導電性素子およびその製造方法、配線素子、情報入力装置、表示装置、ならびに電子機器
【課題】精細かつ高スループットの導電性素子を提供する。
【解決手段】導電性素子は、第1の波面と第2の波面とを有する基体と、第1の波面上に形成された、2層以上の層が積層された積層膜とを備える。積層膜が、導電パターン部を形成する。第1の波面および第2の波面が、0≦(Am1/λm1)<(Am2/λm2)≦1.8(但し、Am1:第1の波面の振動の平均幅、Am2:第2の波面の振動の平均幅、λm1:第1の波面の平均波長、λm2:第2の波面の平均波長)の関係を満たす。
【解決手段】導電性素子は、第1の波面と第2の波面とを有する基体と、第1の波面上に形成された、2層以上の層が積層された積層膜とを備える。積層膜が、導電パターン部を形成する。第1の波面および第2の波面が、0≦(Am1/λm1)<(Am2/λm2)≦1.8(但し、Am1:第1の波面の振動の平均幅、Am2:第2の波面の振動の平均幅、λm1:第1の波面の平均波長、λm2:第2の波面の平均波長)の関係を満たす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性素子およびその製造方法、配線素子、情報入力装置、表示装置、ならびに電子機器に関する。詳しくは、基体表面に導電パターン部が形成された導電性素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラスやプラスチックなどからなる絶縁性基材上に所定の回路パターンの導電層を形成する方法としては、フォトリソグラフィーを利用した回路パターン形成方法が広く用いられている。この回路パターンの形成方法では、ステップ&リピート方式、またはそれに近い方式が一般的に用いられている。具体的には、この形成方法では、「金属層コーティング」→「レジスト塗布」→「露光」→「現像」→「除去」→「レジスト剥離」の工程を経て、回路パターンが形成される。このため、フォトリソグラフィーを利用した回路パターンの形成方法は、低スループットとなる。
【0003】
そこで、スループットの向上を実現すべく、スクリーン印刷による回路パターン形成方法が提案されている。このスクリーン印刷による回路パターン形成方法は、絶縁性基材上に金属ペーストなどをマスクを介してスキージで塗布し、その後焼成して所定の回路パターンの導電層を形成する方法である。スクリーン印刷による回路パターン形成方法はスループットに優れるため、種々のデバイスに対する応用が検討されている。例えば特許文献1には、スクリーン印刷を用いてタッチパネルの電極を形成する方法が開示されている。また、特許文献2には、スクリーン印刷を用いて画像表示装置の電極を形成する方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、スクリーン印刷はマスクが高価であること、マスクを精度良く位置合わせするのが煩雑であること、マスクの穴が目詰まりし易いことなどの問題がある。このため、スクリーン印刷以外にも、優れたスループットを実現できる回路パターンの形成方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−266025号広報
【0006】
【特許文献2】特開2005−149807号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、精細かつ高スループットを実現できる導電性素子およびその製造方法、配線素子、情報入力装置、表示装置、ならびに電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、第1の発明は、
第1の波面と第2の波面とを有する基体と、
第1の波面上に形成された、2層以上の層が積層された積層膜と
を備え、
積層膜は、導電パターン部を形成し、
第1の波面および第2の波面が、以下の関係を満たす導電性素子である。
0≦(Am1/λm1)<(Am2/λm2)≦1.8
(但し、Am1:第1の波面の振動の平均幅、Am2:第2の波面の振動の平均幅、λm1:第1の波面の平均波長、λm2:第2の波面の平均波長)
【0009】
第2の発明は、
第1の波面と第2の波面とを有する基体表面に対して、2層以上の層を積層して積層膜を形成する工程と、
第1の波面および第2の波面のうち、第2の波面上に形成された積層膜を除去するのに対して、第1の波面上に形成された積層膜を残すことにより、導電パターン部を形成する工程と
を備え、
第1の波面と第2の波面が、以下の関係を満たす導電性素子の製造方法である。
0≦(Am1/λm1)<(Am2/λm2)≦1.8
(但し、Am1:第1の波面の振動の平均幅、Am2:第2の波面の振動の平均幅、λm1:第1の波面の平均波長、λm2:第2の波面の平均波長)
【0010】
本発明において、第1の波面および第2の波面が、以下の関係を満たし、第2の波面の平均波長λ2が、可視光の波長以下であることが好ましい。
(Am1/λm1)=0、0<(Am2/λm2)≦1.8
【0011】
本発明において、第1の波面および第2の波面が、以下の関係を満たし、第1の波面の平均波長λ1、および第2の波面の平均波長λ2が、可視光の波長以下であることが好ましい。
0<(Am1/λm1)<(Am2/λm2)≦1.8
【0012】
本発明において、第1の波面および第2の波面が、以下の関係を満たし、第2の波面の平均波長λ2が、100μm以上であることが好ましい。
(Am1/λm1)=0、0<(Am2/λm2)≦1.8
【0013】
本発明において、第1の波面および第2の波面が、以下の関係を満たし、第1の波面の平均波長λ1、および第2の波面の平均波長λ2が、100μm以上であることが好ましい。
0<(Am1/λm1)<(Am2/λm2)≦1.8
【0014】
本発明において、第2の波面上に形成された、積層膜の一部からなる残留膜をさらに備え、積層膜、および残留膜が、以下の関係を満たすことが好ましい。
S1>S2(但し、S1:積層膜の面積、S2:残留膜の面積)
このような関係を満たす場合、第1の波面上に形成された積層膜は、第1の波面上に連続的に形成されているのに対して、第2の波面上に形成された残留膜は、第2の波面上に不連続的に形成されていることが好ましい。
【0015】
本発明において、第2の波面上に形成された、積層膜の一部からなる残留膜をさらに備え、積層膜、および残留膜が、以下の関係を満たすことが好ましい。
d1>d2(但し、d1:積層膜の厚さ、d2:残留膜の厚さ)
【0016】
本発明において、積層膜は、導電層と、該導電層上に形成された機能層とを備え、機能層は、導電層とは異なる材料からなることが好ましい。積層膜は、異なる除去速度の材料で構成されていることが好ましい。導電層は、酸化物半導体を含む透明導電層であることが好ましい。酸化物半導体は、インジウム錫酸化物、または酸化亜鉛を含んでいることが好ましい。導電層は、アモルファスと多結晶との混合状態であることが好ましい。導電層は、Ag、Al、Au、Pt、Pd、Ni、Cr、Nb、W、Mo、TiおよびCuからなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでいることが好ましい。機能層は、酸化物および遷移金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでいることが好ましい。機能層は、導電層と異なる材料からなりAg、Al、Au、Pt、Pd、Ni、Cr、Nb、W、Mo、TiおよびCu選ばれる少なくとも1種を含んでいることが好ましい。機能層は、アモルファスと多結晶との混合状態にある層、および多結晶化状態にある層の少なくとも1種を含んでいることが好ましい。
【0017】
本発明において、導電性素子は、配線素子、情報入力装置、導電性素子、表示装置、または電子機器に適用して好適なものである。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、精細かつ高スループットを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る導電性素子の一構成例を示す平面図である。図1Bは、図1Aに示したB−B線に沿った断面図である。図1Cは、図1Bに示した第1の領域の一部を拡大して表す断面図である。図1Dは、図1Bに示した第2の領域の一部を拡大して表す断面図である。
【図2】図2Aは、複数の構造体が2次元配列された第2の領域を拡大して表す斜視図である。図2Bは、複数の構造体が2次元配列された第2の領域を拡大して表す平面図である。
【図3】図3Aは、複数の構造体が1次元配列された第2の領域を拡大して表す斜視図である。図3Bは、複数の構造体が1次元配列された第2の領域を拡大して表す平面図である。
【図4】図4Aは、基体を作製するためのロール原盤の一構成例を示す斜視図である。図4Bは、図4Aに示したロール原盤の一部を拡大して表す斜視図である。
【図5】図5Aは、ロール原盤の一部を拡大して表す断面図である。図5Bは、第2の領域の一部を拡大して示す斜視図である。図5Cは、第2の領域の一部を拡大して示す平面図である。
【図6】図6は、ロール原盤露光装置の一構成例を示す概略図である。
【図7】図7A〜図7Cは、本発明の第1の実施形態に係る導電性素子の製造方法の一例を説明するための工程図である。
【図8】図8A〜図8Cは、本発明の第1の実施形態に係る導電性素子の製造方法の一例を説明するための工程図である。
【図9】図9A〜図9Cは、本発明の第1の実施形態に係る導電性素子の製造方法の一例を説明するための工程図である。
【図10】図10Aは、本発明の第2の実施形態に係る導電性素子の一構成例を示す平面図である。図10Bは、図10Aに示したB−B線に沿った断面図である。図10Cは、図10Bに示した第1の領域の一部を拡大して表す断面図である。図10Dは、図10Bに示した第2の領域の一部を拡大して表す断面図である。
【図11】図11Aは、基体を作製するためのロール原盤の一部を拡大して表す斜視図である。図11Bは、図11Aに示したロール原盤の一部を拡大して表す断面図である。
【図12】図12Aは、本発明の第3の実施形態に係る導電性素子の一構成例を示す断面図である。図12Bは、本発明の第3の実施形態に係る導電性素子の変形例を示す断面図である。
【図13】図13Aは、本発明の第4の実施形態に係る導電性素子の一構成例を示す平面図である。図13Bは、図13Aに示したB−B線に沿った断面図である。図13Cは、図13Bに示した第1の領域の一部を拡大して表す断面図である。図13Dは、図13Bに示した第2の領域の一部を拡大して表す断面図である。
【図14】図14は、本発明の第5の実施形態に係る液晶表示素子の一構成例を示す斜視図である。
【図15】図15は、本発明の第6の実施形態に係るタッチパネルを備える表示装置の一構成例を示す斜視図である。
【図16】図16Aは、本発明の第6の実施形態に係るタッチパネルの第1の構成例を示す斜視図である。図16Bは、第1の基材の一構成例を示す分解斜視図である。
【図17】図17Aは、本発明の第6の実施形態に係るタッチパネルの第2の構成例を示す斜視図である。図17Bは、第1の基材の一構成例を示す分解斜視図である。
【図18】図18Aは、本発明の第7の実施形態に係るICカードの一構成例を示す平面図である。図18Bは、図18Aに示したICカードの一部を拡大して表す平面図である。
【図19】図19Aは、本発明の第8の実施形態に係る表示装置の構成の一例を示す断面図である。図19Bは、図19Aに示した配線領域を拡大して表す拡大断面図である。図19Cは、図19Aに示した非配線領域を拡大して表す拡大断面図である。
【図20】図20Aは、参考例1に係る透明導電性シートの作製に用いた石英マスタの成形面を示す模式図である。図20Bは、参考例1に係る透明導電性シートの導通/非導通評価ポイントを示す模式図である。
【図21】図21は、実施例1−2に係る導電性シート表面の光学顕微鏡観察像を示す図である。
【図22】図22は、エッチング時間と初期表面抵抗に対する逆数(仮想厚さ変化)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態について図面を参照しながら以下の順序で説明する。
1.第1の実施形態(波面の有無を利用して基体表面に導電パターン部を形成した例)
2.第2の実施形態(2種の波面の違いを利用して基体表面に導電パターン部を形成した例)
3.第3の実施形態(導電パターン部を基体の両面に形成した例)
4.第4の実施形態(構造体を凹状とした例)
5.第5の実施形態(表示装置に対する適用例)
6.第6の実施形態(情報入力装置に対する適用例)
7.第7の実施形態(ICカードに対する適用例)
8.第8の実施形態(表示装置に対する適用例)
【0021】
<1.第1の実施形態>
[導電性素子の構成]
図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る導電性素子の一構成例を示す平面図である。図1Bは、図1Aに示したB−B線に沿った断面図である。図1Cは、図1Bに示した第1の領域の一部を拡大して表す断面図である。図1Dは、図1Bに示した第2の領域の一部を拡大して表す断面図である。以下では、導電性素子1の主面の面内で互いに直交する2方向をX軸方向、およびY軸方向とし、その主面に垂直な方向をZ軸方向と称する。
【0022】
第1の実施形態に係る導電性素子1は、交互に形成された第1の領域R1および第2の領域R2を有する基体2と、第1の領域R1および第2の領域R2のうち、第1の領域R1に形成された積層膜4とを備える。積層膜4は、導電パターン部をなすように第1の領域R1に連続的に形成されている。導電パターン部は、例えば、配線パターン部、電極パターン部などである。積層膜4は、2層以上の層が積層された積層膜であり、少なくとも導電層4aを含んでいることが好ましい。
【0023】
この導電性素子1は、例えば、プリント基板、画像表示素子などである。プリント基板としては、例えば、リジッド基板、フレキシブル基板、リジッドフレキシブル基板などが挙げられる。画像表示素子としては、例えば、液晶表示素子、エルクトロルミネッセンス(EL)素子(例えば有機EL素子、無機EL素子)などが挙げられる。
【0024】
(第1の領域、第2の領域)
第1の領域R1の基体表面には、例えば平面Sp1が形成され、この平面Sp1上には積層膜4が連続的に形成されている。一方、第2の領域R2の基体表面には、例えば波面Sw2が形成され、この波面Sw2上には積層膜4が形成されていない状態となっている。したがって、第2の領域R2は、隣接する第1の領域R1に形成された積層膜4の間を絶縁するための絶縁領域として機能する。これに対して、第1の領域R1に連続的に形成された積層膜4は、第1の領域R1の延在方向に向かって導電性を有し、導電パターン部として機能する。
【0025】
平面Sp1、および波面Sw2が以下の関係を満たすことが好ましい。
(Am1/λm1)=0、0<(Am2/λm2)≦1.8
(但し、Am1:平面Sp1の振動の平均幅、Am2:波面Sw2の振動の平均幅、λm1:平面Sp1の平均波長、λm2:波面Sw2の平均波長)
なお、平面Sp1は、振動の平均幅Am1が「0」の波面とみなすことができるため、上述のように平面Sp1の振動の平均幅Am1、平均波長λm1および比率(Am1/λm1)を定義することができる。
比率(Am2/λm2)>1.8であると、波面Sw2を転写する際に剥離不良となり波面Sw2が破壊される傾向がある。
【0026】
ここで、波面Sw2の比率(Am2/λm2)は以下のようにして求めたものである。まず、波面Sw2の振動の幅が最大となる位置を含むようにして導電性素子1の断面を切り出し、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)にて撮影する。次に、撮影したTEM写真から、波面Sw2の波長λ2、および振動の幅A2を求める。この測定を導電性素子1から無作為に選び出された10箇所で繰り返し行い、測定値を単純に平均(算術平均)して、波面Sw2の平均波長λm2、および振動の平均幅Am2を求める。次に、これらの平均波長λm2、および振動の平均幅Am2を用いて、波面Sw2の比率(Am2/λm2)を求める。
【0027】
波面Sw2は、例えば、可視光の波長以下の波長を有する1次元的または2次元的な波面であり、具体的には、可視光の波長以下の配置ピッチで多数の構造体3が1次元的または2次元的に配列されてなる凹凸面である。
【0028】
波面Sw2の振動の幅が最大となる位置を含むようにして、波面Sw2を一方向に向かって切断したときの断面形状は、例えば、三角波形状、正弦波形状、2次曲線もしくは2次曲線の一部を繰り返した波形状、またはこれらに近似する形状などである。2次曲線としては、円、楕円、放物線などが挙げられる。
【0029】
波面Sw2の平均波長λm2は、好ましくは100nm以上の範囲である。平均波長λm2が100nm未満であると、波面Sw2の作製が困難となる傾向がある。
また、波面Sw2の平均波長λm2は、好ましくは100μm以下の範囲である。平均波長λm2が100μmを超えると、インプリントと膜形成の際に段差、カバレッジに問題が発生し不具合が生じる。
【0030】
第2の領域R2には積層膜4またはその一部が残留膜として完全に存在しないことが好ましいが、第2の領域R2が絶縁領域として機能する程度であれば残留膜として存在していてもよい。第2の領域R2に残留膜が存在する場合、第1の領域R1に形成された積層膜4と、第2の領域R2に形成された残留膜とが、以下の関係を満たすことが好ましい。
S1>S2
(但し、S1:積層膜の面積、S2:残留膜の面積)
このような関係を満たす場合、第1の領域R1には積層膜4が連続的に形成されているのに対して、第2の領域R2には残留膜が島状などに不連続に形成されていることが好ましい。
【0031】
また、第2の領域R2に残留膜が存在する場合、第1の領域R1に形成された積層膜4と、第2の領域R2に形成された残留膜とが、以下の関係を満たすことが好ましい。
d1>d2
(但し、d1:積層膜の厚さ、d2:残留膜の厚さ)
このような関係を満たす場合、残留膜の厚さが、実質的に導電性を示さないほどに、積層膜4の厚さよりも薄く、第2の領域R2が絶縁領域として機能することが好ましい。
【0032】
なお、上述したように、残留膜は導電パターン部としては機能しないため、図1B、および図1Dでは、残留膜の図示を省略している。また、図1Aでは、第1の領域R1に連続的に形成された積層膜4、すなわち導電パターン部が、直線状の形状を有している例が示されているが、導電パターン部の形状はこれに限定されるものではなく、回路や素子の設計などに応じて所望の形状とすることが可能である。
【0033】
以下、導電性素子1を構成する基体2、構造体3、および積層膜4について順次説明する。
【0034】
(基体)
基体2は、例えば、透明性または不透明性を有する基体である。基体2の材料としては、例えば、プラスチック材料などの有機材料、ガラスなどの無機材料を用いることができる。
【0035】
ガラスとしては、例えば、ソーダライムガラス、鉛ガラス、硬質ガラス、石英ガラス、液晶化ガラスなど(「化学便覧」基礎編、P.I-537、日本化学会編参照)が用いられる。プラスチック材料としては、透明性、屈折率、および分散などの光学特性、さらには耐衝撃性、耐熱性、および耐久性などの諸特性の観点から、ポリメチルメタアクリレート、メチルメタクリレートと他のアルキル(メタ)アクリレート、スチレンなどといったビニルモノマーとの共重合体などの(メタ)アクリル系樹脂;ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR-39)などのポリカーボネート系樹脂;(臭素化)ビスフェノールA型のジ(メタ)アクリレートの単独重合体ないし共重合体、(臭素化)ビスフェノールAモノ(メタ)アクリレートのウレタン変性モノマーの重合体及び共重合体などといった熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂;ポリエステル特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよび不飽和ポリエステル、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、シクロオレフィンポリマー(商品名:アートン、ゼオノア)などが好ましい。また、耐熱性を考慮したアラミド系樹脂の使用も可能である。
【0036】
基体2としてプラスチック材料を用いる場合、プラスチック表面の表面エネルギー、塗布性、すべり性、平面性などをより改善するために、表面処理として下塗り層を設けるようにしてもよい。この下塗り層としては、例えば、オルガノアルコキシメタル化合物、ポリエステル、アクリル変性ポリエステル、ポリウレタンなどが挙げられる。また、下塗り層を設けるのと同様の効果を得るために、基体2の表面に対してコロナ放電、UV照射処理を行うようにしてもよい。
【0037】
基体2がプラスチックフィルムである場合には、基体2は、例えば、上述の樹脂を伸延、あるいは溶剤に希釈後フィルム状に成膜して乾燥するなどの方法で得ることができる。また、基体2の厚さは、例えば25μm〜500μm程度である。
【0038】
基体2の形状としては、例えば、フィルム状、プレート状、ブロック状を挙げることができるが、特にこれらの形状に限定されるものではない。ここで、フィルムにはシートが含まれるものと定義する。
【0039】
(構造体)
波面Sw2は、例えば多数の構造体3が第2の領域R2に配列された凹凸面である。構造体3は、例えば、基体1の表面に対して凸状を有している。構造体3は、例えば、基体2と別成形、または基体2と一体成形されている。構造体3と基体2とを別成形する場合には、必要に応じて構造体3と基体2との間に基底層を備えるようにしてもよい。基底層は、構造体3の底面側に構造体3と一体成形された層であり、構造体3と同様のエネルギー線硬化性樹脂組成物などを硬化してなる。基底層の厚さは、特に限定されるものではなく、必要に応じて適宜選択することができる。
【0040】
構造体3のアスペクト比(Hm/Pm)が以下の関係を満たすことが好ましい。
0<(Hm/Pm)≦1.8
(但し、Hm:構造体3の平均高さ、Pm:構造体3の平均配置ピッチ)
(Hm/Pm)>1.8であると、構造体3を転写する際に剥離不良となり構造体3が破壊される傾向がある。
【0041】
ここで、構造体3のアスペクト比(Hm/Pm)は、以下のようにして求めたものである。まず、構造体3の高さが最大となる位置を含むようにして導電性素子1の断面を切り出し、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)にて撮影する。次に、撮影したTEM写真から、構造体3の配置ピッチP、および高さHを求める。この測定を導電性素子1から無作為に選び出された10箇所で繰り返し行い、測定値を単純に平均(算術平均)して、構造体3の平均配置ピッチPmおよび平均高さHmを求める。次に、これらの平均配置ピッチPmおよび平均高さHmを用いて、構造体3のアスペクト比(Hm/Pm)を求める。
【0042】
複数の構造体3の配列としては、例えば、1次元または2次元配列を用いることができる。構造体3の配列としては、例えば、規則的または不規則的な配列を用いることができ、原盤の作製方法などに応じて上記配列のうちから適切な配列を選択することが好ましい。
【0043】
構造体3の平均配置ピッチPmは、導電性素子表面における光の反射を低減する観点からすると、反射の低減を目的とする光の波長帯域以下であることが好ましい。反射の低減を目的とする光の波長帯域は、例えば、紫外光の波長帯域、可視光の波長帯域または赤外光の波長帯域である。ここで、紫外光の波長帯域とは10nm以上360nm以下の波長帯域、可視光の波長帯域とは360nm以上830nm以下の波長帯域、赤外光の波長帯域とは830nm以上1mm以下の波長帯域をいう。具体的には、平均配置ピッチPmは、好ましくは180nm以上350nm以下、より好ましくは100nm以上320nm以下、さらに好ましくは110nm以上280nm以下の範囲内である。平均配置ピッチPmが180nm未満であると、構造体3の作製が困難となる傾向がある。一方、平均配置ピッチPmが350nmを超えると、可視光の回折が生じる傾向がある。
【0044】
以下に、図2A〜図3Bを参照しながら、複数の構造体3が1次元配列または2次元配列された第2の領域R2について具体的に説明する。
【0045】
図2Aは、複数の構造体が2次元配列された第2の領域を拡大して表す斜視図である。図2Bは、複数の構造体が2次元配列された第2の領域を拡大して表す平面図である。複数の構造体3が、例えば、第2の領域R2において複数列のトラックT上に2次元配列されている。トラックTの形状としては、直線状、円弧状などを用いることができ、これらの形状のトラックTを蛇行(ウォブル)させるようにしてもよい。複数例のトラックT上に配列された複数の構造体3が、例えば、所定の規則的な配置パターンをなるようにしてもよい。構造体3の配置パターンとしては、四方格子状、六方格子状などの格子状パターンが挙げられ、これらの格子状パターンを歪ませるようにしてもよい。構造体3の高さが基体1の表面において規則的または不規則的に変化するようにしてもよい。また、構造体3をランダムに配列するようにしてもよい。
【0046】
構造体3の具体的な形状としては、例えば、錐体状、柱状、針状、半球状、半楕円球状、多角形状などが挙げられるが、これらの形状に限定されるものではなく、他の形状を採用するようにしてもよい。錐体状としては、例えば、頂部が尖った錐体形状、頂部が平坦な錐体形状、頂部に凸状または凹状の曲面を有する錐体形状が挙げられるが、これらの形状に限定されるものではない。また、錐体状の錐面を凹状または凸状に湾曲させるようにしてもよい。後述するロール原盤露光装置(図6参照)を用いてロール原盤を作製する場合には、構造体3の形状として、頂部に凸状の曲面を有する楕円錐形状、または頂部が平坦な楕円錐台形状を採用し、それらの底面を形成する楕円形の長軸方向をトラックTの延在方向と一致させることが好ましい。
【0047】
図3Aは、複数の構造体が1次元配列された第1の領域を拡大して表す斜視図である。図3Bは、複数の構造体が1次元配列された第1の領域を拡大して表す平面図である。複数の構造体3が、例えば、第2の領域R2において複数列のトラックT上に、これらのトラックTに沿うようにして1次元配列されている。トラックTの形状としては、直線状、円弧状などを用いることができ、これらの形状のトラックを蛇行(ウォブル)させるようにしてもよい。
【0048】
構造体3は、例えば、一方向に向かって延在された柱状体であり、その断面形状は、例えば三角形状、頂部に曲率Rが付された三角形状、多角形状、半円形状、半楕円形状、放物線状などを挙げることができるが、これらの形状に限定されるものではない。構造体3の具体的形状としては、例えば、レンチキュラー形状、プリズム形状などを挙げることができるが、これらの形状に限定されるものではない。構造体3の高さが、トラック方向に向かって変化するようにしてもよい。また、構造体3が、トラック方向に断続するようにしてもよい。
【0049】
(積層膜)
積層膜4は、例えば、第1の領域R1上に形成された導電層4aと、導電層4a上に形成された機能層4bとを備える。積層膜4は、異なる除去速度の材料、具体的には、異なる除去速度の積層膜から構成されていることが好ましい。導電層4aとしては、例えば、金属層、透明導電層、金属酸化物層、遷移金属化合物層などを用いることができるが、これらの限定されるものではない。機能層4bの材料としては、少なくとも導電層4aとは異なる材料が好ましく、さらに除去工程時に溶解レート差が生じるものがより好ましい。
【0050】
透明導電層としては、例えば、無機透明導電層を用いることができる。無機透明導電層は、透明酸化物半導体を主成分としていることが好ましい。透明酸化物半導体としては、例えば、SnO2、InO2、ZnOおよびCdOなどの二元化合物、二元化合物の構成元素であるSn、In、ZnおよびCdのうちの少なくとも一つの元素を含む三元化合物、または多元系(複合)酸化物を用いることができる。透明酸化物半導体の具体例としては、例えばインジウム錫酸化物(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、アルミドープ酸化亜鉛(AZO(Al2O3、ZnO))、SZO、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、酸化錫(SnO2)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、酸化インジウム亜鉛(IZO(In2O3、ZnO))などが挙げられる。特に、信頼性の高さ、および抵抗率の低さなどの観点から、インジウム錫酸化物(ITO)が好ましい。無機透明導電膜を構成する材料は、導電性の向上の観点からすると、アモルファスと多結晶との混合状態であることが好ましい。
【0051】
金属層の材料としては、例えば、Ag、Al、Au、Pt、Pd、Ni、Cr、Nb、W、Mo、TiおよびCuからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0052】
機能層4bとしては、少なくとも導電層4aに対して、エッチャントに対する溶解度もしくはエッチングレートが異なることが望ましく、例えばSiO2などの金属酸化物層や遷移金属化合物、さらには結晶状態が異なる膜同士で機能層4bが多結晶化してエッチャント耐性が向上している状態も望ましい。機能層4bは、アモルファスと多結晶との混合状態にある層、および多結晶化状態にある層の少なくとも1種を含んでいることが好ましい。また、機能層4bとしては、導電層4aに対して溶解レートが異なるものであれば金属でも使用可能であり、導電層4aと異種材料であればAg、Al、Au、Pt、Pd、Ni、Cr、Nb、W、Mo、TiおよびCuからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む材料を用いることができる。
【0053】
第1の領域R1における積層膜4の表面抵抗は、5000Ω/□以下であることが好ましい。5000Ω/□を超えると、抵抗が増大しすぎて電極として使用できなくなる傾向がある。
【0054】
[ロール原盤の構成]
図4Aは、基体を作製するためのロール原盤の一構成例を示す斜視図である。図4Bは、図4Aに示したロール原盤の一部を拡大して表す斜視図である。ロール原盤11は、上述した基体表面に構造体3を成形するための原盤である。ロール原盤11は、例えば、円柱状または円筒状の形状を有し、その円柱面または円筒面には多数の第1の領域R1および第2の領域R2が交互に設定されている。図4Aおよび図4Bでは、第1の領域R1および第2の領域R2が周方向に向かって、リング状に形成されている場合が示されているが、第1の領域R1および第2の領域R2の形状はこの例に限定されるものではなく、所望とする導電パターン部の形状、すなわち第2の領域に形成する積層膜4の形状に応じて適宜選択される。ロール原盤11の材料としては、例えばガラスを用いることができるが、この材料に特に限定されるものではない。
【0055】
図5Aは、ロール原盤の一部を拡大して表す断面図である。図5Bは、第2の領域の一部を拡大して示す斜視図である。図5Cは、第2の領域の一部を拡大して示す平面図である。ロール原盤11の第2の領域R2には、例えば、凹部である構造体12が可視光の波長以下のピッチで多数配置されているのに対して、第1の領域R1には、例えば、凹部である構造体12が形成されず平面状とされている。
【0056】
ロール原盤11の第1の領域R1、および第2の領域R2はそれぞれ、基体2の第1の領域R1、および第2の領域R2に対応している。すなわち、ロール原盤11の第1の領域R1に形成された平面Sp1は、基体2の第1の領域R1に平面Sp1を形成するためのものである。ロール原盤11の第2の領域R2に形成された波面Sw2は、基体2の第2の領域R2に波面Sw2を形成するためのものである。具体的には、ロール原盤11の波面Sw2は、上述の基体2の表面の波面Sw2の凹凸形状を反転した形状を有している。すなわち、ロール原盤11の構造体12は、上述の基体2の表面の構造体3の凹凸形状を反転した形状を有している。
【0057】
[露光装置の構成]
図6は、ロール原盤露光装置の一構成例を示す概略図である。以下、図6を参照して、ロール原盤露光装置の構成について説明する。なお、このロール原盤露光装置は、例えば、光学ディスク記録装置をベースとして構成することが可能である。
【0058】
レーザー光源21は、記録媒体としての原盤11の表面に着膜されたレジストを露光するための光源であり、例えば波長λ=266nmの記録用のレーザー光14を発振するものである。レーザー光源21から出射されたレーザー光14は、平行ビームのまま直進し、電気光学素子(EOM:Electro Optical Modulator)22へ入射する。電気光学素子22を透過したレーザー光14は、ミラー23で反射され、変調光学系25に導かれる。
【0059】
ミラー23は、偏光ビームスプリッタで構成されており、一方の偏光成分を反射し他方の偏光成分を透過する機能をもつ。ミラー23を透過した偏光成分はフォトダイオード24で受光され、その受光信号に基づいて電気光学素子22を制御してレーザー光14の位相変調を行う。
【0060】
変調光学系25において、レーザー光14は、集光レンズ26により、ガラス(SiO2)などからなる音響光学素子(AOM:Acoust-Optic Modulator)27に集光される。レーザー光14は、音響光学素子27により強度変調され発散した後、レンズ28によって平行ビーム化される。変調光学系25から出射されたレーザー光14は、ミラー31によって反射され、移動光学テーブル32上に水平かつ平行に導かれる。
【0061】
移動光学テーブル32は、ビームエキスパンダ33、および対物レンズ34を備えている。移動光学テーブル32に導かれたレーザー光14は、ビームエキスパンダ33により所望のビーム形状に整形された後、対物レンズ34を介して、原盤11上のレジスト層へ照射される。原盤11は、スピンドルモータ35に接続されたターンテーブル36の上に載置されている。そして、原盤11を回転させるとともに、レーザー光14を原盤11の高さ方向に移動させながら、レジスト層へレーザー光14を間欠的に照射することにより、レジスト層の露光工程が行われる。形成された潜像は、円周方向に長軸を有する略楕円形になる。レーザー光14の移動は、移動光学テーブル32の矢印R方向への移動によって行われる。
【0062】
露光装置は、例えば、四方格子または六方格子などの所定の2次元パターンに対応する潜像をレジスト層に形成するための制御機構37を備えている。制御機構37は、フォマッター29とドライバ30とを備える。フォマッター29は、極性反転部を備え、この極性反転部が、レジスト層に対するレーザー光14の照射タイミングを制御する。ドライバ30は、極性反転部の出力を受けて、音響光学素子27を制御する。
【0063】
このロール原盤露光装置では、2次元パターンが空間的にリンクするように1トラック毎に極性反転フォマッター信号と記録装置の回転コントロラーを同期させ信号を発生し、音響光学素子27により強度変調している。角速度一定(CAV)で適切な回転数と適切な変調周波数と適切な送りピッチでパターニングすることにより、四方格子または六方格子パターンなどの所定の2次元パターンを記録することができる。
【0064】
[導電性素子の製造方法]
以下、図7〜図9を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る導電性素子1の製造方法の一例について説明する。
【0065】
(レジスト成膜工程)
まず、図7Aに示すように、円柱状または円筒状のロール原盤11を準備する。このロール原盤11は、例えばガラス原盤である。次に、図7Bに示すように、ロール原盤11の表面にレジスト層13を形成する。レジスト層13の材料としては、例えば有機系レジスト、および無機系レジストのいずれを用いてもよい。有機系レジストとしては、例えばノボラック系レジストや化学増幅型レジストを用いることができる。また、無機系レジストとしては、例えば、1種または2種以上含む金属化合物を用いることができる。
【0066】
(露光工程)
次に、図7Cに示すように、上述したロール原盤露光装置を用いて、ロール原盤11を回転させると共に、レーザー光(露光ビーム)14をレジスト層13に照射する。このとき、レーザー光14をロール原盤11の高さ方向(円柱状または円筒状のロール原盤11の中心軸に平行な方向)に移動させながら、レーザー光14を照射する。この際、配線パターン間の絶縁領域に対応する第2の領域R2のみに潜像を形成し露光部とするのに対して、導電パターン部に対応する第1の領域R1は露光せず、非露光部とする。レーザー光14の軌跡に応じた潜像15は、例えば、可視光の波長以下のピッチで形成される。
【0067】
潜像15は、例えば、ロール原盤表面において複数列のトラックをなすように配置されるとともに、四方格子パターンまたは六方格子パターンなどの所定の2次元パターンを形成する。潜像15は、例えば、トラックの延在方向に長軸方向を有する楕円形状である。
【0068】
(現像工程)
次に、例えば、ロール原盤11を回転させながら、レジスト層13上に現像液を滴下して、図8Aに示すように、レジスト層13を現像処理する。図示するように、レジスト層13をポジ型のレジストにより形成した場合には、レーザー光14で露光した露光部は、非露光部と比較して現像液に対する溶解速度が増すので、潜像(露光部)15に応じたパターンがレジスト層13に形成される。これにより、第2の領域R2のレジスト層13には、四方格子パターンまたは六方格子パターンなどの所定の2次元パターンの開口部が形成されるのに対して、第1の領域R1のレジスト層13には、開口部が形成されず、第1の領域R1全体はレジスト層13に覆われた状態が維持される。すなわち、第2の領域R2のみに開口パターンを有するマスクがロール原盤表面に形成される。
【0069】
(エッチング工程)
次に、ロール原盤11の上に形成されたレジスト層13のパターン(レジストパターン)をマスクとして、ロール原盤11の表面をロールエッチング処理する。これにより、ロール原盤表面のうち第2の領域R2では、開口部を介してエッチングが進行し、図8Bに示すように、第2の領域の領域R2には、トラックの延在方向に長軸方向をもつ楕円錐形状または楕円錐台形状などの構造体(凹部)12が形成される。一方、ロール原盤表面のうち第1の領域R1では、この領域全体がレジスト層13に覆われているため、エッチングは施されず、平面状のロール原盤表面が維持される。エッチング方法としては、例えばドライエッチングを用いることができる。
【0070】
(転写工程)
次に、例えば、図8Cに示すように、ロール原盤11と、転写材料15を塗布したフィルムなどの基体2とを密着させ、紫外線などのエネルギー線を照射して転写材料15を硬化させた後、硬化した転写材料15と一体となった基体2を剥離する。これにより、図9Aに示すように、平面Sp1が形成された第1の領域R1と、波面Sw2が形成された第2の領域R2とを有する基体2が得られる。
【0071】
転写材料15としては、例えば、エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いることができる。エネルギー線硬化性樹脂組成物は、エネルギー線を照射することによって硬化させることができる樹脂組成物である。エネルギー線とは、電子線、紫外線、赤外線、レーザー光線、可視光線、電離放射線(X線、α線、β線、γ線など)、マイクロ波、高周波などのラジカル、カチオン、アニオンなどの重合反応の引き金と成りうるエネルギー線を示す。エネルギー線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、他の樹脂と混合して用いるようにしてもよく、例えば熱硬化性樹脂組成物などの他の硬化性樹脂組成物と混合して用いてもよい。また、エネルギー線硬化性樹脂組成物は、有機無機ハイブリッド材料であってもよい。また、2種以上のエネルギー線硬化性樹脂組成物を混合して用いるようにしてもよい。エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、紫外線により硬化する紫外線硬化樹脂を用いることが好ましい。
【0072】
紫外線硬化性樹脂組成物は、例えば、単官能モノマー、二官能モノマー、多官能モノマーなどからなり、具体的には、以下に示す材料を単独または、複数混合したものである。
単官能モノマーとしては、例えば、カルボン酸類(アクリル酸)、ヒドロキシ類(2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート)、アルキル、脂環類(イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート)、その他機能性モノマー(2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレンクリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、2−(パーフルオロオクチル)エチル アクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−パーフルオロオクチルー2−ヒドロキシプロピル アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル アクリレート、2−(パーフルオロー3−メチルブチル)エチル アクリレート)、2,4,6−トリブロモフェノールアクリレート、2,4,6−トリブロモフェノールメタクリレート、2−(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エチルアクリレート)、2−エチルヘキシルアクリレートなどを挙げることができる。
【0073】
二官能モノマーとしては、例えば、トリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、トリメチロールプロパン ジアリルエーテル、ウレタンアクリレートなどを挙げることができる。
【0074】
多官能モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートなどを挙げることができる。
【0075】
開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンなどを挙げることができる。
【0076】
紫外線硬化性樹脂組成物などのエネルギー線硬化性樹脂組成物に対して、フィラーや機能性添加剤などを添加してもよい。フィラーとしては、例えば、無機微粒子および有機微粒子のいずれも用いることができる。無機微粒子としては、例えば、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Al2O3などの金属酸化物微粒子を挙げることができる。機能性添加剤としては、例えば、レベリング剤、表面調整剤、消泡剤などを挙げることができる。
【0077】
基体2の材料としては、例えば、メチルメタクリレート(共)重合体、ポリカーボネート、スチレン(共)重合体、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリウレタン、ガラスなどが挙げられる。
【0078】
基体2の成形方法は特に限定されず、例えば射出成形法、押し出し成形法、キャスト成形法などを用いることができる。必要に応じて、コロナ処理などの表面処理を基体表面に施すようにしてもよい。
【0079】
(積層膜の成膜工程)
次に、図9Bに示すように、基体表面の第1の領域R1および第2の領域R2に2層以上の層を積層することにより、積層膜4を形成する。具体的には例えば、基体表面の第1の領域R1および第2の領域R2に導電層4a、機能層4bをこの順序で積層することにより、積層膜4を形成する。積層膜4の成膜方法としては、例えば、熱CVD、プラズマCVD、光CVDなどのCVD法(Chemical Vapor Deposition(化学蒸着法):化学反応を利用して気相から薄膜を析出させる技術)のほか、真空蒸着、プラズマ援用蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどのPVD法(Physical Vapor Deposition(物理蒸着法):真空中で物理的に気化させた材料を基板上に凝集させ、薄膜を形成する技術)を用いることができる。また、基体2を加熱しながら、積層膜4を形成するようにしてもよい。
【0080】
(アニール工程)
次に、必要に応じて、積層膜4に対してアニール処理を施す。これにより、積層膜4または積層膜4に含まれる無機透明導電層が、例えばアモルファスと多結晶との混合状態となる。
【0081】
(積層膜の除去工程)
次に、図9Cに示すように、積層膜4が形成された基体表面に対して、エッチング処理を施す。これにより、第2の領域R2では積層膜4が除去されるのに対して、第1の領域R1では積層膜4が残留する。具体的には例えば、第2の領域R2では導電層4a、機能層4bが除去されるのに対して、第1の領域R1では導電層4a、機能層4bが残留する。したがって、第1の領域R1に形成された積層膜4は導電パターン部として機能するのに対して、第2の領域R2は上記導電パターン部間の絶縁領域として機能する。エッチングとしては、ウェットエッチングまたはドライエッチングを用いることができ、両者を組み合わせて用いるようにしてもよい。ウエットエッチングのエッチング液としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸および塩化第二鉄のうち1種類以上が用いることができる。また、シュウ酸、リン酸・酢酸・硝酸の混酸、硝酸第二セリウムアンモニウム水溶液をエッチング液として用いるようにしてもよい。ドライエッチングとしては、プラズマエッチング、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)を用いることができる。
【0082】
ここで、除去とは、(1)第2の領域R2から積層膜4を完全になくすこと、(2)第2の領域R2にて導電性を示さない程度まで積層膜2を不連続な状態(例えば島状の状態)にすること、または(3)第2の領域R2にて導電性を示さない程度の薄さまで積層膜4を薄くすることを意味する。
【0083】
具体的には、平面Sp1および波面Sw2上に形成された積層膜4の膜質や相状態等の違いを利用して、波面Sw2上に形成された積層膜4を実質的に除去するのに対して、平面Sp1上に形成された積層膜4を連続的につながるように残留させることが好ましい。これにより、平面Sp1および波面Sw2のうち平面Sp1上に選択的に導電パターン部を形成することができる。
【0084】
また、平面Sp1および波面Sw2上に形成された積層膜4の膜質や相状態等の違いを利用して、波面Sp上に形成された積層膜4を除去して島状などに不連続にするのに対して、平面Sp1上に形成された積層膜4を連続的につながるように残留させることが好ましい。これにより、平面Sp1および波面Sw2のうち平面Sp1上に選択的に導電パターン部を形成することができる。
【0085】
また、平面Sp1および波面Sw2上に形成された積層膜4の膜質や相状態等の違いを利用して、波面Sw2上に形成された積層膜4の厚さを平面Sp1上に形成された積層膜4の厚さに比して大幅に薄くすることが好ましい。これにより、平面Sp1および波面Sw2のうち平面Sp1上に選択的に導電パターン部を形成することができる。
【0086】
(洗浄工程)
次に、必要に応じて、エッチング処理を施した基体表面を洗浄する。
以上により、目的とする導電性素子1が得られる。
【0087】
第1の実施形態では、平面Sp1および波面Sw2を有する基体表面に対して、2層以上の層を積層して積層膜4を形成する。そして、平面Sp1および波面Sw2に形成した積層膜4の状態の違いを利用して、平面Sp1および波面Sw2の波面のうち、波面Sw2上に形成された積層膜4を除去するのに対して、平面Sp1上に形成された積層膜4を残すことにより、導電パターン部を形成する。したがって、精細かつ高スループットの導電性素子1を実現できる。
【0088】
<2.第2の実施形態>
[導電性素子の構成]
図10Aは、本発明の第2の実施形態に係る導電性素子の一構成例を示す平面図である。図10Bは、図10Aに示したB−B線に沿った断面図である。図10Cは、図10Bに示した第1の領域の一部を拡大して表す断面図である。図10Dは、図10Bに示した第2の領域の一部を拡大して表す断面図である。第2の実施形態に係る導電性素子1は、第1の領域R1に形成された第1の波面Sw1と、第2の領域R2に形成された第2の波面Sw2との違い(例えば振動の平均幅の違い)を利用して、第1の領域R1と第2の領域R2とに成膜された積層膜4のエッチング速度を変化させて、配線パターンなどを形成している点において、第1の実施形態とは異なっている。
【0089】
(第1の領域、第2の領域)
第1の領域R1の基体表面には第1の波面Sw1が形成され、この第1の波面Sw1上には積層膜4が連続的に形成されている。一方、第2の領域R2の基体表面には第2の波面Sw1が形成され、この第2の波面Sw2上には積層膜4が形成されていない状態となっている。第1の波面Sw1および第2の波面Sw2は、例えば可視光の波長以下の波長を有する波面である。したがって、第2の領域R2は、隣接する第2の領域R2に形成された積層膜4の間を絶縁するための絶縁領域として機能する。これに対して、第1の領域R1に連続的に形成された積層膜4は、第1の領域R1の延在方向に向かって導電性を有し、導電パターン部として機能する。
また、波面Sw1の平均波長λm1、および波面Sw2の平均波長λm2は、好ましくは100μm以下の範囲である。平均波長λm1、および平均波長λm2が100μmを超えると、インプリントと膜形成の際に段差、カバレッジに問題が発生し不具合が生じる。
【0090】
積層膜4は、第1の領域R1において第1の構造体31による反射防止効果を阻害しないように、第1の構造体31の表面形状に倣って形成され、第1の構造体31と積層膜4との表面形状がほぼ相似形状であることが好ましい。積層膜4の形成による屈折率プロファイルの変化を抑制し、優れた反射防止特性および/または透過特性を維持できるからである。積層膜4を構成する材料は、アモルファスと多結晶との混合状態であることが好ましい。第1の構造体31の高さを低くした場合にも、第1の構造体31の反射防止効果を阻害しないような膜厚で積層膜4を形成することができるからである。すなわち、積層膜4が第1の構造体31の形状に倣った形状を維持することができるからである。
【0091】
第2の波面Sw2の平均波長λm2に対する振動の平均幅Am2の比率(Am2/λm2)は、第1の波面Sw1の平均波長λm1に対する振動の平均幅Am1の比率(Am1/λm1)よりも大きいことが好ましい。これにより、光学特性と電気的選択性を両立できるからである。具体的には、比率(Am1/λm1)および比率(Am2/λm2)が、以下の関係を満たすことが好ましい。
0<(Am1/λm2)<(Am2/λm2)≦1.8
(但し、Am1:波面Sw1の振動の平均幅、Am2:波面Sw2の振動の平均幅、λm1:波面Sw1の平均波長、λm2:波面Sw2の平均波長)
比率(Am2/λm2)>1.8であると、波面Sw2を転写する際に剥離不良となり波面Sw2が破壊される傾向がある。
ここで、波面Sw1の比率(Am1/λm1)は、第1の実施形態における波面Sw2と同様にして測定したものである。
【0092】
波面Sw1、および波面Sw2の形状、波長および振動の幅はそれぞれ独立に選択することが可能である。具体的には例えば、波面Sw1、および波面Sw2はそれぞれ独立に、1次元的または2次元的な波面とすることが可能である。また、波面Sw1、および波面Sw2の波長および振動の幅はそれぞれ独立に、ナノオーダーまたはミクロンオーダーの波長および振動の幅とすることが可能である。
【0093】
第2の領域R2には積層膜4の一部が残留膜として完全に存在しないことが好ましいが、第2の領域R2が絶縁領域として機能する程度であれば残留膜として存在していてもよい。この場合、第1の領域R1に形成された積層膜4の面積は、第2の領域R2に形成された積層膜4またはその一部の面積よりも大きいことが好ましい。具体的には、第1の領域R1には積層膜4が連続的に形成されているのに対して、第2の領域R2には積層膜4またはその一部が島状などに不連続に形成されていることが好ましい。また、第2の領域R2に形成された積層膜4またはその一部の厚さが、実質的に導電性を示さないほどに、第1の領域R1に形成された積層膜4の厚さよりも薄く、第2の領域R2が絶縁領域として機能するようにしてもよい。
【0094】
(構造体)
第1の波面Sw1は、例えば可視光の波長以下の配置ピッチで多数の第1の構造体31が形成された凹凸面である。第2の波面Sw2は、例えば可視光の波長以下の配置ピッチで多数の第1の構造体32が形成された凹凸面である。第1の構造体32の平均アスペクト比(Hm1/Pm1)は、第2の構造体31の平均アスペクト比(Hm2/Pm2)に比して大きいことが好ましい。具体的には、第1の構造体31、および第2の構造体32が以下の関係を満たしていることが好ましい。
0<(Hm1/Pm1)<(Hm2/Pm2)≦1.8
(但し、Hm1:第1の構造体31の平均高さ、Hm2:第2の構造体32の平均高さ、Pm1:第1の構造体31の平均配置ピッチ、Pm2:第2の構造体32の平均配置ピッチ)
比率(Hm2/Pm2)>1.8であると、第2の構造体32を転写する際に剥離不良となり構造体32が破壊される傾向がある。
【0095】
ここで、第1の構造体31のアスペクト比(Hm1/Pm1)、および第2の構造体32のアスペクト比(Hm2/Pm2)は、第1の実施形態における構造体3のアスペクト比(Hm/Pm)と同様にして測定したものである。
第1の構造体31、および第2の構造体32において、上記以外のことは第1の実施形態における構造体3と同様とすることができる。なお、第1の構造体31、および第2の構造体32の配置パターンや形状などは同一である必要はなく、両構造体が異なる配置パターンや形状などをとるようにしてもよい。
【0096】
[ロール原盤の構成]
図11Aは、基体2を作製するためのロール原盤の一部を拡大して表す斜視図である。図11Bは、図11Aに示したロール原盤の一部を拡大して表す断面図である。第2の実施形態に係るロール原盤11は、第1の領域R1および第2の領域R2の両領域にそれぞれ、第1の波面Sw1および第2の波面Sw2を備える点において、第1の実施形態のものとは異なっている。
【0097】
ロール原盤11の第1の波面Sw1は、例えば可視光の波長以下のピッチで凹状の第1の構造体121を配列することにより形成されている。ロール原盤11の第2の波面Sw2は、例えば可視光の波長以下のピッチで凹状の第2の構造体122を配列することにより形成されている。ロール原盤11の第1の波面Sw1、第2の波面Sw2はそれぞれ、基体2の第1の波面Sw1、第2の波面Sw2の凹凸を反転した形状を有している。
【0098】
ロール原盤11の第1の領域R1および第2の領域R2はそれぞれ、基体2の第1の領域R1および第2の領域R2に対応している。すなわち、ロール原盤11の第1の領域R1に形成された凹状の構造体121は、基体2の第1の領域R1に形成された凸状の構造体31を形成するためのものである。ロール原盤11の第2の領域R2に形成された凹状の構造体122は、基体2の第2の領域R2に形成された凸状の構造体32を形成するためのものである。第2の構造体122のアスペクト比は、第1の構造体121のアスペクト比に比して大きいことが好ましい。
【0099】
[導電性素子の製造方法]
第2の実施形態におけるエッチング工程では、積層膜4が形成された基体表面に対してエッチング処理を施すことにより、第2の領域R2では積層膜4が除去されるのに対して、第1の領域R1では積層膜4が残留する。具体的には、第1の波面Sw1および第2の波面Sw2上に形成された積層膜4の膜質や相状態等の違いを利用して、第2の波面Sw2上に形成された積層膜4を実質的に除去するのに対して、第1の波面Sw1上に形成された積層膜4を連続的につながるように残留させることが好ましい。これにより、第1の波面Sw1および第2の波面Sw2のうち第1の波面Sw1上に選択的に導電パターン部を形成することができる。
【0100】
また、第1の波面Sw1および第2の波面Sw2上に形成された積層膜4の膜質や相状態等の違いを利用して、第2の波面Sw2上に形成された積層膜4を除去して島状などに不連続にするのに対して、第1の波面Sw1上に形成された積層膜4を連続的につながるように残留させることが好ましい。これにより、第1の波面Sw1および第2の波面Sw2のうち第1の波面Sw1上に選択的に導電パターン部を形成することができる。
【0101】
また、第1の波面Sw1および第2の波面Sw2上に形成された積層膜4の膜質や相状態等の違いを利用して、第2の波面Sw2上に形成された積層膜4の厚さを第1の波面Sw1上に形成された積層膜4の厚さに比して大幅に薄くすることが好ましい。これにより、第1の波面Sw1および第2の波面Sw2のうち第1の波面Sw1上に導電パターン部を選択的に形成することができる。
【0102】
第2の実施形態では、第1の領域R1および第2の領域R2の両領域にそれぞれ構造体31および構造体32を形成しているので、導電性素子1の反射防止特性を向上することができる。このような構成とする場合、導電パターン部として機能する第1の領域R1の積層膜4は、第1の領域R1に形成された構造体31の形状に倣った形状とすることが好ましい。これにより、反射防止特性および/または透過特性の効果の低下を抑制することができるからである。
【0103】
変調(例えば振幅変調および/または周波数変調)が施された波面を基体表面に形成し、その基体表面上に積層膜4を形成することで、基体2の波面の変調の違いに応じて、積層膜4の状態を変化させることができる。したがって、基体2の波面の変調の違いに応じて、エッチング溶液に対する積層膜4の溶解度を変化させることができる。すなわち、基体2の波面の変調の違いを利用して、基体表面に所望の導電パターン部を形成することができる。
【0104】
基体表面の波面をナノ構造体により形成した場合には、視認性および光学特性を向上することもできる。光学特性を劣化させずに所望の電気抵抗を実現することができる。
【0105】
導電層からなる配線を基体表面に形成する従来の情報入力装置(例えば、デジタル式抵抗タッチパネルや静電容量式タッチパネルなど)では、導電層と基材とは反射率が異なるため、配線が見えて表示品質が劣化する傾向がある。これに対して、本発明の実施形態に係る情報入力装置では、積層膜4の有無にかかわらず、低反射および高透過率を実現しているため、配線の視認を抑制できる。
【0106】
<3.第3の実施形態>
図12Aは、本発明の第4の実施形態に係る導電性素子の一構成例を示す断面図である。第3の実施形態に係る導電性素子1は、基体2の両主面に第1の領域R1および第2の領域R2を設定し、両領域のうち第1の領域R1にのみ連続的に積層膜4を形成することで、基体両面に導電パターン部を形成している点において、第1の実施形態とは異なっている。また、図12Bに示すように、基体2に第1の領域R1にスルーホール(貫通孔)を形成し、このスルーホールに導体インクなどの導電材料を埋め込み、基体2の両面に形成された回路などの導電パターン部を電気的に接続するようにしてもよい。
【0107】
第3の実施形態では、基体2の両面に導電パターン部を形成しているので、第1の実施形態よりも多くの回路などを導電性素子1に搭載することが可能となる。
【0108】
<4.第4の実施形態>
図13Aは、本発明の第4の実施形態に係る導電性素子の一構成例を示す平面図である。図13Bは、図13Aに示したB−B線に沿った断面図である。図13Cは、図13Bに示した第1の領域の一部を拡大して表す断面図である。図13Dは、図13Bに示した第2の領域の一部を拡大して表す断面図である。第4の実施形態に係る導電性素子1は、凹部である構造体3が基体表面の第2の領域R2に多数配列されている点において、第1の実施形態のものとは異なっている。
この第4の実施形態において、上記以外のことは、第1の実施形態と同様である。
【0109】
この第4の実施形態では、第1の実施形態における凸形状の構造体3の形状を反転して凹形状としているので、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0110】
<5.第5の実施形態>
図14は、本発明の第5の実施形態に係る液晶表示素子の一構成例を示す斜視図である。図14に示すように、液晶表示素子は、パッシブマトリックス駆動方式(単純マトリックス駆動方式ともいう。)の表示素子であり、所定間隔を離して対向配置された第1の基材101および第2の基材111と、第1の基材101および第2の基材111の間に配置された液晶層121とを備える。
【0111】
第1の基材101の両主面のうち、第2の基材111に対向する一主面には、直線状の第1の領域R1および第2の領域R2が交互に繰り返し設定されている。第1の領域R1および第2の領域R2における第1の基材101の表面構造は、上述の第1〜第4の実施形態のいずれかの導電性素子における基体の表面構造と同様である。例えば、第1の領域R1における第1の基材表面は、可視光の波長以下の配置ピッチで構造体が多数形成されて波面とされ、残留膜が島状などに不連続的に形成されている。これに対して、第2の領域R2には、構造体が形成されず平面状とされ、積層膜が連続的に形成されている。したがって、第1の基材101の両主面のうち、第2の基材111に対向する一主面には、連続的に形成された積層膜からなる複数の横(X)電極(第1の電極)102がストライプ状に形成されている。
【0112】
第2の基材111の両主面のうち、第1の基材101に対向する一主面には、直線状の第1の領域R1および第2の領域R2が交互に繰り返し設定されている。第1の領域R1および第2の領域R2における第2の基材111の表面構造は、上述の第1〜第4の実施形態のいずれかの導電性素子における基体の表面構造と同様である。例えば、第1の領域R1における第2の基材表面は、可視光の波長以下の配置ピッチで構造体が多数形成されて波面とされ、残留膜が不連続的に島状などに形成されている。これに対して、第2の領域R2には、構造体が形成されず平面とされ、積層膜が連続的に形成されている。したがって、第2の基材111の両主面のうち、第1の基材101に対向する一主面には、連続的に形成された積層膜からなる縦(Y)電極(第2の電極)112がストライプ状に多数形成されている。
【0113】
第1の基材101および第2の基材111の第1の領域R1および第2の領域R2は、互いに直交する関係にある。すなわち、第1の基材101の横電極102と第2の基材111の縦電極112とは互いに直交する関係にある。
【0114】
第5の実施形態では、例えば波面の有無または構造体の有無を利用して液晶表示素子の電極を作製することができる。また、例えば波面の波長または構造体の配置ピッチを可視光の波長以下とした場合には、液晶表示素子の反射防止特性および/または透過特性を向上することができる。
【0115】
また、上述の第2の実施形態のように、第1の領域R1および第2の領域R2のそれぞれにアスペクト比などの異なる構造体を形成するようにしてもよい。これにより、液晶表示素子の反射防止特性および/または透過特性をさらに向上することができる。このような構成とする場合、横電極102および縦電極112として機能する第2の領域R2の透明積層膜は、第2の領域R2に形成された構造体の形状に倣った形状とすることが好ましい。これにより、構造体による反射防止および/または透過特性の効果の低下を抑制することができるからである。
【0116】
<6.第6の実施形態>
図15は、本発明の第6の実施形態に係るタッチパネルを備える表示装置の一構成例を示す斜視図である。図15に示すように、表示装置202上にタッチパネル(情報入力装置)201が設けられている。表示装置202とタッチパネル201とは、例えば粘着剤を介して貼り合わされている。また、タッチパネル201の表面にフロントパネル(表面部材)203をさらに備えるようにしてもよい。タッチパネル201とフロントパネル(表面部材)203とは、例えば粘着剤により貼り合わされる。
【0117】
表示装置201としては、例えば、液晶ディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(Plasma Display Panel:PDP)、エレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence:EL)ディスプレイ、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(Surface-conduction Electron-emitter Display:SED)などの各種表示装置を用いることができる。タッチパネル302は、例えば、抵抗膜方式または静電容量方式のタッチパネルである。抵抗膜方式のタッチパネルとしては、例えば、マトリックス抵抗膜方式のタッチパネルが挙げられる。静電容量方式のタッチパネルとしては、例えば、Wire Sensor方式またはITO Grid方式の投影型静電容量方式タッチパネルが挙げられる。
【0118】
(第1の構成例)
図16Aは、本発明の第6の実施形態に係るタッチパネルの第1の構成例を示す斜視図である。このタッチパネル201は、マトリックス抵抗膜方式のタッチパネルであり、ドットスペーサ(図示省略)を介して所定間隔を離して対向配置された第1の基材211と第2の基材221とを備える。
【0119】
図16Bは、第1の基材の一構成例を示す分解斜視図である。なお、第2の基材221は第1の基材211とほぼ同様の構成を有するので、分解斜視図の記載を省略する。第1の基材211の両主面のうち、第2の基材221に対向する一主面には、矩形状の第1の領域R1および第2の領域R2が交互に繰り返し設定されている。第1の領域R1および第2の領域R2における第1の基材211の表面構造は、上述の第1〜第4の実施形態のいずれかの導電性素子における基体の表面構造と同様である。例えば、第1の領域R1における第1の基材表面は、可視光の波長以下の配置ピッチで構造体が多数形成されて波面とされ、残留膜が島状などに不連続的に形成されている。これに対して、第2の領域R2における第1の基材表面は、構造体が形成されず平面状とされ、積層膜が連続的に形成されている。したがって、第1の基材211の両主面のうち、第2の基材221に対向する一主面には、連続的に形成された積層膜からなる複数の横(X)電極(第1の電極)212がストライプ状に形成されている。
【0120】
第2の基材221の両主面のうち、第1の基材211に対向する一主面には、矩形状の第1の領域R1および第2の領域R2が交互に繰り返し設定されている。第1の領域R1および第2の領域R2における第2の基材221の表面構造は、上述の第1〜第4の実施形態のいずれかの導電性素子における基体の表面構造と同様である。例えば、第1の領域R1における第2の基材表面は、可視光の波長以下の配置ピッチで構造体が多数形成されて波面とされ、残留膜が島状などに不連続的に形成されている。これに対して、第2の領域R2における第2の基材表面は、構造体が形成されず平面状とされ、積層膜が連続的に形成されている。したがって、第2の基材221の両主面のうち、第1の基材211に対向する一主面には、連続的に形成された積層膜からなる縦(Y)電極(第2の電極)222がストライプ状に多数形成されている。
【0121】
第1の基材211および第2の基材221の第1の領域R1および第2の領域R2は、互いに直交する関係にある。すなわち、第1の基材211の横電極212と第2の基材2211の縦電極221とは互いに直交する関係にある。
【0122】
(第2の構成例)
図17Aは、本発明の第6の実施形態に係るタッチパネルの第2の構成例を示す斜視図である。このタッチパネルは、ITO Grid方式の投影型静電容量方式タッチパネルであり、重ね合わされた第1の基材231と第2の基材241とを備える。
【0123】
図17Bは、第1の基材の一構成例を示す分解斜視図である。なお、第2の基材241は第1の基材231とほぼ同様の構成を有するので、分解斜視図の記載を省略する。第1の基材231の両主面のうち、第2の基材241に対向する一主面には、第1の領域R1および第2の領域R2が交互に繰り返し設定され、隣り合う第1の領域R1の間は第2の領域R2により隔てられている。第2の基材241の両主面のうち、第2の基材231に対向する一主面には、第1の領域R1および第2の領域R2が交互に繰り返し設定され、隣り合う第1の領域R1の間は第2の領域R2により隔てられている。第1の領域R1および第2の領域R2における第1の基材231および第2の基材241の表面構造は、上述の第1〜第4の実施形態のいずれかの導電性素子における基体の表面構造と同様である。
【0124】
第1の基材231の第1の領域R1は、所定形状の単位領域C1をX軸方向に繰り返し連結してなり、第2の領域R2は、所定形状の単位領域C2をX軸方向に繰り返し連結してなる。第2の基材241の第1の領域R1は、所定形状の単位領域C1をY軸方向に繰り返し連結してなり、第2の領域R2は、所定形状の単位領域C2をY軸方向に繰り返し連結してなる。単位領域C1および単位領域C2の形状としては、例えばダイヤモンド形状(菱形形状)、三角形状、四角形状などが挙げられるが、これらの形状に限定されるものではない。
【0125】
第1の領域R1における第1の基材表面または第2の基材表面は、例えば可視光の波長以下の配置ピッチで構造体が多数形成されて波面とされ、例えば残留膜が島状などに不連続的に形成されている。これに対して、第2の領域R2における第1の基材表面または第2の基材表面は、構造体が形成されず平面状とされ、積層膜が連続的に形成されている。したがって、第1の基材231の両主面のうち、第2の基材241に対向する一主面には、積層膜からなる複数の横(X)電極(第1の電極)232が配列されている。また、第2の基材241の両主面のうち、第1の基材231に対向する一主面には、積層膜からなる複数の縦(Y)電極(第2の電極)242が配列されている。横電極232および縦電極242は、第2の領域R2と同様の形状を有する。
【0126】
第1の基材231の横電極232と第2の基材241の縦電極242とは互いに直交する関係にある。第1の基材231と第2の基材241とを重ね合わせた状態において、第1の基材231の第1の領域R1と、第2の基材241の第2の領域R2とが重ね合わされ、第1の基材231の第2の領域R2と、第2の基材241の第1の領域R1とが重ね合わされる。
【0127】
第6の実施形態では、例えば波面の有無または構造体の有無を利用してタッチパネル201の電極を作製することができる。また、例えば波面の波長または構造体の配置ピッチを可視光の波長以下とした場合には、タッチパネル201の反射防止特性および/または透過特性を向上することができる。
【0128】
また、上述の第2の実施形態のように、第1の領域R1および第2の領域R2のそれぞれにアスペクト比などの異なる構造体を形成するようにしてもよい。これにより、タッチパネル201の反射防止特性および/または透過特性をさらに向上することができる。このような構成とする場合、電極として機能する第1の領域R1の積層膜は、第1の領域R1に形成された構造体の形状に倣った形状とすることが好ましい。これにより、構造体による反射防止効果および/または透過特性向上の効果の低下を抑制することができるからである。
【0129】
<7.第7の実施形態>
図18Aは、本発明の第10の実施形態に係るICカードの一構成例を示す平面図である。図18Bは、図18Aに示したICカードの一部を拡大して表す平面図である。このICカードは、いわゆる非接触型ICカードであり、基材301と、アンテナコイル302と、ICチップ303とを備える。アンテナコイル302の両端がICチップ303に対して接続されている。また、基材301の両面には外装材(図示省略)が設けられている。
【0130】
基材301の形状としては、フィルム状、シート状、基板状を用いることができるが、特にこれらの材料に限定されるものではなく、ICカード1に求められる特性に応じて任意に選択し使用することが可能である。基材102の材料としては、耐久性や利便性などの観点から、フレキシブル性を有する樹脂材料を用いることが好ましい。このような樹脂材料としては、例えば、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリイミド(PI)、ポリエステルを用いることができるが、特にこれらの材料に限定されるものではなく、従来公知の樹脂材料からICカードに求められる特性に応じて任意に選択し使用することが可能である。
【0131】
基材301の一主面の周縁部には、例えば、第1の領域R1と第1の領域R2とが交互に螺旋状に形成されている。第1の領域R1および第2の領域R2における基材301の表面構造は、上述の第1〜第4の実施形態のいずれかの導電性素子における基体の表面構造と同様である。例えば、第1の領域R1における基材表面は、微細ピッチで構造体が多数形成されて波面とされ、残留膜が島状などに不連続的に形成されている。これに対して、第2の領域R2における基材表面は、構造体が形成されず平面状とされ、積層膜が連続的に形成されている。したがって、基材301の一主面の周縁部には、連続的に形成された積層膜からなるアンテナコイル302が第2の領域R2の形状に倣って形成されている。なお、上述の第2の実施形態のように、第1の領域R1および第2の領域R2のそれぞれにアスペクト比などの異なる構造体を形成するようにしてもよい。
【0132】
外装材は、ICカードの表面および裏面を構成するものであり、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチルテレフタレート)、PEG(ポリエチレングリコール、配向PETなどの高分子材料を主成分とするが、特にこれらの材料に限定されるものではなく、従来公知の樹脂材料からICカードに求められる特性に応じて任意に選択し使用することが可能である。
【0133】
アンテナコイル302は、基材301上に複数回巻回されて形成されたループコイル形状の電磁誘導コイルであり、その両端はICチップ303に接続されている。アンテナコイル103は、リーダ/ライタから発せられる交流磁界を受信して交流電圧を誘起し、その交流電圧をICチップ303に供給する。
【0134】
ICチップ303は、アンテナコイル302から供給される電力により駆動し、ICカード1内の各部を制御する。例えば、ICチップ303は、アンテナコイル5を介してリーダ/ライタと通信を行う。具体的には、リーダ/ライタとの相互認証やデータのやり取りなどを行う。
【0135】
第7の実施形態では、例えば波面の有無または構造体の有無を利用してICカードのアンテナコイル302を作製することができる。したがって、エッチングなどを用いずにアンテナコイル302を作製することができるので、ICカードの生産性を向上することができる。
【0136】
<8.第8の実施形態>
図19Aは、本発明の第8の実施形態に係る表示装置の構成の一例を示す断面図である。図19Bは、図19Aに示した配線領域を拡大して表す拡大断面図である。図19Cは、図19Aに示した非配線領域を拡大して表す拡大断面図である。第8の実施形態において、第1の実施形態と同一の箇所または対向する箇所には同一の符号を付す。この表示装置400は、いわゆるマイクロカプセル電気泳動方式の電子ペーパーであり、第1の導電性素子401と、第1の導電性素子401と対向配置された第2の導電性素子402と、これらの両素子間に設けられたマイクロカプセル層(媒質層)403とを備える。ここでは、マイクロカプセル電気泳動方式の電子ペーパーに対して本発明を適用した例について説明するが、電子ペーパーはこの例に限定されるものではなく、対向配置された導電性素子間に媒質層が設けられた構成であれば本発明は適用可能である。ここで、媒質には液体および固体以外に、空気などの気体も含まれる。また、媒質には、カプセル、顔料および粒子などの部材が含まれていてもよい。マイクロカプセル電気泳動方式以外に本発明を適用可能な電子ペーパーとしては、例えばツイストボール方式、サーマルリライタブル方式、トナーディスプレイ方式、In−Plane型電気泳動方式、電子粉粒方式の電子パーパーなどが挙げられる。
【0137】
マイクロカプセル層403は、多数のマイクロカプセル431を含んでいる。マイクロカプセル内には、例えば、黒色粒子おび白色粒子が分散された透明な液体(分散媒)が封入されている。
【0138】
第1の導電性素子401は、第2の導電性素子402と対向する側に平面Sp1および波面Sw2を有する基体2と、この基体2の波面Sw2上に形成された積層膜4とを備える。また、必要に応じて、粘着剤などの貼合層411を介して、基体2をガラスなどの支持体412に貼り合わせるようにしてもよい。第2の導電性素子402は、第1の導電性素子401と対向する側に平面Sp1および波面Sw2を有する基体2と、この基体2の波面Sw2上に形成された積層膜4とを備える。
【0139】
第1の導電性素子401、および第2の導電性素子402が有する積層膜4は、電子ペーパー400の駆動方式に応じて所定の電極パターン状に形成されている。駆動方式としては、例えば単純マトリックス駆動方式、アクティブマトリックス駆動方式、セグメント駆動方式などが挙げられる。
この第8の実施形態において、上記以外のことは第1の実施形態と同様である。
【実施例】
【0140】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0141】
以下の実施例、比較例および参考例では、導電性シートの表面抵抗は4端子抵抗測定機にて測定した。なお、プローブ先端針の径はR100μmとし、針のピッチは1mmとした。
【0142】
(参考例1)
(転写工程)
まず、図20Aに示すように、平面領域(第1の領域)R1とナノ構造体形成領域(第2の領域)R2とが成形面にストライプ状に形成された石英マスタを準備した。次に、この石英マスタの成形面上に紫外線硬化樹脂を塗布し、易接着層付きPETシートを密着させて、紫外線を照射し硬化させながら、PETシートを剥離した。これにより、PETシート表面のうち、ナノ構造体形成領域(第2の領域)R2には凸状のナノ構造体が多数形成されるのに対して、平面領域(第1の領域)R1には平坦面が形成された光学シートが得られた。構造体の配置ピッチは250nm、構造体の高さは200nm、構造体の形状は円錐台、構造体の配列は六方配置であった。
【0143】
(成膜工程)
次に、スパッタリング法により、光学シートの成形面上にITO層を形成した。到達真空度は0.00015Pa、成膜時真空度は0.24Paとし、成膜時にはArガスとO2ガスとを導入し、その混合比率はAr:O2=200:13とした。また、膜厚が平板換算で30nmとなるように成膜条件を調整した。なお、平板換算膜厚は、構造体頂部の膜厚とほぼ等しくなる。
【0144】
(アニール工程)
次に、ITO層を形成した光学シートに対して、150℃、30分間の大気中アニールを施した。これにより、ITO層の多結晶化が促進された。次に、この促進の状態を確認すべく、X線回折(X‐ray diffraction:XRD)でITO層を測定したところ、In2O3のピークが確認された。
【0145】
(エッチング工程)
次に、アニール処理を施した光学シートを、PH=3程度の溶液に20秒間浸漬させた。
【0146】
(洗浄工程)
次に、エッチング処理を施した光学シートを純水により洗浄した。
以上により、目的とする透明導電性シートが得られた。
【0147】
(導通/非導通評価)
上述のようにして得られた実施例1に係る透明導電性シートの表面について、テスターを用いて導通および非導通を、図20Bに示すポイントで評価した。その評価結果を表1に示す。
【0148】
表1は、参考例1に係る透明導電性シートの評価結果を示す。
【表1】
【0149】
表1から以下のことがわかる。
透明導電性シート表面のうちナノ構造体形成領域(第2の領域)R2は絶縁状態となるのに対して、平面領域(第1の領域)R1は導通状態となる。したがって、インプリント工程、成膜工程およびエッチング工程を順次行うだけで、配線や電極などの所望の導電パターン部を基体表面に形成できる。すなわち、スループットを向上することができる
【0150】
(実施例1−1)
(転写工程)
まず、平面(第1の波面)を有する第1の領域と、波面(第2の波面)を有する第2の領域とが同一面上に交互にストライプ状に形成された石英マスタを作製した。
次に、この石英マスタの成形面上に紫外線硬化樹脂を塗布し、易接着層付きPETシートを密着させて、紫外線を照射し硬化させながら、PETシートを剥離した。これにより、第1の領域と第2の領域とが転写された光学シート(ナノインプリントフィルム)が作製された。
【0151】
(形状測定)
次に、作製した光学シートの転写面の平均波長λmおよび振動の平均幅Amを測定し、それらの測定値から比率(Am/λm)を求めた。その結果を表2に示す。
【0152】
(成膜工程)
次に、スパッタリング法により、光学シートの成形面上にITO層を形成した。
以下に、ITO層成膜時における成膜条件を示す。
到達真空度:0.00015Pa
成膜時真空度:0.24Pa
ガス種:ArガスとO2ガスとの混合ガス
混合ガスの混合比率(体積比率):Ar:O2=200:13
平板換算膜厚:36nm
ここで、平板換算膜厚は、光学シート表面にITO層を形成した場合と同様の成膜条件にて、平板上にITO層を形成したときの膜厚であり、波面頂部の膜厚とほぼ等しくなる。
【0153】
次に、真空状態を保持したまま、スパッタリング法により、ITO層上にAg層を形成した。
以下に、Ag層成膜時における成膜条件を示す。
成膜時真空度:0.11Pa
ガス種:Arガス
ガス流量:100sccm
平板換算膜厚:200nm
【0154】
(表面抵抗測定)
次に、上述のようにして作製した光学シートの表面抵抗を測定した。その結果を表2に示す。
【0155】
(除去工程)
次に、光学シートをPH=3程度の溶液に20秒間浸漬させた。
【0156】
(洗浄工程)
次に、純水にて光学シートを洗浄した。
以上により、目的とする導電性シートが作製された。
【0157】
(表面抵抗測定)
次に、上述のようにして作製した導電性シートの表面抵抗を測定した。その結果を表2に示す。
【0158】
(実施例1−2)
(転写工程)
まず、波面(第1の波面)を有する第1の領域と、平面(第2の波面)を有する第2の領域とが同一面上に交互にストライプ状に形成された石英マスタを作製した。
次に、この石英マスタの成形面上に紫外線硬化樹脂を塗布し、易接着層付きPETシートを密着させて、紫外線を照射し硬化させながら、PETシートを剥離した。これにより、第1の領域と第2の領域とが転写された光学シート(ナノインプリントフィルム)が作製された。
【0159】
(形状測定)
次に、作製した光学シートの転写面の平均波長λmおよび振動の平均幅Amを測定し、それらの測定値から比率(Am/λm)を求めた。その結果を表3に示す。
【0160】
(成膜工程)
次に、スパッタリング法により、光学シートの成形面上にITO層を形成した。
以下に、ITO層成膜時における成膜条件を示す。
到達真空度:0.00015Pa
成膜時真空度:0.24Pa
ガス種:ArガスとO2ガスとの混合ガス
混合ガスの混合比率(体積比率):Ar:O2=200:13
平板換算膜厚:40nm
ここで、平板換算膜厚は、光学シート表面にITO層を形成した場合と同様の成膜条件にて、平板上にITO層を形成したときの膜厚であり、波面頂部の膜厚とほぼ等しくなる。
【0161】
次に、真空状態を保持したまま、スパッタリング法により、ITO層上にAg層を形成した。
以下に、Ag層成膜時における成膜条件を示す。
成膜時真空度:0.11Pa
ガス種:Arガス
ガス流量:100sccm
平板換算膜厚:200nm
【0162】
(表面抵抗測定)
次に、上述のようにして作製した光学シートの表面抵抗を測定した。その結果を表3に示す。
【0163】
(除去工程)
次に、光学シートをPH=3程度の溶液に60秒間浸漬させた。
【0164】
(洗浄工程)
次に、純水にて光学シートを洗浄した。
以上により、目的とする導電性シートが作製された。
【0165】
(表面抵抗測定)
次に、上述のようにして作製した導電性シートの表面抵抗を測定した。その結果を表3に示す。
【0166】
(表面観察)
次に、上述のようにして作製した導電性シートの表面を光学顕微鏡を用いて観察した。その結果を図21に示す。
【0167】
表2は、実施例1−1に係る導電性シートの測定結果を示す。
【表2】
【0168】
表3は、実施例1−2に係る導電性シートの測定結果を示す。
【表3】
【0169】
表2、表3から以下のことがわかる。
導電性シート表面のうち、波面を有する第2の領域では、除去工程においてITO層およびAg層が除去され絶縁状態となるのに対して、平面を有する第1の領域では、除去工程においてITO層およびAg層が除去されず残り導通状態が維持される。
したがって、電気抵抗を下げるため膜構成を多層構造とした場合でも、除去選択性を確保でき、平面領域ではITO層およびAg層を残すことができる。すなわち、低抵抗な配線を容易に作製することができる。
【0170】
(実施例1−3)
まず、第1の波面を有する第1の領域と、第2の波面を有する第2の領域とが同一面上に交互にストライプ状に形成された石英マスタを作製した。
次に、この石英マスタの成形面上に紫外線硬化樹脂を塗布し、易接着層付きPETシートを密着させて、紫外線を照射し硬化させながら、PETシートを剥離した。これにより、第1の領域と第2の領域と転写された光学シート(ナノインプリントフィルム)が作製された。
【0171】
(形状測定)
次に、作製した光学シートの転写面の平均波長λmおよび振動の平均幅Amを測定し、それらの測定値から比率(Am/λm)を求めた。その結果を表4に示す。
【0172】
(成膜工程)
次に、スパッタリング法により、光学シートの成形面上にITO層を形成した。
以下に、ITO層成膜時における成膜条件を示す。
到達真空度:0.00015Pa
成膜時真空度:0.24Pa
ガス種:ArガスとO2ガスとの混合ガス
混合ガスの混合比率(体積比率):Ar:O2=200:13
平板換算膜厚:36nm
ここで、平板換算膜厚は、光学シート表面にITO層を形成した場合と同様の成膜条件にて、平板上にITO層を形成したときの膜厚であり、構造体頂部の膜厚とほぼ等しくなる。
【0173】
次に、真空状態を保持したまま、スパッタリング法により、ITO層上にAg層を形成した。
以下に、Ag層成膜時における成膜条件を示す。
成膜時真空度:0.11Pa
ガス種:Arガス
ガス流量:100sccm
平板換算膜厚:200nm
【0174】
(表面抵抗測定)
次に、上述のようにして作製した光学シートの表面抵抗を測定した。その結果を表4に示す。
【0175】
(除去工程)
次に、光学シートをPH=3程度の溶液に20秒間浸漬させた。
【0176】
(洗浄工程)
次に、純水にて光学シートを洗浄した。
以上により、目的とする導電性シートが作製された。
【0177】
(表面抵抗測定)
次に、上述のようにして作製した導電性シートの表面抵抗を測定した。その結果を表4に示す。
【0178】
表4は、実施例1−3に係る導電性シートの測定結果を示す。
【表4】
【0179】
表4から以下のことがわかる。
導電性シート表面のうち、高い比率(Am/λm=0.76)を有する第2の領域では、除去工程においてITO層およびAg層が除去され絶縁状態となる。これに対して、低い比率(Am/λm=0.6)を有する第1の領域では、除去工程においてITO層およびAg層が除去されず残り導通状態が維持される。
したがって、第1の領域と第2の領域との両領域に波面を形成した場合でも、比率(Am/λm)の大きさを調整することで、除去選択性を確保でき、低い比率(Am/λm=0.6)を有する第1の領域ではITO層およびAg層を残すことができる。すなわち、低抵抗な配線を容易に作製することができる。
【0180】
(実施例2−1)
(転写工程)
まず、波面(第1の波面)を有する第1の領域と、平面(第2の波面)を有する第2の領域とが同一面上に交互にストライプ状に形成された石英マスタを作製した。
次に、この石英マスタの成形面上に紫外線硬化樹脂を塗布し、易接着層付きPETシートを密着させて、紫外線を照射し硬化させながら、PETシートを剥離した。これにより、第1の領域と第2の領域とが転写された光学シート(ナノインプリントフィルム)が作製された。
【0181】
(形状測定)
次に、作製した光学シートの転写面の平均波長λmおよび振動の平均幅Amを測定し、それらの測定値から比率(Am/λm)を求めた。その結果を表5に示す。
【0182】
(成膜工程)
次に、スパッタリング法により、光学シートの成形面上にITO層を形成した。
以下に、ITO層成膜時における成膜条件を示す。
到達真空度:0.00015Pa
成膜時真空度:0.24Pa
ガス種:ArガスとO2ガスとの混合ガス
混合ガスの混合比率(体積比率):Ar:O2=200:13
平板換算膜厚:36nm
ここで、平板換算膜厚は、光学シート表面にITO層を形成した場合と同様の成膜条件にて、平板上にITO層を形成したときの膜厚であり、構造体頂部の膜厚とほぼ等しくなる。
【0183】
次に、真空状態を保持したまま、スパッタリング法により、ITO層上にSiO2層を形成した。
以下に、SiO2層成膜時における成膜条件を示す。
成膜時真空度:0.28Pa
ガス種:ArガスとO2ガスとの混合ガス
Arガス流量:100sccm
O2ガス流量:180sccm
平板換算膜厚:5nm
【0184】
(表面抵抗測定)
次に、上述のようにして作製した光学シートの表面抵抗を測定した。その結果を表5に示す。
【0185】
(除去工程)
次に、光学シートをPH=3程度の溶液に60秒間浸漬させた。
【0186】
(洗浄工程)
次に、純水にて光学シートを洗浄した。
以上により、目的とする導電性シートが作製された。
【0187】
(表面抵抗測定)
次に、上述のようにして作製した導電性シートの表面抵抗を測定した。その結果を表5に示す。
【0188】
(比較例2−1)
SiO2層の形成を省略する以外は実施例2−1と同様にして光学シートを作製した。また、除去工程前後における光学シートの表面抵抗も実施例2−1と同様にして測定した。その結果を表6に示す。
【0189】
表5は、実施例2−1に係る導電性シートの測定結果を示す。
【表5】
【0190】
表6は、比較例2−1に係る光学シートの測定結果を示す。
【表6】
【0191】
表5、表6から以下のことがわかる。
実施例2−1において、導電性シート表面のうち、波面を有する第2の領域では、除去工程においてITO層およびSiO2層が除去され絶縁状態となるのに対して、平面を有する第1の領域では、除去工程においてITO層およびSiO2層が除去されず残り導通状態が維持される。
SiO2層のみを形成した比較例2−1においては、60秒の除去工程を経ると、波面および平面に関われず、ITO層およびSiO2層が除去され絶縁状態となる。
したがって、金属層であるAg層の代わりに、レジスト層であるSiO2層を用いた多層構造を採用した場合にも、除去選択性を確保でき、平面領域ではITO層およびSiO2層を残すことができる。また、SiO2層をITO層上に積層することで、除去工程におけるITO層の耐性を向上し、除去選択性を飛躍的に向上することができる。
【0192】
(実施例2−2)
まず、第1の波面を有する第1の領域と、第2の波面を有する第2の領域とが同一面上に交互にストライプ状に形成された石英マスタを作製した。
次に、この石英マスタの成形面上に紫外線硬化樹脂を塗布し、易接着層付きPETシートを密着させて、紫外線を照射し硬化させながら、PETシートを剥離した。これにより、第1の領域と第2の領域と転写された光学シート(ナノインプリントフィルム)が作製された。
【0193】
(形状測定)
次に、作製した光学シートの転写面の平均波長λmおよび振動の平均幅Amを測定し、それらの測定値から比率(Am/λm)を求めた。その結果を表7に示す。
【0194】
(成膜工程)
次に、スパッタリング法により、光学シートの成形面上にITO層を形成した。
以下に、ITO層成膜時における成膜条件を示す。
到達真空度:0.00015Pa
成膜時真空度:0.24Pa
ガス種:ArガスとO2ガスとの混合ガス
混合ガスの混合比率(体積比率):Ar:O2=200:13
平板換算膜厚:36nm
ここで、平板換算膜厚は、光学シート表面にITO層を形成した場合と同様の成膜条件にて、平板上にITO層を形成したときの膜厚であり、構造体頂部の膜厚とほぼ等しくなる。
【0195】
次に、真空状態を保持したまま、スパッタリング法により、ITO層上にSiO2層を形成した。
以下に、SiO2層成膜時における成膜条件を示す。
成膜時真空度:0.28Pa
ガス種:ArガスとO2ガスとの混合ガス
Arガス流量:100sccm
O2ガス流量:180sccm
平板換算膜厚:5nm
【0196】
(表面抵抗測定)
次に、上述のようにして作製した光学シートの表面抵抗を測定した。その結果を表7に示す。
【0197】
(除去工程)
次に、光学シートをPH=3程度の溶液に60秒間浸漬させた。
【0198】
(洗浄工程)
次に、純水にて光学シートを洗浄した。
以上により、目的とする導電性シートが作製された。
【0199】
(表面抵抗測定)
次に、上述のようにして作製した導電性シートの表面抵抗を測定した。その結果を表7に示す。
【0200】
(比較例2−2)
SiO2層の形成を省略する以外は実施例2−2と同様にして光学シートを作製した。また、除去工程前後における光学シートの表面抵抗も実施例2−2と同様にして測定した。その結果を表8に示す。
【0201】
表7は、実施例2−2に係る導電性シートの測定結果を示す。
【表7】
【0202】
表8は、比較例2−2に係る光学シートの測定結果を示す。
【表8】
【0203】
表7、表8から以下のことがわかる。
実施例2−2においては、導電性シート表面のうち、高い比率(Am/λm=0.64)を有する第2の領域では、除去工程においてITO層およびAg層が除去され絶縁状態となる。これに対して、低い比率(Am/λm=0.52)を有する第1の領域では、除去工程においてITO層およびSiO2層が除去されず残り導通状態が維持される。
ITO層のみを形成した比較例2−2においては、60秒の除去工程を経ると、高い比率(Am/λm)の大きさに関われず、ITO層およびSiO2層が除去され絶縁状態となる。
したがって、金属層であるAg層の代わりに、レジスト層であるSiO2層を用いた多層構造を採用した場合にも、比率(Am/λm)の大きさを調整することで、除去選択性を確保でき、低い比率(Am/λm=0.6)を有する第1の領域ではITO層およびSiO2層を残すことができる。また、SiO2層をITO層上に積層することで、除去工程におけるITO層の耐性を向上し、除去選択性を飛躍的に向上することができる。
【0204】
(参考例2−1)
(成膜工程)
まず、平滑な表面を有するPETシートを準備した。次に、スパッタリング法により、PETシート上にITO層を形成した。到達真空度は0.00015Pa、成膜時真空度は0.24Paとし、成膜時にはArガスとO2ガスとを導入し、その混合比率はAr:O2=20:1とした。また、ITO層の膜厚が30nmとなるように成膜条件を調整した。
【0205】
(アニール工程)
次に、ITO層を形成したPETシートに対して、150℃、60分間の大気中アニールを施した。これにより、ITO層の多結晶化が促進された。次に、この促進の状態を確認すべく、X線回折(X‐ray diffraction:XRD)でITO層を測定したところ、In2O3のピークが確認された。
以上により、目的とする光学シートが得られた。
【0206】
(参考例2−2)
(成膜工程、アニール工程)
まず、参考例2−1と同様にして成膜工程およびアニール工程を行い、アニール処理が施されたITO層を有するPETフィルムを作製した。
【0207】
(エッチング工程)
次に、アニール処理を施したPETフィルムを、PH=3程度の溶液に10秒間浸漬させて、ITO層をエッチングした。
【0208】
(洗浄工程)
次に、エッチング処理を施したPETシートに対して、純水洗浄、IPA(イソプロピルアルコール)洗浄、純粋洗浄を順次行った。
以上により、目的とする光学シートが得られた。
【0209】
(参考例2−3)
浸漬時間を20秒間に変更する以外は参考例2−2と同様にして光学シートを得た。
【0210】
(参考例2−4)
浸漬時間を30秒間に変更する以外は参考例2−2と同様にして光学シートを得た。
【0211】
(参考例2−5)
浸漬時間を40秒間に変更する以外は参考例2−2と同様にして光学シートを得た。
【0212】
(参考例2−6)
浸漬時間を50秒間に変更する以外は参考例2−2と同様にして光学シートを得た。
【0213】
(参考例2−7)
浸漬時間を60秒間に変更する以外は参考例2−2と同様にして光学シートを得た。
【0214】
(参考例3−1)
(転写工程)
まず、凹状のナノ構造体が成形面に形成された石英マスタを準備した。次に、ナノ構造体を形成した石英マスタに紫外線硬化樹脂を塗布し、易接着層付きPETシートを密着させ紫外線を照射し硬化させながら、PETシートを剥離した。これにより、ナノ構造体が多数表面に形成されたPETシートが得られた。
以下に、PETシート表面に形成されたナノ構造体の構成の詳細を示す。
構造体の配列:六方格子配列
構造体の凹凸形状:凸状
構造体の全体形状:円錐台
構造体の配置ピッチ:250nm
構造体の高さ:90nm
構造体のアスペクト比:0.36
【0215】
(成膜工程)
次に、スパッタリング法により、ナノ構造体が形成されたPETシート表面上にITO層を形成した。到達真空度は0.00015Pa、成膜時真空度は0.24Paとし、成膜時にはArガスとO2ガスとを導入し、その混合比率はAr:O2=20:1とした。また、膜厚が平板換算で30nmとなるように成膜条件を調整した。なお、平板換算膜厚は、ナノ構造体が形成されたPETシート表面にITO層を形成した場合と同様の成膜条件にて、平板上にITO層を形成したときの膜厚である。本発明者の知見によれば、平板換算膜厚は、構造体頂部の膜厚とほぼ等しくなる。
【0216】
(アニール工程)
次に、ITO層を形成したPETシートに対して、150℃、60分間の大気中アニールを施した。これにより、ITO層の多結晶化が促進された。次に、この促進の状態を確認すべく、X線回折(X‐ray diffraction:XRD)でITO層を測定したところ、In2O3のピークが確認された。
以上により、目的とする光学シートが得られた。
【0217】
(参考例3−2)
(成膜工程、アニール工程)
まず、参考例3−1と同様にして成膜工程およびアニール工程を行い、アニール処理が施されたITO層を有するPETフィルムを作製した。
【0218】
(エッチング工程)
次に、アニール処理を施したPETフィルムを、PH=3程度の溶液に10秒間浸漬させて、ITO層をエッチングした。
【0219】
(洗浄工程)
次に、エッチング処理を施したPETシートに対して、純水洗浄、IPA洗浄、純粋洗浄を順次行った。
以上により、目的とする光学シートが得られた。
【0220】
(参考例3−3)
浸漬時間を20秒間に変更する以外は参考例3−2と同様にして光学シートを得た。
【0221】
(参考例4−1)
構造体の配置ピッチを250nm、構造体の高さを120nm、アスペクト比を0.48とする以外は参考例3−1と同様にして光学シートを得た。
【0222】
(参考例4−2)
構造体の配置ピッチを250nm、構造体の高さを120nm、アスペクト比を0.48とする以外は参考例3−2と同様にして光学シートを得た。
【0223】
(参考例4−3)
構造体の配置ピッチを250nm、構造体の高さを120nm、アスペクト比を0.48とする以外は参考例3−3と同様にして光学シートを得た。
【0224】
(参考例5−1)
構造体の配置ピッチを250nm、構造体の高さを155nm、アスペクト比を0.62とする以外は参考例3−1と同様にして光学シートを得た。
【0225】
(参考例5−2)
構造体の配置ピッチを250nm、構造体の高さを155nm、アスペクト比を0.62とする以外は参考例3−2と同様にして光学シートを得た。
【0226】
(参考例5−3)
構造体の配置ピッチを250nm、構造体の高さを155nm、アスペクト比を0.62とする以外は参考例3−3と同様にして光学シートを得た。
【0227】
(参考例6−1)
(成膜工程、アニール工程)
以下のプレズムシートを用いる以外は参考例3−1と同様にして成膜工程およびアニール工程を行い、アニール処理が施されたITO層を有するプリズムシートを作製した。
以上により、目的とする光学シートが得られた。
以下に、プレズムシートの構成の詳細を示す。
プリズム(構造体)の配列:1次元配列
プリズムの凹凸形状:凸状
プリズムの形状:断面2等辺三角形状の柱状体
プリズムの配置ピッチ:10μm
プリズムの高さ:5μm
プリズムのアスペクト比:0.50
【0228】
(参考例6−2)
(成膜工程、アニール工程)
まず、参考例6−1と同様にして成膜工程およびアニール工程を行い、アニール処理が施されたITO層を有するプリズムシートを作製した。
【0229】
(エッチング工程)
次に、アニール処理を施したプリズムシートを、PH=3程度の溶液に10秒間浸漬させて、ITO層をエッチングした。
【0230】
(洗浄工程)
次に、エッチング処理を施したPETシートに対して、純水洗浄、IPA洗浄、純粋洗浄を順次行った。
以上により、目的とする光学シートが得られた。
【0231】
(参考例6−3)
浸漬時間を20秒間に変更する以外は参考例6−2と同様にして光学シートを得た。
【0232】
(参考例6−4)
浸漬時間を30秒間に変更する以外は参考例6−2と同様にして光学シートを得た。
【0233】
(参考例8−5)
浸漬時間を40秒間に変更する以外は参考例6−2と同様にして光学シートを得た。
【0234】
(表面抵抗)
上述のようにして得られた参考例2−1〜6−5の光学シート表面の表面抵抗値を4端針法にて測定した。その結果を表9に示す。
【0235】
(初期変化率の逆数)
上述のようにようにして得られた参考例2−1〜6−5の光学シート表面の初期変化率の逆数(仮想厚さの変化)を以下の式より求めた。その結果を表10および図22に示す。
(初期表面抵抗に対する変化率の逆数)=(エッチング前のサンプルの表面抵抗)/(エッチング後のサンプルの表面抵抗)
【0236】
表9は、参考例2−1〜6−5に係る光学シートの表面抵抗の評価結果を示す。
【表9】
【0237】
表10は、参考例2−1〜6−5に係る光学シートの初期変化率の逆数の評価結果を示す。
【表10】
【0238】
表9、表10および図22から以下のことがわかる。
平坦面上にITO層を形成した参考例2−1〜2−7では、エッチングによりITO層の膜厚に殆ど変化せず、表面抵抗がほぼ一定となる傾向がある。これに対して、多数の構造体上にITO層を形成した参考例3−1〜3−3、参考例4−1〜4−3、参考例5−1〜5−3では、エッチングによりITO層の膜厚が急激に減少し、表面抵抗が急激に上昇する傾向がある。
ミクロンオーダーの配置ピッチで多数の構造体を形成した参考例6−1〜6−5でも、
ナノオーダーの配置ピッチで多数の構造体を形成した参考例3−1〜3−3、参考例4−1〜4−3、参考例5−1〜5−3と同様の傾向を示す。
【0239】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0240】
例えば、上述の実施形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値などを用いてもよい。
【0241】
また、上述の実施形態の構成、方法、工程、形状、材料および数値などは、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0242】
また、上述の実施形態では、片面または両面に配線が形成された単層の導電性素子に対して本発明を適用した例を説明したが、本発明はこの例に限定されるものではなく、多層の導電性素子に対しても適用可能である。
【0243】
また、上述の実施形態では、平面状の基体表面に配線を形成する場合を例として説明したが、配線を形成する面は平面に限定されるものではなく、曲面状の基体表面に配線を形成するようにしてもよい。
【0244】
また、上述の実施形態では、液晶表示素子に対して本発明を適用した例を説明したが、本発明はこの例に限定されるものではなく、パッシブマトリックス駆動方式の種々の表示素子(例えばEL素子、電子ペーパーなど)に対しても適用可能である。
【0245】
また、上述の実施形態では、2つの基材を重ね合わせる構成を有する投影型静電容量方式タッチパネルに対して本発明を適用した例について説明したが、本発明はこの例に限定されるものではない。例えば、1つの基材の両面に電極を形成した構成を有する投影型静電容量方式タッチパネルに対しても本発明は適用可能である。
【0246】
また、上述の実施形態では、電子機器として表示装置や情報入力装置に本発明を適用する例について説明したが、本発明はこの例に限定されるものではなく、表示素子や配線素子(例えばプリント基板)などを備える種々の電子機器に対して適用可能である。
【符号の説明】
【0247】
1 導電性素子
2 基体
3 構造体
4 積層膜
11 ロール原盤
12 構造体
13 レジスト層
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性素子およびその製造方法、配線素子、情報入力装置、表示装置、ならびに電子機器に関する。詳しくは、基体表面に導電パターン部が形成された導電性素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラスやプラスチックなどからなる絶縁性基材上に所定の回路パターンの導電層を形成する方法としては、フォトリソグラフィーを利用した回路パターン形成方法が広く用いられている。この回路パターンの形成方法では、ステップ&リピート方式、またはそれに近い方式が一般的に用いられている。具体的には、この形成方法では、「金属層コーティング」→「レジスト塗布」→「露光」→「現像」→「除去」→「レジスト剥離」の工程を経て、回路パターンが形成される。このため、フォトリソグラフィーを利用した回路パターンの形成方法は、低スループットとなる。
【0003】
そこで、スループットの向上を実現すべく、スクリーン印刷による回路パターン形成方法が提案されている。このスクリーン印刷による回路パターン形成方法は、絶縁性基材上に金属ペーストなどをマスクを介してスキージで塗布し、その後焼成して所定の回路パターンの導電層を形成する方法である。スクリーン印刷による回路パターン形成方法はスループットに優れるため、種々のデバイスに対する応用が検討されている。例えば特許文献1には、スクリーン印刷を用いてタッチパネルの電極を形成する方法が開示されている。また、特許文献2には、スクリーン印刷を用いて画像表示装置の電極を形成する方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、スクリーン印刷はマスクが高価であること、マスクを精度良く位置合わせするのが煩雑であること、マスクの穴が目詰まりし易いことなどの問題がある。このため、スクリーン印刷以外にも、優れたスループットを実現できる回路パターンの形成方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−266025号広報
【0006】
【特許文献2】特開2005−149807号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、精細かつ高スループットを実現できる導電性素子およびその製造方法、配線素子、情報入力装置、表示装置、ならびに電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、第1の発明は、
第1の波面と第2の波面とを有する基体と、
第1の波面上に形成された、2層以上の層が積層された積層膜と
を備え、
積層膜は、導電パターン部を形成し、
第1の波面および第2の波面が、以下の関係を満たす導電性素子である。
0≦(Am1/λm1)<(Am2/λm2)≦1.8
(但し、Am1:第1の波面の振動の平均幅、Am2:第2の波面の振動の平均幅、λm1:第1の波面の平均波長、λm2:第2の波面の平均波長)
【0009】
第2の発明は、
第1の波面と第2の波面とを有する基体表面に対して、2層以上の層を積層して積層膜を形成する工程と、
第1の波面および第2の波面のうち、第2の波面上に形成された積層膜を除去するのに対して、第1の波面上に形成された積層膜を残すことにより、導電パターン部を形成する工程と
を備え、
第1の波面と第2の波面が、以下の関係を満たす導電性素子の製造方法である。
0≦(Am1/λm1)<(Am2/λm2)≦1.8
(但し、Am1:第1の波面の振動の平均幅、Am2:第2の波面の振動の平均幅、λm1:第1の波面の平均波長、λm2:第2の波面の平均波長)
【0010】
本発明において、第1の波面および第2の波面が、以下の関係を満たし、第2の波面の平均波長λ2が、可視光の波長以下であることが好ましい。
(Am1/λm1)=0、0<(Am2/λm2)≦1.8
【0011】
本発明において、第1の波面および第2の波面が、以下の関係を満たし、第1の波面の平均波長λ1、および第2の波面の平均波長λ2が、可視光の波長以下であることが好ましい。
0<(Am1/λm1)<(Am2/λm2)≦1.8
【0012】
本発明において、第1の波面および第2の波面が、以下の関係を満たし、第2の波面の平均波長λ2が、100μm以上であることが好ましい。
(Am1/λm1)=0、0<(Am2/λm2)≦1.8
【0013】
本発明において、第1の波面および第2の波面が、以下の関係を満たし、第1の波面の平均波長λ1、および第2の波面の平均波長λ2が、100μm以上であることが好ましい。
0<(Am1/λm1)<(Am2/λm2)≦1.8
【0014】
本発明において、第2の波面上に形成された、積層膜の一部からなる残留膜をさらに備え、積層膜、および残留膜が、以下の関係を満たすことが好ましい。
S1>S2(但し、S1:積層膜の面積、S2:残留膜の面積)
このような関係を満たす場合、第1の波面上に形成された積層膜は、第1の波面上に連続的に形成されているのに対して、第2の波面上に形成された残留膜は、第2の波面上に不連続的に形成されていることが好ましい。
【0015】
本発明において、第2の波面上に形成された、積層膜の一部からなる残留膜をさらに備え、積層膜、および残留膜が、以下の関係を満たすことが好ましい。
d1>d2(但し、d1:積層膜の厚さ、d2:残留膜の厚さ)
【0016】
本発明において、積層膜は、導電層と、該導電層上に形成された機能層とを備え、機能層は、導電層とは異なる材料からなることが好ましい。積層膜は、異なる除去速度の材料で構成されていることが好ましい。導電層は、酸化物半導体を含む透明導電層であることが好ましい。酸化物半導体は、インジウム錫酸化物、または酸化亜鉛を含んでいることが好ましい。導電層は、アモルファスと多結晶との混合状態であることが好ましい。導電層は、Ag、Al、Au、Pt、Pd、Ni、Cr、Nb、W、Mo、TiおよびCuからなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでいることが好ましい。機能層は、酸化物および遷移金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでいることが好ましい。機能層は、導電層と異なる材料からなりAg、Al、Au、Pt、Pd、Ni、Cr、Nb、W、Mo、TiおよびCu選ばれる少なくとも1種を含んでいることが好ましい。機能層は、アモルファスと多結晶との混合状態にある層、および多結晶化状態にある層の少なくとも1種を含んでいることが好ましい。
【0017】
本発明において、導電性素子は、配線素子、情報入力装置、導電性素子、表示装置、または電子機器に適用して好適なものである。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、精細かつ高スループットを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る導電性素子の一構成例を示す平面図である。図1Bは、図1Aに示したB−B線に沿った断面図である。図1Cは、図1Bに示した第1の領域の一部を拡大して表す断面図である。図1Dは、図1Bに示した第2の領域の一部を拡大して表す断面図である。
【図2】図2Aは、複数の構造体が2次元配列された第2の領域を拡大して表す斜視図である。図2Bは、複数の構造体が2次元配列された第2の領域を拡大して表す平面図である。
【図3】図3Aは、複数の構造体が1次元配列された第2の領域を拡大して表す斜視図である。図3Bは、複数の構造体が1次元配列された第2の領域を拡大して表す平面図である。
【図4】図4Aは、基体を作製するためのロール原盤の一構成例を示す斜視図である。図4Bは、図4Aに示したロール原盤の一部を拡大して表す斜視図である。
【図5】図5Aは、ロール原盤の一部を拡大して表す断面図である。図5Bは、第2の領域の一部を拡大して示す斜視図である。図5Cは、第2の領域の一部を拡大して示す平面図である。
【図6】図6は、ロール原盤露光装置の一構成例を示す概略図である。
【図7】図7A〜図7Cは、本発明の第1の実施形態に係る導電性素子の製造方法の一例を説明するための工程図である。
【図8】図8A〜図8Cは、本発明の第1の実施形態に係る導電性素子の製造方法の一例を説明するための工程図である。
【図9】図9A〜図9Cは、本発明の第1の実施形態に係る導電性素子の製造方法の一例を説明するための工程図である。
【図10】図10Aは、本発明の第2の実施形態に係る導電性素子の一構成例を示す平面図である。図10Bは、図10Aに示したB−B線に沿った断面図である。図10Cは、図10Bに示した第1の領域の一部を拡大して表す断面図である。図10Dは、図10Bに示した第2の領域の一部を拡大して表す断面図である。
【図11】図11Aは、基体を作製するためのロール原盤の一部を拡大して表す斜視図である。図11Bは、図11Aに示したロール原盤の一部を拡大して表す断面図である。
【図12】図12Aは、本発明の第3の実施形態に係る導電性素子の一構成例を示す断面図である。図12Bは、本発明の第3の実施形態に係る導電性素子の変形例を示す断面図である。
【図13】図13Aは、本発明の第4の実施形態に係る導電性素子の一構成例を示す平面図である。図13Bは、図13Aに示したB−B線に沿った断面図である。図13Cは、図13Bに示した第1の領域の一部を拡大して表す断面図である。図13Dは、図13Bに示した第2の領域の一部を拡大して表す断面図である。
【図14】図14は、本発明の第5の実施形態に係る液晶表示素子の一構成例を示す斜視図である。
【図15】図15は、本発明の第6の実施形態に係るタッチパネルを備える表示装置の一構成例を示す斜視図である。
【図16】図16Aは、本発明の第6の実施形態に係るタッチパネルの第1の構成例を示す斜視図である。図16Bは、第1の基材の一構成例を示す分解斜視図である。
【図17】図17Aは、本発明の第6の実施形態に係るタッチパネルの第2の構成例を示す斜視図である。図17Bは、第1の基材の一構成例を示す分解斜視図である。
【図18】図18Aは、本発明の第7の実施形態に係るICカードの一構成例を示す平面図である。図18Bは、図18Aに示したICカードの一部を拡大して表す平面図である。
【図19】図19Aは、本発明の第8の実施形態に係る表示装置の構成の一例を示す断面図である。図19Bは、図19Aに示した配線領域を拡大して表す拡大断面図である。図19Cは、図19Aに示した非配線領域を拡大して表す拡大断面図である。
【図20】図20Aは、参考例1に係る透明導電性シートの作製に用いた石英マスタの成形面を示す模式図である。図20Bは、参考例1に係る透明導電性シートの導通/非導通評価ポイントを示す模式図である。
【図21】図21は、実施例1−2に係る導電性シート表面の光学顕微鏡観察像を示す図である。
【図22】図22は、エッチング時間と初期表面抵抗に対する逆数(仮想厚さ変化)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態について図面を参照しながら以下の順序で説明する。
1.第1の実施形態(波面の有無を利用して基体表面に導電パターン部を形成した例)
2.第2の実施形態(2種の波面の違いを利用して基体表面に導電パターン部を形成した例)
3.第3の実施形態(導電パターン部を基体の両面に形成した例)
4.第4の実施形態(構造体を凹状とした例)
5.第5の実施形態(表示装置に対する適用例)
6.第6の実施形態(情報入力装置に対する適用例)
7.第7の実施形態(ICカードに対する適用例)
8.第8の実施形態(表示装置に対する適用例)
【0021】
<1.第1の実施形態>
[導電性素子の構成]
図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る導電性素子の一構成例を示す平面図である。図1Bは、図1Aに示したB−B線に沿った断面図である。図1Cは、図1Bに示した第1の領域の一部を拡大して表す断面図である。図1Dは、図1Bに示した第2の領域の一部を拡大して表す断面図である。以下では、導電性素子1の主面の面内で互いに直交する2方向をX軸方向、およびY軸方向とし、その主面に垂直な方向をZ軸方向と称する。
【0022】
第1の実施形態に係る導電性素子1は、交互に形成された第1の領域R1および第2の領域R2を有する基体2と、第1の領域R1および第2の領域R2のうち、第1の領域R1に形成された積層膜4とを備える。積層膜4は、導電パターン部をなすように第1の領域R1に連続的に形成されている。導電パターン部は、例えば、配線パターン部、電極パターン部などである。積層膜4は、2層以上の層が積層された積層膜であり、少なくとも導電層4aを含んでいることが好ましい。
【0023】
この導電性素子1は、例えば、プリント基板、画像表示素子などである。プリント基板としては、例えば、リジッド基板、フレキシブル基板、リジッドフレキシブル基板などが挙げられる。画像表示素子としては、例えば、液晶表示素子、エルクトロルミネッセンス(EL)素子(例えば有機EL素子、無機EL素子)などが挙げられる。
【0024】
(第1の領域、第2の領域)
第1の領域R1の基体表面には、例えば平面Sp1が形成され、この平面Sp1上には積層膜4が連続的に形成されている。一方、第2の領域R2の基体表面には、例えば波面Sw2が形成され、この波面Sw2上には積層膜4が形成されていない状態となっている。したがって、第2の領域R2は、隣接する第1の領域R1に形成された積層膜4の間を絶縁するための絶縁領域として機能する。これに対して、第1の領域R1に連続的に形成された積層膜4は、第1の領域R1の延在方向に向かって導電性を有し、導電パターン部として機能する。
【0025】
平面Sp1、および波面Sw2が以下の関係を満たすことが好ましい。
(Am1/λm1)=0、0<(Am2/λm2)≦1.8
(但し、Am1:平面Sp1の振動の平均幅、Am2:波面Sw2の振動の平均幅、λm1:平面Sp1の平均波長、λm2:波面Sw2の平均波長)
なお、平面Sp1は、振動の平均幅Am1が「0」の波面とみなすことができるため、上述のように平面Sp1の振動の平均幅Am1、平均波長λm1および比率(Am1/λm1)を定義することができる。
比率(Am2/λm2)>1.8であると、波面Sw2を転写する際に剥離不良となり波面Sw2が破壊される傾向がある。
【0026】
ここで、波面Sw2の比率(Am2/λm2)は以下のようにして求めたものである。まず、波面Sw2の振動の幅が最大となる位置を含むようにして導電性素子1の断面を切り出し、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)にて撮影する。次に、撮影したTEM写真から、波面Sw2の波長λ2、および振動の幅A2を求める。この測定を導電性素子1から無作為に選び出された10箇所で繰り返し行い、測定値を単純に平均(算術平均)して、波面Sw2の平均波長λm2、および振動の平均幅Am2を求める。次に、これらの平均波長λm2、および振動の平均幅Am2を用いて、波面Sw2の比率(Am2/λm2)を求める。
【0027】
波面Sw2は、例えば、可視光の波長以下の波長を有する1次元的または2次元的な波面であり、具体的には、可視光の波長以下の配置ピッチで多数の構造体3が1次元的または2次元的に配列されてなる凹凸面である。
【0028】
波面Sw2の振動の幅が最大となる位置を含むようにして、波面Sw2を一方向に向かって切断したときの断面形状は、例えば、三角波形状、正弦波形状、2次曲線もしくは2次曲線の一部を繰り返した波形状、またはこれらに近似する形状などである。2次曲線としては、円、楕円、放物線などが挙げられる。
【0029】
波面Sw2の平均波長λm2は、好ましくは100nm以上の範囲である。平均波長λm2が100nm未満であると、波面Sw2の作製が困難となる傾向がある。
また、波面Sw2の平均波長λm2は、好ましくは100μm以下の範囲である。平均波長λm2が100μmを超えると、インプリントと膜形成の際に段差、カバレッジに問題が発生し不具合が生じる。
【0030】
第2の領域R2には積層膜4またはその一部が残留膜として完全に存在しないことが好ましいが、第2の領域R2が絶縁領域として機能する程度であれば残留膜として存在していてもよい。第2の領域R2に残留膜が存在する場合、第1の領域R1に形成された積層膜4と、第2の領域R2に形成された残留膜とが、以下の関係を満たすことが好ましい。
S1>S2
(但し、S1:積層膜の面積、S2:残留膜の面積)
このような関係を満たす場合、第1の領域R1には積層膜4が連続的に形成されているのに対して、第2の領域R2には残留膜が島状などに不連続に形成されていることが好ましい。
【0031】
また、第2の領域R2に残留膜が存在する場合、第1の領域R1に形成された積層膜4と、第2の領域R2に形成された残留膜とが、以下の関係を満たすことが好ましい。
d1>d2
(但し、d1:積層膜の厚さ、d2:残留膜の厚さ)
このような関係を満たす場合、残留膜の厚さが、実質的に導電性を示さないほどに、積層膜4の厚さよりも薄く、第2の領域R2が絶縁領域として機能することが好ましい。
【0032】
なお、上述したように、残留膜は導電パターン部としては機能しないため、図1B、および図1Dでは、残留膜の図示を省略している。また、図1Aでは、第1の領域R1に連続的に形成された積層膜4、すなわち導電パターン部が、直線状の形状を有している例が示されているが、導電パターン部の形状はこれに限定されるものではなく、回路や素子の設計などに応じて所望の形状とすることが可能である。
【0033】
以下、導電性素子1を構成する基体2、構造体3、および積層膜4について順次説明する。
【0034】
(基体)
基体2は、例えば、透明性または不透明性を有する基体である。基体2の材料としては、例えば、プラスチック材料などの有機材料、ガラスなどの無機材料を用いることができる。
【0035】
ガラスとしては、例えば、ソーダライムガラス、鉛ガラス、硬質ガラス、石英ガラス、液晶化ガラスなど(「化学便覧」基礎編、P.I-537、日本化学会編参照)が用いられる。プラスチック材料としては、透明性、屈折率、および分散などの光学特性、さらには耐衝撃性、耐熱性、および耐久性などの諸特性の観点から、ポリメチルメタアクリレート、メチルメタクリレートと他のアルキル(メタ)アクリレート、スチレンなどといったビニルモノマーとの共重合体などの(メタ)アクリル系樹脂;ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR-39)などのポリカーボネート系樹脂;(臭素化)ビスフェノールA型のジ(メタ)アクリレートの単独重合体ないし共重合体、(臭素化)ビスフェノールAモノ(メタ)アクリレートのウレタン変性モノマーの重合体及び共重合体などといった熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂;ポリエステル特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよび不飽和ポリエステル、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、シクロオレフィンポリマー(商品名:アートン、ゼオノア)などが好ましい。また、耐熱性を考慮したアラミド系樹脂の使用も可能である。
【0036】
基体2としてプラスチック材料を用いる場合、プラスチック表面の表面エネルギー、塗布性、すべり性、平面性などをより改善するために、表面処理として下塗り層を設けるようにしてもよい。この下塗り層としては、例えば、オルガノアルコキシメタル化合物、ポリエステル、アクリル変性ポリエステル、ポリウレタンなどが挙げられる。また、下塗り層を設けるのと同様の効果を得るために、基体2の表面に対してコロナ放電、UV照射処理を行うようにしてもよい。
【0037】
基体2がプラスチックフィルムである場合には、基体2は、例えば、上述の樹脂を伸延、あるいは溶剤に希釈後フィルム状に成膜して乾燥するなどの方法で得ることができる。また、基体2の厚さは、例えば25μm〜500μm程度である。
【0038】
基体2の形状としては、例えば、フィルム状、プレート状、ブロック状を挙げることができるが、特にこれらの形状に限定されるものではない。ここで、フィルムにはシートが含まれるものと定義する。
【0039】
(構造体)
波面Sw2は、例えば多数の構造体3が第2の領域R2に配列された凹凸面である。構造体3は、例えば、基体1の表面に対して凸状を有している。構造体3は、例えば、基体2と別成形、または基体2と一体成形されている。構造体3と基体2とを別成形する場合には、必要に応じて構造体3と基体2との間に基底層を備えるようにしてもよい。基底層は、構造体3の底面側に構造体3と一体成形された層であり、構造体3と同様のエネルギー線硬化性樹脂組成物などを硬化してなる。基底層の厚さは、特に限定されるものではなく、必要に応じて適宜選択することができる。
【0040】
構造体3のアスペクト比(Hm/Pm)が以下の関係を満たすことが好ましい。
0<(Hm/Pm)≦1.8
(但し、Hm:構造体3の平均高さ、Pm:構造体3の平均配置ピッチ)
(Hm/Pm)>1.8であると、構造体3を転写する際に剥離不良となり構造体3が破壊される傾向がある。
【0041】
ここで、構造体3のアスペクト比(Hm/Pm)は、以下のようにして求めたものである。まず、構造体3の高さが最大となる位置を含むようにして導電性素子1の断面を切り出し、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)にて撮影する。次に、撮影したTEM写真から、構造体3の配置ピッチP、および高さHを求める。この測定を導電性素子1から無作為に選び出された10箇所で繰り返し行い、測定値を単純に平均(算術平均)して、構造体3の平均配置ピッチPmおよび平均高さHmを求める。次に、これらの平均配置ピッチPmおよび平均高さHmを用いて、構造体3のアスペクト比(Hm/Pm)を求める。
【0042】
複数の構造体3の配列としては、例えば、1次元または2次元配列を用いることができる。構造体3の配列としては、例えば、規則的または不規則的な配列を用いることができ、原盤の作製方法などに応じて上記配列のうちから適切な配列を選択することが好ましい。
【0043】
構造体3の平均配置ピッチPmは、導電性素子表面における光の反射を低減する観点からすると、反射の低減を目的とする光の波長帯域以下であることが好ましい。反射の低減を目的とする光の波長帯域は、例えば、紫外光の波長帯域、可視光の波長帯域または赤外光の波長帯域である。ここで、紫外光の波長帯域とは10nm以上360nm以下の波長帯域、可視光の波長帯域とは360nm以上830nm以下の波長帯域、赤外光の波長帯域とは830nm以上1mm以下の波長帯域をいう。具体的には、平均配置ピッチPmは、好ましくは180nm以上350nm以下、より好ましくは100nm以上320nm以下、さらに好ましくは110nm以上280nm以下の範囲内である。平均配置ピッチPmが180nm未満であると、構造体3の作製が困難となる傾向がある。一方、平均配置ピッチPmが350nmを超えると、可視光の回折が生じる傾向がある。
【0044】
以下に、図2A〜図3Bを参照しながら、複数の構造体3が1次元配列または2次元配列された第2の領域R2について具体的に説明する。
【0045】
図2Aは、複数の構造体が2次元配列された第2の領域を拡大して表す斜視図である。図2Bは、複数の構造体が2次元配列された第2の領域を拡大して表す平面図である。複数の構造体3が、例えば、第2の領域R2において複数列のトラックT上に2次元配列されている。トラックTの形状としては、直線状、円弧状などを用いることができ、これらの形状のトラックTを蛇行(ウォブル)させるようにしてもよい。複数例のトラックT上に配列された複数の構造体3が、例えば、所定の規則的な配置パターンをなるようにしてもよい。構造体3の配置パターンとしては、四方格子状、六方格子状などの格子状パターンが挙げられ、これらの格子状パターンを歪ませるようにしてもよい。構造体3の高さが基体1の表面において規則的または不規則的に変化するようにしてもよい。また、構造体3をランダムに配列するようにしてもよい。
【0046】
構造体3の具体的な形状としては、例えば、錐体状、柱状、針状、半球状、半楕円球状、多角形状などが挙げられるが、これらの形状に限定されるものではなく、他の形状を採用するようにしてもよい。錐体状としては、例えば、頂部が尖った錐体形状、頂部が平坦な錐体形状、頂部に凸状または凹状の曲面を有する錐体形状が挙げられるが、これらの形状に限定されるものではない。また、錐体状の錐面を凹状または凸状に湾曲させるようにしてもよい。後述するロール原盤露光装置(図6参照)を用いてロール原盤を作製する場合には、構造体3の形状として、頂部に凸状の曲面を有する楕円錐形状、または頂部が平坦な楕円錐台形状を採用し、それらの底面を形成する楕円形の長軸方向をトラックTの延在方向と一致させることが好ましい。
【0047】
図3Aは、複数の構造体が1次元配列された第1の領域を拡大して表す斜視図である。図3Bは、複数の構造体が1次元配列された第1の領域を拡大して表す平面図である。複数の構造体3が、例えば、第2の領域R2において複数列のトラックT上に、これらのトラックTに沿うようにして1次元配列されている。トラックTの形状としては、直線状、円弧状などを用いることができ、これらの形状のトラックを蛇行(ウォブル)させるようにしてもよい。
【0048】
構造体3は、例えば、一方向に向かって延在された柱状体であり、その断面形状は、例えば三角形状、頂部に曲率Rが付された三角形状、多角形状、半円形状、半楕円形状、放物線状などを挙げることができるが、これらの形状に限定されるものではない。構造体3の具体的形状としては、例えば、レンチキュラー形状、プリズム形状などを挙げることができるが、これらの形状に限定されるものではない。構造体3の高さが、トラック方向に向かって変化するようにしてもよい。また、構造体3が、トラック方向に断続するようにしてもよい。
【0049】
(積層膜)
積層膜4は、例えば、第1の領域R1上に形成された導電層4aと、導電層4a上に形成された機能層4bとを備える。積層膜4は、異なる除去速度の材料、具体的には、異なる除去速度の積層膜から構成されていることが好ましい。導電層4aとしては、例えば、金属層、透明導電層、金属酸化物層、遷移金属化合物層などを用いることができるが、これらの限定されるものではない。機能層4bの材料としては、少なくとも導電層4aとは異なる材料が好ましく、さらに除去工程時に溶解レート差が生じるものがより好ましい。
【0050】
透明導電層としては、例えば、無機透明導電層を用いることができる。無機透明導電層は、透明酸化物半導体を主成分としていることが好ましい。透明酸化物半導体としては、例えば、SnO2、InO2、ZnOおよびCdOなどの二元化合物、二元化合物の構成元素であるSn、In、ZnおよびCdのうちの少なくとも一つの元素を含む三元化合物、または多元系(複合)酸化物を用いることができる。透明酸化物半導体の具体例としては、例えばインジウム錫酸化物(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、アルミドープ酸化亜鉛(AZO(Al2O3、ZnO))、SZO、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、酸化錫(SnO2)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、酸化インジウム亜鉛(IZO(In2O3、ZnO))などが挙げられる。特に、信頼性の高さ、および抵抗率の低さなどの観点から、インジウム錫酸化物(ITO)が好ましい。無機透明導電膜を構成する材料は、導電性の向上の観点からすると、アモルファスと多結晶との混合状態であることが好ましい。
【0051】
金属層の材料としては、例えば、Ag、Al、Au、Pt、Pd、Ni、Cr、Nb、W、Mo、TiおよびCuからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0052】
機能層4bとしては、少なくとも導電層4aに対して、エッチャントに対する溶解度もしくはエッチングレートが異なることが望ましく、例えばSiO2などの金属酸化物層や遷移金属化合物、さらには結晶状態が異なる膜同士で機能層4bが多結晶化してエッチャント耐性が向上している状態も望ましい。機能層4bは、アモルファスと多結晶との混合状態にある層、および多結晶化状態にある層の少なくとも1種を含んでいることが好ましい。また、機能層4bとしては、導電層4aに対して溶解レートが異なるものであれば金属でも使用可能であり、導電層4aと異種材料であればAg、Al、Au、Pt、Pd、Ni、Cr、Nb、W、Mo、TiおよびCuからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む材料を用いることができる。
【0053】
第1の領域R1における積層膜4の表面抵抗は、5000Ω/□以下であることが好ましい。5000Ω/□を超えると、抵抗が増大しすぎて電極として使用できなくなる傾向がある。
【0054】
[ロール原盤の構成]
図4Aは、基体を作製するためのロール原盤の一構成例を示す斜視図である。図4Bは、図4Aに示したロール原盤の一部を拡大して表す斜視図である。ロール原盤11は、上述した基体表面に構造体3を成形するための原盤である。ロール原盤11は、例えば、円柱状または円筒状の形状を有し、その円柱面または円筒面には多数の第1の領域R1および第2の領域R2が交互に設定されている。図4Aおよび図4Bでは、第1の領域R1および第2の領域R2が周方向に向かって、リング状に形成されている場合が示されているが、第1の領域R1および第2の領域R2の形状はこの例に限定されるものではなく、所望とする導電パターン部の形状、すなわち第2の領域に形成する積層膜4の形状に応じて適宜選択される。ロール原盤11の材料としては、例えばガラスを用いることができるが、この材料に特に限定されるものではない。
【0055】
図5Aは、ロール原盤の一部を拡大して表す断面図である。図5Bは、第2の領域の一部を拡大して示す斜視図である。図5Cは、第2の領域の一部を拡大して示す平面図である。ロール原盤11の第2の領域R2には、例えば、凹部である構造体12が可視光の波長以下のピッチで多数配置されているのに対して、第1の領域R1には、例えば、凹部である構造体12が形成されず平面状とされている。
【0056】
ロール原盤11の第1の領域R1、および第2の領域R2はそれぞれ、基体2の第1の領域R1、および第2の領域R2に対応している。すなわち、ロール原盤11の第1の領域R1に形成された平面Sp1は、基体2の第1の領域R1に平面Sp1を形成するためのものである。ロール原盤11の第2の領域R2に形成された波面Sw2は、基体2の第2の領域R2に波面Sw2を形成するためのものである。具体的には、ロール原盤11の波面Sw2は、上述の基体2の表面の波面Sw2の凹凸形状を反転した形状を有している。すなわち、ロール原盤11の構造体12は、上述の基体2の表面の構造体3の凹凸形状を反転した形状を有している。
【0057】
[露光装置の構成]
図6は、ロール原盤露光装置の一構成例を示す概略図である。以下、図6を参照して、ロール原盤露光装置の構成について説明する。なお、このロール原盤露光装置は、例えば、光学ディスク記録装置をベースとして構成することが可能である。
【0058】
レーザー光源21は、記録媒体としての原盤11の表面に着膜されたレジストを露光するための光源であり、例えば波長λ=266nmの記録用のレーザー光14を発振するものである。レーザー光源21から出射されたレーザー光14は、平行ビームのまま直進し、電気光学素子(EOM:Electro Optical Modulator)22へ入射する。電気光学素子22を透過したレーザー光14は、ミラー23で反射され、変調光学系25に導かれる。
【0059】
ミラー23は、偏光ビームスプリッタで構成されており、一方の偏光成分を反射し他方の偏光成分を透過する機能をもつ。ミラー23を透過した偏光成分はフォトダイオード24で受光され、その受光信号に基づいて電気光学素子22を制御してレーザー光14の位相変調を行う。
【0060】
変調光学系25において、レーザー光14は、集光レンズ26により、ガラス(SiO2)などからなる音響光学素子(AOM:Acoust-Optic Modulator)27に集光される。レーザー光14は、音響光学素子27により強度変調され発散した後、レンズ28によって平行ビーム化される。変調光学系25から出射されたレーザー光14は、ミラー31によって反射され、移動光学テーブル32上に水平かつ平行に導かれる。
【0061】
移動光学テーブル32は、ビームエキスパンダ33、および対物レンズ34を備えている。移動光学テーブル32に導かれたレーザー光14は、ビームエキスパンダ33により所望のビーム形状に整形された後、対物レンズ34を介して、原盤11上のレジスト層へ照射される。原盤11は、スピンドルモータ35に接続されたターンテーブル36の上に載置されている。そして、原盤11を回転させるとともに、レーザー光14を原盤11の高さ方向に移動させながら、レジスト層へレーザー光14を間欠的に照射することにより、レジスト層の露光工程が行われる。形成された潜像は、円周方向に長軸を有する略楕円形になる。レーザー光14の移動は、移動光学テーブル32の矢印R方向への移動によって行われる。
【0062】
露光装置は、例えば、四方格子または六方格子などの所定の2次元パターンに対応する潜像をレジスト層に形成するための制御機構37を備えている。制御機構37は、フォマッター29とドライバ30とを備える。フォマッター29は、極性反転部を備え、この極性反転部が、レジスト層に対するレーザー光14の照射タイミングを制御する。ドライバ30は、極性反転部の出力を受けて、音響光学素子27を制御する。
【0063】
このロール原盤露光装置では、2次元パターンが空間的にリンクするように1トラック毎に極性反転フォマッター信号と記録装置の回転コントロラーを同期させ信号を発生し、音響光学素子27により強度変調している。角速度一定(CAV)で適切な回転数と適切な変調周波数と適切な送りピッチでパターニングすることにより、四方格子または六方格子パターンなどの所定の2次元パターンを記録することができる。
【0064】
[導電性素子の製造方法]
以下、図7〜図9を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る導電性素子1の製造方法の一例について説明する。
【0065】
(レジスト成膜工程)
まず、図7Aに示すように、円柱状または円筒状のロール原盤11を準備する。このロール原盤11は、例えばガラス原盤である。次に、図7Bに示すように、ロール原盤11の表面にレジスト層13を形成する。レジスト層13の材料としては、例えば有機系レジスト、および無機系レジストのいずれを用いてもよい。有機系レジストとしては、例えばノボラック系レジストや化学増幅型レジストを用いることができる。また、無機系レジストとしては、例えば、1種または2種以上含む金属化合物を用いることができる。
【0066】
(露光工程)
次に、図7Cに示すように、上述したロール原盤露光装置を用いて、ロール原盤11を回転させると共に、レーザー光(露光ビーム)14をレジスト層13に照射する。このとき、レーザー光14をロール原盤11の高さ方向(円柱状または円筒状のロール原盤11の中心軸に平行な方向)に移動させながら、レーザー光14を照射する。この際、配線パターン間の絶縁領域に対応する第2の領域R2のみに潜像を形成し露光部とするのに対して、導電パターン部に対応する第1の領域R1は露光せず、非露光部とする。レーザー光14の軌跡に応じた潜像15は、例えば、可視光の波長以下のピッチで形成される。
【0067】
潜像15は、例えば、ロール原盤表面において複数列のトラックをなすように配置されるとともに、四方格子パターンまたは六方格子パターンなどの所定の2次元パターンを形成する。潜像15は、例えば、トラックの延在方向に長軸方向を有する楕円形状である。
【0068】
(現像工程)
次に、例えば、ロール原盤11を回転させながら、レジスト層13上に現像液を滴下して、図8Aに示すように、レジスト層13を現像処理する。図示するように、レジスト層13をポジ型のレジストにより形成した場合には、レーザー光14で露光した露光部は、非露光部と比較して現像液に対する溶解速度が増すので、潜像(露光部)15に応じたパターンがレジスト層13に形成される。これにより、第2の領域R2のレジスト層13には、四方格子パターンまたは六方格子パターンなどの所定の2次元パターンの開口部が形成されるのに対して、第1の領域R1のレジスト層13には、開口部が形成されず、第1の領域R1全体はレジスト層13に覆われた状態が維持される。すなわち、第2の領域R2のみに開口パターンを有するマスクがロール原盤表面に形成される。
【0069】
(エッチング工程)
次に、ロール原盤11の上に形成されたレジスト層13のパターン(レジストパターン)をマスクとして、ロール原盤11の表面をロールエッチング処理する。これにより、ロール原盤表面のうち第2の領域R2では、開口部を介してエッチングが進行し、図8Bに示すように、第2の領域の領域R2には、トラックの延在方向に長軸方向をもつ楕円錐形状または楕円錐台形状などの構造体(凹部)12が形成される。一方、ロール原盤表面のうち第1の領域R1では、この領域全体がレジスト層13に覆われているため、エッチングは施されず、平面状のロール原盤表面が維持される。エッチング方法としては、例えばドライエッチングを用いることができる。
【0070】
(転写工程)
次に、例えば、図8Cに示すように、ロール原盤11と、転写材料15を塗布したフィルムなどの基体2とを密着させ、紫外線などのエネルギー線を照射して転写材料15を硬化させた後、硬化した転写材料15と一体となった基体2を剥離する。これにより、図9Aに示すように、平面Sp1が形成された第1の領域R1と、波面Sw2が形成された第2の領域R2とを有する基体2が得られる。
【0071】
転写材料15としては、例えば、エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いることができる。エネルギー線硬化性樹脂組成物は、エネルギー線を照射することによって硬化させることができる樹脂組成物である。エネルギー線とは、電子線、紫外線、赤外線、レーザー光線、可視光線、電離放射線(X線、α線、β線、γ線など)、マイクロ波、高周波などのラジカル、カチオン、アニオンなどの重合反応の引き金と成りうるエネルギー線を示す。エネルギー線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、他の樹脂と混合して用いるようにしてもよく、例えば熱硬化性樹脂組成物などの他の硬化性樹脂組成物と混合して用いてもよい。また、エネルギー線硬化性樹脂組成物は、有機無機ハイブリッド材料であってもよい。また、2種以上のエネルギー線硬化性樹脂組成物を混合して用いるようにしてもよい。エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、紫外線により硬化する紫外線硬化樹脂を用いることが好ましい。
【0072】
紫外線硬化性樹脂組成物は、例えば、単官能モノマー、二官能モノマー、多官能モノマーなどからなり、具体的には、以下に示す材料を単独または、複数混合したものである。
単官能モノマーとしては、例えば、カルボン酸類(アクリル酸)、ヒドロキシ類(2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート)、アルキル、脂環類(イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート)、その他機能性モノマー(2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレンクリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、2−(パーフルオロオクチル)エチル アクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−パーフルオロオクチルー2−ヒドロキシプロピル アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル アクリレート、2−(パーフルオロー3−メチルブチル)エチル アクリレート)、2,4,6−トリブロモフェノールアクリレート、2,4,6−トリブロモフェノールメタクリレート、2−(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エチルアクリレート)、2−エチルヘキシルアクリレートなどを挙げることができる。
【0073】
二官能モノマーとしては、例えば、トリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、トリメチロールプロパン ジアリルエーテル、ウレタンアクリレートなどを挙げることができる。
【0074】
多官能モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートなどを挙げることができる。
【0075】
開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンなどを挙げることができる。
【0076】
紫外線硬化性樹脂組成物などのエネルギー線硬化性樹脂組成物に対して、フィラーや機能性添加剤などを添加してもよい。フィラーとしては、例えば、無機微粒子および有機微粒子のいずれも用いることができる。無機微粒子としては、例えば、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Al2O3などの金属酸化物微粒子を挙げることができる。機能性添加剤としては、例えば、レベリング剤、表面調整剤、消泡剤などを挙げることができる。
【0077】
基体2の材料としては、例えば、メチルメタクリレート(共)重合体、ポリカーボネート、スチレン(共)重合体、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリウレタン、ガラスなどが挙げられる。
【0078】
基体2の成形方法は特に限定されず、例えば射出成形法、押し出し成形法、キャスト成形法などを用いることができる。必要に応じて、コロナ処理などの表面処理を基体表面に施すようにしてもよい。
【0079】
(積層膜の成膜工程)
次に、図9Bに示すように、基体表面の第1の領域R1および第2の領域R2に2層以上の層を積層することにより、積層膜4を形成する。具体的には例えば、基体表面の第1の領域R1および第2の領域R2に導電層4a、機能層4bをこの順序で積層することにより、積層膜4を形成する。積層膜4の成膜方法としては、例えば、熱CVD、プラズマCVD、光CVDなどのCVD法(Chemical Vapor Deposition(化学蒸着法):化学反応を利用して気相から薄膜を析出させる技術)のほか、真空蒸着、プラズマ援用蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどのPVD法(Physical Vapor Deposition(物理蒸着法):真空中で物理的に気化させた材料を基板上に凝集させ、薄膜を形成する技術)を用いることができる。また、基体2を加熱しながら、積層膜4を形成するようにしてもよい。
【0080】
(アニール工程)
次に、必要に応じて、積層膜4に対してアニール処理を施す。これにより、積層膜4または積層膜4に含まれる無機透明導電層が、例えばアモルファスと多結晶との混合状態となる。
【0081】
(積層膜の除去工程)
次に、図9Cに示すように、積層膜4が形成された基体表面に対して、エッチング処理を施す。これにより、第2の領域R2では積層膜4が除去されるのに対して、第1の領域R1では積層膜4が残留する。具体的には例えば、第2の領域R2では導電層4a、機能層4bが除去されるのに対して、第1の領域R1では導電層4a、機能層4bが残留する。したがって、第1の領域R1に形成された積層膜4は導電パターン部として機能するのに対して、第2の領域R2は上記導電パターン部間の絶縁領域として機能する。エッチングとしては、ウェットエッチングまたはドライエッチングを用いることができ、両者を組み合わせて用いるようにしてもよい。ウエットエッチングのエッチング液としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸および塩化第二鉄のうち1種類以上が用いることができる。また、シュウ酸、リン酸・酢酸・硝酸の混酸、硝酸第二セリウムアンモニウム水溶液をエッチング液として用いるようにしてもよい。ドライエッチングとしては、プラズマエッチング、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)を用いることができる。
【0082】
ここで、除去とは、(1)第2の領域R2から積層膜4を完全になくすこと、(2)第2の領域R2にて導電性を示さない程度まで積層膜2を不連続な状態(例えば島状の状態)にすること、または(3)第2の領域R2にて導電性を示さない程度の薄さまで積層膜4を薄くすることを意味する。
【0083】
具体的には、平面Sp1および波面Sw2上に形成された積層膜4の膜質や相状態等の違いを利用して、波面Sw2上に形成された積層膜4を実質的に除去するのに対して、平面Sp1上に形成された積層膜4を連続的につながるように残留させることが好ましい。これにより、平面Sp1および波面Sw2のうち平面Sp1上に選択的に導電パターン部を形成することができる。
【0084】
また、平面Sp1および波面Sw2上に形成された積層膜4の膜質や相状態等の違いを利用して、波面Sp上に形成された積層膜4を除去して島状などに不連続にするのに対して、平面Sp1上に形成された積層膜4を連続的につながるように残留させることが好ましい。これにより、平面Sp1および波面Sw2のうち平面Sp1上に選択的に導電パターン部を形成することができる。
【0085】
また、平面Sp1および波面Sw2上に形成された積層膜4の膜質や相状態等の違いを利用して、波面Sw2上に形成された積層膜4の厚さを平面Sp1上に形成された積層膜4の厚さに比して大幅に薄くすることが好ましい。これにより、平面Sp1および波面Sw2のうち平面Sp1上に選択的に導電パターン部を形成することができる。
【0086】
(洗浄工程)
次に、必要に応じて、エッチング処理を施した基体表面を洗浄する。
以上により、目的とする導電性素子1が得られる。
【0087】
第1の実施形態では、平面Sp1および波面Sw2を有する基体表面に対して、2層以上の層を積層して積層膜4を形成する。そして、平面Sp1および波面Sw2に形成した積層膜4の状態の違いを利用して、平面Sp1および波面Sw2の波面のうち、波面Sw2上に形成された積層膜4を除去するのに対して、平面Sp1上に形成された積層膜4を残すことにより、導電パターン部を形成する。したがって、精細かつ高スループットの導電性素子1を実現できる。
【0088】
<2.第2の実施形態>
[導電性素子の構成]
図10Aは、本発明の第2の実施形態に係る導電性素子の一構成例を示す平面図である。図10Bは、図10Aに示したB−B線に沿った断面図である。図10Cは、図10Bに示した第1の領域の一部を拡大して表す断面図である。図10Dは、図10Bに示した第2の領域の一部を拡大して表す断面図である。第2の実施形態に係る導電性素子1は、第1の領域R1に形成された第1の波面Sw1と、第2の領域R2に形成された第2の波面Sw2との違い(例えば振動の平均幅の違い)を利用して、第1の領域R1と第2の領域R2とに成膜された積層膜4のエッチング速度を変化させて、配線パターンなどを形成している点において、第1の実施形態とは異なっている。
【0089】
(第1の領域、第2の領域)
第1の領域R1の基体表面には第1の波面Sw1が形成され、この第1の波面Sw1上には積層膜4が連続的に形成されている。一方、第2の領域R2の基体表面には第2の波面Sw1が形成され、この第2の波面Sw2上には積層膜4が形成されていない状態となっている。第1の波面Sw1および第2の波面Sw2は、例えば可視光の波長以下の波長を有する波面である。したがって、第2の領域R2は、隣接する第2の領域R2に形成された積層膜4の間を絶縁するための絶縁領域として機能する。これに対して、第1の領域R1に連続的に形成された積層膜4は、第1の領域R1の延在方向に向かって導電性を有し、導電パターン部として機能する。
また、波面Sw1の平均波長λm1、および波面Sw2の平均波長λm2は、好ましくは100μm以下の範囲である。平均波長λm1、および平均波長λm2が100μmを超えると、インプリントと膜形成の際に段差、カバレッジに問題が発生し不具合が生じる。
【0090】
積層膜4は、第1の領域R1において第1の構造体31による反射防止効果を阻害しないように、第1の構造体31の表面形状に倣って形成され、第1の構造体31と積層膜4との表面形状がほぼ相似形状であることが好ましい。積層膜4の形成による屈折率プロファイルの変化を抑制し、優れた反射防止特性および/または透過特性を維持できるからである。積層膜4を構成する材料は、アモルファスと多結晶との混合状態であることが好ましい。第1の構造体31の高さを低くした場合にも、第1の構造体31の反射防止効果を阻害しないような膜厚で積層膜4を形成することができるからである。すなわち、積層膜4が第1の構造体31の形状に倣った形状を維持することができるからである。
【0091】
第2の波面Sw2の平均波長λm2に対する振動の平均幅Am2の比率(Am2/λm2)は、第1の波面Sw1の平均波長λm1に対する振動の平均幅Am1の比率(Am1/λm1)よりも大きいことが好ましい。これにより、光学特性と電気的選択性を両立できるからである。具体的には、比率(Am1/λm1)および比率(Am2/λm2)が、以下の関係を満たすことが好ましい。
0<(Am1/λm2)<(Am2/λm2)≦1.8
(但し、Am1:波面Sw1の振動の平均幅、Am2:波面Sw2の振動の平均幅、λm1:波面Sw1の平均波長、λm2:波面Sw2の平均波長)
比率(Am2/λm2)>1.8であると、波面Sw2を転写する際に剥離不良となり波面Sw2が破壊される傾向がある。
ここで、波面Sw1の比率(Am1/λm1)は、第1の実施形態における波面Sw2と同様にして測定したものである。
【0092】
波面Sw1、および波面Sw2の形状、波長および振動の幅はそれぞれ独立に選択することが可能である。具体的には例えば、波面Sw1、および波面Sw2はそれぞれ独立に、1次元的または2次元的な波面とすることが可能である。また、波面Sw1、および波面Sw2の波長および振動の幅はそれぞれ独立に、ナノオーダーまたはミクロンオーダーの波長および振動の幅とすることが可能である。
【0093】
第2の領域R2には積層膜4の一部が残留膜として完全に存在しないことが好ましいが、第2の領域R2が絶縁領域として機能する程度であれば残留膜として存在していてもよい。この場合、第1の領域R1に形成された積層膜4の面積は、第2の領域R2に形成された積層膜4またはその一部の面積よりも大きいことが好ましい。具体的には、第1の領域R1には積層膜4が連続的に形成されているのに対して、第2の領域R2には積層膜4またはその一部が島状などに不連続に形成されていることが好ましい。また、第2の領域R2に形成された積層膜4またはその一部の厚さが、実質的に導電性を示さないほどに、第1の領域R1に形成された積層膜4の厚さよりも薄く、第2の領域R2が絶縁領域として機能するようにしてもよい。
【0094】
(構造体)
第1の波面Sw1は、例えば可視光の波長以下の配置ピッチで多数の第1の構造体31が形成された凹凸面である。第2の波面Sw2は、例えば可視光の波長以下の配置ピッチで多数の第1の構造体32が形成された凹凸面である。第1の構造体32の平均アスペクト比(Hm1/Pm1)は、第2の構造体31の平均アスペクト比(Hm2/Pm2)に比して大きいことが好ましい。具体的には、第1の構造体31、および第2の構造体32が以下の関係を満たしていることが好ましい。
0<(Hm1/Pm1)<(Hm2/Pm2)≦1.8
(但し、Hm1:第1の構造体31の平均高さ、Hm2:第2の構造体32の平均高さ、Pm1:第1の構造体31の平均配置ピッチ、Pm2:第2の構造体32の平均配置ピッチ)
比率(Hm2/Pm2)>1.8であると、第2の構造体32を転写する際に剥離不良となり構造体32が破壊される傾向がある。
【0095】
ここで、第1の構造体31のアスペクト比(Hm1/Pm1)、および第2の構造体32のアスペクト比(Hm2/Pm2)は、第1の実施形態における構造体3のアスペクト比(Hm/Pm)と同様にして測定したものである。
第1の構造体31、および第2の構造体32において、上記以外のことは第1の実施形態における構造体3と同様とすることができる。なお、第1の構造体31、および第2の構造体32の配置パターンや形状などは同一である必要はなく、両構造体が異なる配置パターンや形状などをとるようにしてもよい。
【0096】
[ロール原盤の構成]
図11Aは、基体2を作製するためのロール原盤の一部を拡大して表す斜視図である。図11Bは、図11Aに示したロール原盤の一部を拡大して表す断面図である。第2の実施形態に係るロール原盤11は、第1の領域R1および第2の領域R2の両領域にそれぞれ、第1の波面Sw1および第2の波面Sw2を備える点において、第1の実施形態のものとは異なっている。
【0097】
ロール原盤11の第1の波面Sw1は、例えば可視光の波長以下のピッチで凹状の第1の構造体121を配列することにより形成されている。ロール原盤11の第2の波面Sw2は、例えば可視光の波長以下のピッチで凹状の第2の構造体122を配列することにより形成されている。ロール原盤11の第1の波面Sw1、第2の波面Sw2はそれぞれ、基体2の第1の波面Sw1、第2の波面Sw2の凹凸を反転した形状を有している。
【0098】
ロール原盤11の第1の領域R1および第2の領域R2はそれぞれ、基体2の第1の領域R1および第2の領域R2に対応している。すなわち、ロール原盤11の第1の領域R1に形成された凹状の構造体121は、基体2の第1の領域R1に形成された凸状の構造体31を形成するためのものである。ロール原盤11の第2の領域R2に形成された凹状の構造体122は、基体2の第2の領域R2に形成された凸状の構造体32を形成するためのものである。第2の構造体122のアスペクト比は、第1の構造体121のアスペクト比に比して大きいことが好ましい。
【0099】
[導電性素子の製造方法]
第2の実施形態におけるエッチング工程では、積層膜4が形成された基体表面に対してエッチング処理を施すことにより、第2の領域R2では積層膜4が除去されるのに対して、第1の領域R1では積層膜4が残留する。具体的には、第1の波面Sw1および第2の波面Sw2上に形成された積層膜4の膜質や相状態等の違いを利用して、第2の波面Sw2上に形成された積層膜4を実質的に除去するのに対して、第1の波面Sw1上に形成された積層膜4を連続的につながるように残留させることが好ましい。これにより、第1の波面Sw1および第2の波面Sw2のうち第1の波面Sw1上に選択的に導電パターン部を形成することができる。
【0100】
また、第1の波面Sw1および第2の波面Sw2上に形成された積層膜4の膜質や相状態等の違いを利用して、第2の波面Sw2上に形成された積層膜4を除去して島状などに不連続にするのに対して、第1の波面Sw1上に形成された積層膜4を連続的につながるように残留させることが好ましい。これにより、第1の波面Sw1および第2の波面Sw2のうち第1の波面Sw1上に選択的に導電パターン部を形成することができる。
【0101】
また、第1の波面Sw1および第2の波面Sw2上に形成された積層膜4の膜質や相状態等の違いを利用して、第2の波面Sw2上に形成された積層膜4の厚さを第1の波面Sw1上に形成された積層膜4の厚さに比して大幅に薄くすることが好ましい。これにより、第1の波面Sw1および第2の波面Sw2のうち第1の波面Sw1上に導電パターン部を選択的に形成することができる。
【0102】
第2の実施形態では、第1の領域R1および第2の領域R2の両領域にそれぞれ構造体31および構造体32を形成しているので、導電性素子1の反射防止特性を向上することができる。このような構成とする場合、導電パターン部として機能する第1の領域R1の積層膜4は、第1の領域R1に形成された構造体31の形状に倣った形状とすることが好ましい。これにより、反射防止特性および/または透過特性の効果の低下を抑制することができるからである。
【0103】
変調(例えば振幅変調および/または周波数変調)が施された波面を基体表面に形成し、その基体表面上に積層膜4を形成することで、基体2の波面の変調の違いに応じて、積層膜4の状態を変化させることができる。したがって、基体2の波面の変調の違いに応じて、エッチング溶液に対する積層膜4の溶解度を変化させることができる。すなわち、基体2の波面の変調の違いを利用して、基体表面に所望の導電パターン部を形成することができる。
【0104】
基体表面の波面をナノ構造体により形成した場合には、視認性および光学特性を向上することもできる。光学特性を劣化させずに所望の電気抵抗を実現することができる。
【0105】
導電層からなる配線を基体表面に形成する従来の情報入力装置(例えば、デジタル式抵抗タッチパネルや静電容量式タッチパネルなど)では、導電層と基材とは反射率が異なるため、配線が見えて表示品質が劣化する傾向がある。これに対して、本発明の実施形態に係る情報入力装置では、積層膜4の有無にかかわらず、低反射および高透過率を実現しているため、配線の視認を抑制できる。
【0106】
<3.第3の実施形態>
図12Aは、本発明の第4の実施形態に係る導電性素子の一構成例を示す断面図である。第3の実施形態に係る導電性素子1は、基体2の両主面に第1の領域R1および第2の領域R2を設定し、両領域のうち第1の領域R1にのみ連続的に積層膜4を形成することで、基体両面に導電パターン部を形成している点において、第1の実施形態とは異なっている。また、図12Bに示すように、基体2に第1の領域R1にスルーホール(貫通孔)を形成し、このスルーホールに導体インクなどの導電材料を埋め込み、基体2の両面に形成された回路などの導電パターン部を電気的に接続するようにしてもよい。
【0107】
第3の実施形態では、基体2の両面に導電パターン部を形成しているので、第1の実施形態よりも多くの回路などを導電性素子1に搭載することが可能となる。
【0108】
<4.第4の実施形態>
図13Aは、本発明の第4の実施形態に係る導電性素子の一構成例を示す平面図である。図13Bは、図13Aに示したB−B線に沿った断面図である。図13Cは、図13Bに示した第1の領域の一部を拡大して表す断面図である。図13Dは、図13Bに示した第2の領域の一部を拡大して表す断面図である。第4の実施形態に係る導電性素子1は、凹部である構造体3が基体表面の第2の領域R2に多数配列されている点において、第1の実施形態のものとは異なっている。
この第4の実施形態において、上記以外のことは、第1の実施形態と同様である。
【0109】
この第4の実施形態では、第1の実施形態における凸形状の構造体3の形状を反転して凹形状としているので、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0110】
<5.第5の実施形態>
図14は、本発明の第5の実施形態に係る液晶表示素子の一構成例を示す斜視図である。図14に示すように、液晶表示素子は、パッシブマトリックス駆動方式(単純マトリックス駆動方式ともいう。)の表示素子であり、所定間隔を離して対向配置された第1の基材101および第2の基材111と、第1の基材101および第2の基材111の間に配置された液晶層121とを備える。
【0111】
第1の基材101の両主面のうち、第2の基材111に対向する一主面には、直線状の第1の領域R1および第2の領域R2が交互に繰り返し設定されている。第1の領域R1および第2の領域R2における第1の基材101の表面構造は、上述の第1〜第4の実施形態のいずれかの導電性素子における基体の表面構造と同様である。例えば、第1の領域R1における第1の基材表面は、可視光の波長以下の配置ピッチで構造体が多数形成されて波面とされ、残留膜が島状などに不連続的に形成されている。これに対して、第2の領域R2には、構造体が形成されず平面状とされ、積層膜が連続的に形成されている。したがって、第1の基材101の両主面のうち、第2の基材111に対向する一主面には、連続的に形成された積層膜からなる複数の横(X)電極(第1の電極)102がストライプ状に形成されている。
【0112】
第2の基材111の両主面のうち、第1の基材101に対向する一主面には、直線状の第1の領域R1および第2の領域R2が交互に繰り返し設定されている。第1の領域R1および第2の領域R2における第2の基材111の表面構造は、上述の第1〜第4の実施形態のいずれかの導電性素子における基体の表面構造と同様である。例えば、第1の領域R1における第2の基材表面は、可視光の波長以下の配置ピッチで構造体が多数形成されて波面とされ、残留膜が不連続的に島状などに形成されている。これに対して、第2の領域R2には、構造体が形成されず平面とされ、積層膜が連続的に形成されている。したがって、第2の基材111の両主面のうち、第1の基材101に対向する一主面には、連続的に形成された積層膜からなる縦(Y)電極(第2の電極)112がストライプ状に多数形成されている。
【0113】
第1の基材101および第2の基材111の第1の領域R1および第2の領域R2は、互いに直交する関係にある。すなわち、第1の基材101の横電極102と第2の基材111の縦電極112とは互いに直交する関係にある。
【0114】
第5の実施形態では、例えば波面の有無または構造体の有無を利用して液晶表示素子の電極を作製することができる。また、例えば波面の波長または構造体の配置ピッチを可視光の波長以下とした場合には、液晶表示素子の反射防止特性および/または透過特性を向上することができる。
【0115】
また、上述の第2の実施形態のように、第1の領域R1および第2の領域R2のそれぞれにアスペクト比などの異なる構造体を形成するようにしてもよい。これにより、液晶表示素子の反射防止特性および/または透過特性をさらに向上することができる。このような構成とする場合、横電極102および縦電極112として機能する第2の領域R2の透明積層膜は、第2の領域R2に形成された構造体の形状に倣った形状とすることが好ましい。これにより、構造体による反射防止および/または透過特性の効果の低下を抑制することができるからである。
【0116】
<6.第6の実施形態>
図15は、本発明の第6の実施形態に係るタッチパネルを備える表示装置の一構成例を示す斜視図である。図15に示すように、表示装置202上にタッチパネル(情報入力装置)201が設けられている。表示装置202とタッチパネル201とは、例えば粘着剤を介して貼り合わされている。また、タッチパネル201の表面にフロントパネル(表面部材)203をさらに備えるようにしてもよい。タッチパネル201とフロントパネル(表面部材)203とは、例えば粘着剤により貼り合わされる。
【0117】
表示装置201としては、例えば、液晶ディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(Plasma Display Panel:PDP)、エレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence:EL)ディスプレイ、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(Surface-conduction Electron-emitter Display:SED)などの各種表示装置を用いることができる。タッチパネル302は、例えば、抵抗膜方式または静電容量方式のタッチパネルである。抵抗膜方式のタッチパネルとしては、例えば、マトリックス抵抗膜方式のタッチパネルが挙げられる。静電容量方式のタッチパネルとしては、例えば、Wire Sensor方式またはITO Grid方式の投影型静電容量方式タッチパネルが挙げられる。
【0118】
(第1の構成例)
図16Aは、本発明の第6の実施形態に係るタッチパネルの第1の構成例を示す斜視図である。このタッチパネル201は、マトリックス抵抗膜方式のタッチパネルであり、ドットスペーサ(図示省略)を介して所定間隔を離して対向配置された第1の基材211と第2の基材221とを備える。
【0119】
図16Bは、第1の基材の一構成例を示す分解斜視図である。なお、第2の基材221は第1の基材211とほぼ同様の構成を有するので、分解斜視図の記載を省略する。第1の基材211の両主面のうち、第2の基材221に対向する一主面には、矩形状の第1の領域R1および第2の領域R2が交互に繰り返し設定されている。第1の領域R1および第2の領域R2における第1の基材211の表面構造は、上述の第1〜第4の実施形態のいずれかの導電性素子における基体の表面構造と同様である。例えば、第1の領域R1における第1の基材表面は、可視光の波長以下の配置ピッチで構造体が多数形成されて波面とされ、残留膜が島状などに不連続的に形成されている。これに対して、第2の領域R2における第1の基材表面は、構造体が形成されず平面状とされ、積層膜が連続的に形成されている。したがって、第1の基材211の両主面のうち、第2の基材221に対向する一主面には、連続的に形成された積層膜からなる複数の横(X)電極(第1の電極)212がストライプ状に形成されている。
【0120】
第2の基材221の両主面のうち、第1の基材211に対向する一主面には、矩形状の第1の領域R1および第2の領域R2が交互に繰り返し設定されている。第1の領域R1および第2の領域R2における第2の基材221の表面構造は、上述の第1〜第4の実施形態のいずれかの導電性素子における基体の表面構造と同様である。例えば、第1の領域R1における第2の基材表面は、可視光の波長以下の配置ピッチで構造体が多数形成されて波面とされ、残留膜が島状などに不連続的に形成されている。これに対して、第2の領域R2における第2の基材表面は、構造体が形成されず平面状とされ、積層膜が連続的に形成されている。したがって、第2の基材221の両主面のうち、第1の基材211に対向する一主面には、連続的に形成された積層膜からなる縦(Y)電極(第2の電極)222がストライプ状に多数形成されている。
【0121】
第1の基材211および第2の基材221の第1の領域R1および第2の領域R2は、互いに直交する関係にある。すなわち、第1の基材211の横電極212と第2の基材2211の縦電極221とは互いに直交する関係にある。
【0122】
(第2の構成例)
図17Aは、本発明の第6の実施形態に係るタッチパネルの第2の構成例を示す斜視図である。このタッチパネルは、ITO Grid方式の投影型静電容量方式タッチパネルであり、重ね合わされた第1の基材231と第2の基材241とを備える。
【0123】
図17Bは、第1の基材の一構成例を示す分解斜視図である。なお、第2の基材241は第1の基材231とほぼ同様の構成を有するので、分解斜視図の記載を省略する。第1の基材231の両主面のうち、第2の基材241に対向する一主面には、第1の領域R1および第2の領域R2が交互に繰り返し設定され、隣り合う第1の領域R1の間は第2の領域R2により隔てられている。第2の基材241の両主面のうち、第2の基材231に対向する一主面には、第1の領域R1および第2の領域R2が交互に繰り返し設定され、隣り合う第1の領域R1の間は第2の領域R2により隔てられている。第1の領域R1および第2の領域R2における第1の基材231および第2の基材241の表面構造は、上述の第1〜第4の実施形態のいずれかの導電性素子における基体の表面構造と同様である。
【0124】
第1の基材231の第1の領域R1は、所定形状の単位領域C1をX軸方向に繰り返し連結してなり、第2の領域R2は、所定形状の単位領域C2をX軸方向に繰り返し連結してなる。第2の基材241の第1の領域R1は、所定形状の単位領域C1をY軸方向に繰り返し連結してなり、第2の領域R2は、所定形状の単位領域C2をY軸方向に繰り返し連結してなる。単位領域C1および単位領域C2の形状としては、例えばダイヤモンド形状(菱形形状)、三角形状、四角形状などが挙げられるが、これらの形状に限定されるものではない。
【0125】
第1の領域R1における第1の基材表面または第2の基材表面は、例えば可視光の波長以下の配置ピッチで構造体が多数形成されて波面とされ、例えば残留膜が島状などに不連続的に形成されている。これに対して、第2の領域R2における第1の基材表面または第2の基材表面は、構造体が形成されず平面状とされ、積層膜が連続的に形成されている。したがって、第1の基材231の両主面のうち、第2の基材241に対向する一主面には、積層膜からなる複数の横(X)電極(第1の電極)232が配列されている。また、第2の基材241の両主面のうち、第1の基材231に対向する一主面には、積層膜からなる複数の縦(Y)電極(第2の電極)242が配列されている。横電極232および縦電極242は、第2の領域R2と同様の形状を有する。
【0126】
第1の基材231の横電極232と第2の基材241の縦電極242とは互いに直交する関係にある。第1の基材231と第2の基材241とを重ね合わせた状態において、第1の基材231の第1の領域R1と、第2の基材241の第2の領域R2とが重ね合わされ、第1の基材231の第2の領域R2と、第2の基材241の第1の領域R1とが重ね合わされる。
【0127】
第6の実施形態では、例えば波面の有無または構造体の有無を利用してタッチパネル201の電極を作製することができる。また、例えば波面の波長または構造体の配置ピッチを可視光の波長以下とした場合には、タッチパネル201の反射防止特性および/または透過特性を向上することができる。
【0128】
また、上述の第2の実施形態のように、第1の領域R1および第2の領域R2のそれぞれにアスペクト比などの異なる構造体を形成するようにしてもよい。これにより、タッチパネル201の反射防止特性および/または透過特性をさらに向上することができる。このような構成とする場合、電極として機能する第1の領域R1の積層膜は、第1の領域R1に形成された構造体の形状に倣った形状とすることが好ましい。これにより、構造体による反射防止効果および/または透過特性向上の効果の低下を抑制することができるからである。
【0129】
<7.第7の実施形態>
図18Aは、本発明の第10の実施形態に係るICカードの一構成例を示す平面図である。図18Bは、図18Aに示したICカードの一部を拡大して表す平面図である。このICカードは、いわゆる非接触型ICカードであり、基材301と、アンテナコイル302と、ICチップ303とを備える。アンテナコイル302の両端がICチップ303に対して接続されている。また、基材301の両面には外装材(図示省略)が設けられている。
【0130】
基材301の形状としては、フィルム状、シート状、基板状を用いることができるが、特にこれらの材料に限定されるものではなく、ICカード1に求められる特性に応じて任意に選択し使用することが可能である。基材102の材料としては、耐久性や利便性などの観点から、フレキシブル性を有する樹脂材料を用いることが好ましい。このような樹脂材料としては、例えば、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリイミド(PI)、ポリエステルを用いることができるが、特にこれらの材料に限定されるものではなく、従来公知の樹脂材料からICカードに求められる特性に応じて任意に選択し使用することが可能である。
【0131】
基材301の一主面の周縁部には、例えば、第1の領域R1と第1の領域R2とが交互に螺旋状に形成されている。第1の領域R1および第2の領域R2における基材301の表面構造は、上述の第1〜第4の実施形態のいずれかの導電性素子における基体の表面構造と同様である。例えば、第1の領域R1における基材表面は、微細ピッチで構造体が多数形成されて波面とされ、残留膜が島状などに不連続的に形成されている。これに対して、第2の領域R2における基材表面は、構造体が形成されず平面状とされ、積層膜が連続的に形成されている。したがって、基材301の一主面の周縁部には、連続的に形成された積層膜からなるアンテナコイル302が第2の領域R2の形状に倣って形成されている。なお、上述の第2の実施形態のように、第1の領域R1および第2の領域R2のそれぞれにアスペクト比などの異なる構造体を形成するようにしてもよい。
【0132】
外装材は、ICカードの表面および裏面を構成するものであり、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチルテレフタレート)、PEG(ポリエチレングリコール、配向PETなどの高分子材料を主成分とするが、特にこれらの材料に限定されるものではなく、従来公知の樹脂材料からICカードに求められる特性に応じて任意に選択し使用することが可能である。
【0133】
アンテナコイル302は、基材301上に複数回巻回されて形成されたループコイル形状の電磁誘導コイルであり、その両端はICチップ303に接続されている。アンテナコイル103は、リーダ/ライタから発せられる交流磁界を受信して交流電圧を誘起し、その交流電圧をICチップ303に供給する。
【0134】
ICチップ303は、アンテナコイル302から供給される電力により駆動し、ICカード1内の各部を制御する。例えば、ICチップ303は、アンテナコイル5を介してリーダ/ライタと通信を行う。具体的には、リーダ/ライタとの相互認証やデータのやり取りなどを行う。
【0135】
第7の実施形態では、例えば波面の有無または構造体の有無を利用してICカードのアンテナコイル302を作製することができる。したがって、エッチングなどを用いずにアンテナコイル302を作製することができるので、ICカードの生産性を向上することができる。
【0136】
<8.第8の実施形態>
図19Aは、本発明の第8の実施形態に係る表示装置の構成の一例を示す断面図である。図19Bは、図19Aに示した配線領域を拡大して表す拡大断面図である。図19Cは、図19Aに示した非配線領域を拡大して表す拡大断面図である。第8の実施形態において、第1の実施形態と同一の箇所または対向する箇所には同一の符号を付す。この表示装置400は、いわゆるマイクロカプセル電気泳動方式の電子ペーパーであり、第1の導電性素子401と、第1の導電性素子401と対向配置された第2の導電性素子402と、これらの両素子間に設けられたマイクロカプセル層(媒質層)403とを備える。ここでは、マイクロカプセル電気泳動方式の電子ペーパーに対して本発明を適用した例について説明するが、電子ペーパーはこの例に限定されるものではなく、対向配置された導電性素子間に媒質層が設けられた構成であれば本発明は適用可能である。ここで、媒質には液体および固体以外に、空気などの気体も含まれる。また、媒質には、カプセル、顔料および粒子などの部材が含まれていてもよい。マイクロカプセル電気泳動方式以外に本発明を適用可能な電子ペーパーとしては、例えばツイストボール方式、サーマルリライタブル方式、トナーディスプレイ方式、In−Plane型電気泳動方式、電子粉粒方式の電子パーパーなどが挙げられる。
【0137】
マイクロカプセル層403は、多数のマイクロカプセル431を含んでいる。マイクロカプセル内には、例えば、黒色粒子おび白色粒子が分散された透明な液体(分散媒)が封入されている。
【0138】
第1の導電性素子401は、第2の導電性素子402と対向する側に平面Sp1および波面Sw2を有する基体2と、この基体2の波面Sw2上に形成された積層膜4とを備える。また、必要に応じて、粘着剤などの貼合層411を介して、基体2をガラスなどの支持体412に貼り合わせるようにしてもよい。第2の導電性素子402は、第1の導電性素子401と対向する側に平面Sp1および波面Sw2を有する基体2と、この基体2の波面Sw2上に形成された積層膜4とを備える。
【0139】
第1の導電性素子401、および第2の導電性素子402が有する積層膜4は、電子ペーパー400の駆動方式に応じて所定の電極パターン状に形成されている。駆動方式としては、例えば単純マトリックス駆動方式、アクティブマトリックス駆動方式、セグメント駆動方式などが挙げられる。
この第8の実施形態において、上記以外のことは第1の実施形態と同様である。
【実施例】
【0140】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0141】
以下の実施例、比較例および参考例では、導電性シートの表面抵抗は4端子抵抗測定機にて測定した。なお、プローブ先端針の径はR100μmとし、針のピッチは1mmとした。
【0142】
(参考例1)
(転写工程)
まず、図20Aに示すように、平面領域(第1の領域)R1とナノ構造体形成領域(第2の領域)R2とが成形面にストライプ状に形成された石英マスタを準備した。次に、この石英マスタの成形面上に紫外線硬化樹脂を塗布し、易接着層付きPETシートを密着させて、紫外線を照射し硬化させながら、PETシートを剥離した。これにより、PETシート表面のうち、ナノ構造体形成領域(第2の領域)R2には凸状のナノ構造体が多数形成されるのに対して、平面領域(第1の領域)R1には平坦面が形成された光学シートが得られた。構造体の配置ピッチは250nm、構造体の高さは200nm、構造体の形状は円錐台、構造体の配列は六方配置であった。
【0143】
(成膜工程)
次に、スパッタリング法により、光学シートの成形面上にITO層を形成した。到達真空度は0.00015Pa、成膜時真空度は0.24Paとし、成膜時にはArガスとO2ガスとを導入し、その混合比率はAr:O2=200:13とした。また、膜厚が平板換算で30nmとなるように成膜条件を調整した。なお、平板換算膜厚は、構造体頂部の膜厚とほぼ等しくなる。
【0144】
(アニール工程)
次に、ITO層を形成した光学シートに対して、150℃、30分間の大気中アニールを施した。これにより、ITO層の多結晶化が促進された。次に、この促進の状態を確認すべく、X線回折(X‐ray diffraction:XRD)でITO層を測定したところ、In2O3のピークが確認された。
【0145】
(エッチング工程)
次に、アニール処理を施した光学シートを、PH=3程度の溶液に20秒間浸漬させた。
【0146】
(洗浄工程)
次に、エッチング処理を施した光学シートを純水により洗浄した。
以上により、目的とする透明導電性シートが得られた。
【0147】
(導通/非導通評価)
上述のようにして得られた実施例1に係る透明導電性シートの表面について、テスターを用いて導通および非導通を、図20Bに示すポイントで評価した。その評価結果を表1に示す。
【0148】
表1は、参考例1に係る透明導電性シートの評価結果を示す。
【表1】
【0149】
表1から以下のことがわかる。
透明導電性シート表面のうちナノ構造体形成領域(第2の領域)R2は絶縁状態となるのに対して、平面領域(第1の領域)R1は導通状態となる。したがって、インプリント工程、成膜工程およびエッチング工程を順次行うだけで、配線や電極などの所望の導電パターン部を基体表面に形成できる。すなわち、スループットを向上することができる
【0150】
(実施例1−1)
(転写工程)
まず、平面(第1の波面)を有する第1の領域と、波面(第2の波面)を有する第2の領域とが同一面上に交互にストライプ状に形成された石英マスタを作製した。
次に、この石英マスタの成形面上に紫外線硬化樹脂を塗布し、易接着層付きPETシートを密着させて、紫外線を照射し硬化させながら、PETシートを剥離した。これにより、第1の領域と第2の領域とが転写された光学シート(ナノインプリントフィルム)が作製された。
【0151】
(形状測定)
次に、作製した光学シートの転写面の平均波長λmおよび振動の平均幅Amを測定し、それらの測定値から比率(Am/λm)を求めた。その結果を表2に示す。
【0152】
(成膜工程)
次に、スパッタリング法により、光学シートの成形面上にITO層を形成した。
以下に、ITO層成膜時における成膜条件を示す。
到達真空度:0.00015Pa
成膜時真空度:0.24Pa
ガス種:ArガスとO2ガスとの混合ガス
混合ガスの混合比率(体積比率):Ar:O2=200:13
平板換算膜厚:36nm
ここで、平板換算膜厚は、光学シート表面にITO層を形成した場合と同様の成膜条件にて、平板上にITO層を形成したときの膜厚であり、波面頂部の膜厚とほぼ等しくなる。
【0153】
次に、真空状態を保持したまま、スパッタリング法により、ITO層上にAg層を形成した。
以下に、Ag層成膜時における成膜条件を示す。
成膜時真空度:0.11Pa
ガス種:Arガス
ガス流量:100sccm
平板換算膜厚:200nm
【0154】
(表面抵抗測定)
次に、上述のようにして作製した光学シートの表面抵抗を測定した。その結果を表2に示す。
【0155】
(除去工程)
次に、光学シートをPH=3程度の溶液に20秒間浸漬させた。
【0156】
(洗浄工程)
次に、純水にて光学シートを洗浄した。
以上により、目的とする導電性シートが作製された。
【0157】
(表面抵抗測定)
次に、上述のようにして作製した導電性シートの表面抵抗を測定した。その結果を表2に示す。
【0158】
(実施例1−2)
(転写工程)
まず、波面(第1の波面)を有する第1の領域と、平面(第2の波面)を有する第2の領域とが同一面上に交互にストライプ状に形成された石英マスタを作製した。
次に、この石英マスタの成形面上に紫外線硬化樹脂を塗布し、易接着層付きPETシートを密着させて、紫外線を照射し硬化させながら、PETシートを剥離した。これにより、第1の領域と第2の領域とが転写された光学シート(ナノインプリントフィルム)が作製された。
【0159】
(形状測定)
次に、作製した光学シートの転写面の平均波長λmおよび振動の平均幅Amを測定し、それらの測定値から比率(Am/λm)を求めた。その結果を表3に示す。
【0160】
(成膜工程)
次に、スパッタリング法により、光学シートの成形面上にITO層を形成した。
以下に、ITO層成膜時における成膜条件を示す。
到達真空度:0.00015Pa
成膜時真空度:0.24Pa
ガス種:ArガスとO2ガスとの混合ガス
混合ガスの混合比率(体積比率):Ar:O2=200:13
平板換算膜厚:40nm
ここで、平板換算膜厚は、光学シート表面にITO層を形成した場合と同様の成膜条件にて、平板上にITO層を形成したときの膜厚であり、波面頂部の膜厚とほぼ等しくなる。
【0161】
次に、真空状態を保持したまま、スパッタリング法により、ITO層上にAg層を形成した。
以下に、Ag層成膜時における成膜条件を示す。
成膜時真空度:0.11Pa
ガス種:Arガス
ガス流量:100sccm
平板換算膜厚:200nm
【0162】
(表面抵抗測定)
次に、上述のようにして作製した光学シートの表面抵抗を測定した。その結果を表3に示す。
【0163】
(除去工程)
次に、光学シートをPH=3程度の溶液に60秒間浸漬させた。
【0164】
(洗浄工程)
次に、純水にて光学シートを洗浄した。
以上により、目的とする導電性シートが作製された。
【0165】
(表面抵抗測定)
次に、上述のようにして作製した導電性シートの表面抵抗を測定した。その結果を表3に示す。
【0166】
(表面観察)
次に、上述のようにして作製した導電性シートの表面を光学顕微鏡を用いて観察した。その結果を図21に示す。
【0167】
表2は、実施例1−1に係る導電性シートの測定結果を示す。
【表2】
【0168】
表3は、実施例1−2に係る導電性シートの測定結果を示す。
【表3】
【0169】
表2、表3から以下のことがわかる。
導電性シート表面のうち、波面を有する第2の領域では、除去工程においてITO層およびAg層が除去され絶縁状態となるのに対して、平面を有する第1の領域では、除去工程においてITO層およびAg層が除去されず残り導通状態が維持される。
したがって、電気抵抗を下げるため膜構成を多層構造とした場合でも、除去選択性を確保でき、平面領域ではITO層およびAg層を残すことができる。すなわち、低抵抗な配線を容易に作製することができる。
【0170】
(実施例1−3)
まず、第1の波面を有する第1の領域と、第2の波面を有する第2の領域とが同一面上に交互にストライプ状に形成された石英マスタを作製した。
次に、この石英マスタの成形面上に紫外線硬化樹脂を塗布し、易接着層付きPETシートを密着させて、紫外線を照射し硬化させながら、PETシートを剥離した。これにより、第1の領域と第2の領域と転写された光学シート(ナノインプリントフィルム)が作製された。
【0171】
(形状測定)
次に、作製した光学シートの転写面の平均波長λmおよび振動の平均幅Amを測定し、それらの測定値から比率(Am/λm)を求めた。その結果を表4に示す。
【0172】
(成膜工程)
次に、スパッタリング法により、光学シートの成形面上にITO層を形成した。
以下に、ITO層成膜時における成膜条件を示す。
到達真空度:0.00015Pa
成膜時真空度:0.24Pa
ガス種:ArガスとO2ガスとの混合ガス
混合ガスの混合比率(体積比率):Ar:O2=200:13
平板換算膜厚:36nm
ここで、平板換算膜厚は、光学シート表面にITO層を形成した場合と同様の成膜条件にて、平板上にITO層を形成したときの膜厚であり、構造体頂部の膜厚とほぼ等しくなる。
【0173】
次に、真空状態を保持したまま、スパッタリング法により、ITO層上にAg層を形成した。
以下に、Ag層成膜時における成膜条件を示す。
成膜時真空度:0.11Pa
ガス種:Arガス
ガス流量:100sccm
平板換算膜厚:200nm
【0174】
(表面抵抗測定)
次に、上述のようにして作製した光学シートの表面抵抗を測定した。その結果を表4に示す。
【0175】
(除去工程)
次に、光学シートをPH=3程度の溶液に20秒間浸漬させた。
【0176】
(洗浄工程)
次に、純水にて光学シートを洗浄した。
以上により、目的とする導電性シートが作製された。
【0177】
(表面抵抗測定)
次に、上述のようにして作製した導電性シートの表面抵抗を測定した。その結果を表4に示す。
【0178】
表4は、実施例1−3に係る導電性シートの測定結果を示す。
【表4】
【0179】
表4から以下のことがわかる。
導電性シート表面のうち、高い比率(Am/λm=0.76)を有する第2の領域では、除去工程においてITO層およびAg層が除去され絶縁状態となる。これに対して、低い比率(Am/λm=0.6)を有する第1の領域では、除去工程においてITO層およびAg層が除去されず残り導通状態が維持される。
したがって、第1の領域と第2の領域との両領域に波面を形成した場合でも、比率(Am/λm)の大きさを調整することで、除去選択性を確保でき、低い比率(Am/λm=0.6)を有する第1の領域ではITO層およびAg層を残すことができる。すなわち、低抵抗な配線を容易に作製することができる。
【0180】
(実施例2−1)
(転写工程)
まず、波面(第1の波面)を有する第1の領域と、平面(第2の波面)を有する第2の領域とが同一面上に交互にストライプ状に形成された石英マスタを作製した。
次に、この石英マスタの成形面上に紫外線硬化樹脂を塗布し、易接着層付きPETシートを密着させて、紫外線を照射し硬化させながら、PETシートを剥離した。これにより、第1の領域と第2の領域とが転写された光学シート(ナノインプリントフィルム)が作製された。
【0181】
(形状測定)
次に、作製した光学シートの転写面の平均波長λmおよび振動の平均幅Amを測定し、それらの測定値から比率(Am/λm)を求めた。その結果を表5に示す。
【0182】
(成膜工程)
次に、スパッタリング法により、光学シートの成形面上にITO層を形成した。
以下に、ITO層成膜時における成膜条件を示す。
到達真空度:0.00015Pa
成膜時真空度:0.24Pa
ガス種:ArガスとO2ガスとの混合ガス
混合ガスの混合比率(体積比率):Ar:O2=200:13
平板換算膜厚:36nm
ここで、平板換算膜厚は、光学シート表面にITO層を形成した場合と同様の成膜条件にて、平板上にITO層を形成したときの膜厚であり、構造体頂部の膜厚とほぼ等しくなる。
【0183】
次に、真空状態を保持したまま、スパッタリング法により、ITO層上にSiO2層を形成した。
以下に、SiO2層成膜時における成膜条件を示す。
成膜時真空度:0.28Pa
ガス種:ArガスとO2ガスとの混合ガス
Arガス流量:100sccm
O2ガス流量:180sccm
平板換算膜厚:5nm
【0184】
(表面抵抗測定)
次に、上述のようにして作製した光学シートの表面抵抗を測定した。その結果を表5に示す。
【0185】
(除去工程)
次に、光学シートをPH=3程度の溶液に60秒間浸漬させた。
【0186】
(洗浄工程)
次に、純水にて光学シートを洗浄した。
以上により、目的とする導電性シートが作製された。
【0187】
(表面抵抗測定)
次に、上述のようにして作製した導電性シートの表面抵抗を測定した。その結果を表5に示す。
【0188】
(比較例2−1)
SiO2層の形成を省略する以外は実施例2−1と同様にして光学シートを作製した。また、除去工程前後における光学シートの表面抵抗も実施例2−1と同様にして測定した。その結果を表6に示す。
【0189】
表5は、実施例2−1に係る導電性シートの測定結果を示す。
【表5】
【0190】
表6は、比較例2−1に係る光学シートの測定結果を示す。
【表6】
【0191】
表5、表6から以下のことがわかる。
実施例2−1において、導電性シート表面のうち、波面を有する第2の領域では、除去工程においてITO層およびSiO2層が除去され絶縁状態となるのに対して、平面を有する第1の領域では、除去工程においてITO層およびSiO2層が除去されず残り導通状態が維持される。
SiO2層のみを形成した比較例2−1においては、60秒の除去工程を経ると、波面および平面に関われず、ITO層およびSiO2層が除去され絶縁状態となる。
したがって、金属層であるAg層の代わりに、レジスト層であるSiO2層を用いた多層構造を採用した場合にも、除去選択性を確保でき、平面領域ではITO層およびSiO2層を残すことができる。また、SiO2層をITO層上に積層することで、除去工程におけるITO層の耐性を向上し、除去選択性を飛躍的に向上することができる。
【0192】
(実施例2−2)
まず、第1の波面を有する第1の領域と、第2の波面を有する第2の領域とが同一面上に交互にストライプ状に形成された石英マスタを作製した。
次に、この石英マスタの成形面上に紫外線硬化樹脂を塗布し、易接着層付きPETシートを密着させて、紫外線を照射し硬化させながら、PETシートを剥離した。これにより、第1の領域と第2の領域と転写された光学シート(ナノインプリントフィルム)が作製された。
【0193】
(形状測定)
次に、作製した光学シートの転写面の平均波長λmおよび振動の平均幅Amを測定し、それらの測定値から比率(Am/λm)を求めた。その結果を表7に示す。
【0194】
(成膜工程)
次に、スパッタリング法により、光学シートの成形面上にITO層を形成した。
以下に、ITO層成膜時における成膜条件を示す。
到達真空度:0.00015Pa
成膜時真空度:0.24Pa
ガス種:ArガスとO2ガスとの混合ガス
混合ガスの混合比率(体積比率):Ar:O2=200:13
平板換算膜厚:36nm
ここで、平板換算膜厚は、光学シート表面にITO層を形成した場合と同様の成膜条件にて、平板上にITO層を形成したときの膜厚であり、構造体頂部の膜厚とほぼ等しくなる。
【0195】
次に、真空状態を保持したまま、スパッタリング法により、ITO層上にSiO2層を形成した。
以下に、SiO2層成膜時における成膜条件を示す。
成膜時真空度:0.28Pa
ガス種:ArガスとO2ガスとの混合ガス
Arガス流量:100sccm
O2ガス流量:180sccm
平板換算膜厚:5nm
【0196】
(表面抵抗測定)
次に、上述のようにして作製した光学シートの表面抵抗を測定した。その結果を表7に示す。
【0197】
(除去工程)
次に、光学シートをPH=3程度の溶液に60秒間浸漬させた。
【0198】
(洗浄工程)
次に、純水にて光学シートを洗浄した。
以上により、目的とする導電性シートが作製された。
【0199】
(表面抵抗測定)
次に、上述のようにして作製した導電性シートの表面抵抗を測定した。その結果を表7に示す。
【0200】
(比較例2−2)
SiO2層の形成を省略する以外は実施例2−2と同様にして光学シートを作製した。また、除去工程前後における光学シートの表面抵抗も実施例2−2と同様にして測定した。その結果を表8に示す。
【0201】
表7は、実施例2−2に係る導電性シートの測定結果を示す。
【表7】
【0202】
表8は、比較例2−2に係る光学シートの測定結果を示す。
【表8】
【0203】
表7、表8から以下のことがわかる。
実施例2−2においては、導電性シート表面のうち、高い比率(Am/λm=0.64)を有する第2の領域では、除去工程においてITO層およびAg層が除去され絶縁状態となる。これに対して、低い比率(Am/λm=0.52)を有する第1の領域では、除去工程においてITO層およびSiO2層が除去されず残り導通状態が維持される。
ITO層のみを形成した比較例2−2においては、60秒の除去工程を経ると、高い比率(Am/λm)の大きさに関われず、ITO層およびSiO2層が除去され絶縁状態となる。
したがって、金属層であるAg層の代わりに、レジスト層であるSiO2層を用いた多層構造を採用した場合にも、比率(Am/λm)の大きさを調整することで、除去選択性を確保でき、低い比率(Am/λm=0.6)を有する第1の領域ではITO層およびSiO2層を残すことができる。また、SiO2層をITO層上に積層することで、除去工程におけるITO層の耐性を向上し、除去選択性を飛躍的に向上することができる。
【0204】
(参考例2−1)
(成膜工程)
まず、平滑な表面を有するPETシートを準備した。次に、スパッタリング法により、PETシート上にITO層を形成した。到達真空度は0.00015Pa、成膜時真空度は0.24Paとし、成膜時にはArガスとO2ガスとを導入し、その混合比率はAr:O2=20:1とした。また、ITO層の膜厚が30nmとなるように成膜条件を調整した。
【0205】
(アニール工程)
次に、ITO層を形成したPETシートに対して、150℃、60分間の大気中アニールを施した。これにより、ITO層の多結晶化が促進された。次に、この促進の状態を確認すべく、X線回折(X‐ray diffraction:XRD)でITO層を測定したところ、In2O3のピークが確認された。
以上により、目的とする光学シートが得られた。
【0206】
(参考例2−2)
(成膜工程、アニール工程)
まず、参考例2−1と同様にして成膜工程およびアニール工程を行い、アニール処理が施されたITO層を有するPETフィルムを作製した。
【0207】
(エッチング工程)
次に、アニール処理を施したPETフィルムを、PH=3程度の溶液に10秒間浸漬させて、ITO層をエッチングした。
【0208】
(洗浄工程)
次に、エッチング処理を施したPETシートに対して、純水洗浄、IPA(イソプロピルアルコール)洗浄、純粋洗浄を順次行った。
以上により、目的とする光学シートが得られた。
【0209】
(参考例2−3)
浸漬時間を20秒間に変更する以外は参考例2−2と同様にして光学シートを得た。
【0210】
(参考例2−4)
浸漬時間を30秒間に変更する以外は参考例2−2と同様にして光学シートを得た。
【0211】
(参考例2−5)
浸漬時間を40秒間に変更する以外は参考例2−2と同様にして光学シートを得た。
【0212】
(参考例2−6)
浸漬時間を50秒間に変更する以外は参考例2−2と同様にして光学シートを得た。
【0213】
(参考例2−7)
浸漬時間を60秒間に変更する以外は参考例2−2と同様にして光学シートを得た。
【0214】
(参考例3−1)
(転写工程)
まず、凹状のナノ構造体が成形面に形成された石英マスタを準備した。次に、ナノ構造体を形成した石英マスタに紫外線硬化樹脂を塗布し、易接着層付きPETシートを密着させ紫外線を照射し硬化させながら、PETシートを剥離した。これにより、ナノ構造体が多数表面に形成されたPETシートが得られた。
以下に、PETシート表面に形成されたナノ構造体の構成の詳細を示す。
構造体の配列:六方格子配列
構造体の凹凸形状:凸状
構造体の全体形状:円錐台
構造体の配置ピッチ:250nm
構造体の高さ:90nm
構造体のアスペクト比:0.36
【0215】
(成膜工程)
次に、スパッタリング法により、ナノ構造体が形成されたPETシート表面上にITO層を形成した。到達真空度は0.00015Pa、成膜時真空度は0.24Paとし、成膜時にはArガスとO2ガスとを導入し、その混合比率はAr:O2=20:1とした。また、膜厚が平板換算で30nmとなるように成膜条件を調整した。なお、平板換算膜厚は、ナノ構造体が形成されたPETシート表面にITO層を形成した場合と同様の成膜条件にて、平板上にITO層を形成したときの膜厚である。本発明者の知見によれば、平板換算膜厚は、構造体頂部の膜厚とほぼ等しくなる。
【0216】
(アニール工程)
次に、ITO層を形成したPETシートに対して、150℃、60分間の大気中アニールを施した。これにより、ITO層の多結晶化が促進された。次に、この促進の状態を確認すべく、X線回折(X‐ray diffraction:XRD)でITO層を測定したところ、In2O3のピークが確認された。
以上により、目的とする光学シートが得られた。
【0217】
(参考例3−2)
(成膜工程、アニール工程)
まず、参考例3−1と同様にして成膜工程およびアニール工程を行い、アニール処理が施されたITO層を有するPETフィルムを作製した。
【0218】
(エッチング工程)
次に、アニール処理を施したPETフィルムを、PH=3程度の溶液に10秒間浸漬させて、ITO層をエッチングした。
【0219】
(洗浄工程)
次に、エッチング処理を施したPETシートに対して、純水洗浄、IPA洗浄、純粋洗浄を順次行った。
以上により、目的とする光学シートが得られた。
【0220】
(参考例3−3)
浸漬時間を20秒間に変更する以外は参考例3−2と同様にして光学シートを得た。
【0221】
(参考例4−1)
構造体の配置ピッチを250nm、構造体の高さを120nm、アスペクト比を0.48とする以外は参考例3−1と同様にして光学シートを得た。
【0222】
(参考例4−2)
構造体の配置ピッチを250nm、構造体の高さを120nm、アスペクト比を0.48とする以外は参考例3−2と同様にして光学シートを得た。
【0223】
(参考例4−3)
構造体の配置ピッチを250nm、構造体の高さを120nm、アスペクト比を0.48とする以外は参考例3−3と同様にして光学シートを得た。
【0224】
(参考例5−1)
構造体の配置ピッチを250nm、構造体の高さを155nm、アスペクト比を0.62とする以外は参考例3−1と同様にして光学シートを得た。
【0225】
(参考例5−2)
構造体の配置ピッチを250nm、構造体の高さを155nm、アスペクト比を0.62とする以外は参考例3−2と同様にして光学シートを得た。
【0226】
(参考例5−3)
構造体の配置ピッチを250nm、構造体の高さを155nm、アスペクト比を0.62とする以外は参考例3−3と同様にして光学シートを得た。
【0227】
(参考例6−1)
(成膜工程、アニール工程)
以下のプレズムシートを用いる以外は参考例3−1と同様にして成膜工程およびアニール工程を行い、アニール処理が施されたITO層を有するプリズムシートを作製した。
以上により、目的とする光学シートが得られた。
以下に、プレズムシートの構成の詳細を示す。
プリズム(構造体)の配列:1次元配列
プリズムの凹凸形状:凸状
プリズムの形状:断面2等辺三角形状の柱状体
プリズムの配置ピッチ:10μm
プリズムの高さ:5μm
プリズムのアスペクト比:0.50
【0228】
(参考例6−2)
(成膜工程、アニール工程)
まず、参考例6−1と同様にして成膜工程およびアニール工程を行い、アニール処理が施されたITO層を有するプリズムシートを作製した。
【0229】
(エッチング工程)
次に、アニール処理を施したプリズムシートを、PH=3程度の溶液に10秒間浸漬させて、ITO層をエッチングした。
【0230】
(洗浄工程)
次に、エッチング処理を施したPETシートに対して、純水洗浄、IPA洗浄、純粋洗浄を順次行った。
以上により、目的とする光学シートが得られた。
【0231】
(参考例6−3)
浸漬時間を20秒間に変更する以外は参考例6−2と同様にして光学シートを得た。
【0232】
(参考例6−4)
浸漬時間を30秒間に変更する以外は参考例6−2と同様にして光学シートを得た。
【0233】
(参考例8−5)
浸漬時間を40秒間に変更する以外は参考例6−2と同様にして光学シートを得た。
【0234】
(表面抵抗)
上述のようにして得られた参考例2−1〜6−5の光学シート表面の表面抵抗値を4端針法にて測定した。その結果を表9に示す。
【0235】
(初期変化率の逆数)
上述のようにようにして得られた参考例2−1〜6−5の光学シート表面の初期変化率の逆数(仮想厚さの変化)を以下の式より求めた。その結果を表10および図22に示す。
(初期表面抵抗に対する変化率の逆数)=(エッチング前のサンプルの表面抵抗)/(エッチング後のサンプルの表面抵抗)
【0236】
表9は、参考例2−1〜6−5に係る光学シートの表面抵抗の評価結果を示す。
【表9】
【0237】
表10は、参考例2−1〜6−5に係る光学シートの初期変化率の逆数の評価結果を示す。
【表10】
【0238】
表9、表10および図22から以下のことがわかる。
平坦面上にITO層を形成した参考例2−1〜2−7では、エッチングによりITO層の膜厚に殆ど変化せず、表面抵抗がほぼ一定となる傾向がある。これに対して、多数の構造体上にITO層を形成した参考例3−1〜3−3、参考例4−1〜4−3、参考例5−1〜5−3では、エッチングによりITO層の膜厚が急激に減少し、表面抵抗が急激に上昇する傾向がある。
ミクロンオーダーの配置ピッチで多数の構造体を形成した参考例6−1〜6−5でも、
ナノオーダーの配置ピッチで多数の構造体を形成した参考例3−1〜3−3、参考例4−1〜4−3、参考例5−1〜5−3と同様の傾向を示す。
【0239】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0240】
例えば、上述の実施形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値などを用いてもよい。
【0241】
また、上述の実施形態の構成、方法、工程、形状、材料および数値などは、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0242】
また、上述の実施形態では、片面または両面に配線が形成された単層の導電性素子に対して本発明を適用した例を説明したが、本発明はこの例に限定されるものではなく、多層の導電性素子に対しても適用可能である。
【0243】
また、上述の実施形態では、平面状の基体表面に配線を形成する場合を例として説明したが、配線を形成する面は平面に限定されるものではなく、曲面状の基体表面に配線を形成するようにしてもよい。
【0244】
また、上述の実施形態では、液晶表示素子に対して本発明を適用した例を説明したが、本発明はこの例に限定されるものではなく、パッシブマトリックス駆動方式の種々の表示素子(例えばEL素子、電子ペーパーなど)に対しても適用可能である。
【0245】
また、上述の実施形態では、2つの基材を重ね合わせる構成を有する投影型静電容量方式タッチパネルに対して本発明を適用した例について説明したが、本発明はこの例に限定されるものではない。例えば、1つの基材の両面に電極を形成した構成を有する投影型静電容量方式タッチパネルに対しても本発明は適用可能である。
【0246】
また、上述の実施形態では、電子機器として表示装置や情報入力装置に本発明を適用する例について説明したが、本発明はこの例に限定されるものではなく、表示素子や配線素子(例えばプリント基板)などを備える種々の電子機器に対して適用可能である。
【符号の説明】
【0247】
1 導電性素子
2 基体
3 構造体
4 積層膜
11 ロール原盤
12 構造体
13 レジスト層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波面および第2の波面を有する基体と、
上記第1の波面上に形成された、2層以上の層が積層された積層膜と
を備え、
上記積層膜は、導電パターン部を形成し、
上記第1の波面および上記第2の波面が、以下の関係を満たす導電性素子。
0≦(Am1/λm1)<(Am2/λm2)≦1.8
(但し、Am1:第1の波面の振動の平均幅、Am2:第2の波面の振動の平均幅、λm1:第1の波面の平均波長、λm2:第2の波面の平均波長)
【請求項2】
上記第1の波面および上記第2の波面が、以下の関係を満たし、
上記第2の波面の平均波長λ2が、可視光の波長以下である請求項1記載の導電性素子。
(Am1/λm1)=0、0<(Am2/λm2)≦1.8
【請求項3】
上記第1の波面および上記第2の波面が、以下の関係を満たし、
上記第1の波面の平均波長λ1、および上記第2の波面の平均波長λ2が、可視光の波長以下である請求項1記載の導電性素子。
0<(Am1/λm1)<(Am2/λm2)≦1.8
【請求項4】
上記第1の波面および上記第2の波面が、以下の関係を満たし、
上記第2の波面の平均波長λ2が、100μm以上である請求項1記載の導電性素子。
(Am1/λm1)=0、0<(Am2/λm2)≦1.8
【請求項5】
上記第1の波面および上記第2の波面が、以下の関係を満たし、
上記第1の波面の平均波長λ1、および上記第2の波面の平均波長λ2が、100μm以上である請求項1記載の導電性素子。
0<(Am1/λm1)<(Am2/λm2)≦1.8
【請求項6】
上記第2の波面上に形成された、上記積層膜の一部からなる残留膜をさらに備え、
上記積層膜、および上記残留膜が、以下の関係を満たす請求項1記載の導電性素子。
S1>S2
(但し、S1:積層膜の面積、S2:残留膜の面積)
【請求項7】
上記第1の波面上に形成された積層膜は、上記第1の波面上に連続的に形成されているのに対して、上記第2の波面上に形成された残留膜は、上記第2の波面上に不連続的に形成されている請求項6記載の導電性素子。
【請求項8】
上記第2の波面上に形成された、上記積層膜の一部からなる残留膜をさらに備え、
上記積層膜、および上記残留膜が、以下の関係を満たす請求項1記載の導電性素子。
d1>d2
(但し、d1:積層膜の厚さ、d2:残留膜の厚さ)
【請求項9】
上記積層膜は、導電層と、該導電層上に形成された機能層とを備え、
上記機能層は、上記導電層とは異なる材料からなる請求項1記載の導電性素子。
【請求項10】
上記積層膜は、異なる除去速度の材料で構成されている請求項1記載の導電性素子。
【請求項11】
上記導電層は、酸化物半導体を含む透明導電層である請求項9記載の導電性素子。
【請求項12】
上記酸化物半導体は、インジウム錫酸化物、または酸化亜鉛を含んでいる請求項11記載の導電性素子。
【請求項13】
上記導電層は、アモルファスと多結晶との混合状態である請求項9記載の導電性素子。
【請求項14】
上記導電層は、Ag、Al、Au、Pt、Pd、Ni、Cr、Nb、W、Mo、TiおよびCuからなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでいる請求項9記載の導電性素子。
【請求項15】
上記機能層は、酸化物および遷移金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでいる請求項9記載の導電性素子。
【請求項16】
上記機能層は、上記導電層と異なる材料からなりAg、Al、Au、Pt、Pd、Ni、Cr、Nb、W、Mo、TiおよびCu選ばれる少なくとも1種を含んでいる請求項9記載の導電性素子。
【請求項17】
上記機能層は、アモルファスと多結晶との混合状態にある層、および多結晶化状態にある層の少なくとも1種を含んでいる請求項9記載の導電性素子。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか1項に記載の導電性素子を備える配線素子。
【請求項19】
請求項1から17のいずれか1項に記載の導電性素子を備える情報入力装置。
【請求項20】
請求項1から17のいずれか1項に記載の導電性素子を備える表示装置。
【請求項21】
請求項1から17のいずれか1項に記載の導電性素子を備える電子機器。
【請求項22】
第1の波面と第2の波面とを有する基体表面に対して、2層以上の層を積層して積層膜を形成する工程と、
上記第1の波面および上記第2の波面のうち、上記第2の波面上に形成された積層膜を除去するのに対して、上記第1の波面上に形成された積層膜を残すことにより、導電パターン部を形成する工程と
を備え、
上記第1の波面と上記第2の波面が、以下の関係を満たす導電性素子の製造方法。
0≦(Am1/λm1)<(Am2/λm2)≦1.8
(但し、Am1:第1の波面の振動の平均幅、Am2:第2の波面の振動の平均幅、λm1:第1の波面の平均波長、λm2:第2の波面の平均波長)
【請求項1】
第1の波面および第2の波面を有する基体と、
上記第1の波面上に形成された、2層以上の層が積層された積層膜と
を備え、
上記積層膜は、導電パターン部を形成し、
上記第1の波面および上記第2の波面が、以下の関係を満たす導電性素子。
0≦(Am1/λm1)<(Am2/λm2)≦1.8
(但し、Am1:第1の波面の振動の平均幅、Am2:第2の波面の振動の平均幅、λm1:第1の波面の平均波長、λm2:第2の波面の平均波長)
【請求項2】
上記第1の波面および上記第2の波面が、以下の関係を満たし、
上記第2の波面の平均波長λ2が、可視光の波長以下である請求項1記載の導電性素子。
(Am1/λm1)=0、0<(Am2/λm2)≦1.8
【請求項3】
上記第1の波面および上記第2の波面が、以下の関係を満たし、
上記第1の波面の平均波長λ1、および上記第2の波面の平均波長λ2が、可視光の波長以下である請求項1記載の導電性素子。
0<(Am1/λm1)<(Am2/λm2)≦1.8
【請求項4】
上記第1の波面および上記第2の波面が、以下の関係を満たし、
上記第2の波面の平均波長λ2が、100μm以上である請求項1記載の導電性素子。
(Am1/λm1)=0、0<(Am2/λm2)≦1.8
【請求項5】
上記第1の波面および上記第2の波面が、以下の関係を満たし、
上記第1の波面の平均波長λ1、および上記第2の波面の平均波長λ2が、100μm以上である請求項1記載の導電性素子。
0<(Am1/λm1)<(Am2/λm2)≦1.8
【請求項6】
上記第2の波面上に形成された、上記積層膜の一部からなる残留膜をさらに備え、
上記積層膜、および上記残留膜が、以下の関係を満たす請求項1記載の導電性素子。
S1>S2
(但し、S1:積層膜の面積、S2:残留膜の面積)
【請求項7】
上記第1の波面上に形成された積層膜は、上記第1の波面上に連続的に形成されているのに対して、上記第2の波面上に形成された残留膜は、上記第2の波面上に不連続的に形成されている請求項6記載の導電性素子。
【請求項8】
上記第2の波面上に形成された、上記積層膜の一部からなる残留膜をさらに備え、
上記積層膜、および上記残留膜が、以下の関係を満たす請求項1記載の導電性素子。
d1>d2
(但し、d1:積層膜の厚さ、d2:残留膜の厚さ)
【請求項9】
上記積層膜は、導電層と、該導電層上に形成された機能層とを備え、
上記機能層は、上記導電層とは異なる材料からなる請求項1記載の導電性素子。
【請求項10】
上記積層膜は、異なる除去速度の材料で構成されている請求項1記載の導電性素子。
【請求項11】
上記導電層は、酸化物半導体を含む透明導電層である請求項9記載の導電性素子。
【請求項12】
上記酸化物半導体は、インジウム錫酸化物、または酸化亜鉛を含んでいる請求項11記載の導電性素子。
【請求項13】
上記導電層は、アモルファスと多結晶との混合状態である請求項9記載の導電性素子。
【請求項14】
上記導電層は、Ag、Al、Au、Pt、Pd、Ni、Cr、Nb、W、Mo、TiおよびCuからなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでいる請求項9記載の導電性素子。
【請求項15】
上記機能層は、酸化物および遷移金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでいる請求項9記載の導電性素子。
【請求項16】
上記機能層は、上記導電層と異なる材料からなりAg、Al、Au、Pt、Pd、Ni、Cr、Nb、W、Mo、TiおよびCu選ばれる少なくとも1種を含んでいる請求項9記載の導電性素子。
【請求項17】
上記機能層は、アモルファスと多結晶との混合状態にある層、および多結晶化状態にある層の少なくとも1種を含んでいる請求項9記載の導電性素子。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか1項に記載の導電性素子を備える配線素子。
【請求項19】
請求項1から17のいずれか1項に記載の導電性素子を備える情報入力装置。
【請求項20】
請求項1から17のいずれか1項に記載の導電性素子を備える表示装置。
【請求項21】
請求項1から17のいずれか1項に記載の導電性素子を備える電子機器。
【請求項22】
第1の波面と第2の波面とを有する基体表面に対して、2層以上の層を積層して積層膜を形成する工程と、
上記第1の波面および上記第2の波面のうち、上記第2の波面上に形成された積層膜を除去するのに対して、上記第1の波面上に形成された積層膜を残すことにより、導電パターン部を形成する工程と
を備え、
上記第1の波面と上記第2の波面が、以下の関係を満たす導電性素子の製造方法。
0≦(Am1/λm1)<(Am2/λm2)≦1.8
(但し、Am1:第1の波面の振動の平均幅、Am2:第2の波面の振動の平均幅、λm1:第1の波面の平均波長、λm2:第2の波面の平均波長)
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図22】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図22】
【図21】
【公開番号】特開2012−163789(P2012−163789A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24466(P2011−24466)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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