説明

塗布装置および塗布方法

【課題】基板を加熱する場合であっても、基板を所望の向きに配置し、所望の向きに塗布液を塗布する。
【解決手段】ステップS1においては、基板を塗布時の処理温度に加熱する。ステップS4においては、加熱された基板の所定部分の長さを測定し、加熱前における所定部分の長さと測定ステップで測定された長さとに基づいて加熱による基板の膨張率を算出する。ステップS5においては、加熱前における2点間の長さと算出された膨張率とに基づいて加熱後における2点間の長さを算出し、2点間を結ぶ直線の向きを算出する。そして、算出された向きに基づいて、基板の載置されている向きを調整する。ステップS8においては、向きが調整された基板に対して、塗布液を吐出している塗布手段を所定方向に相対移動させることによって塗布液を基板に塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布装置および塗布方法に関し、より特定的には、塗布対象となる基板に対してストライプ状に塗布液を塗布する塗布装置および塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に対して塗布を行う塗布装置の一例として、特許文献1に記載の製造装置がある。この製造装置は、有機EL表示装置を製造するための装置であり、有機EL材料等の塗布液をノズルによって基板に塗布するものである。この製造装置は、テーブル上に載置されたガラス基板に平行な所定方向にノズルを移動させながらノズルから塗布液を吐出することによって基板に対して塗布液を線状に塗布する工程と、当該所定方向に垂直な方向に基板をピッチ送りする工程とを繰り返すことによって、ガラス基板にストライプ状に塗布液を塗布する。
【0003】
上記製造装置では、ガラス基板に付された位置合わせマークをCCDカメラで撮像することによって基板の位置合わせが行われている。具体的には、ガラス基板がテーブル上に載置されると、ガラス基板の四隅に形成された位置合わせマークがCCDカメラによって撮像される。撮像された画像のデータに基づいて位置合わせマークの位置が算出され、算出された位置と、基板に形成すべきストライプパターンを示すレイアウトデータとに基づいて塗布開始位置が算出される。これによって、製造装置は、ノズルの下方に基板の塗布開始位置を配置することができ、適切な位置から塗布を開始することができる。
【特許文献1】特開2002−75640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、基板に塗布された塗布液を乾燥させる等の目的で、テーブル上の基板を加熱することがある。例えば有機EL表示装置の製造装置では、基板に塗布された塗布液の膜厚が、基板を搬出する際に加わる外力等の影響で変化してしまうことがある。これを防止するために、塗布液をある程度硬化させるべく、基板を加熱することがある。
【0005】
また、基板に塗布液を塗布する際、基板に対して正しい向きにストライプパターンを形成する目的で、ノズルの塗布方向(ノズルの移動方向)に対する基板の角度を調整することがある。すなわち、基板をステージに載置した後で当該角度を算出し、所望の角度となるように基板を回転させるのである。なお、テーブルに載置された基板の角度を算出する際には、基板の所定部分の長さを予め測定等によって得ておき、塗布装置に設定(記憶)しておく。そして、設定されている長さを用いて当該角度を算出することがある。
【0006】
しかし、上記のような理由で基板を加熱する場合、加熱によってガラス基板が膨張し、基板の上記所定部分の長さも膨張によって変化する。したがって、もし仮に設定されている長さをそのまま所定部分の長さとして用いて上記角度を算出すれば、所定部分の長さが変化していることから、当該角度を正確に算出することができない。当該角度を正確に算出することができなければ、基板を所望の向きに位置合わせすることができず、正しい向きに塗布液を塗布することができない。
【0007】
それ故、本発明の目的は、基板を加熱する場合であっても、基板を所望の向きに配置し、所望の向きに塗布液を塗布することができる塗布装置および塗布方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明は、塗布手段によって塗布液を基板に塗布する塗布方法である。この塗布方法は、加熱ステップと、第1測定ステップと、第1算出ステップと、第2測定ステップと、第2算出ステップと、第3算出ステップと、調整ステップと、塗布ステップとを備える。加熱ステップにおいては、ステージに載置された基板を塗布時の処理温度に加熱する。第1測定ステップにおいては、加熱された基板の所定部分の長さを測定する。第1算出ステップにおいては、加熱前における所定部分の長さと測定ステップで測定された長さとに基づいて加熱による基板の膨張率を算出する。第2測定ステップにおいては、加熱された基板について、当該基板上の所定の2点間の基準方向に関する長さを測定する。第2算出ステップにおいては、加熱前における2点間の長さと算出された膨張率とに基づいて加熱後における2点間の長さを算出する。第3算出ステップにおいては、第2測定ステップにおいて測定された長さと第2算出ステップにおいて算出された長さとに基づいて、2点間を結ぶ直線の向きを算出する。調整ステップにおいては、第3算出ステップにおいて算出された向きに基づいて、基板の載置されている向きを調整する。塗布ステップにおいては、向きが調整された基板に対して、塗布液を吐出している塗布手段を所定方向に相対移動させることによって塗布液を基板に塗布する。
【0009】
また、第2の発明においては、第3算出ステップにおいて、第2測定ステップにおいて測定された長さと第2算出ステップにおいて算出された長さとに基づいて、2点間を結ぶ直線と基準方向またはそれに垂直な方向とのなす角度を算出してもよい。このとき、調整ステップにおいては、第3算出ステップにおいて算出された角度だけ基板を回転させる。
【0010】
また、第3の発明においては、基板に少なくとも2つのマークが付されている場合、第1測定ステップにおいて、基板に付された所定のマーク間の長さを所定部分の長さとして測定してもよい。
【0011】
また、第4の発明においては、基板に少なくとも2つのマークが付されている場合、第2測定ステップにおいて、基板に付された所定のマーク間の基準方向に関する長さを2点間の当該基準方向に関する長さとして測定してもよい。
【0012】
また、第5の発明は、塗布液を基板に塗布する塗布装置である。塗布装置は、ステージと、加熱手段と、塗布手段と、第1測定手段と、第1算出手段と、第2測定手段と、第2算出手段と、第3算出手段と、回転手段と、移動手段とを備える。ステージは、基板を載置するためのものである。加熱手段は、ステージに載置された基板を塗布時の処理温度に加熱する。塗布手段は、加熱された基板に対して塗布液を塗布するためのものである。第1測定手段は、加熱された基板の所定部分の長さを測定する。第1算出手段は、加熱前における所定部分の長さと測定手段によって測定された長さとに基づいて加熱による基板の膨張率を算出する。第2測定手段は、加熱された基板について、当該基板上の所定の2点間の基準方向に関する長さを測定する。第2算出手段は、加熱前における2点間の長さと算出された膨張率とに基づいて加熱後における2点間の長さを算出する。第3算出手段は、第2測定手段によって測定された長さと第2算出手段によって算出された長さとに基づいて、2点間を結ぶ直線の向きを算出する。回転手段は、第3算出手段によって算出された向きに基づいて、基板の載置されている向きを調整するためにステージを回転させる。移動手段は、向きが調整された基板に対して、塗布液を吐出している塗布手段を所定方向に相対移動させる。
【発明の効果】
【0013】
第1および第5の発明によれば、基板の所定部分についての加熱前後における長さから、加熱による基板の膨張率を算出する。そして、加熱前における所定の2点間の長さを当該膨張率によって補正し、加熱後における2点間の長さを算出する。加熱後における2点間の長さを用いて基板の向きを算出することができるので、基板の向きを正確に調整することができる。したがって、基板を加熱する場合であっても、基板を所望の向きに正確に配置し、所望の向きに塗布液を塗布することができる。
【0014】
第2の発明によれば、2点間を結ぶ直線と基準方向またはそれに垂直な方向とのなす角度によって、基板の向きを正確に表すことができるので、ステージ上に載置された基板を当該角度だけ回転させることによって、基板の向きを正確に調整することができる。
【0015】
また、第3および第4の発明によれば、基板に付されたマーク間の長さを測定するので、測定を正確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る塗布装置の構成および動作について説明する。具体的には、有機EL(electroluminescence)表示装置を製造するために用いられる塗布装置を例として説明する。本塗布装置は、ステージ上に載置された基板(ガラス基板)に対して有機EL材料や正孔輸送材料の塗布液を塗布するためのものである。また、塗布装置は、基板に塗布された塗布液を乾燥させる目的でステージ上の基板を加熱する。以下、本実施形態に係る塗布装置について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る塗布装置の概観を示す図である。図1(a)は、塗布装置を上側から見た図であり、図1(b)は、塗布装置を側面からY軸正方向の向きに見た図である。また、図2は、塗布装置の撮像部を示す図である。図3は、塗布装置の各部と制御部との接続関係を示す図である。
【0018】
図1に示すように、塗布装置は、ノズル移動機構部1、ノズルユニット2、液受け部3、ステージ4、ステージ移動機構部5、およびCCDカメラ6(第1および第2CCDカメラ6aおよび6b)を備えている。また、図2および図3に示すように、塗布装置は、カメラ移動機構部7、制御部8、およびヒーター9を備えている。
【0019】
図1に示すように、ステージ4には塗布処理の対象となる基板Pが載置される。ステージ4は、上側から見た場合に略四角形の形状を有する板状部材であって、四角形の板状部材に加えて突起部4aを有している。基板Pは、四角形の板状の形状を有しており、X軸方向(基板Pに塗布が行われる方向)に関して、突起部4aを除くステージ4よりもやや大きいサイズである。また、ステージ4の上面には、位置決めピン10a〜10cが取り付けられる。位置決めピン10aは上記突起部4aに取り付けられ、位置決めピン10bおよび10cは、突起部4a以外の場所にY軸方向に平行に取り付けられる。位置決めピン10a〜10cは、ステージ4上における基板P0の載置位置を決めるためのものである。また、塗布時に基板上を移動するノズルユニット2が各位置決めピン10a〜10cに衝突しないように、位置決めピン10a〜10cの高さは基板Pの厚さよりも低く構成される。
【0020】
ステージ移動機構部5は、ステージ4の下側に接続される。ステージ移動機構部5は内部にモータを有し、ステージ4を移動させる。具体的には、ステージ移動機構部5は、ステージ4をY軸方向に平行移動させる(図1に示す矢印参照)。また、ステージ移動機構部5は、ステージ4を図1に示すθ方向に回転移動(Z軸周りの回転移動)させる。ステージ移動機構部5の動作は制御部8によって制御される。
【0021】
また、ステージ4の上方にはノズル移動機構部1が配置される。ノズル移動機構部1はX軸方向(ステージ4の載置面と平行な方向)に延びるレール11を有し、レール11に沿って移動可能なようにノズルユニット2がノズル移動機構部1に接続される。ノズルユニット2は、例えば赤色の有機EL材料の処理液を吐出する3本のノズル12〜14を有する。ノズルユニット2の各ノズル12〜14は、処理液を吐出する向きが鉛直下向きとなるようにノズルユニット2の下側に配置される。なお、各ノズル12〜14は、Y軸方向に関して少しずれた位置に配置される(詳細は後述する)。なお、塗布液を吐出するノズルは何本であってもよい。
【0022】
また、ノズル移動機構部1は、X軸方向について基板Pよりも長く構成され、X軸方向に関して基板Pの幅よりも広い範囲でノズルユニット2を移動させることが可能である。したがって、ノズルユニット2がレール11の一端から他端まで移動することによって、X軸方向に関して基板Pの一端から他端まで有機EL材料を塗布することができる。ただし、ノズルユニット2がレール11の一端から他端まで移動する間に各ノズル12〜14から有機EL材料が吐出されると、基板Pに有機EL材料が塗布されるだけでなく、基板Pの外側においても有機EL材料が吐出されることとなる。そこで、基板Pの外側で吐出された有機EL材料を受ける目的で液受け部3が設置されている。なお、液受け部3で受けた有機EL材料は、液受け部3の排出口(図示していない)から排出される。
【0023】
また、図1に示すように、ステージ4の上方には、撮像手段の一例である第1CCDカメラ6aおよび第2CCDカメラ6bが配置される。ここで、基板Pには、アライメントマークM1〜M4が付される。各CCDカメラ6aおよび6bは、これらのアライメントマークM1〜M4を撮像可能な位置に配置される。
【0024】
具体的には、本実施形態では、基板Pの4つの角付近の領域に1つずつ、計4つのアライメントマークM1〜M4が付される。ここでは、X軸負方向側であってY軸正方向側の角付近に付されるものをアライメントマークM1とし、X軸負方向側であってY軸負方向側の角付近に付されるものをアライメントマークM2とし、X軸正方向側であってY軸正方向側の角付近に付されるものをアライメントマークM3とし、X軸正方向側であってY軸負方向側の角付近に付されるものをアライメントマークM4とする。なお、各アライメントマークM1〜M4は、基板Pにおいて塗布が行われない領域(非塗布領域)に付される。
【0025】
一方、各CCDカメラ6aおよび6bは、X軸方向に関して基板Pの端付近の上方に配置される。具体的には、第1CCDカメラ6aはX軸負方向側の基板Pの端付近の上方に配置され、第2CCDカメラ6bはX軸正方向側の基板Pの端付近の上方に配置される。このような配置により、ステージ4をY軸方向に適宜平行移動させることによって、第1CCDカメラ6aはアライメントマークM1およびM2を撮像することが可能であり、第2CCDカメラ6bはアライメントマークM3およびM4を撮像することが可能である。なお、本明細書において、2つのCCDカメラ6aおよび6bを特に区別しない場合、第1または第2CCDカメラ6aまたは6bを単に「CCDカメラ6」と呼ぶことがある。
【0026】
また、図1では図面を見やすくする目的で図示していないが、図2に示すように、第1CCDカメラ6aは、カメラ移動機構部7に接続される。カメラ移動機構部7は、ステージ4の上方で固設される支持部15に接続されており、第1CCDカメラ6aを支持する。カメラ移動機構部7は、Y軸移動機構部16およびZ軸移動機構部17を含む。Y軸移動機構部16は、支持部15に接続され、第1CCDカメラ6aをZ軸方向に平行移動させる。Z軸移動機構部17は、Y軸移動機構部16に接続され、第1CCDカメラ6aをY軸方向に平行移動させる。Y軸移動機構部16およびZ軸移動機構部17の動作は、制御部8によって制御される。なお、図2では第1CCDカメラ6aについて図示したが、第2CCDカメラ6bは、図2に示したカメラ移動機構部7と同様の構成を有するカメラ移動機構部に接続され、当該カメラ移動機構部によってY軸およびZ軸に移動可能なように支持される。
【0027】
図3に示すように、制御部8は、ノズル移動機構部1、ノズルユニット2、ステージ移動機構部5、CCDカメラ6、カメラ移動機構部7、およびヒーター9と電気的に接続されている。制御部8は、ノズル移動機構部1の動作を制御することによって、ノズルユニット2(各ノズル12〜14)をX軸方向に平行移動させる。ノズルユニット2の各ノズル12〜14からの塗布液の吐出のオン/オフは、制御部8によって制御される。また、制御部8は、ステージ移動機構部5の動作を制御することによって、ステージ4上の基板PをY軸方向に平行移動させたり、Z軸周りに回転させる。
【0028】
また、制御部8は、カメラ移動機構部7の動作を制御することによって、CCDカメラ6をY軸およびZ軸方向に移動させる。さらに、制御部8は、CCDカメラ6によって撮像された画像を取得し、取得した画像を用いて、基板Pの膨張率の算出処理(後述するステップS4)、および、基板Pの角度の調整処理(後述するステップS5)を行う。
【0029】
また、ステージ4の内部にはヒーター9が設けられる(図3参照)。ヒーター9は、ステージ4上に載置される基板Pを加熱する加熱手段として用いられる。ヒーター9の温度は、制御部8によって制御される。ステージ4の載置面は例えばアルミニウムを材質とした均熱プレートで構成され、ヒーター9は載置面の裏側に配置される。なお、図示していないが、均熱プレートにはその温度を検出するための温度センサが取り付けられ、温度センサの検出結果はヒーター9の温度制御に用いられる。なお、ステージ4を移動させるステージ移動機構部5とヒーター9との間には、ヒーター9の熱によるステージ移動機構部5への悪影響を低減する目的で断熱材が配置されてもよい。
【0030】
次に、以上のように構成された塗布装置の動作について説明する。ここでは、基板Pに対して有機EL材料を塗布する場合の動作を説明する。図4は、塗布処理の対象となる基板Pを模式的に示す図である。ここで、塗布装置における塗布処理の対象となる基板Pには、X軸方向に平行に複数本の溝Tがストライプ状に形成されている。また、各溝には、陽極および正孔輸送層がすでに形成されているものとする。塗布装置は、各溝に有機EL材料を塗布することによってストライプパターンを形成する。
【0031】
まず、塗布装置による塗布動作の概要を説明する。塗布処理においては、ノズルユニット2のX軸方向の移動動作(第1動作)とステージ4のY軸方向の移動動作(第2動作)とが繰り返される。具体的には、まず、第1動作として、ノズルユニット2の各ノズル12〜14から赤色の有機EL材料が吐出されるとともにノズルユニット2がガイド部材1の一端から他端へ移動する。これによって、基板S1に形成された溝Tに対する3列分の塗布が完了する。ここで、各ノズル12〜14はY軸方向に関して、基板S1に形成された溝の3列分の長さ(Y軸方向の長さ)だけ間隔を空けて配置されている。そのため、1回の第1動作においては、互いに2列ずつ間隔を空けた3列分について塗布が行われる。例えば、最初の第1動作では、図4に示す点線部分に塗布が行われる。次に、第2動作として、基板Pに形成された溝Tの9列分の長さP0だけY軸正方向にステージ4がピッチ送りされる。以降、塗布装置が第1動作と第2動作とを繰り返すことによって、基板Pへの塗布が3列分ずつ行われる。例えば、最初の第2動作が行われた後の2回目の第1動作では、図4に示す一点鎖線部分に塗布が行われる。以上のようにして第1動作と第2動作とが繰り返されることによって、基板Pに有機EL材料がストライプ状に塗布されていく。
【0032】
ここで、本実施形態においては、塗布時において基板Pはヒーター9によって加熱されるので、基板Pが膨張し、溝と溝との間の間隔も若干広くなる。したがって、仮に加熱前における溝と溝との間隔に従ってステージ4をピッチ送りしたとすれば、ピッチ送りの長さ(ピッチ送り量)と、加熱後における実際の溝と溝との間隔(加熱によって膨張した間隔)とにずれが生じてしまう。なお、基板Pの膨張は微少であるので数回程度のピッチ送りでは問題とはならないが、ピッチ送りを繰り返すに連れて塗布位置と溝の位置とのずれが大きくなり、正しい位置に塗布液を塗布することができなくなってしまう。
【0033】
そこで、本実施形態においては、加熱による基板Pの膨張を考慮して、ピッチ送り量を調整する。すなわち、基板Pに付されたアライメントマーク間の長さを測定し、加熱前後におけるアライメントマーク間の距離に基づいて膨張率を算出する。そして、膨張率に基づいてピッチ送り量を調整することによって、基板Pの膨張に応じたピッチ送り量でステージ4をピッチ送りする。このように、本実施形態の塗布装置は、基板Pの膨張に起因する塗布位置のずれを解消するものである。
【0034】
また、本実施形態では、基板Pは、ノズルユニット2の移動方向(X軸方向)と基板Pに形成された溝の方向とが平行になるようにステージ4上に載置される必要がある(図4参照)。すなわち、ノズルユニット2の移動方向と基板Pの溝の方向とが平行になるように、基板PをZ軸周りに回転させる調整(角度調整)を行う必要がある。この角度調整を行うために、基板Pのアライメントマーク間の距離(アライメントマークM1からM3までの距離)が用いられる(図8参照)。ここで、本実施形態では、基板Pが加熱されることから、加熱前後で当該距離が変化する。したがって、この距離についても加熱による影響を考慮しなければ、正しい距離の値を算出することができず、角度調整を正確に行うことができない。そこで、本実施形態では、加熱による基板Pの膨張を考慮して、角度調整を行う。すなわち、上記膨張率を用いてアライメントマーク間の距離を補正し、補正した値を用いて角度調整を行うこととする。このように、本実施形態の塗布装置は、基板Pの膨張に起因する基板の載置位置のずれを解消するものでもある。以下、塗布装置の動作の詳細を説明する。
【0035】
図5は、塗布装置の動作の流れを示すフローチャートである。まず、ステップS1において、制御部8は、基板Pが搬入される前にヒーター9を加熱しておく。なお、制御部8は、基板Pが搬入された後にヒーター9を加熱制御するようにしてもよいが、スループットを考慮すれば本実施形態のようにヒーター9を予め加熱制御しておくことが好ましい。ヒーター9は、均熱プレートの表面がほぼ均一な温度となるように加熱することが好ましく、均熱度が例えば±2度の範囲となるように加熱する。制御部8は、温度センサを用いてステージ4の載置面の温度を計測し、基板Pの温度が所定の目標温度となるようにヒーター9の温度を制御する。なお、この目標温度は、均熱プレートに載置された基板Pの塗布処理後の搬送に適した温度である。換言すれば、目標温度は、均熱プレートに基板Pが載置された際、基板Pに塗布される有機EL材料が流動しない程度に硬化する温度である。目標温度は、例えば、塗布液の溶剤の沸点以上に設定されればよい。本実施形態においては、塗布装置は、ヒーター9で基板Pを加熱することによって基板Pを塗布後の搬送に適した温度に加熱し、基板Pに塗布される塗布液を、流動しない程度に硬化させる。つまり、本実施形態においては、ヒーター9を用いることによって塗布装置内において塗布液の溶剤の乾燥、蒸発を促進する処理を行う。
【0036】
続くステップS2において、図示しない搬送ロボット等によって基板Pが塗布装置に搬入されてステージ4上に載置される。ステージ4上に載置された基板Pは、位置決めピン10a〜10cによって位置決めされる。すなわち、基板Pは、その一辺が位置決めピン10bおよび10cに当接し、かつ、当該一辺の隣の辺が位置決めピン10aに当接するようにステージ4上に載置される(図1(a)参照)。なお、ステージ4上に載置された基板Pは、ステージ4上に設けられた溝から真空排気が行われることによって吸着保持される。これによって基板Pはステージ4上に固定される。
【0037】
ステップS3においては、各CCDカメラ6aおよび6bの位置調整が行われる。ステップS3の処理は、2つのCCDカメラ6aおよび6bのY軸方向に関する位置を一致させる、すなわち、2つのCCDカメラ6aおよび6bをX軸方向に平行に配置させるための処理である。具体的には、制御部8は、まず各ノズル12〜14のいずれかから塗布液を吐出させながら、ノズルユニット2をノズル移動機構部1の一端から他端まで移動させる。これによって、基板Pに1本のライン状に塗布液が塗布される。なお、この塗布は試し塗りであるので、基板Pの非塗布領域(上記溝が形成されていない領域)で行われる。1本のラインが形成されると、当該ラインを含む基板Pの領域を各CCDカメラ6aおよび6bによって撮像する。そして、制御部8は、当該ラインが撮像画像の中心となるように、各CCDカメラ6aおよび6bをそれぞれY軸方向に平行移動させる。以上の処理によって、2つのCCDカメラ6aおよび6bをX軸方向に平行に配置することができる。なお、本実施形態では、1本のラインを塗布して各CCDカメラ6aおよび6bの位置を調整する処理を2回繰り返して行う。これによって、ノズルユニット2はノズル移動機構部1を1往復することとなるので、ノズルユニット2は元の位置(ステップS3の実行開始時の位置)に戻ることとなる。
【0038】
ステップS4においては、ステージ4上で加熱された基板Pの膨張率を算出する処理(膨張率算出処理)が行われる。基板(ガラス基板)Pは、ヒーター9によって加熱されているステージ4上に載置される(ステップS2)ことによって昇温され、膨張する。ステップS4は、加熱前の基板Pに対する加熱後の基板Pの膨張率を算出するための処理である。以下、図6を用いて膨張率算出処理の詳細を説明する。
【0039】
図6は、図5に示すステップS4の処理の詳細を示すフローチャートである。膨張率算出処理においては、まずステップS11において、制御部8は、前方のアライメントマークがCCDカメラ6に撮像される位置までステージ4をY軸方向に平行移動する。なお、ここでは、Y軸正方向側を前方、Y軸負方向側を後方とし、アライメントマークM1およびM3を前方のアライメントマークと呼び、アライメントマークM2およびM4を後方のアライメントマークと呼ぶ。
【0040】
次に、ステップS12において、前方のアライメントマークがCCDカメラ6に撮像される。すなわち、各CCDカメラ6aおよび6bによってそれぞれアライメントマークM1およびM3付近の画像が撮像され、制御部8は撮像画像を取得する。続くステップS13において、制御部8は、ステップS12で取得した画像に基づいて各アライメントマークM1およびM3の位置を示す座標値を算出する。具体的には、制御部8は、所定の画像認識処理によって画像上における各アライメントマークの位置を算出する。そして、算出した位置、および、CCDカメラ6とステージ4との位置関係から、各アライメントマークのステージ4上における位置を示す座標値(XY座標系の座標値)を算出する。なお、ここでは、制御部8は、CCDカメラ6とステージ4との位置関係を検知可能であり、当該位置関係を用いて、画像上における位置を示す座標値を、ステージ4上における位置を示す座標値に変換することが可能であるとする。
【0041】
次に、ステップS14において、制御部8は、後方のアライメントマークがCCDカメラ6に撮像される位置までステージ4をY軸方向に平行移動する。具体的には、制御部8は、所定距離L0だけY軸負方向にステージ4を平行移動させる。ここで、所定距離L0は、加熱前における基板PのアライメントマークM1からM2までの距離である。なお、本実施形態では、加熱前における4つのアライメントマークM1〜M4を結んだ四角形は長方形であり、アライメントマークM1からM2までの距離と、アライメントマークM3からM4までの距離とは加熱前において等しいものとする。
【0042】
ステップS15において、後方のアライメントマークがCCDカメラ6に撮像される。すなわち、各CCDカメラ6aおよび6bによってそれぞれアライメントマークM2およびM4付近の画像が撮像され、制御部8は撮像画像を取得する。続くステップS16において、制御部8は、ステップS15で取得した画像に基づいて、各アライメントマークM2およびM4の位置を示す座標値を算出する。なお、ステップS16における座標値の算出方法は、ステップS13と同様の方法である。以上のステップS13およびS16によって、各アライメントマークM1〜M4のステージ4上における位置を示す、XY座標系の座標値が算出される。
【0043】
ステップS17においては、前方のアライメントマークと後方のアライメントマークとの距離が算出される。すなわち、制御部8は、アライメントマークM1とM2との距離を算出し、アライメントマークM3とM4との距離を算出する。続くステップS18において、制御部8は、ステップS17で算出された各距離に基づいて熱膨張率αを算出する。具体的には、まず、ステップS17で算出された2つの距離の平均値Lを算出する。そして、加熱前における2つのアライメントマーク間の距離(上記所定距離)L0と、当該平均値Lとから熱膨張率αを算出する。熱膨張率αは、次の式によって算出することができる。
α=L/L0
以上で、熱膨張率算出処理の説明を終了する。
【0044】
なお、本実施形態においては、ステップS11〜S17の処理において、アライメントマークM1からM2までの距離を算出するとともに、アライメントマークM3からM4までの距離を算出した。そして、2つの距離の平均値を用いて熱膨張率αを算出した。ここで、他の実施形態においては、2つの距離のうちいずれか一方のみを算出し、算出した距離を上記平均値Lに代えて用いて熱膨張率αを算出してもよい。
【0045】
図5の説明に戻り、ステップS4の次のステップS5において、角度調整処理が実行される。上述のように、ノズルユニット2の移動方向と基板Pに形成された溝の方向とが平行になるようにステージ4上に基板Pが載置された状態で塗布が行われる必要がある。上記ステップS2では、位置決めピン10a〜10cによってほぼ適切な向きとなるように基板Pが載置されるが、位置決めピン10a〜10cによる位置決めのみでは、ノズルユニット2の移動方向と基板Pに形成された溝の方向とを正確に一致させることは難しい。ステップS5の角度調整処理は、図1に示すθ方向に基板Pを回転させることによって、基板Pの向きを調整するための処理である。以下、図7を用いて角度調整処理の詳細を説明する。
【0046】
図7は、図5に示すステップS5の処理の詳細を示すフローチャートである。角度調整処理においては、まずステップS21において、制御部8は、前方のアライメントマークがCCDカメラ6に撮像される位置までステージ4をY軸方向に平行移動する。制御部8は、例えば所定距離L0だけY軸正方向にステージ4を平行移動させる。続くステップS22において、上記ステップS12と同様、前方のアライメントマークがCCDカメラ6に撮像される。すなわち、各CCDカメラ6aおよび6bによってそれぞれアライメントマークM1およびM3付近の画像が撮像され、制御部8は撮像画像を取得する。
【0047】
ステップS23において、制御部8は、2つの前方のアライメントマークM1およびM3の基準方向に関するずれ量(距離)dを算出する。なお、本実施形態では、基準方向とはY軸方向とする。具体的には、制御部8は、上記ステップS13と同様の方法で、各アライメントマークM1およびM3のステージ4上の座標値をそれぞれ算出する。そして、算出した各座標値のY座標値に基づいてずれ量dを算出する。
【0048】
図8は、角度調整処理を説明するための図である。図8においては、ノズルユニット2の移動方向(X軸方向)に対してある角度θ1だけ基板Pの向き(基板Pに形成された溝の向き)がずれているとする。上記ステップS23においては、2つのアライメントマークM1およびM3のY軸方向に関するずれ量dが算出される。
【0049】
図7に示すステップS24においては、制御部8は、加熱後における2つの前方のアライメントマーク間の距離W(図8参照)を算出する。この距離Wは、加熱前における当該2つのアライメントマーク間の距離W0と、上記膨張率αとに基づいて算出することができる。すなわち、距離Wは、次の式によって算出することができる。
W=α×W0
なお、加熱前におけるアライメントマーク間の距離W0は、塗布装置において予め設定されている。以上のステップS24によって、アライメントマークM1からM3までの距離が調整されることとなる。
【0050】
ステップS25においては、上記ずれ量dおよび上記距離Wに基づいて、基板Pの向きを補正すべき角度(補正角度)Δθが算出される。具体的には、この補正角度Δθは、次の式によって算出することができる。
Δθ=sin-1(d/W)
この補正角度Δθは、ステージ4上に載置されている基板Pの向き、すなわち、ステージ上のアライメントマークM1およびM3を結ぶ直線の向きを示す。したがって、この補正角度Δθに従ってステージ4を回転させることによって、基板の載置されている向きを調整することができる。なお、本実施形態においては、アライメントマークM1およびM3を結ぶ直線の向きを、上記基準方向(Y軸方向)を基準とした角度で表したが、他の実施形態においては、基準方向に垂直な方向(X軸方向)を基準とした角度で当該直線の向きを表してもよい。すなわち、ステップS25においては、cos-1(d/W)を算出してもよい。
【0051】
ステップS26において、ステップS25において算出された向きに基づいて、基板の載置されている向きが調整される。すなわち、制御部8は、補正角度Δθだけステージ4を回転させる。なお、ステージ4を回転させる方向(右回りまたは左回り)は、アライメントマークM1およびM3のステージ4上における位置によって決定することができる。すなわち、アライメントマークM1の位置がアライメントマークM3の位置よりもY軸負方向側であった場合(図8に示す状態の場合)、基板Pの上方から見て右回りにステージ4を回転させればよい。逆に、アライメントマークM1の位置がアライメントマークM3の位置よりもY軸正方向側であった場合、基板Pの上方から見て左回りにステージ4を回転させればよい。
【0052】
以上のステップS21〜S26によって、基板Pの向きが適切な向きとなる、すなわち、基板Pに形成された溝の方向とノズルユニット2の移動方向とが平行になる。これによって、後述するステップS8以降の塗布処理において、基板Pの所望の向き(溝の向き)に塗布液を塗布することができる。なお、ステップS27においては、前方のアライメントマークM1およびM3が、Y軸方向に関してCCDカメラ6の中心に撮像されるように、ステージ4をY軸方向に平行移動させる。以上で、角度調整処理の説明を終了する。
【0053】
なお、本実施形態においては、精度確保のため、図7に示した角度調整処理を2回繰り返すこととするが、他の実施形態においては、角度調整処理を1回のみ行うようにしてもよい。
【0054】
図5の説明に戻り、ステップS5の次のステップS6において、ノズルユニット2が基板Pの所定の塗布開始位置に位置するように、ステージ4がY軸方向に平行移動される。ここで、アライメントマークM1およびM3がCCDカメラ6の中心に撮像されている状態から、ノズルユニット2が基板Pの塗布開始位置に位置する状態までのステージ4の移動距離は、予め塗布装置に設定されているものとする。ただし、設定されている値は基板Pの加熱前における値であるので、加熱による膨張を考慮する必要がある。したがって、ステップS6においては、設定されている移動距離に上記膨張率αを乗算した距離だけステージ4がY軸方向に平行移動される。
【0055】
続くステップS7において、ピッチ調整処理が行われる。ピッチ調整処理は、基板Pに塗布液を塗布する際のステージ4のピッチ送り量を調整する処理である。以下、図9を用いてピッチ調整処理の詳細を説明する。
【0056】
図9は、図5に示すステップS7の処理の詳細を示すフローチャートである。ピッチ調整処理においては、まずステップS31において、制御部8は、加熱前におけるピッチ総移動量Pt0を算出する。このピッチ総移動量Pt0は、基板Pに対する加熱を行っていない場合において、基板Pに対する塗布が完了するまでの間にステージ4を平行移動させる移動量である。加熱前におけるピッチ総移動量Pt0は、具体的には、加熱前における1回のピッチ送り量P0と、基板Pに対する塗布が完了するまでにピッチ送りを行う回数Nとを乗算したものである。つまり、加熱前におけるピッチ総移動量Pt0は、次の式によって算出される。
Pt0=P0×N
なお、加熱前における1回のピッチ送り量P0、および、ピッチ送りを行う回数Nは、塗布装置において予め設定されている。
【0057】
ステップS32において、制御部8は、ピッチ総移動量の加熱による増加量ΔPt(膨張量)を算出する。膨張量ΔPtは、加熱前におけるピッチ総移動量Pt0と、膨張率αとに基づいて、次の式によって算出することができる。
ΔPt=Pt0×(α−1)
【0058】
ステップS33において、制御部8は、ピッチ送り量を補正すべき回数N’を算出する。ここで、本実施形態においては、ステージ4のY軸方向に関する平行移動は、所定の単位移動量(ステージ4を移動するためのモータの分解能)を最小単位として制御可能であるとする。ステップS33においては、1枚の基板Pの塗布を完了するまでの間に、単位移動量を単位としたピッチ送り量の補正を何回行うかを算出する。具体的には、ステージ4の単位移動量をRとすると、ピッチ送り量を補正すべき回数N’は、次の式によって算出される。
N’=ΔPt/R
【0059】
ステップS34において、制御部8は、基板Pに対する塗布が完了するまでにピッチ送りを行う回数Nと、ステップS33で算出された回数N’とに基づいて、ピッチ送り量を補正する割合を決定する。例えば、ピッチ送りを行う回数NがN=200であり、ピッチ送り量を補正すべき回数N’がN’=50であった場合、4回に1回の割合でピット送り量を補正すると決定される。この場合、ピッチ送りが4回行われるうちの1回のピッチ送り量がP0+Rとなり、他の3回のピッチ送り量がP0となる。なお、NがN’で割り切れない場合も同様に、基板Pに対する塗布が完了するまでにピッチ送り量を補正する回数がN’回となるように、ピッチ送り量を補正する割合が決定される。以上で、ピッチ調整処理の説明を終了する。
【0060】
図5の説明に戻り、ステップS7の次のステップS8において、塗布処理が開始される。すなわち、制御部8は、ノズル移動機構部1、ノズルユニット2およびステージ移動機構部5を制御し、ノズルユニット2のX軸方向の移動とステージ4のY軸方向の移動とを制御するとともに、各ノズル12〜14による有機EL材料の吐出を制御する。これによって、以降、ノズルユニット2のX軸方向の移動動作(上記第1動作)とステージ4のY軸方向の移動動作(上記第2動作)とが繰り返される。このとき、第2動作で行われるピッチ送り量は、ステップS7で調整されたピッチ送り量である。以降、第1動作と第2動作とを繰り返すことによって、基板Pへの塗布が3列分ずつ行われ、基板Pに有機EL材料がストライプ状に塗布されていく。なお、基板Pに対する塗布が行われる間、基板Pの温度は上記目標温度に保たれる。第1動作および第2動作は、予め設定されたピッチ送り回数Nだけ繰り返されるまで行われる。なお、第1動作および第2動作を停止した後、制御部8は所定時間待機する。この所定時間は、最後に塗布された有機EL材料が流動しない程度に硬化するまでの時間である。第1動作および第2動作を停止してから所定時間が経過した後、制御部8は、ヒーター9の発熱を停止させる。以上で、1枚の基板Pに対する塗布装置の処理が終了する。なお、基板を連続処理する場合は、ヒーター9を停止させなくてもよい。
【0061】
塗布装置における塗布処理が完了した基板Pは、図示しない搬送ロボットにより塗布装置から搬出される。搬出された基板Pに対しては、基板Pの塗布領域以外の領域(溝以外の領域)に塗布された有機EL材料が除去される。除去処理は、基板P上の有機EL材料を除去する方法であればどのような方法であってもよく、例えば、レーザアブレーションによって有機EL材料を除去する方法であってもよいし、除去領域に予めマスキングテープを貼付しておく方法であってもよい。そして、除去処理が完了した基板Pに対して乾燥処理(ベーク処理)が行われる。以上によって、赤色の有機EL材料について塗布・乾燥処理が完了したことになる。この後、基板Pに対しては、赤色の場合と同様に、緑色および青色の有機EL材料について塗布・乾燥処理が行われる。すなわち、緑色の有機EL材料を塗布する処理、塗布された緑色の有機EL材料を乾燥させる処理、青色の有機EL材料を塗布する処理、および、塗布された青色の有機EL材料を乾燥させる処理が順に行われる。このように赤色、緑色および青色の有機EL材料について塗布・乾燥処理が行われることによって、有機EL表示装置の発光層が形成される。さらに、発光層が形成された基板に対して例えば真空蒸着法により陰極電極が発光層上に形成されることによって、有機EL表示装置が製造される。
【0062】
以上のように、本実施形態によれば、ヒーター9による加熱によって基板Pが膨張する膨張率を算出することによって、基板Pの熱膨張を考慮してピッチ送りを行うことができる。これによって、塗布液を実際に塗布しなければならない間隔(加熱後における溝の間隔)とピッチ送りの間隔とを合わせることができるので、正しい位置に塗布液を塗布することができる。
【0063】
なお、上記実施形態においては、すべての基板について正確に膨張率を算出するために、1枚の基板がステージ4上に載置されるたびに基板の膨張率を算出するものとした。ここで、他の実施形態においては、所定枚数に1枚の割合で膨張率を算出するようにしてもよい。
【0064】
また、上記実施形態においては、基板の膨張率を算出するために、基板に付されたアライメントマーク間の距離を測定したが、他の実施形態においては、基板の任意の部分についての距離を測定すればよい。例えば、塗布装置は、基板の端から端までの長さを測定するようにしてもよい。また、本実施形態では、基板の所定部分の距離(アライメントマーク間の距離)について、加熱前の値は塗布装置に予め設定されているものとしたが、他の実施形態においては、当該所定部分の距離を加熱前に実際に測定するようにしてもよい。また、角度調整処理においては、アライメントマークM1およびM3の距離を用いて基板の向き(Δθ)を算出したが、他の実施形態においては、上記と同様、基板の任意の部分についての距離(例えば、基板の2頂点間の距離)を用いて基板の向きを算出してもよい。
【0065】
なお、上記塗布装置は、赤色の有機EL材料を基板に塗布するものであったが、他の色の有機EL材料を塗布する装置や、正孔輸送層となる正孔輸送材料を塗布する装置として上記塗布装置を利用することもできる。また、上記実施形態においては、各ノズル12〜14から同色の有機EL材料を吐出するものとしたが、他の実施形態においては、赤色、緑色および青色の3色の有機EL材料を3本のノズル12〜14から1色ずつ吐出するようにしてもよい。このとき、各ノズル12〜14のY軸方向に関する間隔は、基板に設けられた溝の1本分の間隔となるように調整される。また、ステージ4のピッチ送り量は、基板に設けられた溝の3本分の間隔となる。また、上記塗布装置は、有機EL表示装置を製造する工程において用いられるものであったが、基板を加熱した状態で塗布を行うものであって、ピッチ送りを行うことによってストライプパターンを形成する任意の塗布装置に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、基板を加熱する場合であっても、基板を所望の向きに配置し、所望の向きに塗布液を塗布すること等を目的として、例えば有機EL表示装置を製造するための有機EL材料や正孔輸送材料、または、プラズマディスプレイを製造するための蛍光材料をガラス基板に塗布する塗布装置等として利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施形態に係る塗布装置の概観を示す図
【図2】塗布装置の撮像部を示す図
【図3】塗布装置の各部と制御部との接続関係を示す図
【図4】塗布処理の対象となる基板Pを模式的に示す図
【図5】塗布装置の動作の流れを示すフローチャート
【図6】図5に示すステップS4の処理の詳細を示すフローチャート
【図7】図5に示すステップS5の処理の詳細を示すフローチャート
【図8】角度調整処理を説明するための図
【図9】図5に示すステップS7の処理の詳細を示すフローチャート
【符号の説明】
【0068】
1 ノズル移動機構部
2 ノズルユニット
3 液受け部
4 ステージ
5 ステージ移動機構部
6 CCDカメラ
7 カメラ移動機構部
8 制御部
9 ヒーター
12〜14 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布手段によって塗布液を基板に塗布する塗布方法であって、
ステージに載置された基板を塗布時の処理温度に加熱する加熱ステップと、
加熱された基板の所定部分の長さを測定する第1測定ステップと、
加熱前における前記所定部分の長さと前記測定ステップで測定された長さとに基づいて加熱による基板の膨張率を算出する第1算出ステップと、
加熱された基板について、当該基板上の所定の2点間の基準方向に関する長さを測定する第2測定ステップと、
加熱前における前記2点間の長さと前記算出された膨張率とに基づいて加熱後における前記2点間の長さを算出する第2算出ステップと、
前記第2測定ステップにおいて測定された長さと前記第2算出ステップにおいて算出された長さとに基づいて、前記2点間を結ぶ直線の向きを算出する第3算出ステップと、
前記第3算出ステップにおいて算出された向きに基づいて、基板の載置されている向きを調整する調整ステップと、
向きが調整された基板に対して、塗布液を吐出している塗布手段を所定方向に相対移動させることによって塗布液を前記基板に塗布する塗布ステップとを備える、塗布方法。
【請求項2】
前記第3算出ステップにおいては、前記第2測定ステップにおいて測定された長さと前記第2算出ステップにおいて算出された長さとに基づいて、前記2点間を結ぶ直線と前記基準方向またはそれに垂直な方向とのなす角度を算出し、
前記調整ステップにおいては、前記第3算出ステップにおいて算出された角度だけ基板を回転させる、請求項1に記載の塗布方法。
【請求項3】
前記基板には、少なくとも2つのマークが付されており、
前記第1測定ステップにおいては、前記基板に付された所定のマーク間の長さを前記所定部分の長さとして測定する、請求項1および請求項2のいずれかに記載の塗布方法。
【請求項4】
前記基板には、少なくとも2つのマークが付されており、
前記第2測定ステップにおいては、前記基板に付された所定のマーク間の前記基準方向に関する長さを前記2点間の当該基準方向に関する長さとして測定する、請求項1から請求項3のいずれかに記載の塗布方法。
【請求項5】
塗布液を基板に塗布する塗布装置であって、
前記基板を載置するためのステージと、
前記ステージに載置された基板を塗布時の処理温度に加熱する加熱手段と、
加熱された基板に対して塗布液を塗布するための塗布手段と、
加熱された基板の所定部分の長さを測定する第1測定手段と、
加熱前における前記所定部分の長さと前記測定手段によって測定された長さとに基づいて加熱による基板の膨張率を算出する第1算出手段と、
加熱された基板について、当該基板上の所定の2点間の基準方向に関する長さを測定する第2測定手段と、
加熱前における前記2点間の長さと前記算出された膨張率とに基づいて加熱後における前記2点間の長さを算出する第2算出手段と、
前記第2測定手段によって測定された長さと前記第2算出手段によって算出された長さとに基づいて、前記2点間を結ぶ直線の向きを算出する第3算出手段と、
前記第3算出手段によって算出された向きに基づいて、基板の載置されている向きを調整するために前記ステージを回転させる回転手段と、
向きが調整された基板に対して、塗布液を吐出している塗布手段を所定方向に相対移動させる移動手段とを備える、塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−144375(P2007−144375A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−346159(P2005−346159)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】