説明

変速機およびその制御方法

【課題】スプラインクラッチは大トルク容量の変速機の好適であるが、スプラインの隙間が小さいので同期締結の際、位相をぴったり合わさないと嵌合しにくい。
【解決手段】そこで嵌合案内歯付きのスプラインクラッチを用いて、部品点数やコストを抑え、磨耗部品がなくメンテナンスの手間を増やさずに、高速締結できるようにする。耐久性を損なわないように中間軸の速度を制御できる方式と組み合わせることで、高速に動作して信頼性の高い変速機を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変速機の構成および制御方法に係り、特にスプライン結合クラッチを用いた変速機の構成および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から周知の変速機用噛合いクラッチは、ドッグクラッチ、爪クラッチとも呼ばれ、一度結合したら結合状態を維持するのに油圧のような動力を必要としないので、入力トルクを損失無く出力側に伝達することが出来る。このような理由からマニュアル変速機(以下MTと略す)に用いられ、さらには自動MTあるいはロボタイズドMTと呼ばれる自動化マニュアル変速機に適用されている。(特許文献1参照)。
【0003】
マニュアル変速機は摩擦クラッチによりエンジンからの動力を切断している間に、変速ギア段を切り替えるもので、前段ギアの噛合いクラッチを開放して、次段ギアの噛合いクラッチを結合させるのであるが、同期化装置の無い変速機では、次段ギアの噛合いクラッチは、偶然でない限り両側の爪の回転速度と位相が等しい状態すなわち同期状態にないので、いわゆるギア鳴り音を発しながら摩擦接触し、この摩擦で相対回転速度が等しくなって同期したところで結合する。
【0004】
乗用車のマニュアル変速機では、昔はダブルクラッチと呼ばれる操作を行って次段ギアの噛合いクラッチを同期させ、ギア鳴り音を出さないように結合していた。現在はこのような高度な運転技術を要しなくても変速できるように、シンクロメッシュ機構を備えてシンクロナイザーと呼ばれる摩擦リングで素早く同期化させる方法が一般化されている。(非特許文献1参照)。
【0005】
気動車や大型特殊作業車両などの大きな変速機では、伝達トルクが乗用車よりはるかに大きいので、大容量のシンクロナイザーリングは高価であるだけでなく、磨耗や焼き付きを起こしやすいのでメンテナンスの手間が掛かることもあり、図1に示すような単純な噛合いクラッチ、特に伝達容量の大きいスプラインクラッチが用いられている。これは軸100に設けられたスプライン101に嵌合し、軸方向に移動可能なスライダ102を設け、該スライダ102には外周にスプライン103を形成してある。一方、前記軸100には変速ギア104および106を回転自在に設け、各ギア104,106には、前記スライダの外周スプライン103と噛み合う内周スプライン105および107を設けてある。例えばスライダ102を左方向に移動させて外周スプライン103をギア104の内周スプライン105と噛み合わせれば、軸100からのトルクをギア104に伝達することができる。
【0006】
この方式はスプラインの噛み合い長さを、ドッグクラッチよりも大きく設計することができるので、大容量の大型産業車両等に適している。
【0007】
しかし従来のスプラインクラッチはギアの雌スプライン105とスライダの雄スプライン103の回転速度はもとより、位相までぴったり合っていないと嵌合できないので、同期が取れるまでに時間を要して素早い変速が困難であった。
【0008】
車両の加速中に次々と変速するには0.5秒程度で同期させることが要求されるのに対し、慣性モーメントの大きなギアを持つ大型の変速機で、このような高速応答制御を行うのは非常に困難である。現状は±30(min−1)程度の精度で回転数制御しながら噛み合い爪を押し付けて結合させているが、時々締結時間が大幅に伸びることがあった。
【0009】
噛み合い時間を短縮する方法として、先に本出願人より嵌合案内歯付きスプラインクラッチを提案した。(特許文献2参照)。
【0010】
すなわち図2に示すように、スライダ102の外周に設けたスプライン103の側端面に、嵌合案内歯108を設け、同時にギア側の内周スプライン105の側端面にも同様の嵌合案内歯109を設けたものである。
【0011】
嵌合案内歯の一例を図3に示す。図3(a)が外周に溝を切った雄スプライン、図3(b)が内周に溝を切った雌スプラインである。この例では2個置きの歯を他の歯より軸方向に2(mm)程度飛び出させて案内歯108および109としている。
【0012】
嵌合案内歯の動作を説明したのが図4で、この例では1個置きの歯を飛び出させて案内歯としている。図4(a)は案内歯同士が接触した場合の様子を模式的に表したもので、一番運の悪い場合の接触形態である。しかし雌雄両スプラインは相対回転しているので、すぐに図4(b)のように両方の案内歯はずれて溝に落ちることができ、図4(c)のように次の案内歯とぶつかるところまで移動する。そうすると相対回転数は0になって同期するから、図4(d)のようにスプライン全体が嵌合できる。
【0013】
締結の容易さを表したのが図5である。図5(a)は従来のスプラインクラッチで、スプラインのギャップgは例えば200(μm)である。スプラインの直径をφ100(mm)とすると、200(μm)の隙間は角度に直すと0.13度である。図5(b)は案内歯付きスプラインクラッチの場合の一例で、案内歯部分のギャップの角度θは約3.5度であるから、図5(a)に比べると約27倍も噛み込み易いことが分かる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平2−39661号公報
【特許文献2】特願2007−278831号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】同期機構:自動車技術ハンドブック第2分冊 P.210:(社)自動車技術会、1991年3月1日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし噛み込み易いからと言ってむやみに締結すると、次のような問題が生じる。従来は前記したように±30(min−1)程度の相対回転数で締結させているが、これを27倍の±810(min−1)程度の相対回転数で締結させても同じ確率で締結できるが、しかしギアの持つ慣性モーメントに起因する衝撃トルクが非常に大きくなり、この衝撃トルクを受ける嵌合案内歯の部分は歯数が少なくかつ歯厚が薄いため、耐久性が著しく損なわれることになる。また嵌合案内歯が接触するときの衝撃音が発生することにもなる。
【0017】
また、負荷をつないだまま締結するような場合には、嵌合案内歯同士が噛み合った途端に負荷トルクが掛かるので、前記衝撃トルクと合わせてさらに大きなトルクが嵌合案内歯に掛かることになり、益々耐久性と音の問題が深刻になる。
【0018】
このためマニュアル変速機におけるシンクロメッシュ機構の代わりに、この案内歯付きスプラインクラッチを用いることは、一般人を対象に考えることはできない。マニュアル変速機に搭載するときは、必ずダブルクラッチ操作による回転数合わせを行い、かつシフトレバーを入れる時は必ずクラッチを踏み込むような運転をしなければならないので、プロのドライバが運転するレースカーならば実現可能である。
【0019】
そこで本発明においては、スプラインの側面に同期化を促進するための嵌合案内歯を設けることにより、大まかな同期制御で素早く締結するとともに、耐久性があり騒音の点でも問題ない変速機を提供することを目的とする。
【0020】
すなわち、本発明の目的は、短時間で確実に締結することができ、安価な構成で信頼性が高く、トルク容量の割に小型である自動変速機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するため、本発明は、
入力軸と、少なくとも1つの中間軸と、出力軸とを備え、
前記入力軸に入力ギアが、前記出力軸に複数の出力ギアが設けられ、
前記中間軸に、いずれかの出力ギアに噛み合って変速段を形成する複数の変速用ギアが設けられ、
前記中間軸には、それぞれの駆動手段によって軸方向に駆動される少なくとも2つのスプラインと、各スプラインに嵌合されたスリーブが設けられ、
各スリーブには、外周に一方の嵌合案内歯が、そして各変速用ギアの内周には他方の嵌合案内歯が形成され、一方の嵌合案内歯が他方の嵌合案内歯に噛み合って複数の嵌合案内歯の形成が可能とされ、
いずれかの嵌合案内歯の形成に対応して、変速段の1つが形成され、
前記中間軸の回転数を制御する回転数制御手段が設けられ、
前記回転数制御手段によって、一の変速段から他の変速段に変速操作がなされるときに、前記中間軸の回転数を前記他の変速段を形成する変速用ギアの回転数に近づける制御がなされ、
前記スリーブが駆動手段に駆動され、これに伴って駆動方向にある変速用ギアとの間で嵌合案内歯の噛み合いが形成されること
を特徴とする変速機を提供する。
【0022】
上記目的を達成するため、本発明は、
入力軸と、2つの中間軸と、出力軸とを備え、
入力軸に入力ギアが、出力軸に複数の出力ギアが、そして各中間軸に入力ギアに噛み合う中間ギア、並びに2つの中間軸のそれぞれに、いずれかの出力ギアに噛み合って変速段を形成する変速用のギアが設けられ、
各中間軸には、それぞれの駆動手段によって軸方向に駆動される2つのスプラインと、各スプラインに嵌合されたスリーブが設けられ、
各スリーブには、外周に一方の嵌合案内歯が、そして各中間ギアの内周には他方の嵌合案内歯が形成され、一方の嵌合案内歯が他方の嵌合案内歯に噛み合って複数の嵌合案内歯の形成が可能とされ、
いずれかの嵌合案内歯の形成に対応して変速段の1つが形成され、
いずれかの中間軸の回転数、もしくは双方の中間軸の回転数を制御する回転数制御手段が設けられ、
回転数制御手段によって、一方の中間軸の回転数が他方の中間軸の回転数に近づける制御がなされたとき、いずれかのスリーブが駆動手段に駆動され、これに伴って駆動方向にある中間ギアとの間で嵌合案内歯の噛み合いが形成されること
を特徴とする変速機を提供する。
【0023】
また、本発明は、前記回転数制御手段が、回転軸に取り出しギアを備えた電動機と、該取り出しギアに噛み合うリングギアを備え、一つの中間軸に固定された歯車を有し、他の中間軸に歯車列によって連結された差動装置と、によって構成されることを特徴とする変速機を提供する。
【0024】
また、本発明は、前記回転数制御手段が、各中間軸に設けられた回転数制御ギアと、前記回転数制御ギアに備えられる摩擦クラッチと、各中間軸に備えられたブレーキ装置と、によって構成されることを特徴とする変速機を提供する。
【0025】
また、本発明は、前記回転数制御手段が、中間軸に設けられた回転数制御ギアと、前記回転数制御ギアに備えられる補助クラッチとによって構成されることを特徴とする変速機を提供する。
【0026】
上記目的を達成するため、本発明は、
入力軸と、少なくとも1つの中間軸と、出力軸とを備え、
前記入力軸に入力ギアが、前記出力軸に複数の出力ギアが設けられ、
前記中間軸に、いずれかの出力ギアに噛み合って変速段を形成する複数の変速用ギアが設けられ、
前記中間軸には、それぞれの駆動手段によって軸方向に駆動される少なくとも2つのスプラインと、各スプラインに嵌合されたスリーブが設けられ、
各スリーブには、外周に一方の嵌合案内歯が、そして各変速用ギアの内周には他方の嵌合案内歯が形成され、一方の嵌合案内歯が他方の嵌合案内歯に噛み合って複数の嵌合案内歯の形成が可能とされ、
いずれかの嵌合案内歯の形成に対応して、変速段の1つが形成され、
前記中間軸の回転数を制御する回転数制御手段が設けられた変速機の制御方法であって、
前記回転数制御手段によって、一の変速段から他の変速段に変速操作がなされるときに、前記中間軸の回転数を前記他の変速段を形成する変速用ギアの回転数に近づけること
を特徴とする制御方法を提供する。
【0027】
上記目的を達成するため、本発明は、
入力軸と、2つの中間軸と、出力軸とを備え、
入力軸に入力ギアが、出力軸に複数の出力ギアが、そして各中間軸に入力ギアに噛み合う中間ギア、並びに2つの中間軸のそれぞれに、いずれかの出力ギアに噛み合って変速段を形成する変速用のギアが設けられ、
各中間軸には、それぞれの駆動手段によって軸方向に駆動される2つのスプラインと、各スプラインに嵌合されたスリーブが設けられ、
各スリーブには、外周に一方の嵌合案内歯が、そして各中間ギアの内周には他方の嵌合案内歯が形成され、一方の嵌合案内歯が他方の嵌合案内歯に噛み合って複数の嵌合案内歯の形成が可能とされ、
いずれかの嵌合案内歯の形成に対応して変速段の1つが形成され、
いずれかの中間軸の回転数、もしくは双方の中間軸の回転数を制御する回転数制御手段が設けられた変速機の制御手段であって、
回転数制御手段によって、一方の中間軸の回転数が他方の中間軸の回転数に近づける制御がなされ、いずれかのスリーブが駆動手段に駆動され、これに伴って駆動方向にある中間ギアとの間で嵌合案内歯の噛み合いが形成されること
を特徴とする制御手段を提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明の方法によれば、シンクロナイザーリング等の摩擦式同期化装置を用いる必要が無いためメンテナンスの手間が要らず、耐久性の高い噛み合いクラッチを用いて、高速に応答する変速機を構成することができるので、産業上極めて有益である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】従来例におけるスプラインクラッチの構成を示す説明図である。
【図2】従来例における嵌合案内歯付スプラインクラッチの全体構造を示す説明図である。
【図3】嵌合案内歯付スプラインクラッチの案内歯の構造を示す説明図である。
【図4】嵌合案内歯付スプラインクラッチの案内歯の動作を示す説明図である。
【図5】スプラインクラッチと嵌合案内歯付スプラインクラッチの同期化動作の違いを示す説明図である。
【図6】本発明の第1実施例を示す変速機の構成を示すスケルトン、および制御系を示すシステム構成図である。
【図7】本発明の第1実施例における変速過程の例を示すトルク伝達経路説明図である。
【図8】本発明の第1実施例における変速過程の例を示すトルク伝達経路説明図である。
【図9】本発明の第1実施例における変速過程の例を示すトルク伝達経路説明図である。
【図10】本発明の第2実施例を示す変速機の構成を示すスケルトン図である。
【図11】本発明の第2実施例における変速過程の例を示すトルク伝達経路説明図である。
【図12】本発明の第2実施例における変速過程の例を示すトルク伝達経路説明図である。
【図13】本発明の第3実施例を示す変速機の構成を示すスケルトン図である。
【図14】本発明の第3実施例における変速過程の例を示すトルク伝達経路説明図である。
【図15】本発明の第3実施例における変速過程の例を示すトルク伝達経路説明図である。
【図16】本発明の第3実施例における変速過程の例を示すトルク伝達経路説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照して、この発明による嵌合案内歯付き噛み合いクラッチを用いた変速機の実施例を説明する。
【実施例1】
【0031】
本発明の第1の実施例を図6〜9により説明する。図6はモータのトルクによりエンジントルクをギアからギアに遷移させる、アクティブ変速機のシステム構成図である。
【0032】
エンジン1の出力は、変速機2の入力軸3に入力される。入力軸3には、入力ギアである前進用ギア列33と後進用ギア列34が並列に配置されており、入力軸3が回転駆動されている状態では、両ギア列33、34は常に駆動されている。前進用ギア列33は、入力軸3に固着された入力ギア35、該入力ギア35と噛み合う第1ギア36及び第2ギア37を備えている。後進用ギア列34は、入力軸3に固定嵌合された入力ギア38、該入力ギア38にそれぞれ噛み合う同じ仕様の反転ギア39、40、該反転ギア39、40にそれぞれ噛み合う第3ギア41及び第4ギア42を備えている。
【0033】
このシステムは両方向に同じように走行する鉄道車両用の変速機に適している。
【0034】
入力軸3に並行に、第1中間軸43と第2中間軸44とが配置されている。第1ギア36と第3ギア41は、第1中間軸43に相対回転可能に設置しており、第2ギア37と第4ギア42は、第2中間軸44に相対回転可能に設置している。第1中間軸43と第2中間軸44には、前進用ギア列33と後進用ギア列34との間において、それぞれ、選択的に係合可能な第1クラッチ45と第2クラッチ46とが配設されている。これらの第1クラッチ45及び第2クラッチ46は、それぞれの軸に設けられたスプライン上をシフトするスリーブの外周に設けた雄スプラインが、前記第1〜第4ギアに設けられた雌スプラインに噛み合うことで係合/開放するものである。したがって、クラッチ動作を正確に記述するなら「第1クラッチ45のスリーブをシフトする」とすべきであるが、以下においては簡単に「第1クラッチ45をシフトする」と述べることにする。
【0035】
第1中間軸43には第1クラッチ45の選択的なシフトによって係合した側のギア(36又は41)から前進回転又は後進回転が与えられ、第2中間軸44には第2クラッチ46の選択的なシフトによって係合した側のギア(37又は42)から前進回転又は後進回転が与えられる。これらのクラッチスリーブは、駆動手段であるクラッチアクチュエータ(Act1〜Act2)とリンク機構で結ばれ、係合する方向に推力を与えられる。
【0036】
第1中間軸43と第2中間軸44と並行に、出力軸47が配置されている。第1中間軸43と出力軸47との間には第1変速ギア段48と第3変速ギア段50が配置されており、第2中間軸44と出力軸47との間には第2変速ギア段49と第4変速ギア段51が配置されている。各変速ギア段48〜51においては、予め定められた変速比で出力軸47に回転出力を生じさせるために、相異なるギア径(歯数)が定められている。また、各変速ギア段48〜51において、中間軸43、44上に配置されているギアは中間軸43、44に対して相対回転自在であるが、出力軸47に配置されているギアは出力軸47に固定嵌合されている。
【0037】
第1中間軸43において、第1変速ギア段48と第3変速ギア段50との間には選択的に係合可能な第3クラッチ52が配設されている。また、第2中間軸44において、第2変速ギア段49と第4変速ギア段51との間には選択的に係合可能な第4クラッチ53が配設されている。これらの第3クラッチ52及び第4クラッチ53は、それぞれの軸に設けられたスプライン上をシフトするスリーブの外周に設けた雄スプラインが、前記第1〜第4変速ギアに設けられた雌スプラインに噛み合うことで係合/開放する。これらのクラッチスリーブは、駆動手段であるクラッチアクチュエータ(Act3〜Act4)とリンク機構で結ばれ、係合する方向に推力を与えられる。
【0038】
上記の変速ギア段の構成によって、第1クラッチ45を前進用ギア列33側にシフトした状態で、第3クラッチ52を第1変速ギア段48側にシフトしたときには、入力軸3の回転は第1中間軸43及び第1変速ギア段48を介して出力軸47に前進第1変速段で出力され、第3クラッチ52を第3変速ギア段50側にシフトしたときには、入力軸3の回転は第1中間軸43及び第3変速ギア段50を介して出力軸47に前進第3変速段で出力される。このとき、第2クラッチ46は中立位置に置かれる。また、第2クラッチ46を前進用ギア列37側にシフトした状態で、第4クラッチ53を第2変速ギア段49側にシフトしたときには、入力軸3の回転は第2中間軸44及び第2変速ギア段49を介して出力軸47に前進第2変速段で出力され、第4クラッチ53を第4変速ギア段51側にシフトしたときには、入力軸3の回転は第2中間軸44及び第4変速ギア段51を介して出力軸47に前進第4変速段で出力される。このとき、第1クラッチ45は中立位置に置かれる。
【0039】
第1クラッチ45又は第2クラッチ46を後進側に係合した場合は、それぞれ後進方向に各変速段で出力される。
【0040】
第2中間軸44の端部には差動装置54が配設されており、差動装置54のリングギア55は、電動機である発電電動機58に備えられた回転軸である取り出し軸57に設けられた取り出しギア56と噛み合っている。第1中間軸43と差動装置54のとの間には歯車列である接続ギア列59が配設され、差動装置54のリングギア55の回転数が、第1中間軸43の回転数と第2中間軸44の回転数の差の2分の1となるように接続されている。
【0041】
このような構造の変速機に対して、変速制御装置60が設けられており、クラッチアクチュエータ(Act1〜Act4)の動作指令を発生すると共に、発電電動機58およびエンジン1に対してそれぞれトルク指令を発生する。
【0042】
このように、取り出しギア56が設けられた回転軸である取り出し軸57を備えた電動機と、リングギア55と、歯車列である接続ギア列59と、差動装置54とから回転数制御装置が構成される。
【0043】
図6の変速システムにおける変速動作を、一の変速段である1速走行から他の変速段である2速にアップシフトする場合を例に説明する。1速走行中は図7に示すように、第1クラッチ45を前進用ギア列33の第1ギア36側にシフトし、第3クラッチ52を第1変速ギア段48側にシフトした状態である。2速にアップシフトするには、変速準備として1速走行中に2速ギアを締結する必要があるが、詳細については後述する。第2クラッチ46が開放されているので、第4クラッチ53を第2変速ギア段49側にシフトしても問題はない。
【0044】
2速ギアが締結されたら、次に図8に示すように、発電電動機58にトルクを発生させると、差動装置54から接続ギア列59を経由して第1中間軸43に発電電動機58のトルクを伝達するとともに、差動装置54の他端から第2中間軸44にも発電電動機58のトルクを伝達する。このとき第1中間軸43に伝達するトルクの向きを、エンジン1が第1中間軸43を駆動するトルクの向きと逆になるようにすれば、図7においてエンジンから伝わっていた第1変速ギア段48の駆動トルクが減少し、一方第2中間軸44に伝わるトルクは第2変速ギア段49を介して出力軸47に駆動力を与える。この動作はあたかもエンジン1から第1中間軸43に伝わっていたトルクが、接続ギア列59および差動装置54を経由して第2中間軸44に伝達されるかのように見える。すなわち発電電動機58と差動装置54により、中間軸43と44の間でトルクを遷移させることができる。エンジン出力の全てが第2中間軸44に遷移すると、第1変速ギア段48のトルクが無くなり、第3クラッチ52を開放することができる。
【0045】
第3クラッチ52が開放されたら第1中間軸43の回転数は1速ギアに拘束されなくなるので、発電電動機58の回転数を変えることができる。発電電動機58に全エンジントルクを受け持たせたまま、回転数を0まで下げると、第1中間軸43の回転数と第2中間軸44の回転数が等しくなるので、図9に示すように第2クラッチ46が同期状態になり、第2クラッチ46を締結できる。この間の状態はイナーシャフェーズと呼ばれる。発電電動機58のトルクを抜くとエンジントルクは全て第2クラッチ46→第2中間軸44→第4クラッチ53→2速ギアから出力軸47へと伝達され、2速へのアップシフトが完了する。
【0046】
このような変速過程において、1速走行中に2速ギアを締結する変速準備段階、およびイナーシャフェーズの2回、クラッチを同期結合させる必要がある。
【0047】
変速準備段階(プリフェーズ)では、図7に示すように第4クラッチ53を第2変速ギア段49側にシフトするが、このときの車速が40(km/h)の場合、或る変速機の例では2速ギアの回転数は960(min−1)である。一方、第4クラッチ53のスリーブの回転数は第2中間軸44の回転数であるが、前記したように第1中間軸43の回転数から差動装置54のリングギア回転数の2倍を引いたものである。したがって発電電動機58が止まっているとすれば、第1中間軸43の回転数[この例では1382(min−1)]で逆方向に回っている。そこで発電電動機58を回して第2中間軸44の回転数が960(min−1)になるようにすれば、第4クラッチ53のスプラインは同期状態になる。すなわちこの変速機の例では発電電動機58の回転数を483(min−1)にすればスプラインは同期状態になる。
【0048】
イナーシャフェーズにおいては、第1中間軸43の回転数は当初1382(min−1)であるが、発電電動機58の回転数を0に下げると、第1中間軸43の回転数は960(min−1)になり同期状態になる
このような変速中のクラッチ締結制御は、従来は発電電動機58の回転を同期点を中心に±30(min−1)以下に細かく制御して同期結合させていたため、同期状態になるまで時間が掛かっていたが、本発明になる嵌合案内歯付きスプラインクラッチを用いれば、発電電動機58の回転を大まかに制御するだけで、後はスプラインの側面に設けられた嵌合案内歯が強制的に同期化してくれるので、きわめて短時間で結合させることができる。ただし、発電電動機58の回転制御を27倍も大まかに制御すると、嵌合案内歯が強制的に同期化したときの衝撃トルクが大きいので、例えば回転制御を±100(min−1)程度にすると、衝撃トルクが小さく、耐久的にも騒音の点でも問題ない範囲に収めることができる。
【0049】
このため変速時間を大幅に短縮でき、変速フィーリングの向上だけでなく、きびきびした動作でそれだけ回生制動時間を長くすることが可能になり、燃費も向上するという効果がある。
【実施例2】
【0050】
本発明の第2の実施例を図10〜12により説明する。図10はツインクラッチ方式自動 MTと呼ばれる変速機の構成を模式的に示したスケルトン図である。
【0051】
エンジン1の出力は変速機2の入力軸3に入力される。入力軸3に固着された入力ギア35、該入力ギア35と噛み合う、回転数制御ギアである第1ギア36、及び回転数制御ギアである第2ギア37を備えており、第1ギア36には第1入力摩擦クラッチ61が、第2ギア37には第2入力摩擦クラッチ62が備えられている。前記第1入力摩擦クラッチ61は奇数段変速ギア列を備える第1中間軸43に、前記第2入力摩擦クラッチ62は偶数段変速ギア列を備える第2中間軸44に接続されている。前記第1中間軸43には1速ギア63、3速ギア67、5速ギア71が回転自在に設置されている。前記第2中間軸44には2速ギア65、4速ギア69、6速ギア74が回転自在に設置されている。
【0052】
前記各段の変速ギアはそれぞれに対応する変速出力ギア77〜82に噛み合っており、該変速出力ギア77〜82は出力軸47に固定嵌合されている。
【0053】
前記第1中間軸43には前記1速ギア63と前記3速ギア67を切り替えるためにスプラインクラッチが設置されており、クラッチスリーブ52が軸方向に移動可能に設置されている。前記1速ギア63には前記クラッチスリーブ52と噛み合うことができる雌スプラインとして1速ギアスプライン64が設けられている。同様に前記3速ギア67には前記クラッチスリーブ52と噛み合うことができる雌スプラインとして3速ギアスプライン68が設けられている。
【0054】
さらに前記第1中間軸43には同様に軸方向に移動可能なクラッチスリーブ73が設けられており、前記5速ギア71には前記クラッチスリーブ73と噛み合うことができる雌スプラインとして5速ギアスプライン72が設けられている。
【0055】
図示しない駆動手段であるシフトフォークにより、前記クラッチスリーブ52および73は左右軸方向に移動して、前記1速ギアスプライン64または前記3速ギアスプライン68あるいは5速ギアスプライン72と噛み合うことで、ギア段を切り替えることができる。
【0056】
前記第2中間軸44にも全く同様に前記2速ギア65と前記4速ギア69を切り替えるためにクラッチスリーブ53が設置されており、さらに前記6速ギア74に対応するクラッチスリーブ76が設けられている。
【0057】
また前記第1中間軸43および前記第2中間軸44には、変速機ケースとの間にそれぞれブレーキ装置83およびブレーキ装置84が設けられている。
【0058】
このように、回転数制御ギアである第1ギア36と、第1ギア36に備えられた第1入力摩擦クラッチ61と、回転数制御ギアである第2ギア37と、第2ギア37に備えられた第2入力摩擦クラッチ62と、ブレーキ装置83およびブレーキ装置84とから回転数制御手段が構成される。
【0059】
図10の変速システムにおける変速動作を、一の変速段である1速走行から他の変速段である2速にアップシフトする場合を例に説明する。1速走行中は図11に示すように、第1入力摩擦クラッチ61を締結し、クラッチスリーブ52を1速ギア63側にシフトした状態である。2速にアップシフトするには、変速準備として1速走行中にクラッチスリーブ53を2速ギア65に締結する。第2入力摩擦クラッチ62は開放されているので、クラッチ53を第2変速ギア65側にシフトしても問題はない。
【0060】
次に図12に示すように、第2入力摩擦クラッチ62を締結しながら第1入力摩擦クラッチ61を緩めると、エンジン1から第1中間軸43に伝わっていたトルクが、第2中間軸44に移り、全エンジントルクは2速ギア65を通るので、1速ギア63のトルクがゼロになってクラッチスリーブ52を抜くことができ、2速へのアップシフトが完了する。
【0061】
このような変速過程において、1速走行中に2速ギアを締結する変速準備段階にクラッチを同期結合させる必要がある。
【0062】
変速準備段階(プリフェーズ)では、図11に示すようにクラッチスリーブ53を第2変速ギア65側にシフトするが、このときの車速が40(km/h)の場合、或る変速機の例では2速ギアの回転数は960(min−1)である。一方、クラッチスリーブ53の回転数は第2中間軸44の回転数であるが、これは第2入力摩擦クラッチ62とブレーキ装置84のクラッチ板の引きずり摩擦のバランスによって決まるので、油の粘性等によってまちまちである。
【0063】
そこで第2入力摩擦クラッチ62とブレーキ装置84の油圧を調整して、第2中間軸44の回転数が960(min−1)になるようにすれば、クラッチスリーブ53は同期状態になる。
【0064】
クラッチ油圧による回転数制御には誤差が大きいが、嵌合案内歯付きスプラインクラッチを用いれば960(min−1)からかなり外れていても、短時間で確実に嵌合することができる。
【0065】
このとき、第2中間軸44の回転制御があまり大まかであると、嵌合案内歯が強制的に同期化したときの衝撃トルクが大きいので、例えば回転制御を±100(min−1)程度にすると、衝撃トルクが小さく、かつ耐久的にも騒音の点でも問題ない範囲に収めることができる。
【0066】
このため変速時間を大幅に短縮でき、変速フィーリングが向上するという効果がある。
【実施例3】
【0067】
本発明の第3の実施例を図13〜16により説明する。図13はアシストクラッチ方式自動MTと呼ばれる変速機の構成を模式的に示したスケルトン図である。他の実施例と同じ機能を持つ部材には同じ符号を付してある。
【0068】
エンジン1の出力は入力摩擦クラッチ61を介して中間軸43に伝達される。中間軸43には1速ギア63、2速ギア65、3速ギア67、4速ギア69、回転数制御ギアである5速ギア71が回転自在に設置されている。
【0069】
前記各段の変速ギアはそれぞれに対応する変速出力ギア77〜81に噛み合っており、該変速出力ギア77〜81は出力軸47に固定嵌合されている。
【0070】
前記中間軸43には前記1速ギア63と前記2速ギア65を切り替えるためにスプラインクラッチが設置されており、スリーブ52が軸方向に移動可能に設置されている。前記1速ギア63には前記スリーブ52と噛み合うことができる雌スプラインが設けられている。同様に前記2速ギアにも前記スリーブ52と噛み合うことができる雌スプラインが設けられている。
【0071】
さらに前記中間軸43には同様に軸方向に移動可能なスリーブ53が設けられており、前記3速ギア67と前記4速ギア69を切り替えることができる。
【0072】
図示しない駆動手段であるシフトフォークにより、前記スリーブ52および53は左右軸方向に移動して、前記1速ギア63または前記2速ギア65、あるいは前記3速ギア67または前記4速ギア69と結合することで、変速段を切り替えることができる。
【0073】
前記5速ギア71にはスプラインクラッチではなく、補助クラッチであるアシストクラッチ85が設けられており、前記中間軸43と結合することができる。
【0074】
このように、回転数制御ギアである5速ギア71と、5速ギア71に設けられた補助クラッチであるアシストクラッチとから回転数制御手段が構成される。
【0075】
図13の変速システムにおける変速動作を、一の変速段である1速走行から他の変速段である2速にアップシフトする場合を例に説明する。1速走行中は図14に示すように、入力摩擦クラッチ61を締結し、クラッチスリーブ52を1速ギア63側にシフトした状態である。
【0076】
2速にアップシフトするために、5速ギアのアシストクラッチ85の油圧を高めると、5速ギア71を伝わるトルクが次第に増えると共に、1速ギア63に伝わっていたトルクが減少する。全エンジントルクが5速ギア71に移ると、1速ギア63のトルクがゼロになってクラッチスリーブ52を抜くことができ、図15に示すように、5速ギアのアシストクラッチ85は滑りながらエンジントルクを伝えて走行している。
【0077】
このような変速過程において、1速走行中における前記中間軸43の回転数は、車速が40(km/h)の場合、或る変速機の例では1382(min−1)である。このときの前記2速ギア65の回転数は960(min−1)である。したがって前記クラッチスリーブ52を前記1速ギア63から抜いたあと、前記2速ギアを締結するためには、前記中間軸43の回転数を1382(min−1)から960(min−1)まで下げて、前記クラッチスリーブ52を同期結合させる必要がある。
【0078】
前記5速のアシストクラッチ85の油圧を調整して半クラッチ状態にすれば、前記中間軸43の回転数が、40(km/h)に於ける5速回転数395(min−1)に向けて低下し、その途中で960(min−1)を通過するときに、図16に示すように前記クラッチスリーブ52は前記2速ギア65と同期状態になる。前記5速のクラッチ油圧による回転数制御をできるだけゆっくり行い同期状態を長時間維持するように制御するが、前記クラッチスリーブ52が前記2速ギア65に締結するチャンスは一度しかないので、場合によっては変速が失敗することもある。
【0079】
しかし嵌合案内歯付きスプラインクラッチを用いれば、前記中間軸43の回転数が960(min−1)を通過するときに確実に嵌合することができる。
【0080】
ただし、前記中間軸43の回転数が前記2速ギア65との同期状態からかけ離れているときに前記クラッチスリーブ52を前記2速ギア65側にシフトすると、嵌合案内歯が強制的に同期化したときの衝撃トルクが大きいので、例えば同期状態±100(min−1)程度で前記クラッチスリーブ52をシフトすると、衝撃トルクが小さく、耐久的にも騒音の点でも問題ない範囲に収めることができる。
【0081】
このため変速制御を確実にでき、かつ変速フィーリングが向上するという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は大型の産業車両や鉄道車両に適用する場合について説明したが、同様の噛み合いクラッチを用いる変速機であれば産業車両に限定されるものではなく、自動車の自動化マニュアルトランスミッションに適用する場合にも同様に実施することができる。
【符号の説明】
【0083】
1…エンジン、2…変速機、3…入力軸、33…前進用ギア列、34…後進用ギア列、35,35’,38…入力ギア、36…第1ギア、37…第2ギア、39,40…後進用反転ギア、41…第3ギア、42…第4ギア、43…第1中間軸、44…第2中間軸、45…第1クラッチ、46…第2クラッチ、47…出力軸、48…第1変速ギア段、49…第2変速ギア段、50…第3変速ギア段、51…第4変速ギア段、52…第3クラッチ、53…第4クラッチ、54…差動装置、55…リングギア、56…取り出しギア、57…取り出し軸、58…発電電動機、59…接続ギア列、60…変速制御装置、61…第1入力摩擦クラッチ、62…第2入力摩擦クラッチ、63…1速ギア、64…1速ギアスプライン、65…2速ギア、66…2速ギアスプライン、67…3速ギア、68…3速ギアスプライン、69…4速ギア、70…4速ギアスプライン、71…5速ギア、72…5速ギアスプライン、73…クラッチスリーブ、74…6速ギア、75…6速ギアスプライン、76…クラッチスリーブ、77〜82,96…変速出力ギア、83,84…ブレーキ装置、85…アシストクラッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸と、少なくとも1つの中間軸と、出力軸とを備え、
前記入力軸に入力ギアが、前記出力軸に複数の出力ギアが設けられ、
前記中間軸に、いずれかの出力ギアに噛み合って変速段を形成する複数の変速用ギアが設けられ、
前記中間軸には、それぞれの駆動手段によって軸方向に駆動される少なくとも2つのスプラインと、各スプラインに嵌合されたスリーブが設けられ、
各スリーブには、外周に一方の嵌合案内歯が、そして各変速用ギアの内周には他方の嵌合案内歯が形成され、一方の嵌合案内歯が他方の嵌合案内歯に噛み合って複数の嵌合案内歯の形成が可能とされ、
いずれかの嵌合案内歯の形成に対応して、変速段の1つが形成され、
前記中間軸の回転数を制御する回転数制御手段が設けられ、
前記回転数制御手段によって、一の変速段から他の変速段に変速操作がなされるときに、前記中間軸の回転数を前記他の変速段を形成する変速用ギアの回転数に近づける制御がなされ、
前記スリーブが駆動手段に駆動され、これに伴って駆動方向にある変速用ギアとの間で嵌合案内歯の噛み合いが形成されること
を特徴とする変速機。
【請求項2】
入力軸と、2つの中間軸と、出力軸とを備え、
入力軸に入力ギアが、出力軸に複数の出力ギアが、そして各中間軸に入力ギアに噛み合う中間ギア、並びに2つの中間軸のそれぞれに、いずれかの出力ギアに噛み合って変速段を形成する変速用のギアが設けられ、
各中間軸には、それぞれの駆動手段によって軸方向に駆動される2つのスプラインと、各スプラインに嵌合されたスリーブが設けられ、
各スリーブには、外周に一方の嵌合案内歯が、そして各中間ギアの内周には他方の嵌合案内歯が形成され、一方の嵌合案内歯が他方の嵌合案内歯に噛み合って複数の嵌合案内歯の形成が可能とされ、
いずれかの嵌合案内歯の形成に対応して変速段の1つが形成され、
いずれかの中間軸の回転数、もしくは双方の中間軸の回転数を制御する回転数制御手段が設けられ、
回転数制御手段によって、一方の中間軸の回転数が他方の中間軸の回転数に近づける制御がなされたとき、いずれかのスリーブが駆動手段に駆動され、これに伴って駆動方向にある中間ギアとの間で嵌合案内歯の噛み合いが形成されること
を特徴とする変速機。
【請求項3】
前記回転数制御手段が、回転軸に取り出しギアを備えた電動機と、該取り出しギアに噛み合うリングギアを備え、一つの中間軸に固定された歯車を有し、他の中間軸に歯車列によって連結された差動装置と、によって構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の変速機。
【請求項4】
前記回転数制御手段が、各中間軸に設けられた回転数制御ギアと、前記回転数制御ギアに備えられる摩擦クラッチと、各中間軸に備えられたブレーキ装置と、によって構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の変速機。
【請求項5】
請求項1において、前記回転数制御手段が、中間軸に設けられた回転数制御ギアと、前記回転数制御ギアに備えられる補助クラッチとによって構成されることを特徴とする変速機。
【請求項6】
入力軸と、少なくとも1つの中間軸と、出力軸とを備え、
前記入力軸に入力ギアが、前記出力軸に複数の出力ギアが設けられ、
前記中間軸に、いずれかの出力ギアに噛み合って変速段を形成する複数の変速用ギアが設けられ、
前記中間軸には、それぞれの駆動手段によって軸方向に駆動される少なくとも2つのスプラインと、各スプラインに嵌合されたスリーブが設けられ、
各スリーブには、外周に一方の嵌合案内歯が、そして各変速用ギアの内周には他方の嵌合案内歯が形成され、一方の嵌合案内歯が他方の嵌合案内歯に噛み合って複数の嵌合案内歯の形成が可能とされ、
いずれかの嵌合案内歯の形成に対応して、変速段の1つが形成され、
前記中間軸の回転数を制御する回転数制御手段が設けられた変速機の制御方法であって、
前記回転数制御手段によって、一の変速段から他の変速段に変速操作がなされるときに、前記中間軸の回転数を前記他の変速段を形成する変速用ギアの回転数に近づけること
を特徴とする制御方法。
【請求項7】
入力軸と、2つの中間軸と、出力軸とを備え、
入力軸に入力ギアが、出力軸に複数の出力ギアが、そして各中間軸に入力ギアに噛み合う中間ギア、並びに2つの中間軸のそれぞれに、いずれかの出力ギアに噛み合って変速段を形成する変速用のギアが設けられ、
各中間軸には、それぞれの駆動手段によって軸方向に駆動される2つのスプラインと、各スプラインに嵌合されたスリーブが設けられ、
各スリーブには、外周に一方の嵌合案内歯が、そして各中間ギアの内周には他方の嵌合案内歯が形成され、一方の嵌合案内歯が他方の嵌合案内歯に噛み合って複数の嵌合案内歯の形成が可能とされ、
いずれかの嵌合案内歯の形成に対応して変速段の1つが形成され、
いずれかの中間軸の回転数、もしくは双方の中間軸の回転数を制御する回転数制御手段が設けられた変速機の制御手段であって、
回転数制御手段によって、一方の中間軸の回転数が他方の中間軸の回転数に近づける制御がなされ、いずれかのスリーブが駆動手段に駆動され、これに伴って駆動方向にある中間ギアとの間で嵌合案内歯の噛み合いが形成されること
を特徴とする制御手段。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−255703(P2010−255703A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104657(P2009−104657)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(303025663)株式会社日立ニコトランスミッション (25)
【Fターム(参考)】