説明

形状測定装置

【課題】正確な三次元形状測定を行うことができる形状測定装置を提供する。
【解決手段】パタン投影系20が、投影パターンの投影方向を、第1の投影方向A1と、第1の投影方向に対して撮像系の光軸を中心に180度回転対称となる第2の投影方向A2とで切り替える投影方向切替手段30を有して構成され、形状測定部50は、被検物の表面上における同一の測定点に対し、第1の投影方向A1で投影された投影パターンが基準線に対して変形した量から求まる測定点の第1の高さ情報と、第2の投影方向で投影された投影パターンが基準線に対して変形した量から求まる第2の高さ情報との差から算出可能な撮像系のディストーションに因り発生する高さ情報を、第1又は第2の高さ情報から除いて、測定点の高さを測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光切断法を用いて工業製品等の被検物の三次元形状を測定する形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工業製品等の物体の表面形状を測定する技術は従来から種々提案されており、その一つに光学式の三次元形状測定装置がある。光学式の三次元形状測定装置も種々の方式や構成のものがあるが、その一つであって一般に光切断法と称される方式を用いた光学式の三次元形状測定装置は、スリット光を生成して被検物にスリット状の投影パターンを投影して、撮像された投影パターンの基準線に対する変形量に基づいて被検物の高さを測定するように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−84429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、光切断法を用いた形状測定装置においては、撮像結果から投影パターンの変形量を求めて形状測定を行うため、撮像系のディストーションにより投影パターンに歪が発生すると、歪による投影パターンの変形が測定誤差になり、正確な形状測定を行うことができなくなる。したがって、従来から光切断法を用いた形状測定装置においては、撮像系のディストーションがなるべく補正されるように光学設計されているが、高さの異なる被検物の表面からの反射光を撮像するものであるため、被検物の表面全域に対して良好なディストーション補正を光学的に行うには限界があった。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされており、ディストーションが測定結果に及ぼす影響をなくし、被検物の形状測定を正確に行うことができる形状測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的達成のため、本発明に係る形状測定装置は、スリット光を生成して被検物にスリット状の投影パターンを投影するパタン投影系と、被検物に投影された投影パターンを撮像する撮像系と、撮像系で撮像された投影パターンが当該投影パターンのスリット基準線に対して直交方向に変形した量に基づいて被検物の高さを測定する形状測定部と、を有して構成される形状測定装置において、パタン投影系が、投影パターンの投影方向を、第1の投影方向と、第1の投影方向に対して撮像系の光軸を中心に180度回転対称となる第2の投影方向とで切り替える投影方向切替手段を有し、第1の投影方向で投影された投影パターンのスリット基準線と、第2の投影方向で投影された投影パターンのスリット基準線とが平行となるように構成されている。そして、前記形状測定部は、被検物の表面上における同一の測定点に対し、前記第1の投影方向で投影された投影パターンがスリット基準線に対して変形した量から求まる前記測定点の第1の高さ情報と、前記第2の投影方向で投影された投影パターンがスリット基準線に対して変形した量から求まる第2の高さ情報とに基づいて、前記測定点の高さを測定するように構成されている。
【0007】
なお、前記形状測定部は、被検物の表面上における同一の測定点に対し、前記第1の高さ情報と前記第2の高さ情報との差から算出可能な前記撮像系のディストーションに因り発生する高さ情報を前記第1又は第2の高さ情報から除いて、前記測定点の高さを測定するように構成されているのが好ましい。
【0008】
また、前記パタン投影系が、第1の投影方向における被検物に対する投影パターンの投影角度と、第2の投影方向における被検物に対する投影パターンの投影角度とが等しくなるように構成され、前記被検物を支持する支持部材が、前記投影パターンの基準線と直交方向に移動自在に構成されており、前記支持部材を移動させることにより、投影パターンで前記被検物の表面全域を走査させるように構成されているのが好ましい。
【0009】
さらに、前記パタン投影系が、投影パターンの投影角度を変更する投影角度変更手段を有して構成されており、前記投影パターンの投影角度を変更することにより、投影パターンで前記被検物の表面全域を走査させるように構成されているのが好ましい。
【0010】
さらに、前記投影方向切替手段が、前記スリット光を二分する分光器と、前記分光器により分光された第1スリット光を反射して前記第1の投影方向で被検物に投影パターンを投影する第1反射部と、前記分光器により分光された第2スリット光を反射して前記第2の投影方向で前記被検物に投影パターンを投影する第2反射部と、前記第1スリット光および前記第2スリット光のいずれか一方の光路を選択して遮断する遮断部と、を有して構成されているのが好ましい。
【0011】
さらに、前記投影方向切替手段が、前記パタン投影系が設けられている鏡筒を、第1の回転位置と、前記第1の回転位置に対して前記撮像系の光軸周りに180度回転された第2の回転位置との間で移動させる回転移動機構を有して構成されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように構成される本発明によれば、撮像系の光軸を中心にして180度回転対称の位置から照射された場合には、投影パターンのスリット基準線が平行になり、投影パターンのスリット基準線に対する変形が、真逆の方向になって表われる。一方、第1および第2投影方向のいずれにおいて投影パターンを投影しても、撮像系のディストーションによって測定誤差となる投影パターンの変形は、同じ方向に表われる。すなわち、同一の測定点に対し、2つの投影方向で投影して得られた2つの高さ情報の差に基づき、ディストーションにより発生する測定誤差を簡単に算定可能になる。このため、ディストーションによる誤差を除いて被検物の高さを正確且つ簡単に測定することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。本発明に係る第1実施例の形状測定装置1の構成を図1に示しており、この形状測定装置1について図1を参照して説明する。なお、下記X方向、Y方向、Z方向は、図示する矢印の方向に対応させて説明している。
【0014】
この形状測定装置1は、支持面10a上に載置された被検物5を保持するステージ10と、ステージ10に保持された被検物5にスリット状の投影パターンを投影するパタン投影系20と、被検物5からの反射光を受けて被検物5に投影された投影パターンを撮像する撮像系40と、撮像系40の撮像結果に基づいて被検物5のステージ10の支持面10aに対する高さを計測する形状測定部50とを有して構成されている。なお、この形状測定装置1は、被検物5として、例えば携帯電話機のケーシングを成型する金型等の工業製品を測定対象とするものであるが、本実施例では被検物5を便宜上半球状の物体として説明している。
【0015】
ステージ10は、支持面10a上に被検物5を保持し、移動機構15により駆動されてX方向に移動されるように構成されている。ステージ10の移動位置はエンコーダ等の図示しない位置検出器により検出され、検出値が形状測定部50に出力されるようになっている。
【0016】
パタン投影系20は、例えばLED等が用いられた光源21と、光源21からの光を受けてスリット光を生成するパタン形成部22とを有して構成されている。パタン形成部22は、光源21からの光を集光するシリンドリカルレンズ22aと、シリンドリカルレンズ22aから出射された光を通過させて所定幅のスリット光に整形するスリット板22bとを有して構成されている。
【0017】
また、パタン投影系20は、投影方向切替部30により、パタン形成部22によって生成されたスリット光の投影方向を切り替え可能になっている。投影方向切替部30は、パタン形成部22からのスリット光を二分するハーフプリズム31と、ハーフプリズム31における反射光(以下、第1スリット光とも称する)を全反射し、ステージ10上の被検物5に第1投影方向A1で第1スリット光を投影する第1ミラー32と、ハーフプリズム31における透過光(以下、第2スリット光とも称する)をハーフプリズム31の反射方向に対して逆方向に反射する第2ミラー33と、第2ミラー33からの光を反射してステージ10上の被検物5に第2投影方向A2で第2スリット光を投影する第3ミラー34と、第1スリット光の光路に対して出入自在に配設された第1シャッタ35と、第2スリット光の光路に対して出入自在に配設された第2シャッタ36と、第1および第2シャッタ35,36を駆動していずれか一方のシャッタを光路上に位置させるシャッタ駆動機構37とを有して構成されている。各ミラー32〜34は、第1および第2投影方向A1,A2が互いに撮像系40の光軸40Lを中心にして180度回転対称の位置関係となるように配置されている。すなわち、第1スリット光を投影したときの投影パターンのスリット基準線と、第2スリット光を投影したときの投影パターンのスリット基準線とが互いに平行になっており、Y方向に延びている。
【0018】
この投影方向切替部30によると、シャッタ駆動機構37の作動により、第2シャッタ36が光路上に配置されているときには第1シャッタ35が光路から退避されるようになっており、このときには、第1投影方向A1から被検物5に投影パターンが投影される一方、第2スリット光は第2シャッタ36により遮断される。また、第1シャッタ35が光路上に配置されているときには第2シャッタ36が光路から退避され、第2投影方向A2から被検物5に投影パターンが投影される一方、第1スリット光は第1シャッタ35により遮断される。このように、パタン投影系20においては、第1および第2スリット光のいずれか一方のスリット光を、被検物5に投影可能になっている。
【0019】
また、ハーフプリズム31および第1〜第3ミラー32〜34が、第1投影方向A1から投影される第1スリット光の投影角度θと、第2投影方向A2から投影される第2スリット光の投影角度θとが等しくなるように配設されている。投影方向切替部30を含めてパタン投影系20を構成する各部品は、投影系鏡筒20aに固定されて設けられている。
【0020】
撮像系40においては、対物レンズ41を介して集光された反射光を受けて撮像装置42の撮像面42aに被検物5の像が撮像される。なお、撮像系40の光軸40LはZ方向に延びている。撮像面42aにはCCD等の光電変換素子が設けられており、撮像面42aに撮像された画像データが形状測定部50に送られる。形状測定部50においては、以下に説明する画像演算処理がなされ、被検物5の形状測定が行われる。
【0021】
以下、第1実施例の形状測定装置1における被検物5の表面形状を測定する方法について説明する。まず、ステージ10の支持面10a上に被検物5を保持し、投影方向切替部30により第1投影方向A1から第1スリット光が所定の投影角度θで投影される状態にし、ステージ10をX方向に移動させる。これにより、第1スリット光によって被検物5の表面全域が走査される。このとき、所定の走査間隔ごとに撮像系40により被検物5(及びステージ10の支持面10a)に投影された投影パターンの像が取得される。そして形状測定部50において、取得された各像に対して投影パターンが結像された画素位置に応じて測定点が規定される。
【0022】
ここで、図2に示すように、ある測定点Pに投影された投影パターンの像に着目すると、Y方向にスリット基準線Lが延びるスリット光が被検物5に投影されたとき、測定点の高さに応じてX方向(スリット基準線Lに対して直交方向)に変形された像が得られる。撮像系40にディストーションがないと仮定した場合には、投影パターンが一点鎖線α1で示される像として結像されるが、実際には撮像系40のディストーションにより、実線β1で示されるように像に歪みが生じる。このため、測定点Pに対して検出されるスリット基準線Lに対する変形量δ1は、実際の高さhRに応じた変形量δRに、測定点Pからの反射光に対する撮像系40のディストーションによる変位量δdを加えた量となる(δ1=δR+δd)。
【0023】
なお、各測定点のY位置は、測定点からの反射光の結像位置から求めることができる。X位置は、ステージ10が移動される本実施例においては、測定点Pからの反射光が結像されたときにおいて位置検出器により検出されたステージ10のX位置と、基準線L(ステージ10の支持面10a上を投影したパターン)の結像位置と、測定点Pからの反射光の結像位置とに基づいて求めることができる。
【0024】
次に、投影方向切替部30により第2投影方向A2から第2スリット光が上記と同じ投影角度θで投影される状態にし、ステージ10をX方向に移動させ、所定走査間隔ごとに撮像系40により被検物5(及びステージ10の支持面10a)に投影された投影パターンの像が取得され、上記と同様にして測定点が規定される。
【0025】
また、支持面10a上には校正用プレートが設けられている。このため、第1投影方向から投影されたときにおいて求められた校正用プレートのX位置と、第2投影方向から投影されたときにおいて求められた校正用プレートのX位置との差分を求め、この差分を第2投影方向で投影されたときにおける各測定点のX位置に加算することで、第1投影方向で投影されたときの各測定点のX位置と、第2投影方向で投影された各測定点のX位置とを整合させることができる。
【0026】
ここで、上記と同様にして、測定点Pに投影された投影パターンの像に着目する。上記の通り第1および第2スリット光は、互いに180度回転対称の位置から投影され、スリット基準線Lが平行になっている。このため、図2に示すように、この測定点Pに対して得られる像は、測定点の高さに応じて上記と逆方向(−X方向)に変形された像が得られる。撮像系40にディストーションがないと仮定した場合には、投影パターンが一点鎖線α2で示される像として結像されるが、実際には撮像系40のディストーションにより、実線β2で示されるように歪んだ像が結像される。ただし、同一の測定点Pからの反射光に対するディストーションによる変位は同じ方向に一定値として現れるため、測定点Pに対して検出されるスリット基準線Lに対する変形量δ2は、実際の高さhRに応じた変形量δRから、測定点Pからの反射光に対する撮像系40のディストーションによる変位量δdを差し引いた量となる(δ2=δR−δd)。なお、第1および第2スリット光は投影角度が等しいため、実際の高さhRに応じた変形量δRは、第1および第2スリット光を投影したときとで等しくなっている。
【0027】
次に、第1スリット光を投影したときの各測定点のXおよびY位置と、第2スリット光を投影したときの各測定点のXおよびY位置とを比較して同位置にある測定点を抽出し、その同一測定点に対してZ位置を求める。ここでも、図2に示される測定点Pについて代表して説明すると、次式(1),(2)に基づき、第1および第2スリット光を投影したときにおいて、測定点Pにおけるスリット基準線Lに対するそれぞれの変形量δ1,δ2から、測定点Pに対する2つの高さ情報h1,h2を得ることができる。
【0028】
h1=δ1tanθ=(δR+δd)tanθ=hR+δdtanθ …(1)
h2=δ2tanθ=(δR−δd)tanθ=hR−δdtanθ …(2)
【0029】
このように、両高さ情報h1,h2には、実際の高さhRに対し、撮像系40のディストーションによる測定誤差分δdtanθが含まれていることがわかる。測定点Pの実際の高さhRは、式(1),(2)に基づき、次式(3)により求めることができる。
【0030】
hR=(h1+h2)/2=tanθ(δ1+δ2)/2 …(3)
【0031】
このようにして各測定点に対して実際の高さが式(3)に基づいて求められ、被検物の表面全域に対して三次元形状の測定が行われる。
【0032】
以上のように、本実施例の形状測定装置によると、第1および第2の投影方向A1,A2から投影された投影パターンの基準線が平行になっており、投影パターンの基準線に対する変形が真逆の方向になって現われる。このため、第1および第2投影方向のいずれにおいて投影パターンを投影しても、撮像系のディストーションによって測定誤差となる投影パターンの変形は、同じ方向になって現われる。このため、ディストーションの影響を含む投影パターンの変形量δ1,δ2から求まる高さ情報h1,h2から、ティストーションによる誤差分δdtanθを簡単に除くことができ、被検物5の実際の高さを正確に測定することができるようになる。
【0033】
しかも、本実施例においては、第1投影方向A1における被検物5に対する投影パターンの投影角度と、第2投影方向A2における被検物5に対する投影パターンの投影角度とが固定されて等しくなっている。このため、第1投影方向A1で投影したときにも、第2投影方向A2で投影したときにも、ティストーションによる誤差分δdtanθが等しい値となる。したがって、式(3)に表されるように、第1投影方向A1で投影された投影パターンが基準線Lに対して変形された量δ1と、第2投影方向A2で投影された投影パターンが基準線に対して変形された量δ2とに基づいて、簡単な計算式によって測定点Pに対する実際の高さhRを求めることができるようになる。
【0034】
次に、図3を参照して、本発明に係る第2実施例の形状測定装置101について説明する。以下の本実施例の説明において、第1実施例と同一部材については、同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0035】
本実施例のパタン投影系120においては、第1および第3ミラー132,134が揺動自在に取り付けられており、この第1および第3ミラー132,134を揺動して第1および第2スリット光の投影角度を変更する投影角度変更部138が設けられている。なお、投影角度変更部138には、第1および第3ミラー132,134の揺動角度を検出する図示しない角度検出器が備えられており、この角度検出器の検出値から第1および第2スリット光の投影角度を求めることができるようになっている。一方、ステージ110は固定されており、上記の移動機構15が省略されている。本実施例では、投影角度変更部138によりスリット光の投影角度を変更させながら被検物5に投影パターンを投影することにより、被検物5の表面全域に対して投影パターンを走査させるようになっている。また、撮像系40は、少なくとも被検物5の表面全域を視野内に収めることができるように構成されている。
【0036】
このように構成される形状測定装置101を用いて行われる形状測定方法について説明する。まず、投影方向切替部30により第1スリット光が投影される状態にする。そして、投影角度変更部138により投影角度を変更させながら被検物5に投影パターンを投影する。このとき、所定走査間隔ごとに、撮像系40により被検物に投影された投影パターンの像が取得される。取得された各像に対し、投影パターンが結像された画素に応じた測定点が規定され、各測定点に対し、その測定点からの反射光が結像された画素位置に基づいてXおよびY位置の情報が与えられる。また同時に、各測定点に対し、その測定点に対する第1スリット光の投影角度の情報が与えられる。
【0037】
ここで、図4に示すように、ある測定点Pに投影された投影パターンの像に着目すると、Y方向にスリット基準線Lが延びるスリット光が被検物5に投影されたとき、測定点の高さに応じてX方向(スリット基準線Lに対して直交方向)に変形された像が得られる。撮像系40にディストーションがないと仮定した場合には、投影パターンが一点鎖線α1で示される像として結像されるが、実際には撮像系40のディストーションにより、実線β1で示されるように像に歪みが生じる。このため、測定点Pに対して検出されるスリット基準線Lに対する変形量δ1は、実際の高さhRに応じた変形量δR1に、測定点Pからの反射光に対する撮像系40のディストーションによる変位量δdを加えた量となる(δ1=δR1+δd)。
【0038】
次に、第2投影方向から第2スリット光が投影される状態にし、投影角度変更部38により投影角度を変更しながら、第2スリット光を支持面10a上に保持された被検物5に投影される状態にする。そして、上記と同様にして取得された各像に対し、画素に応じた測定点が規定され、各測定点に対し、XおよびY位置の情報、および、その測定点に対する第2スリット光の投影角度の情報が与えられる。
【0039】
ここで、上記と同様にして、測定点Pに投影された投影パターンの像に着目する。上記の通り第1および第2スリット光は、互いに180度回転対称の位置から投影され、スリット基準線Lが平行になっているため、この測定点Pに対して得られる像は、測定点の高さに応じて上記と逆方向に変形された像が得られる。撮像系40にディストーションがないと仮定した場合には、投影パターンが一点鎖線α2で示される像として結像されるが、実際には撮像系40のディストーションにより、実線β2で示されるように歪んだ像が結像される。ただし、同一の測定点Pからの反射光に対するディストーションによる変位は同じ方向に一定値として現れるため、測定点Pに対して検出されるスリット基準線Lに対する変形量δ2は、実際の高さhRに応じた変形量δR2から、測定点Pからの反射光に対する撮像系40のディストーションによる変位量δdを差し引いた量となる(δ2=δR2−δd)。
【0040】
そして、第1スリット光が投影されたときと、第2スリット光が投影されたときとで、同一画素上に結像された測定点を抽出し、その同一測定点のそれぞれに対してZ位置を求める。図4に示される測定点Pについて代表して説明すると、次式(4),(5)に基づき、第1および第2スリット光を投影したときにおいて測定点Pにおけるスリット基準線Lに対するそれぞれの変形量δ1,δ2から、測定点Pに対する2つの高さ情報h1,h2を得ることができる。
【0041】
h1=δ1tanθ1=(δR1+δd)tanθ1=hR+δdtanθ1 …(4)
h2=δ2tanθ2=(δR2−δd)tanθ2=hR−δdtanθ2 …(5)
【0042】
このように両高さ情報h1,h2には、実際の高さhRに対し、撮像系40のディストーションによる測定誤差分δdtanθ1,δdtanθ2がそれぞれ含まれているが、式(4),(5)に基づき、撮像系40のディストーションによる変位量δdは、式(6)で表されるように算定可能である。
【0043】
【数1】

【0044】
このようにディストーションによる変位量δdは、検出値を用いて算定可能であり、このような算定値と、式(4)または(5)とから、測定点Pの実際の高さhRを次式(7)により求めることができる。
【0045】
【数2】

【0046】
このようにして各測定点に対して実際の高さが求められ、第1実施例と同様にして、被検物5の表面全域に対して三次元形状の測定を正確且つ簡単に行うことができる。
【0047】
次に、図5を参照して本発明の第3実施例について説明する。本実施例は、第1実施例に対してスリット光投影系の構成が異なるものであり、その他の構成や被検物5の形状測定の方法については第1実施例と同様であるため、同一の部材には同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0048】
本実施例のパタン投影系220は、第1実施例と同様の光源21とパタン形成部22とを有して構成されており、これらが投影用鏡筒220aに固定されて設けられている。そして、パタン形成部22により生成されたスリット光がステージ10の支持面10aに支持された被検物5に所定の投影角度で投影されるようになっている。そして、このパタン投影系220には、撮像系40の光軸40L周りに投影用鏡筒220aを回転させる回転機構230が設けられている。この回転機構230によって投影用鏡筒220aを回転させることにより、被検物5に対するスリット光の投影方向を切替変更することができる。
【0049】
このようなパタン投影系220を有した形状測定装置221においては、まず回転機構により投影用鏡筒220aを所定の回転位置で保持し、ステージ10を移動させながらステージ上10の支持面10aにスリット光を投影することにより、スリット光により被検物5の表面全域に対して投影光がスキャンされる。そして、回転機構230により投影用鏡筒220aを撮像系40の光軸40L周りに180度回転させ、この位置からスリット光を投影しながらステージ10を移動させることにより、スリット光により被検物5の表面全域がスキャンされる。このように、本実施例においても、第1実施例と同様に、撮像系40の光軸40Lを中心にして180度回転対称の2方向から同一の投影角度でスリット光を投影することができ、第1実施例と同様にして被検物の表面形状を正確に測定することができる。
【0050】
なお、パタン投影系220にスリット光の投影角度を変更させるためのミラーを揺動自在に設けてもよい。これにより、第2実施例と同様に、ミラーを揺動させながらスリット光を投影することにより、スリット光の投影角度を変更させながらスリット光を被検物5に投影し、スリット光により被検物5の表面全域をスキャンすることができる。したがって、第2実施例と同様にして被検物の表面形状を正確に測定することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る第1実施例の形状測定装置の構成図である。
【図2】第1実施例の形状測定装置において第1又は第2投影方向からスリット光を被検物に投影した状態を示す説明図であり、(a)が形状測定装置を正面視で示す模式図であり、(b)が撮像面における投影パターンの結像結果を示す説明図である。
【図3】本発明に係る第2実施例の形状測定装置の構成図である。
【図4】第2実施例の形状測定装置において第1又は第2投影方向からスリット光を被検物に投影した状態を示す説明図であり、(a)が形状測定装置を正面視で示す模式図であり、(b)が撮像面における投影パターンの結像結果を示す説明図である。
【図5】本発明に係る第3実施例の形状測定装置の構成図である。
【符号の説明】
【0052】
1,101,201 形状測定装置 5 被検物
10,110 ステージ 20,120,220 パタン投影系
30 投影方向切替部 38 投影角度切替部
40 撮像系 50 形状測定部
230 回転機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリット光を生成して被検物にスリット状の投影パターンを投影するパタン投影系と、
前記被検物に投影された前記投影パターンを撮像する撮像系と、
前記撮像系で撮像された投影パターンが当該投影パターンのスリット基準線に対して直交方向に変形した量に基づいて被検物の高さを測定する形状測定部と、を有して構成される形状測定装置において、
前記パタン投影系が、前記投影パターンの投影方向を、第1の投影方向と、前記第1の投影方向に対して前記撮像系の光軸を中心に180度回転対称となる第2の投影方向とで切り替える投影方向切替手段を有し、前記第1の投影方向で投影された投影パターンのスリット基準線と、前記第2の投影方向で投影された投影パターンのスリット基準線とが平行となるように構成され、
前記形状測定部は、被検物の表面上における同一の測定点に対し、前記第1の投影方向で投影された投影パターンがスリット基準線に対して変形した量から求まる前記測定点の第1の高さ情報と、前記第2の投影方向で投影された投影パターンがスリット基準線に対して変形した量から求まる第2の高さ情報とに基づいて、前記測定点の高さを測定することを特徴とする形状測定装置。
【請求項2】
前記形状測定部は、被検物の表面上における同一の測定点に対し、前記第1の高さ情報と前記第2の高さ情報との差から算出可能な前記撮像系のディストーションに因り発生する高さ情報を前記第1又は第2の高さ情報から除いて、前記測定点の高さを測定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の形状測定装置。
【請求項3】
前記パタン投影系が、第1の投影方向における被検物に対する投影パターンの投影角度と、第2の投影方向における被検物に対する投影パターンの投影角度とが等しくなるように構成され、前記被検物を支持する支持部材が、前記投影パターンの基準線と直交方向に移動自在に構成されており、
前記支持部材を移動させることにより、投影パターンで前記被検物の表面全域を走査させるように構成されていることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の形状測定装置。
【請求項4】
前記パタン投影系が、投影パターンの投影角度を変更する投影角度変更手段を有して構成されており、
前記投影パターンの投影角度を変更することにより、投影パターンで前記被検物の表面全域を走査させるように構成されていることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の形状測定装置。
【請求項5】
前記投影方向切替手段が、前記スリット光を二分する分光器と、前記分光器により分光された第1スリット光を反射して前記第1の投影方向で被検物に投影パターンを投影する第1反射部と、前記分光器により分光された第2スリット光を反射して前記第2の投影方向で前記被検物に投影パターンを投影する第2反射部と、前記第1スリット光および前記第2スリット光のいずれか一方の光路を選択して遮断する遮断部と、を有して構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の形状測定装置。
【請求項6】
前記投影方向切替手段が、前記パタン投影系が設けられている鏡筒を、第1の回転位置と、前記第1の回転位置に対して前記撮像系の光軸周りに180度回転された第2の回転位置との間で移動させる回転移動機構を有して構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−185380(P2008−185380A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−17284(P2007−17284)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】