説明

基板処理装置

【課題】気化ガスの温度低下によるパーティクルの発生を防止又は抑制する。
【解決手段】基板処理装置はウエハ200を収容する処理室201と、ウエハ200を加熱するヒータ207と、処理室201内に処理ガスを供給するガス供給源250と、処理室201内の雰囲気を排出するガス排気管231等と、コントローラ280と、を有し、ガス供給源250は、液体または固体原料を気化させた気化ガスを供給するガス供給管232aと、前記気化ガスとは異なるガスを供給するガス供給管232bとを少なくとも備え、コントローラ280は、ガス供給管232aから気化ガスを処理室201内に供給している際、ガス供給管232bから加熱された不活性ガスを処理室201内に供給するようにガス供給源250を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板処理装置に関し、特に複数のガス供給系を備える基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の基板処理装置では、液体または固体原料を気化させた気化ガスを処理室に供給している最中に当該気化ガスがそれとは異なる他のガスの供給系(配管等)に回り込むのを防止する等の目的で、他のガスの供給系に対し常温の不活性ガスを流通させ、それをそのまま処理室に供給するような構成を採用している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このため、温度の低い不活性ガスが処理室内に流入して気化ガス(特に蒸気圧の低い気化ガス)と合流し、気化ガスの液化が発生し、パーティクルが発生する原因となっている。
【0004】
また、不活性ガスを処理室に供給するための供給管はテープヒータやジャケットヒータ等により加熱される構成を有しているに過ぎなかったため、いくら供給管を加熱しても、温度が低い不活性ガスが流れることで当該供給管の温度が部分的に低下することがあり、その温度の低下が原因で、処理室内から気化ガスが逆流して当該供給管内で液化し、パーティクルが発生する場合もある。
【0005】
本発明の主な目的は、気化ガスの温度低下によるパーティクルの発生を防止又は抑制することができる基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明に係る基板処理装置は、
基板を収容する処理室と、
前記基板を加熱する加熱手段と、
前記処理室内に処理ガスを供給するガス供給手段と、
前記処理室内の雰囲気を排出する排出手段と、
制御部と、
を有し、
前記ガス供給手段は、液体または固体原料を気化させた気化ガスを供給する第1のラインと、前記気化ガスとは異なるガスを供給する第2のラインとを少なくとも備え、
前記制御部は、前記第1のラインから気化ガスを前記処理室内に供給している際、前記第2のラインから加熱された不活性ガスを前記処理室内に供給するように前記ガス供給手段を制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、加熱された不活性ガスが処理室内に供給されるから、処理室内の気化ガスがその不活性ガスと混合されても液化することを防止又は抑制することができ、また、第2のラインからは加熱された不活性ガスが供給されるから、その第2のラインで部分的に温度が低下することが低減され、気化ガスが第2のラインに逆流した場合に液化することを防止又は抑制することができる。以上から、気化ガスの温度低下によるパーティクルの発生を防止又は抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための好ましい形態について説明する。本発明に係る基板処理装置は、一例として、半導体装置(IC(Integrated Circuit))の製造方法における処理工程を実施する半導体製造装置として構成されている。下記の説明では、基板処理装置の一例として、ウエハに対しALD(Atomic Layer Deposition)法による成膜処理などを行なう縦型の装置を使用した場合について述べる。
【0009】
図1は、本発明の好ましい実施形態で使用される基板処理装置の概略構成を示す斜透視図である。
図1に示されているように、基板処理装置101では、基板の一例となるウエハ200を収納したカセット110が使用される。基板処理装置101は筐体111を備えており、筐体111内部にはカセットステージ114が設置されている。カセット110はカセットステージ114上に工場内搬送装置(図示せず)によって搬入され、かつまた、カセットステージ114上から搬出されるようになっている。
【0010】
カセットステージ114は、工場内搬送装置によって、カセット110内のウエハ200が垂直姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように載置される。カセットステージ114は、カセット110を筐体後方に右回り縦方向90°回転し、カセット110内のウエハ200が水平姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が筐体後方を向くように動作可能となるよう構成されている。
【0011】
筐体111内の前後方向の略中央部には、カセット棚105が設置されており、カセット棚105は複数段複数列にて複数個のカセット110を保管するように構成されている。カセット棚105にはウエハ移載機構125の搬送対象となるカセット110が収納される移載棚123が設けられている。
【0012】
また、カセットステージ114の上方には予備カセット棚107が設けられ、予備的にカセット110を保管するように構成されている。
【0013】
カセットステージ114とカセット棚105との間には、カセット搬送装置118が設置されている。カセット搬送装置118は、カセット110を保持したまま昇降可能なカセットエレベータ118aと搬送機構としてのカセット搬送機構118bとで構成されており、カセットエレベータ118aとカセット搬送機構118bとの連続動作により、カセットステージ114、カセット棚105、予備カセット棚107との間で、カセット110を搬送するように構成されている。
【0014】
カセット棚105の後方には、ウエハ移載機構125が設置されており、ウエハ移載機構125は、ウエハ200を水平方向に回転ないし直動可能なウエハ移載装置125aおよびウエハ移載装置125aを昇降させるためのウエハ移載装置エレベータ125bとで構成されている。ウエハ移載装置エレベータ125bは、耐圧筐体111の右側端部に設置されている。これら、ウエハ移載装置エレベータ125bおよびウエハ移載装置125aの連続動作により、ウエハ移載装置125aのツイーザ125cをウエハ200の載置部として、ボート217に対してウエハ200を装填(チャージング)および脱装(ディスチャージング)するように構成されている。
【0015】
筐体111の後部上方には、処理炉202が設けられている。処理炉202の下端部は、炉口シャッタ147により開閉されるように構成されている。
【0016】
処理炉202の下方にはボート217を処理炉202に昇降させる昇降機構としてのボートエレベータ115が設けられ、ボートエレベータ115の昇降台に連結された連結具としてのアーム128には蓋体としてのシールキャップ219が水平に据え付けられており、シールキャップ219はボート217を垂直に支持し、処理炉202の下端部を閉塞可能なように構成されている。
【0017】
ボート217は複数本の保持部材を備えており、複数枚(例えば、50枚〜150枚程度)のウエハ200をその中心を揃えて垂直方向に整列させた状態で、それぞれ水平に保持するように構成されている。
【0018】
カセット棚105の上方には、清浄化した雰囲気であるクリーンエアを供給するよう供給ファン及び防塵フィルタで構成されたクリーンユニット134aが設けられておりクリーンエアを筐体111の内部に流通させるように構成されている。
【0019】
ウエハ移載装置エレベータ125bおよびボートエレベータ115側と反対側である筐体111の左側端部には、クリーンエアを供給するよう供給フアンおよび防塵フィルタで構成されたクリーンユニット134bが設置されており、クリーンユニット134bから吹き出されたクリーンエアは、ウエハ移載装置125a、ボート217を流通した後に、図示しない排気装置に吸い込まれて、筐体111の外部に排気されるようになっている。
【0020】
次に、基板処理装置101の動作について説明する。
工場内搬送装置(図示せず)によってカセット110がカセットステージ114上に搬入されると、カセット110は、ウエハ200がカセットステージ114の上で垂直姿勢を保持し、カセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように載置される。その後、カセット110は、カセットステージ114によって、カセット110内のウエハ200が水平姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が筐体後方を向けるように、筐体後方に右周り縦方向90°回転させられる。
【0021】
次に、カセット110は、カセット棚105ないし予備カセット棚107の指定された棚位置へカセット搬送装置118によって自動的に搬送されて受け渡され、一時的に保管された後、カセット棚105ないし予備カセット棚107からカセット搬送装置118によって移載棚123に移載されるか、もしくは直接移載棚123に搬送される。
【0022】
カセット110が移載棚123に移載されると、ウエハ200はカセット110からウエハ移載装置125aのツイーザ125cによってウエハ出し入れ口を通じてピックアップされ、移載室(図示せず)の後方にあるボート217に装填(チャージング)される。ボート217にウエハ200を受け渡したウエハ移載装置125aはカセット110に戻り、次のウエハ200をボート217に装填する。
【0023】
予め指定された枚数のウエハ200がボート217に装填されると、炉口シャッタ147によって閉じられていた処理炉202の下端部が、炉口シャッタ147によって、開放される。続いて、ウエハ200群を保持したボート217はシールキャップ219がボートエレベータ115によって上昇されることにより、処理炉202内へ搬入(ローディング)されて行く。
【0024】
ローディング後は、処理炉202にてウエハ200に任意の処理(後述参照)が実施される。処理後は、上述の逆の手順で、ウエハ200およびカセット110は筐体111の外部へ払出される。
【0025】
図2は、本発明の好ましい実施形態で使用される処理炉とそれに付属する部材との概略構成図である。図3は図2のA−A線断面図である。図4は、本発明の好ましい実施形態で使用される処理炉への処理ガスの供給に際して、その処理ガスの供給源となるガス供給源とそれに関連する部材との概略構成を示す図面である。
【0026】
図2及び図3に示されているように、ヒータ207の内側に、基板であるウエハ200を処理する反応管203が設けられている。反応管203の下端には、例えばステンレス等により構成されたマニホールド209が気密部材であるOリング220を介して設けられている。マニホールド209の下端開口は蓋体であるシールキャップ219によりOリング220を介して気密に閉塞されている。少なくとも、反応管203、マニホールド209及びシールキャップ219により処理室201が形成されている。
【0027】
シールキャップ219にはボート支持台218を介して基板保持部材であるボート217が立設され、ボート支持台218はボート217を保持する保持体となっている。そして、ボート217は処理室201に挿入される。ボート217にはバッチ処理される複数のウエハ200が水平姿勢で管軸方向に多段に積載される。ヒータ207は処理室201に挿入されたウエハ200を所定の温度に加熱する。
【0028】
処理室201へは複数種類、ここでは2種類の処理ガスを供給する2本のガス供給管(ガス供給管232a,ガス供給管232b)が設けられている。
【0029】
ガス供給管232aの一方側には、処理室201を構成している反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203の下部より上部の内壁にウエハ200の積載方向に沿って、ノズル233aが設けられ、ノズル233aの側面にはガスを供給する供給孔であるガス供給孔248aが設けられている。このガス供給孔248aは、下部から上部にわたってそれぞれ同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0030】
ガス供給管232bの一方側にも、処理室201を構成している反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203の下部より上部の内壁にウエハ200の積載方向に沿って、ノズル233bが設けられ、ノズル233bの側面にはガスを供給する供給孔であるガス供給孔248bが設けられている。このガス供給孔248bは、下部から上部にわたってそれぞれ同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0031】
ガス供給管232aとガス供給管232bとの他方側には、処理室201の内部に供給しようとする処理ガスの供給源となるガス供給源250が設けられている。
【0032】
図4に示すように、ガス供給源250において、ガス供給管232aには、上流方向から順に流量制御装置であるマスフローメータ251(液体用のマスフローメータ)、気化器252(コントロールバルブ付)、及び開閉弁であるバルブ253が設けられている。
【0033】
ガス供給管232bには、上流方向から順に、開閉弁であるバルブ254、流量制御装置であるマスフローコントローラ255、及び開閉弁であるバルブ256が設けられている。ガス供給管232bはバルブ254より上流の位置で分岐しており、その分岐部から当該ガス供給管232b中のガスを排気することができるようになっている。
【0034】
ガス供給源250では、ガス供給管232aとガス供給管232bとに対し不活性ガスを供給する不活性ガス供給管260が設けられている。不活性ガス供給管260には開閉弁であるバルブ261が設けられており、不活性ガス供給管260はバルブ261より下流側で3本のガス供給管(パージガス供給管310,パージガス供給管320,キャリアガス供給管330)に分岐している。
【0035】
パージガス供給管310には、上流側から順に、流量制御装置であるマスフローコントローラ311、開閉弁であるバルブ312、パージガスに熱を伝導する熱交換器313、及び開閉弁であるバルブ314が設けられている。パージガス供給管310はバルブ314より下流側でガス供給管232aと連結している。
【0036】
パージガス供給管320もパージガス供給管310と略同様の構成を有しており、パージガス供給管320には、上流側から順に、流量制御装置であるマスフローコントローラ321、開閉弁であるバルブ322、パージガスに熱を伝導する熱交換器323、及び開閉弁であるバルブ324が設けられている。パージガス供給管320はバルブ324より下流側でガス供給管232bと連結している。
【0037】
キャリアガス供給管330には、上流側から順に、流量制御装置であるマスフローコントローラ331、及び開閉弁であるバルブ332が設けられている。キャリアガス供給管330はバルブ332より下流側でガス供給管232aの気化器252に連結している。
【0038】
パージガス供給管310とガス供給管232aとには、熱交換器313とバルブ253とから反応炉202に至るまでの部位を加熱するテープヒータ340が配されている。これと略同様に、パージガス供給管320とガス供給管232bとには、熱交換器323とバルブ256とから反応炉202に至るまでの部位を加熱するテープヒータ350が設けられている。テープヒータ340,350に代えてテープジャケットを使用してもよい。テープヒータ340,350には電力供給源360が接続されており、テープヒータ340,350は電力供給源360から電力の供給を受けて発熱するようになっている。
【0039】
基板処理装置101では、例えば当該ガス供給管232aから供給される原料が液体の場合、その液体原料は液体用のマスフローメータ251と気化器252(コントロールバルブ付)で流量調整されながら気化され、その気化ガスがガス供給管232aを流通し、最終的にノズル233aを介して処理室201内に供給される。
【0040】
ガス供給管232aから供給される原料が気体の場合には、液体用のマスフローメータ251を気体用のマスフローコントローラに交換し、気化器252、キャリアガス供給管330、マスフローコントローラ331及びバルブ332は不要となる。この場合、その気体原料は当該マスフローコントローラで流量調整されながらガス供給管232aを流通し、最終的にノズル233aを介して処理室201内に供給される。
【0041】
また、ガス供給管232bから供給される処理ガスは、マスフローコントローラ255で流量調整されながらガス供給管232bを流通し、最終的にノズル233bを介して処理室201に供給される。
【0042】
図2に示すように、処理室201は、ガスを排気する排気管であるガス排気管231によりバルブ243eを介して排気装置である真空ポンプ246に接続され、真空排気されるようになっている。なお、このバルブ243eは弁を開閉して処理室201の真空排気・真空排気停止ができ、更に弁開度を調節して圧力調整可能となっている開閉弁である。
【0043】
反応管203内の中央部には、複数枚のウエハ200を多段に同一間隔で載置するボート217が設けられており、このボート217は、図示しないボートエレベータ機構により反応管203に出入りできるようになっている。また、処理の均一性を向上するためにボート217を回転するためのボート回転機構267が設けてあり、ボート回転機構267を駆動させることにより、ボート支持台218に支持されたボート217を回転するようになっている。
【0044】
制御部としてのコントローラ280は、ガス供給源250(マスフローメータ251、マスフローコントローラ255、バルブ253,254,256、気化器252、マスフローコントローラ311,321,331、バルブ261,312,314,322,324,332、熱交換器313,323、電力供給源360)、ヒータ207、バルブ243e、真空ポンプ246、ボート回転機構267、図示しないボート昇降機構とに接続されている。
【0045】
コントローラ280は、ガス供給源250に対しては、マスフローメータ251と気化器(コントロールバルブ付)252の流量調整と、マスフローコントローラ255の流量調整と、バルブ253,254,256の開閉動作と、気化器252の温度調整と、マスフローコントローラ311,321,331の流量調整と、バルブ261,312,314,322,324,332の開閉動作と、熱交換器313,323の温度調整と、電力供給源360の電力調整とを、制御するようになっている。
【0046】
他方、コントローラ280は、ガス供給源250以外の部材に対しては、ヒータ207の温度調整と、バルブ243eの開閉及び圧力調整動作と、真空ポンプ246の起動・停止と、ボート回転機構267の回転速度調節と、ボート昇降機構の昇降動作とを、制御するようになっている。
【0047】
次に、ALD法を用いた成膜処理例について、半導体デバイスの製造工程の一つである、TEMAH及びOを用いてHfO膜を成膜する例を基に説明する。
【0048】
CVD(Chemical Vapor Deposition)法の一つであるALD(Atomic Layer Deposition)法は、ある成膜条件(温度、時間等)の下で、成膜に用いる少なくとも2種類の原料となる処理ガスを1種類ずつ交互に基板上に供給し、1原子単位で基板上に吸着させ、表面反応を利用して成膜を行う手法である。このとき、膜厚の制御は、処理ガスを供給するサイクル数で行う(例えば、成膜速度が1Å/サイクルとすると、20Åの膜を形成する場合、20サイクル行う)。
【0049】
ALD法では、例えばHfO膜形成の場合、TEMAH(Hf[NCH、テトラキスメチルエチルアミノハフニウム)とそれとは異なるO(オゾン)との2種類の処理ガスを用いて、180〜250℃の低温で高品質の成膜が可能である。
【0050】
まず、上述したようにウエハ200をボート217に装填し、処理室201に搬入する。ボート217を処理室201に搬入後、後述する3つのステップを順次実行する。
【0051】
なお、下記では、パージガスやキャリアガスの一例としてN等の不活性ガスを使用している。また下記では、不活性ガス供給管260のバルブ261を開けたものとして各ステップの説明をしている。
【0052】
(ステップ1)
ガス供給管232aのバルブ253と、パージガス供給管320のバルブ322と,324と、キャリアガス供給管330のバルブ332と、ガス排気管231のバルブ243eとを共に開けて、真空ポンプ246を作動させる。
【0053】
この状態において、不活性ガスが、不活性ガス供給管260から2本の不活性ガス供給管(パージガス供給管320,キャリアガス供給管330)に流入し、マスフローコントローラ321,331で流量調整されながら、パージガス供給管320とキャリアガス供給管330とを流通する。
【0054】
パージガス供給管320を流通する不活性ガスは、熱交換器323から熱の伝導を受けるとともにテープヒータ350の熱も受けて加熱された状態でガス供給管232bに流入し、処理室201に供給される。キャリアガス供給管330を流通するキャリアガスは気化器252に流入する。
【0055】
これと同時に、TEMAHが、マスフローメータ251と気化器(コントロールバルブ付)252で流量調整されながら気化される。TEMAHの気化ガスは、キャリアガス供給管330から流入したキャリアガスと混合され、テープヒータ340の熱を受けながらガス供給管232aを流通し、ノズル233aのガス供給孔248aから処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。
【0056】
ステップ1では、ガス排気管231のバルブ243eを適正に調整して処理室201内の圧力を一定範囲内の最適な値に維持する。液体用のマスフローメータ251と気化器(コントロールバルブ付)252で制御するTEMAHの供給量は0.01〜0.1g/minである。TEMAHガスにウエハ200を晒す時間は30〜180秒間である。このとき、ヒータ207の温度はウエハ200の温度が180〜250℃の範囲内の最適な温度になるよう設定してある。
【0057】
TEMAHの気化ガスを処理室201内に供給することで、当該TEMAHはウエハ200上の下地膜などの表面部分と表面反応(化学吸着)する。
【0058】
以上のステップ1の処理では、ガス供給管232aから処理室201にTEMAHの気化ガスを供給している際に、熱交換器323とテープヒータ350とで加熱したパージガスも、パージガス供給管320からガス供給管232bを経て処理室201に供給されている。
【0059】
(ステップ2)
ガス供給管232aのバルブ253と、パージガス供給管320のバルブ322,324と、キャリアガス供給管330のバルブ332とを閉め、TEMAHの気化ガスの供給を停止する。このとき、ガス排気管231のバルブ243eは開いたままとし、真空ポンプ246により処理室201内を20Pa以下となるまで排気し、残留したTEMAHの気化ガスを処理室201内から排除する。
【0060】
なお、このとき、パージガス供給管320のバルブ322,324とパージガス供給管310のバルブ312,314を開いたままとし、不活性ガスであるパージガスを処理室201内へ供給すると、更に残留したTEMAHの気化ガスを排除する効果が高まる。
【0061】
(ステップ3)
ガス供給管232bのバルブ254,256と、パージガス供給管310のバルブ312,314とを開ける。
【0062】
この状態において、不活性ガスが、不活性ガス供給管260からパージガス供給管310に流入し、マスフローコントローラ311で流量調整されながら、パージガス供給管310を流通する。パージガス供給管310を流通する不活性ガスは、熱交換器313から熱の伝導を受けるとともにテープヒータ340の熱も受けて加熱された状態でガス供給管232aに流入し、処理室201に供給される。
【0063】
これと同時に、Oがマスフローコントローラ255で流量調整されながらガス供給管232bを流通し、テープヒータ350の熱を受けて加熱され、ノズル233bのガス供給孔248bから処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。
【0064】
ステップ3では、ガス排気管231のバルブ243eを適正に調整して処理室201内の圧力を一定範囲内の最適な値に維持する。Oにウエハ200を晒す時間は10〜120秒間である。このときのウエハ200の温度が、ステップ1のTEMAHの気化ガスの供給時と同じく180〜250℃の範囲内の最適な温度となるようヒータ207を設定する。Oの供給により、ウエハ200の表面に化学吸着したTEMAHとOとが反応して、ウエハ200上にHfO膜が成膜される。
【0065】
成膜後、ガス供給管232bのバルブ254,256と、パージガス供給管310のバルブ312,314とを閉じ、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、残留するOの成膜に寄与した後のガスを排除する。このとき、パージガス供給管310のバルブ312,314とパージガス供給管320のバブル322,324を開いたままとし、不活性ガスであるパージガスを反応管203内に供給すると、更に残留するOの成膜に寄与した後のガスを処理室201から排除する効果が高まる。
【0066】
以上のステップ3の処理では、ガス供給管232bから処理室201にOを供給している際に、熱交換器313とテープヒータ340とで加熱した不活性ガスが、パージガス供給管310からガス供給管232aを経て処理室201に供給されている。
【0067】
上述したステップ1〜3を1サイクルとし、このサイクルを複数回繰り返すことにより、ウエハ200上に所定の膜厚のHfO膜を成膜することができる。
【0068】
以上の本発明の好ましい実施形態では、パージガス供給管320に熱交換器323が設置され、ガス供給管232aからTEMAHの気化ガスを処理室201に供給している最中に、不活性ガス自体を熱交換器323で加熱してそれを処理室201に供給するから、気化ガスの液化が発生するのを防止又は抑制することができる。
【0069】
すなわち、パージガス供給管320に熱交換器323が設置されていない場合を想定すると、ガス供給源250は図5に示すような構成を有する。
【0070】
当該構成では、不活性ガス自体が加熱されない状態でパージガス供給管320からガス供給管232bに流入するから、その不活性ガスが低温のまま処理室201に供給される可能性があり、処理室201内の気化ガスが当該不活性ガスと混合されて液化する可能性がある。
またガス供給管232b中では不活性ガスは低温のまま流通する可能性もあるから、ガス供給管232bで部分的に温度が低下する可能性があり、処理室201内の気化ガスがガス供給管232bに逆流した場合に液化する可能性がある。
【0071】
これに対し、本発明の好ましい実施形態では、不活性ガス自体が熱交換器323で加熱された状態でパージガス供給管320からガス供給管232bに流入するから、不活性ガスが高温のまま処理室201に供給され、処理室201内の気化ガスが当該不活性ガスと混合されても液化することを防止又は抑制することができる。
またガス供給管232b中では不活性ガスは高温のまま流通するから、ガス供給管232bで部分的に温度が低下し難く、気化ガスがガス供給管232bに逆流した場合でも液化することを防止又は抑制することができる。以上から、気化ガスの温度低下によるパーティクルの発生を防止又は抑制することができる。
【0072】
更に、本発明の好ましい実施形態では、パージガス供給管310に熱交換器313が設置され、ガス供給管232bからOを処理室201に供給している最中にも、不活性ガス自体を熱交換器313で加熱してそれをガス供給管232aに流通させるから、Oの処理室201への供給後においてTEMAHの気化ガスをガス供給管232aに流通させる際に、その気化ガスが当該ガス供給管232a中で液化するのを防止又は抑制することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の好ましい実施形態で使用される基板処理装置の概略構成を示す斜透視図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態で使用される処理炉とそれに付属する部材との概略構成図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】本発明の好ましい実施形態で使用される処理炉への処理ガスの供給に際して、その処理ガスの供給源となるガス供給源とそれに関連する部材との概略構成を示す図面である。
【図5】図4の比較例を示す図面である。
【符号の説明】
【0074】
101 基板処理装置
200 ウエハ
201 処理室
202 処理炉
207 ヒータ
231 ガス排気管
243e バルブ
246 真空ポンプ
250 ガス供給源
232a,232b ガス供給管
280 コントローラ
260 不活性ガス供給管
310,320 パージガス供給管
330 キャリアガス供給管
313,323 熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容する処理室と、
前記基板を加熱する加熱手段と、
前記処理室内に処理ガスを供給するガス供給手段と、
前記処理室内の雰囲気を排出する排出手段と、
制御部と、
を有し、
前記ガス供給手段は、液体または固体原料を気化させた気化ガスを供給する第1のラインと、前記気化ガスとは異なるガスを供給する第2のラインとを少なくとも備え、
前記制御部は、前記第1のラインから気化ガスを前記処理室内に供給している際、前記第2のラインから加熱された不活性ガスを前記処理室内に供給するように前記ガス供給手段を制御することを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−258268(P2008−258268A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96542(P2007−96542)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】