塗布膜の乾燥方法及び乾燥装置
【課題】
基板上に形成した塗布膜の上方から送風し、塗布膜の中心部から外周部へ気流を制御することにより、乾燥後における膜の平坦性を高め、乾燥時間を短縮する乾燥方法を提供する。
【解決手段】
ステージ13の上に積載された基板12に塗布された液体材料の塗布膜11を、前記塗布膜11の上面側から送風し、前記塗布膜11の中心部から外周部へと気流を制御することにより、前記塗布膜11表面の溶媒蒸気を取り払い、前記塗布膜11全体の乾燥速度のばらつきを抑える。
基板上に形成した塗布膜の上方から送風し、塗布膜の中心部から外周部へ気流を制御することにより、乾燥後における膜の平坦性を高め、乾燥時間を短縮する乾燥方法を提供する。
【解決手段】
ステージ13の上に積載された基板12に塗布された液体材料の塗布膜11を、前記塗布膜11の上面側から送風し、前記塗布膜11の中心部から外周部へと気流を制御することにより、前記塗布膜11表面の溶媒蒸気を取り払い、前記塗布膜11全体の乾燥速度のばらつきを抑える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布膜の乾燥方法及び乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上に塗布された液体材料(フォトレジストなど)の塗布膜を乾燥あるいは焼成させる技術としては、加熱炉(ベーク炉)内に基板を配置して塗布膜を乾燥させる炉内ベーク方式、プレート(ホットプレート)上に基板を搭載して加熱乾燥させるホットプレート方式、密閉可能なチャンバー内に基板を配置してチャンバー内を減圧し、塗布膜を減圧乾燥させる減圧方式、気体を吹きつけることにより塗布膜を乾燥させる送風方式などが提案されている。
【0003】
ところが、前記炉内ベーク方式や前記ホットプレート方式などの加熱乾燥技術では、塗布膜の表面近傍で塗布材料溶剤の蒸気圧分布が生じ、乾燥速度に差が生じることなどから塗布膜を均一に乾燥させることができず、これにより生じた不均一な膜厚により素子パターン精度にバラつきが生じてしまうという問題があった。前記減圧方式では、その減圧速度が大きいと、材料中の溶剤が急激に蒸発することにより表面あれが発生し、さらに塗布表面から溶剤が急激に蒸発するため、塗布内膜内に密度差が生じて塗布膜の成分の均一性が低下し易くなるという問題があった。
【0004】
また、前記送風方式では、塗布材料が染み込むシートや布帛の乾燥では温風や乾燥ガスを送風することにより効率よく乾燥を行うことが可能であるが、基板に形成した塗布膜の乾燥においては、塗布膜表面の気流を制御することが困難であることや塗布膜が流動性を有することなどから、乾燥後に膜厚ムラが生じる虞があった。
【0005】
このような問題を解決する方法として、塗布膜全面に気体を吹き付ける方法(例えば特許文献1)や蒸発制御カバーを設置して減圧乾燥することにより塗布膜面内の蒸発速度を制御する方法(例えば特許文献2)が提案されている。
【特許文献1】特開2003−5186号公報
【特許文献2】特開2003−159558号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の塗布膜前面に気体を吹き付ける方法では、例えばカラーフィルタ用基板のように、基板上に形成したパターンによって特定の領域にだけ液体材料を塗布する基板においては、前記パターンの形状により乾燥速度が異なり、複雑な蒸気圧分布を形成することから、塗布膜全体への送風方式によって乾燥速度を均一にすることが難しく、様々な形状の塗布膜に対して高い平坦性を有する膜を得ることは困難であった。
【0007】
また、蒸発制御カバーにより塗布膜面内の蒸発速度を制御する方法を用いたときには、基板を収納する大きな真空チャンバーや真空装置が必要であり、装置コストと装置サイズの増大を招くという問題があった。さらに上述したように、パターンを形成した基板の塗布膜においては全面送風方式と同様に、様々な形状の塗布膜にたいして高い平坦性を有する膜を得ることが困難であった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記の各問題に鑑み、装置コストを増大させることなく、様々な形状の塗布膜に対して平坦性に優れた塗布膜を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、以下の構成を備えている。
【0010】
(1)液体状の塗布膜が塗布された基板の上面から、前記塗布膜に気体を吹き付け、前記気体を前記基板の側面側から吸引することにより前記塗布膜の乾燥を行うことを特徴とする。
【0011】
この乾燥方法においては、塗布膜が上面側に設置した送風機構により乾燥される。したがって、従来行われている塗布基板の下側からの接触加熱や、塗布基板をチャンバー内に設置して減圧することにより乾燥を行う減圧乾燥方法による、塗布材料の急激な乾燥が生じることはない。
【0012】
また、最も溶媒雰囲気が大きく乾燥の遅い塗布膜中心部に対して、気体が送風されることにより溶媒雰囲気を小さくなる。塗布膜中心部の溶媒雰囲気を含んだ気体が外周部に流れる。
【0013】
(2)前記気体が、乾燥空気であることを特徴とする。
【0014】
前記気体を乾燥空気にすることで、塗布膜の乾燥が進み、乾燥時間の短縮の効果が高まる。前記気体は、吹き付けることによって塗布膜に物理的もしくは化学的に変化を及ぼさない気体であれば使用可能である。
【0015】
(3)前記基板の側面側から排気を行い、大気圧下で前記塗布膜の乾燥を行うことを特徴とする。
【0016】
基板の上面側からの送風と、前記基板の側面側からの排気とを同時に行い、大気圧下で乾燥を行うことにより、従来行われている塗布基板をチャンバー内に設置して減圧することにより乾燥を行う減圧乾燥方法による塗布材料の急激な乾燥が生じることはない。
【0017】
(4)前記気体を送風することにより乾燥を行う乾燥工程と、前記塗布膜を加熱することにより乾燥を行う乾燥工程と、により前記塗布膜の乾燥を行うことを特徴とする。
【0018】
通常、加熱による乾燥を行った場合、加熱されている部分から塗布材料の蒸発が発生し、塗布膜の中心部と外周部では大きな蒸気圧の差が発生する。この蒸気圧の差により塗布膜外周部の膜厚が中心部よりも大きくなる。この乾燥方法において、二つの乾燥手段を用いることにより乾燥に要する時間を短縮し、なおかつ発生した溶媒蒸気を取り除くことにより蒸気分布が小さくなる。
【0019】
(5)液体状の塗布膜が塗布された基板の上面側から気体を吹き付ける送風機構と、前記基板の側面側から前記気体を吸引する排気機構と、を有することを特徴とする。
【0020】
従来行われている塗布基板の下側の接触加熱や、塗布基板をチャンバー内に設置して減圧することにより乾燥を行う減圧乾燥方法による、塗布材料の急激な乾燥が生じることはない。
【0021】
この乾燥装置においては、基板の上面側に設置した送風機構と基板の側面側に設置した排気機構を併用することによって、塗布膜中心から外周部への気流を作る。
【0022】
(6)前記基板の上面側に隙間を設けて対向するカバーを有することを特徴とする。
【0023】
基板の上面側に設置したカバーと、送風機構と排気機構を併用することにより、送風のみでは制御が困難であった塗布膜中心から外周部への気流を作る。
【0024】
(7)前記カバーの高さを変更する高さ調整機構を有することを特徴とする。
【0025】
高さ調整機構を有することにより、塗布膜の膜厚や形状、送風速度などに応じて最適な距離にカバーを設置することができる。
【0026】
(8)前記カバーにおいて、基板上面に対向する対向面に複数の凹部を有することを特徴とする。
【0027】
前記カバーの基板側の面に複数の凹部を形成することにより、塗布膜全体において表面近傍の溶媒雰囲気を取り除く。
【0028】
(9)前記送風機構または前記排気機構のうち少なくとも一つが前記カバーと一体となっていることを特徴とする。
【0029】
設置しているカバーと送風機構または排気機構が一体となっていることにより、乾燥装置の小型化、簡易化を実現する。
【0030】
(10)前記塗布膜を加熱する加熱機構を有することを特徴とする。
【0031】
前記加熱機構により塗布膜の加熱を行うことにより塗布材料の溶媒の揮発を促進し、溶媒蒸気を前記送風機構により取り除くことにより、塗布膜の乾燥を促進して効果的に乾燥時間を短縮する。
【0032】
(11)前記加熱機構がホットプレート、赤外線ランプ、ロッド型ヒータのいずれかであることを特徴とする。
【0033】
上述した加熱機構により加熱領域を均一に加熱し、加熱ムラによる塗布材料の乾燥速度のバラつきを抑制し、加熱機構による加熱で生じた溶媒蒸気を送風機構により取り払う。
【0034】
(12)前記基板を保持するステージを有し、前記ステージを基板の上面と平行な方向に移動させる移動機構を有することを特徴とする。
【0035】
前記ステージの移動機構を有することにより、次工程への基板の搬送を実現する。また、基板上にパターンが形成されている場合には、そのパターン形状に応じて、送風により気体を吹き付ける位置を調整することで、パターン形状に適した気流を作る。
【0036】
(13)前記ステージを基板上面と平行な面内で回転させる回転機構を有することを特徴とする。
【0037】
基板に形成された塗布膜のパターン形状に応じた排気位置の変更を実現し、パターン形状に適した気流を作る。
【発明の効果】
【0038】
本発明の乾燥方法によれば、液体材料を塗布した基板を乾燥する場合に、塗布膜の中心部から塗布膜の外周部へ気流を発生させ、この気流により塗布膜表面近傍の溶媒蒸気を取り除くことで乾燥を行い、塗布膜全体での乾燥速度のばらつきを抑制して乾燥後に高い平坦性をもつ膜を得ることができる。
【0039】
また、本発明の気流制御乾燥を予備乾燥として行うことにより、塗布工程と乾燥工程を繰り返し行う場合には、乾燥後の平坦性を低下させることなく乾燥に要する時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
図に基づいて、本発明の実施の形態について以下に説明する。
【実施例1】
【0041】
本実施例では、カラーフィルタ基板の製造工程のうち、インクを塗布したカラーフィルタ用基板の乾燥方法について説明する。
【0042】
まず、本発明の乾燥方法を実現するための乾燥装置1について説明する。
【0043】
図1は本発明の乾燥方法を行う乾燥装置1を示す概略斜視図である。
【0044】
本実施例に係る乾燥装置1は、カラーフィルタ用基板12、ステージ13、XY方向駆動部14a、ステージの回転を行うθ回転駆動部14b、気流カバー15、高さ調整機構16、送風機構17、排気機構18、装置コントロールユニット19から構成されている。
【0045】
前記カラーフィルタ用基板12には、塗布膜11が塗布され、前記ステージ13には前記カラーフィルタ用基板12が積載される。前記XY方向駆動部14aは、ステージ13をX、Y方向に移動させ、前記θ回転駆動部14bは、ステージ13をXY平面上で回転させる。前記気流カバー15は、塗布膜が塗布されたカラーフィルタ用基板12上面に吹き付ける気体の速度等を制御する。前記高さ調整機構16は、気流カバー15のカラーフィルタ用基板12に対するZ軸方向の高さを調整する。前記送風機構17は、カラーフィルタ用基板12の上面側から気体を吹き付け、前記排気機構18は、カラーフィルタ用基板の側面側から気体を吸引する。前記装置コントロールユニット19は、XY方向駆動部14aと回転駆動部14b、高さ調整機構16の駆動制御等を行う。
【0046】
なお、前記排気機構18は1つである必要はない。前記ステージ13はカラーフィルタ用基板12を真空引きすることで、カラーフィルタ用基板12に固定することができる。
【0047】
前記装置コントロールユニット19と、前記XY方向駆動部14aと、前記θ回転駆動部14bと、前記高さ調整機構16との間には、それぞれ信号ケーブルが設けられており、前記装置コントロールユニット19によって、前記XY方向駆動部14aと,前記θ回転駆動部14bと,前記高さ調整機構16との駆動制御が行われている。
【0048】
図2は本発明による乾燥を行う際の側面拡大図である。
【0049】
送風機構17は、送風口17aと、送風ダクト17bと、図示しない流量制御部とを有している。前記流量制御部により制御された流量の気体は、前記送風ダクト17bを通り前記送風口17aからカラーフィルタ用基板12の上面に吹き付けられる。
【0050】
排気機構18は、カラーフィルタ用基板12の側面を取り囲み、前記カラーフィルタ用基板12側面と対向させて配置されており、それぞれ排気口18aと、排気ダクト18bと、図示しない流量制御部と、を有している。前記流量制御部によって制御された流量の気体を前記排気口18aから吸引し、前記排気ダクト18bを通じて排気する。
【0051】
なお、気流カバー15と塗布膜11表面の距離は0.3mmである。
【0052】
図3は本発明の実施例にかかるカラーフィルタ用基板12の概略平面図である。
【0053】
図4は、図3のAーA' 線概略断面図である。
【0054】
図3に示すように、カラーフィルタ用基板12には、インク配置領域12aとバンク12bとが隣接して多数形成されている。前記インク配置領域12aにインクを配置する。前記バンク12bは、前記インク配置領域12aに配置された液体状のインクが、前記インク配置領域12aの外に広がることを防いでいる(図4参照)。
【0055】
なお、カラーフィルタ用基板12のインク配置領域12aに配置されるインクは、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のそれぞれのインクである。
【0056】
また、インクが配置される基板は、インク配置領域12aを有する場合には、図4に示したようなバンク12bをもたなくてもよい。
【0057】
インク配置領域は、短冊形状でなくてもよく、蛇行していてもよいし、テーパ状であってもよい。また、これらの形状を組み合わせたものであってもよい。さらに、インク配置領域12aは、必ずしも輪郭線が直線的でなくてもよく、曲線、ジグザグ形状を含んでもよい。
【0058】
次に、気流カバー15と、送風機構17と、排気機構18とによって、カラーフィルタ用基板12上に配置されたインクの乾燥方法について説明する。
【0059】
本実施例では、気流カバー15として直径15cm、厚み1cmの円柱状の金属プレートを用いた。このとき、気流カバー15はカラーフィルタ用基板12よりも大きいサイズである。この気流カバー15の中心部に送風口17aを設置し、カラーフィルタ用基板12の側面を取り囲み、前記カラーフィルタ用基板12側面と対向させて排気機構18を配置する。
【0060】
ステージ13にインクが配置されたカラーフィルタ用基板12を積載する。この際、配置されるインクは赤色(R)、緑色(G)、青色(B)である。
【0061】
次に、装置コントロールユニット19によりXY方向駆動部14a、θ回転駆動部14bを制御して、前記インクが配置されたカラーフィルタ用基板12を積載したステージ13を目的位置に移動する。この際、目的位置とは、気流カバー15の中心部にある送風口17aの真下がカラーフィルタ用基板12の中心がある位置を指す。
【0062】
カラーフィルタ用基板12にインクを配置してから、前記位置にステージ13を移動するために必要な時間は、30秒程度である。
【0063】
乾燥を行うとき、前記気流カバー15と塗布膜表面の距離は0.3mmとする。
【0064】
ステージ13の移動を完了させた後、気流カバー15と、送風機構17と、排気機構18とを用いてカラーフィルタ用基板12の上面側から気体を吹き付け、塗布膜中心部から外周部への気流を発生させ、インク配置領域12aに配置されたインクの乾燥を行う。
【0065】
このとき、塗布膜中心部に乾燥空気を吹き付けることにより、溶媒雰囲気の大きい塗布膜中心部の溶媒蒸気を取り払い、溶媒雰囲気の小さい外周部へ、中心部の溶媒蒸気を運ぶことにより塗布膜外周部の過剰な乾燥を制御する。この結果、塗布膜の全領域での乾燥速度が均一化し、乾燥後に高い平坦性を有する膜を得ることができる。
【0066】
前記送風機構17による送風速度は、塗布膜表面において0.001〜0.35m/sが好適である。本実施例では、排気機構18による排気を、カラーフィルタ用基板12に形成されたインク配置領域12aの長手方向端部の向かい合う二辺、つまり図3のC辺とC' 辺から排気を行い、排気機構による排気流量の総和が送風流量と同じになるように設定する。このようにして塗布膜の中心部からインク配置領域12aの長手方向の外周部への気流を発生させ、大気圧下で塗布膜の乾燥を行う。前記排気機構18の位置は変更することができ、そのことにより気流の制御を行うことができる。
【0067】
高さ調整機構16により気流カバー15とカラーフィルタ用基板12とのZ軸方向の距離を変更することにより、塗布膜表面近傍における気流の速度を調整することも可能である。また、塗布膜の膜厚や、塗布材料の性質に応じてそれぞれ最適な位置に気流カバー15を配置することができる。
【0068】
送風機構17または排気機構18のうち少なくとも一つが気流カバー15と一体となっていることで、塗布膜表面近傍の気流をより容易に制御することが可能である。このとき、送風機構17と排気機構18は流量制御部によりその流量を変更することによっても気流の制御を行うことができる。
【0069】
上記気流制御乾燥を1分間行った後、ホットプレートで140°C/10分の接触加熱により乾燥させる。なお、本実施例では、前記加熱手段として、ホットプレートを用いているが、赤外線照射ランプやロッド型ヒータなどを用いて上面側から非接触加熱を行っても同様の効果が得られる。また、前記加熱手段を1つではなく、基板に形成されたインク配置領域の形状によって複数使用しても平坦性を高める効果がある。この際、前記加熱手段は1種類である必要はなく、組み合わせて用いてもよい。
【0070】
上記のような最適な条件を見つけるために行った実験結果を以下に示す。
【0071】
図5は以下に示す3つの方法によって得られた膜の平坦性を示している。
【0072】
(1)気流乾燥を実施する前に、インク3色を配置したカラーフィルタ用基板を、ホットプレート上に配置し、下面側から140°C/10分の接触加熱により乾燥させた。このとき、送風速度は、インク表面において0.001〜0.35m/sとした。
【0073】
(2)インク3色を配置したカラーフィルタ用基板を、室温にて30分間の自然乾燥後、ホットプレートを用いて140°C/10分の接触加熱により乾燥させた。
【0074】
(3)インク3色を配置したカラーフィルタ用基板を、1分間の気流制御乾燥を行った後、ホットプレートを用いて140°C/10分の接触加熱により乾燥させた。このとき、送風速度は、インク表面において0.001〜0.35m/sとした。
【0075】
図5のX軸は、塗布膜表面における送風速度であり、Y軸は、中心部の膜厚を100%としたときの外周部の平均膜厚である。X軸の値が0における白抜きのマークが、ホットプレートによる接触加熱のみで乾燥させたインクの乾燥後の膜厚であり、黒塗りのマークが自然乾燥を30分行った後にホットプレートで加熱乾燥させたインクの乾燥後の膜厚である。
【0076】
図から分かるように、ホットプレートによる加熱のみでカラーフィルタ用基板の乾燥を行ったときには、3色全てのインクで中心部に比べて外周部の膜厚は大きく、膜の平坦性は低いことが分かった。これはホットプレートによる急激な加熱が原因である。前記膜厚差から、塗布膜中央部と外周部では、透過光を照射したときに膜厚が異なることから色ムラが発生した。色ムラはカラーフィルタ用基板の不良となる。
【0077】
自然乾燥を行った後、ホットプレートを用いてカラーフィルタ用基板の乾燥を行ったインクの平坦性は、やや向上した。これはホットプレートによる急激な加熱が行われる前にインクの自然乾燥が進行するためである。しかしながら、この方法における平坦性でも透過光を照射したとき色ムラが発生した。さらに平坦性を高めるためには、より長い自然乾燥時間が必要である。
【0078】
気流乾燥を行った後、ホットプレートにて加熱乾燥させたインクの平坦性は、送風速度0.001〜0.3m/sにおいて、外周部の膜厚増加を抑制することができた。この方法で得られたカラーフィルタ用基板を透過光により照射したとき、各色とも色ムラは発生せず、優れた色特性をもつカラーフィルタを得ることができた。
【0079】
0.35m/s以上の送風速度によって乾燥を行ったときには、乾燥前のインクの流動性をもつことから、送風によって中心部から外周部へのインクの偏りが生じ、乾燥後の膜厚の不均一化を生じることが分かった。
【0080】
以上の結果より、塗布膜の中心部から外周部への気流を制御する気流制御乾燥によってインクを乾燥させることにより、高い平坦性を有する塗布膜を得られることが分かった。また、送風速度は0.001〜0.3m/sが好適であることが分かった。
【0081】
なお、気流制御乾燥を25分間行うことにより乾燥を完了し、膜厚の均一化を行うことができた。
【0082】
気流制御乾燥により1分間の予備乾燥を行った後、室温にて24時間放置し、その後インクの形状を測定した。その結果、平坦性にほぼ変化はないことから、1分間の気流制御乾燥によって乾燥完了後のインクの形状、平坦性は決定されることが分かった。
【0083】
以上の結果から、気流乾燥を予備乾燥として用いる効果としては、乾燥工程を繰り返し行う場合、乾燥工程に要する時間の短縮が挙げられる。
【0084】
図6はカラーフィルタの乾燥工程を示すフローチャート図を示している。
【0085】
インクを色毎に配置、乾燥を繰り返す場合には図6(a)のような工程が必要となる。このとき、乾燥に要する時間は合計30分である。これに対し、気流制御乾燥を予備乾燥として用いた場合(図6(b))、乾燥に要する時間は合計12分である。
【0086】
このように、気流乾燥を予備乾燥として用いることにより、乾燥工程に要する時間を短縮することが可能である。
【実施例2】
【0087】
本発明の他の実施例について以下に説明する。
【0088】
本実施例では、ガラス基板に液体材料を塗布した塗布膜の乾燥方法について説明する。なお、本実施例では、塗布材料として実施例で使用する赤色(R)インクを用いる。
【0089】
各装置の構成および乾燥方法については実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0090】
本実施例では、凹部を有する気流カバー15aを使用する。前記気流カバー15aの平面図を図7に、図7のBーB' 断面概略図を図8に示す。前記気流カバー15aは、凹部を有する面がガラス基板上面と対向するように配置する。
【0091】
気流カバー15aに形成される凹部は、本実施例に用いるパターンに限らず、ガラス基板に形成された塗布膜の形状に応じたパターンであればよい。
【0092】
まず、赤色(R)インクを塗布したガラス基板を、前記気流カバー15aを用いて、気流制御乾燥を1分間行う。その後、ホットプレートで140°C/10分接触加熱してインクを完全に乾燥させる。このとき気流カバー15aと塗布膜表面との距離は、最も近いところで0.2mmであり、前記距離が最も離れている中心部で、0.3mmとなる。
【0093】
送風は塗布膜表面での風速速度が0.2m/sとし、送風の流量と排気の流量が等しくなるように、ガラス基板の四辺方向から排気を行う。
【0094】
上記のような最適条件を見つけるために行った実験結果を以下に示す。
【0095】
図10は以下に示す3つの乾燥方法により乾燥されたインクの平坦性示を示している。
【0096】
(1)赤色(R)インクを塗布したガラス基板をホットプレートに積載し、140°C/10分間の加熱により塗布膜の乾燥を行った。
【0097】
(2)赤色(R)インクを塗布したガラス基板を、気流カバー15を用いて気流乾燥を1分間行った後、ホットプレートで140°C/10分加熱してインクを完全に乾燥させた。このとき気流カバー15と塗布膜表面との距離を0.2mmとし、塗布膜表面での風速速度を0.2m/sとした。また、送風の流量と排気の流量が等しくなるように、ガラス基板の四辺方向から排気を行った。
【0098】
(3)赤色(R)インクを塗布したガラス基板を、凹部を有する気流カバー15aを用いて、気流制御乾燥を1分間行った後、ホットプレートで140°C/10分加熱してインクを完全に乾燥させた。このとき気流カバー15aと塗布膜表面との距離は最も近いところを0.2mmとし、最も離れている中心部を0.3mmとした。送風条件と排気条件などは上述した条件と同じである。
【0099】
表中の数値は、塗布膜の中心部の膜厚を100%としたときの、塗布膜外周部の膜厚を示す。また、中心部膜厚と外周部膜厚の差を膜厚差として示す。この膜厚差が小さいほど平坦性が高い。
【0100】
図10から分かるように、ホットプレートによる加熱だけで乾燥させた塗布膜では塗布膜の中心部と外周部では大きな膜厚差が生じた。これは、塗布膜の中心部と外周部では蒸気圧が大きく異なり、外周部が乾燥しやすいために膜厚が増加したことによる。
【0101】
気流カバー15とホットプレートとによって乾燥させたガラス基板は、ホットプレートのみで乾燥させた塗布膜よりも高い平坦性を示すことが分かった。これは、気流カバー15と送風機構17と、排気機構18とにより気流を制御することで、塗布膜表面近傍の溶媒蒸気を取り払い、塗布膜の中心部と外周部の乾燥速度の差を小さくしたことによる。
【0102】
気流カバー15aとホットプレートとを用いて乾燥させた塗布膜は最も高い平坦性を示すことが分かった。これは、送風口17aから最も離れている塗布膜の外周部においても塗布膜表面近傍の溶媒蒸気を取り除く気流を制御したことによる。
【0103】
このように、気流カバー15aを用いることにより、塗布膜中心部から外周部へ気流の制御を容易に行うことが可能であり、乾燥後に高い平坦性を有する膜を得ることができる。
【0104】
なお、本実施例においても、気流制御乾燥を実施する時間を25分とすることにより、本発明を本乾燥として塗布膜を乾燥させても同様の効果があることが分かった。
【実施例3】
【0105】
本発明のさらに他の実施例について以下に説明する。
【0106】
なお、本実施例では実施例1と同様に、カラーフィルタ用基板に形成されたインク配置領域に配置したインクの乾燥方法について説明する。
【0107】
各装置の構成および乾燥方法については実施の形態1と同じであるため説明を省略する。
【0108】
図9にホットプレート13aを組み込んだステージ13の平面図を示す。
【0109】
本実施の形態では、加熱手段13aを組み込んだステージ13を使用する。加熱手段13aとしてはホットプレートを用いるが、赤外線ランプ、ロッド型ヒータでも構わない。
【0110】
まず、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のインクを配置したカラーフィルタ用基板を用意し、ステージ13に積載する。
【0111】
次に、前記カラーフィルタ用基板に対し、気流制御乾燥と加熱乾燥を同時に行う。このとき、ホットプレート13aを予め80°Cに設定しておく。気流カバー15と塗布膜表面の距離が0.3mmとなるように設置し、インク表面の送風速度が0.2m/sとなるように送風する。排気口18による排気は、送風の流量と排気の流量が等しくなるように基板の向かい合う二辺(図3参照)から行う。
【0112】
上記のような最適な条件を見つけるために行った実験結果を以下に示す。
【0113】
(1)赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のインクを配置したカラーフィルタ用基板を用意し、ステージ13に積載した。このときステージ13に組み込んだホットプレート13aを40°C、80°C、140°Cに設定し、各色のインクの乾燥が完了するまでの時間をそれぞれ測定した。乾燥が完了したかどうかは、針状の器具を用いて塗布したインクをスクラッチすることにより各色インクの流動性の有無を確認し、流動性を失った時間を乾燥完了時間と判断した。
【0114】
(2)赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のインクを配置したカラーフィルタ用基板を用意し、ステージ13に積載し、気流制御乾燥により乾燥が完了するまでの時間を測定した。このとき気流カバー15を、塗布膜表面との距離が0.3mmとなるように設置し、インク表面の送風速度が0.2m/sとなるように送風した。排気機構18による排気は、送風の流量と排気の流量が等しくなるように基板の向かい合う2辺(図3参照)から行った。
【0115】
(3)赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のインクを配置したカラーフィルタ用基板を用意し、予め80°Cに設定したホットプレート13aに積載して加熱乾燥と気流制御を同時に行うことにより乾燥が完了するまでの時間を測定した。
【0116】
図11から分かるように、気流制御乾燥と加熱乾燥を同時に行うことにより、加熱乾燥のみおよび気流制御乾燥のみで乾燥完了までに要する時間よりも短時間で乾燥させることができることがわかった。また、図12から分かるように、乾燥後のインクは高い平坦性を示すことがわかった。これはホットプレートによる加熱により発生した溶媒蒸気を、気流制御により取り払うことにより、塗布膜中心部と外周部の乾燥速度の差を小さくしたことによる。前記カラーフィルタ用基板に透過光を照射したところ色ムラはなく、良好なカラーフィルタを得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の実施の形態に係る乾燥機構を示す概略斜視図
【図2】本発明の乾燥方法を行う際の、乾燥手段と基板との位置関係を示す側面拡大図
【図3】本発明の実施の形態に係るカラーフィルタ用基板の概略平面図
【図4】図3におけるA−A' 線の概略断面図
【図5】カラーフィルタ用基板に配置した3色のインクの、各乾燥方法によって得られた外周部の膜厚を表すグラフ
【図6】カラーフィルタ用基板の乾燥工程を表すフローチャート図
【図7】本実施の形態に係る気流カバーの概略平面図
【図8】図7におけるB−B' 線の概略断面図
【図9】加熱手段を有したステージの平面図
【図10】ガラス基板にインクを塗布して、塗布膜の乾燥を行った場合のそれぞれの乾燥方法におけるインクの平坦性を表す表
【図11】カラーフィルタ基板にインクを配置して、それぞれの乾燥方法により各インクの乾燥が完了するまでに要した時間を表す表
【図12】カラーフィルタ基板にインクを配置して、気流制御乾燥と加熱乾燥を同時に行った場合のインクの平坦性を表す表
【符号の説明】
【0118】
11−塗布膜
12−基板
12a−インク配置領域
12b−バンク
13−ステージ
13a−加熱手段
14a−XY方向駆動部
14b−θ回転駆動部
15−気流カバー
15a−凹凸パターンを有する気流カバー
16−高さ調整機構
17−送風機構
17a−送風口
17b−送風ダクト
18−排気機構
18a−排気口
18b−排気ダクト
19−制御ユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布膜の乾燥方法及び乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上に塗布された液体材料(フォトレジストなど)の塗布膜を乾燥あるいは焼成させる技術としては、加熱炉(ベーク炉)内に基板を配置して塗布膜を乾燥させる炉内ベーク方式、プレート(ホットプレート)上に基板を搭載して加熱乾燥させるホットプレート方式、密閉可能なチャンバー内に基板を配置してチャンバー内を減圧し、塗布膜を減圧乾燥させる減圧方式、気体を吹きつけることにより塗布膜を乾燥させる送風方式などが提案されている。
【0003】
ところが、前記炉内ベーク方式や前記ホットプレート方式などの加熱乾燥技術では、塗布膜の表面近傍で塗布材料溶剤の蒸気圧分布が生じ、乾燥速度に差が生じることなどから塗布膜を均一に乾燥させることができず、これにより生じた不均一な膜厚により素子パターン精度にバラつきが生じてしまうという問題があった。前記減圧方式では、その減圧速度が大きいと、材料中の溶剤が急激に蒸発することにより表面あれが発生し、さらに塗布表面から溶剤が急激に蒸発するため、塗布内膜内に密度差が生じて塗布膜の成分の均一性が低下し易くなるという問題があった。
【0004】
また、前記送風方式では、塗布材料が染み込むシートや布帛の乾燥では温風や乾燥ガスを送風することにより効率よく乾燥を行うことが可能であるが、基板に形成した塗布膜の乾燥においては、塗布膜表面の気流を制御することが困難であることや塗布膜が流動性を有することなどから、乾燥後に膜厚ムラが生じる虞があった。
【0005】
このような問題を解決する方法として、塗布膜全面に気体を吹き付ける方法(例えば特許文献1)や蒸発制御カバーを設置して減圧乾燥することにより塗布膜面内の蒸発速度を制御する方法(例えば特許文献2)が提案されている。
【特許文献1】特開2003−5186号公報
【特許文献2】特開2003−159558号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の塗布膜前面に気体を吹き付ける方法では、例えばカラーフィルタ用基板のように、基板上に形成したパターンによって特定の領域にだけ液体材料を塗布する基板においては、前記パターンの形状により乾燥速度が異なり、複雑な蒸気圧分布を形成することから、塗布膜全体への送風方式によって乾燥速度を均一にすることが難しく、様々な形状の塗布膜に対して高い平坦性を有する膜を得ることは困難であった。
【0007】
また、蒸発制御カバーにより塗布膜面内の蒸発速度を制御する方法を用いたときには、基板を収納する大きな真空チャンバーや真空装置が必要であり、装置コストと装置サイズの増大を招くという問題があった。さらに上述したように、パターンを形成した基板の塗布膜においては全面送風方式と同様に、様々な形状の塗布膜にたいして高い平坦性を有する膜を得ることが困難であった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記の各問題に鑑み、装置コストを増大させることなく、様々な形状の塗布膜に対して平坦性に優れた塗布膜を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、以下の構成を備えている。
【0010】
(1)液体状の塗布膜が塗布された基板の上面から、前記塗布膜に気体を吹き付け、前記気体を前記基板の側面側から吸引することにより前記塗布膜の乾燥を行うことを特徴とする。
【0011】
この乾燥方法においては、塗布膜が上面側に設置した送風機構により乾燥される。したがって、従来行われている塗布基板の下側からの接触加熱や、塗布基板をチャンバー内に設置して減圧することにより乾燥を行う減圧乾燥方法による、塗布材料の急激な乾燥が生じることはない。
【0012】
また、最も溶媒雰囲気が大きく乾燥の遅い塗布膜中心部に対して、気体が送風されることにより溶媒雰囲気を小さくなる。塗布膜中心部の溶媒雰囲気を含んだ気体が外周部に流れる。
【0013】
(2)前記気体が、乾燥空気であることを特徴とする。
【0014】
前記気体を乾燥空気にすることで、塗布膜の乾燥が進み、乾燥時間の短縮の効果が高まる。前記気体は、吹き付けることによって塗布膜に物理的もしくは化学的に変化を及ぼさない気体であれば使用可能である。
【0015】
(3)前記基板の側面側から排気を行い、大気圧下で前記塗布膜の乾燥を行うことを特徴とする。
【0016】
基板の上面側からの送風と、前記基板の側面側からの排気とを同時に行い、大気圧下で乾燥を行うことにより、従来行われている塗布基板をチャンバー内に設置して減圧することにより乾燥を行う減圧乾燥方法による塗布材料の急激な乾燥が生じることはない。
【0017】
(4)前記気体を送風することにより乾燥を行う乾燥工程と、前記塗布膜を加熱することにより乾燥を行う乾燥工程と、により前記塗布膜の乾燥を行うことを特徴とする。
【0018】
通常、加熱による乾燥を行った場合、加熱されている部分から塗布材料の蒸発が発生し、塗布膜の中心部と外周部では大きな蒸気圧の差が発生する。この蒸気圧の差により塗布膜外周部の膜厚が中心部よりも大きくなる。この乾燥方法において、二つの乾燥手段を用いることにより乾燥に要する時間を短縮し、なおかつ発生した溶媒蒸気を取り除くことにより蒸気分布が小さくなる。
【0019】
(5)液体状の塗布膜が塗布された基板の上面側から気体を吹き付ける送風機構と、前記基板の側面側から前記気体を吸引する排気機構と、を有することを特徴とする。
【0020】
従来行われている塗布基板の下側の接触加熱や、塗布基板をチャンバー内に設置して減圧することにより乾燥を行う減圧乾燥方法による、塗布材料の急激な乾燥が生じることはない。
【0021】
この乾燥装置においては、基板の上面側に設置した送風機構と基板の側面側に設置した排気機構を併用することによって、塗布膜中心から外周部への気流を作る。
【0022】
(6)前記基板の上面側に隙間を設けて対向するカバーを有することを特徴とする。
【0023】
基板の上面側に設置したカバーと、送風機構と排気機構を併用することにより、送風のみでは制御が困難であった塗布膜中心から外周部への気流を作る。
【0024】
(7)前記カバーの高さを変更する高さ調整機構を有することを特徴とする。
【0025】
高さ調整機構を有することにより、塗布膜の膜厚や形状、送風速度などに応じて最適な距離にカバーを設置することができる。
【0026】
(8)前記カバーにおいて、基板上面に対向する対向面に複数の凹部を有することを特徴とする。
【0027】
前記カバーの基板側の面に複数の凹部を形成することにより、塗布膜全体において表面近傍の溶媒雰囲気を取り除く。
【0028】
(9)前記送風機構または前記排気機構のうち少なくとも一つが前記カバーと一体となっていることを特徴とする。
【0029】
設置しているカバーと送風機構または排気機構が一体となっていることにより、乾燥装置の小型化、簡易化を実現する。
【0030】
(10)前記塗布膜を加熱する加熱機構を有することを特徴とする。
【0031】
前記加熱機構により塗布膜の加熱を行うことにより塗布材料の溶媒の揮発を促進し、溶媒蒸気を前記送風機構により取り除くことにより、塗布膜の乾燥を促進して効果的に乾燥時間を短縮する。
【0032】
(11)前記加熱機構がホットプレート、赤外線ランプ、ロッド型ヒータのいずれかであることを特徴とする。
【0033】
上述した加熱機構により加熱領域を均一に加熱し、加熱ムラによる塗布材料の乾燥速度のバラつきを抑制し、加熱機構による加熱で生じた溶媒蒸気を送風機構により取り払う。
【0034】
(12)前記基板を保持するステージを有し、前記ステージを基板の上面と平行な方向に移動させる移動機構を有することを特徴とする。
【0035】
前記ステージの移動機構を有することにより、次工程への基板の搬送を実現する。また、基板上にパターンが形成されている場合には、そのパターン形状に応じて、送風により気体を吹き付ける位置を調整することで、パターン形状に適した気流を作る。
【0036】
(13)前記ステージを基板上面と平行な面内で回転させる回転機構を有することを特徴とする。
【0037】
基板に形成された塗布膜のパターン形状に応じた排気位置の変更を実現し、パターン形状に適した気流を作る。
【発明の効果】
【0038】
本発明の乾燥方法によれば、液体材料を塗布した基板を乾燥する場合に、塗布膜の中心部から塗布膜の外周部へ気流を発生させ、この気流により塗布膜表面近傍の溶媒蒸気を取り除くことで乾燥を行い、塗布膜全体での乾燥速度のばらつきを抑制して乾燥後に高い平坦性をもつ膜を得ることができる。
【0039】
また、本発明の気流制御乾燥を予備乾燥として行うことにより、塗布工程と乾燥工程を繰り返し行う場合には、乾燥後の平坦性を低下させることなく乾燥に要する時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
図に基づいて、本発明の実施の形態について以下に説明する。
【実施例1】
【0041】
本実施例では、カラーフィルタ基板の製造工程のうち、インクを塗布したカラーフィルタ用基板の乾燥方法について説明する。
【0042】
まず、本発明の乾燥方法を実現するための乾燥装置1について説明する。
【0043】
図1は本発明の乾燥方法を行う乾燥装置1を示す概略斜視図である。
【0044】
本実施例に係る乾燥装置1は、カラーフィルタ用基板12、ステージ13、XY方向駆動部14a、ステージの回転を行うθ回転駆動部14b、気流カバー15、高さ調整機構16、送風機構17、排気機構18、装置コントロールユニット19から構成されている。
【0045】
前記カラーフィルタ用基板12には、塗布膜11が塗布され、前記ステージ13には前記カラーフィルタ用基板12が積載される。前記XY方向駆動部14aは、ステージ13をX、Y方向に移動させ、前記θ回転駆動部14bは、ステージ13をXY平面上で回転させる。前記気流カバー15は、塗布膜が塗布されたカラーフィルタ用基板12上面に吹き付ける気体の速度等を制御する。前記高さ調整機構16は、気流カバー15のカラーフィルタ用基板12に対するZ軸方向の高さを調整する。前記送風機構17は、カラーフィルタ用基板12の上面側から気体を吹き付け、前記排気機構18は、カラーフィルタ用基板の側面側から気体を吸引する。前記装置コントロールユニット19は、XY方向駆動部14aと回転駆動部14b、高さ調整機構16の駆動制御等を行う。
【0046】
なお、前記排気機構18は1つである必要はない。前記ステージ13はカラーフィルタ用基板12を真空引きすることで、カラーフィルタ用基板12に固定することができる。
【0047】
前記装置コントロールユニット19と、前記XY方向駆動部14aと、前記θ回転駆動部14bと、前記高さ調整機構16との間には、それぞれ信号ケーブルが設けられており、前記装置コントロールユニット19によって、前記XY方向駆動部14aと,前記θ回転駆動部14bと,前記高さ調整機構16との駆動制御が行われている。
【0048】
図2は本発明による乾燥を行う際の側面拡大図である。
【0049】
送風機構17は、送風口17aと、送風ダクト17bと、図示しない流量制御部とを有している。前記流量制御部により制御された流量の気体は、前記送風ダクト17bを通り前記送風口17aからカラーフィルタ用基板12の上面に吹き付けられる。
【0050】
排気機構18は、カラーフィルタ用基板12の側面を取り囲み、前記カラーフィルタ用基板12側面と対向させて配置されており、それぞれ排気口18aと、排気ダクト18bと、図示しない流量制御部と、を有している。前記流量制御部によって制御された流量の気体を前記排気口18aから吸引し、前記排気ダクト18bを通じて排気する。
【0051】
なお、気流カバー15と塗布膜11表面の距離は0.3mmである。
【0052】
図3は本発明の実施例にかかるカラーフィルタ用基板12の概略平面図である。
【0053】
図4は、図3のAーA' 線概略断面図である。
【0054】
図3に示すように、カラーフィルタ用基板12には、インク配置領域12aとバンク12bとが隣接して多数形成されている。前記インク配置領域12aにインクを配置する。前記バンク12bは、前記インク配置領域12aに配置された液体状のインクが、前記インク配置領域12aの外に広がることを防いでいる(図4参照)。
【0055】
なお、カラーフィルタ用基板12のインク配置領域12aに配置されるインクは、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のそれぞれのインクである。
【0056】
また、インクが配置される基板は、インク配置領域12aを有する場合には、図4に示したようなバンク12bをもたなくてもよい。
【0057】
インク配置領域は、短冊形状でなくてもよく、蛇行していてもよいし、テーパ状であってもよい。また、これらの形状を組み合わせたものであってもよい。さらに、インク配置領域12aは、必ずしも輪郭線が直線的でなくてもよく、曲線、ジグザグ形状を含んでもよい。
【0058】
次に、気流カバー15と、送風機構17と、排気機構18とによって、カラーフィルタ用基板12上に配置されたインクの乾燥方法について説明する。
【0059】
本実施例では、気流カバー15として直径15cm、厚み1cmの円柱状の金属プレートを用いた。このとき、気流カバー15はカラーフィルタ用基板12よりも大きいサイズである。この気流カバー15の中心部に送風口17aを設置し、カラーフィルタ用基板12の側面を取り囲み、前記カラーフィルタ用基板12側面と対向させて排気機構18を配置する。
【0060】
ステージ13にインクが配置されたカラーフィルタ用基板12を積載する。この際、配置されるインクは赤色(R)、緑色(G)、青色(B)である。
【0061】
次に、装置コントロールユニット19によりXY方向駆動部14a、θ回転駆動部14bを制御して、前記インクが配置されたカラーフィルタ用基板12を積載したステージ13を目的位置に移動する。この際、目的位置とは、気流カバー15の中心部にある送風口17aの真下がカラーフィルタ用基板12の中心がある位置を指す。
【0062】
カラーフィルタ用基板12にインクを配置してから、前記位置にステージ13を移動するために必要な時間は、30秒程度である。
【0063】
乾燥を行うとき、前記気流カバー15と塗布膜表面の距離は0.3mmとする。
【0064】
ステージ13の移動を完了させた後、気流カバー15と、送風機構17と、排気機構18とを用いてカラーフィルタ用基板12の上面側から気体を吹き付け、塗布膜中心部から外周部への気流を発生させ、インク配置領域12aに配置されたインクの乾燥を行う。
【0065】
このとき、塗布膜中心部に乾燥空気を吹き付けることにより、溶媒雰囲気の大きい塗布膜中心部の溶媒蒸気を取り払い、溶媒雰囲気の小さい外周部へ、中心部の溶媒蒸気を運ぶことにより塗布膜外周部の過剰な乾燥を制御する。この結果、塗布膜の全領域での乾燥速度が均一化し、乾燥後に高い平坦性を有する膜を得ることができる。
【0066】
前記送風機構17による送風速度は、塗布膜表面において0.001〜0.35m/sが好適である。本実施例では、排気機構18による排気を、カラーフィルタ用基板12に形成されたインク配置領域12aの長手方向端部の向かい合う二辺、つまり図3のC辺とC' 辺から排気を行い、排気機構による排気流量の総和が送風流量と同じになるように設定する。このようにして塗布膜の中心部からインク配置領域12aの長手方向の外周部への気流を発生させ、大気圧下で塗布膜の乾燥を行う。前記排気機構18の位置は変更することができ、そのことにより気流の制御を行うことができる。
【0067】
高さ調整機構16により気流カバー15とカラーフィルタ用基板12とのZ軸方向の距離を変更することにより、塗布膜表面近傍における気流の速度を調整することも可能である。また、塗布膜の膜厚や、塗布材料の性質に応じてそれぞれ最適な位置に気流カバー15を配置することができる。
【0068】
送風機構17または排気機構18のうち少なくとも一つが気流カバー15と一体となっていることで、塗布膜表面近傍の気流をより容易に制御することが可能である。このとき、送風機構17と排気機構18は流量制御部によりその流量を変更することによっても気流の制御を行うことができる。
【0069】
上記気流制御乾燥を1分間行った後、ホットプレートで140°C/10分の接触加熱により乾燥させる。なお、本実施例では、前記加熱手段として、ホットプレートを用いているが、赤外線照射ランプやロッド型ヒータなどを用いて上面側から非接触加熱を行っても同様の効果が得られる。また、前記加熱手段を1つではなく、基板に形成されたインク配置領域の形状によって複数使用しても平坦性を高める効果がある。この際、前記加熱手段は1種類である必要はなく、組み合わせて用いてもよい。
【0070】
上記のような最適な条件を見つけるために行った実験結果を以下に示す。
【0071】
図5は以下に示す3つの方法によって得られた膜の平坦性を示している。
【0072】
(1)気流乾燥を実施する前に、インク3色を配置したカラーフィルタ用基板を、ホットプレート上に配置し、下面側から140°C/10分の接触加熱により乾燥させた。このとき、送風速度は、インク表面において0.001〜0.35m/sとした。
【0073】
(2)インク3色を配置したカラーフィルタ用基板を、室温にて30分間の自然乾燥後、ホットプレートを用いて140°C/10分の接触加熱により乾燥させた。
【0074】
(3)インク3色を配置したカラーフィルタ用基板を、1分間の気流制御乾燥を行った後、ホットプレートを用いて140°C/10分の接触加熱により乾燥させた。このとき、送風速度は、インク表面において0.001〜0.35m/sとした。
【0075】
図5のX軸は、塗布膜表面における送風速度であり、Y軸は、中心部の膜厚を100%としたときの外周部の平均膜厚である。X軸の値が0における白抜きのマークが、ホットプレートによる接触加熱のみで乾燥させたインクの乾燥後の膜厚であり、黒塗りのマークが自然乾燥を30分行った後にホットプレートで加熱乾燥させたインクの乾燥後の膜厚である。
【0076】
図から分かるように、ホットプレートによる加熱のみでカラーフィルタ用基板の乾燥を行ったときには、3色全てのインクで中心部に比べて外周部の膜厚は大きく、膜の平坦性は低いことが分かった。これはホットプレートによる急激な加熱が原因である。前記膜厚差から、塗布膜中央部と外周部では、透過光を照射したときに膜厚が異なることから色ムラが発生した。色ムラはカラーフィルタ用基板の不良となる。
【0077】
自然乾燥を行った後、ホットプレートを用いてカラーフィルタ用基板の乾燥を行ったインクの平坦性は、やや向上した。これはホットプレートによる急激な加熱が行われる前にインクの自然乾燥が進行するためである。しかしながら、この方法における平坦性でも透過光を照射したとき色ムラが発生した。さらに平坦性を高めるためには、より長い自然乾燥時間が必要である。
【0078】
気流乾燥を行った後、ホットプレートにて加熱乾燥させたインクの平坦性は、送風速度0.001〜0.3m/sにおいて、外周部の膜厚増加を抑制することができた。この方法で得られたカラーフィルタ用基板を透過光により照射したとき、各色とも色ムラは発生せず、優れた色特性をもつカラーフィルタを得ることができた。
【0079】
0.35m/s以上の送風速度によって乾燥を行ったときには、乾燥前のインクの流動性をもつことから、送風によって中心部から外周部へのインクの偏りが生じ、乾燥後の膜厚の不均一化を生じることが分かった。
【0080】
以上の結果より、塗布膜の中心部から外周部への気流を制御する気流制御乾燥によってインクを乾燥させることにより、高い平坦性を有する塗布膜を得られることが分かった。また、送風速度は0.001〜0.3m/sが好適であることが分かった。
【0081】
なお、気流制御乾燥を25分間行うことにより乾燥を完了し、膜厚の均一化を行うことができた。
【0082】
気流制御乾燥により1分間の予備乾燥を行った後、室温にて24時間放置し、その後インクの形状を測定した。その結果、平坦性にほぼ変化はないことから、1分間の気流制御乾燥によって乾燥完了後のインクの形状、平坦性は決定されることが分かった。
【0083】
以上の結果から、気流乾燥を予備乾燥として用いる効果としては、乾燥工程を繰り返し行う場合、乾燥工程に要する時間の短縮が挙げられる。
【0084】
図6はカラーフィルタの乾燥工程を示すフローチャート図を示している。
【0085】
インクを色毎に配置、乾燥を繰り返す場合には図6(a)のような工程が必要となる。このとき、乾燥に要する時間は合計30分である。これに対し、気流制御乾燥を予備乾燥として用いた場合(図6(b))、乾燥に要する時間は合計12分である。
【0086】
このように、気流乾燥を予備乾燥として用いることにより、乾燥工程に要する時間を短縮することが可能である。
【実施例2】
【0087】
本発明の他の実施例について以下に説明する。
【0088】
本実施例では、ガラス基板に液体材料を塗布した塗布膜の乾燥方法について説明する。なお、本実施例では、塗布材料として実施例で使用する赤色(R)インクを用いる。
【0089】
各装置の構成および乾燥方法については実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0090】
本実施例では、凹部を有する気流カバー15aを使用する。前記気流カバー15aの平面図を図7に、図7のBーB' 断面概略図を図8に示す。前記気流カバー15aは、凹部を有する面がガラス基板上面と対向するように配置する。
【0091】
気流カバー15aに形成される凹部は、本実施例に用いるパターンに限らず、ガラス基板に形成された塗布膜の形状に応じたパターンであればよい。
【0092】
まず、赤色(R)インクを塗布したガラス基板を、前記気流カバー15aを用いて、気流制御乾燥を1分間行う。その後、ホットプレートで140°C/10分接触加熱してインクを完全に乾燥させる。このとき気流カバー15aと塗布膜表面との距離は、最も近いところで0.2mmであり、前記距離が最も離れている中心部で、0.3mmとなる。
【0093】
送風は塗布膜表面での風速速度が0.2m/sとし、送風の流量と排気の流量が等しくなるように、ガラス基板の四辺方向から排気を行う。
【0094】
上記のような最適条件を見つけるために行った実験結果を以下に示す。
【0095】
図10は以下に示す3つの乾燥方法により乾燥されたインクの平坦性示を示している。
【0096】
(1)赤色(R)インクを塗布したガラス基板をホットプレートに積載し、140°C/10分間の加熱により塗布膜の乾燥を行った。
【0097】
(2)赤色(R)インクを塗布したガラス基板を、気流カバー15を用いて気流乾燥を1分間行った後、ホットプレートで140°C/10分加熱してインクを完全に乾燥させた。このとき気流カバー15と塗布膜表面との距離を0.2mmとし、塗布膜表面での風速速度を0.2m/sとした。また、送風の流量と排気の流量が等しくなるように、ガラス基板の四辺方向から排気を行った。
【0098】
(3)赤色(R)インクを塗布したガラス基板を、凹部を有する気流カバー15aを用いて、気流制御乾燥を1分間行った後、ホットプレートで140°C/10分加熱してインクを完全に乾燥させた。このとき気流カバー15aと塗布膜表面との距離は最も近いところを0.2mmとし、最も離れている中心部を0.3mmとした。送風条件と排気条件などは上述した条件と同じである。
【0099】
表中の数値は、塗布膜の中心部の膜厚を100%としたときの、塗布膜外周部の膜厚を示す。また、中心部膜厚と外周部膜厚の差を膜厚差として示す。この膜厚差が小さいほど平坦性が高い。
【0100】
図10から分かるように、ホットプレートによる加熱だけで乾燥させた塗布膜では塗布膜の中心部と外周部では大きな膜厚差が生じた。これは、塗布膜の中心部と外周部では蒸気圧が大きく異なり、外周部が乾燥しやすいために膜厚が増加したことによる。
【0101】
気流カバー15とホットプレートとによって乾燥させたガラス基板は、ホットプレートのみで乾燥させた塗布膜よりも高い平坦性を示すことが分かった。これは、気流カバー15と送風機構17と、排気機構18とにより気流を制御することで、塗布膜表面近傍の溶媒蒸気を取り払い、塗布膜の中心部と外周部の乾燥速度の差を小さくしたことによる。
【0102】
気流カバー15aとホットプレートとを用いて乾燥させた塗布膜は最も高い平坦性を示すことが分かった。これは、送風口17aから最も離れている塗布膜の外周部においても塗布膜表面近傍の溶媒蒸気を取り除く気流を制御したことによる。
【0103】
このように、気流カバー15aを用いることにより、塗布膜中心部から外周部へ気流の制御を容易に行うことが可能であり、乾燥後に高い平坦性を有する膜を得ることができる。
【0104】
なお、本実施例においても、気流制御乾燥を実施する時間を25分とすることにより、本発明を本乾燥として塗布膜を乾燥させても同様の効果があることが分かった。
【実施例3】
【0105】
本発明のさらに他の実施例について以下に説明する。
【0106】
なお、本実施例では実施例1と同様に、カラーフィルタ用基板に形成されたインク配置領域に配置したインクの乾燥方法について説明する。
【0107】
各装置の構成および乾燥方法については実施の形態1と同じであるため説明を省略する。
【0108】
図9にホットプレート13aを組み込んだステージ13の平面図を示す。
【0109】
本実施の形態では、加熱手段13aを組み込んだステージ13を使用する。加熱手段13aとしてはホットプレートを用いるが、赤外線ランプ、ロッド型ヒータでも構わない。
【0110】
まず、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のインクを配置したカラーフィルタ用基板を用意し、ステージ13に積載する。
【0111】
次に、前記カラーフィルタ用基板に対し、気流制御乾燥と加熱乾燥を同時に行う。このとき、ホットプレート13aを予め80°Cに設定しておく。気流カバー15と塗布膜表面の距離が0.3mmとなるように設置し、インク表面の送風速度が0.2m/sとなるように送風する。排気口18による排気は、送風の流量と排気の流量が等しくなるように基板の向かい合う二辺(図3参照)から行う。
【0112】
上記のような最適な条件を見つけるために行った実験結果を以下に示す。
【0113】
(1)赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のインクを配置したカラーフィルタ用基板を用意し、ステージ13に積載した。このときステージ13に組み込んだホットプレート13aを40°C、80°C、140°Cに設定し、各色のインクの乾燥が完了するまでの時間をそれぞれ測定した。乾燥が完了したかどうかは、針状の器具を用いて塗布したインクをスクラッチすることにより各色インクの流動性の有無を確認し、流動性を失った時間を乾燥完了時間と判断した。
【0114】
(2)赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のインクを配置したカラーフィルタ用基板を用意し、ステージ13に積載し、気流制御乾燥により乾燥が完了するまでの時間を測定した。このとき気流カバー15を、塗布膜表面との距離が0.3mmとなるように設置し、インク表面の送風速度が0.2m/sとなるように送風した。排気機構18による排気は、送風の流量と排気の流量が等しくなるように基板の向かい合う2辺(図3参照)から行った。
【0115】
(3)赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のインクを配置したカラーフィルタ用基板を用意し、予め80°Cに設定したホットプレート13aに積載して加熱乾燥と気流制御を同時に行うことにより乾燥が完了するまでの時間を測定した。
【0116】
図11から分かるように、気流制御乾燥と加熱乾燥を同時に行うことにより、加熱乾燥のみおよび気流制御乾燥のみで乾燥完了までに要する時間よりも短時間で乾燥させることができることがわかった。また、図12から分かるように、乾燥後のインクは高い平坦性を示すことがわかった。これはホットプレートによる加熱により発生した溶媒蒸気を、気流制御により取り払うことにより、塗布膜中心部と外周部の乾燥速度の差を小さくしたことによる。前記カラーフィルタ用基板に透過光を照射したところ色ムラはなく、良好なカラーフィルタを得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の実施の形態に係る乾燥機構を示す概略斜視図
【図2】本発明の乾燥方法を行う際の、乾燥手段と基板との位置関係を示す側面拡大図
【図3】本発明の実施の形態に係るカラーフィルタ用基板の概略平面図
【図4】図3におけるA−A' 線の概略断面図
【図5】カラーフィルタ用基板に配置した3色のインクの、各乾燥方法によって得られた外周部の膜厚を表すグラフ
【図6】カラーフィルタ用基板の乾燥工程を表すフローチャート図
【図7】本実施の形態に係る気流カバーの概略平面図
【図8】図7におけるB−B' 線の概略断面図
【図9】加熱手段を有したステージの平面図
【図10】ガラス基板にインクを塗布して、塗布膜の乾燥を行った場合のそれぞれの乾燥方法におけるインクの平坦性を表す表
【図11】カラーフィルタ基板にインクを配置して、それぞれの乾燥方法により各インクの乾燥が完了するまでに要した時間を表す表
【図12】カラーフィルタ基板にインクを配置して、気流制御乾燥と加熱乾燥を同時に行った場合のインクの平坦性を表す表
【符号の説明】
【0118】
11−塗布膜
12−基板
12a−インク配置領域
12b−バンク
13−ステージ
13a−加熱手段
14a−XY方向駆動部
14b−θ回転駆動部
15−気流カバー
15a−凹凸パターンを有する気流カバー
16−高さ調整機構
17−送風機構
17a−送風口
17b−送風ダクト
18−排気機構
18a−排気口
18b−排気ダクト
19−制御ユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体状の塗布膜が塗布された基板の上面側から、前記塗布膜に気体を吹き付け、前記気体を前記基板の側面側から吸引することにより前記塗布膜の乾燥を行うことを特徴とする乾燥方法。
【請求項2】
前記気体が、乾燥空気であることを特徴とする請求項1に記載の乾燥方法。
【請求項3】
前記基板側面側から排気を行い、大気圧下で前記塗布膜の乾燥を行うことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の乾燥方法。
【請求項4】
前記気体を送風することにより乾燥を行う乾燥工程と、前記塗布膜を加熱することにより乾燥を行う乾燥工程と、により前記塗布膜の乾燥を行うことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の乾燥方法。
【請求項5】
液体状の塗布膜が塗布された基板の上面側から気体を吹き付ける送風機構と、
前記基板の側面側から前記気体を吸引する排気機構と、を有することを特徴とする乾燥装置。
【請求項6】
前記基板の上面に隙間を設けて対向するカバーを有することを特徴とする請求項5に記載の乾燥装置。
【請求項7】
前記カバーの高さを変更する高さ調整機構を有することを特徴とする請求項6に記載の乾燥装置。
【請求項8】
前記カバーにおいて、基板上面に対向する対向面に凹部を有することを特徴とする請求項6または請求項7のいずれかに記載の乾燥装置。
【請求項9】
前記送風機構または前記排気機構のうち少なくとも一つが前記カバーと一体となっていることを特徴とする請求項6〜請求項8いずれかに記載の乾燥装置。
【請求項10】
前記塗布膜を加熱する加熱機構を有することを特徴とする請求項5〜請求項9のいずれかに記載の乾燥装置。
【請求項11】
前記加熱機構がホットプレート、赤外線ランプ、ロッド型ヒータのいずれかであることを特徴とする請求項10に記載の乾燥装置。
【請求項12】
前記基板を保持するステージを有し、前記ステージを基板の上面と平行な方向に移動させる移動機構を有することを特徴とする請求項5から請求項11のいずれかに記載の乾燥装置。
【請求項13】
前記ステージを基板上面と平行な面内で回転させる回転機構を有することを特徴とする請求項5〜請求項12のいずれかに記載の乾燥装置。
【請求項1】
液体状の塗布膜が塗布された基板の上面側から、前記塗布膜に気体を吹き付け、前記気体を前記基板の側面側から吸引することにより前記塗布膜の乾燥を行うことを特徴とする乾燥方法。
【請求項2】
前記気体が、乾燥空気であることを特徴とする請求項1に記載の乾燥方法。
【請求項3】
前記基板側面側から排気を行い、大気圧下で前記塗布膜の乾燥を行うことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の乾燥方法。
【請求項4】
前記気体を送風することにより乾燥を行う乾燥工程と、前記塗布膜を加熱することにより乾燥を行う乾燥工程と、により前記塗布膜の乾燥を行うことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の乾燥方法。
【請求項5】
液体状の塗布膜が塗布された基板の上面側から気体を吹き付ける送風機構と、
前記基板の側面側から前記気体を吸引する排気機構と、を有することを特徴とする乾燥装置。
【請求項6】
前記基板の上面に隙間を設けて対向するカバーを有することを特徴とする請求項5に記載の乾燥装置。
【請求項7】
前記カバーの高さを変更する高さ調整機構を有することを特徴とする請求項6に記載の乾燥装置。
【請求項8】
前記カバーにおいて、基板上面に対向する対向面に凹部を有することを特徴とする請求項6または請求項7のいずれかに記載の乾燥装置。
【請求項9】
前記送風機構または前記排気機構のうち少なくとも一つが前記カバーと一体となっていることを特徴とする請求項6〜請求項8いずれかに記載の乾燥装置。
【請求項10】
前記塗布膜を加熱する加熱機構を有することを特徴とする請求項5〜請求項9のいずれかに記載の乾燥装置。
【請求項11】
前記加熱機構がホットプレート、赤外線ランプ、ロッド型ヒータのいずれかであることを特徴とする請求項10に記載の乾燥装置。
【請求項12】
前記基板を保持するステージを有し、前記ステージを基板の上面と平行な方向に移動させる移動機構を有することを特徴とする請求項5から請求項11のいずれかに記載の乾燥装置。
【請求項13】
前記ステージを基板上面と平行な面内で回転させる回転機構を有することを特徴とする請求項5〜請求項12のいずれかに記載の乾燥装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−21138(P2006−21138A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−201929(P2004−201929)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]