説明

基板処理方法及び装置

【課題】基板表面の必要な範囲に均一なめっき処理を行うためのめっき前処理を確実に行うことができるようにする。
【解決手段】基板Wの表面に無電解めっきを施すに先だって、めっき前処理としての洗浄処理と触媒付与処理を行うにあたり、触媒付与処理によって基板W表面に触媒を付与する範囲より広範囲に洗浄処理を行う(触媒付与範囲S<洗浄範囲S)。触媒付与処理によって基板表面に触媒を付与する範囲は、例えば、基板W表面の均一にめっき処理を行う必要がある範囲と同じ範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の基板の表面に設けた配線用の微細な凹部に銅、銀または金等の導電体を埋め込んで構成した埋込み配線の露出表面に、例えば無電解めっきで配線保護層を形成する際のめっき前処理装置に使用される基板処理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板の配線形成プロセスとして、配線溝及びコンタクトホールに金属(導電体)を埋めこむようにしたプロセス(いわゆる、ダマシンプロセス)が使用されつつある。これは、層間絶縁膜に予め形成した配線溝やコンタクトホールに、アルミニウム、近年では銅や銀等の金属をめっきによって埋め込んだ後、余分な金属を化学機械的研磨(CMP)によって除去し平坦化するプロセス技術である。
【0003】
この種の配線、例えば配線材料として銅を使用した銅配線にあっては、平坦化後、銅からなる配線の表面が外部に露出しており、配線(銅)の熱拡散を防止したり、例えばその後の酸化性雰囲気の絶縁膜(酸化膜)を積層して多層配線構造の半導体基板を作る場合等に、配線(銅)の酸化を防止したりするため、Co合金やNi合金等からなる配線保護層(蓋材)で露出配線の表面を選択的に覆って、配線の熱拡散及び酸化を防止することが検討されている。このCo合金やNi合金等は、例えば無電解めっきによって得られる。
【0004】
例えば、図1に示すように、半導体ウエハ等の基板Wの表面に堆積したSiO2等からなる絶縁膜2の内部に、配線用の微細な凹部4を形成し、表面にTaN等からなるバリア層6を形成した後、例えば、銅めっきを施して、基板Wの表面に銅膜を成膜して凹部4の内部に埋め込む(ダマシンプロセス)。しかる後、基板Wの表面にCMP(化学機械的研磨)を施して平坦化することで絶縁膜2の内部に銅膜からなる配線8を形成し、この配線(銅膜)8の表面に、例えば無電解めっきによって得られるCo−W−P合金膜からなる配線保護層(蓋材)9を選択的に形成して配線8を保護する(蓋めっきプロセス)。
【0005】
一般的な無電解めっきによって、このようなCo−W−P合金膜からなる配線保護層(蓋材)9を配線8の表面に選択的に形成する工程を説明する。先ず、CMP処理を施した半導体ウエハ等の基板Wを、例えば液温が25℃で、0.5MのH2SO4等の酸溶液(第1処理液)に1分程度接液させて、絶縁膜2の表面に残った銅等のCMP残さ等を除去する。そして、基板Wの表面を超純水等の洗浄液(第2処理液)で洗浄し(前洗浄処理プロセス)、次に例えば液温が25℃で、0.005g/LのPdCl2と0.2ml/LのHCl等の混合溶液(第1処理液)に基板Wを1分程度接液させ、これにより配線8の表面に触媒としてのPdを付着させて配線8の露出表面を活性化させる。次に、基板Wの表面を超純水等の洗浄液(第2処理液)で洗浄し(第1前処理プロセス)、次に例えば液温が25℃で、20g/LのNa3657・2H2O(クエン酸ナトリウム)等の溶液(第1処理液)に基板Wを接液させて、配線8の表面に中和処理を施す。そして、基板Wの表面を超純水(第2処理液)で水洗し(第2前処理プロセス)、次に例えば液温が80℃のCo−W−Pめっき液中に基板Wを、例えば120秒程度浸漬させて、活性化させた配線8の表面に選択的な無電解めっき(無電解Co−W−P蓋めっき)を施し、しかる後、基板Wの表面を超純水等の洗浄液で洗浄する(めっき処理プロセス)。これによって、配線8の表面にCo−W−P合金膜からなる配線保護層9を選択的に形成して配線8を保護する。
【0006】
上記めっき処理工程やめっき処理に付帯する各種前処理工程や洗浄工程等を行うための多数の装置を必要とする基板処理装置(めっき装置)には、前記各種処理が品質良く確実に行えることが要求され、更に、装置全体のコンパクト化や、装置コストの低廉化が求められていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、無電解めっきによって、Co−W−P合金膜からなる配線保護層(蓋材)を形成する際には、前述のように、配線の表面に、例えばPd等の触媒を付与する触媒付与処理が施される。また絶縁膜上に配線保護層が形成されることを防止するため、絶縁膜上に残った銅等からなるCMP残さを除去する必要があり、これは、一般にHSOやHClなどの無機酸を使用して行われる。一方、無電解めっき液は、一般にアルカリ溶液から構成されており、このため、めっき処理の直前に中和工程を入れてめっきプロセスを安定化させることが必要となる。
【0008】
このようなめっき前処理工程を行って、基板表面の必要な範囲に均一なめっき処理を確実に行うようにするためには、触媒付与処理において、この範囲(めっき範囲)のみに触媒を確実に付与し、しかもこの触媒を付与した全範囲に中和処理等を施す必要がある。
【0009】
しかしながら、従来の一般的なめっき装置にあっては、触媒付与に先立って行われる前洗浄処理(薬液洗浄)、触媒付与処理及び触媒付与後の洗浄処理(中和処理)を行う装置として、一般に同じ構成を備えた装置が使用されていた。このため、前洗浄(薬液洗浄)、触媒付与及び触媒付与後の洗浄(中和処理)に付される範囲が全て同一となり、装置としての誤差や基板を保持した時の基板の位置ずれ等により、触媒を付与すべき範囲が前洗浄(薬液洗浄)されなかったり、触媒を付与した全範囲が触媒付与後に洗浄(中和処理)されなかったりして、基板表面の必要な範囲に確実にめっき処理を行うことができない場合があった。
【0010】
従来、安定的且つ均一な基板のめっき(例えば無電解めっき)処理、或いは安定的且つ均一な基板の前処理を行う方法として、基板を処理液に浸漬させてその被処理面に処理液を接液させるディップ処理方式が一般に用いられてきた。このディップ処理方式においては、基板の被処理面上に滞留する気泡の除去が、基板の安定的且つ均一な各種処理を行う上で最重要課題である。即ち、基板を処理液面に対して平行(水平)にして処理液に浸漬させると、基板の被処理面表面に気泡が付着して良好な処理に悪影響を与える。そこで気泡の除去方法として、基板を傾斜させた状態にて処理液に浸漬させ、その後基板を水平に戻して処理する方法が提案されている。
【0011】
しかしながら、上記基板を傾斜させる方法の場合、基板保持装置に傾斜機構を取り付けなければならず、装置が複雑になるばかりか装置の質量が増加し、低コスト化も阻害されるという問題点があった。
【0012】
前記第1前処理プロセスによる触媒付与処理後の状態は、後の工程で行われるめっき処理に大きな影響を及ぼす。従って、この触媒付与処理においては安定した確実な触媒の付与処理が必要となる。従来、安定的且つ均一な基板の触媒付与処理等の前処理を行う方法として、基板を処理液に浸漬させてその被処理面に処理液を接液させるディップ処理方式が一般に用いられてきた。そして基板を処理液に浸漬させる処理においては、基板の被処理面上に付着する気泡を除去することがその安定的且つ均一な基板の処理に必要不可欠であるが、従来その十分な対策がなされていなかった。
【0013】
上記めっき処理等を行う基板処理装置においては、基板の裏面を吸着して基板を保持する基板保持装置が一般に使用される。この基板保持装置は、板状の吸着ヘッドを具備し、この吸着ヘッド下面に取り付けた吸着パッドに基板の裏面を真空吸着して保持した上で、基板の被処理面にめっき液等の各種処理液を接液させてめっき等の各種処理を行うようにしている。
【0014】
この吸着パッドは、一般に基板の裏面の略全体を真空引きするように構成されていた。このように、基板の裏面の略全体(できればエッジぎりぎりまで)を真空引きするのは、基板の裏面に処理液が付着することを極力防止するためである。
【0015】
しかしながら、この吸着パッドのように、パッドの内側全体が真空状態となる吸着手段では、基板を真空吸着して保持した際に、その真空吸着力によって基板の中心から外周部にかけて基板が大きく撓み、このため均一なめっき処理ができない等の悪影響を生じる恐れがあるばかりか、基板破損の事態も招きかねない恐れもあった。また前記吸着パッドのパッドは、シール材も兼ねるため、通常ゴム材が使用されるが、ゴム材は経年変化等により基板に接着しやすくなり、このため一旦吸着パッドに吸着した基板が吸着パッドから引き剥がれにくくなり、基板の着脱に支障をきたす恐れもあった。
【0016】
本発明は上記事情に鑑みて成されたもので、基板表面の必要な範囲に均一なめっき処理を行うためのめっき前処理を確実に行うことができるようにした基板処理装置及び基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明の基板処理方法は、基板の表面に無電解めっきを施すに先だって、めっき前処理としての洗浄処理と触媒付与処理を行うにあたり、触媒付与処理によって基板表面に触媒を付与する範囲より広範囲に洗浄処理を行うことを特徴とする。
これにより、例えば、触媒を付与すべき全範囲をもれなく前洗浄(薬液洗浄)し、触媒付与後に、触媒を付与した全範囲をもれなく洗浄(中和処理)して、基板表面の必要な範囲に確実にめっき処理を行うことができる。
【0018】
前記触媒付与処理によって基板表面に触媒を付与する範囲は、基板表面の均一にめっき処理を行う必要がある範囲と同じ範囲であることが好ましい。これにより、基板表面のめっきが不必要な場所まで触媒が付与されて、後にめっき処理されることを防止することができる。
【0019】
本発明の好ましい一態様は、前記めっき前処理としての洗浄処理は、前記触媒付与処理に先立って行う前洗浄と、触媒付与処理後の洗浄とを含むことを特徴とする。このめっき前処理は、前洗浄(薬品洗浄)、触媒付与処理及び洗浄(中和処理)の順序で行われ、しかる後、基板表面を無電解めっき液に接触させることで、無電解めっきによるめっき処理が行われる。
【0020】
本発明の基板処理装置は、基板の表面の周縁部をシール部材でシールし該表面をめっき前処理液に接触させてめっき前処理としての洗浄処理を行う洗浄処理ユニットと触媒付与処理を行う触媒付与処理ユニットとを有し、前記洗浄処理ユニットは、前記触媒付与処理ユニットで触媒を付与する範囲より広範囲に洗浄処理を行うように構成されていることを特徴とする。
【0021】
本発明の好ましい一態様は、前記触媒付与処理ユニットによって基板表面に触媒を付与する範囲は、基板表面の均一にめっき処理を行う必要がある範囲と同じ範囲であることを特徴とする。
【0022】
本発明の好ましい一態様は、前記洗浄処理ユニットと前記触媒付与処理ユニットは、前記シール部材として、異なる開口面積を有するものを使用している他は、同じ構成であることを特徴とする。これにより、装置の共通化を図ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、無電解めっきのめっき前処理にあたり、例えば、触媒を付与すべき全範囲を確実に前洗浄(薬液洗浄)し、触媒を付与した全範囲を触媒付与後に洗浄(中和処理)して、基板表面の必要な範囲に確実にめっき処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図2は、本発明の実施の形態にかかる基板処理装置1の全体概略平面図である。図2に示すように、この基板処理装置1は、ロード・アンロードエリア100と、洗浄エリア200と、めっき処理エリア300の3つの処理エリアを具備して構成されている。そしてロード・アンロードエリア100には、2つのロードポート110、第1基板搬送ロボット130及び第1反転機150が設置されている。洗浄エリア200には、基板仮置台210、第2基板搬送ロボット230、前洗浄ユニット240、第2反転機250及び2組の後洗浄ユニット260,260が設置されている。めっき処理エリア300には、第3基板搬送ロボット310、3組の第1前処理ユニット320、2組の第2前処理ユニット340、3組のめっき処理ユニット360及びめっき液供給ユニット390が設置されている。以下各構成部分について説明する。
【0025】
〔基板搬送ロボット〕
この基板処理装置1では、それぞれのエリア100,200,300に、表面(被処理面)を上向きにして基板Wを保持する、いわゆるフェースアップや、表面(被処理面)を下向きにして基板Wを保持する、いわゆるフェースダウンで搬送可能な基板搬送ロボット130,230,310を搭載している。フェースアップとするかフェースダウンとするか、ドライとするかウエットとするかは、各プロセスに応じて選択する必要がある。従って、各基板搬送ロボット130,230,310のハンドは、プロセスの形態に応じたハンドを搭載している。この基板処理装置1では基板搬送ロボット130,230,310のアーム回転による基板Wの反転を行わないので、各基板搬送ロボット130,230,310のハンドによる基板Wの搬送時における基板Wの脱落等の危険を回避できる。以下各基板搬送ロボット130,230,310について説明する。
【0026】
(1)第1基板搬送ロボット130について
図3Aは、ロード・アンロードエリア100に設置される第1基板搬送ロボット130を示す要部平面図(基板Wを載せた状態)、図3Bは、第1基板搬送ロボット130の要部側面図(基板Wを載せない状態)、図3Cは、第1基板搬送ロボット130を図3Aの矢印A方向から見た概略側面図である。第1基板搬送ロボット130は、完全乾燥状態の基板Wを搬送するロボットであり、図3A及び図3Bに示すように、ロボット本体131上に設置した複数の関節を有する複数(2組)のアーム133,135の先端に、それぞれドライ仕様のハンド137,139を上下に重ねるように取り付けて構成されている。両ハンド137,139は、何れも薄型落とし込みタイプである。ロボット本体131は、図3Cに示すように、基台132に取り付けた2本のアーム132a,132bの先端に取り付けられ、アーム132bの先端で回動できるように構成され、これによって、図3Cに実線及び点線で示すように、ロボット本体131が各場所に移動できるように構成されている。これによって、第1基板搬送ロボット130全体を移動することなく、ドライ状態の基板Wをロードポート110,110にセットした基板収納カセットと第1反転機150と基板仮置台210との間で受け渡しできるようにしている。
【0027】
なお、この第1基板搬送ロボット130は走行軸を有していないが、これは以下の理由による。即ち、従来は、第1基板搬送ロボット130を走行軸で動作させて、基板Wの受渡しを行っていた。走行軸には、ボールねじ、リニアモータ等の駆動方式が採用されているが、何れの場合でも摺動部(例えばLMガイド)が必要となり、パーティクルの発生源となっていた。そこで本発明においては、走行軸を必要としない固定式のロボットを第1基板搬送ロボット130として配置することで、パーティクルの発生を防止し、ロード・アンロードエリア100において、処理する基板Wに対して常時クリーンな環境が得られるようにしたのである。
【0028】
(2)第2基板搬送ロボット230について
洗浄エリア200での基板Wの搬送においては、基板Wがドライのものとウエットのもの、更にはフェースアップのものとフェースダウンのものとが混在するので、この洗浄エリア200に用いる第2基板搬送ロボット230は、2組のアームで3ハンド方式のものを搭載することとした。図4Aは、第2基板搬送ロボット230を示す平面図(但し上段上ハンド237の記載を省略し、上段下ハンド239が基板Wを保持した状態を示している)で、図4Bは、第2基板搬送ロボット230の側面図(基板Wを保持しない状態)、図4Cは、第2基板搬送ロボット230の上段上ハンド237の要部平面図(基板Wを保持した状態)、図4Dは、第2基板搬送ロボット230の下段ハンド241の要部平面図(基板Wを保持した状態)である。図4A乃至4Dに示すように、第2基板搬送ロボット230は、ロボット本体231上に設置した複数の関節を有する複数(2組)のアーム233,235の内の一方のアーム233先端に、上段上ハンド237と上段下ハンド239とを上下に重ねるように取り付け、他方のアーム235の先端に下段ハンド241を取り付けて構成されている。
【0029】
上段上ハンド237は、後洗浄ユニット260での処理が終了したドライの基板Wを基板仮置台210へ搬送するハンドであり、フェースアップの薄型落とし込みタイプでドライ仕様のハンドである。上段下ハンド239は、ロード・アンロードエリア100から基板仮置台210に搬送された基板Wを前洗浄ユニット240へ搬送するドライ仕様のハンドであり、フェースダウンの薄型真空引きタイプで基板Wの裏面を吸着して保持するハンド(裏面吸着型真空ハンド)である。下段ハンド241は、めっき処理エリア300から第2反転機250に搬送された基板Wを後洗浄ユニット260の第1洗浄部270と第2洗浄乾燥部290とにそれぞれ搬送するハンドであり、フェースアップの厚型落し込みタイプでウエット仕様のハンドである。
【0030】
即ち、洗浄エリア200においては、基板仮置台210から前洗浄ユニット240への基板Wの搬送は、基板Wをドライでフェースダウンとした状態で行い、めっき処理後の第2反転機250から第1洗浄部270への基板Wの搬送及び第1洗浄部270から第2洗浄乾燥部290への基板Wの搬送は、基板Wをウエットでフェースアップとした状態で行い、第2洗浄乾燥部290から基板仮置台210への基板Wの搬送は、ドライでフェースアップとした状態で行う。これらの搬送形態が各処理ユニット間での基板Wに要求される最適な基板Wの搬送形態であり、このような最適な基板Wの搬送形態をとるために、上述のように3種類のハンド237,239,241を2本のアーム233,235に具備させている。そして1本のアーム233にドライ仕様の2種類のハンド237,239を具備させることで、1台の第2基板搬送ロボット230に用途に応じた多数のハンドを有することを可能としている。
【0031】
(3)第3基板搬送ロボット310について
図5Aは、めっき処理エリア300に設置される第3基板搬送ロボット310を示す要部側面図(基板Wを保持した状態)で、図5Bは、第3基板搬送ロボット310の真空ハンド337,339の要部平面図(基板Wを保持した状態)、図5Cは、第3基板搬送ロボット310の真空ハンド337(または339)の先端部分の拡大断面図である。めっき処理エリア300での基板Wの搬送は、全てフェースダウンであるため、第3基板搬送ロボット310は、ロボット本体331上に設置した複数の関節を有する複数(2組)のアーム333,335(アーム335は図示せず)の先端に、それぞれ裏面吸着型真空ハンド337,339を上下に重ねるように取り付けて構成されている。両真空ハンド337,339は、何れも着脱への悪影響を回避可能なように、厚型真空ハンドで真空吸着力の強い剛性の高いタイプとしている。即ち、下記する前洗浄ユニット240や、第1処理ユニット320及び第2前処理ユニット340でのフェースダウン状態での前洗浄や前処理が終了して、これらユニットから基板Wを取り出す際、基板Wは、下記する基板固定ヘッド560のシール部材575(図11A及び11B参照)に貼り付けていることがある。そこで真空ハンド337,339として、真空吸着力が強くて剛性の高いハンドを用いることで、基板Wがシール部材575に貼り付いた場合でも基板Wの基板固定ヘッド560からの取り出し、搬送を確実に行えるようにしている。
【0032】
真空ハンド337(または339)の先端部分は、図5Cに示すように、基板吸着面337bの周囲に蛇腹部337cを設けることで、基板吸着面337bが基板吸引方向に向けて伸縮自在に構成された基板吸着パッド337aと、この基板吸着パッド337aの周囲に設置されてこの基板吸着パッド337aを気密的に固定すると共に、その表面に基板Wの上下方向の位置決めを行う平坦な基準面337gを設けてなる固定部材337fとを具備している。基板吸着パッド337aと真空ハンド337(または339)の内部を延びる真空ライン337h,337iが連通し、更に基板吸着面337bには凹状の吸着口337dが設けてある。そして基板Wの裏面を吸着保持するときは、まず基板吸着面337bが基板Wの裏面に吸着するが、その際真空ハンド337(または339)に対して基板Wが傾斜していても、蛇腹部337cが撓むことで基板吸着面337bも傾斜して容易に基板Wの裏面に吸着でき、さらに基板吸着パッド337aが縮むことで基板Wの裏面を固定部材337fの基準面337gに当接させ水平とさせて基板Wの上下方向の位置決めを行うことができる。
【0033】
前述のように、第3基板搬送ロボット310に取り付ける真空ハンド337(または339)として、基板Wをフェースダウンした状態で保持して搬送する裏面吸着型真空ハンドを用いたが、これは以下の理由による。即ち、基板処理装置1内にはパーティクルによる基板Wへの悪影響を除外するため常時ダウンフローの空気の流れがあり、基板Wをフェースアップで保持して搬送すると、処理ユニット間での基板Wの搬送中に基板の被処理面が乾燥してしまう。これを防ぐためには、基板Wを十分なウエット状態とするのが一般的だが、そうすると液体が装置内に撒き散らされるなどによって、装置内環境に悪影響を与えてしまう。そこで基板Wの裏面中央部を吸着保持して基板Wの被処理面に接触することなくフェースダウンにて搬送することにより、空気のダウンフローの流れ影響を抑え、基板Wをウエットではあるが極力乾燥した状態として搬送し、装置内環境を良好にしたのである。なお洗浄エリア200の第2基板搬送ロボット230の上段下ハンド239についても同様の効果が生じる。
【0034】
〔反転機〕
この基板処理装置1では、基板Wを180°反転させるユニットからなる反転機150,250をロード・アンロードエリア100と洗浄エリア200にそれぞれ搭載し、基板Wのフェースアップとフェースダウンによる搬送を可能としている。
【0035】
(1)第1反転機150について
図6Aは、ロード・アンロードエリア100に設置される第1反転機150を示す概略平断面図で、図6Bは、第1反転機150の概略側断面図である。図6Aに示すように、第1反転機150は、基板着脱用シリンダ151を駆動することで両基板着脱アーム153,153を矢印A方向に開閉し、図6Bに示すように、反転用モータ155を駆動することで、両基板着脱アーム153,153を矢印B方向に回動して180°反転させるように構成されている。反転用モータ155としては、例えばステッピングモータが使用される。つまりまず両基板着脱アーム153,153を開いた状態でその間に基板Wを配置し、次に両基板着脱アーム153,153を閉じて両基板着脱アーム153,153に設けたクランクピン154によって基板Wの外周を把持し、次に反転用モータ155を駆動して基板Wを180°回動して反転した後、両基板着脱アーム153,153を開いて基板Wを離す。
【0036】
(2)第2反転機250について
図7Aは、洗浄エリア200に設置される第2反転機250を示す概略側断面図で、図7Bは、第2反転機250の基板着脱アーム253,253部分の概略平面図である。第2反転機250も第1反転機150と同様に、図示しない基板着脱用シリンダと反転用モータとによって、両基板着脱アーム253,253が開閉、反転駆動される。さらにこの第2反転機250の場合、プロセス途中の基板Wを処理するので基板Wの乾燥を防止する必要があり、このため基板Wの上下位置に、基板Wの両面に純水等の処理液を噴射するシャワーノズル251,251が取り付けられている。
【0037】
〔基板仮置台〕
図8Aは、基板仮置台210を示す概略正面図で、図8Bは、基板仮置台210の概略側面図、図8Cは、基板仮置台210の概略平面図である。図8A乃至8Cに示すように、基板仮置台210は、昇降板211をリニアガイド213,213によって上下動自在に設置するとともに、この昇降板211を昇降用モータ214とボールねじ215からなる昇降機構216によって上下動可能とし、さらに昇降板211の上部に上段仮置台217と下段仮置台219とを上下に2段設置して構成されている。下段仮置台219は処理前、上段仮置台217は処理後のクリーンな基板Wが置かれる。両仮置台217,219の上面には基板Wの外周を支持する4本ずつの支持棒221が突設され、基板Wはその上に支持される。基板Wを仮置きする際は、図8Cに示すように、基板Wを載置したハンドを何れかの仮置台217または219上に移動し、昇降機構216を駆動することで仮置台217,219を少し上昇し、これによって基板Wを支持棒221上に載置した後、ハンドを引き出す。基板Wを仮置台217または219からハンド上に移す際は、上記動作の逆を行う。
【0038】
〔各種前処理ユニット〕
各種前処理ユニットとは、前洗浄ユニット(洗浄処理ユニット)240、第1前処理ユニット(触媒付与処理ユニット)320及び第2前処理ユニット(薬液洗浄(中和)ユニット)340を意味している。これら各前処理ユニットの構造は、基本的に同一である。図9は、これら各種前処理を行うのに使用する前処理ユニット500を示す斜視図である。図9に示すように、前処理ユニット500は、上面が開放され内部に噴霧ノズル(処理液噴射部)520を設置してなる円筒状の容器510と、容器510の上部開口を塞ぐ蓋部材530と、蓋部材530の上面に取り付けられる噴霧ノズル(処理液噴射部)540(図10A及び10B参照)と、蓋部材530を旋回する蓋部材駆動機構550と、容器510の上部において基板Wを保持する基板固定ヘッド560と、基板固定ヘッド560を回転するヘッド回転用モータ580と、ヘッド回転用モータ580等を取り付けて昇降するヘッド昇降機構600とを具備して構成されている。なお基板固定ヘッド560と基板固定ヘッド560を駆動するヘッド回転用モータ580等の取付台579に取り付けられた部材とによって基板保持装置が構成される。
【0039】
図10Aは、蓋部材530によって容器510を閉じた状態の容器510と蓋部材530とを示す概略側断面図で、図10Bは、図10Aの概略平面図、図10Cは、容器510を開いた時の概略側断面図で、図10Dは、図10Cの概略平面図(但し蓋部材530の記載は省略している)である。
【0040】
蓋部材530は、図9に示すシリンダを具備して構成される蓋部材駆動機構550及び該蓋部材駆動機構550と蓋部材530の間を連結するリンク機構555によって、図10Aに示すように、容器510の開口を塞ぐ位置と、図10Cに示すように、容器510から離れてその開口を開く位置に駆動される。
【0041】
容器510内に設置される噴霧ノズル520は、図10C及び10Dに示すように、板状に形成されたノズル固定部材521上に、面状に複数個(19個)のノズル523を上向きに配置して構成されている。これら複数個(19個)のノズル523は、基板固定ヘッド560に保持した基板Wを、容器510内の、例えば図10Cに示す位置に下降した状態で、これら複数個(19個)のノズル523から同時に処理液(第1処理液)を噴霧することで、基板Wの被処理面(下面)全域に処理液が均一に噴霧され、基板Wの被処理面への噴霧圧も極力均等になる位置に設置されている。これにより、ばらつきのない均等な基板Wの処理が可能となる。なお、ノズル523には、処理液の噴霧角度があるので、基板Wの被処理面全域に処理液を均一に噴霧するためにはノズル523から基板Wまでの距離を正確に所定の距離としなければならず、このため基板保持ヘッド560は、上下方向に正確に位置決め可能な構造となっている必要がある。また噴霧圧力によりノズル523の噴霧角度が変化するため、適切な処理の圧力時の噴霧角度で、且つ基板Wの被処理面全域に接液できるよう、上下の位置決めには電気的なフィードバック(サーボ制御等)を採用している。
【0042】
また容器510内部の上部には、円周方向に向けて洗浄液を噴霧する複数(4個)の容器内洗浄用の噴霧ノズル515が設置されており、これら噴霧ノズル515から噴射される洗浄液によって容器510の内周面全体が洗浄できるようになっている。即ち、各噴霧ノズル515は、噴霧方向の角度が調節できるように構成されており、噴霧ノズル515から噴出された純水或いは他の洗浄液は、容器510の内壁の接線方向に沿いながら上部から下部へ流れ落ちていき、内壁全体を洗浄することができる。この洗浄により容器510の内壁の乾燥を防ぐことでパーティクルの発生を防止することができる。更に、処理液の浸漬によって発生する各部材の劣化等も防止できる。噴霧ノズル515による容器内壁の洗浄は、例えば各基板Wの処理毎(一枚毎または所定の枚数毎)に行い、またメンテナンス処理時にも行う。
【0043】
一方蓋部材530の上面に取り付けられる噴霧ノズル540の各ノズル543も、面状に複数個(19個)のノズル543を上向きに配置して構成されている。これら複数個(19個)のノズル543も、基板固定ヘッド560に保持した基板Wが、容器510上を塞いだ蓋部材530(図10Aの状態)の上部に位置した状態で、これら複数個(19個)のノズル543から同時に第2処理液を噴霧することで基板Wの被処理面(下面)全域に処理液が均一に噴霧され、基板Wの被処理面への噴霧圧も極力均等になる位置に設置されている。これにより、ばらつきのない均等な基板Wの処理が可能となる。なお複数個のノズル543は、図10Bに点線で示すように、渦巻線に沿って配置され、これによって各ノズル543の蓋部材530の中心からの距離を異ならせ、これによって基板Wの被処理面全域に処理液が均一に噴霧されるようにしている。なおノズル543にも処理液の噴霧角度があるので、基板Wの被処理面全域に処理液を均一に噴霧するためにはノズル543から基板Wまでの距離を正確に所定の距離としなければならず、このためにも基板保持ヘッド560は、上下方向に正確に位置決め可能な構造となっており、上下の位置決めには電気的なフィードバック(サーボ制御等)を採用している。
【0044】
図11Aは、基板固定ヘッド560及びヘッド回転用モータ580の部分を示す概略側断面図、図11Bは、図11AのD部分の拡大図である。図11Aに示すように、基板固定ヘッド560は、下方に開口するとともに側壁に開口561を有するハウジング563の内部に、押圧部材565を配置して構成されている。ハウジング563は、ヘッド回転用モータ580の中空の出力軸567に連結されている。押圧部材565は、その中央において、軸569に連結され、この軸569は、出力軸567の内部の中空部分を通過して上方に突出しており、この突出端は、軸受部571を介して回転自在に支承されている。出力軸567の中空部分と軸569との間は、スプライン嵌合によって同時に回転するが出力軸567に対して軸569が独立して上下動できるように構成されている。またハウジング563の下端には、内方に突出するリング状の基板保持部573が設けられ、基板保持部573の内周側上部には、基板Wを載置してシールするリング状のシール部材575が取り付けられている。ハウジング563の外径は、前記容器510の内径よりも少し小さく、容器510の開口をほぼ塞ぐ寸法形状に構成されている。一方、図11Bにおいて、押圧部材565は、円板状のホルダ591の外周下面に内部に収納部595を有する基板固定リング593を取り付け、収納部595内にスプリング597を介してその下にリング状のプッシャ599を収納し、基板固定リング593の下面に設けた孔からプッシャ599の押圧部599aを突出して構成されている。
【0045】
軸受部571は、この軸受部571を上下動させるシリンダ機構577(図9,図12A参照)のロッド578に固定されており、またシリンダ機構577自体は、前記ヘッド回転用モータ580等を載置する取付台579に固定されている。図12Aは、ヘッド(取付台)昇降機構600を示す側面図、図12Bは、ヘッド昇降機構600を後側から見た斜視図である。図12A,12B及び図9に示すように、ヘッド昇降機構600は、取付台579をヘッド昇降用摺動部601によって支柱(固定側部材)650,650に上下動自在に取り付けるとともに、この取付台579を昇降機構660によって昇降するように構成されている。即ち、昇降機構660は、両支柱650,650間に渡された取付板651に固定したヘッド昇降用モータ661と、ボールねじナット665a及びねじ軸665bによって構成されるヘッド昇降用ボールねじ665とを具備し、ヘッド昇降用モータ661の駆動軸に取り付けたプーリー663とねじ軸665bの端部に取り付けたプーリー667間にベルト670を巻き掛けることで構成される。そして、基板固定ヘッド560やヘッド回転用モータ580等を取り付けた取付台579全体(即ち、基板保持装置)は、ヘッド昇降機構600のヘッド昇降用モータ661を駆動することで上下動する。上下方向への移動量は、ヘッド昇降用モータ661で制御され、これによって、基板Wの被処理面と噴霧ノズル520,540の位置関係(離間距離)を任意に設定することが可能となっている。一方押圧部材565は、シリンダ機構577を駆動することによってハウジング563等に対して単独で上下動でき、またハウジング563は、ヘッド回転用モータ580によって回転駆動される。
【0046】
次に、この前処理ユニット500の動作を説明する。先ず、図9に示すように、基板固定ヘッド560が容器510の上方に上昇し、且つ基板固定ヘッド560の内部で、図11A及び11Bに示すように、押圧部材565が上昇した状態にセットする。そして、図4Bに示す上段下ハンド239、または図5A乃至5Cに示す真空ハンド337または339によって、フェースダウンの状態で保持された基板Wを、ハウジング563の側壁の開口561から挿入してその真空吸着を解除し、これによって、基板Wを基板Wの外径よりも数mm小さい径を有するリング状のシール部材575の上に載せる。次に、シリンダ機構577を駆動することで押圧部材565を下降させ、図13に示すように、押圧部材565の基板固定リング593の下面とプッシャ599の押圧部599aとで基板Wの上面外周を押圧し、基板Wの下面(被処理面)の外周をシール部材575に押し付けて、基板Wを固定する。同時にシール部材575は、処理液が基板Wの裏面に回り込むことを防止するシールとしても機能する。
【0047】
次に、基板Wを固定した基板固定ヘッド560を、ヘッド昇降用モータ661を駆動することで下降させて容器510の開口内に挿入し、この状態で、容器510内に設置した噴霧ノズル520から第1処理液を噴射し基板Wの被処理面(下面)に接液させて基板Wを処理する。次に、ヘッド昇降用モータ661を駆動することで、基板固定ヘッド560を上昇させて容器510よりも上方に移動させた後、図9に示す蓋部材駆動機構550を駆動することで、蓋部材530を旋回させて容器510の開口を塞ぐ(図10A参照)。そして、蓋部材530の上面に設置した噴霧ノズル540から第2処理液を噴霧し基板Wの被処理面に接液させて基板Wを処理し、基板Wの処理を完了する。
【0048】
なお、噴霧ノズル520による基板Wの処理の際は、基板固定ヘッド560によって容器510の開口がほぼ塞がれているので、基板Wに接液した後の第1処理液は、容器510内に溜まって、図10A,10C及び10Dに示す排水口511から排液される。また噴霧ノズル540による基板Wの処理の際は、容器510が蓋部材530によって塞がれているので、基板Wに接液した後の第2処理液は、容器510内に侵入せず、その外部に落ちて図示しない別の排水口から外部に排液される。これにより、第1処理液及び第2処理液の混合が回避できる。
【0049】
そして、シリンダ機構577を駆動することで押圧部材565を上昇させて基板Wの固定を解除し、図4Bに示す上段下ハンド239、または図5A乃至5Cに示す真空ハンド337または339をハウジング563側壁の開口561から挿入して基板Wの上面を真空吸着して外部に取り出し、次の工程に移送する。
【0050】
この例では、任意の大きさのシール部材575を使用することで、基板Wの被処理面(下面)の処理範囲が各種処理内容によって異なるようにしている。つまり、前洗浄ユニット(洗浄処理ユニット)240及び第2前処理ユニット(薬液洗浄(中和)ユニット)340にあっては、図14Aに示すように、シール部材575aとして、第1前処理ユニット(触媒付与処理ユニット)320によって触媒を付与する触媒付与範囲Sより広範囲の洗浄範囲Sの洗浄処理が行えるような開口面積を有するものが使用されている。つまり、このシール部材575aで囲まれた領域が洗浄範囲Sとなり、下記のように、第2前処理ユニット320に使用されているシール部材575b(図14B参照)で囲まれた領域が触媒付与範囲Sとなるが、この洗浄範囲Sは、触媒付与範囲Sより同心状により広くなるようになっている。
【0051】
これにより、前洗浄ユニット240にあっては、第1前処理ユニット320によって触媒を付与する範囲をもれなく前洗浄(薬液洗浄)し、また、第2前処理ユニット340にあっては、第1前処理ユニット320によって触媒を付与した範囲をもれなく洗浄(中和処理)することができる。
【0052】
一方、第1前処理ユニットにあっては、シール部材575bとして、前洗浄ユニット242及び第2前処理ユニット340によって洗浄される洗浄範囲Sより狭い範囲で、基板表面の均一にめっき処理を行う範囲と同じ範囲が触媒付与範囲Sとなる開口面積を有するものが使用されている。
【0053】
つまり、このシール部材575bで囲まれた領域が触媒付与範囲Sとなり、前述のように、前洗浄ユニット242及び第2前処理ユニット340に使用されているシール部材575aで囲まれた領域が洗浄範囲Sとなるが、この触媒付与範囲Sは、洗浄範囲Sより同心状により狭く、しかも基板表面の均一にめっき処理を行う範囲と一致するようになっている。
【0054】
これにより、基板表面のめっきが不必要な場所まで触媒が付与されて、後にめっき処理されることを防止し、しかも、前述のように、前洗浄ユニット240にあっては、第1前処理ユニット320によって触媒を付与する範囲をもれなく前洗浄(薬液洗浄)し、また、第2前処理ユニット340にあっては、第1前処理ユニット320によって触媒を付与した範囲をもれなく洗浄(中和処理)することで、基板表面の必要な範囲に確実にめっき処理を行うことができる。
【0055】
〔めっき処理ユニット〕
図15Aは、めっき処理ユニット360を示す側面図で、図15Bは、図15Aの概略側断面図である。図15A及び15Bに示すように、めっき処理ユニット360は、内部にめっき液(処理液)Qを溜めて基板Wのディップ処理を行う処理槽(めっき処理槽)710と、処理槽710の開口部711を塞ぐ蓋部材740と、蓋部材740の上面に取り付けられる噴霧ノズル(処理液噴射部)760と、蓋部材740を駆動(旋回)する駆動機構770と、基板Wを保持する基板保持装置780と、基板保持装置780全体を駆動する基板保持装置駆動機構810とを具備して構成されている。
【0056】
処理槽710は、めっき液(処理液)Qを溜める容器形状の処理槽本体713と、処理槽本体713の上端外周部分に設置され処理槽本体713からオーバーフローするめっき液Qを回収する外周溝715と、外周溝715の外周側を囲んで筒状に上方に突出する覆い部717とを有して構成されている。処理槽本体713の底面中央にはめっき液供給口721が設けられている。
【0057】
図16Aは、処理槽710の平面図、図16Bは、処理槽710の上部の断面図(図16AのE−E線断面図)である。図16A及び16Bに示すように、処理槽710の覆い部717には、覆い部717の内側壁から開口部711に向けて洗浄液(純水)をワンショットで噴射する複数(一対)のリンス用の噴霧ノズル723が取り付けられている。めっき処理後、基板保持装置780が上昇し基板Wがめっき液Qから離液しても、基板の被処理面には少量のめっき液が残留している。めっき液が残留していると、基板Wの表面のめっきが進行してしまい、均一なめっき膜を得ることができない。この例では、処理槽710に複数の噴霧ノズル723を配置し、めっき処理後、直ちに基板Wの表面に洗浄液を噴霧することで、基板Wの表面に残留しているめっき液を排除する。更に、洗浄液の噴霧によって、基板Wを急速に冷却しめっきの進行を停止させることで、均一なめっき膜を得ることができる。また、めっき液の使用温度は、一般に70℃〜80℃前後であるため、めっき液中の水分が蒸発してしまい、適正なめっき液の濃度を保持できなくなる恐れがあるが、めっき処理直後に噴霧する洗浄液(純水)によって蒸発した水分を補充することができ、この点からも好適である。噴霧する洗浄液の量は、この補充に必要な量を予め計算しておき適切な噴霧量とする。
【0058】
図17は、処理槽710の開口部711を蓋部材740で塞いだ状態の断面図(図16AのF−F線部分断面図)である。アイドリング時等、処理の行われていないときには、蓋部材740で処理槽710の開口部711を塞ぐことによりめっき液Qの無駄な蒸発を防止することが可能となる。この実施の形態においては、処理槽710の覆い部717に、通路719a及び継手719bからなり、気体(不活性ガス、例えば窒素)を処理槽710内部に噴出し供給する気体注入部719を取り付けている。そして蓋部材740によって塞いだ状態の処理槽710の内部に、気体注入部719によって気体(不活性ガス、例えば窒素)を噴出し供給して、この気体を処理槽710内に封じ込めることで、内部の雰囲気を空気からこの気体に置換する。これにより、めっき液Qが酸素に接触することがなくなり、めっき液Qの機能低下が防止され、常時正常なめっき液Qに基板Wを接触させることが可能となる。
【0059】
図15A及び15Bに戻って、めっき液供給ユニット390は、前記処理槽710の外周溝715にオーバーフローしためっき液を、配管によってめっき液供給用タンク(めっき液循環槽)391に戻し、めっき液供給用タンク391内に溜まっためっき液を、めっき液供給用ポンプPによって処理槽本体713のめっき液供給口721に供給してめっき液を常時循環させる。従って、処理槽本体713内には、常時めっき液Qが循環するため、単純にめっき液Qを溜めておく場合に比べてめっき液成分の濃度の低下率を減少させ、処理可能な基板の数を増大させることができる。更に、めっき液Qの流れを安定させるために処理槽本体713の内部に整流板714を設置している。整流板714は、円形の平板中にめっき液が流通する多数の貫通する小孔を設けることで構成されている。
【0060】
蓋部材740は、処理槽710の開口部711を塞ぐ大きさの板材によって構成されており、蓋部材740の両側面には、板状のアーム部745が取り付けられ、その先端近傍部分が処理槽710の略中央両側部分に設置した軸支部747に回動自在に軸支されている。アーム部745の先端は、駆動機構770の連結アーム775の先端に固定されている。
【0061】
噴霧ノズル(処理液噴射部)760は、図10Bに示す噴霧ノズル540と個数、配置位置共に同様の構成である。複数個のノズル763は、基板保持装置780に保持した基板Wを、処理槽710を塞いだ蓋部材740の上部に位置させた状態で、これら複数個のノズル763から同時に洗浄液(処理液)を噴霧することで、基板Wの被処理面(下面)全域に洗浄液が均等に噴霧され、基板Wの被処理面への噴霧圧も極力均等になる位置に上向きに取り付けられている。これにより、基板Wの洗浄処理において、ばらつきのない均等な処理が可能となる。
【0062】
駆動機構770は、蓋部材旋回用シリンダ771と、蓋部材旋回用シリンダ771のピストンに連結されるロッド773と、ロッド773の先端に回動自在に連結される連結アーム775とを具備して構成されている。蓋部材旋回用シリンダ771の下端部は、固定側部材に回動自在に支承されている。
【0063】
図18Aは、基板保持装置780の概略側断面図、図18Bは、図18AのG部分拡大図である。図18Aに示すように、基板保持装置780は、基板保持部781と基板保持部駆動部800とを具備している。基板保持部781は、下面が開放された略円筒状の基板受け783の内部に、略円形の吸着ヘッド789を収納して構成されている。基板受け783は、その下端面から内側に向けて基板Wを仮置きする仮置き部785を突出して設け、またその外周側面に基板挿入口787を設けている。吸着ヘッド789は、内部に真空供給ライン793を設けた略円板状の基部791と、基部791の下面外周にリング状に取り付けられる基板吸着部795とを具備して構成されている。
【0064】
基部791には、基板吸着部795に吸着した基板Wと前記基部791の間の空間を開放する複数個(図では1ヶ所のみ示す)の空気抜き用の開口部790を設けている。基板吸着部795は、シール材(例えばゴム材料等)で構成され、その先端を基部791の下面から突出することで該基部791の下面に当接する基板Wの裏面を吸着するとともに、基板Wの裏面の真空吸着した部分の内側へのめっき液の浸入を防止するシールの役目を果たす。
【0065】
基板吸着部795の形状については、図18Bに示す形状のみならず、円周幅にて吸着するものであればどのような形状でもかまわない。また基板吸着部795の基板Wに接触する部分には、基板吸着溝(吸着兼引き離し用孔)797を設け、これに前記真空供給ライン793を接続することで、基板吸着溝797への基板Wの吸着及び引き離しを行わせるように構成している。なお真空供給ライン793には、真空の他に不活性ガスまたは洗浄液を供給できるように構成されている。
【0066】
一方、基板保持部駆動部800は、前記吸着ヘッド789を回転駆動する基板回転モータ(駆動部)801と、前記基板受け783を上下の所定位置(少なくとも3ヶ所)に駆動する基板受け駆動用シリンダ803とを具備している。そして吸着ヘッド789は、基板回転モータ801によって回転駆動され、また基板受け783は、基板受け駆動用シリンダ803によって上下動される。つまり吸着ヘッド789は、回転のみで上下動せず、基板受け783は上下動のみで回転しない。
【0067】
基板保持装置780の動作を説明する。先ず、図18Aに示すように、吸着ヘッド789を回転しない状態で、基板受け783を最も下の位置(基板受渡し位置)に移動し、基板挿入口787を介して、図5A乃至5Cに示す第3基板搬送ロボット310の真空ハンド337または339に吸着されて保持された基板Wを基板受け783の内部に挿入し、真空ハンド337または339の吸着を解除することで、基板Wを仮置き部785の上に載置する。このとき基板Wは、フェースダウンで保持され、被処理面は下を向いている。そして真空ハンド337または339を基板挿入口787から抜き出す。
【0068】
次に、図19A及び19Bに示すように、基板受け783を上昇させ基板Wの外周裏面(上面)に基板吸着部795の先端を当接させて押し付け、基板吸着溝797から真空引きすることで、基板Wを基板吸着部795に吸着させて保持する。この際、真空力は、基板吸着部795の基板Wに接触する部分の内部の基板吸着溝797内に発生する。このときの基板受け783の位置を基板固定位置とする。これによって、基板Wの裏側の部分(被処理面と反対側の面)は、基板吸着部795によるシールによって被処理面側から遮断される。
【0069】
一般的に、真空にて基板Wを吸着する場合は、従来吸着パッドが使用されていた。しかしながら、基板Wのエッジぎりぎりで基板を吸着して保持し、しかも処理液の侵入を防止するためには、吸着パッドのようにパッドの内側全体が真空状態になる吸着手段では中心から外周部にかけて基板Wが大きく撓み、均一なめっき処理ができない等の悪影響ばかりか、基板Wの破損の事態も招きかねない。
【0070】
そこで、この例では、基板Wの外周をリング状の小さな幅(径方向)の基板吸着部795によるシールにて吸着することにより、吸着幅を極力小さく抑えることで、基板Wへの影響(撓み等)をなくすこととした。また基板W裏面の外周部のみが基板吸着部795と接触するので、基板処理時に薬液の温度が不必要に基板吸着部795との接触面を伝達して逃げる恐れがない。
【0071】
吸着ヘッド789の基板吸着部795による基板Wの吸着位置は、基板Wの外周近傍の、その表面(下面)にデバイスを形成していない部分の裏面としている。具体的には、基板Wの裏面(上面)の外周幅5mm以内の領域である。このように構成すれば、基板Wに接触する部分が基板Wのデバイス範囲外の裏面となり、加熱して行う基板Wのめっき処理の際の吸着による影響を最小限に抑えることができる。
【0072】
次に、図20A及び20Bに示すように、基板受け783を少し(例えば数mm)下降させて基板Wを仮置き部785から引き離す。このときの基板受け783の位置を基板処理位置とする。この状態で基板保持装置780全体を下降させて図15A及び15Bに示す処理槽710のめっき液Q中に浸漬させると、基板Wは、その裏面が吸着された保持されているだけなので、基板Wの被処理面全域及びエッジ部分についても、全てめっき液にディップできその処理を行うことが可能となる。
【0073】
さらに基板受け783が下降して基板Wから離れ、基板Wは、その裏面のみが吸着された保持されているだけなので、めっき液Qに浸漬しても、基板Wに対するめっき液Qの流れL(図20B参照)が阻害されることがなく、基板Wの被処理面全域において均一なめっき液Qの流れが形成される。またこのめっき液Qの流れと共に、基板Wの被処理面上に巻き込まれた気泡や、めっきによって発生した気泡を基板Wの被処理面上から処理槽710内の他の部分へ排出することができる。
【0074】
これによって、めっきに悪影響を及ぼす不均一な流れ或いは気泡の影響を解決し、基板Wのエッジを含んだ被処理面全域に均一なめっきを行うことが可能となる。また基板Wの裏面のリング状に真空吸着した部分の内側は基板吸着部795によるシールによって被処理面側から遮断されるので、処理液が基板Wの裏面の基板吸着部795の内側へ侵入することを防ぐことができる。
【0075】
この例においては、吸着ヘッド789の基部791に開口部790を設けているので、基部791と基板吸着部795と基板Wとで形成される空間が密閉状態とはならず、この空間内での熱による空気膨張を防止することで、基板Wへの悪影響(撓み等)を回避することが可能で、均一なめっきを実現できる。更に、開口部790があるため、吸着ヘッド789の軽量化にもつながり、基板吸着部795による吸着のみにて、基板回転モータ(駆動部)801による基板Wの高速回転(例えば1000rpm)も可能となる。基板Wを高速回転させることで、めっき処理後の基板Wの表面に残留している処理液及び洗浄液を極力飛散させることができる。これによって、使用する処理液、洗浄液等の無駄な排出がなくなる。
【0076】
次に、基板Wの処理が終了した後、基板受け783を、図19A及び19Bに示す基板固定位置まで上昇させ、基板Wを仮置き部785の上に載置し、基板吸着溝797から気体(不活性ガス、例えば窒素ガス)を噴出させて基板Wを基板吸着部795から引き離す。同時に、基板受け783を、図18A及び18Bに示す基板受渡し位置まで下降させ、基板挿入口787から第3基板搬送ロボット310の真空ハンド337または339(図5A乃至5C参照)を挿入して基板Wを外部に引き出す。
【0077】
この例では、前述のように、真空供給ライン793に真空の他に不活性ガスまたは洗浄液を供給するように構成しているが、さらに基板吸着部795の外側近傍(吸着ヘッド789の外周近傍)に洗浄用噴霧ノズル805を設置している。そして必要に応じて、洗浄用噴霧ノズル805によって基板吸着部795先端の外側と吸着ヘッド789の外周側面とを洗浄するとともに、真空供給ライン793から基板吸着溝797に不活性ガスまたは洗浄液を供給することで真空供給ライン793及び基板吸着溝797の内部を洗浄するようにしている。
【0078】
これは以下の理由による。即ち、通常めっき液に接液している箇所は、時間の経過と共にめっき液成分が結晶化し析出してしまう。基板吸着部795の特に基板Wとの接触部において、めっき液成分の析出が起こると、適切な基板Wの吸着ができなくなる他、析出物が基板Wへ付着する等、基板処理に悪影響を与えてしまう。
【0079】
そこで、処理槽710の開口部711を塞ぐ蓋部材740の上部に取り付けた噴霧ノズル760によって、基板吸着部795の下面を洗浄する他に、前記洗浄用噴霧ノズル805により基板吸着部795の外周側面を洗浄することができるように構成し、更に基板Wを吸着する真空供給ライン793及び基板吸着溝797には、吸着用の真空以外に、不活性ガスや洗浄液(例えば純水)等も注入できるように構成して、真空供給ライン793及び基板吸着溝797内部を全て洗浄できるように構成している。
【0080】
図21は、基板保持装置駆動機構810の内部構造の概略側面図である。図21に示すように、基板保持装置駆動機構810は、基板保持装置780全体を揺動して傾斜させる傾斜機構811と、基板保持装置780及び傾斜機構811全体を旋回させる旋回機構821と、基板保持装置780及び傾斜機構811及び旋回機構821全体を昇降させる昇降機構831とを具備して構成されている。図22Aは、傾斜機構811を示す概略側面図(但し基板保持装置780も記載されている)で、図22Bは、図22Aの右側面図(但し基板保持装置780は省略されている)である。
【0081】
図22A及び22Bに示すように、傾斜機構811は、基板保持装置780に固定されたブラケット813と、ブラケット813に固定されるとともに固定側の傾斜軸用軸受814に回動自在に軸支される傾斜軸815と、ヘッド傾斜用シリンダ817と、一端をヘッド傾斜用シリンダ817の駆動軸818の側部に回動自在に取り付け、他端を傾斜軸815に固定されるリンクプレート819とを具備して構成されている。そしてヘッド傾斜用シリンダ817を駆動して、その駆動軸818を図22Bに示す矢印H方向に移動すれば、リンクプレート819によって傾斜軸815が所定角度回動し、これによって、基板保持装置780が揺動し、基板保持装置780に保持した基板Wを水平位置と水平位置から所定角度傾斜させた傾斜位置とに変更できるようにしている。
【0082】
基板保持装置780の傾斜角度は、メカストッパーを用いて任意の角度に調整が可能である。一方、旋回機構821は、図21に示すように、ヘッド旋回用サーボモータ823とこのヘッド旋回用サーボモータ823によって回動される旋回軸825とを具備して構成されており、旋回軸825の上端に前記傾斜機構811が固定されている。昇降機構831は、ヘッド昇降用シリンダ833とヘッド昇降用シリンダ833によって昇降されるロッド835とを具備して構成され、ロッド835の先端に取り付けたステー837に前記旋回機構821が固定されている。
【0083】
次に、このめっき処理ユニット360全体の動作を説明する。図15A及び15Bは、蓋部材740を旋回させて処理槽710の開口部711を開き、且つ基板保持装置780を上昇させた状態を示している。即ち、蓋部材740は、処理槽710の側部に位置する待避位置に移動している。このとき、めっき液供給ユニット390は駆動されており、めっき液Qは、処理槽710とめっき液供給用タンク(めっき液循環槽)391間を所定温度に維持されながら循環している。
【0084】
この状態において、まず未処理の基板Wを、前記図18A乃至図20Bに示す方法で吸着ヘッド789に吸着し保持する。次に、傾斜機構811によって、基板保持装置780全体を揺動させて基板Wを水平位置から所定角度傾斜させ、その状態のまま、昇降機構831(図21参照)を駆動して基板保持装置780を図23A及び23Bに示す位置まで下降させてめっき液Qにディップさせる。基板Wをディップさせた後、傾斜機構811によって、基板保持装置780全体を元の位置に揺動させて基板Wを水平位置にし、この状態で無電解めっき処理を行う。このとき図20に示す基板回転モータ801を駆動することで、基板Wを回転させておく。
【0085】
このめっき処理ユニット360においては、基板Wを水平位置から所定角度傾斜させた状態でめっき液Q中にディップさせるので、基板Wの被処理面上に空気等の気体が混入することを防止できる。即ち、基板Wを水平な状態にてめっき液Qに浸すと、空気等の気体が基板Wとめっき液Qの間に滞在し、均一なめっきが達成されない。そこでこのめっき処理ユニット360においては、基板Wをめっき液Qに浸す際、基板Wを傾斜させることで空気等の気体の進入を防止して均一なめっきを達成するようにしている。
【0086】
以上のようにして、基板Wの被処理面(下面)の無電解めっきを所定時間行った後、昇降機構831(図21参照)を駆動して基板保持装置780を、図15A及び15Bに示す位置まで上昇させる。基板Wを上昇させている途中、処理槽710に設けたリンス用ノズル723から上昇中の基板Wの被処理面に向けて洗浄液(純水)をワンショットで噴射し冷却することで、無電解めっきの進行を止める。次に、駆動機構770を駆動することで、蓋部材740を旋回させ、図24示すように、処理槽710の開口部711を蓋部材740で塞ぐ。
【0087】
次に、蓋部材740上の噴霧ノズル760の各ノズル763から真上に向けて洗浄液(純水)を噴霧し基板Wの被処理面に接液させて洗浄する。このとき処理槽710の開口部711は、蓋部材740によって覆われているので、洗浄液が処理槽710内に入り込むことはなく、処理槽710内部のめっき液Qが希釈されることはなく、めっき液Qの循環使用が可能になる。基板Wを洗浄した後の洗浄液は、図示しない排水口から排水される。洗浄が終了した基板Wは、前述のように、基板保持装置780から第3基板搬送ロボット310の真空ハンド337または339(図5A乃至5C参照)によって外部に取り出され、次の未処理の基板Wが基板保持装置780に装着され、再び前記めっき及び洗浄工程が行われていく。
【0088】
上記めっき処理ユニット360では、処理槽710内にめっき液Qを溜めて無電解めっき処理を行ったが、処理槽710内にアノードを設置し、また基板Wにカソード電極を接続するように構成することで、基板Wの被処理面を電解めっきすることもできる。
【0089】
〔洗浄ユニット〕
図25は、後洗浄ユニット260を示す外観図である。後洗浄ユニット260は、第1洗浄部270と第2洗浄乾燥部290とを併設した一つのユニットとして構成されている。第1洗浄部270及び第2洗浄乾燥部290には、それぞれ基板挿入窓271,291が設けられ、これら基板挿入窓271,291は、シャッター273,293によって開閉されるように構成されている。
【0090】
第1洗浄部270は、ロールブラシユニットによる洗浄装置である。図26は、ロールブラシによる洗浄装置の基本構成を示す概略図である。即ち、第1洗浄部270は、複数のローラ279によって基板Wの外周部を把持し、ローラ279を回転駆動することで基板Wを回転する。一方、基板Wの表裏面には、それぞれロール状ブラシ(例えばロールスポンジ)275,277が設置され、図示しない駆動機構によって、両ロール状ブラシ275,277を上下方向に離れる方向と近づく方向に移動させるようにしている。そしてローラ279によって把持した基板Wを回転させながら、基板Wの表裏面に設置した薬液用ノズル281,283や純水用ノズル285,287から、必要に応じてそれぞれ処理液を供給し、処理液供給中に前記駆動機構によって両ロール状ブラシ275,277を接近させて基板Wを挟持し、基板Wを適度な圧力にて挟み込みながら洗浄する。このとき両ロール状ブラシ275,277を独立に回転させることで、洗浄効果はより増大する。
【0091】
図27は、第2洗浄乾燥部290の側断面図である。図27に示すように、第2洗浄乾燥部290は、スピンドライユニットによる洗浄装置であり、基板Wの外周部を把持するクランプ機構291と、クランプ機構291に固定されるスピンドル292と、スピンドル292を回転駆動するスピンドル駆動用モータ293と、クランプ機構291の外周に設置されて処理液が飛び散るのを防止する洗浄カップ294と、洗浄カップ294をクランプ機構291の周囲の位置とそれよりも下方の位置とに移動する洗浄カップ昇降用シリンダ295と、基板Wの上部に設置されるペンシル洗浄ユニット296とを具備して構成されている。ペンシル洗浄ユニット296は、アーム297の先端から下方に向けて洗浄スポンジ(洗浄ポイント)298を突出して構成されており、洗浄スポンジ298は回転駆動され、またアーム297及び洗浄スポンジ298は、昇降動作と基板W面に水平な面内での揺動動作ができるように構成されている。
【0092】
そして、クランプ機構291に保持された基板Wは、スピンドル駆動用モータ293により回転され、基板Wの表裏面から薬液や純水を供給しながら、基板W上に回転する洗浄スポンジ298を当接させて洗浄を行う。薬液による化学洗浄及び純水による純水洗浄完了後、クランプ機構291を高速回転することで基板Wの完全乾燥を行う。なおこの第2洗浄乾燥部290には、超音波発振器により特殊ノズルを通過する純水に超音波が伝達されて洗浄効果を高めるメガジェットノズル299がアーム297の先端近傍に搭載されている。このメガジェットノズル299から噴射された純水は、洗浄スポンジ298に供給される。またこの第2洗浄乾燥部290には、キャビテーションを利用したキャビジェット機能を搭載することもできる。
【0093】
〔めっき液供給ユニット〕
図28は、めっき液供給ユニット(めっき液供給装置)390のシステム構成図である。図28に示すように、めっき液供給ユニット390は、めっき液Qを蓄えて各めっき処理ユニット360の処理槽710にめっき液Qを供給し循環させるめっき液供給用タンク(めっき液循環槽)391と、加熱部393と、各処理槽710にめっき液Qを供給し循環させるめっき液供給用ポンプPと、めっき液供給用タンク391内のめっき液Qの濃度を適正な濃度にするめっき液濃度希釈化装置403と、めっき液攪拌装置410とを具備して構成されている。
【0094】
加熱部393は、熱媒体に水を使用し、別置きのヒータ395によって加熱し昇温させた水を、複数のチューブを束にしてめっき液供給用タンク391に挿入した熱交換器397に通して循環させ、この熱交換器397によって加熱した水の熱をめっき液Qに熱交換させ、めっき液Qを間接的に加熱してめっき液Qの温度を管理するように構成されている。つまりこの加熱部393は、熱交換器397をめっき液Q中に設置する間接ヒーティング方法を用いた間接加熱部である。
【0095】
非常に繊細な性質のめっき液Qに対応するために、可能な限り熱交換器397の伝熱面積を大きくし、めっき液Qと熱交換器397との温度差を小さくすることで、めっき液Qの寿命に悪影響を与えることのないようにしている。また沸点以下の熱源によってめっき液Qの温度管理を行うことで、めっき液Qの成分に悪影響を及ぼすことを回避することができる。更に、めっき液Qの寿命低下を防止するために、熱交換器397の複数のチューブ間のクリアランスを適正に取っている。もし各チューブが接触していたら、接触している部分にヒートスポットが生じて他の部分よりもめっき液Qがより加熱され、めっき液Qの寿命低下を招く。また、上記間接ヒーティング方法では、インラインヒーティング方式に比べ、非常にデリケートなめっき液Qに不要物等が混入するのを防止することができる。
【0096】
本実施の形態にかかる基板処理装置1では、図2に示すように、基板処理の合理化、量産化のためにめっき処理ユニット360を複数搭載することで、スループットの向上を図っている。一方、めっき液供給用タンク391は1つで、ここから複数のめっき処理ユニット360の処理槽710にそれぞれ別々のめっき液供給用ポンプPを使用してめっき液Qが供給し循環させるように構成している。従って、万が一めっき液供給用ポンプPの一つが故障停止した場合においても、稼動可能な別のめっき液供給用ポンプPに繋がっているめっき処理ユニット360においては、めっき処理が可能となる。あるいはめっき処理ユニット360の一つが故障して停止した場合においても、稼動可能なめっき処理ユニット360へのめっき液の供給が可能となり、めっき処理自体が停止することを回避できる。
【0097】
めっき液供給用ポンプPは、例えば縦型遠心ポンプによって構成されている。縦型遠心ポンプを使用することにより、マグネットポンプやベローズポンプを使用した場合に比べて、キャビテーションを最小限に抑えることができ、またこれらポンプに比べて空気と液体との攪拌作用が小さいので、めっき液への過剰空気の溶け込みを制限でき、溶存酸素量を適切な範囲にすることができる。
【0098】
めっき液Qの温度管理も、めっきプロセスにおいては重要なファクターである。そこで、このめっき液供給ユニット390では、めっき液供給用タンク(めっき液循環槽)391と処理槽710にそれぞれに溜まっているめっき液Qの温度を測定する温度計406,407を設置すると共に、それらの出力を温度調節器399,401に入力し、温度調節器399,401の出力を加熱部393に入力し該加熱部393を制御することで、めっき液供給用タンク391内のめっき液Qの温度と処理槽710内のめっき液Qの温度とが所定の温度となるように管理している。更に、温度調節器399,401によって、めっき液供給用ポンプPのインバータINを制御して各処理槽710に流入するめっき液Qの量を調節することで、処理槽710内のめっき液Qの温度が所定の温度となるように管理している。
【0099】
即ち、めっき液供給用ポンプPは、インバータIN等にてめっき液Qの循環量を制御できる。めっき処理ユニット360でめっき処理を行う場合には、例えば2l/min未満の低流量でめっき液Qを循環させる。めっき処理後の洗浄を行う際には、処理槽710の開口部711を蓋部材740にて塞いだ状態で純水等の噴霧を行うので処理槽710内のめっき液Qは温度降下してしまう。洗浄後に次の基板Wをめっき処理する際にも同一の温度を維持してめっき処理するために、洗浄処理時にはめっき液Qの循環量を、例えば2〜30l/minの範囲にてコントロールして処理槽710内のめっき液Qの温度管理を行う。状況に適しためっき液Qの流量をコントロールすることで、めっき液の温度変化が少なくなり、加熱部393とめっき液Qの温度コントロールのレスポンスが向上し、結果としてめっき液Qの循環回路内全域での温度均一性も向上する。
【0100】
温度計407は、図15Bに示すように、処理槽本体713のめっき液供給口721の部分に設置されている。処理槽710に処理槽710内のめっき液Qの温度を測定する温度計407を搭載したので、処理槽710内のめっき液Qの温度が所定の温度になるように、めっき液供給用タンク391内のめっき液Qの温度やめっき液供給用ポンプPによるめっき液Qの循環量を制御することで、ユースポイントでのめっき液Qの温度を安定に維持できる。
【0101】
めっき液供給用タンク391は、図28に示すように、外槽408と内槽409の二重槽構造としている。外槽408は、断熱材、好ましくは高強度で断熱性に優れた断熱材、例えば耐熱性に優れたガラスクロスと特殊樹脂との積層板で構成されている。内槽409は、めっき液Qを安定に保持する材質、例えばフッ素樹脂で構成されている。即ち、できるだけめっき液Qの温度を一定に保持するために、めっき液供給用タンク391は二重以上の構造をとり、外気との隔離を図るようにした。二重以上の構造であるため、めっき液供給用タンク391の破損等に対する安全性も増大する。
【0102】
めっき液濃度希釈化装置403は、液面センサ411によってめっき液供給用タンク391内のめっき液Qの容量を測定することで希釈に必要な希釈液(純水)の量を求め、希釈液供給ライン405からめっき液供給用タンク391内に希釈液を供給することでめっき液Qの濃度を適性濃度にする。めっき処理におけるめっき液の使用温度(例えば無電解めっき)は、例えば70℃〜80℃と高温となるが、高温での使用によりめっき液中の水分が常時蒸発してしまい、基板Wの処理毎にその濃度が変化してしまうと、基板W毎に処理のばらつきを生じてしまう恐れがある。そこで水分の蒸発量からめっき処理後に基板の被処理面に前記噴霧ノズル723によって噴霧する純水の量を差し引き、その結果、蒸発量に対して更に不足している分の水分をめっき液濃度希釈化装置403によってめっき液供給用タンク391に補充させることが必要となる。なお、めっき液攪拌装置410は、インバータINoによって回転駆動されるポンプPoによってめっき液供給用タンク391内のめっき液Qを攪拌し、めっき液Qの温度や濃度を均一化する。
【0103】
めっき処理において、基板処理時の基板表面の気泡を除去することは、安定しためっき膜を得るために必要不可欠であるが、一方でめっき液中に存在する溶存酸素を適切な範囲にてコントロールすることも、めっき処理においては重要な課題である。そこで、めっき液供給用タンク391から処理槽710、処理槽710からめっき液供給用タンク391の循環経路に、めっき液供給用タンク391内のめっき液への気泡溶け込み防止部を設けている。即ち、例えば処理槽710の外周溝715にオーバーフローしためっき液をめっき液供給用タンク391へ導く配管413のめっき液供給用タンク391側の端部を、図29Cに示すように緩やかな傾斜を持たせ、更に管路内の流速を0.3m/sec以内とすることで、めっき液がめっき液供給用タンク391内のめっき液Qに流入する際の衝撃による気泡の溶け込みを防止するようにしている。
【0104】
図29Bに示すように、配管413の所定の位置に気泡抜き用の開口部415を設けることで、配管413内をめっき液と共に流れてくる気泡をこの開口部415から抜いたり、図29Aに示すように、配管413の先端を縦方向に割るように複数本の気泡抜き用のスリット417を設けることで、配管413内をめっき液と共に流れてくる気泡をこのスリット417で抜いたりするようにしてもよい。
【0105】
図30Aは、前洗浄ユニット240、第1前処理ユニット320、第2前処理ユニット340またはめっき処理ユニット360の少なくとも1つのユニットにおいて供給使用される液体の供給ライン421に設置されるサンプルポート420を示す正面図で、図30Bは、サンプルポート420の斜視図である。図30A及び30Bに示すように、サンプルポート420は、液体の供給ライン(具体的に言えば、前洗浄ユニット240の洗浄液の供給ライン、第1前処理ユニット320の洗浄液の供給ライン、第2前処理340の処理液の供給ライン、またはめっき処理ユニット360のめっき液の供給ラインの少なくとも一つの供給ライン)421にバルブ423を取り付け、バルブ423を操作することで、供給ライン421を流れる液体の一定量を採取用ボトル425に取り出し、液体の成分分析などを行う。このとき採取したサンプリング量を演算して(例えば:各ユニット240,320,340,360内の液体の量−採取量=補充量)、採取した液体に相当する量の液体を、各ユニット240,320,340,360に別途設置した液体補充手段によって補充する。
【0106】
図31Aは、前洗浄ユニット240、第1前処理ユニット320、第2前処理ユニット340またはめっき処理ユニット360の少なくとも一つのユニットにおいて供給使用される液体の供給ライン421に設置されるフィルタ430−1,430−2を示す斜視図で、図31Bは配管図である。図31A及び31Bに示すように、2個のフィルタ430−1,430−2は、各ユニット240,320,340,360の外部に並列に設置されている。液体の供給ライン(具体的に言えば、前洗浄ユニット240の洗浄液の供給ライン,第1前処理ユニット320の洗浄液の供給ライン,第2前処理ユニット340の処理液の供給ライン,またはめっき処理ユニット360のめっき液の供給ラインの少なくとも一つの供給ライン)421に、直列に2台のフィルタ430−1,430−2とバルブ431とが接続され、また2台のフィルタ430−1,430−2に並列に不活性ガス供給ライン440、純水供給ライン445及び廃液排出ライン450が接続されている。
【0107】
各ライン440,445,450には、それぞれバルブ441,442,446,447,448,451,452が取り付けられている。複数台のフィルタ430−1,430−2を供給ライン421に直列に接続することで、液体の確実なフィルタリングが行える。フィルタ430−1,430−2の配列にあっては、例えば無電解めっき装置においては、配線間のショートを防止するためにも液体の確実なフィルタリングが重要で、ユースポイントに近いフィルタ(図31の場合は、フィルタ430−1の方)ほど濾過精度を高くすることが好ましいが、最低限同じ濾過精度のフィルタ430−1,430−2を配置する。またフィルタ430−1,430−2は、純水供給ライン445と廃液排出ライン450を用いることでフラッシングが行えるとともに、不活性ガス供給ライン440を用いることで不活性ガスパージができる回路となっており、メンテナンス時のフィルタ430−1,430−2からの薬液の流出を防止してその作業の安全性を図っている。なおフィルタは、3個以上であればさらに良いことは言うまでもない。
【0108】
図9に示す前処理ユニット500においては、噴霧ノズル520を設置した容器510の上部に基板固定ヘッド560を設置し、ノズル523から処理液(第1処理液)を噴霧することで基板固定ヘッド560に保持した基板Wの下面の処理を行ったが、前処理の内容によっては、この噴霧ノズル520を設置した容器510の代わりに、図15に示す、内部に処理液を溜める処理槽710を設置しても良い。特に触媒を付着させる第1前処理ユニット320には、均一で且つ確実な触媒を付着させるために、基板Wを処理液に浸漬させることができる処理槽710を用いることが好ましい。
【0109】
この工程において安定した処理を行うためには、めっき処理の場合と同様に、処理中の基板Wの被処理面に生じる気泡を排除することが不可欠である。そこで処理槽710と同一構造の処理槽を用いた前処理ユニットの場合、めっき処理ユニット360と同様に、基板固定ヘッド560に傾斜機構を設置し、図32に示すように、傾斜した状態にて基板Wの約60%を処理液に浸漬させて基板Wを回転させ(矢印D)、浸漬していない領域から気泡群が外部へ排出されるようにするのが好ましい。
【0110】
またアスピレータ(空気吸引機)等によって、浸漬されていない領域から強制的に空気を排除する方法も考えられる。更に、処理槽710内の所望の位置に複数の図示しない循環ノズルを設置することで、図32に示す、矢印Cで示す一方向(傾斜した基板Wの被処理面を深い方から浅い方に向かう方向、即ち気泡排出方向)の処理液の流れを作り、被処理面上に滞留しようとする気泡群を排除するように構成しても良い。このとき処理液の液面は、点線で示すように盛り上がり、効果的に気泡群を排除できる。また気泡群がスムーズに外部へ排除されるように、基板固定ヘッド560の外周下面に径方向に切り欠かれた気泡の逃げ溝562を設けても良い。
【0111】
次に、図2に示す基板処理装置1全体の動作を説明する。先ず、ロードポート110に装着された基板カセットから第1基板搬送ロボット130によって基板Wを取り出す。取り出された基板Wは、第1反転機150に渡されて反転されてその被処理面が下側にされた後、第1基板搬送ロボット130によって基板仮置台210の下段仮置台219(図8A及び8C参照)に載置される。
【0112】
次に、この基板Wは、第2基板搬送ロボット230によって前洗浄ユニット240に搬送され、前洗浄ユニット240において前洗浄される(前洗浄処理プロセス)。前洗浄が完了した基板Wは、第3基板搬送ロボット310によって第1前処理ユニット320に移送される。ここで前洗浄ユニット240は、洗浄エリア200とめっき処理エリア300とにそれぞれ配置した基板搬送ロボット230,310のハンドがその左右からアクセスして基板Wの受け渡しができる位置に配置されている。そして第1前処理ユニット320に移送された基板Wは、第1前処理ユニット320において第1前処理が行われる(第1前処理プロセス)。
【0113】
第1前処理が完了した基板Wは、第3基板搬送ロボット310によって第2前処理ユニット340に移送され、第2前処理ユニット340において、第2前処理が行われる(第2前処理プロセス)。第2前処理が完了した基板Wは、第3基板搬送ロボット310によってめっき処理ユニット360に移送され、めっき処理される。
【0114】
めっき処理が完了した基板Wは、第3基板搬送ロボット310によって第2反転機250に移送されて反転された後、第2基板搬送ロボット230によって後洗浄ユニット260の第1洗浄部270に移送され、洗浄された後、第2基板搬送ロボット230によって第2洗浄乾燥部290に移送されて洗浄・乾燥される。そしてこの洗浄・乾燥が完了した基板Wは、第2基板搬送ロボット230によって基板仮置台210の上段仮置台217に仮置きされた後、第1基板搬送ロボット130によってロードポート110に装着された基板カセットに収納される。
【0115】
図33は、本発明の他の実施の形態にかかる基板処理装置1−2を示す全体概略平面図である。図33に示す基板処理装置1−2において、前記図2に示す基板処理装置1と同一または相当部分には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。図33に示す基板処理装置1−2において、図2に示す基板処理装置1と相違する点は、洗浄エリア200内に設置する後洗浄ユニット260を一組のみとし、その代わりに薬液供給ユニット900を設置した点と、めっき処理エリア300内に設置する第1処理ユニット320,第2前処理ユニット340及びめっき処理ユニット360の台数をそれぞれ減少し、その代わりに薬液供給ユニット902を設置した点である。
【0116】
これら薬液供給ユニット900,902は、薬液(原液)を使用する濃度に希釈して各装置に供給するユニットであり、薬液供給ユニット900は、洗浄エリア200内の前洗浄ユニット240、第1洗浄部270及び第2洗浄部290においてそれぞれ使用する薬液を供給し、薬液供給ユニット902は、めっき処理エリア300内の第1前処理ユニット320、第2前処理ユニット340及びめっき処理ユニット360においてそれぞれ使用する薬液を供給する。
【0117】
このように、薬液供給ユニット900,902を基板処理装置1−2内にユニットとして配置することで、別置きの薬液供給装置が必要なくなり、全システムのコンパクト化が実現できる。また工場のハウスライン等から直接この基板処理装置1−2に薬液(原液)を供給することが可能となる。
【0118】
以上詳細に説明したように本発明によれば、基板の各種処理が品質良く確実に行えるばかりか、装置全体のコンパクト化や、装置コストの低廉化が図れる。
【0119】
図34Aは、めっき処理ユニットに適用した他の基板処理装置を示す側面図で、図34Bは、図34Aの概略側断面図である。図34A及び34Bに示すように、めっき処理ユニット(基板処理装置)は、内部にめっき液(処理液)Qを溜めて基板Wのディップ処理を行う処理槽910と、処理槽910の開口部911を塞ぐ蓋部材940と、蓋部材940の上面に取り付けられる噴霧ノズル(処理液噴射部)960と、蓋部材940を駆動(旋回)する駆動機構970と、基板Wを保持する基板保持装置980と、基板保持装置980全体を昇降する、前記図12A及び12Bに示すものと同様な構成の基板保持装置昇降機構600と、処理槽910内のめっき液Qを循環する処理液循環装置390とを具備して構成されている。以下各構成部分について説明する。なお、基板保持装置昇降機構600は、前述の図12A及び図12Bに示すものと同様な構成であるので、ここではその説明を省略する。
【0120】
図35は、処理槽910の拡大断面図である。図35及び図34Bに示すように、処理槽910は、めっき液Qを溜める容器形状の処理槽本体913と、処理槽本体913の外周を構成する第1槽930の更に外周に設けられ、第1槽930の外周縁上端辺の縁部931上をオーバーフローしためっき液Qを回収する回収溝(オーバーフロー溝)915と、回収溝915の外周を囲んで筒状に上方に突出する覆い部917と、処理槽本体913内部の上部及び下部に設置され、処理槽本体913の内部でのめっき液Qの均一な流れを形成するための整流板937,939と、第1槽930の内径より小さな外径を有し、第1槽930の内側に該第1槽930と二重になるように設置されるリング状の第2槽941とを具備して構成されている。処理槽本体913の底面中央にはめっき液供給口921が設けられている。
【0121】
整流板937,939は、円形の平板に多数の小さな貫通孔937a,939aを設けることで、めっき液供給口921から供給されためっき液Qが上方に向かってどの部分でも均一な流速となるようにしている。第2槽941は、整流板937に上方に突出して固定され、その上端辺の縁部943の高さが第1槽930の縁部931の高さよりも少し低くなり、且つ縁部943の径が基板Wの外径よりも少し小さい寸法となるように構成されている。また整流板937の第2槽941よりも外側部分には、貫通孔937aを設けず、めっき液Qの全てが、第2槽941の内側を通過するようにしている。
【0122】
図34Aに戻って、処理液循環装置390は、処理槽910の回収溝915にオーバーフローしためっき液Qを配管によって供給タンク391に戻し、供給タンク391内に溜まっためっき液QをポンプPによって処理槽本体913のめっき液供給口921に供給することでめっき液Qを循環させる。供給タンク391には、処理槽910内に供給するめっき液Qの温度を所定温度に保つためのヒータ393が設置されている。
【0123】
蓋部材940は、処理槽910の開口部911を塞ぐ大きさの板材によって構成されており、その両側面には、板状のアーム部945が取り付けられており、その先端近傍部分が処理槽910の両側部分に設置した軸支部947に回動自在に支持されている。アーム部945の先端は、駆動機構970の連結アーム975の先端に固定されている。
【0124】
噴霧ノズル960は、蓋部材940上面に複数個のノズル963を上向きに取り付けて構成されている。ノズル963からは、この実施の形態においては、洗浄液(純水)が真上方向に向けて噴霧される。
駆動機構970は、蓋部材旋回用シリンダ971と、蓋部材旋回用シリンダ971のピストンに連結されるロッド973と、ロッド973の先端に回動自在に連結される連結アーム975とを具備して構成されている。蓋部材旋回用シリンダ971の下端部は、固定側部材に回動自在に支承されている。
【0125】
図36Aは、基板保持装置980及びその回転用モータ580の部分を示す概略側断面図で、図36Bは、図36AのA部分の拡大図である。図36Aに示すように、基板保持装置980は、下方に開口するとともに側壁に開口981を有するハウジング983の内部に押圧部材985を配置して構成されている。ハウジング983は、回転用モータ580の中空の出力軸987に連結されている。押圧部材985は、その中央において、軸989の下端に連結され、この軸989は、出力軸987内部の中空部分を通して上方に突出し、この突出部は、軸受部991に回転自在に支承されている。出力軸987の中空部分と軸989との間は、スプライン嵌合によって同時に回転するが出力軸987に対して軸989が独立して上下動できるように構成されている。
【0126】
ハウジング983の下端には、内方に突出するリング状の基板保持部993が設けられ、基板保持部993の内周側上部には、基板Wを載置してシールするリング状のシール部材995が取り付けられている。基板保持部993の下面には、図37に示すように、その中心から放射線状方向(法線方向)に向かって複数本の逃げ溝994が設けられている。ハウジング983の外径は、図35に示す縁部931の内径よりも小さく、処理槽本体913の開口をほぼ塞ぐ寸法形状に構成されている。一方、押圧部材985は、円板状のホルダ997の下面外周に基板固定リング999を取り付けて構成されている。基板固定リング999の下面外周には、下方向に突出する押圧部999aが設けられている。
【0127】
軸支部991は、この軸支手段991を上下動させるシリンダ機構577のロッド578(図12A及び図12B参照)に固定されており、またシリンダ機構577自体は、前記回転用モータ580等を載置する取付台579(図12A及び図12B参照)に固定されている。
【0128】
次に、このめっき処理ユニット(基板処理装置)の動作を説明する。まず図34A及び34Bに示すように、基板保持装置980が処理槽910の上方に上昇し、図36Bに点線で示すように、基板保持装置980の内部で押圧部材985が上昇した状態にセットする。そして、第3基板搬送ロボット310の真空ハンド337または339(図5A乃至5C参照)によってフェースダウン状態で保持した基板Wをハウジング983側壁の開口981から挿入して、その真空吸着を解除し、これによって、基板Wを基板Wの外径よりも数mm小さい径を有するリング状のシール部材995の上に載せる。次にシリンダ機構577を駆動することで押圧部材985を下降すれば、図36Bに実線で示すように、押圧部材985の基板固定リング999の押圧部999aが基板Wの上面外周を押圧し、基板Wの下面(即ち被処理面)の外周をシール部材995に押し付け、基板Wが固定される。同時に、シール部材995は、めっき液が基板Wの裏面(上面)に回り込むことを防止するシールとして機能する。
【0129】
処理槽910においては、図34に示すポンプPを駆動することで、めっき液供給口921からめっき液Qを供給して処理槽910内を循環させた後、第1槽930の外周上端辺の縁部931をオーバーフローさせ、回収溝915に回収して再び供給タンク391に戻す。そのときの処理槽910内におけるめっき液の流れの状態を図38A及び38Bに示す。なお、図38A及び38Bにおいては、基板保持装置980が下降してめっき液Qに浸漬される直前の状態を示している。図38A及び38Bに示すように、めっき液Qは、めっき液供給口921から真上に向けて供給され、整流板939,937を通ることでめっき液Qの各部の流れが均一化された後、第2槽941の縁部943の上部を通過して更に第1槽930の縁部931をオーバーフローして回収溝915に回収されるように流れる。
【0130】
次に昇降用モータ661(図12B参照)を駆動することで、図39A及び39Bに示すように、基板Wを水平にしたまま基板保持装置980を下降させて、その下面(被処理面)をめっき液Q中に浸漬させ、さらに基板保持装置980を下記する基板処理位置(図40A及び40Bに示す位置)よりも下降させて基板Wの被処理面を第2槽941の縁部943に接近させ、基板Wの被処理面の外周近傍と縁部943との間に狭い(クリアランス1mm程度の)円周状のスリットを形成する。これによって、整流板937を通過しためっき液Qは、このスリットを通過することとなり、このスリット部分でめっき液Qの流速が増加し速い流れが形成される。
【0131】
このとき基板保持装置980の底面の基板Wを保持した部分の外周にある基板保持部993の下面には、前述のように複数本の放射状の逃げ溝994が設けられているので、前記スリットを通過しためっき液Qは、この逃げ溝994を通してスムーズに基板保持装置980の底面から一気にその外周方向へと流出する。このため、矢印Bで示すように、基板Wの被処理面上には、被処理面の中央から外周方向に向けて被処理面に沿うように基板Wの外周方向へ向けて、めっき液Qの速い流れが形成され、基板W下面の被処理面にめっき液Qを接液する際に該被処理面表面に滞留する気泡を、この早い流れに乗せて排除できる。
【0132】
即ち、この例においては、めっき液Qに浸漬させた基板Wの被処理面の外周近傍に円周状のスリットが形成されるように、処理槽910に円周状の縁部943を設けることによって気泡除去部を構成し、このスリットに基板Wの被処理面の下方から被処理面に向かうめっき液Qを通過させることで、めっき液Qの被処理面上での流速を増加して被処理面上の気泡を除去するようにしている。
【0133】
気泡の排出が終了した後、昇降用モータ661(図12B参照)を駆動することで、基板保持装置980を図40A及び40Bに示す通常の基板処理位置まで上昇させて基板Wの被処理面と第2槽941の縁部943との間の隙間を広げ、めっき液Qを基板Wの被処理面に沿って流しながら、通常の無電解めっきを行う。この基板処理位置においては、基板Wと縁部943及び基板保持部993とのクリアランスを十分取ることで、めっき液Qの安定した流れを実現している。
【0134】
次に、昇降用モータ661(図12A参照)を駆動することで、基板保持装置980を、図34A及び34Bに示す位置まで上昇させ、処理槽910よりも上方に移動させることで前記無電解めっきを終了させる。次に、駆動機構970を駆動することで、蓋部材940を旋回させ、図41A及び41Bに示すように、処理槽910の開口部911を塞ぐ。次に、蓋部材940の上面に固定した噴霧ノズル960の各ノズル963から真上に向けて洗浄液(純水)を噴霧して基板Wの処理面(めっき面)を洗浄する。このとき処理槽910の開口部911は、蓋部材940によって覆われているので、洗浄液が処理槽910内に入り込むことはなく、処理槽910内部のめっき液Qが希釈されることはなく、めっき液Qの循環使用が可能になる。なお基板Wを洗浄した後の洗浄液は、図示しない排水口から排水される。
【0135】
以上のようにして基板Wの洗浄が終了すると、図36Bに点線で示すように、押圧部材985が上昇し、第3基板搬送ロボット310の真空ハンド337または339(図5A乃至5C参照)をハウジング983側壁の開口981からこの内部に挿入し基板Wの裏面中央を吸着して前記開口981から外部に取り出す。そして次の未処理の基板Wが基板保持装置980に装着され、再び前記めっき及び洗浄工程が行われていく。
【0136】
上記の例では、処理槽910にめっき液Qを溜めて無電解めっき処理を行ったが、処理槽910内にアノードを設置し、また基板Wにカソード電極を接続するように構成することで、基板Wの被処理面を電解めっきすることもできる。またこの基板処理装置をめっき処理ユニットとして利用するのではなく、他の薬液処理(例えばめっきの前処理や後処理)を行う基板処理ユニットとして利用することもできる。また噴霧ノズル960によって行う基板Wの処理も、洗浄液による洗浄処理工程に限定されず、その他の各種薬液処理であっても良い。
【0137】
図42Aは、基板処理装置(めっき処理ユニット)の処理槽910−2と基板保持装置980の、基板保持装置980が下降して基板Wがめっき液Qに浸漬される直前の状態を示す概略断面図で、図42Bは、図42Aにおける処理槽910−2の第1槽930の縁部931近傍部分を拡大して示す要部拡大概略断面図である。図42A及び42Bに示すように、この処理槽910−2においては、図38A及び38Bに示す第2槽941を省略し、第2槽941の作用を第1槽930に行わせている。このため、この処理槽910−2においては、第1槽930の縁部931の径を、基板Wの外径よりも少し小さくし、第1槽930の縁部931と基板Wの裏面の外周近傍部分との間でスリットを形成するようにしている。なお処理槽910−2以外の各部の構造は、図34A及び34Bに示す基板処理装置の各部の構造と同一である。
【0138】
この例の基板処理装置の動作を説明する。まず図42A及び42Bに示すように、処理槽910−2において、図34に示すポンプPを駆動することで、めっき液供給口921からめっき液Qを供給して処理槽910−2内を循環させた後、第1槽930の外周上端辺の縁部931をオーバーフローさせる。このとき図42Bに示すように、めっき液Qの表面は、表面張力により縁部931の上端よりも上方向に盛り上がる。次に、基板Wを保持した基板保持装置980を下降させて、基板Wを水平にしたまま、前記めっき液Q中に上方から押え込むようにして浸漬させて基板Wの被処理面(下面)を第1槽930の縁部931に接近させ、図43A及び43Bに示すように、基板Wの被処理面の外周近傍と縁部931との間に狭い(例えばクリアランス1mm程度の)円周状のスリットを形成する。これによって、整流板937を通過しためっき液Qは、このスリットを通過することとなり、このスリット部分でめっき液Qの流速が増加し速い流れが形成される。
【0139】
このとき、基板保持装置980の底面の基板Wを保持した部分の外周にある基板保持部993の下面には複数本の放射状の逃げ溝994が設けられているので、前記スリットを通過しためっき液Qは、この逃げ溝994を通してスムーズに基板保持装置980の底面から一気にその外周方向へと流出する。このため、矢印Cで示すように、基板Wの被処理面上には、被処理面の中央から外周方向に向けて被処理面に沿うように基板W外周方向へ向けてめっき液Qの速い流れが形成され、基板W下面の被処理面にめっき液Qを接液する際に該被処理面表面に滞留する気泡を、この早い流れに乗せて排除できる。
【0140】
この例においても、めっき液Qに浸漬した基板Wの被処理面の外周近傍に円周状のスリットが形成されるように、処理槽910−2に円周状の縁部931を設けることによって気泡除去部を構成し、このスリットに基板Wの被処理面の下方から被処理面に向かうめっき液Qを通過させることで、めっき液Qの被処理面上での流速を増加して被処理面上の気泡を除去することができる。
【0141】
気泡の排出が終了した後、図43A及び43Bに示す状態から、基板保持装置980を少し上昇させて基板Wの被処理面と縁部931との間の隙間を広げ、めっき液Qを基板Wの被処理面に流しながら通常の無電解めっきを行う。
次に、基板保持装置980を上昇させ(図34A及び34B参照)、処理槽910−2よりも上方に移動させることで前記無電解めっきを終了させる。以下の工程は前述と同一なので省略する。
【0142】
図44Aは、各種前処理ユニットに適用した更に他の基板処理装置を示す側面図で、図44Bは、図44Aの概略側断面図である。図44A及び図44Bに示すように、基板処理装置(前処理ユニット)は、内部に処理液(第1前処理液)Qを溜めて基板Wのディップ処理を行う処理槽1010と、処理槽1010の開口部1011を塞ぐ蓋部材1040と、蓋部材1040の上面に取り付けられる噴霧ノズル(処理液噴射部)1060と、蓋部材1040を駆動(旋回)する駆動機構1070と、基板Wを保持する基板保持装置1080と、基板保持装置1080全体を回転、揺動及び昇降させる基板保持装置駆動部1600と、処理槽1010内の処理液Qを循環させる処理液循環部1450とを具備して構成されている。以下各構成部分について説明する。
【0143】
図45は、処理槽1010の拡大断面図である。図45及び図44Bに示すように、処理槽1010は、処理液Qを溜める容器形状の処理槽本体1013と、処理槽本体1013の外周縁上端辺1031上をオーバーフローした処理液Qを回収する回収溝(オーバーフロー溝)1015と、回収溝1015の外周を囲んで筒状に上方に突出する覆い部1017と、処理槽本体1013の内部に設置され、処理槽本体1013の内部での処理液Qの均一な流れを形成する整流板1037とを具備して構成されている。処理槽本体1013の底面中央には、処理液供給口1021が設けられている。整流板1037は、円形の平板に多数の小さな貫通孔1037aを設けることで、処理液供給口1021から供給された処理液Qが上方に向かってどの部分でも均一な流速となるようにしている。また処理槽本体1013の上部内周側面には、処理槽本体1013内に溜めた処理液Qを処理槽本体1013の中央方向に向けて斜め上方に噴射する処理液供給ノズル(処理液供給部)1039を設けている。
【0144】
図44A及び44Bに戻って、処理液循環部1450は、処理槽1010の回収溝1015をオーバーフローした処理液Qを配管によって供給タンク1451に戻し、供給タンク1451内に溜まった処理液QをポンプPによって処理槽本体1013の処理液供給口1021に供給することで処理液Qを循環させる。即ち、この基板処理装置においては、常時処理液を処理槽1010の底部から供給して処理槽1010内を循環させた後に、処理槽1010の外周部に設けた回収溝1015によってオーバーフロー液を回収し、供給タンク1451へ回収するようにしている。
【0145】
蓋部材1040は、処理槽1010の開口部1011を塞ぐ大きさの板材によって構成されており、その両側面には、板状のアーム部1045が取り付けられており、その先端近傍部分が処理槽1010の両側部分に設置した軸支部1047に回動自在に支持されている。アーム部1045の先端は、駆動機構1070の連結アーム1075の先端に固定されている。
【0146】
噴霧ノズル1060は、蓋部材1040上面に複数個のノズル1063を上向きに取り付けて構成されている。ノズル1063からは、洗浄液(純水)が真上方向に向けて噴霧される。
駆動機構1070は、蓋部材旋回用シリンダ1071と、蓋部材旋回用シリンダ1071のピストンに連結されるロッド1073と、ロッド1073の先端に回動自在に連結される連結アーム1075とを具備して構成されている。蓋部材旋回用シリンダ1071の下端部は、固定側部材に回動自在に支承されている。
【0147】
基板保持装置駆動部1600は、基板保持装置1080を回転駆動する回転用モータ1400と、基板保持装置1080を揺動する、前述の図22A及び22Bに示すものと同様な構成の傾斜機構811と、基板保持装置1080を昇降する昇降機構1831とによって構成されている。
【0148】
図46Aは、基板保持装置1080及び回転用モータ1400の部分を示す概略側断面図で、図46Bは、図46AのA部分の拡大図である。図46Aに示すように、基板保持装置1080は、下方に開口するとともに側壁に開口1081を有するハウジング1083の内部に、押圧部材1085を配置して構成されている。ハウジング1083は、サーボモータで構成される回転用モータ(回転部)1400の中空の出力軸1087に連結されている。押圧部材1085は、その中央に軸1089の下端が取り付けられ、この軸1089は、出力軸1087の内部の中空部分を通して上方に突出し、その突出端は、軸受部1911で回動自在に支承されている。出力軸1087の中空部分と軸1089との間は、スプライン嵌合とベアリングの組み合わせによって同時に回転するが出力軸1087に対して軸1089が独立して上下動できるように構成されている。
【0149】
ハウジング1083の下端には、内方に突出するリング状の基板保持部1093が設けられ、基板保持部1093の内周側上部には、基板Wを載置してシールするリング状のシール部材1095が取り付けられている。基板保持部1093の下面には、図47に示すように、その中心から放射線状方向(法線方向)に向かって複数本の逃げ溝1094が設けられている。またハウジング1083の外径は、図45に示す処理槽本体1013の上部の内径よりも少し小さく、処理槽本体1013の開口をほぼ塞ぐ寸法形状に構成されている。
【0150】
一方、図46A及び46Bにおいて、押圧部材1085は、円板状のホルダ1097の下面外周に、内部に収納部1098を有する基板固定リング1099を取り付け、収納部1098内にスプリング1981を介して、その下にリング状のプッシャ1983を収納し、基板固定リング1099の下面に設けた孔からプッシャ1983の押圧部1985を突出させて構成されている。軸受部1091は、この軸受部1091を上下動させる上下駆動機構1911に連結されており、また上下駆動機構1911自体は、前記回転用モータ1400等を載置する取付台1915側の部材に固定されている。そして押圧部材1085は、上下駆動機構1911を駆動することによって、ハウジング1083等に対して単独で上下動できる。またハウジング1083は、回転用モータ1400によって回転駆動される。
【0151】
図44A及び44Bに示す昇降機構1831は、傾斜機構811を上下動自在に移動させる機構である。そして基板保持装置1080や回転用モータ1400等を取り付けた取付台1915や傾斜機構811全体は、昇降機構1831を駆動することで上下動する。上下方向への移動量は、昇降機構1831にて制御される。ここで上記傾斜機構811、回転用モータ1400及び昇降機構1831が、基板保持装置1080で保持した基板Wの被処理面を傾斜させた状態のまま処理液Qに接液処理する基板保持装置駆動部1600を構成する。また前記基板保持装置駆動部1600を構成する昇降機構1831は、接液領域調節部であり、傾斜した基板Wの被処理面に接液する領域を、設定により0〜100%の範囲にて調節できるように構成されている。
【0152】
次に、この基板処理装置(前処理ユニット)の動作を説明する。まず、図44A及び44Bに示すように、基板保持装置1080が処理槽1010の上方に上昇し、且つ図46A及び46Bに示すように、基板保持装置1080の内部で押圧部材1085が上昇した状態にセットする。そして、第3基板搬送ロボット310の真空ハンド337または339(図5A乃至5C参照)によってフェースダウン状態で保持された基板Wを、ハウジング1083側壁の開口1081から内部挿入して、その真空吸着を解除し、これによって基板Wを基板Wの外径よりも数mm小さい径のリング状のシール部材1095の上に載せる。次に、シリンダ機構1911を駆動することで、押圧部材1085を下降すれば、図48に示すように、押圧部材1085の基板固定リング1099の押圧部1985が基板Wの上面外周を押圧し、基板Wの下面(即ち処理面)の外周をシール部材1095に押し付けて、基板Wが固定される。同時にシール部材1095は、処理液が基板Wの裏面(上面)に回り込むことを防止するシールとして機能する。
【0153】
このとき、処理槽1010においては、図44Bに示すポンプPを駆動することで、処理液供給口1021から処理液Qを供給して処理槽1010内を循環させた後、処理槽1010の外周縁上端辺1031をオーバーフローさせ、回収溝1015に回収して再び供給タンク1451に戻すように循環させておく。
【0154】
次に、ヘッド傾斜用シリンダ817(図22A及び22B参照)を駆動して、取付台1915や基板保持装置1080を一体に揺動させ、基板保持装置1080で保持した基板Wを水平位置から所定角度傾斜させ、次に図46Aに示す回転用モータ1400を駆動して、基板保持装置1080と基板Wとを回転させる。そして、図44A及び44Bに示す昇降機構1831を駆動することで、傾斜している基板保持装置1080をそのまま下降させて処理槽1010の処理液Q中に浸漬させる。このときの浸漬状態を図49に示す。図49に示すように、基板Wは、全体ではなく、その一部を処理液Q中に浸漬する。基板接液範囲(面積)は、基板W全体の面積の50%以上であればよいが、60%以上であればなお好適である。なお基板Wの接液範囲は、昇降機構1831によって任意に設定できる。このとき基板Wは回転している。このように、基板Wを傾斜した状態で且つ基板Wの被処理面の一部のみを浸漬させて処理を行うことで、基板Wの下面の被処理面は、接液と離液とを繰り返す。
【0155】
このとき、基板Wの被処理面上の気泡は、被処理面が傾斜していることで深いほうから浅いほうに向けて自然に排出される(この作用は、基板Wを浸漬させる際に被処理面上に滞留する気泡についても、浸漬した後に被処理面上に付着してくる気泡についても同様である)。さらに本実施の形態においては、万が一処理液Q中で傾斜した基板Wの被処理面上に気泡が付着したままとなった場合(即ち前記傾斜のみでは取り除けない気泡の場合)でも、基板Wの回転によって、離液から接液に至る間に外気と接触させて、これを排除することができる。また本実施の形態においては、基板保持装置1080の下部外周に法線方向に向かう複数の逃げ溝1094が形成されているので、基板Wを処理液Qに浸漬する際に基板Wの下面に溜まろうとする空気をスムーズに逃がすことができ、従って、処理液Qの流れを妨げることなく、且つ前記基板Wの被処理面上から排出されてきた気泡の抜け路となる。
【0156】
この例においては、基板Wの接液処理時に、図45に示す処理液供給ノズル1039によって、処理槽本体1013内に溜めた処理液Qを処理液供給ノズル1039の部分から処理槽本体1013の中央方向に向けて斜め上方に噴射することで、この噴射方向に処理液Qの流れを形成する。この処理液Qの流れの方向は、処理液Qに浸漬した基板Wの傾斜した被処理面に沿う方向とされ、これによって、図50に矢印Cで示すように、基板Wの被処理面の傾斜に沿って深い側から浅い側への処理液Qの流れが形成される。つまり基板Wの離液側に向かって処理液Qの流れが形成され、これによって、処理液Q中の基板Wの被処理面上の気泡群は、基板Wの離液領域の空間へと押し流されて行き、より確実に大気へ排出される。
【0157】
図51に示すように、基板Wの離液領域の空間にアスピレータ1570等の吸引手段を配置しておけば、基板Wの被処理面と処理液Qの間(離液領域)に溜まる空気を外部に強制的に排除することができ、基板Wの被処理面へのスムーズな接液ができる。
【0158】
以上のようにして、処理液Qを基板Wの被処理面に所定時間流して接液することでめっきの第1前処理を行った後、昇降機構1831を駆動することで、基板保持装置1080を図44A及び44Bに示す位置まで上昇させて第1前処理を終了させ、同時に傾斜機構811を駆動することで、基板保持装置1080を水平状態に戻す。次に、駆動機構1070を駆動することで、蓋部材1040を旋回させ、図52に示すように、処理槽1010の開口部1011を塞ぐ。次に、蓋部材1040上面に固定した噴霧ノズル1060の各ノズル1063から真上に向けて洗浄液(純水)を噴霧して基板Wの被処理面を洗浄する。このとき、処理槽1010の開口部1011は、蓋部材1040によって覆われているので、洗浄液が処理槽1010内に入り込むことはなく、処理槽1010内部の処理液Qが希釈されることはなく、処理液Qの循環使用が可能になる。
【0159】
なお基板Wを洗浄した後の洗浄液は、図示しない排水口から排水される。以上のようにして基板Wの洗浄が終了すると、図46Bに示すように、押圧部材1085が上昇し、第3基板搬送ロボット310の真空ハンド337または339(図5A乃至5C参照)をハウジング1083側壁の開口1081から挿入し基板Wの裏面中央を吸着して前記開口1081から外部に取り出す。そして、次の未処理の基板Wが基板保持装置1080に装着され、再び前記第1前処理及び洗浄工程が行われていく。
【0160】
なお上記の例では、処理槽1010に処理液Qとして第1前処理液を溜めて第1前処理を行ったが、処理槽1010内に第2前処理液を溜めて第2前処理を行っても良い。またこの基板処理装置をめっきの前処理ユニットとして利用するのではなく、他の薬液処理を行う基板処理ユニットとして利用することもできる。また噴霧ノズル1060によって行う基板Wの処理も、洗浄液による洗浄処理工程に限定されず、その他の各種薬液処理であっても良い。また基板処理装置は、上記構造の基板処理装置に限定されず、例えば前処理液による接液処理と、洗浄処理とを上下位置ではない別の場所で行う構造の基板処理装置にも適用できる。
【0161】
上記の例では基板保持装置1080に保持した基板Wの被処理面を傾斜させた状態のまま処理液Qに接液処理するように構成しているが、基板保持装置1080で保持した基板Wの被処理面を傾斜させた状態で処理液Qに接液した後に、処理面を水平にして接液処理するようにしてもよい。
【0162】
即ち、図44A及び44Bに示す基板処理装置において、未処理の基板Wを保持した基板保持装置1080を傾斜機構811によって水平位置から所定角度傾斜させ、次に回転用モータ1400によって基板保持装置1080と基板Wとを回転させた状態で、昇降機構831によって基板保持装置1080を傾斜状態のまま下降させて処理槽1010の処理液Q中に浸漬させて基板Wの被処理面に接液させる。次に、傾斜機構811によって、基板保持装置1080及び基板Wの被処理面を水平状態に戻し、水平状態のままで基板Wの被処理面の接液処理を行う。以上のようにして接液処理が完了した後、昇降機構831を駆動することで基板保持装置1080を図44A及び44Bに示す位置まで上昇させて接液処理を終了させ、駆動機構1070を駆動することで、蓋部材1040を旋回させて処理槽1010の開口部1011を塞ぐ。以下の洗浄工程は前述と同様なのでその説明は省略する。
【0163】
そして上記基板Wの接液の際も、図49に示すように、基板保持装置1080の底面の基板Wを保持した部分の外周に、基板Wを処理液Qに傾斜させた状態で接液した後に水平状態にしていく際に基板Wの被処理面と処理液Qの間に溜まっている空気を逃がす逃げ溝1094を設けているので、この空気をスムーズに外部に逃がすことができ、基板Wを水平にした後に基板Wの被処理面上に気泡が残ることはなく、基板Wの被処理面へのスムーズな接液とその処理ができる。
【0164】
同様に、図45に示すように、基板Wを処理液Qに接液させる際に、基板Wの被処理面の傾斜に沿って深い側から浅い側への処理液Qの流れを形成する処理液供給ノズル(処理液供給部)1039を設置しておけば、図50に示すように、基板Wの離液側に向かって処理液Qの流れが形成でき、これによって処理液Q中の基板Wの被処理面上の気泡群を基板Wの離液領域の空間へと押し流すことができ、基板Wを水平にした後に基板Wの被処理面上に気泡は残らず、基板Wの被処理面へのスムーズな接液ができる。
【0165】
同様に、図51に示すように、基板Wを処理液Qに大して傾斜させた状態で接液してから水平にしていく際に、基板Wの被処理面と処理液Qの間に溜まっている空気を吸引して強制的に排除するアスピレータ1570等の吸引手段を設置すれば、基板Wを処理液Qに傾斜した状態で接液してから基板Wの被処理面と処理液Qの間に溜まっている空気を外部に強制的に排除しながら基板Wを水平にしていくことで、水平にした基板の被処理面と処理液Qの間に気泡が残ることはなく、基板Wの被処理面へのスムーズな接液ができる。
【0166】
図53Aは、前処理ユニットやめっき処理ユニット等の各種ユニットに使用される基板保持装置2080を示す概略断面図で、図53Bは、図53AのA部分拡大図である。図53Aに示すように、基板保持装置2080は、基板保持部2081と基板保持部駆動部2120とを具備している。基板保持部2081は、下面が開放された略円筒状の基板受け2083の内部に、略円形の吸着ヘッド2089を収納して構成されている。基板受け2083は、その下端面から内側に向けて基板Wを仮置きする仮置き部2085を突出して設け、またその外周側面に基板挿入口2087を設けている。
【0167】
図54は、吸着ヘッド2089を下面側から見た斜視図である。図54、図53A及び53Bに示すように、吸着ヘッド2089は、内部に真空供給ライン(真空兼気体供給ライン)2093を設けた略円板状の基部2091と、基部2091の下面にリング状に取り付けられる基板吸着部2095と、リング状の基板吸着部2095の内側に取り付けられるプッシャ2100と、前記基部2091を貫通する開口からなる通気部2099とを設けて構成されている。
【0168】
基板吸着部2095は、シール材(例えばゴム材料等)によって形成され、その先端を、基部2091の下面から突出させることで、これに当接する下記の基板Wの裏面をリング状に吸着するとともに、基板Wの裏面(基板吸着部2095によってリング状にシールされた内側部分)へのめっき液の浸入を防止するシールの役目を果たすものである。即ち、基板吸着部2095の基板Wに接触する部分に基板吸着溝(吸着兼引離し用孔)2097を設け、これに前記真空供給ライン2093を接続することで、この基板吸着溝2097に基板Wの吸着及び引き離しを行わせるように構成している。基板吸着部2095の形状については、図53A及び53Bに示す形状に限定されず、所定の円周幅にてリング状に吸着するものであれば、どのような形状であっても構わない。
【0169】
プッシャ2100は、上面が開放された円筒箱型のケース2101内部に設けた収納部2103に、プッシャ本体2110を収納した上で、ケース2101の外周から張り出す鍔部2105を、固定具2107によって基部2091に固定することで構成されている。プッシャ本体2110は、伸縮可能な弾性材(例えば、フッ素樹脂製の合成ゴム材料等)によって形成され、蛇腹状に形成された外周壁2111の先端に、押圧部2113を設けて構成されている。そして、前記押圧部2113は、ケース2101に設けた貫通孔2109内に出入自在に挿入されている。このとき押圧部2113の下面の位置は、基板吸着部2095の下面の位置よりも若干上方に位置している。
【0170】
またプッシャ本体2110の裏面側に真空供給ライン2093が接続されることで、真空供給ライン2093に真空圧が供給された場合は、プッシャ本体2110の内部が真空状態となり、プッシャ本体2110の外周壁2111が縮んで押圧部2113がケース2101内に引っ込み(図53Bの状態)、逆に真空供給ライン2093に気体が供給された場合は、プッシャ本体2110の外周壁2111が伸びて押圧部2113がケース2101外に突出する(図57の状態)ように構成されている。
【0171】
基板保持部駆動部2120は、その内部に、吸着ヘッド2089を回転駆動する基板回転用モータ2121と、基板受け2083を上下の所定位置(少なくとも3カ所)に駆動する基板受け駆動用シリンダ2123とを具備している。吸着ヘッド2089は、基板回転用モータ2121によって回転駆動され、基板受け2083は、基板受け駆動用シリンダ2123によって上下動される。つまり、吸着ヘッド2089は、回転のみで上下動せず、基板受け1083は、上下動のみで回転しない。
【0172】
次に、基板保持装置2080の動作を説明する。まず図53Aに示すように、吸着ヘッド2089を回転させない状態で、基板受け2083を最も下の位置(基板受渡し位置)に移動し、基板挿入口2087を介して、基板搬送ハンド2127に吸着された基板Wを基板受け2083の内部に挿入し、基板搬送ハンド20127の吸着を解除することで、基板Wを仮置き部2085の上に載置する。このとき、基板Wの被処理面は下を向いている。そして基板搬送ハンド2127を基板挿入口2087から抜き出す。
【0173】
次に、図55A及び55Bに示すように、基板受け2083を上昇して基板Wの裏面(上面)外周に基板吸着部2095の先端を当接して押し付け、基板吸着溝2097から真空引きすることで、基板Wを基板吸着部2095に吸着する。このとき、真空力は、基板吸着部2095の基板Wに接触する部分の内部の基板吸着溝2097内のみに発生する。このときの基板受け2083の位置を、基板固定位置とする。これによって、基板Wの裏面(被処理面と反対側の面)の基板吸着部2095によって囲まれる部分は、基板吸着部2095によるシールによって被処理面から遮断される。
【0174】
前述のように、真空にて基板Wを吸着する場合には、従来、吸着パッドが一般に使用されており、吸着パッドの内側全体が真空状態になるので、基板Wは、その中心から外周部にかけて大きく撓み、均一なめっき処理ができない等の悪影響ばかりか、基板W破損の事態も招きかねなかった。
【0175】
そこで、この例では、基板Wの外周をリング状の小さな幅(径方向)のシールにて吸着することにより、吸着幅を極力小さく抑えることで、基板Wへの影響(撓み等)をなくすこととした。具体的には、基板吸着部2095の幅は非常に狭く、基板吸着部2095が基板Wに接触する部分は、基板Wの外周からその内側5mmまでの間の部分である。基板W裏面の外周部のみが基板吸着部2095と接触するので、下記する基板処理時の薬液の温度が不必要に基板吸着部2095との接触面を伝達して逃げる恐れもなくなる。
【0176】
次に、図56A及び56Bに示すように、基板受け2083を少し(例えば数mm)下降させて基板Wを仮置き部2085から引き離す。このときの基板受け2083の位置を基板処理位置とする。この状態で、基板保持装置2080全体を下降させ、図示しないめっき液中に浸漬させると、基板Wは、その裏面が吸着されて保持されているだけなので、基板Wの被処理面全域及びエッジ部分についても全てめっき液にディップさせて、その処理を行うことができる。
【0177】
基板Wは、その裏面のみが吸着して保持されているだけなので、めっき液Qに浸漬しても基板Wに対するめっき液Qの流れL(図56B参照)が阻害されることがなく、被処理面全域において均一なめっき液の流れが形成される。また、このめっき液の流れとともに、基板Wの被処理面上に巻き込まれた気泡や、めっきによって発生した気泡を基板Wの被処理面上から上方に排出することができる。
【0178】
これによって、めっきに悪影響を及ぼす不均一な流れあるいは気泡の影響を解決し、エッジを含んだ被処理面全域に均一なめっきを行うことが可能となる。また基板Wの裏面のリング状に真空吸着した部分の内側は、基板吸着部2095によるシールによって被処理面から遮断されるので、処理液が基板Wの裏面の基板吸着部2095の内側へ浸入するのを防ぐことができる。
【0179】
このとき、図56Bに示すように、真空供給ライン2093に接続されたプッシャ2100のプッシャ本体2110は、真空引きによって、その押圧部2113がケース2101側に引っ込んでおり、基板Wの裏面から所定の狭い間隔だけ離れている。従って、基板W裏面に押圧部2113が接触することで、基板処理時の薬液の温度が不必要に押圧部2113との接触面を伝達して逃げる恐れもない。
【0180】
このとき、吸着ヘッド2089の基部2091に通気部2099を設けているので、基部2091と基板W及び基板吸着部2095によって囲まれる基板W裏面の空間が密閉空間となることはなく、従って、基板Wがめっき液に浸漬されること等によって、前記空間内の気体が膨張または収縮しても、これによって、基板Wに撓みが生じる恐れもない。
【0181】
基板Wのめっき処理が終了した後、基板受け2083を、図55A及び55Bに示す基板固定位置まで上昇させて基板Wを仮置き部2085上に載置し、真空供給ライン2093に気体(不活性ガス、例えば窒素ガス)を供給することで、基板吸着溝2097からこの気体を噴出すると同時に、この気体の供給圧力によって、プッシャ2100のプッシャ本体2110内を加圧し押圧部2113をケース2101から突出させて、基板Wをその裏面から押圧する。同時に、基板受け2083を下降させることで、図57に示すように、基板Wを基板吸着部2095から引き離し、さらに、基板受け2083を、図53A及び53Bに示す基板受渡し位置まで下降させる。そして、基板挿入口2087から基板搬送ハンド2127を挿入して基板Wを外部に引き出す。
【0182】
このように、基板吸着溝2097から気体を噴出すると同時に、プッシャ2100の押圧部2113によって基板Wの裏面を押圧するように構成したので、例えシール材(例えばゴム材料等)によって形成されている基板吸着部2095が経年変化等により基板に接着しやすくなって、一旦基板吸着部2095に吸着した基板Wが基板吸着溝2097からの気体の噴出だけでは引き剥がれにくくなっていても、プッシャ2100の押圧部2113による基板Wの裏面の押圧によって、容易且つ確実に基板Wを引き剥がすことができる。つまり処理後の基板Wの引き剥がしは、真空供給ライン2093に気体を供給するだけで、プッシャ100の押圧及び環状シールとなっている基板吸着部2095からの気体の噴出によって確実に行うことが可能となる。
【0183】
基板保持装置2080は、例えば図2に示す、前洗浄ユニット240や前処理ユニット320,340、更にはめっき処理ユニット360等の基板処理装置として使用されるが、これに限定されることなく、各種構造の基板処理装置や基板処理機構に適用される。
【0184】
また前記プッシャ2100の形状及び構造も種々の変形が可能であることは言うまでもない。例えば前記プッシャ本体2110内には、押圧部2113をケース2101から突出する方向またはケース2101内に引き込む方向に弾発するコイルスプリング等の弾発手段を収納しておいても良い。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【図1】半導体基板の要部拡大断面図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる基板処理装置の全体を示す平面図である。
【図3A】基板を載置保持した状態の第1基板搬送ロボットの要部を示す平面図である。
【図3B】基板を載置保持していない状態の第1基板搬送ロボットの要部を示す側面図である。
【図3C】第1基板搬送ロボットを図3Aの矢印A方向から見た概略側面図である。
【図4A】上段上ハンドの記載を省略し、上段下ハンドが基板を保持した状態の第2基板搬送ロボットを示す平面図である。
【図4B】基板を保持しない状態の第2基板搬送ロボットを示す側面図である。
【図4C】基板を保持した状態の第2基板搬送ロボットの上段上ハンドの要部を示す平面図である。
【図4D】基板を保持した状態の第2基板搬送ロボットの下段ハンドの要部を示す平面図である。
【図5A】基板を保持した状態の第3基板搬送ロボットの要部を示す側面図である。
【図5B】基板を保持した状態の第3基板搬送ロボットの真空ハンドの要部を示す平面図である。
【図5C】第3基板搬送ロボットの真空ハンドの先端部分の拡大断面図である。
【図6A】第1反転機を示す概略平断面図である。
【図6B】第1反転機を示す断面図である。
【図7A】第2反転機を示す側断面図である。
【図7B】第2反転機の基板着脱アーム部分の概略平面図である。
【図8A】基板仮置台の概略正面図である。
【図8B】基板仮置台の概略側面図である。
【図8C】基板仮置台の概略平面図である。
【図9】前処理ユニットを示す斜視図である。
【図10A】蓋部材によって容器を閉じた状態の容器と蓋部材とを示す概略側断面図である。
【図10B】図10Aの概略平面図である。
【図10C】蓋部材によって容器を開いた時の概略側断面図である。
【図10D】図10Cの蓋部材を省略して示す概略平面図である。
【図11A】基板固定ヘッド及びヘッド回転用モータを示す概略側断面図である。
【図11B】図11AのD部分の拡大図である。
【図12A】ヘッド(取付台)昇降機構を示す側面図である。
【図12B】ヘッド(取付台)昇降機構を後側から見た斜視図である。
【図13】基板固定ヘッドの動作説明図である。
【図14A】前処理におけるシール部材によるシール位置を示す図である。
【図14B】前処理における他のシール部材によるシール位置を示す図である。
【図15A】めっき処理ユニットを示す側面図である。
【図15B】図15Aの断面図である。
【図16A】処理槽の平面図である。
【図16B】処理槽の上部の断面図(図15AのE−E線断面図)である。
【図17】処理槽の開口部を蓋部材で塞いだ状態の断面図(図16AのF−F線断面図)である。
【図18A】基板保持装置の概略側断面図である。
【図18B】図18AのG部分拡大図である。
【図19A】基板保持装置の動作説明図である。
【図19B】図19AのG部分拡大図である。
【図20A】基板保持装置の動作説明図である。
【図20B】図20AのG部拡大図である。
【図21】基板保持装置駆動機構の内部構造の概略側面図である。
【図22A】傾斜機構を基板保持装置と共に示す概略側面図である。
【図22B】図22Aの基板保持装置を省略した右側面図である。
【図23A】めっき処理ユニットの動作説明図である。
【図23B】図23Aの断面図である。
【図24A】めっき処理ユニットの動作説明図である。
【図24B】図24Aの断面図である。
【図25】後洗浄ユニットの外観図である。
【図26】第1洗浄部の洗浄装置の概略図である。
【図27】第2洗浄乾燥部の側断面図である。
【図28】めっき液供給ユニットのシステム構成図である。
【図29A】めっき液供給用タンクへの配管の接続構造を示す図である。
【図29B】めっき液供給用タンクへの配管の他の接続構造を示す図である。
【図29C】めっき液供給用タンクへの配管の更に他の接続構造を示す図である。
【図30A】サンプルポートを示す正面図である。
【図30B】サンプルポートを示す斜視図である。
【図31A】フィルタを示す斜視図である。
【図31B】フィルタを示す配管図である。
【図32】第1前処理ユニットにおける他の前処理方法を示す図である。
【図33】本発明の他の実施の形態にかかる基板処理装置の全体を示す平面図である。
【図34A】無電解めっきユニットに適用した基板処理装置の側面図である。
【図34B】図34Aの側断面図である。
【図35】処理槽の拡大断面図である。
【図36A】基板保持装置及びその回転用モータの部分を示す概略側断面図である。
【図36B】図36AのA部分の拡大図である。
【図37】基板保持部の下面を示す図である。
【図38A】基板がめっき液に浸漬される直前の状態における処理槽内のめっき液の流れの状態を示す概略断面図である。
【図38B】図38Aの縁部近傍部分を拡大して示す要部拡大概略断面図である。
【図39A】基板がめっき液に浸漬されて縁部に接近した状態における処理槽内のめっき液の流れの状態を示す概略断面図である。
【図39B】図39Aの縁部近傍部分を拡大して示す要部拡大概略断面図である。
【図40A】めっき液に浸漬された基板が基板処理位置にあるときの状態における処理槽内のめっき液の流れの状態を示す概略断面図である。
【図40B】図40Aの縁部近傍部分を拡大して示す要部拡大概略断面図である。
【図41A】基板処理装置の動作の説明に付する側面図である。
【図41B】図41Aの概略側断面図である。
【図42A】基板がめっき液に浸漬される直前の状態における他の実施の形態の処理槽内のめっき液の流れの状態を示す概略断面図である。
【図42B】図42Aの縁部近傍部分を拡大して示す要部拡大概略断面図である。
【図43A】基板がめっき液に浸漬されて縁部に接近した状態における処理槽内のめっき液の流れの状態を示す概略断面図である。
【図43B】図43Aの縁部近傍部分を拡大して示す要部拡大概略断面図である。
【図44A】前処理ユニットに適用した基板処理装置を示す側面図である。
【図44B】図44Aの概略側断面図である。
【図45】処理槽の拡大断面図である。
【図46A】基板保持装置及び回転用モータの部分を示す概略側断面図である。
【図46B】図46AのA部分の拡大図である。
【図47】基板保持部の下面を示す図である。
【図48】基板保持装置の動作の説明に付する図である。
【図49】基板の接液処理方法を示す図である。
【図50】基板の他の接液処理方法を示す図である。
【図51】基板の更に他の接液処理方法を示す図である。
【図52A】基板処理装置の動作の説明に付する側面図である。
【図52B】図52Aの概略側断面図である。
【図53A】基板保持装置を示す断面図である。
【図53B】図53AのA部分拡大図である。
【図54】吸着ヘッドを下面側から見た斜視図である。
【図55A】基板保持装置の動作の説明に付する図である。
【図55B】図55Aの要部を拡大して示す要部拡大図である。
【図56A】基板保持装置の動作の説明に付する図である。
【図56B】図56Aの要部を拡大して示す要部拡大図である。
【図57】基板保持装置の動作の説明に付する図である。
【符号の説明】
【0186】
1 基板処理装置
100 ロード・アンロードエリア
110 ロードポート
130 基板搬送ロボット
150 反転機
200 洗浄エリア
210 基板仮置台
230 基板搬送ロボット
240 前洗浄ユニット
250 第2反転機
260 後洗浄ユニット
300 めっき処理エリア
310 基板搬送ロボット
340 第2前処理ユニット
360 めっき処理ユニット
390 めっき液供給ユニット
500 前処理ユニット
565 押圧部材
575a,575b シール部材
560 基板固定ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に無電解めっきを施すに先だって、めっき前処理としての洗浄処理と触媒付与処理を行うにあたり、
触媒付与処理によって基板表面に触媒を付与する範囲より広範囲に洗浄処理を行うことを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
前記触媒付与処理によって基板表面に触媒を付与する範囲は、基板表面の均一にめっき処理を行う必要がある範囲と同じ範囲であることを特徴とする請求項1記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記めっき前処理としての洗浄処理は、前記触媒付与処理に先立って行う前洗浄と、触媒付与処理後の洗浄とを含むことを特徴とする請求項1または2記載の基板処理方法。
【請求項4】
基板の表面の周縁部をシール部材でシールし該表面をめっき前処理液に接触させてめっき前処理としての洗浄処理を行う洗浄処理ユニットと触媒付与処理を行う触媒付与処理ユニットとを有し、前記洗浄処理ユニットは、前記触媒付与処理ユニットで触媒を付与する範囲より広範囲に洗浄処理を行うように構成されていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
前記触媒付与処理ユニットによって基板表面に触媒を付与する範囲は、基板表面の均一にめっき処理を行う必要がある範囲と同じ範囲であることを特徴とする請求項4記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記洗浄処理ユニットと前記触媒付与処理ユニットは、前記シール部材として、異なる開口面積を有するものを使用している他は、同じ構成であることを特徴とする請求項4または5記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23A】
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【図23B】
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【図24A】
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【図24B】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29A】
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【図29B】
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【図29C】
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【図30A】
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【図30B】
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【図31A】
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【図31B】
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【図32】
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【図33】
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【図34A】
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【図34B】
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【図35】
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【図36A】
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【図36B】
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【図37】
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【図38A】
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【図38B】
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【図39A】
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【図39B】
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【図40A】
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【図40B】
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【図41A】
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【図41B】
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【図42A】
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【図42B】
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【図43A】
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【図43B】
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【図44A】
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【図44B】
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【図45】
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【図46A】
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【図46B】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52A】
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【図52B】
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【図53A】
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【図53B】
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【図54】
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【図55A】
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【図55B】
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【図56A】
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【図56B】
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【図57】
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【公開番号】特開2007−284797(P2007−284797A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−136465(P2007−136465)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【分割の表示】特願2004−570333(P2004−570333)の分割
【原出願日】平成15年11月14日(2003.11.14)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】