説明

平面表示装置の製造方法

【課題】シール材がシール性能を発揮し得るように基板の間に配設できる平面表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】一対の基板22,42を複数枚切り出すことができる一対のマザー基板26,48を用意し、前記一対のマザー基板いずれか一方のマザー基板の周縁部において周端に開口する凹溝50を形成し、前記一対のマザー基板のいずれか一方のマザー基板において、前記凹溝50が形成された位置以外のマザー基板の周縁部に2枚のマザー基板の間隔を保持する支持材64を配置するとともに、前記表示エリア12を囲むように前記シール材60を配置し、前記シール材および前記支持材を挟んで前記一対のマザー基板を貼り合わせ、前記凹溝50を介して前記一対のマザー基板間に残留する気体を排出し、貼り合わせられたマザー基板を前記シール材60の外側の切り出し線SLに沿って切り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面表示装置の製造方法に関し、特に、所定間隔をおいて一対の基板を貼り合わせて形成する平面表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、平面表示装置として、有機エレクトロルミネセンス(EL)表示装置が注目されている。この有機EL表示装置は、自発光性を有することから、視野角が広く、バックライトを必要とせず薄型化が可能であり、消費電力が抑えられ、且つ応答速度が速いといった特徴を有している。
【0003】
この有機EL表示装置は、アレイ基板にアノード電極とカソード電極との間に発光機能を有する有機化合物を含む有機発光層を挟持した有機EL素子をマトリックス状に配置することにより構成される。この有機EL素子は、水分に対して非常に敏感であり、わずかな水分でも破壊され、表示デバイスとしての表示性能を維持できなくなる。
【0004】
このため、有機EL素子が外気と触れないように、アレイ基板を露点管理された窒素ガスなどの不活性ガス環境下で乾燥材料を付加したシール材で封止しているのが一般的である。このとき、アレイ基板と封止基板とは、10μm前後のスペーサを混入したシール材を介して貼り合わせられている。シール材中に含まれるスペーサは、アレイ基板に配置された有機EL素子と封止基板に配置された乾燥材料の接触を防止するようアレイ基板と封止基板との間に所定の間隔を形成している。
【0005】
このような平面表示装置の製造方法は、まず、それぞれ表示エリアを有した2枚のマザー基板を用意する。そして、一方のマザー基板上に、表示エリアを囲繞するシール材と、該マザー基板の端部に支持材とをそれぞれ配設する。次いで、対向配置した2枚のマザー基板をプレスして貼り合せることで製造される場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、上記の製造方法は次のような問題がある。2枚のマザー基板を貼り合わせる際、内部に残存する余剰エアを外部へ逃がすため、支持材はマザー基板を間欠的に取り囲むように配置されているが、かかる場合、支持材の配置されていない端部は、プレスされる一方のマザー基板が撓んで他方のマザー基板に当接し易くなり、外部へ余剰エアを逃がすことができないおそれがある。一方、支持材の間隔を狭く設けることでマザー基板の撓みを抑えることができるが、かかる場合、余剰エアを外部に逃がすための排気口が小さくなり、充分な排気が行えないおそれがある。つまり、上記の製造方法では、余剰エアが充分に排気されないため、シール材が2枚のマザー基板によって押し潰されずシール性能を発揮しにくいという問題がある。
【特許文献1】特開2002−250912
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、2枚のマザー基板を貼り合わせる際に発生する余剰エアを充分に排気することができ、これによりシール材がシール性能を発揮し得る状態で2枚のマザー基板の間に配設することができる平面表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の平面表示装置の製造方法は、所定間隔をおいて対向配置される一対の基板と、前記一対の基板に形成された表示エリアを囲むように配置された前記一対の基板の四周を封止するシール材とを備えた平面表示装置の製造方法において、前記一対の基板を複数枚切り出すことができる一対のマザー基板を用意し、前記一対のマザー基板のいずれか一方のマザー基板の周縁部において周端に開口する凹溝を形成し、前記一対のマザー基板のいずれか一方のマザー基板において、前記凹溝が形成された位置以外のマザー基板の周縁部に2枚のマザー基板の間隔を保持する支持材を配置するとともに、前記表示エリアを囲むように前記シール材を配置し、前記シール材および前記支持材を挟んで前記一対のマザー基板を貼り合わせ、前記凹溝を介して前記一対のマザー基板の間に残留する気体を排出し、貼り合わせられたマザー基板を前記シール材の外側で切り出すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、マザー基板の少なくともいずれか一方において、周端に開口する凹溝が設けられているため、マザー基板を貼り合わせる際に、マザー基板に撓みが生じた場合であっても、該開口から余剰エアを排気することができる。そのため、シール材が2枚のマザー基板によって押し潰されシール性能を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態に係る製造方法によって製造される平面表示装置として、有機EL表示装置10について説明する。
【0011】
(1)有機EL表示装置10の構造
図1に示すように、有機EL表示装置10は、格子状に配置された赤(R)、緑(G)、青(B)にそれぞれ発光する3種類の有機EL素子30が表示エリア12に形成されたアレイ基板20と、このアレイ基板20に所定の隙間をおいて対向配置された封止基板40とを備えている。両基板20、40の周縁部には、スペーサを混ぜ込んだシール材60が配設され、これにより、所定間隔を保持しつつ表示エリア12内部が密封されている。
【0012】
アレイ基板20はガラス基板22を備え、このガラス基板22上には、多数本の走査線及び信号線が格子状に設けられ、走査線と信号線との交点付近に画素TFT24が設けられている。また、画素TFT24には、絶縁層を介して有機EL素子30の下部電極(陽極)32が積層され、画素TFT24のドレイン電極と接続されている。
【0013】
下部電極32の上層にはアクリル樹脂からなる隔壁34が形成され、これにより、隣接する1画素分の有機EL素子30に区画している。隔壁34によって形成された凹部の下面に位置する下部電極32の上には、PPV(ポリパラフェニデンビニデン)やポリフルオレン誘導体またはその前駆体などからなるRGB各色毎に形成される発光層36が積層されている。この発光層36の上層には、上部電極(陰極)38がアレイ基板20の全ての面上に形成されている。
【0014】
封止基板40は、アレイ基板20とほぼ等しい大きさのガラス基板42を備え、このガラス基板42の少なくとも表示エリア12に対応した領域にわたって凹部44が形成されている。この凹部44には、有機EL素子30などから出てくる水分を吸収するための乾燥剤46が配設されている。また、封止基板40には、さらに、スペーサを混入したシール材60が表示エリア12の外周を囲むように額縁状に配置されており、アレイ基板20と封止基板40との間に所定間隔を保持しつつ、両基板20,40の間を封止している。
【0015】
(2)有機EL表示装置10の製造方法
次に、上記のように構成される有機EL表示装置10を多面取り(なお、説明を簡単にするために4面取りで説明する)で製造する場合の製造方法について説明する。
【0016】
まず、図2に示すように、アレイ基板20のガラス基板22となる矩形板状のマザー基板26と、封止基板40のガラス基板42となる矩形板状のマザー基板48とを用意する。それぞれのマザー基板26、48は、ガラス基板22、42よりも充分に大きな寸法に形成されている。
【0017】
次に、アレイ基板20用のマザー基板26上において、格子状に縦横に配置された表示エリア12を形成する。すなわち、マザー基板26上には、表示エリア12毎に、半導体層、金属材料や絶縁材料の成膜、パターニングなどの処理を繰り返し、走査線、信号線、画素TFT24を形成する。そして、スパッタ法にて、画素TFT24の上層に形成された絶縁層上に各表示素子30に対応する位置にITO膜からなる下部電極32を独立島状に形成する。
【0018】
次に、紫外線硬化型アクリル樹脂レジストの塗布、フォトリソグラフプロセスを繰り返すことにより、表示エリア12に表示素子30の各々を電気的に分離する隔壁34を形成する。
【0019】
次に、隔壁34によって形成された凹部の下面に露出された下部電極32上に、例えばインクジェット方式により発光層36を形成した後、その上に、上部電極38を形成することで有機EL素子30を形成する。
【0020】
次に、図2及び図3に示すように、封止基板40用のマザー基板48の中央部において、マザー基板26上に形成された複数の表示エリア12に対応した領域のそれぞれに凹部44を形成するとともに、マザー基板48の周縁部に一端がマザー基板48の周端に開口する平面視略L字状の凹溝50を複数形成する。詳細には、凹溝50は、マザー基板48の周端から内側に延びる短溝50aと、この短溝50aと連通しマザー基板48の周方向に延びる長溝50bとからなり、各長溝50bは互いに所定間隔をあけてマザー基板48の中央部に形成された複数の凹部44を取り囲んでいる。
【0021】
次いで、図4に示すように、マザー基板48上に形成された凹部44の外周に沿って、不図示のディスペンサにより直径10μmのガラスファイバを紫外線硬化性の樹脂に混ぜ込んだシール材60を塗布し、排気口62を除いて表示エリア12をシール材60により囲繞する。また、マザー基板48の周縁部には、シール材60と同一成分からなる支持材64が長溝50bの延びる方向に沿って長溝50bを挟むように配置されている。つまり、支持材64は、マザー基板48に形成された凹溝50を避けるように配置され、複数の凹部44の外周を間欠的に取り囲んでいる。
【0022】
次いで、図2に示すように、両マザー基板26,48を対向配置し、プレスすることで、シール材60、及び支持材64を介して両マザー基板26,48を貼り合わせる。その際、両マザー基板26,48の内部に残存する余剰エアは凹溝50の開口部52から外部へ排気されるため、シール材60が、両マザー基板26,48に押し潰され、シール性能を発揮する状態で両マザー基板26,48の間に配されるとともに排気口62部分のシール材も押しつぶされるため排気口62が閉塞される。なお、余剰エアを効率的に排気するため、凹溝50の開口部52から余剰エアを吸引しながら両マザー基板26,48を貼り合わせてもよい。
【0023】
次いで、図5に示すように、マザー基板26,48をシール材60の外側の切り出し線SLに沿ってカットすることで、有機EL表示装置毎に単個サイズに切り分ける。
【0024】
次いで、露点管理された雰囲気内で、紫外線を照射しシール材を硬化することで、アレイ基板20と封止基板40との間に形成された密封空間に有機EL素子30を封止する。
【0025】
以上のように、本実施形態では、マザー基板48の周端に開口部52を形成するように凹溝50が形成されていることから、マザー基板26とマザー基板48とを貼り合わせる際、内部に残存する余剰エアを開口部52から外部に排気することができる。そのため、マザー基板48を取り囲むように間欠配置された支持材64の間隔を狭く設けた場合であっても、余剰エアを排気するための排気口を広く設けることができ、余剰エアの排気をスムーズに行うことができる。また、たとえ、貼り合わせ時においてマザー基板48の周縁部に撓みが生じ、両マザー基板26,48の周端が当接することがあったとしても、開口部52が閉塞することがないため、余剰エアを外部に排気することができる。したがって、本実施形態では、余剰エアの排気を充分に行うことができるため、両マザー基板26,48がシール材60を押し潰すことができ、シール性の高い密封空間を形成することができる。
【0026】
また、本実施形態では、凹溝50が、マザー基板48の周端から内側に延びる短溝50aと、この短溝50aと連通しマザー基板48の周方向に延びる長溝50bとからなる平面視略L字状をなしているため、長溝50bが余剰エアを外部へ案内する案内溝の役割を果たし、より確実に余剰エアを開口部52から外部に排気することができるとともに、L字状の凹溝50がマザー基板48の中間に設けられ、且つ、開口部52が夫々当該辺に開設されているので、開口部52を他の辺まで延長して形成する場合に比してマザー基板48の機械的強度を向上させることが可能となっている。
【0027】
なお、本実施形態では、1対のマザー基板のうち封止基板40に用いられるマザー基板48に凹溝50を形成したが、アレイ基板20に用いられるマザー基板26に凹溝50を形成してもよく、また、マザー基板26,48のいずれにも凹溝50を形成してもよい。
【0028】
このように両マザー基板26,48に凹溝50を形成すればより確実に排気が可能であり、また、夫々の凹溝50の形成位置をずらせて配設すれば、両マザー基板26,48間での広範囲にわたる排気が可能となる。
【0029】
また、本実施形態では、1対のマザー基板から4つの有機EL表示装置を製造する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものでなく、1対のマザー基板から製造する有機EL表示装置の数量を任意に設定することができる。また、本発明の製造方法は、有機EL表示装置に限定されることなく、液晶表示装置等の他の平面表示装置の製造にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態において製造対象とする有機EL表示装置の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る製造方法において、2枚のマザー基板を対向配置した状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る製造方法において、凹部と凹溝が形成されたマザー基板の構造を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る製造方法において、シール材及び支持材を配置したマザー基板の構造を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る製造方法において、有機EL表示装置の切り出し工程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0031】
10…有機EL表示装置
12…表示エリア
20…アレイ基板
22,42…ガラス基板
26,48…マザー基板
30…有機EL素子
40…封止基板
44…凹部
50…凹溝
50a…短溝
50b…長溝
52…開口部
60…シール材
64…支持材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔をおいて対向配置される一対の基板と、前記一対の基板に形成され表示エリアを囲むように配置された前記一対の基板の四周を封止するシール材とを備えた平面表示装置の製造方法において、
前記一対の基板を複数枚切り出すことができる一対のマザー基板を用意し、前記一対のマザー基板のいずれか一方のマザー基板の周縁部において周端に開口する凹溝を形成し、
前記一対のマザー基板のいずれか一方のマザー基板において、前記凹溝が形成された位置以外のマザー基板の周縁部に2枚のマザー基板の間隔を保持する支持材を配置するとともに、前記表示エリアを囲むように前記シール材を配置し、
前記シール材および前記支持材を挟んで前記一対のマザー基板を貼り合わせ、前記凹溝を介して前記一対のマザー基板の間に残留する気体を排出し、
貼り合わせられたマザー基板を前記シール材の外側で切り出すことを特徴とする平面表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記凹溝が、前記マザー基板の周端から内側に延びる短溝と、前記短溝と連通し前記マザー基板の周方向に延びる長溝とからなることを特徴とする請求項1に記載の平面表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記凹溝を複数箇所形成し、前記複数の凹溝の各長溝が互いに所定間隔をあけて前記マザー基板を取り囲むように前記複数の凹溝を配置することを特徴とする請求項2に記載の平面表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記支持材を前記長溝の側縁に沿って前記長溝を挟むように配置することを特徴とする請求項2又は3に記載の平面表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記一対のマザー基板のいずれにも前記凹溝を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の平面表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−48474(P2007−48474A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−228685(P2005−228685)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(302020207)東芝松下ディスプレイテクノロジー株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】