説明

形態計測装置

【課題】検出対象物表面から発生する放射線の正確な強度を測定するために、検出対象物の形態を把握することを可能とする形態計測装置を提供すること。
【解決手段】
検出対象物Sから発生する放射線を検出するための検出部11aと、前記検出対象物Sを搬送する搬送部10とを備えた放射線検出装置11に対して、前記検出対象物Sの形態情報を出力する形態計測装置20であって、前記搬送過程にある検出対象物Sに対して異なる方向から複数のライン光を照射する光照射部221、222、231と、前記光照射部221、222、231から照射されたライン光のうち、前記検出対象物Sに遮られずに透過したライン光を受光する受光部24,25と、前記受光部24,25において受光したライン光の情報に基づいて、前記検出対象物Sの概略形態を認識する形態認識部30と、を有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の形態を計測するための形態計測装置であって、特に、前記対象物が放射能汚染を受けた恐れのある物体であり、この対象物から発生する放射線を検出して、その放射線強度を測定する放射線検出装置に組み合わされて用いるための形態計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、原子力発電所等の放射性物質を取り扱う施設から搬出される廃棄物等の放射能の汚染度合いを検査するための放射線検出装置が知られている。このような放射線検出装置は、前記廃棄物等の検出対象物を搬送する搬送部としてのベルトコンベアと、検出部としての放射線センサとを備えており、ベルトコンベアによって検出位置にまで搬送される複数の検出対象物から発生する放射線を、この放射線センサによって連続的に検出するものである。(例えば特許文献1)
【特許文献1】特開平6−186342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前述のような検出対象物(以下、サンプルという)が有する放射能汚染は、内部汚染と表面汚染とに分類される。この内部汚染の量と、表面汚染の量とは、β線およびγ線の2種類の放射線種を同時に計測することで、弁別することができる。以下、図4を用いて詳細に説明する。
【0004】
プレート上に載置されたサンプルからの放射線を検出する放射線検出器としては、γ線のみを検出するもの(例えばNaIシンチレータ)と、β線およびγ線を検出するもの(例えばプラスチックシンチレータ)とが知られている。これらの検出器を組み合わせて構成した放射線検出器の構造(例えば2層構造)に応じて、各検出器の計数率の比が計算される。さらに、サンプル表面から発生するβ線とγ線との量の比はサンプルを構成する物質に含まれる核種毎に固有の値となっているため、サンプル表面から発生するβ線、サンプル表面から発生するγ線、およびサンプル内部から発生するγ線の量をそれぞれ求めることができる。これによって、サンプルのγ線による内部汚染の量と、β線およびγ線による表面汚染の量とをそれぞれ求めることができる。
【0005】
ところで、これらの放射線(β線およびγ線)のうち、γ線は、放射された後に、進行方向にある蔽妨害物の密度の指数関数に比例して減衰する性質がある一方、空気中を伝搬することによる減衰は微小である。
【0006】
これに対してβ線は、空気中での伝搬においても減衰する。そして、サンプル内から放射されるβ線は自己減衰により表面からは発生しない。
【0007】
このように、サンプル表面の放射線汚染をβ線を用いて計測するためには、放射線検出器とサンプル表面間の距離を、常に一定に保つなど、定量的に制御して把握しなければならない。
【0008】
しかしながら、サンプルの形状や大きさといった形態は、サンプル毎に様々であり、放射線検出器とサンプル表面間の距離を定量的に制御することは困難である。そのため、従来は、サンプル表面から発生する放射線の正確な強度を測定することができないという問題がある。
【0009】
本発明は、上述のような問題点を鑑みてなされたものであり、検出対象物表面から発生する放射線の正確な強度を測定するために、検出対象物の形態を把握することを可能とする形態計測装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、検出対象物から発生する放射線を検出するための検出部と、前記検出対象物を搬送する搬送部とを備えた放射線検出装置に対して、形態計測部により計測した前記検出対象物の形態情報を出力可能な形態計測装置であって、前記形態計測部が、前記搬送過程にある検出対象物に対して異なる方向から複数のライン光を照射する光照射部と、前記光照射部から照射されたライン光のうち、前記検出対象物に遮られずに透過したライン光を受光する受光部と、前記受光部において受光したライン光の情報に基づいて、前記検出対象物の概略形態を認識する形態認識部と、を有していることを特徴とする形態計測装置を提供する。
【0011】
前述のような放射能汚染の有無を判定しようとする検出対象物としては、大きさはある程度のばらつきがあるものの、その形状は円柱形状や板状といった、特定の基本形状に限定されているのが一般的である。そのため、前記受光部において受光したライン光の情報に基づいて検出対象物の外郭が前記特定の基本形状のいずれに該当するかを判断するとともに、その大きさを測定することで、検出対象物の形態を認識する。
【0012】
なお、前述のライン光としては、単一の光源から発生させる光を、スリット等を介して線状の幅を有する光としたものであってもよいし、点状の光源を線状に複数並べて、これらの光源から発生させる光であってもよい。
【0013】
そして、このように認識した検出対象物の形態に基づいて、検出対象物から発生するβ線が、検出器に到達するまでの減衰量を算出し、検出部で検出した放射線の強度を補正することで、検出対象物から発生する放射線の正確な強度を測定することができる。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、前記検出対象物の重量を測定する重量測定部をさらに備えていることを特徴とする形態計測装置を提供する。このような形態計測装置によれば、前記形態認識部によって形態が認識された検出対象物が、その大きさの割合に比して重量が小さい場合を判別し、検出対象物の内部に空洞が形成されている場合を見分けることが可能となる。すなわち、前述のような、内部に空洞が形成されている検出対象物は、内部が密な検出対象物と異なり、検出部で検出した放射線の強度が、必ずしも検出対象物から発生する放射線強度を表すこととはならないが、本発明に係る形態計測装置においては、形態計測部により計測した前記検出対象物の形態情報に、検出対象物内部の空洞の有無を含めて放射線検出装置に出力することができるため、検出対象物から発生する放射線の検出結果を補正したり、別途詳細な測定を行ったりすることが可能となる。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、前記形態計測部によって認識した検出対象物の形態と、重量測定部によって測定した前記検出対象物の重量とから、前記検出対象物のかさ密度を算出可能であることを特徴とする形態計測装置を提供する。このような形態計測装置によれば、検出対象物を構成する材質が既知の場合に、検出対象物のかさ密度を求めることで、その内部に形成されている空洞の有無をより正確に判別することが可能となる。
【0016】
また、請求項4に記載の発明は、前記光照射部が、ライン光を発生する光源と、この光源より発生したライン光を平行光にするための屈折部とを備え、平行光とされたライン光を前記検出対象物に対して照射するものである形態計測装置を提供する。このような形態計測装置においては、平行なライン光を搬送過程にある検出対象物に照射し、検出対象物に遮られない光を受光することで前記検出対象物の形態を認識するため、検出対象物の外郭や大きさを容易に把握することができる。
【0017】
なお、前記光照射部からのライン光の照射は、少なくとも検出対象物の高さ方向についてのライン光と、前記高さ方向についてのライン光に直交する、検出対象物の幅方向についてのライン光を照射するものであることが好ましい(請求項5)。このように、検出対象物の高さ方向と幅方向についての形態を併せて認識することで、検出対象物の形態が正確に認識できるため、検出対象物の表面と、放射線検出装置の検出部との距離を算出することができる。したがって、このような形態計測装置を放射線検出装置に組み込んだ場合に、前記算出した距離に基づいて放射線の減衰をより正確に補正することが可能になる。具体的な補正の方法の例としては、前述のような検出部で検出した放射線の値について、認識した検出対象物の形態に基づいて、検出対象物の表面と検出部との距離を三次元的に求め、求めた距離の値に応じて補正を行ってもよいし、検出対象物の形態ごとに予め補正係数を定めておき、この係数を検出した放射線の値に対して乗じてもよい。特に、後者のような補正を行う場合は、検出対象物の形態を認識した後に、複雑な演算処理を施す必要が無いため、高性能の演算処理部等を用いなくとも、放射線検出を高速に行うことができるというメリットがある。
【0018】
さらに、前記検出対象物の高さ方向についてのライン光と、検出対象物の幅方向についてのライン光とが、互いに異なる波長の光であることが好ましい(請求項6)。このように、高さ方向についてのライン光と、幅方向についてのライン光との光の波長を異ならせることで、これらの光が検出対象物に対して照射される際に生じる干渉がなくなり、検出対象物の形態をより正確に認識することが可能になる。
【0019】
また、請求項7に記載の発明は、前記形態認識部が、前記搬送部によって搬送される際の検出対象物の移動速度と、前記受光部によって受光した光量の単位時間あたりの変化とによって、前記検出対象物の外郭を把握し、前記検出対象物の概略形態を認識するものであることを特徴とする形態計測装置を提供する。このような放射線検出装置は、検出対象物を搬送する工程中において、その形態を認識することができるため、多数の検出対象物の形態を連続的に認識することが可能となる。なお、検出対象物の形態の認識は、搬送部が前記検出対象物を特定の検出位置に搬送する前に行ってもよいし、前記検出対象物が検出位置を通過した後(すなわち放射線の検出がなされた後)に行ってもよい。
【0020】
また、前記受光部は、前記ライン光の照射範囲に対応したラインセンサであってもよい(請求項8)。前記受光部をこのように構成することで、前記光源より発せられたライン光を効率よく受光することで検出対象物の形態を認識することができる。
【0021】
また、前記ラインセンサは、CCDを直線状に配置したものであってもよい(請求項9)。このように、照射されたライン光を検出する受光部として、安価なCCD等を一列に並べて構成するラインセンサを用いることで、前記形態計測装置の構成を簡易かつ安価にすることが可能となる。
【0022】
また、請求項9に記載の発明は、前記受光部と検対象物との間に、検出対象物に遮られずに透過した前記ライン光が投影される投影板を備えたことを特徴とする形態計測装置を提供する。このような形態計測装置は、検出対象物に遮られずに透過したライン光を投影板に投影させて拡散させた後、その拡散した光を広角レンズ等の光屈折手段を用いて受光部まで導くことができるため、受光部の大きさを光源から照射するライン光の幅よりも小さくすることができるというメリットがある。
【0023】
また、請求項10に記載の発明は、前記搬送部が、前記検出対象物の重量を測定する重量測定部を備えていることを特徴とする形態計測装置を提供する。すなわち、このような形態計測装置は、前記形態認識部によって形態が認識された検出対象物が、その大きさの割合に比して重量が小さい場合を判別し、検出対象物の内部に空洞が形成されている場合を見分けることを可能とするものである。前述のような、内部に空洞が形成されている検出対象物は、内部が密な検出対象物と異なり、検出部で検出した放射線の強度が、必ずしも検出対象物から発生する放射線強度を表すこととはならない。前述の形態計測装置においては、このような内部に空洞を有する検出対象物を見分けることで、その検出対象物に関する測定結果を補正したり、別途詳細な測定を行ったりすることが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
上述のように、本願発明に係る形態計測装置を放射線検出装置に組み込むことによって、検出対象物の形態を把握することが可能となり、検出対象物から発生する放射線の正確な強度を測定することが可能になるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本願発明の一実施形態について、図1から図4を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係る形態計測装置20を組み込んだ放射線検出システム1を概略に示す概略図であり、図2、図3は、放射線検出システム1の内部に含まれる搬送部10によって、検出対象物Sが搬送される様子を概略的に示す斜視図を表している。また、図4は検出対象物Sから放射線が発生する様子を概略的に示す概略図である。
【0026】
図1に示すように、放射線検出システム1は、検出対象物Sから発生する放射線を検出するための放射線検出装置11を備えるとともに、投入された検出対象物Sを載置したプレートPを搬送する搬送部10と、この搬送部10によって搬送される検出対象物Sの形態を計測する形態計測装置20とを備えている。なお、このプレートPは、光を透過させる透明体乃至、実質的に光を透過させる金網などで構成されている。
【0027】
搬送部10は、複数の搬送ローラ10aと図示しないローラ駆動源とを備えている。搬送ローラ10aは、所定間隔に離間して設けられ、検出対象物Sを所定の速度で水平に搬送するものであり、検出対象物Sを形態計測装置20の内部に通過させた後、検出対象物Sを放射線検出部11の内部に導くように搬送する。さらに、プレートP内に検出対象物Sを投入する位置付近には、プレートP上に載置された検出対象物Sの重量を測定する重量測定部10bが備えられている。重量測定部10bにおいて測定された検出対象物Sの重量に係る測定信号は、各検出対象物Sに関連付けられて、後述する演算処理部30の備える演算処理部本体31に送信される。
【0028】
形態計測装置20は、形態計測部本体20aと、この形態計測部本体20aにおいて検出対象物Sを計測したデータを受け取り、所定の演算を施して検出対象物Sの形態を認識するための形態認識部としての演算処理部30とを備えている。
【0029】
図2に示すように、形態計測部本体20aは、搬送ローラ10aが内部に通過するゲート状の枠体21と、この枠体21に取り付けられ、ライン光を発生するための第1の光照射部22と、第2の光照射部23とを備えている。図3に示すように、第1の光照射部22は、枠体21の上部に取り付けられるとともに、並列に配置された2つの光源221、222と、これらの光源からの光を屈折させる屈折部としてのレンズ223、224とから構成されている。また、第2の光照射部23は、枠体21の側方部に取り付けられており、光源231と、屈折部としてのレンズ232とから構成されている。
【0030】
光源221および222は、同一波長および同一強度のレーザ光を照射する半導体レーザ光源であり、レンズ223および224は、これらの光源から照射された光をライン光とするように屈折させる、例えばフレネルレンズ(シリンドリカルレンズ等でも可)である。また、光源231は、前述の光源221および222とは異なる波長のレーザ光を照射する半導体レーザ光源であり、レンズ232の上方からレーザ光を照射するように配置されている。さらに、レンズ232には、光源231から照射されたレーザ光を水平方向に向けて屈折させるような、例えばシリンドリカル(レンズフレネルレンズ等でも可)が用いられている。
【0031】
そして、枠体21の下方には、光源221,222から照射されたライン光の一部を受光するための第1の受光部24が搬送ローラ10aの下方に取り付けられており、枠体21の他方の側方には、光源231から照射されたライン光の一部を受光するための第2の受光部25が取り付けられている。
【0032】
第1の受光部24は、光源221、222側から照射されたライン光を拡散させるための投影板241と、この投影板において拡散された光を集光する広角レンズ242と、この広角レンズ242によって集光された光を受光し、受光した光の強度を電気信号に変えて出力するラインセンサ243とを、この順に備えている。
【0033】
投影板241は、例えばすりガラスからなる半透明の板状体であり、光源221および222から照射されたライン光のうち、搬送ローラ10aによって搬送された検出対象物Sによって遮られずに透過した光を拡散させるものである。この投射板241によって拡散した光が、広角レンズ242によって屈折し、ラインセンサ243の備える複数の受光素子上に照射される。本実施形態において、ラインセンサ243は受光素子であるCCDを直線状に配置して構成されるCCDカメラであり、これらの複数のCCDは、受光した光の強度に基づいて、電気信号を出力するものである。なお、ラインセンサ243を構成するCCDは、検出対象物Sの形態を認識するために十分な分解能を備えるように十分小さな受光素子を集めて構成される。
【0034】
第2の受光部25は、同様に、光源3側から照射されたライン光を集光するシリンドリカルレンズ251と、このシリンドリカルレンズを通過した光を拡散させるための投影板252と、この投影板252において拡散された光を集光する広角レンズ253と、この広角レンズ252によって集光された光を受光し、受光した光の強度を電気信号に変えて出力するラインセンサ254とを、この順に備えている。第2の受光部25における投影板252、広角レンズ253、ラインセンサ254は、第1の受光部24におけるものと実質的に同じもので構成されている。
【0035】
このように、第1の受光部24および第2の受光部25においては、投影板および広角レンズを用いることで、ラインセンサ受光部で受光する光を集光させているため、ラインセンサの構成を小さくすることができる。さらに、放射線検出システム1全体の大きさをコンパクトにすることが可能となる。
【0036】
また、検出対象物Sによって遮られずに透過した光のうち、検出対象物Sの外郭近傍を通過した光が、回折することによって検出対象物Sの外郭がぼやける状態になることがあるが、前述のように投影板を用いることで、回折した光のうち、検出対象物Sの外郭を表す光以外を拡散させることができる。これによって、受光部において受光する、検出対象物Sの外郭を示すための光のS/N比が向上し、より明確に検出対象物Sの形態を認識することができる。わかりやすく言えば、物体を光源との間において直接見ても、光源からの光が物体の周囲から回り込んで、その輪郭がはっきりしないのに対し、影絵の原理で、スリガラスや障子に写る物体の陰をみることで、その輪郭がはっきり認識できるのと同様の原理である。
【0037】
そして、これらの第1の受光部24に備えられたラインセンサ243において受光された光は、電気信号に変換され、演算処理部30の備える演算処理部本体31に送信される。演算処理部本体31においては、搬送部10による検出対象物Sの搬送速度と、第1の受光部24で受光した光の強度に基づく電気信号とから、検出対象部Sの幅方向についての形状および大きさ等が求められる。同様に、第2の受光部25に備えられたラインセンサ254において受光された光の強度に基づく電気信号と、搬送部10による検出対象物Sの搬送速度とから、検出対象物Sの高さ方向についての形状および大きさ等を求められる。
【0038】
演算処理部本体31は、メモリの所定領域に予め検出対象物の基本形状に相当する複数の形状データを記憶しており、前述のようにして特定された検出対象物Sの幅方向についての外郭と、高さ方向についての外郭とから、検出対象物Sの形状が、記憶した形状データのいずれに対応するかを認識する。この検出対象物Sの形状を特定する処理は、検出対象物Sの幅方向および高さ方向についての外郭から、検出対象物S全体の形状を特定し、前記各形状データの表す形状と最も近似するものを選択することで行われる。このような近似するための手法は、複数の物体の立体的な近似度合いを測定するためのプログラムを用いた演算処理を利用して行われる。
【0039】
また、演算処理部本体31は、検出対象物Sの形状を特定した後に、その大きさと、配置位置を特定する機能を備えている。すなわち、検出対象物Sの形状が、前記基本形状のいずれかに特定された後に、幅方向および高さ方向の外郭を表す電気信号から、検出対象物Sの大きさが特定された基本形状の何倍の大きさに相当するかを演算により求めて、検出対象物Sの大きさを特定している。さらに、検出対象物Sが、所定位置に搬送された際にどの面を上方に向けた状態で配置されているかを併せて特定する。
【0040】
なお、演算処理部本体31において認識された、検出対象物Sの形態と、検出対象物Sを構成する材質の密度等の情報とから算出された検出対象物Sのおおよその重量が、重量測定部10bにおいて測定された検出対象物Sの重量を大きく下回る場合は、演算処理部本体31はこの検出対象物Sの内部に空洞が存在すると判断する。
【0041】
このように、検出対象物Sの形状や大きさ、配置位置といった、検出対象物Sの形態を特定することで、所定位置に搬送された検出対象物Sの表面と、後述する放射線検出装置11に備えられた放射線センサ11aとのおおよその距離を求めることができる。そして、この距離に基づいて、検出対象物Sの表面から発生する放射能が、放射線検出装置11の備える放射線センサ11aにおいて検出されるまでに減衰した減衰量を算出し、この算出した減衰量から、後述するように、放射線検出部において検出した放射線の強度を補正する。
【0042】
放射線検出装置11は、放射線センサ11aと、検出対象物Sが放射線検出装置11内部の所定位置に搬送されたことを検知するための位置センサ11bとを備えている。放射線センサ11aは二種類のシンチレータ、例えばプラスチックシンチレータとNaIシンチレータとから構成されている。これらの放射線センサ11aおよび位置センサ11bは、前述の演算処理部本体31に接続されており、検出対象物Sが前記所定位置に搬送されることが位置センサ11bにより検知されると、放射線センサ11aは、検出対象物Sから発生する放射線の検出を開始する。ここで、γ線はプラスチックシンチレータ及びNaIシンチレータにより検出され、β線はプラスチックシンチレータにより検出される。放射線センサ11a(プラスチックシンチレータ、NaIシンチレータ)において検出された信号は、検出した放射線強度を表す電気信号に変換され、演算処理部本体31に送信される。演算処理部本体31においては、このように送信された放射線強度を表す信号を、放射線を検出する検出対象物S毎に対応づけて記憶する。
【0043】
演算処理部本体31は、形態計測部本体21から送信された電気信号により特定された検出対象物Sの形態に基づいて、放射線センサ11aにより検出された放射線強度を補正する。本実施形態においては、検出対象部Sの基本形状と、その大きさおよび配置位置に基づく補正係数が演算処理部本体31の備えるメモリの所定領域に記憶され、放射線センサ11aにおいて検出された放射線強度を表す電気信号にこれらの補正係数を乗じることで、検出した放射線強度の補正を行っている。そして、このようにして求められた検出対象物Sから発生する放射線の強度は、検出結果としてディスプレイ32に表示される。また、放射線の検出が終了した検出対象物Sは、搬送ローラ10aに搬送されて、放射線検出装置11から排出される。
【0044】
以上、説明したように、本実施形態においては、搬送部10に投入された検出対象物Sから発生する放射線強度を連続的かつ高速に測定する際に、その検出値を補正し、正確な放射線強度を求めることが可能となる。
【0045】
また、本実施形態においては、前述のように、検出対象物Sから発生する放射線の補正後の強度を用いて、検出対象物Sから発生する放射線の種類ごとに応じた放射線強度を換算することも可能となる。
【0046】
具体的には、放射線センサ11aにおいて検出した補正前の検出値は、検出対象物Sの表面から発生したβ線が、放射線センサ31にたどり着くまでに空気中で減衰している。したがって、放射線センサ31において検出される検出値と、前述のように補正を施した検出値との差を求めることで、検出対象物Sの表面から発生したβ線の減衰量が算出できる。したがって、検出対象物Sの表面から発生するβ線の量を求めることができる。
【0047】
なお、検出対象物Sの表面から発生したβ線の量が求まると、検出対象物表面から発生するβ線とγ線との量の比は検出対象物Sを構成する物質に含まれる核種毎に固有の値となっているため、検出対象物Sの表面から発生するγ線の量を求めることができる。このため、放射線センサ11aにおいて求められた検出対象物Sの表面および内部から発生したγ線の量と、前述のように求めた、検出対象物Sの表面から発生するγ線の量との差を求めることによって、検査対象物Sの内部から発生したγ線の量を求めることができる。したがって、放射線センサ11aにおいて検出されたγ線の検出値から、検出対象物Sの表面から発生したγ線の量と、検出対象物Sの内部から発生したγ線の量とを別々に求めることが可能になる。
【0048】
このように、本実施形態においては、検出対象物Sから発生するβ線の量を正確に検出するのみならず、検出対象物Sから発生するγ線の量のうち、表面から発生したγ線の量と、その内部から発生したγ線の量とを独立して算出することができる。
【0049】
なお、前述の実施形態における形態計測装置は、ライン光を検出対象物に照射し、検出対象物に遮断されない光を受光することで検出対象物の形状や大きさ等を求めているが、本発明においてはそのような構成に限定されるものではなく、前記受光部において受光したライン光の情報に基づいて、検出対象物の形態および大きさを認識する手法であれば、どのような手法を用いてもよい。すなわち、検出対象物Sに向けて複数の方向から平面的に光を照射し、検出対象物Sに遮断されない光を面状の受光部(例えば2次元CCD等)により受光することで、2次元的な検出対象物Sの外郭を求めるようにしてもよい。
【0050】
また、前述の実施形態においては、検出対象物から発生する放射線の検出値を補正する手法として、検出対象物のとり得る複数の基本形状を予め記憶しておき、その大きさと関連付けた補正係数を予め算出しておくことで、検出対象物の形態を認識した際に、前記補正係数を読み出して検出した放射線の検出値を補正する手法が用いられている。そのため、放射線の検出値の補正に必要な演算を簡単に行うことができ、高性能の演算処理部等を用いなくとも、大量の検出対象物から発生する放射線の強度を高速に測定することが可能となる。
【0051】
その他、放射線検出値の補正を行う手法としては、これに限られるものではなく、特定した前記検出対象物の形態から、放射線の検出時における前記検出対象物の表面の各点と、放射線センサとの間の距離を各々算出し、この距離に基づいて放射線センサで検出した放射線の値を1回の検出ごとに補正するようにしてもよい。このように放射線の検出値の補正を行った場合、検出対象物の表面と放射線センサとの距離に基づいたβ線の減衰度合いが正確に算出され、検出対象物から発生する放射線の強度をより正確に測定することができる。
【0052】
また、本実施形態に係る形態計測装置の備える形態認識部としての演算処理部30を、搬送部10や放射線センサ11aの制御においても兼用して用いているが、搬送部10や放射線センサ11aにそれぞれ制御部を設けて、独立して制御を行うようにしてもよい。
【0053】
さらに、前記実施形態に係る放射線検出システムによれば、検出対象物に遮られずに透過した光の光量に基づいて検出対象物の概略形態を認識しているため、前述のような検出対象物の表面にコーティング処理等を施す必要がなく、放射線の検出を正確に行うことができる。例えば、前記検出対象物に光を照射して、検出対象物表面で反射した反射光を用いて検出対象物の概略形態を認識する場合、光を効率よく反射させるためのコーティング等の処理を、前記検出対象物の表面に対して施す必要があるところ、そのようなコーティング処理によって、前記検出対象物から発生する放射線の量に影響を与えてしまう恐れがあり、放射線の検出を正確に行うことができなくなる。このように、本実施形態に係る形態計測装置を用いることで、検出対象物の形態を正確に把握することでき、したがって、放射線検出装置において、検査対象物から発生する放射線の強度を正確に求めることができる。
【0054】
以上、説明したように、この形態計測装置においては、検出対象物の形態を簡単に認識することができるため、放射線検出装置と組み合わせることで、検出対象物から発生するβ線が、検出器に到達するまでの減衰量を算出し、検出部で検出した放射線の強度が補正できる。また、内部で発生するγ線量の計測においては、検出対象物のかさ密度の増加により、(γ線の)自己吸収量が指数関数的に増大する。形態計測装置からの体積情報と(重量)ばかりからの重さ情報から、かさ密度の程度を知ることができるので、これを検出対象物の自己吸収係数として係数テーブルを準備することで、内部γ線発生量の計量精度を高めることができる。したがって、例えば検出対象物から発生する放射線を高速に測定する場合においても、検出対象物から発生する放射線の強度を正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態である放射線検出システムの主要部の概略を示す模式的概略図である。
【図2】同実施形態に係る放射線検出システムの搬送部によって搬送された検出対象物が、形態計測装置において形態計測される様子を概略的に示す模式的斜視図である。および概略図である。
【図3】同実施形態に係る放射線検出システムの搬送部によって搬送された検出対象物が、形態計測装置において形態計測される様子を概略的に示す模式的概略図である。
【図4】検出対象物から、放射線が発生し、検出部に検出される様子を概略的に示す概略図である。
【符号の説明】
【0056】
1 ・・・放射線検出システム
10 ・・・搬送部
10a・・・搬送ローラ
11 ・・・放射線検出装置
11a・・・検出部(放射線センサ)
20 ・・・形態計測装置
20a・・・形態計測部本体
221、222、231・・・光照射部
24,25・・・受光部
241、252・・・投影板
243、254・・・ラインセンサ
30 ・・・形態認識部(演算処理部)
S ・・・検出対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象物から発生する放射線を検出するための検出部と、前記検出対象物を搬送する搬送部とを備えた放射線検出装置に対して、前記検出対象物の形態情報を出力する形態計測装置であって、
前記搬送過程にある検出対象物に対して異なる方向から複数のライン光を照射する光照射部と、
前記光照射部から照射されたライン光のうち、前記検出対象物に遮られずに透過したライン光を受光する受光部と、
前記受光部において受光したライン光の情報に基づいて、前記検出対象物の概略形態を認識する形態認識部と、を有していることを特徴とする形態計測装置。
【請求項2】
前記検出対象物の重量を測定する重量測定部をさらに備えていることを特徴とする、請求項1に記載の形態計測装置。
【請求項3】
前記形態計測部によって認識した検出対象物の形態と、重量測定部によって測定した前記検出対象物の重量とから、前記検出対象物のかさ密度を算出可能であることを特徴とする請求項2に記載の形態計測装置。
【請求項4】
前記光照射部が、ライン光を発生する光源と、この光源より発生したライン光を平行光にするための屈折部とを備え、平行光とされたライン光を前記検出対象物に対して照射するものであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の形態計測装置。
【請求項5】
前記光照射部が、少なくとも検出対象物の高さ方向についてのライン光と、前記高さ方向についてのライン光に直交する、検出対象物の幅方向についてのライン光を照射するものであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の形態計測装置。
【請求項6】
前記検出対象物の高さ方向についてのライン光と、検出対象物の幅方向についてのライン光とが、互いに異なる波長の光であることを特徴とする請求項5に記載の形態計測装置。
【請求項7】
前記形態認識部が、前記搬送部によって搬送される際の検出対象物の移動速度と、前記受光部によって受光した光量の単位時間あたりの変化とによって、前記検出対象物の外郭を把握し、前記検出対象物の概略形態を認識するものであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の形態計測装置。
【請求項8】
前記受光部が、前記ライン光の照射範囲に対応したラインセンサであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の形態計測装置。
【請求項9】
前記ラインセンサが、CCDを直線状に配置したものであることを特徴とする請求項8に記載の形態計測装置。
【請求項10】
前記受光部と検対象物との間に、検出対象物に遮られずに透過した前記ライン光が投影される投影板を備えたことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の形態計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−24795(P2007−24795A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−210649(P2005−210649)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】