説明

導電性接着剤およびそれを用いたLED基板

【課題】導電性と接着性を両立させることができる導電性接着剤およびそれを用いたLED基板を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の導電性接着剤は、導電性フィラー、バインダー樹脂、および溶剤を主成分とする。そして、導電性フィラーが、平均粒径が2μm〜30μmの金属粉末を主成分とするとともに、平均粒径が100nm以下の金属超微粒子を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子やチップ部品等の接着に使用する導電性接着剤、および当該導電性接着剤を用いて得られるLED基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化、高機能化の流れの中で、構成部品(例えば、LED素子等の半導体素子やチップ抵抗等のチップ部品)の微小化が進んでいる。このため、エレクトロニクス実装分野においては、そのような半導体素子等と金属基板の接合を容易に行える接着剤として、導電性接着剤が広く使用されている。
【0003】
この導電性接着剤としては、一般に、導電性フィラー、バインダー樹脂、および溶剤を主成分とするものが使用される。より具体的には、例えば、銀、金、銅、カーボン等の導電性を有する金属粉末からなる導電性フィラーと、エポキシ樹脂を主成分とするバインダー樹脂と、エポキシ樹脂に相溶性のある溶剤とを含む導電性接着剤が開示されている。そして、この導電性接着剤においては、導電性フィラーの含有量を、組成物全体に対して70〜90質量%に設定するとともに、エポキシ樹脂として、室温で液状のエポキシ樹脂と、平均分子量が500〜10000である室温で固形のエポキシ樹脂を使用する構成としている。そして、このような構成により、フレキシブルプリント配線板に対する応力緩和性を有するとともに、導電性と接着性に優れた導電性接着剤を提供することができると記載されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−277384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、導電性接着剤では、高い導電性と高い接着性の両立が要求されるが、一般に、導電性と接着性を両立させることは困難であった。即ち、上記特許文献1に記載の導電性接着剤のごとく、導電性接着剤における導電性フィラーの配合割合を増やすと、導電性は向上するものの、バインダー樹脂の配合割合が低下するため、接着性が低下するという問題があり、また、導電性接着剤におけるバインダー樹脂の配合割合を増やすと、接着性は向上するものの、導電性フィラーの配合割合が低下するため、導電性が低下するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、導電性と接着性を両立させることができる導電性接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、導電性フィラー、バインダー樹脂、および溶剤を主成分とする導電性接着剤において、導電性フィラーが、平均粒径が2μm〜30μmの金属粉末を主成分とするとともに、平均粒径が100nm以下の金属超微粒子を含有することを特徴とする。
【0007】
同構成によれば、導電性フィラーとして使用される比較的粒径の大きい金属粉末の間に、粒径が100nm以下である金属超微粒子が充填されるため、導電性フィラーにおける金属の充填密度が高くなり、結果として、低温の焼結温度(200℃以下)で導電性を向上させることが可能になる。また、平均粒径が100nm以下の金属超微粒子は、低温(200℃以下)で焼結するため、接着の対象となる金属基板との間で金属結合を形成する。従って、導電性接着剤の接着性を向上させることが可能になる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の導電性接着剤であって、導電性フィラー全体に対する金属超微粒子の含有量が0.1質量%以上10質量%以下であることを特徴とする。
【0009】
同構成によれば、コストアップを抑制しつつ、金属超微粒子による導電性と接着性の向上効果を十分に発揮することが可能になる。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の導電性接着剤であって、導電性接着剤全体に対する導電性フィラーの含有量が50質量%以上90質量%以下であることを特徴とする。同構成によれば、導電性接着剤の導電性と接着性を確実に向上させることが可能になる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の導電性接着剤であって、金属粉末が銀粉末であることを特徴とする。同構成によれば、銀粉末は比抵抗が小さいため、優れた導電性を有する導電性接着剤を提供することが可能になる。また、酸化しにくく、コストが低い導電性接着剤を提供することが可能になる。
【0011】
また、本発明の請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の導電性接着剤は、導電性と接着性を向上させることができるという優れた特性を備えている。従って、請求項5に記載の発明のように、金属基板とLED素子を備えるLED基板であって、金属基板とLED素子が、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の導電性接着剤により接合されているLED基板に好適に使用される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、導電性と接着性を両立できる導電性接着剤およびそれを用いたLED基板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の好適な実施形態について説明する。本発明の導電性接着剤は、金属粉末等の導電性フィラーをバインダー樹脂中に分散したペースト状のものが使用され、構成部品(例えば、LED素子等の半導体素子やチップ抵抗等のチップ部品)と金属基板の接着に用いられるものである。
【0014】
導電性フィラーである金属粉末としては、銀粉末、銅粉末、白金粉末、金粉末、ニッケル粉末、およびパラジウム粉末等の金属粉末や、カーボンブラック、グラファイト粉等のカーボン粉が使用できるが、このうち、銀粉末を使用することが好ましい。これは、銀粉末は、比抵抗が小さいため優れた導電性を示し、また、酸化しにくく、コストが低いためである。
【0015】
本発明の金属粉末には、鱗片状金属粉末が使用される。この鱗片状金属粉末としては、互いに直行する3方向(長さ方向、幅方向、厚み方向)の大きさのうち、1方向(厚み方向)の大きさが、他の2方向(長さ方向、幅方向)における大きさの最大値の、約1/2以下、特に、1/50から1/5である平板状(鱗片状)を有しており、平均粒径が、2μm〜30μmである金属粉末を用いることができる。ここで、平均粒径が2μm未満では、鱗片状金属粉末による、接触抵抗を小さくする効果が得られないため、導電性が低下する場合がある。また、30μmを超える場合は、例えば、導電性接着剤をスクリーン印刷に使用した場合に、鱗片状金属粉末が、細かい開口径からなるメッシュを有するスクリーン版に目詰まりする場合があり、かすれや切れ等の印刷異常が生じてしまう場合がある。なお、本明細書における平均粒径とは、50%粒径(D50)を指し、レーザードップラー法を応用した粒度分布測定装置(日機装(株)製、マイクロトラック(登録商標)粒度分布測定装置MT3000II)等により測定することができる。
【0016】
また、鱗片状金属粉末の平均粒径は、接触抵抗を小さくして、導電性をさらに向上させることと、スクリーン版への目詰まり等を防止して、かすれや切れの印刷異常が発生するのを防止するという観点から、上述の範囲内において、特に、3μm〜20μmであることが好ましい。鱗片状金属粉末としては、液相還元法、気相成長法等の、従来周知の、種々の方法によって製造したものが、いずれも使用できる。
【0017】
また、導電性接着剤全体に対する導電性フィラーの含有量は、導電性と接着性を両立させる観点から、50質量%以上90質量%以下であることが好ましい。これは、導電性フィラーの含有量が50質量%未満の場合は、接着性は向上するものの、導電性が低下する場合があるからであり、また、導電性フィラーの含有量が90質量%より多い場合は、導電性は向上するものの、接着性が低下する場合があるからである。
【0018】
バインダー樹脂としては、有機絶縁性樹脂が使用され、当該有機絶縁性樹脂としては、熱処理後に導電膜中に残存することを考慮して、耐熱性樹脂であることが好ましい。この耐熱性樹脂としては、例えば、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂、ポリベンズオキサゾール樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ビスマレイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂等を挙げることができる。これらの耐熱性樹脂は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせてバインダー樹脂として使用することができる。
【0019】
また、導電性接着剤の耐熱性向上の観点から、これらの樹脂のうち、エポキシ樹脂を使用することが好ましい。エポキシ樹脂の種類としては、特に限定はされないが、ビスフェノールA型、F型、S型、AD型等を骨格とするビスフェノール型のエポキシ樹脂、ナフタレン型のエポキシ樹脂、ノボラック型のエポキシ樹脂、ビフェニル型のエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型のエポキシ樹脂等が挙げられる。また、高分子量のエポキシ樹脂であるフェノキシ型のエポキシ樹脂を使用することもできる。
【0020】
また、導電性接着剤全体に対するバインダー樹脂の含有量は、8質量%以上40質量%以下であることが好ましい。これは、バインダー樹脂の含有量が8質量%未満の場合は、接着性が低下する場合があるからであり、また、バインダー樹脂の含有量が40質量%より多い場合は、導電性が低下する場合があるからである。
【0021】
また、本発明の導電性接着剤には、上述の各成分に加えて、バインダー樹脂を硬化させるための潜在性硬化剤、溶剤、その他添加剤等を含有することができる。例えば、エポキシ樹脂用の潜在性硬化剤としては、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、アミンイミド、ポリアミン系、第3級アミン、アルキル尿素系等のアミン系、ジシアンジアミド系、酸無水物系、フェノール系、および、これらの変性物が例示され、これらは単独または2種以上の混合物として使用できる。
【0022】
また、これらの潜在性硬化剤中でも、低温での貯蔵安定性、および速硬化性に優れているとの観点から、イミダゾール系の潜在性硬化剤が好ましく使用される。イミダゾール系の潜在性硬化剤としては、公知のイミダゾール系の潜在性硬化剤を使用することができる。より具体的には、イミダゾール化合物のエポキシ樹脂との付加物が例示される。イミダゾール化合物としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−ドデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾールが例示される。
【0023】
また、特に、これらの潜在性硬化剤を、ポリウレタン系、ポリエステル系等の高分子物質や、ニッケル、銅等の金属薄膜およびケイ酸カルシウム等の無機物で被覆してマイクロカプセル化したものは、長期保存性と速硬化性という矛盾した特性の両立を図ることができるため、好ましい。従って、マイクロカプセル型イミダゾール系の潜在性硬化剤が、特に好ましい。
【0024】
ただし、導電性接着剤は、耐熱温度の低い、汎用性のある材料からなる基材等と組み合わせて使用されることを考慮すると、200℃以下の温度域で硬化することが好ましく、そのため、200℃以下の所定の温度で、バインダー樹脂を硬化反応させることができる硬化剤を、適宜、選択して使用することが好ましい。なお、硬化剤は、バインダー樹脂の理論当量分、配合すれば良い。
【0025】
また、導電性接着剤全体に対する潜在性硬化剤の含有量は、0.2質量%以上5質量%以下であることが好ましい。これは、潜在性硬化剤の含有量が0.2質量%未満の場合は、エポキシ樹脂の硬化が不十分で接着性が不足する場合があるからであり、また、潜在性硬化剤の含有量が5質量%より多い場合は、保管時に硬化剤が反応し安定性が低下する場合があるからである。
【0026】
また、バインダー樹脂を溶解するための溶剤としては、バインダー樹脂が可溶であり、導電性接着剤を塗布する基材に対して非腐食性であり、かつ、導電性接着剤は、スクリーン印刷やスタンピング等の方法で、基材に塗布されるため、高沸点であり、揮発性の低いものを用いると、耐乾燥性が向上し、印刷作業性が良くなる。従って、これらの特性を維持する観点から、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、カルビトールアセテート、ターピネオール、フタル酸ジエチル等の有機溶媒が好適に使用できる。なお、これらの溶剤を、数種類、組み合わせて使用することもできる。
【0027】
また、導電性接着剤全体に対する溶剤の含有量は、30質量%以下であることが好ましい。これは、溶剤の含有量が30質量%より多い場合は、導電性接着剤の粘度が低くなりすぎるため、導電性接着剤をスクリーン印刷する際に、ダレ等が発生して、導電性接着剤の塗布性や印刷作業性が低下する場合があり、更に乾燥時にアウトガスが多量に出るため、他の部材に悪影響を及ぼすからである。
【0028】
また、本発明の導電性接着剤においては、上述の各成分に加えて、硬化促進剤、シランカップリング剤、難燃化剤、増粘剤、チクソトロピック剤、レベリング剤、可塑剤等の添加剤を含有する構成としても良い。例えば、スクリーン印刷やスタンピング等により連続印刷を行う際には、耐乾燥性が重要な特性となるが、可塑剤を添加することにより、耐乾燥性を向上させることができる。この可塑剤としては、例えば、フタル酸誘導体、イソフタル酸誘導体、テトラヒドロフタル酸誘導体、アジピン酸誘導体、マレイン酸誘導体、フマル酸誘導体、トリメリット誘導体、ピロメリット誘導体、ステアリン酸誘導体、オレイン酸誘導体、イタコン酸誘導体、リシノール誘導体、水素添加ヒマシ油およびその誘導体が好適に使用できる。
【0029】
ここで、本発明の導電性接着剤においては、導電性フィラーに、平均粒径が100nm以下の金属超微粒子が含有されている点に特徴がある。このような構成により、導電性フィラーとして使用される比較的粒径の大きい金属粉末の間に、粒径が100nm以下である金属超微粒子が充填されるため、導電性フィラーにおける金属の充填密度が高くなり、結果として、低温の焼結温度(200℃以下)で導電性を向上させることが可能になる。また、平均粒径が100nm以下の金属超微粒子は、低温(200℃以下)で焼結するため、接着の対象となる金属基板との間で金属結合を形成する。従って、導電性接着剤の接着性を向上させることが可能になる。
【0030】
金属超微粒子としては、銀、銅、金、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、ニッケル、スズ、亜鉛からなる超微粒子を使用することができる。また、このうち、導電性、耐酸化性、コストの観点から、銀からなる超微粒子を使用することが好ましい。
【0031】
また、金属超微粒子の平均粒径を100nm以下としたのは、平均粒径が100nmよりも大きい場合は、導電性を向上させることはできるが、金属基板との間で金属結合を形成することが困難になり、接着性を十分に向上させることができなくなる場合があるためである。
【0032】
また、導電性フィラーとして、比較的粒径の大きい金属粉末と、平均粒径が100nm以下である金属超微粒子を一定比率で混合したものを使用する場合、導電性フィラー全体(即ち、導電性フィラー全体を100質量%とした場合)に対する金属超微粒子の含有量は、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。これは、金属超微粒子の含有量が0.1質量%未満の場合は、上述した、金属超微粒子による導電性と接着性の向上効果が十分に発揮されず、また、10質量%よりも多いと、鱗片状のフィラーに対して金属超微粒子の割合が高くなり、結果として鱗片状フィラー同士の接点が減るため、却って導電性が悪化してしまい、また、金属超微粒子の使用量が多くなるため、コストが高くなるためである。
【0033】
導電性接着剤の作製方法としては、例えば、エポキシ樹脂等のバインダー樹脂を、ブチルカルビトールアセテート等の溶剤に溶解し、次いで、金属粉末と金属超微粒子を導電性フィラーとして添加するとともに、潜在性硬化剤や添加剤等を添加して混合し、三本ロールにより混練する方法が挙げられる。
【0034】
また、本発明の導電性接着剤は、上述のごとく、導電性と接着性を向上させることができるという優れた特性を備えている。従って、本発明の導電性接着剤は、金属基板と、金属基板に接合されたLED素子とを備えるLED基板において、金属基板とLED素子の接合を行うための接着剤として好適に使用される。
【0035】
以上に説明した本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態においては、導電性フィラーが、平均粒径が2μm〜30μmの金属粉末を主成分とするとともに、平均粒径が100nm以下の金属超微粒子を含有する構成としている。従って、導電性フィラーとして使用される比較的粒径の大きい金属粉末の間に、粒径が100nm以下である金属超微粒子が充填され、導電性フィラーにおける金属の充填密度が高くなるため、低温の焼結温度(200℃以下)で導電性接着剤の導電性を向上させることが可能になる。また、平均粒径が100nm以下の金属超微粒子は、低温(200℃以下)で焼結するため、接着の対象となる金属基板との間で金属結合を形成する。従って、導電性接着剤の接着性を向上させることが可能になる。
【0036】
(2)本実施形態においては、導電性フィラー全体に対する金属超微粒子の含有量を0.1質量%以上10質量%以下に設定する構成としている。従って、コストアップを抑制しつつ、金属超微粒子による導電性と接着性の向上効果を十分に発揮することが可能になる。
【0037】
(3)本実施形態においては、導電性接着剤全体に対する導電性フィラーの含有量を50質量%以上90質量%以下に設定する構成としている。従って、導電性接着剤の導電性と接着性を確実に向上させることが可能になる。
【0038】
(4)本実施形態においては、金属粉末として銀粉末を使用する構成としている。従って、銀粉末は比抵抗が小さいため、優れた導電性を有する導電性接着剤を提供することが可能になる。また、酸化しにくく、コストが低い導電性接着剤を提供することが可能になる。
【実施例】
【0039】
以下に、本発明を実施例、比較例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0040】
(実施例1〜6、比較例1〜2)
表1に示す種類、および量の銀粉末〔福田金属箔粉工業(株)製、商品名AgC−L〕または銅粉末〔三井金属鉱業(株)製、商品名MA−CJF〕と、銀製の超微粒子〔住友電気工業(株)製、商品名AGIN−W4A〕と、エポキシ樹脂〔大日本インキ(株)製、商品名エピクロン830(表1において「エポキシ樹脂1」と記載)、および東都化成(株)製、商品名YDCN−704(表1において「エポキシ樹脂2」と記載)〕と、エポキシ樹脂用硬化剤であるジシアンジアミド〔ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名DICY7〕とを回転攪拌脱泡機を用いて混合し、観察により均一と判断してから、三本ロールにより混練した。次いで、表1に示す量のブチルカルビトールアセテートを加え、実施例1〜6、および比較例1〜2の導電性接着剤を作製した。この際、作製した導電性接着剤において、常態における外観の異常等は観察されなかった。
【0041】
(体積抵抗率評価)
次に、作製した実施例1〜6、および比較例1〜2の導電性接着剤を、ドクターブレードを用いて、ポリイミド基材〔東レ・デュポン(株)製、商品名カプトン〕の上に、幅50mm×長さ80mmで塗布して製膜し、溶剤を乾燥させた後、恒温槽に入れて、表1に示す温度で表1に示す時間、焼成して硬化させ、導電膜を形成した。次いで、この導電膜の体積抵抗率を、抵抗率測定計(ダイアインスツルメンツ(株)製、商品名ロレスタ)を用いて測定した。以上の結果を表1に示す。なお、評価の基準は、体積抵抗率が900μΩ・cmを基準値として、この基準値未満のものを導電性良好、基準値以上のものを導電性不良とした。
【0042】
(接着性評価)
次いで、ステージ温度を室温に設定し、作製した実施例1〜6、および比較例1〜2の導電性接着剤を、2cm角の金属基板(銀めっき銅板)にスタンピング印刷で塗布した後、導電性接着剤に3mm角のシリコンチップを載置し、表1に示す硬化条件で導電性接着剤を硬化させ、導電性接着剤を介して、金属基板とシリコンチップを接着させた。その後、ボンドテスター〔デイジ社(株)製、商品名Series400〕を用いて水平方向からシリコンチップに力を加えて剥離した時の強度を求めた。以上の結果を表1に示す。なお、評価の基準は、接着強度が15N/mmを基準値として、この基準値以上のものを接着性良好、基準値未満のものを接着性不良とした。また、ステージ温度を150℃に設定した時の接着強度を同様に測定した。評価の基準は、接着強度が10N/mmを基準値として、この基準値以上のものを接着性良好、基準値未満のものを接着性不良とした。以上の結果を表1に示す。
【0043】
【表1】

表1から判るように、実施例1〜6、および比較例1の導電性接着剤においては、いずれの場合においても、体積抵抗値が、評価の基準値である900μΩ・cm未満となり、良好な導電性を示した。一方、比較例2の導電性接着剤においては、体積抵抗値が、評価の基準値である900μΩ・cm以上となり、良好な導電性が得られていない。これは、比較例2の導電性接着剤においては、導電性フィラーが金属超微粒子を含有していないためであると考えられる。
【0044】
また、表1から判るように、実施例1〜6の導電性接着剤においては、いずれの場合においても、接着強度が、評価の基準値である15N/mm以上、および10N/mm以上となり、良好な接着性を示した。一方、比較例1〜2の導電性接着剤においては、いずれの場合においても、接着強度が、評価の基準値である15N/mm未満、および10N/mm未満となり、良好な接着性が得られていない。これは、比較例1の導電性接着剤においては、導電性フィラーが含有する金属超微粒子の平均粒径が200nmと大きいため、接着の対象となる金属基板との間で金属結合を形成しなかったためであると考えられる。また、比較例2の導電性接着剤においては、導電性フィラーが金属超微粒子を含有していないためであると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の活用例としては、半導体素子やチップ部品等の接着に使用する導電性接着剤が挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性フィラー、バインダー樹脂、および溶剤を主成分とする導電性接着剤において、前記導電性フィラーが、平均粒径が2μm〜30μmの金属粉末を主成分とするとともに、平均粒径が100nm以下の金属超微粒子を含有することを特徴とする導電性接着剤。
【請求項2】
前記導電性フィラー全体に対する前記金属超微粒子の含有量が0.1質量%以上10質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の導電性接着剤。
【請求項3】
前記導電性接着剤全体に対する前記導電性フィラーの含有量が50質量%以上90質量%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の導電性接着剤。
【請求項4】
前記金属粉末が銀粉末であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の導電性接着剤。
【請求項5】
金属基板とLED素子を備えるLED基板であって、前記金属基板と前記LED素子が、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の導電性接着剤により接合されていることを特徴とするLED基板。

【公開番号】特開2010−44967(P2010−44967A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208746(P2008−208746)
【出願日】平成20年8月13日(2008.8.13)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】