説明

基板処理方法および基板処理装置

【課題】基板表面に付着したパーティクル等の汚染物質を除去するための基板処理方法および基板処理装置において、高いスループットを得られ、しかもパーティクル等を効果的に除去することのできる技術を提供する。
【解決手段】基板Wの裏面Wbに、凝固点近傍まで冷却したDIW(冷水)を下面ノズル27から供給する。このとき、DIWの凝固点よりも低温の窒素ガス(冷却ガス)と、DIWの蒸気または微小な液滴を含む高湿度の窒素ガス(高湿度ガス)との混合気体をDIWに吹き付ける。高湿度ガス中のDIW蒸気または液滴が凍結してなる氷の粒がDIW中に混入され、これが核となってDIW注の氷の生成が促進される。氷の粒を含むDIWが基板裏面Wbに沿って流れることで基板に付着したパーティクル等の除去を効率よく行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、光ディスク用基板などの各種基板表面に付着したパーティクル等の汚染物質を除去するための基板処理方法および基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、基板表面に付着したパーティクル等の汚染物質を除去するための処理の1つとして凍結洗浄技術が知られている。この技術では、基板表面に形成した液膜を凍結させ、この凍結膜を除去することにより基板表面からパーティクル等を凍結膜とともに除去している。例えば、特許文献1に記載の技術においては、洗浄液としてのDIW(脱イオン水)を基板表面に供給して液膜を形成した後、冷却ガスを吐出するノズルを基板表面近傍でスキャンさせることにより液膜を凍結させ、再度DIWを供給して凍結膜を除去することによって、基板表面からのパーティクルの除去を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−071875号公報(図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の洗浄技術においては、(1)液膜の形成、(2)液膜の凍結、(3)凍結膜の除去、という3段階の工程を順番に実行する必要があるため、処理に時間がかかってしまい、さらなるスループットの向上という点で改良の余地が残されている。特に、パーティクル等の除去能力を向上させようとすると、上記従来技術では形成する液膜の厚さを増大させたり、冷却ガスを供給する時間を長くすることが必要である。しかしながら、そのことがさらに処理時間を増大させてしまい、パーティクル等の除去能力と処理のスループットとを両立させることが難しい。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板表面に付着したパーティクル等の汚染物質を除去するための基板処理方法および基板処理装置において、高いスループットを得られ、しかもパーティクル等を効果的に除去することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らの実験によれば、基板に処理液を供給する際に該処理液にその凝固点よりも低温の冷却ガスを触れさせて処理液を冷却すると、基板表面の液膜の全面が凍結していなくても従来の凍結洗浄技術と同等もしくはそれ以上のパーティクル除去効果を得ることが可能であることがわかった(特願2008−245564)。これは、冷却ガスとの接触によって処理液中に該処理液が凍結凝固してなる微小な凝固体が多数生成され、この凝固体が基板から汚染物質を引き剥がす作用をするためと考えられる。ただし、流動する処理液中に凝固体を効率よく発生させるためには、冷却ガスの温度を処理液の凝固点よりも相当程度低下させる必要があり、このことが処理コストを増大させる可能性がある。
【0007】
上記に鑑み、この発明にかかる基板処理方法の一の態様は、上記目的を達成するため、第1処理液の蒸気または微小な液滴を生成して前記第1処理液の凝固点よりも低温の冷却ガスに混合し、前記第1処理液が凝固してなる微小な凝固体を含む混合気体を生成する混合気体生成工程と、第2処理液を基板に供給するとともに、前記基板に供給される前記第2処理液に対して前記混合気体を供給する処理液供給工程とを備えることを特徴としている。
【0008】
また、この発明にかかる基板処理方法の他の態様は、上記目的を達成するため、前記第1処理液の蒸気または微小な液滴を生成して前記第1処理液の凝固点よりも低温に冷却し、前記第1処理液が凝固してなる微小な凝固体を生成する凝固体生成工程と、前記第1処理液の凝固体を混合させた第2処理液を基板に供給する処理液供給工程とを備えることを特徴としている。この場合において、前記凝固体生成工程では、前記第1処理液の凝固点よりも低温の冷却ガスに前記第1処理液の蒸気または液滴を混合するようにしてもよい。
【0009】
これらの発明では、基板に供給される第2処理液中に、別途生成された第1処理液の凝固体を混合させる。この凝固体を含む第2処理液を基板に供給することで、基板に付着したパーティクル等の汚染物質を効率よく除去することができる。そして、第1処理液の凝固体については、第1処理液の蒸気または微小な液滴を冷却することによって生成する。このため、流動する処理液を冷却することで処理液の凝固体を生成する場合に比べて、より短時間で、しかも低コストで凝固体を含む処理液を得ることができる。このように、この発明によれば、高いスループットを得られ、しかも低い処理コストでパーティクル等を効果的に除去することができる。
【0010】
これらの発明では、第2処理液を基板に供給する処理液供給工程よりも前に、第2処理液を第2処理液の凝固点近傍まで予冷する予冷工程を備えてもよい。第2処理液を冷却することで、第2処理液中における第1処理液の凝固体の融解を抑制することができる。また、第1処理液の凝固体を核として第2処理液の凝固体が生成されやすくなるため、パーティクル等に対する除去効果をより高めることができる。
【0011】
また、第1処理液と第2処理液とは同じであってもよい。第2処理液に混入させる凝固体が第2処理液と同じ物質であれば、混入された凝固体が第2処理液中で核となって第2処理液の凝固を促進させるため、パーティクル等に対する除去効果をより高めることができる。また、凝固体が融解しても第2処理液の成分が変化しないので、安定した処理を行うことができる。
【0012】
また、処理液供給工程では、基板をその主面に直交または略直交する回転軸回りに回転させるとともに、基板の回転中心に第2処理液を供給するようにしてもよい。このようにすると、基板の回転に起因して生じる遠心力によって第2処理液が基板の中心から端部へ向かって流れるため、第2処理液を基板全面に行き渡らせることができ、基板の全面をムラなく処理することができる。また基板の回転数とパーティクル除去効果との間に相関性があることも本願発明者らの実験によって確かめられており、基板を回転させることでパーティクル除去効果を高めることが可能である。
【0013】
また、この発明にかかる基板処理装置は、上記目的を達成するため、基板を保持する基板保持手段と、第1処理液の蒸気または微小な液滴を生成して前記第1処理液の凝固点よりも低温の冷却ガスに混合し、前記第1処理液が凝固してなる微小な凝固体を含む混合気体を生成して前記基板に向けて供給する混合気体供給手段と、第2処理液を前記基板に向けて供給する処理液供給手段とを備えることを特徴としている。
【0014】
このように構成された発明では、第1処理液の凝固体を含む冷却ガスと第2処理液とが基板に供給されるので、上記した基板処理方法の発明と同様に、高いスループットで、しかも低い処理コストでパーティクル等を効果的に除去することができる。第1処理液と第2処理液とが同一の物質であってもよい。
【0015】
ここで、混合気体供給手段は、例えば、基板に供給される第2処理液に向けて混合気体を吹き付けるようにしてもよい。こうすることで、混合気体に含まれる第1処理液の凝固体が第2処理液に混入され、こうして第1処理液の凝固体を含んだ第2処理液が基板に供給されることで、パーティクル等が効率よく除去される。
【0016】
また、混合気体供給手段は、例えば、第1処理液の蒸気または微小な液滴と冷却ガスとを混合する混合部と、混合部で生成された混合気体を基板に向けて吐出する吐出部とを備えるようにしてもよい。このような構成では、第1処理液の蒸気または微小な液滴と冷却ガスとが予め混合されて基板に供給されるので、混合気体中に第1処理液の凝固体を確実に含ませた状態で基板に供給することができる。
【0017】
一方、混合気体供給手段は、例えば、第1処理液の蒸気または微小な液滴を基板に向けて吐出する第1吐出部と、冷却ガスを基板に向けて吐出する第2吐出部とを備えるようにしてもよい。このような構成では、第1吐出部から吐出される第1処理液の蒸気または微小な液滴と第2吐出部から吐出される冷却ガスが基板の近傍で混合されて第1処理液の凝固体が形成されるため、第1処理液の凝固体の寿命が短くても十分なパーティクル等の除去効率を得ることができる。また混合気体の供給経路上で第1処理液の凝固体が凝集して混合気体の流通を阻害することがない。
【0018】
また、例えば、基板保持手段は、基板の主面に直交または略直交する回転軸回りに基板を回転させ、処理液供給手段は、基板の回転中心に向けて第2処理液を供給するようにしてもよい。前記したように、基板を回転させ、基板の回転中心に第2処理液を供給することで、基板の全面に第2処理液を行き渡らせてムラなく処理を行うことができる。この場合、基板の回転中心に供給される第2処理液の周囲に混合気体供給手段から混合気体を吹き付けるようにすれば、基板の中心に供給される第2処理液に第1処理液の凝固体を含ませることができ、該凝固体が基板の中心から端部に向かって流れることで基板全面から汚染物質を効率よく除去することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、基板に供給する第2処理液に第1処理液の凝固体を含有させているので、基板に付着するパーティクル等の汚染物質を効率よく除去することができ、しかも、冷却ガスによって処理液内に凝固体を発生させる場合に比べてより短時間で、しかも低コストで凝固体を含有した処理液を生成し基板に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】図1の基板処理装置の制御構成を示すブロック図である。
【図3】スピンベースの構造を示す図である。
【図4】混合器の内部構造を示す図である。
【図5】図1の基板処理装置の洗浄処理動作を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態の洗浄処理動作を模式的に示す第1の図である。
【図7】第1実施形態の洗浄処理動作を模式的に示す第2の図である。
【図8】この発明にかかる基板処理装置の第2実施形態を示す図である。
【図9】第2実施形態の洗浄処理動作を模式的に示す図である。
【図10】この発明にかかる基板処理装置の第3実施形態の要部を示す図である。
【図11】この発明にかかる基板処理装置のさらなる変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1はこの発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。また、図2は図1の基板処理装置の制御構成を示すブロック図である。この基板処理装置は半導体ウエハ等の基板Wの表面Wfおよび裏面Wbに付着しているパーティクル等の汚染物質を除去するための基板洗浄処理を実行可能な枚葉式の基板洗浄装置としての基板処理装置である。より具体的には、微細パターンが形成された基板表面Wfについては公知の凍結洗浄技術によってパーティクル等の除去を行うのと同時に、基板表面Wfとは反対側の基板裏面Wbについては本発明にかかる洗浄技術によってパーティクル等の除去を行う基板処理装置である。
【0022】
この基板処理装置は、基板Wに対して洗浄処理を施す処理空間をその内部に有する処理チャンバー1を備え、処理チャンバー1内に基板表面Wfを上方に向けた状態で基板Wを略水平姿勢に保持して回転させるスピンチャック2と、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに向けて液膜を凍結させるための冷却ガスを吐出する冷却ガス吐出ノズル3と、基板表面Wfに処理液の液滴を供給する二流体ノズル5と、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに向けて薬液を吐出する薬液吐出ノズル6と、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに対向配置された遮断部材9が設けられている。処理液としては、薬液または純水やDIW(deionized water;脱イオン水)等の洗浄液などが用いられる。
【0023】
スピンチャック2は、回転支軸21がモータを含むチャック回転機構22の回転軸に連結されており、チャック回転機構22の駆動により回転中心A0を中心に回転可能となっている。回転支軸21の上端部には、円盤状のスピンベース23が一体的にネジなどの締結部品によって連結されている。したがって、装置全体を制御する制御ユニット4(図2)からの動作指令に応じてチャック回転機構22を駆動させることによりスピンベース23が回転中心A0を中心に回転する。
【0024】
スピンベース23の周縁部付近には、基板Wの周縁部を把持するための複数個のチャックピン24が立設されている。チャックピン24は、円形の基板Wを確実に保持するために3個以上設けてあればよく、スピンベース23の周縁部に沿って等角度間隔で配置されている。チャックピン24のそれぞれは、基板Wの周縁部を下方から支持する基板支持部と、基板支持部に支持された基板Wの外周端面を押圧して基板Wを保持する基板保持部とを備えている。各チャックピン24は、基板保持部が基板Wの外周端面を押圧する押圧状態と、基板保持部が基板Wの外周端面から離れる解放状態との間を切り替え可能に構成されている。
【0025】
そして、スピンベース23に対して基板Wが受渡しされる際には、複数個のチャックピン24を解放状態とし、基板Wに対して洗浄処理を行う際には、複数個のチャックピン24を押圧状態とする。押圧状態とすることによって、複数個のチャックピン24は基板Wの周縁部を把持してその基板Wをスピンベース23から所定間隔を隔てて略水平姿勢に保持することができる。これにより、基板Wはその表面(パターン形成面)Wfを上方に向け、裏面Wbを下方に向けた状態で保持される。
【0026】
スピンチャック2の外方には、第1の回動モータ31が設けられている。第1の回動モータ31には、第1の回動軸33が接続されている。また、第1の回動軸33には、第1のアーム35が水平方向に延びるように連結され、第1のアーム35の先端に冷却ガス吐出ノズル3が取り付けられている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて第1の回動モータ31が駆動されることで、第1のアーム35を第1の回動軸33回りに揺動させることができる。
【0027】
冷却ガス吐出ノズル3はガス供給部64(図2)と接続されており、制御ユニット4からの動作指令に応じてガス供給部64から冷却ガスが冷却ガス吐出ノズル3に供給される。より具体的には、ガス供給部64に設けられた窒素ガス貯留部641から供給される窒素ガスが熱交換器642によりDIWの凝固点よりも低い温度まで冷やされ、こうして冷やされた窒素ガスが冷却ガスとして冷却ガス吐出ノズル3に供給される。冷却ガス吐出ノズル3が基板表面Wfに対向配置されると、冷却ガス吐出ノズル3から基板表面Wfに向けて局部的に冷却ガスが吐出される。冷却ガス吐出ノズル3から冷却ガスを吐出させた状態で、制御ユニット4が基板Wを回転させながら冷却ガス吐出ノズル3を基板の回転中心から外周部に向けて移動させることで、冷却ガスを基板表面Wfの全面にわたって供給できる。このとき、後述するように基板表面WfにDIWによる液膜が予め形成されていると、該液膜の全体を凍結させて基板表面Wfの全面にDIWの凍結膜を生成可能となっている。
【0028】
また、スピンチャック2の外方に第2の回動モータ51が設けられている。第2の回動モータ51には、第2の回動軸53が接続され、第2の回動軸53には、第2のアーム55が連結されている。また、第2のアーム55の先端に二流体ノズル5が取り付けられている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて第2の回動モータ51が駆動されることで、二流体ノズル5を第2の回動軸53回りに揺動させることができる。この二流体ノズルは、処理液としてのDIWと窒素ガスとを空中(ノズル外部)で衝突させてDIWの液滴を生成する、いわゆる外部混合型の二流体ノズルである。
【0029】
また、スピンチャック2の外方には、第3の回動モータ67が設けられている。第3の回動モータ67には、第3の回動軸68が接続されている。また、第3の回動軸68には、第3のアーム69が水平方向に延びるように連結され、第3のアーム69の先端に薬液吐出ノズル6が取り付けられている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて第3の回動モータ67が駆動されることで、薬液吐出ノズル6を基板Wの回転中心A0の上方の吐出位置と吐出位置から側方に退避した待機位置との間で往復移動させることができる。薬液吐出ノズル6は薬液供給部61と接続されており、制御ユニット4からの動作指令に応じてSC1溶液(アンモニア水と過酸化水素水との混合水溶液)等の薬液が薬液吐出ノズル6に圧送される。
【0030】
なお、冷却ガス吐出ノズル3、二流体ノズル5および薬液吐出ノズル6ならびにこれらに付随するアームやその回動機構としては、例えば前記した特許文献1(特開2008−071875号公報)に記載されたものと同一構造のものを用いることができる。そこで、本明細書ではこれらの構成についてのより詳しい説明は省略する。
【0031】
スピンチャック2の上方には、中心部に開口を有する円盤状の遮断部材9が設けられている。遮断部材9は、その下面(底面)が基板表面Wfと略平行に対向する基板対向面となっており、その平面サイズは基板Wの直径と同等以上の大きさに形成されている。遮断部材9は略円筒形状を有する支持軸91の下端部に略水平に取り付けられ、支持軸91は水平方向に延びるアーム92により基板Wの中心を通る鉛直軸回りに回転可能に保持されている。また、アーム92には、遮断部材回転機構93と遮断部材昇降機構94が接続されている。
【0032】
遮断部材回転機構93は、制御ユニット4からの動作指令に応じて支持軸91を基板Wの中心を通る鉛直軸回りに回転させる。また、遮断部材回転機構93は、スピンチャック2に保持された基板Wの回転に応じて基板Wと同じ回転方向でかつ略同じ回転速度で遮断部材9を回転させるように構成されている。
【0033】
また、遮断部材昇降機構94は、制御ユニット4からの動作指令に応じて、遮断部材9をスピンベース23に近接して対向させたり、逆に離間させることが可能となっている。具体的には、制御ユニット4は遮断部材昇降機構94を作動させることで、基板処理装置に対して基板Wを搬入出させる際には、スピンチャック2の上方の離間位置(図1に示す位置)に遮断部材9を上昇させる。その一方で、基板Wに対して所定の処理を施す際には、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfのごく近傍に設定された対向位置まで遮断部材9を下降させる。
【0034】
支持軸91は中空に仕上げられ、その内部に遮断部材9の開口に連通したガス供給路95が挿通されている。ガス供給路95は、ガス供給部64と接続されており、窒素ガス貯留部641から熱交換器642を通さずに供給される窒素ガスが乾燥ガスとして供給される。この実施形態では、基板Wに対する洗浄処理後の乾燥処理時に、ガス供給路95から遮断部材9と基板表面Wfとの間に形成される空間に窒素ガスを供給する。また、ガス供給路95の内部には、遮断部材9の開口に連通した液供給管96が挿通されており、液供給管96の下端にノズル97が結合されている。液供給管96はDIW供給部62に接続されており、DIW供給部62よりDIWが供給され、ノズル97からDIWをリンス液として基板表面Wfに向けて吐出可能となっている。
【0035】
DIW供給部62はDIW貯留部621および熱交換器622を有しており、熱交換器622はDIW貯留部621から供給されるDIWをその凝固点近傍温度まで冷却する。すなわち、DIW供給部62はDIW貯留部621から供給される常温のDIW、または熱交換器622により凝固点近傍温度まで冷却されたDIW(以下、単に「冷水」ということがある)を供給可能となっている。
【0036】
スピンチャック2の回転支軸21は中空軸からなる。回転支軸21の内部には、基板Wの裏面Wbに処理液を供給するための処理液供給管25が挿通されている。そして、回転支軸21の内壁面と処理液供給管25の外壁面の隙間は、円筒状のガス供給路29を形成している。処理液供給管25およびガス供給路29は、スピンチャック2に保持された基板Wの下面(裏面Wb)に近接する位置まで延びており、その先端には基板Wの下面中央部に向けて処理液およびガスを吐出する下面ノズル27が設けられている。
【0037】
処理液供給管25は薬液供給部61およびDIW供給部62と接続されており、薬液供給部61から供給されるSC1溶液等の薬液またはDIW供給部62から供給されるDIW(常温もしくは冷水)が選択的に供給される。一方、ガス供給路29はガス供給部64と接続されており、スピンベース23と基板裏面Wbとの間に形成される空間にガス供給部64からの窒素ガスを供給することができる。より具体的には、ガス供給部64から供給される常温で水分を含まない窒素ガス(乾燥ガス)と冷却ガスとがそれぞれバルブを介してガス供給路29に供給される。
【0038】
また、この実施形態では、DIW貯留部621から供給される常温のDIWと窒素ガス貯留部641から供給される常温の窒素ガスとを混合させて、DIWの蒸気または微小な液滴を含む高湿度の窒素ガス(高湿度ガス)を生成する混合器65が設けられている。混合器65から送出される高湿度ガスも、バルブを介してガス供給路29に供給されている。したがって、ガス供給路29には、3種類のガス、すなわち常温で水分を含まない窒素ガス(乾燥ガス)、低温の冷却ガスおよび高湿度ガスが、選択的にまたは適宜に混合されて通送され、このガスは下面ノズル27から基板Wbに向けて吐出される。
【0039】
図3はスピンベースの構造を示す図である。より具体的には、図3(a)はスピンベース23の上面の構造を示す図であり、図3(b)はその断面図である。図3(a)に示すように、スピンベース23の上面23aの外周端部には複数のチャックピン24が立設されており、これらのチャックピン24によって処理対象となる基板Wを略水平に保持することができる。
【0040】
また、スピンベース上面23aの中心には下面ノズル27が設けられている。図3(a)および図3(b)に示すように、下面ノズル27は、基板の回転中心AOに向けて開口する処理液吐出口271と、処理液吐出口271と同軸にこれを取り巻くように開口するガス吐出口272とを備えている。処理液吐出口271は処理液供給管25と連通しており、薬液供給部61から供給されるSC1溶液等の薬液またはDIW供給部62から供給されるDIWを基板下面(この実施形態ではパターンを形成されていない基板裏面Wb)に向けて吐出する。一方、ガス吐出口272はガス供給路29と連通しており、ガス供給部64からの窒素ガスおよび混合器65からの高湿度ガスを吐出する。したがって、吐出された窒素ガスや高湿度ガスは、基板下面のDIWを供給される位置、もしくはその位置を取り囲む周辺位置に向けて供給される。
【0041】
図4は混合器の内部構造を示す図である。混合器65は、内部が貯留空間SPとなった筐体部651を有しており、貯留空間SPに窒素ガスおよびDIWをそれぞれ導入するための窒素ガス導入管652およびDIW導入管653が筐体部651の上面を貫通して設けられている。このうち窒素ガス導入管652は、DIW導入管653を経て貯留空間SPに貯留されたDIWの液面LLよりも下方まで延び、その端部は液中で開口している。ガス供給部64から窒素ガス導入管652を介して送り込まれる乾燥した窒素ガスは、筐体部651に貯留されたDIWの中に送り込まれる。これにより、筐体部651内のDIWに対して窒素ガスによるバブリングが行われる。その結果、貯留空間SPのうち液面LLよりも上部の空間は、DIWの蒸気および/または微小な液滴を大量に含む高湿度の窒素ガス(高湿度ガス)で満たされる。この高湿度ガスは、液面LLよりも上部で開口する高湿度ガス出力管654を経て外部に取り出される。高湿度ガスの取り出しによって液面LLが低下すると随時DIW導入管653からDIWが補充され、液面LLの位置(高さ)は概ね一定に保たれる。
【0042】
次に、上記のように構成された基板処理装置における洗浄処理動作について図5ないし図7を参照しつつ説明する。図5は図1の基板処理装置の洗浄処理動作を示すフローチャートである。また、図6および図7は第1実施形態の洗浄処理動作を模式的に示す図である。この装置では、未処理の基板Wが装置内に搬入されると、制御ユニット4が装置各部を制御して該基板Wに対して一連の洗浄処理が実行される。ここで、基板がその表面Wfに微細パターンを形成されたものである場合、該基板表面Wfを上方に向けた状態で基板Wが処理チャンバー1内に搬入され、スピンチャック2に保持される(ステップS101)。なお、遮断部材9は離間位置にあり、基板Wとの干渉を防止している。
【0043】
スピンチャック2に未処理の基板Wが保持されると、遮断部材9が対向位置まで降下され、基板表面Wfに近接配置される(ステップS102)。これにより、基板表面Wfが遮断部材9の基板対向面に近接した状態で覆われ、基板Wの周辺雰囲気から遮断される。そして、制御ユニット4はチャック回転機構22を駆動させてスピンチャック2を回転させるとともに、ノズル97から常温のDIWを基板表面Wfに供給する。基板表面に供給されたDIWには、基板Wの回転に伴う遠心力が作用し、基板Wの径方向外向きに均一に広げられ、その一部が基板外に振り切られる。これによって、基板表面Wfの全面にわたって液膜の厚みを均一にコントロールして、基板表面Wfの全体に所定の厚みを有する液膜(水膜)が形成される(ステップS103)。なお、液膜形成に際して、上記のように基板表面Wfに供給されたDIWの一部を振り切ることは必須の要件ではない。例えば、基板Wの回転を停止させた状態あるいは基板Wを比較的低速で回転させた状態で基板WからDIWを振り切ることなく基板表面Wfに液膜を形成してもよい。
【0044】
この状態では、図6(a)に示すように、基板Wの表面Wfに所定厚さのパドル状液膜LPが形成されている。こうして、液膜形成が終了すると、制御ユニット4は遮断部材9を離間位置に退避させる(ステップS104)。その後、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbのそれぞれに対する以下の処理が併行して行われる。ここで、パドル状の液膜LPは、薬液吐出ノズル6から供給されるSC1液によって形成されてもよい。
【0045】
基板表面側では、冷却ガス吐出ノズル3を待機位置から基板の回転中心の上方に移動させる。そして、図6(b)に示すように、回転する基板Wの表面Wfに向けて冷却ガス吐出ノズル3から冷却ガスを吐出させながら、冷却ガス吐出ノズル3を徐々に基板Wの端縁位置に向けて移動させていく(ステップS111)。これにより、基板表面Wfの表面領域に形成された液膜LPが冷やされて部分的に凍結し、図6(c)に示すように、凍結した領域(凍結領域FR)が基板表面Wfの中央部に形成される。そして、方向Dnへのノズル3のスキャンによって凍結領域FRは基板表面Wfの中央部から周縁部へと広げられ、図6(d)に示すように、最終的には基板表面Wfの液膜全面が凍結する。液膜全体が凍結すると、冷却ガス吐出ノズル3を退避させるとともに遮断部材9を基板表面Wfに近接配置する(ステップS112)。
【0046】
一方、基板裏面側では、図6(b)に示すように、スピンベース23に設けられた下面ノズル27の処理液吐出口271から冷却されたDIWを吐出して裏面洗浄液として基板裏面Wbに供給する(ステップS121)。次いで、ガス供給部64から供給される冷却ガスと、混合器65から供給される高湿度ガスとを共にガス供給路29に送り込むことで、ガス供給路29内においてこれらを所定の混合比で混合させ、図6(c)に示すように、こうして得られた混合気体を下面ノズル27のガス吐出口272から吐出させる(ステップS122)。冷却ガスと高湿度ガスとの混合比は、混合気体の温度がDIWの凝固点よりも低い温度となるように設定される。また、ガス供給路29やDIWの温度を上昇させないように、まず冷却ガスをガス供給路29に送り込んでから、続いて高湿度ガスを送り込むのが望ましい。
【0047】
高湿度ガス中に含まれるDIWの蒸気または液滴は、DIWの凝固点よりも低温の冷却ガスに触れることで凍結凝固し、微小な氷の粒となる。したがって、下面ノズル27のガス吐出口272からは、微小な氷の粒を含んだ窒素ガスが、基板裏面Wbに供給されるDIWに対して吹き付けられることになる。DIW自体が凝固点近くまで冷やされた冷水であり、さらに凝固点よりも低温の冷却ガスが吹き付けられているため、冷水に混入した氷の粒はすぐに溶けることはなく、また氷の粒が核となることで、周囲のDIWの凍結がより促進される。こうして基板裏面Wbの中心部でDIW中に生成された氷の粒が基板裏面Wbに付着するパーティクル等の汚染物質に衝突して基板から浮遊させ、中心部から周縁部に向かって流れるDIWが浮遊した汚染物質を押し流す。これにより、基板裏面Wbに付着した汚染物質が除去される。基板裏面Wbへの冷水、冷却ガスおよび高湿度ガスの供給を所定時間継続した後、これらの供給を停止する(ステップS123)。
【0048】
続いて、基板Wの両面に対しDIWによるリンス処理を行う(ステップS131)。すなわち、図7(a)に示すように、基板表面Wfに近接配置した遮断部材9のノズル97と、下面ノズル27とからそれぞれ常温のDIWを吐出し、基板Wの両面をDIWによりリンス処理する。
【0049】
その後、基板両面へのDIWの供給をともに停止し、基板を乾燥させる乾燥処理を行う(ステップS132)。すなわち、図7(b)に示すように、遮断部材9に設けられたノズル97およびスピンベース23に設けられた下面ノズル27から常温で水分を含まない窒素ガス(乾燥ガス)を吐出させながら基板Wを高速度で回転させることにより、基板Wに残留するDIWを振り切り基板Wを乾燥させる。このときに供給される窒素ガスは乾燥ガスとしての作用をするものであり、熱交換器642を通さない常温のガスである。こうして乾燥処理が終了すると、処理済みの基板Wを搬出することによって1枚の基板に対する処理が完了する(ステップS133)。
【0050】
上記処理によって得られる洗浄効果について説明する。まず、基板表面Wfに対する処理は、公知の凍結洗浄処理である。上記のようにして液膜を凍結させると、基板表面Wfとパーティクルの間に入り込んだ液膜の体積が増加(摂氏0℃の水が摂氏0℃の氷になると、その体積はおよそ1.1倍に増加する)し、パーティクルが微小距離だけ基板表面Wfから離れる。その結果、基板表面Wfとパーティクルとの間の付着力が低減され、さらにはパーティクルが基板表面Wfから脱離することとなる。このとき、基板表面Wfに微細パターンが形成されている場合であっても、液膜の体積膨張によってパターンに加わる圧力はあらゆる方向に等しく、つまりパターンに加えられる力が相殺される。そのため、パターンの剥離や倒壊を防止しながら、パーティクルのみを基板表面Wfから剥離させることができる。そして、新たに供給するDIWによって凍結した液膜を除去することにより、パーティクル等についても基板表面Wfから取り除くことができる。
【0051】
一方、基板裏面側では、DIWの供給を連続的に行っているので、液膜は凍結せず基板中心から端部に向けて流動した状態を保っている。この点において、基板裏面Wbにおける洗浄作用は、凍結洗浄処理とは全く異なる原理によるものであるということができる。すなわち、基板裏面Wb側では、液温度を凝固点近くまで冷却したDIWを基板裏面Wbに供給し、さらにDIWの凝固点よりも低温で微小な氷の粒を含んだ窒素ガスをDIWに触れさせることで基板裏面Wbに沿って流れるDIW中に微小な氷の粒を生じさせ、この氷の粒によるパーティクル除去効果を得ている。
【0052】
以上のように、この実施形態では、基板裏面Wbに供給する処理液(DIW)中に微小な氷の粒を含ませることによって、基板裏面Wbに付着した汚染物質を効率よく剥離させ除去することができる。このとき、DIWの蒸気または微小な液滴を含む高湿度ガスと、DIWの凝固点よりも低温の冷却ガスとを混合して微小な氷の粒を含む混合気体を生成し、これを基板裏面Wbに供給されるDIWに吹き付けることにより、DIW中に氷の粒を生じさせるようにしている。このため、単に冷水に冷却ガスを吹き付けてDIW中に氷の粒を発生させる場合に比べて、冷却ガスの温度を高くすることができる。また、冷却ガスの温度を同じとしても、より短時間で確実にDIW中に氷の粒を発生させることができる。このため、処理時間および処理コストを大きく低減することができる。
【0053】
また、上記のような基板裏面Wbに対する処理を、基板表面Wfに対する凍結洗浄と併行して行う。これにより、単なる同時処理による処理時間の短縮に加えて、一方面への冷却が他方面にも影響を及ぼすことに起因する相乗効果によって大幅に処理時間を短縮しガスや処理液等の使用量を低減することができる。したがって低い処理コストで高いスループットを得ることができる。
【0054】
また、水平状態に保持され鉛直軸回りに回転する基板裏面Wbの中心部に向けて、冷水および混合気体を供給することにより、氷の粒を含むDIWが遠心力により基板全面に広がるので、冷水および混合気体を供給するのにノズルをスキャンさせる必要がない。
【0055】
基板に供給する処理液と、該処理液に混入される氷(凝固体)の粒とが同一の物質であることは必須ではないが、これらを同一物質としておけば、氷が溶解しても処理液の成分を変化させることがない。また、混入された氷の粒を核として処理液の凍結が促進されるので、パーティクル除去効果を効果的に高めることが可能となる。
【0056】
なお、冷却ガスと高湿度ガスとの混合気体を基板裏面Wbに対して供給する間、これらのガスの合流点から下面ノズル27までのガス供給路29の管路内壁に霜が付着することが考えられる。この霜を除去するために、基板Wに対する処理を行っていないときには乾燥ガスをガス供給路29内に通送しておくことが望ましい。
【0057】
次に、この発明にかかる基板処理装置の第2実施形態について説明する。図8はこの発明にかかる基板処理装置の第2実施形態を示す図である。第1実施形態の装置では、DIWの蒸気または液滴を含む高湿度ガスはガス供給路29において冷却ガスと混合されて基板裏面Wbに供給されていた。これに対し、この実施形態では、高湿度ガスを吐出するノズル7がスピンベース23の側方に設けられており、高湿度ガスはこのノズル7から基板裏面Wbとスピンベース23上面との間のギャップ空間Gに送り込まれる。この点を除く各部の構成は第1実施形態のものと同一であるため、第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0058】
図9は第2実施形態の洗浄処理動作を模式的に示す図である。この実施形態では、図9(a)に示すように、第1実施形態と同様にして基板表面Wfに液膜LPが形成されるのと併行して、基板裏面Wbにも下面ノズル27から冷水を供給開始する。そして、図9(b)に示すように、ノズル7から高湿度ガスを吐出して、基板裏面Wbとスピンベース23の上面23aとの間のギャップ空間Gに高湿度ガスを充満させる。
【0059】
そして、ノズル7からの高湿度ガス吐出を停止させ(ノズル7を退避させることが望ましい)、こうして高湿度ガスで満たされたギャップ空間Gに対して、図9(c)に示すように、下面ノズル27から冷却ガスを供給する。高湿度ガスに含まれるDIWの蒸気または液滴が冷却ガスに触れることで凍結凝固し、DIW中に混入される。これにより、第1実施形態と同様に、基板裏面Wbに付着する汚染物質を除去することができる。基板表面Wf側については、図9(c)および(d)に示すように、第1実施形態と同様に冷却ガス吐出ノズル3を液膜LPに対してスキャンさせることで凍結洗浄を行うことができる。
【0060】
以上のように、この実施形態では、基板裏面Wbに供給される冷水の近傍に高湿度ガスを充満させ、ここに冷却ガスを供給することにより高湿度ガス中のDIWを凍結させて氷の粒を発生させる。このようにしても、第1実施形態と同様に、基板に付着する汚染物質の除去を、高いスループットで、しかも低い処理コストで行うことができる。
【0061】
図10はこの発明にかかる基板処理装置の第3実施形態の要部を示す図である。この実施形態では、下面ノズルの構造が第1実施形態のものとは異なっている。すなわち、図10(a)に示すように、この実施形態の下面ノズル28は、DIWを吐出する処理液吐出口281と、冷却ガスを吐出する冷却ガス吐出口282と、高湿度ガスを吐出する高湿度ガス吐出口283とを備えている。つまり、この実施形態では、冷却ガスと高湿度ガスとが下面ノズル28から個別に吐出され、基板裏面Wb近傍でこれらが接触し混合されることによって、高湿度ガス中のDIW蒸気または液滴が凍結し氷の粒として処理液吐出口281から吐出されるDIWに混入する。この点を除く各部の構成は第1実施形態のものと同一であるため、第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0062】
この実施形態では、図10(b)に示すように、基板裏面Wbに対して冷水、冷却ガスがそれぞれ処理液吐出口281、ガス吐出口283から順次供給される。この状態で、図10(c)に示すように、高湿度ガスが高湿度ガス吐出口283から吐出されると、高湿度ガス中の水分が冷却ガスに触れて凍結し、氷の粒としてDIW内に混入される。こうして氷の粒を含んだDIWが基板裏面Wbに沿って流れることで、基板裏面Wbに付着した汚染物質が効果的に除去される。この実施形態では、より基板の中心部に近い位置に高湿度ガスを供給して氷の粒を発生させることができるので、基板Wの中心部でのパーティクル除去効率を向上させることができる。
【0063】
図11はこの発明にかかる基板処理装置のさらなる変形例を示す図である。これらの変形例では下面ノズルの形状が上記した各実施形態のものとは異なっているが、この点を除く構成は上記実施形態のものと共通している。図11(a)に示す下面ノズル27aは、処理液吐出口271aの上部端面がフランジ状に径方向に広がっている。このような形状の下面ノズル27aでは、基板裏面に供給されるDIWや他の処理液がガス吐出口272aに流入することが防止される。これにより、ガス吐出口272aに流入した処理液が冷却ガスによって凍結して供給路が詰まることがない。
【0064】
さらに、図11(b)に示す下面ノズル28aは、処理液吐出口281aの内側に冷却ガスおよび高湿度ガスの混合気体を吐出する高湿度ガス吐出口283aを有している。このような構成によれば、上記した第3実施形態と同様に、基板の中心部に氷の粒を確実に発生させることができ、基板中心部でのパーティクル除去効率を向上させることができる。
【0065】
以上説明したように、これらの実施形態においては、スピンチャック2が本発明の「基板保持手段」として機能している。また、第1実施形態においてはガス供給路29および下面ノズル27等が一体として本発明の「混合気体供給手段」として機能している。このうち、特にガス供給路29は本発明の「混合部」として、また下面ノズル27は本発明の「吐出部」としてそれぞれ機能している。また、処理液供給路25および下面ノズル27等が一体として本発明の「処理液供給手段」として機能している。また、第3実施形態では、高湿度ガス吐出口283が本発明の「第1吐出口」として、また冷却ガス吐出口282が本発明の「第2吐出口」として機能している。
【0066】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記各実施形態では、DIWを本発明の「第1および第2処理液」としているが、第1および第2処理液はこれに限定されない。例えば、炭酸水、水素水、希薄濃度(例えば1ppm程度)のアンモニア水、希薄濃度の塩酸などを用いたり、DIWに少量の界面活性剤を加えたものを第1および第2処理液としてもよい。また第1処理液と第2処理液とが必ずしも同一でなくてもよい点については先に説明したとおりである。
【0067】
また、上記各実施形態では、冷却ガスおよび乾燥ガスとして同一の窒素ガス貯留部から供給されて互いに温度を異ならせた窒素ガスを用いているが、乾燥ガスおよび冷却ガスとしては窒素ガスに限定されない。例えば、乾燥ガスおよび冷却ガスのいずれか一方または両方を乾燥空気や他の不活性ガスとしてもよい。特に、冷却ガスは洗浄液を冷却するものであって基板に直接触れるものではないので、冷却ガスとして乾燥空気を好適に使用することができる。
【0068】
また、上記各実施形態ではDIWを吐出する処理液吐出口と冷却ガスを吐出するガス吐出口とを同軸構造としているが、このような構造に限定されるものではなく、例えば、基板の回転軸上に洗浄液を吐出する処理液吐出口を設ける一方、冷却ガスを吐出するガス吐出口を処理液吐出口の横に並べて配置してもよい。このような構造では冷却ガスが基板回転軸に対し非対称に吐出されることになるが、基板を回転させているので実質的には等方的に処理が行われる。
【0069】
また、上記各実施形態では、洗浄液としてのDIWと冷却ガスとしての窒素ガスが同じ方向へ、つまりいずれも基板に向けて吐出されるようにしているが、冷却ガスについては基板に向けて吐出する必要は必ずしもなく、基板に向けて吐出される洗浄液の液柱に向けて吐出されるようにしてもよい。
【0070】
また、上記各実施形態の基板処理装置は、DIW貯留部621および窒素ガス貯留部641をいずれも装置内部に内蔵しているが、洗浄液およびガスの供給源については装置の外部に設けられてもよく、例えば工場内に既設の洗浄液やガスの供給源を利用するようにしてもよい。また、これらを冷却するための既設設備がある場合には、該設備によって冷却された洗浄液やガスを利用するようにしてもよい。
【0071】
また、上記各実施形態の基板処理装置は、基板Wの上方に近接配置される遮断部材9を有するものであるが、本発明は遮断部材を有しない装置にも適用可能である。また、これらの実施形態の装置は基板Wをその周縁部に当接するチャックピン24によって保持するものであるが、基板の保持方法はこれに限定されるものではなく、他の方法で基板を保持する装置にも、本発明を適用することが可能である。
【0072】
また、上記各実施形態は基板表面を公知の凍結洗浄技術で、基板裏面を本発明にかかる洗浄技術によって洗浄するものである。しかしながら、本発明の実施の態様はこれに限定されず、基板の片面のみを洗浄する場合にも本発明を適用することが可能である。また、基板の両面の洗浄に本発明を適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などを含む基板全般を処理する基板処理装置および基板処理方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
2 スピンチャック(基板保持手段)
3 冷却ガス吐出ノズル
9 遮断部材
25 処理液供給路(処理液供給手段)
27 下面ノズル(混合気体供給手段、処理液供給手段、吐出部)
29 ガス供給路(混合気体供給手段、混合部)
62 DIW供給部
64 ガス供給部
65 混合器
282 冷却ガス吐出口(第2吐出口)
283 高湿度ガス吐出口(第1吐出口)
622 熱交換器
W 基板
Wf 基板表面
Wb 基板裏面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1処理液の蒸気または微小な液滴を生成して前記第1処理液の凝固点よりも低温の冷却ガスに混合し、前記第1処理液が凝固してなる微小な凝固体を含む混合気体を生成する混合気体生成工程と、
第2処理液を基板に供給するとともに、前記基板に供給される前記第2処理液に対して前記混合気体を供給する処理液供給工程と
を備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
第1処理液の蒸気または微小な液滴を生成して前記第1処理液の凝固点よりも低温に冷却し、前記第1処理液が凝固してなる微小な凝固体を生成する凝固体生成工程と、
前記第1処理液の凝固体を混合させた第2処理液を基板に供給する処理液供給工程と
を備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項3】
前記凝固体生成工程では、前記第2処理液の凝固点よりも低温の冷却ガスに前記第1処理液の蒸気または液滴を混合する請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記処理液供給工程よりも前に、前記第2処理液を前記第2処理液の凝固点近傍まで予冷する予冷工程を備える請求項1ないし3のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記第1処理液と前記第2処理液とが同じである請求項1ないし4のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記処理液供給工程では、前記基板をその主面に直交または略直交する回転軸回りに回転させるとともに、前記基板の回転中心に前記第2処理液を供給する請求項1ないし5のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項7】
基板を保持する基板保持手段と、
第1処理液の蒸気または微小な液滴を生成して前記第1処理液の凝固点よりも低温の冷却ガスに混合し、前記第1処理液が凝固してなる微小な凝固体を含む混合気体を生成して前記基板に向けて供給する混合気体供給手段と、
第2処理液を前記基板に向けて供給する処理液供給手段と
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
前記混合気体供給手段は、前記基板に供給される前記第2処理液に向けて前記混合気体を吹き付ける請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記混合気体供給手段は、前記第1処理液の蒸気または微小な液滴と前記冷却ガスとを混合する混合部と、前記混合部で生成された前記混合気体を前記基板に向けて吐出する吐出部とを備える請求項7または8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記混合気体供給手段は、前記第1処理液の蒸気または微小な液滴を前記基板に向けて吐出する第1吐出部と、前記冷却ガスを前記基板に向けて吐出する第2吐出部とを備える請求項7または8に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記基板保持手段は、前記基板の主面に直交または略直交する回転軸回りに前記基板を回転させ、
前記処理液供給手段は、前記基板の回転中心に向けて前記第2処理液を供給する請求項7ないし10のいずれかに記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−204712(P2011−204712A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67578(P2010−67578)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】