縁部のどの領域に残存しているかを検出してSiN膜311の残存位置データを生成し、これを表面状態情報として処理装置100に出力する。
【0026】
処理装置100は、基板状態検出装置200からSiN膜311の残存位置データを受け取ることで、表面状態情報を取得する(ステップS201)。処理装置100は、基板状態検出装置200から表面状態情報を取得すると、処理条件決定部102が該表面状態情報を記憶部101に記憶させる。また、処理条件決定部102は、この表面状態情報と、記憶部101に予め記憶している決定基準情報と、に基づいて基板面処理条件を決定し(ステップS202)、該基板面処理条件を基板面処理部103に出力する。
【0027】
ここで、決定基準情報は、例えば図7に示すようなテーブル形式で、記憶部101に予め記憶している。図7に示す決定基準情報においては、下面ベベル部304およびアペックス(端面)303におけるSiN膜311の残存状態と基板面処理条件が対応づけられている。
【0028】
処理条件決定部102は、表面状態情報(SiN膜311の残存位置データ)と、図7に示す決定基準情報とに基づいて基板面処理条件を決定する。例えば下面ベベル部304にSiN膜311が残存し、アペックス(端面)303にSiN膜311が残存していない場合には、図7に示す決定基準情報を参照して基板面処理条件を「基板面処理条件3」に決定し、基板面処理部103に出力する。「基板面処理条件3」の内容は、「基板面処理の必要性が要、基板面処理の対象領域は下面ベベル部」である。
【0029】
また、例えば下面ベベル部304にSiN膜311が残存せず、アペックス(端面)303にSiN膜311が残存している場合には、図7に示す決定基準情報を参照して基板面処理条件を「基板面処理条件2」に決定し、基板面処理部103に出力する。「基板面処理条件2」の内容は、「基板面処理の必要性が要、基板面処理の対象領域はアペックス(端面)」である。
【0030】
なお、さらに詳細に、例えば下面ベベル部304におけるSiN膜311の残存状態が予め決められた所定のレベル未満の場合には、「SiN膜311の基板面処理の必要性無し」と決定するような決定基準情報を設けても良い。
【0031】
基板面処理部103は、この基板面処理条件に基づいて、ウェハ300の周縁部に対して基板面処理として不要部の除去処理を実行する。すなわち、研磨装置400が、基板面処理条件に基づいてウェハ300の周縁部に対して研磨を行う(ステップS203)。
【0032】
以上の処理を行うことにより、本実施の形態にかかる処理装置100によるウェハ300の周縁部の基板面に対するSiN膜311の除去処理として、SiN膜311が残存しており除去の必要性のある領域のみを選択的に研磨することができる。SiN膜311は除去しにくい材料であるため、上述したようにウェハ300の周縁部においてSiN膜311が残存している領域のみを選択的に研磨することで、不要部であるSiN膜311の除去処理に要する処理時間を大幅に短縮することが可能となる。また、ウェハ300のノッチ部についても、表面状態情報によりノッチ部の位置を特定し、SiN膜311が残存している領域に研磨テープ403を傾けて研磨することで、SiN膜311を選択的に研磨することができ、無駄な研磨をなくすことが可能となる。
【0033】
上述したように、第1の実施の形態にかかる基板の周縁部の処理システム10においては、ウェハ300の周縁部の基板面に対する不要部の除去処理を行う前に、該周縁部の表面状態についての評価を行うことにより適切な基板面処理条件を決定し、この基板面処理条件に基づいて除去処理を行う。すなわち、表面状態情報(SiN膜311の残存位置データ)と、決定基準情報(SiN膜311の残存位置と基板面処理条件との対応づけ)と、に基づいて基板面処理条件を決定する。そして、基板面処理部103が、基板面処理条件に基づいてウェハ300の周縁部の不要なSiN膜311の除去処理を実行する。これにより、ウェハ300の周縁部の不要なSiN膜311の除去処理に要する処理時間を大幅に短縮することができ、ウェハ300における不要部を効率良く短時間で除去することができる。
【0034】
また、後の半導体装置の製造工程において有害なSiN膜311を選択的にかつ確実に除去することができるため、SiN膜311が剥がれてウェハ300のデバイス形成面に乗り、露光不良や加工不良を引き起こすなどの不具合の発生を効果的に防止することができる。これにより、各基板に適した安定したプロセスで、歩留まり良く、安価に半導体装置を製造することができる。
【0035】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、ウェハ300の周縁部の形状をモニタして、その情報を基に基板面処理条件を決定する場合について説明する。第2の実施の形態にかかる基板の周縁部の処理システムの基本構成は、第1の実施の形態の場合と同様である。すなわち、第2の実施の形態にかかる基板の周縁部の処理システム10は、図1に示すように処理装置100と基板状態検出装置200とを備える。また、処理装置100は記憶部101と、処理条件決定部102と、基板面処理部103と、を備える。なお、基板状態検出装置200および処理条件決定部102の機能が第1の実施の形態の場合と異なるため、以下では基板状態検出装置200および処理条件決定部102を中心に説明する。
【0036】
ウェハ300の周縁部の形状には、ウェハ間においてばらつきが存在する。これは、半導体装置の製造工程においては、ウェハ300のエッジ部からベベル部にかけての処理状態について、あまり制御されていないため、このような製造工程を経たウェハ300間で、周縁部の形状に差異が生じたことによる。また、製造工程前の元のウェハ300についても、ウェハ300の種類が異なれば、一般に形状のばらつきが大きい。このため、第1の実施の形態で示したようなウェハの不要部の除去方法の場合には、例えば200nmの膜厚のSiN膜311を除去する際、実際にはウェハ300のSiを30μmの深さで削り込む。具体的には、例えばウェハ300の周方向において、研磨姿勢角0度(基準位置):30秒、±30度:20秒、±60度:15秒の時間の研磨を行い、合計100秒程度の研磨が必要である。なお、研磨姿勢角については後述する。
【0037】
そこで、研磨時間の短縮を図るために、第2の実施の形態では、ウェハ300の周縁部の形状をモニタして、その情報を基に基板面処理条件を決定する。ウェハ300の周縁部の形状のモニタは、基板状態検出装置200において行う。
【0038】
図8は、ウェハ300の周縁部の形状のモニタ方法を説明するための図である。ウェハ300の周縁部の形状のモニタは、まず、図8に示すように例えばLED等の光源411により、ウェハ300の側方からウェハ300の周縁部に対して照射光Lを照射する。そして、ウェハ300に対して光源411とは反対側に設けた反射ミラー412とフォーカスレンズ413を介して照射光LをCCDカメラ414により撮像して画像を取り込む。画像の取得は、例えばウェハ300を該ウェハ300の中心軸を軸として回転させながらウェハ300の周方向の全周にわたって行う。
【0039】
つぎに、基板状態検出装置200は、この画像に対してソフトウェア的に輪郭処理を行い、例えば図9に示すようなウェハ300の周縁部の形状415を表すデータ(形状データ)を得る。図9は、輪郭処理を行って得られたウェハ300の周縁部の形状415を示す図である。そして、基板状態検出装置200は、形状データを表面状態情報として処理装置100に出力する。
【0040】
処理装置100は、基板状態検出装置200から形状データを受け取ることで、表面状態情報を取得する。処理装置100は、基板状態検出装置200から形状データ(表面状態情報)を取得すると、処理条件決定部102が該形状データ(表面状態情報)を記憶部101に記憶させる。
【0041】
また、処理条件決定部102は、この形状データを基に、ウェハ300のアペックス(端面)303から上面ベベル部302および下面ベベル部304の接線方向における研磨長さ(研磨テープとSiN膜311との接触長さ)を研磨姿勢角毎に算出する。図10は、ウェハ300の下面ベベル部304の接線方向における研磨長さを説明するための図である。ここで研磨姿勢角は、図10に示すようにウェハ300の面内方向(X方向)と垂直な方向(Z方向)を0度(基準角度)として、研磨面がZ方向となす角度である。なお、アペックス(端面)303の面が0度(基準角度)に該当する。また、研磨長さは、ウェハ300の周方向において例えば45度おきの8ポイントにおいて個々の研磨長さを算出し、その平均値を以下の処理において用いる。
【0042】
例えば図10に示す例では、研磨姿勢角が0度(基準角度)における研磨長さ:100μm、20度における研磨長さ:200μm、40度における研磨長さ:100μm、60度における研磨長さ:300μm、70度における研磨長さ:100μm、である。なお、ここでは、研磨姿勢角として0度(基準角度)、20度、40度、60度、70度を選択した場合について説明するが、研磨姿勢角は任意に設定可能である。
【0043】
研磨テープによる研磨の際、研磨長さにより研磨処理時の研磨抵抗が異なり、研磨長さが長いほど研磨抵抗が高くなり、研磨に時間を要する。そこで、この研磨長さによる研磨抵抗の変化の影響を考慮するために、処理条件決定部102は、研磨時間の算出式である下記(1)式により各研磨姿勢角における研磨時間を算出する。
研磨時間(sec)=研磨長さ×係数 ・・・(1)
ここで、係数は、例えば研磨テープの材質等の諸条件や実験値の統計等により研磨姿勢角毎に異なる数値が与えられる。なお、上記(1)式および研磨姿勢角、係数は、決定基準情報として例えば図11に示すテーブル形式で記憶部101に予め記憶している。
【0044】
例えば図10に示す例の場合に、上記(1)式を用いて各研磨姿勢角毎に算出した研磨時間を決定基準情報とともに図11に示す。例えば、研磨姿勢角が0度(基準角度)のときは、研磨長さが100μmであり、係数が0.2であるので、これらの数値と上記(1)式とにより、研磨時間は20(sec)となる。また、研磨姿勢角が±20度のときは、研磨長さが200μmであり、係数が0.04であるので、これらの数値と上記(1)式とにより、研磨時間は8(sec)となる。
【0045】
処理条件決定部102は、上記のように表面状態情報と記憶部101に予め記憶している決定基準情報(上記(1)式および係数)とに基づいて基板面処理条件(研磨時間)を決定して、該基板面処理条件を基板面処理部103に出力する。
【0046】
処理条件決定部102は、例えば算出した研磨時間が予め決められた所定のレベル未満の場合には、「基板面処理の必要性無し」と決定する。そして、処理条件決定部102は、「基板面処理の必要性無し」の旨の情報を基板面処理条件として基板面処理部103に出力する。
【0047】
また、処理条件決定部102は、例えば算出した研磨時間が予め決められた所定のレベル以上の場合には、「基板面処理の必要性有り」と決定する。そして、処理条件決定部102は、「基板面処理の必要性有り」の旨の情報および「研磨姿勢角、研磨時間」に関する情報を基板面処理条件として基板面処理部103に出力する。
【0048】
基板面処理部103は、この基板面処理条件に基づいてウェハ300の周縁部の基板面に対する処理を実行する。すなわち、研磨装置400が、基板面処理条件に基づいてウェハ300の周縁部に対して研磨を行う。
【0049】
以上の処理を行うことにより、本実施の形態にかかる処理装置100によるウェハ300の周縁部の基板面に対する研磨処理を、ウェハ300の形状に応じて研磨時間を考慮しながら選択的に実施することができる。SiN膜311は除去しにくい材料であるため、上述したようにウェハ300の周縁部においてウェハ300の形状に応じて研磨姿勢角毎に研磨時間を変えながら選択的に研磨することで、それぞれのウェハに適した研磨時間で周縁部の基板面に対する研磨処理を行うことができ、研磨処理に要する処理時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0050】
上述したように、第2の実施の形態にかかる基板の周縁部の処理システム10においては、ウェハ300の周縁部の基板面に対する処理を行う前に、該周縁部の表面状態についてモニタを行うことにより適切な基板面処理条件を決定し、この基板面処理条件に基づいて基板面に対する処理を行う。すなわち、表面状態情報(ウェハ300の形状データ)と、決定基準情報(研磨時間算出式および係数)と、に基づいて処理条件決定部102がそれぞれのウェハ300に適した基板面処理条件(研磨時間)を決定する。そして、基板面処理部103は、基板面処理条件に基づいてウェハ300の周縁部の不要なSiN膜311の除去処理を実行する。これにより、ウェハ300の周縁部の不要なSiN膜311の除去処理に要する処理時間を大幅に短縮することができ、ウェハ300における不要部を効率良く短時間で除去することができる。
【0051】
また、後の半導体装置の製造工程において有害な不要なSiN膜311を選択的にかつ確実に除去することができるため、不要なSiN膜311が剥がれてウェハ300のデバイス形成面に乗り、露光不良や加工不良を引き起こすなどの不具合の発生を効果的に防止することができる。これにより、各基板に適した安定したプロセスで、歩留まり良く、安価に半導体装置を製造することができる。
【0052】
また、上記の第2の実施の形態においては、ウェハ300の1枚毎に基板面処理条件を求める場合について説明しているが、例えばウェハ300の製造ロット毎に基板面処理条件を1回求めて、通常は全て同じ種類のウェハ300からなる同一ロット内では、全てのウェハ300に対してこの基板面処理条件を用いて基板面処理を実行しても良い。この場合には、半導体装置の製造工程で生じる程度の周縁部の形状のばらつきは吸収可能な基板面処理条件とすることで、周縁部の形状が大きくなるウェハ300の種類に応じた各ロット毎の基板面処理条件を設定して、より効率的にウェハ300の基板面処理を行うことができる。
【0053】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態では、レーザ散乱光による半導体ウェハの周縁部の欠陥検出を通じて、除去すべき欠陥が半導体ウェハの周縁部のどの領域にあるかを検出し、その情報を基に基板面処理条件を決定する場合について説明する。
【0054】
第3の実施の形態にかかる基板の周縁部の処理システムの基本構成は、第1の実施の形態の場合と同様である。すなわち、第3の実施の形態にかかる基板の周縁部の処理システム10は、図1に示すように処理装置100と基板状態検出装置200とを備える。また、処理装置100は記憶部101と、処理条件決定部102と、基板面処理部103と、を備える。なお、基板状態検出装置200および処理条件決定部102の機能が第1の実施の形態の場合と異なるため、以下では基板状態検出装置200および処理条件決定部102を中心に説明する。
【0055】
半導体装置の製造工程中においては、熱処理工程などウェハにストレスのかかる工程が存在する。ここで、熱処理の前にウェハの周縁部に欠陥が存在すると、この欠陥を起点としてウェハに割れが生じるおそれがある。そこで、熱処理工程等のウェハにストレスのかかる工程における、ウェハの周縁部の欠陥に起因したウェハの割れを防止するために、第3の実施の形態ではウェハの周縁部の欠陥を検出して、その情報を基に基板面処理条件を決定する。ウェハの周縁部の欠陥検出は、基板状態検出装置200において行う。
【0056】
図12は、ウェハ300の周縁部の欠陥検出方法を説明する模式図である。ウェハ300の周縁部の欠陥検出は、まず、図12に示すように例えばウェハ300のアペックス(端面)303と対向するようにウェハ300と同じ水平面内に配置されたレーザ装置421により、ウェハ300の側面方向からウェハ300の周縁部に対してレーザL1を照射する。そして、レーザL1がウェハ300の周縁部における上面ベベル部302、アペックス(端面)303、下面ベベル部304で反射した回折散乱レーザ光L2を、楕円鏡422を用いてディテクタ423に集光する。
【0057】
また、ウェハ300の上面ベベル部302の鉛直上方に配置された図示しないレーザ装置により、上面からウェハ300の周縁部に対してレーザを照射する。そして、レーザがウェハ300の周縁部における上面ベベル部302で反射した回折散乱レーザ光を、楕円鏡422を用いてディテクタ423に集光する。
【0058】
さらに、ウェハ300の下面ベベル部304の鉛直下方に配置された図示しないレーザ装置により、下面からウェハ300の周縁部に対してレーザを照射する。そして、レーザがウェハ300の周縁部における下面ベベル部304で反射した回折散乱レーザ光を、楕円鏡422を用いてディテクタ423に集光する。これにより、側面方向、上面方向、下面方向の回折散乱レーザ光L2の強度データを得る。なお、側面方向、上面方向、下面方向この回折散乱レーザ光L2の強度データの測定は、例えばウェハ300を回転させながらウェハ300全周の周方向位置にわたって行う。
【0059】
つぎに、基板状態検出装置200は、側面方向、上面方向、下面方向の回折散乱レーザ光L2の強度データを分析し、上面ベベル部302、アペックス(端面)303、下面ベベル部304の各領域の回折散乱レーザ光L2の分析強度データを生成する。例えば、上面方向および下面方向については、それぞれ上面ベベル部302、下面ベベル部304で反射した回折散乱レーザ光L2のみを集光することで、上面方向、下面方向の回折散乱レーザ光L2の強度データに検出される強度ピークをそのまま上面ベベル部302、下面ベベル部304の欠陥と関連する回折散乱レーザ光L2の強度データとする。
【0060】
一方、側面方向に関しては、アペックス(端面)303のみならず上面ベベル部302、下面ベベル部304で反射した回折散乱レーザ光L2も集光しているので、ある周方向位置(ウェハ300の回転角)において、側面方向の回折散乱レーザ光L2の強度データには検出される強度ピークが、上面方向や下面方向の回折散乱レーザ光L2の強度データには検出されない場合には、アペックス(端面)303に由来する強度ピークであるとしてその回転角の回折散乱レーザ光L2の強度データをアペックス(端面)303の欠陥と関連する回折散乱レーザ光L2の強度データとする。このように、上面方向と側面方向、側面方向と下面方向、において回折散乱レーザ光L2の強度データを分析することにより、上面ベベル部302、アペックス(端面)303、下面ベベル部304の領域毎の回折散乱レーザ光L2の分析強度データを生成する。
【0061】
ここで、回折散乱レーザ光L2の強度(分析強度データ)とウェハ300の表面の欠陥の程度(大きさや数)とには相関があるため、回折散乱レーザ光L2の強度(分析強度データ)からウェハ300の周縁部の表面の欠陥に関する情報を得ることができる。具体的に、基板状態検出装置200は、回折散乱レーザ光L2の分析強度データのソフト的な処理により、例えば図13(a)、(b)、(c)に示すようにグラフ化した、欠陥位置情報を生成する。図13は、周方向位置(回転角)と回折散乱レーザ光L2の分析強度との関係を示す特性図である。回折散乱レーザ光L2の分析強度の大きい位置が欠陥位置に該当するため、回折散乱レーザ光L2の分析強度ピークの位置を欠陥位置として検出できる。
【0062】
つぎに、基板状態検出装置200は、上記のようにして生成した上面ベベル部302の領域、アペックス(端面)303の領域、下面ベベル部304の領域毎の欠陥位置情報を表面状態情報として処理装置100に出力する。
【0063】
処理装置100は、基板状態検出装置200から欠陥位置情報を受け取ることで、表面状態情報を取得する。処理装置100は、基板状態検出装置200から欠陥位置情報(表面状態情報)を取得すると、処理条件決定部102が該欠陥位置情報(表面状態情報)を記憶部101に記憶させる。
【0064】
また、図13(a)、(b)、(c)に示すようにグラフ化した欠陥位置情報に対し、所定のスレッショルド値を追加する。スレッショルド値は、除去処理が必要な欠陥であるかどうかを決定するための閾値であり、決定基準情報として記憶部101に予め記憶している。
【0065】
処理条件決定部102は、図13(a)、(b)、(c)に示すようなグラフに基づいて、基板面処理条件(研磨対象領域)を決定する。処理条件決定部102は、上面ベベル部302の領域、アペックス(端面)303の領域、下面ベベル部304の領域の各領域について、例えば回折散乱レーザ光L2の強度がウェハ300の全周にわたってスレッショルド値に満たない場合には、除去処理が必要な欠陥が無く、「基板面処理の必要性無し」と決定する。そして、処理条件決定部102は、「基板面処理の必要性無し」の旨の情報を基板面処理条件として基板面処理部103に出力する。
【0066】
例えば図13(a)に示す上面ベベル部302の場合には、回折散乱レーザ光L2の強度がウェハ300の全周(全回転角)にわたってスレッショルド値に達していない。この場合には、処理条件決定部102は、「上面ベベル部302における基板面処理の必要性無し」と決定する。そして、処理条件決定部102は、「上面ベベル部302における基板面処理の必要性無し」との旨の情報を基板面処理条件として基板面処理部103に出力する。
【0067】
同様に例えば図13(b)に示すアペックス(端面)303の場合には、回折散乱レーザ光L2の強度がウェハ300の全周(全回転角)にわたってスレッショルド値に達していない。この場合には、処理条件決定部102は、「アペックス(端面)303における基板面処理の必要性無し」と決定する。そして、処理条件決定部102は、「アペックス(端面)303における基板面処理の必要性無し」との旨の情報を基板面処理条件として基板面処理部103に出力する。
【0068】
また、処理条件決定部102は、上面ベベル部302の領域、アペックス(端面)303の領域、下面ベベル部304の領域の各領域について、例えば回折散乱レーザ光L2の強度が1つでもスレッショルド値に達している場合には、除去処理が必要な欠陥が存在するため、「基板面処理の必要性有り」と決定する。そして、処理条件決定部102は、「基板面処理の必要性有り」との旨の情報を基板面処理条件として基板面処理部103に出力する。
【0069】
例えば図13(c)に示す下面ベベル部304の場合には、回折散乱レーザ光L2の強度ピークA〜Hがスレッショルド値に達している。この場合には、処理条件決定部102は、「下面ベベル部304における基板面処理の必要性有り」と決定する。そして、処理条件決定部102は、「下面ベベル部304における基板面処理の必要性有り」の旨の情報を基板面処理条件として基板面処理部103に出力する。
【0070】
基板面処理部103は、これらの基板面処理条件に基づいてウェハ300の周縁部における基板面処理を実行する。すなわち、研磨装置400が、基板面処理条件に基づいてウェハ300の周縁部に対して研磨を行う。ウェハ300の周縁部に対する研磨処理は、ウェハ300の全回転角について行っても良く、欠陥が存在する全回転角についてのみ行っても良い。
【0071】
なお、上記においては、理解の容易のため、欠陥位置情報としてグラフ化した場合について説明したが、回折散乱レーザ光L2の分析強度データをそのまま欠陥位置情報として使用し、これとスレッショルド値とを比較することで、除去処理が必要な欠陥であるかどうかを決定することもできる。
【0072】
以上の処理を行うことにより、本実施の形態にかかる処理装置100によるウェハ300の周縁部の基板面に対する研磨処理を、ウェハ300の周縁部の欠陥の存在状況に応じて選択的に実施することができる。そしてウェハ300の周縁部においてウェハ300の欠陥の存在状況に応じて、上面ベベル部302、アペックス(端面)303および下面ベベル部304の領域を領域毎に選択的に研磨することで、それぞれのウェハにおいて研磨が必要とされる領域のみ研磨処理を行うことができ、研磨処理に要する処理時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0073】
上述したように、第3の実施の形態にかかる基板の周縁部の処理システム10においては、ウェハ300の周縁部の基板面に対する処理を行う前に、該周縁部の表面状態についての評価を行うことにより適切な基板面処理条件を決定し、この基板面処理条件に基づいて基板面に対する処理を行う。すなわち、表面状態情報(欠陥位置情報または回折散乱レーザ光L2の分析強度データ)と、決定基準情報(スレッショルド値)と、に基づいて基板面処理条件を決定する。そして、基板面処理部103は、基板面処理条件に基づいてウェハ300の周縁部の欠陥の除去処理を実行する。これにより、ウェハ300の周縁部の欠陥の除去処理に要する処理時間を大幅に短縮することができ、ウェハ300の周縁部における欠陥を効率良く短時間で除去することができる。
【0074】
また、後の半導体装置の製造工程において有害な欠陥を選択的にかつ確実に除去することができるため、熱処理工程等の半導体ウェハにストレスのかかる工程における、半導体ウェハの周縁部の欠陥に起因した半導体ウェハの割れを効果的に防止することができる。これにより、各基板に適した安定したプロセスで、歩留まり良く、安価に半導体装置を製造することができる。
【0075】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態では、レーザ散乱光による半導体ウェハの周縁部の表面粗さのモニタを通じて、基板面の処理が必要な表面状態の部分がどの領域にあるかを検出し、その情報を基に基板面処理条件を決定する場合について説明する。
【0076】
第4の実施の形態にかかる基板の周縁部の処理システムの基本構成は、第1の実施の形態の場合と同様である。すなわち、第4の実施の形態にかかる基板の周縁部の処理システム10は、図1に示すように処理装置100と基板状態検出装置200とを備える。また、処理装置100は記憶部101と、処理条件決定部102と、基板面処理部103と、を備える。なお、基板状態検出装置200および処理条件決定部102の機能が第1の実施の形態の場合と異なるため、以下では基板状態検出装置200および処理条件決定部102を中心に説明する。
【0077】
半導体装置の製造工程中においては、液浸露光工程を実施する場合がある。液浸露光では、ウェハ300の周縁部側から露光レンズがスキャンされる。ここで、ウェハ300の周縁部に表面荒れがある場合、すなわち表面粗さが荒い部分がある場合には、この表面荒れのある部分に泡が発生する。そして、液浸露光時にこの泡が露光レンズに付着し、その状態でスキャンされることより泡がデバイス面に引きずられて露光不良を起こす場合がある。このため、液浸露光においては、使用する液の性質や露光レンズの移動スピードなどを調整しているが、あまり効果的な改善策とはなっていない。
【0078】
そこで、ウェハ300の周縁部の表面荒れに起因した液浸露光時の露光不良を防止するために、第4の実施の形態では半導体ウェハの周縁部の表面粗さを検出して、その情報を基に基板面処理条件を決定する。半導体ウェハの周縁部の表面粗さの検出は、基板状態検出装置200において行う。
【0079】
ウェハ300の表面粗さの検出は、図12に示すようなレーザ装置421を用いることにより、第3の実施の形態と同様にして表面状態情報として使用する上面ベベル部302、アペックス(端面)303、下面ベベル部304の領域毎の回折散乱レーザ光L2の分析強度データを生成する。
【0080】
回折散乱レーザ光L2の分析強度データにおける強度(分析強度)とウェハ300の表面の粗さとには相関があるため、回折散乱レーザ光L2の分析強度からウェハ300の周縁部の表面の粗さの量を見積もることができる。そこで、回折散乱レーザ光L2の分析強度を表面粗さ指標として用いて、基板状態検出装置200は、回折散乱レーザ光L2の分析強度データのソフト的な処理により、例えば図14(a)、(b)、(c)に示すようにグラフ化した、表面粗さ指標情報を生成する。図14は、周方向位置(回転角)と回折散乱レーザ光L2の分析強度との関係を示す特性図である。図14において、回折散乱レーザ光L2の分析強度の大きい位置が表面粗さの大きい位置に該当する。
【0081】
つぎに、基板状態検出装置200は、上記のようにして生成した上面ベベル部302、アペックス(端面)303、下面ベベル部304の領域毎の表面粗さ指標情報を表面状態情報として処理装置100に出力する。
【0082】
処理装置100は、基板状態検出装置200から表面粗さ指標情報を受け取ることで、表面状態情報を取得する。処理装置100は、基板状態検出装置200から表面粗さ指標情報(表面状態情報)を取得すると、処理条件決定部102が該表面粗さ指標情報(表面状態情報)を記憶部101に記憶させる。
【0083】
また、図14(a)、(b)、(c)に示すようにグラフ化した表面粗さ指標情報に対し、所定のスレッショルド値を追加する。スレッショルド値は、基板面の処理が必要な表面粗さであるかどうかを決定するための閾値であり、決定基準情報として記憶部101に予め記憶している。
【0084】
処理条件決定部102は、図14(a)、(b)、(c)に示すようなグラフに基づいて、上面ベベル部302の領域、アペックス(端面)303の領域、下面ベベル部304の領域の各領域について、基板面処理条件(研磨対象領域)を決定する。処理条件決定部102は、例えば図14(c)に示すように回折散乱レーザ光L2の分析強度がウェハ300の全周にわたって所定のスレッショルド値未満の場合には、有害な表面荒れが無く、「基板面処理の必要性無し」と決定する。そして、処理条件決定部102は、「基板面処理の必要性無し」の旨の情報を基板面処理条件として基板面処理部103に出力する。
【0085】
また、処理条件決定部102は、例えば図14(a)、(b)に示すように所定のスレッショルド値以上の回折散乱レーザ光L2の分析強度が存在する場合には、有害な表面荒れが有り、「基板面処理の必要性有り」と決定する。そして、処理条件決定部102は、つぎに、処理時間の決定を行う。
【0086】
研磨テープによる研磨の際、ウェハ300の周縁部の表面粗さの量の大きさによって必要な研磨時間が異なり、表面粗さの量が大きいほど研磨に時間を要する。また、回折散乱レーザ光L2の分析強度(表面粗さ指標)と表面粗さとの間には、図15に示すような関数の相関関係がある。図15は、回折散乱レーザ光L2の分析強度(表面粗さ指標)と表面粗さとの相関関係を説明する特性図である。そこで、表面粗さの研磨時間への影響を考慮するために、処理条件決定部102は、まず、図14(a)、(b)、(c)に示すグラフと図15に示す関数に基づいて、表面粗さの量を算出する。なお、図15に示す関数は、決定基準情報として記憶部101に予め記憶している。
【0087】
ここで、表面粗さの量は、図14(a)、(b)、(c)に示すグラフにおいて、有効と認められる最大(MAX)の回折散乱レーザ光L2の分析強度(表面粗さ指標)を用いて求める。例えば上面ベベル部302に関しては、図14(a)において回折散乱レーザ光L2の分析強度ピークJが、有効と認められる最大(MAX)の回折散乱レーザ光L2の分析強度である。そして、回折散乱レーザ光L2の分析強度:1000の場合の表面粗さの量としては、図15に示す関数から2.5が得られる。
【0088】
つぎに、処理条件決定部102は、得られた表面粗さの量と、研磨時間の算出式である下記(2)式により研磨時間を算出する。
研磨時間(sec)=表面粗さ×20 ・・・(2)
ここで、係数20は、例えば研磨テープの材質等の諸条件や実験値の統計等により与えられる。なお、上記(2)式は、決定基準情報として記憶部101に予め記憶している。
【0089】
上面ベベル部302に関しては、表面粗さの量が2.5であるので、上記(2)式より、研磨時間は50(sec)となる。このように、処理条件決定部102は、「基板面処理の必要性有り」と決定した場合には、表面状態情報と記憶部101に予め記憶している決定基準情報(図15の関数および上記(2)式)とに基づいて基板面処理条件(研磨時間)を決定して、該基板面処理条件を基板面処理部103に出力する。
【0090】
基板面処理部103は、これらの基板面処理条件に基づいてウェハ300の周縁部に対する研磨処理を実行する。すなわち、研磨装置400が、基板面処理条件に基づいてウェハ300の周縁部における表面粗さの荒い部分に対して研磨を行う。ウェハ300の周縁部に対する研磨処理は、ウェハ300の全回転角について行っても良く、回折散乱レーザ光L2の分析強度におけるピークが存在する全回転角についてのみ行っても良い。
【0091】
なお、上記においては、理解の容易のため、表面粗さ指標情報としてグラフ化した場合について説明したが、回折散乱レーザ光L2の分析強度データをそのまま表面粗さ指標情報として使用し、これとスレッショルド値とを比較することで、研磨処理が必要な表面粗さであるかどうかを決定し、また研磨時間を算出することもできる。
【0092】
以上の処理を行うことにより、本実施の形態にかかる処理装置100によるウェハ300の周縁部の基板面に対する研磨処理を、ウェハ300の周縁部の表面粗さに応じて選択的に行うことができる。そしてウェハ300の周縁部においてウェハ300の表面粗さに応じて、上面ベベル部302、アペックス(端面)303および下面ベベル部304の領域を領域単位で、研磨処理の必要な領域のみを研磨時間を変えながら選択的に研磨することで、それぞれのウェハにおいて研磨が必要とされる領域のみそれぞれのウェハに適した研磨時間で処理を行うことができ、表面粗さの荒い部分の研磨処理に要する処理時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0093】
上述したように、第4の実施の形態にかかる基板の周縁部の処理システム10においては、ウェハ300の周縁部の基板面に対する処理を行う前に、該周縁部の表面状態についての評価を行うことにより適切な基板面処理条件を決定し、この基板面処理条件に基づいて基板面に対する処理を行う。すなわち、表面状態情報(回折散乱レーザ光L2の分析強度(表面粗さ指標))と、決定基準情報(スレッショルド値、回折散乱レーザ光L2の強度と表面粗さとの相関関数および研磨時間の算出式)と、に基づいて処理条件決定部102が基板面処理条件(研磨すべき領域および研磨時間)を決定する。そして、基板面処理部103が、この基板面処理条件に基づいてウェハ300の周縁部の研磨処理を実行する。これにより、ウェハ300の周縁部の基板面における表面粗さの荒い部分の研磨処理に要する処理時間を大幅に短縮することができ、ウェハ300における表面粗さの荒い部分を効率良く短時間で除去することができる。
【0094】
また、後の半導体装置の製造工程において有害な部分を選択的にかつ確実に研磨することができるため、液浸露光時における、半導体ウェハの周縁部の表面荒れに起因した露光不良を効果的に防止することができる。これにより、各基板に適した安定したプロセスで、歩留まり良く、安価に半導体装置を製造することができる。
【0095】
なお、上述した第1〜第4の実施の形態においては、基板面処理部103において研磨テープを用いた研磨により半導体ウェハの周縁部に対する基板面処理を行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、ウエットエッチング法、CDE法、スラリによる研磨法、マイクロトーチを利用した方法など様々な手法を用いることが可能である。また、上述したウェハ300の周縁部における基板面処理は、半導体装置の製造工程中において必要に応じて任意に実行することが可能である。
【0096】
また、いずれの実施の形態においても、基板面処理条件を例えばウェハ300の製造ロット毎に1回求め、同一ロット内では同じ基板面処理条件を用いてウェハ300の周縁部における基板面処理を実行しても良い。この場合には、より効率的にウェハ300の周縁部における基板面処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】この発明の一実施形態に従った基板の周縁部の処理システムの構成を示すブロック図。
【図2】この発明の一実施形態に従った基板であるウェハの周縁部を説明する図。
【図3】この発明の一実施形態に従った研磨装置を説明する模式図。
【図4】半導体装置の製造工程の一例を説明するためのフローチャート。
【図5】ウェハにおけるSiN膜の付着状態の一例を説明する断面図。
【図6】この発明の一実施形態に従ったウェハの周縁部における基板面の処理を説明するためのフローチャート。
【図7】この発明の一実施形態に従った決定基準情報を示す図。
【図8】この発明の一実施形態に従ったウェハの周縁部における形状のモニタ方法を説明するための図。
【図9】この発明の一実施形態に従って得られたウェハの周縁部の形状を示す図。
【図10】この発明の一実施形態に従ったウェハの下面ベベル部の接線方向における研磨長さを説明する図。
【図11】この発明の一実施形態に従った決定基準情報および研磨時間を示す図。
【図12】この発明の一実施形態に従った半導体ウェハの周縁部の欠陥検出方法の一例を説明する模式図。
【図13】この発明の一実施形態に従ったウェハの回転角と回折散乱レーザ光の分析強度との関係を示す特性図。
【図14】この発明の一実施形態に従ったウェハの回転角と回折散乱レーザ光の分析強度との関係を示す特性図。
【図15】この発明の一実施形態に従った回折散乱レーザ光の分析強度と表面粗さとの相関関係を説明する特性図。
【符号の説明】
【0098】
100 基板の周縁部の処理装置
101 記憶部
102 処理条件決定部
103 基板面処理部
300 半導体ウェハ
301 上面エッジ部
302 上面ベベル部
303 アペックス
304 下面ベベル部
305 下面エッジ部
311 SiN膜
312 a−Si膜
400 研磨装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の周縁部における基板面の処理を行う基板の周縁部の処理方法であって、
前記基板の周縁部の表面状態をモニタする表面状態モニタ工程と、
前記基板面の処理を実行するための条件であって前記基板面の処理の必要性の有無を含む基板面処理条件を、前記表面状態のモニタ結果に基づいて決定する処理条件決定工程と、
前記基板面処理条件に基づいて、前記基板面の処理の必要性がある場合に前記基板の周縁部に対して前記基板面の処理を実行する基板面処理工程と、
を含むことを特徴とする基板の周縁部の処理方法。
【請求項2】
前記表面状態モニタ工程では、前記基板の周縁部に付着した付着材の付着位置、または前記基板の周縁部における欠陥位置をモニタし、前記処理条件決定工程では、前記付着材の付着位置または前記欠陥位置から前記基板面の処理の対象領域を決定すること、
を特徴とする請求項1に記載の基板の周縁部の処理方法。
【請求項3】
前記基板面の処理が、研磨テープを用いた研磨処理であり、
前記表面状態モニタ工程では、前記基板の周縁部の形状をモニタし、
前記処理条件決定工程では、前記基板の周縁部の形状から、前記基板の周縁部における所定の研磨位置での前記周縁部と前記研磨テープとの接触長さに関する情報に基づいて前記研磨処理の処理時間を決定すること、
を特徴とする請求項1に記載の基板の周縁部の処理方法。
【請求項4】
前記表面状態モニタ工程では、前記基板の周縁部の表面粗さをモニタし、
前記処理条件決定工程では、前記表面粗さから前記基板面の処理の処理時間を決定すること、
を特徴とする請求項1に記載の基板の周縁部の処理方法。
【請求項5】
基板の周縁部における基板面の処理を行う基板の周縁部の処理装置であって、
前記基板の周縁部の表面状態に関する表面状態情報に基づいて前記基板面の処理を実行するための条件であって前記基板面の処理の必要性の有無を含む基板面処理条件を決定する際に参照される決定基準情報を記憶する記憶部と、
前記表面状態情報と、前記決定基準情報とを用いて前記基板面処理条件を決定する処理条件決定部と、
前記基板面処理条件に基づいて、前記基板面の処理の必要性がある場合に前記基板の周縁部に対して前記基板面の処理を実行する基板面処理部と、
を備えることを特徴とする基板の周縁部の処理装置。
【請求項1】
基板の周縁部における基板面の処理を行う基板の周縁部の処理方法であって、
前記基板の周縁部の表面状態をモニタする表面状態モニタ工程と、
前記基板面の処理を実行するための条件であって前記基板面の処理の必要性の有無を含む基板面処理条件を、前記表面状態のモニタ結果に基づいて決定する処理条件決定工程と、
前記基板面処理条件に基づいて、前記基板面の処理の必要性がある場合に前記基板の周縁部に対して前記基板面の処理を実行する基板面処理工程と、
を含むことを特徴とする基板の周縁部の処理方法。
【請求項2】
前記表面状態モニタ工程では、前記基板の周縁部に付着した付着材の付着位置、または前記基板の周縁部における欠陥位置をモニタし、前記処理条件決定工程では、前記付着材の付着位置または前記欠陥位置から前記基板面の処理の対象領域を決定すること、
を特徴とする請求項1に記載の基板の周縁部の処理方法。
【請求項3】
前記基板面の処理が、研磨テープを用いた研磨処理であり、
前記表面状態モニタ工程では、前記基板の周縁部の形状をモニタし、
前記処理条件決定工程では、前記基板の周縁部の形状から、前記基板の周縁部における所定の研磨位置での前記周縁部と前記研磨テープとの接触長さに関する情報に基づいて前記研磨処理の処理時間を決定すること、
を特徴とする請求項1に記載の基板の周縁部の処理方法。
【請求項4】
前記表面状態モニタ工程では、前記基板の周縁部の表面粗さをモニタし、
前記処理条件決定工程では、前記表面粗さから前記基板面の処理の処理時間を決定すること、
を特徴とする請求項1に記載の基板の周縁部の処理方法。
【請求項5】
基板の周縁部における基板面の処理を行う基板の周縁部の処理装置であって、
前記基板の周縁部の表面状態に関する表面状態情報に基づいて前記基板面の処理を実行するための条件であって前記基板面の処理の必要性の有無を含む基板面処理条件を決定する際に参照される決定基準情報を記憶する記憶部と、
前記表面状態情報と、前記決定基準情報とを用いて前記基板面処理条件を決定する処理条件決定部と、
前記基板面処理条件に基づいて、前記基板面の処理の必要性がある場合に前記基板の周縁部に対して前記基板面の処理を実行する基板面処理部と、
を備えることを特徴とする基板の周縁部の処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−111079(P2009−111079A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280663(P2007−280663)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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