説明

導電性基板および共有結合したコーティング層を有する医療器具

本発明は、導電性基板と、導電性基板の少なくとも一部を被覆するコーティング層とを備え、コーティング層が(a)開始剤を導電性基板表面に電気化学的に結合させ、(b)1つ以上のフリーラジカル重合性単量体の存在下においてフリーラジカル重合反応を行うことを含む工程によって生成される重合体を含むこと特徴とする医療器具を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、高分子表面コーティングを含む医療器具に関するものである。また、本発明は医療器具、特には挿入またはインプラント可能な医療器具用の共有結合した高分子コーティング層の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
体内に治療薬を送達するために、数々の高分子系医療器具が開発されてきた。典型的な送達方策においては、治療薬は医療器具に使用される高分子キャリア層内および/または高分子バリア層の下に供給される。一旦患者の体内における所望の位置に医療器具を配置すると、治療薬は医療器具からある速度で放出され、この速度は高分子キャリアおよび/またはバリア層の性質に依存する。
【0003】
インプラントまたは挿入可能な医療器具の製造に適した材料は、典型的には、非常に優れた生体適合性、押し出し性、弾力性、成形性、優れた繊維形成特性、引張強度、耐久性等の性質を1つ以上呈する。さらに、器具の材料の物理および化学的性質は、治療薬の最終放出速度を決定する上で重要な役割を果たす。
【0004】
具体例としては、ポリイソブチレンとポリスチレンとのブロック共重合体、例えば、その全体が参照により本願に援用されるところのピンチャック(Pinchuck)らによる米国特許番号第6545097号に記載のポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレントリブロック共重合体(SIBS共重合体)が、インプラントまたは挿入可能な薬物放出型医療器具における放出重合体として有益であることが立証されている。ピンチャックらによって記載されるように、SIBS共重合体系からのパクリタクセル等の治療薬の放出プロファイル特性は、これらの共重合体が生体内の部位に治療薬を供給するための効果的な薬物送達系であることを示している。これらの共重合体は、特に血管系におけるその優れた強度、生体安定性、生体適合性により、医療器具用途において特に有用である。例えば、SIBS共重合体の引張強度は高く、しばしば2000−4000psiまたはそれ以上であり、典型的な生体内条件下における亀裂およびその他の劣化に耐える。これらの材料の、血管適合性を含む生体適合性は、引き起こされる有害な組織反応が最低限である傾向により実証されている(例えば、マクロファージ活性の低下によって測定)。加えて、これらの重合体は、冠状動脈ステントのコーティングとして適用した際の小血管の血栓性閉塞を最小限にとどめる能力により実証されるように、概して血液適合性を有する。
【0005】
現在、冠状動脈ステントやその他多くの医療器具に典型的に見られる、金属表面を有する医療器具上にコーティングを施すために使用する技術には、スプレーコーティングや浸漬コーティングがある。これらの工程は効果的なコーティングを形成可能ではあるが、より効率よくかつ精密にコーティングする方法が必要とされている。これらの従来方法を用いて形成したコーティングの主要な欠点の1つは、これらは器具を包みはするが必ずしも化学的には付着していないことから、機械的一体性に欠けることである。別の潜在的な欠点としては、スプレーコーティングや浸漬コーティングは化学的というよりむしろ物理的なコーティングであることが挙げられる。これらはコーティング工程を制御するのにスプレーまたは浸漬装置に依存するものであって分子レベルでの化学的相互作用に依存するものではないため、これらの技術では厚みや基板表面との適合性において精度を達成することは困難であった。
【0006】
接着性の悪さに対処するために、まず金属表面上に1つ以上の「プライマー層」をコーティングし、続いて目的の高分子コーティングを適用することを含む、多くの試みがなされてきた。こういったプライマーの明白な欠点は、高分子コーティングの薬剤送達機能を補助しない、さらには阻害する恐れさえもある別の層を導入するということである。加えて、プライマー層としての使用に適切な重合体または材料が所望の機械的または生体適合性特性を有しているとは限らず、従って、医療器具用のコーティング系の一部として利用し得る材料の範囲が制限される可能性がある。
【0007】
上記を鑑みて、改良された機械的特性も持ち合わせながらも、所望の生体安定性および/または生体適合特性を有するコーティングを提供することが有利である。また、一般的な医療器具基板の表面上への接着性が向上した、粘稠なコーティングを提供することが望ましい。
【発明の開示】
【0008】
本発明は従来技術におけるありとあらゆる課題に取り組むものであり、導電性基板と、導電性基板の少なくとも一部を被覆するコーティング層とを備える医療器具を提供するものである。コーティング層は、(a)フリーラジカル重合開始剤を導電性基板表面に電気化学的に結合させ、(b)1つ以上のフリーラジカル重合性単量体の存在下においてフリーラジカル重合反応を行うことを含む工程によって生成された重合体を含む。
【0009】
本発明は、コーティングを施した医療器具であり、このコーティングが医療器具の表面に共有結合されていることから強靭で適合性がある点において有利である。
【0010】
本発明の別の利点は、インプラントまたは挿入可能な医療器具が提供され、この結果治療薬の制御放出が可能となる点である。
【0011】
本発明のさらに別の利点は、通常の浸漬またはスプレーコーティング工程における様々な制限事項を回避した、医療器具のコーティング方法が提供されることである。
【0012】
本発明の多種多様な態様は、以下の詳細な説明と請求項を概観することにより、当業者には即座に明白になるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は高分子コーティング層を有する医療器具に関するものであり、コーティング層とその上にコーティング層を形成するところの基板との間のインターフェースには共有結合が存在する。また、本発明はこういったコーティング層を形成するための方法に関するものである。特には、本発明は、開始剤種を基板に電気化学的に付着させ、続いて原子移動フリーラジカル重合(ATRP)等の単量体重合反応を起こすことで導電性基板(例えば、金属表面)等の基板に重合体を化学的に結合(例えば、共有結合)させる工程に関するものである。本発明の方法は数々の目的に使用することができ、不動態の器具コーティング、親水性の器具コーティング、患者にインプラントした後にその部位で薬剤を送達するための、1つ以上の治療薬を装填可能な器具コーティングを含む。
【0014】
明確にするための便宜上、ここで使用の重合体とは、1つ以上の構成単位の繰り返しを含む、1つ以上の鎖を含有する分子である。一般的な重合体の一例は

であり、nは整数であり、典型的には10またはそれ以上、さらに典型的には約10、100、1000台、さらにその上の整数であり、鎖の構成単位はスチレン単量体:

に相当する(つまり、スチレン単量体の重合、この場合はスチレン単量体の付加重合から発生する、または発生した外観を有する)。本明細書において、共重合体とは少なくとも2つの異なる構成単位を含有する重合体である。
【0015】
ここで使用するところの重合体「ブロック」とは、10以上、通常は20以上、50以上、100以上、200以上、500以上、または1000以上もの構成単位のひとまとまりである。「鎖」とは、10以上の構成単位を直線的(分岐なし)にまとめたものである(つまり、線状ブロック)。
【0016】
一面において、本発明は基板、好ましくは導電性基板と、基板の少なくとも一部を被覆するコーティング層とを備える医療器具を提供するものである。コーティング層は1つ以上の重合体を含有し、(a)開始剤を導電性基板表面に電気化学的に結合させ、(b)1つのフリーラジカル重合性単量体の存在下、または2つ以上のフリーラジカル重合性コモノマーの存在下においてフリーラジカル重合反応を行うことを含む工程によって形成される。
【0017】
開始剤を導電性表面、例えばステンレススチールの表面に結合するための技術には、その開示が参照することにより本願に援用されるところの、2003年7月19日に発表されたクレイーズ(Claes)らによる、「Macromolecule」のウェッブ公開番号第0217130号の「Polymer Coating of Steel by a Combination of Electrografting and Atom-Transfer Radical Polymerization」に開示されるような電気グラフト工程が含まれる。
【0018】
有機重合体と金属、ガラス、炭素等の根本的に異なる材料との間の、通常は弱く短期的な接着性は、適切なコーティングを考案するにあたっての特別な課題であった。例えば、金属表面を有する医療器具(例えば、冠状動脈ステント)への重合体の適切な接着は、医療器具を完成させるにあたっての最も重要な要素の1つであることが多い。
【0019】
電気グラフト法は、開始剤の官能基とステンレススチール等の基板の金属原子との間に強靭な化学結合を形成することにより、これらの課題全てを解決するものである。電気グラフト工程は、開始剤の存在下において導電性基板に電位を印加し、その後の反応、例えば還元反応により開始剤と基板との間に結合を形成することを含む。こういった結合は、基板表面で共有結合を形成するものであり、得られる高分子コーティングと基板表面との間に強力な接着性が確立される。最終的に得られる高分子コーティングは、原子移動フリーラジカル重合(ATRP)その他を含む様々な既知の重合法による重合で形成し得る。
【0020】
本発明の実施に適した基板の例には、単体の遷移金属または合金を含む導電性基板が含まれるがこれに限定されるものではなく、金属、例えば銅、ニッケル、タンタル、銀、金、プラチナ、パラジウム、イリジウム、オスミウム、ロジウム、チタン、タングステン、ルテニウム、金属合金、例えば鉄−クロム合金(例えば、ステンレススチール、典型的には少なくとも50%の鉄と少なくとも11.5%クロムを含有する)、ニッケル−チタン合金、ニッケル−クロム合金(例えば、INCONEL(R)合金)、コバルトクロム合金、プラチナ強化ステンレススチール、また2つ以上の金属または金属合金の組み合わせを含む。
【0021】
導電性基板全体が導電性である必要はなく、開始剤を取り付けたい部位のみ導電性であればよい。従って、導電性基板は、例えば、純粋な金属基板、金属コーティングを有する非導電性基板、その他であってもよい。
【0022】
概して、開始剤は電気グラフトをもたらす少なくとも1つの官能基と、フリーラジカル重合を開始可能な少なくとも1つの官能基(例えば、ビニル単量体のATRP重合を開始可能な活性化ハロゲン化物官能基)を有する。具体例の1つとして、2−クロロプロピオネートエチルアクリレート(cPEA)が挙げられる。
【0023】
一部の態様においては、開始剤は高分子マクロ開始剤であり、例えば、電気グラフトをうながす少なくとも1つの官能基と、ATRP等のフリーラジカル重合を開始可能な少なくとも1つの別の官能基を含有する高分子マクロ開始剤である。一部の態様において、開始剤はα炭素上に1つ以上の活性化基(例えば、アリール、カルボニル、アリル等)を備えたハロゲン化アルキル基を含む、電気化学的に結合可能な基を含む。また、開始剤は、例えばN−X、S−X、またはO−Xといった弱いR−X結合の、1つまたは1つ以上のポリハロゲン化化合物を含んでいてもよく、Xはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子である。例にはcPEAの重合体、cPEAの共重合体(例えばポリ(cPEA−co−エチルアクリレート)、cPEA末端ポリ(アルキルアクリレート)、活性化ハロゲン化物官能基を含有し導電性基板に電気化学的にグラフト可能なその他の重合体が含まれる。
【0024】
一部の態様においては、ジメチル−2,6−ヘプタンジオエート等の二官能性フリーラジカル重合開始剤を使用して(例えば、エチルアクリレート等のアルキルアクリレート単量体の)重合を開始し、導電性基板表面との間に共有結合を形成可能な官能基(例えばアクリレート官能基)を有するポリアクリレートマクロ開始剤を生成する。
【0025】
上述したように、開始剤は、開始剤を基板表面に電気グラフトして基板表面と開始剤との間に共有結合を形成することにより、電気化学的導電性基板表面(例えば、ステンレススチール表面)に化学的に結合される。例えば、特定の好ましい態様において、開始剤はポリ(2−クロロプロピオネートエチルアクリレート)マクロ開始剤であり、既知の方法を用いて合成される。電気グラフトに反応するアクリレート官能基を有することに加えて、分子はATRPによってビニル単量体等の単量体の制御フリーラジカル重合を開始可能な活性化塩素も有する。ポリスチレンを導電性基板上にグラフトするための、上記で引用のクレイーズらによって発表された模範案を図1に図示する。電位を印加すると、アクリレートの電解還元がこの場合カソードとして機能する導電性表面上で起こり、表面上での迅速な膜形成につながる。非貴金属であるスチール上に電気グラフトされたポリ(2−クロロプロピロネートエチルアクリレート)は、スチレンまたはその他のビニル単量体等の単量体のATRP用の、強力な接着性を有するマクロ開始剤を形成する。
【0026】
一旦、電気化学的に付着させると、上述したもの等の開始剤は、様々な既知の方法に従って多種多様な重合体を合成するために使用することができ、イオンおよび様々なフリーラジカル重合法、例えばアゾビス(イソブチロニトリル)または過酸化物開始法、制御/リビングフリーラジカル重合、例えば原子移動フリーラジカル重合(ATRP)、安定フリーラジカル重合(SFRP)、ニトロキシド媒介工程(NMP)、縮退移動(例えば、可逆的付加フラグメンテーション連鎖移動(RAFT))法が含まれる。
【0027】
特には、ATRPが重合体の化学的構造を非常に密接に制御可能な好ましい汎用方法であり、この方法は広範囲にわたる単量体を用いて、多岐にわたる化学的性質(疎水性、親水性、イオン性等)を有する重合体を生成するために使用することができる。ATRPは多様な官能基(例えば、アルコール基、アミン基、カルボキシル基、酸基、スルホン酸塩基)に耐性があるため、電気グラフトとそれに続くATRPとの組み合わせが多くの態様において好ましい。ここで記載のATRPおよびその他の重合方法は文献に詳細に記載されており、例えば、ピュン(Pyun)およびマチャゼスキー(Matyjaszewski)によるChem.Mater.13:3436-3448 (2001)に発表の記事「Synthesis of Nanocomposite Organic/Inorganic Hybrid Materials Using Controlled/”Living”Radical Polymerization」に記載されており、その内容は参照することにより本願に援用されるものである。
【0028】
ATRPによる単量体(以下の図式におけるM)の重合において、ラジカルはハロゲン化アルキル等(以下の図式におけるRX)の有機ハロゲン化物と遷移金属錯体(以下の図式におけるMet+n)との酸化還元反応によって生成される。その後、ラジカルは成長できるが、遷移金属触媒の酸化物によってすぐに不活性化される。典型的に使用される開始剤はハロエステル(例えば、1−ブチルクロロプロピオネート、2−クロロプロピオネートエチルアクリレート、エチル−2−ボロイソブチレートおよびメチル2−ブロモプロピオネート)、またはハロゲン化ベンジル(例えば、1−フェニルエチルブロミドおよびベンジルブロミド)である。多種多様な遷移金属錯体、例えばRu−(例えば、グラブス触媒)、Cu−、Fe−系システムをATRPで使用する。Cu系システムに関しては、典型的には2,2'−ビピリジンおよび脂肪族アミン等の配位子を用いて様々なATRP触媒の溶解度と活性の双方を制御する。典型的なATRP機構を以下の図で説明する。


Alkyl halide initiator ハロゲン化アルキル開始剤
Initiation 開始
Propagation 成長
Metal 金属
【0029】
ここに記載のこれらの技術を用いて、目的に応じて、様々な重合体を導電性医療器具表面に化学的に結合し得る。例えば、重合体を選択し、その表面の親水性や疎水性を向上させたり、表面接着性の付与またはインプラントまたは送達中における摩擦の低減、表面の生体適合化または不動態化、環境または生物学的攻撃への表面耐性強化、表面からの治療薬の放出その他等の特定の性質を付与し得る。
【0030】
使用しえる重合体にはホモポリマーまたは共重合体が含まれ(例えば、交互、ランダム、統計的、テーパード/グラジエント、およびブロック共重合体)、環状、直鎖、または分岐(例えば、重合体は星型、櫛形、樹枝状構造を有していてもよい)であり、天然または合成、熱可塑性または熱硬化性であってもよい。
【0031】
主鎖と複数の側鎖とを有する重合体ブロックを合成することが望ましい態様において、重合は、例えば、(i)側鎖を含みフリーラジカル重合性末端基を有するマクロモノマーと(ii)任意のフリーラジカル重合性コモノマーまたはフリーラジカル重合性コモノマーの組み合わせの存在下、進行する。好ましくは、マクロモノマーの末端基は末端が不飽和であり、重合性コモノマーは不飽和単量体である。
【0032】
ここで使用する用語「マクロモノマー」とは巨大分子であり、一般には、反応基、しばしば末端基を有する重合体であり、これにより単量体分子として機能することができ、最終巨大分子の鎖にモノマー単位を1つ寄与するものである。例えば、重合性二重結合をその鎖の末端に有する長鎖ビニル重合体またはビニルオリゴマー(ここでいうオリゴマーとは、2−9の構成単位を含有する重合体)はマクロモノマーである。マクロモノマーのホモ重合または共重合により、櫛形またはグラフト重合体が得られる。
【0033】
本発明の重合反応で使用可能な単量体の例には不飽和単量体が含まれ、例えば、アルキルメタクリレート、アルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート、ビニルエステル、ビニル芳香族単量体、例えばスチレン、α−メチルスチレン、フリーラジカル重合性末端基を有するマクロモノマー、その組み合わせが挙げられる。マクロモノマーの例にはポリシロキサンブロック、ポリイソブチレンブロック、ポリ(ビニル芳香族)ブロック、例えばポリスチレンブロック、ポリエチレンオキシドブロック、ポリビニルピロリドンブロック、ポリメチルメタクリレートブロック、またはその組み合わせと、フリーラジカル重合性末端基とを有するマクロモノマーが含まれる。
【0034】
一部の特定の態様において、生成された重合体は低T重合体ブロックまたは高T重合体ブロックを有する。その他の特定の態様において、生成された重合体は(i)低T重合体ブロックと(ii)高T重合体ブロックとを含む共重合体であり、例えば、マクロ開始剤はフリーラジカル末端低T重合体ブロック(またはフリーラジカル末端高T重合体ブロック)を含む。さらに別の特定の態様において、重合体は、低Tブロックと、主鎖と複数の側鎖を含むグラフト共重合体ブロックとをさらに含む共重合体であり、マクロ開始剤はフリーラジカル末端低T重合体ブロックを含み、フリーラジカル重合反応は、側鎖とフリーラジカル重合性末端基とを含むマクロモノマーの存在下で行われる。
【0035】
「低T重合体ブロック」は、示差走査熱量測定(DSC)、動的機械分析(DMA)、または誘電解析(DEA)を含む数々の技法のいずれで測定したときにも、常温未満、さらに典型的には25℃未満、0℃未満、−25℃未満、さらには−50℃未満である1つ以上のガラス転移温度(T)を示す重合体ブロックである。「常温」とは典型的には25−45℃であり、さらに典型的には体温(例えば35℃−40℃)である。これらの低ガラス転移温度の結果、低T重合体ブロックは典型的には常温で弾性である。いくつかの低T重合体ブロックのホモポリマー、例えば直鎖または分岐シリコーン(例えば、ポリジメチルシロキサン)は室温で粘稠液またはミラブルゴムであり、共有結合架橋時に弾性となる。
【0036】
逆に、高温または「高T重合体ブロック」は、示差走査熱量測定、動的機械分析、または熱機械分析を含む数々の技法のいずれで測定したときにも、常温より高く、さらに典型的には50℃より高く、60℃より高く、70℃より高く、80℃より高く、90℃より高く、さらには100℃より高い1つ以上のガラス転移温度を示す重合体ブロックである。
【0037】
従って、1つ以上の低T重合体ブロックおよび1つ以上の高T重合体ブロックを有する共重合体は、典型的には、1つ以上の常温未満のガラス転移温度と1つ以上の常温より高いガラス転移温度を有する。これにより、典型的には、常温でコーティング層内にゴム状相と硬質相とが形成される。
【0038】
低T重合体ブロックと高T重合体ブロックは、例えば内側ブロックまたは末端ブロックとして共重合体内に存在していてもよい。低および高T重合体ブロックは様々な構成で供されてよく、環状、直鎖、分岐構造を含む。分岐構造には、星型構造(例えば、3つ以上の鎖が単一の分岐点から生じる)、櫛形構造(例えば、主鎖と複数の分岐側鎖を有する構成)、樹枝状構造(例えば、樹枝状または超分岐高分子)が含まれる。低および高T重合体ブロックは、例えば、1種類の単位の繰り返し、2種類以上の単位を繰り返し(例えば、交互)、ランダム、統計的、グラジエント分布、その他に含んでいてもよい。
【0039】
本発明の低T重合体ブロックが選択可能な低T重合体ブロックの具体例には、以下の1つ以上から形成(または形成されたような外観を有する)ホモポリマーブロックおよび共重合体ブロックが含まれる:アルケン単量体、ハロゲン化アルケン単量体、ハロゲン化不飽和炭化水素単量体、シロキサン単量体を含むアクリル単量体、メタクリル単量体、ビニルエーテル単量体、環状エーテル単量体、エステル単量体、不飽和炭化水素単量体。数々の具体例が以下に列挙されている。T値は列挙した単量体単位のホモポリマーの公表値である。
【0040】
特定のアクリル単量体には(a)アルキルアクリレート、例えばメチルアクリレート(T10℃)、エチルアクリレート(T−24℃)、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート(T−11℃、イソタクチック)、ブチルアクリレート(T−54℃)、sec−ブチルアクリレート(T−26℃)、イソブチルアクリレート(T−24℃)、シクロヘキシルアクリレート(T19℃)、2−エチルヘキシルアクリレート(T−50℃)、ドデシルアクリレート(T−3℃)およびヘキサデシルアクリレート(T35℃)、(b)アリールアルキルアクリレート、例えばベンジルアクリレート(T6℃)、(c)アルコキシアルキルアクリレート、例えば2−エトキエシエチルアクリレート(T−50℃)および2−メトキシエチルアクリレート(T−50℃)、(d)ハロアルキルアクリレート、例えば2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート(T−10℃)、(e)シアノ−アルキルアクリレート、例えば2−シアノエチルアクリレート(T4℃)が含まれる。
【0041】
特定のメタクリル単量体には、(a)アルキルメタクリレート例えばブチルメタクリレート(T20℃)、ヘキシルメタクリレート(T−5℃)、2−エチルヘキシルメタクリレート(T−10℃)、オクチルメタクリレート(T−20℃)、ドデシルメタクリレート(T−65℃)、ヘキサデシルメタクリレート(T15℃)、オクタデシルメタクリレート(T−100℃)および(b)アミノアルキルメタクリレート、例えばジエチルアミノエチルメタクリレート(T20℃)および2−tert−ブチル−アミノエチルメタクリレート(T33℃)が含まれる。
【0042】
特定のビニルエーテル単量体には、(a)アルキルビニルエーテル、例えばメチルビニルエーテル(T−31℃)、エチルビニルエーテル(T−43℃)、プロピルビニルエーテル(T−49℃)、ブチルビニルエーテル(T−55℃)、イソブチルビニルエーテル(T−19℃)、2−エチルヘキシルビニルエーテル(T−66℃)およびドデシルビニルエーテル(T−62℃)が含まれる。
【0043】
特定の環状エーテル単量体には、テトラヒドロフラン(T−84℃)、トリメチレンオキシド(T−78℃)、エチレンオキシド(T−66℃)、プロピレンオキシド(T−75℃)、メチルグリシジルエーテル(T−62℃)、ブチルグリシジルエーテル(T−79℃)、アリルグリシジルエーテル(T−78℃)、エピブロモヒドリン(T−14℃)、エピクロロヒドリン(T−22℃)、1,2−エポキシブタン(T−70℃)、1,2−エポキシオクタン(T−67℃)および1,2−エポキシデカン(T−70℃)が含まれる。
【0044】
特定のエステル単量体(アクリレートおよびメタクリレート以外)には、エチレンマロネート(T−29℃)、ビニルアセテート(T30℃)、ビニルプロピオネート(T10℃)が含まれる。
【0045】
特定のアルケン単量体には、エチレン、プロピレン(T−8から−13℃)、イソブチレン(T−73℃)、1−ブテン(T−24℃)、トランス−ブタジエン(T−58℃)、4−メチルペンテン(T29℃)、1−オクテン(T−63℃)およびその他のα−オレフィン、シス−イソプレン(T−63℃)、トランス−イソプレン(T−66℃)が含まれる。
【0046】
特定のハロゲン化アルケン単量体には、塩化ビニリデン(T−18℃)、フッ化ビニリデン(T−40℃)、シス−クロロブタジエン(T−20℃)、トランス−(クロロブタジエン(T−40℃)が含まれる。
【0047】
特定のシロキサン単量体には、ジメチルシロキサン(T−127℃)、ジエチルシロキサン、メチルエチルシロキサン、メチルフェニルシロキサン(T−86℃)、ジフェニルシロキサンが含まれる。
【0048】
高T重合体ブロックの具体例には、以下の1つ以上の単量体から形成される(または形成されたような外観を有する)ホモポリマーブロックおよび共重合体ブロックが含まれる:様々なビニル芳香族単量体、その他のビニル単量体、その他の芳香族単量体、メタクリル単量体、アクリル単量体。数々の具体例が以下に列挙されている。T値は列挙した単量体単位のホモポリマーの公表値である。
【0049】
ビニル芳香族単量体とは芳香族部分とビニル部分とを有する単量体であり、非置換単量体、ビニル置換単量体、環置換単量体を含む。特定のビニル芳香族単量体の一部としては以下が挙げられる:(a)非置換ビニル芳香族単量体、例えばアタクチックスチレン(T100℃)、イソタクチックスチレン(T100℃)および2−ビニルナフタレン(T151℃)、(b)ビニル置換芳香族単量体、例えばメチルスチレン、(c)(i)環−アルキル化ビニル芳香族単量体、例えば3−メチルスチレン(T97℃)、4−メチルスチレン(T97℃)、2,4−ジメチルスチレン(T112℃)、2,5−ジメチルスチレン(T143℃)、3,5−ジメチルスチレン(T104℃)、2,4,6−トリメチルスチレン(T162℃)および4−tert−ブチルスチレン(T127℃)、(ii)環−アルコキシル化ビニル芳香族単量体、例えば4−メトキシスチレン(T113℃)および4−エトキシスチレン(T86℃)、(iii)環−ハロゲン化ビニル芳香族単量体、例えば2−クロロスチレン(T119℃)、3−クロロスチレン(T90℃)、4−クロロスチレン(T110℃)、2,6−ジクロロスチレン(T167℃)、4−ブロモスチレン(T118℃)および4−フルオロスチレン(T95℃)および(iv)エステル置換ビニル芳香族単量体、例えば4−アセトキシスチレン(T116℃)を含む、環置換ビニル芳香族単量体。
【0050】
その他の特定のビニル単量体には(a)ビニルアルコール(T85℃)、(b)ビニルエステル、例えばビニルベンゾエート(T71℃)、ビニル4−tert−ブチルベンゾエート(T101℃)、ビニルシクロヘキサノエート(T76℃)、ビニルピバレート(T86℃)、ビニルトリフルオロアセテート(T46℃)、ビニルブチラール(T49℃)、(c)ビニルアミン、例えば2−ビニルピリジン(T104℃)、4−ビニルピリジン(T142℃)、ビニルカルバゾール(T227℃)、(d)ハロゲン化ビニル、例えば、塩化ビニル(T81℃)およびフッ化ビニル(T40℃)、(e)アルキルビニルエーテル、例えばtert−ブチルビニルエーテル(T88℃)およびシクロヘキシルビニルエーテル(T81℃)、および(f)その他のビニル化合物、例えば1−ビニル−2−ピロリドン(T54℃)およびビニルフェロセン(T189℃)が含まれる。
【0051】
特定の芳香族単量体には、ビニル芳香族のほかに、アセナフタレン(T214℃)、インデン(T85℃)が含まれる。
【0052】
特定のメタクリル単量体には、(a)メタクリル酸(T228℃)、(b)メタクリル酸塩、例えばメタクリル酸ナトリウム(T310℃)、(c)無水メタクリル酸(T159℃)、(d)(i)アルキルメタクリレート、例えばアタクチックメチルメタクリレート(T105−120℃)、シンジオタクチックメチルメタクリレート(T115℃)、エチルメタクリレート(T65℃)、イソプロピルメタクリレート(T81℃)、イソブチルメタクリレート(T53℃)、t−ブチルメタクリレート(T118℃)およびシクロヘキシルメタクリレート(T92℃)、(ii)芳香族メタクリレート、例えばフェニルメタクリレート(T110℃)で、ベンジルメタクリレート(T54℃)等の芳香族アルキルメタクリレートを含む、(iii)ヒドロキシアルキルメタクレート、例えば2−ヒドロキシエチルメタクリレート(T57℃)および2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(T76℃)、(iv)イソボルニルメタクリレート(T110℃)およびトリメチルシリルメタクリレート(T68℃)を含む追加メタクリレート、および(e)メタクリロニトリル(T120℃)を含むその他のメタクリル酸誘導体を含む、メタクリル酸エステル(メタクリレート)が含まれる。
【0053】
特定のアクリル単量体には、(a)アクリル酸(T105℃)、その無水物および塩、例えばアクリル酸カリウム(T194℃)およびアクリル酸ナトリウム(T230℃)、(b)特定のアクリル酸エステル、例えばtert−ブチルアクリレート(T43−107℃)(T193℃)、ヘキシルアクリレート(T57℃)およびイソボルニルアクリレート(T94℃)、(c)アクリル酸アミド、例えばアクリルアミド(T165℃)、N−イソプロピルアクリルアミド(T85−130℃)およびN,N−ジメチルアクリルアミド(T89℃)、および(d)アクリロニトリル(T125℃)を含むその他のアクリル酸誘導体が含まれる。
【0054】
一部の態様において、本発明のコーティング層には治療薬が装填される。例えば、電気グラフトおよびATRPまたはその他の重合方法により一旦接着性コーティングが形成されたら、溶媒型技法を利用して治療薬を高分子コーティングに導入し得る。
【0055】
溶媒型技法を使用して治療薬をコーティング層に導入する場合、選択する溶媒系は1つ以上の溶媒種を含有する。溶媒系は、好ましくは、コーティング層内の重合体と治療薬に対して良好な溶媒性を示すものである。溶媒系を構成する特定の溶媒種は乾燥速度および表面張力を含むその他の特性に基づいて選択してもよい。
【0056】
好ましい溶媒型技法には、スピンコーティング技法、ウェブコーティング技法、溶媒スプレー技法、浸漬技法、エアサスペンションを含む機械的サスペンションによるコーティングを伴う技法、インクジェット技法、静電技法、およびこれらの方法の組み合わせが含まれるが、これに限定されるものではない。典型的には、治療薬を溶媒中に溶解または分散させ、得られた溶液を前もって形成されたコーティング層に例えば1つ以上のこれらの塗布技法を用いて接触させる。
【0057】
一部の態様において、治療薬含有コーティング層上にはバリア層が形成される。例えば、上述した溶媒型技法などを用いることができ、バリア領域を備えた1つまたは1つ以上の重合体はまず最初に溶媒に溶解または分散され、続いて、得られた混合物をバリア層の形成に使用する。別の態様において、バリア層は熱可塑性処理技法を用いて治療薬含有コーティング層上に塗布される。バリア層は、例えば、治療薬の拡散を遅延させるための境界層として機能し、例えば、器具または器具の一部がインプラントまたは挿入部位に暴露された途端に大量の治療薬が放出されるバースト現象を防止する。
【0058】
多種多様な医療器具が本発明とともに形成される。医療器具の例には、インプラントまたは挿入可能な医療器具、例えばカテーテル(例えば、バルーンカテーテル等の腎臓または血管カテーテル)、ガイドワイヤ、バルーン、フィルタ(例えば、大静脈フィルタ)、ステント(冠血管ステント、脳、尿道、尿管、胆管、気管、消化管、食道ステント)、ステントグラフト、脳動脈瘤フィルターコイル(Guglilmi着脱式コイルおよび金属コイル)、血管グラフト、心筋プラグ、パッチ、ペースメーカー、ペースメーカーリード、心臓弁、生検器具、および体内にインプラントまたは挿入されそこから治療薬が放出されるところのいずれのコーティング基板(例えば、ガラス、金属、重合体、セラミック、その組み合わせを含む)が含まれる。医療器具の例には、さらに、無傷の皮膚および損傷した皮膚(傷を含む)に治療薬を送達するパッチ、縫合糸、縫合糸アンカー、吻合クリップおよびリング、手術部位における組織ステープルおよび結紮クリップ、整形外科用固定器具、例えば足首、ひざ、手領域における干渉スクリュー、靭帯付着部および半月板の修復用の鋲、骨折固定用のロッドおよびピン、頭蓋顎顔面修復用のスクリューおよびプレート、歯科用器具、例えば抜歯後の孔隙充填剤および歯根膜手術後の組織再生誘導膜フィルム、および軟骨、骨、皮膚、およびその他の生体内組織再生のための再生工学スカホールドが含まれる。
【0059】
本発明の医療器具は、全身的治療またはいずれの哺乳類の組織または器官の局所治療の双方に使用する医療器具を含む。非限定的な例は腫瘍、心臓、冠動脈、末梢血管系(総体的に「血管系」と称する)、肺、気管、食道、脳、肝臓、腎臓、膀胱、尿道および尿管、目、腸、胃、膵臓、膣、子宮、卵巣、および前立腺を含む器官、骨格筋、平滑筋、胸、皮膚組織、軟骨、および骨である。
【0060】
本発明と共に使用する医療器具の具体例には血管ステントが含まれ、治療薬を再狭窄の治療のために血管系に送達する。ここで使用の「治療」とは、病気または異常の予防、病気または異常に関連した症状の軽減または除去、または病気または異常の根本的または完全なる除去を示す。好ましい対象は哺乳類であり、さらに好ましくはヒトである。
【0061】
「治療薬」「薬学的に活性な物質」「薬学的に活性な材料」「薬物」およびその他の関連する用語は、ここでは同じ意味で使用されており、遺伝子治療薬、非遺伝子治療薬および細胞を含む。治療薬は、単体で使用しても組み合わせて使用してもよい。治療薬は単体で使用しても組み合わせて使用してもよい。治療薬は、例えば、非イオン性である、または天然でアニオン性および/またはカチオン性である。
【0062】
本発明に関連して使用する非遺伝子治療薬の例には、(a)抗血栓剤、例えばヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、およびPPack(デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン)、(b)抗炎症薬、例えばデキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジンおよびメサラミン、(c)抗腫瘍性/抗増殖/細胞分裂阻害薬、例えばパクリタクセル、5−フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、エンドスタチン、アンジオスタチン、アンジオペプチン、平滑筋細胞の増殖を阻害するモノクローナル抗体、およびチミジンキナーゼ阻害剤、(d)麻酔薬、例えばリドカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、(e)抗凝固薬、例えばD−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、ヒルジン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗薬、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、プロスタグランジン阻害剤、血小板阻害薬およびマダニ抗血小板ペプチド、(f)血管細胞成長促進物質、例えば成長因子、転写活性化因子、翻訳プロモーター、(g)血管細胞成長阻害剤、例えば成長因子阻害剤、成長因子受容体拮抗薬、転写リプレッサー、翻訳レプレッサー、複製阻害剤、阻害抗体、成長因子に対する抗体、成長因子と細胞毒素から成る二官能性分子、抗体と細胞毒素から成る二官能性分子、(h)プロテインキナーゼおよびチロシンキナーゼ阻害薬(例えば、チロホスチン、ゲニステイン、キノキサリン)、(i)プロスタサイクリン類似体、(j)コレステロール降下薬、(k)アンジオポイエチン、(l)抗菌剤、例えばトリクロサン、セファロスポリン、アミノグリコシドおよびニトロフラントイン、(m)細胞毒性薬、細胞増殖抑制剤、細胞増殖影響因子、(n)血管拡張剤、(o)内因性血管作動機構阻害剤(p)白血球動員阻害剤、例えばモノクローナル抗体、(q)サイトカイン、(r)ホルモン、(s)HSP90タンパク阻害剤(つまり、熱ショックタンパク。分子シャペロンまたはハウスキーピングタンパクであり、細胞の成長と生存に関係するその他のクライアントタンパク/情報伝達タンパクの安定性と機能に必要である)が含まれる。
【0063】
好ましい非遺伝子治療薬には、パクリタクセル、シロリムス、エベロリムス、タクロリムス、Epo D、デキサメタゾン、エストラジオール、ハロフジノン、シロスタゾール、ゲルダナマイシン、ABT−578(アボットラボラトリーズ)、トラピジル、リプロスチン、アクチノマイシンD、レステン−NG、Ap−17、アブシキマブ、クロピドグレル、およびリドグレル、その他が含まれる。
【0064】
本発明に関連して使用する遺伝子治療薬の例には、様々なたんぱく質のDNAコーディング(およびたんぱく質それ自体)のみならずアンチセンスDNAおよびRNAが含まれる:(a)アンチセンスRNA、(b)不良または不全な内因性分子を置き換えるためのtRNAまたはrRNA、(c)成長因子、例えば酸性および塩基性線維芽細胞増殖因子、血管内皮成長因子、内皮細胞分裂成長因子、上皮細胞増殖因子、形質転換成長因子αおよびβ、血小板由来内皮成長因子、血小板由来成長因子、腫瘍壊死因子α、肝細胞成長因子およびインスリン様成長因子を含む血管新生因子その他の因子、(d)CD阻害薬を含む細胞周期阻害薬、(e)チミジンキナーゼ(TK)および細胞増殖を阻害するのに有用なその他の物質。また、骨形成タンパク質(BMP)の一群のDNAエンコーディングも対象であり、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6(Vgr−1)、BMP−7(OP−1)、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11,BMP−12、BMP−13、BMP−14、BMP−15、BMP−16が含まれる。現在好ましいBMPはBMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7のいずれかである。これらの二量体タンパク質はホモ二量体、ヘテロ二量体、またはその組み合わせ、単独またはその他の分子との組み合わせとして供給してもよい。あるいは、または加えて、BMPの上流効果または下流効果を誘起可能な分子を提供してもよい。こういった分子にはいずれの「ヘッジホッグ」タンパクまたはこれらをエンコードしているDNAが含まれる。
【0065】
遺伝子治療薬を送達するためのベクターにはウィルスベクターが含まれ、例えばアデノウィルス、guttedアデノウィルス、アデノ随伴ウィルス、テトロウィルス、アルファウィルス(セムリキ森林ウィルス、シンドビスウィルス)、レンチウィルス、単純ヘルペスウィルス、複製型ウィルス(例えば、ONYX−015)およびバイブリッドベクター、および非ウィルスベクター、例えば人工染色体およびミニ染色体、プラスミドDNAベクター(例えば、pCOR)、カチオン性重合体(例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミン(PEI))、グラフト共重合体(例えば、ポリエーテル−PEIおよびポリエチレンオキシド−PEI)、中性重合体、例えばポリビニルピロリドン(PVP)、SP1017(SUPRATEK)、脂質、例えばカチオン性脂質、リポソーム、リポプレックス、ナノ粒子、またはミクロ粒子が含まれ、タンパク導入ドメイン(PTD)等の標的配列を有するまたは有さない。
【0066】
本発明に関係して使用する細胞には、全骨髄、単核細胞由来の骨髄、前駆細胞(例えば、内皮前駆細胞)、幹細胞(例えば、間葉細胞、造血細胞、神経細胞)、多能性幹細胞、線維芽細胞、筋芽細胞、衛星細胞、周皮細胞、心筋細胞、骨格筋細胞またはマクロファージを含むヒト由来の細胞(自己または同種異系)、または動物、細菌または真菌由来であり(異種)であり、要望に応じて目的のたんぱく質を送達するために遺伝子操作することが可能である。
【0067】
上で列挙したものを必ずしも除外せずとも、数々の治療薬が血管治療計画の候補、例えば、再狭窄をターゲットとした薬剤として確認されている。こういった薬剤は本発明の実施に有用であり、以下を1つ以上含む。(a)ベンゾチアゼピン、例えばジルチアゼムおよびクレンチアゼム、ジヒドロピリジン、例えばニフェジピン、アムロジピンおよびニカルダピン、およびフェニルアルキルアミン例えばベラパミルを含むCaチャンネル阻害薬(b)5−HT拮抗薬、例えばケタンセリンおよびナフチドロフリル、同様に5−HT吸収阻害剤、例えばフルオキセチンを含むセロトニン経路モジュレーター、(c)ホスホジエステラーゼ阻害剤、例えばシロスタゾールおよびジピリダモール、アデニレート/グアニレートシクラーゼ刺激剤、例えばホルスコリン、同様にアデノシン類似体を含む環状ヌクレオチド経路物質、(d)α拮抗薬、例えばプラゾシンおよびブナゾシン、β拮抗薬、例えばプロプラノロールおよびα/β拮抗薬、例えばラベタロールおよびカルベジロールを含むカテコールアミンモジュレーター、(e)エンドセリン受容体拮抗薬、(f)有機硝酸塩/亜硝酸塩、例えばニトログリセリン、イソソルビドジニトレートおよび亜硝酸アミル、無機ニトロソ化合物、例えばニトロプルシドナトリウム、シドノニミン、例えばモルシドミンおよびリンシドミン、ノノエート、例えばジアゼニウムジオエートおよびアルカンジアミンのNO付加化合物、低分子化合物(例えば、カプトプリル、グルタチオンおよびN−アセチルペニシラミンのS−ニトロソ誘導体)および高分子化合物(例えば、タンパク質、ペプチド、オリゴ糖、多糖、合成重合体/オリゴマーおよび天然重合体/オリゴマーのS−ニトロソ誘導体)を含むS−ニトロソ化合物、同様にC−ニトロソ化合物、O−ニトロソ化合物、N−ニトロソ化合物およびL−アルギニンを含む一酸化窒素供与/放出分子、(g)ACE阻害剤、例えばシラザプリル、フォシノプリルおよびエナラプリル、(h)ATII受容体拮抗薬、例えばサララシンおよびロサルチン、(i)血小板粘着阻害剤、例えばアルブミンおよびポリエチレンオキシド、(j)シロスタゾール、アスピリンおよびチエノピリジン(チクロピジン、クロピドグレル)およびGPIIb/IIIa阻害薬、例えばアブシキマブ、エピチフィバチドおよびチロフィバンを含む血小板凝集阻害薬、(k)ヘパリノイド、例えばヘパリン、低分子ヘパリン、硫酸デキストランおよびβ−シクロデキストリンテトラデカサルフェート、トロンビン阻害薬、例えばヒルジン、ヒルログ、PPACK(D−phe−L−プロピルーL−arg−クロロメチルケトン)およびアルガトロバン、FXa阻害薬、例えばアンチスタチンおよびTAP(マダニ抗凝固ペプチド)、ビタミンK阻害剤、例えばワルファリン、同様に活性化タンパクCを含む凝固経路モジュレーター、(l)シクロオキシゲナーゼ経路阻害剤、例えばアスピリン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシンおよびスルフィピラゾン、(m)天然および合成コルチコステロイド、例えばデキサメタゾン、プレドニソロン、メチルプレドニソロンおよびヒドロコルチゾン、(n)リポキシゲナーゼ経路阻害剤、例えばノルジヒドログアイアレチン酸およびコーヒー酸、(o)ロイコトリエン受容体拮抗薬、(p)E−およびP−セレクチンの拮抗薬、(q)VCAM−1およびICAM−1の相互作用阻害薬、(r)プロスタグランジン、例えばPGE1およびPGI2およびプロスタサイクリン類似体、例えばシプロステン、エポプロステノール、カルバサイクリン、イロプロストおよびベラプロストを含むプロスタグランジンおよびその類似体、(s)ビスホスフォネートを含むマクロファージ活性化防止剤、(t)HMG−CoAリダクターゼ阻害剤、例えばロバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチンおよびセリバスタチン、(u)魚油およびオメガ3−脂肪酸、(v)フリーラジカル捕捉剤/酸化防止剤、例えばプロブコール、ビタミンCおよびE、エブセレン、トランス−レチノイン酸およびSOD模倣物、(w)FGF経路物質、例えばbFGF抗体およびキメラ融合タンパク質、PDGF受容体拮抗薬、例えばトラピジル、ソマトスタイン類似体例えばアンジオペプチンおよびオクレオチドを含むIGF経路物質、TGF−β経路物質、例えばポリアニオン系剤(ヘパリン、フコイジン)、デコリン、およびTGF−β抗体、EGF経路物質、例えばEGF抗体、受容体拮抗薬およびキメラ融合タンパク質、TNF−α経路物質、例えばサリドマイドおよびその類似体、トロンボキサンA2(TXA2)経路モジュレータ、例えばスロトロバン、バピプロスト、ダゾキシベンおよびリドグレル、同様にタンパク質チロシンキナーゼ阻害薬、例えばチルホスチン、ゲニステインおよびキノキサリン誘導体を含む、様々な成長因子に影響を与える物質(x)MMP経路阻害薬、例えばマリマスタット、イロマスタットおよびメタスタット、(y)細胞運動阻害薬、例えばサイトカラシンB、(z)代謝拮抗剤、例えばプリン類似体(例えば、塩素化プリンヌクレオシド類似体である6−メルカプトプリンまたはクラドリビン)、ピリミジン類似体(例えば、シタラビンおよび5−フルオロウラシル)およびメトトレキサート、ナイトロジェンマスタード、アルキルスルホネート、エチレンイミン、抗生物質(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン)、ニトロソウレア、シスプラチン、微小管動態に影響する物質(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、コルヒチン、Epo D、パクリタクセルおよびエポチロン)、カスパーゼ活性剤、プロテアソーム阻害薬、血管形成阻害薬(例えば、エンドスタチン、アンジオスタチン、スクアラミン)、ラパマイシン、セリバスタチン、フラボピリドールおよびスラミンを含む増殖抑制/抗腫瘍薬、(aa)マトリクス沈着/組織化経路阻害薬、例えばハロフジノンまたはその他のキナゾリノン誘導体およびトラニラスト、(bb)内皮化促進剤、例えばVEGFおよびRGDペプチド、および(cc)血液レオロジーモジュレーター、例えばペントキシフィリン。
【0068】
本発明の実施に有用な数々のその他の治療薬は、NeoRXコーポレーションに譲受された米国特許番号第5733925号にも開示されており、その開示は参照することにより本願に援用されるものとする。
【0069】
治療薬は量が十分だと不必要な組織、例えば悪性組織、前立腺組織、その他の壊死(細胞死)を引き起こすアブレーション剤も含む。例には浸透圧ストレス発生剤、例えば塩、例えば塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、有機溶剤、特には低濃度では耐容性良好であるが高濃度だと毒性となるエタノール、フリーラジカル発生剤、例えば過酸化水素、過酸化カリウムまたはその他のフリーラジカルを組織で形成可能な物質、塩基性物質、例えば水酸化ナトリウム、酸性物質、例えば酢酸およびギ酸、酵素、例えばコラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ、プロナーゼ、およびパパイン、酸化剤、例えば次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素または過酸化カリウム、組織固定剤、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒドまたはグルタルアルデヒド、および天然凝固剤、例えばジェンピンが含まれる。
【0070】
本発明の剤形に関連し、様々な治療薬搭載量を使用することができ、薬学的に効果的な量は当業者によってすぐに求められ、最終的には、例えば治療する症状、治療薬それ自体の性質、および剤形が導入される細胞、その他に依存する。
【0071】
当業者には理解されるように、コーティング層に関連した放出プロファイルは、例えば、治療薬含有コーティング層を構成している重合体の化学組成、分子量、構造、その他を変えることにより、および/または治療薬含有コーティング層上にバリア層を設けることにより修正することが可能である。
【0072】
よって、本発明の特定の態様において、治療薬の薬剤放出速度はコーティング層の重合体構成成分の親水性/疎水性比を変更することにより制御され、これによりコーティング層の総親水性は増強または低下する(または、逆に言えば、総疎水性が増強または低下する)。当業者には理解されるように、比率は様々に変更し得る。例えば、一部の態様において、コーティング層の親水性は、1つ以上の親水性単量体を用いて重合体を生成することにより増強され、例えばヒドロキシエチルメタクリレートまたはその他の親水性単量体が挙げられ、低および高T重合体ブロックの調製に関して上で挙げた親水性単量体の数々も含まれる。別の態様において、得られる共重合体の疎水性は1つ以上の疎水性単量体を用いて共重合体を生成することにより増強される。数々の疎水性単量体の1つ以上が使用でき、例えばメチルメタクリレートまたはその他の疎水性単量体が挙げられ、低および高T重合体ブロックの調製に関して上で挙げた数々の疎水性単量体も含まれる。コーティング層が親水性単位と疎水性単位の共重合体を含む場合、共重合体中の親水性単位の疎水性単位に対する比率は変更可能である。
【0073】
別の態様において、放出はコーティング層に1つ以上の生体崩壊性重合体成分、例えば生体崩壊性重合体ブロックを含めることにより調節される。「生体崩壊性重合体ブロック」とは患者に投与すると溶解、分解、吸収および/またはその他の崩壊工程を経る重合体ブロックである。生体崩壊性重合体ブロックの例には以下が含まれる:(a)ポリエステルブロック、例えばヒドロキシ酸とラクトンの重合体または共重合体、例えばグリコール酸、乳酸、タルトロン酸、フマル酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ジオキサノン、カプロラクトンおよびバレロラクトン、(b)ポリ無水物、例えば様々な二価酸の重合体および共重合体、例えばセバシン酸、1,6−ビス(p−カルボキシホキシ)アルカン、例えば、1,6−ビス(p−カルボキシホキシ)ヘキサンおよび1,6−ビス(p−カルボキシホキシ)プロパン、(c)チロシン由来ポリカーボネート、および(d)ポリオルトエステル。生体崩壊性重合体ブロックの具体例には、ポリエステルブロック、例えばポリ(グリコール酸)ブロック、ポリ(乳酸)ブロック、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)ブロック、およびポリカプロラクトンブロックが含まれる。
【実施例】
【0074】
ポリスチレンコーティングステンレススチールステント
ポリスチレンコーティングを有するステンレススチールを、塩素化ポリ(エチルアクリレート)をステンレススチールステント表面上に電気グラフトし、続いてスチレン単量体をATRPすることで製造する。2−クロロプロピオネートエチルアクリレート(cPEA)開始剤を、2−ヒドロキシエチルアクリレートと2−クロロプロオピオニルクロライドとをトリエチルアミンの存在下で反応させて合成する。電解重合するまえにcPEAを分子篩上で乾燥し、エチルアクリレート単量体を水素化カルシウム上で乾燥させ、減圧下で蒸留する。N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)はP上で乾燥させ、減圧下で蒸留する。過塩素酸テトラエチルアンモニウム(TEAP)は使用に先立って真空内で80℃で12時間加熱する。使用に先立って、スチレン(アルドリッチ)はCaH上で乾燥させ、蒸留する。フェニルエチルブロミド(PEBr)(アルドリッチ)およびHMTETA(アルドリッチ)は乾燥トルエンで希釈する。グラブス触媒(アルドリッチ)およびNiBr(PPh(アルドリッチ)はそのまま使用し、CuCl(アルドリッチ)およびCuCl(アルドリッチ)は使用に先立って酢酸内で再結晶化することで精製する。
【0075】
1.cPEAの合成
cPEAは、10mlの2−クロロプロピオニルクロライド(20mlのテトラヒドロフラン(THF)に0.1モルを溶解)と5.74mLの2−ヒドロキエチルアクリレート(0.05モル)および60mlの乾燥THFに溶解させた6.97mLのトリエチルアミン(0.05モル)との反応によって調製される。その後、20時間後、トリエチルアミン塩酸塩副生成物をろ過除去して、THFで洗浄する。ろ液からTHFが蒸発すると液体残留物が残り、CHClで抽出し、水で3回洗浄し、シリカゲルカラムを通してCHClで溶出し、MgSO上で乾燥させる。
【0076】
蒸留後、cPEAが回収される。
2.電気グラフトステント
ステンレススチールステントをポリ(cPEA)とポリ(cPEA−co−EA)を用いてTEAP(0.05M)と、cPEA(0.5M)またはcPEA(0.5M)とEA(0.5M)との混合物のいずれかを含有するDMF溶液から、電位を最大第一ピークまでスキャンし、この電位を電流が激減するまで保持することで電気グラフトする。完全なカソード不動態化には2回以上のスキャンが必要となる可能性がある。その後、基板を純粋なDMFとアセトニトリルで洗浄し、乾燥させる。
【0077】
3.スチレンのATRPによる重合
窒素下において、スチレン重合を閉管内で行う。管には電気グラフトステンレススチールステントと共に、68mg(ターゲットDP=950につき0.082mmol)のグラブス触媒を加える。管を閉じ、真空とし、窒素を充填する。その後、2mlの乾燥トルエン、9mlのスチレン(78.5mmol)と0.23mLのPEBr(0.082mmol、ターゲットDP=950)をゴムセプタムを介して添加し、スチールステントを完全に浸漬させる。管をマグネチックスターラー上に設置し、100℃で18時間加熱する。重合後、スチールステントをTHFでしっかりと洗浄し、溶液中に生成された重合体をメタノール中における沈殿により回収する。
【0078】
上述の方法により製造された、典型的なポリスチレングラフトステンレススチールステントの代表面が図2に示されており、これはクレイーズらによる、「Macromolecule」のウェッブ公開番号第0217130号(2003年7月19日)「Polymer Coating of Steel by a Combination of Electrografting and Atom-Transfer Radical Polymerization」に掲載されたポリスチレンコーティングしたスチールプレートの走査電子顕微鏡写真である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】ポリスチレンを導電性基板にグラフトするための二段階工程の概略図である。
【図2】スチール基板にグラフトされたポリスチレンのSEM画像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基板と、該導電性基板の少なくとも一部を被覆するコーティング層とを備え、該コーティング層が(a)フリーラジカル重合開始剤を該導電性基板表面に電気化学的に結合させ、(b)1つ以上のフリーラジカル重合性単量体の存在下においてフリーラジカル重合反応を行うことを含む工程によって生成される重合体を含むことを特徴とする、医療器具。
【請求項2】
該導電性基板が、チタン、プラチナ、ステンレススチール、ニッケル−チタン合金、金、コバルト−クロム合金、プラチナ強化ステンレススチールから選択された単体の遷移金属または合金を含むことを特徴とする、請求項1に記載の器具。
【請求項3】
該開始剤は、該開始剤の存在下、カソード電位を該導電性基板に印加することで該導電性基板表面に電気化学的に結合されることを特徴とする、請求項1に記載の器具。
【請求項4】
該フリーラジカル重合反応が原子移動フリーラジカル重合反応であることを特徴とする、請求項1に記載の器具。
【請求項5】
該開始剤が、ハロゲン化アルキルのα炭素上に1つ以上の活性化基を有するハロゲン化アルキルから選択された、電気化学的に結合可能な基を含むことを特徴とする、請求項1に記載の器具。
【請求項6】
該開始剤が、−N−X基、−S−X基、−O−X基から選択され、Xがハロゲン原子である、電気化学的に結合可能な基を含むポリハロゲン化化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の器具。
【請求項7】
該開始剤がアクリレート基と2−クロロプロピオネート基を含むことを特徴とする、請求項1に記載の器具。
【請求項8】
開始剤がエチルアクリレートと2−クロロプロピオネートとの共重合体を含むことを特徴とする、請求項1に記載の器具。
【請求項9】
該電気化学的に結合されたフリーラジカル重合開始剤がフリーラジカル末端重合体であることを特徴とする、請求項1に記載の器具。
【請求項10】
該1つ以上のフリーラジカル重合性単量体が、アルキルアクリレート単量体、ヒドロキシアルキルアクリレート単量体、アルキルメタクリレート単量体、ヒドロキシアルキルメタクリレート単量体、アクリロニトリル単量体、メタクリロニトリル単量体、ビニルエステル単量体、スチレン単量体、および置換スチレン単量体から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の器具。
【請求項11】
該フリーラジカル重合性単量体が不飽和単量体であることを特徴とする、請求項1に記載の器具。
【請求項12】
該1つ以上のフリーラジカル重合性単量体がフリーラジカル重合性基を有するマクロモノマーであることを特徴とする、請求項1に記載の器具。
【請求項13】
マクロモノマーがフリーラジカル重合性基と1つ以上の以下のブロック:ポリシロキサンブロック、ポリアルケンブロック、ポリ(ハロゲン化アルケン)ブロック、ポリエステルブロック、ポリ(ビニル芳香族)ブロック、ポリエチレンオキシドブロック、ポリビニルピロリドンブロック、ポリアクリレートブロック、ポリメタクリレートブロック、またはポリ(ビニルエーテル)ブロックを含むことを特徴とする、請求項12に記載の器具。
【請求項14】
該重合体が(i)低T重合体ブロックと(ii)高T重合体ブロックを含むことを特徴とする、請求項1に記載の器具。
【請求項15】
該開始剤がフリーラジカル末端低T重合体ブロックを含むことを特徴とする、請求項14に記載の器具。
【請求項16】
該低T重合体ブロックが、ポリアクリレートブロック、ポリメタクリレートブロック、ポリ(ビニルエーテル)ブロック、ポリエステルブロック、ポリアルケンブロック、ポリ(ハロゲン化アルケン)ブロック、ポリ(シロキサン)ブロックから選択されることを特徴とする、請求項14に記載の器具。
【請求項17】
該高T重合体ブロックが、ポリ(ビニル芳香族)ブロックおよびポリアルキル(メタ)アクリレートブロックから選択されることを特徴とする、請求項14に記載の器具。
【請求項18】
該重合体が低Tブロックと、主鎖と複数の側鎖とを有するグラフト共重合体ブロックとを含み、フリーラジカル重合反応が該側鎖とフリーラジカル重合性末端基とを有するマクロモノマーの存在下で行われることを特徴とする、請求項1に記載の器具。
【請求項19】
該グラフト共重合体ブロックが、生体崩壊性鎖または高T重合体鎖を含むことを特徴とする、請求項18に記載の器具。
【請求項20】
該コーティング層がさらに治療薬を含むことを特徴とする、請求項1に記載の器具。
【請求項21】
治療薬が、抗血栓剤、抗増殖剤、抗炎症薬、抗遊走剤、細胞外マトリクスの生成および組織化に影響を与える物質、抗腫瘍薬、抗分裂剤、麻酔薬、抗凝固剤、血管細胞成長促進物質、血管細胞成長阻害薬、コレステロール降下剤、血管拡張剤、内因性血管作動機構阻害薬から成る群から選択された1つ以上であることを特徴とする、請求項20に記載の器具。
【請求項22】
治療薬のコーティング層への導入が、(a)(i)溶媒系と(ii)該治療薬とを含む溶液を供給し、(b)該溶液を該コーティング層と接触させることによって行われることを特徴とする、請求項20に記載の器具。
【請求項23】
医療器具がインプラントまたは挿入可能な装置であることを特徴とする、請求項1に記載の器具。
【請求項24】
該インプラントまたは挿入可能な医療器具が、カテーテル、ガイドワイヤ、バルーン、フィルタ、ステント、ステントグラフト、血管グラフト、血管パッチおよびシャントから選択されることを特徴とする、請求項23に記載の器具。
【請求項25】
インプラントまたは挿入可能な医療器具が、冠動脈、末梢血管系、食道、気管、大腸、胆道、尿道、前立腺または脳へのインプラントまたは挿入用に適合させたものであることを特徴とする、請求項23に記載の器具。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−506502(P2008−506502A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522637(P2007−522637)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【国際出願番号】PCT/US2005/025512
【国際公開番号】WO2006/014604
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(507017004)ボストン サイエンティフィック リミティッド (24)
【Fターム(参考)】