説明

導電性ローラ及びそれを備えた画像形成装置

【課題】弾性層と塗膜層との接着性を改善した導電性ローラを提供する。
【解決手段】シャフト部材2と、該シャフト部材2の半径方向外側に配設された一層以上の弾性層3と、該弾性層3の半径方向外側に配設された一層以上の塗膜層4とを備える導電性ローラ1において、少なくとも前記弾性層3の最外層及び前記塗膜層4の最内層を紫外線硬化性の原料混合物を紫外線照射で硬化させた紫外線硬化型樹脂から構成した上で、前記塗膜層4の最内層に用いる原料混合物に、前記弾性層3の最外層に用いる原料混合物と同種の接着性(メタ)アクリレートモノマー(A)を含ませる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性層及び塗膜層を有する導電性ローラ並びに該導電性ローラを備えた画像形成装置に関し、特に弾性層と塗膜層との接着性が高い導電性ローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機、ファクシミリ、レーザービームプリンタ(LBP)等の電子写真方式の画像形成装置においては、現像ローラ、帯電ローラ、トナー供給ローラ、転写ローラ、給紙ローラ、クリーニングローラ、定着用の加圧ローラ等として、ロール形状の導電性弾性部材、即ち、導電性ローラが多用されており、該導電性ローラは、通常、長さ方向両端部を軸支されて取り付けられるシャフト部材と、該シャフト部材の半径方向外側に配設された一層以上の弾性層とを備えている。また、該導電性ローラは、トナーに対する帯電性や付着性の制御、弾性層による感光ドラムの汚染防止等を目的として、上記弾性層の表面に、更に塗膜層を備える場合がある。
【0003】
上記導電性ローラのシャフト部材には、鉄やステンレス等の金属の他、エンジニアリングプラスチック等の種々の樹脂が用いられる。また、上記導電性ローラの弾性層には、シリコーンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、ポリウレタン等のエラストマーが用いられており、エラストマー原料を所望のキャビティー形状を有するモールドに注入し加熱して、エラストマー原料を加熱硬化させる等して、製造されている。更に、上記塗膜層は、シャフト部材と弾性層とからなるローラ本体を、樹脂を含有する溶剤系若しくは水系の塗工液中にディップ又は該塗工液をローラ本体にスプレーした後に、熱又は熱風で乾燥硬化して形成されている。ここで、塗膜層の形成には、長時間の乾燥が必要なため、量産には長い乾燥ラインが必要であり、また、塗膜層は、その用途から微妙な導電性及び表面状態が要求されるが、乾操ライン内の温度分布及び風量等のバラツキが塗膜層の性能に大きく影響するため、品質上の問題があった。
【0004】
これに対し、長い乾燥ラインを必要とせず、安定した品質の塗膜層を形成する手法として、ローラの弾性層の表面に紫外線硬化性の樹脂原料を塗布し、該樹脂原料を硬化させて、弾性層の表面に紫外線硬化型樹脂からなる塗膜層を形成する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−310136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような状況下、本発明者らは、塗膜層に紫外線硬化型樹脂を用いた上、更に弾性層にも紫外線硬化型樹脂を用いた導電性ローラについて検討したところ、一般に紫外線硬化型樹脂からなる弾性層と紫外線硬化型樹脂からなる塗膜層とは、接着性が悪いことが分かった。このため、かかる導電性ローラを備える画像形成装置を連続使用した場合、塗膜層が弾性層から剥離し、ローラの表面が削れ、画像不良を発生し易くなるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、製造に長い乾燥ラインを必要とせず、安定した品質の塗膜層を有する上、弾性層と塗膜層との接着性を改善した導電性ローラを提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかる導電性ローラを用いた、良好な画像を安定して形成することが可能な画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、弾性層の表面に配設した塗膜層に用いる紫外線硬化性の原料混合物に、該弾性層に用いる紫外線硬化性の原料混合物と同種の接着性(メタ)アクリレートモノマー(A)を含有させることで、製造に長い乾燥ラインが不要で、安定した品質の塗膜層を有する上、弾性層と塗膜層との接着性が高く、優れた耐久性を有する導電性ローラが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明の導電性ローラは、シャフト部材と、該シャフト部材の半径方向外側に配設された一層以上の弾性層と、該弾性層の半径方向外側に配設された一層以上の塗膜層とを備え、
少なくとも前記弾性層の最外層及び前記塗膜層の最内層が、紫外線硬化性の原料混合物を紫外線照射で硬化させた紫外線硬化型樹脂からなり、
前記塗膜層の最内層に用いる原料混合物が、前記弾性層の最外層に用いる原料混合物と同種の接着性(メタ)アクリレートモノマー(A)を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の導電性ローラの好適例において、前記塗膜層の最内層に用いる原料混合物及び前記弾性層の最外層に用いる原料混合物は、(メタ)アクリレートオリゴマー(B)及び/又は前記接着性(メタ)アクリレートモノマー(A)以外の(メタ)アクリレートモノマー(C)を任意に含み、前記接着性(メタ)アクリレートモノマー(A)と、前記(メタ)アクリレートオリゴマー(B)と、前記接着性(メタ)アクリレートモノマー(A)以外の(メタ)アクリレートモノマー(C)との合計中の接着性(メタ)アクリレートモノマー(A)の含有率が、2〜100質量%の範囲である。
【0011】
本発明の導電性ローラの他の好適例においては、前記接着性(メタ)アクリレートモノマー(A)が、複素環基を有する(メタ)アクリレートモノマー、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマー及びカルボキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーからなる群から選択される少なくとも一種の極性基含有(メタ)アクリレートモノマーである。ここで、前記複素環基を有する(メタ)アクリレートモノマーが、モルフォリノ基を有することが好ましい。
【0012】
本発明の画像形成装置は、上記導電性ローラを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、弾性層の表面に配設した塗膜層に用いる紫外線硬化性の原料混合物に、該弾性層に用いる紫外線硬化性の原料混合物と同種の接着性(メタ)アクリレートモノマー(A)を含ませることで、製造に長い乾燥ラインが不要で、安定した品質の塗膜層を有する上、弾性層と塗膜層との接着性が高い導電性ローラを提供することができる。また、かかる導電性ローラを備え、良好な画像を安定して形成することが可能な画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<導電性ローラ>
以下に、本発明の導電性ローラを、図を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の導電性ローラの一実施態様の断面図である。図示例の導電性ローラ1は、シャフト部材2と、該シャフト部材2の半径方向外側に配設された弾性層3と、該弾性層3の半径方向外側に配設された塗膜層4とを備える。なお、図1に示す導電性ローラ1は、弾性層3を一層のみ有するが、本発明の導電性ローラは、弾性層を二層以上有していてもよい。また、図1に示す導電性ローラ1は、塗膜層4を一層のみ有するが、本発明の導電性ローラは、図2に示すように塗膜層を二層以上有することもできる。
【0015】
図2は、本発明の導電性ローラの他の実施態様の断面図である。図示例の導電性ローラ5は、図1に示す塗膜層4に代えて、弾性層3の半径方向外側に配設された二層の塗膜層6a,6bを備える。また、図1と同じ符号は同じ部材であることを示す。
【0016】
ここで、本発明の導電性ローラは、少なくとも弾性層3の最外層及び塗膜層の最内層(塗膜層4,6a)が、紫外線硬化性の原料混合物を紫外線照射で硬化させた紫外線硬化型樹脂からなり、塗膜層の最内層(塗膜層4,6a)に用いる原料混合物が、弾性層3の最外層に用いる原料混合物と同種の接着性(メタ)アクリレートモノマー(A)を含むことを特徴とする。本発明の導電性ローラにおいては、塗膜層の最内層に用いる原料混合物と弾性層の最外層に用いる原料混合物とが、同種の接着性(メタ)アクリレートモノマー(A)を含有することで、弾性層と塗膜層との親和性が向上し、弾性層と塗膜層との接着性が大幅に向上している。従って、かかる導電性ローラを備える画像形成装置は、連続使用時に観察された塗膜層の剥離等のローラの耐久性に係わる問題を解決し、良好な画像を安定して形成することができる。
【0017】
上記弾性層の最外層用の原料混合物及び上記塗膜層の最内層用の原料混合物に用いる接着性(メタ)アクリレートモノマー(A)としては、複素環基を有する(メタ)アクリレートモノマー、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマー及びカルボキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマー等の極性基含有(メタ)アクリレートモノマーを好適に挙げることができる。これら極性基含有(メタ)アクリレートモノマーは、弾性層の最外層と塗膜層の最内層とで同種の(メタ)アクリレートモノマーを用いる限り特に制限はなく、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
上記複素環基を有する(メタ)アクリレートモノマーにおいて、複素環基としては、モルフォリノ基、イソシアヌレート基、フリル基、フタロイル基等が挙げられ、これらの中でもモルフォリノ基が好ましい。また、上記複素環基を有する(メタ)アクリレートモノマーとして、具体的には、モルホリン(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシルエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられ、これらの中でもモルホリン(メタ)アクリレートが好ましい。これら複素環基を有する(メタ)アクリレートモノマーは、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
上記ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーとして、具体的には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート等が挙げられる。これらヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーは、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
上記カルボキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーとして、具体的には、β-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、β-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロジェンサクシネート、β-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、β-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロジェンフタレート、β-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンテトラヒドロフタレート、β-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロジェンテトラヒドロフタレート、β-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンヘキサヒドロフタレート、β-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロジェンヘキサヒドロフタレート、β-トリス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルハイドロジェンフタレート等が挙げられる。これらカルボキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーは、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
上記弾性層の最外層の形成に用いる紫外線硬化性の原料混合物は、更に(メタ)アクリレートオリゴマー(B)、上記接着性(メタ)アクリレートモノマー(A)以外の(メタ)アクリレートモノマー(C)、光重合開始剤、光増感剤、導電剤等を含有することが好ましく、また、上記塗膜層の最内層の形成に用いる紫外線硬化性の原料混合物は、更に(メタ)アクリレートオリゴマー(B)、上記接着性(メタ)アクリレートモノマー(A)以外の(メタ)アクリレートモノマー(C)、光重合開始剤、光増感剤、希釈溶媒、導電剤、微粒子等を含有することが好ましい。なお、本発明の導電性ローラにおいて、最外層以外の弾性層は、特に限定されず、最外層と同様であっても、異なってもよく、また、本発明の導電性ローラにおいて、最内層以外の塗膜層は、特に限定されず、最内層と同様であっても、異なってもよい。
【0022】
上記紫外線硬化性の原料混合物に用いることが好適な(メタ)アクリレートオリゴマー(B)としては、ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマー、エーテル系(メタ)アクリレートオリゴマー、エステル系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート系(メタ)アクリレートオリゴマー、フッ素系(メタ)アクリレートオリゴマー、シリコーン系(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。上記(メタ)アクリレートオリゴマー(B)は、ポリエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、多価アルコールとε-カプロラクトンの付加物等と、(メタ)アクリル酸との反応により、或いはポリイソシアネート化合物及び水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物をウレタン化することにより合成することができる。
【0023】
上記ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリオール、イソシアネート化合物と水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とをウレタン化することによって得られる。また、上記エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、グリシジル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸との反応生成物が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、スピロ環、ジシクロペンタジエン、トリシクロデカン等の環状構造を有し且つグリシジル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸との反応生成物が更に好ましい。更に、上記エーテル系(メタ)アクリレートオリゴマー、エステル系(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリカーボネート系(メタ)アクリレートオリゴマーは、各々に対するポリオール(ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオール)と(メタ)アクリル酸との反応によって得られる。
【0024】
上記紫外線硬化性の原料混合物は、反応性希釈剤として上記接着性(メタ)アクリレートモノマー(A)以外の(メタ)アクリレートモノマー(C)を含有してもよく、該(メタ)アクリレートモノマー(C)としては、エチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら(メタ)アクリレートモノマー(C)は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
本発明の導電性ローラにおいて、弾性層の最外層及び塗膜層の最内層用の原料混合物において、接着性(メタ)アクリレートモノマー(A)、(メタ)アクリレートオリゴマー(B)及び上記接着性(メタ)アクリレートモノマー(A)以外の(メタ)アクリレートモノマー(C)の合計に占める接着性(メタ)アクリレートモノマー(A)の割合は、弾性層の最外層と塗膜層の最内層との接着性を高めるという観点から、それぞれ2〜100質量%の範囲が好ましく、5〜50質量%の範囲が更に好ましい。上記接着性(メタ)アクリレートモノマー(A)の含有率が2質量%未満では、弾性層の最外層と塗膜層の最内層との接着性を確保することが困難となる。
【0026】
上記紫外線硬化性の原料混合物は、光重合開始剤を含有することが好ましく、該光重合開始剤は、紫外線を照射させることによって、上述した(メタ)アクリレートモノマー(A),(C)や(メタ)アクリレートオリゴマー(B)の重合を開始させる作用を有する。該光重合開始剤としては、4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エステル、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、アセトフェノンジエチルケタール、アルコキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン及び3,3-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4,4-ジメトキシベンゾフェノン、4,4-ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、ベンゾイル安息香酸アルキル、ビス(4-ジアルキルアミノフェニル)ケトン、ベンジル及びベンジルメチルケタール等のベンジル誘導体、ベンゾイン及びベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン誘導体、ベンゾインイソプロピルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、キサントン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体、フルオレン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1,2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(モルホリノフェニル)-ブタノン-1等が挙げられる。これら光重合開始剤は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。上記紫外線硬化性原料混合物における光重合開始剤の配合量は、上記(メタ)アクリレートモノマー(A),(C)及び(メタ)アクリレートオリゴマー(B)の合計100質量部に対して、0.2〜5.0質量部の範囲が好ましい。光重合開始剤の配合量が0.2質量部以下では、原料混合物の紫外線硬化を開始させる効果が小さく、一方、5.0質量部を超えると、紫外線硬化を開始させる効果が飽和する一方、原料混合物のコストが高くなる。
【0027】
また、上記紫外線硬化性の原料混合物が、光重合開始剤を含有する場合に、光増感剤を含有してもよく、該光増感剤は、紫外線を照射させることによって、エネルギーを吸収し、該エネルギー又は電子が重合開始剤に移動して、重合を開始させる作用を有する。該光増感剤としては、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル等が挙げられる。
【0028】
上記紫外線硬化性の原料混合物には、塗膜層及び弾性層に導電性を付与するために、導電剤を添加してもよく、該導電剤としては、イオン導電剤、電子導電剤等が挙げられる。イオン導電剤としては、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸ジメチルエチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エチル硫酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩等のアンモニウム塩;リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、トリフルオロメチル硫酸塩、スルホン酸塩等が挙げられ、電子導電剤としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボンブラック、酸化処理等を施したカラー用カーボンブラック、熱分解カーボンブラック、天然グラファイト、人造グラファイト、アンチモンドープ酸化スズ、ITO、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー、カーボンウィスカー、黒鉛ウィスカー、炭化チタンウィスカー、導電性チタン酸カリウムウィスカー、導電性チタン酸バリウムウィスカー、導電性酸化チタンウィスカー、導電性酸化亜鉛ウィスカー等の導電性ウィスカー等が挙げられる。これら導電剤の使用量は、塗膜層及び弾性層が所望の導電性を有するように適宜調整することができる。
【0029】
また、上記塗膜層の形成に用いる紫外線硬化性の原料混合物は、希釈溶媒としてエーテル、ケトン、エステル等の有機溶媒を含有してもよく、該有機溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン及び乳酸ブチル等が挙げられる。これら希釈溶媒は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
上記塗膜層の形成に用いる紫外線硬化性の原料混合物は、更に、微粒子を含有してもよい。塗膜層の原料混合物に微粒子を含ませることで、導電性ローラの表面に適度な微小凹凸を形成することができる。該微粒子としては、ゴム、ウレタン又は合成樹脂製の微粒子やカーボン製の微粒子およびシリカ系微粒子等の無機微粒子が好ましく、シリコーンゴム、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ウレタンアクリレート、メラミン樹脂、フェノール樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ガラス状カーボン製の微粒子およびシリカ微粒子が特に好ましい。これら微粒子は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。また、該微粒子の配合量は、上記(メタ)アクリレートモノマー(A),(C)及び(メタ)アクリレートオリゴマー(B)の合計100質量部に対して、0.1〜100質量部の範囲が好ましい。
【0031】
上記弾性層全体の厚さは、800μm以上であるのが好ましく、弾性層一層当たりの厚さは1mm以下であるのが好ましい。弾性層は積層することが可能であるため、弾性層全体の厚さの上限に制限はない。ここで、弾性層全体の厚さが800μm以上であれば、導電性ローラが十分な弾性を有し、トナーへのダメージが十分に小さく、一方、弾性層一層当たりの厚さが1mm以下であれば、弾性層を十分に硬化させることができる。
【0032】
一方、上記塗膜層の厚さは、1μm〜50μmの範囲が好ましい。塗膜層の厚さが1μm未満では、塗膜層を配設する効果が小さく、50μmを超えると、導電性ローラの表面が硬くなり、柔軟性が損なわれる。
【0033】
上記弾性層の硬度は、特に限定されるものではないが、アスカーC硬度で80度以下であることが好ましく、20〜70度であることが更に好ましい。弾性層のアスカーC硬度が80度を超えると、導電性ローラと感光ドラム等との接触面積が小さくなり、良好な現像が行えなくなるおそれがあり、また、トナーに損傷を与え感光ドラムや成層ブレードヘのトナー固着等が発生して画像不良が起こり易い。一方、弾性層が低硬度過ぎると、感光ドラムや成層ブレードとの摩擦力が大きくなり、ジッター等の画像不良が発生するおそれがある。
【0034】
本発明の導電性ローラのシャフト部材としては、良好な導電性を有する限り特に制限はなく、例えば、金属製の中実体からなる芯金や、内部を中空にくりぬいた金属製円筒体や高剛性樹脂製の円筒体、芯金の外周に高剛性樹脂を配置した複合体等が挙げられる。なお、シャフト部材に高剛性の樹脂を使用する場合、高剛性樹脂に導電剤を添加・分散させて、十分に導電性を確保することが好ましい。ここで、高剛性樹脂に分散させる導電剤としては、カーボンブラック粉末、グラファイト粉末、カーボンファイバー、アルミニウム、銅、ニッケル等の金属粉末、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物粉末、導電性ガラス粉末等の粉末状導電剤が好ましい。これら導電剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。該導電剤の配合量は、特に制限されるものではないが、高剛性樹脂の全体に対して5〜40質量%の範囲が好ましく、5〜20質量%の範囲が更に好ましい。
【0035】
上記金属製芯金や金属製円筒体の材質としては、鉄、ステンレス、アルミニウム等が挙げられる。また、上記高剛性の樹脂基材の材質としては、ポリアセタール、ポリアミド6、ポリアミド6・6、ポリアミド12、ポリアミド4・6、ポリアミド6・10、ポリアミド6・12、ポリアミド11、ポリアミドMXD6、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリアセタール、ポリアミド6・6、ポリアミドMXD6、ポリアミド6・12、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネートが好ましい。これら高剛性樹脂は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
本発明の導電性ローラ1は、例えば、シャフト部材2の外表面に上記弾性層用原料混合物を塗布した後、紫外線照射して弾性層3を形成し、次に、該弾性層3の外表面に上記塗膜層用原料混合物を塗布した後、紫外線照射して塗膜層4を形成することで作製できる。また、本発明の導電性ローラ5についても、塗膜層の形成を繰り返し行うこと以外は導電性ローラ1と同様にして作製することができる。そのため、本発明の導電性ローラは、製造に長い乾燥ラインを必要とせず、また、安定した品質の塗膜層を有する。なお、弾性層用原料混合物をシャフト部材の外表面に塗布する方法、並びに塗膜層用原料混合物を弾性層の外表面に塗布する方法としては、スプレー法、ロールコーター法、ディッピング法、ダイコート法等が挙げられる。また、紫外線照射に用いる光源としては、水銀灯、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が挙げられる。紫外線照射の条件は、弾性層用原料混合物及び塗膜層用原料混合物に含まれる成分、組成及び塗布量等に応じて適宜選択され、照射強度や積算光量等を適宜調整すればよい。
【0037】
上述した本発明の導電性ローラは、画像形成装置の現像ローラ、帯電ローラ、トナー供給ローラ、転写ローラ、給紙ローラ、クリーニングローラ、定着用の加圧ローラ等として用いることができる。
【0038】
<画像形成装置>
本発明の画像形成装置は、上述した導電性ローラを備えることを特徴とする。本発明の画像形成装置は、上記導電性ローラを用いる以外、特に制限はなく、公知の方法で製造することができる。
【0039】
以下に、図を参照して本発明の画像形成装置を詳細に説明する。図3は、本発明の画像形成装置の一実施態様の部分断面図である。図示例の画像形成装置は、静電潜像を保持した感光ドラム7と、感光ドラム7の近傍(図では上方)に位置し感光ドラム7を帯電させるための帯電ローラ8と、トナー9を供給するためのトナー供給ローラ10と、トナー供給ローラ10と感光ドラム7との間に配置された現像ローラ11と、現像ローラ11の近傍(図では上方)に設けられた現像ブレード12と、感光ドラム7の近傍(図では下方)に位置する転写ローラ13と、感光ドラム7に隣接して配置されたクリーニングローラ14とを備える。なお、本発明の画像形成装置は、更に画像形成装置に通常用いられる公知の部品(図示せず)を備えることができる。
【0040】
図示例の画像形成装置においては、感光ドラム7に帯電ローラ8を当接させて、感光ドラム7と帯電ローラ8との間に電圧を印加して、感光ドラム7を一定電位に帯電させた後、露光機(図示せず)により静電潜像を感光ドラム7上に形成する。次に、感光ドラム7と、トナー供給ローラ10と、現像ローラ11とが、図中の矢印方向に回転することで、トナー供給ローラ10上のトナー9が現像ローラ11を経て感光ドラム7に送られる。現像ローラ11上のトナー9は、現像ブレード12により、均一な薄層に整えられ、現像ローラ11と感光ドラム7とが接触しながら回転することにより、トナー9が現像ローラ11から感光ドラム7の静電潜像に付着し、該潜像が可視化する。潜像に付着したトナー9は、転写ローラ13で紙等の記録媒体に転写され、また、転写後に感光ドラム7上に残留するトナー9は、クリーニングローラ14によって除去される。ここで、本発明の画像形成装置においては、例えば、帯電ローラ8、トナー供給ローラ10、現像ローラ11、転写ローラ13及びクリーニングローラ14の少なくともいずれかに、例えば上述した弾性層3と塗膜層6aとの接着性が高く、優れた耐久性を有する導電性ローラ5を用いることで、優れた画像を安定的に形成することが可能となる。
【0041】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0042】
(実施例1〜6及び比較例3〜5)
外径6.0mmの金属シャフトを挿入した外径17.0mmのポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂製ローラ基材(シャフト部材)に、表1に示す配合の弾性層A用原料混合物をダイコーターにより厚さ750μmで塗布し、窒素雰囲気下で回転させながらUV照射強度700mW/cm2で5秒間UV照射した。この作業を2度行うことで、厚さ1500μmの弾性層Aを備えたローラ本体を得た。得られたローラ本体の表面に、表1に示す配合の塗膜層A用原料混合物をロールコーターにて塗布し、窒素雰囲気下で回転させながらUV照射強度700mW/cm2で5秒間UV照射し、次いで、表1に示す配合の塗膜層B用原料混合物を塗膜層Aと同様にして配設し、二層からなる塗膜層の厚さが10〜30μmの範囲である導電性ローラを得た。
【0043】
(実施例7及び比較例1〜2)
表1に示す配合の弾性層A用原料混合物および塗膜層B用原料混合物を用いて、図1に示す構造を有し、厚さ1500μmの弾性層及び厚さ10μmの塗膜層を有する導電性ローラを、実施例1と同様にして製造した。
【0044】
次に、得られた導電性ローラの弾性層と塗膜層との接着性を評価するために、該導電性ローラを画像成形装置に組み込み、5000枚印刷した後の表面の削れ及び塗膜層の剥離の状態を試験した。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
*1 日本合成化学(株)製,ウレタンアクリレート.
*2 共栄社化学(株)製,イソミリスチルアクリレート.
*3 新中村化学工業(株)製,β-アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート,CH2=CHCOOCH2CH2OCOCH2CH2COOH.
*4 新中村化学工業(株)製,モルホリンアクリレート.
*5 共栄社化学(株)製,2-ヒドロキシプロピルアクリレート.
*6 サートマー社製,トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート.
*7 チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製,1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン.
*8 昭島化学工業(株)製,過塩素酸ナトリウムポリオール錯塩.
*9 日本合成化学(株)製,ウレタンアクリレート.
*10 プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート.
*11 共栄社化学(株)製,ウレタンアクリレート.
*12 共栄社化学(株)製,1,6-ヘキサンジオールジアクリレート.
*13 三菱化学(株)製,カーボン.
*14 日本化薬(株)製,2,4-ジエチルチオキサントン.
*15 日本化薬(株)製,p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル.
【0047】
比較例1〜5から、弾性層と塗膜層のどちらか一方にのみ接着性アクリレートモノマーを用いるだけでは(比較例2,4)、弾性層と塗膜層の接着性が改善されることはなく、また、弾性層と塗膜層に含まれる接着性アクリレートモノマーが異種であると(比較例3,5)、接着性が若干改善されるものの、導電性ローラの耐久性を十分に確保できないことが分かる。
【0048】
一方、本発明の導電性ローラは、弾性層と塗膜層に同種の接着性アクリレートモノマーを用いることで、連続印刷後の表面の削れ及び塗膜層の剥離についていずれも良好な結果となり、弾性層と塗膜層との接着性が高いことが分かる(実施例1〜7)。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の導電性ローラの一実施態様の断面図である。
【図2】本発明の導電性ローラの他の実施態様の断面図である。
【図3】本発明の画像形成装置の一実施態様の部分断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 導電性ローラ
2 シャフト部材
3 弾性層
4 塗膜層
5 導電性ローラ
6a 塗膜層
6b 塗膜層
7 感光ドラム
8 帯電ローラ
9 トナー
10 トナー供給ローラ
11 現像ローラ
12 現像ブレード
13 転写ローラ
14 クリーニングローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト部材と、該シャフト部材の半径方向外側に配設された一層以上の弾性層と、該弾性層の半径方向外側に配設された一層以上の塗膜層とを備える導電性ローラにおいて、
少なくとも前記弾性層の最外層及び前記塗膜層の最内層が、紫外線硬化性の原料混合物を紫外線照射で硬化させた紫外線硬化型樹脂からなり、
前記塗膜層の最内層に用いる原料混合物が、前記弾性層の最外層に用いる原料混合物と同種の接着性(メタ)アクリレートモノマー(A)を含むことを特徴とする導電性ローラ。
【請求項2】
前記塗膜層の最内層に用いる原料混合物及び前記弾性層の最外層に用いる原料混合物は、(メタ)アクリレートオリゴマー(B)及び/又は前記接着性(メタ)アクリレートモノマー(A)以外の(メタ)アクリレートモノマー(C)を任意に含み、前記接着性(メタ)アクリレートモノマー(A)と、前記(メタ)アクリレートオリゴマー(B)と、前記接着性(メタ)アクリレートモノマー(A)以外の(メタ)アクリレートモノマー(C)との合計中の接着性(メタ)アクリレートモノマー(A)の含有率が、2〜100質量%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の導電性ローラ。
【請求項3】
前記接着性(メタ)アクリレートモノマー(A)が、複素環基を有する(メタ)アクリレートモノマー、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマー及びカルボキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーからなる群から選択される少なくとも一種の極性基含有(メタ)アクリレートモノマーであることを特徴とする請求項1に記載の導電性ローラ。
【請求項4】
前記複素環基を有する(メタ)アクリレートモノマーが、モルフォリノ基を有することを特徴とする請求項3に記載の導電性ローラ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の導電性ローラを備えた画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−248945(P2007−248945A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73955(P2006−73955)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】