説明

形状計測装置及び形状計測方法

【課題】グイ位相に伴って生じる計測誤差を低減する。
【解決手段】計測装置100は、光源から射出された光を参照光と被検光とに分割する分割部110と、前記参照光を反射する参照面111と、前記被検光を被検面113に集光する集光部112と、前記被検面でキャッツアイ反射された被検光と前記参照面で反射された参照光との干渉光を検出する第1検出器114とを含む計測ヘッド101と、前記計測ヘッドを前記被検面に沿って駆動する駆動部140と、前記計測ヘッドの位置を検出する第2検出器150と、前記被検光の前記被検面における回折によって生じるグイ位相を取得し、前記第1検出器により検出された干渉光の情報から前記被検光と前記参照光との間の位相差を算出し、前記第2検出器により検出された前記計測ヘッドの位置と前記取得されたグイ位相と前記算出された位相差とから前記被検面の形状を算出する処理部115と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検面の形状を計測する計測装置及び計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラ、複写機、望遠鏡、露光装置などに搭載される光学系では、非球面レンズなどの非球面光学素子が多用されるようになってきた。更には、例えば自由曲面形状を有する自由曲面光学素子や回折光学素子などもある。したがって、形状計測装置には、このような様々な被検面の形状を計測することができる機能が要求される。特許文献1には、形状計測装置が開示されている。この計測装置は、被検面の表面に焦点を結ぶように光を照射し、いわゆるCat‘s Eye(キャッツアイ)反射で戻ってくる光(被検光)を利用して被検面の形状を計測する。この計測装置は、僅かに周波数の異なる2つの光のうち参照光は参照面にて反射させ、被検光は光学素子を用いて被検面上に集光してキャッツアイ反射させ、参照光と被検光の干渉光を検出し、検出した干渉光の情報に基づいて被検面の形状を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−63945号公報
【特許文献2】特許第4279679号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J. Alda, “Laser and gaussian beam propagationand transformation,” in Encyclopaedia of Optical Engineering(Marcel Dekker, 2003), pp. 999−1013
【非特許文献2】Jong H. Chow, Glennde Vine, Malcolm B. Gray, and David E. McClelland, “Measurement of Gouy phase evolution by use of spatial mode interference,”Opt. Lett. 29,2339−2341(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
計測ヘッド(プローブ)を走査して形状を計測する計測装置では、検出した干渉光の情報に基づいて、参照光と被検光の光路長差によって発生する位相差を検出する。そして、計測ヘッドを走査するとともに、位相差が一定となるように計測ヘッドの光軸方向における位置を制御する。すなわち光路長差が一定となるように計測ヘッドを制御する。そのため、計測ヘッドと被検面は常に一定の距離を保つ事になり、その計測ヘッドの位置を検出することで被検面の形状を算出する事が出来る。
【0006】
しかし、実際には位相差には光路長差以外に起因する成分も含まれており、それらの一部は計測誤差となる。例えば計測誤差の要因となる成分の一つは、被検光の回折によって発生する位相シフトであるGouy(グイ)位相である。グイ位相は非特許文献1の1002頁に紹介されている。特に、キャッツアイ反射を利用した形状計測装置の場合、被検面に焦点を結ぶように光を集光するため、被検面上の集光部位の局所的な曲率(局所曲率)に応じてグイ位相が顕著に変化する。このとき干渉光は、光路長差によって発生する位相差にグイ位相によって発生する位相差が付加されたものとなる。よって、計測ヘッドの走査とともにグイ位相が変化すると、その分だけ計測誤差が生じる。例えば、局所曲率が一定ではない被検面を計測する際は、計測部位に応じてグイ位相が変化するためこの影響が顕著に表れる。
【0007】
本発明は、グイ位相に伴って生じる計測誤差を低減するために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの側面は、被検面の形状を計測する計測装置であって、光源から射出された光を参照光と被検光とに分割する分割部と、前記参照光を反射する参照面と、前記被検光を前記被検面に集光する集光部と、前記被検面でキャッツアイ反射された被検光と前記参照面で反射された参照光との干渉光を検出する第1検出器とを含む計測ヘッドと、前記計測ヘッドを前記被検面に沿って駆動する駆動部と、前記計測ヘッドの位置を検出する第2検出器と、前記被検光の前記被検面における回折によって生じるグイ位相を取得し、前記第1検出器により検出された干渉光の情報から前記被検光と前記参照光との間の位相差を算出し、前記第2検出器により検出された前記計測ヘッドの位置と前記取得されたグイ位相と前記算出された位相差とから前記被検面の形状を算出する処理部と、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、グイ位相に伴って生じる計測誤差を低減するために有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態の計測フローを示した図である。
【図2】第1実施形態の計測装置を説明する図である。
【図3】第2実施形態の計測装置及び計測ヘッドの一部の拡大図を説明する図である。
【図4A】第3実施形態の計測装置を説明する図である。
【図4B】第3実施形態の計測装置の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る計測装置は、例えば、カメラ(ビデオカメラを含む)、複写機、望遠鏡、露光装置などに用いられるレンズ、ミラー、金型などの被検面であって局所曲率が計測ポイントごとに異なる被検面の形状を計測する。まず、本発明に係る計測装置の基本原理について図2を用いて説明する。尚、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。図2は計測装置100の一例を表す概略断面図である。計測装置100は、計測ヘッド101と計測ヘッド101の駆動部140と、計測ヘッド101の位置を検出する図示しない検出器(第2検出器)150と、処理部115と備える。駆動部140は、計測ヘッド101を被検面113に沿って駆動する。
【0012】
計測ヘッド101は、分割部110と、参照面111と、集光部112と、被検面113で反射された被検光と参照面111で反射された参照光との干渉光を検出する検出器(第1検出器)114とを含む。分割部110は、図示されない光源から射出された光を参照光と被検光とに分割する。集光部は、分割部110により分割された被検光を被検面113に集光する

光源から射出された光は、計測ヘッド101に入射し、分割部110によって2つの光に分離される。一方の光は参照面111に向かう参照光であり、他方の光は被検面113に向かう被検光である。被検光は、集光部112によって被検面113に焦点を結ぶように集光され、キャッツアイ反射で集光部112に戻ってくる。キャッツアイ反射とは、被検面113上の1点で集光された光の反射をいう。このキャッツアイ反射で戻ってきた被検光と参照光とは分割部110で干渉し、その干渉光は検出器114によって検出される。処理部115は、検出器114によって検出された干渉光から被検光と参照光との位相差を算出する。計測ヘッド101と被検面113に対して相対的に走査すると、計測ヘッド101と被検面113との相対距離が変化する。計測ヘッド101と被検面113との相対距離が変化すると、被検光の光路長が変化するため、被検光と参照光との位相差が変化する。そこで、位相差が一定となるように計測ヘッド101と被検面113の相対距離を制御することにより、被検面113の形状の情報を得ることが出来る。
【0013】
次にグイ位相の基本原理を述べる。光は回折することによりグイ位相が発生する。例えばレーザやガウスビームにおいて、波長λの光によってビームウエスト径ωのビームウエストを形成する場合、ビームウエストから距離zだけ離れた位置におけるグイ位相φは円周率をπとすれば、式1で表される。
φ=arctan(λz/πω)・・・(1)
ここでガウスビームを被検面113に集光した場合、被検面113上にビームウエストが形成される。
【0014】
被検面113で反射された戻り光は、被検面113上の被検光の集光位置(照射位置)の局所的な曲率(局所曲率)の影響により、あたかも被検面113上から距離Lだけ離れた場所からビームウエスト径ωのビームが照射されたかのような振る舞いを示す。ここで局所曲率半径Rを用いて、距離Lおよびビームウエスト径ωは、式2および式3でそれぞれ表される。
【数1】

【数2】

【0015】
したがって局所曲率半径Rを有する被検面での反射によって発生するグイ位相φ’は、式4で表される。
φ‘=arctan(λL/πω)・・・(4)
【0016】
[第1実施形態]
図2で示される計測装置を使用する第1実施形態の計測フローを図1に基づいて説明する。いま計測ヘッド101は、上述したように干渉光の位相が一定となるように制御される。この目的は、参照光の光路長と被検光の光路長の差を常に一定に保つことにある。光路長差を一定に保つことにより、計測ヘッド101と被検面113の相対位置が常に一定に保たれるため、処理部115は、そのように制御された計測ヘッド101の位置を検出器150により検出することで被検面113の形状を算出することが可能となる。
【0017】
ところで、被検光の位相は被検光の光路長だけに依存するわけではなく被検面113における回折によって生じるグイ位相にも依存している。例えば、計測ヘッド101と被検面113との間の距離が同一で局所曲率が異なる2つの計測ポイントを計測する場合、それぞれの計測ポイントでは、式2〜式4の関係により被検光のグイ位相は異なる値をとる。グイ位相が異なる値をとるため、干渉光の位相は異なった値となる。干渉光の位相が異なれば、計測ヘッド101の制御指示値が異なるので、計測ヘッド101は異なる位置に制御されることになる。
【0018】
したがって、制御後の計測ヘッド101の位置のみから被検面113の形状を算出すると、被検面の形状は局所曲率が異なると異なった形状として出力されてしまう。これがグイ位相による計測誤差である。例えば被検面113が曲率を持つ場合は、局所曲率は計測ヘッド101の走査とともに変化するため、上述の計測誤差が発生する。特にキャッツアイ反射の構成をとる場合、被検面113上に焦点を結ぶように集光するため、ビームウエスト径が100μm以下という小さい値になり、そのせいで式2〜式4の関係によりグイ位相の発生量も変化率も大きくなるので、計測誤差も大きくなる。そこで、第1実施形態では、処理部115を用いてグイ位相による計測誤差の低減を行う。図1Aは処理部115が行う計測フローの一例を表す。
【0019】
処理部115は、S1で、検出器114により検出された被検光と参照光との干渉光から位相を取得する。なお、図2では検出器114に平行光が入射するように示されているが、これに限定されず、図示しない光学素子によって収束光や発散光のような非平行光が検出器114に入射しても構わない。その場合、図示しない光学素子によって実又は虚に形成されるビームウエストの位置が被検面113の局所曲率に応じて変化することになる。そのため、グイ位相は図示しない光学素子によって実又は虚に形成されるビームウエストに基づいて発生する。干渉光の位相の取得方法は、例えば特許文献1に記載されるように被検光と参照光の周波数を僅かに異なるものにする事によってビート信号によって取得する。またこれに限定されず、例えば参照面111等の駆動を行い、参照光の光路長差を変化させることによって干渉光の位相を取得することもできる。
【0020】
処理部115は、S2で、干渉光の位相が一定となるように計測ヘッド101を駆動する駆動部140の制御を行う。まず被検面113の基準位置又は予め計測ヘッド101との距離が既知の基準面等において、決定した干渉光の位相を保つように計測ヘッド101の位置を制御する。その結果、計測ヘッド101は被検面113と常に一定の距離を保つように走査することが可能になる。
【0021】
処理部115は、S3で、制御された計測ヘッド101の位置の検出を検出器150により行う。計測ヘッド101は、S2の制御により被検面113と常に一定の距離が保たれているので、処理部115は、検出器150により検出された計測ヘッド101の位置から被検面113の形状を算出することが可能である。処理部115は、S4で、計測ヘッド101の位置のデータと、干渉光の位相と、予め取得されたグイ位相のノミナル値とから、被検面113の形状を算出する。上述したようにS3で取得された計測ヘッド101の位置のデータのみから被検面113の形状を算出すると、グイ位相の影響により計測誤差が発生してしまう。例えば特許文献1のように僅かに周波数の異なる被検光と参照光を用いた場合、得られる干渉光の位相は被検光と光路長差による位相Δφとグイ位相Gとを用いて、式5で表される。
Δφ+G・・・(5)
本来ならばΔφの値が一定となるように計測ヘッド101が制御されていれば、計測ヘッド101と被検面113との間の距離を一定に保てる。しかし、実際には式5の値が一定となるように計測ヘッド101が制御されるため、計測誤差が発生する。そこで、処理部115は、グイ位相Gとして予め取得されたグイ位相のノミナル値を使用し、それを検出された干渉光の位相から減算することにより、被検光と参照光との光路長差による位相Δφを算出し、位相Δφの変化分を幾何学的距離に変換する。そして、処理部115は、検出器150により検出された計測ヘッド101の位置データからその幾何学的距離分を補正演算した値を出力する。また、別の一例では、処理部115は、グイ位相のノミナル値と同値に相当する光路長差を算出し、その光路長差の幾何学的距離を計測ヘッド101の位置データより減算する。以上のような方法により、処理部115は、グイ位相による計測誤差を低減した形状を算出することが可能となる。
【0022】
計測ヘッド101の制御方法、被検面113の形状の算出方法は、図1の1Aに示される方法に限定されない。例えば図1Bで表されるように、処理部115は、取得されたた干渉光の位相からグイ位相のノミナル値を減算し、減算された後の干渉光の位相値が一定となるように駆動部140を用いて計測ヘッド101の位置を制御してもよい(S2)。そして、検出器150は、制御された計測ヘッド101の位置を検出する(S3)。S2においてグイ位相による影響が除かれているため、処理部115は、グイ位相による計測誤差を低減した形状を算出することができる(S4)。
【0023】
また上述したいずれのフローも、グイ位相による計測誤差の影響を低減する目的において種々な変更が可能である。検出された干渉光の位相とグイ位相のノミナル値と計測ヘッド101の位置のデータとの3つに基づいて被検面113の形状を算出することにより、グイ位相による計測誤差を低減した形状を算出できる。
【0024】
グイ位相のノミナル値は、処理部115の記憶部に保存されているか、ユーザーが入力を行い算出されたグイ位相の値である。それは例えば、ユーザーが入力した被検面113のノミナル値と被検光のビームウエストのデータに基づいて算出され、処理部115の記憶部に保存された値である。ここで、被検面113のノミナル値は、被検面113の形状の設計値でもよいし、予め計測されたより精度の低い形状のデータでも良い。また上述では干渉光の位相が一定となるように計測ヘッド101の位置を制御する一例を提示したが、これに限定されず、図1の1Cに示すように、干渉光の強度が一定となるように計測ヘッド101を駆動してもよい。
【0025】
[第2実施形態]
第1実施形態ではグイ位相のノミナル値の一例としてユーザーが入力した被検面113のノミナル値に基づいて算出する方法を提示した。しかし、例えば被検光が集光部112の開口の一部を照射する構成をなす計測装置においては、グイ位相そのものを制御することによってグイ位相による計測誤差を低減することが可能である。そこで、第2実施形態では、グイ位相を制御するグイ位相制御部116をさらに備え、グイ位相制御部116によって、式4のωとLを実質的に制御することで、式4で表されるグイ位相φ’の発生量を制御する。
【0026】
グイ位相制御部116を図3を用いて説明する。図3の3Aは計測ヘッド101の一例を表す概略断面図であり、計測ヘッド101に入射した光200は被検面113への参照光の入射角を制御する入射角制御機構117により制御され、集光部112の開口の一部を通り被検面113に集光する。図3の3Bは集光部112と被検面113と入射角制御機構117に制御された光を表す拡大断面図である。グイ位相制御部116は、被検面上の被検光の集光位置(照射位置)201とビームウエスト位置202との間の距離を制御する制御機構と被検光のビームウエスト径を制御する制御機構との少なくともいずれかを含むことでグイ位相を制御する。
【0027】
被検光の集光位置201とビームウエスト位置202との間の距離を制御する制御機構は、例えば、光源から射出された平行光を収束させたり発散させたりする焦点距離を制御する制御機構でありうる。被検光のビームウエスト径を制御する制御機構は、光学的な倍率を制御する制御機構でありうる。
【0028】
グイ位相制御部116が、被検光の集光位置201とビームウエスト位置202との間の距離や被検光のビームウエスト径を制御することで、グイ位相を制御できることを、以下説明する。被検光の集光位置201とビームウエスト位置202との間の距離をDとすると、式2で表された距離Lは以下の式6の様に変更される。
【数3】

【0029】
更にそのとき式3で表されるωは、式7で表されるので、距離Dを制御する事により距離Lとビームウエスト径ωを制御する事が可能となり、式4のφ‘=arctan(λL/πω)で表されるグイ位相φ’の発生量を実質的に制御する事が可能になる。
【数4】

【0030】
したがって、距離Dまたはビームウエスト径ωを制御することで式3や式7で表されるビームウエスト径ωを実質的に制御する事が可能になり、式4で表されるグイ位相φ’の発生量を実質的に制御することが可能になる。
【0031】
このようなグイ位相制御部116により、被検光と参照光の光路長差を変更することなくグイ位相を変化させる事が可能である。例えばグイ位相の変化からグイ位相を算出し、算出したグイ位相をグイ位相のノミナル値として利用することができる。また別の例では、グイ位相制御部116によりグイ位相を収束値であるπ/2に略制御することによりグイ位相を算出することが可能である。
【0032】
グイ位相を算出する技術として被検光の光路長を制御することによって被検光と参照光の光路長差を変化させる技術も知られている(特許文献2を参照)。しかし、その場合被検光は被検面113に焦点を結ぶように集光してキャッツアイ反射を行うことができなくなるため、本発明に係る計測装置において特許文献2に記載の技術は適用できない。これに対し、上述したグイ位相制御部116は、光路長差を変化させないため、本発明に係る計測装置に適用可能である。そして算出されたグイ位相値をグイ位相のノミナル値に用いて第1実施形態で記述したフローを行うことにより、グイ位相による計測誤差を低減することが可能である。図3の3Aでは、グイ位相制御部116は、光の進む方向に沿って入射角制御機構117より手前に配置されているが、これに限定されない。
【0033】
[第3実施形態]
第3実施形態では、被検光に、互いに異なる少なくとも2つの光を含ませ、被検面113で反射された1つの光および他の1つの光の干渉光を用いてグイ位相を検出し、利用する。以下、この実施形態について図4Aを用いて説明する。図4Aは計測ヘッド101の一例を表す概略断面図である。被検光は図示しない機構によって少なくとも2つの異なる光から構成される。少なくとも2つの異なる光とは、例えば、互いに次数の異なるガウスビームであり、1つの光が低次のガウスビームであり、他の1つが高次のガウスビームである。ここで、高次のガウスビームは、例えばエルミートガウシアン(Hermite−Gaussian)の高次モードであっても良いし、ラゲールガウシアン(Laguerre−Gaussian)の高次モードであってもよい。低次のガウスビームと高次のガウスビームとの干渉光によりグイ位相を検出する方法は、例えば非特許文献2に記載されている。検出器(第3検出器)121は、低次のガウスビームと高次のガウスビームとの干渉光を検出し、処理部115は、検出器121によって検出された干渉光からグイ位相を算出する。そして算出されたグイ位相をグイ位相のノミナル値として利用することで、グイ位相による計測誤差を低減しつつ被検面113の形状を算出することが可能となる。
【0034】
また、図4の4Aに示される計測ヘッド101では、被検光と参照光との干渉光を検出する検出器114と低次のガウスビームと高次のガウスビームとの干渉光を検出する検出器121を別々に構成した。しかし、これに限定されず図4の4Bのように2つの検出器が1つの検出器114として構成されていても構わない。
【0035】
図4の4Bは計測ヘッド101の一例を表す概略断面図である。被検光は図示しない機構によって少なくとも2つの異なる光から構成され、検出器114によって少なくとも2つの異なる被検光の干渉光が検出される。このとき、より精度よく少なくとも2つの異なる被検光の干渉光を検出するために、参照光制御機構130によって参照光の透過率を制御しても構わない。検出器114により低次のガウスビームと高次のガウスビームの干渉光の検出を行い、処理部115によってその干渉光からグイ位相の算出を行う。そして算出されたグイ位相をグイ位相のノミナル値として利用することで、グイ位相による計測誤差を低減しつつ被検面113の形状を算出することが可能となる。
【0036】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検面の形状を計測する計測装置であって、
光源から射出された光を参照光と被検光とに分割する分割部と、前記参照光を反射する参照面と、前記被検光を前記被検面に集光する集光部と、前記被検面でキャッツアイ反射された被検光と前記参照面で反射された参照光との干渉光を検出する第1検出器とを含む計測ヘッドと、
前記計測ヘッドを前記被検面に沿って駆動する駆動部と、
前記計測ヘッドの位置を検出する第2検出器と、
前記被検光の前記被検面における回折によって生じるグイ位相を取得し、前記第1検出器により検出された干渉光の情報から前記被検光と前記参照光との間の位相差を算出し、前記第2検出器により検出された前記計測ヘッドの位置と前記取得されたグイ位相と前記算出された位相差とから前記被検面の形状を算出する処理部と、
を備える、ことを特徴とする計測装置。
【請求項2】
前記駆動部は、前記処理部によって算出される前記被検光と前記参照光との間の位相差が一定となるように前記計測ヘッドを駆動する、ことを特徴とする請求項1記載の計測装置。
【請求項3】
前記駆動部は、前記処理部によって算出される前記被検光と前記参照光との間の位相差から前記取得されたグイ位相を減算し、前記減算された位相差が一定となるように前記計測ヘッドを駆動する、ことを特徴とする請求項1記載の計測装置。
【請求項4】
前記駆動部は、前記第1検出器により検出される干渉光の強度が一定となるように前記計測ヘッドを駆動する、ことを特徴とする請求項1記載の計測装置。
【請求項5】
前記取得されるグイ位相は、前記被検面の形状の設計値、又は、前記被検面の予め計測された形状のデータから算出されたグイ位相である、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項6】
前記グイ位相を制御するグイ位相制御部をさらに備え、
前記グイ位相制御部は、前記被検面上における前記被検光の集光位置と前記被検光のビームウエスト位置との間の距離を制御することによって前記グイ位相を制御する制御機構、及び、前記被検光のビームウエスト径を制御することによって前記グイ位相を制御する制御機構の少なくともいずれかを含む
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項7】
前記被検光は、互いに次数の異なる少なくとも2つのガウスビームを含み、
前記第1検出器は、前記少なくとも2つのガウスビームのうちの前記被検面で反射された1つのガウスビームおよび他の1つのガウスビームの干渉光を検出し、
前記処理部は、前記第1検出器により検出された前記1つのガウスビームおよび他の1つのガウスビームの干渉光を用いてグイ位相を算出することによって前記グイ位相を取得する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項8】
前記被検光は、互いに次数の異なる少なくとも2つ以上のガウスビームを含み、
前記計測装置は、前記少なくとも2つのガウスビームのうちの前記被検面で反射された1つのガウスビームおよび他の1つのガウスビームの干渉光を検出する第3検出器をさらに備え、
前記処理部は、前記第3検出器により検出される干渉光を用いてグイ位相を算出することによって前記グイ位相を取得する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項9】
計測装置を用いて被検面の形状を計測する計測方法であって、
前記計測装置は、
光源から射出された光を参照光と被検光とに分割する分割部と、前記参照光を反射する参照面と、前記被検光を前記被検面に集光する集光部と、前記被検面でキャッツアイ反射された被検光と前記参照面で反射された参照光との干渉光を検出する第1検出器とを含む計測ヘッドと、
前記計測ヘッドの位置を検出する第2検出器と
を備え、
前記被検光の前記被検面における回折によって生じるグイ位相を取得する工程と、前記計測ヘッドを前記被検面に沿って駆動させながら、前記第1検出器により前記干渉光を検出し、かつ、前記第2検出器により前記計測ヘッドの位置を検出する工程と、
前記第1検出器により検出された干渉光の情報から前記被検光と前記参照光との間の位相差を算出し、前記第2検出器により検出された前記計測ヘッドの位置と前記取得されたグイ位相と前記算出された位相差とから前記被検面の形状を算出する工程と、
を含む、ことを特徴とする計測方法。
【請求項10】
前記取得されるグイ位相は、前記被検面の形状の設計値、又は、前記被検面の予め計測された形状のデータから算出されたグイ位相である、ことを特徴とする請求項9に記載の計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2012−173125(P2012−173125A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35181(P2011−35181)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】