説明

基板をコートする装置及び方法

本発明は,基板をコーティングする装置に関し,真空チャンバーと,内部がコートされる基板を受ける様に設計された真空チャンバーと,粒子の衝撃により装置の動作の間に除去されるように意図された少なくとも一つのスパッタリングターゲットを有し,少なくとも一つの窓が,前記真空チャンバーの壁に配置され,そして,前記スパッタリングターゲットの摩滅を判定する装置を有し,前記真空チャンバーの外側の少なくとも一つの予め規定されたポイントと,前記スパッタリングターゲットの表面の少なくとも一つの予め規定されたポイントとの間の距離を光学的に測定する側的装置を有し,前記測定装置が,更に視差オフセット及び/又は幾何学的歪みを修正できる評価装置を有する。さらに,本発明は,対応する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,基板をコートする装置に関し,内部にコートされる基板を受ける真空チャンバーと,少なくとも一つのスパッタリングターゲットを有し,前記スパッタリングターゲットは,粒子衝撃により装置の動作中に除去され,更に前記装置は,前記スパッタリングターゲットの劣化度を判定するデバイスを有する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に上記に説明した型の装置を開示している。既知の方法に従うと,スパッタリングターゲットを基板をコートするための材料源として使用することが提案されている。スパッタリングによる材料の劣化は,スパッタリングターゲットの表面が,プラズマからのイオンと衝突することにより生じる。スパッタリングターゲットの熱的ダメージを防ぐために,水冷手段により,スパッタリングターゲットから生じる熱エネルギーを拡散することができる。
【0003】
この従来技術は,次の様な欠点を有する。スパッタリングターゲットが消費された後,スパッタリングターゲットの下に配置されるキャリアプレート,すなわち,スパッタリングターゲットを保つ位置決め装置が,プラズマからのイオンにより除去される。操作者が,この状態を気づかないままにすると,基板に堆積した層及び/又は前記装置を囲う真空チャンバーが,キャリアプレート又は位置決め装置の物質により汚染される。キャリアプレート又は位置決め装置に対する汚染が続くと,これら装置内を通る冷却ダクトが露出され,冷媒が真空チャンバーに入り汚染することになる。この場合,セットされる圧力の急激な上昇が真空チャンバーあるいは,電源に対して重大なダメージを招くことになる。
【0004】
この問題を解決するために,従来技術は,スパッタリングパワーと処理期間の積を用いて,スパッタリングターゲットに対する劣化を評価することを提案している。この評価は,誤りやすく,ターゲットの劣化が場所により不均一に進むので,スパッタリングターゲットは,劣化限界に達する前に,しばしば先取的に交換される。これは,スパッタリングターゲットの交換は,時間を消費する換気と,真空チャンバーの開放を必要とするので,有効な材料の無駄な利用と,不必要な無駄な時間を招く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ特許DE 102 34 862 A1公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この従来技術から進んで,本発明は,従って,位置決め装置の物質によって基板上に形成されるコーティングを汚染することなく,完全に可能な量に、スパッタリング対象の材料を消費することが可能な方法及び装置を特定することの課題に基づいている。さらに,本発明の目的は,基板をコーティングする装置のメンテナンス間隔を増加することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従うと,前記目的は,内部がコートされる基板を受ける様に設計された真空チャンバーと,粒子の衝撃により装置の動作の間に除去されるように意図された少なくとも一つのスパッタリングターゲットを有し,前記装置は,更にスパッタリングターゲットの摩滅を判定する装置を有し, 少なくとも一つの窓が,前記真空チャンバーの壁に配置され,そして,前記スパッタリングターゲットの摩滅を判定する装置が,前記真空チャンバーの外側の少なくとも一つの予め規定されたポイントと,前記スパッタリングターゲットの表面の少なくとも一つの予め規定されたポイントとの間の距離を光学的に測定する測定装置を有し,そして,前記測定装置が,更に視差オフセット及び/又は幾何学的歪みを修正できる評価装置を有する基板をコーティングする装置によって解決される。
【0008】
さらに,前記目的は,基板と少なくとも一つのスパッタリングターゲットが真空チャンバーの内部に導入され,スパッタリングターゲットが,粒子衝撃により除去され,その摩滅が判定される方法であって,前記真空チャンバーの外側の少なくとも一つの事前に規定可能のポイントと前記スパッタリングターゲットの表面上の少なくとも一つの事前に規定可能のポイントとの間の距離が前記真空チャンバーの壁に配置された窓を通して,光学的に測定され,前記測定される距離が,評価装置に供給され,前記評価装置により少なくとも一つの視差オフセット及び/又は光学歪みを修正される基板のコーティング方法によって解決される。
【0009】
本発明に従い,基板をコーティングする装置を囲んで,真空チャンバーの壁に窓を挿入することが提案される。本発明のコンテキストにおいて,窓は,予め規定可能の波長帯域の電磁放射に対して通過可能である真空チャンバーの壁の領域を意味する。実施例として,窓の物質は,ガラス又は水晶を有するもであっても良い。
【0010】
少なくとも一つの予め定義可能な,真空チャンバーの外側の点と,少なくとも一つの予め定義可能な,スパッタリングターゲットの表面の点との間の距離を光学的に測定するために,予め定義可能な波長,及び/又は,予め定義可能な波長範囲の電磁放射が,窓を通してスパッタリングターゲットの表面に向けられ,前記スパッタリングターゲットの表面で反射される。光の反射ビームは,提案された測定装置で受信され,評価される。例えば,前記測定装置とターゲット表面間の距離は,レーザ三角測量の手段により決定できる。発明の他の実施例では,距離は,反射光の位相情報の評価により、あるいは,伝搬時間測定によって決定できる。この目的にために、前記装置により距離の測定のために放出される光は,パルスにされる。波長は,3μm と200nmの間にできる。いくつかの実施例では,波長は,700nm と500nmの間である。
【0011】
スパッタリングターゲットを除去する粒子衝撃は,正極又は負極の電荷イオン,及び/又は中性の原子により引き起こされる。本発明のいくつかの実施例では,粒子衝撃は,電子又はフォトンにより引き起こされる。
【0012】
スパッタリングターゲットの進展する摩滅は,予め規定可能の真空チャンバーの外側と,スパッタリングターゲット表面の少なくとも一つの点との間の距離を増加させる。結果として,ユーザは,予め規定可能の点におけるスパッタリングターゲットの厚みを,時間で判定することができる。距離におけるこの変化がスパッタリングターゲットの既知の厚み以上に大きければ,基板をコートする装置のユーザは,スパッタリングターゲットが完全に消滅したか,その摩耗限界に達したことの明確な表示を受信する。このように,基板をコーティングする方法は,位置決め装置、及び/又は,スパッタリングターゲットのキャリアプレートの材料がイオン衝撃により除去され,基板に堆積される層を汚染する前に,停止することができる。
【0013】
これは,又,これらの要素の物質が,位置決め装置内の冷却ダクト内で循環する冷媒が,真空側面の限定された表面に漏れる程度に除去されるのを確実に防ぐ。
【0014】
距離を光学的に測定するために使用する光ビームがターゲットの通常表面と異なる角度で衝突する場合,測定値の歪み又は視差エラーが生じる。本発明のいくつかの実施例では,測定装置が視差オフセット及び/又は幾何学的歪を訂正する評価装置を有するか,評価装置に接続される。この様にして,スパッタリングターゲットの厚みが相対的に高い精度で判定される。本発明のいくつかの実施例では,スパッタリングターゲットは,測定装置の前を円周パスに沿って移動される。この場合,評価装置は,測定装置により記録された測定値の放物線状の歪みを修正できる様に設計される。評価装置は,マイクロプロセッサあるいはマイクロコントローラを有してもよい。いくつかの実施例では,ソフトウエアがコンピュータ上で実行される場合,評価装置は,対応の修正方法を測定値に適用する前記ソフトウエアを有しても良い。
【0015】
本発明のいくつかの実施例において,装置は更に,操作ポジションから測定ポジションにスパッタリングターゲットを移動できる位置決め装置を有する。これに関して,操作ポジションは,スパッタリングターゲットの位置を意味し,スパッタリングターゲットが,コートされる基板と反対位置に配置され,プラズマからスパッタリングターゲットの表面に衝突する衝撃イオンで除去される。反対に,測定ポジションは,スパッタリングターゲットの表面が真空チャンバーの壁にある窓を通して観察できる位置を意味する。いくつかの実施例では,測定ポジション及び操作ポジションは真空チャンバー内でスパッタリングターゲットと同じ位置とすることができる。本発明の他の実施例では,測定ポジション及び操作ポジションは空間的に異なっても良い。この場合は,測定された値が移動の方向により規定される線に沿って記録される様に,操作ポジションから測定ポジションに転送されるので,測定装置の検出領域にターゲットが移動される。
【0016】
本発明のいくつかの実施例において,位置決め装置は,シリンダーを有し,その側面に少なくとも一つのスパッタリングターゲットが配置される。この実施例では,操作ポジションから測定ポジションへの移動は,シリンダーの単純な回転により行われる。この場合,回転は,真空チャンバー内に配置した電気モータにより,あるいは真空チャンバーの外に配置され,電磁カップリングによりシリンダに接続される駆動装置により与えられる。
【0017】
測定装置は,マウントに可動に配置される。これは,移動の方向に沿ってある複数のポイントで,スパッタリングターゲットの厚み,即ち,摩耗の判断を可能にさせる。この様にして,スパッタリングターゲットが均一に除去されているか否かを確立することが可能である。したがって,スパッタリングターゲットが他のポイントでまだ十分な厚みを有しているけれども,位置決め装置の下側の物質がスパッタリングターゲットの表面の個々の点で除去される状態を回避できる。本発明のいくつかの実施例では,測定装置は,一つの方向におけるターゲットと測定装置間の相対的動きによりスパッタリングターゲットの表面の三次元測定を行うために,反射される放射のためのライン検知器を有することができる。本発明のいくつかの実施例において,測定装置は,ターゲットと測定装置間を動くことなしで,スパッタリングターゲットの表面を三次元測定するために,反射された放射のための領域検知器を有することができる。
【0018】
本発明のいくつかの実施例では,基板をコーティングする装置は,更に,調整装置を有し,これにより,スパッタリングターゲットの摩耗率が事前に規定可能の所望の値に調整され,スパッタリングターゲットの状態を特徴付ける測定値がスパッタリングターゲットの摩耗を決定する装置から供給できる。いくつかの実施例では,調整装置は,スパッタリングターゲットの表面と基板の表面間の距離,及び/又はスパッタリングターゲットの表面とマグネトロンとの間の距離に,操作される変数として影響を与える。この様にして,摩耗率がスパッタリングターゲットの厚みの継続的モニタリングにより決定され,事前に規定可能の所望の値に高度の正確性で調整できる。この実施例では,特に均一の層厚みが基板に堆積できる。
【0019】
いくつかの実施例では,測定装置は,真空チャンバーの外側の少なくと一つの事前に規定可能のポイントとスパッタリングターゲットの表面における複数の事前に規定可能のポイントとの間の距離が判定される様に設計される。これは,測定装置においてラインセンサーの使用を含めることができる。スパッタリングターゲットの層厚は,従って,比較的大きな表面領域において判定できる。スパッタリングターゲットがこの様に備えられた装置を超えて移動すれば,層厚は,ただ一つのパスにおける全表面に渉って測定することができる。これは又,スパッタリングターゲットの不均一な摩耗,及びスパッタリングターゲットの表面状の溝の形成を検知することを可能にし,ポジションと端部のポイントが,測定値から決定される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は,基板をコーティングする装置の概略を示す断面図である。
【図2】図2は,基板をコーティングする装置上面を示す断面図である。
【図3】図3は,測定されたデータの精密修正の原理を示す図である。
【図4】図4は,本発明の一実施例に従う測定装置により記録された生データを示す図である。
【図5】図5は,図4に示す生データの抄録を示す図である。
【図6】図6は,本発明に従い提案された修正後のデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に,図を参照して本発明をより詳細に説明するが,本発明の一般的概念が限定されるものではない。
【0022】
図1は,基板をコーティングする装置1の概略を示す。装置1は,真空チャンバー100で囲まれている。真空チャンバー100は,例えば,金属あるいは合金で作られる。いくつかの実施例において,真空チャンバーは,アルミニウム合金あるいは高品位の鉄で作られる。
【0023】
真空チャンバー100は,接続フランジ150を有し,それを介して,真空チャンバー100は,真空ポンプ(図示せず)に接続される。この実施例では,1x10-5mbar以下,1x10-6 mbar以下,あるいは,1x10-8mbar以下の真空が真空チャンバー内の真空ポンプにより生成される。
【0024】
さらに,真空チャンバー100は,少なくとも一つのガス供給170を有する。例えば,アルゴン,窒素,酸素のスパッタリングガスが真空チャンバーにガス供給170を介して受け入れられる。スパッタリングシステムの動作中,真空チャンバーの内部の圧力は,ガス供給170を通しておよそ1x10-2mbarから10 mbarに調整される,いくつかの実施例では,およそ5x10-2 mbar から1 mbarである。
【0025】
コートされる基板125は,基板ホルダー120に配置される。基板ホルダー120は,少なくとも一枚の基板125を受けるように設計される。基板ホルダー120は,加熱システムあるいは冷却システムを有し,それにより基板125は,あらかじめ決めた温度にされる。基板125は,半導体物質,用具もしくは,人造ガラスである。したがっって,基板125上に堆積されるコーティングは,耐劣化層,金属層,あるいは同種の機能のコーティングである。
【0026】
基板125上に堆積されるコーティングは,少なくともスパッタリングターゲット130, 131, 132, 133, 134及び135の少なくとも一つから堆積される少なくとも一つの要素を有する。加えて,堆積されるコーティングは,例えば,反応ガスとして,あるいは残留ガスからの避けられない不純物として,ガス相から供給される要素を更に有する。
【0027】
スパッタリングターゲット130−135は,位置決め装置110に配置される。図示した実施例において,位置決め装置110は,回転シリンダーの形態である。この様に,図1に示す6つのスパッタリングターゲット130−135の一つのスパッタリングターゲットは,各ケースにおいて,操作ポジション200に導かれる。操作ポジション200において,図1に示す,選択されたスパッタリングターゲットである,ターゲット130は,コートされる基板125の略反対に置かれる。発明の他の実施例では,スパッタリングターゲットの数は,6より少ない。本発明は,解決原理としてある数に限定されない。
【0028】
コーティングシステムの動作の間,電位差が,電源160により基板ホルダー120と,操作ポジション200におけるスパッタリングターゲット130との間に付与される。電位差は,直流電圧として時間で一定であり,交流電圧として時間で変化してもよい。電位差は,コートされる基板125の表面と操作ポジション200に位置するスパッタリングターゲット130間にプラズマが形成される効果を有する。接続フランジ170を介して供給されるスパッタリングガスのイオンがプラズマからスパッタリングターゲット130の表面に加速される。少なくとも部分的に基板125上に堆積されている望ましいコーティングから分離される原子で,スパッタリングターゲット130の材料が結果として除去される。しかし,本発明は,示される実施例に制限されない。本発明の他の実施例において,プラズマは,また,電磁放射,例えば,マイクロウエーブ放射により生成できる。本発明のいくつかの実施例では,スパッタリングターゲット130とコーティングされる基板125の間の所定の空間領域にプラズマを限定するために,及び又はプラズマにおけるエネルギー密度を高めるために,電磁界を生成する少なくとも一つの装置が備えられる。
【0029】
スパッタリングターゲット130が,少なくとも一部領域で完全に原子化されると,位置決め装置110及び/または,ターゲットの下に配置され任意のキャリアプレートが,露出しプラズマに攻撃される。これは,基板125に形成されたコーティングがこれらの物質で汚染される影響を有する。冷却ダクトが位置決め装置110及び/またはキャリアプレートの容積内に配置されていれば,冷却ダクト内で循環する冷媒,例えば,水,圧縮空気が,真空チャンバー100の内部180に逃げる。これらの不都合を回避するために,本発明に従い,ターゲット130が操作ポジション200から測定ポジション250に位置決め装置110の回転によって移動される。図1において,スパッタリングターゲット130は,測定ポジション250内に示される。しかし,言うまでもなく全てのスパッタリングターゲット130−135は,周期的に,あるいは例えば,装置1のユーザがスパッタリングターゲット130の劣化を決定しようとする場合に駆動される態様のいずれかで,位置決め装置110の回転により測定ポジション250に移動される。
【0030】
測定ポジション250において,スパッタリングターゲット131の表面は,窓140を通して見ることができる。窓140は,測定装置300により放射される電磁放射310を透過できる物質で作られる。透過は,少なくとも,わずかな電磁放射が窓を通過し,スパッタリングターゲット131の表面に衝突する時と考える。例として,窓140は,ガラス,水晶,ベリリウムあるいは,それらを含む物からなる。
【0031】
スパッタリングターゲット131の残りの厚みを決定するために,真空チャンバーの外側の少なくとも一つの時前に規定可能のポイント300と,測定装置300により定められるスパッタリングターゲットの表面上の少なくとも一つの時前に規定可能のポイント330との間の距離に対して準備される。例として,少なくとも一つの時前に規定可能のポイント340が,出力レンズ,センサー,歪みミラー,あるいは測定装置300の他の要素の位置により規定できる。他の例では,時前に規定可能のポイント340は,測定ビーム310を生成するレーザの位置によって規定できる。
【0032】
測定装置300から出力される測定ビーム310は,ポイント330でスパッタリングターゲット1310の表面により反射される。光320の反射(帰還)ビームは,窓40を通して真空チャンバーを離れ,測定装置300を用いて確認される。したがって,ポイント340と330の間の距離は,光測定から,例えば,測定ビーム310と反射(帰還)ビーム320との間の位相シフト,光の伝搬時間あるいは,三角測量によって決定できる。本発明のいくつかの実施例では,測定装置300は,空間的分析センサーを有し,それによりスパッタリングターゲット131の表面の複数のポイント330の位置を決定することができる。このように,個々のポイント330のみでなく,スパッタリングターゲット131の表面の複数のポイント330測定することができる。複数のポイント330は線に沿って配置され,あるいはスパッタリングターゲットの表面上に面積的に分配される。
【0033】
スパッタリングターゲット131の摩耗の増加を伴って,スパッタリングターゲット131の表面のポイント330は,位置決め装置110の方向に拡散する。ポイント340と300間の距離は,従って大きくなる。距離の増加は,同時にスパッタリングターゲット131の厚みの減少に対応する。スパッタリングターゲット131が窓140の前で位置決め装置110により回転すると,図1において見えるターゲット131の表面の全体幅が測定できる。このように,スパッタリングターゲットの不均一な摩耗を検知することができる。
【0034】
測定装置300により生成される測定値は,更に評価装置400によって更に処理される。評価装置400は,例えば,視差オフセット及び/または幾何学的歪を訂正することができる。そのような幾何学的歪は,例えば,位置決め装置110の回転から生じる。このように,スパッタリングターゲット131の平面の表面が放物状に精密に示される。評価装置400は,取得した測定値を可視化し,あるいは格納するように設計される。本発明の他の例では,評価装置400は,真空チャンバー100の内部180において進むコーティング処理に影響を与える制御及びまたは調整信号を生成することができる。例として,このように溝の形成を伴うスパッタリングターゲット131の不均一な摩耗を検知でき,即ち,望ましいコーティングレートを維持できる。
【0035】
図2は,高さ方向に図1に示される装置1を示す図である。図2は,順に,内に備えられた基板ホルダー120を有する真空チャンバー100と,基板ホルダー120に配置されたコートされる基板125を示す。スパッタリングターゲット130は,基板125と反対に配置され,操作ポジション200に位置する。装置の動作中,スパッタリングターゲット130は,図1に関連して説明したように,操作ポジション200で除去される。
【0036】
図2は,更に測定ポジション250に位置するスパッタリングターゲット131を示す。測定ポジション250において,スパッタリングターゲット131は,窓140と反対に位置する。図示された窓140は,スパッタリングターゲット131の長さ方向の大きさとおおよそ対応する長い形を有している。この様に,スパッタリングターゲット131の全体表面は窓140を通して観察できる。
【0037】
図2は,更にスパッタリングターゲット131の表面に測定ビーム310を放射する測定装置300を示す。測定ビーム310は,ポイント330のスパッタリングターゲット131の表面で反射し,測定装置300内に光ビーム320として戻る。この様にして,ポイント330でのスパッタリングターゲット131の摩耗が判定できる。
【0038】
スパッタリングターゲット131の表面の他の位置における更なる測定ポイント330を記録するために,測定装置300が,マウント500上に可動的に取り付けられる。測定装置300はこれにより複数の測定値を記録するためにスパッタリングターゲット131の長さに沿って動くことができる。更に,図1に関連して説明したように,位置決め装置110が回転すると,スパッタリングターゲット131の全表面が測定装置300にアクセス可能である。この様に,スパッタリングターゲット131の厚さが全領域に渉って測定可能である。
【0039】
図3は,位置決め装置110に配置された矩形のターゲット131から得られた測定データの精密な修正原理を示す。ここで,新しいターゲットの元の表面が実線で示され,ターゲットの摩滅により操作中に生じる模範的表面プロファイルが破線で示される。
【0040】
位置決め装置110は,縦軸中心に回転可能に取り付けられたシリンダーを有する。図1に関連して既に説明したように,窓140は,シリンダーの側面に横方向に配置される。そして,この窓を通して,窓の直前に位置するターゲット131の表面を観察可能である。位置決め装置110は,窓の前の測定ポジションに種々のターゲットを動かすことが可能である。この動きの間,ターゲット131の全幅が測定装置300の前に動かされ,位置決め装置110の回転の間,断面あるいはプロファイルが動きの方向により規定される断面に沿って生成される。
【0041】
ターゲット131の平面がシリンダーの表面に沿わないので,正確な距離はターゲットとシリンダーとの間の交叉線上の測定点330に対して直接的にのみ測定が可能である。測定点と交叉線間の距離が増加すると,センサーとターゲット表面の距離が小さくなる。その結果として,y方向に放物形歪みと,x方向の圧縮が生じる。これらの歪みは所望の正確な表面情報を得るために提案する評価装置400の手段により修正される。
【0042】
測定ポイント330と測定装置300間の距離が,ターゲット131の摩滅の結果として大きさΔlだけ増加するので,通常表面に対する視野角αでレーザ光の傾斜入射光が表面の測定ポイントの偏位Δxが生じる。本発明のいくつかの実施例では,この偏位は,修正し易い。この場合,偏位Δxとターゲットの現在の摩滅Δyは,ターゲットの測定された摩滅Δlからの入射光の角度αの関数として次の関係式で計算される。
【0043】
【数1】

【0044】
事前に規定可能の操作時間の後ターゲットの測定される摩耗Δlは,事前に規定可能の操作時間後の測定される距離lmeasとコーティング方法の開始時に測定される距離lrefとの間の差分から得られる。放物歪みの本発明に従う修正は,したがって,現在の測定データと,新規の,未消費の同種のターゲットの測定データとの比較に基づく。
【0045】
本発明のいくつかの実施例において,訂正方法が複数の工程で実行される。第一のステップで,y方向の測定データを粗く修正し,平面に放物を投影するために,新しいターゲットlrefの参照測定値が現在の測定値lmeasから引き算される。そして,第二のステップで,粗い修正が,平面即ち,新しいターゲットから決定された,計算された修正関数に基づき,x方向に反映される。この場合,修正関数は,基板をコーティングする装置1,ターゲット131,及び位置決め装置110の幾何学特性から決められる。この修正において,個々のデータポイント間の距離xが計算され,シリンダーの半径,それぞれの測定ポイントの回転速度,又は測定周波数を基に適合される。
【0046】
ターゲットの摩滅と視野角αが追加的な偏位,y方向の一つの歪み(Δy)大きくする。その結果及び,レーザ光の傾斜率から,x方向に更なる歪み(Δx)を与える。これらの追加的な歪みは第三のステップで救済される。新しいターゲット上のポイントのx位置及びΔlが,先行する修正から判る。視野角αの助けにより,Δx と Δyが計算できる。
【0047】
以下の説明において,本発明に従う測定方法の適例が示される。これに関して,図4は,本発明の1つ実施例に従う測定装置により記録された生データを示す。この示される例では,五つのターゲット131,132,133,134,135が,円筒状位置決め装置110の側面に配置されている。位置決め装置110の完全な回転で,それぞれのターゲットは,測定装置330の検知位置に一度移動され,図4に示す生データが記録可能である。ここで,縦座標は,例えば測定装置330の位置により規定される,予め規定可能の固定ポイント間の距離を示す。横座標は,データポイントの連続する数を示し,前記データポイントは,角速度及び測定周波数により,シリンダーの側面の座標,即ち,ターゲット上のx座標に変換される。
【0048】
図5は,図4に示す生データからの拡大した引用を示す。ここで,図5に示す領域は,合計5つのスパッタリングターゲットの個々のスパッタリングターゲットに記録された測定値に対応する。示される測定値は,コーティング方法に既に使用されたターゲットに対する記録であった。したがって,材料摩耗あるいは摩滅を示す。図5からこの摩滅は,幾何学的歪みの結果として測定装置に重畳し,従ってスパッタリングシステム1の使用者により確認できない。
【0049】
図6は,本発明に従う修正方法が実行された後の図5に示すデータを示す。図6から,ターゲット表面がおよそ0.2 - 0.3 mmの深さの二つのくぼみ,即ち縦溝を有することを示している。ターゲット材料の摩滅は,このように,本発明に従う方法によって,基板のコーティングのための装置1の動作の妨げずに高い精度で判定できる。
【0050】
上記の説明は,制限されるのものではなく,例示とみなされべきものである。以下の記述及び請求項は,説明される特徴が,少なくとも本発明の実施例に存在することを意味しているものと理解されるべきである。これは,更なる特徴を排除するものではない。請求項又は説明が“第一”及び“第二”の特徴を規定する場合,二つの同一の特徴を区別するものであって,それらのいずれかに優先度を与えるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部(180)がコートされる基板(125)を受ける様に設計された真空チャンバー(100)と,粒子の衝撃により装置(1)の動作の間に除去されるように意図された少なくとも一つのスパッタリングターゲット(130)を有し,
前記装置(1)は,更にスパッタリングターゲット(130)の摩滅を判定する装置(300)を有し, 少なくとも一つの窓(140)が,前記真空チャンバー(100)の壁に配置され,そして,前記スパッタリングターゲットの摩滅を判定する装置が,前記真空チャンバーの外側の少なくとも一つの予め規定されたポイント(340)と,前記スパッタリングターゲット(131)の表面の少なくとも一つの予め規定されたポイント(330)との間の距離を光学的に測定する測定装置(300)を有し,
前記測定装置(300)が,更に視差オフセット及び/又は幾何学的歪みを修正できる評価装置(400)を有する,
ことを特徴とする基板をコーティングする装置。
【請求項2】
スパッタリングターゲット(130, 131, 132, 133, 134, 135) を操作ポジション(200)から測定ポジション (250)に移動できる位置決め装置(110)を有する,
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記位置決め装置(110)は,側面に少なくとも一つのスパッタリングターゲット(130, 131, 132, 133, 134, 135)が配置されるシリンダーを有する,
ことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記測定装置(300)はレーザー三角測量及び又は/干渉計を有する,
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記測定装置は,真空チャンバーの外の少なくとも一つの事前に規定されるポイントとスパッタリングターゲットの表面上の複数の事前に規定されるポイントとの間の距離を判定する様に設計されている,
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記測定装置(300)は,マウント(500)上に可動に配置されている,
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
さらに,前記スパッタリングターゲット(130)の摩滅率を事前に規定される所望の値に調整する調整装置を有し,当該装置にスパッタリングターゲットの状態を特徴付ける測定値が,前記スパッタリングターゲットの摩耗を測定する装置(300)から供給される,
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記測定装置(300)は,前記真空チャンバーの外側の少なくとも一つの事前に規定可能のポイント(340)と前記スパッタリングターゲット(131)の表面上の複数の事前に規定可能のポイント(330)との間の距離を判定する様に設計されている,
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
基板(125)と少なくとも一つのスパッタリングターゲット(130)が真空チャンバー(100)の内部に導入され,スパッタリングターゲット(130)が,粒子衝撃により除去され,その摩滅が判定される方法であって,前記真空チャンバー(100)の外側の少なくとも一つの事前に規定可能のポイント(340)と前記スパッタリングターゲット(131)の表面上の少なくとも一つの事前に規定可能のポイント(330)との間の距離が前記真空チャンバー(100)の壁に配置された窓(140)を通して,光学的に測定される,基板のコーティング方法であって,
前記測定される距離が,評価装置に供給され,前記評価装置により少なくとも一つの視差オフセット及び/又は光学歪みを修正される,
ことを特徴とする基板のコーティング方法。
【請求項10】
前記スパッタリングターゲット(130)の厚みが,事前の既定値以下に成る場合に中止される,
ことを特徴とする請求項9に記載の基板のコーティング方法。
【請求項11】
新規のターゲット(131)の参照測定値データlrefが現在の測定値データlmeasから差し引かれる第一のステップにおいて,少なくとも視差オフセット及び/又は光学歪みが修正される,
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の基板のコーティング方法。
【請求項12】
計算された修正関数に基づく修正がx方向に効果を与える第二のステップにおいて,視差オフセット及び/又は光学歪みが修正される,
ことを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載の基板のコーティング方法。
【請求項13】
前記修正関数は,平板ターゲットで決められ,基板(125)のコーティング装置(125)及ターゲット(131)の幾何学的特性を表す,
ことを特徴とする請求項12に記載の基板のコーティング方法。
【請求項14】
基準平面に対する視野角αからの測定データ及びターゲットの測定される摩滅Δ1の精密な修正が,下記の式に従い実行される,
【数2】

ことを特徴とする請求項9乃至13のいずれかに記載の基板のコーティング方法。
【請求項15】
コンピュータプログラムであるとき,コンピュータ上で実行される,請求項9乃至14のいずれかに記載の方法を実行するプログラム。
【請求項16】
コンピュータプログラムが,コンピュータ上で実行されるとき,請求項9乃至14のいずれかに記載の方法を実行する,読み取り可能の記録媒体に格納された,プログラムコードを有するコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−511619(P2013−511619A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539335(P2012−539335)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067820
【国際公開番号】WO2011/061288
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(591037214)フラウンホッファー−ゲゼルシャフト ツァ フェルダールング デァ アンゲヴァンテン フォアシュンク エー.ファオ (259)
【出願人】(399123085)ジングルス・テヒノロギース・アクチェンゲゼルシャフト (6)
【氏名又は名称原語表記】SINGULUS TECHNOLOGIES AG
【Fターム(参考)】