説明

基板ホルダ、ステージ装置、貼り合わせ装置および積層半導体装置の製造方法

【課題】真空吸着機構からの基板の落下を防止する。
【解決手段】基板を保持する保持領域を有する本体と、本体における保持領域の外周に配され、保持領域を下向きにして本体が支持された状態で本体の落下を防止する落下防止部材が係合する係合部とを備える基板ホルダが提供される。また、基板を保持する保持領域および保持領域の外周に配された係合部を有する基板ホルダをその保持領域が下方を向いた状態で保持する上ステージと、上ステージに保持された基板ホルダの係合部に係合して基板ホルダの落下を防止する落下防止位置と、基板ホルダの外方へ退避する退避位置との間で移動可能な落下防止部材とを備えるステージ装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板ホルダ、ステージ装置、貼り合わせ装置および積層半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、装置の上部にある第1テーブルに、第1ウエハを保持する第1ホルダを第1ウエハが下向きになるように保持させ、装置の下部にある第2テーブルに、第2ウエハを保持する第2ホルダを第2ウエハが上向きになるように保持させて、両ウエハを重ね合わせるウエハ重ね合わせ装置が開示されている。ここで、第1、第2ホルダを第1、第2ステージに保持する方法として、真空吸着又は静電吸着等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−251972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
真空吸着又は静電吸着等の手段により基板を保持する場合において、何らかの予想外の原因により、真空又は電力が切れてしまったとき、基板が落下する危険がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、基板を保持する保持領域を有する本体と、前記本体における前記保持領域の外周に配され、前記保持領域を下向きにして前記本体が支持された状態で前記本体の落下を防止する落下防止部材が係合する係合部とを備える基板ホルダが提供される。
【0006】
本発明の第2の態様においては、基板を保持する保持領域および前記保持領域の外周に配された係合部を有する基板ホルダをその前記保持領域が下方を向いた状態で保持する上ステージと、前記上ステージに保持された前記基板ホルダの前記係合部に係合して前記基板ホルダの落下を防止する落下防止位置と、前記基板ホルダの外方へ退避する退避位置との間で移動可能な落下防止部材とを備えるステージ装置が提供される。
【0007】
本発明の第3の態様においては、上記ステージ装置を備える貼り合わせ装置が提供される。
【0008】
本発明の第4の態様においては、基板を保持する保持領域および前記保持領域の外周に配された係合部を有する基板ホルダをその前記保持領域が下方を向いた状態で上ステージに保持するステップと、前記上ステージに保持された前記基板ホルダの前記係合部に落下防止部材を係合させることにより、前記基板ホルダの落下を防止するステップと、他の基板を保持する他の基板ホルダを、前記他の基板が上方を向いた状態で下ステージに保持するステップと、前記基板および前記他の基板を貼り合わせるステップとを備える積層半導体装置の製造方法が提供される。
【0009】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】貼り合わせ装置100の全体構造を模式的に示す平面図である。
【図2】ステージ装置140の構造を概略的に示す。
【図3】ステージ装置140の動作を概略的に示す。
【図4】上基板ホルダ124を上方から見下ろす様子を概略的に示す。
【図5】上基板ホルダ124を下方から見上げる様子を概略的に示す。
【図6】下基板ホルダ125を上方から見下ろす様子を概略的に示す。
【図7】上ステージ141における落下防止機構150の構造を概略的に示す。
【図8】上ステージ141における落下防止機構150のオン状態を示す。
【図9】落下防止機構150と上基板ホルダ124との位置関係を概略的に示す。
【図10】上ステージ141における落下防止機構150の他の実施態様を示す。
【図11】積層半導体装置の製造方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
図1は、貼り合わせ装置100の全体構造を模式的に示す平面図である。貼り合わせ装置100は、共通の筐体102の内部に形成された常温部104および高温部106を含む。
【0013】
貼り合わせ装置100は、さらに筐体102の常温部104側の外部に面して複数の基板カセット112、114、116を有する。基板カセット112、114、116は、貼り合わせ装置100において接合される基板122を収容する。基板カセット112、114、116は、筐体102に対して脱着自在に装着される。
【0014】
常温部104は、プリアライナ126、ステージ装置140、基板ホルダラック128および基板取り外し部130、並びに、一対のロボットアーム132、134を備える。常温部104の内部は、貼り合わせ装置100が設置された環境の室温と略同じ温度が維持されるように温度管理される。
【0015】
プリアライナ126は、高精度であるが故に狭いステージ装置140の調整範囲に基板122の位置が収まるように、個々の基板122の位置を仮合わせする。これにより、ステージ装置140における位置決めを確実にすることができる。
【0016】
基板ホルダラック128は、複数の上基板ホルダ124および複数の下基板ホルダ125を収容して待機させる。上基板ホルダ124又は下基板ホルダ125による基板122の保持は、例えば静電吸着による。
【0017】
ステージ装置140は、上ステージ141および下ステージ142を含む。また、ステージ装置140を包囲して断熱壁145およびシャッタ146が設けられる。断熱壁145およびシャッタ146に包囲された空間は、空調機等に連通して温度管理されており、これによりステージ装置140における位置合わせ精度を維持する。
【0018】
ステージ装置140において、下ステージ142は、基板122を保持した下基板ホルダ125を移動する。これに対して、上ステージ141は固定された状態で、上基板ホルダ124および基板122を保持する。さらにステージ装置140において、下ステージ142を上昇させることにより、下基板ホルダ125と上基板ホルダ124との間に一対の基板122を挟む。
【0019】
基板取り外し部130は、高温部106の加圧部240から搬出された上基板ホルダ124および下基板ホルダ125に挟まれて接合された基板122を取り出す。基板ホルダから取り出された基板122は、ロボットアーム134、132および下ステージ142により基板カセット112、114、116のうちのひとつに戻されて収容される。基板122を取り出された上基板ホルダ124および下基板ホルダ125は、基板ホルダラック128に戻されて待機する。
【0020】
なお、貼り合わせ装置100に装填される基板122は、単体のシリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、ガラス基板等の他、それらに素子、回路、端子等が形成されたものであってよい。装填された基板122が、既に複数のウエハを積層して形成された積層基板である場合もある。
【0021】
一対のロボットアーム132、134のうち、基板カセット112、114、116に近い側に配置されたロボットアーム132は、基板カセット112、114、116、プリアライナ126およびステージ装置140の間で基板122を搬送する。また、ロボットアーム132は、接合する基板122の一方を裏返す機能も有する。これにより、基板122において回路、素子、端子等が形成された面を対向させて接合することができる。
【0022】
一方、基板カセット112、114、116から遠い側に配置されたロボットアーム134は、ステージ装置140、基板ホルダラック128、基板取り外し部130、基板ホルダラック128およびエアロック220の間で基板122、上基板ホルダ124および下基板ホルダ125を搬送する。ロボットアーム134は、基板ホルダラック128に対して、上基板ホルダ124および下基板ホルダ125を搬入および搬出する。
【0023】
高温部106は、断熱壁108、エアロック220、ロボットアーム230および複数の加圧部240を有する。断熱壁108は、高温部106を包囲して、高温部106の高い内部温度を維持すると共に、高温部106の外部への熱輻射を遮断する。
【0024】
ロボットアーム230は、加圧部240のいずれかとエアロック220との間で基板122、上基板ホルダ124および下基板ホルダ125を搬送する。エアロック220は、常温部104側と高温部106側とに、交互に開閉するシャッタ222、224を有する。
【0025】
基板122、上基板ホルダ124および下基板ホルダ125が常温部104から高温部106に搬入される場合、まず、常温部104側のシャッタ222が開かれ、ロボットアーム134が基板122、上基板ホルダ124および下基板ホルダ125をエアロック220に搬入する。次に、常温部104側のシャッタ222が閉じられ、高温部106側のシャッタ224が開かれる。
【0026】
続いて、ロボットアーム230が、エアロック220から基板122、上基板ホルダ124および下基板ホルダ125を搬出して、加圧部240のいずれかに装入する。加圧部240は、上基板ホルダ124と下基板ホルダ125に挟まれた状態で加圧部240に搬入された基板122を加熱および加圧する。これにより基板122は恒久的に接合される。なお、加圧部240は、基板122を加熱せずに加圧することで基板122を接合してもよい。
【0027】
高温部106から常温部104に基板122、上基板ホルダ124および下基板ホルダ125を搬出する場合は、上記の一連の動作を逆順で実行する。これらの一連の動作により、高温部106の内部雰囲気を常温部104側に漏らすことなく、基板122、上基板ホルダ124および下基板ホルダ125を高温部106に搬入または搬出できる。
【0028】
このように、貼り合わせ装置100内の多くの領域において、上基板ホルダ124又は下基板ホルダ125は、基板122を保持した状態でロボットアーム134、230および下ステージ142に搬送される。基板122を保持した上基板ホルダ124又は下基板ホルダ125が搬送される場合、ロボットアーム134、230は、真空吸着、静電吸着等により上基板ホルダ124又は下基板ホルダ125を吸着して保持してよい。また、上基板ホルダ124又は下基板ホルダ125は、静電吸着により基板122を吸着して保持してよい。
【0029】
図2は、ステージ装置140の構造を概略的に示す。ステージ装置140は、枠体310の内側に配された上ステージ141、下ステージ142および昇降部360を備える。
【0030】
枠体310は、互いに平行で水平な天板312および底板316と、天板312および底板316を結合する複数の支柱314とを備える。天板312、支柱314および底板316は、それぞれ高剛性な材料により形成され、内部機構の動作に係る反力が作用した場合も変形を生じない。なお、貼り合わせ装置100に組み込まれた場合は、支柱314相互の間は断熱壁145により封止される。
【0031】
上ステージ141は、天板312の下面に固定される。上ステージ141は、基板122を下面に保持する上基板ホルダ124を吸着する。当該吸着方法は、真空吸着であってよく、静電吸着であってもよい。基板122は、静電吸着により上基板ホルダ124の下面に保持されて、後述するアラインメントの対象の一方となる。
【0032】
上ステージ141は、上基板ホルダ124の落下を防止する落下防止機構150を有する。落下防止機構150は、上基板ホルダ124の吸着機構が何らかの原因によって効力を失ったときに、上基板ホルダ124の落下を防止する。例えば上基板ホルダ124が真空吸着によって上ステージに吸着された場合に、予想外の停電等により真空が切れてしまい、真空吸着が外れたとき、上基板ホルダ124が落下防止機構150により受け取られるので、下ステージ142等に落下することを防止できる。
【0033】
下ステージ142は、Xステージ354およびYステージ356を有する。Xステージ354は、底板316の上に載置され、底板に対して固定されたガイドレール352に案内されつつX方向に移動する。Yステージ356は、Xステージ354の上でY方向に移動する。
【0034】
昇降部360は、下ステージ142上に搭載され、シリンダ362およびピストン364を有する。ピストン364は、外部からの指示に応じて、シリンダ362内をZ方向に昇降する。ピストン364の上に、下吸着プレート372が設けられ、その上に下基板ホルダ125が保持される。更に、下基板ホルダ125上に別の基板122が保持される。基板122は、後述するアラインメントの対象の一方となる。
【0035】
下ステージ142は、更に、プッシュアップピン320を有する。基板122を保持した上基板ホルダ124を上ステージ141に固定する場合に、ロボットアーム134が基板122を保持した上基板ホルダ124を裏返して、下吸着プレート372から所定の高さに上昇したプッシュアップピン320に乗せる。上基板ホルダ124が上ステージ141の下に来るように、下ステージ142が移動される。プッシュアップピン320がさらに上昇して、上基板ホルダ124を上ステージ141に近づけて、真空吸着等により上基板ホルダ124を上ステージに保持する。説明の便利を考慮して、図2には、2本のプッシュアップピン320を表示したが、3本のプッシュアップピン320が下吸着プレート372の面内に、120°間隔で円周上に配置されてよい。
【0036】
なお、各基板122の各々は、その表面(図上では下面)に、アラインメントの基準となる複数のアラインメントマークMを有する。ただし、アラインメントマークMは、そのために設けられた図形等であるとは限らず、各基板122に形成された配線、バンプ、スクライブライン等でもあり得る。
【0037】
ステージ装置140は、一対の顕微鏡342、344を有する。一方の顕微鏡342は、天板312の下面に、上ステージ141に対して所定の間隔をおいて固定される。他方の顕微鏡344は、下ステージ142に、昇降部360と共に搭載される。これにより顕微鏡344は、昇降部360と共に、XY平面上を移動する。ステージ装置140が図示の状態にある場合に、顕微鏡342、344を用いて、対向する基板122のアラインメントマークMを観察し、基板122の正確な位置を検出する。
【0038】
図3は、ステージ装置140の動作を概略的に示す。同図に示すように、下ステージ142がX方向に移動される。両基板122のアラインメントマークMがそれぞれ統計的に算出された位置に配置されるように、下基板ホルダ125に保持された基板122は上基板ホルダ124に保持された基板122の下に搬送される。
【0039】
なお、ステージ装置140は、貼り合わせ装置100に限らず、他の用途にも使用し得る。また、ステージ装置140において、接合した基板122を加圧および加熱することにより、加圧部240を省略した貼り合わせ装置100を形成することもできる。
【0040】
図4は、上基板ホルダ124を上方から見た斜視図である。図5は、同じ上基板ホルダ124を下方から見た斜視図である。この上基板ホルダ124は、基板122をその下面に保持する。上基板ホルダ124は、上基板ホルダ本体402と、電圧印加端子406と、永久磁石404と、溝部408とを有する。上基板ホルダ124の外形は、基板122よりも径がひとまわり大きな円板状をなす。
【0041】
上基板ホルダ本体402は、セラミックス、金属等の高剛性材料により一体成形されてよい。上基板ホルダ本体402は、その下面において基板122を保持する基板保持領域を有する。当該領域が高い平坦性を有して、基板122を吸着する。基板122を吸着する方法としては、静電吸着が例示できる。図5は、基板保持領域に基板122を保持した状態の上基板ホルダ124を示す。
【0042】
上基板ホルダ本体402における上記基板保持領域の外周に、溝部408が形成される。溝部408は、上基板ホルダ本体402の下面側が開放され、外周から内に向かって形成される。溝部408は、上基板ホルダ124が基板保持領域が下方を向くようにして上ステージに保持された場合に、上基板ホルダ124の落下を防止する後述の落下防止機構150の爪502を収容できる。溝部408は、基板保持領域の外周に互いに120度間隔に三つ配される。これにより、上ステージ141から上基板ホルダ124が離脱したときに、落下防止機構150によってバランスよく上基板ホルダ124を受け取ることができる。
【0043】
上基板ホルダ124に、落下防止機構150の爪502を収容する構造として、溝部408を設けることにより、上基板ホルダ124の下方に爪502が進出した場合に当該爪502が下基板ホルダ125に当接することなく上下の基板122間の距離を短く保つことができる。また、穴を設けることに比べ、薄い上基板ホルダ124にも容易に溝部408が形成できる。さらに当該溝部408により、落下防止機構150の爪502に受け取られた上基板ホルダ124の横すべりを防止できるので、爪502に受け取られた上基板ホルダ124を上ステージ141に再吸着して再利用しやすい。
【0044】
永久磁石404は、基板保持領域の外周に複数配されてよい。図4においては二つ一組の永久磁石404が、基板保持路領域の外周において互いに120度間隔で三組配される。溝部408は、永久磁石404の近傍、例えば一組の永久磁石404の間に配され、したがって互いに120度間隔で三つ配される。永久磁石404は、後述の下基板ホルダ125に設けられた吸着子414を磁力により吸着して、上基板ホルダ124と下基板ホルダ125とを結合させ、上基板ホルダ124と下基板ホルダ125との間に保持された基板122の位置を維持する。永久磁石404は、上基板ホルダ本体402に保持された基板122の表面と共通の平面内に、永久磁石404の下面が位置するように配されてよい。
【0045】
電圧印加端子406は、基板122を保持する下面と反対の裏面において、上基板ホルダ本体402に埋め込まれる。電圧印加端子406を介して電圧を印加することにより、上基板ホルダ124と基板122との間に電位差を生じさせて、基板122を上基板ホルダ124に吸着する。
【0046】
図6は、下基板ホルダ125を上方から見た斜視図である。下基板ホルダ125の上面には、基板122が保持されている。下基板ホルダ125は、下基板ホルダ本体412および吸着子414を有する。下基板ホルダ125の外形は、基板122よりも径がひとまわり大きな円板状をなす。
【0047】
下基板ホルダ本体412は、セラミックス、金属等の高剛性材料により一体成形されてよい。下基板ホルダ本体412は、その表面において基板122を保持する領域が高い平坦性を有して、保持する基板122に接する。
【0048】
吸着子414は、磁性体材料により形成され、基板122を保持する表面において、保持した基板122よりも外側に複数配されてよい。吸着子414は、基板122を保持する平面と略同じ平面内に、吸着子414の上面が位置するように、下基板ホルダ本体412に形成された陥没領域に配されてよい。
【0049】
下基板ホルダ本体412は、基板122を保持する表面に対して裏面において、更に図示しない電圧印加端子を有する。当該電圧印加端子を介して電圧を印加することにより、下基板ホルダ125と基板122との間に電位差を生じさせて、基板122を下基板ホルダ125に吸着してよい。
【0050】
図1の貼り合わせ装置100では、ステージ装置140において、それぞれが基板122を保持した上基板ホルダ124と下基板ホルダ125とを位置合わせして、当接させ、加圧部240において当接させた二枚の基板122を接合させる。このため、ステージ装置140から加圧部240に搬送される間は、接合されていない基板122の相対位置を維持することが求められる。このような要求に対して、下基板ホルダ125の吸着子414を上基板ホルダ124の永久磁石404に吸着させることにより、一対の基板122が下基板ホルダ125および上基板ホルダ124から挟みつけられて、相対位置を保持できる。
【0051】
図7は、上ステージ141における落下防止機構150の構造を概略的に示す。図7は、落下防止機構150の爪502の退避位置を示す。図8は、上ステージ141における落下防止機構150の爪502の落下防止位置を示す。
【0052】
図7に示すように、上ステージ141には、上吸着プレート512および給電部材506が設けられる。上ステージ141は、上吸着プレート512を介して上基板ホルダ124を吸着する。上ステージ141と上吸着プレート512との間に検知部508が設けられる。
【0053】
給電部材506は、上吸着プレート512に吸着された上基板ホルダ124の裏面に設けられた電圧印加端子406に当接し、これにより電圧が印加される。電圧印加端子406に電圧を印加することにより、上基板ホルダ124と基板122との間に電位差を生じさせて、基板122を上基板ホルダ124に吸着できる。説明の便利を考慮して、図7および図8において、上吸着プレート512の両側に給電部材506を示したが、これは給電部材506の位置を限定するものではい。給電部材506は、上吸着プレート512に吸着される上基板ホルダ124の電圧印加端子406に対応する位置に、上ステージ141に配置されてよい。
【0054】
給電部材506は、バネ部材により上ステージ141に取り付けられ、一定の範囲において鉛直方向に移動できる。上吸着プレート512が上基板ホルダ124を吸着しない状態では、給電部材506は、図8の破線で示すように、バネ部材により下方に進出した状態にある。上吸着プレート512が上基板ホルダ124を吸着するときは、給電部材506は、上基板ホルダ124によって上方に押し込まれる状態になる。この場合に、給電部材506の先端がバネ部材の弾性力により上基板ホルダ124の電圧印加端子406に押し付けられて着実に接触できる。図8において、上基板ホルダ124が吸着されない状態と吸着された状態とにおける給電部材506の移動量をcで表す。
【0055】
検知部508は、上基板ホルダ124を介して上ステージ141に保持された基板122と下基板ホルダ125を介して下ステージ142に保持された基板122とが当接したことを検知する。これにかえて、検知部508は、上基板ホルダ124が上ステージ141から離脱したことを検知してもよい。さらに検知部508は、上記双方の事象を検知してもよい。検知部508の例として、ロードセルなどが例示できる。
【0056】
落下防止機構150は、爪502と、ベローズ503と、アクチュエータ504と、固定部材505とを有する。アクチュエータ504は、固定部材505を介して上ステージ141に固定される。アクチュエータ504は、爪502を進退させる。アクチュエータ504は、エアシリンダであってよい。爪502は、上基板ホルダ124の溝部408の下に進出できる部分以外の部分がベローズ503により覆われる。この構造により、アクチュエータ504からの発塵を抑制できる。
【0057】
図7に示す状態において、アクチュエータ504は、上基板ホルダ124と爪502とが上下方向で干渉しない退避位置に爪502を退避させる。さらに、図8に示すようにアクチュエータ504は、上吸着プレート512に吸着された上基板ホルダ124の溝部408に向けて、上基板ホルダ124を保持できる落下防止位置に爪502を進出させる。
【0058】
図9は、図8の状態で、下から観察した上基板ホルダ124の底面であって、落下防止機構150と上基板ホルダ124との位置関係を概略的に示す。アクチュエータ504は、溝部408の位置に対応して120度間隔で円周上に三つ配置される。この構造より、上ステージ141から上基板ホルダ124が離脱したときに、落下防止機構150の三つの爪502によりバランスよく上基板ホルダ124を受け取ることができる。
【0059】
図8および図9に示すように、上基板ホルダ124が上ステージ141に吸着された状態では、爪502は、溝部408に対して上下方向に間隙を保った状態で落下防止位置に進出できる。すなわち、上基板ホルダ124が離脱して、爪502により受け取られる場合を除き、爪502は、溝部408に触れない状態で進退できる。
【0060】
図8に示すように、爪502と溝部408の上端との間隙aは、給電部材506の移動量cより小さい。よって、上基板ホルダ124が上吸着プレート512から離脱して、落下防止機構150により受け取られた状態でも、給電部材506は、電圧印加端子406との接触を保ち、電力供給を維持できるので、基板122の吸着を維持できる。
【0061】
前述のとおり、下ステージ142に搭載された昇降部360が、上ステージ141に対して、ピストン364の上面に保持された下基板ホルダ125を上下に進退する。爪502と溝部408の上端との間隙aは、上ステージ141に対し昇降部360が退避している状態において、上下基板ホルダに保持された基板122の間の間隔bより小さい。よって、上基板ホルダ124が上吸着プレート512から離脱して、落下防止機構150により受け取られた状態でも、上下基板ホルダに保持された基板122が互いに接触することはなく、基板122の破壊を回避できる。
【0062】
図9に示すプッシュアップピン当接位置602は、ロボットアーム132又はロボットアーム134によって、上基板ホルダ124が図2に示すプッシュアップピン320の上に乗せたときに、プッシュアップピン320が当接する位置である。プッシュアップピン当接位置602は、複数の溝部408の間に配置される。
【0063】
図10は、上ステージ141における落下防止機構150の他の実施態様を示す。爪502の一端は、固定部材505を介して上ステージ141に固定される。爪502は、図示しないアクチュエータにより、実線で示された位置と破線で示された位置の間で回転できる。実線の位置は、落下防止機構150の爪502の落下防止位置を示し、上基板ホルダ124の落下を防止できる状態を示す。破線の位置は爪502の退避位置を示す。図10に示す落下防止機構150は、図7および図8に示す落下防止機構150に比して、爪502の駆動方式が異なるだけであって、他の構成および爪502を進退させるタイミング等については、同じであってよい。
【0064】
図11は、図1の貼り合わせ装置100を用いて積層半導体装置を製造する製造方法のフローチャートを示す。
【0065】
まず、上基板ホルダ124が上ステージ141に保持される(S810)。ステップS810において、上基板ホルダ124が上ステージ141に搬送される前は、落下防止機構150は爪502を退避位置に退避させておく。これにより、上基板ホルダ124を上吸着プレート512に近づけて、真空吸着等により上吸着プレート512に保持させる過程において、移動中の上基板ホルダ124が落下防止機構150と衝突することを防止できる。
【0066】
ロボットアーム132により、基板カセット112、114、116のいずれかに収容されている基板122が一枚ずつプリアライナ126に搬入され、仮に位置決めがされる。ロボットアーム134は、一枚の上基板ホルダ124を下ステージ142に搭載して、ロボットアーム132の近傍まで搬送させる。ロボットアーム132は、この上基板ホルダ124に、基板122を搭載して保持させる。
【0067】
下ステージ142が再びロボットアーム134の側に移動する。ロボットアーム134が基板122を保持した上基板ホルダ124を裏返して、下吸着プレート372から所定の高さに上昇したプッシュアップピン320の上に乗せる。上基板ホルダ124が上ステージ141の下に来るように、下ステージ142が移動される。プッシュアップピン320がさらに上昇して、上基板ホルダ124を上ステージ141に近づけて、真空吸着等により上基板ホルダ124を上吸着プレート512に保持する。
【0068】
次に、落下防止機構150の爪502を進出させる(S820)。このステップS820において、上ステージ141に上基板ホルダ124が保持され、吸着が確認された後、アクチュエータ504は、上吸着プレート512に吸着された上基板ホルダ124の溝部408に向けて爪502を落下防止位置に進出させる。例えば真空吸着の場合における真空度の変化により吸着を確認した後、アクチュエータ504は、爪502を進出させる。
【0069】
ステップS820において、上記に代えて爪502の進出がタイミングによって制御されてもよい。例えば、ロボットアーム134が基板122を保持した上基板ホルダ124を裏返してプッシュアップピン320に乗せて、上基板ホルダ124が上ステージ141の下に来るように、下ステージ142が移動された時から、所定の時間を経過した時点で、爪502が落下防止位置に進出するように制御されてよい。「所定の時間」は、例えば、プッシュアップピン320を上昇させて、上基板ホルダ124を上ステージ141に近づけて、真空吸着等により上基板ホルダ124を上ステージ141に保持するまでに要するとして設定された時間である。
【0070】
次に、下基板ホルダ125を下ステージ142に保持する(S830)。ステップS830において、ロボットアーム134は、一枚の下基板ホルダ125を下ステージ142に搭載して、ロボットアーム132の近傍まで搬送させる。ロボットアーム132は、この下基板ホルダ125に、仮位置決めされた基板122を搭載して保持させる。このステップにおいて、落下防止機構150は、爪502の落下防止位置を維持する。
【0071】
さらに、一対の基板122を貼り合わせる(S840)。ステップS840において、下ステージ142を精密に移動させて、上基板ホルダ124を介して上ステージ141に保持された基板122に対して、下基板ホルダ125に保持された基板122の位置を合わせて、両基板を当接させる。検知部508により、上下基板ホルダに保持された基板122が当接したことが検知されたら、アクチュエータ504は、爪502を退避位置に退避させる。即ち、上基板ホルダ124が落下するおそれがないことを確認してから、爪502が退避位置に退避する。次の上基板ホルダ124を上ステージ141に保持するまでに、爪502は退避状態を維持する。
【0072】
当接した基板122を挟んだ上基板ホルダ124および下基板ホルダ125は、ロボットアーム134によりエアロック220に搬送される。エアロック220に搬送された基板122、上基板ホルダ124および下基板ホルダ125は加圧部240に装入される。加圧部240において加熱および加圧されることにより、基板122は互いに接合されて一体になる。その後、基板122、上基板ホルダ124および下基板ホルダ125は、高温部106から搬出されて、基板取り外し部130において基板122が上基板ホルダ124および下基板ホルダ125から分離される。貼り合わされた基板122は、基板カセット112、114、116のいずれかに搬送して収容される。所定枚数の基板が貼り合わされた後に、個片化される。以上のプロセスにより、積層半導体装置が製造される。
【0073】
なお、ステップS820の後に検知部508により上基板ホルダ124が上吸着プレート512から離脱したことが検知された場合に、落下防止機構150により受け取った上基板ホルダ124を再び上吸着プレート512に吸着させるステップを加えてよい。例えば上吸着プレート512の吸引力を上げたりまたはプッシュアップピンで押し上げることにより、受け取った上基板ホルダ124を持ち上げ、上吸着プレート512に近づけて再び吸着させる。これにより、落下防止機構150が上基板ホルダ124を受け取った後、短時間でステージ装置140を再稼動でき、生産ラインのスループットを向上できる。
【0074】
アクチュエータ504は、駆動力が供給されない状態において爪502が落下防止位置に進出する構造を有することが好ましい。この構造により、例えば、予想外の停電等により駆動力が供給されない状態でも、落下防止機構150は、その役割を果たすことができる。
【0075】
これに代えて、アクチュエータ504は、駆動力が供給されない状態において爪502が退避位置に退避する構造を有してもよい。この場合に、落下防止機構150は、検知部508により上基板ホルダ124が上吸着プレート512から離脱したことを検知した場合に、上基板ホルダ124に向けて、爪502を落下防止位置に進出させてよい。即ち、上基板ホルダ124の離脱を検知して、爪502を進出させてそれを受け取るように制御されてよい。このように落下防止機構150を制御する場合には、落下防止部材を進出させるステップS820を省略してよい。この制御により、アクチュエータ504を動かす回数を減らすことができ、発塵を抑制し、スループットを向上できる。
【0076】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0077】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0078】
100 貼り合わせ装置、102 筐体、104 常温部、106 高温部、108 断熱壁、112 基板カセット、114 基板カセット、116 基板カセット、122 基板、124 上基板ホルダ、125 下基板ホルダ、126 プリアライナ、128 基板ホルダラック、130 基板取り外し部、132 ロボットアーム、134 ロボットアーム、140 ステージ装置、141 上ステージ、142 下ステージ、145 断熱壁、146 シャッタ、150 落下防止機構、220 エアロック、222 シャッタ、224 シャッタ、230 ロボットアーム、240 加圧部、310 枠体、312 天板、314 支柱、316 底板、320 プッシュアップピン、342 顕微鏡、344 顕微鏡、352 ガイドレール、354 Xステージ、356 Yステージ、360 昇降部、362 シリンダ、364 ピストン、372 下吸着プレート、402 上基板ホルダ本体、404 永久磁石、406 電圧印加端子、408 溝部、412 下基板ホルダ本体、414 吸着子、502 爪、503 ベローズ、504 アクチュエータ、505 固定部材、506 給電部材、508 検知部、512 上吸着プレート、602 プッシュアップピン当接位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する保持領域を有する本体と、
前記本体における前記保持領域の外周に配され、前記保持領域を下向きにして前記本体が支持された状態で前記本体の落下を防止する落下防止部材が係合する係合部と
を備える基板ホルダ。
【請求項2】
前記係合部は、前記保持領域の外周に互いに120度間隔に配されている請求項1に記載の基板ホルダ。
【請求項3】
前記係合部の近傍に互いに120度間隔に配され、他の基板ホルダと磁力により結合する三つの結合部をさらに備える請求項2に記載の基板ホルダ。
【請求項4】
前記本体を下方から支持するプッシュアップピンが当接する当接部をさらに備え、
前記当接部は、前記保持領域の外周において前記係合部から離間した位置に配される請求項1から3のいずれかに記載の基板ホルダ。
【請求項5】
前記係合部は溝部であって、前記溝部には、前記落下防止部材が収容される請求項1から4のいずれかに記載の基板ホルダ。
【請求項6】
基板を保持する保持領域および前記保持領域の外周に配された係合部を有する基板ホルダをその前記保持領域が下方を向いた状態で保持する上ステージと、
前記上ステージに保持された前記基板ホルダの前記係合部に係合して前記基板ホルダの落下を防止する落下防止位置と、前記基板ホルダの外方へ退避する退避位置との間で移動可能な落下防止部材と
を備えるステージ装置。
【請求項7】
前記係合部は溝部であって、前記落下防止部材は前記溝部と間隙をもって係合する請求項6に記載のステージ装置。
【請求項8】
前記基板ホルダは前記基板を静電吸着し、
前記基板ホルダの端子に対して鉛直方向に移動し、前記端子に当接して電力を供給する給電部材をさらに備え、
前記間隙は、前記給電部材の移動量より小さい請求項7に記載のステージ装置。
【請求項9】
前記上ステージに対して進退し、他の基板を保持する他の基板ホルダを保持する下ステージをさらに備え、
前記間隙は、前記上ステージに対して前記下ステージが退避しているときの前記上ステージおよび前記下ステージに保持された前記基板の間隔よりも小さい請求項7または8に記載のステージ装置。
【請求項10】
前記上ステージの前記基板と前記下ステージの前記他の基板とが当接したことを検知する当接検知部と、
前記上ステージに前記基板ホルダが保持された後に前記落下防止部材を進出させ、前記当接検知部による当接が検知された後に前記落下防止部材を退避させるアクチュエータと
をさらに備える請求項9に記載のステージ装置。
【請求項11】
前記アクチュエータは、駆動力が供給されない状態において前記落下防止部材を前記係合部に向けて進出させる請求項10に記載のステージ装置。
【請求項12】
前記アクチュエータは、エアシリンダを含み、前記エアシリンダにおける前記係合部の下方に位置する部分以外がベローズで覆われた請求項11に記載のステージ装置。
【請求項13】
前記基板ホルダが前記上ステージから離脱したことを検知する落下検知部をさらに備え、
前記落下検知部により前記基板ホルダの離脱が検知された場合に、前記アクチュエータは、前記基板ホルダを前記上ステージに再び保持させる請求項10から12のいずれかに記載のステージ装置。
【請求項14】
前記基板ホルダが前記上ステージから離脱したことを検知する落下検知部をさらに備え、
前記落下検知部により前記基板ホルダの離脱が検知された場合に、前記基板ホルダに対して前記落下防止部材を進出させる請求項6から12のいずれかに記載のステージ装置。
【請求項15】
請求項6から14のいずれかに記載のステージ装置を備える貼り合わせ装置。
【請求項16】
基板を保持する保持領域および前記保持領域の外周に配された係合部を有する基板ホルダをその前記保持領域が下方を向いた状態で上ステージに保持するステップと、
前記上ステージに保持された前記基板ホルダの前記係合部に落下防止部材を係合させることにより、前記基板ホルダの落下を防止するステップと、
他の基板を保持する他の基板ホルダを、前記他の基板が上方を向いた状態で下ステージに保持するステップと、
前記基板および前記他の基板を貼り合わせるステップと
を備える積層半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−40691(P2011−40691A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189503(P2009−189503)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】