説明

干渉計測方法

【課題】被検物に対する被検面の形状測定データの座標を高精度に求めること。
【解決手段】マーク形成工程(S1)と、形状測定工程(S2)と、マーク検出工程(S3)と、座標算出工程(S4)とからなる干渉計測方法であり、S1のマーク形成工程では、被検物の被検面に基準マークを形成する。マーク検出工程では、形状測定工程で得られた形状測定データからエリアセンサの座標系を基準とする基準マークの位置を検出する。座標算出工程では、マーク形成工程にて形成された被検物の座標系を基準とする基準マークの位置情報と、マーク検出工程にて検出されたエリアセンサの座標系を基準とする基準マークの位置情報との対応関係を求める。この対応関係に基づき、形状測定工程により得られた形状測定データを被検物の座標系に変換する演算を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検物の座標系を基準とする被検面の形状測定データを求める干渉計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光学機器の高精度化に伴い、その機器を構成するレンズやミラー等の光学素子の面形状も高精度に加工することが求められている。光学素子等を高精度に加工する方法として、光学素子の面形状を測定して所望形状との差を求め、その情報をもとに加工機にて部分的に修正加工を行い、所望の形状に近づけていく方法が一般的に採用されている。
【0003】
修正加工を行うための面形状測定装置として、測定精度に優れた干渉計を用いる干渉計測装置がある。この装置では、干渉計の光軸に垂直な面内における位置情報と、干渉縞を取り込むエリアセンサとの対応を高精度に取り、エリアセンサの座標系で表された形状測定データを被検物の座標系で表すように校正する。このときの基準となる座標系は加工機においても利用可能な基準座標系である必要があり、たとえば光学素子に形成された基準面により定義された座標系が挙げられる。このように、基準面により定義された基準座標系で表された形状測定データに基づいて、修正加工位置と修正加工量を決定し、基準面を参照して加工を実施することにより、干渉計による測定結果を用いた修正加工が可能となる。
【0004】
このようなエリアセンサの座標系を基準とする形状測定データを被検物の座標系に変換する方法として、特許文献1に開示されたものがある。これは、被検面上に光散乱領域などの遮光パターンを形成した校正用の計測光学部材を利用する。遮光パターンは、計測光学部材の基準面を参照して形成することにより、基準面との関係が既知となる。この計測光学部材を干渉計により測定した結果から遮光パターン部分を特定して重心位置を算出し、既知である遮光パターンと基準面との関係を利用すれば、形状測定データを計測光学部材の座標系に校正する校正値を得ることができる。あとは計測光学部材に代えて被検物の面形状を干渉計で測定し、得られた形状測定データに校正値を適用することで、計測光学部材の座標系を基準とする形状測定データを算出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−333305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の干渉計測方法では、エリアセンサの座標系を基準とする形状測定データを計測光学部材の基準面を基準とする座標系に変換するものである。したがって、計測光学部材を被検物に交換した際に、被検物の基準面位置が計測光学部材の基準面位置と一致していなければ、基準面の座標系に変換された形状測定データに誤差が含まれていることとなる。このため、形状測定データに基づいて被検面の形状を部分的に修正する形状修正加工では、被検物の座標系を基準とする形状測定データが正確ではないため、必要な部位に形状修正加工を施すことができなかった。
【0007】
そこで、本発明は、被検物の座標系を基準とする被検面の形状測定データを高精度に求めることができる干渉計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、被検物の被検面に基準マークを形成するマーク形成工程と、前記被検面にて反射された測定光と参照光とを干渉させることにより得られる干渉縞をエリアセンサにより撮像し、撮像された前記干渉縞のデータに基づいて前記基準マークを含む前記被検面の形状を測定して前記被検面の形状測定データを得る形状測定工程と、前記形状測定データから前記エリアセンサの座標系を基準とする前記基準マークの位置を検出するマーク検出工程と、前記マーク形成工程にて形成された前記被検物の座標系を基準とする前記基準マークの位置情報と、前記マーク検出工程にて検出された前記エリアセンサの座標系を基準とする前記基準マークの位置情報との対応関係に基づき、前記形状測定工程により得られた前記形状測定データを前記被検物の座標系に変換する演算を行う座標算出工程と、を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被検物の被検面に基準マークを形成したので、従来の計測光学部材を被検物と交換する作業を省略でき、被検物の座標系を基準とする被検面の形状測定データに誤差が加わるのを抑制することができる。したがって、被検物の座標系を基準とする被検面の形状測定データを高精度に求めることができる。これにより、目標とする形状に被検面に加工を施す形状修正加工を高精度に実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態における基準マークの加工装置を示す図である。
【図2】第1実施形態における被検面の形状を測定する干渉計測装置を示す図である。
【図3】干渉計測方法のフローチャートを示す図である。
【図4】被検物の形状を概略的に示す図である。
【図5】被検面上の基準マークの断面形状を示す図である。
【図6】第2実施形態における基準マークの加工装置を示す図である。
【図7】第2実施形態における被検面の形状を測定する干渉計測装置を示す図である。
【図8】被検物の形状を概略的に示す図である。
【図9】被検面上の基準マークの断面形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
[第1実施形態]
本第1実施形態では、図1に示す加工装置としての研磨加工装置8に、図2に示すトワイマングリーン型干渉計などの干渉計測装置10が設けられている。図1において、研磨加工装置8は、ミラーやレンズ等の光学素子である被検物1に研磨加工を施すものであり、加工工具としての研磨工具4、研磨工具4を保持する加工ヘッド5及び研磨工具4に相対するXYステージ6を備えている。また、研磨加工装置8は、加工ヘッド5やXYステージ6など、装置全体を制御するコントローラ100を備えている。XYステージ6上には、被検物1が固定されている。本第1実施形態では、被検物1の被検面1aは、平面である。加工ヘッド5は、研磨工具4を保持して回転し、研磨工具4を回転させる。この回転している研磨工具4を被検物1の被検面1aに圧接させることで、被検面1aに研磨加工を施す。このとき、XYステージ6を移動させることで、研磨工具4を相対的に被検物1の被検面1a上を走査する。ここで、被検物1と研磨工具4との間には、間欠的に研磨剤が供給される。
【0013】
図2に示す干渉計測装置10は、被検面1aの形状を測定するものである。レーザ光源11から出射されたレーザ光はビームエキスパンダ12を介して所定断面の光束に整形された後、ハーフミラー13に入射する。ハーフミラー13にて一部の光束は透過し、参照ミラー14に入射される。参照ミラー14に入射された光束は参照ミラー14の参照面14aにて参照光として反射され、ハーフミラー13に戻る。一方、ハーフミラー13にて反射した光束は、被検物1に入射し、被検面1aにて測定光として反射され、ハーフミラー13に戻る。ハーフミラー13にて反射した参照光と、ハーフミラー13を透過した測定光とは、互いに干渉し、結像レンズ15を介してエリアセンサ16上に投影され、エリアセンサ16上にて干渉縞を形成してエリアセンサ16により撮像される。このとき、参照ミラー14を光軸方向に所定量移動させ、異なる複数の干渉縞のデータを得ている。これらの干渉縞のデータを解析することにより、被検面1aの形状測定データを得る。ここで、被検面1aの形状測定データは、エリアセンサ16の座標系として表現される。
【0014】
次に、研磨加工装置8により被検物1に修正加工を施す前に、干渉計測装置10を用いて被検物1の被検面1aを測定する動作について、図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0015】
まず、研磨加工装置8により、被検物1の被検面1a上に2つの基準マーク3a,3bを形成する(S1:マーク形成工程)。ここで、基準マーク3a,3bは、図1の研磨工具4により、図4(a),(b)に示すように、平面視円形状の断面凹形状に形成される。具体的には、基準マーク3a,3bは、凹んだ球面形状に形成される。例えば、各基準マーク3a,3bは、図5(a)にx方向断面、図5(b)にy方向断面を示すが、曲率半径がR5000mm、被検面1aより深さ1000nmの球面形状とした。このとき、研磨加工装置8のコントローラ100は、被検物1の座標系を基準とする各基準マーク3a,3bの位置情報を取得している。本第1実施形態では、コントローラ100は、被検物1の座標系をx−y直交座標系とし、被検物1のx−y直交座標系を基準とする各基準マーク3a,3bの位置情報として、座標(Xa,Ya),(Xb,Yb)を取得している。被検物1は、図4に示すように、平面視円形状に形成されており、2つの基準マーク3a,3bは、被検物1の中心に対して180度回転対称に配置されている。ここで、コントローラ100は、基準マーク3a,3bの設計形状に基づいて予め研磨工具4の滞留時間を計算して、各基準マーク3a,3bを形成している。これにより、基準マーク3a,3bは、研磨工具4の形状や研磨加工装置8の位置決め誤差などの研磨加工装置8による誤差を平均化して形成することが可能であり、被検面1aに対する基準マーク3a,3bを高精度に位置決めして形成することが可能となる。
【0016】
次に、干渉計測装置10により、S1のマーク形成工程で形成された基準マーク3a,3bを含む被検面1aの形状測定データを取得する(S2:形状測定工程)。この形状測定工程では、形状測定データを、エリアセンサ16の座標系を基準にして取得している。この形状測定工程で得られた形状測定データは、研磨加工装置8のコントローラ100にて取得される。
【0017】
次に、コントローラ100は、S2の形状測定工程による被検面1aの形状測定データからエリアセンサ16の座標系を基準とする基準マーク3a’,3b’の位置を検出する(S3:マーク検出工程)。記号「’」は、撮像対象の、エリアセンサ16のセンサ面上での位置を示すために以下用いる。本第1実施形態では、コントローラ100は、エリアセンサ16の座標系をx’−y’直交座標系として、エリアセンサ16のx’−y’直交座標系を基準とする基準マーク3a’,3b’の位置を検出する。ここで、コントローラ100は、基準マーク3a,3bの設計式を記憶しており、S2の形状測定工程にて得られた被検面1aの形状測定データにおける基準マーク3a’,3b’の形状測定データに対して、設計式である球面の式をカーブフィッティングする。これにより、コントローラ100は、エリアセンサ16上の座標として基準マーク3a’,3b’の位置を各々座標(Xa’,Ya’),(Xb’,Yb’)として、高精度に検出している。
【0018】
次に、コントローラ100は、被検物1のx−y直交座標系を基準とする基準マーク3a,3bの位置情報とエリアセンサ16のx’−y’直交座標系を基準とする基準マーク3a’,3b’の位置情報との対応関係を求める。すなわち、コントローラ100は、エリアセンサ16のx’−y’直交座標系から被検物1のx−y直交座標系への座標変換行列を求める。以下具体的に説明すると、マーク形成工程にて形成された被検物1のx−y直交座標系を基準とする基準マーク3a,3bの位置情報は、座標(Xa,Ya),(Xb,Yb)である。また、マーク検出工程にて検出されたエリアセンサ16のx’−y’直交座標系を基準とする基準マーク3a’,3b’の位置情報は、座標(Xa’,Ya’),(Xb’,Yb’)である。したがって、座標(Xa,Ya)及び(Xb,Yb)と、座標(Xa’,Ya’)及び(Xb’,Yb’)との関係を示す連立方程式を求めることができる。コントローラ100は、座標(Xa,Ya)及び(Xb,Yb)と、座標(Xa’,Ya’)及び(Xb’,Yb’)とにより得られる連立方程式により、エリアセンサ16の座標系から被検物1の座標系への座標変換行列を求める。そして、コントローラ100は、この座標変換行列によって、S2の形状測定工程により得られた形状測定データを被検物1の座標系に変換する演算を行う(S4:座標算出工程)。これにより、エリアセンサ16の座標系を基準に測定された形状測定データは加工装置としての研磨加工装置8にて規定されている座標系である被検物1の座標系に変換される。
【0019】
以上本第1実施形態によれば、被検物1の被検面1aに基準マーク3a,3bを形成したので、従来の計測光学部材を被検物と交換する作業を省略でき、被検物1の座標系を基準とする被検面1aの形状測定データに誤差が加わるのを抑制することができる。したがって、被検物1の座標系を基準とする被検面1aの形状測定データを高精度に求めることができる。これにより、目標とする形状に被検面1aに加工を施す形状修正加工を高精度に実施することが可能となる。
【0020】
なお、基準マーク3a,3bを形成する位置は、必ずしも被検物1の中心に対して180度回転対称に配置する必要はなく、被検物1の座標系を基準に被検物の位置を特定するために異なる2点を設定すればよい。また、被検面1aの形状が非球面などであり、被検面1aの光軸位置が定められる場合においては、基準マークは1つとしても被検物1の座標系を基準に被検物の位置が特定されるため、その場合は1つでも良い。
【0021】
[第2実施形態]
本第2実施形態では、図6に示す加工装置としてのイオンビーム加工装置21に、図7に示すフィゾー型干渉計などの干渉計測装置10Aが設けられている。なお、本第2実施形態において、上記第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付して説明を省略する。図6に示すイオンビーム加工装置21は、ミラーやレンズ等の光学素子である被検物1にイオンビーム加工を施すものであり、一対の電極27を有する加工工具としてのイオンビームガン23と、イオンビームガン23にガスを供給するガス源28とを備えている。また、イオンビーム加工装置21は、被検物1が載置されるワークステージ22と、被検物1及びワークステージ22を覆う真空容器26と、真空容器26に接続された真空ポンプ25とを備えている。また、イオンビーム加工装置21は、イオンビームガン23やワークステージ22など、装置全体を制御するコントローラ100Aを備えている。
【0022】
ワークステージ22上には、被検物1が固定されている。本第2実施形態では、被検物1の被検面1aは球面である。ワークステージ22は、6自由度(x,y,z,θx,θy,θz)方向に走査可能に構成されている。イオンビームガン23は、電極27により加速したイオンビームを被検物1の被検面1aに照射して、被検面1aを加工する。このとき、ワークステージ22を移動させることで、イオンビームガン23を相対的に被検物1の被検面1a上を走査する。
【0023】
図7に示す干渉計測装置10Aは、被検面1aの形状を測定するものである。レーザ光源11から出射されたレーザ光はビームエキスパンダ12を介して所定断面の光束に整形された後、ハーフミラー13に入射する。ハーフミラー13にて光束は反射し、参照レンズ17に入射される。参照レンズ17に入射された光束の一部は参照レンズ17の参照面17aにて参照光として反射され、ハーフミラー13に戻る。一方、参照レンズ17を透過した光束は、被検物1に入射し、被検面1aにて測定光として反射され、ハーフミラー13に戻る。参照レンズ17にて反射した参照光と、参照レンズ17を透過して被検面1aで反射した測定光とは、互いに干渉し、結像レンズ15を介してエリアセンサ16上に投影され、エリアセンサ16上にて干渉縞を形成してエリアセンサ16により撮像される。このとき、参照レンズ17を光軸方向に所定量移動させ、異なる複数の干渉縞のデータを得ている。これらの干渉縞のデータを解析することにより、被検面1aの形状測定データを得ている。ここで、被検面1aの形状測定データは、エリアセンサ16の座標系として表現される。
【0024】
次に、イオンビーム加工装置21により被検物1に修正加工を施す前に、干渉計測装置10Aを用いて被検物1の被検面1aを測定する動作について説明する。なお、各工程については、図3に示すフローチャートと略同様であるので、図3を参照しながら説明する。まず、イオンビーム加工装置21により、被検物1の被検面1a上に3つの基準マーク3a,3b,3cを形成する(S1:マーク形成工程)。ここで、基準マーク3a,3cは、図8(a),(b)に示すように、対向する位置に配置し、基準マーク3bは基準マーク3a,3bに対して90度の方向に配置した。基準マーク3a,3cは、図9(a)に示すように、x方向の断面形状が正弦波形状に形成され、基準マーク3bは図9(b)に示すように、y方向断面が正弦波形状に形成されている。つまり、各基準マーク3a,3b,3cは、中心から外方に向かう方向(半径方向)と直交する方向(周方向)に断面正弦波形状に形成されている。例えば、各基準マーク3a,3b,3cは、周期2mm、PV200nmの形状とした。このとき、イオンビーム加工装置21のコントローラ100Aは、被検物1の座標系を基準とする各基準マーク3a,3b,3cの位置情報を取得している。ここで、コントローラ100Aは、基準マーク3a,3b,3cの設計形状に基づいて予めイオンビームガン23の滞留時間を計算して、各基準マーク3a,3b,3cを形成している。これにより、基準マーク3a,3b,3cは、イオンビームガン23の形状やイオンビーム加工装置21の位置決め誤差などのイオンビーム加工装置21による誤差を平均化して形成することが可能である。したがって、被検面1aに対する基準マーク3a,3b,3cを高精度に位置決めして形成することが可能となる。
【0025】
次に、干渉計測装置10Aにより、S1のマーク形成工程で形成された基準マーク3a,3b,3cを含む被検面1aの形状測定データを取得する(S2:形状測定工程)。この形状測定工程では、形状測定データを、エリアセンサ16の座標系を基準にして取得している。この形状測定工程で得られた形状測定データは、イオンビーム加工装置21のコントローラ100Aにて取得される。
【0026】
前述の第1実施形態と同じく、記号「’」は撮像対象の、エリアセンサ16のセンサ面上での位置を示すために以下用いる。次に、コントローラ100Aは、S2の形状測定工程による被検面1aの形状測定データからエリアセンサ16の座標系を基準とする基準マーク3a’,3b’,3c’の位置を検出する(S3:マーク検出工程)。ここで、コントローラ100Aは、基準マーク3a,3b,3cの設計式を記憶している。そして、コントローラ100Aは、S2の形状測定工程にて得られた被検面1aの形状測定データにおける3つの基準マーク3a’,3b’,3c’の形状測定データに対して、設計式である正弦波の式をカーブフィッティングする。これにより、基準マーク3a’,3b’,3c’の周方向の位置を各々求めることができる。ここで、基準マーク3a’〜3c’に対して、正弦波の式をカーブフィットする際、複数の断面にてカーブフィットし、その平均値を取ることで、より高精度に位置を求めることができる。次に、基準マーク3a,3cの位置から2点を結ぶ直線と、基準マーク3bから延ばした直線との交点位置(X1’,Y1’)を求めることができる。さらに、基準マーク3a’,3c’の位置から2点を結ぶ直線に対するする基準マーク3b’回転方位Rz’を求めることができる。つまり、コントローラ100Aは、エリアセンサ16上の座標として、基準マーク3a’,3b’,3c’の周方向の位置からエリアセンサ16の座標系を高精度に検出することができる。
【0027】
次に、コントローラ100Aは、マーク形成工程にて形成された被検物1の基準マーク3a〜3cの位置情報から、同様にして、(X1,Y1)、及びRzを求める。ここで、マーク形成工程にて形成された被検物1の座標系を基準とする(X1,Y1)、及びRzと、マーク検出工程にて検出されたエリアセンサ16の座標系を基準とする(X1’,Y1’)、及びRz’から連立方程式を求めることができる。コントローラ100Aは、この連立方程式により、エリアセンサ16の座標系から被検物1の座標系への座標変換行列を求める。そして、コントローラ100Aは、この座標変換行列によって、S2の形状測定工程により得られた形状測定データを被検物1の座標系に変換する演算を行う(S4:座標算出工程)。これにより、エリアセンサ16の座標系を基準に測定された形状測定データは加工装置としてのイオンビーム加工装置21にて規定されている座標系である被検物1の座標系に変換される。
【0028】
以上本第2実施形態によれば、被検物1の被検面1aに基準マーク3a,3b,3cを形成したので、従来の計測光学部材を被検物と交換する作業を省略でき、被検物1の座標系を基準とする被検面1aの形状測定データに誤差が加わるのを抑制することができる。したがって、被検物1の座標系を基準とする被検面1aの形状測定データを高精度に求めることができる。これにより、目標とする形状に被検面1aに加工を施す形状修正加工を高精度に実施することが可能となる。
【0029】
なお、基準マーク3a,3cは対向する位置に形成する必要があるが、基準マーク3bは任意の位置に形成しても良い。なお被検物1の座標系を基準に被検物の位置を特定するためには2点設定すればよいが、上述の座標変換行列を算出するにあたり、マーク数が多いほど誤差が少ない。また、被検面1aの形状が非球面などであり、被検面1aの光軸位置が定められる場合においては、基準マークは1つとしても良い。
【0030】
なお、上記実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。上記第1実施形態では、基準マークが2つの場合について説明したが、これに限定するものではなく、基準マークが1つの場合でもよく、また、3つ以上の場合でもよい。なお、形状測定データを高精度に求めるには、基準マークが2つ以上であるのが好ましい。
【0031】
また、上記第2実施形態では、基準マークが3つの場合について説明したがこれに限定するものではなく、基準マークが1つの場合や2つの場合でもよく、また、4つ以上の場合でもよい。なお、形状測定データを高精度に求めるには、基準マークが2つ以上であるのが好ましい。ここで、被検面に形成された基準マークは、必要があれば、加工装置による被検面の修正加工の際、S1のマーク形成工程での基準マーク3a,3bを正負逆転した形状を形状測定データに加えることで、同時に除去することも可能である。例えば、被検面に形成された基準マークが光学有効面外であれば、基準マークを除去しなくてもよく、光学有効面内である場合には、修正加工の最終段階で被検面の修正加工と同時に、基準マークも除去する加工を行ってもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 被検物
1a 被検面
3a 基準マーク
3b 基準マーク
3c 基準マーク
16 エリアセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検物の被検面に基準マークを形成するマーク形成工程と、
前記被検面にて反射された測定光と参照光とを干渉させることにより得られる干渉縞をエリアセンサにより撮像し、撮像された前記干渉縞のデータに基づいて前記基準マークを含む前記被検面の形状を測定して前記被検面の形状測定データを得る形状測定工程と、
前記形状測定データから前記エリアセンサの座標系を基準とする前記基準マークの位置を検出するマーク検出工程と、
前記マーク形成工程にて形成された前記被検物の座標系を基準とする前記基準マークの位置情報と、前記マーク検出工程にて検出された前記エリアセンサの座標系を基準とする前記基準マークの位置情報との対応関係に基づき、前記形状測定工程により得られた前記形状測定データを前記被検物の座標系に変換する演算を行う座標算出工程と、を備えたことを特徴とする干渉計測方法。
【請求項2】
前記マーク検出工程では、前記形状測定工程にて得られた前記形状測定データに対して前記基準マークの設計式をカーブフィッティングすることで、前記エリアセンサの座標系を基準とする前記基準マークの位置を検出することを特徴とする請求項1に記載の干渉計測方法。
【請求項3】
前記マーク形成工程では、前記基準マークを断面凹形状に形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の干渉計測方法。
【請求項4】
前記マーク形成工程では、前記基準マークを断面正弦波形状に形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の干渉計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−117766(P2011−117766A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273602(P2009−273602)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】