説明

塗布処理方法、プログラム、コンピュータ記憶媒体及び塗布処理装置

【課題】基板面内において塗布液を均一に塗布しつつ、塗布液の供給量を低減する。
【解決手段】ウェハWの中心部に純水Pを供給する(図6(a))。その後、純水Pの中心部に、純水Pよりも表面張力が低い溶剤Qを供給する。溶剤Qは、純水Pよりも拡散方向後方でウェハWの同心円状に拡散する(図6(b))。その後、ウェハWを回転させながら、溶剤Qの中心部にレジスト液Rを供給する(図6(c))。レジスト液Rは、純水Pと溶剤Qに先導されてウェハWの同心円状に拡がり(図6(d))、ウェハW上の全面に拡散する(図6(e))。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体ウェハ等の基板上に有機溶剤を含む塗布液を塗布する塗布処理方法、プログラム、コンピュータ記憶媒体及び塗布処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイスの製造プロセスにおけるフォトリソグラフィー工程では、例えば半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という。)上にレジスト液を塗布しレジスト膜を形成するレジスト塗布処理、レジスト膜を所定のパターンに露光する露光処理、露光されたレジスト膜を現像する現像処理などが順次行われ、ウェハ上に所定のレジストパターンが形成されている。
【0003】
上述したレジスト塗布処理では、回転中のウェハの表面上の中心部にノズルからレジスト液を供給し、遠心力によりウェハ上でレジスト液を拡散することよってウェハの表面にレジスト液を塗布する、いわゆるスピン塗布法が多く用いられている。
【0004】
また、このスピン塗布法において、例えばレジスト液を供給する前に、ウェハ上にレジスト液の溶剤を供給することで、レジスト液を拡散させやすくする、いわゆるプリウェットが行われている。しかしながら、プリウェットを行った場合、レジスト液がウェハの同心円状に拡散せずに、ウェハの周辺部にレジスト液が外側方向に不規則にスジ状に拡散し、先鋭化した長いスジが放射線状に出現することがあった。
【0005】
そこで、このプリウェットを改善し、レジスト液を均一に塗布する方法として、例えばウェハ表面に、レジスト液の溶剤とその溶剤の揮発を抑制する揮発抑制物質との混合液を供給し、この混合液をウェハ上の全面に拡散させた後、ウェハを回転させながらウェハの中央部にレジスト液を供給し、当該レジスト液をウェハ上の全面に拡散させる方法が開示されている(特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】特開2003−59825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の方法では、揮発抑制物質には例えば水が含まれているため、ウェハ上にレジスト液を供給した際、レジスト液と水が反応してレジスト液が固化することがある。このようにレジスト液が固化した部分がレジスト液中に残存すると、その後形成されるレジストパターンの欠陥となってしまう。特に近年、半導体デバイスの微細化が進み、レジストパターンの微細化が図られているため、レジスト液が固化した部分は欠陥として顕著に現れる。したがって、かかる欠陥を抑制するために、従来の方法においてレジスト液が固化した部分をウェハ外に追い出す必要があるが、これには多量のレジスト液の供給を必要としていた。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、基板上に有機溶剤を含む塗布液を塗布する際に、基板面内において塗布液を均一に塗布しつつ、塗布液の供給量を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、本発明は、基板上に有機溶剤を含む塗布液を塗布する方法であって、基板の中心部に第1の表面張力を有する処理液を供給する第1の工程と、その後、前記第1の工程で供給された処理液の中心部に、前記第1の表面張力よりも低い第2の表面張力を有する、塗布液の溶剤を供給する第2の工程と、その後、基板を回転させながら、前記第2の工程で供給された溶剤の中心部に塗布液を供給し、前記処理液と前記溶剤を基板上に拡散させて、前記塗布液を基板上の全面に拡散させる第3の工程と、を有することを特徴としている。
【0010】
本発明によれば、第1の工程で基板上に供給される処理液は、その後第2の工程で処理液上に供給される溶剤よりも表面張力が高いので、処理液は溶剤の拡散を抑え、処理液は溶剤よりも常に拡散方向前方(基板径方向の前方)で基板上を拡散する。また、処理液は表面張力が高いので、第1の工程で基板上に供給される処理液は、基板の同心円状に拡散する。そうすると、処理液と溶剤はこの順で基板の同心円状に拡散する。その後、第3の工程において溶剤上に塗布液を供給しているので、溶剤に先導されて塗布液が基板上を円滑に拡散する。したがって、処理液、溶剤、塗布液がこの順で基板の同心円状に拡散し、かつ塗布液は溶剤に先導されて基板上を円滑に拡散する。これによって、基板面内において塗布液を均一に塗布することができ、また従来のように塗布液が基板の同心円状に拡散しない場合と比べて、塗布液の供給量を低減することができる。さらに、処理液と塗布液との間には溶剤が介在しているので、塗布液が処理液に混合されることがない。したがって、例えば処理液に純水を用いた場合でも、従来のように塗布液が固化するのを抑制することができ、塗布液の供給量をさらに低減することができる。
【0011】
前記第1の工程において、基板上の全面に前記処理液が拡散しないように、基板の中心部に前記処理液を供給してもよい。
【0012】
基板上に前記塗布液を塗布する前に、検査用基板上に塗布液の溶剤を供給した後、検査用基板を回転させながら、前記検査用基板上に供給された溶剤の中心部に塗布液を供給し、検査用基板上における前記塗布液の拡がり方を確認して、前記塗布液が検査用基板の同心円状に拡散していないと確認された場合に、前記第1の工程〜第3の工程を実施してもよい。
【0013】
前記塗布液の拡がり方と、当該塗布液の拡がり方を確認する際に用いられた前記塗布液及び前記溶剤の組合せとの関係は保存され、以後、基板上に供給される塗布液と溶剤の組合せが、前記保存された組合せと同一であって、前記塗布液の拡がり方が検査用基板の同心円状に拡散していない場合に、前記第1の工程〜第3の工程を実施し、基板上に供給される塗布液と溶剤との組合せが、前記保存された組合せと同一でない場合に、前記検査用基板上の塗布液の拡がり方を確認した後、前記第1の工程〜第3の工程を実施してもよい。
【0014】
前記塗布液の拡がり方の確認は、前記基板上の塗布液の画像を取得することによって行ってもよい。
【0015】
別な観点による本発明によれば、前記塗布処理方法を塗布処理装置によって実行させるために、当該塗布処理装置を制御する制御部のコンピュータ上で動作するプログラムが提供される。
【0016】
また別な観点による本発明によれば、前記プログラムを格納した読み取り可能なコンピュータ記憶媒体が提供される。
【0017】
さらに別な観点による本発明は、基板上に有機溶剤を含む塗布液を塗布する塗布処理装置であって、基板に第1の表面張力を有する処理液を供給する処理液ノズルと、基板に、前記第1の表面張力よりも低い第2の表面張力を有する、塗布液の溶剤を供給する溶剤ノズルと、基板に塗布液を供給する塗布液ノズルと、基板を保持して基板を所定の速度で回転させる回転保持部と、基板の中心部に第1の表面張力を有する処理液を供給する第1の工程と、その後、前記第1の工程で供給された処理液の中心部に、前記第1の表面張力よりも低い第2の表面張力を有する、塗布液の溶剤を供給する第2の工程と、その後、基板を回転させながら、前記第2の工程で供給された溶剤の中心部に塗布液を供給し、前記処理液と前記溶剤を基板上に拡散させて、前記塗布液を基板上の全面に拡散させる第3の工程と、を実行するように前記処理液ノズル、前記溶剤ノズル、前記塗布液ノズル及び前記回転保持部を制御する制御部と、を有することを特徴としている。
【0018】
前記制御部は、前記第1の工程において、基板上の全面に前記処理液が拡散しないように前記処理液ノズル及び前記回転保持部を制御してもよい。
【0019】
前記制御部は、基板上に前記塗布液を塗布する前に、検査用基板上に塗布液の溶剤を供給した後、検査用基板を回転させながら、前記検査用基板上に供給された溶剤の中心部に塗布液を供給し、検査用基板上における前記塗布液の拡がり方を確認して、前記塗布液が検査用基板の同心円状に拡散していないと確認された場合に、前記第1の工程〜第3の工程を実行するように前記処理液ノズル、前記溶剤ノズル、前記塗布液ノズル及び前記回転保持部を制御してもよい。
【0020】
前記制御部には、前記塗布液の拡がり方と、当該塗布液の拡がり方を確認する際に用いられた前記塗布液及び前記溶剤の組合せとの関係が保存され、前記制御部は、以後、基板上に供給される塗布液と溶剤の組合せが、前記保存された組合せと同一であって、前記塗布液の拡がり方が検査用基板の同心円状に拡散していない場合に、前記第1の工程〜第3の工程を実行し、基板上に供給される塗布液と溶剤との組合せが、前記保存された組合せと同一でない場合に、前記検査用基板上の塗布液の拡がり方を確認した後、前記第1の工程〜第3の工程を実行するように前記処理液ノズル、前記溶剤ノズル、前記塗布液ノズル及び前記回転保持部を制御してもよい。
【0021】
前記回転保持部に保持された基板の上方に設けられ、当該基板表面の画像を撮像する撮像部をさらに有し、前記制御部は、前記基板上の塗布液の画像を取得するように前記撮像部を制御し、前記塗布液の拡がり方を確認してもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、基板上に有機溶剤を含む塗布液を塗布する際に、基板面内において塗布液を均一に塗布しつつ、塗布液の供給量を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる塗布処理装置としてのレジスト塗布装置1の構成の概略を示す説明図であり、図2は、レジスト塗布装置1の構成の概略を示す横断面図である。なお、本実施の形態において、塗布液として有機溶剤を含むレジスト液、例えばArF用レジストが用いられる。
【0024】
レジスト塗布装置1は、図1に示すように処理容器10を有し、その処理容器10内の中央部には、基板としてのウェハWを保持して回転させる回転保持部としてのスピンチャック20が設けられている。スピンチャック20は、水平な上面を有し、当該上面には、例えばウェハWを吸引する吸引口(図示せず)が設けられている。この吸引口からの吸引により、ウェハWをスピンチャック20上に吸着保持できる。
【0025】
スピンチャック20は、例えばモータなどを備えたチャック駆動機構21を有し、そのチャック駆動機構21により所定の速度に回転できる。また、チャック駆動機構21には、シリンダなどの昇降駆動源が設けられており、スピンチャック20は上下動可能になっている。
【0026】
スピンチャック20の周囲には、ウェハWから飛散又は落下する液体を受け止め、回収するカップ22が設けられている。カップ22の下面には、回収した液体を排出する排出管23と、カップ22内の雰囲気を排気する排気管24が接続されている。
【0027】
図2に示すようにカップ22のX方向負方向(図2の下方向)側には、Y方向(図2の左右方向)に沿って延伸するレール30が形成されている。レール30は、例えばカップ22のY方向負方向(図2の左方向)側の外方からY方向正方向(図2の右方向)側の外方まで形成されている。レール30には、例えば3本のアーム31、32、33が取り付けられている。
【0028】
第1のアーム31には、図1及び図2に示すようにレジスト液を供給する塗布液ノズルとしてのレジスト液ノズル34が支持されている。第1のアーム31は、図2に示すノズル駆動部35により、レール30上を移動自在である。これにより、レジスト液ノズル34は、カップ22のY方向正方向側の外方に設置された待機部36からカップ22内のウェハWの中心部上方まで移動できる。また、第1のアーム31は、ノズル駆動部35によって昇降自在であり、レジスト液ノズル34の高さを調整できる。
【0029】
レジスト液ノズル34には、図1に示すように、レジスト液供給源37に連通する供給管38が接続されている。レジスト液供給源37内には、レジスト液が貯留されている。供給管38には、レジスト液の流れを制御するバルブや流量調節部等を含む供給機器群39が設けられている。
【0030】
第2のアーム32には、レジスト液の溶剤を供給する溶剤ノズル40が支持されている。第2のアーム32は、図2に示すノズル駆動部41によってレール30上を移動自在となっている。これにより、溶剤ノズル40は、カップ22のY方向正方向側の外側に設けられた待機部42から、カップ22内のウェハWの中心部上方を通って、カップ22のY方向負方向側の外側に設けられた待機部43まで移動することができる。待機部42は、カップ22のX方向負方向側の外側と待機部36との間に設けられている。また、ノズル駆動部41によって、第2のアーム32は昇降自在であり、溶剤ノズル40の高さを調節できる。なお、レジスト液の溶剤としては、例えばOK73シンナー(東京応化工業株式会社製品)が用いられる。
【0031】
溶剤ノズル40には、図1に示すように溶剤供給源44に連通する供給管45が接続されている。溶剤供給源44内には、レジスト液の溶剤が貯留されている。供給管45には、溶剤の流れを制御するバルブや流量調節部等を含む供給機器群46が設けられている。
【0032】
第3のアーム33には、溶剤よりも表面張力が高い処理液、例えば純水を供給する、処理液ノズルとしての純水ノズル47が支持されている。第3のアーム33は、図2に示すノズル駆動部48によってレール30上を移動自在となっている。これにより、純水ノズル47を、溶剤ノズル40の待機部43のY方向負方向側に設けられた待機部49から、カップ22内のウェハWの中心部上方まで移動することができる。また、ノズル駆動部48によって、第3のアーム33は昇降自在であり、純水ノズル47の高さを調節できる。
【0033】
純水ノズル47には、図1に示すように純水供給源50に連通する供給管51が接続されている。純水供給源50内には、純水が貯留されている。供給管51には、純水の流れを制御するバルブや流量調節部等を含む供給機器群52が設けられている。
【0034】
なお、以上の構成では、レジスト液を供給するレジスト液ノズル34、溶剤を供給する溶剤ノズル40、純水を供給する純水ノズル47は別々のアームに支持されていたが、同じアームに支持され、そのアームの移動の制御により、レジスト液ノズル34、溶剤ノズル40、純水ノズル47のそれぞれの移動と供給タイミングを制御してもよい。
【0035】
上述のスピンチャック20の回転動作と上下動作、ノズル駆動部35によるレジスト液ノズル34の移動動作、供給機器群39によるレジスト液ノズル34からのレジスト液の供給動作、ノズル駆動部41による溶剤ノズル40の移動動作、供給機器群46による溶剤ノズル40の溶剤の供給動作、ノズル駆動部48による純水ノズル47の移動動作、供給機器群52による純水ノズル40の純水の供給動作、などの駆動系の動作は、制御部60により制御されている。制御部60は、例えばCPUやメモリなどを備えたコンピュータにより構成され、例えばメモリに記憶されたプログラムを実行することによって、レジスト塗布装置1におけるレジスト塗布処理を実現できる。なお、レジスト塗布装置1におけるレジスト塗布処理を実現するための各種プログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能なハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどの記憶媒体Hに記憶されていたものであって、その記憶媒体Hから制御部60にインストールされたものが用いられている。
【0036】
次に、以上のように構成されたレジスト塗布装置1で行われる塗布処理プロセスについて説明する。図3は、レジスト塗布装置1における塗布処理プロセスの主な工程を示すフローチャートである。図4は、塗布処理プロセスの各工程におけるウェハWの回転数と、純水、溶剤及びレジスト液の供給タイミングを示すグラフである。図5及び図6は、塗布処理プロセスの各工程におけるウェハW上の液膜の状態を模式的に示している。なお、図4におけるプロセスの時間の長さは、技術の理解の容易さを優先させるため、必ずしも実際の時間の長さに対応していない。
【0037】
レジスト塗布装置1に搬入されたウェハWは、先ず、スピンチャック20に吸着保持される。続いて第3のアーム33により待機部49の純水ノズル47がウェハWの中心部の上方まで移動する。このとき、溶剤ノズル40は待機部42に待機し、レジスト液ノズル34は待機部36に待機している。次に、ウェハWを停止させた状態で、図5(a)に示すように純水ノズル47からウェハWの中心部に純水Pが供給される(図3及び図4の工程S1)。純水Pは、図6(a)に示すようにウェハW上の全面に拡散しないように供給される。このウェハW上に供給された純水Pは、表面張力が高いため、ウェハWの同心円状に拡散する。
【0038】
純水Pの供給が終了すると、純水ノズル47がウェハWの中心部上方から待機部49に移動する。同時に、第2のアーム32により待機部42の溶剤ノズル40がウェハWの中心部上方まで移動する。
【0039】
その後、ウェハWを停止させた状態で、図5(b)に示すように溶剤ノズル40からウェハW上の純水Pの中心部に溶剤Qが供給される(図3及び図4の工程S2)。溶剤Qは、純水Pよりも表面張力が低いため、図6(b)に示すように純水Pよりも常に拡散方向(図中の矢印)の後方でウェハW上を拡散する。すなわち、溶剤Qが純水Pを超えてウェハW上を拡散することがない。
【0040】
溶剤Qの供給が終了すると、溶剤ノズル40がウェハWの中心部上方から待機部43に移動する。同時に、第1のアーム31により待機部36のレジスト液ノズル34がウェハWの中心部上方まで移動する。また、溶剤Qの供給の終了と同時に、図4に示すようにウェハWを加速回転させる。
【0041】
ウェハWの回転数が第1の回転数である例えば1000rpm〜2000rpm、本実施の形態においては1000rpmに達した際に、図5(c)及び図6(c)に示すようにレジスト液ノズル34から溶剤Q上にレジスト液Rの供給を開始する(図3及び図4の工程S3)。
【0042】
その後、ウェハWを第2の回転数である例えば2000rpm〜4000rpm、本実施の形態においては3600rpmの回転数まで加速回転させ、その後、第2の回転数でウェハWを回転させる。この間、図5(d)に示すようにレジスト液Rはレジスト液ノズル34から供給され続けている。このようにウェハWを第2の回転数で高速回転させた場合、図6(d)に示すように、純水Pと溶剤QはウェハW上を拡散し、レジスト液Rは溶剤Qに先導されてウェハW上を拡散する(図3及び図4の工程S4)。この溶剤Qによってレジスト液はウェハW上を拡散しやすくなり、レジスト液RはウェハW上の全面を円滑かつ均一に拡散することができる。また、純水P、溶剤Q及びレジスト液Rはこの順でウェハWの同心円状に拡散し、レジスト液Rが純水Pと混合することがない。
【0043】
レジスト液RがウェハW上の全面に拡散すると、図4に示すようにウェハWの回転を第3の回転数である例えば50rpm〜500rpm、本実施の形態においては100rpmまで減速させる。そして、このようにウェハWが第3の回転数で回転中、ウェハW上のレジスト液Rに中心へ向かう力が作用し、図5(e)及び図6(e)に示すようにウェハW上のレジスト液Rの膜厚が調整される(図3及び図4の工程S5)。
【0044】
ウェハW上のレジスト液Rの膜厚が調整されると、図4に示すようにウェハWの回転を第4の回転数である例えば1000rpm〜2000rpm、本実施の形態においては1250rpmまで加速させる。そして、このようにウェハWが第4の回転数で回転中に、図5(f)及び図6(f)に示すように、ウェハWの全面に拡散したレジスト液Rは乾燥され、レジスト膜Fが形成される(図3及び図4の工程S6)。
【0045】
以上の実施の形態によれば、ウェハW上に純水Pが供給された後、当該純水P上に、純水Pよりも表面張力が低い溶剤Qが供給されるので、純水Pは溶剤Qの拡散を抑え、溶剤Qよりも常に拡散方向前方でウェハW上を拡散する。また、純水Pは表面張力が高いので、ウェハWの中心部に供給された純水Pは、ウェハWの同心円状に拡散する。そうすると、純水Pと溶剤Qはこの順で基板の同心円状に拡散する。その後、溶剤Q上にレジスト液Rを供給しているので、溶剤Qに先導されてレジスト液RがウェハW上を円滑に拡散する。これによって、ウェハW面内においてレジスト液Rを均一に塗布することができる。また、純水P、溶剤Q、レジスト液Rはこの順でウェハWの同心円状に拡散することができるので、例えば従来のようにレジスト液がウェハの同心円状に拡散しない場合と比べて、レジスト液Rの供給量を低減できる。
【0046】
さらに、純水Pとレジスト液Rとの間には溶剤Qが介在しているので、レジスト液Rが純水Pに混合されることがない。したがって、従来のように純水によってレジスト液が固化するのを抑制することができ、レジスト液Rの供給量をさらに低減することができる。なお、発明者らが本実施の形態の塗布処理方法でウェハWにレジスト液Rを供給したところ、従来の塗布処理方法と比較して、レジスト液Rの供給量を約半分に低減できることが分かった。
【0047】
また、ウェハW上の全面に純水Pが拡散しないように、ウェハWの中心部に純水Pを供給しているので、その後溶剤Q、レジスト液Rが順にウェハW上に供給されても、溶剤Qとレジスト液Rを確実に純水Pの拡散方向後方で拡散させることができる。これによって、レジスト液Rを確実にウェハWの同心円状に拡散させることができる。
【0048】
また、レジスト液RがウェハW上の全面に拡散した後、ウェハWを低速の第3の回転数で回転させているので、ウェハW上のレジスト液Rに中心へ向かう力が作用し、レジスト液Rの膜厚を調整することができる。
【0049】
なお、以上の実施の形態では、処理液として純水Pを用いた場合について説明したが、処理液として表面張力が溶剤Qよりも高い液材、例えばガンマブチルラクトンなどを用いてもよい。また、塗布液としてのレジスト液Rには、KrFレジスト、EUVレジストなどを用いてもよい。さらに、有機溶剤を含む塗布液としてレジスト液Rを用いた場合について説明したが、塗布液として例えば下部反射防止膜(BARC:Bottom Anti−Reflection Coating)を用いてもよい。
【0050】
以上の実施の形態においては、工程S1と工程S2において、ウェハWを停止させた状態で、純水Pと溶剤QをウェハW上に供給していたが、ウェハWを例えば50rpm以下の回転数で低速回転させてもよい。かかる場合、ウェハWの低速回転によって、純水Pに遠心力がかかり、この純水Pの周辺部を中心部に比べて高くし、純水Pの表面を中心部が下方に窪んだ状態にさせることができる。そうすると、その後純水Pの中心部に溶剤Qを供給した場合に、溶剤Qを純水Pの窪み部内に保持することができる。したがって、溶剤Qが純水Pの外側に流れ出れるのを確実に防止することができる。また、上述した第1の回転数〜第4の回転数は、使用する処理液や塗布液の種類、膜厚等により最適な回転数を設定することができる。
【0051】
ところで、発明者らが調べたところ、前記実施の形態で説明した純水の供給を行わない場合であっても、溶剤を供給後、溶剤上に供給されるレジスト液がウェハの同心円状に拡散する場合があることが分かった。さらに調べたところ、このようにレジスト液がウェハの同心円状に拡散するか否かは、溶剤の種類とレジスト液の種類の組合せに依存することが分かった。例えば溶剤にシクロヘキサノンを用いた場合には、前記実施の形態で説明した純水の供給を行わない場合でも、レジスト液はウェハの同心円状に拡散することが分かった。
【0052】
そこで、以上の実施の形態の工程S1を行う前に、実際に用いられる溶剤Qとレジスト液Rのみを塗布した場合のレジスト液Rの拡がり方を検査してもよい。かかる場合、レジスト塗布装置1には、ウェハの表面を撮像する撮像部70が設けられる。撮像部70は、スピンチャック20上に吸着保持されたウェハに対向するように、処理容器10の天井部分に設けられる。また撮像部70には、例えば広角型のCCDカメラが用いられる。なお、レジスト塗布装置1のその他の構成については、前記実施の形態のレジスト塗布装置1の構成と同一であるので説明を省略する。
【0053】
次に、かかるレジスト塗布装置1を用いてウェハW上にレジスト液Rを塗布する塗布処理について、検査用基板としての検査用ウェハW’の検査処理と共に説明する。図8は、これら検査用ウェハW’の検査処理工程とウェハWに対する塗布処理工程を説明したフローチャートである。
【0054】
先ず、検査用ウェハW’上に溶剤Qとレジスト液Rのみを塗布した場合のレジスト液Rの拡がり方を検査する。レジスト塗布装置1に搬入された検査用ウェハW’は、スピンチャック20に吸着保持される。続いて検査用ウェハW’を停止させた状態、又は低速回転、例えば50rpm以下の回転数で回転させた状態で、溶剤ノズル40から検査用ウェハW’の中心部に溶剤Qが供給される。次に、検査用ウェハW’を前記第2の回転数まで加速回転させると共に、レジスト液ノズル34から溶剤Qの中心部にレジスト液Rを供給する。その後、検査用ウェハW’を第2の回転数で回転させながら、レジスト液Rを検査用ウェハW’上に拡散させる。所定の時間経過後、検査用ウェハW’の回転を停止し、撮像部70によって、検査用ウェハW’の表面の画像を取得する。検査用ウェハW’の表面の画像は、撮像部70から制御部60に出力される。そして制御部60では、入力された画像に基づいて、検査用ウェハW’上のレジスト液Rの拡がり方を確認する(図8の工程S0)。一方、このように検査用ウェハW’表面の画像が取得されると、検査用ウェハW’はレジスト塗布装置1から搬出される。なお、検査用ウェハW’の表面の画像は、検査用ウェハW’の回転を停止した後取得されていたが、検査用ウェハW’の回転中に撮像部70によって取得してもよい。
【0055】
制御部60において、例えば図9(a)に示すようにレジスト液Rが検査用ウェハW’の同心円状に拡散していないと確認された場合には、続いてレジスト塗布装置1に搬入されたウェハWには、上述した工程S1〜S6が行われる。すなわちウェハW上に純水P、溶剤Q及びレジスト液Rがこの順で供給され、ウェハW上にレジスト液Rが塗布される(図8の工程S1〜S6)。
【0056】
一方、制御部70において、例えば図9(b)に示すようにレジスト液Rが検査用ウェハW’の同心円状に拡散していると確認された場合には、上述した工程S1における純水Pの供給を省略することができる。この場合、先ず、スピンチャック20に吸着保持されたウェハWの中心部に、溶剤ノズル40から溶剤Qが供給される(図8の工程T1)。この溶剤Qの供給は、ウェハWの回転を停止させた状態で行ってもよく、またウェハWを低速回転、例えば50rpm以下の回転数で回転させてもよい。その後、ウェハWを前記第2の回転数まで加速回転させると共に、溶剤Qの中心部に、レジスト液ノズル34からレジスト液Rが供給される(図8の工程T2)。ウェハWの回転数が第2の回転数まで達すると、その後、第2の回転数でウェハWを回転させ、レジスト液RがウェハW上に拡散する。この間、レジスト液Rはレジスト液ノズル34から供給され続けている(図8の工程T3)。レジスト液RがウェハW上の全面に拡散すると、その後ウェハW上のレジスト液Rの膜厚を調整し(図8の工程T4)、レジスト液Rを乾燥させる(図8の工程T5)。なお、これら工程T4と工程5は、上述した工程S5と工程S6とそれぞれ同一のレシピで行われる。
【0057】
以上の実施の形態によれば、工程S0においてレジスト液Rが検査用ウェハW’の同心円状に拡散するか否かに関わらず、レジスト液RをウェハWの同心円状に拡散させることができる。また、工程S0においてレジスト液Rが検査用ウェハW’の同心円状に拡散すると確認された場合には、前記実施の形態の工程S1、すなわち純水Pの供給を省略することができるので、ウェハWの塗布処理のスループットを向上させることができる。
【0058】
以上の実施の形態において、工程S0において確認されたレジスト液Rの拡がり方と、レジスト液R及び溶剤Qの組合せとの関係は、制御部60に保存されてもよい。かかる場合、以後、新たなウェハWにレジスト液Rを塗布する場合に、その塗布処理で用いられるレジスト液Rと溶剤Qとの組合せが、制御部60に保存された組合せと同一である場合には、工程S0を行う必要がなくなる。すなわち、制御部60に保存された関係に基づいて、レジスト液Rの拡がり方が分かるので、そのウェハWに工程S1〜S6を行うか、あるいは工程T1〜T5を行うかを自動で選択することができる。なお、新たなウェハWの塗布処理で用いられるレジスト液Rと溶剤Qとの組合せが、制御部60に保存された組合せと同一でない場合には、前記実施の形態で説明した工程S0を行った後、工程S1〜S6、あるいは工程T1〜T5のいずれかの工程が行われる。
【0059】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。本発明はこの例に限らず種々の態様を採りうるものである。本発明は、基板がウェハ以外のFPD(フラットパネルディスプレイ)、フォトマスク用のマスクレチクルなどの他の基板の塗布処理にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、例えば半導体ウェハ等の基板上に有機溶剤を含む塗布液を塗布する際に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本実施の形態にかかるレジスト塗布装置の構成の概略を示す縦断面図である。
【図2】レジスト塗布装置の構成の概略を示す横断面図である。
【図3】塗布処理プロセスの主な工程を示すフローチャートである。
【図4】塗布処理プロセスの各工程におけるウェハの回転数と、純水、溶剤及びレジスト液の供給タイミングを示すグラフである。
【図5】塗布処理プロセスの各工程におけるウェハ上の液膜の状態を模式的に示した説明図である。
【図6】塗布処理プロセスの各工程におけるウェハ上の液膜の状態を模式的に示した説明図である。
【図7】他の実施の形態にかかるレジスト塗布装置の構成の概略を示す縦断面図である。
【図8】他の実施の形態における塗布処理プロセスの各工程におけるウェハの回転数と、純水、溶剤及びレジスト液の供給タイミングを示すグラフである。
【図9】検査用ウェハ上のレジスト液の拡がり方を示す説明図である。
【符号の説明】
【0062】
1 レジスト塗布装置
20 スピンチャック
34 レジスト液ノズル
40 溶剤ノズル
47 純水ノズル
60 制御部
70 撮像部
F レジスト膜
P 純水
Q 溶剤
R レジスト液
W ウェハ
W’ 検査用ウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に有機溶剤を含む塗布液を塗布する方法であって、
基板の中心部に第1の表面張力を有する処理液を供給する第1の工程と、
その後、前記第1の工程で供給された処理液の中心部に、前記第1の表面張力よりも低い第2の表面張力を有する、塗布液の溶剤を供給する第2の工程と、
その後、基板を回転させながら、前記第2の工程で供給された溶剤の中心部に塗布液を供給し、前記処理液と前記溶剤を基板上に拡散させて、前記塗布液を基板上の全面に拡散させる第3の工程と、を有することを特徴とする、塗布処理方法。
【請求項2】
前記第1の工程において、基板上の全面に前記処理液が拡散しないように、基板の中心部に前記処理液を供給することを特徴とする、請求項1に記載の塗布処理方法。
【請求項3】
基板上に前記塗布液を塗布する前に、検査用基板上に塗布液の溶剤を供給した後、検査用基板を回転させながら、前記検査用基板上に供給された溶剤の中心部に塗布液を供給し、検査用基板上における前記塗布液の拡がり方を確認して、
前記塗布液が検査用基板の同心円状に拡散していないと確認された場合に、請求項1又は2に記載の方法を実施することを特徴とする、塗布処理方法。
【請求項4】
前記塗布液の拡がり方と、当該塗布液の拡がり方を確認する際に用いられた前記塗布液及び前記溶剤の組合せとの関係は保存され、
以後、基板上に供給される塗布液と溶剤の組合せが、前記保存された組合せと同一であって、前記塗布液の拡がり方が検査用基板の同心円状に拡散していない場合に、請求項1又は2に記載の方法を実施し、
基板上に供給される塗布液と溶剤との組合せが、前記保存された組合せと同一でない場合に、請求項3に記載の方法を実施することを特徴とする、塗布処理方法。
【請求項5】
前記塗布液の拡がり方の確認は、前記基板上の塗布液の画像を取得することによって行うことを特徴とする、請求項3又は4に記載の塗布処理方法。
【請求項6】
請求項1〜5の塗布処理方法を塗布処理装置によって実行させるために、当該塗布処理装置を制御する制御部のコンピュータ上で動作するプログラム。
【請求項7】
請求項6に記載のプログラムを格納した読み取り可能なコンピュータ記憶媒体。
【請求項8】
基板上に有機溶剤を含む塗布液を塗布する塗布処理装置であって、
基板に第1の表面張力を有する処理液を供給する処理液ノズルと、
基板に、前記第1の表面張力よりも低い第2の表面張力を有する、塗布液の溶剤を供給する溶剤ノズルと、
基板に塗布液を供給する塗布液ノズルと、
基板を保持して基板を所定の速度で回転させる回転保持部と、
基板の中心部に第1の表面張力を有する処理液を供給する第1の工程と、その後、前記第1の工程で供給された処理液の中心部に、前記第1の表面張力よりも低い第2の表面張力を有する、塗布液の溶剤を供給する第2の工程と、その後、基板を回転させながら、前記第2の工程で供給された溶剤の中心部に塗布液を供給し、前記処理液と前記溶剤を基板上に拡散させて、前記塗布液を基板上の全面に拡散させる第3の工程と、を実行するように前記処理液ノズル、前記溶剤ノズル、前記塗布液ノズル及び前記回転保持部を制御する制御部と、を有することを特徴とする、塗布処理装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1の工程において、基板上の全面に前記処理液が拡散しないように前記処理液ノズル及び前記回転保持部を制御することを特徴とする、請求項8に記載の塗布処理装置。
【請求項10】
前記制御部は、基板上に前記塗布液を塗布する前に、検査用基板上に塗布液の溶剤を供給した後、検査用基板を回転させながら、前記検査用基板上に供給された溶剤の中心部に塗布液を供給し、検査用基板上における前記塗布液の拡がり方を確認して、前記塗布液が検査用基板の同心円状に拡散していないと確認された場合に、請求項8又は9に記載の制御を行うことを特徴とする、塗布処理装置。
【請求項11】
前記制御部には、前記塗布液の拡がり方と、当該塗布液の拡がり方を確認する際に用いられた前記塗布液及び前記溶剤の組合せとの関係が保存され、前記制御部は、以後、基板上に供給される塗布液と溶剤の組合せが、前記保存された組合せと同一であって、前記塗布液の拡がり方が検査用基板の同心円状に拡散していない場合に、請求項8又は9に記載の制御を行い、基板上に供給される塗布液と溶剤との組合せが、前記保存された組合せと同一でない場合に、請求項10に記載の制御を行うことを特徴とする、塗布処理装置。
【請求項12】
前記回転保持部に保持された基板の上方に設けられ、当該基板表面の画像を撮像する撮像部をさらに有し、
前記制御部は、前記基板上の塗布液の画像を取得するように前記撮像部を制御し、前記塗布液の拡がり方を確認することを特徴とする、請求項10又は11に記載の塗布処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−279476(P2009−279476A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131495(P2008−131495)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】