説明

多層基板のおよびその製造方法

【課題】 片側の表面のみに電極を有する多層基板であっても、製造工程を簡素化することが可能な多層基板およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルム23に導体パターン22を形成した後導体パターン22の表面にニッケル金めっき処理による表面処理層32を形成するとともに、ビアホール24内に導電ペースト50を充填した片面導体パターンフィルム31と、表面処理層32の形成以外は片面導体パターンフィルム31と同様の工程により形成した片面導体パターンフィルム21とを積層した((e)に図示)後、両面から加熱プレスして多層基板100を得る((f)に図示)。このように、片面導体パターンフィルム21、31のみから、片側の表面のみに電極33を有する多層基板100が製造でき、製造工程を簡素化することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、多層基板およびその製造方法に関し、特に、基板の片側の表面のみに実装素子の接合に利用される電極を有する多層基板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、層間接続をした導体パターンを両面に有する所謂両面基板を用いて両面に導体パターンを有する多層基板を形成し、この多層基板の実装素子を接合しない片側の表面に絶縁層を形成する製造方法により得られる、基板の片側の表面のみに実装素子の接合に利用される電極を有する多層基板が知られている。
【0003】そして、その製造方法の一例としては、層間接続をした熱硬化性樹脂基材(例えば熱硬化性樹脂フィルム基材)を備える複数の両面基板を製造し、この複数の両面基板を層間接続可能な処理をした未硬化状態(Bステージ状態)の熱硬化性樹脂フィルムを介して積層するとともに、この積層体の片面を覆うように未硬化状態の熱硬化性樹脂フィルムを積層した後加熱プレスすることで、基板の片面のみに電極を有する多層基板を製造する方法がある。
【0004】また他の例としては、層間接続をした熱硬化性樹脂基材の両面基板を製造し、この両面基板の両面に、層間接続可能な処理をした未硬化状態の熱硬化性樹脂フィルムおよび導体箔を積層加熱プレスした後、導体箔をエッチング処理等によりパターン形成し、層間接続可能な処理をした未硬化状態の熱硬化性樹脂フィルムおよび導体箔の積層加熱プレスと導体箔のパターン形成を繰り返して所望層数の基板を形成し、さらにこの基板の片面を覆うように未硬化状態の熱硬化性樹脂フィルムを積層した後加熱プレスすることで、基板の片面のみに電極を有する多層基板を製造する方法がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の従来技術は、両面基板と未硬化状態の熱硬化性樹脂フィルムとをそれぞれ製造し、これらを組み合わせて基板の片面のみに電極を有する多層基板を製造する方法であったり、両面基板と未硬化状態の熱硬化性樹脂フィルムとをそれぞれ製造し、これらに導体箔を組み合わせて基板の片面のみに電極を有する多層基板を製造する方法であるため、製造工程が非常に複雑であるという問題がある。
【0006】本発明は上記点に鑑みてなされたもので、基板の片側の表面のみに実装素子の接合に利用される電極を有する多層基板であっても、製造工程を簡素化することが可能な多層基板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明の多層基板では、熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルム(23)の片面にのみ導体パターン(22)が形成され、かつ所望の位置に層間接続材料(50)が充填されたビアホール(24)を備える片面導体パターンフィルム(21、31)のみを、導体パターン(22)が形成された面と導体パターン(22)が形成されていない面が向かい合うように複数枚積層したものであって、片側の表面のみにおいて導体パターン(22)による電極(33)が形成されていることを特徴としている。
【0008】これによると、熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルム(23)の片面のみに導体パターン(22)が形成された片面導体パターンフィルム(21、31)のみを積層し、片側の表面のみに導体パターン(22)による電極(33)が形成された多層基板とすることができる。従って、片面導体パターンフィルム(21、31)以外のフィルム等を準備、加工する必要がないので、製造工程を簡素化することが可能である。
【0009】また、請求項2に記載の発明の多層基板では、電極(33)を形成している導体パターン(22)は、その表面に、電極(33)に実装素子を接合するときに用いられる接合材の接合強度を向上するための表面処理層(32)が形成されていることを特徴としている。
【0010】これによると、多層基板の電極(33)に実装素子を接合したときの接合信頼性を向上することが可能である。
【0011】また、請求項3に記載の発明の多層基板では、電極(33)が形成されている片側の表面に対向する側の表面に、放熱部材(46)が接続されていることを特徴としている。
【0012】これによると、多層基板からの放熱特性を向上することが可能である。
【0013】また、請求項4に記載の発明の多層基板では、放熱部材(46)が接続された側に位置する片面導体パターンフィルム(21a)が備えるビアホール(24a)内の層間接続材料(50)は、放熱部材(46)に接続し、放熱部材(46)に接続した層間接続材料(50)を介して、基板から放熱部材(46)に熱伝導する構成であることを特徴としている。
【0014】これによると、多層基板側の熱を、放熱部材(46)に接続した層間接続材料(50)を介して、放熱部材(46)に伝導することができる。従って、多層基板からの放熱特性をさらに向上することが可能である。
【0015】また、請求項5に記載の発明の多層基板のように、放熱部材(46)に接続した層間接続材料(50)は、基板内において電気配線回路を構成する導体パターン(22)に対し電気的に絶縁し、電気配線回路に組み込まない構成とすることもできるし、請求項6に記載の発明の多層基板のように、放熱部材(46)に接続した層間接続材料(50)は、基板内において電気配線回路をの一部を構成するようにすることもできる。
【0016】また、請求項7に記載の発明の多層基板の製造方法では、熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルム(23)の片面にのみ導体パターン(22)が形成され、かつ所望の位置に層間接続材料(50)が充填されたビアホール(24)を備える片面導体パターンフィルム(21、31)のみを、導体パターン(22)が形成された面と導体パターン(22)が形成されていない面が向かい合うように複数枚積層する積層工程と、この積層工程後に、積層体の両面から加圧しつつ加熱することにより、各片面導体パターンフィルム(21、31)相互の接着を行なう接着工程を備え、片面導体パターンフィルム(21、31)からなる多層基板の片側の表面のみにおいて導体パターン(22)による電極(33)が形成されることを特徴としている。
【0017】これによると、熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルム(23)の片面のみに導体パターン(22)が形成された片面導体パターンフィルム(21、31)のみを複数枚一括して接着し、片側の表面のみに導体パターン(22)による電極(33)が形成された多層基板を製造することができる。従って、片面導体パターンフィルム(21、31)以外のフィルム等を準備、加工する必要がないとともに、片面導体パターンフィルム(21、31)を順次接着していく必要がないので、製造工程を簡素化することが可能である。
【0018】また、請求項8に記載の発明の多層基板の製造方法では、接着工程において、樹脂フィルム(23)を構成する熱可塑性樹脂の弾性率が1〜1000MPaとなる温度で加熱することを特徴としている。
【0019】これによると、樹脂フィルム(23)の弾性率を1〜1000MPaと充分に低下させた状態で加圧することにより、各片面導体パターンフィルム(21、31)相互を確実に接着することができる。
【0020】また、請求項9に記載の発明の多層基板の製造方法では、積層工程を行なう前に、電極(33)を形成する導体パターン(22)の表面に、電極(33)に実装素子を接合するときに用いられる接合材の接合強度を向上するための表面処理を施す表面処理工程を備えることを特徴としている。
【0021】これによると、多層基板の電極(33)に実装素子を接合したときの接合信頼性を向上することが可能である。
【0022】また、請求項10に記載の発明の多層基板の製造方法では、層間接続材料(50)は導電ペースト(50)であり、片面導体パターンフィルム(21、31)には、導体パターン(22)を底面とする有底ビアホール(24)が形成され、その有底ビアホール(24)内に導電ペースト(50)を充填することにより、この導電ペースト(50)を介して隣接する片面導体パターンフィルム(21、31)同士の導体パターン(22)を導通させることを特徴としている。
【0023】これによると、多層基板の各導体パターン(22)層間をビアホール(24)内の導電ペースト(50)により確実に導通させることができる。
【0024】また、請求項11に記載の発明の多層基板の製造方法では、積層された片面導体パターンフィルム(21、21a、31)における樹脂フィルム(23)が表面をなしている側の表面に、放熱部材(46)を接続する接続工程を備えることを特徴としている。
【0025】これによると、多層基板からの放熱特性を向上することが可能である。
【0026】また、請求項12に記載の発明の多層基板の製造方法では、放熱部材(46)を接続する接続工程において、放熱部材(46)が接続される片面導体パターンフィルム(21a)に備えられたビアホール(24a)に充填された層間接続材料(50)が放熱部材(46)に接続し、この層間接続材料(50)を介して、基板から放熱部材(46)に熱伝導する構成が形成されることを特徴としている。
【0027】これによると、多層基板(100)側の熱を、放熱部材(46)に接続した層間接続材料(50)を介して、放熱部材(46)に伝達することができる。従って、多層基板からの放熱特性をさらに向上することが可能である。
【0028】また、請求項13に記載の発明の多層基板の製造方法では、層間接続材料(50)は導電ペースト(50)であり、放熱部材(46)が接続する片面導体パターンフィルム(21a)には、導体パターン(22)を底面とする有底ビアホール(24a)が形成され、その有底ビアホール(24a)内に導電ペースト(50)を充填することにより、この導電ペースト(50)を介して片面導体パターンフィルム(21a)の導体パターン(22)と放熱部材(46)とを接続させることを特徴としている。
【0029】このように、放熱部材(46)に接続したビアホール(24a)内の導電ペースト(50)により、多層基板からの放熱特性を向上することができる。
【0030】なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示す。
【0031】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0032】(第1の実施形態)図1は、本実施形態における多層基板の製造工程を示す工程別断面図である。
【0033】図1(a)において、21は絶縁基材である樹脂フィルム23の片面に貼着された導体箔(本例では厚さ18μmの銅箔)をエッチングによりパターン形成した導体パターン22を有する片面導体パターンフィルムである。本例では、樹脂フィルム23としてポリエーテルエーテルケトン樹脂65〜35重量%とポリエーテルイミド樹脂35〜65重量%とからなる厚さ25〜75μmの熱可塑性樹脂フィルムを用いている。
【0034】図1(a)に示すように、導体パターン22の形成が完了すると、後述する片面導体パターンフィルムの積層工程において最も外側に位置し、導体パターン22により電極33が形成される片面導体パターンフィルムを、めっき処理液槽に浸漬させ導体パターン22の表面にニッケルめっきおよび金めっきを施す所謂ニッケル金めっき処理を行ない、図1(b)に示すような導体パターン22の表面に表面処理層32を形成した片面導体パターンフィルム31を得る。
【0035】ここでニッケル金めっき処理が本実施形態における表面処理である。この表面処理は、電極33に実装素子を半田等の接合材で接合するときの接合強度の向上を目的に行なっている。
【0036】図1(a)に示すように、片面導体パターンフィルム21に導体パターン22の形成が完了すると、次に、図1(c)に示すように、樹脂フィルム23側から炭酸ガスレーザを照射して、導体パターン22を底面とする有底ビアホールであるビアホール24を形成する。ビアホールの形成は、炭酸ガスレーザの出力と照射時間等を調整することで、導体パターン22に穴を開けないようにしている。
【0037】ビアホール24の形成には、炭酸ガスレーザ以外にエキシマレーザ等が使用可能である。レーザ以外のドリル加工等のビアホール形成方法も可能であるが、レーザビームで穴あけ加工すると、微細な径で穴あけでき、導体パターン22にダメージを与えることが少ないため好ましい。
【0038】図1(c)に示すように、ビアホール24の形成が完了すると、次に、図1(d)に示すように、ビアホール24内に層間接続材料である導電ペースト50を充填する。導電ペースト50は、銅、銀、錫等の金属粒子にバインダ樹脂や有機溶剤を加え、これをミキサーによって混練しペースト化したものである。
【0039】導電ペースト50は、スクリーン印刷機により、片面導体パターンフィルム21のビアホール24内に印刷充填される。ビアホール24内への導電ペースト50の充填は、本例ではスクリーン印刷機を用いたが、確実に充填ができるのであれば、ディスペンサ等を用いる他の方法も可能である。
【0040】なお、図示は省略しているが、図1(b)で示した片面導体パターンフィルム31についても、図1(c)、(d)に示す工程と同様の工程により、ビアホール24の形成および導電ペースト50の充填が行なわれる。
【0041】片面導体パターンフィルム21、31のビアホール24内への導電ペースト50の充填が完了すると、図1(e)に示すように、片面導体パターンフィルム21を導体パターン22が設けられた側を上側として複数枚(本例では3枚)積層するとともに、これらの上方側に片面導体パターンフィルム31を導体パターン22が設けられた側を上側として積層する。
【0042】ここで、最下層に位置する片面導体パターンフィルム21には、ビアホール24は形成していない。
【0043】図1(e)に示すように片面導体パターンフィルム21および片面導体パターンフィルム31を積層したら、これらの上下両面から真空加熱プレス機により加熱しながら加圧する。本例では、250〜350℃の温度に加熱し1〜10MPaの圧力で加圧した。
【0044】これにより、図1(f)に示すように、各片面導体パターンフィルム21、31相互が接着される。樹脂フィルム23が熱融着して一体化するとともに、ビアホール24内の導電ペースト50により隣接する導体パターン22の層間接続が行なわれ、片側の表面に電極33を備える多層基板100が得られる。各樹脂フィルム23は同じ熱可塑性樹脂材料によって形成されているので、加熱により軟化し加圧されることで確実に一体化することができる。
【0045】樹脂フィルム23は同じ熱可塑性樹脂材料によって形成されており、真空加熱プレス機により加圧しつつ加熱されているとき、樹脂フィルム23の弾性率は約5〜40MPaに低下している。また、導体パターン22および導電ペースト50は、250℃以上に加熱されることで表面の活性度が向上している。従って、各樹脂フィルム23相互等を確実に接着できるとともに、導体パターン22および導電ペースト50と樹脂フィルム23とを確実に接着することができる。
【0046】なお、加熱プレス時の樹脂フィルム23の弾性率は1〜1000MPaであることが好ましい。弾性率が1000MPaより大きいと樹脂フィルム23間が熱融着し難く、加圧により導体パターン22に大きな応力が加わり断線等の不具合が発生し易い。また、弾性率が1MPaより小さいと加圧により樹脂フィルム23が流れ易く、導体パターン22が移動したりしてプリント基板100を形成し難い。
【0047】上述の多層基板の製造方法によれば、樹脂フィルム23の片面のみに導体パターン22が形成された片面導体パターンフィルム21、31を積層し、これを加熱プレスすることで、片側の表面のみに実装素子の接合に利用される電極33を有する多層基板を製造することができる。
【0048】従って、片面導体パターンフィルム21、31のみから多層基板100を形成でき、加工工程内において片面導体パターンフィルム以外のフィルム等を準備したり加工したりする必要がない。このようにして、製造工程を簡素化することができる。
【0049】また、1回の加熱プレスにより各片面導体パターンフィルム21、31相互の接着を一括して行なうことができる。従って、加工時間を短縮することができ、製造工程を一層簡素化することができる。
【0050】また、実装素子を接合しない側の面の絶縁は、最下層に配置された片面導体パターンフィルム21の樹脂フィルム23により行なわれるため、絶縁層を形成するためのフィルム等を特別に設ける必要もない。
【0051】(第2の実施形態)次に、第2の実施形態について図に基づいて説明する。
【0052】第2の実施形態は、第1の実施形態に対し、電極33を設けた面に対向する面に放熱部材を接続したものである。なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。
【0053】図2(a)〜(d)に示す導体パターン22形成、表面処理層32形成、ビアホール24形成および導電ペースト50充填の工程は、図1(a)〜(d)に示す第1の実施形態と同様の工程である。
【0054】片面導体パターンフィルム21、21a、31のビアホール24内への導電ペースト50の充填が完了すると、図2(e)に示すように、片面導体パターンフィルム21、21aを導体パターン22が設けられた側を上側として複数枚(本例では3枚)積層するとともに、これらの上方側に片面導体パターンフィルム31を導体パターン22が設けられた側を上側として積層する。
【0055】なお、片面導体パターンフィルム21aは、片面導体パターンフィルム21と同一の工程により形成されたものであり、ビアホール24、24a内に導電ペースト50が充填されている。
【0056】そしてさらに、積層された複数枚の片面導体パターンフィルム21、21a、31の下方側には、アルミニウム合金製のヒートシンク46を積層する。ヒートシンク46は本実施形態における放熱部材である。なお、ヒートシンク46の上方側の面には、後述する片面導体パターンフィルム21aとの接着時の接着力向上を目的として粗化する処理が施されている。粗化面を形成する処理としては、バフ研磨処理、ショットブラスト処理、アルマイト処理等を採用することができる。
【0057】図2(e)に示すように片面導体パターンフィルム21、片面導体パターンフィルム21a、片面導体パターンフィルム31およびヒートシンク46を積層したら、これらの上下両面から真空加熱プレス機により加熱しながら加圧する。
【0058】これにより、図2(f)に示すように、各片面導体パターンフィルム21、21a、31およびヒートシンク46相互が接着される。樹脂フィルム23が熱融着して一体化するとともに、ビアホール24、24a内の導電ペースト50により隣接する導体パターン22の層間接続が行なわれ、片側の表面に電極33を備える多層基板100が得られる。また、多層基板100の電極33が設けられた面に対向する面にはヒートシンク46が接続される。
【0059】さらに、図2(e)に示す積層工程において下側に位置する2枚の片面導体パターンフィルム21aの図中中央に位置するビアホール24a内に充填された導電ペースト50が、図2(f)に示すように多層基板100に接続したヒートシンク46に直接あるいは間接的に接続する。
【0060】最下層の片面導体パターンフィルム21a(ヒートシンク46が接続する片面導体パターンフィルム21a)のビアホール24a内に充填された導電ペースト50は、ヒートシンク46に直接接続し、最下層の片面導体パターンフィルム21aに形成された導体パターン22とヒートシンク46とを接続する。
【0061】また、下方から2枚目の片面導体パターンフィルム21aのビアホール24a内に充填された導電ペースト50は、下方から2枚目の片面導体パターンフィルム21aに形成された導体パターン22と最下層の片面導体パターンフィルム21aに形成された導体パターン22とを接続する。
【0062】すなわち、下方から2枚目の片面導体パターンフィルム21aのビアホール24a内に充填された導電ペースト50は、最下層の片面導体パターンフィルム21aの導体パターン22およびビアホール24a内の導電ペースト50を介して、ヒートシンク46に間接的に接続する。
【0063】このヒートシンク46に直接あるいは間接的に接続した導電ペースト50およびこれを充填するビアホール24aからなる符号44の構成は所謂サーマルビアであり、サーマルビア44は多層基板100側の熱をヒートシンク46に伝導するために設けられている。
【0064】なお、本実施形態におけるサーマルビア44およびサーマルビア44に接続した導体パターン22は、多層基板100内において電気配線回路を構成する導体パターン22等に対し電気的に絶縁されている。すなわち、ヒートシンク46に接続したサーマルビア44の導電ペースト50は、電気配線回路に組み込まれずヒートシンク46への熱伝導のためにのみ設けられている。従って、多層基板100は電極33が設けられた面に対向する面において、電気配線回路に対し絶縁状態とすることができる。
【0065】また、サーマルビア44を構成するビアホール24aは、他のビアホール24と同一の径(本例では直径100μm)で形成され、図2(f)にも示すようにサーマルビア44を複数個並設している。熱伝導性を向上するためには、サーマルビア44を構成するビアホール24aの径を大きくする方法があるが、この方法を採用すると、サーマルビア44設置部位において、多層基板100とヒートシンク46との接着性が著しく低下し好ましくない。
【0066】本例のように、複数個のサーマルビア44を並設して熱伝導性を向上させれば、多層基板100とヒートシンク46との接着性の低下を抑制することができるという利点がある。
【0067】樹脂フィルム23は同じ熱可塑性樹脂材料によって形成されており、真空加熱プレス機により加圧しつつ加熱されているとき、樹脂フィルム23の弾性率は約5〜40MPaに低下している。また、導体パターン22、導電ペースト50およびヒートシンク46は、250℃以上に加熱されることで表面の活性度が向上している。従って、各樹脂フィルム23相互等を確実に接着できるとともに、導体パターン22、導電ペースト50およびヒートシンク46と樹脂フィルム23とを確実に接着することができる。
【0068】なお、加熱プレス時の樹脂フィルム23の弾性率は1〜1000MPaであることが好ましい。弾性率が1000MPaより大きいと樹脂フィルム23間が熱融着し難く、加圧により導体パターン22に大きな応力が加わり断線等の不具合が発生し易い。また、弾性率が1MPaより小さいと加圧により樹脂フィルム23が流れ易く、導体パターン22が移動したりしてプリント基板100を形成し難い。
【0069】上述の多層基板の製造方法によれば、樹脂フィルム23の片面のみに導体パターン22が形成された片面導体パターンフィルム21、21a、31を積層し、これを加熱プレスすることで、片側の表面のみに実装素子の接合に利用される電極33を有する多層基板を製造することができる。
【0070】従って、片面導体パターンフィルム21、21a、31のみから多層基板100を形成でき、加工工程内において片面導体パターンフィルム以外のフィルム等を準備したり加工したりする必要がない。このようにして、製造工程を簡素化することができる。
【0071】また、1回の加熱プレスにより各片面導体パターンフィルム21、21a、31相互の接着を一括して行なうことができるとともに、多層基板100にヒートシンク46を接続することができる。さらに、同時に、ヒートシンク46にサーマルビア44を接続することができる。従って、放熱特性が良好な多層基板の加工時間を短縮することができ、製造工程を一層簡素化することができる。
【0072】また、片面導体パターンフィルム21、21a、31およびヒートシンク46を積層する前に、片面導体パターンフィルム31の導体パターン22にニッケル金めっき処理による表面処理層32を形成している。従って、ヒートシンク46を接続した多層基板100をめっき処理液槽に浸漬し、電極33となる導体パターン22に表面処理層32を形成する必要がない。
【0073】多層基板100にヒートシンク46を接続した後に表面処理層32の形成を行なうと、ヒートシンク46が表面処理時にダメージを受け易い。従って、本実施形態のように、ヒートシンク46接続前に表面処理層32の形成を行えば、ヒートシンク46への樹脂コーティング等の保護処理を行なう必要もないという利点がある。
【0074】なお、本実施形態における各構成の材質や加熱プレス等の加工条件は、第1の実施形態と同様である。
【0075】(他の実施形態)上記各実施形態において、樹脂フィルム23としてポリエーテルエーテルケトン樹脂65〜35重量%とポリエーテルイミド樹脂35〜65重量%とからなる樹脂フィルムを用いたが、これに限らず、ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂に非導電性フィラを充填したフィルムであってもよいし、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)もしくはポリエーテルイミド(PEI)を単独で使用することも可能である。
【0076】さらに、熱可塑性ポリイミド、または所謂液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂を用いてもよい。加熱プレス時の加熱温度において弾性率が1〜1000MPaであり、後工程である半田付け工程等で必要な耐熱性を有する樹脂フィルムであれば好適に用いることができる。
【0077】また、上記各実施形態において、片面導体パターンフィルム31の導体パターン22にのみ表面処理層32を形成したが、片面導体パターンフィルム21、21aの導体パターン22にも形成するものであってもよい。
【0078】また、上記各実施形態において、実装素子を接合するときに用いられる接合材の接合強度を向上するために電極33を形成する導体パターン22に施される表面処理は、ニッケル金めっき処理であったが、耐熱プリフラックス処理やパラジウムめっき処理等の表面処理であってもよい。また、充分な接合材の接合強度が得られるものであれば、電極33を形成する導体パターン22に表面処理層32を形成する必要はない。
【0079】また、上記第2の実施形態において、放熱部材であるヒートシンク46はアルミニウム合金製であったが、他の金属製であってもよいし、セラミック製等であってもよい。
【0080】また、上記第2の実施形態において、サーマルビア44は、2層にのみ形成したが、これに限定されるものではない。例えば、電極33を形成した面まで接続するサーマルビアを形成し(上記第2の実施形態の場合には、4層にサーマルビアを形成し)、多層基板100の熱をヒートシンク46に伝導するばかりでなく、電極33に接合された実装素子の熱をもヒートシンク46に伝導するものであってもよい。
【0081】また、上記第2の実施形態において、サーマルビア44は、多層基板100内において電気配線回路を構成する導体パターン22等から絶縁されていたが、電気配線回路の一部を構成するものであってもよい。例えばヒートシンク46が銅合金等により形成され接地電位となる部位に配置され使用される場合には、サーマルビア44が電気配線回路の一部となり、ヒートシンク46と電気的にも接続して接地状態となるものであってもよい。
【0082】また、ヒートシンク46がセラミック製等の絶縁体である場合には、サーマルビア44が電気配線回路の一部であっても、電極33が設けられた面に対向する面において、電気配線回路に対し絶縁状態とすることができるとともに、良好な放熱特性を確保することができる。
【0083】また、上記第2の実施形態において、アルミニウム合金製のヒートシンク46を、多層基板100の電極33が設けられた面に対向する面に直接接続したが、ヒートシンク46の多層基板100への接続面に、接着性や熱伝導性の向上を目的として、例えばポリエーテルイミドシート、熱伝導性フィラーを含有した熱硬化性樹脂シートもしくは熱伝導性フィラーを含有した熱可塑性樹脂シート等の所謂ボンディングシートを形成したものを接続するものであってもよい。
【0084】ただし、ヒートシンクがサーマルビアとともに電気配線回路の一部を構成する場合には、サーマルビアがヒートシンクと接続する部位のボンディングシートは除去する必要がある。
【0085】また、上記各実施形態において、プリント基板100は4層基板であったが、複数の導体パターン層を有するものであれば、層数が限定されるものではないことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における第1の実施形態の多層基板の概略の製造工程示す工程別断面図である。
【図2】本発明における第2の実施形態の多層基板の概略の製造工程示す工程別断面図である。
【符号の説明】
21、21a、31 片面導体パターンフィルム
22 導体パターン
23 樹脂フィルム(絶縁基材)
24、24a ビアホール(有底ビアホール)
32 表面処理層
33 電極
44 サーマルビア
46 ヒートシンク(放熱部材)
50 導電ペースト(層間接続材料)
100 多層基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】 熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルム(23)の片面にのみ導体パターン(22)が形成され、かつ所望の位置に層間接続材料(50)が充填されたビアホール(24)を備える片面導体パターンフィルム(21、31)のみを、前記導体パターン(22)が形成された面と前記導体パターン(22)が形成されていない面が向かい合うように複数枚積層したものであって、片側の表面のみにおいて前記導体パターン(22)による電極(33)が形成されていることを特徴とする多層基板。
【請求項2】 前記電極(33)を形成している前記導体パターン(22)は、その表面に、前記電極(33)に実装素子を接合するときに用いられる接合材の接合強度を向上するための表面処理層(32)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の多層基板。
【請求項3】 前記電極(33)が形成されている前記片側の表面に対向する側の表面に、放熱部材(46)が接続されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の多層基板。
【請求項4】 前記放熱部材(46)が接続された側に位置する前記片面導体パターンフィルム(21a)が備える前記ビアホール(24a)内の前記層間接続材料(50)は、前記放熱部材(46)に接続し、前記放熱部材(46)に接続した前記層間接続材料(50)を介して、基板から前記放熱部材(46)に熱伝導する構成であることを特徴とする請求項3に記載の多層基板。
【請求項5】 前記放熱部材(46)に接続した前記層間接続材料(50)は、基板内において電気配線回路を構成する前記導体パターン(22)に対し電気的に絶縁されていることを特徴とする請求項4に記載の多層基板。
【請求項6】 前記放熱部材(46)に接続した前記層間接続材料(50)は、基板内において電気配線回路をの一部を構成することを特徴とする請求項4に記載の多層基板。
【請求項7】 熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルム(23)の片面にのみ導体パターン(22)が形成され、かつ所望の位置に層間接続材料(50)が充填されたビアホール(24)を備える片面導体パターンフィルム(21、31)のみを、前記導体パターン(22)が形成された面と前記導体パターン(22)が形成されていない面が向かい合うように複数枚積層する積層工程と、この積層工程後に、積層体の両面から加圧しつつ加熱することにより、各片面導体パターンフィルム(21、31)相互の接着を行なう接着工程を備え、前記片面導体パターンフィルム(21、31)からなる多層基板の片側の表面のみにおいて前記導体パターン(22)による電極(33)が形成されることを特徴とする多層基板の製造方法。
【請求項8】 前記接着工程において、前記樹脂フィルム(23)を構成する前記熱可塑性樹脂の弾性率が1〜1000MPaとなる温度で加熱することを特徴とする請求項7に記載の多層基板の製造方法。
【請求項9】 前記積層工程を行なう前に、前記電極(33)を形成する前記導体パターン(22)の表面に、前記電極(33)に実装素子を接合するときに用いられる接合材の接合強度を向上するための表面処理を施す表面処理工程を備えることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の多層基板の製造方法。
【請求項10】 前記層間接続材料(50)は導電ペースト(50)であり、前記片面導体パターンフィルム(21、31)には、前記導体パターン(22)を底面とする有底ビアホール(24)が形成され、その有底ビアホール(24)内に前記導電ペースト(50)を充填することにより、この導電ペースト(50)を介して隣接する片面導体パターンフィルム(21、31)同士の導体パターン(22)を導通させることを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれか1つに記載の多層基板の製造方法。
【請求項11】 前記積層された片面導体パターンフィルム(21、21a、31)における前記樹脂フィルム(23)が表面をなしている側の表面に、放熱部材(46)を接続する接続工程を備えることを特徴とする請求項7ないし請求項10のいずれか1つに記載の多層基板の製造方法。
【請求項12】 前記放熱部材(46)を接続する前記接続工程において、前記放熱部材(46)が接続される前記片面導体パターンフィルム(21a)に備えられた前記ビアホール(24a)に充填された前記層間接続材料(50)が前記放熱部材(46)に接続し、この層間接続材料(50)を介して、基板から前記放熱部材(46)に熱伝導する構成が形成されることを特徴とする請求項11に記載の多層基板の製造方法。
【請求項13】 前記層間接続材料(50)は導電ペースト(50)であり、前記放熱部材(46)が接続する前記片面導体パターンフィルム(21a)には、前記導体パターン(22)を底面とする有底ビアホール(24a)が形成され、その有底ビアホール(24a)内に前記導電ペースト(50)を充填することにより、この導電ペースト(50)を介して前記片面導体パターンフィルム(21a)の前記導体パターン(22)と前記放熱部材(46)とを接続させることを特徴とする請求項12に記載の多層基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2003−23250(P2003−23250A)
【公開日】平成15年1月24日(2003.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−206889(P2001−206889)
【出願日】平成13年7月6日(2001.7.6)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】