説明

基板用搬送ステージ、描画装置、および描画方法

【課題】作業位置精度の高い基板用搬送ステージ、それを備えた描画装置、および、それを用いた描画方法を提供する。
【解決手段】基板用搬送ステージ50は、ベース1と、主走査軸方向としてのY軸方向の走査を行なうY軸モーター5と、Y軸モーター5の可動子としてのY軸テーブル10に載置されY軸方向と交差する副走査軸方向としてのX軸方向の走査を行なうX軸モーター15と、X軸モーター15の可動子としてのX軸テーブル20に載置されY軸方向やX軸方向と直交する直交軸回りの回転を行なうθ軸回転式モーター25およびその可動子としての基板ステージ30と、Y軸テーブル10と基板ステージ30とをロックするロック手段としての摩擦ブレーキ部18とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板用搬送ステージ、基板用搬送ステージを有する描画装置、および、それを用いた描画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、作業対象物としての基板をX軸方向、Y軸方向、および、θ軸方向に搬送させて、基板に所望の作業を行なえるように構成された基板用搬送ステージが広く用いられている。例えば、基板用搬送ステージと、液状体(例えばインク)を吐出させる描画ヘッド(機能液滴吐出ヘッド)とを備え、基板用搬送ステージに載置した基板(ワーク)と描画ヘッドとを相対的に移動させながら、描画ヘッドから基板に液状体の液滴を吐出させて所定の描画を行なえるようにした描画装置(液滴吐出装置)が知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
描画装置に用いる基板用搬送ステージは、例えば、ベースと、Y軸(主走査軸)方向の走査を行なうY軸リニアモーターと、X軸(副走査軸)方向の走査を行なうX軸リニアモーターと、Y軸方向やX軸方向と直交する直交軸回りの回転を行なうθ軸回転式モーターと、を具備している。そしてθ軸回転式モーターの可動子(例えば基板ステージ)上に載置した基板を所定の作業開始位置に搬送した後に、そのときの実際の基板位置と、基板の所望の作業開始位置との差を検知して補正量を計算して、所望の作業開始位置に位置補正を行なった後に、Y軸(主走査軸)リニアモーターにより基板をY軸(主走査軸)方向に走査させながら所定の描画作業を実施する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−130299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の描画装置による描画方法では、作業開始位置補正を行なった後で、描画作業のための主走査方向の走査開始時の初期動作時に働く力により、副走査軸リニアモーターの可動子やθ軸回転式モーターの可動子に偏差が生じて、所望の位置に描画が行なえない虞があるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係る基板用搬送ステージは、ベースと、前記ベース上に載置され主走査軸方向の走査を行なう主走査軸リニアモーターと、前記主走査軸リニアモーターの可動子に載置され前記主走査軸方向と交差する副走査軸方向の走査を行なう副走査軸リニアモーターと、前記副走査軸リニアモーターの可動子に載置され前記主走査軸方向や前記副走査軸方向と直交する直交軸回りの回転を行なうθ軸回転式モーターおよびその可動子と、を具備し、前記θ軸回転式モーターの可動子上に載置した基板を前記副走査軸リニアモーターおよび前記θ軸回転式モーターにより所定の作業開始位置に位置合わせた後に、前記主走査軸リニアモーターにより前記基板を前記主走査軸方向に走査させながら所定の作業を実施する基板用搬送ステージであって、前記主走査軸リニアモーターの可動子と前記θ軸回転式モーターの可動子とをロックするロック手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
本適用例によれば、作業対象物としての基板を所望の作業開始位置に位置補正した後で、主走査軸リニアモーターの可動子と、θ軸回転式モーターの可動子とをロック手段によりロックしてから、基板を主走査軸方向に走査させながら基板に所定の作業を行なうことができる。これにより、主走査軸方向への走査開始時に起こり得る副走査軸リニアモーターの可動子およびθ軸回転式モーターの可動子の位置偏差を防止して、所望の作業開始位置を保持しながら主走査軸方向に基板を走査させて所望の作業を行なうことができる。
【0009】
[適用例2]本適用例に係る描画装置は、ベースと、前記ベース上に載置され主走査軸方向の走査を行なう主走査軸リニアモーターと、前記主走査軸リニアモーターの可動子に載置され前記主走査軸方向と交差する副走査軸方向の走査を行なう副走査軸リニアモーターと、前記副走査軸リニアモーターの可動子に載置され前記主走査軸方向や前記副走査軸方向と直交する直交軸回りの回転を行なうθ軸回転式モーターおよびその可動子と、を具備し、前記θ軸回転式モーターの可動子上に描画媒体としての基板を載置する基板用搬送ステージと、前記基板に液状体を吐出させて描画を行なう描画ヘッド部と、を有し、前記θ軸回転式モーターの可動子上に載置した前記基板を前記副走査軸リニアモーターおよび前記θ軸回転式モーターにより所定の描画開始位置に位置合わせた後に、前記主走査軸リニアモーターにより前記基板を前記主走査軸方向に走査させながら前記描画ヘッド部から前記基板に前記液状体を吐出させて所定の描画を行なう描画装置であって、前記基板用搬送ステージが、前記主走査軸リニアモーターの可動子と前記θ軸回転式モーターの可動子とをロックするロック手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
本適用例によれば、描画媒体としての基板を所望の作業開始位置(描画開始位置)に位置補正した後で、主走査軸リニアモーターの可動子とθ軸回転式モーターの可動子とをロック手段によりロックしてから、主走査軸リニアモーターにより基板を主走査軸方向に走査させながら描画を行なうことができる。これにより、主走査軸方向への走査開始時に起こり得る副走査軸リニアモーターの可動子およびθ軸回転式モーターの可動子の位置偏差を防止して、所望の描画開始位置の副走査軸方向およびθ軸方向の位置を保持しながら主走査軸方向に走査させて基板に所望の描画を行なうことが可能な描画装置を提供することができる。
【0011】
[適用例3]本適用例に係る描画方法は、ベースと、前記ベース上に載置され主走査軸方向の走査を行なう主走査軸リニアモーターと、前記主走査軸リニアモーターの可動子に載置され前記主走査軸方向と交差する副走査軸方向の走査を行なう副走査軸リニアモーターと、前記副走査軸リニアモーターの可動子に載置され前記主走査軸方向や前記副走査軸方向と直交する直交軸回りの回転を行なうθ軸回転式モーターおよびその可動子と、を具備し、前記θ軸回転式モーターの可動子上に描画媒体としての基板を載置する基板用搬送ステージと、前記基板に液状体を吐出させて描画を行なう描画ヘッド部と、を有し、前記基板用搬送ステージは、前記主走査軸リニアモーターの可動子と前記θ軸回転式モーターの可動子とをロックするロック手段を備えた描画装置を用いた描画方法であって、前記基板用搬送ステージ上に載置した前記基板を、前記主走査軸リニアモーターおよび前記副走査軸リニアモーターを駆動させて描画開始位置に給材する前記基板給材ステップと、所定の前記描画開始位置と、基板給材ステップ後の実際の前記基板の位置との差を、前記副走査軸リニアモーターおよび前記θ軸回転式モーターを操作して許容範囲内に収める描画開始位置補正ステップと、前記病が開始位置補正ステップの後で、前記主走査軸リニアモーターにより前記基板を主走査軸方向にスキャンさせながら前記描画ヘッド部から液状体を吐出させて前記基板に所望の描画を行なう描画ステップと、を含み、前記描画ステップの前に、前記ロック手段により前記主走査軸リニアモーターの可動子と前記θ軸回転式モーターの可動子とをロックするステップを含むことを特徴とする。
【0012】
本適用例によれば、描画開始位置補正ステップで基板を所望の作業開始位置に位置補正した後で、描画ステップで描画動作を行なう前に主走査軸リニアモーターの可動子とθ軸回転式モーターの可動子とをロック手段によりロックする。これにより、主走査軸方向への走査開始時に起こり得る副走査軸リニアモーターの可動子およびθ軸回転式モーターの可動子の位置偏差を防止して、所望の作業開始位置を保持しながら主走査軸方向に走査させて基板に所望の描画を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の基板用搬送ステージの一実施形態を説明する斜視分解図。
【図2】基板用搬送ステージのロック手段を図1のA−A線断面にて模式的に説明するものであり、(a)は、ロック手段がオフの状態、(b)は、ロック手段がオンの状態をそれぞれ示す部分断面図。
【図3】基板用搬送ステージを備えた描画装置の概略構成を模式的に説明する斜視図。
【図4】描画装置を用いた描画方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。
【0015】
(第1の実施形態)
〔基板用搬送ステージ〕
まず、第1の実施形態に係る基板用搬送ステージの概略構成について説明する。図1は、本発明の基板用搬送ステージの一実施形態を説明する斜視分解図である。また、図2は、基板用搬送ステージのロック手段を図1のA−A線断面にて模式的に説明するものであり、(a)は、ロック手段がオフの状態、(b)は、ロック手段がオンの状態をそれぞれ示す部分断面図である。
図1において、基板用搬送ステージ50は、ベース1と、ベース1上に載置された主走査軸リニアモーターとしてのY軸モーター5と、Y軸モーター5の可動子としてのY軸テーブル10と、Y軸テーブル10上に載置された副走査軸リニアモーターとしてのX軸モーター15と、X軸モーター15の可動子としてのX軸テーブル20と、X軸テーブル20に載置されたθ軸回転式モーターとしてのθ軸回転式モーター25、および、その可動子としての基板ステージ(θ軸テーブル)30と、を有している。
【0016】
ベース1上には、Y軸(主走査軸)に沿って載置されたY軸モーター(可動コイル型リニアモーター)5と、Y軸モーター5の両側に並行させて載置された下側Y軸リニアモーターガイド(リニアモーターガイド)3,3が配置されている。固定子としてのY軸モーター5は、Y軸モーター5に沿ってY軸方向に移動自在に走行しY軸モーター5の可動子としてのY軸テーブル10との接続に供する三相コイルとしてのY軸可動子接続部6を有している。
【0017】
ベース1上に配置されるY軸テーブル10のベース1と対向する底面側には、ベース1の下側Y軸リニアモーターガイド3,3に対応する上側Y軸リニアモーターガイド19,19が設けられている。本実施形態では、下側Y軸リニアモーターガイド3,3が断面矩形状のレールであるのに対して、上側Y軸リニアモーターガイドは下側Y軸リニアモーターガイド3を嵌め込み可能な凹部を有する断面コの字形状のレールとなっている。
また、Y軸テーブル10の底面側には、ベース1のY軸可動子接続部6が連結・固定される取付け部(不図示)が設けられている。この取付け部にY軸可動子接続部6が連結・固定され、且つ、下側Y軸リニアモーターガイド3,3に対して上側Y軸リニアモーターガイド19,19がY軸方向に移動自在な状態で嵌め合わせられる。これにより、Y軸モーター5を駆動させることによって、Y軸テーブル10はベース1に対してY軸方向の走査が可能になっている。
【0018】
Y軸テーブル10上には、X軸(副走査軸)に沿って載置されたX軸モーター(可動コイル型リニアモーター)15と、X軸モーター15の両側に並行させて載置された下側X軸リニアモーターガイド(リニアモーターガイド)13,13が配置されている。固定子としてのX軸モーター15は、X軸モーター15に沿ってX軸方向に移動自在に走行しX軸モーター15の可動子としてのX軸テーブル20との接続に供する三相コイルとしてのX軸可動子接続部16を有している。
さらに、Y軸テーブル10上の各モーター軸を避けた領域には、X軸テーブル20を間に挟んでY軸テーブル10に対して基板ステージ30の動きをロックするロック手段としての摩擦ブレーキ部18が設けられている。摩擦ブレーキ部18は最低1箇所に設ければよいが、本実施形態のように、基板ステージ30の重心に対してバランスのよい配置にて複数箇所(本実施形態では最小限の2箇所)に設けることが好ましい。
なお、摩擦ブレーキ部18の構造や動作等の詳細については後述する。
【0019】
Y軸テーブル10上に配置されるX軸テーブル20のY軸テーブル10と対向する底面側には、Y軸テーブル10の下側X軸リニアモーターガイド13,13に対応する上側X軸リニアモーターガイド29,29が設けられている。本実施形態では、下側X軸リニアモーターガイド13,13が断面矩形状のレールであるのに対して、上側X軸リニアモーターガイド29,29は下側X軸リニアモーターガイド13を嵌め込み可能な凹部を有する断面コの字形状のレールとなっている。
また、X軸テーブル20の底面側には、Y軸テーブル10のX軸可動子接続部16が連結・固定される取付け部(不図示)が設けられている。この取付け部にX軸可動子接続部16が連結・固定され、且つ、下側X軸リニアモーターガイド13,13に対して上側X軸リニアモーターガイド29,29がX軸方向に移動自在な状態で嵌め合わせられる。これにより、X軸モーター15を駆動させることによって、X軸テーブル20はベース1に対してY軸方向と直交するX軸方向の走査が可能になっている。
【0020】
また、X軸テーブル20上の中央にはθ軸回転式モーター25が載置されるとともに、そのθ軸回転式モーター25を囲むように平面視で円形状の下側クロスローラーガイド23が設けられている。θ軸回転式モーター25の回転軸には、θ軸回転式モーター25の可動子としての基板ステージ30との接続に供するθ軸可動子接続部26が設けられている。
さらに、X軸テーブル20上の各モーター軸を避けた領域には、Y軸テーブル10の摩擦ブレーキ部18を基板ステージ30に接触可能にするための貫通穴27,27が設けられている。
【0021】
X軸テーブル20上に配置される基板ステージ30のX軸テーブル20と対向する底面側には、X軸テーブル20の下側クロスローラーガイド23に対応する上側クロスローラーガイド(不図示)が設けられている。
また、基板ステージ30の底面側には、X軸テーブル20のθ軸可動子接続部26が連結・固定される取付け部26aが設けられている。この取付け部26aにθ軸可動子接続部26が連結・固定され、且つ、下側クロスローラーガイド23に対して上側クロスローラーガイド39(図1には不図示、図2を参照)をθ軸方向に回転自在な状態で嵌め合わることにより、θ軸回転式モーター25を駆動させることによって、基板ステージ30はベース1に対してθ軸方向の回転が可能になっている。
なお、図示はしないが、基板ステージ30の前記底面側の反対側の上面側には、作業対象物としての基板(ワーク)を固定することが可能な固定手段が備えられている。固定手段としては、例えば、真空吸着を用いることができる。この場合、基板ステージ30の上面側の基板載置領域には複数の真空吸着穴を設け、その真空吸着穴に真空発生装置を接続するなどする。
【0022】
次に、本実施形態の基板用搬送ステージ50におけるロック手段としての摩擦ブレーキ部18の構造や動作等の詳細について説明する。
図2に示すように、Y軸テーブル10に設けられた摩擦ブレーキ部18は、ブレーキパッド18aがY軸テーブル10側から基板ステージ30側へのZ軸方向(図1を参照)に昇降可能な構造を有している。
図2(a)は、摩擦ブレーキ部18がオフの状態である。オフの状態では、ブレーキパッド18aが下限の位置まで降りていて、X軸テーブル20の底面よりも下方に位置しており、X軸テーブル20および基板ステージ30は、何ら規制されることなく可動な状態になっている。
図2(b)は、摩擦ブレーキ部18がオンの状態である。摩擦ブレーキ部18のブレーキパッド18aが上昇してX軸テーブル20の貫通穴27を経て基板ステージ30の底面に所定の強さで押し付けられると、Y軸テーブル10に対して基板ステージ30がX軸テーブル20とともに動きがロックされる。
【0023】
上記第1の実施形態の基板用搬送ステージによれば、作業対象物としての基板を所望の作業開始位置に位置補正した後で、Y軸(主走査軸)モーター5の可動子としてのY軸テーブル10と、θ軸回転式モーター25の可動子としての基板ステージ30をロック手段としての摩擦ブレーキ部18によりロックしてから、基板をY軸(主走査軸)方向に走査させながら基板に所定の作業を行なうことができる。これにより、Y軸(主走査軸)方向への走査開始時に起こり得るX軸(副走査軸)テーブル20および基板ステージ30の位置偏差を防止して、所望の作業開始位置を保持しながらY軸(主走査軸)方向に基板を走査させて所望の作業を行なうことができる。
また、上記実施形態では、ロック手段として摩擦ブレーキ部18を適用している。ロック手段は摩擦ブレーキ部18に限らず、他のブレーキ構造(ロック構造)を適用してもよいが、摩擦ブレーキは、比較的簡単で、低コストにてロック構造を実現することができる。
例えば、ロック手段として、ブレーキ付きモーターを使用することもできるが、ブレーキ付きモーターとした場合、θ軸の位置を保持するブレーキ付きモーターとなるので強い保持力を必要で調整が比較的難しい。
【0024】
(第2の実施形態)
次に、上記第1の実施形態の基板用搬送ステージ50を備えた描画装置、および、それを用いた描画方法について説明する。
〔描画装置〕
まず、第2の実施形態に係る描画装置の概略構成について図面に沿って説明する。図3は、第2の実施形態に係る描画装置100の概略構成を示す斜視図である。なお、上記第1の実施形態と同一の構成部位については同一の番号を付して、重複する説明は省略する。
図3において、描画装置100は、架台62上に、上記第1の実施形態の基板用搬送ステージ50と、基板用搬送ステージ50上に載置された描画媒体としての基板Wに、液状体としてのインクを例えばインクジェット法により吐出させて描画を行なう描画ヘッド部80と、を有している。
【0025】
本実施形態の描画装置100において、架台62上に配置された上記実施形態の基板用搬送ステージ50のY軸テーブル10は、主走査軸方向としてのY軸方向の描画スキャン時に動作する。また、X軸テーブル20は、副走査軸方向としてのX軸方向のアライメント位置補正時や描画の改行(フィード)時に動作する。また、θ軸テーブルとしての基板ステージ30は、アライメント位置補正時にθ軸回転方向に動作する。
【0026】
また、架台62上には一対の支柱65が立設され、それら支柱65間にキャリッジ搬送装置70が架設されている。キャリッジ搬送装置70には、キャリッジ82がX軸方向(副走査軸方向)に移動自在に配置されている。キャリッジ82には、Z軸モーター83を介して描画ヘッド部80が取り付けられている。描画ヘッド部80は、キャリッジ搬送装置70により描画媒体としての基板Wに対してX軸方向(副走査軸方向)の移動が可能であるとともに、Z軸モーター83によりZ軸方向の移動が可能になっている。
支柱65のキャリッジ搬送装置70近傍には、液状体としてのインクを貯蔵するインクタンク87と、インクタンク87内のインクを描画ヘッドに供給する際の経路となるインク供給経路88とからなるインク供給装置85が設けられている。
【0027】
上記構成の描画装置100によれば、上記第1の実施形態の基板用搬送ステージ50を備えているので、描画媒体としての基板Wを所望の作業開始位置に位置補正するアライメントを行なった後で、Y軸(主走査軸)モーター5の可動子としてのY軸テーブル10と、θ軸回転式モーター25の可動子としての基板ステージ30とをロック手段としての摩擦ブレーキ部18によりロックしてから、Y軸モーターにより基板WをY軸(主走査軸)方向に走査させながら描画を行なうことができる。これにより、Y軸(主走査軸)方向への走査開始時に起こり得るX軸(副走査軸)モーター15の可動子としてのX軸テーブル20、および、θ軸回転式モーター25の可動子としての基板ステージ30の位置偏差を防止して、位置補正された描画開始位置のX軸(副走査軸)方向およびθ軸方向の位置を保持しながらY軸(主走査軸)方向に走査させて基板Wに所望の描画を行なうことが可能な描画装置100を提供することができる。
また、描画時において、基板ステージ30のY軸(主走査軸)方向の走査の加速時および減速時の特にθ軸方向のずれを防止できることにより、基板ステージ30の描画開始位置と描画エリアとの間隔を小さくすることができるので、描画装置100のサイズに対する描画可能エリアの比率を高くすることができる。
【0028】
〔描画方法〕
次に、上記描画装置100を用いた描画方法の一実施形態について説明する。図4は、第2の実施形態に係る描画方法を示すフローチャートである。なお、以下の描画方法の説明において、描画装置100、および、その描画装置100に備わる基板用搬送ステージ50の構成については図1〜図3を参照されたい。
本実施形態の描画方法では、まず、図4のステップS1に示すように、描画装置100の基板用搬送ステージ50の基板ステージ30に基板Wを載置して真空吸着することなどにより固定し、基板用搬送ステージ50のY軸モーター5およびX軸モーター15を駆動させて基板Wを所定の描画開始位置に給材する基板給材を行なう。なお、このとき、基板用搬送ステージ50のロック手段としての摩擦ブレーキ部18はオフの状態(図2(a)を参照)になっている。
【0029】
次に、ステップS2に示すように、基板給材ステップ(ステップS1)後の実際の基板Wの描画開始位置と、所望の描画開始位置との偏差を検知して補正量を算出し、X軸モーター15およびθ軸回転式モーター25を操作して描画開始位置の許容範囲内に収める描画開始位置補正を行なう。なお、基板給材ステップ(ステップS1)後の実際の基板Wの位置(描画開始位置)と所望の描画開始位置とのずれは、基板ステージ30上に載置した基板Wの初期的な位置ずれや、基板用搬送ステージ50の機械精度などに起因する位置ずれによって生じる。
【0030】
描画開始位置補正ステップ(ステップS2)を行なった後で、次に、ステップS3に示すように、ロック手段としての摩擦ブレーキ部18をオンの状態にすることにより、Y軸(主走査軸)モーター5の可動子としてのY軸テーブル10と、θ軸回転式モーター25の可動子としての基板ステージ30とをロックする(図2(b)を参照)。
次に、ステップS4に示すように、Y軸(主走査軸)モーター5を駆動させてY軸テーブル10を動かして基板WをY軸(主走査軸)方向に走査させながら、描画ヘッド部80から液状体としてのインクの液滴を吐出させて描画を行なう。即ち、描画中は、Y軸テーブル10と基板ステージ30とが、摩擦ブレーキ部18によりロックされている。
【0031】
描画ステップ(ステップS4)でY軸(主走査軸)方向の1スキャンの描画が終了したら、次に、ステップS5に示すように、次の描画列に移動(フィード)させて次の描画スキャンを行なうか否かを決める。
次の描画スキャンを行なう場合は(ステップS5でYES)、摩擦ブレーキ部18をオフの状態にして(図2(a)を参照)、Y軸テーブル10と基板ステージ30とのロックを解除してから(ステップS11)、X軸(副走査軸)モーター15を駆動させてX軸テーブル20を動かすことにより基板WをX軸方向にフィードさせて次の描画列の描画開始位置に移動させ(ステップS12)、ステップS2に戻り、次の描画開始位置の描画前基板位置の補正からの操作を繰り返す。
【0032】
ステップS5で、次の描画列の描画スキャンを行なわないと判断した場合は(ステップS5でNO)、摩擦ブレーキ部18をオフの状態にして(図2(a)を参照)、Y軸テーブル10と基板ステージ30とのロックを解除してから(ステップS6)、基板用搬送ステージ50のY軸モーター5およびX軸モーター15を駆動させて基板Wを所定の排材位置に搬送して(ステップS7)、描画作業を終了する。
【0033】
上記実施形態の描画方法によれば、描画開始位置補正ステップ(ステップS2)により、基板Wを所望の描画開始位置に位置補正した後で、描画ステップ(ステップS4)で描画動作を行なう前にY軸(主走査軸)モーター5の可動子としてのY軸テーブルとθ軸回転式モーター25の可動子としての基板ステージ30とをロック手段としての摩擦ブレーキ部によりロックし、この状態で基板WをY軸(主走査軸)方向にスキャンさせながら描画を行なう。これにより、Y軸方向への走査開始時に起こり得るX軸(副走査軸)モーターの可動子としてのX軸テーブル20、および、θ軸回転式モーター25の可動子としての基板ステージ30の位置偏差を防止して、所望の作業開始位置を保持しながらY軸(主走査軸)方向に走査させて基板Wに所望の描画を行なうことができる。
【符号の説明】
【0034】
1…ベース、3…下側Y軸リニアモーターガイド、5…主走査軸リニアモーターとしてのY軸モーター、6…Y軸可動子接続部、10…主走査軸リニアモーターの可動子としてのY軸テーブル、13…下側X軸リニアモーターガイド、15…副走査軸リニアモーターとしてのX軸モーター、16…X軸可動子接続部、18…ロック手段としての摩擦ブレーキ部、18a…ブレーキパッド、19…上側Y軸リニアモーターガイド、20…副走査軸リニアモーターの可動子としてのX軸テーブル、23…下側クロスローラーガイド、25…θ軸回転式モーター、26…θ軸可動子接続部、26a…取付け部、27…貫通穴、29…上側X軸リニアガイド、30…基板テーブル、50…基板用搬送ステージ、62…架台、65…支柱、70…キャリッジ搬送装置、80…描画ヘッド部、82…キャリッジ、83…Z軸モーター、85…インク供給装置、87…インクタンク、88…インク供給経路、100…描画装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベース上に載置され主走査軸方向の走査を行なう主走査軸リニアモーターと、前記主走査軸リニアモーターの可動子に載置され前記主走査軸方向と交差する副走査軸方向の走査を行なう副走査軸リニアモーターと、前記副走査軸リニアモーターの可動子に載置され前記主走査軸方向や前記副走査軸方向と直交する直交軸回りの回転を行なうθ軸回転式モーターおよびその可動子と、を具備し、
前記θ軸回転式モーターの可動子上に載置した基板を前記副走査軸リニアモーターおよび前記θ軸回転式モーターにより所定の作業開始位置に位置合わせた後に、前記主走査軸リニアモーターにより前記基板を前記主走査軸方向に走査させながら所定の作業を実施する基板用搬送ステージであって、
前記主走査軸リニアモーターの可動子と前記θ軸回転式モーターの可動子とをロックするロック手段を備えたことを特徴とする基板用搬送ステージ。
【請求項2】
ベースと、前記ベース上に載置され主走査軸方向の走査を行なう主走査軸リニアモーターと、前記主走査軸リニアモーターの可動子に載置され前記主走査軸方向と交差する副走査軸方向の走査を行なう副走査軸リニアモーターと、前記副走査軸リニアモーターの可動子に載置され前記主走査軸方向や前記副走査軸方向と直交する直交軸回りの回転を行なうθ軸回転式モーターおよびその可動子と、を具備し、前記θ軸回転式モーターの可動子上に描画媒体としての基板を載置する基板用搬送ステージと、
前記基板に液状体を吐出させて描画を行なう描画ヘッド部と、を有し、
前記θ軸回転式モーターの可動子上に載置した前記基板を前記副走査軸リニアモーターおよび前記θ軸回転式モーターにより所定の描画開始位置に位置合わせた後に、前記主走査軸リニアモーターにより前記基板を前記主走査軸方向に走査させながら前記描画ヘッド部から前記基板に前記液状体を吐出させて所定の描画を行なう描画装置であって、
前記基板用搬送ステージが、前記主走査軸リニアモーターの可動子と前記θ軸回転式モーターの可動子とをロックするロック手段を備えたことを特徴とする描画装置。
【請求項3】
ベースと、前記ベース上に載置され主走査軸方向の走査を行なう主走査軸リニアモーターと、前記主走査軸リニアモーターの可動子に載置され前記主走査軸方向と交差する副走査軸方向の走査を行なう副走査軸リニアモーターと、前記副走査軸リニアモーターの可動子に載置され前記主走査軸方向や前記副走査軸方向と直交する直交軸回りの回転を行なうθ軸回転式モーターおよびその可動子と、を具備し、前記θ軸回転式モーターの可動子上に描画媒体としての基板を載置する基板用搬送ステージと、
前記基板に液状体を吐出させて描画を行なう描画ヘッド部と、を有し、
前記基板用搬送ステージは、前記主走査軸リニアモーターの可動子と前記θ軸回転式モーターの可動子とをロックするロック手段を備えた描画装置を用いた描画方法であって、
前記基板用搬送ステージ上に載置した前記基板を、前記主走査軸リニアモーターおよび前記副走査軸リニアモーターを駆動させて描画開始位置に給材する基板給材ステップと、
所定の前記描画開始位置と、前記基板給材ステップ後の実際の前記基板の位置との差を、前記副走査軸リニアモーターおよび前記θ軸回転式モーターを操作して許容範囲内に収める描画開始位置補正ステップと、
前記描画開始位置補正ステップの後で、前記主走査軸リニアモーターにより前記基板を主走査軸方向にスキャンさせながら前記描画ヘッド部から液状体を吐出させて前記基板に所望の描画を行なう描画ステップと、を含み、
前記描画ステップの前に、前記ロック手段により前記主走査軸リニアモーターの可動子と前記θ軸回転式モーターの可動子とをロックするステップを含むことを特徴とする描画方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−98367(P2013−98367A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240060(P2011−240060)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】