説明

形状測定装置

【課題】被検物の三次元形状を測定する際に必要なメモリの容量を効率的に削減する。
【解決手段】形状測定装置において、ステップS5において、スポット光の照射位置が変化したと判定され、ステップS6において、過去にデータセットを記録した照射位置でないと判定された場合、測定データ、中間データおよび測定用画像データを含むデータセットを記録する。また、スポット光の照射位置が変化したか否かに関わらず、ステップS7において、現在のスポット光の照射位置でまだN回データセットを記録していないと判定された場合、データセットを記録し、すでにN回データセットを記録していると判定された場合、データセットを記録しない。本発明は、例えば、三次元形状測定装置に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状測定装置に関し、特に、被検物の三次元形状を測定する場合に用いて好適な形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクティブステレオ法を用いて被検物の三次元形状を測定する形状測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
アクティブステレオ法を用いた形状測定装置では、スポット光、ライン光などの所定の形状の光(以下、測定光と称する)が被検物に照射され、測定光が照射された被検物が撮像される。次に、測定光を発する光源の位置、測定光の光軸の方向、被検物を撮像する撮像装置の位置、撮像装置の光学系の光軸の方向、および、被検物を撮像した画像における測定光の照射位置に基づいて、三角測量の原理を用いて、所定の三次元の座標空間における被検物の測定光が照射されている位置の座標が測定される。そして、測定光を走査しながら、被検物の各部の座標を測定することにより、被検物の三次元形状が測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平11−509928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のアクティブステレオ法を用いた形状測定装置では、撮像した画像のデータを全てメモリに蓄積しているため、測定に必要のない画像データまで蓄積されてしまい、その結果、必要なメモリの容量が大きくなっていた。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、被検物の三次元形状を測定する際に必要なメモリの容量を効率的に削減できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面の形状測定装置は、被検物の表面に光を照射し、前記表面からの反射光による像を取得することにより、前記被検物の三次元形状を測定する形状測定装置であって、取得した前記像を用いて、所定の三次元の座標空間における、前記光の前記表面の照射位置の座標を測定する測定手段と、前記照射位置の座標と同じ座標において取得した前記像の記録数が、1以上の自然数であるN個未満の場合は、取得した前記像および前記照射位置の座標を含むデータセットを記録するように制御する記録制御手段とを備える。
【0008】
本発明の第1の側面においては、被検物の表面に光が照射され、前記表面からの反射光による像が取得され、取得された前記像を用いて、所定の三次元の座標空間における、前記光の前記表面の照射位置の座標が測定され、前記照射位置の座標と同じ座標において取得した前記像の記録数が、1以上の自然数であるN個未満の場合は、取得した前記像および前記照射位置の座標を含むデータセットが記録される。
【0009】
本発明の第2の側面の形状測定装置は、被検物の表面に光を照射し、前記表面からの反射光による像を取得することにより、前記被検物の三次元形状を測定する形状測定装置であって、取得した前記像を用いて、所定の三次元の座標空間における、前記光の前記表面の照射位置の座標を測定する測定手段と、前記照射位置の座標が異なる座標に変化したときのみ、取得した前記像および前記照射位置の座標を含むデータセットを記録し、前記照射位置の座標が異なる座標に変化しないときは、前記データセットを記録しないように制御する記録制御手段とを備える。
【0010】
本発明の第2の側面においては、被検物の表面に光が照射され、前記表面からの反射光による像が取得され、取得された前記像を用いて、所定の三次元の座標空間における、前記光の前記表面の照射位置の座標が測定され、前記照射位置の座標が異なる座標に変化したときのみ、取得した前記像および前記照射位置の座標を含むデータセットが記録され、前記照射位置の座標が異なる座標に変化しないときは、前記データセットが記録されない。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の側面または第2の側面によれば、被検物の三次元形状を測定する際に必要なメモリの容量を効率的に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を適用した形状測定システムの第1の実施の形態の構成例を示す斜視図である。
【図2】形状測定装置の光切断プローブの構成例を示す図である。
【図3】形状測定装置の制御装置、および、コンピュータにより実現される機能の構成の例を示すブロック図である。
【図4】形状測定システムにより実行される形状測定処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明を適用した形状測定システムの第2の実施の形態の構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態という)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態
2.第2の実施の形態
3.変形例
【0014】
<1.第1の実施の形態>
[形状測定装置の構成]
図1は、本発明の第1の実施の形態である形状測定システム1の構成の例を示す斜視図である。
【0015】
形状測定システム1は、形状測定装置11、コンピュータ12およびモニタ13により構成され、形状測定装置11とコンピュータ12が接続され、コンピュータ12とモニタ13が接続されている。
【0016】
形状測定装置11は、光プローブ22により定盤21の上に載置されている被検物2にビーム径が非常に小さいスポット光を照射しながら被検物2を撮像し、得られた画像(以下、測定用画像と称する)を用いて、アクティブステレオ法により被検物2の三次元形状を測定する三次元形状測定装置である。
【0017】
光プローブ22は、Zステージ23およびコラム24が駆動されることにより、鉛直方向に沿ったZ軸方向、および、Z軸方向に直交するとともに互いに直交するX軸方向およびY軸方向に移動する。より具体的には、光プローブ22は、Z軸方向に細長い形状のZステージ23の下方の先端に装着されており、Zステージ23は、X軸方向に延びるコラム24の梁部24Aに装着されている。Zステージ23は、形状測定装置11に内蔵されている制御装置28の制御の基に、図示せぬアクチュエータなどによりコラム24の梁部24Aに沿って駆動されるとともに、自身の長手方向に沿って駆動される。また、コラム24は、梁部24Aの両端を脚部24B,24Cにより支持するコ字形状をしており、制御装置28の制御の基に、図示せぬアクチュエータなどにより脚部24Bが定盤21上に設けられたガイド25により案内されてY軸方向に駆動される。なお、ガイド25が設けられていない側の脚部24Cの下端は、例えば、エアーガイドとなっている。
【0018】
このように、光プローブ22は、X軸、Y軸およびZ軸方向に移動することができ、被検物2を動かさずに、被検物2にスポット光を照射する位置、および、被検物2を撮像する位置を変更することが可能である。
【0019】
また、定盤21には、光プローブ22による測定が可能な範囲内であって被検物2の測定の邪魔とならない位置(例えば、定盤21上の測定が可能な範囲の周辺部)に、基準球26および基準面27が校正用のゲージとして配置されている。基準球26は、所定の真球度で形成された球形状の部材である。基準面27は、Z軸に対して直交するように所定の平面度で形成された平面である。
【0020】
制御装置28は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などにより構成され、Zステージ23およびコラム24の駆動を制御するとともに、Zステージ23およびコラム24の位置を示すデータをコンピュータ12に供給する。また、制御装置28は、光プローブ22の動作を制御するとともに、光プローブ22から測定用画像のデータ(以下、測定用画像データと称する)を取得し、コンピュータ12に供給する。さらに、制御装置28は、図4を参照して後述するように、被検物2の各部の座標を測定し、測定結果を示すデータ(以下、測定データと称する)、および、被検物2の各部の座標の測定に用いたデータ(以下、中間データと称する)をコンピュータ12に供給する。
【0021】
コンピュータ12は、形状測定装置11から供給される測定データ、中間データ、および、測定用画像データを記録する。また、コンピュータ12は、測定データに基づいて、被検物2の三次元形状の演算を行う。さらに、コンピュータ12は、測定データ、中間データ、および、測定用画像データに基づいて、被検物2の三次元形状の測定結果を示す画像を生成し、モニタ13に表示させる。
【0022】
なお、形状測定装置11では、形状測定装置11の各部および被検物2の各部の座標が、所定の基準点Oを基準とし、X軸、Y軸およびZ軸からなる三次元の座標空間における座標系(以下、測定座標系と称する)により表される。なお、図1に示される基準点Oの位置は、その一例であり、任意の位置に設定することが可能である。また、X軸、Y軸およびZ軸の方向も、互いに直交していれば、必ずしも図1に示される方向でなくてもよい。
【0023】
[光プローブの構成]
図2は、形状測定装置11の光プローブ22の構成例を示す図である。
【0024】
光プローブ22は、スポット光を照射する照射ユニット41と、スポット光が照射された被検物2からの反射光による像を撮像する撮像ユニット42とを備えて構成される。
【0025】
照射ユニット41の発光素子51は、例えば、LED(Light Emitting Diode)や、LD(Laser Diode)などにより構成される。発光素子51から発せられたスポット光は、コンデンサレンズ52により平行光束となるように集光されて、照射ユニット41から射出される。
【0026】
撮像ユニット42の撮像素子62は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、または、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどにより構成され、撮像レンズ61を介して、スポット光が照射された被検物2からの反射光による像を撮像する。撮像素子62は、撮像の結果得られた測定用画像データを制御装置28に供給する。
【0027】
また、照射ユニット41および撮像ユニット42は、発光素子51から射出されるスポット光の光軸L1と撮像ユニット42の光学系の光軸L2とが所定の角度(例えば、45°)となるように光プローブ22に組み込まれている。さらに、光プローブ22は、光軸L1がZ軸と平行になり、光軸L2がY軸に対して垂直になるように、Zステージ23の先端に装着されている。
【0028】
ここで、アクティブステレオ法による被検物2の三次元形状の測定方法の一例について簡単に説明する。
【0029】
例えば、被検物2の三次元形状の測定に用いる基準点として、光軸L1上の発光素子51の下端の点を基準点Aとし、撮像素子62の受光面の中央の点を基準点Bとする。ここで、照射ユニット41と撮像ユニット42の相対位置が変化しないので、基準点Aと基準点Bを結ぶ線分ABの長さは既知の値となる。また、照射ユニット41と撮像ユニット42の相対位置に加えて、光軸L1および光軸L2の方向も変化しないので、線分ABと光軸L1の間の角度α、および、線分ABと光軸L2の間の角度βも既知の値となる。さらに、被検物2の表面においてスポット光が照射されている点を測定点Pとすると、基準点Bと測定点Pとを結ぶ線分BPと光軸L2の間の角度γは、測定用画像における測定点Pの座標、換言すれば、測定用画像における反射光による像(スポット光の像)の座標に基づいて、既知の手法を用いて求めることができる。
【0030】
そして、線分ABの長さ、角度α乃至γ、光軸L1および光軸L2の方向から、三角測量の原理に基づいて、基準点Aおよび基準点Bに対する測定点Pの相対位置を求めることができる。
【0031】
また、発光素子51および撮像素子62とZステージ23の相対位置が変化しないので、測定座標系における基準点Aおよび基準点Bの座標は、測定座標系におけるZステージ23およびコラム24の位置(Zステージ23およびコラム24の所定の位置の測定座標系における座標)に基づいて求めることができる。従って、基準点Aおよび基準点Bに対する測定点Pの相対位置、および、測定座標系における基準点Aおよび基準点Bの座標に基づいて、測定座標系における測定点Pの座標を求めることができる。
【0032】
そして、被検物2の表面をスポット光を走査し、測定点Pを移動させながら、測定座標系における被検物2の各部の座標を測定することにより、被検物2の三次元形状を測定することができる。
【0033】
[制御装置28およびコンピュータ12の機能の構成]
図3は、形状測定装置11の制御装置28およびコンピュータ12により実現される機能の構成の例を示すブロック図である。
【0034】
測定制御部101は、Zステージ23およびコラム24の駆動を制御して、光プローブ22を移動させることにより、照射ユニット41によるスポット光の照射位置、および、撮像ユニット42による撮像位置を移動させる。また、測定制御部101は、測定座標系におけるZステージ23およびコラム24の位置を示すデータを測定部103に供給する。さらに、測定制御部101は、照射ユニット41の発光素子51の点灯および消灯を制御する。また、測定制御部101は、撮像ユニット42の制御を行うとともに、撮像ユニット42から供給される測定用画像データを取得し、照射位置検出部102および記録制御部104に供給する。さらに、測定制御部101は、図示せぬ形状測定システム1の操作部を介して入力される各種の処理の指令を取得する。また、測定制御部101は、被検物2の三次元形状の演算を演算部106に指令する。
【0035】
照射位置検出部102は、測定用画像におけるスポット光の照射位置、すなわち、測定用画像における反射光による像(スポット光の像)の座標(測定用画像における図2の測定点Pの座標)を検出し、検出結果を示すデータを測定部103に供給する。
【0036】
測定部103は、図2を参照して上述した方法に基づいて、測定座標系におけるスポット光の照射位置、すなわち、測定座標系における反射光による像(スポット光の像)の座標(測定座標系における図2の測定点Pの座標)を測定する。また、測定部103は、測定結果を示す測定データ、および、測定に用いた中間データを記録制御部104に供給する。
【0037】
なお、中間データは、後で測定座標系における測定点Pの座標を再演算するために必要なデータを少なくとも含んでいればよく、例えば、測定座標系におけるZステージ23およびコラム24の位置、図2に示される基準点Aの座標、基準点Bの座標および角度γ、並びに、測定用画像における測定点Pの座標のうちの全部または一部を含む。また、図2に示される線分ABの長さ、角度αおよび角度βは、測定座標系における測定点Pの座標の測定に用いるデータではあるが、既知の値なので、必ずしも中間データに含める必要はない。
【0038】
記録制御部104は、図4を参照して後述するように、測定データ、中間データ、および、測定用画像データを互いに関連づけたデータセットの記録部105への記録を制御する。
【0039】
記録部105は、例えば、ハードディスクドライブまたはフラッシュメモリなどの不揮発性のメモリにより構成される。
【0040】
演算部106は、図4を参照して後述するように、記録部105に記録されている測定データ、中間データ、および、測定用画像データに基づいて、被検物2の三次元形状の演算を行い、被検物2の三次元形状の測定結果を示すデータを生成する。演算部106は、生成したデータを表示制御部107に供給する。
【0041】
表示制御部107は、演算部106から供給されるデータに基づいて、被検物2の三次元形状の測定結果をモニタ13に表示させる。
【0042】
なお、図3の各部を、制御装置28およびコンピュータ12のいずれで実現するかは、任意に設定することが可能である。例えば、測定制御部101乃至測定部103を制御装置28により実現し、記録制御部104乃至表示制御部107をコンピュータ12により実現するようにしてもよいし、あるいは、全てを制御装置28またはコンピュータ12のいずれか一方により実現するようにしてもよい。
【0043】
[形状測定処理の説明]
次に、図4のフローチャートを参照して、形状測定システム1により実行される形状測定処理について説明する。なお、この処理は、例えば、定盤21の上に被検物2が載置され、図示せぬ形状測定システム1の操作部を介して形状測定処理の実行の指令が入力され、その指令が測定制御部101に供給されたとき開始される。
【0044】
ステップS1において、形状測定装置11は、スポット光の照射および被検物2からの反射光による像の撮像を開始する。具体的には、測定制御部101は、照射ユニット41の発光素子51を点灯させ、被検物2へのスポット光の照射を開始させる。また、測定制御部101は、撮像ユニット42に被検物2からの反射光による像の撮像を開始させる。さらに、測定制御部101は、撮像ユニット42から測定用画像データを取得し、取得した測定用画像データを照射位置検出部102および記録制御部104に供給する処理を開始する。
【0045】
ステップS2において、形状測定装置11は、スポット光の走査を開始する。すなわち、測定制御部101は、予め設定されている走査範囲を予め設定されている走査順序でスポット光が走査されるように、Zステージ23およびコラム24の駆動の制御を開始する。また、測定制御部101は、測定座標系におけるZステージ23およびコラム24の位置を示すデータを測定部103に供給する処理を開始する。
【0046】
ステップS3において、照射位置検出部102は、測定用画像におけるスポット光の照射位置の検出を開始する。すなわち、照射位置検出部102は、所定の手法を用いて、測定用画像における反射光による像(スポット光の像)の座標(測定用画像における図2の測定点Pの座標)を検出し、検出結果を示すデータを測定部103に供給する処理を開始する。
【0047】
なお、測定用画像における反射光による像(スポット光の像)の座標を検出する手法は、特に限定されるものではなく、任意の手法を採用することが可能である。
【0048】
ステップS4において、測定部103は、測定座標系におけるスポット光の照射位置の測定を開始する。すなわち、測定部103は、図2を参照して上述した方法に基づいて、測定座標系における反射光による像(スポット光の像)の座標(測定座標系における図2の測定点Pの座標)を測定し、測定データおよび中間データを記録制御部104に供給する処理を開始する。
【0049】
ステップS5において、記録制御部104は、スポット光の照射位置が変化したか否かを判定する。記録制御部104は、前回の測定データと今回の測定データが異なる場合、換言すれば、測定座標系における測定点Pの座標の測定結果が前回から変化している場合、スポット光の照射位置が変化したと判定し、処理はステップS6に進む。
【0050】
ステップS6において、記録制御部104は、過去にデータセットを記録した照射位置であるか否かを判定する。具体的には、記録制御部104は、現在実行中の形状測定処理でこれまでに記録部105に記録されているデータセットの中から、今回の測定データと一致する測定データを含むデータセットを検索する。そして、記録制御部104は、該当するデータセットが見つかった場合、過去にデータセットを記録した照射位置であると判定し、処理はステップS7に進む。
【0051】
一方、ステップS5において、記録制御部104は、前回の測定データと今回の測定データが同じ場合、換言すれば、測定座標系における測定点Pの座標の測定結果が前回から変化していない場合、スポット光の照射位置が変化していないと判定し、ステップS6の処理はスキップされ、処理はステップS7に進む。
【0052】
ステップS7において、記録制御部104は、現在の照射位置ですでにN回データセットを記録しているか否かを判定する。具体的には、記録制御部104は、現在実行中の形状測定処理でこれまでに記録部105に記録されているデータセットの中から、今回の測定データと一致する測定データを含むデータセットの個数を調べる。記録制御部104は、見つかったデータセットの個数がN個(Nは1以上の自然数)未満である場合、現在の照射位置でまだN回データセットを記録していないと判定し、処理はステップS8に進む。
【0053】
一方、ステップS6において、記録制御部104は、該当するデータセットが見つからなかった場合、過去にデータセットを記録した照射位置でないと判定し、ステップS7の処理はスキップされ、処理はステップS8に進む。
【0054】
ステップS8において、記録部105は、記録制御部104の制御の基に、現在の照射位置におけるデータセットを記録する。具体的には、記録制御部104は、今回の測定データ、並びに、今回の測定に用いた中間データおよび測定用画像データを互いに関連づけて、1つのデータセットとして記録部105に記録させる。その後、処理はステップS9に進む。
【0055】
一方、ステップS7において、記録制御部104は、見つかったデータセットの個数がN個以上である場合、現在の照射位置ですでにN回データセットを記録していると判定し、ステップS8の処理はスキップされ、データセットの記録が行われずに、処理はステップS9に進む。
【0056】
ステップS9において、測定制御部101は、被検物2の形状の測定を終了するか否かを判定する。被検物2の形状の測定を終了しないと判定された場合、処理はステップS5に戻る。
【0057】
その後、ステップS9において、被検物2の形状の測定を終了すると判定されるまで、ステップS5乃至S9の処理が繰り返し実行される。これにより、被検物2の表面をスポット光を走査しながら、測定座標系における被検物2の各部の座標が測定されるともに、各座標ごとに最大N個までデータセットが記録される。
【0058】
一方、ステップS9において、測定制御部101は、例えば、設定されている走査範囲内のスポット光の走査が完了した場合、あるいは、図示せぬ操作部を介して入力された形状測定処理の終了の指令を取得した場合、被検物2の形状の測定を終了すると判定し、処理はステップS10に進む。
【0059】
ステップS10において、形状測定システム1は、被検物2の形状の測定を終了する。すなわち、測定制御部101は、Zステージ23およびコラム24を停止させ、照射ユニット41の発光素子51を消灯し、撮像ユニット42の撮像を停止させる。
【0060】
ステップS11において、形状測定システム1は、測定結果を表示する。具体的には、測定制御部101は、被検物2の三次元形状の演算を演算部106に指令する。演算部106は、今回の形状測定処理で記録部105に記録された全てのデータセットを読み出す。そして、例えば、演算部106は、各データセットに含まれる測定データに基づいて、被検物2のポリゴン画像のデータを生成し、表示制御部107に供給する。表示制御部107は、取得したデータに基づいて、被検物2のポリゴン画像をモニタ13に表示させる。
【0061】
また、例えば、演算部106は、各データセットに含まれる測定用画像データを用いて、被検物2のポリゴン画像に実際の被検物2の画像を貼り合わせることにより、被検物2の三次元画像のデータを生成し、表示制御部107に供給する。表示制御部107は、取得したデータに基づいて、被検物2の三次元画像をモニタ13に表示させる。
【0062】
さらに、例えば、演算部106は、各データセットに含まれる測定データに基づいて、被検物2の各部の寸法を算出し、算出した寸法のデータを表示制御部107に供給する。表示制御部107は、取得したデータに基づいて、例えば、被検物2のポリゴン画像または三次元画像に各部の寸法を重畳して、モニタ13に表示させる。
【0063】
その後、形状測定処理は終了する。
【0064】
以上のようにして、被検物2の異なる座標に対して、必ずデータセットが記録されるとともに、被検物2の同じ座標に対して、最大N個までしかデータセットが記録されないようになり、測定に必要なメモリの容量を効率的に削減することができる。
【0065】
<2.第2の実施の形態>
図5は、本発明の第2の実施の形態である形状測定システム201の構成の例を示す斜視図である。
【0066】
形状測定システム201は、図1の形状測定システム1と比較して、形状測定装置11の代わりに、形状測定装置211が設けられている点が異なる。また、形状測定装置211は、形状測定装置11と比較して、光プローブ22を移動させる機構として、Zステージ23およびコラム24の代わりにアーム221を採用している点が異なる。
【0067】
アーム221は、その先端に装着されている光プローブ22を、X軸、Y軸およびZ軸方向に平行移動させるだけでなく、所定の軸回りに回転させることができる。これにより、形状測定装置211では、図2の基準点Aおよび基準点Bの座標に加えて、光軸L1および光軸L2の方向が変化する。
【0068】
なお、形状測定システム201の形状測定処理は、形状測定システム1と同様に、図4のフローチャートに従って実行することが可能である。
【0069】
ただし、形状測定システム201では、上述したように、基準点Aおよび基準点Bの座標に加えて、光軸L1および光軸L2の方向が変化するので、例えば、基準点Aおよび基準点Bの座標を検出するために、測定座標系におけるアーム221の先端の座標を検出したり、光軸L1および光軸L2の方向を検出するために、アーム221の先端の向きを検出したりする必要がある。また、検出したアーム221の先端の座標および向きのデータ、または、基準点Aおよび基準点Bの座標、並びに、光軸L1および光軸L2の方向のデータの少なくとも一方のデータを、中間データに含めて記録する必要がある。
【0070】
<3.変形例>
なお、光プローブ22を移動する機構は、上述した例に限定されるものではなく、本発明は、例えば、上述した例とは異なる機構を採用したり、あるいは、光プローブ22を手に持って移動させたりする場合にも適用することができる。また、本発明は、例えば、被検物2を移動可能なステージ等に載置し、光プローブ22の代わりに被検物2を移動させる場合にも適用することができる。
【0071】
さらに、以上の説明では、光プローブ22における基準点Aと基準点Bの相対位置が変化しない例を示したが、本発明は、基準点Aと基準点Bの相対位置が変化するようなプローブを用いる場合にも適用することができる。
【0072】
また、例えば、図4の形状測定処理において、ステップS6およびS7の処理を省略して、ステップS5において、スポット光の照射位置が変化したと判定された場合、ステップS8に進み、スポット光の照射位置が変化していないと判定された場合、ステップS8の処理をスキップし、ステップS9に進むようにしてもよい。すなわち、スポット光の照射位置が変化したと判定された場合、必ずデータセットを記録するようにして、スポット光の照射位置が変化していないと判定された場合、必ずデータセットを記録しないようにしてもよい。この場合、被検物2の同じ座標に対してN個以上データセットが記録される場合が生じるが、少なくともスポット光が同じ位置に照射され続けている場合に、データセットが記録され続けることが防止されるため、測定に必要なメモリの容量を効率的に削減することが可能である。
【0073】
さらに、例えば、図4の形状測定処理において、ステップS5において、スポット光の照射位置が変化していないと判定された場合、ステップS6乃至S8の処理をスキップし、ステップS9に進むようにしてもよい。すなわち、スポット光の照射位置が変化していない場合には、その照射位置においてまだN回データセットが記録していない場合でも、データセットを記録しないようにしてもよい。
【0074】
また、中間データの記録は必ずしも必須ではなく、後で特に使用しない場合には、測定データと測定用画像データのみをデータセットとして記録するようにしてもよい。
【0075】
さらに、以上の説明では、同じ測定データ(同じ被検物12の座標)に対して、最大N個までデータセットを記録する例を示したが、測定データが同じでも、中間データが異なる場合、それぞれのデータセットを区別して記録するようにしてもよい。例えば、スポット光が同じ位置に照射されており、測定データが同じ値になる場合でも、光プローブ22の位置が異なり、基準点Aおよび基準点Bの座標(中間データ)が異なるとき、それぞれの組み合わせについて、最大N個までデータセットを記録するようにしてもよい。これにより、例えば、同じ被検物12の座標に対して、異なる位置から撮像した測定用画像データを、それぞれ最大N個まで記録することが可能になる。
【0076】
また、以上の説明では、測定光としてスポット光を用いる例を示したが、本発明は、例えば、ライン光やパターン光など、スポット光以外の形状の測定光を用いる場合にも適用することができる。この場合、測定座標系において測定光の像が複数の座標にわたるため、1回の測定データに複数の座標が含まれることになる。従って、例えば、図4のステップS5において、前回の測定データと今回の測定データとを比較して、1つでも座標が異なる場合に、スポット光の照射位置が変化したと判定するようにしてもよいし、あるいは、所定の割合以上(例えば、20%以上)の座標が異なる場合に、スポット光の照射位置が変化したと判定するようにしてもよい。これは、図4のステップS6の判定においても同様である。
【0077】
また、以上の説明では、被検物2の全ての座標の測定が終わってから、被検物2の三次元形状を演算し、測定結果を表示する例を示したが、被検物2の各部の座標の測定と並行して、被検物2の三次元形状を演算し、測定結果の表示を適宜更新していくようにしてもよい。
【0078】
なお、本明細書において、システムの用語は、複数の装置、手段などより構成される全体的な装置を意味するものとする。
【0079】
また、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 形状測定システム, 2 被検物, 11 形状測定装置, 12 コンピュータ, 13 モニタ, 21 定盤, 22 光プローブ, 23 Zステージ, 24 コラム, 25 ガイド, 28 制御装置, 41 照射ユニット, 42 撮像ユニット, 51 発光素子, 62 撮像素子, 101 測定制御部, 102 照射位置検出部, 103 測定部, 104 記録制御部, 105 記録部, 106 演算部, 107 表示制御部, 201 形状測定システム, 211 形状測定装置, 221 アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検物の表面に光を照射し、前記表面からの反射光による像を取得することにより、前記被検物の三次元形状を測定する形状測定装置であって、
取得した前記像を用いて、所定の三次元の座標空間における、前記光の前記表面の照射位置の座標を測定する測定手段と、
前記照射位置の座標と同じ座標において取得した前記像の記録数が、1以上の自然数であるN個未満の場合は、取得した前記像および前記照射位置の座標を含むデータセットを記録するように制御する記録制御手段と
を備える形状測定装置。
【請求項2】
被検物の表面に光を照射し、前記表面からの反射光による像を取得することにより、前記被検物の三次元形状を測定する形状測定装置であって、
取得した前記像を用いて、所定の三次元の座標空間における、前記光の前記表面の照射位置の座標を測定する測定手段と、
前記照射位置の座標が異なる座標に変化したときのみ、取得した前記像および前記照射位置の座標を含むデータセットを記録し、前記照射位置の座標が異なる座標に変化しないときは、前記データセットを記録しないように制御する記録制御手段と
を備える形状測定装置。
【請求項3】
前記データセットは、前記測定手段で前記座標の測定に用いたデータを含む
請求項1または2に記載の形状測定装置。
【請求項4】
前記照射位置の座標に基づいて、前記被検物の三次元形状を演算する演算手段と、
前記被検物の三次元形状の測定結果の表示を制御する表示制御手段と
をさらに備える請求項1から3のいずれか一項に記載の形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−122932(P2011−122932A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280685(P2009−280685)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】