説明

基板処理装置、基板処理方法及び記憶媒体

【課題】被処理基板の乾燥に利用される高温高圧流体の消費量が少ない基板処理装置等を提供する。
【解決手段】第1の原料収容部41では加熱機構42により液体状態の原料を高温高圧流体状態とし、原料供給路411の供給用バルブ412を開いて処理容器31に当該高温高圧流体を供給し、この高温高圧流体による被処理基板Wの乾燥を行う。第2の原料収容部41は、第2の冷却機構43a、43bにより前記原料の凝縮温度以下に冷却されることにより、回収用バルブ412を開き、原料回収路処理容器31内の高温高圧流体を当該第2の原料収容部41に回収する。回収された原料は第1の原料収容部41から処理容器31に供給される原料として再利用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄などの処理が行われた被処理基板を、高温高圧流体を利用して乾燥する処理などを行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
被処理基板である例えば半導体ウエハ(以下、ウエハという)表面に集積回路の積層構造を形成する半導体装置の製造工程などにおいては、薬液などの洗浄液によりウエハ表面の微小なごみや自然酸化膜を除去するなど、液体を利用してウエハ表面を処理する液処理工程が設けられている。
【0003】
例えばウエハの洗浄を行う枚葉式のスピン洗浄装置は、ノズルを用いてウエハの表面に例えばアルカリ性や酸性の薬液を供給しながらウエハを回転させることによってウエハ表面のごみや自然酸化物などを除去する。この場合にはウエハ表面は、例えば純水などを利用したリンス洗浄により残った薬液が除去された後、ウエハを回転させて残った液体を振り飛ばす振切乾燥などによって乾燥される。
【0004】
ところが半導体装置の高集積化に伴い、こうした液体などを除去する処理において、いわゆるパターン倒れの問題が大きくなってきている。パターン倒れは、例えばウエハ表面に残った液体を乾燥させる際に、パターンを形成する凹凸の例えば凸部の左右に残っている液体が不均一に乾燥することにより、この凸部を左右に引っ張る表面張力のバランスが崩れて液体の多く残っている方向に凸部が倒れる現象である。
【0005】
こうしたパターン倒れの発生を抑えつつウエハ表面に残った液体を除去する手法として高温高圧流体の一種である超臨界状態の流体(超臨界流体)を用いた乾燥方法が知られている。超臨界流体は、液体と比べて粘度が小さく、また液体を溶解する能力も高いことに加え、超臨界流体と平衡状態にある液体や気体との間で界面が存在しない。そこで、液体の付着した状態のウエハを超臨界流体と置換し、しかる後、超臨界流体を気体に状態変化させると、表面張力の影響を受けることなく液体を乾燥させることができる。
【0006】
ここで特許文献1には、洗浄部にて洗浄された基板を乾燥処理室内に搬送し、次いで当該乾燥処理室内の圧力が乾燥処理用の処理流体(本例では二酸化炭素)の臨界圧以上となるように予め昇圧してから、当該乾燥処理室内に超臨界流体を供給することにより被処理基板の乾燥を行う技術が記載されている。この技術では、処理を終えた処理流体は乾燥処理室から排出され、乾燥処理室内を大気圧に減圧することにより乾燥処理が終了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−72118号公報:段落0025〜0029、段落0038〜0039、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、被処理基板の乾燥を行う超臨界流体として使用される流体の種類は、特許文献1に記載された二酸化炭素のように安価な不活性ガスだけではない。例えばIPA(IsoPropyl Alcohol)などの有機溶媒のように排出時に処理が必要なものや、HFE(Hydro Fluoro Ether)など比較的高価な処理流体を用いる場合には、超臨界流体の使用量を極力低減することが求められる。しかしながら特許文献1には、処理流体を超臨界状態にする手法や乾燥処理室から排出された乾燥用流体の取り扱いについての記載はなく、処理流体の使用量を低減するという課題の解決には役立たない。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、被処理基板の乾燥などに利用される高温高圧流体の消費量が少ない基板処理装置、基板処理方法及びこの方法を記憶した記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る基板処理装置は、高温高圧流体により被処理基板の乾燥を行うための処理容器と、
この処理容器内の原料を高温高圧流体状態に維持するために当該処理容器内を加熱する処理容器用の加熱機構と、
液体状態の原料を収容し、供給用バルブが設けられた原料供給路を介して前記処理容器に接続された第1の原料収容部と、
前記液体状態の原料を高温高圧流体状態とするために前記第1の原料収容部を加熱する原料収容部用の加熱機構及び前記原料を液体状態で収容するために前記第1の原料収容部を冷却するための第1の冷却機構と、
回収用バルブが設けられた原料回収路を介して前記処理容器に接続され、当該処理容器から原料を回収するための第2の原料収容部と、
前記処理容器内の高温高圧流体を回収するために第2の原料収容部を原料の凝縮温度以下に冷却するための第2の冷却機構と、
前記第1の原料収容部内の液体状態の原料が高温高圧流体状態になった後、前記供給用バルブを開き、前記処理容器内に高温高圧流体が供給された後、第2の原料収容部を原料の凝縮温度以下に冷却すると共に前記回収用バルブを開くように制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、他の発明に係る基板処理装置は、高温高圧流体により被処理基板の乾燥を行うための処理容器と、
この処理容器内の原料を高温高圧流体状態に維持するために当該処理容器内を加熱する処理容器用の加熱機構と、
前記処理容器に接続され、この処理容器に供給される原料、及びこの処理容器から回収された原料を液体の状態で収容するための原料収容部と、
前記液体状態の原料を高温高圧流体状態とするために前記原料収容部を加熱する原料収容部用の加熱機構と、
前記処理容器内の高温高圧流体を原料収容部内に回収し、液体状態の原料として収容するために、当該原料収容部を原料の凝縮温度以下に冷却するための冷却機構と、
前記原料収容部内の液体状態の原料が高温高圧流体状態になった後、この原料収容部内の高温高圧流体を前記処理容器へと供給し、この処理容器に高温高圧流体が供給された後、前記原料収容部を原料の凝縮温度以下に冷却して、前記処理容器内の高温高圧流体を前記原料収容部へ回収するように制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
前記基板処理装置は以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記第1の原料収容部と第2の原料収容部、原料供給路と原料回収路、供給用バルブと回収用バルブ、並びに第1の冷却機構と第2の冷却機構が共通化されていること。
(b)前記第1の原料収容部と第2の原料収容部が接続されていること。
(c)被処理基板の表面には、乾燥防止のための液体からなる膜が形成されていること。
(d)前記原料は、前記乾燥防止のための液体と同じ材料が用いられていること。
(e)前記原料はイソプロピルアルコールであること。
(f)前記高温高圧流体は超臨界流体であること。
(g)前記原料収容部はスパイラル管であること。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被処理基板の乾燥を行うために処理容器に供給された高温高圧流体の原料を液体状態で回収する。このため、高温高圧流体を用いて被処理基板の乾燥を行う処理に用いられる原料の消費量を少量に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態の洗浄処理システムの平面図である。
【図2】前記洗浄処理システム内の洗浄装置の一例を示す縦断側面図である。
【図3】本実施の形態の超臨界処理装置を示す斜視図である。
【図4】前記超臨界処理装置の分解斜視図である。
【図5】前記超臨界処理装置に設けられている、超臨界流体の準備回収部の構成を示す縦断側面図である。
【図6】前記準備回収部の横断平面図である。
【図7】前記準備回収部の冷却機構を作動させた状態における超臨界処理装置の外観斜視図である。
【図8】前記超臨界処理装置への処理流体の供給、排出系統を示す説明図である。
【図9】前記超臨界処理装置の作用を示す第1の説明図である。
【図10】前記超臨界処理装置の作用を示す第2の説明図である。
【図11】前記準備回収部に設けられているスパイラル管の内部の様子を示す説明図である。
【図12】前記超臨界処理装置の他の構成例を示す説明図である。
【図13】前記超臨界処理装置のさらに他の構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の基板処理装置を備えた基板処理システムの一例として、被処理基板であるウエハWに洗浄液を供給して洗浄処理を行う洗浄装置2と、高温高圧状態の流体(高温高圧流体)であるIPAの超臨界流体(超臨界状態の流体)を利用して前記洗浄処理後のウエハWを乾燥する超臨界処理装置3とを備えた洗浄処理システム1について説明する。図1は洗浄処理システム1の全体構成を示す横断平面図であり、当該図に向かって左側を前方とすると、洗浄処理システム1は、例えば直径300mmの複数枚のウエハWを収納したFOUP100が載置される載置部11と、FOUP100と洗浄処理システム1との間でのウエハWの搬入出が行われる搬入出部12と、搬入出部12と後段のウエハ処理部14との間でのウエハWの受け渡しが行われる受け渡し部13と、ウエハWを洗浄装置2、超臨界処理装置3内に順番に搬入して洗浄処理や超臨界処理が行われるウエハ処理部14と、を前方からこの順番に接続した構造となっている。
【0016】
載置部11は、例えば4個のFOUP100を載置可能な載置台であり、載置台上に載置された各FOUP100を搬入出部12に接続する。搬入出部12では、各FOUP100との接続面に設けられた不図示の開閉機構により、FOUP100の開閉扉が取り外され、例えば前後方向に進退自在、左右方向に移動自在、及び回動、昇降自在に構成された第1の搬送機構121によって、FOUP100内と受け渡し部13との間でウエハWが搬送される。前後を搬入出部12とウエハ処理部14とに挟まれた受け渡し部13には、例えば8枚のウエハWを載置可能なバッファとしての役割を果たす受け渡し棚131が設けられており、この受け渡し棚131を介してウエハWが搬入出部12とウエハ処理部14との間を搬送される。
【0017】
ウエハ処理部14には、受け渡し部13との間の開口部から前後方向に向かって伸びるウエハ搬送路142が設けられている。そしてこのウエハ搬送路142の手前側から見て左手には、例えば3台の洗浄装置2が当該ウエハ搬送路142に沿って列設されており、同じく右手には、本実施の形態の基板処理装置である例えば3台の超臨界処理装置3が列設されている。ウエハ搬送路142内には、ウエハ搬送路142に沿って移動可能、左右の洗浄装置2、超臨界処理装置3に向けて進退可能、そして回動、昇降可能に構成された第2の搬送機構141が設けられており、既述の受け渡し棚131と各洗浄装置2、超臨界処理装置3との間でウエハWを搬送することができる。ここでウエハ処理部14内に配置される洗浄装置2や超臨界処理装置3の個数は、上述の例に限定されるものではなく、単位時間当たりのウエハWの処理枚数や、洗浄装置2、超臨界処理装置3での処理時間の違いなどにより適宜選択され、またこれら洗浄装置2や超臨界処理装置3のレイアウトも図1に示した例とは異なる配置を採用してもよい。
【0018】
洗浄装置2は例えばスピン洗浄によりウエハWを1枚ずつ洗浄する枚葉式の洗浄装置2として構成され、例えば図2の縦断側面図に示すように、処理空間を形成するアウターチャンバー21内に配置されたウエハ保持機構23にてウエハWをほぼ水平に保持し、このウエハ保持機構23を鉛直軸周りに回転させることによりウエハWを回転させる。そして回転するウエハWの上方にノズルアーム24を進入させ、その先端部に設けられた薬液ノズル241から薬液及びリンス液を予め定められた順に供給することによりウエハの面の洗浄処理が行われる。また、ウエハ保持機構23の内部にも薬液供給路231が形成されており、ここから供給された薬液及びリンス液によってウエハWの裏面洗浄が行われる。
【0019】
洗浄処理は、例えばアルカリ性の薬液であるSC1液(アンモニアと過酸化水素水の混合液)によるパーティクルや有機性の汚染物質の除去→リンス液である脱イオン水(DeIonized Water:DIW)によるリンス洗浄→酸性薬液である希フッ酸水溶液(以下、DHF(Diluted HydroFluoric acid))による自然酸化膜の除去→DIWによるリンス洗浄がこの順に行われる。これらの薬液はアウターチャンバー21内に配置されたインナーカップ22やアウターチャンバー21に受け止められて排液口221、211より排出される。またアウターチャンバー21内の雰囲気は排気口212より排気されている。
【0020】
薬液による洗浄処理を終えたら、ウエハ保持機構23の回転を停止してから当該表面に乾燥防止用のIPA(IsoPropyl Alcohol)を供給し、ウエハWの表面及び裏面に残存しているDIWと置換する。こうして洗浄処理を終えたそしてウエハWは、その表面にIPAが液盛りされた状態のまま例えばウエハ保持機構23に設けられた不図示の受け渡し機構により第2の搬送機構141に受け渡され、洗浄装置2より搬出される。
【0021】
洗浄装置2での洗浄処理を終えたウエハWは表面にIPAの液盛りがされて濡れた状態のまま超臨界処理装置3に搬送され、超臨界流体を利用して表面の液体を除去し、ウエハWを乾燥する超臨界処理が行われる。以下、本実施の形態に係る超臨界処理装置3の構成について図3〜図8を参照しながら説明する。図3、図4、図7においては、図に向かって左側を前方として説明を行う。
【0022】
図1に示すように、ウエハ搬送路142に沿って列設された例えば3台の超臨界処理装置3は、互いに区画された筐体内に配置されており、各筐体内にはウエハWの搬送を行う搬送アーム6と、超臨界処理装置3とが手前からこの順に設けられている。
【0023】
例えば搬送アーム6は、図4に示すように水平方向に伸びるアーム部材64の先端に、ウエハWを保持するための保持リング61が設けられており、昇降機構65によって昇降自在、移動機構66によって前後方向に移動自在に構成されている。保持リング61には、例えばウエハWの上面周縁部の3箇所を吸着保持する2組のピック52、53が設けられており、搬入時に超臨界処理を行う前のウエハWを保持する搬入用ピック62と、搬出時に超臨界処理後のウエハWを保持する搬出用ピック63と、を使い分けている。
【0024】
次に図3に示すように、本例における超臨界処理装置3は、ウエハWの処理を行う超臨界処理部30と、この超臨界処理部30への超臨界流体の供給、回収を行う準備回収部4とを備えている。まず超臨界処理部30ついて説明すると、超臨界処理部30は、超臨界流体を用いてウエハWを乾燥する超臨界処理が行われる処理チャンバー31と、前記搬送アーム6との間でウエハWの受け渡しを行い、受け取ったウエハWを処理チャンバー31内に搬入出するウエハホルダー34と、ウエハWの受け渡し位置にてウエハホルダー34を冷却する冷却機構5と、を備えている。
【0025】
処理チャンバー31は、本実施の形態に係る超臨界処理装置3の処理容器に相当し、図4の分解斜視図に示すように、横方向に扁平な直方体形状の耐圧容器として構成されている。処理チャンバー31の内部にはウエハWを保持するためのウエハホルダー34を格納することが可能な扁平な処理空間310が形成されている。処理空間310は、例えば300mmのウエハWを処理する場合、ウエハWと処理チャンバー31の内壁面との間に超臨界流体を十分に通流させることが可能であり、且つ、ウエハWに液盛りされたIPAが自然乾燥しないうちに短時間で処理空間310内の雰囲気を超臨界流体で満たすことが可能なように、例えば高さ数mm〜十数mm、容積300cm〜1500cm程度の比較的狭小な空間として構成されている。
【0026】
また処理チャンバー31には不図示のパージガス供給ライン及び排気ラインが接続されており、ウエハWの処理を終えた後の処理空間310内にNガスなどの不活性ガスを供給して処理空間310内に残存しているIPAを排気ラインの下流側に設けられている除害設備に向けてパージすることができる。
【0027】
処理チャンバー31の前面には、ウエハWを搬入出するための、左右方向に細長い開口部311が形成されており、処理チャンバー31はこの開口部311を搬送アーム6の方向に向けて筐体内に配置されている。処理チャンバー31の開口部311が設けられている面には、平板状の2枚の突片部312が横方向に突出するように設けられており、開口部311はこれら2枚の突片部312により上下を挟まれた位置に配置されている。各突片部312には、後述のロックプレート38を上下方向へ向けて嵌入させるための嵌入孔313が設けられている。
【0028】
処理チャンバー31の上下両面には、例えばテープヒーターなどの抵抗発熱体からなるヒーター39が設けられており、処理チャンバー31の本体を加熱することにより処理空間310内に供給された高温高圧流体、例えば超臨界IPAの超臨界状態を維持することができる。図8に模式的に示すように、処理チャンバー31は電源部391と接続されており、電源部391の出力を増減して、処理チャンバー31本体及び処理空間310の温度を常時、例えば100℃〜300℃の範囲の270℃に維持することができる。ヒーター39は処理チャンバー31用の加熱機構に相当する。なお、図示の便宜上、図4には上面側のヒーター39のみを示してある。
【0029】
また処理チャンバー31の上下面には、ヒーター39から周囲の雰囲気を断熱するための上プレート32及び下プレート33が設けられている。上プレート32、下プレート33は処理チャンバー31の上下面に設けられたヒーター39を、不図示の断熱材を介して覆うように設けられた板状の部材であり、処理チャンバー31の周囲に設けられた各種の駆動機器をヒーター39の熱から守り、またヒーター39の熱により超臨界処理前のウエハWに液盛りされたIPAの蒸発が促進されるのを抑える役割を果たしている。
【0030】
上プレート32の上面、及び下プレート33の下面には、これらのプレート32、33を冷却するための冷却管36が配設されており、不図示の冷媒供給部から供給された例えば冷却水などの冷媒を通流させることにより、各プレート32、33を冷却することができる。なお図4においては図示の便宜上、上プレート32側の冷却管36のみを示してある。
各プレート32、33の前方側には、既述の突片部312に対応する位置に、切り欠き部321、331が形成されており、これらのプレート32、33が、突片部312の嵌入孔313に嵌入されるロックプレート38と干渉しないようになっている。
【0031】
また例えば図3、図7に示すように、本例における上プレート32及び下プレート33は、前方から見ると処理チャンバー31よりも左右方向に幅広に形成されている。そして図4に示すように、例えば下プレート33の両端縁の上面側には、ウエハホルダー34を保持する後述のアーム部材342を走行させるためのレール371が前後方向に伸びるように設けられている。
【0032】
レール371上に設けられている372は、前記アーム部材342に接続されてレール371上を走行するスライダー、373はこのレール371を駆動する例えばロッドレスシリンダーなどからなる駆動機構、374は駆動機構373とスライダー372とを連結する連結部材である。
【0033】
ウエハホルダー34は、ウエハWを保持した状態で処理チャンバー31の処理空間310内に配置可能に構成された薄い板状の部材である。ウエハホルダー34は、図4に示すように左右方向に伸びる角柱状の蓋部材341に接続されており、これによりウエハホルダー34と蓋部材341とが一体となっている。この蓋部材341は、処理チャンバー31の開口部311が設けられている面から横方向に突出している既述の2つの突片部312に上下を挟まれた隙間内に嵌り込むことができるサイズに形成されている。
【0034】
したがって蓋部材341は、ウエハホルダー34を処理チャンバー31の処理空間310内に搬入したとき、上下の突片部312の間の隙間内に嵌り込んで開口部311を塞ぐことができる。ここで蓋部材341と対向する処理チャンバー31側の側壁面には、開口部311を囲むように不図示のOリングが設けられており、蓋部材341によって開口部311を塞いだとき、当該蓋部材341によってこのOリングが押しつぶされて処理空間310内の気密が維持される。
【0035】
蓋部材341の左右両端には、処理チャンバー31へ向けて前後方向に伸びるアーム部材342が設けられており、このアーム部材342の先端部を既述のスライダー372と接続することにより、前記レール371上でアーム部材342を前後方向に走行させることができる。そして図3に示すように、スライダー372をレール371の先端側まで移動させると、搬送アーム6との間でウエハWの受け渡しを行うため、処理チャンバー31の外部の受け渡し位置までウエハホルダー34が引き出される。一方、スライダー372をレール371の後端側まで移動させると、図7、図8に示すように処理チャンバー31(処理空間310)内の処理位置までウエハホルダー34を移動させて、ウエハWに対する超臨界処理を実行することができる。
【0036】
図4に示すように、左右のアーム部材342には、蓋部材341との接続部を成す手前側の一端部に、上方側へ突起する突起部343が設けられている。一方、処理チャンバー31側には、例えば上プレート32の左右両端の前方領域にロック部材35が設けられており、このロック部材35を前記突起部343と係合させることによりウエハホルダー34を処理チャンバー31の側壁面に押し付けるように固定することができる。ロック部材35は、ロックシリンダー351によって回転自在に構成されており、図3に示すようにロック部材35の突片を左右方向に開くと突起部343を係止状態から開放され、図7に示すように、前記突片を下方側に向けると突起部343がロック部材35にて係止された状態となる。
【0037】
さらに処理チャンバー31の手前側には、開口部311を塞いでいる蓋部材341の開放を阻止するためのストッパ機構を成すロックプレート38が設けられている。このロックプレート38は、ウエハホルダー34を処理位置まで移動させたとき、上下の突片部312の間の隙間に嵌り込んだ蓋部材341を、手前側から処理チャンバー31の本体側へ向けて押さえて蓋部材341の開放を阻止する役割を果たす。
【0038】
そこでロックプレート38は、上下の突片部312に設けられた嵌入孔313に嵌入して、蓋部材341を押さえつけるロック位置(図7)と、このこのロック位置から下方側に退避して蓋部材341を開放する開放位置との間を上下方向に移動する。図4、図7に示す381は、ロックプレート38を上下に移動させるための昇降機構であり、382はロックプレート38の例えば下端部に接続されたスライダーをレール上で走行させてロックプレート38の移動方向を案内するスライド機構である。ここで図示の便宜上、図3においてはロックプレート38や昇降機構381等の記載を省略してある。
【0039】
また図3、図4に示すように、ウエハWの受け渡し位置まで移動したウエハホルダー34の下方側には、当該ウエハホルダー34を冷却するための冷却機構5が設けられている。この冷却機構5は、ウエハホルダー34上に配置されるウエハWの下面と対向するように配置されたクーリングプレート51と、このクーリングプレート51のプレート面に複数個設けられ、例えば冷却用の清浄空気を吐出する吐出孔511とを備えている。
【0040】
また図4に示すように前記クーリングプレート51はドレイン受け皿52上に保持されており、ウエハWから流れ落ちたIPAを受け止めてドレイン管53へ排出することができる。ドレイン受け皿52及びクーリングプレート51は昇降機構54によって昇降自在に構成されており、ウエハホルダー34が受け渡し位置まで移動したときには、上方側の冷却位置まで上昇してウエハホルダー34の冷却を実行し、ウエハホルダー34が処理位置まで移動した後には、冷却位置の下方位置まで降下するようになっている。なお図示の便宜上、図7においては冷却機構5の記載は省略してある。
【0041】
また図3に示す55は、ウエハホルダー34に受け渡されたウエハWにIPAを供給するためのIPAノズルであり、処理チャンバー31内に搬送される前のウエハWに再度IPAを供給して、当該ウエハWが自然乾燥しない程度の十分量のIPAを液盛りしてから当該ウエハWを処理チャンバー31内に搬入するようになっている。
【0042】
以上に説明した構成を備えた処理チャンバー31には、内部の処理空間310に供給されるIPAの超臨界流体(高温高圧流体)を準備する機能と、超臨界処理を終えたあとのIPAを回収する機能とを兼ね備えた準備回収部4が設けられている。図3に示すように準備回収部4は、処理チャンバー31へと供給される超臨界状態のIPAを準備し、また処理を終えたIPAを回収する配管が螺旋状に巻かれて形成されたスパイラル管41と、このスパイラル管41を加熱して内部のIPAを超臨界状態にするための加熱機構をなすハロゲンランプ42と、前記スパイラル管41を冷却して処理チャンバー31に供給したIPAを当該スパイラル管41内に凝縮して回収するための冷却機構をなす冷却ジャケット43a、43bと、スパイラル管41の冷却を行う位置と、冷却を行う位置から退避した位置との間でこれら冷却ジャケット43a、43bを移動させる移動機構と、を備えている。
【0043】
スパイラル管41はステンレス製の配管部材を長手方向に螺旋状に伸ばすことにより円筒型に形成され、前記長手方向が垂直方向を向くように支持台46上に配置されている。スパイラル管41は、ハロゲンランプ42から供給される輻射熱を吸収しやすくするために例えば黒色の輻射熱吸収塗料で塗装され、図5の縦断側面図に示すように、長手方向に隣り合う配管同士が互いに接触するように螺旋状に巻かれている。このように隙間なく螺旋を形成することにより、ハロゲンランプ42から供給される輻射熱がスパイラル管41同士の隙間から外方へと漏れにくくなる。図5に示した414はスパイラル管41を支持台46上に固定する固定部材である。
【0044】
図1、図3に示すようにスパイラル管41を含む準備回収部4は、超臨界処理部30の近傍位置に配置されており、スパイラル管41を構成する配管部材は、その上端部が超臨界処理部3側へ向けて伸びだして処理チャンバー31に連結され、原料供給路及び原料回収路とが共通化された連結ライン411を構成している。連結ライン411には、耐圧性を備え、供給用バルブ及び回収用バルブとが共通化された開閉バルブ412が介設されており、スパイラル管41と処理チャンバー31との間を連通させ/遮断することができるようになっている。図8に示すように連結ライン411からは、開閉バルブ412の上流側の位置にて排出ライン415が分岐しており、排出ライン415は外部の除害設備に向けてスパイラル管41内のIPAを排出することができるようになっている。図8中、416はスパイラル管41を除害設備側と連通させ/遮断するための、耐圧性を備えた開閉弁である。
【0045】
また図8に示すようにスパイラル管41の下端部からは配管部材が伸びだしてIPAの受け入れライン413を形成しており、当該受け入れライン413は耐圧性を備えた開閉バルブ417及び送液ポンプ74を介して液体のIPAを貯留したIPA供給部73に接続されている。送液ポンプ74の出口には、流量調節弁及び流量計を備えた不図示の流量調節部が設けられており、IPA供給部73からスパイラル管41へのIPAの供給量を調節することができるようになっている。
【0046】
図5に示すようにハロゲンランプ42は、スパイラル管41が形成する円筒の内側に配置された直棒状の加熱ランプであり、スパイラル管41の内壁面から離間させて、前記円筒の中心軸に沿って配置されている。ハロゲンランプ42の下端部は、支持台46の天板面を貫通して電源部421に接続されており、当該電源部421から供給される電力によりハロゲンランプ42を発熱させ、主にその輻射熱を利用してスパイラル管41が加熱される。この観点においてハロゲンランプ42は、スパイラル管41用の加熱機構に相当している。また図3、図7に示した例では、準備回収部4が剥き出しの状態で超臨界処理部30の横に配置されているが、準備回収部4と超臨界処理部30との間にハロゲンランプ42からの輻射熱を遮蔽する遮蔽板を設けて、ウエハホルダー34に受け渡された処理前のウエハWが乾燥してしまわないようにしてもよい。
【0047】
スパイラル管41外壁面には、熱電対などからなる不図示の温度検出部が設けられており、スパイラル管41の温度を検出することができる。そして温度検出の結果は後述する制御部8に出力され、ハロゲンランプ42への電力を供給する電源部421に供給電力の調整量としてフィードバックされて各スパイラル管41の加熱温度が調整される。さらに図8に示すように連結ライン411には圧力計418が設けられており、スパイラル管41を加熱することにより、スパイラル管41内のIPAが超臨界状態となったことを検知することができる。
【0048】
図3、図5に示すように冷却ジャケット43a、43bは、スパイラル管41によって形成される円筒を外周面側から覆うことが可能な円筒を上下方向に縦断して得られる半円筒形状の部材である。図5に示すように各冷却ジャケット43a、43bの内部は空洞となっていると共に、この空洞には冷却ジャケット43a、43bの外周面に接続された冷却水導入ライン431から冷却水排出ライン432へ向けて流れる冷媒である冷却水を通流させるための冷媒流路435が形成されている。
【0049】
これら冷却ジャケット43a、43bの内周面は熱を吸収する吸熱面を構成しており、当該吸熱面をスパイラル管41にて構成される円筒の外周面に当接させることにより、スパイラル管41の冷却が行われる。図8に示すように各冷却ジャケット43a、43bに冷却水を供給する冷却水導入ライン431は、上流側で合流し、送液ポンプ72を介して冷却水を貯留した冷却水供給部71に接続されている。また、各冷却ジャケット43a、43bにて使用した冷却水が排出される冷却水排出ライン432についても冷却水供給部71に接続されており、冷却水を再使用することができるようになっている。
【0050】
冷却水供給部71は不図示のクーリングタワーや冷却用の熱交換器と接続されており、スパイラル管41を冷却する際に回収された熱を抜熱することにより、冷却水供給部71内の冷却水は例えば20℃に維持されている。
また図5に示した例では冷却ジャケット43a、43bに各々1つの冷媒流路435を形成した例を示しているが、例えば各冷却ジャケット43a、43bの内部を複数の空洞部に分割して、各々の空洞部に形成された冷媒流路435に冷却水を通流させることにより冷却能力を向上させてもよい。また冷媒流路435内を通流させる冷媒は冷却水に限定されず、例えばガルデン(登録商標)などを使用してもよい。
【0051】
ここで図5に示した縦断側面図は、図示の便宜上、スパイラル管41と冷却ジャケット43a、43bとで縦断面の向きが別方向を向いている。また、冷却ジャケット43a、43bにおける冷却水導入ライン431及び冷却水排出ライン432の配置位置も、図3及び図7に示した実際の配置位置とは異なる位置にアレンジして示してある。
【0052】
かかる構成を備えた冷却ジャケット43a、43bの外周面にはシャフト44が連結されており、各シャフト44の基端部には当該シャフト44を軸方向に沿って移動させるための駆動部45が設けられている。そして各シャフト44を伸張させることにより図6(a)、図7に示すように吸熱面がスパイラル管41と接触する冷却位置まで冷却ジャケット43a、43bを移動させてスパイラル管41の冷却が実行される。またシャフト44を退縮させることにより図6(b)、図3に示すように吸熱面をスパイラル管41から離間した退避位置まで冷却ジャケット43a、43bを移動させてスパイラル管41の冷却を停止することができる。ここで図3に示した冷却ジャケット43aに形成されている433及び434は、冷却ジャケット43aを冷却位置まで移動させたとき、スパイラル管41から伸びだしている連結ライン411及び受け入れライン413と当該冷却ジャケット43aとの間での干渉を避けるための切り欠き部である。
【0053】
本実施の形態のスパイラル管41は、原料のIPAを液体状態で収容し、当該スパイラル管41を加熱することにより前記液体状態のIPAをスパイラル管41内で超臨界状態とする本実施の形態の第1の原料収容部に相当する。また、当該スパイラル管41は、冷却ジャケット43a、43bによりIPAの凝縮温度以下に冷却されることにより、処理チャンバー31に供給されたIPAを回収するための、本実施の形態の第2の原料収容部にも相当している。従って、本例では第1の原料収容部及び第2の原料収容部が共通化されているといえる。そして当該スパイラル管41を冷却する冷却ジャケット43a、43bは、第1の原料収容部を冷却する第1の冷却機構及び第2の原料収容部を冷却する第2の冷却機構が共通化されているものであることになる。
【0054】
以上に説明した構成を備えた超臨界処理装置3を含む洗浄処理システム1は、図1、図8に示すように制御部8と接続されている。制御部8は例えば図示しないCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなり、記憶部にはこれら洗浄処理システム1や洗浄装置2、超臨界処理装置3の作用、即ちFOUP100からウエハWを取り出して洗浄装置2にて洗浄処理を行い、次いで超臨界処理装置3にてウエハWの超臨界処理を行ってからFOUP100内にウエハWを搬入するまでの動作に係わる制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0055】
特に超臨界処理装置3について制御部8は、図8に示すように各ライン411、415、413に設けられた開閉バルブ412、416、417の開閉タイミングや電源部391からヒーター39、電源部421からハロゲンランプ42への電力の給断タイミング並びに供給量、駆動部45による冷却ジャケット43a、43bの移動タイミング、各送液ポンプ72、74による冷却水やIPAの供給タイミングや供給量を制御する役割を果たしている。また制御部8は連結ライン411に設けられた圧力計418やスパイラル管41に設けられた不図示の温度検出部からスパイラル管41内の圧力や温度を検出した結果を取得し、これらの結果に基づいてスパイラル管41の加熱や冷却を実行する。
【0056】
以上に説明した構成を備えた超臨界処理装置3の作用について説明する。既述のように洗浄装置2における洗浄処理を終え、乾燥防止用のIPAを液盛りしたウエハWが第2の搬送機構141に受け渡されると、第2の搬送機構141は、例えば予め設定された処理スケジュールに基づいて、ウエハWを受け入れ可能な超臨界処理装置3の配置されている筐体内に進入し、搬送アーム5にウエハWを受け渡す。
【0057】
このときウエハWの搬入が行われる前の超臨界処理部30は、図9(a)に示すように、処理チャンバー31の電源部391をオンの状態にしてヒーター39によりチャンバー31本体を例えば270℃に加熱した状態となっている。一方で処理チャンバー31の上下に設けられた上プレート32、下プレート33は冷却管36によって冷却された状態となっており、処理チャンバー31の周囲の温度が上昇しすぎないようにして、ウエハホルダー34上のウエハW表面に供給されたIPAの蒸発を抑えている。
【0058】
また準備回収部4では、例えば超臨界処理装置3にて最初に処理を開始する前のタイミングにおいては、ハロゲンランプ42の電源部421はオフとなっており、また冷却ジャケット43a、冷却ジャケット43bを冷却位置まで移動させてスパイラル管41を冷却した状態としておく。なお本例では超臨界処理装置3の稼動中、送液ポンプ72は作動状態となっており冷却ジャケット43a、43bには常時冷却水が供給されている。
【0059】
そして連結ライン411の開閉バルブ412を「閉」(図9(a)中に「S」と記してある。以下同。)、排出ライン415の開閉バルブ416を「開」(図9(a)中に「O」と記してある。以下同。)、冷却水導入ライン431の開閉バルブ417を「開」としてから、送液ポンプ74作動させると共に既述の流量調節部にて供給量をしながらスパイラル管41へむけてIPAを供給する。スパイラル管41に供給されるIPAの量は、例えば既述の流量調節部にて検出される単位時間当たりの供給量及び供給時間から求めることができる。
【0060】
こうして、予め設定された時間だけIPAの供給を行ったら送液ポンプ74を停止し、排出ライン415及び冷却水導入ライン431の開閉バルブ416、417を「閉」の状態とする。この結果、スパイラル管41の内部は、図11(a)に示すように供給量に対応する高さ位置まで液体のIPAが満たされた状態となっている。一方、スパイラル管41の上部側の空間、及び連結ライン411、排出ライン415の開閉バルブ412、416よりもスパイラル管41寄りの空間は、液体のIPAにて満たされていない空洞の状態となっている。
【0061】
こうしてスパイラル管41内に所定量の液体IPAが仕込まれたら、図9(b)に示すように冷却ジャケット43a、43bを退避位置まで移動させ、電源部421をオンにしてハロゲンランプ42に電力を供給し、ハロゲンランプ42を発熱させてスパイラル管41を例えば100℃〜300℃の範囲の270℃に加熱する。このときスパイラル管41の前後に設けられた開閉バルブ412、416、417は全て閉止されており、スパイラル管41の内部は密閉雰囲気となっているので、スパイラル管41を加熱するとIPAが蒸発して気体となり、IPAの体積の膨張に伴ってスパイラル管41内の圧力が上昇する。
【0062】
さらに密閉雰囲気内での加熱を継続し、IPAを昇温、昇圧すると、IPAの温度及び圧力が臨界点に到達し、図11(b)に示すようにスパイラル管41の内部が超臨界状態のIPAで満たされた状態となる。こうして超臨界処理を実行するためのIPAの準備が整ったら、準備回収部4はスパイラル管41内の温度及び圧力が予め設定された値に維持されるようにハロゲンランプ42の出力を調節しながら待機する。
【0063】
これらの動作と並行して超臨界処理部30側では、搬送アーム5が受け渡し位置にて待機しているウエハホルダー34に当該ウエハWを受け渡した後、ウエハホルダー34の上方位置から退避する。そして図3に示すようにIPAノズル55からウエハWの表面にIPAを供給して、再度IPAの液盛りを行う。液盛りされたIPAはウエハWの乾燥を防止するための膜に相当している。
【0064】
IPAの液盛りを終えたら、クーリングプレート41を下方位置まで下降させ、アーム部材342をレール371上でスライドさせてウエハホルダー34を処理位置まで移動させる。そしてロック部材35を回転させて突起部343を係止し、蓋部材341によって処理チャンバー31の開口部311が塞がれたら、ロックプレート38を下方位置からロック位置まで上昇させて蓋部材341を手前側から押さえる(図7)。
【0065】
この結果、図9(c)に示すように超臨界処理部30側では処理チャンバー31の処理空間310内にウエハWが搬入され、また準備回収部4側ではスパイラル管41内に超臨界状態のIPAが準備されて、超臨界乾燥を実行する準備が整う。そこで蓋部材341のロックを終えたら、ウエハW表面に液盛りされたIPAが乾燥してしまう前に連結ライン411の開閉バルブ412を開放してスパイラル管41から処理空間310に向けて超臨界IPAを供給する。
【0066】
開閉バルブ412が開くと、図10(a)に示すようにスパイラル管41内の超臨界IPAが膨張して連結ライン411内を流れ、処理空間310内に流入していく。このとき、(1)スパイラル管21内に準備する超臨界IPAの温度及び圧力を臨界温度、臨界圧力よりも十分に高い状態としておくこと、(2)処理チャンバー31内の処理空間310の容積及び開閉バルブ412よりも処理チャンバー31側の連結ライン411の容積をできるだけ小さくして超臨界IPAの膨張率を抑えること、さらに(3)ヒーター39によって処理空間310内を予め加熱しておき、また開閉バルブ412を開放する前後で、スパイラル管41内の温度及び圧力がほぼ同じ値に維持されるように、ハロゲンランプ42の出力を増大させて等温等圧膨張に近い状態で超臨界IPAを膨張させること、などにより超臨界状態を保ったままIPAを処理空間310内に供給することができる。
【0067】
そして処理空間310内に供給された超臨界IPAがウエハWに液盛りされたIPAと接触すると、液盛りされたIPAは超臨界IPAから熱を受け取って蒸発し超臨界状態となる。この結果、ウエハWの表面は液体のIPAから超臨界IPAに置換されていくことになるが、平衡状態において液体IPAと超臨界IPAとの間には界面が形成されないので、パターン倒れを引き起こすことなくウエハW表面の流体を超臨界IPAに置換することができる。
【0068】
処理空間310内に超臨界IPAを供給してから予め設定した時間が経過し、ウエハWの表面が超臨界IPAにて置換された状態となったら、図10(b)に示すように電源部421をオフの状態にしてハロゲンランプ42によるスパイラル管41の加熱を停止する。そして冷却ジャケット43a、43bを冷却位置まで移動させてスパイラル管41の内部の温度がIPAの凝縮温度以下となるように冷却する。
【0069】
スパイラル管41を冷却して超臨界IPAを凝縮させると、IPAの体積が減少してスパイラル管41内の圧力が低下する一方、ヒーター39による処理チャンバー31の加熱は継続しているので、処理空間310内のIPAはスパイラル管41へ向けて流れていく。この結果、流入したIPAが次々と凝縮し、液体IPAとなってスパイラル管41内に溜まってゆくことになる。そして例えば図11(a)と同様の高さ位置に液面が到達したら、連結ライン411の開閉バルブ412を閉として処理空間310内のIPAの回収を完了するようにしてもよい。また処理チャンバー31とスパイラル管41との間の温度、圧力バランス上、回収可能な全量をスパイラル管41内に回収してから開閉バルブ412を閉じてもよい。このときスパイラル管41内のIPAの液面が、予め定めた高さ位置を超えている場合には、排出ライン415側の開閉弁416を開いてIPAの一部を除害設備側へ排出することにより、液面レベルを調整してもよい。これらの例においてIPAの液面の高さ位置は、例えば当該液面の到達する位置の配管の壁面に耐圧性を備えた覗き窓を設け、赤外線式の液面計などによりIPAの液面を検出することなどにより検出することができる。
【0070】
このようにしてスパイラル管41にIPAが液体の状態で回収されると、処理チャンバー31内の圧力は次第に低下していく。一方、処理空間310内の温度は常圧におけるIPAの沸点(82.4℃)よりも高い温度に保たれているので、処理空間310内のIPAは超臨界の状態から気体の状態に変化することになる。このとき超臨界状態と気体との間には界面が形成されないので表面に形成されたパターンに表面張力を作用させることなく、ウエハWを乾燥することができる。
【0071】
以上のプロセスにより、ウエハWの超臨界処理を終えたら、処理空間310に残存している気体のIPAを排出するため、不図示のパージガス供給ラインからNガスを供給して排気ラインへ向けてパージを行う。そして予め定めた時間だけNガスの供給を行いパージが完了したら、ロックプレート38を下方位置まで降下させ、ロック部材35による突起部343の係止状態を開放する。そしてウエハホルダー34を受け渡し位置まで移動させ、超臨界処理を終えたウエハWを搬送アーム5の搬出用の搬出用ピック53で吸着保持し、当該ウエハWをウエハ搬送路142側の第2の搬送機構141に受け渡す。
しかる後、ウエハWは搬出棚43を介して第1の搬送機構121に受け渡され、搬入時とは逆の経路を通ってFOUP100内に格納され、ウエハWに対する一連の動作が完了する。
【0072】
一方、超臨界処理装置3側においては図9(b)に示すように冷却ジャケット43a、43bを退避位置まで移動させ、ハロゲンランプ42を発熱させて、スパイラル管41に回収したIPAを超臨界の状態として処理チャンバー31に次のウエハWが搬入されてくるタイミングを待つ。
【0073】
本実施の形態に係る超臨界処理装置3によれば以下の効果がある。ウエハWの乾燥を行うために処理チャンバー31に供給された超臨界IPAを液体の状態で回収する。このため、回収されたIPAを超臨界IPAとして再利用することが可能となり、ウエハWに液盛りされて処理空間310内に持ち込まれるIPAや処理空間310内からパージされるIPAを除き、毎回のウエハW処理にて消費されるIPAの量をゼロに近い少量に抑えることができる。
【0074】
ここで超臨界処理部30に接続される準備回収部4は1つに限定されず、例えば図12に示すように共通の超臨界処理部30に対して2つの準備回収部4a、4bを接続してもよい。このように複数の準備回収部4a、4bを接続することにより、一方側の準備回収部4aから供給された超臨界IPAを他方側の準備回収部4bにて回収し、この他方側の準備回収部4bで回収されたIPAを超臨界状態として処理空間310に供給するといったように、準備回収部4a、4bを交互に使用することができる。
【0075】
一方の準備回収部4a、4bにて超臨界IPAを準備し、処理空間310にてウエハWの超臨界処理を行う動作と並行して、他方側の準備回収部4b、4aのスパイラル管41を冷却しておくことにより、IPAの回収に要する時間を短縮して単位時間当たりのウエハWの処理枚数を増やすことができる。ここで超臨界IPAの供給と他方側のスパイラル管41の冷却とを並行して行う場合には、冷却中のスパイラル管41に接続されている連結ライン411の開閉バルブ412は閉の状態としておく。
【0076】
また、図3、図12に示した各実施の形態では、既述のようにスパイラル管41は超臨界状態のIPAを準備する第1の原料収容部としての役割と、スパイラル管41をIPAの凝縮温度以下に冷却してIPAを液体の状態で回収する第2の原料収容部としての役割とを兼ね備えている。これに対して図13に示した超臨界処理装置3aは、第1の原料収容部である準備容器471と第2の原料収容部である回収容器472とが別体となっており、これら準備容器471と回収容器472とが連結ライン478にて接続されている。図13に示した超臨界処理装置3aでは、図3〜図8に示した第1の実施の形態に係る超臨界処理装置3と同様の構成要素には、これらの図に示したものと同じ符号を付してある。
【0077】
本例では準備容器471や回収容器472は円筒形状の容器として構成されており、各容器471、472には各々第1、第2の冷却機構をなし、冷媒を通流させて各容器471、472を冷却するための冷却管473、475が設けられている。また準備容器471には、誘導加熱により準備容器471を加熱して、内部のIPAを超臨界状態にするための準備容器471用の加熱機構である加熱コイル474が設けられている。図中、477は処理空間310からのIPAの回収ライン、478は準備容器471と回収容器472とを連結する連結ライン、477、479はこれらのライン476、478の開閉バルブである。
【0078】
回収容器472にて回収された液体IPAを準備容器471へ移送する手法としては、連結ライン478に送液用のポンプを設けてもよい。また例えば図13に示すように回収容器472を準備容器471よりも高い位置に配置し、液体IPAのヘッドを利用して移送を行ってもよい。
【0079】
また図3、図4に示した例では、ウエハホルダー34はウエハWが載置される薄板状の部材として構成されているが、当該ウエハホルダー34を皿形状に構成してこの皿内にIPAの液溜まりを形成し、当該液溜まり中にウエハWを浸漬する構成としてもよい。既述のように処理空間310は100℃〜300℃程度に予熱されているので、超臨界IPAによる処理を開始する前にIPAが乾燥してしまう現象の発生を抑えることができる。
【0080】
このようにIPA中にウエハWを浸漬した状態で処理チャンバー31内に搬入する場合には、ウエハWは図3に示したように横置きの状態でウエハホルダー34に保持する場合に限られない。例えば、ウエハWを縦置きの状態で液体IPA中に浸漬することが可能なように、ウエハホルダー34を縦方向に細長いカップ形状の容器として構成してもよい。この場合には処理容器31の形状もウエハホルダー34の形状に合わせて縦長に構成される。さらにこのときウエハホルダー34にて複数枚のウエハWを保持するようにしてもよい。
【0081】
そしてウエハWの乾燥を行うために用いる高温高圧流体の原料は、IPAに限定されるものではなく、例えばHFE(Hydro Fluoro Ether)を用いてもよい。さらに高温高圧流体状態は、超臨界状態の場合に限られず、原料の液体を亜臨界状態(例えばIPAの場合は、温度100℃〜300℃の範囲、圧力1MPa〜3MPaの範囲内)として、この亜臨界流体を用いてウエハWの乾燥を行う場合も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0082】
さらには、本発明にて実施される処理はウエハWの表面の液体を除去する乾燥処理だけに限定されるものではない。例えばレジスト膜を用いてパターニングを行った後のウエハWを超臨界状態のIPAと接触させて、ウエハWからレジスト膜を除去する処理と当該ウエハWを乾燥させる処理とを一括して行う洗浄、乾燥処理にも本発明は適用することができる。
【符号の説明】
【0083】
W ウエハ
1 洗浄処理システム
2 洗浄装置
3、3a 超臨界処理装置
30 超臨界処理部
31 処理チャンバー
310 処理空間
39 ヒーター
4、4a、4b
準備回収部
41 スパイラル管
411 連結ライン
412 開閉バルブ
42 ハロゲンランプ
421 電源部
43a、43b
冷却ジャケット
8 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温高圧流体により被処理基板の乾燥を行うための処理容器と、
この処理容器内の原料を高温高圧流体状態に維持するために当該処理容器内を加熱する処理容器用の加熱機構と、
液体状態の原料を収容し、供給用バルブが設けられた原料供給路を介して前記処理容器に接続された第1の原料収容部と、
前記液体状態の原料を高温高圧流体状態とするために前記第1の原料収容部を加熱する原料収容部用の加熱機構及び前記原料を液体状態で収容するために前記第1の原料収容部を冷却するための第1の冷却機構と、
回収用バルブが設けられた原料回収路を介して前記処理容器に接続され、当該処理容器から原料を回収するための第2の原料収容部と、
前記処理容器内の高温高圧流体を回収するために第2の原料収容部を原料の凝縮温度以下に冷却するための第2の冷却機構と、
前記第1の原料収容部内の液体状態の原料が高温高圧流体状態になった後、前記供給用バルブを開き、前記処理容器内に高温高圧流体が供給された後、第2の原料収容部を原料の凝縮温度以下に冷却すると共に前記回収用バルブを開くように制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
高温高圧流体により被処理基板の乾燥を行うための処理容器と、
この処理容器内の原料を高温高圧流体状態に維持するために当該処理容器内を加熱する処理容器用の加熱機構と、
前記処理容器に接続され、この処理容器に供給される原料、及びこの処理容器から回収された原料を液体の状態で収容するための原料収容部と、
前記液体状態の原料を高温高圧流体状態とするために前記原料収容部を加熱する原料収容部用の加熱機構と、
前記処理容器内の高温高圧流体を原料収容部内に回収し、液体状態の原料として収容するために、当該原料収容部を原料の凝縮温度以下に冷却するための冷却機構と、
前記原料収容部内の液体状態の原料が高温高圧流体状態になった後、この原料収容部内の高温高圧流体を前記処理容器へと供給し、この処理容器に高温高圧流体が供給された後、前記原料収容部を原料の凝縮温度以下に冷却して、前記処理容器内の高温高圧流体を前記原料収容部へ回収するように制御する制御部と、を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
前記第1の原料収容部と第2の原料収容部、原料供給路と原料回収路、供給用バルブと回収用バルブ、並びに第1の冷却機構と第2の冷却機構が共通化されていることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記第1の原料収容部と第2の原料収容部が接続されていることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
被処理基板の表面には、乾燥防止のための液体からなる膜が形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記原料は、前記乾燥防止のための液体と同じ材料が用いられていることを特徴とする請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記原料はイソプロピルアルコールであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記高温高圧流体は超臨界流体であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記原料収容部はスパイラル管であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項10】
液体状態の原料を収容した第1の原料収容部を加熱して、当該液体状態の原料を高温高圧流体状態にする工程と、
前記第1の原料収容部を処理容器に接続して、この処理容器内に高温高圧流体を供給する工程と、
前記処理容器内の原料を高温高圧流体状態に維持するために当該処理容器内を加熱する工程と、
前記第1の原料収容部から供給された高温高圧流体により、前記処理容器内の被処理基板の処理を行う工程と、
前記処理容器に接続された第2の原料収容部を前記原料の凝縮温度以下に冷却して前記処理容器から原料を回収する工程と、
前記原料を液体状態で収容するために、前記第1の原料収容部を冷却する工程と、を含むことを特徴とする基板処理方法。
【請求項11】
液体状態の原料を収容した原料収容部を加熱して、当該液体状態の原料を高温高圧流体状態にする工程と、
前記原料収容部を処理容器に接続して、この処理容器内に高温高圧流体を供給する工程と、
前記処理容器内の原料を高温高圧流体状態に維持するために当該処理容器内を加熱する工程と、
前記原料収容部から供給された高温高圧流体により、前記処理容器内の被処理基板の処理を行う工程と、
前記原料収容部を前記原料の凝縮温度以下に冷却して前記処理容器から原料を回収し、当該原料を液体状態で収容する工程と、を含むことを特徴とする基板処理方法。
【請求項12】
前記第2の原料収容部に回収された原料を第1の原料収容部に送り、前記処理容器に供給される高温高圧流体の原料として再利用する工程を含むことを特徴とする請求項10に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記第1の原料収容部及び第2の原料収容部は共通化されていることを特徴とする請求項10または12に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記高温高圧流体は超臨界流体であることを特徴とする請求項10ないし13のいずれか一つに記載の基板処理方法。
【請求項15】
前記被処理基板の処理は、被処理基板を乾燥する処理であることを特徴とする請求項10ないし14のいずれか一つに記載の基板処理方法。
【請求項16】
高温高圧流体により被処理基板の乾燥を行う基板処理装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体であって、
前記プログラムは請求項10ないし15のいずれか一つに記載された基板処理方法を実行するためにステップが組まれていることを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−23102(P2012−23102A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158013(P2010−158013)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】