説明

封止フィルム

【課題】 低コストで簡便に光取出し効率を上げることができて安定した品質で耐久性のある封止フィルムを提供する。
【解決手段】 光学フィルム及び接着フィルムからなり、該光学フィルムのガラス転移温度が60℃以上で、接着フィルムのガラス転移温度が130℃以下であり、接着フィルムの屈折率が1.42以上であり、(1)接着フィルムと反対側の光学フィルムの面に平均溝深さ0.1μm以上の凹凸又は屈折率差0.2以上の屈折率変化をもつ屈折率分布があるか若しくは(2)光学フィルム内部に屈折率差0.015以上の屈折率変化をもつ屈折率分布構造があるか又は(3)光学フィルムと接着フィルムの界面に平均溝深さ0.1μm以上の凹凸がある透明な封止フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子の光取出し効率を向上させるため又は出射角を制御するための透明な封止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、白色LEDや有機EL、無機ELといった蛍光灯や白熱灯に代わる発光素子を照明へ適用する研究が盛んになってきた。これらの発光素子は発光体が高屈折率のものが多く、光が素子表面で反射してしまうため発光効率が低くなることが問題となっている。そこで、発光効率を上げるために、表面に反射防止構造を設ける試みが種々行われている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0003】
しかし、これらの方法は硬いサファイヤや半導体素子を直接加工する方法であり、コストがかかっていた。低コストで反射防止を行うためには、樹脂構造の反射防止への適用が考えられる。樹脂を反射防止に用いる場合には、樹脂と空気、樹脂と発光面の二つの界面が生じ、それぞれについて、反射防止を行うことになる。
【0004】
このうち樹脂と空気の界面の反射防止については多くの検討がなされている(例えば、特許文献5〜14参照)。
また、樹脂表面の反射防止構造の作製方法として、例えば、接着剤を熱硬化して封止する際に、スタンパを用いて樹脂表面に凹凸を作製する方法が開示されている。(例えば、特許文献15参照)。
【0005】
樹脂と発光面の界面について反射防止する手段として、高屈折率の封止フィルムを用いる方法がある。
しかし、一般の透明樹脂を、高屈折率にするのは難しい。ひとつの解決策として樹脂に高屈折率超微粒子を混ぜる方法がある。(例えば、特許文献16〜19参照)。
また、特許文献20に樹脂と発光面の界面に回折格子を設ける方法も提案されており、フォトリソグラフィーで回折格子を作製する方法が開示されている。
【0006】
ここで用いられる封止フィルムには、接着性だけでなく、高い耐熱性及び高い透明性が求められる(例えば、特許文献21及び22参照)。
一方で、一般の照明では光取出し効率の均一性が重要である。シャボン玉の膜厚は均一でないために、虹が発生するが、同様に、封止のさいにおける膜厚のばらつきは、照明の輝度や色合いの品質のばらつきにつながる。
【0007】
【特許文献1】特開2003−86835号公報
【特許文献2】特開2006−49855号公報
【特許文献3】特開2006−286710号公報
【特許文献4】特開2006−294907号公報
【特許文献5】特開2004−311153号公報
【特許文献6】特開2004−335183号公報、
【特許文献7】特開2005−190931号公報、
【0008】
【特許文献8】特開2004−296429号公報
【特許文献9】特開2005−317228号公報
【特許文献10】特開2005−317254号公報
【特許文献11】特開2005−322489号公報
【特許文献12】特開2005−322490号公報
【特許文献13】特開2005−327522号公報
【特許文献14】特開2005−327535号公報
【0009】
【特許文献15】特開2005−294733号公報
【特許文献16】特開2006−140362号公報
【特許文献17】特開2004−238441号公報
【特許文献18】特開2004−139977号公報
【特許文献19】特開2005−301769号公報
【特許文献20】特開2006−156400号公報
【特許文献21】特開2004−266134号公報
【特許文献22】特開2006−316264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上の点から、有機及び無機の高屈折率発光素子の表面での反射を抑え、簡便に封止できるよう接着性を持ち、さらに、耐熱性があり、透過率が高く、封止フィルムの表面での反射が少ない封止フィルムを用いることで光取出し効率を上げることが望まれている。
本発明は、低コストで簡便に光取出し効率を上げることができて安定した品質で耐久性のある封止フィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、高屈折率の接着フィルムの作製方法と、接着フィルムより低屈折率の光取出し効率を上げる屈折率分布構造を持つ光学フィルムの材料選定方法及びその接着フィルムと光学フィルムよりなる封止フィルムの膜厚や凹凸形状の設計及び作製方法、さらに発光素子への封止方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本発明の第一の要点は凹凸一体型の封止フィルムとすることにより、フィルムを貼り付けるだけで、封止フィルム表面の反射率を低減し、光取出し効率の向上を図ることにある。封止時、あるいは封止後に凹凸を作製する手法と比較して、封止フィルムの凹凸をロール転写で作製できるために、格段に生産性を上げることができる。また、発光面上の膜厚を一定にできるので光取出し効率が安定する。
【0013】
さらに、一括で封止できるので、工程が削減できる。上記封止フィルムは一般に加熱により封止されるが、そのさい凹凸の変形を防ぐために、凹凸を持つ光学フィルムの耐熱性を上げ、好ましくは熱可塑でない樹脂を用い、封止により光取出し効率が低下しないような材料を選択する必要がある。
また、光学フィルムと接着フィルムの線膨張係数の差を小さくして反りを抑えた。これにより、封止時のしわや剥がれを抑えることができる。
【0014】
本発明の第二の要点は、粒径が揃った微粒子を接着フィルム中に入れることで膜厚をさらに一定にできることである。熱圧着などで、発光面と光学フィルムの間にスペーサーとしての微粒子をはさみ、膜厚を粒径で規定することができる。
【0015】
また、この粒子の屈折率と発光面との屈折率差を調整することで、発光素子と封止フィルム界面での反射率を低減し、光取出し効率を上げることができる。フォトリソグラフィーで回折格子を発光素子の上面に設ける場合に比べ、簡便に効率を上げることができる。
上記目的を達成するために、本発明は、次の事項に関する。
【0016】
(1)光学フィルム及び接着フィルムからなり、該光学フィルムのガラス転移温度が60℃以上で、接着フィルムのガラス転移温度が130℃以下であり、接着フィルムの屈折率が1.42以上であり、(1)接着フィルムと反対側の光学フィルムの面に平均溝深さ0.1μm以上の凹凸又は屈折率差0.2以上の屈折率変化をもつ屈折率分布があるか若しくは(2)光学フィルム内部に屈折率差0.015以上の屈折率変化をもつ屈折率分布構造があるか又は(3)光学フィルムと接着フィルムの界面に平均溝深さ0.1μm以上の凹凸がある透明な封止フィルム。
【0017】
(2)前記接着フィルムが、膜厚が0.1μm以上14μm以下で、屈折率が1.6以上の接着フィルムB及び接着フィルムBに隣接する接着フィルムAを含み、接着フィルムAとBとの屈折率の差が0.1以上あり、接着フィルムの膜厚が100μm以上である上記(1)記載の封止フィルム。
【0018】
(3)前記接着フィルムが、膜厚が0.1μm以上14μm以下で、屈折率が1.6以上であり、光学フィルムの基材部分の膜厚が10μm以下で、屈折率が1.6以下である上記(1)又は(2)記載の封止フィルム。
【0019】
(4)前記接着フィルムが、接着フィルムA及び接着フィルムAに隣接する接着フィルムBを含み、接着フィルムBがアミド又はイミド樹脂若しくはシリコーン樹脂を計10%以上含み、かつ平均粒径が10μm以下の無機フィラを1%以上含み、接着フィルムAにはアミド又はイミドを持つ樹脂を含まないか又は10%以下含み、エポキシ樹脂を20%以上含む上記(1)〜(3)のいずれかに記載の封止フィルム。
【0020】
(5)前記接着フィルムが、接着フィルムA及び接着フィルムAに隣接する接着フィルムBを含み、接着フィルムA、Bが、(a)エポキシ樹脂、(b)官能基を含む重量平均分子量が10万以上である高分子量成分及び(c)イミダゾール化合物を含有してなる接着剤組成物からなり、該接着剤組成物は、上記エポキシ樹脂の硬化前は上記高分子量成分と相溶し、上記エポキシ樹脂の硬化後は上記高分子量成分と相分離して海島構造を形成し、フィルムに垂直な断面で見たときの接着フィルムA中央部の海と島の幅の平均がそれぞれ0.3μm以下で、接着フィルムB中央部の海と島の幅の平均がそれぞれ0.3μm以上である接着フィルムを含む上記(1)〜(4)のいずれかに記載の封止フィルム。
【0021】
(6)前記接着フィルムが、接着フィルムA及び接着フィルムAに隣接する接着フィルムBを含み、接着フィルムAが、架橋性官能基を含む重量平均分子量が10万以上かつガラス転移温度Tgが−50〜50℃である高分子量成分15〜40%及びエポキシ樹脂を主成分とする熱硬化性成分60〜85%を含む樹脂100重量部と、無機フィラ20〜200重量部とを含有し、厚さが100〜10000μmであり、接着フィルムBが接着フィルムAより屈折率が0.1以上高い上記(1)〜(5)のいずれかに記載の封止フィルム。
【0022】
(7)前記光学フィルムと光学フィルムに接する接着フィルムの線膨張係数の差が、0.5×10−4以下である上記(1)〜(6)のいずれかに記載の封止フィルム。
(8)前記光学フィルムが、熱硬化性樹脂からなる上記(1)〜(7)のいずれかに記載の封止フィルム。
(9)前記光学フィルム又は接着フィルムが、燐光ないし蛍光性材料を含む上記(1)〜(8)のいずれかに記載の封止フィルム。
【0023】
(10)前記接着フィルム中に含まれる粒子が、接着フィルムの膜厚の0.04〜0.6倍の範囲内の平均粒径を持ち、かつ平均粒径が0.4μm以上100μm以下であり、しかも、粒径の大きい粒子から体積で10%に入る粒子の平均粒径が、全体の粒子の1.5倍より小さい上記(1)〜(9)のいずれかに記載の封止フィルム。
【0024】
(11)前記接着フィルム中に含まれる粒子表面の屈折率と被接着面の屈折率との差の絶対値が、0.5以下で、粒子のモース硬度が5以下である上記(1)〜(10)のいずれかに記載の封止フィルム。
(12)前記接着フィルム中に含まれる粒子が、粒子内部よりも粒子表面の方が、屈折率の絶対値が高く、かつ、粒子内部の材料の貯蔵弾性率が1〜3000MPaである上記(1)〜(11)のいずれかに記載の封止フィルム。
【0025】
(13)前記接着フィルムが、発光面の屈折率との差の絶対値が0.5以下の粒子を含み、接着フィルムの接着面が研磨され、粒子の断面が表面に露出している上記(1)〜(12)のいずれかに記載の封止フィルム。
(14)前記接着フィルムが、発光面の屈折率との差の絶対値が0.5以下の粒子を含み、粒子の長径が短径よりも1.5倍以上長い上記(1)〜(13)のいずれかに記載の封止フィルム。
【0026】
(15)光学フィルム及び接着フィルムからなり、封止後の光学フィルムのガラス転移温度が60℃以上で、接着フィルムのガラス転移温度が60℃以上であり、接着フィルムと反対側の光学フィルムの面に平均溝深さ0.1μm以上の凹凸又は屈折率差0.2以上の屈折率変化をもつ屈折率分布があるか若しくは光学フィルム内部に屈折率差0.015以上の屈折率変化をもつ屈折率分布構造があるか又は光学フィルムと接着フィルムの界面に平均溝深さ0.1μm以上の凹凸があり、接着フィルムの屈折率が1.42以上である透明な封止フィルム。
【0027】
(16)封止後の接着フィルム粒子が、発光面の屈折率との差の絶対値が0.5以下であり、接着フィルムにおける膜厚の0.04〜0.6倍の範囲内の平均粒径を持ち、かつ平均粒径が0.4μm以上100μm以下であり、しかも、粒径の大きい粒子から体積で10%に入る粒子の平均粒径が、全体の粒子の平均粒径における1.5倍より小さく、封止後の接着フィルムの粒子が粒子の光学フィルムとの接触面積よりも発光面との接触面積の方が1.5倍以上大きい上記(15)記載の封止フィルム。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、反射防止機能を持つ封止フィルムを、多数の発光素子に一度で封止できるようになる。
また、ロール転写による大量生産が可能なため、低コストで作製できる。
さらに、膜厚のばらつきを抑えられるので安定した光取出し効率のものを作製できる。その結果、低コストで簡便に光取出し効率を上げることができ、安定した品質で耐久性のある封止フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
〔第1の実施形態〕
項(1)記載の本発明の封止フィルムは、光学フィルムと接着フィルムとからなり、光学フィルムのガラス転移温度が60℃以上であり、接着フィルムのガラス転移温度が130℃以下であり、接着フィルムの屈折率が1.42以上であり、(イ)接着フィルムと反対側の光学フィルムの面に平均溝深さ0.1μm以上の凹凸又は屈折率差0.2以上の屈折率変化をもつ屈折率分布があるか又は(ロ)光学フィルム内部に屈折率差0.015以上の屈折率変化をもつ屈折率分布構造があるか若しくは(ハ)光学フィルムと接着フィルムの界面に平均溝深さ0.1μm以上の凹凸があることを特徴とする透明な封止フィルムである。
【0030】
屈折率分布とは、異なる屈折率を持つ光の媒体が交互に並んでいる様をいう。光の媒体がたまたま空気である場合には凹凸となる。
また、光学フィルムとは、接着性や粘着性を有しない、表面又は内部に屈折率分布を有する透明なフィルムである。接着フィルムとは接着性又は粘着性を有するフィルムである。以下では、屈折率変化が凹凸による場合について説明するが、より広義の屈折率分布についても同様である。
【0031】
図1において、平均溝深さはある断面における各凸部の溝深さの平均値である。断面は最も深い溝を含むように切り取る。表面の凹凸は、断面を切ったときの凹凸の深さの平均を異なる方向の断面の切り口について算出したとき、単位長さあたりの溝の数と平均溝深さの積が最大となる方向の凹凸である。
【0032】
封止フィルムは、図2のように発光素子に貼り付けて用いることができる。貼り付け面は、白色LEDの場合は、白色に光を変換する蛍光体を含む層の上や青色の発光面の上である。有機ELの場合は、例えば、封止用ガラスの上である。
【0033】
光学フィルムは、封止フィルムの封止に要する熱硬化温度より高いガラス転移温度でないと、接着フィルムの熱硬化時に変形し、光取出し効率が落ちたり光取出し効率にばらつきが出る。熱硬化温度は60℃以上であるので、ガラス転移温度が60℃以上であり、100℃以上であることが好ましく、さらに好ましくは150℃以上で、200℃以上であることが最も好ましい。
【0034】
一方、接着フィルムのガラス転移温度が130℃以下でないと、フィルムの柔軟性が低くなる場合があり、熱硬化時に発光素子表面への段差追従性がないため、しわが発生しやすい。ガラス転移温度は、100℃以下であることがより好ましい。ガラス転移温度はさらに好ましくは50℃以下である。低い方が、低い温度で硬化でき、発光素子への熱によるダメージを小さくできる。
【0035】
接着フィルムと反対側の光学フィルムの面に平均溝深さ0.1μm以上の凹凸があるか、屈折率差0.015以上の屈折率変化をもつ構造を光学フィルム内部に有することで、出射面に対する斜め入射光の散乱を助け、光取出し効率を高くすることができる。この効果は回折効果又は表面に対する入射角が変化することによる物理光学的な効果である。凹凸の平均溝深さは0.8μm以上であることがより好ましい。回折効果が十分に発揮される深さは、mを自然数、nを光学フィルムの屈折率として、m・波長/(n−1)で定まる。
【0036】
〔(文献1)、ビクトール・ソイファー(Victor Soifer)、ビクトール・コトラール(Victor Kotlyar)とレオニード・ドスコロヴィッチ(Leonid Doskolovich)著:”アイテラティブ メソッド フォー ディフラクティブ オプティカル エレメンツ コンピュテーション (Iterative Methods for Diffractive Optical Elements Computation)”、(米国)、テイラー アンド フランシス(Taylor & Francis)、1997年、p.1−10、参照〕mが1、波長400nm及び屈折率1.5のとき、この深さは0.8μmとなる。
【0037】
表面の凹凸の平均溝幅は耐熱性を上げるために1μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましい。一般に、表面近傍のガラス転移温度はバルクのガラス転移温度より低いので表面積/体積が大きいと熱で変形しやすい。
【0038】
凹凸の測定にはAFM(原子間力顕微鏡)とSEM(走査型電子顕微鏡)を用いる。凹凸の深さが3μm以上又は凹凸の斜面が45度以上の急斜面のときには、SEMの結果を用いる。SEMはフィルムの断面を垂直に切り出して、観察する。AFMとしてはセイコーインスツルメント製Nanopicsを、SEMとしては、Philips製 XL30を用いることができる。
【0039】
屈折率の測定には硬化前の封止フィルムについては、プリズムカプラを用いることができる。例えば、メトリコン製Model 2010プリズムカプラを使うことができる。
硬化後の封止フィルムについては、干渉顕微鏡を用いることができる。例えば、株式会社溝尻光学工業所製の透過型二光束干渉顕微鏡が使える。測定用試料は必要に応じてミクロトームなどで切り出す。
【0040】
第1及び第2の実施形態では、光学及び接着フィルムのガラス転移温度は、分布が多層又は傾斜になっている場合は、光学フィルムに関しては層の厚み平均によるガラス転移温度を、接着フィルムに関しては最も低い層のガラス転移温度を使う。一方、層内で相分離している場合は層内の面積による平均のガラス転移温度を使う。
【0041】
フィルム内部の屈折率差が0.015以上のフィルムとして、例えば、特開平4−299303号公報に示される体積位相型ホログラムが挙げられる。屈折率差の大きい方が散乱の効率を上げることができる。その結果、光学フィルムに対して斜め入射する光を垂直方向に曲げ、光取出し効率を上げることができる。
【0042】
第1及び第2の実施形態では、光学及び接着フィルムの屈折率は、分布が多層又は傾斜になっている場合は最も高い層の屈折率を、層内で相分離している場合は層内の平均の屈折率を使う。
【0043】
透明であることで、光取出し効率を挙げることができる。透明の指標として、全光線透過率を使うことができる。全光線透過率はフレネル損失を含む数値で計算し、表面が平滑でフィルム自身に吸収がない場合、フィルムの屈折率が1.5であれば、全光線透過率が92%になる。
【0044】
光学フィルムの透明度は、厚さが10μmで全光線透過率50%以上が好ましく、さらに好ましくは80%以上である。透過率が高い方が、封止したときの輝度が高くなる。封止フィルムの全光線透過率は50%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。
【0045】
フィルムの全光線透過率の測定方法にはレーザを用いる。He−Neレーザ632.8nmの光を用い、パワーメータで測定する。偏光依存性を打ち消すために、入射光の偏光が90°異なる二つの条件で測定しその平均を以って測定値とする。
【0046】
さらに、必要に応じて、He−Cdレーザの442nmの光やArレーザの514.5nmの光でも同様に計測する。封止フィルムの測定では光は光学フィルムと反対側の接着フィルムの面から面に垂直に入射させる。出射光が明瞭な回折パターンのない拡散光となる場合には、光量の測定に積分球を用いても良い。
【0047】
接着フィルムの屈折率を1.42以上にすることで、屈折率の高い発光素子と接着フィルム間の屈折率差を小さくし、反射を抑えることができる。また透明にすることで、光吸収を抑え、光取出し効率を上げることができる。接着フィルムの屈折率は、1.6以上が好ましく、1.7以上がより好ましい。
【0048】
光学フィルムと接着フィルムの界面に平均溝深さ0.1μm以上の凹凸があっても良い。これにより、光学フィルムと接着フィルムの界面での反射を抑えたり出射角を制御したりできる。界面の凹凸の平均溝深さは2μm以上がより好ましい。回折効果が十分に発揮される深さは、mを自然数、n1を光学フィルムの屈折率、n2を接着フィルムの屈折率として、m・波長/|n1−n2|で定まる。
【0049】
mが1、波長400nm、n1が1.65、n2屈折率1.45のとき、この深さは2μmとなる。界面の凹凸の平均溝幅は、耐熱性を上げるために1μm以上であることが好ましく、3μm以上10μm以下がより好ましく、5μm以上7μm以下がさらに好ましい。
【0050】
ディスプレイ用途では周期が大きすぎると画素との干渉でモアレが出やすくなる。この凹凸が周期的で、平均溝幅が5μm以下である場合には、接着フィルムと反対側の光学フィルム面の凹凸が周期的でないほうが好ましい。なぜなら、分光による虹の発生を抑えることができるからである。
【0051】
また、特開2005−316178号公報に記載されているように、出射角を制御する場合には、光学フィルムの方が接着フィルムより屈折率が0.1以上高い方が好ましく、0.2以上高い方がより好ましい。出射角を制御することで、例えば、車のライトを必要な範囲だけ照らすことができる。これにより、対向車線の車がまぶしくないようにできる。
【0052】
接着フィルム及び光学フィルムの貯蔵弾性率及びtanδを、動的粘弾性測定装置(レオロジ社製、DVE−V4、自動静荷重)を用いて、次の条件で測定した。 サンプルサイズを長さ20mm、幅4mm及び膜厚80μmとし、昇温速度を5℃/min、測定モードを引張りモード、周波数を10Hzとした。ガラス転移温度はtanδのピーク温度を用いて算出した。ガラス転移温度が明瞭でないものについては、動的粘弾性測定による貯蔵弾性率が100MPa以下となる温度で代用する。
【0053】
接着フィルムの被着体は、光学フィルムのアクリルをはじめとして、リードフレームの銅、透明電極のITO、近紫外線の白色光変換素子のSiC、GaN基板のサファイヤ、有機EL封止用ガラスのシリカなど、様々に考えられる。
【0054】
いずれの場合も接着対象に対して、100℃1時間硬化後のピール試験で強度1N/チップ以上が好ましく、2N/チップ以上がより好ましい。ただし、チップは5mm角とする。またこの接着フィルムは265℃のはんだ耐熱性があることが好ましい。
【0055】
光学フィルムと接着フィルムの間での密着性を上げ、そりを低減するために、二つのフィルムの材料についての線膨張係数の差は0.5×10−4/℃であることが好ましく、0.1×10−4/℃以下であることがより好ましい。そりがあると、加熱接着後にしわができやすく、接着力が落ちる。
【0056】
この封止フィルムの接着特性、線膨張係数及びはんだ耐熱性は以下のように評価した。
(I)対被着体ピール強度:(接着特性)100℃のホットプレート上で、被着体のチップ(5mm角)に封止用フィルムを積層し、100℃、1時間キュアした。この試料について100℃でピール強度を測定した。
【0057】
(II)線膨張係数:100℃1時間加熱硬化した封止フィルムの各フィルムについて、熱機械分析装置を用いて、毎分5℃の昇温速度で試料の伸びを測定し、25℃から150℃の伸びから、平均線膨張係数を求めた。
【0058】
(III)はんだ耐熱性:作製した封止フィルムを封止した発光素子を85℃、湿度85%で48時間処理した後、265℃のはんだ漕に1分間フロートし、ふくれ、剥離の有無を調べた。
【0059】
本発明の接着フィルムは、架橋性官能基を含む重量平均分子量が10万以上でTgが−50〜50℃である高分子量成分15〜40%、エポキシ樹脂を主成分とする熱硬化性成分60〜85%を含む樹脂100重量部とフィラ20〜200重量部とを含む接着フィルムであることが好ましく、その構成成分には特に制限はないが、適当なタック強度を有しフィルム状での取扱い性が良好であることから、高分子量成分、熱硬化性成分、及びフィラの他に、硬化促進剤、触媒、添加剤、カップリング剤等を含んでも良い。
【0060】
高分子量成分としては、エポキシ基、アルコール性又はフェノール性水酸基、カルボキシル基等の架橋性官能基を有するポリイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノキシ樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられるが、これらに制限するものではない。
【0061】
上記の接着フィルムは、高分子量成分が樹脂の15〜40%含まれる場合に発光素子表面段差の充填性が良好となり、高分子量成分の含有量は、は20〜37%が好ましく、25〜35%がより好ましい。
【0062】
高分子量成分は、Tg(ガラス転移温度)が−50℃〜50℃で架橋性官能基を有する重量平均分子量が10万以上である高分子量成分であることが好ましい。
【0063】
高分子量成分として、例えば、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートなどの官能性モノマを含有するモノマを重合して得た、重量平均分子量が10万以上であるエポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体などが好ましい。エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリルゴムなどを使用することができ、アクリルゴムがより好ましい。
【0064】
アクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分とし、主として、ブチルアクリレートとアクリロニトリルなどの共重合体や、エチルアクリレートとアクリロニトリルなどの共重合体などからなるゴムである。さらに、高屈折率にするためにアクリレートは硫黄を含んでいても良い。
【0065】
例えば、4,4’−ビス(β−メタクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(β−ヒドロキシエチルチオ)ジフェニルスルホン=モノアクリレート、硫黄環状構造、環状チオカーボナート構造、環状ジチオカーボナート構造、環状トリチオカーボナート構造である。その例としては、特開2004−115713号公報に示されるように硫黄を含むアクリル系接着剤の作製方法が記載されている。
【0066】
高分子量成分のTgが50℃を超えると、フィルムの柔軟性が低くなる場合があり、Tgが−50℃未満であると、フィルムの柔軟性が高すぎるため、ウエハダイシング時にフィルムが切断し難く、バリが発生しやすくなる場合がある。
【0067】
また、高分子量成分の重量平均分子量は、10万以上100万以下が好ましく、分子量が10万未満であるとフィルムの耐熱性が低下する場合があり、分子量が100万を超えるとフィルムのフローが低下する場合がある。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値である。
【0068】
本発明での常温GPCによる重量平均分子量の測定方法は以下のとおりである。測定器:島津製作所製LC−6Cカラム:shodex KF−802.5+KF−804+KF−806溶媒:THF(テトラヒドロフラン)温度:室温(25℃)標準物質:ポリスチレン流量:1.0ml/分(試料濃度 約0.2%)注入量:200μl。
【0069】
ウエハダイシング時に接着フィルムが切断しやすく樹脂くずが発生し難い点、また耐熱性が高い点で、Tgが−20℃〜40℃で重量平均分子量が10万〜90万の高分子量成分が好ましく、Tgが−10℃〜40℃で重量平均分子量が20万〜85万の高分子量成分がより好ましい。
【0070】
本発明において用いられる熱硬化性成分としては、半導体発光素子を封止する場合に要求される耐熱性及び耐湿性を有するエポキシ樹脂が好ましい。なお、本発明において、「エポキシ樹脂を主成分とする熱硬化性成分」には、エポキシ樹脂硬化剤も含まれるものとする。エポキシ樹脂は、硬化して接着作用を有するものであれば特に制限はない。
【0071】
エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などの二官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂などを使用することができる。また多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂又は脂環式エポキシ樹脂など、一般に知られているものを適用することができる。
【0072】
特に、硬化状態のBステージ状態でのフィルムの可撓性が高い点でエポキシ樹脂の分子量が1000以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましい。
また、可撓性に優れる分子量500以下のビスフェノールA型又はビスフェノールF型エポキシ樹脂50〜90重量部と、硬化物の耐熱性に優れる分子量が800〜3000の多官能エポキシ樹脂10〜50%とを併用することが好ましい。
【0073】
エポキシ樹脂硬化剤としては、通常用いられている公知の硬化剤を使用することができ、例えば、アミン類、ポリアミド、酸無水物、ポリスルフィド、三フッ化ホウ素、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSのようなフェノール性水酸基を1分子中に2個以上有するビスフェノール類、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂又はクレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂などが挙げられる。
【0074】
また、接着フィルムは色づきをなくすために、硬化後に無色透明であるほうが好ましい。CIE1976L均等色空間のu’v’色度図において、色度が(u0’、v0’)の白色ハロゲンランプを用いたときに、接着フィルムの透過光の色度とハロゲンランプの色度との距離が0.1以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.05以下であることがより好ましい。また発光素子への貼り付け時にしわを防ぐためには弾性率はある程度低い方がよく、100℃における貯蔵弾性率が200〜3000MPaであることが好ましい。
【0075】
一方、弾性率が低すぎると、取り扱いが難しくなる。弾性率が低いことによる利点は、接着フィルムを、発光素子に押し当てたときの段差追従性もある。発光素子が実装基板面の上に凸であるとき、これを埋め込むことができる。
さらに、発光素子面の上だけ膜厚が薄くなることで、全光線透過率の向上が期待できる。このとき、発光面上の膜厚は、接着前における接着フィルムの膜厚の半分以下になることが好ましい。
【0076】
また、光学フィルムの材料はポリカーボネート、アクリル、シリコーンなどの樹脂が使えるが、ウレタンアクリレートの樹脂を含むことを特徴とする光学フィルムを用いることが好ましい。ウレタンアクリレートはUV硬化樹脂として、全光線透過率が高く、硬化特性も良い。この樹脂は他の共重合体を含んでもよい。
【0077】
例えば、アクリル共重合体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、メトキシブチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート等のアクリル酸エステルの共重合体、さらには、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、チオフェノール等の(メタ)アクリレート化物の共重合体、またこれらのアクリル酸エステルの1種以上と、これと共重合可能な、官能基として(i)カルボキシル基を持つ、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、(ii)グリシジル基を持つ、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メタクリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジル及び(iii)水酸基を持つ、ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレートから選ばれるモノマ−の1種以上との共重合体などが挙げられる。
【0078】
また、光学フィルムの材料は、熱硬化型のアクリル樹脂が好ましい。メラミン樹脂、ウレタン樹脂などと併用し、ポリイソシアネートを硬化剤として用いることができる。ポリイソシアネ−トとしては、ナフタレンジイソシアネ−ト、イソホロンジイソシアネ−ト、キシリレンジイソシアネ−ト、ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、トリレンジイソシアネ−ト等のポリイソシアネ−トを用いることができる。
【0079】
光学フィルム又は接着フィルムに燐光ないし蛍光性材料を含んでもよい。図2で発光源26が青色光を発する場合、白色にするための波長変換材料を入れることがある。光学フィルム22の中に波長変換材料を含有させ、接着フィルムと一体化することで、接着層と光学フィルム層の厚さが一定にできるので、燐光又は蛍光性の材料を含む封止材を直接封止する場合に比べ、輝度が安定する。若しくは、接着フィルム24に波長変換材料を含有させることで、封止の回数を一回に減らせる。この結果、ロットによる輝度のばらつきを抑えることができる。
【0080】
また、図3のようにカバーフィルムと基材フィルムで光学フィルムと接着フィルムをはさんでも良い。カバーフィルムや基材フィルムはガラス転移温度が100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。
上記カバーフィルムや基材フィルムの材質としては、特に制限はなく、例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルナフタレートフィルム、メチルペンテンフィルム等がある。
【0081】
また、項(2)記載のように、本発明の封止フィルムは、接着フィルムに、膜厚が0.1μm以上14μm以下で屈折率が1.6以上の接着フィルムBと接着フィルムBに隣接する接着フィルムAを含み、接着フィルムAとBとの屈折率の差が0.1以上あり、接着フィルム全体の膜厚が100μm以上である。
【0082】
図4のように接着フィルムAとBに分けることで、B層には高い屈折率を持たせ、A層にはその他の封止フィルムに必要な特性を持たせるという使い分けが可能となり、封止フィルムとしての総合的な特性を上げることができる。接着フィルムBを膜厚が0.1μm以上14μm以下で屈折率が1.6以上とすることで、発光素子の発光面に接着したときに、光取出し効率を上げることができる。一般に、樹脂の屈折率の高いB層は、透過率が低いため、膜厚が厚すぎると透過率が下がるので、最適な光取出し効率の設計から外れる。一方、B層の膜厚が薄すぎてもA層と発光面との屈折率差を緩和できなくなるので、最適な光取出し効率の設計から外れる。
【0083】
接着フィルムBより接着フィルムAの屈折率を0.1以上大きくすることで、屈折率の大小関係を、発光素子>接着フィルムB>接着フィルムAとすることができ、各界面での屈折率の変化が緩和されるため、反射率を低減できる。接着フィルムの膜厚が100μm以上であることで、図5のように、発光素子表面の凹凸を埋め込むことができる。
【0084】
A層の形成は、スピンコートや、ロールコートでできる。B層の形成はあらかじめ作製したA層にロールコートするか又はロールによるA層B層の一括多層積層で行うことができる。逆に、B層から先にコートし、その上にA層を形成しても良い。
【0085】
また、項(3)記載のように、本発明の封止フィルムは接着フィルムが、膜厚が0.1μm以上14μm以下で屈折率が1.6以上であり、光学フィルムの基材部分の膜厚が10μm以下であり、屈折率が1.6以下であってもよい。
【0086】
特開2005−354020号公報に開示されているような光を電極の反対側から取り出す設計では、図6のように、電極の裏側から封止する。このような用途の封止フィルムでは、埋め込み性よりも光取出し能力が重要である。このとき封止フィルムの膜厚が薄く、接着フィルムの屈折率が高い方が光取出し効率が上がる。
【0087】
接着フィルムの膜厚は、14μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。光学フィルムの基材部分の膜厚を、光学フィルムの膜厚から凹凸の平均溝深さの値を引いた値とするとき、この膜厚が10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、2μm以下であることがさらに好ましい。
【0088】
光学フィルムの基材部分の膜厚は薄い方が、透過率が上がる。
また、接着フィルムの屈折率が1.6以上とし、光学フィルムの屈折率が1.6以下とすることで、屈折率の大小関係を、発光素子>接着フィルム>光学フィルムとすることができ、各界面での屈折率の変化が緩和されるため、反射率を低減できる。
【0089】
また、本発明の封止フィルムは、接着フィルムが接着フィルムAと接着フィルムAに隣接する接着フィルムBを含み、接着フィルムBがアミド又はイミド樹脂若しくはシリコーン樹脂を計10%以上含み、かつ平均粒径が10μm以下の無機フィラを1%以上含み接着フィルムAにはアミド又はイミドを持つ樹脂を含まないか若しくは10%以下含み、エポキシ樹脂を20%以上含む。ここで使われている%は重量%である。
【0090】
接着フィルムBの屈折率は、接着フィルムAの屈折率をNa、接着フィルムBの屈折率をNb、発光面の屈折率をNeとして、Ndが(Na・Ne)1/2±0.2の範囲にあることが好ましい。さらに、接着フィルムBの膜厚をdbとして、Nb・dbが、波長λ・(1/4+m/2)近傍にあることが好ましい。ここで、mは0以上の整数である。
【0091】
しかし、樹脂の屈折率は1.5程度と小さいのでこの条件を満たすのは難しい。無機フィラを分散させれば、透明なまま屈折率を上げることが可能となる。けれども、1)微粒子の分散が難しい、2)透過率が小さい、3)ヘーズ値(濁度)が大きいといった問題があった。
【0092】
これらの問題は、1)発光面と接着層の界面近傍を除いて、光を散乱しないくらい粒径の小さな超微粒子を使う、2)超微粒子が樹脂中で凝集しないようにする、3)超微粒子自体が光を吸収しないようにするというようにできれば解決できる。そのためには適切な超微粒子・樹脂・分散剤を選択しなくてはならない。このように、高屈折率の透明接着剤の合成には、無機フィラを均一に分散させることが鍵となる。
【0093】
分散をうまくするひとつの方法として、適切なカップリング剤や分散剤の、微粒子と樹脂を混練した材料への適用が挙げられる。カップリング剤や分散剤を使うことで微粒子の凝集がなく透明度の高い封止フィルムを得ることができる。
【0094】
イソシアネートシラン、エポキシシラン、アニリノシラン、メチルシラン、フェニルシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、アルキルシラン、メルカプトシラン、有機チタネート、アルミニウムアルコレート等のカップリング剤を、分散性を向上させる点から用いることが好ましい。
【0095】
これらのカップリング剤の使用方法については特に制限はなく、予め無機充填剤に処理をしてから使用しても良い。また他の素材の配合時にインテグラルブレンド法で使用しても良い。分散剤としては、ビッグケミー・ジャパン社のDisperbyk−110、Disperbyk−111、 Disperbyk−116等がある。
【0096】
微粒子を含む樹脂を作製するには、固体粉末を溶液に混合する場合と、粒子が合成された時点で溶液中に分散されている場合の2種類が考えられる。微粒子が固体粉末である場合には、遊星ビーズミルを用いたボールミリング法、圧力と高温をかける方法、せん断による方法等によって混練することにより、樹脂と微粒子を分散することができる。
【0097】
微粒子が溶液中に分散されている場合には、スターラーによる攪拌や超音波で分散することができる。また樹脂によっても分散性をあげることができ、極性の高い官能基であるアミド又はイミドの樹脂若しくはシリコーンの樹脂を使うことで分散性を挙げることができる。
【0098】
接着フィルムBがアミド又はイミド樹脂若しくはシリコーン樹脂を計10%以上含むことで、耐熱性を持たせ、また無機フィラの分散性を上げることができる。平均粒径が10μm以下の無機フィラを1%以上含むことで、高い耐熱性や高い屈折率を実現できる。接着フィルムAにはアミド又はイミドを持つ樹脂を含まないか又は5%以下含み、エポキシ樹脂を20%以上含むことで、埋め込み性を向上させることができる。
【0099】
さらに、熱硬化後の接着フィルムはフィラを1%以上80%以下含むことが、ダイシング性が向上する点で好ましい。フィラ量は、10〜60%であることがより好ましく、20〜40%であることがさらに好ましい。
【0100】
フィラを配合することで、屈折率を上げ、光取出し効率を上げることができる。一方、フィラの配合量が多くなりすぎると、接着フィルムの貯蔵弾性率の過剰な上昇、接着性の低下、ボイド残存による電気特性の低下等の問題が起きやすくなるので80%以下とするのが好ましい。フィラの配合量が少ないと、ダイシング時の樹脂バリが発生し易くなる傾向がある。
【0101】
基材フィルム上に接着フィルムを積層する方法としては、印刷の他、予め作製した接着フィルムを基材フィルム上にプレス、ホットロールラミネートする方法が挙げられるが、連続的に製造でき、効率が良い点でホットロールラミネートする方法が好ましい。
【0102】
光学フィルムは接着フィルムを封止してから、接着フィルムの上に接着しても良い。イミド樹脂を含む接着剤については作製法の詳細が特開2002−185687号公報に記載されている。
【0103】
また、アミドイミド樹脂を含む接着剤については作製法の詳細が特開2002−146321号公報に記載されている。
また、シリコーン樹脂を含む接着剤については作製法の詳細が特開平6−322349号公報に記載されている。
【0104】
さらに、本発明の接着フィルムには、Bステージ状態における接着フィルムのダイシング性の向上、接着フィルムの取扱い性の向上、熱伝導性の向上、溶融粘度の調整、チクソトロピック性の付与などをも目的としてフィラ、好ましくは無機フィラを配合する。
【0105】
無機フィラとしては、チタニア、ジルコニア、アルミナ、酸化亜鉛、結晶性シリカ、非晶性シリカ、窒化ホウ素等が挙げられる。熱伝導性向上のためには、アルミナや窒化ホウ素が好ましい。溶融粘度の調整やチクソトロピック性の付与の目的には、アルミナ、結晶性シリカ、非晶性シリカ等が好ましい。またダイシング性を向上させるためにはアルミナ、シリカが好ましい。
【0106】
接着フィルムのA層の無機フィラ又はA層B層に分離していない場合の無機フィラについて、フィラの平均粒径はチタニア、ジルコニア、アルミナ、酸化亜鉛、結晶性シリカ、非晶性シリカでは0.2μm以下であることが好ましい。チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛については0.1μm以下であることが好ましく、0.05μm以下であることがより好ましく、0.002〜0.03μmであることがさらに好ましい。粒径が小さい方が透過率を上げることができる。
【0107】
なお、本発明においては、レーザ回折式粒度分布測定装置(日機装製マイクロトラック)を用いてフィラの平均粒径を測定した。具体的には、フィラ0.1〜1.0gを秤取り、超音波により分散した後、粒度分布を測定し、その分布での累積重量が50%となる粒子径を平均粒径とした。
【0108】
接着フィルムのB層の無機フィラの平均粒径は、チタニア、ジルコニア、アルミナ、酸化亜鉛では0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましく、0.8μm以下であることがさらに好ましく、0.1〜0.3μmであることが最も好ましい。粒径を適度にすることによって、光を散乱し、光取出し効率をあげることができる。
また、粒子の屈折率の発光面との屈折率差は0.5以下であることが好ましい。
【0109】
さらに、本発明においては、接着フィルムがフィラを含有することにより、フィルム切断時に回転刃に樹脂を残すことなく、回転刃を研磨しながら、短時間で接着フィルムを良好に切削できる。
【0110】
したがって、回転刃の研磨効果及び接着フィルム切断性の点から、接着フィルムは硬いフィラを含有することが好ましく、モース硬度(10段階)3〜8の範囲の硬さのフィラを含有することがより好ましく、モース硬度6〜7のフィラを含有することがさらに好ましい。
【0111】
このとき、フィラのモース硬度(10段階)が3未満では回転刃の研磨効果が少なく、モース硬度が8を超えるとダイシング用の回転刃の寿命が短くなる傾向がある。なお、屈折率の高いモース硬度3〜8のフィラとしては、結晶系がアナターゼやルチルのチタニア、ジルコニア、酸化亜鉛がある。
【0112】
また、本発明の封止フィルムは接着フィルムAと接着フィルムAに隣接する接着フィルムBを含み、接着フィルムA、Bが(1)エポキシ樹脂、(2)官能基を含む重量平均分子量が10万以上である高分子量成分及び(3)イミダゾール化合物を含有してなる接着剤組成物からなり、該接着剤組成物は、上記エポキシ樹脂の硬化前は上記高分子量成分と相溶し、上記エポキシ樹脂の硬化後は上記高分子量成分と相分離して海島構造を形成し、フィルムに垂直な断面で見たときの接着フィルムA中央部の海と島の幅の平均がそれぞれ0.3μm以下であり、接着フィルムB中央部の海と島の幅の平均がそれぞれ0.3μm以上である。
【0113】
本発明で用いる(1)エポキシ樹脂及び(2)官能基を含む重量平均分子量が10万以上である高分子量成分の組合せは、エポキシ樹脂として、低分子量のグリシジルエポキシ樹脂であると好ましく、この中では脂肪族グリシジルエーテル基を有するエポキシ樹脂、芳香族グリシジルエーテル基を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0114】
官能基を含む重量平均分子量が10万以上である高分子量成分としては、エポキシ樹脂と極性の近い官能基に有する熱可塑性プラスチック、架橋反応ゴム、熱可塑性エラストマー等の高分子量成分が好ましい。
【0115】
これは、相溶化するかどうかは混合される樹脂の分子量及び各混合物の極性の差が支配的であり相分離は硬化によりエポキシ樹脂の分子量が上昇することによって形成されるからであり、規則正しく微細な相分離構造はエポキシ樹脂と高分子量成分との相溶性を増加させ熱力学的な相分離速度を遅らせることによって形成される傾向があるからである。
【0116】
このようにして選ばれるより具体的な樹脂としては、分子量400未満のエポキシ樹脂とエポキシ基含有アクリル系ポリマー、分子量400以下のエポキシ樹脂とエポキシ基含有ポリエチレン、分子量400以下のエポキシ樹脂とエポキシ基含有熱可塑性プラスチック混合物等が挙げられ、なかでも低分子量のビスフェノールA型エポキシ樹脂とエポキシ基含有アクリル共重合体とが分子量及び極性及び硬化の点で好ましい。使用する樹脂合成方法の詳細は特開2006−183020号公報に記載がある。
【0117】
また、フィルムに垂直な断面で見たときの接着フィルムA中央部の海と島の幅の平均がそれぞれ0.3μm以下であり、接着フィルムB中央部の海と島の幅の平均がそれぞれ0.3μm以上である接着フィルムを含む封止フィルムが好ましい。海と島の幅の平均が0.3μm以下であることで、透過率が高く、光取出し効率の高い封止フィルムを実現できる。0.2μm以下であることがより好ましい。
【0118】
一方、発光素子表面の近傍については、屈折率が高い海又は島部分を設けることで、発光素子表面での全反射を防止し光取り出し効率を上げることができる。このとき、海と島の屈折率差は発光素子表面と接着フィルムBの屈折率差の1/3以上が好ましく、1/2以上がより好ましい。また、海と島の幅の平均がそれぞれ1μm以上である方がより好ましい。
【0119】
また、本発明の封止フィルムは、接着フィルムAと接着フィルムAに隣接する接着フィルムBを含み接着フィルムAが架橋性官能基を含む重量平均分子量が10万以上かつガラス転移温度Tgが−50〜50℃である高分子量成分15〜40%及びエポキシ樹脂を主成分とする熱硬化性成分60〜85%を含む樹脂100重量部と、無機フィラ20〜200重量部とを含有し、厚さが100〜10000μmであり、接着フィルムBが接着フィルムAより屈折率が0.1以上高く透明な接着フィルムを持つことが好ましい。
【0120】
接着フィルムAとBに分けることで、B層には高い屈折率を持たせ、A層には埋め込み性を持たせるという使い分けが可能となる。高い屈折率を得るために、樹脂に微粒子を多く含有させると、透明性が落ち、また埋め込み性も悪化するが、この使い分けにより、例えば接着フィルムBにAより多くの微粒子を入れて、これらの問題を回避できる。
【0121】
接着フィルムBが接着フィルムAより屈折率が0.1以上高いことで、発光素子>接着フィルムB>接着フィルムAとすることができ、各界面での屈折率の変化が緩和されるため、反射率を低減できる。接着フィルムBが接着フィルムAより屈折率が0.2以上高い方がより好ましい。
【0122】
高分子量成分のTgが50℃を超えると、フィルムの柔軟性が低くなる場合があり、Tgが−50℃未満であると、フィルムの柔軟性が高すぎるため、ウエハダイシング時にフィルムが切断し難く、バリが発生しやすくなる場合がある。
【0123】
また、高分子量成分の重量平均分子量は、10万以上100万以下が好ましく、分子量が10万未満であるとフィルムの耐熱性が低下する場合があり、分子量が100万を超えるとフィルムのフローが低下する場合がある。ここで、重量平均分子量は、常温GPCで測定した値をいう。
【0124】
ウエハダイシング時に接着フィルムが切断しやすく樹脂くずが発生し難い点、また耐熱性が高い点で、Tgが−20℃〜40℃で重量平均分子量が10万〜90万の高分子量成分が好ましく、Tgが−10℃〜40℃で重量平均分子量が20万〜85万の高分子量成分がより好ましい。
【0125】
〔第2の実施形態〕
本発明は、圧着時に、図7のように粒径のそろった粒子を含む接着フィルムを、光学フィルムと発光面の間で押し付け、厚さを粒径と同程度にすることで、膜厚を一定にすることができる。
さらに、粒子表面を高屈折率にすることで光取出し効率を上げることができる。このために、第1の実施形態の粒子の粒径や組成を以下のようにする。
【0126】
接着フィルム中に含まれる粒子が、接着フィルムの膜厚の0.04〜0.6倍の範囲内の平均粒径を持ち、かつ平均粒径が0.4μm以上100μm以下であり、しかも、粒径の大きい粒子から体積で10%に入る粒子の平均粒径が、全体の粒子の平均粒径の1.5倍より小さいことが好ましい。平均粒径は体積平均の粒径である。粒径はSEM又はTEM(透過型電子顕微鏡)で測定できる。
【0127】
接着フィルムの粒径を膜厚に対して0.04〜0.6倍とし、かつ平均粒径が0.4μm以上100μm以下であり、しかも、粒径の大きい粒子から体積で10%に入る粒子の平均粒径が、全体の粒子の平均粒径の1.5倍より小さくすることで、図7のように大きさのそろった適度な粒径になり、接着後の膜厚を均一にできるので、光取出し効率のロット間のばらつきを少なくすることができる。
【0128】
接着フィルム中に含まれる粒子表面の屈折率と被接着面の屈折率との差の絶対値が0.5以下で、粒子のモース硬度が5以下であることが好ましい。
図8のような封止フィルムに圧力をかけて硬化することで、粒子の表面を発光面と接触させて発光面に入射する光の全反射を防ぎ、取出し効率を上げることができる。
【0129】
また、接着フィルム中に含まれる粒子表面の屈折率と被接着面の屈折率との差の絶対値を0.5以下とすることで、さらに光取出し効率を上げることができる。モース硬度が5以下のやわらかい粒子を使うことで発光面と粒子の接触面積を増やすことができるので、光取出し効率を上げることができる。
【0130】
前記接着フィルム中に含まれる粒子が、粒子内部よりも粒子表面の方が、屈折率の絶対値が高く、かつ、粒子内部の材料の貯蔵弾性率が1〜3000MPaであることが好ましい。
【0131】
接着フィルムBを平均的に高屈折率にするという光学設計以外に、高屈折率の粒子を高屈折率発光面に付着させるという光学設計も可能である。この場合には、平均粒径は0.4μm以上3μm以下が好ましい。
また、接着フィルムBの30%以上が高屈折率の粒子であることが好ましい。
さらに、粒子の屈折率と発光面の屈折率の差は0.5以下であることが好ましい。
【0132】
接着フィルム中の粒子は外側を高屈折率にしても良い。ここでの屈折率の高さは複素屈折率の絶対値で決める。例えば、銀は屈折率が0.17−3.4iであるが、この絶対値は、3.404である。外側を高屈折率にすることで、内側に柔軟性のある低屈折率材料を用いることが可能となり、加熱して発光面と高屈折率材料との接触界面を増やすことができる。
【0133】
高屈折率材料と発光面の接触面積を増やすことで、光取出し効率を大きくすることができる。
低屈折率材料としては、アクリルやエポキシ、シリコーン樹脂が使用可能である。
また、高屈折率材料としては、チタニア、銀、ITO、ジルコニア等が使用可能である。この場合には、平均粒径は0.4μm以上3μm以下が好ましい。
【0134】
粒子の表面が、屈折率の絶対値が高いことで、被接着発光面から出る光を、散乱し全反射を防ぐことで、光取出し効率を上げることができる。
また、粒子内部の材料の貯蔵弾性率が1〜3000MPaであることで、図9のように熱圧着後の接触面積を増やすことができ、発光面に入射する光の全反射を防ぎ、光取出し効率を上げることができる。
【0135】
ここで、粒子内部は、ポリスチレンやエポキシ、アクリル、ポリイミド、ポリカーボネート等、樹脂であることが好ましく、粒子表面はチタニアやジルコニア、銀等の無機材料であることが好ましい。
【0136】
粒径の揃った有機微粒子は、乳化重合法で作製できる。〔(文献2)、シュンチャオ・グー(Shunchao Gu)、ショウジ・イヌカイ(Shouji Inukai)、ミキオ・コンノ(Mikio Konno):”ソープフリー シンシシス オブ モノディスパース ミクロンーサイズド ポリスチレン パーティクルズ イン アクアメディア(Soapfree Synthesis of Monodisperse、 Micron−Sized polystyrene particles in Aqueous edia)”、ジャーナル オブ ケミカル エンジニアリング オブ ジャパン(Journal of Chemical Engineering of Japan)、2003年、36巻、10号、p.1231−1235参照〕及び〔(文献3)、ヨシオ・コバヤシ(Yoshio Kobayashi)、シュンチャオ・グー(Shunchao Gu)、トモヒロ・コンドウ(Tomohiro Kondo)、エイイチ・ミネ(Eiichi Mine)、ダイスケ・ナガオ(Daisuke Nagao)、ミキオ・コンノ(Mikio Konno):”ファブリケーション オブ サブミクロンーサイズド チタニア ホロウ スフィアーズ(Fabrication of Sub−Micron Sized Titania Hollow Spheres)”、 ジャーナル オブ ケミカル エンジニアリング オブ ジャパン(Journal of Chemical Engineering of Japan)、2004年、37巻、7号、p.912−914又は特開平07−141912号公報参照〕。
【0137】
有機微粒子は、市販のものを入手しても良い。
また、無機材料による表面のコーティングは、乳化重合したポリスチレンに反応性チタン化合物を加えることできる上記(文献3)及び〔(文献4)、エイイチ・ミネ(Eiichi Mine)、ミツアキ・ヒロセ(Mitsuaki irose)、ダイスケ・ナガノ(Daisuke Nagao)、ヨシオ・コバヤシ(Yoshio Kobayashi)、ミキオ・コンノ(Mikio Konno):”シンシシス オブ サブマイクロメーターサイズド チタニア スフィアリカル パーティクルズ ウィズ ア ゾルゲル メソッド アンド ゼア アプリケーション ツウ コロイダル フォトニック クリスタルズ”(Synthesis of submicrometer−sized titania spherical particles with a sol−gel method and their application to colloidal photonic crystals)、ジャーナル オブ コロイド アンド インターフェイス サイエンス(Journal of Colloid and Interface Science)、2005年、291巻、1号、p.162−168参照〕。樹脂粒子の表面処理には、例えば、濃硫酸によるスルホン化が使える。
【0138】
前記接着フィルムが、発光面の屈折率との差の絶対値が0.5以下の粒子を含み、接着フィルムの接着面が研磨され、粒子の断面が表面に露出していることが好ましい。
発光面の屈折率との差の絶対値が0.5以下の粒子を含むことで、光取出し効率を向上させることができる。
【0139】
また、粒子の断面を表面に出すことで、発光面に接着したときに発光面との接触面積を増やすことができる。この結果、光取出し効率を向上させることができる。研磨剤には日立化成工業(株)製CMPスラリー「HS−T」を使うことができる。
【0140】
前記接着フィルムが、発光面の屈折率との差の絶対値が0.5以下の粒子を含み、粒子の長径が短径よりも1.5倍以上長いことで、封止後に、粒子の長径が発光面と接し、粒子と発光面の接触面積を増やすことができる。
酸化チタンのルチルは針状結晶となりやすく、これを用いることができる。
【0141】
〔第3の実施形態〕
また、本発明の項(15)の封止フィルムは、封止後に、光学フィルムと接着フィルムとからなり、光学フィルムのガラス転移温度が60℃以上であり、接着フィルムのガラス転移温度が60℃以上であり、接着フィルムと反対側の光学フィルムの面に平均溝深さ0.1μm以上の凹凸又は屈折率差0.2以上の屈折率変化をもつ屈折率分布があるか若しくは光学フィルム内部に屈折率差0.015以上の屈折率変化をもつ屈折率分布構造があるか又は光学フィルムと接着フィルムの界面に平均溝深さ0.1μm以上の凹凸があり、接着フィルムの屈折率が1.42以上である透明な封止フィルムである。
【0142】
光学フィルムは、封止フィルムの封止に要する熱硬化温度より高いガラス転移温度でないと、接着フィルムの熱硬化時に変形し、光取出し効率が落ちる。熱硬化温度は60℃以上であるので、ガラス転移温度が60℃以上であることが好ましく、より好ましくは100℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることがさらに好ましく、200℃以上であることが最も好ましい。接着フィルムの熱硬化の加熱温度が60〜240℃であることが好ましく、100〜180℃であることがより好ましいためである。
【0143】
接着フィルムは封止後に耐熱性がないと、発光素子から出る熱で、はがれたり変色したりする。ガラス転移温度は100℃以上がより好ましく、150℃以上がさらに好ましく、200℃以上が最も好ましい。発光素子から出る熱は、グラファイトやアルミでできた放熱器を取り付ければ80℃に下げることも可能であるが、放熱器がないと200℃以上になるためである。
【0144】
接着フィルムの屈折率を1.42以上にすることで、屈折率の高い発光素子と接着フィルム間の屈折率差を小さくし、反射を抑えることができる。
また、透明にすることで、光吸収を抑え、光取出し効率を上げることができる。
【0145】
接着フィルムの屈折率は、より好ましくは1.55以上が好ましく、1.65以上がより好ましい。光学フィルムと接着フィルムの界面に平均溝深さ0.1μm以上の凹凸があっても良い。これにより、光学フィルムと接着フィルムの界面での反射を抑えることができる場合がある。
【0146】
また、界面の反射は抑えられなくても、光を出射面に垂直に曲げることで、光学フィルムの出射面での反射をこの凹凸が周期的で、平均溝幅が0.4μm以上5μm以下である場合には、接着フィルムと反対側の光学フィルム面の凹凸が周期的でないほうが好ましい。周期的でないことによって、分光による虹の発生を抑えることができる。平均溝深さは0.4μm以上が好ましく、より好ましくは0.8μm以上である。
【0147】
第3の実施形態では、光学及び接着フィルムのガラス転移温度は、封止後の値であり、分布が多層又は傾斜になっている場合は、光学フィルムに関しては層の厚み平均によるガラス転移温度を、接着フィルムに関しては最も高い層のガラス転移温度を使う。一方、層内で相分離している場合は層内の面積による平均のガラス転移温度を使う。
【0148】
また、光学及び接着フィルムの屈折率は、封止後の値であり、分布が多層又は傾斜になっている場合は最も高い層の屈折率を、層内で相分離している場合は層内の面積による平均の屈折率を使う。
【0149】
接着フィルム粒子が、発光面の屈折率との差の絶対値が0.5以下であり、接着フィルムの膜厚の0.04〜0.6倍の範囲内の平均粒径を持ち、かつ平均粒径が0.4μm以上100μm以下であり、しかも、粒径の大きい粒子から体積で10%に入る粒子の平均粒径が、全体の粒子の平均粒径の1.5倍より小さく、封止後の接着フィルムの粒子が粒子の光学フィルムとの接触面積よりも発光面との接触面積の方が1.5倍以上大きいことが好ましい。
【0150】
図10のように封止後の接着フィルムの粒子が粒子の光学フィルムとの接触面積よりも発光面との接触面積の方が1.5倍以上大きいことで光取出し効率を向上させることができる。3倍以上大きいことがより好ましい。封止フィルムを接着層から順番に作製し、接着層をコート後に、光学フィルム面と反対側を下に向けて静置することで、粒子の面積の広い面を下にできる。
【0151】
以下、本発明の封止用フィルムについて、実施例により、具体的に説明するが、本発明は,これらに制限するものではない。
実施例1
温度計、撹拌機、窒素導入管、油水分離機付き冷却管を取り付けた0.5リットルの4つ口フラスコに窒素気流下、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン45.92g(112ミリモル)を入れ、N−メチル−2−ピロリドン50gを加えて溶解した。
【0152】
次に、20℃を超えないように冷却しながら無水トリメリット酸クロライド23.576g(112ミリモル)を加えた。室温で1時間撹拌した後、20℃を超えないように冷却しながらトリエチルアミン13.5744g(134.4ミリモル)を加えて、室温で3時間反応させてポリアミック酸ワニスを製造した。
【0153】
得られたポリアミック酸ワニスを更に190℃で脱水反応を6時間行い、ポリアミドイミド樹脂のワニスを製造した。このポリアミドイミド樹脂のワニスを水に注いで得られる沈殿物を分離、粉砕、乾燥して極性溶媒に室温で可溶なポリアミドイミド樹脂粉末(PAI−1)を得た。
【0154】
ポリアミドイミド樹脂粉末として、PAI−1を30重量部、エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量175、東都化成株式会社製、商品名YD−8125を使用)86重量部、イミダゾール化合物として1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、商品名、キュアゾール2PZ−CN、分子量197)14重量部及び官能基を含む重量平均分子量が10万以上である高分子量成分としてグリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレート2〜6重量%を含むアクリルゴム(ナガセケムテックス株式会社製商品名、HTR−860P−3、重量平均分子量80万)を230重量部からなる組成物に、シクロヘキサノンを加えて撹拌混合し、真空脱気して接着剤ワニスを得た。この接着剤ワニスをバインダ樹脂とする。
【0155】
上述のアミドイミド樹脂を含むエポキシ樹脂をバインダ樹脂として用いる。シリカフィラ〔アドマファイン株式会社製、S0−C2(比重:2.2g/cm、モース硬度7、平均粒径0.5μm、比表面積6.0m/g)を使用〕を20%混ぜたものを熱硬化し、平均溝幅30μmの三菱レーヨン製プリズムシートダイヤアートに貼り付けた。
【0156】
接着フィルムの屈折率は1.55、光学フィルムの屈折率は1.49である。接着フィルムの膜厚は10μm、光学フィルムの基材厚みは100μmである。この封止フィルムの全光線透過率を測定した。全光線透過率は波長632.8nmで70%であった。フィルムは透明であった。
【0157】
実施例2
アミド、イミド樹脂及びシリコーン樹脂を含まないエポキシ樹脂を用いたバインダに、シリカフィラ〔アドマファイン株式会社製、S0−C2(比重:2.2g/cm、モース硬度7、平均粒径0.5μm、比表面積6.0m/g)を使用〕を20%混ぜたものを熱硬化し、平均溝幅30μmの三菱レーヨン製プリズムシートダイヤアートに貼り付けた。
【0158】
接着フィルムの屈折率は1.50、光学フィルムの屈折率は1.49である。接着フィルムの膜厚は10μm、光学フィルムの基材厚みは100μmである。この封止フィルムの全光線透過率を測定した。全光線透過率は波長632.8nmで60%であった。フィルムは白濁していた。
【0159】
実施例3
日立化成工業(株)製、UV硬化樹脂ヒタロイド7975を用いて、金型から平均溝幅30μmのプリズムシートを東洋紡(株)製のPETフィルムコスモシャインA4300に転写した。これを光学フィルムとした。光学フィルムの屈折率は1.5である。屈折率1.45の日立化成工業(株)製、ダイボンドフィルムHS−230をこの光学フィルムにはりつけた。接着フィルムの膜厚は10μm、光学フィルムの基材厚みは100μmである。
【0160】
次に、半導体発光素子の発光面を多数並べ、60℃で一括ラミネートした後、100℃で1時間キュアして、接着フィルムを硬化させた。光学フィルムの凹凸形状に変化は見られなかった。
【0161】
実施例4
以下では、図3のような層構造を持つフィルム層について樹脂の合成方法及びフィルムの積層方法について述べる。
本発明の接着フィルムは、前記高分子量成分、エポキシ樹脂を主成分とする熱硬化性成分、フィラ及び他の成分を有機溶媒中で混合、混練してワニスを調製した後、基材フィルム上に上記ワニスの層を形成させ、加熱乾燥した後、基材を除去して得ることができる。
【0162】
上記の混合、混練は、通常の撹拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。上記の加熱乾燥の条件は、使用した溶媒が充分に揮散する条件であれば特に制限はないが、通常60〜200℃で、0.1〜90分間加熱して行う。
【0163】
接着フィルムAにはエポキシ樹脂を用いる。このエポキシ樹脂の合成方法は、特開2006−183020号公報に記載されている。接着フィルムBの樹脂にはイミド樹脂を用いる。この屈折率は1.5である。このイミド樹脂の合成方法は、特開2002−185687号公報に示されている。
【0164】
接着フィルムBは上記イミド樹脂に住友大阪セメント製の径40nmの酸化ジルコニウムナノ粒子を樹脂に対して20%となるよう乳鉢で練りこんだ。屈折率は1.72となった。
【0165】
図12のように基材フィルムの上に接着フィルムBをロールコートする。基材フィルムとしては厚さ50μmmの離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、コートした後に、90℃10分間、120℃で5分間、加熱乾燥した。
【0166】
接着フィルムAは接着フィルムBの上にロールコートした後、同様に加熱乾燥した。光学フィルムの樹脂には、上記のヒタロイド7975を使う。
ロール金型の作製は、銅金型にバイトで微細形状を刻み、防食のためメッキをする。ここでは、平均溝深さ0.8μm、周期2μmの縞状の溝を作製した。
【0167】
次に、図13のように、接着フィルムAの上に光学フィルムの凹凸をロール金型から転写する。このときUV硬化を行う。さらにカバーフィルムをラミネートする。カバーフィルムとしては東洋紡製バイロコートを用いた。
【0168】
白色LEDは豊田合成のE1S40−1W0C6−01を使用した。実施例4、5、6と比較例では、このLEDを紙やすりで研磨して一定量蛍光層を残して表層部を取り除いたものを白色LEDとして使用した。
【0169】
これをインターポーザとしてのリードフレーム上に10個並べ、一括封止をした後、ダイサーで切り離した。一括封止は、封止フィルムを60℃、成形圧力1kg・f/cmで120秒間熱圧着後、100℃で1時間加熱した。
【0170】
本発明の封止フィルムの貼り付け前と貼り付け後の各LEDの輝度を比較したところ、輝度が20±10%向上した。光学フィルムと発光面との間の接着層の膜厚は10±2μmであった。電源はKIKUSUI製のRegulated DC Power supply PMC−0.5Aを用い、電流値を20mAとした。
【0171】
また、100℃、5000時間の耐熱性試験で、80%以上の透過率を維持できた。
さらに、3,800cd/m、5000時間の耐光性試験で80%の透過率を維持できた。
輝度の測定には市販の輝度計を用い、出射角が−80度から+80度まで、5度刻みで、測定する。輝度が最も高い角度±4度については1度刻みで測定する。
【0172】
封止フィルムに異方性がある場合には、適宜回転する。比較対象となる封止フィルムと同じ条件で計測し、相対比較を行う。輝度計はTOPCONのBM−5等を用いることができる。
輝度の測定条件は、封止フィルムから輝度計の集光レンズまでの距離を20cm、視野を0.2°とし、連続モードで輝度測定を行った。
【0173】
実施例5
上記実施例4で使用したヒタロイド7975の代わりに、特開2005−154688号公報の実施例2で示される熱硬化性アクリル樹脂を使用して、同様の封止を行った。光学フィルムと発光面との間の接着層の膜厚は10±3μmであった。輝度特性及び耐久性は同等のものが得られた。
【0174】
実施例6
本検討例では上記実施例4のうち、コートの手順を変えて、凹凸を光学フィルムと接着フィルムの界面に作製した。
図13のように、基材フィルムの上に光学フィルムの凹凸をロール金型から転写する。光学フィルムの樹脂には大日本塗料製透明導電性コーティング材DNTコンダクティブUV硬化タイプ(EI−3)を使う。基材フィルムとしては厚さ50μmの離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。
【0175】
光学フィルムの凹凸面に接着フィルムAをロールコートする。コートした後に、90℃で10分間、120℃で5分間、加熱乾燥した。接着フィルムBは接着フィルムAの上にロールコートした後、同様に加熱乾燥した。さらに、接着フィルムBにカバーフィルムをラミネートする。
【0176】
屈折率は、光学フィルム1.7、基材フィルム1.57、接着フィルムAが1.5、接着フィルムBが1.72である。光学フィルムと発光面との間の接着層の膜厚は10±3μmであった。各LEDの輝度の変化を調べたところ15%±5%の輝度上昇が見られた。
【0177】
実施例7
本検討例では上記実施例4の封止フィルムのうち、接着フィルムの粒子を変えた。粒子は、市販の粒径8μmのポリスチレン微粒子を用いた。この粒子を、接着フィルムBに混ぜた。
【0178】
屈折率は、光学フィルム1.7、接着フィルムAが1.5、接着フィルムBが1.6である。ポリスチレン微粒子の屈折率は1.59である。硬化後の接着層の膜厚は9±2μmであった。各LEDの輝度の変化を調べたところ20%±10%の輝度上昇が見られた。
【0179】
実施例8
本検討例では上記実施例4の封止フィルムのうち、接着フィルムの粒子を変えた。粒子は、市販の粒径8μmのポリスチレン微粒子を用いた。この粒子を濃硫酸中で1日加熱処理する。このあと、テトラブチルオルソチタネートを粒子表面に反応させ、チタニアでコートした粒子を得た。上記(文献4参照)。この粒子を、接着フィルムBに混ぜた。
【0180】
屈折率は、光学フィルム1.7、接着フィルムAが1.5、接着フィルムBが1.7である。ポリスチレン微粒子の屈折率は1.59である。硬化後の接着層の膜厚は9±2μmであった。各LEDの輝度の変化を調べたところ25%±10%の輝度上昇が見られた。
【0181】
比較例1
白色LEDは豊田合成のE1S40−1W0C6−01を使用した。これをインターポーザとしてのリードフレーム上に10個並べた。平均溝深さ0.8μm、周期2μmの縞状の溝を持つ金型を用いた。
【0182】
特開平11−343395号公報の実施例2に記載の封止材を用いて、温度100℃、成形圧力200kg・f/cm、成形時間120秒で、一括して金型を押し付けた。屈折率が1.5で、接着層の膜厚は20±10μmである。各LEDの輝度の変化を調べたところ15%±15%の輝度上昇が見られた。
このように、凹凸付き封止フィルムに比べ、輝度のばらつきが大きくなった。
【0183】
比較例2
白色LEDは、豊田合成のE1S40−1W0C6−01を使用した。これをインターポーザとしてのリードフレーム上に10個並べた。平均溝深さ0.8μm、周期2μmの縞状の溝を持つ金型を用いた。
【0184】
2液無溶剤常温硬化型アクリルハイブリッド樹脂のアトミクス株式会社のアトムコンポブリッドHCSを用いて、温度30℃、成形圧力200kg・f/cmで金型を押し付けた。成形時間は6時間かかった。屈折率1.5で、接着層の膜厚20±8μmである。各LEDの輝度の変化を調べたところ15%±12%の輝度上昇が見られた。
このように、凹凸付き封止フィルムに比べ、封止時間が長くなった。また、輝度ばらつきも大きかった。
【0185】
実施例9
図11のように、接着フィルムを高屈折率ガラスに圧力48で押し付け、斜め入射光56の透明ガラス54からの光取出し効率を、常温で測定した。圧着条件は、圧力で1kg・f/cmで、熱はかけない。入射光58はHe−Neレーザで波長632.8nmである。出射光62の検出にはアドバンテスト製デジタルパワーメータ64を用いた。
【0186】
入射光の偏光は90度異なる二種類について計測して平均を取った。接着フィルム52は、透明な光学フィルム50に両面接着テープを用いて貼り付けた。接着フィルムの透明ガラス54と接する面は、研磨剤として粒径0.5μmのアルミナ、粒径0.03μmのアルミナの順に、研磨した。屈折率2の透明ガラス54の表面を鏡面研磨して、これに光を入射させた。
【0187】
フィラには、平均粒径が0.25μmのルチルの球状チタニアTiOを用い、フィラ量は50体積%である。樹脂は、実施例1に使用したバインダ樹脂を用いた。接着フィルムの膜厚は250μmである。高屈折率ガラス54の表面に対し、光学フィルム50に圧力48を加えた。光学フィルムには、平均溝幅30μmの三菱レーヨン製プリズムシートダイヤアートを用いた。接着フィルムありと接着フィルムなしの出射光量をパワーメータで測定した。
【0188】
接着フィルムなしの出射光量に比べ、接着フィルムありの場合にどのくらい出射光量が減少したかを、光量減少率とした。入射角θが臨界角を越えており、かつ、接着フィルム52がない状態では、入射光56は、高屈折率ガラス54の接着フィルムの面で全反射する。
【0189】
しかし、接着フィルム52が高屈折率ガラス表面の屈折率分布を大きく変える場合、入射光56の一部は、全反射することなく、外に漏れる。その結果、出射光量が減少する。この光量減少率から間接的に、接着フィルム52を通した光取出し量を定性的に知ることができる。ここでは、θを72°とした。光取出し効率の評価結果は表1のようになった。
【0190】
実施例10
フィラとしては、平均粒径が3μmの球状アルミナAlを用い、実施例9と同様にして、接着フィルムを作製した。光取出し効率の評価結果は表1のようになった。
【0191】
実施例11
フィラとしては、平均粒径が10μmの板状アルミナAlを用い、実施例9と同様にして、接着フィルムを作製した。光取出し効率の評価結果は表1のようになった。
【0192】
実施例12
樹脂は、実施例1に使用したバインダ樹脂にフィラを加えない接着フィルムを実施例9と同様に評価した。光取出し効率の評価結果は表1のようになった。
【0193】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0194】
【図1】封止フィルムの一実施態様を示す断面図である。
【図2】本発明の、発光素子26に張り合わせた封止フィルムの一実施態様を示す断面図である。
【図3】カバーフィルム18と基材フィルム20をつけた封止フィルムの一実施態様を示す断面図である。
【図4】封止フィルムの一実施態様を示す断面図である。
【図5】本発明の封止フィルムを、ワイヤボンディングされた発光素子30に接着する際の工程の一実施態様を示す概略図である。
【図6】本発明の封止フィルムを発光素子36の電極の裏面に接着する際の工程の一実施態様を示す概略図である。
【図7】粒径のそろった粒子40を含む接着フィルムを構成要素とする封止フィルムの一実施態様を示す概略図である。
【0195】
【図8】外側が高屈折率の粒子40を含む接着フィルムを構成要素とする封止フィルムの一実施態様を示す概略図である。
【図9】外側が高屈折率の粒子44を含む接着フィルム42を構成要素とする封止フィルムを発光面に熱圧着したときの一実施態様を示す概略図である。
【図10】は、高屈折率の粒子40を含む接着フィルム38を構成要素とする封止フィルムを発光面に熱圧着したときの一実施態様を示す概略図である。
【図11】光取出し効率評価の一実施態様を示す概略図である。
【図12】ロールによる接着フィルム作製の一実施態様を示す断面図である。
【図13】ロールによる光学フィルム作製及び接着フィルムとの張り合わせの一実施態様を示す断面図である。
【符号の説明】
【0196】
10 光学フィルム
12 接着フィルム
14 接着フィルムA
16 接着フィルムB
18 カバーフィルム
20 基材フィルム
22 光学フィルム
24 接着フィルム
26 発光素子
28 ワイヤボンディングのワイヤ
30 発光素子
32 導電ペースト
34 インターポーザ
36 電極が発光面と逆側にある発光素子
38 外側が高屈折率の粒子を含む接着層
【0197】
40 高屈折率の粒子
42 熱圧着後に外側が高屈折率の粒子を含む接着層
44 外側が高屈折率の粒子
48 圧力
50 光学フィルム
52 接着フィルム
54 透明ガラス
56 入射光
58 入射光
60 レーザ発信機
62 出射光
【0198】
104 樹脂タンク
106 圧力制御装置
108 供給ヘッド
110 硬化前の樹脂
112 ドクターブレード
114 透明フィルム
116 フィルムシート
118 メータリングロール
120 ニップロール
122 金型ロール
124 離型ロール
126 製造装置
128 紫外線照射装置
130 凹凸付き金型ロール
132 接着フィルムを含む透明フィルム
134 フィルムシート
136 紫外線硬化前の樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルム及び接着フィルムからなり、該光学フィルムのガラス転移温度が60℃以上で、接着フィルムのガラス転移温度が130℃以下であり、接着フィルムの屈折率が1.42以上であり、(1)接着フィルムと反対側の光学フィルムの面に平均溝深さ0.1μm以上の凹凸又は屈折率差0.2以上の屈折率変化をもつ屈折率分布があるか若しくは(2)光学フィルム内部に屈折率差0.015以上の屈折率変化をもつ屈折率分布構造があるか又は(3)光学フィルムと接着フィルムの界面に平均溝深さ0.1μm以上の凹凸がある透明な封止フィルム。
【請求項2】
接着フィルムが、膜厚が0.1μm以上14μm以下で、屈折率が1.6以上の接着フィルムB及びと接着フィルムBに隣接する接着フィルムAを含み、接着フィルムAとBとの屈折率の差が0.1以上あり、接着フィルムの膜厚が100μm以上である請求項1記載の封止フィルム。
【請求項3】
接着フィルムが、膜厚が0.1μm以上14μm以下で、屈折率が1.6以上であり、光学フィルムの基材部分の膜厚が10μm以下で、屈折率が1.6以下である封止フィルム。
【請求項4】
接着フィルムが、接着フィルムA及び接着フィルムAに隣接する接着フィルムBを含み、接着フィルムBがアミド又はイミド樹脂若しくはシリコーン樹脂を計10%以上含み、かつ平均粒径が10μm以下の無機フィラを1%以上含み、接着フィルムAにはアミド又はイミドを持つ樹脂を含まないか又は10%以下含み、エポキシ樹脂を20%以上含む請求項1〜3のいずれかに記載の封止フィルム。
【請求項5】
接着フィルムが、接着フィルムA及び接着フィルムAに隣接する接着フィルムBを含み、接着フィルムA、Bが、(1)エポキシ樹脂、(2)官能基を含む重量平均分子量が10万以上である高分子量成分及び(3)イミダゾール化合物を含有してなる接着剤組成物からなり、該接着剤組成物は、上記エポキシ樹脂の硬化前は上記高分子量成分と相溶し、上記エポキシ樹脂の硬化後は上記高分子量成分と相分離して海島構造を形成し、フィルムに垂直な断面で見たときの接着フィルムA中央部の海と島の幅の平均がそれぞれ0.3μm以下で、接着フィルムB中央部の海と島の幅の平均がそれぞれ0.3μm以上である接着フィルムを含む請求項1〜4のいずれかに記載の封止フィルム。
【請求項6】
接着フィルムが、接着フィルムA及び接着フィルムAに隣接する接着フィルムBを含み、接着フィルムAが、架橋性官能基を含む重量平均分子量が10万以上かつガラス転移温度Tgが−50〜50℃である高分子量成分15〜40%及びエポキシ樹脂を主成分とする熱硬化性成分60〜85%を含む樹脂100重量部と、無機フィラ20〜200重量部とを含有し、厚さが100〜10000μmであり、接着フィルムBが接着フィルムAより屈折率が0.1以上高い請求項1〜5のいずれかに記載の封止フィルム。
【請求項7】
光学フィルムと光学フィルムに接する接着フィルムの線膨張係数の差が、0.5×10−4以下である請求項1〜6のいずれかに記載の封止フィルム。
【請求項8】
光学フィルムが、熱硬化性樹脂からなる請求項1〜7のいずれかに記載の封止フィルム。
【請求項9】
光学フィルム又は接着フィルムが、燐光ないし蛍光性材料を含む請求項1〜8のいずれかに記載の封止フィルム。
【請求項10】
接着フィルム中に含まれる粒子が、接着フィルムの膜厚の0.04〜0.6倍の範囲内の平均粒径を持ち、かつ平均粒径が0.4μm以上100μm以下であり、しかも、粒径の大きい粒子から体積で10%に入る粒子の平均粒径が、全体の粒子の1.5倍より小さい請求項1〜9のいずれかに記載の封止フィルム。
【請求項11】
接着フィルム中に含まれる粒子表面の屈折率と被接着面の屈折率との差の絶対値が、0.5以下で、粒子のモース硬度が5以下である請求項1〜10のいずれかに記載の封止フィルム。
【請求項12】
接着フィルム中に含まれる粒子が、粒子内部よりも粒子表面の方が、屈折率の絶対値が高く、かつ、粒子内部の材料の貯蔵弾性率が1〜3000MPaである請求項1〜11のいずれかに記載の封止フィルム。
【請求項13】
接着フィルムが、発光面の屈折率との差の絶対値が0.5以下の粒子を含み、接着フィルムの接着面が研磨され、粒子の断面が表面に露出している請求項1〜12のいずれかに記載の封止フィルム。
【請求項14】
請求項1記載の接着フィルムが、発光面の屈折率との差の絶対値が0.5以下の粒子を含み、粒子の長径が短径よりも1.5倍以上長い請求項1〜13のいずれかに記載の封止フィルム。
【請求項15】
光学フィルム及び接着フィルムからなり、封止後の光学フィルムのガラス転移温度が60℃以上で、接着フィルムのガラス転移温度が60℃以上であり、接着フィルムと反対側の光学フィルムの面に平均溝深さ0.1μm以上の凹凸又は屈折率差0.2以上の屈折率変化をもつ屈折率分布があるか若しくは光学フィルム内部に屈折率差0.015以上の屈折率変化をもつ屈折率分布構造があるか又は光学フィルムと接着フィルムの界面に平均溝深さ0.1μm以上の凹凸があり、接着フィルムの屈折率が1.42以上である透明な封止フィルム。
【請求項16】
封止後の接着フィルム粒子が、発光面の屈折率との差の絶対値が0.5以下であり、接着フィルムにおける膜厚の0.04〜0.6倍の範囲内の平均粒径を持ち、かつ平均粒径が0.4μm以上100μm以下であり、しかも、粒径の大きい粒子から体積で10%に入る粒子の平均粒径が、全体の粒子の平均粒径における1.5倍より小さく、封止後の接着フィルムの粒子が粒子の光学フィルムとの接触面積よりも発光面との接触面積の方が1.5倍以上大きい請求項15記載の封止フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−229507(P2009−229507A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71271(P2008−71271)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】