説明

塗工シート製造装置および製造方法

【課題】塗工シート製造装置の加速時から所定の生産速度時、さらに減速時のいずれの速度領域においても、従来以上に損紙を低減させるとともに塗工液を安定して塗布できる塗工シート製造装置および製造方法を提供する。また、塗工シートの品種の増加や高品質化のため、塗工装置を複数設置した場合にも、各塗工装置での塗工液量を自動制御することができる塗工シート製造装置および製造方法を提供する。
【解決手段】カーテンコータの塗工液供給量と乾燥装置の乾燥量とを制御する運転制御器を設け、運転制御器は、シートへの目標塗工液量と目標水分率と塗工液濃度と塗工シート製造装置の生産速度とからなる情報を入力する入力手段と、情報と塗工液供給量と乾燥量との相関関係を記憶した記憶手段と、情報と相関関係とに基づいて塗工液供給量と乾燥量とを演算する演算手段とを具えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製紙工場において製造される紙を原紙として、原紙の表面に塗工液を塗布・乾燥し、塗工シートを安定して生産するための塗工シート製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製紙工場で製造される紙の殆どは、目的の用途に適合した加工紙とされる。加工紙には様々なものがあり、その一つに塗工シートがある。塗工シートは、紙の表面に塗工液を塗布し塗工液膜を形成した後、乾燥工程を経て製造されるものである。塗工液を塗布する塗工装置として、ブレードコータを用いた接触式塗工装置とカーテンコータを用いた非接触式塗工装置とがある。接触式塗工装置にはこの他にロッドメタリングを用いた塗工装置もある。
【0003】
前記ブレードコータを用いた塗工装置は、走行するシートに所定の塗工液量を付着させ、付着した塗工液の余剰分をブレードの押し当て力を制御して掻き落とすことにより、シート表面に所要の厚さの塗工膜を形成するものである。ブレードコータを用いた塗工装置および制御方法については例えば特許文献1に示すような制御が公知である。
【0004】
ブレードコータを用いた塗工装置の欠点は、シートの塗工液付着面にブレードを押し当てるため、ブレードの磨耗や汚れによるストリークが発生したり、塗工液がシートの凹凸の影響を受け、凸部は薄く、凹部は厚くなるといったまだら状の塗工面になり易く、場合によっては、シート表面をブレードで引き掻くために、シートの凸部で繊維が露出してしまう程に塗工液が掻き落とされてしまう点である。また、ブレード自体も磨耗するため取替作業を必要とし、運転効率が悪いという問題があった。
【0005】
このようなブレードコータの不具合を改良したのがカーテンコータを用いた非接触式塗工装置である。該塗工装置は、カーテン膜状にした塗工液を走行するシートに直接流下させて塗布することにより、シートの表面に所要の厚さの塗工膜を形成するものである。カーテンコータを用いた塗工装置については例えば特許文献2に示すような構成が公知である。
【0006】
以下、図6によりカーテンコータを用いた従来の塗工シート製造装置の一例について説明する。該塗工装置は、内部に塗工液Xを溜めるポケット01aを有し、下端部に開口するスリット01bを形成したカーテンコータ01を、払出しロール19から繰り出されて下流側へ走行されるシート10の上方位置に設置し、走行するシート10の表面に塗工液Xをカーテン状に流下させて塗布を行ない、その後乾燥装置04へ導入して乾燥させて塗工シート10aを製造する装置である。
【0007】
また、カーテンコータを用いた従来の塗工シート製造装置には、図7に示すように、塗工シートの品種の増加や高品質化のためカーテンコータ01とカーテンコータ01′とをシート10の走行方向に所定間隔をおいて複数設置し、上流側に位置するカーテンコータ01からカーテン状に流下される塗工液をシート10の表面に直接塗布して塗工面を形成し、その後塗工液表面を乾燥装置18にて乾燥させ、さらに該塗工面上に下流側に位置するカーテンコータ01′よりカーテン状に流下する塗工液を重ねて塗布し、その後、再度乾燥装置04で乾燥させて多層塗工紙とするものもある。
【0008】
【特許文献1】特開平2−31859号公報
【特許文献2】特開2002−266292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで前述した従来のカーテンコータを用いた塗工装置においては、カーテンコータ01に供給する塗工液供給量の制御はオペレータの技量と勘に頼って操作しており、このため走行するシート10の表面に所要の厚さの塗工膜を形成するまでの調整に時間を要していた。同様に乾燥装置04の乾燥量制御もオペレータの技量と勘による操作であるため、シート10′が所要の水分率に達するまでの調整に時間を要していた。このため、塗布を開始してから品質が安定するまでの間に走行したシート10およびその間に要した塗工液は全て無駄になるといった問題があった。
【0010】
また、シート10が走行を開始してから所定の生産速度に到達するまでの増速中は、常時塗工シート製造装置速度が変わり、オペレータの操作による塗工液供給量の調整では安定した塗工膜厚の形成が極めて困難であるため、塗工シート製造装置の増速時には塗布することなく、所定の生産速度に達してから塗布を開始していた。同様に塗工停止時には、生産速度時にシート10への塗布を止め、その後生産速度から徐々に減速して塗工シート製造装置を停止させていた。このように塗工シート製造装置立ち上げ時や停止時の増減速時には、塗布されないシートのみを走行させていたため、その間は損紙を発生させざるを得なかった。
【0011】
また、塗工装置を複数設置した場合においては、オペレータの操作による各装置の調整がさらに困難となるばかりでなく、塗工シート製造装置の全長が長くなり、限られた工場内の所定場所への設置が困難であった。
【0012】
以上のようなことから、本発明はカーテンコータを用いた塗工装置において、塗工シート製造装置の加速時から所定の生産速度時、さらに減速時のいずれの速度領域においても、従来以上に損紙を低減させるとともに塗工液を安定して塗布できる塗工シート製造装置および製造方法を提供することを課題とする。また、塗工シートの品種の増加や高品質化のため、塗工装置を複数設置した場合にも、各塗工装置での塗工液量を自動制御することができる塗工シート製造装置および製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記の課題を解決することを目的としてなされ、下記の装置及び方法を提供する。
【0014】
その第1として、走行するシートに塗工液を塗布するカーテンコータと、塗工後の該シートを乾燥させる乾燥装置とを備えた塗工シート製造装置において、前記カーテンコータの塗工液供給量と前記乾燥装置の乾燥量とを制御する運転制御器を設け、該運転制御器は、前記シートへの目標塗工液量と目標水分率と塗工液濃度と塗工シート製造装置の生産速度とからなる情報を入力する入力手段と、前記情報と前記塗工液供給量と前記乾燥量との相関関係を記憶した記憶手段と、前記情報と前記相関関係とに基づいて前記塗工液供給量と前記乾燥量とを演算する演算手段とを具えていることを特徴とする塗工シート製造装置を提供する。
【0015】
第2として、前記運転制御器は、シート走行速度に応じて前記塗工液供給量と前記乾燥量とを制御する手段を具えていることを特徴とする第1記載の塗工シート製造装置を提供する。
【0016】
第3として、乾燥後の前記シートの塗工膜厚を計測する計測手段を設け、前記運転制御器が該計測値に基づいて前記塗工液供給量をフィードバック制御する手段を具えていることを特徴とする第1または第2記載の塗工シート製造装置を提供する。
【0017】
第4として、乾燥後の前記シートの水分率を計測する計測手段を設け、前記運転制御器が該計測値に基づいて前記乾燥量をフィードバック制御する手段を具えていることを特徴とする第1ないし第3のいずれか記載の塗工シート製造装置を提供する。
【0018】
第5として、走行するシートに塗工液を塗布する塗工手段を複数設け、該複数の塗工手段のうち少なくともいずれか一つの塗工手段がカーテンコータであることを特徴とする第1ないし第4のいずれか記載の塗工シート製造装置を提供する。
【0019】
第6として、前記複数の塗工手段が走行するシートの両面に設置されたことを特徴とする第5記載の塗工シート製造装置を提供する。
【0020】
第7として、前記カーテンコータと乾燥装置の間であってシート進行方向と直行する方向にエアターン装置を設置し、かつ該エアターン装置の上流側のシート面延長線下方に該カーテンコータ下端部が位置するようエアターン装置を設けたことを特徴とする第1ないし第6のいずれか記載の塗工シート製造装置を提供する。
【0021】
第8として、走行するシートにカーテンコータから塗工液を塗布することにより塗工シートを製造する塗工シート製造方法において、前記塗工液の供給量をシート走行速度に応じた目標塗工量から演算により求めることを特徴とする塗工シート製造方法を提供する。
【0022】
第9として、前記塗工液供給量を所定のシート速度に対する塗工液濃度、目標塗工液量および塗工液供給量との相関関係から求めることを特徴とする第8記載の塗工シート製造方法を提供する。
【0023】
第10として、塗工シートから塗工液量を検出し、該検出値と前記目標塗工液量との差分を求め、該差分が所定の許容範囲内から外れたときには前記塗工液供給量を補正することを特徴とする第8または第9記載の塗工シート製造方法を提供する。
【0024】
第11として、走行するシートに前記カーテンコータから塗工液を塗布した後、該シート上の塗工液を乾燥させて塗工シートを製造する塗工シート製造方法において、シート走行速度に応じた目標水分率から乾燥量を演算により求め、該乾燥量に基づきシートを乾燥することを特徴とする第8ないし第10のいずれか記載の塗工シート製造方法を提供する。
【0025】
第12として、前記乾燥量を所定のシート速度に対する目標塗工液量、塗工液濃度、目標水分率および乾燥量との相関関係から求めることを特徴とする第11記載の塗工シート製造方法を提供する。
【0026】
第13として、乾燥されたシートから水分率を検出し、該検出値と前記目標水分率との差分を求め、該差分が所定の許容範囲内から外れたときには前記乾燥量を補正することを特徴とする第11または第12記載の塗工シート製造方法を提供する。
【0027】
第14として、乾燥されたシートから塗工液量を検出し、該検出値と前記目標塗工液量との差分を求め、該差分が所定の許容範囲内から外れたときには前記塗工液供給量を補正することを特徴とする第11ないし第13のいずれか記載の塗工シート製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0028】
第1記載の塗工シート製造装置において、運転制御器を設けた構成としたことで、シートへの目標塗工液量と目標水分率と塗工液濃度と生産速度とからなる情報を入力すると、相関関係に基づいてカーテンコータへの塗工液供給量と乾燥装置の乾燥量とを演算するため、シート走行速度(塗工シート製造装置速度)が生産速度に達し塗布および乾燥を開始した直後から所要の塗工膜厚および水分率の塗工シートを形成することができる。従って、塗布および乾燥を開始してから品質が安定するまでの間に走行するシートや塗工液の損失を抑制することができる。さらに熟練したオペレータによる塗工液供給量の調整も不要となる。
【0029】
第2記載の塗工シート製造装置において、シート走行速度に応じた塗工液供給量と乾燥量とを演算する運転制御器を設けた構成としたことで、上記第1記載の装置と同様の作用効果に加え、塗工シート製造装置稼動開始から生産速度に至るまでの増速途中、もしくは生産速度から停止に至るまでの減速途中であっても所要の塗工膜厚および水分率の塗工シートを形成することができる。従って、塗工シート製造装置の加減速時に走行するシートの損失を抑制することができる。
【0030】
第3記載の塗工シート製造装置において、塗工膜厚を計測する計測手段を設けた構成としたことで、上記第1または第2記載の装置と同様の作用効果に加え、フィードバック制御により塗工液供給量を補正することで、常に所要の塗工膜厚の塗工シートを継続して形成することができる。従って、塗工膜厚に不具合が生じてから、塗工液供給量を調整して所要の塗工膜厚に復帰するまでの間に走行するシートや塗工液の損失を抑制することができる。
【0031】
第4記載の塗工シート製造装置において、水分率を計測する計測手段を設けた構成としたことで、上記第1ないし第3のいずれか記載の装置と同様の作用効果に加え、フィードバック制御により乾燥量を補正することで、常に所要の水分率の塗工シートを継続して形成することができる。従って、水分率に不具合が生じてから、乾燥量を調整して所用の水分率に復帰するまでの間に走行するシートや塗工液の損失を抑制することができる。さらに熟練したオペレータによる乾燥量の調整も不要となる。
【0032】
第5記載の塗工シート製造装置において、塗工手段を複数設けた構成としたことで、上記第1ないし第4のいずれか記載の装置と同様の作用効果に加え、塗布直後から損紙や塗工液の損失を発生させることなく多層塗工シートを安定して生産することができる。
【0033】
第6記載の塗工シート製造装置において、シートの両面に塗工手段を設けた構成としたことで、上記第5記載の装置と同様の作用効果に加え、塗布直後から損紙や塗工液の損失を発生させることなく両面塗工シートを安定して生産することができる。
【0034】
第7記載の塗工シート製造装置において、エアターン装置を設けた構成としたことで、上記第1ないし第6のいずれか記載の装置と同様の作用効果に加え、塗工シート製造装置のレイアウトのバリエーションが増えるとともに、装置全体をコンパクトに配置することができる。さらにエアターン装置がカーテンコータに接近した位置に配置されても、エアターン装置の上流側のシート面延長線下方に該カーテンコータ下端部が位置するようエアターン装置が配置されるため、エアターン装置からの風圧の影響がカーテンコータで形成する塗工液膜に及ぶこともなく安定した塗工ができる。
【0035】
第8記載の塗工シート製造方法において、シート走行速度に応じた塗工液供給量を求めるようにしたことで、シート走行速度に影響なく塗布開始直後から所要の塗工膜厚の塗工シートを形成することができる。従って、塗布を開始してから品質が安定するまでの間に走行するシートや塗工液の損失を抑制することができる。さらに熟練したオペレータによる塗工液供給量の調整も不要となる。
【0036】
第9記載の塗工シート製造方法において、相関関係から塗工液供給量を求めるようにしたことで、上記第8記載の方法と同様の作用効果に加え、塗工液濃度に影響なく塗布開始直後から所要の塗工膜厚の塗工シートを形成することができる。
【0037】
第10記載の塗工シート製造方法において、塗布後の塗工膜厚を検出し塗工液供給量を補正するようにしたことで、上記第8または第9記載の方法と同様の作用効果に加え、常に所要の塗工膜厚の塗工シートを継続して形成することができる。従って、塗工膜厚に不具合が生じてから、塗工液供給量を調整して所要の塗工膜厚に復帰するまでの間に走行するシートや塗工液の損失を抑制することができる。
【0038】
第11記載の塗工シート製造方法において、シート走行速度に応じた乾燥量を求めるようにしたことで、上記第8ないし第10のいずれか記載の方法と同様の作用効果に加え、シート走行速度に影響なく乾燥開始直後から所要の水分率の塗工シートを形成することができる。従って、乾燥を開始してから品質が安定するまでの間に走行するシートや塗工液の損失を抑制することができる。
【0039】
第12記載の塗工シート製造方法において、相関関係から乾燥量を求めるようにしたことで、上記第11記載の方法と同様の作用効果に加え、目標塗工液量および塗工液濃度に影響なく乾燥開始直後から所要の水分率の塗工シートを形成することができる。
【0040】
第12記載の塗工シート製造方法において、乾燥後の水分率を検出し乾燥量を補正するようにしたことで、上記第11または第12記載の方法と同様の作用効果に加え、常に所要の水分率の塗工シートを継続して形成することができる。従って、水分率に不具合が生じてから、乾燥量を調整して所要の水分率に復帰するまでの間に走行するシートや塗工液の損失を抑制することができる。さらに熟練したオペレータによる乾燥量の調整も不要となる。
【0041】
第14記載の塗工シート製造方法において、乾燥後の塗工膜厚を検出し塗工液供給量を補正するようにしたことで、上記第11ないし第13のいずれか記載の方法と同様手段の作用効果に加え、乾燥後でも常に所要の塗工膜厚の塗工シートを継続して形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0043】
(第1の実施の形態)
本発明の第1実施形態にかかる塗工シート製造装置および製造方法を説明すると、図1はその塗工シート製造装置の構成図であり、図2はその塗工シート製造装置の制御フロー図である。なお、図1において図6と同符号は同一のものを示す。
【0044】
そこで以下、図1に基づいて本実施形態にかかる塗工シート製造装置の構成を説明する。
アンリール08−1に巻回されたシート10をリール09−1で巻き取りながら繰り出し、該シート10の表面に塗工液をカーテン状に流下させて塗布するカーテンコータ01が該シート10の上方位置に配設され、カーテンコータ01の下流側には、シート10の長さ方向所定領域を覆う乾燥装置04が図示の如く設置される。
【0045】
アンリール08−1およびリール09−1は最外層のシート周速が同期するようそれぞれ駆動用モータ08−2および駆動用モータ09−2により駆動される。
【0046】
カーテンコータ01には、内部に塗工液Xを溜めるポケット01aが設けられ、該下端部には開口するスリット01bが形成されている。該ポケット01aには、塗工液を貯留した塗工液供給タンク03から塗工液供給ポンプ02−1を経由して塗工液が供給される。塗工液の供給構成は、その塗工液供給量をカーテンコータ01へ供給できる構成であればよく、当該構成に限定されない。また、塗工液中の気泡を除去するために、カーテンコータ01の上流側に脱泡器を設けてもよい。
【0047】
熱風乾燥機04は少なくとも塗工側から乾燥させる構成とし、塗工シート両面から挟み込むような配置にして乾燥させるようにするとなおよい。乾燥装置04はブロア用モータ06−2で駆動されるブロア06−1により熱交換器05で発生する熱が送熱供給され、該熱風により塗工シート10を乾燥させる熱風吹出し式のものである。このほか、赤外線ヒータ方式で直接塗工シートを加熱乾燥する方式としてもよく、塗工シートを乾燥できる構成であれば当該構成に限定されない。また適正塗工量制御をするため本願発明に係る塗工装置には運転制御器11が設けられ、カーテンコータ01の上流側および乾燥装置04の下流側のシート10直近にそれぞれ設置されたB/M計07−1と07−2により、シート10表面の塗工状態を示すデータを検出し、該データに基づき運転制御器11にて塗工シート製造装置の各種制御を行うようにしている。
【0048】
つぎにこれらの機器の作用につき説明する。駆動モータ08−2および09−2は、塗工シート製造装置起動時から停止時までそれぞれアンリール08−1およびリール09−1の最外層のシート周速が同期するよう運転制御器11により制御され、シートの破断を防止するとともに、アンリール08−1がなくなる時には図示しない紙継ぎ装置により新しいロールと紙継ぎされ、塗工シート製造装置を停止させることなく連続塗工ができる構成としている。当該駆動モータ08−2および09−2の駆動制御は、運転制御器11中の演算装置13により行われる。
【0049】
07−1は塗工前のシート10の坪量と水分率とを計測するためにアンリール08−1の下流側でかつカーテンコータ01の上流側に設けたB/M計であり、07−2は乾燥後のシート10の坪量と水分率とを計測するために乾燥機04の下流側でかつリール09−1の上流側に設けたB/M計である。当該B/M計07−1および07−2により計測されたデータは運転制御器11内にあるB/M計演算器12へと送られる。当該塗工シート製造装置の設置される地方や季節変動、工場内の環境等の気温や湿度等の影響により塗工前シートの状態を明確に把握することは難しいため、B/M計07−1を設置することにより、より高品質の塗工管理ができるが、塗工シートの品質が低い場合には、事前に塗工前のシート10の坪量と水分率等のシート10情報を直接運転制御器11に入力するようにして、B/M計07−1を割愛してもよい。
【0050】
熱風乾燥装置04は、通過する塗工シート全域に熱を放出させることにより、シート10上に塗布された塗工液の表面を設定された所定の水分率になるよう均一に加熱乾燥させて塗工シートの品質を確保している。当該乾燥装置04の熱風の風量は前記B/M計07−2で塗工シートの乾燥情報を元に、運転制御器11内にある演算装置13により適正乾燥するよう制御される。
【0051】
11は運転制御器で、入力装置14とB/M計演算器12と演算装置13とにより構成され、オペレータによる入力情報のほか、駆動モータ08−2および09−2の駆動情報、B/M計07−1および07−2から送られるシートの坪量と水分率のシート計測情報を演算処理し、演算結果を用いて該シート速度に応じた塗工液供給ポンプ駆動モータ02−2による塗工量およびブロア用モータ06−2による乾燥量を制御している。
【0052】
前記入力装置14は、塗工シート製造装置稼動前に所定の入力情報を入力する装置で、入力情報としては、塗工シート製造装置の生産速度、使用する塗工液濃度、目標塗工液量(塗工膜厚)、および目標水分率がある。
【0053】
前記B/M計演算器12は、B/M計07−1および07−2からのシート計測情報を受信すると、塗工前後のシート計測情報の差分を求め、塗工後のシート10の塗工膜厚と水分率とをそれぞれ演算する。
【0054】
前記演算装置13は、塗工シート製造装置の生産速度、使用する塗工液濃度、目標塗工液量、目標水分率、およびこれらのデータに対応する塗工液供給量および乾燥量との相関関係のデータを記憶保持しており、塗工シート製造装置の運転状況や塗工シートの塗布状況に応じ、最適の塗工品質を確保するよう塗工液供給ポンプ駆動モータ02−2およびブロア用モータ06−2へ制御信号を発信する。該相関関係のデータは、前記相関関係を事前に実験や実機計測データを元に作成された情報であり、演算装置13の初期データとして内蔵されるものである。該相関関係のデータは、運転制御器11の外部に設けた記憶媒体に保持し、LAN回線等により運転制御器11に繋いだ構成であってもよい。前記塗工液濃度については、塗工液濃度計測装置を塗工液供給タンク03に設置し、計測した塗工液濃度を入力装置14へ自動入力するようにしても、塗工シート製造装置稼動前にオペレータがその計測値を前記入力装置14からマニュアル入力するようにしてもよい。
【0055】
次に、図2に基づいて本実施形態にかかる塗工シート製造装置の制御フローを説明する。
(A−STEP1)まず運転制御器11の入力装置14に、目標塗工量Tと塗工液濃度Sと生産速度Vと目標水分率Wとからなる入力情報を入力する。当該入力は初期値として塗工シート製造装置稼動前にオペレータが事前に入力する。
【0056】
(A−STEP2a)入力情報が入力されると、演算装置13は該入力情報を元に記憶保持された相関関係のデータ群の中から、生産速度Vに対応するデータを抽出する。該データには塗工液濃度Sに対応する目標塗工液量Tおよび塗工液供給量Qとの相関関係が示されている。該相関関係のデータにおいて、入力された塗工液濃度Sのカーブ上で目標塗工液量Tに対応する塗工液供給量Qを求める。
【0057】
(A−STEP2b)乾燥量の制御についても同様に、演算装置13は前記入力情報を元に記憶保持された相関関係のデータ群の中から、生産速度Vと目標塗工量Tとに対応するデータを抽出する。該データには塗工液濃度Sに対応する目標水分率Wおよび乾燥量Dとの相関関係が示されている。該相関関係のデータにおいて、入力された塗工液濃度Sのカーブ上で目標水分率Wに対応する乾燥量Dを求める。なお、図2中に該相関関係の一例を示すが、図示するようなグラフでなくとも前記パラメータ相互の関係が分かるものであれば他のグラフや数式であってもよい。
【0058】
ところで、上述した相関関係のデータとは、図2中のA−STEP2aおよび2bに示すように、例えば、塗工シート製造装置速度(以下「マシン速度」という)Vを一定としたときの塗工液供給量Qと目標塗工液量Tとの関係を各塗工液濃度S毎に求めたものやマシン速度Vと目標塗工液量Tとを一定としたときの乾燥量Dと目標水分率Wとの関係を各塗工液濃度S毎に求めたものである。これにより、生産速度Vと塗工液濃度Sとが設定されると、目標塗工液量Tを特定することにより塗工液供給量Qが得られ、さらに目標水分率Wを特定することにより乾燥量Dが得られる。このような相関関係のデータを各マシン速度V毎に事前に演算装置13に記憶させておく。より最適な制御を行うためには、前記演算時から、その後実際に塗布や乾燥がシート10に反映される時までの時間的なずれを考慮して、当該時間差分のマシン速度Vを予測して演算する必要がある。
【0059】
(A−STEP3a)塗工シート製造装置の稼動中は、アンリール駆動モータ08−2とリール駆動モータ09−2から演算装置13にマシン速度信号が常時発信され、マシン速度が生産速度Vに達すると、演算装置13は演算した塗工液供給量分Qの塗工液供給量信号を塗工液供給ポンプ駆動モータ02−2へと送る。塗工液供給ポンプ駆動モータ02−2は塗工液供給量信号を受信し、塗工液供給ポンプ02−1を駆動して塗工液量Qを塗工液供給タンク03からカーテンコータ01に供給する。カーテンコータ01はポケット01aで塗工液を受け、スリット01bを通して塗工液をカーテン膜状に形成しシート10表面へ塗布する。
【0060】
(A−STEP3b)一方、乾燥量の制御については、マシン速度が生産速度Vに達すると、演算装置13は演算した乾燥量分Dの乾燥量信号をブロア用モータ06−2へと送る。ブロア用モータ06−2は乾燥量信号を受信するとブロア06−1を駆動して乾燥量Dに見合う所定の風量により熱交換機05で作られた熱源を熱風乾燥機04へ送り込み塗工シートを乾燥する。
【0061】
(A−STEP4aおよび4b)塗布中は、B/M計07−1が塗布前のシート10の坪量と水分率とを計測し、B/M計演算器12へ計測値を常時発信する。同様にB/M計07−2は乾燥後のシート10の坪量と水分率とを計測し、B/M計演算器12へ計測値を常時発信する。
【0062】
(A−STEP5aおよび5b)B/M計演算器12は各B/M計からの計測値を受信すると、前記坪量から塗工液量Tを演算するとともに、実測した水分率Wを演算し、それらの演算結果を演算装置13に発信する。
【0063】
(A−STEP6aおよび6b)演算装置13はB/M計演算器12にて演算した塗工液量Tと入力した目標塗工液量Tとの差分である塗工液量ΔTを演算する。差分の塗工液量ΔTは目標値と実測値とのズレであり、該塗工液量ΔTの値が所定の許容範囲を逸脱した場合には、演算装置13は塗工液量ΔTを消滅するに必要な塗工液供給量ΔQを求め、現在の塗工液供給量Qに差分の塗工液供給量ΔQを加算する補正を行う。乾燥量についても同様に、実測による水分率Wと入力した目標水分率Wとの差分である水分率ΔWを演算する。差分の水分率ΔWは目標値と実測値とのズレであり、該水分率ΔWの値が所定の許容範囲を逸脱した場合には、演算装置13は水分率ΔWを消滅するに必要な乾燥量ΔDを求め、現在の乾燥量Dに差分の乾燥量ΔDを加算する補正を行う。
【0064】
(A−STEP7aおよび7b)演算装置13は、塗工液供給量Q+ΔQおよび乾燥量D+ΔDに見合う塗工液供給量信号および乾燥量信号に換算した信号を塗工液供給ポンプ駆動モータ02−2およびブロア用モータ06−2にそれぞれ発信して、シート10の坪量および水分率の実測値が常に所定の許容値内となるように、塗工液供給量および乾燥量を補正するフィードバック制御を行う。
【0065】
このように、第1の実施形態によれば、塗工液供給量および目標水分率に合致する適正乾燥量を、それぞれ内蔵した相関関係のデータから演算し、これを元に塗布や乾燥を行うため、塗布開始直後から所要の塗工膜厚の塗工シートを形成することができる。また、生産途中で塗工膜厚もしくは水分率に許容値を超える微小なずれが生じた場合にも、フィードバック制御により塗工液供給量もしくは乾燥量の補正を自動的に行うことができるため、安定した塗工シートの生産ができる。従って、従来の問題点であった、塗布を開始してから塗工膜厚と水分率とが安定するまでに生じたシートおよび塗工液の損失を格段に抑制することが可能となる。また、塗工シート製造装置稼動後は熟練オペレータの操作は一切不要となる。
【0066】
ところで、カーテンコータ01がシート幅に応じて塗布幅を制御できるものである場合には、入力装置14への入力情報としてシート幅情報を追加入力し、演算装置13でカーテンコータ01の塗布幅制御信号に変換してカーテンコータ01の幅制御をすることにより、シート幅に応じた塗工液量を供給するようにしてもよい。こうすることで、シート幅に応じた塗工液量を塗布するため、塗工液の不必要な供給を抑制することができる。
【0067】
(第2の実施の形態)
つぎに、図3に示す本発明の第2実施形態にかかる塗工シート製造装置および製造方法を説明する。第2実施形態にかかる塗工シート製造装置は、熱風乾燥装置04の上流側にカーテンコータを所要間隔へだてて2機直列配置した装置である。すなわち、カーテンコータ01でシート10表面に塗工液を塗布した直後に、さらにカーテンコータ01′で塗工液を重ねて塗布する装置である。
【0068】
該2機のカーテンコータからの塗工液供給量の制御は、いずれか一方のカーテンコータからの塗工液供給量を所定量とし、他方のカーテンコータからの塗工液供給量を前記第1実施形態に示した制御方法とすることにより制御することができる。2機とも最適塗工するように制御するためには、双方のカーテンコータ間にB/M計07−3を追加し、上流側の第1のカーテンコータ01についてはB/M計07−1と07−2とにより、下流側の第2のカーテンコータ01′についてはB/M計07−2と07−3とにより計測した塗工信号を元に運転制御器11にて制御するようにする。このときのカーテンコータ01と01′との塗工液供給量は塗工シートの仕様により各坪量比を、例えば60:40のごとく設定することで調整する。
なお、第2の実施の形態では2機の塗工装置を例にとって説明したが、2機に限定されることはなく、複数の塗工装置を用いた塗工シート製造装置であってもよい。また、該塗工装置のうち少なくとも一の塗工装置をカーテンコータとし、前記のような塗工制御を行うものであればよい。
【0069】
このようにカーテンコータを用いた塗工装置を各々前記制御することにより、極めて高品質の多層コート紙を安定して生産することができる。また、各々の塗工装置に供給する塗工液の種類を適宜選択することで、塗工シートの品種を増やすことができる。さらに、同一塗工液を用いた多層コートの場合、複数の塗工装置のいずれかの塗工装置に不具合等が発生しても、該塗工装置の塗工液供給量を他の塗工装置から塗布することで、応急的に稼動を続けることも可能となる。
【0070】
図4に4機直列配置したカーテンコータを用いた塗工装置を示す。このようにカーテンコータを用いた塗工装置を3機、4機と多数直列配置することにより、塗工シートの品質向上や品種を増やすこともできる。図4では4機ともカーテンコータで示したが、他の塗工装置として、このうち少なくとも一の塗工装置をカーテンコータとしてもよい。少なくとも一の塗工装置をカーテンコータとすることにより、他の塗工装置により生ずるまだら状の塗工欠陥等の不具合は解消することができるからである。
なお塗工装置の台数に応じ、乾燥機についても適宜増設し、設置場所についても塗工液の乾燥を踏まえて配置するのが望ましい。
【0071】
(第3の実施の形態)
続いて、図5に示す本発明の第3実施形態にかかる塗工シート製造装置および製造方法を説明する。第3実施形態は、カーテンコータを用いた塗工装置下流部にエアターン装置15を配置したものである。エアターン装置15はシートに面する側の表面形状が円弧を描く部分円柱状の装置で、該部分円柱状の面にはエア噴出しの孔が多数設けられ、塗工シートの走行方向を塗工シートに無接触で変更することができる装置である。
【0072】
該エアターン装置15は、当該装置からエアが塗工シートを伝って空気流となって吹き上げられるため、直近のカーテンコータを用いた塗工装置から流下するカーテン状の塗工液に影響がないよう配置しなければならない。すなわち、カーテンコータを用いた塗工装置で塗布された塗工シートを第1のターンバー16により一旦シート裏側方向へ向きを変え、その後塗工面側からエアを吹き付けるようにエアターン装置15を設ける。このとき該ターンバー16とエアターン装置15下流側端部とで形成される塗工シートの勾配面を延長した面より少なくとも下方にカーテンコータの塗工液吐出部がくるように設置するのが望ましい。このように設置することにより、塗工液吐出部から流下する塗工液を、エアターン装置15からの強い空気流の影響を受けることなく、安定して塗布することができるからである。エアターン装置を用いた場合、塗工シートの塗工面に直接触れることなく塗工シートの流れの向きを適宜変えることができるため、装置構成や機器配置の自由度が増し、装置全体をよりコンパクト化することができる。
【0073】
図5に示す塗工シート製造装置は、カーテンコータをシートの表裏両面に対して2機ずつ計4機設置した例を示している。このときシート表側の塗布後にエアターン装置を配置することにより、塗工シートを90度上方へと向きを変えることができ、さらに第2のターンバー17により塗工シート裏面から支持することによって塗工シートの向きをさらに90度変えることもできる。このようにエアターン装置を配置することにより装置の全体配置を適宜変えることができ、装置構成や機器配置の自由度を増すとともに、装置全体をよりコンパクト化できるため工場内における設置面積をより少なくすることができる。
図5では4機の塗工装置を例にとって説明したが、本願発明は塗工装置の台数を4機に限定するものではなく、それ以外の複数の塗工装置を用いた塗工シート製造装置であって、かつ該塗工装置のうち少なくとも一の塗工装置をカーテンコータとし、前記のような塗工制御を行うものであればよい。少なくとも一の塗工装置をカーテンコータとすることにより、他の塗工装置により生ずるまだら状の塗工欠陥等の不具合は解消されるからである。
なお塗工装置の台数に応じ、乾燥機についても適宜増設し、設置場所についても塗工液の乾燥を踏まえて配置するのが望ましい。
【0074】
(第4の実施の形態)
さらに、本発明の第4実施形態にかかる塗工シート製造装置および製造方法を説明する。
第4実施形態は、塗工シート製造装置稼動開始から生産速度に至るまでの増速途中もしくは生産速度から停止に至るまでの減速途中での塗工液制御方法にかかる発明である。本実施形態にかかる装置構成は前述のいずれのものであってもよいので、ここでは制御フローだけを説明する。
【0075】
まず増速中の制御方法につき説明する。運転制御器11の入力装置14に目標塗工液量Tと塗工液濃度Sと生産速度Vと目標水分率Wからなる入力情報を入力する。当該入力は初期値として塗工シート製造装置稼動前にオペレータが事前に入力する。
【0076】
入力情報が入力されると、演算装置13は該入力情報を元に前述した相関関係のデータ群の中から、増速中の所定の塗布開始速度V′に対応するデータを抽出する。該相関関係のデータを用いて、入力された塗工液濃度Sのカーブ上で目標塗工液量Tに対応する塗工液供給量Q′が演算により求められる。
【0077】
乾燥量の制御についても同様に、演算装置13は前記入力情報を元に前述した相関関係のデータ群の中から、増速中の所定の塗布開始速度V′と目標塗工量Tとに対応するデータを抽出する。該相関関係を用いて、入力された塗工液濃度Sのカーブ上で目標水分率Wに対応する乾燥量D′が演算により求められる。
【0078】
塗工シート製造装置の稼動中は、アンリール駆動モータ08−2とリール駆動モータ09−2から演算装置13にマシン速度信号が常時発信され、増速中のマシン速度が所定の塗布開始速度V′に達すると、演算装置13は演算した塗工液供給量分Q′の塗工液供給量信号を塗工液供給ポンプ駆動モータ02−2へと送る。塗工液供給ポンプ駆動モータ02−2は塗工液供給量信号を受信し、塗工液供給ポンプ02−1を駆動して塗工液量Q′を塗工液供給タンク03からカーテンコータ01に供給する。カーテンコータ01はポケット01aで塗工液を受け、スリット01bを通して塗工液をカーテン膜状に形成しシート10表面へ塗布する。このとき塗工シート製造装置の加速分を踏まえた制御を行う必要がある。すなわち、前記演算時のマシン速度がV′のとき、前記演算後、該演算結果が実際にシート10に塗布されるまでの時間的差分に対応するマシン速度変化分ΔVを該マシン速度V′に加算し、該演算時にはマシン速度を「V′+ΔV」として演算する。
【0079】
一方、乾燥量の制御については、増速中のマシン速度が所定の塗布開始速度V′に達すると、演算装置13は演算した乾燥量分D′の乾燥量信号をブロア用モータ06−2へと送る。ブロア用モータ06−2は乾燥量信号を受信するとブロア06−1を駆動して乾燥量D′に見合う所定の風量により熱交換機05で作られた熱源を熱風乾燥機04へ送り込み塗工シートを乾燥する。前記塗工同様、前記演算後〜該演算結果が実際にシート10を乾燥するまでの時間的差分に対応するマシン速度変化分ΔV′を該マシン速度V′に加算し、該演算時にはマシン速度を「V′+ΔV′」として演算する。
【0080】
その後はフィードバック制御となる。すなわち、B/M計07−1と07−2から計測した坪量および水分率の検出信号がB/M計演算器12へ送られ、該B/M計演算器12は前記A−STEP5aおよび5bと同様に、実測による塗工液量および水分率を演算する。以降は前記A−STEP6aおよび6bと同様演算装置13により塗工液供給量および乾燥量を演算し、前記A−STEP7aおよび7bと同様にそれぞれカーテンコータを用いた塗工装置および乾燥装置を制御する。
【0081】
以降、A−STEP3aおよび3b〜A−STEP7aおよび7bを繰り返し、増速中のマシン速度と塗工液供給および乾燥量とが常時見合うよう制御を繰り返す。さらに生産速度から停止に至る制御も同様に、減速中のマシン速度と塗工液供給および乾燥量とが常時見合うよう制御を繰り返す。また増速時と同様に、該演算時のマシン速度がVのとき、該演算結果が実際に塗布や乾燥によりシート10に反映されるまでの時間変化に対応するマシン速度変化分ΔVを該マシン速度Vに加算し、該演算時にはマシン速度を「V+ΔV」として演算する。減速時には該ΔVは負の値となる。
【0082】
このように第4の実施の形態によれば、マシン速度に応じて塗工液供給量を演算し実測値と比較し、当該差分が許容範囲内となるよう制御するため、塗工シート製造装置の増速中または減速中にも所要の塗工膜厚の塗工シートを形成することができる。従って、従来問題であった塗工シート製造装置の加減速時に発生していたシートの損紙を大幅に抑制することが可能となる。また塗工シート製造装置停止時に、稼動時の制御情報を前記相関関係データに取り込むようにし、次回の塗工シート製造装置稼動時に反映させるよう学習機能を付加するとさらに好適な塗工制御ができる。
【0083】
なお本発明は、上述した各実施の形態に限定されるものではない。上述した各々の実施形態は、塗工シート製造装置として独立したオフマシンであるが、製紙機械に連接されたオンマシンであっても良い。また、カーテンコータを用いた塗工装置と他の塗工装置とを組み合わせた形態としても良い。また、適宜カレンダ処理を行う形態としても良い。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の塗工シート製造装置の構成図。
【図2】本発明の塗工シート製造装置の制御フロー図。
【図3】本発明の他の実施形態を示す概要図。
【図4】本発明の他の実施形態を示す概要図。
【図5】本発明の他の実施形態を示す概要図。
【図6】従来の塗工シート製造装置の構成図。
【図7】従来の他の塗工シート製造装置の構成図。
【符号の説明】
【0085】
X 塗工液
01 カーテンコータ
01a ポケット
01b スリット
02−1 塗工液供給ポンプ
02−2 塗工液供給ポンプ駆動モータ
03 塗工液供給タンク
04 熱風乾燥機
05 熱交換機
06−1 ブロア
06−2 ブロア用モータ
07−1 B/M計
07−2 B/M計
07−3 B/M計
07−4 B/M計
07−5 B/M計
08−1 アンリール
08−2 駆動モータ(アンリール)
09−1 リール
09−2 駆動モータ(リール)
10 シート
10a 塗工シート
11 運転制御器
12 B/M計演算器
13 演算装置
14 入力装置
15 エアターン装置
16 ターンバー
17 ターンバー
18 乾燥装置
19 払出しロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行するシートに塗工液を塗布するカーテンコータと、塗工後の該シートを乾燥させる乾燥装置とを備えた塗工シート製造装置において、
前記カーテンコータの塗工液供給量と前記乾燥装置の乾燥量とを制御する運転制御器を設け、
該運転制御器は、
前記シートへの目標塗工液量と目標水分率と塗工液濃度と塗工シート製造装置の生産速度とからなる情報を入力する入力手段と、
前記情報と前記塗工液供給量と前記乾燥量との相関関係を記憶した記憶手段と、
前記情報と前記相関関係とに基づいて前記塗工液供給量と前記乾燥量とを演算する演算手段とを具えていることを特徴とする塗工シート製造装置。
【請求項2】
前記運転制御器は、シート走行速度に応じて前記塗工液供給量と前記乾燥量とを制御する手段を具えていることを特徴とする請求項1に記載の塗工シート製造装置。
【請求項3】
乾燥後の前記シートの塗工膜厚を計測する計測手段を設け、
前記運転制御器が該計測値に基づいて前記塗工液供給量をフィードバック制御する手段を具えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の塗工シート製造装置。
【請求項4】
乾燥後の前記シートの水分率を計測する計測手段を設け、
前記運転制御器が該計測値に基づいて前記乾燥量をフィードバック制御する手段を具えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかの項に記載の塗工シート製造装置。
【請求項5】
走行するシートに塗工液を塗布する塗工手段を複数設け、
該複数の塗工手段のうち少なくともいずれか一つの塗工手段がカーテンコータであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかの項に記載の塗工シート製造装置。
【請求項6】
前記複数の塗工手段が走行するシートの両面に設置されたことを特徴とする請求項5に記載の塗工シート製造装置。
【請求項7】
前記カーテンコータと乾燥装置の間であってシート進行方向と直行する方向にエアターン装置を設置し、かつ該エアターン装置の上流側のシート面延長線下方に該カーテンコータ下端部が位置するようエアターン装置を設けたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかの項に記載の塗工シート製造装置。
【請求項8】
走行するシートにカーテンコータから塗工液を塗布することにより塗工シートを製造する塗工シート製造方法において、
前記塗工液の供給量をシート走行速度に応じた目標塗工量から演算により求めることを特徴とする塗工シート製造方法。
【請求項9】
前記塗工液供給量を所定のシート速度に対する塗工液濃度、目標塗工液量および塗工液供給量との相関関係から求めることを特徴とする請求項8に記載の塗工シート製造方法。
【請求項10】
塗工シートから塗工液量を検出し、該検出値と前記目標塗工液量との差分を求め、該差分が所定の許容範囲内から外れたときには前記塗工液供給量を補正することを特徴とする請求項8または請求項9に記載の塗工シート製造方法。
【請求項11】
走行するシートに前記カーテンコータから塗工液を塗布した後、該シート上の塗工液を乾燥させて塗工シートを製造する塗工シート製造方法において、
シート走行速度に応じた目標水分率から乾燥量を演算により求め、該乾燥量に基づきシートを乾燥することを特徴とする請求項8ないし10のいずれかの項に記載の塗工シート製造方法。
【請求項12】
前記乾燥量を所定のシート速度に対する目標塗工液量、塗工液濃度、目標水分率および乾燥量との相関関係から求めることを特徴とする請求項11に記載の塗工シート製造方法。
【請求項13】
乾燥されたシートから水分率を検出し、該検出値と前記目標水分率との差分を求め、該差分が所定の許容範囲内から外れたときには前記乾燥量を補正することを特徴とする請求項11または請求項12に記載の塗工シート製造方法。
【請求項14】
乾燥されたシートから塗工液量を検出し、該検出値と前記目標塗工液量との差分を求め、該差分が所定の許容範囲内から外れたときには前記塗工液供給量を補正することを特徴とする請求項11ないし13のいずれかの項に記載の塗工シート製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−169797(P2007−169797A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−364429(P2005−364429)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】