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導電層を備えたエレクトレット
説明

導電層を備えたエレクトレット

【課題】電気・電子入出力装置用材料としての導電層を備えたエレクトレットを形成する際に、エレクトレットの性能低下を極力軽減した導電層を備えたエレクトレットを提供する。
【解決手段】エレクトレット化フィルム(A)2の少なくとも片方の面に、表面抵抗値が1×10−2〜9×10Ωである導電層(E)7,8を設けた誘電体フィルム(B)3,4を、接着剤層(C)5,6を介して積層したことを特徴とする導電層を備えたエレクトレット(F)1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレクトレットに導電層を設けることにより、電気・電子入出力装置用材料として各種性能が良好な導電層を備えたエレクトレット化フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトレットは、その使用態様に応じて、フィルム、シート、繊維、不織布等の様々な形態で用いられている。特にエレクトレットを成形加工してなるエレクトレットフィルターは、エアーフィルター等の用途に広く使用されてきた。また、スピーカー、ヘッドフォン、振動制御装置、マイクロフォン、超音波センサー、圧力センサーなどの電気・電子入出力装置用の材料などの各種用途に利用が広がってきている。
多孔性樹脂フィルムを用いたエレクトレットは圧電効果を示すことが知られており、振動測定、音の発生、振動制御、音の検出などに使用できる。このような高分子発泡体を用いたエレクトレットは応用としてマイクロフォン、ヘッドフォン、スピーカーなど音響機器の振動子、フレキシブルシート状の圧力センサーなどにその軽量性を活かして応用が検討されている(特許文献1)。
多孔性樹脂フィルムを用いたエレクトレットを、電気・電子入出力装置に使用する為には、その少なくとも片方の面に、電気信号を伝達するための導電層を設ける必要がある。
導電層を設ける手法としては、導電性塗料の塗工や金属等の蒸着などが一般的であるが、塗工方式は溶媒の浸透によりエレクトレットの性能が低下する可能性があり、また乾燥工程で温度を上げ過ぎるとエレクトレット自体が性能低下する欠点があった。又、蒸着方式は気化した金属が直接エレクトレットに接触するためにエレクトレットの温度が上昇してしまい塗工方式と同様に性能低下する欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平05−041104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は導電層の設置の際にエレクトレットの性能低下が少ない導電層を備えたエレクトレットを提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、これらの課題を解決する為に、鋭意検討を進めた結果、特定の構造を有する導電層を備えたエレクトレットとすることにより、所期の特性を有する導電層を備えたエレクトレットを提供し得ることを見出し本発明の完成に至った。
すなわち本発明は、
(1)エレクトレット化フィルム(A)の少なくとも片方の面に、表面抵抗値が1×10−2〜9×10Ωである導電層(E)を設けた誘電体フィルム(B)を、接着剤層(C)を介して積層したことを特徴とする導電層を備えたエレクトレット(F)に関する。
(2)エレクトレット化フィルム(A)は、空孔を有する2軸延伸樹脂フィルムからなる多孔性樹脂フィルム(iii)をエレクトレット化してなることが好ましく、
(3)更にはエレクトレット化フィルム(A)が、空孔を有する2軸延伸樹脂フィルムからなるコア層(i)の少なくとも片面に延伸樹脂フィルムからなる表面層(ii)を備えた多孔性樹脂フィルム(iii)をエレクトレット化してなることが好ましい。
(4)コア層(i)は熱可塑性樹脂50〜97重量%、並びに無機微細粉末及び有機フィラーの少なくとも一方3〜50重量%を含有し、表面層(ii)は熱可塑性樹脂30〜97重量%、並びに無機微細粉末及び有機フィラーの少なくとも一方3〜70重量%を含有することが好ましい。
(5)熱可塑性樹脂はポリオレフィン系樹脂を含むことが好ましい。
【0006】
(6)表面層(ii)は1軸延伸フィルムであることが好ましく、
(7)コア層(i)と表面層(ii)が積層後に少なくとも1軸方向に延伸して成形されていることが好ましい。
(8)コア層(i)の厚みは10〜500μmであり、表面層(ii)の厚みは5〜500μmであることが好ましい。
(9)多孔性樹脂フィルム(iii)の空孔率は5〜95%であることが好ましい。
(10)多孔性樹脂フィルム(iii)はその少なくとも片方の面にアンカーコート層(D)を有することが好ましく、
(11)アンカーコート層(D)の坪量は0.001〜5g/mであることが好ましい。
【0007】
(12)誘電体フィルム(B)は熱可塑性樹脂からなる延伸フィルムまたは無延伸フィルムであることが好ましく、
(13)誘電体フィルム(B)の膜厚は0.1〜100μmであることが好ましい。
(14)導電層(E)は導電性塗料の塗工や金属蒸着よりなることが好ましく、
(15)導電層(E)の膜厚は0.01〜10μmであることが好ましい。
(16)エレクトレット化フィルム(A)へ導電層(E)を設けた誘電体フィルム(B)を積層する際には、導電層(E)が最外層となるように積層することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の導電層を備えたエレクトレット(F)により、エレクトレット材料に導電層(E)を設ける際にエレクトレットの性能を低下させることなく、エネルギー変換効率が高く量産性の高い電気・電子入出力材料を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のエレクトレット化フィルム(F)の一態様の一部拡大断面図である。
【図2】延伸フィルム(i)を加圧処理する際の形態の一例の模式図である。
【図3】加圧処理装置の一例の模式図である。
【図4】加熱処理装置の一例の模式図である。
【図5】本発明に用いるバッチ式エレクトレット化装置の一例の模式図である。
【図6】本発明に用いるバッチ式エレクトレット化装置の一例の模式図である。
【図7】本発明に用いる連続式エレクトレット化装置の一例の模式図である。
【図8】本発明に用いる連続式エレクトレット化装置の一例の模式図である。
【図9】実施例で使用した落球装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の導電層を備えたエレクトレット(F)は、エレクトレット化フィルム(A)の少なくとも片方の面に、導電層(E)を設けた誘電体フィルム(B)を、接着剤層(C)を介して積層することにより得られる。
[エレクトレット化フィルム(A)]
本発明のエレクトレット化フィルム(A)は、空孔を有する多孔性樹脂フィルム(iii)をエレクトレット化処理することにより得られたものであることが好ましい。多孔性樹脂フィルム(iii)は、空孔を有する2軸延伸樹脂フィルムであるか、またはこれをコア層(i)とし、その少なくとも片面に延伸樹脂フィルムからなる表面層(ii)を備えたものであることがより好ましい。更に多孔性樹脂フィルム(iii)は空孔率を適度なものにするために、加圧下で非反応性ガスを浸透させた後、非加圧下で発泡させ、加熱処理を施したものでも良い。
又、多孔性樹脂フィルム(iii)は、接着剤層(C)との密着性を向上させるためにその少なくとも片方の面にアンカー層(C)を備えることも可能である。
【0011】
[コア層(i)]
本発明において用いるコア層(i)は、内部に電荷を保持することを主目的に用いるものである。そのためコア層(i)は、空孔を有する2軸延伸樹脂フィルムからなる。
好ましくは、静電容量を確保する為に一定以上の厚みを有し、電気を通しにくい高分子材料である熱可塑性樹脂からなり、空孔率で示すように延伸によって内部に形成された空孔を有することにより、電荷を保持し易い構造を有するものである。
コア層(i)の厚みは10〜500μmの範囲であることが好ましく、20〜300μmの範囲であることがより好ましく、30〜200μmの範囲であることが特に好ましい。同厚みが10μm未満ではコア層(i)の静電容量が少なくエレクトレットの用途に不向きであり、また均一な厚みで成形を制御することが困難となり、後述のエレクトレット化処理の際に絶縁破壊を起こしやすく局所放電が発生しやすいために好ましくない。一方、500μmを超えると電荷注入の際に層内部まで電荷を到達させることが困難となり、本発明の所期の性能を発揮し得ずに好ましくない。
【0012】
コア層(i)は電気を通しにくい高分子材料である熱可塑性樹脂からなることが好ましい。用いる熱可塑性樹脂の種類は特に制限されない。例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、プロピレン系樹脂、ポリメチル−1−ペンテン等のポリオレフィン系樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、マレイン酸変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン等の官能基含有ポリオレフィン系樹脂、ナイロン−6、ナイロン−6,6等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやその共重合体、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸、脂肪族ポリエステル等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン等を使用することができる。これらの熱可塑性樹脂の中では、吸湿性が低く、絶縁性が高いポリオレフィン系樹脂、官能基含有ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。
【0013】
ポリオレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ブチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、メチルペンテン、環状オレフィンなどのオレフィン類の単独重合体、及びこれらオレフィン類の2種類以上からなる共重合体が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂の具体的な例としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、プロピレン系樹脂、エチレンと他のオレフィンとの共重合体、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体が挙げられる。
これらポリオレフィン系樹脂の中でも、プロピレン系樹脂が、加工性、絶縁性、コスト等の面などから好ましい。プロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体でありアイソタクティックないしはシンジオタクティック及び種々の程度の立体規則性を示すポリプロピレンが挙げられ、またプロピレンを主成分とし、これと、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテン等のαオレフィンとを共重合させた共重合体が挙げられる。この共重合体については、2元系でも3元系以上でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体であってもよい。
【0014】
熱可塑性樹脂としてプロピレン系樹脂を用いる場合には、後述する延伸成形性をより良好にするために、ポリプロピレン(プロピレン単独重合体)よりも融点が低い樹脂を2〜25重量%配合して使用することが好ましい。このような融点が低い樹脂として、高密度ないしは低密度のポリエチレンを例示することができる。
官能基含有ポリオレフィン系樹脂の具体的な例としては、前記オレフィン類と共重合可能な官能基含有モノマーとの共重合体が挙げられる。かかる官能基含有モノマーとしては、スチレン、αメチルスチレンなどのスチレン類、酢酸ビニル、ビニルアルコール、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ブチル安息香酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メタロール(メタ)アクリルアミドなどのアクリル酸エステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、フェニルビニルエーテルなどのビニルエーテル類が特に代表的である。これら官能基含有モノマーの中から必要に応じ1種類もしくは2種類以上を適宜選択し重合したものを用いることができる。
【0015】
更にこれらポリオレフィン系樹脂及び官能基含有ポリオレフィン系樹脂は必要によりグラフト変性したものを使用する事も可能である。
グラフト変性には公知の手法が用いることができる。グラフトモノマーの具体的な例としては、不飽和カルボン酸又はその誘導体によるグラフト変性を挙げることができる。該不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等を挙げることができる。また上記不飽和カルボン酸の誘導体としては、酸無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩等も使用可能である。具体的には、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸ジエチルエステル、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸−N−モノエチルアミド、マレイン酸−N,N−ジエチルアミド、マレイン酸−N−モノブチルアミド、マレイン酸−N,N−ジブチルアミド、フマル酸モノアミド、フマル酸ジアミド、フマル酸−N−モノエチルアミド、フマル酸−N,N−ジエチルアミド、フマル酸−N−モノブチルアミド、フマル酸−N,N−ジブチルアミド、マレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム等を挙げることができる。
【0016】
使用可能なグラフト変性物は、グラフトモノマーをポリオレフィン系樹脂又は官能基含有ポリオレフィン系樹脂に対して、一般に0.005〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%加えて、グラフト変性したものである。
コア層(i)に用いる熱可塑性樹脂としては、上記の熱可塑性樹脂の中から1種を選択して単独で使用してもよいし、2種以上を選択して組み合わせて使用してもよい。
コア層(i)に使用する熱可塑性樹脂には、無機微細粉末及び有機フィラーの少なくとも一方を添加したものであることが望ましい。無機微細粉末や有機フィラーの添加により、後述する延伸工程により、コア層(i)内部に空孔を形成することが容易となる。
コア層(i)はより具体的には、上記の熱可塑性樹脂50〜97重量%、並びに無機微細粉末及び有機フィラーの少なくとも一方3〜50重量%を含有することが好ましい。さらにコア層(i)は熱可塑性樹脂60〜95重量%、並びに無機微細粉末及び有機フィラーの少なくとも一方5〜40重量%を含有することがより好ましい。
空孔の核剤となる無機微細粉末及び有機フィラーの含有率が3重量%未満では、後述する延伸工程で形成される空孔数が少なく電荷の蓄積能力に劣るものとなり所期の目的を達成しにくい。一方、50重量%を超えると形成される空孔が互いに連通してしまい、電荷を導入しても連通孔を経由して多孔性樹脂フィルム(i)の表面や端面から電荷が逃げ易い構造となり、電荷が安定しない傾向があるために好ましくない。
【0017】
無機微細粉末を添加する場合は、平均粒径が通常0.01〜15μm、好ましくは0.05〜5μm、より好ましくは0.1〜3μm、特に好ましくは0.5〜2.5μmのものを使用する。無機微細粉末の具体例としては、炭酸カルシウム、焼成クレー、シリカ、けいそう土、白土、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナ、ゼオライト、マイカ、セリサイト、ベントナイト、セピオライト、バーミキュライト、ドロマイト、ワラストナイト、ガラスファイバーなどを使用することができる。本発明において平均粒径はメーカーカタログ値を参照した。
有機フィラーを添加する場合は、主成分である熱可塑性樹脂とは異なる種類の樹脂を選択することが好ましい。例えば熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合には、有機フィラーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン−6、ナイロン−6,6、環状オレフィン重合体、ポリスチレン、ポリメタクリレート等の重合体であって、ポリオレフィン系樹脂の融点よりも高い融点(例えば170〜300℃)ないしはガラス転移温度(例えば170〜280℃)を有し、かつ非相溶のものを使用することができる。
【0018】
コア層(i)に使用する熱可塑性樹脂には必要に応じて、熱安定剤(酸化防止剤)、光安定剤、分散剤、滑剤などを任意に添加することができる。熱安定剤を添加する場合は、樹脂に対し通常0.001〜1重量%の範囲内で添加する。熱安定剤の具体例としては、立体障害フェノール系、リン系、アミン系等の安定剤を使用することができる。光安定剤を添加する場合は、樹脂に対し通常0.001〜1重量%の範囲内で添加する。光安定剤の具体例としては、立体障害アミン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の光安定剤を使用することができる。分散剤や滑剤は、例えば無機微細粉末を樹脂中に分散させる目的で使用する。使用量は樹脂に対し通常0.01〜4重量%の範囲内である。これらの具体例としては、シランカップリング剤、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸ないしはそれらの塩等を使用することができる。
【0019】
本発明においてコア層(i)は、フィルムの巾方向、流れ方向の2軸方向に延伸されている。延伸により層内部に空孔が多数形成され、この空孔内部に電荷が蓄積されるので、エレクトレット化フィルム(iii)として電荷の保持性能が優れたものとなる。
コア層(i)に形成される空孔は電荷を保持する観点から個々の体積が大きく、その数が多く、且つ互いに独立した形状であることが望ましい。空孔の大きさは1方向のみの延伸よりも、2軸方向に延伸した方が大きくできる。特にフィルムの巾方向、流れ方向の2軸方向に延伸したものは面方向に引き延ばされた円盤状の空孔を形成できるので、フィルム厚み方向に電荷注入した際に、空孔内に正負分極した電荷を蓄積しやすい。したがって本発明のコア層(i)には2軸延伸した樹脂フィルムを用いる。
【0020】
[表面層(ii)]
本発明において用いる表面層(ii)は、多孔性樹脂フィルム(iii)のエレクトレット化処理の際の絶縁耐圧を向上し、且つ、コア層(i)内部に蓄積した電荷の保持性を向上することを主目的に、コア層(i)の少なくとも片面に、好ましくは両面に設けられる延伸フィルムからなる層である。好ましくは、絶縁耐性を向上する為に一定以上の厚みを有し、電気を通しにくい高分子材料である熱可塑性樹脂からなり、1軸延伸樹脂フィルム構造を有するものである。
表面層(B)の厚みは5〜500μmの範囲であることが好ましく、7〜300μmの範囲であることがより好ましく、9〜100μmの範囲であることが更に好ましく、10〜50μmの範囲であることが特に好ましく、10〜30μmの範囲であることが最も好ましい。同厚みが5μm未満では多孔性樹脂フィルム(iii)の絶縁耐圧の向上には効果が不十分であり、高電圧での電荷注入が出来ず、高い電荷を持ったエレクトレット化フィルム(A)は得られにくい。一方、500μmを越えてしまうとエレクトレット化処理の際に内部まで電荷を到達させることが困難となり、本発明の所期の性能を発揮し得ずに好ましくない。
【0021】
表面層(ii)を構成する熱可塑性樹脂としては、コア層(i)の項で挙げた熱可塑性樹脂と同様のものを用いることができる。積層物の延伸特性の観点から表面層(ii)とコア層(i)に使用する熱可塑性樹脂は同種類の樹脂を用いることが好ましい。
表面層(ii)は無機微細粉末又は有機フィラーを含有していても、含有していなくても良いが、表面層(ii)の誘電率などの電気的特性の改質という観点から、含有している方が好ましい。含有する場合にはコア層(i)の項で挙げた無機微細粉末及び有機フィラーと同様のものを用いることができる。
表面層(ii)はより具体的には、上記の熱可塑性樹脂30〜97重量%、並びに上記の無機微細粉末及び有機フィラーの少なくとも一方3〜70重量%を含有することが好ましい。さらに表面層(ii)は、熱可塑性樹脂40〜95重量%、並びに無機微細粉末及び有機フィラーの少なくとも一方5〜60重量%を含有することがより好ましく、熱可塑性樹脂50〜90重量%、並びに無機微細粉末及び有機フィラーの少なくとも一方10〜50重量%を含有することが特に好ましい。
無機微細粉末及び有機フィラーの含有率が3重量%未満では、電気的特性の改質効果が充分に得られない。一方、70重量%を越えると、無機微細粉末自身による誘電効果や、互いに連通した空孔の形成によって電荷が逃げ易い構造となり、電荷が安定しない傾向があるために好ましくない。
【0022】
表面層(ii)に無機微細粉末や有機フィラーを含有させる場合には、コア層(i)に用いた無機微細粉末及び有機フィラーと同種のものを用いても、異種のものを用いてもよい。
特に無機微細粉末の添加は、一般的には熱可塑性樹脂よりも誘電率が高い為に、表面層(ii)の電気特性の改質には向いている。
特に熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂などの誘電率の低い樹脂を使用する場合は、無機微細粉末又は有機フィラーを含有することにより、エレクトレット化処理時の高電圧印加時には誘電効果によりコア層(i)まで電荷を到達させることができ、エレクトレット化処理後は、主成分であるポリオレフィン系樹脂の低い誘電特性によりコア層(i)の電荷を逃がさず保持する効果が得られる。
【0023】
表面層(ii)は上述の通り、延伸樹脂フィルムからなる層である。これは延伸によって厚み(膜厚)の均一性を向上させて、絶縁耐圧性などの電気特性の均一化が図れるためである。表面層(ii)の厚みが不均一であると、高電圧を用いた電荷注入時に、特に薄い部分で局所的な放電集中が発生しやすく、効果的な電荷注入は期待できない。したがって表面層(ii)は、空孔の形成効率が低い1軸延伸をした樹脂フィルムであることが望ましい。表面層(ii)を2軸延伸樹脂フィルムにした場合は、コア層(i)と同様に無機微細粉末や有機フィラーを核として空孔が形成してしまう為に、表面層(ii)によって電荷を保持する効果は低下してしまう。
【0024】
表面層(ii)は、コア層(i)との積層後に、少なくとも1軸方向に延伸することが好ましい。コア層(i)との積層後に延伸することによって、延伸フィルム同士を積層するよりも、多孔性樹脂フィルム(iii)としての膜厚の均一性が向上し、結果的に絶縁耐圧性などの電気特性が向上する。
表面層(ii)は単層構造以外に、2層構造以上の多層構造のものであってもよい。多層構造とする場合は、各層に使用する熱可塑性樹脂、無機微細粉末、及び有機フィラーの種類や含有量を変更することにより、より高い電荷保持性能を備えた多孔性樹脂フィルム(iii)の設計が可能となる。
表面層(ii)をコア層(i)の両面に設ける場合は、表裏それぞれの組成、構成が同一でも良いし、異なる組成、構成のものであっても良い。
【0025】
[積層]
コア層(i)と表面層(ii)の積層は公知の種々の方法が使用できる。具体例としては、フィードブロックやマルチマニホールドを使用した多層ダイスを用いる共押出方式と、複数のダイスを使用する押出ラミネーション方式等が挙げられる。更に多層ダイスによる共押出方式と押出ラミネーション方式を組み合わせる方法が挙げられる。
前述の通りコア層(i)は2軸延伸フィルムであり、表面層(ii)は1軸延伸フィルムであることが好ましい。そして膜厚の均一性の観点から、コア層(i)と表面層(ii)との積層後に、少なくとも1軸方向に延伸することが好ましい。従ってコア層(i)と表面層(ii)との積層は、1軸方向に延伸されたコア層(i)上に、表面層(ii)を押出ラミネーションをすることが好ましい。コア層(i)上へ表面層(ii)を押出ラミネート積層した後に、積層物を前記コア層(i)の延伸軸とほぼ直角方向に延伸することで、コア層(i)を2軸延伸フィルムとし、表面層(ii)を1軸延伸フィルムとした、膜厚の均一な多孔性樹脂フィルム(iii)が得られる。
【0026】
[延伸]
コア層(i)、表面層(ii)、およびこれらの積層物である多孔性樹脂フィルム(iii)の延伸は、公知の種々の方法によって行うことができる。
延伸の方法としては、ロール群の周速差を利用した縦延伸方法、テンターオーブンを使用した横延伸方法、圧延方法、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸方法、テンターオーブンとパンタグラフの組み合わせによる同時二軸延伸方法などを挙げることができる。又、インフレーションフィルムの延伸方法であるチューブラー法による同時二軸延伸方法を挙げることができる。
延伸時の温度は、各層に用いる主な熱可塑性樹脂の、ガラス転移点温度以上から結晶部の融点以下の範囲内で行うことができる。コア層(i)と表面層(ii)の積層物である多孔性樹脂フィルム(iii)を延伸する場合は、より設定坪量の多い層(通常はコア層(i))に合わせて延伸温度を設定すれば良い。
【0027】
指標としては用いる熱可塑性樹脂の融点より1〜70℃低い温度である。具体的には、各層の熱可塑性樹脂がプロピレン単独重合体(融点155〜167℃)である場合は100〜166℃であり、高密度ポリエチレン(融点121〜136℃)である場合は70〜135℃である。また、延伸速度は20〜350m/分の範囲とするのが好ましい。
延伸の倍率は特に限定されず、多孔性樹脂フィルム(iii)に用いる熱可塑性樹脂の特性や後述する得るべき空孔率等を考慮して適宜決定する。
延伸倍率は、例えば、熱可塑性樹脂としてプロピレン単独重合体ないしはその共重合体を使用する場合で、一軸方向に延伸する場合は約1.2〜12倍であり、好ましくは2〜10倍であり、二軸方向に延伸する場合には面積倍率(縦倍率と横倍率の積)で1.5〜60倍、好ましくは4〜50倍である。その他の熱可塑性樹脂を使用する場合、一軸方向に延伸する場合は1.2〜10倍、好ましくは2〜5倍であり、二軸方向に延伸する場合には面積倍率で1.5〜20倍、好ましくは4〜12倍である。
【0028】
[多孔性樹脂フィルム(iii)]
上記の積層工程や延伸工程を経て、得られる多孔性樹脂フィルム(iii)は、電荷注入によってエレクトレット化フィルム(A)とするのに好適なものとして設計されている。多孔性樹脂フィルム(iii)は静電容量を確保する為に一定範囲の空孔率を有していることが好ましい。また多孔性樹脂フィルム(iii)は蓄積した電荷が外部に逃げにくいようにする為に、一定値以上の表面抵抗値を有していることが好ましい。
本発明において、多孔性樹脂フィルム(iii)内の空孔は電荷を保持する場所として、割合が多いほど静電容量を確保できるが、多すぎると絶縁する熱可塑性樹脂の割合が減少し、また連通する空孔も増えるために長期に渡り高い電荷状態を安定して維持することが難しくなる。多孔性樹脂フィルム(iii)の表面固有抵抗値は、フィルム(iii)の電荷の逃がしやすさを判断するものである。表面固有抵抗値が小さすぎれば、フィルム表面を介した放電が起こりやすくなる。
【0029】
[空孔率]
多孔性樹脂フィルム(iii)は、後述する加圧処理をしたものを含め、次式(1)で算出される空孔率が、5〜95%であることが好ましく、6〜85%であることがより好ましく、7〜75%であることが更に好ましく、8〜65%であることが特に好ましい。これら空孔は微細な空孔としてフィルム内部に多数有することが好ましい。空孔の存在により、樹脂フィルム内の界面数が増加し、空孔が存在しない樹脂フィルムと比較して内部に電荷を蓄積できる性能が向上し、性能の高いエレクトレット化フィルム(A)を得ることができる。しかし過剰の空孔は逆に電荷を逃がす原因となり得る。
【数1】

【0030】
[アンカーコート層(D)]
多孔性樹脂フィルム(iii)の表面には、更に他素材を貼り合わせてエレクトレット化後の用途を拡大することを目的に、接着剤や蒸着金属膜などとの密着性を向上するため、片面もしくは両面にアンカーコート層(D)を設けることが好ましい。
アンカーコート層(D)には高分子バインダーを用いることが好ましく、係る高分子バインダーの具体的な例としては、ポリエチレンイミン、炭素数1〜12のアルキル変性ポリエチレンイミン、ポリ(エチレンイミン−尿素)等のポリエチレンイミン系重合体;ポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物、及びポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン付加物等のポリアミンポリアミド系重合体;アクリル酸アミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、ポリアクリルアミドの誘導体、オキサゾリン基含有アクリル酸エステル系重合体等のアクリル酸エステル系重合体;ポリビニルアルコールとその変性体を含むポリビニルアルコール系重合体;ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等の水溶性樹脂;塩素化ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、アクリル酸変性ポリプロピレン等のポリプロピレン系重合体、加えてポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体、ポリエステル等の熱可塑性樹脂の有機溶剤希釈樹脂又は水希釈樹脂等が挙げられる。これらの内でもポリエチレンイミン系重合体、ポリアミンポリアミド系重合体、ポリビニルアルコール系重合体、及びポリプロピレン系重合体が、多孔性樹脂フィルム(iii)へのアンカー効果に優れ好ましい。
【0031】
アンカーコート層(D)の坪量は固形分換算坪量として0.001〜5g/mであるのが好ましく、0.005〜3g/mであることがより好ましく、0.01〜1g/mであることがより好ましい。アンカーコート層(D)の坪量が0.001g/m未満では、アンカーコート層(D)を設ける効果を充分に得られない。一方、5g/mを超えてしまうと、塗工層であるアンカーコート層(D)の坪量を均一に保つことが困難となり、坪量の振れによって多孔性樹脂フィルム(iii)の電気特性の均一性が損なわれたり、アンカーコート層(D)自体の凝集力不足からアンカー効果が低下したり、或いはアンカーコート層(D)の表面抵抗値が低下して1×1013Ω未満となり、多孔性樹脂フィルム(iii)のエレクトレット化の際に電荷が注入されにくくコア層(i)まで到達せずに本発明の所期の性能を発現しないため好ましくない。
アンカーコート層(D)の塗工は公知の塗工装置によりフィルム(i)上に塗膜を形成し乾燥することにより形成することができる。塗工装置の具体的な例としては、ダイコーター、バーコーター、スクイズコーター、コンマコーター、リップコーター、ロールコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、リバースコーター、エアーナイフコーター等が挙げられる。
多孔性樹脂フィルム(iii)へのアンカーコート層(D)の積層は、後述のエレクトレット化処理を実施する前に施すことが好ましい。
【0032】
[加圧処理]
加圧処理として、多孔性樹脂フィルム(iii)は圧力容器に入れて、圧力容器内に非反応性ガスを加圧導入することによりコア層(i)の空孔内に非反応性ガスを浸透させ、次いで非加圧環境下で空孔を膨張させることが可能である。使用する非反応性ガスの具体的な例としては、窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス、またはこれらの混合ガスや空気が挙げられる。非反応性ガス以外の気体を使用した場合でも膨張効果は得られるが、加圧処理中の安全性や得られた多孔性樹脂フィルム(iii)の安全性の観点から非反応性ガスを用いることが望ましい。加圧処理の圧力は好ましくは0.2〜10MPa、より好ましくは0.3〜8MPa、更に好ましくは0.4〜6MPaの範囲である。加圧力が0.2MPa未満では圧力が低いため充分な膨張効果が得られない。一方10MPaを超えてしまうとコア層(i)の空孔が非加圧環境下で内圧に耐え切れず破断してしまいフィルムの状態を保てなくなってしまう。加圧処理の時間は好ましくは1時間以上、より好ましくは1〜50時間の範囲である。加圧処理の時間が1時間未満では非反応性ガスがコア層(i)の空孔に充分に充満しないか、或いは、1時間未満でコア層(i)の空孔に非反応性ガスが充満する延伸フィルム(i)では後術の加熱処理を施している間に非反応性ガスの拡散が発生してしまい安定した膨張倍率が得られない。
又、巻取り形状の多孔性樹脂フィルム(iii)を加圧処理する場合は、非反応性ガスが巻取り内部まで浸透し易いように、図2に示す様に緩衝シートと一緒に巻取った巻を予め準備することが望ましい。緩衝シートの具体的例としては、発泡ポリスチレンシート、発泡ポリエチレンシート、発泡ポリプロピンシート、不織布、紙、布などの連通した空孔を持つ物を用いることができる。この巻を図3に示す様な加圧容器を用いて非反応性ガスで加圧することにより加圧処理が行われる。
【0033】
[加熱処理]
加圧処理を施した多孔性樹脂フィルム(iii)は加熱処理が必要である。加圧処理を行い非加圧環境下に戻すことにより多孔性樹脂フィルム(iii)は膨張する。しかしながら、そのままでは浸透した非反応性ガスが次第に抜けてしまい元の厚みに戻ってしまう。加熱処理を行うことにより、非反応性ガスが抜けてしまって空孔内部が大気圧に下がった後でも膨張効果を維持できるものである。係る加熱処理の温度は、コア層(i)に主に用いる熱可塑性樹脂のガラス転移点温度以上から結晶部の融点以下の熱可塑性樹脂に好適な公知の温度範囲内で行うことができる。具体的には、コア層(i)の熱可塑性樹脂がプロピレン単独重合体(融点155〜167℃)の場合は80〜160℃の範囲内である。また加熱方法も公知の手法を用いることが出来る。具体的な例としては、ノズルからの熱風による熱風加熱、赤外線ヒーターによる輻射加熱、温調機能付きのロールによる接触加熱などが挙げられる。加熱処理中は多孔性樹脂フィルム(iii)の弾性率が低く加重が掛ると潰れ易い事から非接触方式の熱風加熱や輻射加熱の方が高い膨張倍率を得やすい傾向にある。非接触方式の加熱処理装置としては図4に示すような装置が挙げられる。
多孔性樹脂フィルム(iii)は加圧処理と加熱処理を実施することにより空孔率が高くなる。多孔性樹脂フィルム(iii)の空孔率は5〜95%、好ましくは10〜90%の範囲内である。空孔率が5%未満では電荷の蓄積容量が低く、電気・電子入出力装置用材料として性能が劣るものとなる。一方95%を越えると、厚み方向の復元性が低下し耐久性に劣るものとなる。
【0034】
[エレクトレット化]
多孔性樹脂フィルム(iii)をエレクトレット化フィルム(A)とするためにはエレクトレット化処理を施す必要がある。係るエレクトレット化処理としては幾つかの処理方法が考えられる。例えば、フィルム(i)の両面を導電体で保持し、直流高電圧やパルス状高電圧を加える方法(エレクトロエレクトレット化法)やγ線や電子線を照射してエレクトレット化する方法(ラジオエレクトレット化法)などが公知である。
中でも直流高電圧を用いたエレクトレット化法(エレクトロエレクトレット化法)は装置が小型化であり、且つ、作業者や環境への負荷が小さく、本発明の多孔性樹脂フィルム(iii)の様な高分子材料のエレクトレット化に適している。
本発明に用い得るエレクトレット化装置の好ましい例としては、図5に示す様に直流高圧電源29に繋がった針状電極30とアース電極31の間に多孔性樹脂フィルム(iii)を固定し所定の電圧を印加する方法、図6に示す様に直流高圧電源29に繋がったワイヤー電極32とアース電極31の間に多孔性樹脂フィルム(iii)を固定し所定の電圧を印加しながらワイヤー電極32を移動する方法、図7に示す様に直流高圧電源29に繋がった針状電極33とアースに接続されたロール34間に所定の電圧を印加しながら多孔性樹脂フィルム(iii)を通過させる方法、図8に示す様に直流高圧電源29に繋がったワイヤー電極35とアースに接続されたロール34間に所定の電圧を印加しながら多孔性樹脂フィルム(iii)を通過させる方法などが挙げられる。
【0035】
多孔性樹脂フィルム(iii)は直流高電圧放電によるエレクトレット化処理により、より多くの電荷を内部に蓄積することが可能である。係るエレクトレット化処理の電圧は、多孔性樹脂フィルム(iii)の厚み、空孔率、樹脂やフィラーの材質、処理速度、用いる電極の形状、材質、大きさ、最終的に得るべきエレクトレット化フィルム(A)の帯電量などにより変更し得るが、好ましい範囲としては10〜100KV、より好ましくは12〜70KV、更に好ましくは15〜50KVの範囲内である。エレクトレット化処理の電圧が10KV未満では電荷注入量が不十分となり本発明の初期の性能を発揮しない。一方100KVを超えてしまうと局所的な火花放電が発生しやすくなってしまい多孔性樹脂フィルム(iii)の部分的な破壊が発生しやすい傾向にある。又、100KVを超えてしまうと注入した電荷が多孔性樹脂フィルム(iii)の表面から端面を伝いアース電極へ流れる電流が発生し易くなり、エレクトレット化の効率が悪くなる傾向にある。
【0036】
エレクトレット化処理は、多孔性樹脂フィルム(iii)に過剰に電荷を注入する場合があり、この場合は処理後のエレクトレット化フィルム(A)から放電現象が起こり、後のプロセスで不都合を来すことがある。そのためエレクトレット化フィルム(A)はエレクトレット化処理後に、除電処理を行うことも可能である。除電処理を行なうことによりエレクトレット化処理により過剰に与えられた電荷を除去して放電現象の防止が可能となる。係る除電処理には、電圧印加式除電器(イオナイザ)や自己放電式除電器など公知の手法を用いることができる。これら一般的な除電器は表面の電荷の除去はできるが、コア層(i)内部、得に空孔内に蓄積した電荷までは除去できない。したがって除電処理によりエレクトレット化フィルム(A)の性能が大きく低下するような影響は与えない。
エレクトレット化処理は、多孔性樹脂フィルム(iii)に用いる主な熱可塑性樹脂のガラス転移点温度以上から結晶部の融点以下の温度で行うことが望ましい。ガラス転移点以上であれば熱可塑性樹脂の非晶質部分の分子運動が活発であり、与えられた電荷に適した分子配列をなすため、効率が良いエレクトレット化処理が可能である。一方、融点を超えてしまうと多孔性樹脂フィルム(iii)がその構造を維持できなくなってしまうため、本発明の所期の性能を得られない。
【0037】
[誘電体フィルム(B)]
本発明の導電層を備えたエレクトレット(F)は、エレクトレット化フィルム(A)の少なくとも片方の面に誘電体フィルム(B)を、接着剤層(C)を介して積層することにより得られる。係る誘電体フィルム(B)は熱可塑性樹脂からなる延伸フィルムや無延伸フィルムを用いることが出来る。
誘電体フィルム(B)に用いる熱可塑性樹脂の種類は特に制限されない。例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、プロピレン系樹脂、ポリメチル−1−ペンテン等のポリオレフィン系樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、マレイン酸変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン等の官能基含有ポリオレフィン系樹脂、ナイロン−6、ナイロン−6,6等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやその共重合体、ポリブチレンテレフタレート、脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン等を使用することができる。
誘電体フィルム(B)の膜厚は、0.1〜100μmが好ましく、0.5〜70μmがより好ましく、1〜50μmが更に好ましい。膜厚が0.1μm未満では、厚みが薄すぎて積層する際にシワが発生しやすく、導電層(E)に欠陥が発生し易いものとなってしまう。一方100μmを超えてしまうと、誘電体フィルムを介してエレクトレット化フィルム(A)まで信号が届かないか、或いは、エレクトレット化フィルム(A)に音や振動が伝わりづらくなり電気・電子入出力装置に使用した場合の性能が劣るものとなる。
【0038】
[導電層(E)]
誘電体フィルム(B)は片方の面に導電層(E)を備えていることが必要である。誘電体フィルム(B)に導電層(E)を設ける方法としては、導電性塗料の塗工や金属の蒸着などが挙げられる。
導電性塗料の具体的な例としては、金、銀、白金、銅、ケイ素などの金属粒子、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛などの導電性酸化金属粒子やカーボン粒子をアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エーテル系樹脂、エステル系樹脂、エポキシ系樹脂などのバインダー成分の溶液及び/又は分散液に混合したものや、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性樹脂の溶液及び/又は分散液などが挙げられる。導電性塗料の塗工は公知の塗工装置により支持体上に塗膜を形成し乾燥することにより形成することができる。塗工装置の具体的な例としては、ダイコーター、バーコーター、コンマコーター、リップコーター、ロールコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、リバースコーター、エアーナイフコーター等が挙げられる。
金属蒸着膜の具体的な例としては、アルミニウム、亜鉛、金、銀、プラチナ、ニッケルなどの金属を減圧下で気化して直接誘電体フィルム(B)の表面に付着させ薄膜を形成すること、または上記金属を減圧下で気化して一旦転写フィルムの表面に付着させ薄膜を形成し、次いで誘電体フィルム(B)の表面に転写させること等が挙げられる。
導電層(E)の膜厚は0.01〜10μmが好ましく、0.03〜7μmがより好ましく、0.05〜5μmが更に好ましい。膜厚が0.01μm未満では、導電層に信号伝達性能にムラが発性し易くなってしまう傾向がある。一方、10μmを超えてしまうと導電層の重量が重くなり音や振動が伝わりづらくなり電気・電子入出力装置に使用した場合の性能が劣るものとなる。
【0039】
[接着剤層(C)]
本発明の導電層を備えたエレクトレット(F)は、エレクトレット化フィルム(A)の少なくとも片方の面に誘電体フィルム(B)を、接着剤層(C)を介して積層することにより得られる。
エレクトレット化フィルム(A)へ導電層(E)を設けた誘電体フィルム(B)を積層する際には、導電層(E)が最外層となるように積層しても良く、導電層(E)と接着剤層(C)が接するように積層しても良い。一般には積層された誘電体フィルム(B)に設けた導電層(E)が最外層となるように(エレクトレット化フィルム(A)とは反対側を向く様に)積層することが好ましい。導電層(E)がエレクトレット化フィルム(A)を向く様に設置してしまうと、電気信号はより拾いやすくなるものの、導電層(E)に信号伝達用のケーブルやコネクタを設置することが難しくなってしまう。
積層は、エレクトレット化フィルム(A)または誘電体フィルム(B)上に溶剤系接着剤、水分散型接着剤あるいはホットメルト型接着剤等の接着剤を、塗工、散布、溶融押出ラミネート等の手法により接着剤層として設け、これを介してラミネート、または熱融着性フィルムや溶融押出フィルムを用いた溶融ラミネート等の通常の手法により行うことができる。これら接着剤層は通常、まずは誘電体フィルム(B)上に設けた方が、エレクトレット化フィルム(A)への熱履歴が少なくなり好ましい。
【0040】
溶剤系接着剤、水分散型接着剤としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エーテル系樹脂、エステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、ABS系樹脂等からなる樹脂成分を、従来公知の溶剤を用いてその相の中に溶解、分散、乳濁分散、希釈して、流動性があり塗工の可能な、溶液型やエマルジョン型の様態の液状の接着剤が代表的である。
これら接着剤の塗工は、ダイコーター、バーコーター、コンマコーター、リップコーター、ロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、リバースコーター、エアーナイフコーター等により行われる。その後必要によりスムージングを行い、乾燥工程を経て、接着剤層が形成される。
これらの接着剤は、一般的には秤量が0.5〜25g/mとなるように塗工されて接着剤層は設けられる。
接着剤を使用する場合は、誘電体フィルム(B)の導電層(E)が無い面に該接着剤を塗工し、次いで、エレクトレット化フィルム(A)を重ね、圧着ロールで加圧接着すればよい。
【0041】
ホットメルト型接着剤としては、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリブチラール系樹脂、ウレタン系樹脂などを例示できる。
ホットメルト型接着剤を使用する場合は、誘電体フィルム(B)の導電層(E)が無い面にビート塗工、カーテン塗工、スロット塗工等の方法で塗工するか、ダイより溶融フィルム状に押し出してラミネートし、次いで、エレクトレット化フィルム(A)を重ね、圧着ロールで加圧接着すればよい。
エレクトレット化フィルム(A)と誘電体フィルム(B)の積層は、多孔性樹脂フィルム(iii)のエレクトレット化処理の前でも良いし、後でもよいが、両面に誘電体フィルム(B)を設ける場合は、少なくとも片面はエレクトレット化処理を実施した後でなければならない。両面に誘電体フィルム(B)を積層してからエレクトレット化処理を実施しても、導電層(E)を通じて電荷が逃げてしまうために多孔性樹脂フィルム(iii)内部まで電荷が到達することができず、本発明の所期の性能を達成できない。
【0042】
[厚み]
本発明の多孔性樹脂フィルム(iii)およびエレクトレット化フィルム(A)の厚みはJIS−K−7130:1999に準拠し厚み計を用いて測定する。
表面層(ii)の厚みは測定対象試料を液体窒素にて−60℃以下の温度に冷却し、ガラス板上に置いた試料に対してカミソリ刃(シック・ジャパン(株)製、商品名:プロラインブレード)を直角に当て切断し断面測定用の試料を作成し、得られた試料を走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、商品名:JSM−6490)を使用して空孔形状、組成からコア層(i)と表面層(ii)の境界線を判別し、潰れにくい表面層(ii)の厚みを観測値と倍率の積から算出する。次いでコア層(i)の厚みはフィルムの総厚みと表面層(ii)の厚みの差から求める。
【0043】
[表面抵抗値]
本発明の表面抵抗値は23℃、相対湿度50%の条件下で、表面抵抗値が1×10Ω以上の場合は、JIS−K−6911に準拠し2重リング法の電極を用いて測定する。表面抵抗値が1×10Ω未満の場合は、JIS−K−7194に準拠し4端子法により測定することによって求めた値である。
本発明に用いる多孔性樹脂フィルム(iii)の表面抵抗値は1×1013Ω以上に調整されていることが望ましい。表面抵抗値が1×1013Ω未満では多孔性樹脂フィルム(iii)のエレクトレット化処理を施す際に、電荷が表面を伝い逃げやすくなり、充分な電荷注入が行われない。
導電層(E)の表面抵抗値は1×10−2〜9×10Ωの範囲内に調整されていることが望ましい。表面抵抗値が9×10Ωを超えると電気信号の伝達効率が悪く、電気・電子入出力装置材料としての性能が低下する傾向にある。一方1×10−2Ω未満の導電層を設ける為には、厚い導電層を設ける必要があり、電気信号の伝達性には問題ないが、音や振動の伝達性の観点から好ましくない。
【実施例】
【0044】
以下に実施例、比較例および試験例を用いて、本発明を更に具体的に説明する。以下に示す材料、使用量、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
なお、以下に記載される%は、特記しない限り重量%である。
本発明の導電層を備えたエレクトレットの製造例、実施例に使用する材料を表1にまとめて示す。
【0045】
【表1】

【0046】
[製造例1]
熱可塑性樹脂組成物aを230℃に設定した押出機にて混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給しシート状に押し出し、これを冷却装置により冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを135℃に加熱して縦方向に5倍延伸した。
可塑性樹脂組成物cを250℃に設定した押出機で混練した後、シート状に押し出して上記で調整した5倍延伸フィルムの表面及び裏面それぞれに積層し、3層構造の積層フィルムを得た。
次いで、この3層構造の積層フィルムを60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて再び約145℃に加熱して横方向に8倍延伸した後、160℃に調整した熱セットゾーンにより熱処理を行った。
その後60℃に冷却した後、次いで耳部をスリットし、両面にコロナ表面処理を施しアンカー剤Aを乾燥後の塗工量が0.01g/mとなるように両面に塗工し、80℃のオーブンにて乾燥してアンカー層(D)を設けて、3層〔10/40/10μm:延伸層構成(1軸/2軸/1軸)〕構造の肉厚60μm、空孔率26%の多孔性樹脂フィルム(iii)を得た。
【0047】
[製造例2]
熱可塑性樹脂組成物bを230℃に設定した押出機にて混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給しシート状に押し出し、これを冷却装置により冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを150℃に加熱して縦方向に4倍延伸した。
可塑性樹脂組成物dを250℃に設定した押出機で混練した後、シート状に押し出して上記で調整した4倍延伸フィルムの表面及び裏面それぞれに積層し、3層構造の積層フィルムを得た。
次いで、この3層構造の積層フィルムを60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて再び約150℃に加熱して横方向に7.5倍延伸した後、160℃に調整した熱セットゾーンにより熱処理を行った。
その後60℃に冷却した後、次いで耳部をスリットし、両面にコロナ表面処理を施しアンカー剤Bを乾燥後の塗工量が0.02g/mとなるように両面に塗工し、80℃のオーブンにて乾燥してアンカー層(D)を設けて、3層〔20/60/20μm:延伸層構成(1軸/2軸/1軸)〕構造の肉厚100μm、空孔率38%の多孔性樹脂フィルム(iii)を得た。
【0048】
[製造例3]
熱可塑性樹脂組成物aを230℃に設定した押出機にて混練した後、250℃に設定した押出ダイスに供給してシート状に押し出し、これを冷却装置により冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを145℃に加熱し、周速差の異なる多数のロール群を用いて縦方向に4倍延伸して4倍延伸フィルムを得た。
次いで、可塑性樹脂組成物aを250℃に設定した押出機で混練した後、250℃に設定した押出ダイスに供給してシート状に押し出し、これを上で調整した4倍延伸フィルムの表面及び裏面それぞれに積層し、3層構造の積層フィルムを得た。
次いで、この積層フィルムを60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて再び約150℃に加熱し、横方向に8倍延伸した後、これを160℃に調整したオーブンによりアニーリング処理を行い、60℃まで冷却した後、耳部をスリットし、両面にコロナ表面処理を施しアンカー剤Cを乾燥後の塗工量が1.0g/mとなるように両面に塗工し、3層構造(a/a/a=16/40/16μm、延伸層構成(1軸/2軸/1軸))で厚み72μm、空孔率9%の延伸フィルムを得た。
【0049】
[製造例4〜6]
製造例1〜3で得られた多孔性樹脂フィルム(iii)をA4サイズに切り出し、圧力容器内に入れ1.0MPaの圧力で8時間加圧し、取り出して直ぐに95℃に設定したオーブン内で30秒間熱処理を実施した。
【0050】
【表2】

【0051】
[実施例1〜4、6]
主電極の針間距離10mm、主電極−アース電極間距離10mmに設定した図2に記載のエレクトレット化装置のアース電極盤上に製造例1〜4、6で得た多孔性樹脂フィルム(iii)を置き、印加電圧を1KVから少しずつ上昇し局所火花放電により多孔性樹脂フィルム(iii)が破壊される電圧を測定し、この火花放電電圧よりも1KV低い電圧でエレクトレット処理を実施し、エレクトレット化フィルム(A)を得た。
表1に記載の誘電体フィルム(IまたはII)の導電層の反対面に表1に記載の接着剤塗料を乾燥後の塗工量が4g/mとなるようにバーコーターで塗工して、40℃に設定したオーブンで1分間乾燥後、エレクトレット化フィルム(A)の両面にそれぞれ貼合して、導電層を備えたエレクトレット(F)を作製した。用いた誘電体フィルムの種類は表3に示す。
【0052】
[実施例5]
誘電体フィルムIの導電層の反対面に表1に記載の接着剤塗料を乾燥後の塗工量が4g/mとなるようにバーコーターで塗工して、40℃に設定したオーブンで1分間乾燥後、製造例5で得た多孔性樹脂フィルム(iii)の片面に貼合した。
主電極の針間距離10mm、主電極−アース電極間距離10mmに設定した図2に記載のエレクトレット化装置のアース電極盤上に多孔性樹脂フィルム(iii)の誘電体フィルムIを貼合していない面が主電極を向く様に置き、印加電圧を1KVから少しずつ上昇し局所火花放電により多孔性樹脂フィルム(iii)が破壊される電圧を測定し、この火花放電電圧よりも1KV低い電圧でエレクトレット処理を実施し、エレクトレット化フィルム(A)を得た。
更に別の誘電体フィルムIの導電層の反対面に表1に記載の接着剤塗料を乾燥後の塗工量が4g/mになるように塗工して、40℃に設定したオーブンで1分間乾燥後、これを上記のエレクトレット化フィルム(A)のエレクトレット処理した面に貼合して、導電層を備えたエレクトレット(F)を作製した。
【0053】
[比較例1]
主電極の針間距離10mm、主電極−アース電極間距離10mmに設定した図2に記載のエレクトレット化装置のアース電極盤上に製造例5で得た多孔性樹脂フィルム(iii)を置き、印加電圧を1KVから少しずつ上昇し局所火花放電により多孔性樹脂フィルム(iii)が破壊される電圧を測定し、この火花放電電圧よりも1KV低い電圧でエレクトレット処理を実施してエレクトレット化フィルム(A)を得た。
このエレクトレット化フィルム(A)を5cm四方の大きさにし、金蒸着装置(日立製作所製、商品名:イオンスパッタE101)を用いて両面に0.03μmの金蒸着膜による導電層(E)を形成した。
【0054】
[試験例]
(発生電圧)
実施例1〜6および比較例1の導電層を備えたエレクトレットを5cm×5cmのサイズに切り出し、導電性テープ(住友スリーエム(株)製、商品名:AL−25BT)を使用して表裏面にリード線を張付けて、図9に記載の落球装置を使用して、直径11mm、重量5.5gの鉄球を高さ3.6cmの高さから絶縁性フィルム(無延伸ポリプロピレンフィルム100μm)の上に設置した導電層を備えたエレクトレット化フィルム(F)に落下させ、サンプルからの電圧信号を高速レコーダー((株)キーエンス製、商品名:GR−7000)に取り込み、落球の衝撃により発生した最大電圧を5回測定し平均値を算出して、以下の基準で評価した。評価結果及び測定された最大電圧を表3に示す。
○ :良好 最大電圧(平均値)が200mV以上
△ :やや良好 最大電圧(平均値)が10mV以上、200mV未満
× :不良 最大電圧(平均値)が10mV未満
【0055】
【表3】

【0056】
表3に示す通り、実施例1〜6の導電層を備えたエレクトレット(F)は、落球の衝撃エネルギーを電気信号に変換できることがわかる。
又、エレクトレット化フィルム(A)に直接導電層を設けた比較例1は、金属蒸着処理の熱によりダメージを受けて蓄積した電荷が逃げてしまい、その性能を発揮することが出来ないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の導電層を備えたエレクトレット(F)は、エレクトレット化フィルム(A)に間接的に導電層を設けることを特徴とし、加工工程での品質低下がなく、又量産性も高いものである。そのためスピーカー、ヘッドフォン、超音波振動子、超音波モーター、振動制御装置、マイクロフォン、超音波センサー、圧力センサー、加速度センサー、歪センサー、疲労・亀裂センサー、発電装置などの電気・電子入出力装置用材料として、産業上の利用可能性は大きい。
【符号の説明】
【0058】
1 導電層を備えたエレクトレット(F)
2 エレクトレット化フィルム(A)
3、4 誘電体フィルム(B)
5、6 接着剤層(C)
7、8 導電層(E)
9 コア層(i)
10、11 表面層(ii)
12 加圧処理用の巻
13 多孔性樹脂フィルム(iii)
14 緩衝シート
15 圧力容器
16 圧力容器の蓋
17 加圧用バルプ
18 減圧用バルブ
19 スタンド
20 シャフト
21 コンプレッサー
22 多孔性樹脂フィルム(iii)巻取り装置
23 緩衝シート巻取り装置
24 熱風装置
25 ガイドロール
26、27 冷却ロール
28 多孔性樹脂フィルム(iii)
29 直流高圧電源
30、33 針状電極
31 アース電極
32、35 ワイヤー電極
34 アースに接続されたロール
36 導電層付きエレクトレット化フィルム(iii)
37 絶縁性フィルム
38、39 リード線
40 透明アクリルパイプ
41 鉄球
42 電磁石
43 高速レコーダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレクトレット化フィルム(A)の少なくとも片方の面に、表面抵抗値が1×10−2〜9×10Ωである導電層(E)を設けた誘電体フィルム(B)を、接着剤層(C)を介して積層したことを特徴とする導電層を備えたエレクトレット(F)。
【請求項2】
エレクトレット化フィルム(A)が、空孔を有する2軸延伸樹脂フィルムからなる多孔性樹脂フィルム(iii)をエレクトレット化してなることを特徴とする請求項1に記載の導電層を備えたエレクトレット(F)。
【請求項3】
エレクトレット化フィルム(A)が、空孔を有する2軸延伸樹脂フィルムからなるコア層(i)の少なくとも片面に延伸樹脂フィルムからなる表面層(ii)を備えた多孔性樹脂フィルム(iii)をエレクトレット化してなることを特徴とする請求項1または2に記載の導電層を備えたエレクトレット(F)。
【請求項4】
コア層(i)が熱可塑性樹脂50〜97重量%、並びに無機微細粉末及び有機フィラーの少なくとも一方3〜50重量%を含有し、表面層(ii)が熱可塑性樹脂30〜97重量%、並びに無機微細粉末及び有機フィラーの少なくとも一方3〜70重量%を含有することを特徴とする請求項3に記載の導電層を備えたエレクトレット(F)。
【請求項5】
熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂を含むことを特徴とする請求項4に記載の導電層を備えたエレクトレット(F)。
【請求項6】
表面層(ii)が1軸延伸フィルムであることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の導電層を備えたエレクトレット(F)。
【請求項7】
コア層(i)と表面層(ii)が積層後に少なくとも1軸方向に延伸されていることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の導電層を備えたエレクトレット(F)。
【請求項8】
コア層(i)の厚みが10〜500μmであり、表面層(ii)の厚みが5〜500μmであることを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載の導電層を備えたエレクトレット(F)。
【請求項9】
多孔性樹脂フィルム(iii)の空孔率が5〜95%であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の導電層を備えたエレクトレット(F)。
【請求項10】
多孔性樹脂フィルム(iii)の少なくとも片方の面にアンカーコート層(D)を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の導電層を備えたエレクトレット(F)。
【請求項11】
アンカーコート層(D)の坪量が0.001〜5g/mであることを特徴とする請求項10に記載の導電層を備えたエレクトレット(F)。
【請求項12】
誘電体フィルム(B)が熱可塑性樹脂からなる延伸フィルムまたは無延伸フィルムであることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の導電層を備えたエレクトレット(F)。
【請求項13】
誘電体フィルム(B)の膜厚が0.1〜100μmであることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の導電層を備えたエレクトレット(F)。
【請求項14】
導電層(E)が導電性塗料の塗工や金属の蒸着よりなることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の導電層を備えたエレクトレット(F)。
【請求項15】
導電層(E)の膜厚が0.01〜10μmであることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の導電層を備えたエレクトレット(F)。
【請求項16】
エレクトレット化フィルム(A)へ導電層(E)を設けた誘電体フィルム(B)を積層する際に、導電層(E)が最外層となるように積層することを特徴とする導電層を備えたエレクトレット(F)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−89496(P2010−89496A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200198(P2009−200198)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000122313)株式会社ユポ・コーポレーション (73)
【Fターム(参考)】