説明

塗布処理装置、塗布処理方法、プログラム及びコンピュータ記憶媒体

【課題】高粘度の塗布液を、無駄なく均一に基板上に塗布する。
【解決手段】レジスト塗布装置1の塗布ノズル33は、その内部にレジスト液Rを貯留する貯留室62が形成された本体部60と、本体部60の下面に形成され、レジスト液Rの表面張力によりその先端にレジスト液の液溜りを形成するスリット状の吐出口61と、貯留室62と吐出口61とに連通するレジスト液流路63と、を備え、レジスト塗布装置1は、塗布ノズル33とウェハとを相対的に上下方向及び水平方向移動させる移動機構と、前記貯留室内部の圧力を調整する圧力調整機構71と、を有している。圧力調整機構71は、塗布ノズル33とウェハとを相対的に移動させてウェハにレジスト液Rを塗布する間、吐出口61からのレジスト液Rの吐出量が一定となるように、貯留室62内部の圧力を調整し、且つ負圧に維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に塗布液を塗布する塗布処理装置、塗布処理方法、プログラム及びコンピュータ記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイスの製造プロセスにおけるフォトリソグラフィー工程では、例えば半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という。)上にレジスト液を塗布しレジスト膜を形成するレジスト塗布処理、当該レジスト膜を所定のパターンに露光する露光処理、露光されたレジスト膜を現像する現像処理などが順次行われ、ウェハ上に所定のレジストパターンが形成される。
【0003】
上述したレジスト膜を形成する方法としては、ウェハを回転させた状態でウェハの中心部にノズルからレジスト液を滴下し、遠心力によりウェハ上でレジスト液を拡散させることよってウェハ上にレジスト膜を塗り広げる、いわゆるスピンコートが広く知られている。
【0004】
ところで、スピンコートによるレジスト膜の形成においては、滴下したレジストを高速回転で広げるため、滴下されたレジストのうち、大部分はウェハ外周縁部から飛散してしまい無駄になってしまう。
【0005】
そのため、例えば特許文献1には、レジスト液を無駄なく使用するために、ノズルとウェハとの間に液溜りを形成しながら塗布する方法が提案されている。具体的には、例えば図18に示すように、ノズル100の下端面に形成されたスリット状の吐出口101をウェハWに接近させ、当該吐出口101とウェハWとの間に所定の隙間が形成された状態を維持する。その状態で、ノズル100内部に形成された貯留部102に連通するバルブ103を開操作する。これにより、貯留部102内に貯留されたレジスト液104が自重及び毛細管現象により吐出され、ウェハWと吐出口101との間に液膜が形成される。
【0006】
そして、ウェハWと吐出口101との間に液膜が形成された状態のまま、ノズル100をウェハWの例えば直径方向に沿って移動させる。これにより、レジスト液104は自重と毛細管現象によりスリット状の吐出口101から吐出され、その結果、ウェハWの全面に無駄なくレジスト液104が塗布される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−173875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の特許文献1による塗布処理方法は、数十mPa・s程度の比較的粘度の低い塗布液に対しては有効である。しかしながら、例えば粘度が100mPa・s以上のレジスト液や、ポリイミドといった、高粘度の塗布液においては、吐出口101の流路抵抗が大きくなるため、自重や毛細管現象により塗布液を塗布することが困難となる。
【0009】
流路の抵抗を低減するには、例えば吐出口101のスリット幅を大きくすることが考えられる。ところが、スリット幅を大きくすると、塗布液を吐出口101で保持できなくなり、液だれや塗布時の膜厚不良が生じてしまうという問題がある。
【0010】
また、本発明者らが検証したところ、特許文献1による塗布処理方法においては、塗布を開始した側の基板の端部と、塗布を終了した側の基板の端部とでは、塗布液の膜厚に違いがでてしまい、基板面内において均一な膜厚を得ることができなかった。これは、塗布の進行に従い貯留部に貯留される塗布液の液面が低下することにより、吐出口101に作用する塗布液の水頭圧が減少し、吐出量が徐々に減少してしまうことが原因である。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、高粘度の塗布液を、無駄なく均一に基板上に塗布することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するため、本発明は、基板と塗布ノズルの吐出口との間に当該吐出口から吐出された塗布液の液溜りを形成し、その状態で基板と前記塗布ノズルを水平方向に相対的に移動させることで基板に塗布液を塗布する塗布処理装置であって、前記吐出口に連通し、その内部に塗布液を貯留する貯留室を備えた塗布ノズルと、前記貯留室内部の圧力を調整する圧力調整機構と、前記圧力調整機構を制御して、当該基板表面に塗布液を塗布する間、前記吐出口からの塗布液の吐出量が一定となるように前記貯留室内部の圧力を調整する制御部と、を有することを特徴としている。
【0013】
本発明によれば、塗布ノズルと基板とを相対的に移動させて当該基板に塗布液を塗布する間、圧力調整機構を制御して、前記貯留室の内部の圧力を吐出口からの塗布液の吐出量が一定となるように調整するので、基板面内に均一な塗布膜を形成することができる。また、前記貯留室の内部の圧力を調整することで、例えば吐出口に形成される液溜りを貯留室側に吸い上げることもできる。したがって、例えば高粘度の塗布液を扱うために吐出口の幅を広げた場合であっても、吐出口からの液だれや、塗布時の膜厚不良を防ぐことができる。これにより、高粘度の塗布液を、無駄なく均一に基板上に塗布することができる。
【0014】
前記制御部は、基板に塗布液を塗布する間、前記圧力調整機構を制御して、前記貯留室の内部の圧力を当該貯留室の外部の圧力に対して負圧にし、さらに、前記吐出口からの塗布液の吐出量が一定となるように、前記貯留室内部の圧力を徐々に上昇させてもよい。
【0015】
前記貯留室内部に貯留された塗布液の液面高さを測定する液面高さ測定機構を有し、前記制御部は、前記貯留室内の圧力を、前記液面高さ測定機構で測定された液面高さの減少分に応じて上昇させることで、前記吐出口からの塗布液の吐出量が一定となるように前記圧力調整機構を制御してもよい。
【0016】
前記貯留室内部の圧力と当該貯留室の外部の圧力との差圧を測定する圧力測定機構を有し、前制御部は、前記差圧を、前記液面高さ測定機構で測定された液面高さの減少分に応じて減少させることで、前記吐出口からの塗布液の吐出量が一定となるように、前記圧力調整機構を制御してもよい。
【0017】
前記制御部は、前記塗布ノズルと基板との相対的な移動に伴い、前記貯留室の内部の圧力を所定の振幅、所定の周期に従って変化させるように前記圧力調整機構を制御してもよい。
【0018】
別な観点による本発明は、基板と塗布ノズルの吐出口との間に当該吐出口から吐出された塗布液の液溜りを形成し、その状態で基板と前記塗布ノズルを水平方向に相対的に移動させることで基板に塗布液を塗布する塗布処理方法において、前記塗布ノズルは、前記吐出口に連通し、その内部に塗布液を貯留する貯留室を備え、当該基板表面に塗布液を塗布する間、前記吐出口からの塗布液の吐出量が一定となるように、前記貯留室内部の圧力を調整することを特徴としている。
【0019】
前記基板に塗布液を塗布する間、前記貯留室の内部の圧力を、当該貯留室の外部の圧力に対して負圧にし、さらに、前記吐出口からの塗布液の吐出量が一定となるように、前記貯留室内部の圧力を徐々に上昇させてもよい。
【0020】
前記貯留室内部に貯留された塗布液の液面高さを測定し、前記貯留室内の圧力を、前記液面高さの減少分に応じて上昇させることで、前記吐出口からの塗布液の吐出量が一定となるように、前記貯留室内部の圧力を調整してもよい。
【0021】
前記貯留室内部の圧力と当該貯留室の外部の圧力との差圧を測定し、前記差圧を、前記液面高さ測定機構で測定された液面高さの減少分に応じて減少させることで、前記吐出口からの塗布液の吐出量が一定となるように、前記貯留室内部の圧力を調整してもよい。
【0022】
前記塗布ノズルと基板との相対的な移動に伴い、前記貯留室の内部の圧力を所定の振幅、所定の周期に従って変化させてもよい。
【0023】
別な観点による本発明によれば、前記塗布処理方法を塗布処理装置によって実行させるために、当該塗布処理装置を制御する制御部のコンピュータ上で動作するプログラムが提供される。
【0024】
また別な観点による本発明によれば、前記プログラムを格納した読み取り可能なコンピュータ記憶媒体が提供される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、高粘度の塗布液を、無駄なく均一に基板上に塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施の形態にかかる塗布処理装置の構成の概略を示す縦断面図である。
【図2】本実施の形態にかかる塗布処理装置の構成の概略を示す横断面図である。
【図3】塗布ノズルの原理に関する説明図である。
【図4】塗布ノズルの原理に関する説明図である。
【図5】塗布ノズルの原理に関する説明図である。
【図6】塗布ノズルの構成の概略を示す斜視図である。
【図7】塗布ノズルの長手方向に直交する平面から見た、塗布ノズルの構成の概略を示す縦断面図である。
【図8】塗布処理の主な工程を示すフローチャートである。
【図9】塗布処理における各機器の状態の変化を示すタイムチャートである。
【図10】塗布ノズルをウェハ端部上方に移動させた状態を示す説明図である。
【図11】塗布ノズルとウェハ端部との間にレジスト液の液溜りを形成した状態を示す説明図である。
【図12】塗布ノズルによりウェハ表面にレジスト液を塗布する様子を示す説明図である。
【図13】塗布ノズルの移動距離と密閉空間内の圧力設定値との相関関係を示すグラフである。
【図14】他の実施の形態の圧力制御方法にかかる、密閉空間の圧力変化を示すタイムチャートである。
【図15】比較例におけるウェハ上のレジスト膜の膜厚を示すグラフである。
【図16】本実施の形態にかかる実施例におけるウェハ上のレジスト膜の膜厚を示すグラフである。
【図17】他の実施の形態にかかる実施例におけるウェハ上のレジスト膜の膜厚を示すグラフである。
【図18】従来の塗布ノズルの構成の概略を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる、塗布処理装置としてのレジスト塗布装置1の構成の概略を示す縦断面図である。図2は、レジスト塗布装置1の構成の概略を示す横断面図である。
【0028】
レジスト塗布装置1は、図1に示すように処理容器10を有している。処理容器10内部には、ウェハWを保持して回転させるスピンチャック20が設けられている。スピンチャック20は、水平な上面を有し、当該上面の中心部には、例えばウェハWを吸引する吸引口(図示せず)が設けられている。この吸引口からの吸引により、ウェハWをスピンチャック20上に吸着保持できる。
【0029】
スピンチャック20は、例えばモータなどを備えたチャック駆動機構21を有し、そのチャック駆動機構21により所定の速度に回転できる。また、チャック駆動機構21には、シリンダなどの昇降駆動源が設けられており、スピンチャック20は上下動可能になっている。
【0030】
スピンチャック20の周囲には、ウェハWから飛散又は落下する液体を受け止め、回収するカップ22が設けられている。カップ22の下面には、回収した液体を排出する排出管23と、カップ22内の雰囲気を排気する排気管24が接続されている。
【0031】
図2に示すようにカップ22のX方向負方向(図2の下方向)側には、Y方向(図2の左右方向)に沿って延伸するレール30が形成されている。レール30は、例えばカップ22のY方向負方向(図2の左方向)側の外方からY方向正方向(図2の右方向)側の外方まで形成されている。レール30には、例えば二本のアーム31、32が取り付けられている。
【0032】
第1のアーム31には、図1及び図2に示すようにウェハWに塗布液としての、例えばレジスト液を供給する塗布ノズル33が支持されている。塗布ノズル33の構成については後述する。
【0033】
第1のアーム31は、図2に示す移動機構としてのノズル駆動部34により、レール30上を移動自在である。これにより、塗布ノズル33は、カップ22のY方向正方向側の外方に設置された待機部35からカップ22内のウェハWの中心部上方まで移動でき、さらに当該ウェハWの表面上をウェハWの径方向に移動できる。また、第1のアーム31は、ノズル駆動部34によって昇降自在であり、塗布ノズル33の高さを調整できる。ノズル駆動部34には当該ノズル駆動部34の位置情報を検出するための、例えばロータリーエンコーダ(図示せず)が内蔵されている。
【0034】
塗布ノズル33には、図1に示すように、内部にレジスト液が貯留されたレジスト貯槽36が供給管37を介して接続されている。供給管37にはバルブ38が設けられている。
【0035】
第2のアーム32には、レジスト液の溶剤、例えばシンナーを供給する溶剤ノズル40が支持されている。第2のアーム32は、図2に示すノズル駆動部41によってレール30上を移動自在であり、溶剤ノズル40を、カップ22のY方向負方向側の外方に設けられた待機部42からカップ22内のウェハWの中心部上方まで移動させることができる。また、第2のアーム32はノズル駆動部41により昇降自在であり、溶剤ノズル40の高さを調節できる。
【0036】
溶剤ノズル40には、図1に示すように、当該溶剤ノズル40に溶剤を供給する溶剤供給源43が供給管44を介して接続されている。供給管44には、溶剤の流れを制御するバルブや流量調節部等を含む供給機器群45が設けられている。
【0037】
次に塗布ノズル33の構成について説明するにあたり、先ず本発明の原理について簡単に説明する。
【0038】
例えば図3に示すように、所定の長さCの隙間で並べた2枚の平行な平板50、50により所定の粘度の液体Lを挟み込んだ場合、当該液体Lに作用する重力F1と液体Lの有する表面張力F2とが釣り合っていれば、液体Lは平板50、50間の下端に、下向きに凸状の液溜りLaを形成した状態で保持される。
【0039】
また、平板50、50間に挟みこまれた液体Lの液溜りLaの部分を、例えば基板などの被塗工物51に接触させると、接触した部分で液体Lの表面張力が失われて液体Lが被塗工物51の表面に流れ出し、例えば図4に示すように、平板50、50と被塗工物51との間に液溜りLaが形成される。そして、この状態で平板50、50と被塗工物51とを相対的に移動させると、当該平板50、50の隙間Cから被塗工物51に対して連続的に液体Lが流れ出し、被塗工物51の表面に液体Lを塗布することができる。
【0040】
ところが、液体Lの粘度が高いと、液体Lと平板50、50の間から液体Lが落下しにくくなる。そのため、平板50、50を移動させても液体Lがうまく流れ出さず、塗布むらが生じてしまうことがある。かかる場合には、平板50、50の隙間の長さCを広げることで液体Lの流れは改善できる。
【0041】
しかしながら、平板50、50間の隙間長さCを広げると液体Lの表面張力F2が低下する。そして、表面張力F2が重力F1より小さくなると、平板50、50により液体Lを保持できなくなる。その結果、液体Lは平板50、50間から滴下してしまう。
【0042】
そこで、本発明者らは、外部から液体Lを上方向に持ち上げる力を付与して、この付与した力と表面張力F2との和が重力F1と釣り合うように外部から付与する力の大きさを調整すれば、液体Lの流れと平板50、50による液体Lの保持を両立させられる点に着目した。具体的には、例えば図5に示すように、平板50、50間の上端部、及び側端部(図示せず)を蓋52で塞ぎ、当該蓋52、平板50、50、及び液体Lで囲まれた領域Mの内部の圧力Px1を、この領域Mの外部の圧力Px2よりも小さくする。そうすることで、液体Lに領域Mの外部から内部に向かって大きさ(Px2−Px1)の圧力を作用させることができる。そして、この上向きの圧力と表面張力F2との和が、液体Lに作用する重力F1と釣り合うように圧力の大きさ(Px2−Px1)を調整することで、平板50、50間の下端に、下向きに凸状の液溜りLaを形成した状態で液体Lを保持できる。
【0043】
また、本発明者らの検証によれば、上述の方法を用いて塗布を行ったところ、被塗工物51における塗布を開始した側の端部と、塗布を終了した側の端部とでは、塗布された液体Lの膜厚に違いが生じていることが確認された。これは、塗布の進行に従い平板50、50間に保持される液体Lの液面が低下することにより、平板50の下端部における液体Lの水頭圧が減少し、平板50、50間から流れ出る液体Lの量が徐々に減少してしまうことが原因である。
【0044】
そこで、この点について本発明者らは、平板50、50間に保持される液体Lの領域Mの内部の圧力Px1を、液体Lの液面の低下に合わせて徐々に減少させることで、平板50、50の下端部における液体Lの水頭圧を一定に保ち、それにより平板50、50間から流れ出る液体Lの量を一定に保つことができる点に着目した。
【0045】
本発明のレジスト塗布装置1にかかる塗布ノズル33は、このような着想に基づくものであり、次に塗布ノズル33の構成について説明する。
【0046】
塗布ノズル33は、例えば図2、図6に示すように、全体として細長の形状をしており、その長さJが、例えば少なくともウェハWの直径よりも大きい本体部60を有している。本体部60の下端面には、当該本体部60の長手方向に沿って例えばウェハWの直径よりも大きい所定の長さDで所定の幅Gのスリット状の吐出口61が形成されている。
【0047】
本体部60の長手方向に直交する平面で当該本体部60を切断した場合の断面形状は、例えば図7に示すように、略U字形状をしている。本体部60の内部には、レジスト液Rを貯留する貯留室62が形成されている。貯留室62の、本体部60の長手方向に沿った長さは、吐出口61の長さDと同じである。貯留室62の下端部には、鉛直方向に延伸し吐出口61と連通する、レジスト液流路63が連通している。レジスト液流路63の幅は吐出口61の幅Gと同じである。また、レジスト液流路63における本体部60の長手方向に沿った長さも、吐出口61及び貯留室62の長さDと同じである。そして、所定の幅Gで形成されたこの吐出口61とレジスト液流路63が、上述の平板50と同様に機能し、貯留室62から自重によりレジスト液流路63に落下したレジスト液Rは、吐出口61とレジスト液流路63との間に挟み込まれる。なお、本体部60は、レジスト液Rとの濡れ性のよい、例えばステンレススチールなどにより構成されている。また、レジスト液Rとの濡れ性をさらによくするために、本体部60の内面、即ち吐出口61、貯留室62及びレジスト液流路63の内表面に、樹脂層を形成してもよい。
【0048】
また、吐出口61の幅Gは、貯留室62の内部の圧力を当該貯留室62の外部の圧力と等しくした状態では、レジスト液Rの表面張力が当該レジスト液Rに作用する重力より小さくなり、所定の流量でレジスト液Rが吐出口61から滴下するような値に設定されている。なお、この所定の幅Gは、予め行われる試験において、当該幅G、レジスト液Rの粘度、本体部60の材質を変化させ、その場合のレジスト液Rの状態を評価することにより求められる。
【0049】
例えば図7に示すように、貯留室62の断面形状は、所定の幅K、高さHの矩形状に形成されている。したがって、貯留室62は、「幅K×高さH×長さD」の容量のレジスト液Rを一時的に貯留することができる。また、本体部60の上端には、貯留室62を塞ぐようにして蓋体64が設けられている。これにより、貯留室62に貯留されたレジスト液Rの液面、貯留室62の内壁面及び蓋体64により囲まれた領域には、密閉空間Sが形成される。なお、貯留室62で貯留するレジスト液Rの容量は、ウェハWの全面に少なくとも一回以上レジスト液Rを塗布できる量以上であれば、任意に設定が可能である。なお、貯留室62の形状は、ウェハWの全面に少なくとも一回以上レジスト液Rを塗布できる容量であれば、矩形状に限定されるものではなく、任意に設定が可能である。
【0050】
蓋体64には、密閉空間S内の圧力を測定する圧力測定機構70と、密閉空間S内の圧力を調整する圧力調整機構71に接続された圧力調整管72と、貯留室62内のレジスト液Rの液面高さを測定する液面高さ測定機構73が、例えば当該蓋体64を貫通してそれぞれ設けられている。圧力測定機構70及び液面高さ測定機構73は、後述する制御部150に電気的に接続され、測定結果は順次制御部150に入力される。なお、圧力測定機構70や圧力調整管72は、密閉空間Sと連通していればどのような配置であってもよく、例えば本体部60の側面を貫通して設けてもよい。また、液面高さ測定機構73も、レジスト液Rの液面高さを測定できれば、形式や配置は任意に選択が可能である。
【0051】
圧力調整機構71は、図7に示すように、例えば真空ポンプなどの排気機構80と、例えば窒素などのガスを供給するガス供給源81を、切り替えバルブ82を介して圧力調整管72に接続した構成となっている。圧力調整機構71も後述する制御部150に電気的に接続されている。そして、制御部150からの指令により切り替えバルブ82の開度を調整することで、排気機構80またはガス供給源81のいずれかを圧力調整管72に接続して、貯留室62内部からの排気量を調整したり、貯留室62内に供給するガスの量を調整したりできる。これにより、圧力調整機構71は、圧力測定機構70の指示値、即ち貯留室62内の圧力が所定の値となるように調整することができる。
【0052】
かかる場合、貯留室62の内部を排気して当該貯留室62内の圧力を当該貯留室62外部の圧力に対して負圧とすることで、貯留室62内のレジスト液Rを上方に引き上げ、吐出口61からレジスト液Rが滴下するのを防ぐことができる。また、貯留室62内にガスを供給することで、レジスト塗布後に当該貯留室62内に残留するレジスト液Rを加圧して押し出したりパージしたりすることができる。なお、圧力調整機構61内の圧力調整管72や切り替えバルブ82などの構成については、本実施の形態に限定されるものではなく、貯留室62内の圧力を制御できれば、その構成は任意に設定できる。例えば、排気機構80とガス供給源81のそれぞれに圧力調整管72と圧力調整弁を設け、それぞれ個別に蓋体64に接続するようにしてもよい。
【0053】
また、本体部60には上述の供給管37が、貯留室62に連通して設けられている。したがって、供給管37に設けられたバルブ38を開け、その状態で排気機構80により貯留室62の内部の圧力、即ち密閉空間Sの圧力を本体部60の外部の圧力に対して負圧にすることで、レジスト貯槽36に貯留されているレジスト液を貯留室62の内部に引き込むことができる。
【0054】
レジスト塗布装置1には、上述のスピンチャック20の回転動作と上下動作、ノズル駆動部34による塗布ノズル33の移動動作、圧力調整機構71による貯留室62内の圧力調整といった各種の制御を行う制御部150が設けられている。制御部150は、例えばCPUやメモリなどを備えたコンピュータにより構成され、例えばメモリに記憶されたプログラムを実行することによって、レジスト塗布装置1における塗布処理を実現できる。なお、レジスト塗布装置1における塗布処理を実現するための各種プログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能なハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどの記憶媒体Hに記憶されていたものであって、その記憶媒体Hから制御部150にインストールされたものが用いられる。
【0055】
次に、以上のように構成されたレジスト塗布装置1で行われる塗布処理のプロセスについて説明する。図8は、かかる塗布処理の主な工程の例を示すフローチャートである。図9は、縦軸を塗布処理における各機器の状態、横軸を時間の経過とし、各機器の状態の変化を時系列に表したタイムチャートである。
【0056】
塗布処理を行うにあたっては、先ずウェハWがレジスト塗布装置1の処理容器10内に図示しない搬送機構により搬入される。レジスト塗布装置1に搬入されたウェハWは、スピンチャック20に吸着保持される。
【0057】
続いて第2のアーム32により待機部42の溶剤ノズル40がウェハWの中心部の上方まで移動して、溶剤がウェハWの上面に供給される(図8の工程S1)。その後、チャック駆動機構21を制御してスピンチャック20によりウェハWを例えば500rpmの回転数で回転させ、ウェハWの中心部に供給された溶剤をウェハWの外周部に向かって拡散させる(図8の工程S2)。これにより、ウェハWの表面が溶剤で濡れた状態になる。その後、溶剤がウェハWの表面の全面に拡散すると、溶剤ノズル40がウェハWの中心部上方から待機部42に退避する。それと共に、スピンチャック20の回転も停止する。
【0058】
次いで、第1のアーム31により待機部35の塗布ノズル33を、ウェハWの例えば図2のY方向正方向側の端部の上方まで移動させる(図8の工程S3、及び図9の時間T1)。この際、塗布ノズル33の貯留室62の内部は、貯留室62の外部の圧力に対して負圧となるように、予め圧力調整機構71により所定の圧力P0に調整されている。なお、本実施の形態においては、貯留室62の外部の圧力は、例えば大気圧一定であるものとして説明する。
【0059】
次に、供給管37に設けられたバルブ38を開ける。これにより、供給管37を介してレジスト貯槽36から塗布ノズル33の貯留室62へレジスト液Rが引き込まれる。これにより、引き込み前は例えば高さH0で貯留されていたレジスト液Rの液面が高さH1に上昇し、貯留室62に所定量のレジスト液Rが貯留される(図8の工程S4、及び図9の時間T2)。この際、貯留室62に貯留するレジスト液Rの量は、ウェハWの全面に少なくとも一回以上のレジスト塗布を行える量である。貯留室62に引き込まれたレジスト液Rの量は、液面高さ測定機構73により測定されたレジスト液Rの液面高さと、貯留室62の幅K及び長さDから求められる。なお、レジスト液流路63の容積は、貯留室62の容積に比較して非常に小さい。したがって、レジスト液流路63内に溜まるレジスト液Rの量は考慮しなくてもよい。また、直径が300mmのウェハWの場合、一回のレジスト塗布に用いられるレジスト液は、例えば7ccである。
【0060】
貯留室62に所定量のレジスト液が貯留された後、バルブ38を閉じる(図9の時間T3)。なお、貯留室62へのレジスト液Rの補充は、塗布ノズル33をウェハWの端部に移動させる前に予め行っていてもよい。
【0061】
次に、塗布ノズル33をウェハWに対して下降させ、例えば図10に示すように、吐出口61とウェハWを所定の距離Z1まで近づける(図9の時間T4)。次いで、圧力調整機構71により貯留室62内の密閉空間Sの圧力を所定の値P1まで上昇(真空度は低下)させる(図9の時間T5)。これにより、レジスト液Rの表面張力と密閉空間S内の負圧とにより、レジスト液流路63と吐出口61とに保持されていたレジスト液Rが滴下し、例えば図11に示すように、ウェハWの端部と吐出口61との間にレジスト液Rの液溜りRaが形成される(図8の工程S5)。
【0062】
その後、吐出口61からレジスト液RがウェハW上に流れ出ないように、直ちに密閉空間Sの圧力をP2まで低下(真空度は上昇)させる。それと共に、塗布ノズル33を上昇させて、吐出口61とウェハWとの間の距離をZ2とする(図9の時間T6)。なお、この距離Z2は、ウェハWと本体部60の下端面との間に形成されたレジスト液Rの液溜りRaが千切れずに維持される距離であり、予め行われる試験等により求められる。
【0063】
その後、第1のアーム31により塗布ノズル33を所定の速度で、図12に示すように、ウェハWの待機部42側(図2のY方向負方向側)の端部まで移動させる(図8の工程S6、及び図9の時間T6〜T7)。これにより、貯留室62のレジスト液Rが吐出口61から流れ出し、ウェハWの表面にレジスト液Rが塗布される。この際、貯留室62内のレジスト液Rの液面の低下に合わせて、圧力調整機構71により密閉空間Sの圧力を、P2からP3まで徐々に上昇させる。
【0064】
上述のとおり、貯留室62内のレジスト液Rの液面が低下すると、吐出口61に作用するレジスト液Rによる水頭圧が減少する。この間、貯留室62の密閉空間Sの圧力と、貯留室62の外部の圧力とが変化せず一定であるとすると、水頭圧が減少した分だけレジスト液Rを吐出口61から押し出す力が減少するので、レジスト液Rの吐出量は減少する。
【0065】
したがって、本実施の形態においては、貯留室62内のレジスト液Rの液面高さの低下に合わせて圧力調整機構71により密閉空間Sの圧力を例えばP3まで徐々に上昇(真空度は低下)させることで、液面低下による吐出口61における水頭圧の減少が補われる。その結果、吐出口61からのレジスト液Rの吐出量が一定に保たれ、ウェハWの面内に均一な膜厚のレジスト膜が形成される。この際、圧力調整機構71により上昇されるべき密閉空間S内の圧力の値は、例えば液面高さ測定機構73により測定されたレジスト液Rの液面の高さに基づいて求められる。具体的には、塗布開始前の状態(例えば、図9の時間T6)におけるレジスト液Rの液面高さと、塗布開始後、塗布ノズル33をウェハWに対して所定の距離移動させてレジスト液Rを塗布したことにより、貯留室62内のレジスト液Rが減少した状態におけるレジスト液Rの液面高さの差分を求める。そして、当該高さの差分にレジスト液Rの密度を乗ずることで、吐出口61にかかる水頭圧の減少分を求めることができる。したがって、圧力調整機構71により、この水頭圧の減少分だけ密閉空間S内の圧力を上昇させることで、吐出口61にかかる水頭圧が時間T6〜時間T7の間で一定となる。これにより、吐出口61からのレジスト液Rの吐出量が一定となり、ウェハWの面内に均一な膜厚のレジスト膜が形成される。
【0066】
なお、密閉空間S内の圧力の調整は、必ずしも貯留室62内のレジスト液Rの液面高さに応じて行う必要はなく、例えば塗布ノズル33とウェハWとの相対的な移動距離に応じて密閉空間S内の圧力を調整するようにしてもよい。かかる場合、図13に示すように、塗布ノズル33の移動距離と密閉空間S内の圧力設定値との相関関係を予め求めておき、この相関関係に基づいて密閉空間S内の圧力を調整するようにしてもよい。
【0067】
図13のような相関を予め求めておくことで、塗布ノズル33のウェハWにおける所定位置でのレジスト液Rの消費量から水頭圧の減少分を求め、これにより密閉空間S内の圧力を調整することができる。また、吐出口61からのレジスト液Rの吐出量を一定にする方法としては、例えばレジスト液流路63に他の圧力測定機構を設け、レジスト液流路63のレジスト液Rに作用する水頭圧を直接求め、この水頭圧が一定となるように圧力調整機構71により密閉空間S内の圧力を調整することも考えられる。いずれの場合においても、圧力調整機構71により、吐出口61からのレジスト液Rの吐出量が一定となるように、換言すれば吐出口61のレジスト液Rに作用する水頭圧が一定となるように貯留室62内部の圧力を調整するので、ウェハWの面内に均一な膜厚のレジスト膜を形成することができる。
【0068】
塗布ノズル33がウェハWの待機部42側(図2のY方向負方向側)の端部まで移動すると(図9の時間T7)、塗布ノズル33を下降させて吐出口61とウェハWを距離Z1まで近づける。それと共に、圧力調整機構71により密閉空間Sの圧力を例えばP0まで低下(真空度は上昇)させて貯留室62側にレジスト液を引き込む。これにより、ウェハWと本体部60の下端面との間に形成されていた液溜りRaを消滅させ、吐出口61からウェハWへのレジスト液の供給を停止させる。
【0069】
その後、密閉空間Sの圧力を、例えばP3まで再び上昇(真空度は低下)させ、それと共に塗布ノズル33を所定の高さまで上昇させる(図9の時間T8)。次いで、塗布ノズル33を待機部35に退避させる(図8の工程S7、及び図9の時間T9)。なお、時間T8において密閉空間Sの圧力を再度P3まで上昇させるのは、ウェハWに一旦塗布されたレジスト液Rが貯留室62側に引き込まれ、塗布欠陥が生じるのを防止するためである。
【0070】
その後、スピンチャック20を例えば、1000rpm〜1800rpm、本実施の形態においては1500rpmで回転させ、ウェハW表面の全面に塗布されたレジスト液の乾燥を行う(図5の工程S8)。これにより、ウェハW上にレジスト膜が形成される。
【0071】
その後、ウェハWは搬送機構(図示せず)により処理容器10から搬出され、一連の塗布処理が終了し、この塗布処理が繰り返し行われる。
【0072】
以上の実施の形態によれば、塗布ノズル33とウェハWとを相対的に移動させて当該ウェハにレジスト液Rを塗布する間、吐出口61からのレジスト液Rの吐出量が一定となるように、圧力調整機構71により貯留室62内部の圧力を調整するので、ウェハWの面内に均一な膜厚のレジスト膜を形成することができる。また、貯留室62内部の圧力を調整することにより、スリット状の吐出口61に形成される液溜りを貯留室62側に吸い上げて適切に保持することができる。したがって、吐出口からの液だれや、レジスト塗布時の膜厚不良を防ぐことができる。
【0073】
特に、液面高さ測定機構73により実際の液面高さを測定し、当該貯留室62のレジスト液Rの液面高さの減少に応じて、圧力調整機構71により貯留室62の内部の圧力、即ち密閉空間Sの圧力を増加させるので、より精密にレジスト液の供給量を制御することができる。
【0074】
以上の実施の形態においては、塗布ノズル33を移動させることで塗布ノズル33とウェハWとを相対的に移動させたが、例えば塗布ノズル33の水平方向の位置を固定した状態で、ウェハWを塗布ノズル33に対して移動させてもよい。
【0075】
以上の実施の形態では、例えば貯留室62の液面高さに応じて密閉空間Sの圧力を調整していたが、液面高さに応じた圧力制御に加えて、例えば図14に示すように、所定の振幅、所定の周期に従って密閉空間Sの圧力を変化させてもよい。密閉空間Sの圧力を周期関数状に変化させた場合、貯留室62内のレジスト液Rには、当該レジスト液Rを上方に引き上げる力と下方に押し込む力が交互に作用することになる。これにより、例えば本体部60を上下方向に振動させた場合と同様に、貯留室62内のレジスト液Rの、特に貯留室62及びレジスト液流路63との接触面における流動性を向上させ、吐出口61からスムーズにレジスト液Rを供給することができる。その結果、高い粘度の塗布液を用いた場合であっても、塗布むらが生じることを抑制できる。
【0076】
なお、以上の実施の形態では、レジスト液Rの塗布後、例えば時間T7において、ウェハWの端部で一旦塗布ノズル33を低下させるとともに密閉空間Sの圧力をP0まで低下させて液溜りRaを消滅させたが、例えば塗布ノズル33の高さを変えず、塗布ノズル33をそのままウェハWの端部を通過させることで液溜りRaを消滅させてもよい。
【0077】
以上の実施の形態では、レジスト液流路63は、鉛直方向に沿って設けられていたが、例えば所定の角度傾けて設けてもよい。こうすることで、レジスト液流路63を通過する際のレジスト液Rの抵抗が増加するので、密閉空間S内の圧力の変化に対する吐出口61から流れるレジスト液Rの流量変化を小さくすることができる。換言すれば、圧力調整機構71による、塗布ノズル33からの吐出量の制御の感度を低下させることができる。仮に、制御の感度が高すぎる場合、例えば貯留室62内のレジスト液Rの液面高さに厳密に一致した圧力設定を行う必要があるが、制御の感度を低下させれば、密閉空間S内の圧力が多少設定値からはずれている場合でも、塗布ノズル33からの吐出量に与える影響が小さいため、吐出口61からの吐出量を滑らかに変化させることができる。
【0078】
なお、以上の実施の形態では、貯留室62外部の圧力は大気圧一定の場合について説明したが、例えばレジスト塗布装置1が配置される雰囲気の圧力、例えばクリーンルーム内の気圧は、例えば気温や天候により変化するため、常に一定であるとは限らない。そして、貯留室62内部、即ち密閉空間Sの圧力を所定の値に調整しても、外部の圧力が変動すると、吐出口61からのレジスト液Rの吐出量が所望の値とならない。したがって、圧力測定機構70として、貯留室62の内部と貯留室62の外部との差圧を測定する差圧計を用いてもよい。かかる場合、圧力調整機構71は、レジスト塗布時の貯留室62内のレジスト液Rの液面低下に比例して、貯留室62内外の差圧を減少させるように貯留室62内の圧力、即ち密閉空間Sの圧力を調整する。
【実施例】
【0079】
実施例として、本実施の形態にかかる塗布処理装置1を用いてレジスト塗布を行うにあたり、例えば貯留室62内のレジスト液Rの液面高さに合わせて密閉空間S内の圧力を変化させた場合について、塗布後のレジスト膜の膜厚を確認する試験を行った。また、比較例として、塗布中に貯留室62内の圧力、即ち密閉空間S内の圧力を一定に維持した場合についても確認試験を行った。その際、塗布ノズル33による塗布処理の際の吐出口61とウェハWとの間の距離Z2は、例えば60μmとし、ウェハWは300mm径のものを用いた。塗布液としてのレジスト液Rの粘度は、例えば1800mPa・sである。
【0080】
試験の結果を図15及び図16に示す。図15、図16の縦軸は、膜厚、横軸は、ウェハWの直径方向の位置である。図15は、密閉空間S内の圧力を塗布中一定とした場合のレジスト膜の膜厚を示すグラフである。図16は、密閉空間S内の圧力をレジスト液Rの液面高さに合わせて変化させた場合のレジスト膜の膜厚を示すグラフである。また、他の実施例として、図14に示すように密閉空間S内の圧力を所定の振幅、所定の周期で、周期関数状に変化させた場合についてもレジスト膜の膜厚を確認する試験を行った。圧力変化の振幅は、100Pa、周期は約1秒とした。その結果を図17に示す。なお、図15、図16及び図17に示すグラフAは、塗布ノズル33の移動方向に沿ってレジスト膜の膜厚を測定したものである。グラフBは、塗布ノズル33の移動方向に直交、即ち塗布ノズル33の長手方向に沿ってレジスト膜の膜厚を測定したものである。
【0081】
図15に示すように、密閉空間S内の圧力を塗布中一定に保った場合は、グラフAが右肩下がりとなっており、貯留室62内のレジスト液Rの減少に伴い、吐出口61からのレジスト液Rの吐出量が減少していることが確認できる。なお、グラフB、即ち塗布ノズル33の長手方向に沿った膜厚についてはほぼ均一となっている。
【0082】
その一方、密閉空間S内の圧力をレジスト液Rの液面高さに合わせて変化させた場合、グラフA、BのいずれもウェハWの面内で均一な膜厚を得られることが確認できた。
【0083】
また、密閉空間S内の圧力を周期関数状に変化させた場合についても、ウェハWの端部で若干膜厚のばらつきが見られるものの、密閉空間S内の圧力を塗布中一定に保った場合と比較して、良好な結果が得られることを確認できた。したがって、本実施の形態にかかるレジスト塗布装置1によれば、高粘度の塗布液を、無駄なく均一にウェハW上に塗布できることが確認できた。
【0084】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。本発明はこの例に限らず種々の態様を採りうるものである。例えば、レジスト液に代えて、他の高粘度の塗布液、例えばポリイミドなどを用いる場合にも本発明は適用できる。また、上述した実施の形態は、ウェハに塗布処理を行う例であったが、本発明は、基板がウェハ以外のFPD(フラットパネルディスプレイ)、フォトマスク用のマスクレチクルなどの他の基板である場合にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、例えば半導体ウェハ等の基板上に高粘度の塗布液を塗布する際に有用である。
【符号の説明】
【0086】
1 レジスト塗布装置
10 処理容器
20 スピンチャック
21 チャック駆動機構
22 カップ
23 排出管
24 排気管
30 レール
31、32 アーム
33 塗布ノズル
34 ノズル駆動部
35 待機部
36 レジスト貯槽
37 供給管
38 バルブ
40 純水ノズル
41 ノズル駆動部
42 待機部
43 純水供給源
44 供給管
50 平板
51 被塗工物
52 蓋
60 本体部
61 吐出口
62 貯留室
63 レジスト液流路
64 蓋体
70 圧力測定機構
71 圧力調整機構
72 圧力調整管
73 液面高さ測定機構
80 排気機構
81 ガス供給源
82 切り替えバルブ
150 制御部
A 長さ
C 長さ
D 長さ
G 幅
J 長さ
K 幅
L 液体
R レジスト液
W ウェハ
Z 距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と塗布ノズルの吐出口との間に当該吐出口から吐出された塗布液の液溜りを形成し、その状態で基板と前記塗布ノズルを水平方向に相対的に移動させることで基板に塗布液を塗布する塗布処理装置であって、
前記吐出口に連通し、その内部に塗布液を貯留する貯留室を備えた塗布ノズルと、
前記貯留室内部の圧力を調整する圧力調整機構と、
前記圧力調整機構を制御して、当該基板表面に塗布液を塗布する間、前記吐出口からの塗布液の吐出量が一定となるように前記貯留室内部の圧力を調整する制御部と、を有することを特徴とする、塗布処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、基板に塗布液を塗布する間、前記圧力調整機構を制御して、前記貯留室の内部の圧力を当該貯留室の外部の圧力に対して負圧にし、さらに、前記吐出口からの塗布液の吐出量が一定となるように、前記貯留室内部の圧力を徐々に上昇させることを特徴とする、請求項1に記載の塗布処理装置。
【請求項3】
前記貯留室内部に貯留された塗布液の液面高さを測定する液面高さ測定機構を有し、
前記制御部は、前記貯留室内の圧力を、前記液面高さ測定機構で測定された液面高さの減少分に応じて上昇させることで、前記吐出口からの塗布液の吐出量が一定となるように前記圧力調整機構を制御することを特徴とする、請求項2に記載の塗布処理装置。
【請求項4】
前記貯留室内部の圧力と当該貯留室の外部の圧力との差圧を測定する圧力測定機構を有し、
前制御部は、前記差圧を、前記液面高さ測定機構で測定された液面高さの減少分に応じて減少させることで、前記吐出口からの塗布液の吐出量が一定となるように、前記圧力調整機構を制御することを特徴とする、請求項3に記載の塗布処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記塗布ノズルと基板との相対的な移動に伴い、前記貯留室の内部の圧力を所定の振幅、所定の周期に従って変化させるように前記圧力調整機構を制御することを特徴とする、請求項1に記載の塗布処理装置。
【請求項6】
基板と塗布ノズルの吐出口との間に当該吐出口から吐出された塗布液の液溜りを形成し、その状態で基板と前記塗布ノズルを水平方向に相対的に移動させることで基板に塗布液を塗布する塗布処理方法において、
前記塗布ノズルは、前記吐出口に連通し、その内部に塗布液を貯留する貯留室を備え、
当該基板表面に塗布液を塗布する間、前記吐出口からの塗布液の吐出量が一定となるように、前記貯留室内部の圧力を調整することを特徴とする、塗布処理方法。
【請求項7】
前記基板に塗布液を塗布する間、前記貯留室の内部の圧力を、当該貯留室の外部の圧力に対して負圧にし、さらに、前記吐出口からの塗布液の吐出量が一定となるように、前記貯留室内部の圧力を徐々に上昇させることを特徴とする、請求項6に記載の塗布処理方法。
【請求項8】
前記貯留室内部に貯留された塗布液の液面高さを測定し、
前記貯留室内の圧力を、前記液面高さの減少分に応じて上昇させることで、前記吐出口からの塗布液の吐出量が一定となるように、前記貯留室内部の圧力を調整することを特徴とする、請求項7に記載の塗布処理方法。
【請求項9】
前記貯留室内部の圧力と当該貯留室の外部の圧力との差圧を測定し、
前記差圧を、前記液面高さ測定機構で測定された液面高さの減少分に応じて減少させることで、前記吐出口からの塗布液の吐出量が一定となるように、前記貯留室内部の圧力を調整することを特徴とする、請求項8に記載の塗布処理方法。
【請求項10】
前記塗布ノズルと基板との相対的な移動に伴い、前記貯留室の内部の圧力を所定の振幅、所定の周期に従って変化させることを特徴とする、請求項6に記載の塗布処理方法。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれかに記載の塗布処理方法を塗布処理装置によって実行させるために、当該塗布処理装置を制御する制御装置のコンピュータ上で動作するプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のプログラムを格納した読み取り可能なコンピュータ記憶媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−98371(P2013−98371A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240075(P2011−240075)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】