説明

基板の密封に使用されるレーザビーム照射装置、及びこれを利用した有機発光ディスプレイ装置の製造方法

【課題】基板の密封に使用されるレーザビーム照射装置、及びこれを利用した有機発光ディスプレイ装置の製造方法を提供する。
【解決手段】第1基板と第2基板との間に配置された密封部にレーザビームを照射することにより第1基板及び第2基板を密封するレーザビーム照射装置であって、レーザビームを照射するレーザヘッドと、レーザビームの走行速度及び運動方向を制御する制御部と、を備えている。レーザビーム照射装置の制御部による制御下で、レーザビームは、密封部が形成する経路に沿って前後方向に反復運動を行い、経路上の同一位置を2回以上通過するように照射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の密封に使用されるレーザビーム照射装置、及びこれを利用した有機発光ディスプレイ装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイ装置は、携帯可能な薄型の平板ディスプレイ装置が主流になりつつある。平板ディスプレイ装置のうち、電界発光ディスプレイ装置は、自発光型であって、視野角が広く、コントラストが優秀であるだけでなく、応答速度が速いという長所を有しているため、次世代ディスプレイ装置として注目されている。また、発光層が有機物で構成されている有機発光ディスプレイ装置は、無機発光ディスプレイ装置に比べて、輝度、駆動電圧、応答速度特性が優秀であり、多色化が可能であるという利点を有する。
【0003】
一般的な有機発光ディスプレイ装置は、一対の電極間に発光層を備えた少なくとも一つの有機層が介在する構造を有している。
【0004】
このような有機発光ディスプレイ装置は、周辺環境から水分や酸素が素子内部に流入した場合に、電極物質の酸化、剥離による有機発光素子の寿命短縮、発光効率低下のみならず、発光色の変質のような問題を発生させる。
【0005】
したがって、有機発光ディスプレイ装置の製造において、有機発光素子を外部から隔離して水分が浸透しないようにするための密封処理が一般的に行われている。このような密封処理方法として、一般的には、有機発光ディスプレイ装置の第2電極の上部に無機薄膜及びPET(Polyester)のような有機高分子をラミネーティングする方法か、または封止基板の内部に吸湿剤を形成し、封止基板の内部に窒素ガスを充填させた後、封止基板のエッジをエポキシのようなシーラントで封合する方法が用いられる。
【0006】
しかし、これらの方法は、外部から流入する水分や酸素のような有機発光素子の破壊性因子を100%遮断することが不可能であり、水分に特に脆弱である有機発光ディスプレイ装置への適用には適していない。また、これらの方法は工程が複雑である。上記のような問題点を解決するために、シーラントとしてフリットを使用して、有機発光素子基板と封止基板との密着性を向上させる基板封合方法が考案されている。
【0007】
上記の方法は、ガラス基板にフリットを塗布して有機発光ディスプレイ装置を密封する構造を採用することにより、有機発光素子基板及び封止基板を完全に密封することができるので、より効果的に有機発光ディスプレイ装置を保護することができる。
【0008】
このようにフリットで基板を密封する方法は、フリットをそれぞれの有機発光ディスプレイ装置のシーリング部に塗布した後に、レーザビーム照射装置を移動し、それぞれの有機発光ディスプレイ装置の密封部にレーザビームを照射することによりフリットを硬化させて基板を密封するというものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、周辺素子の熱損傷を発生させることなく高品質なフリットシーリング工程を実行可能な基板シーリング用のレーザビーム照射装置、及びこれを利用した有機発光ディスプレイ装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を達成するために、本発明の一側面は、第1基板と第2基板との間に配置された密封部にレーザビームを照射することにより前記第1基板及び第2基板を密封するために使用されるレーザビーム照射装置であって、前記レーザビーム照射装置は、レーザビームを照射するレーザヘッドと、前記レーザビームの走行速度及び運動方向を制御する制御部と、を備えており、前記制御部による制御下で、前記レーザビームは、前記密封部により形成される経路に沿って前後方向に反復運動を行い、前記経路上の同一箇所を2回以上通過するように照射されることを特徴とするレーザビーム照射装置を提供する。
【0011】
本発明の他の特徴によれば、前記レーザビームが前後方向に反復運動を行なう速度は、100mm/secよりも大きい。
【0012】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記レーザ照射装置は、前記レーザビームに前後方向に沿った反復運動を行わせるためのガルバノメータミラーを備えており、前記制御部は、前記ガルバノメータミラーを制御するプログラムを備えている。
【0013】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記レーザヘッドは、前記レーザビームが前後方向に反復運動を行なう速度よりも小さい速度で前記経路に沿って直線運動を行うことができる。
【0014】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記第1基板及び第2基板の下部には、基板ステージがさらに備えられており、前記ステージは、前記経路に沿って前記レーザビームが前後方向に反復運動する速度よりも小さい速度で直線運動を行うことができる。
【0015】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記レーザビームは、スポットビーム状に照射される。
【0016】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記スポットビームの直径は、前記密封部の幅と同一であるか、または前記密封部の幅の2倍以下である。
【0017】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記スポットビームの直径は、前記密封部の幅よりも小さい。
【0018】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記レーザビームは、前記密封部の幅方向に沿った運動をさらに行なうことにより、回転運動を行うことができる。
【0019】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記密封部は、フリットを備えている。
【0020】
本発明の他の側面は、(a)第1基板または第2基板上に有機発光部を形成する工程と、(b)前記第1基板と第2基板との間に前記有機発光部を取り囲むように密封部を形成する工程と、(c)前記第1基板と第2基板とを整列させる工程と、(d)レーザビームを照射するレーザヘッドと、前記レーザビームの走行速度及び運動方向を制御する制御部と、を備えたレーザビーム照射装置を利用して、前記密封部が形成する経路に沿って前記レーザビームが前後方向に反復運動を行い、前記経路上の同一箇所を2回以上通過するように、前記レーザビームを照射する工程と、を含む有機発光ディスプレイ装置の製造方法を提供する。
【0021】
本発明の他の特徴によれば、前記第1基板及び第2基板のうち少なくとも一方は、レーザビームを透過させることができる。
【0022】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記密封部が形成する前記経路上の同一箇所は、前記レーザビームが2回以上通過した後に、前記第1基板及び第2基板の密封に必要な密封温度に到達することができる。
【0023】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記密封温度に到達した前記同一箇所の温度は、前記同一箇所が前記密封温度に到達するまでにかかった時間よりも長い時間をかけて前記温度が線形的に低下する。
【0024】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記レーザビームが前後方向に反復運動を行なう速度は、100mm/secよりも大きい。
【0025】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記レーザ照射装置は、前記レーザビームに前後方向に反復運動を行わせるためのガルバノメータミラーを備えており、前記制御部は、前記ガルバノメータミラーを制御するプログラムを備えている。
【0026】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記レーザヘッドは、前記レーザビームが前後方向に反復運動を行なう速度よりも小さい速度で前記密封部が形成する前記経路に沿って直線運動を行うことができる。
【0027】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記第1基板及び第2基板の下部には、基板ステージがさらに備えられており、前記ステージは、前記経路に沿って前記レーザビームが前後方向に反復運動を行なう速度よりも小さい速度で直線運動を行うことができる。
【0028】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記レーザビームは、スポットビーム状に照射されることができる。
【0029】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記スポットビームの直径は、前記密封部の幅と同一であるか、または前記密封部の幅の2倍以下である。
【0030】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記スポットビームの直径は、前記密封部の幅よりも小さい。
【0031】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記レーザビームは、前記密封部の幅方向に沿った運動をさらに行なうことにより、回転運動を行うことができる。
【0032】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記密封部は、フリットを備えている。
【0033】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記フリットは、前記有機発光部の周囲を取り囲むように閉ループを形成することができる。
【0034】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記有機発光部は、第1電極と第2電極との間に発光層を備えた少なくとも一つの有機層が介在する有機発光素子を少なくとも一つ備えている。
【発明の効果】
【0035】
本発明によると、レーザビームをフリットに照射することにより、周辺の構成要素に対するサーマルストレスを最小化し、有機発光ディスプレイ装置の性能を向上させることができる。また、別途のレーザマスクを常用する必要がないため、密封工程を単純化することができる。また、基板上の複数のセルを短時間で効率的に密封することができる。また、フリットの溶融領域が大幅に拡張され、開始点及び終了点をほとんど区別することができないので、温度差による応力を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態によるレーザビーム照射装置を利用して、有機発光ディスプレイ装置の密封部を密封する方法を概略的に示す断面図である。
【図2】図1に対応する上面図である。
【図3】フリットの望ましい経時的な温度プロファイル及び経時的なビーム強度プロファイルを示す概略図である。
【図4】本実施形態によるレーザビームの密封経路上の位置の経時的な変化を示す概略図である。
【図5】基板ステージが移動する場合のレーザビームの前後方向の運動について説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付した図面を参照して、本発明の望ましい実施形態について詳細に説明する。
【0038】
図1は、本発明の一実施形態によるレーザビーム照射装置を利用して、有機発光ディスプレイ装置の密封部を密封する方法を概略的に示す断面図であり、図2は、図1に対応する上面図である。
【0039】
図1及び図2を参照すれば、第1基板110と第2基板120との間に有機発光部130及び有機発光部130を取り囲む密封部140が配置されており、レーザヘッド150から前記密封部140にレーザビーム160が照射される。
【0040】
有機発光部130は第1基板110上に形成される。第1基板110は、例えば、ガラス材基板である。
【0041】
第2基板120は、第1基板110上に形成された有機発光部130を封入するための封止基板であって、後述するレーザビーム160を透過させることができる。第2基板120は、望ましくは、ガラス材基板である。
【0042】
有機発光部130は、第1電極(図示せず)と第2電極(図示せず)との間に発光層を備えた少なくとも一つ有機層(図示せず)が介在する有機発光素子(Organic Light Emitting Device:OLED)(図示せず)を少なくとも一つ含んでいる。ここで、第1電極(図示せず)及び第2電極(図示せず)は、それぞれ正孔を注入する正極(アノード)及び電子を注入する負極(カソード)としての機能を発揮することができる。
【0043】
有機発光素子(図示せず)は、各有機発光素子の駆動を薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)で制御するか否かにより、受動駆動型(Passive Matrix:PM)または能動駆動型(Active Matrix:AM)に分類される。本実施形態による有機発光素子は、能動駆動型及び受動駆動型のどちらであってもよい。
【0044】
第2基板120上には、前述した有機発光部130を取り囲むように密封部140が形成される。
【0045】
密封部140は、有機発光部130を外部の水分や酸素との接触から遮断するために、閉ループを形成することが望ましい。
【0046】
一方、上記図面には、閉ループを形成する密封部140の各コーナー部分が一定の曲率を有する曲線で形成されているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、密封部140の各コーナー部分は、曲率なしに直交する形状をなすこともある。
【0047】
本実施形態では、第1基板110と第2基板120との気密性を確保し、有機発光部130をさらに効果的に保護するために、密封部140としてフリットを使用している。フリットは、スクリーン印刷法またはペンディスペンシング法などの多様な方法により一定の幅(Frit Width:FW)を有するように形成される。
【0048】
なお、本実施形態では、密封部140を第2基板120上に形成し、有機発光部130を第1基板110上に形成して、第1基板110と第2基板120とを整列させているが、本発明はこれに限定されない。例えば、密封部140は、予め有機発光部が形成されている第1基板110上にさらに形成され、第2基板120と整列させられた後に合着されてもよい。
【0049】
また、上記図面は、一つの有機発光部130が設けられた例を示しているが、本発明において、第1基板110と第2基板120との間には複数の有機発光部130と、複数の有機発光部130を取り囲む複数の密封部140とが設けられてもよい。
【0050】
レーザビーム照射装置(図示せず)により照射されるレーザビーム160は、第1基板110と第2基板120との間に配置された密封部140が形成する経路に沿って前後方向に高速で運動する。
【0051】
上記図面では詳細に示されていないが、レーザビーム照射装置(図示せず)は、レーザを発生させるレーザ発振器(図示せず)、ビーム均質器(図示せず)、レーザヘッド150、及び制御部(図示せず)を備えている。
【0052】
ここで、レーザ発振器(図示せず)として、一般的なレーザシーリング用の高出力レーザソースであるバンドルタイプのマルチコアソースを使用することができる。
【0053】
このようなバンドルタイプのマルチコアソースを使用する場合、それぞれのコアの出力が互いに少しずつ異なっている可能性があるので、ビーム均質器(図示せず)を使用して、そのような不均一を解決することがある。
【0054】
レーザヘッド150は、レーザ発振器(図示せず)で生成されたレーザビームを反射して密封部140に照射する反射部(図示せず)、反射部を駆動する駆動部(図示せず)、及び反射されたレーザビームを集光するレンズ部(図示せず)を備えている。
【0055】
本実施形態による反射部(図示せず)は、前述のように前後方向に移動するレーザビーム160の位置及び速度を精密に制御するためのガルバノメータミラーを使用することができる。
【0056】
レンズ部(図示せず)を通過したレーザビーム160は、ガウスプロファイルを有するスポットビーム状をなして密封部140に照射される。レーザビーム160の精密な焦点制御のために、レンズ部(図示せず)は、F−θレンズを備えることができる。
【0057】
制御部(図示せず)は、レーザビーム160の走行速度及び運動方向を制御する。
【0058】
本実施形態で、制御部(図示せず)は、密封部140が形成する経路に沿って前後方向に運動するように、レーザビーム160の位置及び速度を制御するガルバノメータミラー(図示せず)を制御するプログラムを含むことができる。
【0059】
また、前記第1基板110の下部には、第1基板110を載置するための基板ステージ170が配置される。基板ステージ170を移動させることによって、密封部140に照射されるレーザビーム160の位置を相対的に移動させることができる。
【0060】
図3は、フリットの望ましい経時的な温度プロファイル及び経時的なビーム強度プロファイルを示す概略図である。
【0061】
有機発光ディスプレイ装置の製造時の損傷、及び周辺配線や有機発光素子の熱による損傷を防止するためには、基板110,120の密封工程時にレーザビーム160によって加熱されるフリット140の温度プロファイルを制御しなければならない。
【0062】
上記図面を参照すれば、フリット140の望ましい経時的な温度プロファイルは、初期段階においてフリット140が融点に達するまでフリット140を短時間(△t1)加熱し、その後しばらく第1基板110と第2基板120との接合工程を実施可能な作業温度を維持してから(△t2)、フリット140の温度が線形的に低下するように徐々に冷却する(△t3)というものである。
【0063】
ここで、フリット140の溶融に要する時間(△t1)よりも、フリット140の温度低下に要する時間(△t3)の方が長くなっている。
【0064】
このようなフリット140の温度の理想的な経時的プロファイルを実現するためには、フリット140に照射されるレーザビーム160の強度の経時的な積分値であるヒーティングフラックスの理想的な経時的プロファイルを導出しなければならない。
【0065】
2次元熱拡散方程式のモデリング結果から、本実施形態による望ましいヒーティングフラックスは、上記図面に示したように、その最大値が加熱の初期段階で達成され、その後は単調に減少することが分かった。
【0066】
このような望ましいヒーティングフラックスプロファイルを実現するためには、密封領域を非常に高速でスキャンする必要がある。
【0067】
図4は、本実施形態による密封部140の経路上のレーザビーム位置の経時的変化を示す概略図であり、図5は、ステージが移動する場合のレーザビームの前後方向の運動について説明するための概略図である。
【0068】
図5を参照すれば、本実施形態によるレーザビーム160は、密封部140が形成する経路に沿って非常に高速で前方及び後方に反復運動していることが分かる。
【0069】
本実施形態では、レーザビーム160が前後方向に運動する速度は、2500mm/secとされたが、これは一例に過ぎない。ただし、高速でのスキャニングのためには、100mm/secよりも大きいスキャニング速度が望ましい。
【0070】
なお、上記図面には、互いに異なる3つの振幅L1,L2,L3で前後方向の運動が反復される点が示されているが、これは一例に過ぎず、本発明はこれに限定されない。
【0071】
レーザビーム160が密封部140に沿って運動する間に、レーザビーム160が密封部140の経路の全体に熱を供給するためには、レーザビーム160が照射される領域が密封部140の一部のみに限定されてはならない。すなわち、レーザビーム160は、その前後方向の反復運動領域△Lだけでなく、密封部140の経路の全体を通過するように前後方向の運動を行なわなければならない。
【0072】
図4を参照すれば、本実施形態によるレーザビーム160は、密封部140が形成する経路に沿って前後方向に運動すると同時に、時間tが経過する間に最初の位置から△Dだけ前方に移動していることが分かる。
【0073】
このような前方への移動は、レーザビーム160が前後方向に運動する間に、レーザヘッド150を固定した状態で基板ステージ170をレーザヘッド150に対して後方に移動させることにより実現可能である。また、基板ステージ170を移動させる代わりに、レーザヘッド150を直接密封部140に沿って前方に移動させる方法も可能である。
【0074】
この時、レーザビーム160が前後方向に運動する速度V1は、レーザヘッド150が前方に移動する速度V2よりも大きくされなければならない。すなわち、上記図面を参照すれば、前後方向に運動するレーザビーム160は、時間tが経過する間に3×(2×L1+2×L2+2×L3)の距離を運動しなければならず、前方に移動するレーザヘッド150(または基板ステージ170)は、時間tが経過する間に△Dの距離を移動することになる。
【0075】
上記のように、レーザビーム160の前後方向の反復運動とレーザヘッド150(または基板ステージ170)の前方への移動とが複合的に進められれば、フリット140の同一箇所には、レーザビーム160が2回以上照射され、フリット140のレーザビーム160が照射された箇所には、ビーム強度Iが集積される。このようなレーザビーム160の前後方向の反復運動及びレーザヘッド150(または基板ステージ170)の前方への移動によりフリット140に集積されたレーザ強度Iは、望ましい経時的なビーム強度プロファイルを形成し、その結果、望ましい経時的な温度プロファイルを形成する。
【0076】
また、前述した実施形態では、レーザビームの幅(BW)とフリットの幅(FW)とが実質的に同一である場合を例示した。しかし、本発明はこれに限定されない。つまり、フリット幅(FW)よりも大きいレーザビーム幅(BW)のレーザビーム160を使用することもできる。しかし、レーザビーム幅(BW)が過度に大きい場合には、フリット140の周辺素子を保護するためのレーザマスク(図示せず)を使用しなければならないので、レーザビーム幅(BW)は、フリット幅(FW)の2倍を超えないことが望ましい。
【0077】
他方、レーザビーム幅(BW)は、フリット幅(FW)よりも小さくてもよい。ただし、本実施形態によるスポットビームは、ガウス分布を有するため、前述したレーザビーム160の前後方向の反復運動及びレーザヘッド150の前方への移動のみでは、フリット140の端部にビームが照射されないので、フリット140の理想的な温度プロファイルを得ることができない虞がある。
【0078】
そこで、スポットビーム160の直径がフリット幅(FW)よりも小さい場合には、前述したレーザビーム160の前後方向の反復運動に、フリット140の長手方向と垂直をなす幅方向に沿ったレーザビームの運動を追加しなければならない。
【0079】
このように、フリット140の幅方向に沿ったレーザビーム160の運動には、所定の回転運動が含まれることがある。その結果、前後方向の反復的な直線運動と回転運動とが組み合わせられて、レーザビーム160は螺旋運動を行うので、フリット140の幅の全体を横断するようにフリット140に照射されることになる。これにより、フリット140の全体にわたり望ましい温度プロファイルを形成することができる。
【0080】
前述したように、本発明によるレーザビームをフリットに照射することにより、その周辺の構成要素に対するサーマルストレスを最小化し、有機発光ディスプレイ装置の性能を向上させることができる。
【0081】
また、別途のレーザマスクを常用する必要がないため、密封工程を単純化することができる。
【0082】
また、基板上の複数のセルを短時間で効率的に密封することができる。
【0083】
また、フリットの溶融領域が大幅に拡張され、その開始点及び終了点をほとんど区別することができないので、温度差による応力を減らすことができる。
【0084】
本発明は、添付図面に示された実施形態を参照して説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当業者であれば本実施形態から多様な変形例及び均等な他の実施形態が実現可能であるということが理解される。したがって、本発明の真の保護範囲は、特許請求の範囲に記載された技術的思想に基づいて決定されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、ディスプレイ関連の技術分野において好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0086】
110 第1基板、
120 第2基板、
130 有機発光部、
140 密封部、
150 レーザヘッド、
160 レーザビーム、
170 基板ステージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と第2基板との間に配置された密封部にレーザビームを照射することにより前記第1基板及び第2基板を密封するレーザビーム照射装置であって、
レーザビームを照射するレーザヘッドと、
前記レーザビームの走行速度及び運動方向を制御する制御部と、を備え、
前記制御部による制御下で、前記レーザビームは、前記密封部が形成する経路に沿って前後方向に反復運動を行い、前記経路上の同一箇所を2回以上通過するように照射されることを特徴とするレーザビーム照射装置。
【請求項2】
前記レーザビームが前後方向に反復運動を行う速度は、100mm/secよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のレーザビーム照射装置。
【請求項3】
前記レーザ照射装置は、前記レーザビームに前後方向に反復運動を行わせるためのガルバノメータミラーを備えており、前記制御部は、前記ガルバノメータミラーを制御するプログラムを備えていることを特徴とする請求項1に記載のレーザビーム照射装置。
【請求項4】
前記レーザヘッドは、前記レーザビームが前後方向に反復運動を行う速度よりも小さい速度で前記経路に沿って直線運動を行うことを特徴とする請求項1に記載のレーザビーム照射装置。
【請求項5】
前記第1基板及び第2基板の下部には、基板ステージがさらに備えられており、
前記基板ステージは、前記経路に沿って前記レーザビームが前後方向に反復運動を行う速度よりも小さい速度で直線運動を行うことを特徴とする請求項1に記載のレーザビーム照射装置。
【請求項6】
前記レーザビームは、スポットビーム状に照射されることを特徴とする請求項1に記載のレーザビーム照射装置。
【請求項7】
前記スポットビームの直径は、前記密封部の幅と同一であるか、または前記密封部の幅の2倍以下であることを特徴とする請求項6に記載のレーザビーム照射装置。
【請求項8】
前記スポットビームの直径は、前記密封部の幅よりも小さいことを特徴とする請求項6に記載のレーザビーム照射装置。
【請求項9】
前記レーザビームは、前記密封部の幅方向に沿った運動をさらに行なうことにより、回転運動を行うことを特徴とする請求項8に記載のレーザビーム照射装置。
【請求項10】
前記密封部は、フリットを備えていることを特徴とする請求項1に記載のレーザビーム照射装置。
【請求項11】
(a)第1基板または第2基板上に有機発光部を形成する工程と、
(b)前記第1基板と第2基板との間に前記有機発光部を取り囲むように密封部を形成する工程と、
(c)前記第1基板と第2基板とを整列させる工程と、
(d)レーザビームを照射するレーザヘッドと、前記レーザビームの走行速度及び運動方向を制御する制御部と、を備えたレーザビーム照射装置を利用して、前記密封部が形成する経路に沿って前記レーザビームが前後方向に反復運動を行い、前記経路上の同一箇所を2回以上通過するように、前記密封部に前記レーザビームを照射する工程と、を含む有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項12】
前記第1基板及び第2基板のうち少なくとも一方は、前記レーザビームを透過させることを特徴とする請求項11に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項13】
前記密封部が形成する前記経路上の同一箇所は、前記レーザビームが2回以上通過した後に、前記第1基板及び第2基板の密封に必要な密封温度に到達することを特徴とする請求項11に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項14】
前記密封温度に到達した前記同一箇所の温度は、前記同一箇所が前記密封温度に到達するまでにかかった時間よりも長い時間をかけて線形的に低下することを特徴とする請求項13に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項15】
前記レーザビームが前後方向に反復運動を行なう速度は、100mm/secよりも大きいことを特徴とする請求項11に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項16】
前記レーザ照射装置は、前記レーザビームに前後方向に反復運動を行わせるためのガルバノメータミラーを備えており、前記制御部は、前記ガルバノメータミラーを制御するプログラムを備えていることを特徴とする請求項11に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項17】
前記レーザヘッドは、前記レーザビームが前後方向に反復運動を行なう速度よりも小さい速度で前記密封部が形成する前記経路に沿って直線運動を行うことを特徴とする請求項11に記載のレーザビーム照射装置。
【請求項18】
前記第1基板及び第2基板の下部には、基板ステージがさらに備えられており、
前記ステージは、前記経路に沿って前記レーザビームが前後方向に反復運動を行なう速度よりも小さい速度で直線運動を行うことを特徴とする請求項11に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項19】
前記レーザビームは、スポットビーム状に照射されることを特徴とする請求項11に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項20】
前記スポットビームの直径は、前記密封部の幅と同一であるか、または前記密封部の幅の2倍以下であることを特徴とする請求項19に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項21】
前記スポットビームの直径は、前記密封部の幅よりも小さいことを特徴とする請求項19に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項22】
前記レーザビームは、前記密封部の幅方向に沿った運動をさらに行なうことにより、回転運動を行うことを特徴とする請求項21に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項23】
前記密封部は、フリットを備えていることを特徴とする請求項11に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項24】
前記フリットは、前記有機発光部の周囲を取り囲むように閉ループを形成することを特徴とする請求項23に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項25】
前記有機発光部は、第1電極と第2電極との間に発光層を備えた一つ以上の有機層が介在する有機発光素子を少なくとも一つ備えていることを特徴とする請求項11に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−151007(P2011−151007A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278259(P2010−278259)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(308040351)三星モバイルディスプレイ株式會社 (764)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Mobile Display Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】San #24 Nongseo−Dong,Giheung−Gu,Yongin−City,Gyeonggi−Do 446−711 Republic of KOREA
【Fターム(参考)】