説明

基板貼合せ方法

【課題】半導体ウエハなどのワークと補強用の支持基板との貼り合せ精度の向上を図ることのできる基板貼り合わせ方法を提供する。
【解決手段】複数個の係止爪38で周縁部分を係止保持された支持基板W2をウエハW1の両面接着シート貼付け面に近接するように対向配備し、この支持基板W2の非貼合せ面の略中央から略半球形状の弾性体で構成された押圧部材39を押圧し、この押圧部材39を弾性変形させて支持基板面に扁平接触させながら支持基板W2をウエハW1に貼り合せる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ、ガラス基板、回路基板などの各種基板に両面接着シートを介して補強用(支持用)の基板を貼り合わせる基板貼合せ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という)はウエハ上に多数の素子を形成した後、バックグラインド工程でウエハ裏面を削り、その後、ダイシング工程で各素子に切り分けられている。しかし、近年では高密度実装の要求に伴いウエハ厚さを100μmから50μm、更には25μm程度にまで薄くする傾向にある。
【0003】
このように薄くバックグラインドされたウエハは脆いのみならず、歪みが生じていることが多く、取扱い性が極めて悪くなっている。
【0004】
そこで、接着シートを介してウエハにガラス板などの剛性を有する基板を貼り合せることでウエハを補強する手段が提案・実施されている。
【0005】
具体的には、上面に接着テープが予め貼付けられたウエハを保持台に載置固定し、このウエハの上方において、ガラス板などからなる基台(本発明における基板)を基台支持部の上端に傾斜姿勢で係止保持し、プレスローラを傾斜保持された基台の表面に移動させるとともに、その移動に応じて基台支持部を下降させることで、基台を半導体ウエハに貼り付けるように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2000−349136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の基台貼合せ装置は、極薄化されたウエハに予め接着テープを貼り付けて補強用の基板と貼り合わせているので、ウエハに接着テープ貼り付けるときに外力が加わりウエハを破損させる恐れがある。
【0008】
また、プレスローラを基台表面に転動させて押圧しながらウエハに貼り合せると、プレスローラの転動方向に押圧力が加わり、基板の貼り合せ位置がその方向にズレてしまうといった問題がある。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、半導体ウエハなどのワークの破損や支持用の基板の貼り合せ位置のズレなどがなく基板と半導体ウエハを精度よく貼り合せることのできる基板貼合せ方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、上記目的を達成するために次のような手段をとる。
【0011】
すなわち、第1の発明は、半導体ウエハに両面接着シートを介在させて支持用の基板と貼り合わせる基板貼合せ方法において、
前記半導体ウエハに両面接着シートを貼り付ける貼付過程と、
複数個の保持手段で前記基板の周縁を保持し、貼り付けた前記両面接着シートを挟んで前記半導体ウエハと基板を近接させて対向配備する位置合せ過程と、
略半球形状の弾性体で構成された押圧部材で前記基板の非貼合せ面の略中央から押圧し、この押圧部材を弾性変形させて基板面に扁平接触させながら基板を半導体ウエハに貼り合せる貼合せ過程と、
前記押圧部材の弾性変形による基板面に対する押圧接触面が基板周縁に近づくと、前記保持手段による基板の保持を解除し、基板外方に退避させる退避過程と、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
(作用・効果) この方法によれば、弾性体で構成された略半球形状の押圧部材で基板の非貼合せ面の略中央から押圧することにより、押圧部材が基板の中央から周縁に向って放射状に接触面積を拡大しながら弾性変形してゆく。したがって、押圧部材による押圧力も基板中央から周縁に向って均一に加わるとともに、貼合せ面に巻込む気泡を外方に排除することができる。その結果、基板の貼合せ位置のズレや半導体ウエハの破損を抑制することができるとともに、貼合せ面への気泡の巻込みのない高品位の貼合せを実現できる。
【0013】
なお、貼合せ過程では、減圧雰囲気中で支持用の基板を半導体ウエハに貼り合せることが好ましい(請求項2)。この方法によれば、半導体ウエハと基板の貼合せ面への気泡の巻込みをより精度よく排除することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明の基板貼合せ方法によると、略半球形状の弾性体からなる押圧部材を基板の非貼合せ面の略中央から押圧することにより、基板への押圧力を均一にし、基板の貼合せ位置がズレることなく基板を半導体ウエハに精度よく貼り合せることができる。また、押圧力が均一になることで、半導体ウエハの破損を抑制することができる。さらに、基板の中央から周縁に向けて基板を半導体ウエハに貼り合せるので、貼合せ面に巻込む気泡を効率よく排除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。
【0016】
図1は本発明に係る基板貼合せ方法を実行する基板貼合せ装置の平面図、図2はその正面図である。
【0017】
本実施例の基板貼合せ装置1は、図1に示すように、基台2の右手前に、半導体ウエハW1(以下、単に「ウエハW1」という)が収容されたカセットC1が装填されるウエハ供給部3と、基台2の中央手前に、ガラス板やステンレス鋼などからなるウエハと略同形状の補強用基板としての支持基板W2が収納されたカセットC2が装填される支持基板供給部4、基台2の左手前に、支持基板W2の貼り合わされたウエハW1を回収するウエハ回収部5とが配備されている。このウエハ供給部3と支持基板供給部4の間には、ロボットアーム6を備えた第1搬送機構7と、搬送ベルトによりウエハW1を水平搬送する第2搬送機構8が配備されている。また、基台2の右側奥には第1アライメントステージ9が配備され、その上方にはウエハW1に向けて両面接着シートT1を供給する接着シート供給部10が配備されている。また、接着シート供給部10の右斜め下には接着シート供給部10から供給されたセパレータ付きの両面接着テープT1からセパレータSのみを回収するセパレータ回収部11が配備されている。アライメントステージ9の左横にはウエハW1を載置保持する保持部12と、この保持部12に保持されたウエハW1に両面接着シートT1を貼り付けるシート貼付機構13と、ウエハW1に両面接着シートTを貼り付けた後の不要なシートT2を剥離するシート剥離機構14とが配備され、その上方にはウエハW1に貼り付けられた両面接着シートT1をウエハW1の外形に沿って切断するカッターユニット15が配備されている。また、その左側上方には、不要なシートT2を回収するシート回収部16が配備されている。また、シート貼付機構13の左横には、ロボットアーム17を備えた第3搬送機構18が配備されており、その左横に第2アライメントステージ19が配備されている。さらに、その左側奥には、ウエハW1と支持基板W2を貼り合せる基板貼合せ機構20が配備されている。以下、各構成について具体的に説明する。
【0018】
ウエハ供給部3、支持基板供給部4、およびウエハ回収部5は、昇降可能なカセット台を備えている。各カセット台に収容されたカセットC1〜C3は、それぞれにウエハW1、支持基板W2、および支持基板付きウエハW1を多段に収納して載置されるようになっている。このとき、カセットC1、C3内では、ウエハW1はパターン面を上向きにした水平姿勢を保っている。
【0019】
第1搬送機構7および第3搬送機構18は、ロボットアーム6、17を備えるとともに、図示しない駆動機構によって旋回するように構成されている。
【0020】
ロボットアーム6、17は、図2に示すように、その先端に馬蹄形をした基板保持部21、22を備えている。この基板保持部21、22には図示しない吸着孔が設けられており、カセットC1、C2に収容されたウエハW1および支持基板W2を裏面から真空吸着するようになっている。なお、基板保持部21、22の形状は馬蹄形に限定されるものではなく、矩形や円形などであってもよい。
【0021】
つまり、ロボットアーム6は、カセットC1に多段に収納されたウエハW同士の間隙を基板保持部21が進退してウエハW1を裏面から吸着保持するとともに、吸着保持したウエハW1を後述する第1アライメントステージ9、保持部12、および第2搬送機構8の順に搬送する。
【0022】
ロボットアーム17は、第2搬送機構8によって搬送されてくる両面接着シート付きのウエハW1を第2アライメントステージ19、基板貼合せ機構20の順に搬送する。また、ロボットアーム17は、カセットC2に多段に収納された支持基板W同士の間隙を基板保持部22が進退して支持基板W2を裏面から吸着保持するとともに、吸着保持した支持基板W2を後述する第2アライメントステージ19、基板貼合せ機構20の順に搬送し、さらに、基板貼合せ機構20で支持基板W2の貼り合わされたウエハW1をカセットC3に搬送する。
【0023】
第2搬送機構8は、搬送ローラまたは無端ベルトによって構成されたコンベア式の搬送機構であり、ロボットアーム6によって移載された両面接着シート付きのウエハW1をロボットアーム17に受け渡し可能な位置に水平搬送する。
【0024】
第1アライメントステージ9は、載置された略円形のウエハW1のオリエンテーションフラットやノッチなどに基づいて位置合せを行う。
【0025】
第2アライメントステージ19は、ウエハW1に対しては、第1アライメントステージ9と同様にオリエンテーションフラットなどに基づいて位置合せを行う。また、支持基板W2に対しては、中心位置を一対の係止爪75で挟み込んで決定する。
【0026】
保持部12は、図6に示すように、中央で昇降する吸着パットによってウエハW1を受け取り、ウエハW1の裏面と全体と面接触してウエハW1を吸着保持するチャックテーブル23が備えられている。なお、チャックテーブル23は、本発明の保持テーブルに相当する。
【0027】
接着シート供給部10は、ボビン24に加熱膨張により接着力の低下する両面接着シートT1がセパレータS付きで巻回きされており、このボビン24から繰り出されたセパレータSつきの両面接着シートT1をガイドローラ25群に巻回案内する。なお、接着シート供給部10は装置本体の縦壁に軸支されブレーキ機構などを介して回転規制されている。
【0028】
セパレータ回収部11は、縦壁に回収ボビン26が軸支されており、モータなどの駆動機構に連動連結されている。
【0029】
シート貼付機構13は、そのフレームがテープ走行方向にスライド可能となるように装置本体のレールに把持され、図示しないモータなどの駆動部を介して連動連結されている。また、フレームには貼付けローラ27が回転可能に軸支されている。つまり、貼付けローラ27が両面接着シートT1の表面を押圧して転動しながらウエハW1の凹凸を有する表面に両面接着シートT1を貼り付けてゆく。
【0030】
カッターユニット15は、図示しない昇降機構により待機位置と、両面接着シートを切断する作用位置とにわたって昇降移動するとともに、ウエハW1の外形に沿ってカッタ刃を旋回走査させて両面接着シートT1をウエハ形状に切断する。
【0031】
シート剥離機構14は、そのフレームがテープ走行方向にスライド可能となるように装置本体のレールに把持され、図示しないモータなどの駆動部を介して連動連結されている。また、フレームには剥離ローラ28が回転可能に軸支されているとともに、この剥離ローラ28が図示しないシリンダなどによって上下揺動駆動するようになっている。剥離ローラ28は切断された後の不要な両面接着シートT2を支持基板W2から剥離する。
【0032】
シート回収部16は、基台2の縦壁に回収ボビン29が軸支され、モータなどの駆動部に連動連結されている。つまり、テープ供給部11から所定量の両面接着シートT1が繰り出されてウエハW上に供給されるとともに、駆動部が作動することにより両面接着シートT1を切断後の不要なテープT2が回収ボビン32に巻き取られるようになっている。
【0033】
基板貼合せ機構20は、図4に示すように、基台2の上が設けられ、開閉可能な減圧室36の内部に設けた構造となっている。なお、基板貼合せ機構20は、本発明の基板貼合せ装置に相当する。
【0034】
また、図3および図4に示すように、ウエハW1を水平に載置して保持する真空吸着式の保持テーブル37と、支持基板W2の周縁を4箇所で係止保持するに対向する2対の係止爪38と、これら係止爪38で支持基板W2を係止した状態で、その上方に位置で待機している押圧部材39と、これらの駆動手段とから構成されており、以下に各構成の具体的な構造について説明する。
【0035】
係止爪38は、ホルダ41に脱着可能にボルト締め連結されており、その先端部に、支持基板W2の周縁箇所を下方から受止め係止する部分円弧状の係止部38aが段違い状に備えられている。なお、係止爪38は、本発明の保持手段に相当する。
【0036】
ホルダ41は、平面視点において、水平横軸心Pを支点にして水平姿勢から下方への傾斜姿勢へと揺動可能に軸受けブラケット42に軸支されており、かつ、軸受けブラケット42は、可動台46に装備されている。可動台46は、昇降台49上に配備されており、エアーシリンダあるいはパルスモータでネジ送り駆動される直線横駆動機構47によって、水平に横移動可能に構成されている。つまり、各係止爪38は、基板保持位置と基板外方に後退した退避位置との間で往復移動できるようになっている。なお、直線駆動機構47は、本発明の駆動手段に相当する。
【0037】
さらに、直線横駆動機構47自体は、基台上に立設されたレール48に沿って昇降可能な昇降台49に装備されている。この昇降台49は、エアーシリンダあるいはパルスモータなどの駆動機構50を用いて昇降台49をネジ送り昇降することで、各係止爪38を昇降することができるよう構成されている。
【0038】
押圧部材39は、ウエハW1の直径よりも大きい直径を有する略半球形状の弾性体で構成されている。例えば、この実施例装置の場合、押圧部材39は、その押圧開始位置となる先端が、図5に示すように、扁平面40を有する。この扁平面40を有することで、押圧部材39による押圧力が局所的に支持基板W2に作用するのを抑制できる。換言すれば、押圧力を支持基板W2の径方向に分散させて略均一な押圧力を支持基板W2に作用させることができる。したがって、ウエハW1の破損を抑制できるとともに、貼合せ面に巻込む気泡を効率よく排出することができ、ウエハW1の外周部分に貼り合せむらなく支持基板W1とウエハW1を密着させることできる。
【0039】
また、押圧部材39は、取り付け基端側に円柱ブロック39aを有し、この円柱ブロック39aの高さc、半球形状のブロック39bの半径a、曲率半径R、扁平面Hの半径b、円柱ブロック39aの取付基端面からブロック39bの先端までの高さhおよび硬度などが貼り合せるウエハW1のサイズや材質によって適宜に設定されている。つまり、円柱ブロック39aの高さcは、押圧による弾性変形時に半球形状のブロック39bの部分が径方向と高さ方向にストレスなく変形できる高さに設定される。曲率半径Rは、押圧力が支持基板W1の径方向(放射状)に伝播され、支持基板W1への押圧力(面圧)が均一となる範囲に設定される。半径aは、ウエハW1に支持基板W2を貼り合せるとき、弾性変形した押圧部材39が支持基板W2の全面と接触して覆うサイズが好ましく、例えばウエハW1の直径の略2倍である。扁平面Hの半径bは、接触面積の面圧が均一となるように設定される。
【0040】
また、押圧部材39は、摩擦係数が低く耐熱性のあるものが好ましく、さらに好ましくは低硬度の材質のものである。例えば、シリコンゴムやフッ素ゴムなどを利用し、半球形状のブロックまたはバルーンに成形したものが利用される。
【0041】
例えば、これら押圧部材39aの条件を6インチのウエハW1に同形状の支持基板W2を貼り合せるときに適用した場合、半径aは600mm、扁平面Hの半径bは1〜10mm、円柱ブロック39aの高さcは10〜40mm、曲率半径Rは150〜300mm、両ブロック39a,39bを合せた高さhは、50〜150、および硬度(ショア硬さ)5〜30の範囲である。さらに好ましくは、半径aは600mm、扁平面Hの半径bは3mm、高さcは25mm、曲率半径Rは200mm、硬度(ショア硬さ)は先端部分で15、この先端部分から基端側に向うにつれて硬度が増し基端部分で20である。
【0042】
なお、上記曲率半径Rは、半球形状のブロック39bを球体として仮定したときの半径に基づいて求めているが、この方法に限定されるものではない。
【0043】
また、押圧部材39は、カバーケース61内で昇降可能に装着されている。つまり、カバーケース61には、4本のガイド軸63を介して上下スライド自在かつ、エアーシリンダ64によって駆動昇降される昇降枠65が装着されており、この昇降枠65に押圧部材39が装着されている。なお、押圧部材39、ガイド軸63、エアーシリンダ64、および昇降枠65などは、本発明の貼合せ手段として機能する。
【0044】
減圧室36は、図3および図4に示すように、基台上に設けられた略円筒状の固定周壁60と、この固定周壁60に図示しないヒンジを介して上下に揺動開閉可能に装着されたカバーケース61とから構成されており、図示されていない真空ポンプを作動させることで室内を減圧することが可能となっている。なお、固定周壁60の上端全周には、閉じられたカバーケース61の下端全周に密着して室内の機密を保つためのシール62が装着されている。さらに、扁平面を有する側面にはスライド開閉するシャッタ74が設けられている。つまり、ロボットアーム17によって吸着保持されたウエハW1および支持基板W2をシャッタ開口から内部に搬入させて、それぞれを保持テーブル37と各係止爪38に載置保持させる。
【0045】
次に、上記実施例装置を用いてウエハW1に支持基板W2を貼り付ける一巡の動作につてい図を参照しながら説明する。
【0046】
各カセットC1〜C3の装填や両面接着シートT1のセットなどの初期設定が完了すると、装置の作動を実行する。先ず、第1搬送機構7が旋回し、この機構に備わったロボットアーム6の基板保持部21がカセットC1内のウエハ同士の隙間に挿入される。ロボットアーム6は、その基板保持部21でウエハW1を裏面から吸着保持して取り出し、ウエハW1を第1アライメントステージ9に移載する。
【0047】
第1アライメントステージ9に載置されたウエハW1は、オリエンテーションフラットやノッチに基づいて位置合せされる。位置合せ後、ウエハW1は、ロボットアーム6によって裏面を吸着保持されてチャックテーブル23に移載される。
【0048】
チャックテーブル23に載置されたウエハW1は、位置合せが行なわれ、吸着保持される。このとき、図6に示すように、シート貼付機構13とシート剥離機構14とは左側の初期位置に、およびカッターユニット15は上方の待機位置にそれぞれ位置する。
【0049】
ウエハW1の位置合せが終了すると、図7に示すように、シート貼付機構13の貼付けローラ27が両面接着シートT1の表面を押圧しながら、シート走行方向とは逆方向(図7では左から右)に転動し、ウエハW1の表面全体に均一に両面接着シートT1を貼り付ける。
【0050】
シート貼付機構13が終了位置に達すると、図8に示すように、カッターユニット15が切断作用位置に降下し、刃先が両面接着シートT1に突き刺さり貫通する。刃先がウエハW1の周縁に沿って旋回移動することにより、両面接着シートT1を略ウエハ形状に切断する。
【0051】
両面接着シートT1を切断した後、カッターユニット15は、図9に示すように、上昇して待機位置に戻る。
【0052】
次に、シート剥離機構14が、支持基板上をシート走行方向とは逆方向(図9では左から右)に移動しながらウエハW1上で切断された不要なシートT2を巻き上げて剥離する。
【0053】
シート剥離機構14が剥離作業の終了位置に達すると、シート剥離機構14とシート貼付機構13とがシート走行方向に移動して、図6に示す初期位置に復帰する。このとき、不要なシートT2が回収ボビン29に巻き取られるとともに、一定量の両面接着シートT1が接着シート供給部10から繰り出される。なお、両面接着シートT1の表面に残るセパレータは適時に剥離される。
【0054】
両面接着シートT1の貼り付けられたウエハW1は、ロボットアーム6によって再び吸着されて第2搬送機構8に移載される。第2搬送機構8は、載置されたウエハW1を第2ロボットアーム17の受け渡し位置まで水平搬送する。
【0055】
第2搬送機構8により受け渡し位置に搬送されてきたウエハW1は、ロボットアーム17により非接着面である下方から吸着保持されて第2アライメントステージ19に移載され、ノッチなどに基づいて位置合せされる。位置合せ後、ウエハW1は、ロボットアーム17によって裏面を吸着保持されて基板貼合せ機構20の減圧室内の保持テーブル37に移載される。ウエハW1は、保持テーブル37により吸着保持された状態で支持基板W2が基板貼合せ機構20に搬送されてくるまで待機している。
【0056】
ウエハW1が、保持テーブル37に載置されると、第2ロボットアーム17は、支持基板W2の搬送を開始する。つまり、その先端の基板保持部22をカセットC1内の支持基板同士の隙間に挿入する。ロボットアーム17は、その基板保持部22で支持基板W2を裏面から吸着保持して取り出し、支持基板W2を第2アライメントステージ19に移載する。
【0057】
第2アライメントステージ19は、一対の係止爪75により支持基板W2を挟み込んで位置決めをする。位置決めが終了すると、ロボットアーム17は、支持基板W2の非貼合せ面である下方から吸着保持して上方で反転した後に、基板貼合せ機構20の減圧室内に搬入する。なお、支持基板W2によっては、位置合せ後に反転させる必要はないものもある。
【0058】
支持基板W2の搬入されると、支持基板W2の径に応じて予め入力された情報に基づいて決定されている基板中心側の所定位置まで各係止爪38を水平移動させ、これら係止爪38の係止部38aによって支持基板W2を4点支持状態で水平に係止保持する。係止保持が終了すると、ロボットアーム17は、減圧室36から退避する。このとき、保持テーブル37に吸着保持されたウエハW1と係止爪38で係止保持された支持基板W2とは近接した対向状態にある。
【0059】
ウエハW1と支持基板W2の装填が終了すると減圧室36のシャッタ74を閉じて密閉した後、排気処理を行って内圧を、例えば、65KPa(500mmHg)以下にまで減圧する。なお、この時点では、押圧部材39は、支持基板W2から上方で待機している。
【0060】
減圧処理が完了すると貼合せ開始指令を出し、支持基板W2をウエハW1に貼り合せを開始する。
【0061】
つまり、貼合せ指令が出されると、図10(a)に示すように、支持基板W2の上方の待機位置にある押圧部材39が、図10(b)に示すように、降下し始める。この降下動作に伴って押圧部材39の下方先端が支持基板W2の略中央と接触して押圧し、支持基板W2を微少に撓ませて支持基板W2とウエハW1の中央部分を貼り合せる。このとき、係止爪先端の下面が両面接着シートT1に接触しない程度で、かつ、支持基板W2の撓み量に応じて先端を下向きにして傾斜する。
【0062】
押圧部材39をさらに降下させてゆくにつれて、図10(c)に示すように、押圧部材39が弾性変形して支持基板W2の径方向に放射状に接触面積を拡大しつつ、支持基板W2をウエハW1に除々に貼り合わせてゆく。このとき、支持基板W2の撓み量が一定となるように、係止爪38が水平になりつつ降下してゆく。
【0063】
さらに、この押圧部材39の弾性変形によって支持基板W2に対する接触面性が拡大され、支持基板W2の周縁近くの所定の位置までくると、図11(a)に示すように、係止爪38は支持基板W2の貼合せを妨げないように、支持基板W2の係止保持を解除して基板外方にまで後退する。
【0064】
その後、図11(b)に示すように、押圧部材39をさらに押圧して支持基板W2の非貼合せ面の全面を弾性変形した押圧部材39で被覆してウエハW1への支持基板W2の貼り合せが完了する。
【0065】
貼り合せが完了すると、押圧部材39を上昇させて待機位置に戻した後、減圧室36へ外気が流入されて大気圧まで戻され、その後、シャッタ74を開放する。
【0066】
ロボットアーム17は、シャッタ開口から先端の基板保持部22を挿入し、支持基板W2の貼り合せたウエハW1を吸着保持して取り出す。この取り出したウエハW1をカセットC3に装填する。以上で1回の貼合せ処理が完了し、以後、上記作動を繰り返す。
【0067】
なお、上記実施例では、ウエハW1に同径の支持基板W2を貼り合せる場合を例示したが、ウエハW1より若干径の小さい支持基板W2を貼り合せる場合も、上記と同様に作動させればよい。
【0068】
以上のように、係止爪38で係止保持した支持基板W2の略中央から押圧部材39で押圧し、押圧部材39を弾性変形させながら支持基板W2の外方に放射状に接触面積を拡大しつつ、支持基板W2をウエハW1に除々に貼り合わせてゆくことにより、ウエハW1に対する支持基板W2の貼合せ位置のズレを抑制することができる。
【0069】
また、押圧力をウエハW1の外方に放射状に分散させながら支持基板W2をウエハW1に貼り合せることができるので、略均一に押圧力を加えることができる。したがって、貼り合せ時において、ウエハW1に局所的に押圧力が加わらないので、ウエハW1の破損などを抑制することができる。
【0070】
さらに、略中央から放射状に支持基板W1をウエハW1に貼り合せるので、貼合せ面に巻込む気泡を効率よく排出することができる。
【0071】
本発明は上述した実施例のものに限らず、次のように変形実施することもできる。
【0072】
(1)上記実施例では、基板貼合せ機構20の保持テーブル37にウエハW1を保持し、支持基板W2を貼り合わせていたが、その逆であってもよい。つまり、保持テーブ37に接着面を上向きにした支持基板W2を載置保持し、パターン面を下向きにしたウエハW1を係止爪38で係止保持した状態で貼り合わせる。
【0073】
(2)上記実施例の押圧部材39は、最初に支持基板W1を接触する下方先端の中心から径方向または/および基端側に向うにつれて硬度が高くなるように構成することが好ましい。例えば、先端から基端側に向けて硬度が高くなるように弾性体の材料配合を調整してもよいし、硬度の異なる弾性体のブロックを積層して構成してもよい。この構成によれば、貼合せ面に巻込む気泡を効率よく外部に排出させることができる。
【0074】
(3)押圧部材39は、その先端に扁平面40を有さない全体が同じ曲率を有する半球形状のブロックであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に係る基板貼合せ装置の斜視である。
【図2】本発明に係る基板貼合せ装置の全体構成を示す平面図である。
【図3】本発明に係る基板貼合せ機構の平面図である。
【図4】本発明に係る基板貼合せ機構の正面図である。
【図5】押圧部材の斜視図である。
【図6】両面接着シートの貼り付け動作を示す図である。
【図7】両面接着シートの貼り付け動作を示す図である。
【図8】両面接着シートの貼り付け動作を示す図である。
【図9】両面接着シートの貼り付け動作を示す図である。
【図10】支持基板の貼り合せ動作を示す図である。
【図11】支持基板の貼り合せ動作を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
20 … 基板貼合せ機構
37 … 保持テーブル
38 … 係止爪
39 … 押圧部材
W1 … 半導体ウエハ
W2 … 支持基板
T1 … 両面接着シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに両面接着シートを介在させて支持用の基板と貼り合わせる基板貼合せ方法において、
前記ワークに両面接着シートを貼り付ける貼付過程と、
複数個の保持手段で前記基板の周縁を保持し、貼り付けた前記両面接着シートを挟んで前記ワークと基板を近接させて対向配備する位置合せ過程と、
略半球形状の弾性体で構成された押圧部材で前記基板の非貼合せ面の略中央から押圧し、この押圧部材を弾性変形させて基板面に扁平接触させながら基板をワークに貼り合せる貼合せ過程と、
前記押圧部材の弾性変形による基板面に対する押圧接触面が基板周縁に近づくと、前記保持手段による基板の保持を解除し、基板外方に退避させる退避過程と、
を備えたことを特徴とする基板貼合せ方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基板貼合せ方法において、
前記貼合せ過程では、減圧雰囲気中で支持用の基板をワークに貼り合せる
ことを特徴とする基板貼合せ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−238966(P2011−238966A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171921(P2011−171921)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【分割の表示】特願2006−329730(P2006−329730)の分割
【原出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【出願人】(394016601)日東精機株式会社 (79)
【Fターム(参考)】