説明

基板処理方法及びその方法を実行するプログラムを記憶する記憶媒体

【課題】放電開始直後に基板に位置ずれが発生しても,それを早期に検出して直ぐに処理を中止することで,異常放電による載置台の損傷を極力防止する。
【解決手段】伝熱ガスの供給開始で一時的に上昇した伝熱ガスの流量が低下して安定するよりも前に所定の調圧終了基準値以下になると,処理容器内に高周波電力を供給して放電を開始し,基板保持面上の被処理基板上に処理ガスのプラズマを発生させる放電ステップとを有し,上記放電ステップにおいて,流量センサで検出した伝熱ガス流量が所定の閾値を超えたときに基板ずれありと判定する判定ポイントを伝熱ガス流量が安定する前の時点において複数設け,各判定ポイントごとに閾値を設定することによって,伝熱ガス流量の安定を待たずに基板ずれ判定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,フラットパネルディスプレイ(FPD)用基板等の大型基板にプラズマ処理を施す基板処理方法及びその方法を実行するプログラムを記憶する記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
FPDのパネル製造においては,一般にガラスなどの絶縁体からなる基板上に画素のデバイスまたは電極や配線等が形成される。このようなパネル製造の様々な工程のうち,エッチング,CVD,アッシング,スパッタリング等の微細加工は,多くの場合プラズマ処理装置によって行われる。プラズマ処理装置は,例えば減圧可能な処理容器内で基板を下部電極を構成するサセプタを備える載置台の上に載置し,サセプタに高周波電力を供給することによって,基板上に処理ガスのプラズマを形成し,このプラズマによって基板上にエッチングなどの所定の処理を行うようになっている。
【0003】
この場合,プラズマ処理中の発熱による温度上昇を抑えて基板の温度を一定に制御する必要がある。このため,チラー装置より温調された冷媒を載置台内の冷媒通路に循環供給すると同時に,Heガスなどの伝熱性の良いガス(伝熱ガス)を載置台の中を通して基板の裏面に供給して,基板を間接的に冷却する方式がよく用いられている。この冷却方式は,例えば静電吸着力により基板保持部の基板保持面に基板を吸着保持する載置台においては、Heガスの供給圧力に抗して基板を載置台上に固定保持することができるため好適に用いられる。
【0004】
ところで,基板を吸着保持する際,載置台上の基板保持面に対して基板が位置ずれしていると,サセプタ上で基板保持面が露出するので,この状態でサセプタに高周波電力を印加してプラズマを発生させると異常放電が発生してサセプタを損傷させる虞がある。従って,このような基板の位置ずれをプラズマの発生前に検出することによって,異常放電の発生を未然に防ぐことができる。
【0005】
基板の保持状態を検出する方法としては,従来,例えば特許文献1に記載の技術のように,載置台の上部に圧力測定孔を設け,圧力測定孔を介して圧力測定ガスを載置台と基板との間に供給して圧力測定ガスの圧力を監視するものがある。この方法では,例えば基板がない場合や静電保持力が小さい場合には,圧力測定孔からガスが漏れて圧力が低下するため,その圧力を監視することによって,載置台上の基板の有無や保持状態を検出するものである。
【0006】
また,特許文献2では,プラズマ発生後においても,載置台と基板との間に供給するガスが安定した後であれば,漏れがある場合には圧力が低下するので,ガスが十分安定した後にその圧力変化をモニタリングして漏れが発生しているか否かを検出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平04−359539号公報
【特許文献2】特開2001−338914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが,基板の処理方法によってはプラズマ発生直後に高周波電力を高くしたり,伝熱ガス圧力を昇圧したりする場合があり,それによって基板の位置ずれによりガス漏れが発生することがある。従って,特許文献1のようにプラズマ発生前だけにガス漏れを判定してもその後の基板ずれによるガス漏れを検出することができない。また,特許文献2のようにガスの圧力(流量)が十分に安定するまで待ってからガス漏れをモニタリングしていたのでは,直ぐに位置ずれを検出できず,異常放電が発生してしまう。
【0009】
この点,載置台と基板との間に供給するガス流量を検出することで,ガス漏れを検出することができるものの,プラズマ発生直後に高周波電力を高くしたり,伝熱ガス圧力を昇圧したりすると,ガス流量の変動が大きくなる場合があるため,プラズマ発生直後においてガス流量を監視して基板ずれを判定するのは非常に難しい。
【0010】
そこで,本発明は,このような問題に鑑みてなされたもので,その目的とするところは,プラズマを発生させるための放電開始後,伝熱ガス流量が安定する前にも基板ずれ判定を可能とすることで,放電開始直後に基板に位置ずれが発生しても,それを早期に検出して直ぐに処理を中止することで,異常放電による載置台の損傷を極力防止できる基板処理方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために,本発明のある観点によれば,プラズマ処理装置に設けられた減圧可能な処理容器内の被処理基板に対してプラズマによる処理を施す基板処理方法であって,前記プラズマ処理装置は,前記処理容器内に配設され,前記被処理基板を載置保持する載置台を構成する基板保持部と,前記基板保持部とその基板保持面に保持された被処理基板との間に伝熱ガス供給源からの伝熱ガスを供給するための伝熱ガス流路と,前記伝熱ガス流路に流出させる伝熱ガス流量を検出する流量センサと,前記プラズマを発生させるための高周波電力を前記処理容器内に供給する高周波電源と,前記高周波電力によりプラズマ化される処理ガスを前記処理室内に供給する処理ガス供給部とを備え,前記伝熱ガス供給源から前記基板保持部と前記被処理基板との間において前記伝熱ガスが所定の圧力となるように前記伝熱ガスを供給する調圧ステップと,前記伝熱ガスの供給開始で一時的に上昇した前記伝熱ガスの流量が低下して安定するよりも前に所定の調圧終了基準値以下になると,前記処理容器内に高周波電力を供給して放電を開始し,前記基板保持面上の被処理基板上に前記処理ガスのプラズマを発生させる放電ステップと,を有し,前記放電ステップにおいて,前記流量センサで検出した伝熱ガス流量が所定の閾値を超えたときに基板ずれありと判定する判定ポイントを伝熱ガス流量が安定する前の時点において複数設け,前記各判定ポイントごとに前記閾値を設定することによって,前記伝熱ガス流量の安定を待たずに基板ずれ判定を行うことを特徴とする基板処理方法が提供される。
【0012】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,プラズマ処理装置に設けられた減圧可能な処理容器内の被処理基板に対してプラズマによる処理を施す基板処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記憶媒体であって,前記プラズマ処理装置は,前記処理容器内に配設され,前記被処理基板を載置保持する載置台を構成する基板保持部と,前記基板保持部とその基板保持面に保持された被処理基板との間に伝熱ガス供給源からの伝熱ガスを供給するための伝熱ガス流路と,前記伝熱ガス流路に流出させる伝熱ガス流量を検出する流量センサと,前記プラズマを発生させるための高周波電力を前記処理容器内に供給する高周波電源と,前記高周波電力によりプラズマ化される処理ガスを前記処理室内に供給する処理ガス供給部とを備え,前記基板処理方法は,前記伝熱ガス供給源から前記基板保持部と前記被処理基板との間において前記伝熱ガスが所定の圧力となるように前記伝熱ガスを供給する調圧ステップと,前記伝熱ガスの供給開始で一時的に上昇した前記伝熱ガスの流量が低下して安定するよりも前に所定の調圧終了基準値以下になると,前記処理容器内に高周波電力を供給して放電を開始し,前記基板保持面上の被処理基板上に前記処理ガスのプラズマを発生させる放電ステップとを有し,前記放電ステップにおいて,前記流量センサで検出した伝熱ガス流量が所定の閾値を超えたときに基板ずれありと判定する判定ポイントを伝熱ガス流量が安定する前の時点において複数設け,前記各判定ポイントごとに前記閾値を設定することによって,前記伝熱ガス流量の安定を待たずに基板ずれ判定を行うことを特徴とする記憶媒体が提供される。
【0013】
また,前記各判定ポイントにおける閾値は,前記伝熱ガスの過去の流量又はその変化量に基づいて決定することが好ましい。この場合,上記過去の流量又はその変化量は,その基板処理よりも前に実行した基板処理における同じ判定ポイントの流量又はその変化量の平均値としてもよく,また,その基板処理における直前判定ポイントの流量又はその変化量としてもよい。
【0014】
また,上記放電ステップにおいて,放電開始後に前記伝熱ガスの圧力を昇圧するステップを有する場合には,昇圧直前に前記基板ずれ判定を停止し,昇圧直後から前記基板ずれ判定を再開するようにしてもよい。この場合,前記放電開始後から前記伝熱ガスの昇圧までに判定ポイントを設定し,前記基板ずれ判定を行ってから前記伝熱ガスを昇圧することが好ましい。また,上記伝熱ガスの昇圧前の判定ポイントは,前記伝熱ガスの昇圧直前だけ設定して前記基板ずれ判定を行うようにしてもよい。また上記伝熱ガスの昇圧前の判定ポイントは,放電開始後から伝熱ガス昇圧までに複数の判定ポイントを設定して前記基板ずれ判定を行うようにしてもよい。なお,上記高周波電源による前記高周波電力の前記処理容器内への供給は,例えば前記処理室内に設けられたサセプタに高周波電力を印加することによって行う。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば,放電開始後においても,伝熱ガス流量によって基板ずれを判定するための判定ポイントを伝熱ガス流量が安定する前の時点において複数設け,各ポイントごとに閾値を設定することで,伝熱ガス流量の安定を待たずに基板の位置ずれを判定できるようにした。これにより,放電開始直後に基板に位置ずれが発生しても,それを早期に検出して直ぐに処理を中止することで,異常放電による載置台の損傷を極力防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態にかかる処理装置の外観斜視図である。
【図2】同実施形態におけるプラズマ処理装置の断面図である。
【図3】同実施形態における伝熱ガス供給機構の構成例を説明するための図である。
【図4】同実施形態における載置台の作用を説明するための図であって,基板ずれにより伝熱ガスの漏れが発生している場合である。
【図5】同実施形態における載置台の作用を説明するための図であって,図4の状態でプラズマを発生させた場合である。
【図6】比較例にかかる基板処理を説明するためのタイミング図である。
【図7】同実施形態における基板処理の具体例としてのメインルーチンの概略を示すフローチャートである。
【図8】図7に示す基板ずれ判定処理の具体例としてのサブルーチンの概略を示すフローチャートである。
【図9】本実施形態にかかる基板処理の具体例を説明するためのタイミング図である。
【図10】本実施形態にかかる基板処理の変形例を説明するためのタイミング図である。
【図11】本実施形態にかかる基板処理の他の変形例を説明するためのタイミング図である。
【図12】本実施形態にかかる他の基板処理を説明するためのタイミング図である。
【図13】図8に示す基板ずれ判定処理の変形例のサブルーチンの概略を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また,本明細書中1mTorrは(10−3×101325/760)Paとする。
【0018】
(基板処理装置の構成例)
先ず,本発明を複数のプラズマ処理装置を備えるマルチチャンバータイプの基板処理装置に適用した場合の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は,本実施形態にかかる基板処理装置100の外観斜視図である。同図に示す基板処理装置100は,例えばガラス基板などのフラットパネルディスプレイ用基板(FPD用基板)を被処理基板(以下,単に「基板」とも称する)Gとし,この基板Gに対してプラズマ処理を施すための3つのプラズマ処理装置200を備える。
【0019】
プラズマ処理装置200は処理容器からなるチャンバを備え,そのチャンバ内には基板Gを載置する載置台が設けられている。この載置台の上方には処理ガス(例えばプロセスガス)を導入するためのシャワーヘッドが設けられている。載置台はその本体を構成する下部電極としてのサセプタを備え,これと平行に対向して設けられるシャワーヘッドは上部電極としての機能も兼ねる。各プラズマ処理装置200では同一の処理(例えばエッチング処理等)を行っても良いし,互いに異なった処理(例えばエッチング処理とアッシング処理等)を行うようにしても良い。なお,プラズマ処理装置200内の具体的構成例については後述する。
【0020】
各プラズマ処理装置200はそれぞれ,断面多角形状(例えば断面矩形状)の搬送室110の側面にゲートバルブ102を介して連結されている。搬送室110にはさらに,ロードロック室120がゲートバルブ104を介して連結されている。ロードロック室120には,基板搬出入機構130がゲートバルブ106を介して隣設されている。
【0021】
基板搬出入機構130にそれぞれ2つのインデクサ140が隣設されている。インデクサ140には,基板Gを収納するカセット142が載置される。カセット142は複数枚(例えば25枚)の基板Gが収納可能に構成されている。
【0022】
このようなプラズマ処理装置によって基板Gに対してプラズマ処理を行う際には,先ず基板搬出入機構130によりカセット142内の基板Gをロードロック室120内へ搬入する。このとき,ロードロック室120内に処理済みの基板Gがあれば,その処理済みの基板Gをロードロック室120内から搬出し,未処理の基板Gと置き換える。ロードロック室120内へ基板Gが搬入されると,ゲートバルブ106を閉じる。
【0023】
次いで,ロードロック室120内を所定の真空度まで減圧した後,搬送室110とロードロック室120間のゲートバルブ104を開く。そして,ロードロック室120内の基板Gを搬送室110内の搬送機構(図示せず)により搬送室110内へ搬入した後,ゲートバルブ104を閉じる。
【0024】
搬送室110とプラズマ処理装置200との間のゲートバルブ102を開き,上記搬送機構によりプラズマ処理装置200のチャンバ内の載置台に未処理の基板Gを搬入する。このとき,処理済みの基板Gがあれば,その処理済みの基板Gを搬出し,未処理の基板Gと置換える。
【0025】
プラズマ処理装置200のチャンバ内では,処理ガスをシャワーヘッドを介してチャンバ内に導入し,下部電極或は上部電極,又は上部電極と下部電極の両方に高周波電力を供給することによって,下部電極と上部電極との間に処理ガスのプラズマを発生させることによって,載置台上に保持された基板Gに対して所定のプラズマ処理を行う。
【0026】
(プラズマ処理装置の構成例)
次に,プラズマ処理装置200の具体的構成例について図面を参照しながら説明する。ここでは,本発明のプラズマ処理装置を,基板Gをエッチングする容量結合型プラズマ(CCP)エッチング装置に適用した場合の構成例について説明する。図2は,本実施形態にかかるプラズマ処理装置200の概略構成を示す断面図である。
【0027】
図2に示すプラズマ処理装置200は,例えば表面が陽極酸化処理(アルマイト処理)されたアルミニウムからなる略角筒形状の処理容器からなるチャンバ202を備える。チャンバ202はグラウンドに接地されている。チャンバ202内の底部には,下部電極を構成するサセプタ310を有する載置台300が配設されている。載置台300は,矩形の基板Gを固定保持する基板保持機構として機能し,矩形の基板Gに対応した矩形形状に形成される。この載置台の具体的構成例は後述する。
【0028】
載置台300の上方には,サセプタ310と平行に対向するように,上部電極として機能するシャワーヘッド210が対向配置されている。シャワーヘッド210はチャンバ202の上部に支持されており,内部にバッファ室222を有するとともに、サセプタ310と対向する下面には処理ガスを吐出する多数の吐出孔224が形成されている。このシャワーヘッド210はグラウンドに接地されており,サセプタ310とともに一対の平行平板電極を構成している。
【0029】
シャワーヘッド210の上面にはガス導入口226が設けられ,ガス導入口226にはガス導入管228が接続されている。ガス導入管228には,開閉バルブ230,マスフローコントローラ(MFC)232を介して処理ガス供給源234が接続されている。これらは処理ガス供給部を構成する。
【0030】
処理ガス供給源234からの処理ガスは,マスフローコントローラ(MFC)232によって所定の流量に制御され,ガス導入口226を通ってシャワーヘッド210のバッファ室222に導入される。処理ガス(エッチングガス)としては,例えばハロゲン系のガス,Oガス,Arガスなど,通常この分野で用いられるガスを用いることができる。
【0031】
チャンバ202の側壁には基板搬入出口204を開閉するためのゲートバルブ102が設けられている。また,チャンバ202の側壁の下方には排気口が設けられ,排気口には排気管208を介して真空ポンプ(図示せず)を含む排気装置209が接続される。この排気装置209によりチャンバ202の室内を排気することによって,プラズマ処理中にチャンバ202内を所定の真空雰囲気(たとえば10mTorr=約1.33Pa)に維持することができる。
【0032】
プラズマ処理装置200には,制御部(全体制御装置)400が接続されており,この制御部400によってプラズマ処理装置200の各部が制御されるようになっている。また,制御部400には,オペレータがプラズマ処理装置200を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや,プラズマ処理装置200の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ,あるいは入力操作端末機能と状態の表示機能の双方を有するタッチパネル等からなる操作部410が接続されている。
【0033】
さらに,制御部400には,プラズマ処理装置200で実行される各種処理(後述する基板処理など)を制御部400の制御にて実現するためのプログラムやプログラムを実行するために必要な処理条件(レシピ)などが記憶された記憶部420が接続されている。
【0034】
記憶部420には,例えば基板処理で用いられる複数の処理条件(レシピ)や後述する基板ずれ判定処理で用いられる伝熱ガス流量の基準値(例えば調圧終了基準値,判定基準値など)や各判定ポイントの閾値などが記憶されている。このうち処理条件については,プラズマ処理装置200の各部を制御する制御パラメータ,設定パラメータなどの複数のパラメータ値をまとめたものである。各処理条件は例えば処理ガスの流量比,チャンバ内圧力,高周波電力などのパラメータ値を有する。プラズマ処理装置200では,このような処理条件を用いて基板処理を行う場合に,基板Gを搬出入することで同じ処理条件で複数の基板Gを連続して処理することができる。
【0035】
なお,これらのプログラムや処理条件はハードディスクや半導体メモリに記憶されていてもよく,またCD−ROM,DVD等の可搬性のコンピュータにより読み取り可能な記憶媒体に収容された状態で記憶部420の所定位置にセットするようになっていてもよい。
【0036】
制御部400は,操作部410からの指示等に基づいて所望のプログラム,処理条件を記憶部420から読み出して各部を制御することで,プラズマ処理装置200での所望の処理を実行する。また,操作部410からの操作により処理条件を編集できるようになっている。
【0037】
(基板保持機構を適用した載置台の構成例)
ここで,本発明にかかる基板保持機構を適用した載置台300の具体的な構成例について図2,図3を参照しながら説明する。図3は,載置台300の伝熱ガス供給機構の構成例を説明する図である。図3は,図2に示す載置台300の上部分の断面を簡略化して示したものである。図3では,説明を簡単にするために図2に示す静電保持部320を省略している。
【0038】
図2に示すように,載置台300は,絶縁性のベース部材302と,このベース部材302上に設けられ,載置台300の本体を構成する導電体(例えばアルミニウム)からなる矩形ブロック状のサセプタ310とを備える。なお,サセプタ310の側面は,図2に示すように絶縁被膜311で覆われている。
【0039】
サセプタ310上には,基板Gを基板保持面で保持する基板保持部の1例としての静電保持部320が設けられる。静電保持部320は,例えば下部誘電体層と上部誘電体層との間に電極板322を挟んで構成される。載置台300の外枠を構成し,上記ベース部材302,サセプタ310,静電保持部320の周りを囲むように,例えばセラミックや石英の絶縁部材からなる矩形枠状の外枠部330が配設される。
【0040】
静電保持部320の電極板322には,直流(DC)電源315がスイッチ316を介して電気的に接続されている。スイッチ316は,例えば電極板322に対してDC電源315とグラウンド電位とを切り換えられるようになっている。なお,電極板322と直流(DC)電源315との間に,サセプタ310側からの高周波を遮断して,サセプタ310側の高周波がDC電源315側に漏洩するのを阻止する高周波遮断部(図示しない)を設けてもよい。高周波遮断部は,1MΩ以上の高い抵抗値を有する抵抗器または直流を通すローパスフィルタで構成するのが好ましい。
【0041】
スイッチ316がDC電源315側に切り換えられると,DC電源315からのDC電圧が電極板322に印加される。このDC電圧が正極性の電圧である場合,基板Gの上面には負の電荷(電子、負イオン)が引き付けられるようにして蓄積する。これにより,基板G上面の負の面電荷と電極板322との間に基板Gおよび上部誘電体層を挟んで互いに引き合うクーロン力即ち静電吸着力が働き,この静電吸着力で基板Gは載置台300上に吸着保持される。スイッチ316がグラウンド側に切り換えられると,電極板322へのDC電圧の供給が停止し,さらに必要に応じて所定の除電プロセスを経ることによって静電保持部320上面(基板保持面)及び基板Gの電荷を除去して,上記静電吸着力が解除される。
【0042】
サセプタ310には,整合器312を介して高周波電源314の出力端子が電気的に接続されている。高周波電源314の出力周波数は,例えば13.56MHzに選ばれる。サセプタ310に印加される高周波電源314からの高周波電力によって,基板Gの上には処理ガスのプラズマPZが生成され,基板G上に所定のプラズマエッチング処理が施される。
【0043】
サセプタ310の内部には冷媒流路340が設けられており,チラー装置(図示せず)から所定の温度に調整された冷媒が冷媒流路340を流れるようになっている。この冷媒によって,サセプタ310の温度を所定の温度に調整することができる。
【0044】
載置台300は,静電保持部320の基板保持面と基板Gの裏面との間に伝熱ガス(例えばHeガス)を所定の圧力で供給する伝熱ガス供給機構を備える。伝熱ガス供給機構は,伝熱ガスをサセプタ310内部のガス流路352を介して基板Gの裏面に所定の圧力で供給するようになっている。
【0045】
伝熱ガス供給機構は,具体的には例えば図3に示すように構成される。すなわち,サセプタ310の上面及び図2に示す静電保持部320(図3では省略)にはガス孔354が多数設けられており,これらのガス孔354は上記ガス流路352に連通している。ガス孔354は,例えば基板保持面Lsの外周から内側に離間したガス孔形成領域Rに所定間隔で多数配列されている。
【0046】
ガス流路352には,例えば伝熱ガス(例えばHeガス)を供給する伝熱ガス供給源366が圧力調整バルブ(PCV:Pressure Control Valve)362を介して接続されている。圧力制御バルブ(PCV)362は,ガス孔354側へ供給される伝熱ガス圧力が所定の圧力になるように流量を調整するものである。
【0047】
圧力調整バルブ(PCV)362は,例えば伝熱ガス流量を測定する流量センサ(フローメータ)364の他,図示しない圧力センサ,流量調整バルブ(例えばピエゾバルブ)とこれを制御するコントローラとが一体化されて構成されている。
【0048】
なお,図3では流量センサ364,圧力センサ,流量調整バルブが一体化された圧力調整バルブ(PCV)362を用いた例を示したが,これに限られるものはなく,ガス流路352にこれら流量センサ364,圧力センサ,流量調整バルブをそれぞれ別個に設けるようにしてもよい。
【0049】
また,このような圧力センサとしては,例えばマノメータ(例えばキャパシタンスマノメータ(CM))が挙げられる。流量調整バルブとしてもピエゾバルブに限らず,例えばソレノイドバルブであってもよい。
【0050】
これら圧力調整バルブ(PCV)362,伝熱ガス供給源366はそれぞれ,基板処理装置100の各部を制御する制御部400に接続されている。制御部400は,伝熱ガス供給源366を制御して伝熱ガスを流出させて,圧力調整バルブ(PCV)362に設定圧力をセットし,圧力調整バルブ(PCV)362に伝熱ガスを所定の流量に調整させてガス流路352に供給する。圧力調整バルブ(PCV)362のコントローラは例えばPID制御によりガス圧力が設定圧力になるようにピエゾバルブを制御して伝熱ガス流量を制御する。これにより,伝熱ガスは,ガス流路352及びガス孔354を通って基板Gの裏面に所定の圧力で供給される。
【0051】
ところで,このような伝熱ガス供給機構では,圧力調整バルブ(PCV)362に内蔵の圧力センサでガス流路352の圧力を測定できるので,その測定した伝熱ガス圧力に基づいて伝熱ガス流量を制御できるとともに,内臓の流量センサ364を使用して伝熱ガスの流量をモニタリングすることで漏れが発生しているか否かを検出できる。伝熱ガスの漏れは,基板Gの位置ずれによって変化するので,伝熱ガスの流量をモニタリングすることで基板Gの位置ずれを検出できる。
【0052】
例えば図4に示すように基板Gの位置ずれが発生している場合には,ガス孔354の形成領域R上の基板Gがない部分から伝熱ガスが漏洩するので,伝熱ガスの流量は漏れが発生していない場合に比して大きくなる。従って,伝熱ガスの流量をモニタリングすることによって基板Gの位置ずれを検出できる。
【0053】
図4に示すように基板Gの位置ずれが発生していると,サセプタ310上の一部(基板保持面の一部)が露出してしまうため,このまま図5に示すようにプラズマPZを発生させると,異常放電が発生してサセプタ310若しくは基板保持面にダメージを与え,載置台300を損傷させる虞がある。
【0054】
このため,プラズマ発生後の異常放電を未然に防止する観点からは,プラズマPZを発生させる前に伝熱ガス流量をモニタリングすることによって基板Gの位置ずれを検出することが好ましい。また,プラズマ発生直後には,高周波電力を高くしたり,伝熱ガス圧力を昇圧したりすることによって,伝熱ガス流量の変動が大きい場合があるため,伝熱ガス流量が十分に安定するまで待ってから伝熱ガス流量をモニタリングすれば基板Gの位置ずれを精度よく検出できる。
【0055】
これらの点について,図6を参照しながらより具体的に説明する。図6は,プラズマ発生直後に伝熱ガス圧力と高周波電力の印加電圧を変化させる基板処理を行った場合の伝熱ガス流量の変化を示すタイミング図である。図6では,伝熱ガス圧力と高周波電力を段階的に上昇させる基板処理を具体例として挙げる。
【0056】
図6に示すように基板処理では,先ずは調圧ステップによって伝熱ガスの圧力を調整した上で,高周波電力を印加してプラズマPZを発生させる放電ステップを実行する。このとき,調圧ステップにおいて伝熱ガス圧力を第1圧力(例えば1.5Torr)に設定し,伝熱ガスの供給を開始する(t1)。
【0057】
すると,伝熱ガス流量は,急上昇して基板Gの下側に供給され,ある程度溜まると徐々に小さくなっていく。このときの伝熱ガスの流量をモニタリングして,予め設定された調圧終了基準値以下になった時点で,高周波電力を印加して放電を開始する。これにより,プラズマPZが発生し,放電ステップが開始される。特に近年では基板Gのサイズがより一層大型化しており,これに伴って載置台300のサイズも従来以上に大型化しているため,伝熱ガス流量が十分に安定するまでには時間がかかる。このため,調圧終了基準値はある程度安定した時点(t2)の流量を基準に設定する。
【0058】
このとき,タイムアウト時間が経過しても,伝熱ガス流量が調圧終了基準値以下にならない場合は,基板ずれが発生して伝熱ガスの漏れが発生していると考えられるので,基板処理を中止しプラズマ発生のための放電は行わない。これにより,異常放電を未然に防止できる。
【0059】
その後,放電ステップにおいて伝熱ガス圧力を昇圧し(例えば3Torr),高周波電力も大きくさせる。このとき,伝熱ガスの設定圧力を昇圧すると,伝熱ガス流量は一時的に急上昇し,その後は徐々に小さくなり伝熱ガスの圧力は設定圧力に到達する。このように,放電ステップ開始直後においては,伝熱ガス流量の変化が大きくなり,しかもその流量変化も処理条件に応じて変わるので,基板Gの位置ずれを判定するための伝熱ガス流量の判定基準値を決めるのは極めて難しい。
【0060】
このため,従来は,プラズマPZを発生させるための放電を開始してから(t2を経過してから),伝熱ガス流量をモニタリングする場合には,放電開始(t2)から所定のディレイ時間経過後(t4),すなわち放電ステップ伝熱ガス流量が十分に安定するであろう時点まで待ってから,伝熱ガス流量のモニタリングを開始し,その安定後の流量に変化があったときに漏れが発生しているとして基板の位置ずれを判定していた。具体的には調圧終了基準値よりも低い判定基準値を一律に設定し,その判定基準値を超えた場合に基板Gの位置ずれありと判断していた。
【0061】
ところが,図6の放電ステップに示すようにプラズマ発生直後に高周波電力を高くしたり,伝熱ガス圧力を昇圧したりすると,それに起因してt2からt4の間に基板Gの位置ずれが発生することがある。この場合においても,t4が経過してから伝熱ガス流量のモニタリングを開始していたのでは,t2〜t4までの間はモニタリングしないことになるので,直ぐに位置ずれを検出できず,異常放電が発生し載置台300が損傷してしまう。
【0062】
そこで,本実施形態では,放電開始後においても,伝熱ガス流量によって基板Gの位置ずれを判定するための判定ポイントを伝熱ガス流量が安定する前の時点から複数設け,各ポイントごとに閾値を設定することで,伝熱ガス流量の安定を待たずに(t4の経過を待たずに),基板Gの位置ずれを判定できるようにしている。これによればプラズマ発生直後に基板Gに位置ずれが発生しても,それを早期に検出できる。従って,基板Gに位置ずれが発生したら直ぐに処理を中止することで,異常放電による載置台300の損傷を極力防止できる。
【0063】
このような本実施形態における基板Gの位置ずれ判定を含む基板処理の具体例を図面を参照しながら説明する。図7は,本実施形態における基板処理の具体例としてのメインルーチンの概略を示すフローチャートである。図8は,図7に示す基板ずれ判定処理の具体例としてのサブルーチンの概略を示すフローチャートである。図9は,図7,図8の処理におけるタイミングを示す図である。ここでは,図6と同様に伝熱ガス圧力と高周波電力を段階的に上昇させる基板処理を具体例として挙げる。
【0064】
制御部400は所定のプログラムに基づいて,載置台300上に載置された基板Gに対して図7に示す基板処理を実行する。この基板処理では,先ず調圧ステップ(ステップS110〜S130)を行った上で,放電ステップ(ステップS140〜S190)にてプラズマによる処理を行う。
【0065】
具体的にはステップS110にてチャンバ202内を所定の真空圧力まで減圧し,シャワーヘッド210から処理ガスをチャンバ202内に導入し,ステップS120にて伝熱ガスの導入を開始する。すると,図9に示すように伝熱ガス流量は,急上昇して基板Gの下側に供給され,ある程度溜まると徐々に小さくなっていく。
【0066】
そして,ステップS130にて圧力調整バルブ(PCV)の流量センサ364によって伝熱ガス流量をモニタリングし,伝熱ガス流量が調圧終了基準値以下になったか否かを判断する。このとき,伝熱ガス流量が調圧終了基準値以下でないと判断した場合は,ステップS132にて伝熱ガス導入開始からの経過時間と予め設定されたタイムアウト時間を比較し,タイムアウト時間を超えたか否かを判断する。
【0067】
ステップS132にてタイムアウト時間を超えていないと判断した場合は,ステップS130に戻って伝熱ガス流量のモニタリングを続行する。ステップS132にてタイムアウト時間を超えたと判断した場合は,伝熱ガスの漏れが発生している可能性が高いため,ステップS134にて安定待ちエラー処理を行う。
【0068】
例えば載置台300上に基板Gが載置されていなかったり,基板Gの吸着不良が発生していたり,基板Gの位置ずれが発生している可能性がある。そこで,このような場合は,ステップS134にて安定待ちエラー処理を行うものとする。安定待ちエラー処理では,例えば伝熱ガスの供給を停止すると共に,操作部410のディスプレイにエラー表示したり,アラームで報知したりする。
【0069】
これに対して,伝熱ガス流量が調圧終了基準値以下であると判断した場合は,基板載置状態OK,伝熱ガスの供給状態OKと判断し,ステップS140以降の放電ステップにより基板Gの処理を開始する。具体的にはステップS140にて第1高周波電力(例えば5kW)を印加して,処理ガスのプラズマPZを発生させる。
【0070】
続いて,ステップS150にて伝熱ガスを昇圧させて,ステップS160にて第1高周波電力よりも高い第2高周波電力を印加する。このとき,図9に示すように伝熱ガス流量は,一時的に急上昇し,その後は徐々に小さくなっていく。
【0071】
本実施形態では,ステップS150,S160の後,すなわち伝熱ガスが一時的に急上昇した直後の伝熱ガス流量によって基板ずれ判定処理(ステップS200)を実行する。具体的には,図8に示すようにステップS210にて判定ポイントか否かを判断する。
【0072】
例えば伝熱ガス昇圧(t3)からの経過時間と予め設定した複数の判定ポイント(判定ポイントの時間)を比較し,判定ポイントになる度にステップS220以降の処理を実行する。図9に示す白丸が判定ポイントの時点であり,図9では最初の判定ポイントがtpの場合である。判定ポイントは所定間隔で設定し,この間隔を短くするほどリアルタイムで判定が可能となる。
【0073】
ステップS210にて判定ポイントであると判断した場合は,ステップS220にてその判定ポイントにおける伝熱ガス流量を記憶部420に記憶する。これは次の基板の処理を行う際の同じ判定ポイントの閾値を設定するために用いるためである。
【0074】
次にステップS230にて前回以前の基板処理において同じ判定ポイントの伝熱ガス流量に基づいて設定された閾値と,この判定ポイントにおける伝熱ガス流量を比較する。この場合の閾値としては,前回以前の基板処理で実際の伝熱ガス流量の平均値であってもよく,この平均値にさらに所定の許容流量を加えた値であってもよい。なお,閾値を設定する場合に用いる伝熱ガス流量は,基板ずれ判定の精度を向上させるため,基板ずれが発生しなかった場合のものを用いる。
【0075】
そして,ステップS240にてその判定ポイントの伝熱ガス流量が閾値以下であるか否かを判断する。伝熱ガス流量が閾値以下でないと判断した場合は,ステップS242にて基板ずれの異常ありと判断して,ステップS244にて基板ずれエラー処理を行う。基板ずれエラー処理では,例えば基板処理を一時的に中止し,判定結果をディスプレイ表示したり,アラームで報知したりする。
【0076】
ステップS240にて伝熱ガス流量が閾値以下であると判断した場合は,基板ずれなしとして,図7の処理に戻り,ステップS180にて予め設定された処理時間(プロセス処理時間)が経過するまで基板処理を続行し,各判定ポイントになる度にその判定ポイントに設定された閾値に基づいて基板ずれが判定される。ステップS180にて処理時間が経過したと判断すると,ステップS190にて高周波電力を停止し,処理ガス及び伝熱ガスを停止して,一連の基板処理を終了する。
【0077】
これによれば,図9に示すように放電ステップにおいて伝熱ガスが安定する時点(t4)よりも前の時点tpから基板ずれ判定を行うことができるので,例えば伝熱ガスを昇圧した後や高周波電力を上昇させた後であって,t4経過前に基板ずれが発生した場合でも,伝熱ガスが安定する時点(t4)よりも前にそれを検出することができ,直ぐに処理を中止することができる。これにより,異常放電による載置台300の損傷を極力防止できる。
【0078】
また,各判定ポイントの閾値をそれぞれ,過去の基板処理による同じ判定ポイントの実際の伝熱ガス流量を用いることによって,より的確な閾値を設定することができる。例えば実際の伝熱ガス流量は,プラズマ処理装置200ごとや処理条件ごとに微妙に変わるので,それに応じた的確な閾値を自動的に設定することができる。これにより,基板ずれ判定の精度を向上させることができる。
【0079】
なお,上記閾値は,各判定ポイントで伝熱ガス流量を比較する際にそれぞれ算出して設定したものを用いてもよく,また温調ガス流量を記憶したときに基板処理の閾値を算出して設定して記憶しておいたものを次の基板処理における同じ判定ポイントでの判定で用いるようにしてもよい。
【0080】
また,各判定ポイントの閾値として,過去の基板処理による同じ判定ポイントの実際の伝熱ガス流量を用いる代わりに,その伝熱ガス流量の変化量を用いるようにしてもよい。この場合は,図8に示すステップS230,S240において「流量」とあるのを,「流量の変化量」と置き換えて適用することができる。基板処理の処理条件(処理ガスの種類やチャンバ内圧力など)によっては,静電保持部320の上面電位が微妙に変化するので,伝熱ガス流量は減少又は一定になるとは限らず,僅かではあるが徐々に上昇していく場合もある。
【0081】
このような場合でも,上述したように各判定ポイントの閾値として伝熱ガス流量の変化量を用いることで,たとえ伝熱ガス流量が上昇していても,各判定ポイントにおいて閾値以上に変化量が大きくならなければ,漏れがなく基板ずれがない正常状態と判定することができる。
【0082】
また,このように設定された閾値は実際の流量によって変動するので,予め固定閾値を設定しておき,その固定閾値と比較して大きくなり過ぎた場合には,その固定閾値にリセットするようにしてもよい。
【0083】
また,図9に示す基板処理では,調圧終了基準値以下になった時点(t2)で比較的低い第1高周波電力を印加して放電ステップを開始した後に,基板ずれが発生する可能性もある。このため,伝熱ガスの昇圧直前においても,そのときの伝熱ガス流量によって基板ずれを判定するようにしてもよい。
【0084】
具体的には例えば図10に示すように,伝熱ガスの昇圧直前の時点(ta)においても,伝熱ガス流量を測定し,その伝熱ガス流量が調圧終了基準値よりも低い判定基準値以下になっているか否かを判断するようにしてもよい。このとき,伝熱ガスの昇圧直前の時点(ta)で判定基準値以下であると判断した場合は正常であり,判定基準値以下になっていないと判断した場合は,基板ずれにより漏れが発生している可能性がある。
【0085】
このため,判定基準値以下であると判断した場合は基板処理を続行し,判定基準値以下になっていないと判断した場合は,図8のステップS244と同様に基板ずれエラー処理により,基板処理を一時的に中止する。これによれば,放電ステップを開始した後に基板Gに位置ずれが発生しても,高周波電力を上昇させる前の伝熱ガスの昇圧直前に検出して基板処理を中止できるので,高周波電力上昇後の異常放電による載置台300の損傷を極力防止できる。
【0086】
また,伝熱ガスの昇圧直前の時点(ta)だけではなく,例えば図11に示すように放電ステップを開始した時点(t2)から伝熱ガスの昇圧直前(ta)まで複数の判定ポイントを設定して判定するようにしてもよい。この場合は,図8に示す基板ずれ処理と同様に,前回以前の同じ判定ポイントの流量に基づいて設定された閾値を用いて判定するようにしてもよい。
【0087】
そして,各判定ポイントにおいて閾値以下であると判断した場合は基板処理を続行し,閾値以下になっていないと判断した場合は,図8のステップS244と同様に基板ずれエラー処理により,基板処理を一時的に中止する。これによれば,放電ステップを開始した後に基板Gに位置ずれが発生しても,直ぐにそれを検出して基板処理を中止できるので,異常放電による載置台300の損傷を極力防止できる。
【0088】
また,上述した図10,図11の処理によれば,異常放電が発生し難い範囲で基板の吸着力を高められる程度の比較的低い第1高周波電力を印加した後に伝熱ガス流量を測定することで,漏れの発生を的確に検出できる。そして,伝熱ガスの漏れが発生していないことを確認した上で,第2高周波電力を印加して本放電によって基板処理を行うことができる。
【0089】
ここまでは,放電ステップ開始直後に伝熱ガスを昇圧する場合を例に挙げて説明したが,伝熱ガスを昇圧しない場合にも,本実施形態における基板処理を適用可能である。ここで,放電ステップ開始直後に伝熱ガスを昇圧しない場合のタイミング図を図12に示す。図12に示す場合には伝熱ガスを昇圧しないので,伝熱ガス流量は放電開始(t2)の後に大きく変化することはなく,緩やかに減少して安定する。
【0090】
この場合には,図7に示すステップS150を省略して適用することができる。また,このように放電ステップ後に伝熱ガスの大きな変化がない場合は,図12に示すように放電ステップ開始(ステップS140)から基板ずれ判定処理(ステップS200)を行うようにしてもよい。これによれば,放電ステップ開始後においても,伝熱ガス流量によって基板Gの位置ずれを判定するための判定ポイントを伝熱ガス流量が安定する前の時点(t2)から複数設け,各ポイントごとに閾値を設定することで,伝熱ガス流量が安定する時点(t4)より前の時点(t2)から基板ずれ判定処理を行うことができる。これにより,伝熱ガス流量の安定を待たずに(t4の経過を待たずに),早期に基板ずれを検出することができるので,異常放電による載置台300の損傷を極力防止できる。
【0091】
ところで,図8に示す基板ずれ判定処理では,各判定ポイントの閾値をそれぞれ,過去の基板処理による同じ判定ポイントの実際の伝熱ガス流量を用いた場合を例に挙げて説明したが,各判定ポイントの閾値はこれに限られるものではなく,例えば同じ基板処理における直前の判定ポイントにおける実際の伝熱ガス流量を閾値として設定してもよい。
【0092】
ここで,各判定ポイントの閾値をそれぞれ直前の判定ポイントにおける実際の伝熱ガス流量に設定した場合の基板ずれ判定処理を図13に示す。図13において,図8のステップS230をステップS232,S234に置き換えたものである。
【0093】
具体的に説明すると,図13に示すステップS210にて判定ポイントであると判断した場合は,ステップS220にてその判定ポイントにおける伝熱ガス流量を記憶部420に記憶する。ここでは同じ基板処理における次の判定ポイントの閾値を設定するために用いるためである。
【0094】
次にステップS232にて最初の判定ポイントか否かを判断し,最初の判定ポイントであると判断した場合は,ステップS210の処理に戻ってそのまま次の判定ポイントになったか否かを判断する。これは最初の判定ポイントは,直前の判定ポイントがないため,次回以降の判定ポイントから直前の判定ポイントの伝熱ガス流量に基づいて閾値を設定するためである。なお,最初の判定ポイントにおいては,過去の基板処理の同じ判定ポイントにおける伝熱ガス流量に基づいて求めたデフォルト値を閾値として用いて基板ずれを判定するようにしてもよい。
【0095】
そしてステップS232にて最初の判定ポイントでないと判断した場合は,ステップS234にてその直前の判定ポイントの伝熱ガス流量に基づいて設定された閾値と,この判定ポイントにおける伝熱ガス流量を比較する。この場合の閾値としては,直前の判定ポイントにおける実際の伝熱ガス流量の値であってもよく,この値にさらに所定の許容流量を加えた値であってもよい。
【0096】
そして,ステップS240にてその判定ポイントの伝熱ガス流量が閾値以下であるか否かを判断する。伝熱ガス流量が閾値以下でないと判断した場合は,ステップS242にて基板ずれの異常ありと判断して,ステップS244にて基板ずれエラー処理を行う。基板ずれエラー処理では,例えば基板処理を一時的に中止し,判定結果をディスプレイ表示したり,アラームで報知したりする。
【0097】
ステップS240にて伝熱ガス流量が閾値以下であると判断した場合は,基板ずれなしとして,図7の処理に戻り,ステップS180にて予め設定された処理時間(プロセス処理時間)が経過するまで基板処理を続行し,各判定ポイントになる度にその判定ポイントに設定された閾値に基づいて基板ずれが判定される。
【0098】
具体的には,図13に示す基板ずれ判定処理では,各判定ポイントの閾値としてそれぞれ,同じ基板処理における直前の判定ポイントの実際の伝熱ガス流量を用いるので,直前の流量と同じかそれよりも低い場合には正常と判定され,直前の流量を超えた場合に伝熱ガスに漏れが発生して基板ずれありと判定される。これは,基板ずれが発生した場合にはその時点から漏れが発生しているはずなので,伝熱ガス流量は漏れた分だけ直前の判定ポイントよりも多くなると考えられるからである。
【0099】
このような図13に示す基板ずれ判定処理によっても,図9や図12に示すように放電ステップにおいて伝熱ガスが安定する時点(t4)よりも前の時点(図9に示すtp又は図12に示すt2)から基板ずれ判定を行うことができるので,例えば伝熱ガスを昇圧した後や高周波電力を上昇させた後に基板ずれが発生した場合でも,伝熱ガスが安定する時点(t4)よりも前にそれを検出することができ,直ぐに処理を中止することができる。これにより,異常放電による載置台300の損傷を極力防止できる。しかも,各判定ポイントの間隔を短くするほどリアルタイムで基板ずれ判定をすることができる。
【0100】
なお,図13に示す基板ずれ判定処理においても,図9に示す場合と同様に,各判定ポイントの閾値として,直前の判定ポイントにおける実際の伝熱ガス流量を用いる代わりに,その伝熱ガス流量の変化量を用いるようにしてもよい。この場合は,図13に示すステップS234,S240において「流量」とあるのを,「流量の変化量」と置き換えて適用することができる。これによれば,伝熱ガス流量が減少又は一定になる場合のみならず,僅かではあるが徐々に上昇していく場合においても,各判定ポイントにおいて閾値以上に変化量が大きくならなければ,漏れがなく基板ずれがない正常状態と判定することができる。
【0101】
また,上述した実施形態の機能を実現するソフトウエアのプログラムを記憶した記憶媒体等の媒体をシステムあるいは装置に供給し,そのシステムあるいは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記憶媒体等の媒体に記憶されたプログラムを読み出して実行することによっても,本発明が達成され得る。
【0102】
この場合,記憶媒体等の媒体から読み出されたプログラム自体が上述した実施形態の機能を実現することになり,そのプログラムを記憶した記憶媒体等の媒体は本発明を構成することになる。プログラムを供給するための記憶媒体等の媒体としては,例えば,フロッピー(登録商標)ディスク,ハードディスク,光ディスク,光磁気ディスク,CD−ROM,CD−R,CD−RW,DVD−ROM,DVD−RAM,DVD−RW,DVD+RW,磁気テープ,不揮発性のメモリカード,ROMなどが挙げられる。また,媒体に対してプログラムを,ネットワークを介してダウンロードして提供することも可能である。
【0103】
なお,コンピュータが読み出したプログラムを実行することにより,上述した実施形態の機能が実現されるだけでなく,そのプログラムの指示に基づき,コンピュータ上で稼動しているOSなどが実際の処理の一部又は全部を行い,その処理によって上述した実施形態の機能が実現される場合も,本発明に含まれる。
【0104】
さらに,記憶媒体等の媒体から読み出されたプログラムが,コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後,そのプログラムの指示に基づき,その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部又は全部を行い,その処理によって上述した実施形態の機能が実現される場合も,本発明に含まれる。
【0105】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0106】
例えば上記各実施形態においては,サセプタに高周波を印加してプラズマを発生させる場合について説明したが,サセプタに高周波を印加する以外の方法,例えば容量結合放電で上部にプラズマ生成用の高周波を印加する場合や,誘導結合型の放電でプラズマを生成する場合,マイクロ波によりプラズマを生成する場合であってもよい。これらいずれの手法で発生させたプラズマであっても基板保持面が露出していれば同様の異常放電が起き得るため,プラズマを発生させるための高周波の処理容器内への供給方法は上記各実施形態で説明したものに限られるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は,基板処理方法及びその方法を実行するプログラムを記憶する記憶媒体に適用可能である。
【符号の説明】
【0108】
100 基板処理装置
102,104,106 ゲートバルブ
110 搬送室
120 ロードロック室
130 基板搬出入機構
140 インデクサ
142 カセット
200 プラズマ処理装置
202 チャンバ(処理容器)
204 基板搬入出口
208 排気管
209 排気装置
210 シャワーヘッド
222 バッファ室
224 吐出孔
226 ガス導入口
228 ガス導入管
230 開閉バルブ
232 マスフローコントローラ(MFC)
234 処理ガス供給源
300 載置台
302 ベース部材
310 サセプタ
311 絶縁被膜
312 整合器
314 高周波電源
315 DC電源
316 スイッチ
320 静電保持部
322 電極板
330 外枠部
340 冷媒流路
352 ガス流路
354 ガス孔
362 圧力制御バルブ(PCV)
364 流量センサ
366 伝熱ガス供給源
400 制御部
410 操作部
420 記憶部
G 基板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置に設けられた減圧可能な処理容器内の被処理基板に対してプラズマによる処理を施す基板処理方法であって,
前記プラズマ処理装置は,
前記処理容器内に配設され,前記被処理基板を載置保持する載置台を構成する基板保持部と,
前記基板保持部とその基板保持面に保持された被処理基板との間に伝熱ガス供給源からの伝熱ガスを供給するための伝熱ガス流路と,
前記伝熱ガス流路に流出させる伝熱ガス流量を検出する流量センサと,
前記プラズマを発生させるための高周波電力を前記処理容器内に供給する高周波電源と,
前記高周波電力によりプラズマ化される処理ガスを前記処理室内に供給する処理ガス供給部と,を備え,
前記伝熱ガス供給源から前記基板保持部と前記被処理基板との間において前記伝熱ガスが所定の圧力となるように前記伝熱ガスを供給する調圧ステップと,
前記伝熱ガスの供給開始で一時的に上昇した前記伝熱ガスの流量が低下して安定するよりも前に所定の調圧終了基準値以下になると,前記処理容器内に高周波電力を供給して放電を開始し,前記基板保持面上の被処理基板上に前記処理ガスのプラズマを発生させる放電ステップと,を有し,
前記放電ステップにおいて,前記流量センサで検出した伝熱ガス流量が所定の閾値を超えたときに基板ずれありと判定する判定ポイントを伝熱ガス流量が安定する前の時点において複数設け,前記各判定ポイントごとに前記閾値を設定することによって,前記伝熱ガス流量の安定を待たずに基板ずれ判定を行うことを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
前記各判定ポイントにおける閾値は,前記伝熱ガスの過去の流量又はその変化量に基づいて決定することを特徴とする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記過去の流量又はその変化量は,その基板処理よりも前に実行した基板処理における同じ判定ポイントの流量又はその変化量の平均値であることを特徴とする請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記過去の流量又はその変化量は,その基板処理における直前判定ポイントの流量又はその変化量であることを特徴とする請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記放電ステップにおいて,放電開始後に前記伝熱ガスの圧力を昇圧するステップを有する場合には,昇圧直前に前記基板ずれ判定を停止し,昇圧直後から前記基板ずれ判定を再開することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記放電開始後から前記伝熱ガスの昇圧までに判定ポイントを設定し,前記基板ずれ判定を行ってから前記伝熱ガスを昇圧することを特徴とする請求項5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記伝熱ガスの昇圧前の判定ポイントは,前記伝熱ガスの昇圧直前だけ設定して前記基板ずれ判定を行うことを特徴とする請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記伝熱ガスの昇圧前の判定ポイントは,放電開始後から伝熱ガス昇圧までに複数の判定ポイントを設定して前記基板ずれ判定を行うことを特徴とする請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記高周波電源による前記高周波電力の前記処理容器内への供給は,前記処理室内に設けられたサセプタに高周波電力を印加することによって行うことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項10】
プラズマ処理装置に設けられた減圧可能な処理容器内の被処理基板に対してプラズマによる処理を施す基板処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記憶媒体であって,
前記プラズマ処理装置は,
前記処理容器内に配設され,前記被処理基板を載置保持する載置台を構成する基板保持部と,
前記基板保持部とその基板保持面に保持された被処理基板との間に伝熱ガス供給源からの伝熱ガスを供給するための伝熱ガス流路と,
前記伝熱ガス流路に流出させる伝熱ガス流量を検出する流量センサと,
前記プラズマを発生させるための高周波電力を前記処理容器内に供給する高周波電源と,
前記高周波電力によりプラズマ化される処理ガスを前記処理室内に供給する処理ガス供給部と,を備え,
前記基板処理方法は,
前記伝熱ガス供給源から前記基板保持部と前記被処理基板との間において前記伝熱ガスが所定の圧力となるように前記伝熱ガスを供給する調圧ステップと,
前記伝熱ガスの供給開始で一時的に上昇した前記伝熱ガスの流量が低下して安定するよりも前に所定の調圧終了基準値以下になると,前記処理容器内に高周波電力を供給して放電を開始し,前記基板保持面上の被処理基板上に前記処理ガスのプラズマを発生させる放電ステップと,を有し,
前記放電ステップにおいて,前記流量センサで検出した伝熱ガス流量が所定の閾値を超えたときに基板ずれありと判定する判定ポイントを伝熱ガス流量が安定する前の時点において複数設け,前記各判定ポイントごとに前記閾値を設定することによって,前記伝熱ガス流量の安定を待たずに基板ずれ判定を行うことを特徴とする記憶媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−99634(P2012−99634A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246055(P2010−246055)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】