説明

姿勢角検出装置、姿勢角検出方法、及び床面検出装置

【課題】コストがかかることがなく、姿勢角または走行する平面を検出する。
【解決手段】距離演算部28は、受光装置20で受光された反射光に基づいて、床面上の複数の点までの距離Lm(i)を演算する。姿勢検出部30は、受光装置20の各受光素子の出力から演算された各々の距離Lm(i)と、複数の候補姿勢角θ´の各々の場合における距離計測装置12から床面までの理論上の各々の距離Lr(θ´)とに基づいて、姿勢角θを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、姿勢角検出装置、姿勢角検出方法、及び床面検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の周波数で強度変調された光を対象物に対して出射してから、対象物からの反射光を受光部で受光するまでの時間に基づいて対象物までの距離を計測するタイムオブフライト方式の距離画像センサが知られている。また、この距離画像センサを用いて、移動体が走行する平面または観測対象物までの距離を計測する障害物検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。距離画像センサは、所定の高さで斜め下向きに所定の姿勢角(所定の傾き)で、移動体に搭載されている。この障害物検出装置は、移動体の走行時の振動等により変動する姿勢角の各々に対応する平面の距離画像を候補基準画像として記憶手段に記憶している。これにより、姿勢角が変動した場合であっても、測定した距離画像と、複数の候補基準画像とを比較し、一致度が最も高い候補基準画像を用いることによって、走行する平面を検出することができる。
【特許文献1】特開2006−262009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の障害物検出装置では、候補基準画像を、ロール方向、ピッチ方向について、変動が予測される姿勢角毎に予め用意しておく必要がある。例えば、予測される姿勢角の変動の範囲をロール方向±10°、ピッチ方向±20°とし、1°毎に記憶手段に記憶する場合には、20×40=800パターンもの候補基準画像を記憶手段に記憶しておく必要がある。しかしながら、800パターンもの候補基準画像を記憶するためには、容量が大きい記憶手段が必要となる。このような容量が大きい記憶手段を用いるとコストがかかってしまう。そのため、特許文献1に記載の障害物検出装置は、姿勢角が変動した場合に走行する平面を検出するためには、コストがかかってしまう、という問題点がある。
【0004】
本発明は上記問題点を解決するために成されたもので、コストがかかることがなく、姿勢角を検出する姿勢角検出装置、姿勢角検出方法、及び走行する平面を検出する床面検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために第1の発明に係る姿勢角検出装置は、床面上に変調光を照射する光源、及び前記光源から照射された光の反射光を受光する複数の受光素子が配列された受光手段を備え、前記床面から所定の高さの位置に前記床面に対して所定の姿勢角になるように設けられた計測手段と、前記受光手段で受光された反射光に基づいて、前記床面上の複数の点までの距離を演算する距離演算手段と、前記受光手段の各受光素子の出力から演算された各々の距離と、複数の候補姿勢角の各々の場合における前記計測手段から前記床面までの理論上の各々の距離とに基づいて、前記姿勢角を検出する姿勢角検出手段とを含んで構成されている。
【0006】
第1の発明に係る姿勢角検出装置によれば、距離演算手段は、受光手段で受光された反射光に基づいて、床面上の複数の点までの距離を演算する。姿勢角検出手段は、受光手段の各受光素子の出力から演算された各々の距離と、複数の候補姿勢角の各々の場合における計測手段から床面までの理論上の各々の距離とに基づいて、姿勢角を検出する。従って、第1の発明に係る姿勢角検出装置によれば、容量の大きい記憶手段を必要とすることなく、姿勢角を検出することができる。よって、第1の発明に係る姿勢角検出装置は、コストがかかることなく、姿勢角を検出することができる。
【0007】
上記の目的を達成するために第2の発明に係る姿勢角検出装置は、床面上に変調光を照射する光源、及び前記光源から照射された光の反射光を受光する複数の受光素子が配列された受光手段を備え、前記床面から所定の高さの位置に前記床面に対して所定の姿勢角になるように設けられた計測手段と、前記受光手段で受光された反射光に基づいて、前記床面上の複数の点までの距離を演算する距離演算手段と、前記受光手段の各受光素子の出力から演算された各々の距離に基づいて定まる近似平面と、複数の候補姿勢角の各々の場合における理論上の各々の平面とに基づいて、前記姿勢角を検出する姿勢角検出手段とを含んで構成されている。
【0008】
第2の発明に係る姿勢角検出装置によれば、距離演算手段は、受光手段で受光された反射光に基づいて、床面上の複数の点までの距離を演算する。姿勢角検出手段は、受光手段の各受光素子の出力から演算された各々の距離に基づいて定まる近似平面と、複数の候補姿勢角の各々の場合における理論上の各々の平面とに基づいて、姿勢角を検出する。従って、第2の発明に係る姿勢角検出装置によれば、特に、床面に対する障害物の占める範囲が小さい場合や、床面上に障害物が存在しない場合などには、容量の大きい記憶手段を必要とすることなく、姿勢角を検出することができる。よって、第2の発明に係る姿勢角検出装置は、コストがかかることなく、姿勢角を検出することができる。
【0009】
また、第1または第2の発明に係る姿勢角検出装置における前記距離演算手段は、前記受光手段によって受光された反射光の受光量が所定量以下の場合には、所定の距離を示す情報を演算することができる。これにより、所定の距離を示す情報を、例えば、距離の計測が不可能であることを示す情報とすることで、所定の周波数で光が1周期に進む距離より大きい距離に存在する床面までの距離を距離の計測が不可能であることを示す情報として演算することができるので、距離の計測の誤りを防止することができる。また、所定の距離を示す情報を、例えば、光源から光が照射されてから受光手段によって反射光が受光されるまでの時間に応じて定まる床面までの距離と所定の周波数で光が1周期に進む距離とを加算した距離を示す情報とすることで、所定の周波数で光が1周期に進む距離より大きい距離に存在する床面までの距離を正確に演算することができるので、距離の計測の誤りを防止することができる。
【0010】
上記の目的を達成するために第3の発明に係る床面検出装置は、第1の発明に係る距離計測装置または第2の発明に係る距離計測装置と、前記姿勢角検出手段によって検出された姿勢角に基づいて、床面を検出する床面検出手段とを含んで構成されている。これにより、容量の大きい記憶手段を必要とすることなく、床面を検出することができる。よって、第3の発明に係る床面検出装置は、コストがかかることなく、床面を検出することができる。
【0011】
上記の目的を達成するために第4の発明に係る姿勢角検出方法は、床面上に変調光を照射する光源、及び前記光源から照射された光の反射光を受光する複数の受光素子が配列された受光手段を備え、前記床面から所定の高さの位置に前記床面に対して所定の姿勢角になるように設けられた計測手段の受光手段が前記反射光を受光し、前記受光手段で受光された反射光に基づいて、前記床面上の複数の点までの距離を演算し、前記受光手段の各受光素子の出力から演算された各々の距離と、複数の候補姿勢角の各々の場合における前記計測手段から前記床面までの理論上の各々の距離とに基づいて、前記姿勢角を検出する。
【0012】
第4の発明に係る姿勢角検出方法によれば、受光手段で受光された反射光に基づいて、床面上の複数の点までの距離を演算し、受光手段の各受光素子の出力から演算された各々の距離と、複数の候補姿勢角の各々の場合における計測手段から床面までの理論上の各々の距離とに基づいて、姿勢角を検出する。従って、第4の発明に係る姿勢角検出方法によれば、容量の大きい記憶手段を必要とすることなく、姿勢角を検出することができる。よって、第4の発明に係る姿勢角検出方法は、コストがかかることなく、姿勢角を検出することができる。
【0013】
上記の目的を達成するために第5の発明に係る姿勢角検出方法は、床面上に変調光を照射する光源、及び前記光源から照射された光の反射光を受光する複数の受光素子が配列された受光手段を備え、前記床面から所定の高さの位置に前記床面に対して所定の姿勢角になるように設けられた計測手段の受光手段が前記反射光を受光し、前記受光手段で受光された反射光に基づいて、前記床面上の複数の点までの距離を演算し、前記受光手段の各受光素子の出力から演算された各々の距離に基づいて定まる近似平面と、複数の候補姿勢角の各々の場合における理論上の各々の平面とに基づいて、前記姿勢角を検出する。
【0014】
第5の発明に係る姿勢角検出方法によれば、受光手段で受光された反射光に基づいて、床面上の複数の点までの距離を演算し、受光手段の各受光素子の出力から演算された各々の距離に基づいて定まる近似平面と、複数の候補姿勢角の各々の場合における理論上の各々の平面とに基づいて、姿勢角を検出する。従って、第5の発明に係る姿勢角検出方法によれば、容量の大きい記憶手段を必要とすることなく、姿勢角を検出することができる。よって、第5の発明に係る姿勢角検出方法は、コストがかかることなく、姿勢角を検出することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の姿勢角検出装置、姿勢角検出方法、及び床面検出装置によれば、コストがかかることなく、姿勢角または床面を検出することができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0017】
図1に示すように、本発明の実施の形態の床面検出装置1は、姿勢角検出装置10と、走行体16とを含んで構成されている。姿勢角検出装置10は、距離計測装置12と、制御装置13とを含んで構成されている。姿勢角検出装置10は、床面を走行する走行体16に搭載されている。
【0018】
距離計測装置12は、図2に示すように、床面から所定の高さHの位置に、光源18から照射される光の光軸70と水平方向との成す角度が所定の姿勢角θ、例えば姿勢角30°で設置されている。
【0019】
距離計測装置12は、図3に示すように、距離演算装置15と、光源18と、受光装置20とを備えている。
【0020】
光源18は、図4に示すように、マトリックス状に配列された光を照射するLEDを複数個、例えば50〜60個含んで構成されている。各LEDは、光源制御部22からの制御によって、所定周波数、例えば20MHzの正弦波で強度変調された光を照射する。
【0021】
受光装置20は、複数の受光素子を含んで構成されており、例えば、複数の画素を備えたCMOSセンサを含んで構成されている。受光装置20は、対象物22または床面からの反射光を受光する。また、受光装置20は、受光した反射光の光量に基づいて検出信号を出力する。
【0022】
距離演算装置15は、各種処理ルーチンを実行するプログラム等を記憶した記憶媒体としてのROM(図示せず)、プログラムをROMから読み出して実行するCPU(図示せず)、データを一時的に記憶するRAM(図示せず)、及びI/O(入出力)ポート(図示せず)を含んだマイクロコンピュータで構成されている。距離演算装置15は、光源制御部22、飛行時間算出部24、受光量検出部26、及び距離演算部28を備えている。
【0023】
光源制御部22は、所定の周波数、例えば20MHzの正弦波で強度変調された変調光を照射するように光源18を制御する。また、光源制御部22は、光源18の制御タイミングを示す信号を出力する。
【0024】
飛行時間算出部24は、受光装置20からの検出信号等によって、光源18から照射された光と受光装置20によって受光した反射光の位相のずれを検出する。そして、飛行時間算出部24は、検出した位相のずれに基づいて、光源18から光が照射されてから受光装置20によって反射光が受光されるまでの時間を算出する。
【0025】
受光量検出部26は、受光装置20によって受光された反射光の受光量を検出する。
【0026】
距離演算部28は、基準受光量算出処理及び距離演算処理を行う。
【0027】
基準受光量算出処理では、距離演算部28は、飛行時間算出部24で算出された時間に基づいて、床面または対象物22までの仮の距離を受光装置20の受光素子毎に計算する。そして、距離演算部28は、図5に示すように、計算された仮の距離のうち、所定値以下、例えば、0.3m以下の距離が計算された受光素子が受光した受光量の最大値Rmaxと、その際に演算された距離X1とを用いて、以下の式(1)によって、反射率rを算出する。
Rmax=r/(X1)・・・・・式(1)
【0028】
そして、距離演算部28は、算出された反射率rと距離計測装置12に固有である最大計測距離Xmax(本実施の形態では7.5m)とを用いて、以下の式(2)によって、最大計測距離Xmaxにおける反射光強度Rを算出する。なお、この最大計測距離Xmaxは、距離計測装置12に固有の値であり、光源18から照射される光の周波数等に基づいて定まる。
R=r/(Xmax)・・・・・式(2)
【0029】
そして、距離演算部28は、式(2)により算出されたRを距離演算処理で用いる基準受光量Rrefとして算出する。
【0030】
距離演算処理では、距離演算部28は、受光量検出部26によって検出された受光量が基準受光量Rrefより大きい受光素子については、飛行時間算出部24で算出された時間に基づいて、床面または対象物22までの距離を演算する。一方、距離演算部28は、受光量が基準受光量Rref以下の受光素子については、距離の計測が不可能であることを示す情報を床面または対象物22までの距離を示す情報として演算する。
【0031】
従来、図6(A)に示すように、最大計測距離Xmax(本実施の形態では7.5m)を超えた距離に存在する対象物22、例えば、8.5mの距離に存在する対象物22を1.0mと誤計測していた。これは、1波長よりも大きく位相がずれている場合であっても、この位相のずれを1波長以内の位相のずれとみなして、光の飛行時間を算出しているためである。本実施形態のような、基準受光量算出処理及び距離演算処理を距離演算部28が行うことにより、図6(B)に示すように、最大計測距離Xmaxを超えた位置に存在する対象物22については、距離の計測が不可能であることを示す情報を、距離を示す情報として演算することで、誤計測が無くなる。
【0032】
なお、距離演算処理において、受光量が基準受光量Rref以下の受光素子については、図6(C)に示すように、飛行時間算出部24によって算出された時間に応じて定まる床面または対象物22までの距離に、所定の周波数で光が1周期に進む距離を加えることによって床面または対象物22までの距離を示す情報を演算するようにしてもよい。このようにすることで、最大計測距離Xmax(本実施の形態では7.5m)を超えた距離に存在する対象物22、例えば、8.5mの距離に存在する対象物22を8.5m(=1.0m+7.5m)と正確に計測することができる。
【0033】
制御装置14は、姿勢検出処理ルーチンを実行するプログラム、及び各種処理ルーチンを実行するプログラム等を記憶した記憶媒体としてのROM(図示せず)、プログラムをROMから読み出して実行するCPU(図示せず)、データを一時的に記憶するRAM(図示せず)、及びI/O(入出力)ポート(図示せず)を含んだマイクロコンピュータで構成されている。制御装置14は、姿勢検出部30、設置条件記憶部32、及び理論距離演算部34を備えている。
【0034】
設置条件記憶部32には、候補姿勢角θ´が複数記憶されている。この候補姿勢角θ´は、走行体16が走行した際に距離計測装置12に振動が加わったことにより、移動体16の進行方向(ピッチ方向)に、姿勢角θが所定の姿勢角θ(本実施の形態では、例えばθ=30°)からずれた場合に予想される距離計測装置12の姿勢角θを表す。例えば、本実施の形態では、予め距離計測装置12の姿勢角を30°として設置した場合に、走行体16が走行した際に姿勢角が最大で±5°ずれることが予想されるとする。このときには、設置条件記憶部32に、25°から35°までの、例えば1°毎の候補姿勢角θ´を記憶しておく。また、設置条件記憶部32には、床面から距離計測装置12までの高さHが記憶されている。
【0035】
理論距離演算部34は、設置条件記憶部32に記憶されている高さH及び候補姿勢角θ´を用いて、距離計測装置12の姿勢角θが各候補姿勢角θ´である場合の距離計測装置12から床面までの光源18の光軸70上における理論上の距離(理論距離)を演算する。
【0036】
姿勢検出部30は、距離演算部28で演算された、受光装置20の複数の受光素子のそれぞれの距離のうち、N個の受光素子のそれぞれに対応する距離と、理論距離演算部34によって演算された、候補姿勢角θ´毎の理論距離とに基づいて、距離計測装置12の姿勢角θを検出する。
【0037】
走行体16は、床面を検出する床面検出部36を備えている。
【0038】
床面検出部36は、距離演算部28で演算された受光素子毎の距離、姿勢検出部30によって検出された姿勢角θ等を用いて床面を検出する。そして、床面検出部36は、検出した床面に対する障害物を検出する。そして、床面検出部36は、検出した障害物に対応するように、走行体16の走行(例えば、移動速度及び移動方向)を制御する。
【0039】
次に、制御装置14のCPUが行う姿勢検出処理ルーチンについて図7を用いて説明する。なお、本実施の形態において、この姿勢検出処理ルーチンは、床面検出部36からの信号に基づいて走行体16が所定距離を走行する毎に実行される。
【0040】
まずステップ100で、姿勢検出部30は、図8に示すように、距離演算部28によって演算された、受光装置20のCMOSセンサの複数の受光素子の床面までの距離のうち、N個の受光素子の各々から床面m(i)(i=1、2、・・・、N)までの距離Lm(i)(i=1、2、・・・、N)を取得する。ここで、N個の受光素子についてはどのような方法で選んでもよく、受光装置20の複数の受光素子のうち、等間隔となるようにN個の受光素子を選んでもよい。なお、同図に図示されるθm(i)(i=1、2、・・・、N)は、床面m(i)の各々から反射されて受光装置20(P)まで到達する光と、床面との成す角度を表している。
【0041】
次のステップ102では、理論距離演算部34は、図9に示すように、設置条件記憶部32に記憶されている各候補姿勢角θ´と高さHとから、距離計測装置12の姿勢角θが各候補姿勢角θ´である場合の距離計測装置12から床面までの光源18の光軸70上における理論距離Lr(θ´)(θ´=25、26、・・・、35)を下記の式(3)により演算する。
【0042】
Lr(θ´)=H/sinθ´・・・・・式(3)
なお、図9には、例として、候補姿勢角θ´が25°の場合(A)、候補姿勢角θ´が26°の場合(B)、候補姿勢角θ´が35°の場合(C)における理論距離Lr(25)、Lr(26)、Lr(35)が示されている。
【0043】
この結果、複数の候補姿勢角θ´の各々について、理論距離Lr(θ´)が演算される。
【0044】
次のステップ104では、姿勢角検出部30は、ステップ102で演算した理論距離Lr(θ´)(θ´=25、26、・・・、35)とステップ100で取得した距離Lm(i)(i=1、2、・・・、N)の各々とを比較して、比較結果に基づいたヒストグラムを作成する。具体的には、姿勢角検出部30は、各々の候補姿勢角θ´において、理論距離Lr(θ´)と複数の距離Lm(i)の各々との絶対値の差を示すN個の差分を算出する。そして、姿勢角検出部30は、算出したN個の差分のうち所定の閾値Q以下となる数を候補姿勢角θ´の点数として、θ´=25〜35の点数をそれぞれ算出する。(すなわち、|Lm(i)−Lr(θ´)|≦Qとなる数を候補姿勢角θ´の点数として、θ´=25〜35の点数をそれぞれ算出する。)
【0045】
以上のステップ100〜ステップ104の処理により、図10に示すようなヒストグラムが作成される。このヒストグラムは、候補姿勢角θ´の点数が高くなるに従って、その候補姿勢角θ´が実際の姿勢角θである可能性が高いことを表す。
【0046】
次のステップ106では、姿勢角検出部30は、点数が最大の候補姿勢角θ´を現在の距離計測装置12の姿勢角θとして検出する。
【0047】
なお、図10に示すようなヒストグラムが作成された場合には、点数が最大である候補姿勢角θ´は29°であるので、姿勢角検出部30は、29°を現在の距離計測装置12の姿勢角θとして検出する。
【0048】
以上の姿勢角検出処理によって、距離計測装置12の実際の姿勢角θが検出される。
【0049】
以上説明したように、本実施の形態の姿勢角検出装置10によれば、距離演算部28は、受光装置20で受光された反射光に基づいて、床面上の複数の点までの距離Lm(i)を演算する。姿勢検出部30は、受光装置20の各受光素子の出力から演算された各々の距離Lm(i)と、複数の候補姿勢角θ´の各々の場合における距離計測装置12から床面までの理論上の各々の距離Lr(θ´)とに基づいて、姿勢角θを検出する。従って、本実施の形態の姿勢角検出装置10によれば、容量の大きい記憶手段を必要とすることなく、姿勢角θを検出することができる。よって、本実施の形態の姿勢角検出装置10は、コストがかかることなく、姿勢角を検出することができる。
【0050】
また、本実施の形態の姿勢角検出装置10は、受光量検出部26によって検出された受光量が基準受光量Rref以下の場合には、姿勢角検出装置10から、所定の周波数で光が1周期に進む距離以上の距離に存在する床面または対象物22までの距離を距離の計測が不可能であることを示す情報として演算する。従って、本実施の形態の姿勢角検出装置10によれば、距離の計測の誤りを防止することができる。
【0051】
なお、上記で説明した姿勢角検出処理ルーチンは、上述したステップ104及びステップ106に限定されるものではない。例えば、ステップ104及びステップ106において、姿勢検出部30は、候補姿勢角θ´毎に、理論距離Lr(θ´)と複数の距離Lm(i)の差分の絶対値の総和(Σ|Lr(θ´)−Lm(i)|)を示すヒストグラムを作成し、理論距離Lr(θ´)と複数の距離Lm(i)の差分の絶対値の総和が最も小さくなる候補姿勢角θ´を現在の距離計測装置12の姿勢角θとして検出してもよい。
【0052】
また、上記で説明した姿勢角検出処理ルーチンは、上述したステップ106に限定されるものではない。上述したステップ106で検出される姿勢角θは整数値であるが、ステップ104で作成されたヒストグラムの重心計算を行うことにより、姿勢角θを検出してもよい。これにより、姿勢角θは、小数値となる場合がある。
【0053】
また、上記で説明した姿勢角検出処理ルーチンは、上述したステップ102からステップ106に限定されるものではない。例えば、ステップ102からステップ106において、ステップ100で取得したN個の受光素子の各々の距離に基づいて、最小二乗法等の多変量解析手法を用いて求めた近似平面の式と、複数の候補姿勢角θ´の各々から計算可能な床面を表す理論上の各々の平面の式とを比較し、最も一致度が高い理論上の平面の式における候補姿勢角θ´を姿勢角θとして検出するようにしてもよい。これにより、特に、床面に対する障害物の占める範囲が小さい場合や、床面上に障害物が存在しない場合などには、姿勢角を検出することができる。
【0054】
また、上記で説明した姿勢角検出処理ルーチンは、ピッチ方向に姿勢角θがずれることが予想される場合に、その姿勢角θを検出する例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ピッチ方向と水平面内において直角であるロール方向に姿勢角θがずれることが予想される場合に、その姿勢角θを検出することについても同様の原理で行うようにしてもよい。
【0055】
また、上記で説明した距離演算部28が行う基準受光量算出処理及び距離演算処理は上述した内容に限定されるものではなく、以下のように行ってもよい。例えば、基準受光量算出処理において、距離演算部28は、飛行時間算出部24で算出された時間に基づいて、床面または対象物22までの仮の距離を受光装置20の受光素子毎に計算する。そして、距離演算部28は、計算された仮の距離のうち、所定値以下、例えば0.3m以下の距離が計算された受光素子が受光した受光量の平均値を距離演算処理で用いる基準受光量として算出する。なお、基準受光量として、0.3m以下の距離が計算された受光素子が受光した受光量の最大値と最小値とを足したものを2で割った値を基準受光量としてもよい。距離演算処理では、距離演算部28は、基準受光量算出処理で計算された距離が0.3mより大きい受光素子については計算された距離を床面または対象物22までの距離として演算する。基準受光量算出処理で計算された距離が0.3m以下の受光素子については、受光量検出部26によって検出された受光量が基準受光量より大きい受光素子の場合には、飛行時間算出部24で算出された時間に基づいて、対象物22までの距離を演算する。一方、受光量検出部26によって検出された受光量が基準受光量以下の受光素子の場合には、距離演算部28は、距離の計測が不可能であることを示す情報を対象物22までの距離を示す情報として演算する。
【0056】
また、本実施の形態において、距離計測装置12の姿勢角θを、光源18から照射される光の光軸70と水平方向との成す角度とする例について説明したが、光源18から照射される光の光軸70と鉛直方向との成す角度としてもよい。このとき、上記の説明で用いたsinθはsin(90−θ)として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本実施の形態における床面検出装置の配置位置を示す図である。
【図2】本実施の形態における距離計測装置の配置位置を示す図である。
【図3】本実施の形態を示す概略図である。
【図4】本実施の形態における光源を説明するための図である。
【図5】距離と反射光強度の関係を示す図である。
【図6】本実施の形態の効果を示す図である。
【図7】本実施の形態における制御装置のCPUが行う姿勢検出処理ルーチンのフローチャートを示す図である。
【図8】本実施の形態における光源からの光の照射範囲を示す図である。
【図9】本実施の形態における理論距離を説明するための図である。
【図10】本実施の形態における候補姿勢角のヒストグラムを示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 床面検出装置
10 姿勢角検出装置
12 距離計測装置
14 制御装置
15 距離演算装置
18 光源
20 受光装置
22 光源制御部
24 飛行時間算出部
26 受光量検出部
28 距離演算部
30 姿勢検出部
32 設置条件記憶部
34 理論距離演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面上に変調光を照射する光源、及び前記光源から照射された光の反射光を受光する複数の受光素子が配列された受光手段を備え、前記床面から所定の高さの位置に前記床面に対して所定の姿勢角になるように設けられた計測手段と、
前記受光手段で受光された反射光に基づいて、前記床面上の複数の点までの距離を演算する距離演算手段と、
前記受光手段の各受光素子の出力から演算された各々の距離と、複数の候補姿勢角の各々の場合における前記計測手段から前記床面までの理論上の各々の距離とに基づいて、前記姿勢角を検出する姿勢角検出手段と、
を含む姿勢角検出装置。
【請求項2】
床面上に変調光を照射する光源、及び前記光源から照射された光の反射光を受光する複数の受光素子が配列された受光手段を備え、前記床面から所定の高さの位置に前記床面に対して所定の姿勢角になるように設けられた計測手段と、
前記受光手段で受光された反射光に基づいて、前記床面上の複数の点までの距離を演算する距離演算手段と、
前記受光手段の各受光素子の出力から演算された各々の距離に基づいて定まる近似平面と、複数の候補姿勢角の各々の場合における理論上の各々の平面とに基づいて、前記姿勢角を検出する姿勢角検出手段と、
を含む姿勢角検出装置。
【請求項3】
前記距離演算手段は、前記受光手段によって受光された反射光の受光量が所定量以下の場合には、所定の距離を示す情報を演算する請求項1または請求項2に記載の姿勢角検出装置。
【請求項4】
前記所定の距離を示す情報は、距離の計測が不可能であることを示す情報である請求項3に記載の姿勢角検出装置。
【請求項5】
前記所定の距離を示す情報は、前記光源から光が照射されてから前記受光手段によって反射光が受光されるまでの時間に応じて定まる前記床面までの距離と、前記所定の周波数で光が1周期に進む距離とを加算した距離を示す情報である請求項3に記載の姿勢角検出装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の姿勢角検出装置と、
前記姿勢角検出手段によって検出された前記姿勢角に基づいて、床面を検出する床面検出手段と、
を含む床面検出装置。
【請求項7】
床面上に変調光を照射する光源、及び前記光源から照射された光の反射光を受光する複数の受光素子が配列された受光手段を備え、前記床面から所定の高さの位置に前記床面に対して所定の姿勢角になるように設けられた計測手段の受光手段が前記反射光を受光し、
前記受光手段で受光された反射光に基づいて、前記床面上の複数の点までの距離を演算し、
前記受光手段の各受光素子の出力から演算された各々の距離と、複数の候補姿勢角の各々の場合における前記計測手段から前記床面までの理論上の各々の距離とに基づいて、前記姿勢角を検出する
姿勢角検出方法。
【請求項8】
床面上に変調光を照射する光源、及び前記光源から照射された光の反射光を受光する複数の受光素子が配列された受光手段を備え、前記床面から所定の高さの位置に前記床面に対して所定の姿勢角になるように設けられた計測手段の受光手段が前記反射光を受光し、
前記受光手段で受光された反射光に基づいて、前記床面上の複数の点までの距離を演算し、
前記受光手段の各受光素子の出力から演算された各々の距離に基づいて定まる近似平面と、複数の候補姿勢角の各々の場合における理論上の各々の平面とに基づいて、前記姿勢角を検出する
姿勢角検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−298742(P2008−298742A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148272(P2007−148272)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】