説明

多種燃料内燃機関の制御装置

【課題】航続距離を精度良く推定すること。
【解決手段】燃料容器に種別毎に貯留された複数種類の燃料F1,F2が燃焼室CC内にて運転条件に応じた燃料含有比率となるよう個別に又は混合して供給される多種燃料内燃機関の制御装置(電子制御装置1)において、その各燃料F1,F2の残存量及び過去の運転条件又は将来の運転条件に基づいて車輌の航続距離の推定を行う航続距離推定手段と、この航続距離推定手段により推定された航続距離の情報を表示手段に対して表示させる走行情報表示制御手段と、を備えること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、性状の異なる少なくとも2種類の燃料の内の少なくとも1種類を燃焼室に導いて又は当該少なくとも2種類の燃料からなる混合燃料を燃焼室に導いて運転される多種燃料内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、性状の異なる複数種類の燃料を用いて運転される所謂多種燃料内燃機関が知られている。例えば、下記の特許文献1には、別個の燃料タンクに貯留されているガソリンと軽油の混合燃料を燃焼室に供給して運転される多種燃料内燃機関について開示されている。この多種燃料内燃機関は、機関始動時に着火性の高い軽油の混合割合を上昇させ、これにより生成された高着火性の混合燃料を用いて機関始動時の拡散燃焼運転を実現させている。
【0003】
また、下記の特許文献2には1つの燃料タンクに貯留された混合燃料の残量とその混合燃料の満量時の走行可能距離を表示可能な燃料表示装置について記載されており、その燃料表示装置においては、その走行可能距離を混合燃料の混合比に基づいて算出している。
【0004】
尚、下記の特許文献3には1つの燃料タンク内の残量燃料の警告の判定基準を当該残量燃料の発熱量に応じて変更する残量燃料警報装置が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−68061号公報
【特許文献2】特開平5−1931号公報
【特許文献3】特開平3−285119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上記特許文献1に開示された多種燃料内燃機関においては、特定の燃料の使用頻度が高くなって各燃料の残存量に大きな差が生じた場合、その後、最適な運転を行えなくなってしまう可能性がある。例えば、特定の燃料固有の性状に依存するモードでの運転が継続されてその特定の燃料が消費し尽くされてしまった場合には、別の燃料が残っていたとしても、その別の燃料による以後の運転が不可能になってしまう虞がある。例を挙げるとすれば、高負荷用燃料で軽負荷運転を行えない多種燃料内燃機関の場合には、個別に貯留されている高負荷用燃料と軽負荷用燃料の内の軽負荷用燃料が消尽されると、高負荷用燃料が残存していても以後の運転が不可能になってしまう。従って、そのような理由による運転停止を回避するには、運転者に対して給油を促す為の情報提供が必要になる。その情報としては燃料の残存量等を利用できるが、その最たるものとしては、運転停止状態に陥る可能性のあることを運転者に対して明確に認識させることのできる現時点からの航続距離が適している。
【0007】
しかしながら、上記特許文献2の燃料表示装置は、1つの燃料タンク内に貯留された混合燃料の混合比から航続距離(走行可能距離)を求めるものであり、その混合比を機関回転数や機関負荷等の機関状態に応じて適宜変更しながら運転し続ける特許文献1の多種燃料内燃機関に対して適用したとしても、精度の高い航続距離の情報を得ることはできない。尚、この特許文献1の多種燃料内燃機関においては、変更された混合比に応じて燃焼室内の燃料の発熱量が変わるので、上記特許文献3の残量燃料警報装置を適用することもできない。
【0008】
そこで、本発明は、かかる従来例の有する不都合を改善し、精度の高い航続距離の情報を得ることのできる多種燃料内燃機関の制御装置の提供を第1の目的とし、その精度良く推定された航続距離と燃料の残存量に適した運転を行うことのできる多種燃料内燃機関の制御装置の提供を第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記第1の目的を達成する為、請求項1記載の発明では、燃料容器に種別毎に貯留された複数種類の燃料が燃焼室内にて運転条件に応じた燃料含有比率となるよう個別に又は混合して供給される多種燃料内燃機関の制御装置において、その各燃料の残存量及び過去の運転条件又は将来の運転条件に基づいて車輌の航続距離の推定を行う航続距離推定手段と、この航続距離推定手段により推定された航続距離の情報を表示手段に対して表示させる走行情報表示制御手段と、を備えている。
【0010】
この請求項1記載の多種燃料内燃機関の制御装置においては、各燃料の残存量の情報と過去の各燃料の消費履歴情報とを用いることによって、過去と同じ運転を行ったときの航続距離を精度良く推定することができる。一方、この多種燃料内燃機関の制御装置においては、各燃料の残存量の情報と将来の各燃料の消費履歴情報とを用いることによって、過去の運転履歴に囚われることなく精度の高い航続距離を推定することができる。
【0011】
また、上記第2の目的を達成する為、請求項2記載の発明では、上記請求項1記載の多種燃料内燃機関の制御装置において、各燃料の残存量の情報及び過去の各燃料の消費履歴情報又は将来の各燃料の消費予測情報を用いて先に消尽される燃料の推定を行う消尽燃料推定手段と、通常運転モードと車輌の航続距離を延長させる待避運転モードとの間の切り替えが可能で、且つ、運転条件を変更させることによって先に消尽される燃料の消費を抑えて航続距離を延長できるか否か判定可能な運転モード切替手段と、を設けている。
【0012】
この請求項2記載の多種燃料内燃機関の制御装置においては、不足する燃料が存在しているときに航続距離を延ばした多種燃料内燃機関の運転を行うことができる。
【0013】
また、上記第2の目的を達成する為、請求項3記載の発明では、上記請求項2記載の多種燃料内燃機関の制御装置において、運転モード切替手段は、消尽燃料推定手段により高負荷用燃料と軽負荷用燃料の内の高負荷用燃料が先に消尽されると推定された場合、運転条件を変更させることで通常運転モードでの航続距離が延長可能か否か判定するよう構成している。
【0014】
つまり、この請求項3記載の多種燃料内燃機関の制御装置においては、待避運転状態となる時機を遅らせることができるので、通常運転モードの良好な出力性能を保った状態で可能な限り長く多種燃料内燃機関を運転することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る多種燃料内燃機関の制御装置は、過去又は将来の運転条件を参照することによって精度の高い航続距離の情報を得ることができる。従って、この多種燃料内燃機関の制御装置によれば、その精度の高い航続距離の情報を提供された運転者がその航続距離に到達するまでに補給を行えば、燃料不足によって運転不可能になってしまうという事態を回避することができる。また、この多種燃料内燃機関の制御装置によれば、その高精度な航続距離の情報を見て運転者が必要に応じた運転モードを選択できるので、例えば航続距離Dと給油施設との関係に応じた良好な運転を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明に係る多種燃料内燃機関の制御装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
本発明に係る多種燃料内燃機関の制御装置の実施例1を図1から図3に基づいて説明する。以下においては、適用対象たる多種燃料内燃機関の一例を説明しつつ本実施例1の制御装置について詳述する。
【0018】
ここで例示する多種燃料内燃機関とは、性状の異なる少なくとも2種類の燃料の内の少なくとも1種類を燃焼室に導いて又は当該少なくとも2種類の燃料からなる混合燃料を燃焼室に導いて運転される内燃機関である。本実施例1にあっては、後者の多種燃料内燃機関を例に挙げて説明する。
【0019】
この多種燃料内燃機関は、図1に示す電子制御装置(ECU)1によって燃焼制御等の各種制御動作が実行される。その電子制御装置1は、図示しないCPU(中央演算処理装置),所定の制御プログラム等を予め記憶しているROM(Read Only Memory),そのCPUの演算結果を一時記憶するRAM(Random Access Memory),予め用意された情報等を記憶するバックアップRAM等で構成されている。尚、その図1においては1気筒のみを図示しているが、本発明は、これに限らず、多気筒の多種燃料内燃機関にも適用可能である。本実施例1においては、複数の気筒を具備しているものとして説明する。
【0020】
この多種燃料内燃機関には、燃焼室CCを形成するシリンダヘッド11,シリンダブロック12及びピストン13が備えられている。ここで、そのシリンダヘッド11とシリンダブロック12は図1に示すヘッドガスケット14を介してボルト等で締結されており、これにより形成されるシリンダヘッド11の下面の凹部11aとシリンダブロック12のシリンダボア12aとの空間内にピストン13が往復移動可能に配置される。そして、上述した燃焼室CCは、そのシリンダヘッド11の凹部11aの壁面とシリンダボア12aの壁面とピストン13の頂面13aとで囲まれた空間によって構成される。
【0021】
本実施例1の多種燃料内燃機関は、機関回転数や機関負荷等の機関状態及び燃焼モードに従って空気と燃料を燃焼室CCに送り込み、その機関状態等に応じた燃焼制御を実行する。その空気については、図1に示す吸気通路21とシリンダヘッド11の吸気ポート11bを介して外部から吸入される。一方、その燃料については、図1に示す燃料供給装置50を用いて供給される。
【0022】
先ず、空気の供給経路について説明する。本実施例1の吸気通路21上には、外部から導入した空気に含まれる塵埃等の異物を除去するエアクリーナ22と、外部からの吸入空気量を検出するエアフロメータ23と、が設けられている。この多種燃料内燃機関においては、そのエアフロメータ23の検出信号が電子制御装置1へと送られ、その検出信号に基づいて電子制御装置1が吸入空気量や機関負荷等を算出する。
【0023】
また、その吸気通路21上におけるエアフロメータ23よりも下流側には、燃焼室CC内への吸入空気量を調節するスロットルバルブ24と、このスロットルバルブ24を開閉駆動するスロットルバルブアクチュエータ25と、が設けられている。本実施例1の電子制御装置1は、そのスロットルバルブアクチュエータ25を機関状態及び燃焼モードに従って駆動制御し、その機関状態等に応じた弁開度(換言すれば、吸入空気量)となるようにスロットルバルブ24の開弁角度を調節させる。例えば、そのスロットルバルブ24は、機関状態や燃焼モードに応じた空燃比を成す為に必要な吸入空気量の空気が燃焼室CCに吸入されるよう調節される。この多種燃料内燃機関においては、そのスロットルバルブ24の弁開度を検出し、その検出信号を電子制御装置1に送信するスロットル開度センサ26が設けられている。
【0024】
更に、吸気ポート11bはその一端が燃焼室CCに開口しており、その開口部分に当該開口を開閉させる吸気バルブ31が配設されている。その開口の数量は1つでも複数でもよく、その開口毎に吸気バルブ31が配備される。従って、この多種燃料内燃機関においては、その吸気バルブ31を開弁させることによって吸気ポート11bから燃焼室CC内に空気が吸入される一方、その吸気バルブ31を閉弁させることによって燃焼室CC内への空気の流入が遮断される。
【0025】
ここで、その吸気バルブ31としては、例えば、図示しない吸気側カムシャフトの回転と弾性部材(弦巻バネ)の弾発力に伴って開閉駆動されるものがある。この種の吸気バルブ31においては、その吸気側カムシャフトとクランクシャフト15の間にチェーンやスプロケット等からなる動力伝達機構を介在させることによってその吸気側カムシャフトをクランクシャフト15の回転に連動させ、予め設定された開閉時期に開閉駆動させる。本実施例1の多種燃料内燃機関においては、このようなクランクシャフト15の回転に同期して開閉駆動される吸気バルブ31を適用する。
【0026】
但し、この多種燃料内燃機関は、その吸気バルブ31の開閉時期やリフト量を変更可能な所謂可変バルブタイミング&リフト機構等の可変バルブ機構を具備してもよく、これにより、その吸気バルブ31の開閉時期やリフト量を機関状態及び燃焼モードに応じた好適なものへと可変させることができるようになる。更にまた、この多種燃料内燃機関においては、かかる可変バルブ機構と同様の作用効果を得るべく、電磁力を利用して吸気バルブ31を開閉駆動させる所謂電磁駆動弁を利用してもよい。
【0027】
続いて、燃料供給装置50について説明する。この燃料供給装置50は、性状の異なる複数種類の燃料を燃焼室CCに導くものである。本実施例1にあっては、性状の異なる2種類の燃料(第1燃料タンク41Aに貯留された第1燃料F1と第2燃料タンク41Bに貯留された第2燃料F2)を予め所定の燃料混合比率で混合して、その混合燃料を燃焼室CC内に直接噴射させるべく構成したものについて例示する。従って、この種の燃料供給装置50においては、その燃料混合比率が燃焼室CC内における夫々の燃料の燃料含有比率となる。
【0028】
具体的に、この燃料供給装置50は、第1燃料F1を第1燃料タンク41Aから吸い上げて第1燃料通路51Aに送出する第1フィードポンプ52Aと、第2燃料F2を第2燃料タンク41Bから吸い上げて第2燃料通路51Bに送出する第2フィードポンプ52Bと、その第1及び第2の燃料通路51A,51Bから各々送られてきた第1及び第2の燃料F1,F2を混ぜ合わせる燃料混合手段53と、この燃料混合手段53にて生成された混合燃料を加圧して高圧燃料通路54に圧送する高圧燃料ポンプ55と、その高圧燃料通路54の混合燃料を夫々の気筒に分配するデリバリ通路56と、このデリバリ通路56から供給された混合燃料を燃焼室CC内に噴射する各気筒の燃料噴射弁57と、を備える。
【0029】
この燃料供給装置50においては、その第1フィードポンプ52A,第2フィードポンプ52B及び燃料混合手段53を電子制御装置1の燃料混合制御手段(燃料含有比率制御手段)に駆動制御させ、これにより、燃焼モードや機関作動点等のような運転条件に応じた燃料混合比率の混合燃料が燃料混合手段53で生成されるように構成する。例えば、この燃料供給装置50は、その第1フィードポンプ52Aと第2フィードポンプ52Bの夫々の吐出量を電子制御装置1の燃料混合制御手段に加減させることによって混合燃料の燃料混合比率を調節してもよく、その燃料混合制御手段の指示に従って燃料混合手段53に第1及び第2の燃料F1,F2の夫々の混合割合を増減させて混合燃料の燃料混合比率を調節してもよい。ここで、本実施例1の燃料混合手段53における燃料混合比率については、機関状態や燃焼モード等に応じて変わる変動値とする。
【0030】
また、この燃料供給装置50は、その高圧燃料ポンプ55及び燃料噴射弁57を電子制御装置1の燃料噴射制御手段に駆動制御させ、これにより、所望の燃料噴射量,燃料噴射時期及び燃料噴射期間等の燃料噴射条件で上記の生成された混合燃料が噴射されるように構成する。例えば、その電子制御装置1の燃料噴射制御手段には、その混合燃料を高圧燃料ポンプ55から圧送させ、機関状態や燃焼モード等に応じた燃料噴射条件で燃料噴射弁57に噴射を実行させる。
【0031】
このようにして燃焼室CCに供給された混合燃料は、上述した空気と相俟って燃焼モードに対応する着火モードの着火動作によって燃焼させられる。そして、その燃焼された後の筒内ガス(燃焼ガス)は、燃焼室CCから図1に示す排気ポート11cへと排出される。ここで、この排気ポート11cには、燃焼室CCとの間の開口を開閉させる排気バルブ61が配設されている。その開口の数量は1つでも複数でもよく、その開口毎に上述した排気バルブ61が配備される。従って、この多種燃料内燃機関においては、その排気バルブ61を開弁させることによって燃焼室CC内から排気ポート11cに燃焼ガスが排出され、その排気バルブ61を閉弁させることによって燃焼ガスの排気ポート11cへの排出が遮断される。
【0032】
ここで、その排気バルブ61としては、上述した吸気バルブ31と同様に、動力伝達機構を介在させたもの、所謂可変バルブタイミング&リフト機構等の可変バルブ機構を具備したものや所謂電磁駆動弁を適用することができる。
【0033】
ところで、内燃機関においては、一般に、拡散燃焼モードと火炎伝播燃焼モードとに燃焼モードが大別され、その夫々に対応する着火モードとして圧縮自着火モードと予混合火花点火モードとが用意される。以下においては、それらを一括して燃焼モードと総称し、各々圧縮自着火拡散燃焼モード、予混合火花点火火炎伝播燃焼モードと称する。
【0034】
先ず、圧縮自着火拡散燃焼モードとは、圧縮行程の燃焼室CC内で形成された高温の圧縮空気の中に高圧の燃料を噴射することによって燃料の一部を自己着火させ、その燃料と空気を拡散混合させながら燃焼を進行させる燃焼形態のことである。ここで、燃焼室CC内の圧縮空気と燃料は瞬時に混合され難いので、燃料の噴射開始直後においては、所々で空燃比に濃淡が生じてしまう。一方、拡散燃焼させる際には一般的に下記の如き着火性に優れた燃料を使用することが好ましく、そのような着火性の良好な燃料は、全噴射量が噴射し終わるのを待つことなく、燃焼に適した空燃比の部分において自ら発火してしまう。これが為、この圧縮自着火拡散燃焼モードにおいては、燃焼に適した空燃比の部分の燃料が先に自己着火し、これにより形成された火炎が残りの燃料と空気を巻き込みながら徐々に燃焼を進行させる。
【0035】
この圧縮自着火拡散燃焼モードで運転させる為には、通常、発火点が圧縮空気の圧縮熱よりも低い着火性の良好な燃料が必要とされる。例えば、その着火性の良い燃料としては、軽油やジメチルエーテルなどが考えられる。更に、近年、軽油の代替燃料としてGTL(Gas To Liquids)燃料が注目されており、このGTL燃料は、所望の性状のものとして生成し易い。これが為、着火性の良い燃料には、着火性を高めるべく生成されたGTL燃料を使用することもできる。このような着火性の良好な燃料は、圧縮自着火拡散燃焼を可能にするだけでなく、圧縮自着火拡散燃焼モードで運転する際に窒素酸化物(NOx)の発生量を減少させ、更に、燃焼時の騒音や振動を抑えることができる。
【0036】
一方、予混合火花点火火炎伝播燃焼モードとは、燃料と空気を予め混ぜ合わせた燃焼室CC内の予混合気に火花点火にて火種を与え、その火種を中心にして火炎を伝播させながら燃焼を進行させる燃焼形態のことである。この予混合火花点火火炎伝播燃焼モードには、均質に混ぜ合わされた予混合気に対して点火を行う均質燃焼や、点火手段の周囲に濃度の高い予混合気を形成すると共に更にその周囲に希薄予混合気を形成し、その濃い予混合気に対して点火を行う成層燃焼などの燃焼形態も含む。
【0037】
この予混合火花点火火炎伝播燃焼モードに適している燃料としては、一般に、ガソリンに代表される蒸発性の高い燃料が考えられる。このような蒸発性の高い燃料としては、ガソリン以外に、蒸発性の高い性状のものとして生成されたGTL燃料やジメチルエーテルなどが知られている。ここで、蒸発性の高い燃料は、空気と混合され易いので、燃料の過濃領域を減少させ、粒子状物質(PM)やスモーク、NOxや未燃炭化水素(未燃HC)の抑制に寄与する。
【0038】
本実施例1の多種燃料内燃機関は、少なくともその双方の燃焼モードでの運転を可能にすべく構成する。従って、本実施例1の多種燃料内燃機関には、予混合火花点火火炎伝播燃焼モードでの運転を可能にする為、予混合気に対して火花点火させる図1に示す点火プラグ71を配設する。この点火プラグ71は、電子制御装置1の点火時期制御手段の指示に従い、予混合火花点火火炎伝播燃焼モード時の機関状態に応じた点火時期になると火花点火を実行する。
【0039】
また、本実施例1においては、第1燃料タンク41A内の第1燃料F1として蒸発性が高く着火性の低い燃料(以下、「高蒸発性燃料」という。)を貯留させ、第2燃料タンク41B内の第2燃料F2として着火性が高く蒸発性の低い燃料(以下、「高着火性燃料」という。)を貯留させておく。例えば、第1燃料F1としてはガソリンが貯留され、第2燃料F2としては軽油が貯留されている。
【0040】
また、本実施例1の電子制御装置1には、燃焼モードを設定する燃焼モード設定手段が用意されている。ここで例示する燃焼モード設定手段には、機関状態(機関回転数Ne及び機関負荷Kl)をパラメータにした図2に示す如き燃焼モードマップデータを利用して、機関状態に応じた最適な燃焼モードを選択させる。例えば、この燃焼モードマップデータは、中高負荷・低回転や高負荷・高回転等の機関状態のときに圧縮自着火拡散燃焼モードで運転させ、軽負荷・低回転や低中負荷・高回転等の機関状態のときに予混合火花点火火炎伝播燃焼モードで運転させるように、予め実験やシミュレーションに基づき設定されたものである。つまり、圧縮自着火拡散燃焼モードに適している第2燃料(高着火性燃料)F2は高負荷用の燃料として捉えることができる一方、予混合火花点火火炎伝播燃焼モードに適している第1燃料(高蒸発性燃料)F1は軽負荷用の燃料として捉えることができる。その機関回転数Neについては、図1に示すクランク角センサ16の検出信号から把握することができる。このクランク角センサ16は、クランクシャフト15の回転角度を検出するセンサである。一方、機関負荷Klについては、上述したエアフロメータ23の検出信号から把握することができる。
【0041】
例えば、圧縮自着火拡散燃焼モードが選択された場合には、第2燃料(高着火性燃料)F2のみ又は当該第2燃料(高着火性燃料)F2の燃焼室CC内における含有割合を第1燃料(高蒸発性燃料)F1の含有割合よりも高くし、その際の機関状態に適した高い着火性の燃料へと変更して運転させる。一方、予混合火花点火火炎伝播燃焼モードが選択された場合には、第1燃料(高蒸発性燃料)F1のみ又は当該第1燃料(高蒸発性燃料)F1の燃焼室CC内における含有割合を第2燃料(高着火性燃料)F2の含有割合よりも高くして、その際の機関状態に適した高い蒸発性の燃料へと変更して運転させる。
【0042】
このように、この燃焼モード設定手段が何れの燃焼モードを選択するかについては、多種燃料内燃機関の機関状態(機関回転数Ne及び機関負荷Kl)に依存している。これが為、例えば、夫々の燃焼モードが同等の割合で選択され続けることは少なく、また、一方の燃焼モードが他方に対して多用される場合もあるので、第1燃料タンク41A内の第1燃料F1と第2燃料タンク41B内の第2燃料F2が均等に消費されるとは限らず、何れかの燃料容器の燃料が先に少なくなってしまう。従って、ここで例示している多種燃料内燃機関においては、軽負荷用燃料たる第1燃料(高蒸発性燃料)F1が消費し尽くされた場合、高負荷用燃料たる第2燃料(高着火性燃料)F2が残存していてもこれ以降軽負荷運転を行えなくなるので、以後の運転が不可能になってしまう。
【0043】
そこで、本実施例1においては、現時点からの車輌の航続距離を運転者に対して明示させ、これにより燃料不足による多種燃料内燃機関の運転停止を回避する。ここでは、現時点からの車輌の航続距離の推定を行う航続距離推定手段と、推定された航続距離の情報を表示手段81に対して表示させる走行情報表示制御手段と、を電子制御装置1に設ける。その表示手段81としては、例えば、インスツルメンタルパネルに配設されたものやモニタなどが考えられる。
【0044】
本実施例1の航続距離推定手段は、第1及び第2の燃料F1,F2の夫々の残存量VL,VHと過去の運転条件とに基づいて航続距離の推定を行うように構成する。
【0045】
その第1燃料F1の残存量VLの情報は、第1燃料タンク41Aに配設した残量計等の燃料残存量検出手段42Aを用いて検出させる。また、第2燃料F2の残存量VHの情報は、第2燃料タンク41Bに配設した残量計等の燃料残存量検出手段42Bを用いて検出させる。
【0046】
一方、過去の運転条件としては過去の燃焼モードや過去の機関作動点等の情報を利用してもよいが、ここでは、これらの運転履歴を端的に且つ一意に表している過去における第1及び第2の燃料F1,F2の夫々の消費履歴情報を過去の運転条件として用いる。この第1及び第2の燃料F1,F2の夫々の消費履歴情報としては、その第1及び第2の燃料F1,F2の過去一定期間における燃費CL,CHの情報を利用する。その第1及び第2の燃料F1,F2の夫々の燃費CL,CHは、例えば、燃料補給後やイグニッションON信号検知後等の所定の起算点からの平均燃費であってもよく、運転中における所定の期間中に求めた平均燃費であってもよい。これら第1及び第2の燃料F1,F2の夫々の燃費CL,CHについては、演算対象の期間中の走行距離の情報と第1及び第2の燃料F1,F2の消費量の情報とから各々求め、電子制御装置1のRAM等の記憶手段に最新のものを記憶させておく。その走行距離の情報は、走行距離計等の走行距離検出手段91から検出された走行距離情報を過去一定期間分だけ積算させることによって得ることができる。また、その第1及び第2の燃料F1,F2の夫々の消費量は、各々の残存量VL,VHの情報から算出させてもよく、演算対象の期間中における第1燃料F1と第2燃料F2の燃料混合比率(燃料混合手段53への制御指令値)及び燃料噴射量の各情報から算出させてもよい。つまり、ここで求められた第1及び第2の燃料F1,F2の夫々の燃費CL,CHは、演算対象の期間中における第1燃料F1と第2燃料F2の燃料混合比率を考慮に入れた値になっている。
【0047】
具体的に、この本実施例1における多種燃料内燃機関の制御装置の航続距離表示動作の一例を図3のフローチャートに基づき説明する。
【0048】
先ず、本実施例1の電子制御装置1は、その航続距離推定手段により、燃料残存量検出手段42A,42Bを用いて第1及び第2の燃料F1,F2の夫々の残存量VL,VHの検出を行うと共に(ステップST1)、これら第1及び第2の燃料F1,F2の過去一定期間における燃費CL,CHの情報をRAM等の記憶手段から読み出す(ステップST2)。
【0049】
続いて、この航続距離推定手段は、過去一定期間における第1及び第2の燃料F1,F2の夫々の消費履歴、換言すれば過去一定期間における多種燃料内燃機関の運転状態(スロットル開度変化や燃料噴射時期変化など)が今後も同様に続くものとして、これ以降第1燃料F1のみでの航続距離DL(=CL・VL)と第2燃料F2のみでの航続距離DH(=CH・VH)とを求めて比較(CH・VH≧CL・VL)する(ステップST3)。即ち、このステップST3においては、過去一定期間と同様の運転状態を継続した場合に、軽負荷用燃料たる第1燃料(高蒸発性燃料)F1と高負荷用燃料たる第2燃料(高着火性燃料)F2の内の何れが先に消費し尽くされるのかを判断する。
【0050】
この航続距離推定手段は、そのステップST3にて肯定判定されて第2燃料F2のみの航続距離DHが第1燃料F1のみの航続距離DL以上になると判断した場合、即ち、軽負荷用燃料たる第1燃料(高蒸発性燃料)F1が先に消尽されると判断した場合、その第1燃料F1のみの航続距離DLを本車輌の残りの航続距離Dとして推定する(ステップST4)。そして、本実施例1の電子制御装置1は、その走行情報表示制御手段により、そのステップST4で推定された航続距離Dの情報を表示手段81に表示させる(ステップST5)。つまり、この場合には、過去一定期間と同様の運転状態を保ちながら第1燃料F1が消尽されるまで(即ち、過去一定期間と同等の第1燃料F1と第2燃料F2の燃料混合比率や燃費CL,CHで当該第1燃料F1が消尽されるまで)の最短の航続距離D(=DL)が運転者に対して示される。従って、この場合には、その航続距離D(=DL)に到達するまでは過去一定期間と同様の運転状態を保つ限り多種燃料内燃機関を運転し続けることができ、その航続距離D(=DL)に到達するまでに少なくとも軽負荷用燃料たる第1燃料(高蒸発性燃料)F1の補給を行えば航続距離Dの延長が可能になる。
【0051】
一方、本実施例1の航続距離推定手段は、上記ステップST3にて否定判定されて第2燃料F2のみの航続距離DHが第1燃料F1のみの航続距離DLよりも短くなると判断した場合、即ち、高負荷用燃料たる第2燃料(高着火性燃料)F2が先に消尽されると判断した場合、第1燃料F1のみを用いて運転するときの燃費CL0の情報をRAM等の記憶手段から読み出す(ステップST6)。その燃費CL0の情報は、例えば、本機関固有のものとして予め設定されている平均的な通常運転状態での燃費情報を利用する。
【0052】
しかる後、この航続距離推定手段は、下記の式1を用いて本車輌の残りの航続距離Dを推定する(ステップST7)。この式1は、過去一定期間と同様の運転状態を保ちながら運転して第2燃料F2が先に無くなり、その後第1燃料F1のみで当該第1燃料F1が消尽されるまで運転したときの最短の航続距離Dを求める演算式である。従って、この場合にも、その航続距離Dに到達するまでは過去一定期間と同様の運転状態を保つ限り多種燃料内燃機関を運転し続けることができ、その航続距離Dに到達するまでに少なくとも軽負荷用燃料たる第1燃料(高蒸発性燃料)F1の補給を行えば航続距離Dの延長が可能になる。
【0053】
D=CH・VH+(VL−CH・VH/CL)・CL0 … (1)
【0054】
そして、本実施例1の走行情報表示制御手段は、上記ステップST5に進み、そのステップST7で推定された航続距離Dの情報を表示手段81に表示させる。これにより、過去一定期間と同様の運転状態を保ったときの最短の航続距離Dが運転者に対して示されるので、この場合には、その航続距離Dに到達するまでは過去一定期間と同様の運転状態を保つ限り多種燃料内燃機関を運転し続けることができ、その航続距離Dに到達するまでに少なくとも軽負荷用燃料たる第1燃料(高蒸発性燃料)F1の補給を行えば航続距離Dの延長が可能になる。
【0055】
このように、本実施例1の多種燃料内燃機関の制御装置によれば、過去一定期間と同様の運転状態を保つ限り多種燃料内燃機関を燃料不足で停止させることのない精度の高い航続距離Dの情報を推定することができる。従って、この高精度な航続距離Dの情報が運転者に提供されることによって、その多種燃料内燃機関は、運転者が過去一定期間と同様の運転状態を保ちつつその航続距離Dに到達するまでに燃料補給を行う限り、燃料不足により運転不可能になってしまうという事態が回避される。
【実施例2】
【0056】
次に、本発明に係る多種燃料内燃機関の制御装置の実施例2を図1,図4及び図5を用いて説明する。
【0057】
前述した実施例1の多種燃料内燃機関の制御装置においては、表示手段81への表示情報によって運転者は自車の最短の航続距離Dを知ることができるが、過去の運転履歴(第1及び第2の燃料F1,F2の夫々の消費履歴)に囚われなければ、多種燃料内燃機関を更に運転し続ける(即ち、車輌の航続距離Dを延ばす)ことができる可能性がある。例えば、多種燃料内燃機関は燃焼モードや機関作動点等のような運転条件の変更によって運転継続時間を延長できる可能性があるので、その場合には、車輌の航続距離Dを延ばすことができる。
【0058】
そこで、本実施例2の多種燃料内燃機関の制御装置は、前述した実施例1の制御装置において、航続距離Dの延長が可能であるならば航続距離優先の制御を行えるように構成する。本実施例2においては、航続距離を優先させるか否かを運転者に選択させるものとして例示するが、制御装置自らが例えば燃料の残存量に応じて選択できるようにしてもよい。
【0059】
以下においては、その航続距離優先の制御を行わないときの運転モードを通常運転モードといい、その航続距離優先の制御を行うときの運転モードを待避運転モードという。従って、本実施例2においては、その通常運転モードと待避運転モードの切り替えを運転者が行えるように制御装置を構成する。具体的には、その通常運転モードと待避運転モードとの間の切り替えが可能で、且つ、運転条件を変更させることで待避運転モードに切り替えできるか否か判定可能な運転モード切替手段を電子制御装置1に設ける。そして、電子制御装置1の走行情報表示制御手段は、待避運転モードへの切り替えが可能である場合にその旨が表示手段81に表示されるよう構成する。更に、本実施例2の車輌には、その表示情報に基づいて通常運転モードか待避運転モードかを運転者に選択させる図1に示す運転モード入力手段82を配備しておく。この運転モード入力手段82としては、例えば、ステアリングホイール等に配設された切り替えスイッチや、表示手段(所謂タッチパネルと仮定)81の画面上に表示された運転モード選択用のアイコンなどが考えられる。
【0060】
その待避運転モードへの切り替えが可能か否かについては、図4に示す運転条件マップデータの等出力線上で機関作動点を移動させることによって燃費が向上するのか否かを観て判定する。つまり、例えば、今後先に消尽される可能性の高い燃料が現時点の運転条件で主に使用されている場合には、その燃料の消費量が少ない機関作動点が同じ等出力線上に存在しているのであれば、待避運転モードへの切り替えが可能であると判断させる。また、その場合には、現時点の運転条件の機関作動点を同じ等出力線上で他方の燃料が主として使われる運転条件の位置へと移動させることができるのであれば、その際にも待避運転モードへの切り替えが可能であると判断させる。
【0061】
ここで、このように運転モード切替手段が待避運転モードへの切り替え可否を判断する為には、今後どちらの燃料が先に使い果たされるのかを知っておく必要がある。これが為、本実施例2の電子制御装置1には、先に消尽される燃料の推定を行う消尽燃料推定手段を設ける。この消尽燃料推定手段は、前述した実施例1の航続距離推定手段と同様に、第1及び第2の燃料F1,F2の夫々の残存量VL,VHの情報と、過去における第1及び第2の燃料F1,F2の夫々の消費履歴情報(運転履歴情報)と、を用いて先に消尽される燃料の推定を行うように構成する。
【0062】
具体的に、この本実施例2における多種燃料内燃機関の制御装置の運転モード選択表示動作及び運転モード設定動作の一例を図5のフローチャートに基づき説明する。その運転モード選択表示動作は、単独で行ってもよく、前述した実施例1の航続距離表示動作と同時機に行ってもよい。つまり、航続距離Dの延長が可能である旨については、これのみを表示手段81に表示してもよく、航続距離Dと共に表示手段81へと表示してもよい。
【0063】
先ず、本実施例2の電子制御装置1は、その消尽燃料推定手段により、燃料残存量検出手段42A,42Bを用いて第1及び第2の燃料F1,F2の夫々の残存量VL,VHの検出を行うと共に(ステップST11)、これら第1及び第2の燃料F1,F2の過去一定期間における燃費CL,CHの情報をRAM等の記憶手段から読み出し(ステップST12)、過去一定期間における第1及び第2の燃料F1,F2の夫々の消費履歴(過去一定期間における多種燃料内燃機関の運転状態)が今後も同様に続くものとして、これ以降第1燃料F1のみで運転させたときの航続距離DL(=CL・VL)と第2燃料F2のみで運転させたときの航続距離DH(=CH・VH)とを求めて比較(CH・VH≧CL・VL)する(ステップST13)。つまり、本実施例2の消尽燃料推定手段は、前述した実施例1の航続距離推定手段と同様に、過去一定期間と同様の運転状態を継続した場合、軽負荷用燃料たる第1燃料(高蒸発性燃料)F1と高負荷用燃料たる第2燃料(高着火性燃料)F2の内の何れが先に消費し尽くされるのかの判断を行う。
【0064】
続いて、本実施例2の電子制御装置1は、そのステップST13にて肯定判定されて軽負荷用燃料たる第1燃料(高蒸発性燃料)F1が先に消尽されると判断した場合、運転モード切替手段によって、運転条件の変更を行うことで第1燃料F1の消費を抑え、これにより航続距離Dの延長が可能か否かの判定を行う(ステップST14)。一方、その運転モード切替手段は、そのステップST13にて否定判定されて高負荷用燃料たる第2燃料(高着火性燃料)F2が先に消尽されると判断した場合、運転条件の変更を行うことで第2燃料F2の消費を抑え、これにより航続距離Dの延長が可能か否かの判定を行う(ステップST15)。つまり、ここでのステップST14,ST15においては、過去一定期間と同様の運転状態を保った場合に航続距離Dを延ばすことができるのか否かについて判定している。
【0065】
そして、そのステップST14又はステップST15にて肯定判定された場合、本実施例2の走行情報表示制御手段は、例えば前述した実施例1の図3のステップST4又はステップST7で求めた航続距離Dの延長が可能である旨を表示手段81に表示させる(ステップST16)。例えば、上述した図4は、そのステップST15にて肯定判定された場合について示している。
【0066】
運転者は、その表示情報により航続距離Dの延長が可能であると知ることができるので、上述した運転モード入力手段82を介して通常運転モード又は待避運転モードの選択を行う。本実施例2の運転モード切替手段は、その選択結果を受信することによって航続距離Dの延長要求の有無を判断する(ステップST17)。このステップST17においては、待避運転モードが選択されたか否かを判定することによって航続距離Dの延長要求の有無の判断を行う。これが為、運転者が通常運転モードを選択した場合には、このステップST17において肯定判定されて航続距離Dの延長要求ありと判断し、運転者が待避運転モードを選択した場合には、このステップST17において否定判定されて航続距離Dの延長要求なしと判断する。
【0067】
従って、このステップST17において肯定判定された場合、本実施例2の電子制御装置1は、運転モード切替手段によって運転モードを待避運転モードへと切り替えて、この待避運転モードでの運転制御(即ち、航続距離延長制御)を燃料混合制御手段、燃料噴射制御手段、点火時期制御手段、燃焼モード設定手段などに実行させる(ステップST18)。例えば、上記ステップST14で肯定判定された場合には、高負荷用燃料たる第2燃料(高着火性燃料)F2を主に用いて圧縮自着火拡散燃焼モードで運転させ、これにより第1燃料F1の消費を抑えながら航続距離Dを延長させる。また、上記ステップST15で肯定判定された場合には、軽負荷用燃料たる第1燃料(高蒸発性燃料)F1を主に用いて予混合火花点火火炎伝播燃焼モードで運転させ、これにより第2燃料F2の消費を抑えながら航続距離Dを延長させる。
【0068】
一方、上記ステップST17において否定判定された場合、また、上記ステップST14又はステップST15にて否定判定された場合、本実施例2の電子制御装置1は、運転モード切替手段によって通常運転モードを運転モードとして選択させ、この通常運転モードで運転させる。ここでは、最初に通常運転モードで運転されているものとして例示しているので、この場合には通常運転モードが維持される(ステップST19)。
【0069】
ここで、既に待避運転モードで運転されている場合も十分にあり得る。従って、かかる場合に上記ステップST14又はステップST15又はステップST17において否定判定されたときには、既に実行されている待避運転モードでの運転を維持させる。
【0070】
また、既に待避運転モードで運転されていても、上記ステップST12で使用する燃費情報が現在の待避運転実行前のものである場合も十分にあり得る。従って、かかる場合には上記ステップST14又はステップST15において肯定判定される可能性が高いが、その際に更なる航続距離Dの延長ができないのであれば、上記ステップST16における航続距離Dの延長が可能である旨の表示を行うことなく、既に実行されている待避運転モードでの運転を維持させることが好ましい。これにより、運転者に紛らわしい情報を提供せずとも済むので、運転者の視線移動の頻度が抑えられ、運行上の安全性を高めることができる。
【0071】
このように、本実施例2の多種燃料内燃機関の制御装置は、実施例1のように精度の高い航続距離Dの情報を運転者に対して提供するのみならず、航続距離Dの延長可否を判断して、その延長が可能であり且つその延長要求があったのならば、航続距離Dを延ばす運転へと切り替えることができる。従って、この多種燃料内燃機関の制御装置によれば、例えば給油施設が近くにないなどの理由から補給困難な状況に陥ったとしても、できる限り航続距離Dを延ばして、燃料切れによる走行不能状態を回避することができる。また、この多種燃料内燃機関の制御装置によれば、表示手段81に表示された高精度な航続距離Dの情報を見て運転者が航続距離Dの延長可否を判断できるので、例えば航続距離Dに到達する前に給油施設が存在しているならば相対的に出力性能の高い通常運転モードを運転者の判断で維持させることもできる。
【0072】
尚、本実施例2においては、上述した運転モード入力手段82に替えて、航続距離延長釦などの入力手段を用意してもよい。例えば、表示手段81がタッチパネル式である場合には、その航続距離延長釦を画面上に上記ステップST16の表示情報と共に表示させてもよく、その際には、この画面上の航続距離延長釦が押下されたときに「航続距離延長要求あり」と判断させればよい。
【実施例3】
【0073】
次に、本発明に係る多種燃料内燃機関の制御装置の実施例3を図6及び図7を用いて説明する。
【0074】
本実施例3の多種燃料内燃機関の制御装置は、前述した実施例1の多種燃料内燃機関の制御装置の変形例であり、この実施例1の制御装置において航続距離演算動作のみを変更したものである。
【0075】
具体的に、この本実施例3における多種燃料内燃機関の制御装置の航続距離表示動作の一例を図6のフローチャートに基づき説明する。
【0076】
先ず、本実施例3の電子制御装置1には、その航続距離推定手段により、燃料残存量検出手段42A,42Bを用いて第1及び第2の燃料F1,F2の夫々の残存量VL,VHを検出させると共に(ステップST21)、過去一定期間における走行距離D1の情報とこれら第1及び第2の燃料F1,F2の燃料消費量VL1,VH1の情報をRAM等の記憶手段から読み出させる(ステップST22)。従って、本実施例3においては、走行距離検出手段91の検出信号に基づき過去一定期間の走行距離D1の情報を算出し、これを記憶手段に格納しておく。また、過去一定期間における第1及び第2の燃料F1,F2の燃料消費量VL1,VH1の情報については、その第1及び第2の燃料F1,F2の残存量VL,VHの情報や、その第1燃料F1と第2燃料F2の燃料混合比率及び燃料噴射量の各情報などから算出し、これを記憶手段に格納しておく。尚、その走行距離D1の情報については、記憶手段に格納された過去一定期間分の走行距離情報を読み出し、これをその都度積算させることによって得てもよい。
【0077】
また、この航続距離推定手段には、そのステップST22で得られた情報に基づいて、過去一定期間における第1燃料F1と第2燃料F2とを合わせた平均的な燃費Cを下記の式2から算出させると共に(ステップST23)、過去一定期間における第1燃料F1と第2燃料F2との間の平均的な燃料混合比Rを下記の式3から算出させる(ステップST24)。
【0078】
C=D1/(VL1+VH1) … (2)
【0079】
R=VH1/VL1 … (3)
【0080】
続いて、この航続距離推定手段には、上記ステップST24の過去一定期間の燃料混合比Rで今後も運転した場合に第1及び第2の燃料F1,F2の内のどちらの燃料が先に使い果たされるのかを判断(VH≧R・VL)させる(ステップST25)。
【0081】
この航続距離推定手段には、そのステップST25にて肯定判定されて軽負荷用燃料たる第1燃料(高蒸発性燃料)F1が先に消尽されると判断した場合、過去一定期間と同様の運転状態を保ちながら第1燃料F1が消尽されるまで(即ち、過去一定期間と同等の第1燃料F1と第2燃料F2の燃料混合比Rや燃費Cで当該第1燃料F1が消尽されるまで)の最短の航続距離Dを下記の式4から推定させる(ステップST26)。そして、本実施例3の走行情報表示制御手段には、そのステップST26で推定された航続距離Dの情報を表示手段81に表示させる(ステップST27)。
【0082】
D=C・VL・(1+R) … (4)
【0083】
一方、本実施例3の航続距離推定手段には、上記ステップST25にて否定判定されて高負荷用燃料たる第2燃料(高着火性燃料)F2が先に消尽されると判断した場合、第1燃料F1のみを用いて運転するときの燃費CL0の情報をRAM等の記憶手段から読み出させ(ステップST28)、過去一定期間と同様の運転状態を保ちながら運転して第2燃料F2が先に無くなり、その後第1燃料F1のみで当該第1燃料F1が消尽されるまで運転したときの最短の航続距離Dを下記の式5から推定させる(ステップST29)。そして、本実施例3の走行情報表示制御手段には、上記ステップST27に進ませ、そのステップST29で推定された航続距離Dの情報を表示手段81に表示させる。
【0084】
D=C・VH・(1+1/R)+CL0・(VL−VH/R) … (5)
【0085】
このように、本実施例3の多種燃料内燃機関の制御装置においても、過去一定期間と同様の運転状態を保つ限り多種燃料内燃機関を燃料不足で停止させることのない精度の高い航続距離Dの情報を推定することができる。従って、この高精度な航続距離Dの情報が運転者に提供されることによって、その多種燃料内燃機関は、運転者が過去一定期間と同様の運転状態を保ちつつその航続距離Dに到達するまでに少なくとも軽負荷用燃料たる第1燃料(高蒸発性燃料)F1の補給を行う限り、燃料不足により運転不可能になってしまうという事態が回避される。
【0086】
ところで、前述した実施例2の消尽燃料推定手段には、先に使い果たされる燃料の推定を上述した本実施例3の航続距離推定手段と同様にして実行させてもよい。この場合、その消尽燃料推定手段には、図7のフローチャートに示す如く、上述したステップST21〜ST25の演算処理及び判定処理を実行させることによって先に消尽される燃料の推定を行わせる。そして、この場合の電子制御装置1には、その推定結果に応じて実施例2と同様にステップST14又はステップST15へと進ませて、運転モード切替手段に航続距離Dの延長可否を判断させ、最終的に燃料混合制御手段などに航続距離Dの延長制御又は通常運転モードの維持制御を実行させる。このようにしても、多種燃料内燃機関の制御装置は、航続距離Dの延長が可能であり且つその延長要求があったのならば、航続距離Dを延ばす運転へと切り替えることができる。従って、このような多種燃料内燃機関の制御装置によっても、例えば給油施設が近くにないなどの理由から補給困難な状況に陥ったとしても、実施例2と同じく、できる限り航続距離Dを延ばして、燃料切れによる走行不能状態を回避することができる。
【実施例4】
【0087】
次に、本発明に係る多種燃料内燃機関の制御装置の実施例4を図8から図10を用いて説明する。
【0088】
前述した実施例2の多種燃料内燃機関の制御装置においては、航続距離Dを延長できる場合にその旨を運転者に対して示し、運転者がその延長を望んだときに待避運転モードで航続距離Dの延長運転を実行させる。しかしながら、待避運転モードは多種燃料内燃機関の出力性能よりも燃費を重視する運転モードなので、運転者は、必ずしも待避運転モードでの運転を希望するとは限らず、できる限り出力性能の低下を抑えた運転を望む場合がある。つまり、運転者は、通常運転モードでの運転時間を延長することができるのならば、待避運転モードへの切り替えを可能な限り先延ばしして、極力良好な出力性能のままで多種燃料内燃機関を運転させ続けたいと考えることがある。
【0089】
そこで、本実施例4の多種燃料内燃機関の制御装置は、前述した実施例1又は実施例2の制御装置において、通常運転モードの運転時間の延長が可能であるならば通常運転モード延長制御を行えるように構成する。本実施例4においては、通常運転モードの運転時間を延長させるか否かについて運転者に選択させるものとして例示するが、制御装置自らが例えば燃料の残存量に応じて選択できるようにしてもよい。
【0090】
具体的に、本実施例4の電子制御装置1には、通常運転モードと待避運転モードとの間の切り替えが可能で、且つ、運転条件を変更させることで通常運転モードの延長が可能であるか否か判定可能な運転モード切替手段を設ける。この運転モード切替手段は、本実施例4の制御装置が前述した実施例1の制御装置を基にしたものであるならば、かかる切替機能と判定機能とを有するものとなり、また、本実施例4の制御装置が前述した実施例2の制御装置を基にしたものであるならば、かかる切替機能と判定機能に加えて、実施例2と同じく運転条件を変更させることで待避運転モードに切り替えできるか否かの判定機能も有したものとなる。
【0091】
通常運転モードの延長が可能か否かについては、図4に示す運転条件マップデータの等出力線上で機関作動点を移動させることによって第1及び第2の燃料F1,F2の使用割合(燃料混合比)を変更させ、例えば、図8に示すように少なくとも航続距離Dを減らすことなく通常運転モードでの運転時間を延長させることができるか否かを観て判定する。この図8は、通常運転モードにおいて高負荷用燃料たる第2燃料(高着火性燃料)F2が軽負荷用燃料たる第1燃料(高蒸発性燃料)F1よりも先に無くなるときを例示した図であって、通常運転モード延長要求がなく実施例2の航続距離Dの延長要求があったときの状態と通常運転モード延長要求があったときの状態とを表したものである。つまり、本実施例4においても、どちらの燃料が先に使い果たされるのかを知る必要があり、これが為、本実施例4の電子制御装置1には、実施例2と同様の消尽燃料推定手段が設けられている。
【0092】
また、本実施例4においては、通常運転モードへの延長が可能である場合にその旨が表示手段81に表示されるよう走行情報表示制御手段を構成すると共に、実施例2で例示した運転モード入力手段82を車輌に配備する。その走行情報表示制御手段は、本実施例4の制御装置が前述した実施例1の制御装置を基にしたものであるならば、実施例1の航続距離Dの表示情報に加えて通常運転モード延長可能表示を行わせ、また、本実施例4の制御装置が前述した実施例2の制御装置を基にしたものであるならば、航続距離Dの表示情報と航続距離延長可能表示情報に加えて通常運転モード延長可能表示を行わせる。
【0093】
以下に、本実施例4における多種燃料内燃機関の制御装置の運転モード選択表示動作及び運転モード設定動作の一例を図9のフローチャートに基づき説明する。その運転モード選択表示動作は、単独で行ってもよく、航続距離表示動作と同時機に行ってもよい。つまり、通常運転モードの延長が可能である旨については、これのみを表示手段81に表示してもよく、航続距離Dと共に表示手段81へと表示してもよい。尚、以下においては、前述した実施例2の制御装置を基に本実施例4の制御装置が構成されたものとして例示する。
【0094】
先ず、本実施例4の電子制御装置1は、その消尽燃料推定手段により、燃料残存量検出手段42A,42Bを用いて第1及び第2の燃料F1,F2の夫々の残存量VL,VHの検出を行うと共に(ステップST31)、これら第1及び第2の燃料F1,F2の過去一定期間における燃費CL,CHの情報をRAM等の記憶手段から読み出し(ステップST32)、過去一定期間における第1及び第2の燃料F1,F2の夫々の消費履歴(過去一定期間における多種燃料内燃機関の運転状態)が今後も同様に続くものとして、これ以降第1燃料F1のみで運転させたときの航続距離DL(=CL・VL)と第2燃料F2のみで運転させたときの航続距離DH(=CH・VH)とを求めて比較(CH・VH≧CL・VL)する(ステップST33)。つまり、本実施例4の消尽燃料推定手段は、前述した実施例2と同じく、過去一定期間と同様の運転状態を継続した場合、軽負荷用燃料たる第1燃料(高蒸発性燃料)F1と高負荷用燃料たる第2燃料(高着火性燃料)F2の内の何れが先に消費し尽くされるのかの判断を行う。
【0095】
続いて、本実施例4の電子制御装置1は、そのステップST33にて否定判定されて高負荷用燃料たる第2燃料(高着火性燃料)F2が先に消尽されると判断した場合、運転モード切替手段によって運転条件を変更することで少なくとも航続距離Dを維持しつつ通常運転モードの延長が可能か否かの判定を行う(ステップST34)。
【0096】
ここで、このステップST34にて肯定判定された場合、本実施例4の走行情報表示制御手段は、通常運転モードの延長が可能である旨を表示手段81に表示させる(ステップST35)。これにより、運転者は、通常運転モードの延長が可能であると知ることができるので、上述した運転モード入力手段82を介して通常運転モード又は待避運転モードの選択を行う。本実施例4の運転モード切替手段は、その選択結果を受信することによって通常運転モードの延長要求の有無を判断する(ステップST36)。このステップST36においては、通常運転モードが選択された際に通常運転モードの延長要求ありと判断する。そして、このステップST36において肯定判定された場合、本実施例4の電子制御装置1は、変速機をローギヤ側に変速させ、且つ、同じ等出力線上における軽負荷用燃料が主体の予混合火花点火火炎伝播燃焼モードで運転させることによって、通常運転モードの延長運転を実行させる(ステップST37)。ここでは、図8に示すように、通常運転モードが為されていないときと比べて、高負荷用燃料たる第2燃料(高着火性燃料)F2の使用割合を減らすと共に軽負荷用燃料たる第1燃料(高蒸発性燃料)F1の使用割合を増やし、例えば前述した実施例1の図3のステップST4又はステップST7で求めた航続距離Dを維持しながらも、できる限り長くこれらの混合燃料を用いた通常運転モードでの運転が行われるようにしている。
【0097】
一方、本実施例4の運転モード切替手段は、上記ステップST34又はステップST36において否定判定された場合、実施例2のステップST15と同様に、運転条件の変更を行うことで高負荷用燃料たる第2燃料(高着火性燃料)F2の消費を抑え、これにより航続距離Dの延長が可能か否かの判定を行う(ステップST38)。つまり、このステップST38においては、過去一定期間と同様の運転状態を保った場合に航続距離Dを延ばすことができるのか否かについて判定する。そして、このステップST38にて肯定判定された場合、本実施例4の走行情報表示制御手段は、実施例2のステップST16と同様に、航続距離Dの延長が可能である旨を表示手段81に表示させる(ステップST39)。これにより、運転者は、航続距離Dの延長が可能であると知るので、上述した運転モード入力手段82を介して通常運転モード又は待避運転モードの選択を行う。従って、本実施例4の電子制御装置1は、実施例2のステップST17と同様にその選択結果から航続距離Dの延長要求の有無を運転モード切替手段に判断させ(ステップST40)、その延長要求があれば燃料混合制御手段などに航続距離延長制御を実行させる一方(ステップST41)、その延長要求がなければ又は上記ステップST38にて否定判定された場合には通常運転モードを維持させる(ステップST42)。
【0098】
また、本実施例4の運転モード切替手段は、上記ステップST33において肯定判定されて軽負荷用燃料たる第1燃料(高蒸発性燃料)F1が先に消尽されると判断した場合、実施例2のステップST14と同様に、運転条件の変更を行うことで第1燃料F1の消費を抑え、これにより航続距離Dの延長が可能か否かの判定を行う(ステップST43)。そして、本実施例4の電子制御装置1は、その延長が可能であれば上記ステップST39に進み、その延長が不可能であれば上記ステップST42に進む。つまり、航続距離Dを延長できるときには、その旨の表示情報から運転者に航続距離Dを延長させるか否か判断させ、延長要求されたならば航続距離延長制御を実行させる一方、延長要求がなければ通常運転モードを維持させる。また、この電子制御装置1は、航続距離Dを延長自体が不可能な場合にも通常運転モードを維持させる。
【0099】
このように、本実施例4の多種燃料内燃機関の制御装置は、実施例1のように精度の高い航続距離Dの情報を運転者に対して提供するのみならず、高負荷用燃料の方が先に無くなるときに通常運転モードの延長可否を判断し、その延長が可能であり且つその延長要求があったのならば、少なくとも航続距離Dを維持しつつ通常運転モードを延ばす運転へと切り替えることができる。従って、この多種燃料内燃機関の制御装置によれば、航続距離Dを短縮させずに待避運転状態に切り替わる時機を遅らせることができるので、燃料切れによる走行不能状態を回避しつつ可能な限り長い時間出力性能の良好な通常運転モードでの運転を行うことができる。また、この多種燃料内燃機関の制御装置によれば、表示手段81に表示された高精度な航続距離Dの情報を見て運転者が通常運転モードの延長可否を判断できるので、例えば航続距離Dに到達する前に給油施設が存在していなければ待避運転モードを運転者の判断で選択させることもできる。
【0100】
また、この多種燃料内燃機関の制御装置は、通常運転モードの延長要求がされなかったとき又は軽負荷用燃料の方が先に無くなるときに航続距離Dの延長可否を判断して、その延長が可能であり且つその延長要求があったのならば、航続距離Dを延ばす運転へと切り替えることができる。従って、この多種燃料内燃機関の制御装置によれば、実施例2と同様に、例えば給油施設が近くにないなどの理由から補給困難な状況に陥ったとしても、できる限り航続距離Dを延ばして、燃料切れによる走行不能状態を回避することができる。
【0101】
ところで、本実施例4の消尽燃料推定手段には、先に使い果たされる燃料の推定を前述した実施例3の航続距離推定手段と同様にして実行させてもよい。この場合、その消尽燃料推定手段には、図10のフローチャートに示す如く、実施例3のステップST21〜ST25の演算処理及び判定処理を実行させることによって先に消尽される燃料の推定を行わせる。そして、この場合の電子制御装置1には、その推定結果に応じて上述したステップST34又はステップST43へと進ませて、運転モード切替手段に通常運転モードの延長可否を判断させ、上述した本実施例4と同様に、通常運転モードの延長制御,航続距離Dの延長制御又は通常運転モードの維持制御を燃料混合制御手段などに実行させる。このようにしても、この多種燃料内燃機関の制御装置は、本実施例4と同様の効果を奏することができる。
【実施例5】
【0102】
次に、本発明に係る多種燃料内燃機関の制御装置の実施例5を図11から図12を用いて説明する。
【0103】
本実施例5の多種燃料内燃機関の制御装置は、前述した各実施例1〜4の制御装置において、将来の運転条件(燃焼モードや機関作動点等)を明らかにできるよう構成したものである。この将来の運転条件は、これから車輌が走行する経路や運転モードMなどによって変化する。従って、本実施例5の多種燃料内燃機関の制御装置は、図11に示すカーナビゲーションシステム83等の走行ルートに係る情報を知ることのできる車輌案内装置を備えた車輌に対して適用される。
【0104】
ここで、そのカーナビゲーションシステム83には、図11に示す如く、地図情報等が表示される表示手段831と、目的地情報等を設定する際に用いる入力手段832と、目的地までの走行ルート検索等を行う演算処理装置833と、が設けられている。本実施例5においては、前述した各実施例1〜4の表示手段81の機能をカーナビゲーションシステム83の表示手段831に持たせると共に、その各実施例1〜4の運転モード入力手段82の機能をカーナビゲーションシステム83の入力手段832に持たせるが、別途その表示手段81と運転モード入力手段82とが配備されていてもよい。また、その表示手段831がタッチパネル式である場合には、その画面上に入力手段832を表示させてもよい。
【0105】
また、本実施例5の運転モードMとしては、例えば、前述した各実施例1〜4の通常運転モードに相当する出力性能(レスポンス等)重視運転モード、その各実施例1〜4の待避運転モードに相当する燃費重視運転モードに加えて、高負荷用燃料を主として使用する運転モード、軽負荷用燃料を主として使用する運転モードが用意されている。この運転モードMについては例えば専用の運転モード選択釦を車室内に用意してもよいが、本実施例5においては、運転モード選択釦や運転モード選択アイコンを表示手段831に表示して入力手段832から運転者に選択させるようにする。尚、運転モードMは、走行ルート上の路面勾配などを考慮して電子制御装置1や演算処理装置833に設定させてもよい。
【0106】
ところで、本実施例5においては、将来の走行ルートや運転モードMによる結果が端的に且つ一意に表される将来における第1及び第2の燃料F1,F2の消費予測情報を将来の運転条件として用いる。ここでは、カーナビゲーションシステム83における目的地までの走行距離D2及び道路状況RCの情報並びに運転モードMの情報を利用して将来における第1及び第2の燃料F1,F2の消費予測情報を推定させるべく構成する。従って、そのカーナビゲーションシステム83は、少なくともその目的地までの走行距離D2及び道路状況RCの情報が算出又は取得できるように構成しておく。
【0107】
先ず、目的地までの走行距離D2については、カーナビゲーションシステム83の技術分野における周知の方法によって求めることができる。例えば、この走行距離D2は、設定された目的地と走行ルートに基づいて地図情報等のカーナビゲーションシステム83における所有情報を参照しながら演算処理装置833に算出させる。また、道路状況RCの情報としては、予め地図情報と共に記憶装置に格納された走行ルート上の路面勾配情報やコーナー曲率半径情報等の走行路自体の情報だけでなく、外部から受信した走行ルート上の渋滞情報等の環境情報も含まれる。一般に、その渋滞情報等の環境情報は、少なくとも所定時間の間は記憶装置に格納される。これが為、この道路状況RCの情報は、その記憶装置から演算処理装置833が読み出して取得する。
【0108】
更に、本実施例5の電子制御装置1には、その燃料消費予測情報の推定を行う燃料消費予測情報推定手段を設ける。この燃料消費予測情報推定手段には、目的地までの走行距離D2及び道路状況RCの情報のみならず運転モードMの情報も利用して、目的地に到達するまでに必要な第1及び第2の燃料F1,F2の必要燃料量VL2,VH2の推定を下記の式6の関数式に基づき行わせる。この関数式は、例えば、道路状況RCと運転モードMとを幾つかのパターンに分類して用意しておき、該当するパターンに目的地までの走行距離D2の情報を当て嵌めて必要燃料量VL2,VH2の算出を行うものが考えられる。
【0109】
L2,VH2←f(D2+RC+M) … (6)
【0110】
ここで、本実施例5においては、その将来における第1及び第2の燃料F1,F2の消費予測情報(目的地までの必要燃料量VL2,VH2)に基づいて航続距離Dや補給燃料情報の表示を行わせる。
【0111】
その航続距離Dの情報は、航続距離推定手段に推定させた後、走行情報表示制御手段により表示手段831の画面上に表示させる。本実施例5の航続距離推定手段は、基本的に前述した各実施例1〜4の航続距離推定手段と同様のものであるが、過去一定期間の燃費情報に替えて将来における(ここでは、目的地までの)燃費Cの情報を利用すると共に、過去一定期間の燃料混合比情報に替えて将来における(ここでは、目的地までの)燃料混合比Rの情報を利用して、将来の(ここでは、目的地までの)航続距離Dの推定を行うよう構成する。
【0112】
また、その補給燃料情報としては、補給が必要な燃料の種類や補給量だけでなく、その補給対象燃料を提供している給油施設の位置情報についても表示させる。その補給対象燃料の種類や補給量については、第1燃料F1の残存量VLと目的地までの必要燃料量VL2との差、第2燃料F2の残存量VHと目的地までの必要燃料量VH2との差から判断することができる。一方、給油施設の位置情報については、カーナビゲーションシステム83の給油施設情報に予め燃料種別情報も持たせておくことで判断することができる。本実施例5の電子制御装置1には、そのようにして補給燃料情報の推定を行う補給燃料情報推定手段を用意しておく。
【0113】
以下に、本実施例5における多種燃料内燃機関の制御装置の航続距離表示動作及び補給燃料情報表示動作の一例を図12のフローチャートに基づき説明する。尚、ここでは各種演算処理動作を電子制御装置1とカーナビゲーションシステム83の演算処理装置833とに分業させるものとして説明するが、その各種演算処理動作は、電子制御装置1のみに実行させてもよい。
【0114】
先ず、カーナビゲーションシステム83の操作者は、表示手段831の画面を見ながら入力手段832を介して目的地の入力を行う。これにより、演算処理装置833は、その目的地までの複数の走行ルートを検索して表示手段831の画面上に示す。ここで、この演算処理装置833は、その中から操作者が自ら走行ルートを選択すればその走行ルートを以後の案内用走行ルートとして設定し、操作者が選択しなければその中の推奨走行ルートを以後の案内用走行ルートとして設定する。このようにして、カーナビゲーションシステム83の演算処理装置833は、目的地と走行ルートの設定を行う(ステップST51)。
【0115】
続いて、この演算処理装置833は、その走行ルートに基づいて目的地までの走行距離D2を算出し(ステップST52)、更に、走行ルート上の路面勾配情報や渋滞情報等の道路状況RCの情報を取得する(ステップST53)。ここでは、演算処理装置833がその目的地までの走行距離D2と道路状況RCの情報を電子制御装置1に送信する。
【0116】
一方、電子制御装置1は、運転者が入力手段832から選択した運転モードMを設定する(ステップST54)。そして、この電子制御装置1の燃料消費予測情報推定手段は、演算処理装置833から受け取った目的地までの走行距離D2及び道路状況RCの情報並びに設定された運転モードMに基づいて、目的地までの第1及び第2の燃料F1,F2の必要燃料量VL2,VH2を算出する(ステップST55)。
【0117】
しかる後、この電子制御装置1の航続距離推定手段は、目的地までの走行距離D2と目的地までの第1及び第2の燃料F1,F2の必要燃料量VL2,VH2とに基づいて目的地までの燃費Cを下記の式7から算出すると共に(ステップST56)、その目的地までの第1及び第2の燃料F1,F2の必要燃料量VL2,VH2に基づいて目的地までの燃料混合比Rを下記の式8から算出する(ステップST57)。
【0118】
C=D2/(VL2+VH2) … (7)
【0119】
R=VH2/VL2 … (8)
【0120】
更に、この航続距離推定手段は、燃料残存量検出手段42A,42Bを用いて第1及び第2の燃料F1,F2の夫々の残存量VL,VHを検出する(ステップST58)。そして、この航続距離推定手段は、上記ステップST57の目的地までの燃料混合比Rで運転した際に第1及び第2の燃料F1,F2の内のどちらの燃料が先に使い果たされるのかを判断(VH≧R・VL)する(ステップST59)。
【0121】
この航続距離推定手段は、そのステップST59にて肯定判定されて軽負荷用燃料たる第1燃料(高蒸発性燃料)F1が先に消尽されると判断した場合、上記ステップST56,ST57における目的地までの燃費Cと燃料混合比Rの状態で運転し続けたときの最短の航続距離Dを前述した実施例3の式4から推定する(ステップST60)。
【0122】
一方、この航続距離推定手段は、そのステップST59にて否定判定されて高負荷用燃料たる第2燃料(高着火性燃料)F2が先に消尽されると判断した場合、第1燃料F1のみを用いて運転するときの燃費CL0の情報をRAM等の記憶手段から読み出し(ステップST61)、その目的地までの燃費Cと燃料混合比Rの状態で運転し続けて第2燃料F2が先に無くなり、その後第1燃料F1のみで当該第1燃料F1が消尽されるまで運転したときの最短の航続距離Dを前述した実施例3の式5から推定する(ステップST62)。
【0123】
本実施例5の電子制御装置1は、このようにして航続距離Dを推定した後、その走行情報表示制御手段によってその航続距離Dの情報を表示手段831に表示させる(ステップST63)。
【0124】
続いて、本実施例5の電子制御装置1は、その補給燃料情報推定手段により、第1及び第2の燃料F1,F2の内の少なくとも一方の残存量VL,VHが目的地までの必要燃料量VL2,VH2よりも少なくなっているのか否かを判断する(ステップST64)。つまり、このステップST64においては、目的地に到達する前に少なくとも一方の燃料が消費し尽くされて不足してしまう可能性があるのか否かを判断する。
【0125】
この補給燃料情報推定手段は、そのステップST64で否定判定して第1及び第2の燃料F1,F2の双方の残存量VL,VHが目的地までの必要燃料量VL2,VH2を満たしていると判断された場合、本処理を終了する。尚、その際、走行情報表示制御手段は、目的地までの燃料が残っているとの内容を表示手段831に表示させるよう構成してもよい。
【0126】
一方、上記ステップST64で肯定判定して第1及び第2の燃料F1,F2の内の少なくとも一方の残存量VL,VHが目的地までの必要燃料量VL2,VH2よりも少なくなっていると判断された場合には、この補給燃料情報推定手段がその少ないとの判断が為された燃料を補給対象の燃料として特定して、この補給対象燃料の補給量と補給対象燃料を取り扱っている給油施設の位置の情報を検索し、その補給対象燃料の種類及び補給量並びに補給対象燃料を取り扱っている給油施設の位置の情報を走行情報表示制御手段が表示手段831に表示させて燃料補給を促す(ステップST65)。
【0127】
このように、本実施例5の多種燃料内燃機関の制御装置においては、過去の運転履歴とは異なる条件で運転する場合でも精度の高い航続距離Dの情報を推定することができる。つまり、本実施例5の多種燃料内燃機関の制御装置は、過去の運転履歴に囚われることなく、これから行う運転状態に合わせた精度の高い航続距離Dの情報を推定することができる。また、この多種燃料内燃機関の制御装置においては、少なくとも一方の燃料が目的地到達までに使い果たされてしまうときに上記の表示情報により燃料補給を促すので、待避運転モードたる燃費重視運転モードの運転への切り替えを回避することができ、また、燃料切れによる走行不能状態を回避することができる。また、この多種燃料内燃機関の制御装置によれば、表示手段831に表示された高精度な航続距離Dの情報と補給燃料情報を見て運転者が航続距離Dの延長可否や通常運転モードの延長可否を判断できるので、例えば補給燃料情報として提供された給油施設の位置情報に応じて通常運転モードや待避運転モードの選択を運転者に行わせることができる。
【0128】
ところで、運転者は、必ずしも設定された走行ルート上を忠実に走るとは限らない。また、運転者は、走行中に運転モードMを変更することもある。従って、車輌が走行ルートを外れたときや運転モードMが変更されたときには再び航続距離Dの推定及び表示を行い、更に、目的地までに燃料が不足するときには再び新たな燃料補給促進情報(補給対象燃料の種類及び補給量並びに補給対象燃料を取り扱っている給油施設の位置の情報)を求めて表示する。
【実施例6】
【0129】
次に、本発明に係る多種燃料内燃機関の制御装置の実施例6を図13及び図14に基づいて説明する。
【0130】
前述した各実施例1〜5では第1燃料F1と第2燃料F2の混合燃料が燃焼室CCに直接噴射される所謂筒内直接噴射式の多種燃料内燃機関を本発明に係る制御装置の適用対象として例示したが、これら各実施例1〜5における多種燃料内燃機関の制御装置については、別構成の多種燃料内燃機関に対しても適用することができる。
【0131】
例えば、その制御装置は、各実施例1〜5の多種燃料内燃機関において燃料供給装置50を図13に示す燃料供給装置150へと置き換え、第1燃料F1と第2燃料F2の混合燃料を燃焼室CC内だけでなく吸気ポート11bへも噴射させるよう構成した多種燃料内燃機関に適用してもよく、これにおいても各実施例1〜5の多種燃料内燃機関の制御装置と同様の効果を奏することができる。尚、その図13は、実施例1〜4の多種燃料内燃機関を基にしたものを代表して例示した図である。
【0132】
ここで、その図13に示す燃料供給装置150とは、各実施例1〜5における燃料供給装置50の各種構成部品に加えて、燃料混合手段53で生成された混合燃料を燃料通路154に吐出する燃料ポンプ155と、その燃料通路154の混合燃料を夫々の気筒に分配するデリバリ通路156と、このデリバリ通路156から供給された混合燃料を夫々の気筒の吸気ポート11bに噴射する各気筒の燃料噴射弁157と、を設けたものである。この場合の多種燃料内燃機関においては、例えば、圧縮自着火拡散燃焼モードで運転する際に燃料噴射弁57を駆動制御して混合燃料を燃焼室CC内へと噴射させ、予混合火花点火火炎伝播燃焼モードで運転する際に燃料噴射弁157を駆動制御して混合燃料を吸気ポート11bへと噴射させる。
【0133】
また、その制御装置は、各実施例1〜5の多種燃料内燃機関において燃料供給装置50を図14に示す燃料供給装置250へと置き換え、燃料混合手段53を用いることなく第1燃料F1と第2燃料F2を個別に噴射させるよう構成した多種燃料内燃機関に適用してもよく、これにおいても各実施例1〜5の多種燃料内燃機関の制御装置と同様の効果を奏することができる。
【0134】
ここで、その図14に示す燃料供給装置250とは、燃焼室CC内に第1燃料F1(高着火性燃料)を直接噴射する第1燃料供給手段と、吸気ポート11bに第2燃料F2(高蒸発性燃料、高耐ノック性)を噴射する第2燃料供給手段と、を備えている。その第1燃料供給手段は、第1燃料F1を第1燃料タンク41Aから吸い上げて第1燃料通路251Aに送出する第1フィードポンプ252Aと、その第1燃料通路251Aの第1燃料F1を高圧燃料通路254Aに圧送する高圧燃料ポンプ255Aと、その高圧燃料通路254Aの第1燃料F1を夫々の気筒に分配する第1デリバリ通路256Aと、この第1デリバリ通路256Aから供給された第1燃料F1を燃焼室CC内に噴射する各気筒の燃料噴射弁257Aと、を備える。一方、第2燃料供給手段は、第2燃料F2を第2燃料タンク41Bから吸い上げて第2燃料通路251Bに送出する第2フィードポンプ252Bと、その第2燃料通路251Bの第2燃料F2を夫々の気筒に分配する第2デリバリ通路256Bと、この第2デリバリ通路256Bから供給された第2燃料F2を吸気ポート11bに噴射する各気筒の燃料噴射弁257Bと、を備える。この場合の多種燃料内燃機関においては、例えば、圧縮自着火拡散燃焼モードで運転する際に燃料噴射弁257Aのみ又は双方の燃料噴射弁257A,257Bを駆動制御して燃料を燃焼室CC内へと導き、予混合火花点火火炎伝播燃焼モードで運転する際に燃料噴射弁257Bのみ又は双方の燃料噴射弁257A,257Bを駆動制御して燃料を燃焼室CC内へと導く。
【0135】
尚、上述した各実施例1〜6においては2種類の燃料で運転される多種燃料内燃機関を本発明に係る制御装置の適用対象としたが、これら各実施例1〜6の多種燃料内燃機関の制御装置については、これよりも多くの種類の燃料を用いて運転される多種燃料内燃機関に対して適用してもよい。
【0136】
また、上述した各実施例1〜6においては表示手段81又は表示手段831に対して視覚的に航続距離Dや補給燃料情報の情報を表示させたが、これとは別に又はこれと共に航続距離D等の情報を音声情報や警告音などにして運転者へ伝えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0137】
以上のように、本発明に係る多種燃料内燃機関の制御装置は、航続距離を精度良く推定する技術に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】実施例1〜4の多種燃料内燃機関の制御装置の適用対象たる多種燃料内燃機関の構成について示す図である。
【図2】予混合火花点火火炎伝播燃焼モードと圧縮自着火拡散燃焼モードとを有する燃焼モードマップデータの一例を示す図である。
【図3】多種燃料内燃機関の制御装置の実施例1における航続距離表示動作について説明するフローチャートである。
【図4】本発明に係る多種燃料内燃機関の制御装置が用いる運転条件マップデータの一例を示す図である。
【図5】多種燃料内燃機関の制御装置の実施例2における運転モード選択表示動作及び運転モード設定動作について説明するフローチャートである。
【図6】多種燃料内燃機関の制御装置の実施例3における航続距離表示動作について説明するフローチャートである。
【図7】多種燃料内燃機関の制御装置の実施例3における運転モード選択表示動作及び運転モード設定動作について説明するフローチャートである。
【図8】燃料の残存量と運転モードとの関係の一例を通常運転モード延長要求有無に応じて示したタイムチャートである。
【図9】多種燃料内燃機関の制御装置の実施例4における運転モード選択表示動作及び運転モード設定動作について説明するフローチャートである。
【図10】多種燃料内燃機関の制御装置の実施例4における運転モード選択表示動作及び運転モード設定動作の変形例について説明するフローチャートである。
【図11】実施例5の多種燃料内燃機関の制御装置の適用対象たる多種燃料内燃機関の構成について示す図である。
【図12】実施例5の多種燃料内燃機関の制御装置の航続距離表示動作及び補給燃料情報表示動作について説明するフローチャートである。
【図13】実施例6の多種燃料内燃機関の制御装置の適用対象たる多種燃料内燃機関の構成について示す図である。
【図14】実施例6の多種燃料内燃機関の制御装置の適用対象たる多種燃料内燃機関の変形例の構成について示す図である。
【符号の説明】
【0139】
1 電子制御装置
41A 第1燃料タンク
41B 第2燃料タンク
42A,42B 燃料残存量検出手段
50,150,250 燃料供給装置
81 表示手段
82 運転モード入力手段
83 カーナビゲーションシステム
91 走行距離検出手段
831 表示手段
832 入力手段
833 演算処理装置
CC 燃焼室
C 過去一定期間の第1燃料と第2燃料とを合わせた平均的な燃費、目的地までの燃費
L 過去一定期間の第1燃料の燃費
H 過去一定期間の第2燃料の燃費
L0 第1燃料のみで運転するときの燃費
D 航続距離
1 過去一定期間の走行距離
2 目的地までの走行距離
F1 第1燃料
F2 第2燃料
M 運転モード
R 燃料混合比
RC 道路状況
L 第1燃料の残存量
H 第2燃料の残存量
L1 過去一定期間の第1燃料の燃料消費量
H1 過去一定期間の第2燃料の燃料消費量
L2 第1燃料の目的地までの必要燃料量
H2 第2燃料の目的地までの必要燃料量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料容器に種別毎に貯留された複数種類の燃料が燃焼室内にて運転条件に応じた燃料含有比率となるよう個別に又は混合して供給される多種燃料内燃機関の制御装置において、
前記各燃料の残存量及び過去の運転条件又は将来の運転条件に基づいて車輌の航続距離の推定を行う航続距離推定手段と、
この航続距離推定手段により推定された航続距離の情報を表示手段に対して表示させる走行情報表示制御手段と、
を備えたことを特徴とする多種燃料内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記各燃料の残存量の情報及び前記過去の各燃料の消費履歴情報又は前記将来の各燃料の消費予測情報を用いて先に消尽される燃料の推定を行う消尽燃料推定手段と、
通常運転モードと車輌の航続距離を延長させる待避運転モードとの間の切り替えが可能で、且つ、前記運転条件を変更させることによって前記先に消尽される燃料の消費を抑えて前記航続距離を延長できるか否か判定可能な運転モード切替手段と、
を設けたことを特徴とする請求項1記載の多種燃料内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記運転モード切替手段は、前記消尽燃料推定手段により高負荷用燃料と軽負荷用燃料の内の高負荷用燃料が先に消尽されると推定された場合、運転条件を変更させることで前記通常運転モードでの航続距離が延長可能か否か判定するよう構成したことを特徴とする請求項2記載の多種燃料内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−157149(P2008−157149A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−348330(P2006−348330)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】