微細構造の電磁散乱特性をモデル化する方法及び装置及び微細構造を再構築する方法及び装置
【課題】周期構造の電磁散乱特性の正確な数値計算を迅速に実行する。
【解決手段】構造の電磁散乱特性を計算する体積積分法(VIM)の改良型収束は、電場ではなく、ベクトル場の体積積分方程式を数値的に解くことによって達成される。ベクトル場は、基底変換によって電場に関連付けることができ、電場が不連続部を有する材料の境界で連続することができる。ベクトル場の畳み込みは、有限離散畳み込みに従って畳み込み演算子を使用して実行する。可逆畳み込み及び基底変換演算子は、周期構造の材料及び幾何学的特性に従って基底変換を実行することにより、ベクトル場を電場に変換する。ベクトル場について体積積分を解いた後、追加の後処理ステップを使用して、ベクトル場から電場を得ることができる。ベクトル場は、連続的な成分をフィルタリングするために法線ベクトル場を使用することにより、電場の場の成分と電束密度の組合せから構築することができる。
【解決手段】構造の電磁散乱特性を計算する体積積分法(VIM)の改良型収束は、電場ではなく、ベクトル場の体積積分方程式を数値的に解くことによって達成される。ベクトル場は、基底変換によって電場に関連付けることができ、電場が不連続部を有する材料の境界で連続することができる。ベクトル場の畳み込みは、有限離散畳み込みに従って畳み込み演算子を使用して実行する。可逆畳み込み及び基底変換演算子は、周期構造の材料及び幾何学的特性に従って基底変換を実行することにより、ベクトル場を電場に変換する。ベクトル場について体積積分を解いた後、追加の後処理ステップを使用して、ベクトル場から電場を得ることができる。ベクトル場は、連続的な成分をフィルタリングするために法線ベクトル場を使用することにより、電場の場の成分と電束密度の組合せから構築することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、周期構造の電磁散乱特性の数値計算に関する。本発明は、例えばリソグラフィ装置のクリティカルディメンション(CD)性能を評価するために、例えば微細構造のメトロロジーに適用することができる。
【背景技術】
【0002】
[0002] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板に、通常は基板の目標部分に適用する機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に使用可能である。このような場合、代替的にマスク又はレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスを使用して、ICの個々の層上に形成すべき回路パターンを生成することができる。このパターンを、基板(例えばシリコンウェーハ)上の目標部分(例えば1つ又は幾つかのダイの一部を含む)に転写することができる。パターンの転写は通常、基板に設けた放射感応性材料(レジスト)の層への結像により行われる。一般的に、1枚の基板は、順次パターンが与えられる隣接した目標部分のネットワークを含んでいる。従来のリソグラフィ装置は、パターン全体を目標部分に1回で露光することによって各目標部分が照射される、いわゆるステッパと、基板を所与の方向(「スキャン」方向)と平行あるいは逆平行に同期的にスキャンしながら、パターンを所与の方向(「スキャン」方向)に放射ビームでスキャンすることにより、各目標部分が照射される、いわゆるスキャナとを含む。パターンを基板にインプリントすることによっても、パターニングデバイスから基板へとパターンを転写することが可能である。
【0003】
[0003] リソグラフィプロセスを監視するために、パターン付き基板のパラメータ、例えば基板内又は基板上に形成された連続層間のオーバレイ誤差を測定する必要がある。走査型電子顕微鏡及び様々な専用ツールの使用を含め、リソグラフィプロセスで形成された微細構造を測定するための様々な技術がある。専用検査ツールの一形態が、放射のビームを基板の表面上のターゲットに誘導し、散乱又は反射したビームの特性を測定するスキャトロメータである。基板によって反射又は散乱する前とその後のビームの特性を比較することにより、基板の特性を決定することができる。これは、例えば既知の基板特性に関連した既知の測定値のライブラリに格納されたデータと反射ビームを比較することによって実行することができる。スキャトロメータは2つの主なタイプが知られている。分光スキャトロメータは広帯域放射ビームを基板上に誘導し、特定の狭い角度範囲に散乱した放射のスペクトル(波長の関数としての強度)を測定する。角度分解スキャトロメータは単色放射ビームを使用し、散乱した放射の強度を角度の関数として測定する。
【0004】
[0004] さらに一般的には、散乱した放射を構造のモデルから数学的に予測された散乱挙動と比較できると有用となり、これは予測された挙動が観察された実際のサンプルの散乱と一致するまで自由に設定し、変更することができる。残念ながら、原則的に数値手順によって散乱をモデリングする方法は知られているが、既知の技術の計算的負担によってこのような技術は実現不能になり、リアルタイムの再構築が望ましい、及び/又は関係する構造が1次元で周期的な単純な構造よりも複雑である場合に、特にそうである。
【発明の概要】
【0005】
[0005] 半導体処理の分野では、周期構造の電磁散乱特性の正確な数値計算を迅速に実行することが望ましい。
【0006】
[0006] 本発明の第1の態様によると、構造の反射係数などの電磁散乱特性を計算する方法が提供され、構造は少なくとも一方向x、yに周期的であり、材料の境界で電磁場Eの不連続を引き起こすように様々な特性の材料を含み、方法は、基底の変換によって電磁場Eに関連するベクトル場Fの体積積分方程式を数値的に解くことを含み、ベクトル場Fは、ベクトル場Fの近似解を決定するように材料境界にて連続している。
【0007】
[0007] ベクトル場Fは、少なくとも一方向x、yに関して少なくとも1つの有限フーリエ級数で表すことができ、体積積分方程式を数値的に解くステップは、畳み込み及び基底変換演算子Cでのベクトル場Fの畳み込みによって電磁場Eの成分を決定するステップを含むことができる。
【0008】
[0008] 本発明の第2の態様によると、放射によるオブジェクトの照明から生じて検出された電磁散乱特性からオブジェクトの近似構造を再構築する方法が提供され、方法は、少なくとも1つのオブジェクト構造を推定するステップと、少なくとも1つの推定されたオブジェクト構造から少なくとも1つのモデル電磁散乱特性を決定するステップと、検出された電磁散乱特性を少なくとも1つのモデル電磁散乱特性と比較するステップと、比較の結果に基づいて近似オブジェクト構造を決定するステップとを含み、モデル電磁散乱特性は、第1の態様による方法を使用して決定される。
【0009】
[0009] 本発明の第3の態様によると、オブジェクトの近似構造を再構築する検査装置が提供され、検査装置は、放射でオブジェクトを照明するように構成された照明システムと、照明から生じた電磁散乱特性を検出するように構成された検出システムと、プロセッサであって、少なくとも1つのオブジェクト構造を推定し、少なくとも1つの推定されたオブジェクト構造から少なくとも1つのモデル電磁散乱特性を決定し、検出された電磁散乱特性を少なくとも1つのモデル電磁散乱特性と比較し、検出された電磁散乱特性と少なくとも1つのモデル電磁散乱特性との差から近似オブジェクト構造を決定するように構成されたプロセッサとを備え、プロセッサは、第1の態様による方法を使用してモデル電磁散乱特性を決定するように構成される。
【0010】
[0010] 本発明の第4の態様によると、構造の電磁散乱特性を計算するために機械読み取り式命令の1つ又は複数のシーケンスを含むコンピュータプログラムプロダクトが提供され、命令は、1つ又は複数のプロセッサに第1の態様による方法を実行させるように構成される。
【0011】
[0011] 本発明の第5の態様によると、構造の電磁散乱特性を計算する方法が提供され、構造は少なくとも一方向x、yに周期的であり、材料の境界で電磁場Eの不連続を引き起こすように様々な特性の材料を含み、方法は、ベクトル場Fの近似解を決定するように、電磁場Eに関連し、それとは異なるベクトル場Fの体積積分方程式を数値的に解くことを含む。
【0012】
[0012] 本発明の第6の態様によると、放射によるオブジェクトの照明から生じて検出された電磁散乱特性からオブジェクトの近似構造を再構築する方法が提供され、方法は、少なくとも1つのオブジェクト構造を推定するステップと、少なくとも1つの推定されたオブジェクト構造から少なくとも1つのモデル電磁散乱特性を決定するステップと、検出された電磁散乱特性を少なくとも1つのモデル電磁散乱特性と比較するステップと、比較の結果に基づいて近似オブジェクト構造を決定するステップとを含み、モデル電磁散乱特性は、第5の態様による方法を使用して決定される。本発明の第7の態様によると、オブジェクトの近似構造を再構築する検査装置が提供され、検査装置は、放射でオブジェクトを照明するように構成された照明システムと、照明から生じる電磁散乱特性を検出するように構成された検出システムと、プロセッサであって、少なくとも1つのオブジェクト構造を推定し、少なくとも1つの推定されたオブジェクト構造から少なくとも1つのモデル電磁散乱特性を決定し、検出された電磁散乱特性を少なくとも1つのモデル電磁散乱特性と比較し、検出された電磁散乱特性と少なくとも1つのモデル電磁散乱特性との差から近似オブジェクト構造を決定するように構成されたプロセッサとを備え、プロセッサは、第5の態様による方法を使用してモデル電磁散乱特性を決定するように構成される。本発明の第8の態様によると、構造の電磁散乱特性を計算する機械読み取り式命令の1つ又は複数のシーケンスを含むコンピュータプログラムプロダクトが提供され、命令は、1つ又は複数のプロセッサに第5の態様による方法を実行させるように構成される。
【0013】
[0013] 本発明のさらなる特徴及び利点、さらに本発明の様々な実施形態の構造及び動作を、添付の図面を参照しながら以下で詳細に説明する。本発明は本明細書で説明する特定の実施形態に限定されないことに留意されたい。このような実施形態は、本明細書では例示的目的のためにのみ提示されている。本明細書に含まれる教示に基づいて、追加の実施形態が当業者には明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
[0014] 本明細書に組み込まれ、その一部を形成する添付の図面は本発明を図示し、説明とともに、さらに本発明の原理を説明し、当業者が本発明を作成し、使用できるような働きをする。
【図1】[0015]リソグラフィ装置を示す。
【図2】[0016]リソグラフィセル又はクラスタを示す。
【図3】[0017]第1のスキャトロメータを示す。
【図4】[0018]第2のスキャトロメータを示す。
【図5】[0019]スキャトロメータの測定値から1次元の周期的回折格子を再構築する一般的プロセスを示す。
【図6】[0020]モデル化したレジスト構造について、従来のRCWA(Rigorous Coupled Wave Analysis)及び本発明の実施形態による体積積分法(VIM)の精度対処理時間を図示したグラフを示す。
【図7】[0021]図6に示したものと同様であるが、モデル化したシリコン構造のデータを示す。
【図8】[0022]本発明の実施形態により再構築することができる散乱幾何学的形状を示す。
【図9】[0023]背景の構造を示し、層状媒体で入射場の相互作用を計算するグリーン関数の使用を図示する。
【図10】[0024]VIM式に対応する線形系を解く高レベル方法のフローチャートである。
【図11】[0025]先行技術で知られているようなVIM式を使用した更新ベクトルの計算のフローチャートである。
【図12】[0026]VIM式を数値的に解くために連続的ベクトル場を使用する本発明の実施形態を示す。
【図13】[0027]本発明の実施形態による更新ベクトルの計算のフローチャートである。
【図14】[0028]本発明の実施形態によりVIMを実行するためにプログラム及びデータで構成されたコンピュータシステムを概略的形式で示す。
【図15】[0029]楕円形の断面のバイナリ格子セルの上面図及び側面図を示す。
【図16】[0030]楕円形の断面の階段状格子セルの上面図及び側面図を示す。
【図17】[0031]階段近似によって楕円を近似する手順を示す。
【図18】[0032]ベンチマークモデル構造を示す。
【図19】[0033]図11に関して説明した先行技術の方法を使用して計算した先行技術のVIMシステムの収束結果を、RCWAの結果と比較して示す。
【図20】[0034]図19に示したものと同じデータから生成したタイミングの結果を示す。
【図21】[0035]本発明の実施形態により生成され、改良された収束結果を、RCWAの結果と比較して示す。
【図22】[0036]本発明の実施形態により生成されたタイミングの結果を、RCWAの結果と比較して示す。
【0015】
[0037] 以下で述べる詳細な説明を図面との関連で理解することにより本発明の特徴及び利点がさらに明白になり、図面では全体を通して類似の参照文字が対応する要素を識別する。図面では、類似の参照番号が全体的に同一、機能的に類似、及び/又は構造的に類似の要素を示す。要素が最初に現れる図面を、対応する参照番号の最も左側の桁で示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[0038] 本明細書は、本発明のフィーチャを組み込んだ1つ又は複数の実施形態を開示する。開示される実施形態は本発明を例示するにすぎない。本発明の範囲は開示される実施形態に限定されない。本発明は本明細書に添付される特許請求の範囲によって定義される。
【0017】
[0039] 記載された実施形態、及び本明細書で「1つの実施形態」、「ある実施形態」、「例示的実施形態」などに言及した場合、それは記載された実施形態が特定のフィーチャ、構造、又は特性を含むことができるが、それぞれの実施形態が必ずしも特定のフィーチャ、構造、又は特性を含まないことがあることを示す。さらに、このようなフレーズは、必ずしも同じ実施形態に言及するものではない。さらに、ある実施形態に関連して特定のフィーチャ、構造、又は特性について記載している場合、明示的に記載されているか、記載されていないかにかかわらず、このようなフィーチャ、構造、又は特性を他の実施形態との関連で実行することが当業者の知識にあることが理解される。
【0018】
[0040] 本発明の実施形態はハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はその任意の組合せで実施することができる。本発明の実施形態は、1つ又は複数のプロセッサで読み取り、実行することができる機械読み取り式媒体に記憶した命令として実施することもできる。機械読み取り式媒体は、機械(例えば、計算デバイス)で読み取り可能な形態で情報を記憶するか、伝送する任意の機構を含むことができる。例えば、機械読み取り式媒体は読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気ディスク記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュメモリデバイス、電気、光、音響又は他の形態の伝搬信号(例えば、搬送波、赤外線信号、デジタル信号など)、及びその他を含むことができる。さらに、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令を、本明細書では特定の行為を実行するものとして記述することができる。しかし、このような記述は便宜的なものにすぎず、このような行為は実際には計算デバイス、プロセッサ、コントローラ、又はファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令などを実行する他のデバイスの結果であることを認識されたい。
【0019】
[0041] しかし、このような実施形態についてさらに詳細に説明する前に、本発明の実施形態を実施できる例示的環境を提示することが有益である。
【0020】
[0042] 図1は、リソグラフィ装置を概略的に示す。この装置は、放射ビームB(例えばUV放射又はEUV放射)を調節するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するように構築され、特定のパラメータに従ってパターニングデバイスを正確に位置決めするように構成された第一ポジショナPMに接続された支持構造(例えばマスクテーブル)MTと、基板(例えばレジストコートウェーハ)Wを保持するように構築され、特定のパラメータに従って基板を正確に位置決めするように構成された第二ポジショナPWに接続された基板テーブル(例えばウェーハテーブル)WTと、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに与えられたパターンを基板Wの目標部分C(例えば1つ又は複数のダイを含む)に投影するように構成された投影システム(例えば屈折投影レンズシステム)PLとを含む。
【0021】
[0043] 照明システムは、放射の誘導、整形、又は制御を行うための、屈折、反射、磁気、電磁気、静電気型等の光学コンポーネント、又はその任意の組合せなどの種々のタイプの光学コンポーネントを含んでいてもよい。
【0022】
[0044] 支持構造は、パターニングデバイスを支持、すなわちその重量を支えている。支持構造は、パターニングデバイスの方向、リソグラフィ装置の設計等の条件、例えばパターニングデバイスが真空環境で保持されているか否かに応じた方法で、パターニングデバイスを保持する。この支持構造は、パターニングデバイスを保持するために、機械的、真空、静電気等のクランプ技術を使用することができる。支持構造は、例えばフレーム又はテーブルでよく、必要に応じて固定式又は可動式でよい。支持構造は、パターニングデバイスが例えば投影システムなどに対して確実に所望の位置にくるようにできる。本明細書において「レチクル」又は「マスク」という用語を使用した場合、その用語は、より一般的な用語である「パターニングデバイス」と同義と見なすことができる。
【0023】
[0045] 本明細書において使用する「パターニングデバイス」という用語は、基板の目標部分にパターンを生成するように、放射ビームの断面にパターンを与えるために使用し得る任意のデバイスを指すものとして広義に解釈されるべきである。ここで、放射ビームに与えられるパターンは、例えばパターンが位相シフト特徴又はいわゆるアシスト特徴を含む場合、基板の目標部分における所望のパターンに正確には対応しないことがある点に留意されたい。一般的に、放射ビームに与えられるパターンは、集積回路などの目標部分に生成されるデバイスの特定の機能層に相当する。
【0024】
[0046] パターニングデバイスは透過性又は反射性でよい。パターニングデバイスの例には、マスク、プログラマブルミラーアレイ、及びプログラマブルLCDパネルがある。マスクはリソグラフィにおいて周知のものであり、これには、バイナリマスク、レベンソン型(alternating)位相シフトマスク、ハーフトーン型(attenuated)位相シフトマスクのようなマスクタイプ、さらには様々なハイブリッドマスクタイプも含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例として、小さなミラーのマトリクス配列を使用し、そのミラーは各々、入射する放射ビームを異なる方向に反射するよう個々に傾斜することができる。傾斜したミラーは、ミラーマトリクスによって反射する放射ビームにパターンを与える。
【0025】
[0047] 本明細書において使用する「投影システム」という用語は、例えば使用する露光放射、又は液浸液の使用や真空の使用などの他の要因に合わせて適宜、例えば屈折光学システム、反射光学システム、反射屈折光学システム、磁気光学システム、電磁気光学システム及び静電気光学システム、又はその任意の組合せを含む任意のタイプの投影システムを網羅するものとして広義に解釈されるべきである。本明細書において「投影レンズ」という用語を使用した場合、これはさらに一般的な「投影システム」という用語と同義と見なすことができる。
【0026】
[0048] 本明細書で示すように、本装置は透過タイプである(例えば透過マスクを使用する)。あるいは、装置は反射タイプでもよい(例えば上記で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイを使用する、又は反射マスクを使用する)。
【0027】
[0049] リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)又はそれ以上の基板テーブル(及び/又は2つ以上のマスクテーブル)を有するタイプでよい。このような「マルチステージ」機械においては、追加のテーブルを並行して使用するか、1つ又は複数の他のテーブルを露光に使用している間に1つ又は複数のテーブルで予備工程を実行することができる。
【0028】
[0050] リソグラフィ装置は、投影システムと基板との間の空間を充填するように、基板の少なくとも一部を水などの比較的高い屈折率を有する液体で覆えるタイプでもよい。液浸液は、例えばマスクと投影システムの間など、リソグラフィ装置の他の空間に適用することもできる。液浸技術は、投影システムの開口数を増加させるために当技術分野で周知である。本明細書で使用する「液浸」という用語は、基板などの構造を液体に沈めなければならないという意味ではなく、露光中に投影システムと基板の間に液体が存在するというほどの意味である。
【0029】
[0051] 図1を参照すると、イルミネータILは放射源SOから放射ビームを受ける。放射源とリソグラフィ装置とは、例えば放射源がエキシマレーザである場合に、別々の構成要素であってもよい。このような場合、放射源はリソグラフィ装置の一部を形成すると見なされず、放射ビームは、例えば適切な誘導ミラー及び/又はビームエクスパンダなどを備えるビームデリバリシステムBDの助けにより、放射源SOからイルミネータILへと渡される。他の事例では、例えば放射源が水銀ランプの場合は、放射源がリソグラフィ装置の一体部分であってもよい。放射源SO及びイルミネータILは、必要に応じてビームデリバリシステムBDとともに放射システムと呼ぶことができる。
【0030】
[0052] イルミネータILは、放射ビームの角度強度分布を調整するアジャスタADを備えていてもよい。通常、イルミネータの瞳面における強度分布の外側及び/又は内側半径範囲(一般にそれぞれ、σ-outer及びσ-innerと呼ばれる)を調整することができる。また、イルミネータILは、インテグレータIN及びコンデンサCOなどの他の種々のコンポーネントを備えていてもよい。イルミネータを用いて放射ビームを調節し、その断面にわたって所望の均一性と強度分布とが得られるようにしてもよい。
【0031】
[0053] 放射ビームBは、支持構造(例えば、マスクテーブルMT)上に保持されたパターニングデバイス(例えば、マスクMA)に入射し、パターニングデバイスによってパターニングされる。マスクMAを横断した放射ビームBは、投影システムPSを通過し、投影システムPLは、ビームを基板Wの目標部分C上に合焦させる。第二ポジショナPWと位置センサIF(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ又は容量センサ)の助けを借りて、基板テーブルWTは、例えば、様々な目標部分Cを放射ビームBの経路に位置決めできるように正確に移動できる。同様に、第一ポジショナPMと別の位置センサ(図1には明示されていない)を用いて、マスクライブラリからの機械的な取り出し後又はスキャン中などに放射ビームBの経路に対してマスクMAを正確に位置決めできる。一般に、マスクテーブルMTの移動は、第一ポジショナPMの部分を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)及びショートストロークモジュール(微動位置決め)の助けにより実現できる。同様に、基板テーブルWTの移動は、第二ポジショナPWの部分を形成するロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールを用いて実現できる。ステッパの場合(スキャナとは対照的に)、マスクテーブルMTをショートストロークアクチュエータのみに接続するか、又は固定してもよい。マスクMA及び基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を使用して位置合わせすることができる。図示のような基板アライメントマークは、専用の目標部分を占有するが、目標部分の間の空間に位置してもよい(スクライブレーンアライメントマークとして周知である)。同様に、マスクMA上に複数のダイを設ける状況では、マスクアライメントマークをダイ間に配置してもよい。
【0032】
[0054] 図示のリソグラフィ装置は、以下のモードのうち少なくとも1つにて使用可能である。
1.ステップモードにおいては、マスクテーブルMT及び基板テーブルWTは、基本的に静止状態に維持される一方、放射ビームに与えたパターン全体が1回で目標部分Cに投影される(すなわち単一静的露光)。次に、別の目標部分Cを露光できるように、基板テーブルWTがX方向及び/又はY方向に移動される。ステップモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一静的露光で結像される目標部分Cのサイズが制限される。
2.スキャンモードにおいては、マスクテーブルMT及び基板テーブルWTは同期的にスキャンされる一方、放射ビームに与えられるパターンが目標部分Cに投影される(すなわち単一動的露光)。マスクテーブルMTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影システムPLの拡大(縮小)及び像反転特性によって求めることができる。スキャンモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一動的露光における目標部分の(非スキャン方向における)幅が制限され、スキャン動作の長さによって目標部分の(スキャン方向における)高さが決まる。
3.別のモードでは、マスクテーブルMTはプログラマブルパターニングデバイスを保持して基本的に静止状態に維持され、基板テーブルWTを移動又はスキャンさせながら、放射ビームに与えられたパターンを目標部分Cに投影する。このモードでは、一般にパルス状放射源を使用して、基板テーブルWTを移動させる毎に、又はスキャン中に連続する放射パルスの間で、プログラマブルパターニングデバイスを必要に応じて更新する。この動作モードは、以上で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイなどのプログラマブルパターニングデバイスを使用するマスクレスリソグラフィに容易に利用できる。
【0033】
[0055] 上述した使用モードの組合せ及び/又は変形、又は全く異なる使用モードも利用できる。
【0034】
[0056] 図2に示すように、リソグラフィ装置LAは、リソセル又はクラスタとも呼ばれることがあるリソグラフィセルLCの一部を形成し、それは基板上で露光前及び露光後プロセスを実行する装置も含む。従来、これらはレジスト層を堆積させるスピンコータSC、露光されたレジストを現像する現像器DE、チルプレートCH及びベークプレートBKを含む。基板ハンドラ、すなわちロボットROは入力/出力ポートI/O1、I/O2から基板を取り上げ、それを様々なプロセス装置間で移動させ、次にリソグラフィ装置のローディングベイ(loading bay)LBに送出する。多くの場合まとめてトラックと呼ばれるこれらのデバイスは、トラック制御ユニットTCUの制御下にあり、それ自体は監視制御システムSCSによって制御され、それはリソグラフィ制御ユニットLACUを介してリソグラフィ装置も制御する。したがってスループット及び処理の効率を最大化するために様々な装置を動作させることができる。
【0035】
[0057] リソグラフィ装置によって露光される基板が正確かつ一貫して露光されるために、露光した基板を検査し、後続層間のオーバレイ誤差、ラインの太さ、クリティカルディメンション(CD)などのような特性を測定することが望ましい。誤差が検出された場合は、特に同じバッチの他の基板がまだ露光されないほど十分即座にかつ高速で検査を実行できる場合は、後続基板の露光を調節することができる。また、既に露光した基板を(歩留まりを改善するために)取り外して再加工するか、又は廃棄し、それにより欠陥があることが分かっている基板で露光を実行するのを回避することができる。基板の幾つかのターゲット部分のみに欠陥がある場合、良好であるそれらのターゲット部分のみでさらなる露光を実行することができる。
【0036】
[0058] 基板の特性を、特に異なる基板又は同じ基板の異なる層の特性が層ごとにいかに変化するかを決定するために、検査装置が使用される。検査装置をリソグラフィ装置LAに組み込むことができる、又はリソセルLCは独立型デバイスとすることができる。最も迅速な測定を可能にするために、検査装置は露光直後に露光したレジスト層の特性を測定することが望ましい。しかし、レジストの潜像はコントラストが非常に低く、(放射に露光してあるレジストの部分と露光していない部分との間には屈折率の非常に小さい差しかない)全ての検査装置が、潜像を有用に測定するほど十分な感度を有しているわけではない。したがって、露光後ベークステップ(PEB)の後に測定を実行することができ、これは通常は露光した基板で実行する最初のステップであり、レジストの露光部分と非露光部分との間のコントラストを増大させる。この段階で、レジストの像を半潜像と呼ぶことができる。現像したレジスト像で(その時点でレジストの露光部分又は非露光部分は除去されている)又はエッチングなどのパターン転写ステップの後で測定することも可能である。後者の見込みは、欠陥がある基板を再加工する見込みを制限するが、それでも有用な情報を提供することができる。
【0037】
[0059] 図3は、本発明のある実施形態に使用できるスキャトロメータを示す。これは、放射を基板Wに投影する広帯域(白色光)放射プロジェクタ2を備える。反射した放射はスペクトロメータ検出器4へと渡され、これは鏡面反射した放射のスペクトル10(波長の関数としての強度)を測定する。このデータから、検出されるスペクトルを生じる構造又はプロファイルを処理ユニットPUによって再構築することができる。先行技術のスキャトロメータでは、これは、RCWA(Rigorous Coupled Wave Analysis)及び非線形回帰によって、又は図3の下部に図示されたようなシミュレートしたスペクトルのライブラリとの比較によって実行することができる。本発明によるスキャトロメータでは、ベクトル積分方程式を使用する。概して、再構築するために構造の全体的形状を知り、幾つかのパラメータは、構造を作成したプロセスの知識から仮定して、スキャトロメータのデータから決定するべき構造のパラメータはわずかしか残らない。このようなスキャトロメータは、垂直入射スキャトロメータ又は斜め入射スキャトロメータとして構成することができる。
【0038】
[0060] 本発明のある実施形態で使用できる別のスキャトロメータが、図4に示されている。このデバイスでは、放射源2によって放出された放射が、レンズシステム12を使用して干渉フィルタ13及び偏光器17を通して集束し、部分反射面16によって反射して、好ましくは少なくとも0.9、さらに好ましくは少なくとも0.95の高い開口数(NA)を有する顕微鏡の対物レンズ15を介して基板Wに集束する。液浸スキャトロメータは、開口数が1を超えるレンズを有することさえある。反射した放射は次に、散乱スペクトルを検出させるために部分反射面16を通って検出器18内に伝達される。検出器は、レンズシステム15の焦点距離にある逆投影された瞳面11に位置付けることができるが、瞳面は、代わりに補助光学系(図示せず)で検出器に再結像することができる。瞳面は、放射の半径方向位置が入射角度を画定し、角度位置が放射の方位角を画定する面である。検出器は、基板ターゲット30の2次元角度散乱スペクトルを測定できるように、2次元検出器であることが好ましい。検出器18は、例えばCCD又はCMOSセンサのアレイでよく、例えば1フレーム当たり40ミリ秒の積分時間を使用することができる。
【0039】
[0061] 例えば、入射放射の強度を測定するために、基準ビームを使用することが多い。そのために、放射ビームがビームスプリッタ16に入射すると、その一部がビームスプリッタを通って基準ビームとして基準ミラー14に向かって伝達される。次に、基準ビームは同じ検出器18の異なる部分へと投影される。
【0040】
[0062] 例えば405〜790nm又はさらに低く、200〜300nmなどの範囲の対象となる波長を選択するために、1組の干渉フィルタ13が使用可能である。干渉フィルタは、1組の様々なフィルタを備えるのではなく、調整可能とすることができる。干渉フィルタではなく格子を使用することができる。
【0041】
[0063] 検出器18は、1つの波長(又は狭い波長範囲)で散乱光の強度を、複数の波長で別個に、又はある波長範囲にわたって積分された強度を測定することができる。さらに、検出器は横方向磁気光及び横方向電気分極光の強度及び/又は横方向磁気光と横方向電気分極光の位相差を別個に測定することができる。
【0042】
[0064] 広帯域光源(すなわち光の周波数又は波長、したがって色の範囲が広い光源)を使用することが可能であり、これは大きいエタンデュを生じ、複数の波長を混合できるようにする。広帯域の複数の波長は、好ましくはそれぞれΔλの帯域幅及び少なくとも2Δλ(すなわち帯域幅の2倍)の間隔を有する。幾つかの放射「源」は、ファイバ束を使用して分割されている延在した放射源の様々な部分でもよい。この方法で、角度分解散乱スペクトルを複数の波長で平行して測定することができる。3次元スペクトル(波長と2つの異なる角度)を測定することができ、これは2次元スペクトルより多くの情報を含む。これによって、より多くの情報を測定することができ、それはメトロロジープロセスのロバスト性を高める。このことは、参照により全体を本明細書に組み込むものとするEP1,628,164Aでさらに詳細に説明されている。
【0043】
[0065] 基板W上のターゲット30は格子でよく、それは現像後にバーがレジストの実線で形成されるように印刷される。バーは、代替的に基板にエッチングしてもよい。このパターンは、リソグラフィ投影装置、特に投影システムPLの色収差に敏感であり、照明の対称性及びこのような収差の存在は、印刷された格子の変化に現れる。したがって、印刷された格子のスキャトロメータデータを使用して、格子を再構築する。線の幅及び形状などの格子のパラメータは、印刷ステップ及び/又は他のスキャトロメータのプロセスの知識から、処理ユニットPUによって実行される再構築プロセスに入力することができる。
【0044】
[0066] 上述したように、ターゲットは基板の表面上にある。このターゲットは、格子又は2次元アレイの実質的に長方形の構造における一連の線という形状をとることが多い。メトロロジーにおける厳密な光回折理論(rigorous optical diffraction theories)の目的は、ターゲットから反射した回折スペクトルを効率的に計算することである。すなわち、CD(クリティカルディメンション)の均一性及びオーバレイメトロロジーのために、ターゲット形状の情報を入手する。オーバレイメトロロジーは、基板の2つの層が位置合わせされているか否かを判定するために、2つのターゲットのオーバレイを測定する測定システムである。CDの均一性とは、リソグラフィ装置の露光システムがいかに機能しているかを決定するために、単にスペクトル上で格子の均一性を測定することである。特にCD、すなわちクリティカルディメンションとは基板上に「書かれた」オブジェクトの幅(例えば図5に示すターゲットの幅)であり、リソグラフィ装置が物理的に基板上に書くことができる限界である。
【0045】
[0067] ターゲット形状(マーク形状とも呼ぶ)の測定方法は通常、1次元周期構造について、図5を参照して以下のように実行される。すなわち、ターゲットの形状を推定する。この推定形状にα(0)、β(0)、χ(0)などの異なるパラメータを与える。これらのパラメータはそれぞれ、例えば各側壁の角度、ターゲットの最上部の高さ、ターゲットの最上部における幅、ターゲットの底部における幅などでよい。
【0046】
[0068] 通常、先行技術のデバイスでは、RCWAなどの厳密な光回折法を使用して、推定されたターゲット形状の推定回折パターン又はモデル回折パターンなどの散乱特性を計算する。推定又はモデル回折パターンの代わりに、又はそれを入手するために、推定又はモデル反射又は透過係数などの他の電磁散乱特性を使用することができる。
【0047】
[0069] 次に、基板上のターゲットを放射ビームで照明し、回折ビームを検出することによって、基板上にある実際のターゲットの回折パターンを測定し、そのパターンはターゲットの特性に依存する。この測定回折パターン及びモデル回折パターンを、コンピュータなどの計算システムに転送する。
【0048】
[0070] 次に、測定された回折パターン及びモデル回折パターンを比較し、差があれば全て「メリット関数」計算に送り込む。
【0049】
[0071] 特定のターゲットパラメータの感度を回折パターンの形状に関連付けるメリット関数を使用して、新しい形状パラメータを推定する。これは図5の底部形状にさらに近い形状を生成することができ、これはα(0)、β(1)、χ(1)などの新しいパラメータを有する。これらをステップ1に反復的に送り戻し、所望の精度を達成するまでステップ1から5を反復し、それにより近似オブジェクト構造を決定する。
【0050】
[0072] この反復プロセスの計算時間は主に、順方向回折モデルによって、すなわち推定されたターゲット形状から厳密な光回折理論を使用して推定モデル回折パターンを計算することによって決定される。
【0051】
[0073] 様々な推定ターゲット形状について複数のモデル回折パターンを計算し、ステップ2でライブラリに格納することができる。次にステップ4で、測定回折パターンをステップ2で生成したライブラリのモデル回折パターンと比較する。一致が見られた場合は、次に一致するライブラリパターンを生成するために使用した推定ターゲット形状が、近似オブジェクト構造であると決定することができる。したがって、ライブラリを使用し、一致が見られる場合は、反復する必要がないことがある。あるいは、ライブラリ検索を使用して形状パラメータの粗い組を決定し、その後にメリット関数を使用して1回又は複数回反復し、近似オブジェクト構造を決定するように形状パラメータのさらに正確な組を決定する。
【0052】
[0074] 2次元周期構造のCD再構築には、通例、順方向回折モデルにRCWAを使用するが、体積積分法(VIM)、時間領域有限差分法(FDTD)、及び有限要素法(FEM)も報告されている。
【0053】
[0075] RCWA内でスペクトル離散化方式を使用する。このスペクトル離散化の収束を改良するために、いわゆるリーの法則が適用される[3,4]。あるいは、法線ベクトル場形式[6]を使用して、スペクトル離散化の収束を改良することができる[7,8]。
【0054】
[0076] RCWAの主要な問題の1つは、2次元周期構造のために大量の中央処理装置(CPU)の時間及びメモリが必要なことである。というのは、固有値/固有ベクトルのシーケンスの問題を解き、連結する必要があるからである。FDTD及びFEMの場合、CPUの時間も通常は長すぎる。
【0055】
[0077] (両方とも参照により全体を本明細書に組み込むものとする[2]、米国特許第6,867,866B1号及び米国特許第7,038,850B2号で開示されているような)既存の体積積分法は、メッシュ細分に関して遅い収束を示す全空間離散化方式に、又は高調波の数の増加に関して不良な収束を示すスペクトル離散化方式に基づく。代替法として、収束を改良するために発見的方法を組み込んだスペクトル離散化方式が提案されている[2]。
【0056】
[0078] VIMのために解くべき線形系は、RCWAと比較してはるかに大きいが、反復的な方法で解く場合は、幾つかのベクトルの記憶とともに行列ベクトル積しか必要ではない。したがって、RCWAではメモリの使用量が通常ははるかに少なくなる。障害となり得るのは、行列ベクトル積自体の速度である。VIMにリーの法則を適用すべき場合は、幾つかの逆部分行列が存在するので、行列ベクトル積がはるかに遅くなる。あるいは、リーの法則を無視し、FFTを使用して、高速行列ベクトル積に到達することができるが、不良な収束の問題が残る。
【0057】
[0079] 本発明は、改良型体積積分法(VIM)の実施形態に関する。本発明のある実施形態を使用して、レジスト格子上の現実的な2次元周期的CD再構築が、RCWAより10倍から100倍高速であることが実証されている一方、メモリの使用量はRCWAより10倍から100倍少ない。本発明を詳細に説明する前に、本発明によって提供される速度の改良を図示する図6及び図7を参照しながら、結果を提示する。
【0058】
[0080] 図6は、従来のRCWA602と本発明のある実施形態による体積積分法(VIM)604について、精度対処理時間を図示するグラフを示す。図6は、レジスト構造での1次反射係数のモデルの結果を示す。縦軸は、|Rp−Rp*|/|Rp*|によって与えられる相対誤差REであり、ここでRpは平行分極(電場が入射面に平行である)の反射係数であり、Rp*は5桁の精度を達成するのに十分なモードでのRCWAの収束した解である。横軸は秒単位の中央処理装置(CPU)の時間tであり、これはVIMの式に対応する線形系を1つ解く時間である。RCWAの結果のグラフ602は、グラフ604によって示された本発明のある実施形態によるVIMの結果より長いCPU時間を示す。例えば、10−2の相対誤差では、矢印606によって指示されているように、本発明のこの実施形態によって与えられるCPU時間に20倍の改良がある。したがって図6は、相対誤差(又は精度)の全範囲にわたって、本発明は1つの解を計算するCPU時間の短縮につながることができることを示す。CPU時間の短縮は、本発明を実際に適用するために非常に重要である。通常、その目的は約1秒で通常は14,000の解を終了することである。1秒がターゲットとなるのは、これが生産環境においてウェーハ上で連続的なスキャトロメータ測定を実行する時間だからである。このような短時間で計算を終了することにより、ウェーハの生産プロセスを減速せずにリアルタイムの分析を実行することが可能である。14,000という数字は、180という散乱角度に変更すべきモデルのパラメータ数(6又は7)を掛け、入射波の2つの独立分極を掛け、ターゲットの実際の形状を推定するために6の非線形解を掛けることによる。図6のデータは、図21及び図22に提示して以下で検討するデータを導出するために使用したものと同じデータセットから導出される。
【0059】
[0081] 図7は、図6に示したものと類似のデータであるが、モデル化したシリコン構造及び0次反射係数のグラフを示す。同じ軸を使用するが、相対誤差の縦軸の対象となる範囲が狭くなり、時間の横軸の対象となる範囲が広くなっている。グラフ702はRCWAの結果であり、グラフ704は、本発明のある実施形態によるVIMを使用した結果である。この場合も、10−2の相対誤差に関して、矢印706で示すように本発明によって与えられるRCWAに対して20倍の改良がある。
【0060】
[0082] 図8は、本発明のある実施形態により再構築できる散乱幾何学的形状を概略的に図示している。基板802は、z方向に層状になった媒体の下部分である。他の層804及び806が示されている。x及びyに周期的な2次元格子808が、層状媒体の最上部に示されている。x、y及びz軸は810でも示されている。入射場812が構造802から808と相互作用し、それによって散乱し、反射場814をもたらす。したがって構造は少なくとも一方向x、yで周期的であり、異なる材料の間の材料境界において、入射場Einc及び散乱場ES、電磁場の成分の総和を備える電磁場Etotに不連続部を引き起こすように、様々な特性の材料を含む。
【0061】
[0083] 図9は、背景の構造を示し、入射場と層状媒体の相互作用を計算するために使用できるグリーン関数を概略的に図示する。層状媒体802から806は、図8と同じラベルが与えられている。x、y及びz軸も、入射場812とともに810で示されている。正反射場902も示されている。点源(x’,y’,z’)904は、グリーンの関数と場906を生成する背景との相互作用を表す。この場合、点源904が最上層806より上にあるので、周囲の媒体との最上界面806からの背景反射908が1つのみである。点源が層状媒体内にある場合は、上方向と下方向の両方に背景反射がある(図示せず)。
【0062】
[0084] 解くべきVIMの式は以下の通りである。
【数1】
【0063】
[0085] この式では、入射場Eincは入射角、分極及び振幅の既知の関数であり、Etotは未知で解が計算される全電場であり、Jcはコントラスト電流密度であり、=Gはグリーンの関数(3×3の行列)であり、χは(εr(x,y,z,)/εr,bac(z)−1)によって与えられるコントラスト関数であり、ここでεrは構造の比誘電率、εr,bacは背景媒体の比誘電率、χは格子の外側ではゼロである。
【0064】
[0086] グリーンの関数=G(x,x’,y,y’,z,z’)は、802から806を含む層状媒体について知られており、計算可能である。グリーンの関数は、xy面における畳み込み及び/又はモード分解(m1,m2)を示し、=Gのz軸に沿った主要な計算上の負担は畳み込みである。
【0065】
[0087] 離散の場合、全電場はブロッホ/フロケモードでxy面に拡張する。χを掛けると、(a)xy面における離散畳み込み(2次元FFT)及び(b)zにおける積になる。xy面におけるグリーンの関数の相互作用は、モード毎の相互作用である。zにおけるグリーンの関数の相互作用は、1次元(1D)FFTと複雑さO(NlogN)で実行できる畳み込みである。
【0066】
[0088] xyにおけるモード数はM1M2であり、zにおけるサンプル数はNである。
【0067】
[0089] 効率的な行列とベクトルの積は複雑さO(M1M2Nlog(M1M2N))を有し、記憶の複雑さはO(M1M2N)である。
【0068】
[0090] 反復的ソルバを使用し、クルイロフの部分空間法に基づいてAx=bのVIM解決法を実行する。例えばBiCGstab(1)法(Stabilized BiConjugate Gradient method)であり、これは通常、以下のステップを有する。
剰余誤差がrn=b−Axnと定義されるように定義する
剰余誤差を介して更新ベクトルνnを計算する
解を更新する:xn+1=xn+αnνn
剰余誤差を更新するrn+1=rn−αnAνn
【0069】
[0091] 図10は、VIM式に対応する線形系を解く高レベルの方法のフローチャートである。これは、体積積分を数値的に解くことによって構造の電磁散乱特性を計算する方法である。最高レベルでは、最初のステップは前処理1002であり、入力を読み、FFTを準備することを含む。次のステップは、解1004を計算することである。最後に、反射係数を計算する後処理1006を実行する。ステップ1004は様々なステップを含み、これは図10の右手側にも示されている。これらのステップは、入射場の計算1008、グリーンの関数の計算1010、更新ベクトルの計算1012、解及び剰余誤差の(例えばBiCGstabを使用した)更新1014、及び収束に到達したかを見る試験1016である。収束に到達していない場合は、制御が、更新ベクトルの計算であるステップ1012にループして戻る。
【0070】
[0092] 図11は、図10のステップ1012に対応する更新ベクトルの計算ステップを図示し、先行技術で知られている通りの体積積分法を使用し、これは電場Eの体積積分方程式を数値的に解くことによって構造の電磁散乱特性を計算する方法である。
【0071】
[0093] ステップ1102は、4次元(4D)アレイ内でベクトルを再編成する。このアレイでは、第1次元は3つの要素Ex、Ey及びEzを有する。第2次元はm1の全値の要素を有する。第3次元は、m2の全値の要素を有する。第4次元はzの各値の要素を有する。したがって4Dアレイは、全電場(Ex,Ey,Ez)(m2,m2,z)の(xy面における)スペクトル表示を記憶する。図11のステップ1102から下がる3つの平行な点線の矢印は、それぞれEx、Ey及びEzに1つずつ、各層zで実行されるステップ1104から1110による3つの2Dアレイの処理に対応する。これらのステップは、材料特性で電場(Ex,Ey,Ez)(m2,m2,z)の(xy面における)スペクトル表示の畳み込みを実行し、下式(1.3)に対応するコントラスト電流密度の(xy面における)スペクトル表示を計算する。詳細には、ステップ1104は、3つの2Dアレイ(2次元はm1及びm2に関する)を取り出すことを含む。ステップ1106で、3つのアレイのそれぞれについて2DのFFTを順方向に計算し、空間領域にする。ステップ1108で、3つのアレイそれぞれに、フーリエ表示の打ち切りによってフィルタリングしたコントラスト関数χ(x,y,z)の空間表示を掛ける。畳み込みは、ステップ1110で2DのFFTを(xy面における)スペクトル領域に戻し、スペクトルコントラスト電流密度(Jcx,Jcy,Jcz)(m1,m2,z)を生じることで終了する。ステップ1112で、計算したスペクトルコントラスト電流密度を4Dアレイに戻す。
【0072】
[0094] 次にモードごとに(すなわちzにおける全サンプルポイントで同時に)、ステップ1114から1122を実行する。ステップ1116の横から下がる3つの平行な点線の矢印は、下式(1.1)で積分項を計算することに対応し、これはコントラスト電流密度との背景相互作用であり、それ自体は構造との全電場の相互作用から生じる。これは、(z方向に関する)スペクトル領域での乗法を使用し、(z方向に関する)空間グリーンの関数での(Jcx,Jcy,Jcz)(m1,m2,z)の畳み込みによって実行される。
【0073】
[0095] 詳細には、ステップ1114でスペクトルコントラスト電流密度(Jcx,Jcy,Jcz)(m1,m2,z)をx、y及びzのそれぞれについて3つの1Dアレイとして取り出す。ステップ1116で、3つのアレイのそれぞれについて1DのFFTを順方向に計算して、z方向に関するスペクトル領域にし、(Jcx,Jcy,Jcz)(m1,m2,kz)を生成することによって、畳み込みを開始し、ここでkzはz方向に関するフーリエ変数である。ステップ1118で、コントラスト電流密度の打ち切ったフーリエ変換に、(z方向に関する)スペクトル領域内で空間グリーン関数=gfreeのフーリエ変換を掛ける。ステップ1120で、1DのFFTを逆方向に実行し、z方向に関する空間領域にする。ステップ1122で、zに関する空間領域内の背景反射(図9の908参照)を加える。このようにグリーン関数から背景反射を分離することは従来からの技術であり、このステップは、当業者に認識されるように、ランク1の投影を加えることによって実行することができる。各モードが処理されるので、このように計算された全電場(Ex,Ey,Ez)(m2,m2,z)の更新ベクトルをステップ1124で4Dアレイに戻す。
【0074】
[0096] 次のステップは、ベクトル内で4Dアレイを再編成し1126、これはステップ1102「4Dアレイ内でベクトルを再編成する」とは、逆の動作であるという点で異なり、各1次元指数は4次元指数に一意に関連する。最後にステップ1128で、ステップ1126からのベクトル出力を入力ベクトルから引き、これは式(1.1)の右手側の減算に対応する。入力ベクトルは、図11のステップ1102で入るベクトルであり、(Ex,Ey,Ez)(m2,m2,z)を含む。
【0075】
[0097] 図11で説明した方法の問題は、RCWAの結果に対して図10の方法を使用して収束のプロットを示す図19に関して以下で実証するように、不良な収束につながることである。この不良な収束は、打ち切ったフーリエ空間表示の誘電率及び電場に同時発生する飛越しによって引き起こされる。以上で検討したように、VIM法では、収束の問題を克服するためにリーの逆法則は適切ではない。というのは、VIMでは逆法則の複雑さが、VIMの数値的解に必要な大量の逆演算のせいで非常に大きい計算上の負担につながるからである。本発明の実施形態は、リーによって説明されたような逆法則の使用に頼ることなく、同時発生の飛越しによって引き起こされる収束の問題を克服する。逆法則を回避することにより、本発明はVIMのアプローチで反復的に線形系を解くために必要な行列ベクトル積の効率を犠牲にしない。
【0076】
[0098] 図12は、VIMの式を数値的に解くために連続的なベクトル場を使用する本発明のある実施形態を図示する。これは、基底の変換によって電場Eに関連するベクトル場Fの体積積分方程式を数値的に解くことを含み、ベクトル場Fは、ベクトル場Fの近似解を決定するように、1つ又は複数の材料境界にて連続している。ベクトル場Fが、少なくとも1つの方向x、yに対する少なくとも1つの有限フーリエ級数によって表され、体積積分方程式を数値的に解くステップは、畳み込み及び基底変換演算子Cでのベクトル場Fの畳み込みによって電場Eの成分を決定するステップと、畳み込み演算子Mでのベクトル場Fの畳み込みによって電流密度Jを決定するステップとを含む。畳み込み及び基底変換演算子Cは可逆的であり、少なくとも1つの方向x、yで構造の材料及び幾何学的特性を備え、材料及び幾何学的特性に従って基底変換を実行することにより、ベクトル場Fを電場Eに変換するように構成される。畳み込み演算子Mは、少なくとも一方向x、yで構造の材料及び幾何学的特性を備える。電流密度Jはコントラスト電流密度でよく、少なくとも1つの方向x、yに関する少なくとも1つの有限フーリエ級数で表される。畳み込みは、高速フーリエ変換(FFT)及び整数論変換(NTT)を含む組から選択されるような変換を使用して実行される。畳み込み及び基底変換演算子C及び畳み込み演算子Mは、有限の結果を生成するように有限の離散的畳み込みに従って演算する。
【0077】
[0099] 図12は、中間ベクトル場FについてVIMシステムを解くステップ1202を示し、後処理ステップ1204は畳み込み及び基底変換演算子Cでベクトル場Fの近似解を畳み込むことによって全電場Eを得る。畳み込みは、高速フーリエ変換(FFT)及び整数論変換(NTT)を含む組から選択されるような変換を使用して実行することができる。図12は、右手側にVIMシステムを反復的に解くために効率的な行列ベクトル積1206から1216を実行する略図も示す。これは、ステップ1206の中間ベクトル場Fで開始する。初めてFを設定する時には、それをゼロから開始することができる。その初期のステップの後、Fの推定は反復的ソルバ及び残差によって誘導される。次に、z方向の各サンプル点について2DのFFTにより中間ベクトル場Fでの畳み込み及び基底変換演算子Cの畳み込みを使用して、全電場Eを計算する1208。畳み込み及び基底変換演算子Cは、中間ベクトル場Fの基底を全電場Eの基底に変換するように構成される。また、ステップ1210で、中間ベクトル場Fでの材料畳み込み演算子Mの畳み込みを使用して、コントラスト電流密度Jを計算する。ステップ1210は、zの各サンプル点で実行され、畳み込みは2DのFFTにより実行される。ステップ1212では、畳み込み及びグリーン関数Gとコントラスト電流密度Jとの間のランク1の投影を計算して、散乱電場ESを生成する。畳み込みは、高速フーリエ変換(FFT)及び整数論変換(NTT)を含む組から選択されるような変換を使用して実行することができる。演算1214は、Eから2つの計算結果ESを引き、Eincの近似を得る1216。ステップ1202及び1206から1216は、以下で検討するように式(1.4)に対応する。ステップ1206から1216は更新ベクトルを生成するので、後処理ステップ1204を使用して、全電場Eの最終値を生成する。
【0078】
[0100] 全電場Eを計算するために、別個の後処理ステップ1204ではなく、ステップ1208ですべての更新ベクトルの総和を記録することができる。しかし、そのアプローチは方法の記憶要件を増大させ、その一方、後処理ステップ1204は反復的ステップ1206から1216と比較して、記憶又は処理時間の点で高くつかない。
【0079】
[0101] 図13は、本発明のある実施形態による更新ベクトルの計算のフローチャートである。図13のフローチャートは、図12の右手側(ステップ1206から1216)に対応する。
【0080】
[0102] ステップ1302で、4Dアレイ内でベクトルを再編成する。次に、zのサンプル点ごとにステップ1304から1318を実行する。ステップ1304では、3つの2Dアレイを4Dアレイから取り出す。これらの3つの2Dアレイ(Ft1,Ft2,Fn)(m1,m2,z)はそれぞれ、(下式(2.44)で説明するような)連続的なベクトル場Fの2つの接線成分Ft1、Ft2及び法線成分Fnに対応し、それぞれがm1及びm2に対応する2次元を有する。したがってベクトル場Fは、法線ベクトル場nを使用して少なくとも1つの材料境界に対して接線方向の電磁場Eの連続的成分をフィルタリングし、また少なくとも1つの材料境界に対して法線方向の電磁束密度Dの連続的成分をフィルタリングすることによって、電磁場E及び対応する電磁束密度Dの場の成分の組合せから構築される。ステップ1306で、(Ft1,Ft2,Fn)(m1,m2,z)で表されるスペクトル連続ベクトル場の畳み込みが、2DのFFTをステップ1306で順方向に計算し、(Ft1,Ft2,Fn)(x,y,z)で表される3つのアレイのそれぞれについて空間領域にすることによって開始する。ステップ1308では、ステップ1306から取得したフーリエ変換(Ft1,Ft2,Fn)(x,y,z)に、空間領域内で空間乗法演算子C(x,y,z)を掛ける。ステップ1310では、ステップ1308で取得した積を2DのFFT逆方向によってスペクトル領域に変換する。次に、ステップ1312でスペクトル全電場(Ex,Ey,Ez)を4Dアレイに戻す。さらに、コピーを以下で検討する減算演算1322へと順方向に送り込む。
【0081】
[0103] ステップ1314では、ステップ1306から取得したフーリエ変換(Ft1,Ft2,Fn)(x,y,z)に空間領域内で乗算演算子Mを掛ける。ステップ1314の計算の積をステップ1316で、2DのFFT逆方向によってスペクトル領域に変換し、(Jcx,Jcy,Jcz)(m1,m2,z)で表されるスペクトルコントラスト電流密度を生成する。ステップ1318で、スペクトルコントラスト電流密度を4Dアレイに戻す。
【0082】
[0104] 既知の入射電場Eincの近似の計算を終了するために、ステップ1114から1122で、図11の対応する同一の番号のステップに関して説明したのと同じ方法でモードm1、m2ごとにグリーン関数と背景との相互作用を計算する。
【0083】
[0105] ステップ1320では、背景=Gのスペクトルグリーン関数及びスペクトルコントラスト電流密度Jの結果としての畳み込みを4Dアレイに戻す。最後にステップ1322で、既知の入射電場Eincの近似の計算を、ステップ1312から順方向に送り込まれた全電場からステップ1320の結果を引くことで終了し、最終ステップ1324はベクトル内で4Dアレイを再編成する。すなわち4Dアレイの各4次元指数はベクトルの1次元指数に一意に関連付けられる。
【0084】
[0106] 図14は、本発明のある実施形態による方法を実行するために、プログラム及びデータで構成されたコンピュータシステムを概略的形態で示す。コンピュータシステムは、中央処理装置(CPU)1502、及びプログラムの実行中にプログラム命令1506及びデータ1508を記憶するために使用されるランダムアクセスメモリ(RAM)1504を備える。コンピュータシステムは、プログラムの実行前及び実行後にプログラム命令及びデータを記憶するために使用されるディスク記憶装置1510も含む。
【0085】
[0107] プログラム命令1506は高速フーリエ変換ルーチン1512、行列乗算関数1514、加算及び減算1516などの他の算術関数、及びアレイ編成関数1518を含む。データ1508は、VIMシステムを解く計算中に使用される4Dアレイ1520及び2Dアレイ1522を備える。入力及び出力用の他の従来からのコンピュータコンポーネントは示されていない。
【0086】
[0108] 図15は、均質な半分の空間上に楕円形の断面があるバイナリ格子セルの上面図1502及び側面図1504を示す。
【0087】
[0109] 図16は、均質な半分の空間上に楕円形の断面がある階段状格子セルの上面図1602及び側面図1604を示す。
【0088】
[0110] 図17は、次元ごとに奇数1706(白い支持体)及び偶数1708(中実/影の支持体)の投影演算子を導入することによって横断面内の階段状近似1704によって楕円1702を近似する手順を示す。一方向の投影演算子に他方向の投影演算子を掛けることにより、隔離されたボックスのパターンが現れる。これによって各隔離ボックスの支持体上に適切な挙動を有する連続関数を構築することができる。
【0089】
[0111] 図18は、ベンチマークモデル構造を示す。格子の1つのセルが、シリコン基板1802、底反射防止コーティング(BARC)1804及びレジスト格子要素1806で示されている。
【0090】
[0112] 放射及びモデルパラメータは以下の通りである。
波長:λ=500nm
ピッチx&y:λ×λ=500nm、×500nm
フットプリント:0.15λ×0.15λ=75nm×75nm
高さ:0.436λ=218nm
充填:レジスト
背景:Si上にBARC(90nm)
θ,φ:8.13°、45°
分極:平行
ここでθは、z軸に対する入射角であり、φは入射放射の方位角である。
【0091】
[0113] 図19は、図11に関して説明した方法を使用して計算する先行技術のVIMシステムの収束結果対RCWAの計算を示す。図11の縦軸は|Rp−Rp*|/|Rp*|によって与えられる相対誤差REであり、ここでRpは平行分極の反射係数であり、電場は入射面に平行であり、Rp*は5桁の精度を達成するのに十分なモードでのRCWAの収束解である。横軸はモード数NMであり、これは一方向で打ち切ったフーリエ級数の項の数であり、他の方向で同一のモード数を使用する。幾つかのグラフが示され、それぞれがzで異なる数のサンプル点に対応する。グラフ1902は2つのサンプル点、グラフ1904は4つのサンプル点、グラフ1906は8つのサンプル点、グラフ1908は16のサンプル点である。32、164及び128のサンプル点のグラフは、16のサンプル点のグラフ1908をオーバレイする。
【0092】
[0114] 通常、zの8又は16のサンプル点は、リソグラフィプロセス構造のシミュレーションでレジストを備える構造に使用され、7から9のモードは、−Nから+Nのモード指数に対応して使用され、ここでN=3又は4である。金属又はシリコンなどのさらに高いコントラストの材料には、場を適切に説明するためにさらに多数のモードが必要である。
【0093】
[0115] 図19の全グラフの大きい相対誤差は、体積積分法を使用した不良な収束を示し、これは上述したように誘電率及び電場で同時発生する飛越しの効果である。以上で検討したように、VIMシステムでは、収束の問題を克服するためにリーの逆法則を使用することが、計算を限定することになる多数の行列反転のせいで実際的ではない。
【0094】
[0116] 図20は、図19に示したものと同じデータから導出したが、縦軸が秒単位のCPU時間t、横軸がモード数NMであるグラフでタイミングの結果を示す。グラフ2002から2014は、それぞれzにある2、4、8、16、32、64及び128のサンプル点のプロットである。xの記号2016は、同じ構造のRCWA計算の結果である。
【0095】
[0117] 図21は、図12及び図13に関して以上で検討した方法を使用して、本発明のある実施形態により大幅に改良された収束を示す。図21のグラフを図19のグラフと比較されたい。しかし、図21の縦の縮尺の方が広い範囲にまたがり、図19に示したものより相対誤差が2桁以上少ないことを示すことに留意されたい。グラフ2102から2114は、それぞれzにある2、4、8、16、32、64及び128のサンプル点のプロットである。
【0096】
[0118] 図22は、図20と同じ軸であるが、図12及び図13に関して以上で検討した方法を使用して、本発明のある実施形態により生成されたデータのタイミング情報を示す。グラフ2202から2214は、それぞれzにある2、4、8、16、32、64及び128のサンプル点のプロットである。xの記号2216は、同じ構造のRCWA計算の結果である。
【0097】
[0119] CPU時間t対モード数NMは、図20に示したものと同様であることが分かる。
【0098】
[0120] したがって図21及び図22は、本発明が体積積分法を使用した数値的解の収束を大幅に改良することを明白に示す。
【0099】
[0121] 本発明の実施形態は、RCWAよりも必要とするメモリ資源もはるかに少ない。RCWAの記憶装置の要件は375*((M1*M2)2)*の精密度である。VIMの記憶装置の要件は、約60*(M1*M2*N)*の精密度である。ここで、xのモード数はM1、xのモード数はM2、zのサンプル数はNである。VIMの典型的な作業点は、N≒4*(M1,2/ピッチx,y)*の高さである。
表1は、メモリの使用のために取得した結果を示す。
【表1】
【0100】
[0122] 表1のデータを生成するために、以下の条件を使用した。
ピッチx=ピッチy
M1=M2
高さ/ピッチ=0.436
精密度=複合倍
VIM:作業点で演算
【0101】
[0123] 表1は、典型的な格子ではVIMの方がRCWAより記憶装置の要求が低いことを明白に示す。
【0102】
[0124] さらなる実施形態について以下で説明する。
【0103】
序
[0125] 体積積分方程式法(VIM)は、2つの式の組で構成される。最初の式は、入射場及びコントラスト電流密度に関して全電場を説明する積分表示であり、後者はグリーン関数と相互作用する。すなわち、
【数2】
の場合に下式となる。
【数3】
【0104】
[0126] さらに、=Gは背景媒体のスペクトルグリーン関数を指し、これはz方向に平面層化し、e(m1,m2,z)はxy面のスペクトル基底に書かれた全電場E(x,y,z)のスペクトル成分を指し、j(m1,m2,z)はこれもxy面のスペクトル基底に書かれたコントラスト電流密度Jc(x,y,z)のスペクトル成分を指す。
【0105】
[0127] 第2の式は全電場とコントラスト電流密度との関係であり、これは構成内に存在する材料によって画定された構成関係である。すなわち下式となる。
【数4】
【0106】
[0128] ここで、Jcはコントラスト電流密度を指し、ωは角周波数、ε(x,y,z)は構成の誘電率、εb(z)は層状背景の誘電率であり、Eは全電場を指し、全て空間基底で書かれている。後者の式をxy面のスペクトル基底に変換することが、本文書の主な焦点である。
【0107】
[0129] 単刀直入なアプローチは、[1,2]で提案されているように、式(1.2)をスペクトル領域に直接変換することである。すなわち下式になる。
【数5】
【0108】
[0130] ここでM1l及びM2lは、E及びJcという有限フーリエ表示を考慮したスペクトルの下限であり、M1h及びM2hはスペクトルの上限である。さらに、χs(k,l,z)は横(xy)面に対するコントラスト関数χ(x,y,z)のフーリエ係数である。しかし、スペクトル基底で場と材料の相互作用を扱う際の主な数値的問題の1つは、実空間の単純な積式が、(数値導入の場合のように)積変数の一方又は両方の表示が有限(又は打ち切った)フーリエ展開を有する場合に、常にフーリエ空間で畳み込みによって正確に再現されるわけではないことを観察することである。さらに詳細には、積の両方の変数がいわゆる同時発生の相補的飛越し状態を示す場合は、打ち切ったフーリエ展開にとって標準的な畳み込みである「ローランの法則」より、「逆法則」の方がはるかに良好な精度特性を有することが示されている。この観察は、RCWAの状況で2D及び3Dの場と材料の相互作用について、リー[3,4]によってさらに詳細に計算されている。
【0109】
[0131] VIM内では、これらの観察が等しく当てはまる。電場とコントラスト電流密度のスペクトル離散を採用しているので、類似の問題に直面している。E及びコントラスト関数の飛越しが同時発生するが、これらは相補的ではない。というのは、コントラスト関数が、背景に対して摂動する幾何学的形状の支持体の外側ではゼロだからである。したがって、リーの法則の基本原理を慎重に解釈する必要がある。さらに、VIM内の別の主な問題は、逆法則の効率である。ローランの法則は、FFT導入により計算の複雑さは低いが、逆法則は通常、完全な行列とベクトルの積につながり、これはローラン[5]によって提案された近似法則の[2]で観察されるように、VIMの効率を非常に低下させる。したがって、スペクトル基底の精度を犠牲にせずに、畳み込み構造を保持できる方法を探すことが望ましい。そのために、以下の形態の変更k空間リップマン・シュウィンガー方程式を公式化し、
【数6】
について下式を解くように提案する。
【数7】
【0110】
[0132] さらに、=Gは、背景媒体のスペクトルグリーン関数を指し、演算子Cε及びVεは、1D及び/又は2DのFFTにより効率的な行列とベクトルの積を可能にする演算子である。
【0111】
2 調査
2.1 準備
[0133] 全電場とコントラスト電流密度との関係は、マクスウェルの方程式及び背景構成の概念から導出される。背景の選択は、この背景に関してグリーン関数を探し出す能力に関係する。したがって通常、背景は平面層状媒体などの単純化した構成である。ここで、層化はz方向に生じ、全体に一定の透磁率を有して、したがって誘電率しか変動しない材料で構成されると仮定する。アンペア・マクスウェルの方程式を求めて、一次源がない状態で下式になる。
【数8】
【0112】
[0134] ここで、Hは磁場強度、ωは角周波数、Dは電束密度、εは誘電率、Eは電場強度である。
【0113】
[0135] 次に、背景の誘電率をεbで示すと、コントラスト電流密度Jは下式で定義される。
【数9】
【0114】
[0136] さらに、正規化した量qを下式のように定義したい。
【数10】
【0115】
[0137] ここで、χはコントラスト関数である。この概念で、下式を導入する。
【数11】
【0116】
[0138] ここで、Iは単位作用素である。
【0117】
2.2 逆法則の基本原理
[0139] 周期pで1D周期関数V(x)、及び係数νn,n∈Zで対応するフーリエ級数を考察してみる。これらの間の関係は下式によって与えられる。
【数12】
【0118】
[0140] さらに、これも周期pで1D周期関数K(x)、及び対応するフーリエ係数knを導入する。
【0119】
[0141] フーリエ係数kn及びνnに関して積K(x)V(x)を近似することに関心がある。K(x)及びV(x)が連続的な周期関数である場合、フーリエ理論は下式のことを伝えてくれる。
【数13】
【0120】
[0142] ここで、下式の通りである。
【数14】
【0121】
[0143] ここで、級数はK及びVの連続性により、ノルムで収束する。この法則はローランの法則又は畳み込み法則として知られている。さらに、例えば、
【数15】
のようにチルド記号で示すが、(全ての数値的導入のように)有限(又は打ち切った)フーリエ級数のK(x)V(x)の近似に関心がある場合は、
【0122】
[0144] 有限フーリエ級数V(x)から有限フーリエ級数のK(x)V(x)の収束する近似を作成できるかという疑問が生じる。したがって、下式になるように、係数cnを構築できるかである。
【数16】
【0123】
[0145] ここで、下式の通りである。
【数17】
【0124】
[0146] 〜V(x)の有限フーリエ級数の係数が集合{−N,・・・,N}に限定され、〜K(x)の係数が集合{−2N,・・・,2N}で必要であることに留意されたい。これは、多くの畳み込みの問題のケースであり、ここでVは規定された畳み込み核Kのフィルタで変換する必要がある信号を表す。この有限ローランの法則は、行列とベクトルの積を介して実施することができ、ここで係数knは行列内に配置され、係数νnは列ベクトルとして構成される。νnの係数がその指数nに従って構成されると、係数knの行列はテプリッツ行列である。このテプリッツ行列によって、順方向及び逆方向高速フーリエ変換(FFT)による効率的な行列とベクトルの積が可能になる。
【0125】
[0147] リーによる論文[3,4]は、関数V(x)及び/又は関数K(x)がいずれでも連続的である場合は、式(2.13)の有限ローランの法則を適用できることを実証している。さらに、V(x)が周期の有限数の点で不連続であり、K(x)がそれらの点の近傍で連続している場合は、有限ローランの法則も当てはまる。このような場合は、V(x)及びK(x)がフーリエ因数分解可能であると言う。しかし、V(x)及びK(x)が両方とも不連続の点がある、すなわち関数V(x)及びK(x)がいわゆる同時発生の飛越しを有する場合、有限ローランの法則は不良な近似特性を有する。
【0126】
[0148] 1つの特殊なケースでは、リーは、逆法則として知られ、近似特性の向上につながる別の法則があることを示している。この特殊なケースは、K(x)及びV(x)が同じ点に不連続部を有するが、その不連続部が相補的である、すなわちK(x)及びV(x)の不連続部は、K(x)とV(x)の積が連続であるような状況の周囲で繰り返す。法則を構築するために、関数W(x)=K(x)V(x)であることに気づく。これで、W(x)及び核1/K(x)に適用されたローランの法則は、V(x)の係数につながる。すなわち下式になる。
【数18】
【0127】
[0149] ここで、κnは1/K(x)のフーリエ級数の係数であり、wnはW(x)のフーリエ級数の係数である。W(x)が連続しているので、W(x)/K(x)の有限フーリエ級数の近似を得るために有限ローランの法則を適用することができ、これは係数κnのテプリッツ行列T及び係数wnのベクトルにつながり、従って下式となる。
【数19】
【0128】
[0150] したがってW(x)及び1/K(x)はフーリエ因数分解可能である。最後に、行列Tを反転させると、下式になる。
【数20】
【0129】
[0151] したがって、「逆法則」という名称になる。
【0130】
2.3 2Dの周期的単位セルの軸に沿って位置合わせされた縁部がある単一のブリックに関する変更リーの法則
[0152] xy面で周期的構成の長方形の単位セル内にある長方形領域上で、固定されたz位置での背景媒体が一定で、コントラスト関数が非ゼロの連続関数、例えば定数である構成を考察してみる。さらに、長方形領域が単位セルと同じ方位を有すると仮定する。χの支持体の形状を画定するために、下式を導入する。
【数21】
【0131】
[0153] 次に、z方向に沿った固定位置で、背景に対する誘電率及びその逆数を、(材料が等方性、すなわち誘電率がスカラーであると仮定して)以下のように定義することができる。
【数22】
【0132】
[0154] ここで、χcは連続的関数又は定数であり、(x0,y0)は長方形支持体の中心位置であり、下式になる。
【数23】
【0133】
[0155] これはεr,b・εr,b−1=1という条件の結果である。
【0134】
[0156] 次に、有限フーリエ空間に畳み込み演算子〜Px及び〜Pyを導入し、これは下式のように(スペクトルベースで)任意の場vに作用する。
【数24】
【0135】
[0157] これは、
【数25】
及び、
【数26】
の場合であり、これは2Dフーリエ係数の整数指数である。さらに下式がある。
【数27】
【0136】
[0158] ここで、a及びbはそれぞれx及びy方向の単位セルの寸法であり、x及びy方向のパルス関数の支持体が積分間隔内にあると仮定する。
【0137】
[0159] 空間領域内で、正規化した電束と電場のx成分間に以下の関係がある。
【数28】
【0138】
[0160] これは、下式のようなそのスペクトルの対応物に直接つながることになる。
【数29】
【0139】
[0161] ここで、Iは単位作用素を表し、Ex及び^Dxの上の〜は有限フーリエ表示を指す。しかし、この式は、誘電率関数及び電場が同時発生の飛越しを有するという事実を完全に無視し、それはこの近似の性能を甚だしく低下させる。したがって、次にローランの法則と逆法則の組合せに到達するために、リーの推論の方針[3,4]に従う。
以下の関係式から開始する。
【数30】
【0140】
[0162] ^Dxはx方向に連続し、したがってΠΔxの乗算をスペクトル領域内で演算子〜Pxと交換できることに気づく。しかしy方向では、上式に同時発生の飛越しが観察される。パルス関数ΠΔyは空間投影演算子であるので、等べき特性により、及び〜Pxがy方向では定数乗数としてのみ作用し、ΠΔyと交換可能であるという事実により逆に構築することができる。このような場合、I+AΠΔyの逆数はI+BΠΔyの形式であり、ここでBは以下の代数特性の結果である。
【数31】
【0141】
[0163] 上式から、(B+A+BA)=0となる、すなわちB=−A(I+A)−1である。さらに、〜Px〜^Dxの有限スペクトル表示の空間表示をPx^Dxとし、Pyでも類似の表記となる。これらの表記で、以上の推論の方針に従い、下式に到達する。
【数32】
【0142】
[0164] この時点で、乗算演算子ΠΔyはPyで表す有限ローランの法則に対してスペクトルの対応物を有する。さらに、Px及びPyが異なる指標で作用することから、演算子(I+^χcPx)−1はPyと交換可能である。
【0143】
[0165] これで、両方とも有限フーリエ級数に関して表された正規化した電束と電場は、以下の関係になる。
【数33】
ここで、z成分は、Ezがxy面で連続しているという観察により、こうなる。体積積分方程式の場合は、全電場E及び正規化したコントラスト電流密度qにしか関心がない。後者の場合は下式となる。
【数34】
【0144】
[0166] ここで、^χcとχcの間の関係を採用した。
【0145】
[0167] Eからqを得るために以上の行列とベクトルの積に逆演算子(I+^χcPx)−1及び(I+^χcPy)−1が存在するので、全体的な体積積分方程式の行列ベクトル積は数値的な複雑さが非常に増大してしまう。したがって、これらの逆関数がもたらす精度の上昇を犠牲にせずに、それを回避することが非常に好ましい。したがって、Eに対して以下の関係を有する新しいベクトル場Fを導入することを提案する。
【数35】
【0146】
[0168] これは、第1式についてはx方向に沿って、第2式についてはy方向に沿って1DのFFTにより実施することができる。
【0147】
[0169] これで、qとFの間の関係は下式のようになる。
【数36】
【0148】
[0170] これはxy面で2DのFFTにより実施することができる。
【0149】
[0171] これで、EとFの関係及びqとFの関係は両方とも、有限ローランの法則に従って畳み込み演算子を有し、これによってその行列ベクトル積が効率的になる。というのは、1D及び2DのFFT(の組合せ)によって実施できるからである。したがって、Eではなくベクトル場Fについて体積積分方程式を解き、追加の後処理ステップを介して式(2.36)から(2.38)へ電場Eを得る。先行技術の手順と比較したこの手順の変化は、今回は1つの(qのみの)演算子ではなく2つの(すなわちEに1つ、qに1つの)演算子を、及び後処理ステップを使用することである。しかし、本発明の実施形態による新しい手順のこれらの2つの演算子は、先行技術の手順で1つの演算子よりはるかに効率的に実施される。
【0150】
2.4 法線ベクトル場の定式化
[0172] 以上の変更リーの法則に関する検討は、FFTによる計算の低い複雑さは、コントラスト関数の幾何学的形状のタイプをかなり制限することを示す。したがって、FFTが場と材料の相互作用式の優勢な演算であり続けるフレームワークを探し出すことが最も重要である。論文[6]で適切な開始点を探し出した。それを進める概念の1つは、誘電率関数の幾何学的形状の縁部及び隅部に対応する隔離された点又は線という例外がある可能性があるが、どこでも連続的である補助ベクトル場を導入することである。これは、以前のセクションの状況と同様であり、そこでは有限ローランの法則の形態で収束が良好な畳み込みを可能にした(他の)中間連続ベクトル場Fも導入していた。しかし、有意の違いは、[6]が線形系を解くために補助ベクトル場を使用することを教示せず、かわりに[6]は線形系を解く基底としてEを使用するように教示していることである。
【0151】
[0173] 一方のコントラスト電流密度J(又はq)及び電場Eをスペクトル領域の畳み込みの形態で連続ベクトル場Fに関連させる1組の式を設定することが可能である。Fは連続的であるので、それで演算する畳み込みは有限ローランの法則の形態をとり、したがってFFTによって実行することができる。その方法で、Fが基本的未知数である1組の式に到達し、その未知数に対して系を解き、追加の後処理ステップによって電場及び/又はコントラスト電流密度を取得し、そこから構成の所望の散乱特性、例えば反射係数を導出することができる。
【0152】
[0174] 前置きの検討から、FとJの関係は一方ではEとDの、他方ではFの関係の結果である。[6]の表示では、その概念は以下の関係式を確立するものである。
【数37】
【0153】
[0175] ベクトル場Fは、電場の場の成分と電束密度の成分との組合せから構築される。材料界面での境界条件から、電場の接線成分と電束密度の法線成分とが連続し、材料界面の隅部及び縁部に対応する点及び線の例外がある可能性があることが分かっている。E及びDのこれらの連続成分をフィルタリングするために、実数値法線ベクトル場を導入する。この法線ベクトル場n(x,y,z)は以下の特性を有する。
・各材料界面と直交方向に向いている。
・空間内の各点に単位長を有する。
【0154】
[0176] 以上に加えて、このベクトル場を画定する他の制限はないが、何らかの形態の連続性など、他の特性を含むと都合がよい。
【0155】
[0177] ベクトル場nを使用して、電束密度の不連続成分をフィルタリングすることができ、その結果、連続的なスカラー場Dn=(n,D)となり、ここで(.,.)はスカラー積を表す。さらに、法線ベクトル場から、2つのいわゆる接線ベクトル場t1及びt2を探し出すことができ、これはnとともに3D空間の各点で正規直交基底を形成する。例えば、nx及びnyを下式のように構築できる法線ベクトル場t1のx及びy成分とする。
【数38】
ここで、ux及びuyはそれぞれx及びy方向に沿った単位ベクトルを指す。最後に、nとt1とのクロス乗積を介してベクトル場t2が生成される。
【0156】
[0178] 接線ベクトル場を使用して、下式のように電場の連続成分を抽出することができる。
【数39】
【0157】
[0179] [6]の後、次に下式のように連続ベクトル場Fを構築する。
【数40】
【0158】
[0180] 法線ベクトル場nは、下式のように演算子Pnの定義を生成する。
【数41】
【0159】
[0181] ここで、vは任意の3Dベクトル場である。法線ベクトル場nの特性から、Pnは投影演算子であり、したがって等べき、すなわちPnPn=Pnであることが分かる。同様に、下式のように演算子PTを導入することができる。
【数42】
これも投影演算子である。次に、ベクトル場Fから式(2.40)の演算子を構築するためにこれらの演算子Pn及びPTを使用できる方法を示す。
【0160】
[0182] 一方で電場と電束密度の間の空間領域関係、他方でベクトル場Fの定義から開始する。下式がある。
【数43】
【0161】
[0183] ここで、Mεは、通常は非等方性である誘電率テンソルεを掛けた乗算演算子であり、Mε−1は、誘電率関数の(点別)逆数を掛けた乗算演算子である。
【0162】
[0184] 最初に、EとFの関係を確立する。というのは、下式があるからである。
【数44】
【0163】
[0185] 後者の式を再構成し、Pnの等べきを採用すると、下式が得られる。
【数45】
【0164】
[0186] これで、上式では式の両辺が演算子Pnの範囲に属することが分かる。投影演算子の1つの重要な特性は、投影演算子がその等べきのせいでその範囲の単位作用素で一意に識別されることである。したがって、Pnの範囲からのマッピングとしての左辺をPnの範囲に制限すると、左辺の演算子を反転して、下式に到達することができ、ここで制限が可能であるのは、PnがEに作用する演算子の両辺に現れるからである。
【数46】
ここで、(PnMεPn)−1はPnの範囲の(PnMεPn)の逆数、すなわち(PnMεPn)−1(PnMεPn)=Pnである。逆演算子の存在について、以下で確立する。
【0165】
[0187] したがって式(2.40)の線形演算子Cεは下式によって与えられる。
【数47】
【0166】
[0188] 同様の方法で、電束密度とベクトル場Fの間の関係を導出することができる。
【数48】
【0167】
[0189] 第2の式では、次にEを除去するために式(2.54)を採用することができる。すなわち、下式である。
【数49】
【0168】
[0190] したがって、下式となる。
【数50】
【0169】
[0191] この時点で、(PnMεPn)−1という例外がある可能性があるが、全ての演算子、すなわちPn、PT及びMεは空間領域の点別乗算演算子であることを認識することが重要である。さらに、誘電率プロファイル内の飛越しは、法線ベクトル場の(生じ得る)飛越しと同じ位置では発生しない。しかし、複数の投影演算子(すなわちPn及び/又はPT)又は複数の材料演算子(例えばCε及びMε)が係わる積では、同時発生の飛越しが発生することが可能である。さらに、投影演算子の空間等べき特性は、有限フーリエ級数展開では維持されない。したがって、フーリエ領域で演算子を構築する前に、空間領域で全等べき特性を計算する。これを達成する最も単純な方法は、乗算演算子の各組合せ(積)が再び乗算演算子になることを認識することである。したがって、全演算子Cε及び演算子εCεの各項について、単一の乗算演算子を構築することを目指す。それが達成されると、空間領域の各乗算演算子がスペクトル領域の畳み込み演算子になり、これは全て連続ベクトル場Fで作用するので、有限ローランの法則によって実施することができる。
【0170】
2.4.1 演算子(PnMεPn)−1
[0192] 次に演算子(PnMεPn)−1に注目する。これが点別乗算演算子であることを示し、その式を導出する。
【0171】
[0193] 投影演算子Pnの定義から、下式を容易に導出することができる。
【数51】
【0172】
[0194] これは、(n,εn)が、誘電率関数のエネルギー特性により決してゼロにならないスカラー場であるからである。すなわち、可能な全ての電場Eの(E,ε*E*)は電力密度である。したがって、スカラー場の逆数は、単に(n,εn)−1=1/(n,εn)=ζによって与えられる。従って下式となる。
【数52】
【0173】
2.4.2 等方性の場合の法線ベクトル場の定式化
[0195] 等方性媒体の場合、演算子Mεはスカラー乗算であり、それにより一方の演算子Pn及びPTと他方のMεが交換可能である。さらに、演算子(PnMεPn)−1=PnM1/ε=M1/εPnであり、ここでM1/εは、εの(スカラー)逆数の乗算である。これらの観察から、演算子Cεは下式になる。
【数53】
【0174】
[0196] さらに、演算子εCεは下式になる。
【数54】
【0175】
2.4.3 バイナリ格子の法線ベクトル場の定式化
[0197] バイナリ格子とは、その全高にわたって均一な断面を有する格子である。zが媒質の層化の方向であり、格子が間隔z∈[zl,zh]内に画定されると仮定すると、後者の間隔内で格子構造の誘電率関数はx及びyのみの関数である。図15を参照されたい。zの空間離散、又は間隔z∈[zl,zh]に専用のスペクトル離散を使用すると、全体的にz方向に沿った単位ベクトルに平行な接線ベクトル場の1つを選択することができる。法線ベクトル場及び第2の接線ベクトル場は、これで基本的に2次元ベクトル場となる。すなわちz方向に垂直であり、x及びy座標にのみ依存する。法線ベクトル場を決定すると、第2の接線ベクトル場は法線ベクトル場とz方向の単位ベクトルとのクロス乗積の結果となる。このように、法線及び接線ベクトル場を生成する問題は、法線ベクトル場のみを生成することへと軽減される。さらに、場と材料の相互作用の計算は、xy面での2D畳み込みの形態をとり、これはz方向に対して分離される。法線ベクトル場は多くの方法で生成することができる。RCWAの状況で[7,8]で提案されている。
【0176】
2.4.4 実施例:等方性バイナリ格子の場と材料の相互作用行列の係数
[0198] 長方形の単位セルx∈[−a/2,a/2], y∈ [−b/2,b/2]を考察してみる。間隔z∈[z0,z1]の場合、誘電率関数はε(x,y)によって与えられる。さらに、nx(x,y)及びny(x,y)を法線ベクトル場のx及びy成分t1x(x,y)=−ny(x,y)、t1y(x,y)=nx(x,y),及びt2=uzとする。この場合、式(2.62)を参照すると、以下の演算子の式になる。
【数55】
【0177】
[0199] ここで畳み込み演算子Cの係数は下式によって与えられる。
【数56】
【0178】
[0200] 及びIは単位作用素を表す。
【0179】
2.4.5 階段状格子の法線ベクトル場の定式化
[0201] 格子構造は、層化の方向、すなわちz方向の階段近似によって幾何学的に近似することができる。図16を参照されたい。すなわち、z方向の独立した間隔(スライス)のシーケンスを選択し、これらの間隔ごとに、z方向から独立した誘電率関数によって誘電率関数を近似する。次に、間隔のそれぞれに専用の離散を使用することにより、バイナリ格子のシーケンスに到達し、それに上記のセクション2.4.3で示した手順を適用することができる。すなわちスライスごとに法線ベクトル場を生成し、スライスごとに場と材料の相互作用の演算子を構築するが、これは両方とも基本的に2次元である。
【0180】
2.5 畳み込み構造を維持する変更リーの法則と法線ベクトル場の定式化の代替方法
[0202] 前述のセクションで、スペクトル基底の精度を保持しながら、場と材料の相互作用の効率的な行列ベクトル積を構築するために、いわゆるk空間リップマン・シュウィンガー方程式を変更した。これは、Fを計算したら、非常に少ない追加の計算でEが取得されるように、Eによって示された電場と1対1対応する補助ベクトル場Fを導入することによって達成した。基本的に、下式の形態の1組の式を導出した。
【数57】
【0181】
[0203] ここで、Eiは入射場を指し、Gは層状背景媒体のグリーン関数の行列表示を指し、Cε及び(εCε)はFFTの形態の効率的な行列ベクトル積に対応する。
【0182】
[0204] 以上の場合、FとEの1対1対応によって、コンパクトで効率的な形式が可能になる。しかし、効率的な行列ベクトル積とともに高い精度というターゲットを達成するために、別の経路が存在する。これらの代替方法をさらに探求し、文書にすることが、本セクションの目的である。既存の形式を、Eと補助ベクトル場Fとの1対1対応を削除することによって拡張することができる。これは、例えばセクション2.5.2で示すように、例えば電場E内より補助ベクトル場F内に多くの自由度を導入する場合である。さらなる措置を執らないと、ベクトル場Fに関する線形方程式の結果となる組は決定が不十分であり、したがってFは一意ではなく、このことは反復的ソルバを使用する場合は通常望ましくない。というのは、これが通常、多数の反復又は反復プロセスのブレークダウンにつながるからである。この状況を克服するために、量F、E及び/又はJの間に追加の組の線形制約を見越す。この基本原理で、以下の一般化した組の変更リップマン・シュウィンガー方程式に到達する。
【数58】
【0183】
[0205] ここで、以上の行列方程式の各演算子は、例えばFFTによって効率的な行列ベクトル積を実施することができる。
【0184】
2.5.1 ラランの法則
[0206] 2D周期性の周期構造についてリーが導出した法則の前に、ララン[5]は誘電率行列Mεの重み付き平均式([5]でEと表す)及び逆誘電率行列(Minv(ε))−1の逆行列([5]でP−1と表す)を提案している。この作業方法のために、電場Eと補助ベクトル場Fの組合せで作業することができる。後者のベクトル場は、高速の行列とベクトルの積を獲得し、コントラスト電流密度J又はその縮尺した相対物qを計算するために、(Minv(ε))−1とEの間の積に遭遇した時点で導入される。
【数59】
【0185】
[0207] ここでFは下式を満足する。
【数60】
【0186】
[0208] MεとMinv(ε)は両方とも、FFTにより効率的な行列とベクトルの積を実施する。
【0187】
[0209] 式(2.73)と(2.74)の結果は、式(2.72)の形態でより大きい線形系として実施することができる。ここで、演算子I及びGを含む第1の組の式は元のままである。第2の組の式は、一方のJと他方のE及びFの間で関係式(2.73)をもたらす。すなわちC11=jωα(Mε−εbI)、C12=−I,及びC13=jω(1−α)Iである。次に、第3の組の式は式(2.74)のようにEとFを関連させる。すなわちC21=−I、C22=0及びC23=Minv(ε)である。最後に、C31、C32、C33を含む最終組の式、及び右辺の最終行はなくなる。これは、ベクトル場Fの近似解を決定するように、電磁場Eに関連し、それとは異なるベクトル場Fの体積積分方程式を数値的に解くことを含むことによって、構造の電磁散乱特性を計算することによって実施することができる。ここで、ベクトル場Fは、可逆演算子Minv(ε)によって電場Eに関連付けられる。
【0188】
2.5.2 連結のリーの法則
[0210] 交差した格子の場合、リーは対応する相互作用の行列が(ブロック)テプリッツ行列及び逆(ブロック)テプリッツ行列の積の合計で構成されている場合、スペクトル基底で場と材料の相互作用がよりよく捕捉されることを示している。(ブロック)テプリッツ行列は、FFTの形態で効率的な行列とベクトルの積を可能にするが、逆テプリッツ行列はテプリッツの形態を有していない。したがって、補助ベクトル場の概念を拡張することにより、制約とともに追加の補助場を導入し、(ブロック)テプリッツ行列の逆数も考慮に入れた効率的な行列とベクトルの積に到達することができる。
【0189】
[0211] バイナリ格子の等方性媒体の場合を考慮してみる。次に、リーの法則は、横面、すなわちxy面の場の成分にのみ変更が必要である。この状況は、単一の長方形ブロックの場合と同様であるが、ここでは隣接していても、していなくてもよい幾つかのブロックから誘電率関数を構築する。特に、誘電率関数及び対応する逆誘電率関数は、下式のように書かれる。
【数61】
【0190】
[0212] ここで、Παβは、方向βのパルス関数であり、ラベルαを伴う全間隔の支持体を有する。x方向にはI個の間隔があり、y方向にはJ個の間隔がある。さらに、χi,jは関数Πix(x)Πjy(y)の支持体の連続スカラー関数であり、^χi,j=−χi,j/(1+χi,j)である。
【0191】
[0213] 電場及び電束のx成分に関する関係式Ex=ε−1Dxから、下式が得られる。
【数62】
【0192】
[0214] ここで、リーの推論の方針により、ΠixDxはフーリエ空間内で因数分解可能であるが、ΠjyDxは因数分解可能でない。関数Παβは投影演算子として解釈できるので、以下を採用することができる。
【0193】
[0215] Iを単位作用素とし、Aiを相互に直交する投影演算子Piと交換可能な有界演算子のシーケンスとすると、演算子
【数63】
は、有界逆数
【数64】
を有し、ここでBi=−Ai(I+Ai)−1である。
【0194】
[0216] この代数を計算し、投影演算子の等べきを考慮に入れることによって証明となる。
【0195】
[0217] この結果で、次に電場の成分に関して電束の成分を下式のように表すことができる。
【数65】
【0196】
[0218] ここでAi及びBiとPiとの交換特性を使用している。
【0197】
[0219] 同様に、y成分について下式がある。
【数66】
【0198】
[0220] ここで、乗算演算子はそれぞれ、電場の成分を直接演算する逆行列演算を実行した後、フーリエ因数分解可能である。これらの関係式から通常の方法でコントラスト電流密度を導出することができる。
【0199】
[0221] 以上の関係式から、x及びy方向に沿った各間隔は逆演算子、すなわち合計I+J個の逆数を生じることが明白になる。これらの逆数はそれぞれ、セクション2.3の単一のブリックの場合のように、逆演算子を含む中間行列ベクトル積に補助変数(ベクトル場)を導入すると、回避することができる。この方法で、変数の増加という犠牲を払うが、FFTの形態で行列ベクトル積の効率が維持される。これは、I及びJが1より大きい場合に特に当てはまる。というのは、逆数がそれぞれ補助変数の量だけ増加し、それにより全行列ベクトル積のサイズを増大させるからである。
【0200】
2.5.3 リーの法則の逆演算子の数を減少させる
[0222] セクション2.5.2の結論は、投影演算子Παβがそれぞれ新しい補助ベクトル場を導入するということであり、それによってこの手順は、幾つかの投影演算子より多くを必要とする幾何学的形状ではかなり非効率になる。したがって、階段方式の幾何学的融通性を犠牲にせずに、この方式によって最初に導入されるより少ない投影演算子で作業できる方法があるかという疑問が生じる。
【0201】
[0223] 主な取り組みは、合計に含まれる投影演算子が少なくなるものとして、式(2.75)を書き換えることにある。すなわち、下式のように書き換える。
【数67】
【0202】
[0224] 出願人は有名な「4色問題」に触発されている。これは、平坦な地図は4つの異なる色のみで着色することができ、したがって地図のどの2つの隣接する区域も同じ色を有さないということである。本発明の場合、状況は多少類似している。すなわち隣接する支持体がある投影演算子は、乗算関数^χi,jがその相互接続する境界で連続している場合にのみ結合することができる。概して、このような制約は幾何学的形状では満たされない。したがって、隣接する支持体を有していない投影演算子を結合するようなグルーピングを導入する。これによって、結合した投影演算子の支持体上で乗算関数^χi,jが一致する連続的な乗算演算子を構築することができる。
【0203】
[0225] 最初にこれを1次元で実証してみる。x方向の(周期的)間隔を[0,a]として与え、この間隔を偶数の独立セグメントSi(i=0,・・・,2I)に分割し、セグメントの和集合が周期的間隔[0,a]に広がり、セグメントがこの間隔に沿った位置に従って指し示される、すなわちセグメントSi−1がセグメントSiへと進むようにする。これで、逆誘電率関数を下式のように書くことができる。
【数68】
【0204】
[0226] ここで、Πi(x)の支持体はi番目のセグメントに対応する。
【0205】
[0227] 次に、(相互に直交する)奇数及び偶数の投影演算子を導入する。
【数69】
【0206】
[0228] さらに、(スカラー)関数fo(x)及びfe(x)を導入する。これらの関数は間隔[0,a]で連続し、周期的連続性を有する。すなわちfo(0)=fo(a)及びfe(0)=fe(a)であり、k=1,・・・,Iについて、下式を満足する。
【数70】
【0207】
[0229] 偶数及び奇数の投影演算子が投影演算子を隣接する支持体と結合しないので、関数fo及びfeを連続関数として、例えば偶数及び奇数の投影演算子の支持体以外のセグメントに関する1次補間を介して構築することができる。したがって、逆誘電率関数を下式のように書くことができる。
【数71】
【0208】
[0230] 次にこの概念を2次元に、すなわち格子構造の横面に拡張する。(相互に直交する)偶数及び奇数の投影演算子を、次元ごとに偶数のセグメントがあるデカルト積グリッドのx及びy方向に導入する。さらに、4つの周期的に連続するスカラー関数を、foo(x,y)、foe(x,y)、feo(x,y)及びfee(x,y)で表される周期的領域[0,a]×[0,b]上に導入する。これらの関数は、乗数である投影演算子の支持体以外の双1次補間によって構築することができる。この手順は図17で実証されている。
【0209】
[0231] これで、逆誘電率関数を下式のように書くことができる。
【数72】
【0210】
[0232] これは関係する2次元投影演算子(色)が4つしかないことを示す。
【0211】
[0233] セクション2.5.2で概略した方法に従うと、以下のリーの法則に到達する。
【数73】
【0212】
[0234] またDyとEyの間の関係に関する類似の式にも到達する。
【0213】
[0235] 手順を締めくくるために、x成分が下式を満足し、y成分も類似の関係である状態で、2つの補助場Fe及びFoを導入する。
【数74】
【0214】
[0236] これらの条件で、及びy成分も類似の関係で、最終的に下式が得られる。
【数75】
【0215】
[0237] FとEを関連付ける演算子は、以前のセクションの逆演算子とは反対に2次元文字を有することに留意されたい。にもかかわらず、全ての演算子はここでは、2D(又は繰り返した1D)のFFTにより効率的な行列ベクトル積を実施する乗算演算子である。
【0216】
[0238] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。例えば、これは、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用誘導及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。こうした代替的な用途に照らして、本明細書で「ウェーハ」又は「ダイ」という用語を使用している場合、それぞれ、「基板」又は「目標部分」という、より一般的な用語と同義と見なしてよいことが、当業者には認識される。本明細書に述べている基板は、露光前又は露光後に、例えばトラック(通常はレジストの層を基板に塗布し、露光したレジストを現像するツール)、メトロロジーツール及び/又はインスペクションツールで処理することができる。適宜、本明細書の開示は、以上及びその他の基板処理ツールに適用することができる。さらに基板は、例えば多層ICを生成するために、複数回処理することができ、したがって本明細書で使用する基板という用語は、既に複数の処理済み層を含む基板も指すことができる。
【0217】
[0239] 上述した本発明の実施形態による方法は、図5に関して上述したように、放射によるオブジェクトの照明によって生成される回折パターンなどの、検出された電磁散乱特性からオブジェクト(1D周期性に限定されない)の近似構造を再構築する順方向回折モデルに組み込むことができる。図3及び図4に関して上述した処理ユニットPUは、この方法を使用してオブジェクトの近似構造を再構築するように構成することができる。
【0218】
[0240] 光リソグラフィの分野での本発明の実施形態の使用に特に言及してきたが、本発明は、他の用途、例えばインプリントリソグラフィにも使用することができ、文脈によっては、光リソグラフィに限定されないことを理解されたい。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイス内の微細構成(topography)が基板上に作成されるパターンを形成する。パターニングデバイスの微細構成は、基板に供給されたレジスト層内に押圧し、電磁放射、熱、圧力又はこれらの組合せを印加することによりレジストは硬化する。パターニングデバイスはレジストから取り除かれ、レジストが硬化すると、内部にパターンが残される。
【0219】
[0241] 本明細書で使用する「放射」及び「ビーム」という用語は、イオンビーム又は電子ビームなどの粒子ビームのみならず、紫外線(UV)放射(例えば、365nm、355nm、248nm、193nm、157nm若しくは126nm、又はこれら辺りの波長を有する)及び極端紫外線光(EUV)放射(例えば、5nm〜20nmの範囲の波長を有する)を含むあらゆるタイプの電磁放射を網羅する。
【0220】
[0242] 「レンズ」という用語は、状況が許せば、屈折、反射、磁気、電磁気及び静電気光学コンポーネントを含む様々なタイプの光学コンポーネントのいずれか一つ、又はその組合せを指すことができる。
【0221】
[0243] 「電磁」という用語は、電気及び磁気を包含する。
【0222】
[0244] 「電磁散乱特性」という用語は、スペクトル(波長の関数としての強度など)、回折パターン(位置/角度の関数としての強度)及び横方向磁気及び横方向電気偏光の相対強度及び/又は横方向磁気と横方向電気偏光との位相差を含む反射及び透過係数及びスキャトロメータ測定パラメータを包含する。回折パターン自体は、例えば反射係数を使用して計算することができる。
【0223】
[0245] したがって、本発明の実施形態は反射散乱に関して説明されているが、本発明は透過散乱にも適用可能である。
【0224】
[0246] 以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、説明とは異なる方法でも本発明を実践できることが理解される。例えば、本発明は、上記で開示したような方法を述べる機械読み取り式命令の1つ又は複数のシーケンスを含むコンピュータプログラム、又はこのようなコンピュータプログラムを内部に記憶したデータ記憶媒体(例えば半導体メモリ、磁気又は光ディスク)の形態をとることができる。
【0225】
[0247] 以下の参照文献は全て、参照により全体を本明細書に組み込むものとする。
[1] 「International Conference on Electromagnetics in Advanced Applications ICEAA '03」の議事録(R. D. Graglia、編集者)記載の、M. C. van Beurden氏及びB. P. de Hon氏の、「Electromagnetic modelling of antennas mounted on a bandgap slab - discretisation issues and domain and boundary integral equations」、637-640ページ、Politecnico di Torino、2003年。
[2] Yia-Chung Chang氏、Guangwei Li氏、Hanyou Chu氏及びJon Opsal氏の、「Efficient finite-element, Green's function approach for critical-dimension metrology of three-dimensional gratings on multilayer films」、J. Opt. Soc. Am. A, 23(3):638-6454ページ、2006年3月。
[3] Lifeng Li氏の、「Use of Fourier series in the analysis of discontinuous periodic structures」、J. Opt. Soc. Am. A, 13(9):1870-1876ページ、1996年9月。
[4] Lifeng Li氏の、「New formulation of the Fourier modal method for crossed surface-relief gratings」、J. Opt. Soc. Am. A, 14(10):2758-2767ページ、1997年10月。
[5] Philippe Lalanne氏の、「Improved formulation of the coupled-wave method for two-dimensional gratings」、J. Opt. Soc. Am. A, 14(7):1592-1598ページ、1997年7月。
[6] Evgeny Popov氏及びMichel Neviere氏の、「Maxwell equations in Fourier space: fast-converging formulation for diffraction by arbitrary shaped, periodic, anisotropic media」、J. Opt. Soc. Am. A, 18(11):2886-2894ページ、2001年11月。
[7] Thomas Schuster氏、Johannes Ruoff氏、Norbert Kerwien氏、Stephan Rafler氏及びWolfgang Osten氏の、「Normal vector method for convergence improvement using the RCWA for crossed gratings」、J. Opt. Soc. Am. A, 24(9):2880-2890ページ、2007年9月。
[8] Peter Goetz氏、Thomas Schuster氏、Karsten Frenner氏、Stephan Rafler氏、及びWolfgang Osten氏の、「Normal vector method for the RCWA with automated vector field generation」、OPTICS EXPRESS, 16(22):17295-17301ページ、2008年10月。
【0226】
結論
[0248] 特許請求の範囲を解釈するには、発明の概要及び要約の項目ではなく、「発明を実施するための形態」の項目を使用するよう意図されていることを認識されたい。発明の概要及び要約の項目は、発明者が想定するような本発明の1つ又は複数の例示的実施形態について述べることができるが、全部の例示的実施形態を述べることはできず、したがって本発明及び特許請求の範囲をいかなる意味でも限定しないものとする。
【0227】
[0249] 以上では、特定の機能の実施態様を例示する機能的構成要素及びその関係の助けにより、本発明について説明してきた。これらの機能的構成要素の境界は、本明細書では説明の便宜を図って任意に画定されている。特定の機能及びその関係が適切に実行される限り、代替的な境界を画定することができる。
【0228】
[0250] 特定の実施形態に関する以上の説明は、本発明の全体的性質を十分に明らかにしているので、当技術分野の知識を適用することにより、過度の実験をせず、本発明の全体的概念から逸脱することなく、このような特定の実施形態を容易に修正する、及び/又はこれを様々な用途に適応させることができる。したがって、このような適応及び修正は、本明細書に提示された教示及び案内に基づき、開示された実施形態の同等物の意味及び範囲に入るものとする。本明細書の言葉遣い又は用語は説明のためのもので、限定するものではなく、したがって本明細書の用語又は言葉遣いは、当業者には教示及び案内の観点から解釈されるべきことを理解されたい。
【0229】
[0251] 本発明の幅及び範囲は、上述した例示的実施形態のいずれによっても限定されず、特許請求の範囲及びその同等物によってのみ規定されるものである。
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、周期構造の電磁散乱特性の数値計算に関する。本発明は、例えばリソグラフィ装置のクリティカルディメンション(CD)性能を評価するために、例えば微細構造のメトロロジーに適用することができる。
【背景技術】
【0002】
[0002] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板に、通常は基板の目標部分に適用する機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に使用可能である。このような場合、代替的にマスク又はレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスを使用して、ICの個々の層上に形成すべき回路パターンを生成することができる。このパターンを、基板(例えばシリコンウェーハ)上の目標部分(例えば1つ又は幾つかのダイの一部を含む)に転写することができる。パターンの転写は通常、基板に設けた放射感応性材料(レジスト)の層への結像により行われる。一般的に、1枚の基板は、順次パターンが与えられる隣接した目標部分のネットワークを含んでいる。従来のリソグラフィ装置は、パターン全体を目標部分に1回で露光することによって各目標部分が照射される、いわゆるステッパと、基板を所与の方向(「スキャン」方向)と平行あるいは逆平行に同期的にスキャンしながら、パターンを所与の方向(「スキャン」方向)に放射ビームでスキャンすることにより、各目標部分が照射される、いわゆるスキャナとを含む。パターンを基板にインプリントすることによっても、パターニングデバイスから基板へとパターンを転写することが可能である。
【0003】
[0003] リソグラフィプロセスを監視するために、パターン付き基板のパラメータ、例えば基板内又は基板上に形成された連続層間のオーバレイ誤差を測定する必要がある。走査型電子顕微鏡及び様々な専用ツールの使用を含め、リソグラフィプロセスで形成された微細構造を測定するための様々な技術がある。専用検査ツールの一形態が、放射のビームを基板の表面上のターゲットに誘導し、散乱又は反射したビームの特性を測定するスキャトロメータである。基板によって反射又は散乱する前とその後のビームの特性を比較することにより、基板の特性を決定することができる。これは、例えば既知の基板特性に関連した既知の測定値のライブラリに格納されたデータと反射ビームを比較することによって実行することができる。スキャトロメータは2つの主なタイプが知られている。分光スキャトロメータは広帯域放射ビームを基板上に誘導し、特定の狭い角度範囲に散乱した放射のスペクトル(波長の関数としての強度)を測定する。角度分解スキャトロメータは単色放射ビームを使用し、散乱した放射の強度を角度の関数として測定する。
【0004】
[0004] さらに一般的には、散乱した放射を構造のモデルから数学的に予測された散乱挙動と比較できると有用となり、これは予測された挙動が観察された実際のサンプルの散乱と一致するまで自由に設定し、変更することができる。残念ながら、原則的に数値手順によって散乱をモデリングする方法は知られているが、既知の技術の計算的負担によってこのような技術は実現不能になり、リアルタイムの再構築が望ましい、及び/又は関係する構造が1次元で周期的な単純な構造よりも複雑である場合に、特にそうである。
【発明の概要】
【0005】
[0005] 半導体処理の分野では、周期構造の電磁散乱特性の正確な数値計算を迅速に実行することが望ましい。
【0006】
[0006] 本発明の第1の態様によると、構造の反射係数などの電磁散乱特性を計算する方法が提供され、構造は少なくとも一方向x、yに周期的であり、材料の境界で電磁場Eの不連続を引き起こすように様々な特性の材料を含み、方法は、基底の変換によって電磁場Eに関連するベクトル場Fの体積積分方程式を数値的に解くことを含み、ベクトル場Fは、ベクトル場Fの近似解を決定するように材料境界にて連続している。
【0007】
[0007] ベクトル場Fは、少なくとも一方向x、yに関して少なくとも1つの有限フーリエ級数で表すことができ、体積積分方程式を数値的に解くステップは、畳み込み及び基底変換演算子Cでのベクトル場Fの畳み込みによって電磁場Eの成分を決定するステップを含むことができる。
【0008】
[0008] 本発明の第2の態様によると、放射によるオブジェクトの照明から生じて検出された電磁散乱特性からオブジェクトの近似構造を再構築する方法が提供され、方法は、少なくとも1つのオブジェクト構造を推定するステップと、少なくとも1つの推定されたオブジェクト構造から少なくとも1つのモデル電磁散乱特性を決定するステップと、検出された電磁散乱特性を少なくとも1つのモデル電磁散乱特性と比較するステップと、比較の結果に基づいて近似オブジェクト構造を決定するステップとを含み、モデル電磁散乱特性は、第1の態様による方法を使用して決定される。
【0009】
[0009] 本発明の第3の態様によると、オブジェクトの近似構造を再構築する検査装置が提供され、検査装置は、放射でオブジェクトを照明するように構成された照明システムと、照明から生じた電磁散乱特性を検出するように構成された検出システムと、プロセッサであって、少なくとも1つのオブジェクト構造を推定し、少なくとも1つの推定されたオブジェクト構造から少なくとも1つのモデル電磁散乱特性を決定し、検出された電磁散乱特性を少なくとも1つのモデル電磁散乱特性と比較し、検出された電磁散乱特性と少なくとも1つのモデル電磁散乱特性との差から近似オブジェクト構造を決定するように構成されたプロセッサとを備え、プロセッサは、第1の態様による方法を使用してモデル電磁散乱特性を決定するように構成される。
【0010】
[0010] 本発明の第4の態様によると、構造の電磁散乱特性を計算するために機械読み取り式命令の1つ又は複数のシーケンスを含むコンピュータプログラムプロダクトが提供され、命令は、1つ又は複数のプロセッサに第1の態様による方法を実行させるように構成される。
【0011】
[0011] 本発明の第5の態様によると、構造の電磁散乱特性を計算する方法が提供され、構造は少なくとも一方向x、yに周期的であり、材料の境界で電磁場Eの不連続を引き起こすように様々な特性の材料を含み、方法は、ベクトル場Fの近似解を決定するように、電磁場Eに関連し、それとは異なるベクトル場Fの体積積分方程式を数値的に解くことを含む。
【0012】
[0012] 本発明の第6の態様によると、放射によるオブジェクトの照明から生じて検出された電磁散乱特性からオブジェクトの近似構造を再構築する方法が提供され、方法は、少なくとも1つのオブジェクト構造を推定するステップと、少なくとも1つの推定されたオブジェクト構造から少なくとも1つのモデル電磁散乱特性を決定するステップと、検出された電磁散乱特性を少なくとも1つのモデル電磁散乱特性と比較するステップと、比較の結果に基づいて近似オブジェクト構造を決定するステップとを含み、モデル電磁散乱特性は、第5の態様による方法を使用して決定される。本発明の第7の態様によると、オブジェクトの近似構造を再構築する検査装置が提供され、検査装置は、放射でオブジェクトを照明するように構成された照明システムと、照明から生じる電磁散乱特性を検出するように構成された検出システムと、プロセッサであって、少なくとも1つのオブジェクト構造を推定し、少なくとも1つの推定されたオブジェクト構造から少なくとも1つのモデル電磁散乱特性を決定し、検出された電磁散乱特性を少なくとも1つのモデル電磁散乱特性と比較し、検出された電磁散乱特性と少なくとも1つのモデル電磁散乱特性との差から近似オブジェクト構造を決定するように構成されたプロセッサとを備え、プロセッサは、第5の態様による方法を使用してモデル電磁散乱特性を決定するように構成される。本発明の第8の態様によると、構造の電磁散乱特性を計算する機械読み取り式命令の1つ又は複数のシーケンスを含むコンピュータプログラムプロダクトが提供され、命令は、1つ又は複数のプロセッサに第5の態様による方法を実行させるように構成される。
【0013】
[0013] 本発明のさらなる特徴及び利点、さらに本発明の様々な実施形態の構造及び動作を、添付の図面を参照しながら以下で詳細に説明する。本発明は本明細書で説明する特定の実施形態に限定されないことに留意されたい。このような実施形態は、本明細書では例示的目的のためにのみ提示されている。本明細書に含まれる教示に基づいて、追加の実施形態が当業者には明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
[0014] 本明細書に組み込まれ、その一部を形成する添付の図面は本発明を図示し、説明とともに、さらに本発明の原理を説明し、当業者が本発明を作成し、使用できるような働きをする。
【図1】[0015]リソグラフィ装置を示す。
【図2】[0016]リソグラフィセル又はクラスタを示す。
【図3】[0017]第1のスキャトロメータを示す。
【図4】[0018]第2のスキャトロメータを示す。
【図5】[0019]スキャトロメータの測定値から1次元の周期的回折格子を再構築する一般的プロセスを示す。
【図6】[0020]モデル化したレジスト構造について、従来のRCWA(Rigorous Coupled Wave Analysis)及び本発明の実施形態による体積積分法(VIM)の精度対処理時間を図示したグラフを示す。
【図7】[0021]図6に示したものと同様であるが、モデル化したシリコン構造のデータを示す。
【図8】[0022]本発明の実施形態により再構築することができる散乱幾何学的形状を示す。
【図9】[0023]背景の構造を示し、層状媒体で入射場の相互作用を計算するグリーン関数の使用を図示する。
【図10】[0024]VIM式に対応する線形系を解く高レベル方法のフローチャートである。
【図11】[0025]先行技術で知られているようなVIM式を使用した更新ベクトルの計算のフローチャートである。
【図12】[0026]VIM式を数値的に解くために連続的ベクトル場を使用する本発明の実施形態を示す。
【図13】[0027]本発明の実施形態による更新ベクトルの計算のフローチャートである。
【図14】[0028]本発明の実施形態によりVIMを実行するためにプログラム及びデータで構成されたコンピュータシステムを概略的形式で示す。
【図15】[0029]楕円形の断面のバイナリ格子セルの上面図及び側面図を示す。
【図16】[0030]楕円形の断面の階段状格子セルの上面図及び側面図を示す。
【図17】[0031]階段近似によって楕円を近似する手順を示す。
【図18】[0032]ベンチマークモデル構造を示す。
【図19】[0033]図11に関して説明した先行技術の方法を使用して計算した先行技術のVIMシステムの収束結果を、RCWAの結果と比較して示す。
【図20】[0034]図19に示したものと同じデータから生成したタイミングの結果を示す。
【図21】[0035]本発明の実施形態により生成され、改良された収束結果を、RCWAの結果と比較して示す。
【図22】[0036]本発明の実施形態により生成されたタイミングの結果を、RCWAの結果と比較して示す。
【0015】
[0037] 以下で述べる詳細な説明を図面との関連で理解することにより本発明の特徴及び利点がさらに明白になり、図面では全体を通して類似の参照文字が対応する要素を識別する。図面では、類似の参照番号が全体的に同一、機能的に類似、及び/又は構造的に類似の要素を示す。要素が最初に現れる図面を、対応する参照番号の最も左側の桁で示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[0038] 本明細書は、本発明のフィーチャを組み込んだ1つ又は複数の実施形態を開示する。開示される実施形態は本発明を例示するにすぎない。本発明の範囲は開示される実施形態に限定されない。本発明は本明細書に添付される特許請求の範囲によって定義される。
【0017】
[0039] 記載された実施形態、及び本明細書で「1つの実施形態」、「ある実施形態」、「例示的実施形態」などに言及した場合、それは記載された実施形態が特定のフィーチャ、構造、又は特性を含むことができるが、それぞれの実施形態が必ずしも特定のフィーチャ、構造、又は特性を含まないことがあることを示す。さらに、このようなフレーズは、必ずしも同じ実施形態に言及するものではない。さらに、ある実施形態に関連して特定のフィーチャ、構造、又は特性について記載している場合、明示的に記載されているか、記載されていないかにかかわらず、このようなフィーチャ、構造、又は特性を他の実施形態との関連で実行することが当業者の知識にあることが理解される。
【0018】
[0040] 本発明の実施形態はハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はその任意の組合せで実施することができる。本発明の実施形態は、1つ又は複数のプロセッサで読み取り、実行することができる機械読み取り式媒体に記憶した命令として実施することもできる。機械読み取り式媒体は、機械(例えば、計算デバイス)で読み取り可能な形態で情報を記憶するか、伝送する任意の機構を含むことができる。例えば、機械読み取り式媒体は読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気ディスク記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュメモリデバイス、電気、光、音響又は他の形態の伝搬信号(例えば、搬送波、赤外線信号、デジタル信号など)、及びその他を含むことができる。さらに、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令を、本明細書では特定の行為を実行するものとして記述することができる。しかし、このような記述は便宜的なものにすぎず、このような行為は実際には計算デバイス、プロセッサ、コントローラ、又はファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令などを実行する他のデバイスの結果であることを認識されたい。
【0019】
[0041] しかし、このような実施形態についてさらに詳細に説明する前に、本発明の実施形態を実施できる例示的環境を提示することが有益である。
【0020】
[0042] 図1は、リソグラフィ装置を概略的に示す。この装置は、放射ビームB(例えばUV放射又はEUV放射)を調節するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するように構築され、特定のパラメータに従ってパターニングデバイスを正確に位置決めするように構成された第一ポジショナPMに接続された支持構造(例えばマスクテーブル)MTと、基板(例えばレジストコートウェーハ)Wを保持するように構築され、特定のパラメータに従って基板を正確に位置決めするように構成された第二ポジショナPWに接続された基板テーブル(例えばウェーハテーブル)WTと、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに与えられたパターンを基板Wの目標部分C(例えば1つ又は複数のダイを含む)に投影するように構成された投影システム(例えば屈折投影レンズシステム)PLとを含む。
【0021】
[0043] 照明システムは、放射の誘導、整形、又は制御を行うための、屈折、反射、磁気、電磁気、静電気型等の光学コンポーネント、又はその任意の組合せなどの種々のタイプの光学コンポーネントを含んでいてもよい。
【0022】
[0044] 支持構造は、パターニングデバイスを支持、すなわちその重量を支えている。支持構造は、パターニングデバイスの方向、リソグラフィ装置の設計等の条件、例えばパターニングデバイスが真空環境で保持されているか否かに応じた方法で、パターニングデバイスを保持する。この支持構造は、パターニングデバイスを保持するために、機械的、真空、静電気等のクランプ技術を使用することができる。支持構造は、例えばフレーム又はテーブルでよく、必要に応じて固定式又は可動式でよい。支持構造は、パターニングデバイスが例えば投影システムなどに対して確実に所望の位置にくるようにできる。本明細書において「レチクル」又は「マスク」という用語を使用した場合、その用語は、より一般的な用語である「パターニングデバイス」と同義と見なすことができる。
【0023】
[0045] 本明細書において使用する「パターニングデバイス」という用語は、基板の目標部分にパターンを生成するように、放射ビームの断面にパターンを与えるために使用し得る任意のデバイスを指すものとして広義に解釈されるべきである。ここで、放射ビームに与えられるパターンは、例えばパターンが位相シフト特徴又はいわゆるアシスト特徴を含む場合、基板の目標部分における所望のパターンに正確には対応しないことがある点に留意されたい。一般的に、放射ビームに与えられるパターンは、集積回路などの目標部分に生成されるデバイスの特定の機能層に相当する。
【0024】
[0046] パターニングデバイスは透過性又は反射性でよい。パターニングデバイスの例には、マスク、プログラマブルミラーアレイ、及びプログラマブルLCDパネルがある。マスクはリソグラフィにおいて周知のものであり、これには、バイナリマスク、レベンソン型(alternating)位相シフトマスク、ハーフトーン型(attenuated)位相シフトマスクのようなマスクタイプ、さらには様々なハイブリッドマスクタイプも含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例として、小さなミラーのマトリクス配列を使用し、そのミラーは各々、入射する放射ビームを異なる方向に反射するよう個々に傾斜することができる。傾斜したミラーは、ミラーマトリクスによって反射する放射ビームにパターンを与える。
【0025】
[0047] 本明細書において使用する「投影システム」という用語は、例えば使用する露光放射、又は液浸液の使用や真空の使用などの他の要因に合わせて適宜、例えば屈折光学システム、反射光学システム、反射屈折光学システム、磁気光学システム、電磁気光学システム及び静電気光学システム、又はその任意の組合せを含む任意のタイプの投影システムを網羅するものとして広義に解釈されるべきである。本明細書において「投影レンズ」という用語を使用した場合、これはさらに一般的な「投影システム」という用語と同義と見なすことができる。
【0026】
[0048] 本明細書で示すように、本装置は透過タイプである(例えば透過マスクを使用する)。あるいは、装置は反射タイプでもよい(例えば上記で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイを使用する、又は反射マスクを使用する)。
【0027】
[0049] リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)又はそれ以上の基板テーブル(及び/又は2つ以上のマスクテーブル)を有するタイプでよい。このような「マルチステージ」機械においては、追加のテーブルを並行して使用するか、1つ又は複数の他のテーブルを露光に使用している間に1つ又は複数のテーブルで予備工程を実行することができる。
【0028】
[0050] リソグラフィ装置は、投影システムと基板との間の空間を充填するように、基板の少なくとも一部を水などの比較的高い屈折率を有する液体で覆えるタイプでもよい。液浸液は、例えばマスクと投影システムの間など、リソグラフィ装置の他の空間に適用することもできる。液浸技術は、投影システムの開口数を増加させるために当技術分野で周知である。本明細書で使用する「液浸」という用語は、基板などの構造を液体に沈めなければならないという意味ではなく、露光中に投影システムと基板の間に液体が存在するというほどの意味である。
【0029】
[0051] 図1を参照すると、イルミネータILは放射源SOから放射ビームを受ける。放射源とリソグラフィ装置とは、例えば放射源がエキシマレーザである場合に、別々の構成要素であってもよい。このような場合、放射源はリソグラフィ装置の一部を形成すると見なされず、放射ビームは、例えば適切な誘導ミラー及び/又はビームエクスパンダなどを備えるビームデリバリシステムBDの助けにより、放射源SOからイルミネータILへと渡される。他の事例では、例えば放射源が水銀ランプの場合は、放射源がリソグラフィ装置の一体部分であってもよい。放射源SO及びイルミネータILは、必要に応じてビームデリバリシステムBDとともに放射システムと呼ぶことができる。
【0030】
[0052] イルミネータILは、放射ビームの角度強度分布を調整するアジャスタADを備えていてもよい。通常、イルミネータの瞳面における強度分布の外側及び/又は内側半径範囲(一般にそれぞれ、σ-outer及びσ-innerと呼ばれる)を調整することができる。また、イルミネータILは、インテグレータIN及びコンデンサCOなどの他の種々のコンポーネントを備えていてもよい。イルミネータを用いて放射ビームを調節し、その断面にわたって所望の均一性と強度分布とが得られるようにしてもよい。
【0031】
[0053] 放射ビームBは、支持構造(例えば、マスクテーブルMT)上に保持されたパターニングデバイス(例えば、マスクMA)に入射し、パターニングデバイスによってパターニングされる。マスクMAを横断した放射ビームBは、投影システムPSを通過し、投影システムPLは、ビームを基板Wの目標部分C上に合焦させる。第二ポジショナPWと位置センサIF(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ又は容量センサ)の助けを借りて、基板テーブルWTは、例えば、様々な目標部分Cを放射ビームBの経路に位置決めできるように正確に移動できる。同様に、第一ポジショナPMと別の位置センサ(図1には明示されていない)を用いて、マスクライブラリからの機械的な取り出し後又はスキャン中などに放射ビームBの経路に対してマスクMAを正確に位置決めできる。一般に、マスクテーブルMTの移動は、第一ポジショナPMの部分を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)及びショートストロークモジュール(微動位置決め)の助けにより実現できる。同様に、基板テーブルWTの移動は、第二ポジショナPWの部分を形成するロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールを用いて実現できる。ステッパの場合(スキャナとは対照的に)、マスクテーブルMTをショートストロークアクチュエータのみに接続するか、又は固定してもよい。マスクMA及び基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を使用して位置合わせすることができる。図示のような基板アライメントマークは、専用の目標部分を占有するが、目標部分の間の空間に位置してもよい(スクライブレーンアライメントマークとして周知である)。同様に、マスクMA上に複数のダイを設ける状況では、マスクアライメントマークをダイ間に配置してもよい。
【0032】
[0054] 図示のリソグラフィ装置は、以下のモードのうち少なくとも1つにて使用可能である。
1.ステップモードにおいては、マスクテーブルMT及び基板テーブルWTは、基本的に静止状態に維持される一方、放射ビームに与えたパターン全体が1回で目標部分Cに投影される(すなわち単一静的露光)。次に、別の目標部分Cを露光できるように、基板テーブルWTがX方向及び/又はY方向に移動される。ステップモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一静的露光で結像される目標部分Cのサイズが制限される。
2.スキャンモードにおいては、マスクテーブルMT及び基板テーブルWTは同期的にスキャンされる一方、放射ビームに与えられるパターンが目標部分Cに投影される(すなわち単一動的露光)。マスクテーブルMTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影システムPLの拡大(縮小)及び像反転特性によって求めることができる。スキャンモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一動的露光における目標部分の(非スキャン方向における)幅が制限され、スキャン動作の長さによって目標部分の(スキャン方向における)高さが決まる。
3.別のモードでは、マスクテーブルMTはプログラマブルパターニングデバイスを保持して基本的に静止状態に維持され、基板テーブルWTを移動又はスキャンさせながら、放射ビームに与えられたパターンを目標部分Cに投影する。このモードでは、一般にパルス状放射源を使用して、基板テーブルWTを移動させる毎に、又はスキャン中に連続する放射パルスの間で、プログラマブルパターニングデバイスを必要に応じて更新する。この動作モードは、以上で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイなどのプログラマブルパターニングデバイスを使用するマスクレスリソグラフィに容易に利用できる。
【0033】
[0055] 上述した使用モードの組合せ及び/又は変形、又は全く異なる使用モードも利用できる。
【0034】
[0056] 図2に示すように、リソグラフィ装置LAは、リソセル又はクラスタとも呼ばれることがあるリソグラフィセルLCの一部を形成し、それは基板上で露光前及び露光後プロセスを実行する装置も含む。従来、これらはレジスト層を堆積させるスピンコータSC、露光されたレジストを現像する現像器DE、チルプレートCH及びベークプレートBKを含む。基板ハンドラ、すなわちロボットROは入力/出力ポートI/O1、I/O2から基板を取り上げ、それを様々なプロセス装置間で移動させ、次にリソグラフィ装置のローディングベイ(loading bay)LBに送出する。多くの場合まとめてトラックと呼ばれるこれらのデバイスは、トラック制御ユニットTCUの制御下にあり、それ自体は監視制御システムSCSによって制御され、それはリソグラフィ制御ユニットLACUを介してリソグラフィ装置も制御する。したがってスループット及び処理の効率を最大化するために様々な装置を動作させることができる。
【0035】
[0057] リソグラフィ装置によって露光される基板が正確かつ一貫して露光されるために、露光した基板を検査し、後続層間のオーバレイ誤差、ラインの太さ、クリティカルディメンション(CD)などのような特性を測定することが望ましい。誤差が検出された場合は、特に同じバッチの他の基板がまだ露光されないほど十分即座にかつ高速で検査を実行できる場合は、後続基板の露光を調節することができる。また、既に露光した基板を(歩留まりを改善するために)取り外して再加工するか、又は廃棄し、それにより欠陥があることが分かっている基板で露光を実行するのを回避することができる。基板の幾つかのターゲット部分のみに欠陥がある場合、良好であるそれらのターゲット部分のみでさらなる露光を実行することができる。
【0036】
[0058] 基板の特性を、特に異なる基板又は同じ基板の異なる層の特性が層ごとにいかに変化するかを決定するために、検査装置が使用される。検査装置をリソグラフィ装置LAに組み込むことができる、又はリソセルLCは独立型デバイスとすることができる。最も迅速な測定を可能にするために、検査装置は露光直後に露光したレジスト層の特性を測定することが望ましい。しかし、レジストの潜像はコントラストが非常に低く、(放射に露光してあるレジストの部分と露光していない部分との間には屈折率の非常に小さい差しかない)全ての検査装置が、潜像を有用に測定するほど十分な感度を有しているわけではない。したがって、露光後ベークステップ(PEB)の後に測定を実行することができ、これは通常は露光した基板で実行する最初のステップであり、レジストの露光部分と非露光部分との間のコントラストを増大させる。この段階で、レジストの像を半潜像と呼ぶことができる。現像したレジスト像で(その時点でレジストの露光部分又は非露光部分は除去されている)又はエッチングなどのパターン転写ステップの後で測定することも可能である。後者の見込みは、欠陥がある基板を再加工する見込みを制限するが、それでも有用な情報を提供することができる。
【0037】
[0059] 図3は、本発明のある実施形態に使用できるスキャトロメータを示す。これは、放射を基板Wに投影する広帯域(白色光)放射プロジェクタ2を備える。反射した放射はスペクトロメータ検出器4へと渡され、これは鏡面反射した放射のスペクトル10(波長の関数としての強度)を測定する。このデータから、検出されるスペクトルを生じる構造又はプロファイルを処理ユニットPUによって再構築することができる。先行技術のスキャトロメータでは、これは、RCWA(Rigorous Coupled Wave Analysis)及び非線形回帰によって、又は図3の下部に図示されたようなシミュレートしたスペクトルのライブラリとの比較によって実行することができる。本発明によるスキャトロメータでは、ベクトル積分方程式を使用する。概して、再構築するために構造の全体的形状を知り、幾つかのパラメータは、構造を作成したプロセスの知識から仮定して、スキャトロメータのデータから決定するべき構造のパラメータはわずかしか残らない。このようなスキャトロメータは、垂直入射スキャトロメータ又は斜め入射スキャトロメータとして構成することができる。
【0038】
[0060] 本発明のある実施形態で使用できる別のスキャトロメータが、図4に示されている。このデバイスでは、放射源2によって放出された放射が、レンズシステム12を使用して干渉フィルタ13及び偏光器17を通して集束し、部分反射面16によって反射して、好ましくは少なくとも0.9、さらに好ましくは少なくとも0.95の高い開口数(NA)を有する顕微鏡の対物レンズ15を介して基板Wに集束する。液浸スキャトロメータは、開口数が1を超えるレンズを有することさえある。反射した放射は次に、散乱スペクトルを検出させるために部分反射面16を通って検出器18内に伝達される。検出器は、レンズシステム15の焦点距離にある逆投影された瞳面11に位置付けることができるが、瞳面は、代わりに補助光学系(図示せず)で検出器に再結像することができる。瞳面は、放射の半径方向位置が入射角度を画定し、角度位置が放射の方位角を画定する面である。検出器は、基板ターゲット30の2次元角度散乱スペクトルを測定できるように、2次元検出器であることが好ましい。検出器18は、例えばCCD又はCMOSセンサのアレイでよく、例えば1フレーム当たり40ミリ秒の積分時間を使用することができる。
【0039】
[0061] 例えば、入射放射の強度を測定するために、基準ビームを使用することが多い。そのために、放射ビームがビームスプリッタ16に入射すると、その一部がビームスプリッタを通って基準ビームとして基準ミラー14に向かって伝達される。次に、基準ビームは同じ検出器18の異なる部分へと投影される。
【0040】
[0062] 例えば405〜790nm又はさらに低く、200〜300nmなどの範囲の対象となる波長を選択するために、1組の干渉フィルタ13が使用可能である。干渉フィルタは、1組の様々なフィルタを備えるのではなく、調整可能とすることができる。干渉フィルタではなく格子を使用することができる。
【0041】
[0063] 検出器18は、1つの波長(又は狭い波長範囲)で散乱光の強度を、複数の波長で別個に、又はある波長範囲にわたって積分された強度を測定することができる。さらに、検出器は横方向磁気光及び横方向電気分極光の強度及び/又は横方向磁気光と横方向電気分極光の位相差を別個に測定することができる。
【0042】
[0064] 広帯域光源(すなわち光の周波数又は波長、したがって色の範囲が広い光源)を使用することが可能であり、これは大きいエタンデュを生じ、複数の波長を混合できるようにする。広帯域の複数の波長は、好ましくはそれぞれΔλの帯域幅及び少なくとも2Δλ(すなわち帯域幅の2倍)の間隔を有する。幾つかの放射「源」は、ファイバ束を使用して分割されている延在した放射源の様々な部分でもよい。この方法で、角度分解散乱スペクトルを複数の波長で平行して測定することができる。3次元スペクトル(波長と2つの異なる角度)を測定することができ、これは2次元スペクトルより多くの情報を含む。これによって、より多くの情報を測定することができ、それはメトロロジープロセスのロバスト性を高める。このことは、参照により全体を本明細書に組み込むものとするEP1,628,164Aでさらに詳細に説明されている。
【0043】
[0065] 基板W上のターゲット30は格子でよく、それは現像後にバーがレジストの実線で形成されるように印刷される。バーは、代替的に基板にエッチングしてもよい。このパターンは、リソグラフィ投影装置、特に投影システムPLの色収差に敏感であり、照明の対称性及びこのような収差の存在は、印刷された格子の変化に現れる。したがって、印刷された格子のスキャトロメータデータを使用して、格子を再構築する。線の幅及び形状などの格子のパラメータは、印刷ステップ及び/又は他のスキャトロメータのプロセスの知識から、処理ユニットPUによって実行される再構築プロセスに入力することができる。
【0044】
[0066] 上述したように、ターゲットは基板の表面上にある。このターゲットは、格子又は2次元アレイの実質的に長方形の構造における一連の線という形状をとることが多い。メトロロジーにおける厳密な光回折理論(rigorous optical diffraction theories)の目的は、ターゲットから反射した回折スペクトルを効率的に計算することである。すなわち、CD(クリティカルディメンション)の均一性及びオーバレイメトロロジーのために、ターゲット形状の情報を入手する。オーバレイメトロロジーは、基板の2つの層が位置合わせされているか否かを判定するために、2つのターゲットのオーバレイを測定する測定システムである。CDの均一性とは、リソグラフィ装置の露光システムがいかに機能しているかを決定するために、単にスペクトル上で格子の均一性を測定することである。特にCD、すなわちクリティカルディメンションとは基板上に「書かれた」オブジェクトの幅(例えば図5に示すターゲットの幅)であり、リソグラフィ装置が物理的に基板上に書くことができる限界である。
【0045】
[0067] ターゲット形状(マーク形状とも呼ぶ)の測定方法は通常、1次元周期構造について、図5を参照して以下のように実行される。すなわち、ターゲットの形状を推定する。この推定形状にα(0)、β(0)、χ(0)などの異なるパラメータを与える。これらのパラメータはそれぞれ、例えば各側壁の角度、ターゲットの最上部の高さ、ターゲットの最上部における幅、ターゲットの底部における幅などでよい。
【0046】
[0068] 通常、先行技術のデバイスでは、RCWAなどの厳密な光回折法を使用して、推定されたターゲット形状の推定回折パターン又はモデル回折パターンなどの散乱特性を計算する。推定又はモデル回折パターンの代わりに、又はそれを入手するために、推定又はモデル反射又は透過係数などの他の電磁散乱特性を使用することができる。
【0047】
[0069] 次に、基板上のターゲットを放射ビームで照明し、回折ビームを検出することによって、基板上にある実際のターゲットの回折パターンを測定し、そのパターンはターゲットの特性に依存する。この測定回折パターン及びモデル回折パターンを、コンピュータなどの計算システムに転送する。
【0048】
[0070] 次に、測定された回折パターン及びモデル回折パターンを比較し、差があれば全て「メリット関数」計算に送り込む。
【0049】
[0071] 特定のターゲットパラメータの感度を回折パターンの形状に関連付けるメリット関数を使用して、新しい形状パラメータを推定する。これは図5の底部形状にさらに近い形状を生成することができ、これはα(0)、β(1)、χ(1)などの新しいパラメータを有する。これらをステップ1に反復的に送り戻し、所望の精度を達成するまでステップ1から5を反復し、それにより近似オブジェクト構造を決定する。
【0050】
[0072] この反復プロセスの計算時間は主に、順方向回折モデルによって、すなわち推定されたターゲット形状から厳密な光回折理論を使用して推定モデル回折パターンを計算することによって決定される。
【0051】
[0073] 様々な推定ターゲット形状について複数のモデル回折パターンを計算し、ステップ2でライブラリに格納することができる。次にステップ4で、測定回折パターンをステップ2で生成したライブラリのモデル回折パターンと比較する。一致が見られた場合は、次に一致するライブラリパターンを生成するために使用した推定ターゲット形状が、近似オブジェクト構造であると決定することができる。したがって、ライブラリを使用し、一致が見られる場合は、反復する必要がないことがある。あるいは、ライブラリ検索を使用して形状パラメータの粗い組を決定し、その後にメリット関数を使用して1回又は複数回反復し、近似オブジェクト構造を決定するように形状パラメータのさらに正確な組を決定する。
【0052】
[0074] 2次元周期構造のCD再構築には、通例、順方向回折モデルにRCWAを使用するが、体積積分法(VIM)、時間領域有限差分法(FDTD)、及び有限要素法(FEM)も報告されている。
【0053】
[0075] RCWA内でスペクトル離散化方式を使用する。このスペクトル離散化の収束を改良するために、いわゆるリーの法則が適用される[3,4]。あるいは、法線ベクトル場形式[6]を使用して、スペクトル離散化の収束を改良することができる[7,8]。
【0054】
[0076] RCWAの主要な問題の1つは、2次元周期構造のために大量の中央処理装置(CPU)の時間及びメモリが必要なことである。というのは、固有値/固有ベクトルのシーケンスの問題を解き、連結する必要があるからである。FDTD及びFEMの場合、CPUの時間も通常は長すぎる。
【0055】
[0077] (両方とも参照により全体を本明細書に組み込むものとする[2]、米国特許第6,867,866B1号及び米国特許第7,038,850B2号で開示されているような)既存の体積積分法は、メッシュ細分に関して遅い収束を示す全空間離散化方式に、又は高調波の数の増加に関して不良な収束を示すスペクトル離散化方式に基づく。代替法として、収束を改良するために発見的方法を組み込んだスペクトル離散化方式が提案されている[2]。
【0056】
[0078] VIMのために解くべき線形系は、RCWAと比較してはるかに大きいが、反復的な方法で解く場合は、幾つかのベクトルの記憶とともに行列ベクトル積しか必要ではない。したがって、RCWAではメモリの使用量が通常ははるかに少なくなる。障害となり得るのは、行列ベクトル積自体の速度である。VIMにリーの法則を適用すべき場合は、幾つかの逆部分行列が存在するので、行列ベクトル積がはるかに遅くなる。あるいは、リーの法則を無視し、FFTを使用して、高速行列ベクトル積に到達することができるが、不良な収束の問題が残る。
【0057】
[0079] 本発明は、改良型体積積分法(VIM)の実施形態に関する。本発明のある実施形態を使用して、レジスト格子上の現実的な2次元周期的CD再構築が、RCWAより10倍から100倍高速であることが実証されている一方、メモリの使用量はRCWAより10倍から100倍少ない。本発明を詳細に説明する前に、本発明によって提供される速度の改良を図示する図6及び図7を参照しながら、結果を提示する。
【0058】
[0080] 図6は、従来のRCWA602と本発明のある実施形態による体積積分法(VIM)604について、精度対処理時間を図示するグラフを示す。図6は、レジスト構造での1次反射係数のモデルの結果を示す。縦軸は、|Rp−Rp*|/|Rp*|によって与えられる相対誤差REであり、ここでRpは平行分極(電場が入射面に平行である)の反射係数であり、Rp*は5桁の精度を達成するのに十分なモードでのRCWAの収束した解である。横軸は秒単位の中央処理装置(CPU)の時間tであり、これはVIMの式に対応する線形系を1つ解く時間である。RCWAの結果のグラフ602は、グラフ604によって示された本発明のある実施形態によるVIMの結果より長いCPU時間を示す。例えば、10−2の相対誤差では、矢印606によって指示されているように、本発明のこの実施形態によって与えられるCPU時間に20倍の改良がある。したがって図6は、相対誤差(又は精度)の全範囲にわたって、本発明は1つの解を計算するCPU時間の短縮につながることができることを示す。CPU時間の短縮は、本発明を実際に適用するために非常に重要である。通常、その目的は約1秒で通常は14,000の解を終了することである。1秒がターゲットとなるのは、これが生産環境においてウェーハ上で連続的なスキャトロメータ測定を実行する時間だからである。このような短時間で計算を終了することにより、ウェーハの生産プロセスを減速せずにリアルタイムの分析を実行することが可能である。14,000という数字は、180という散乱角度に変更すべきモデルのパラメータ数(6又は7)を掛け、入射波の2つの独立分極を掛け、ターゲットの実際の形状を推定するために6の非線形解を掛けることによる。図6のデータは、図21及び図22に提示して以下で検討するデータを導出するために使用したものと同じデータセットから導出される。
【0059】
[0081] 図7は、図6に示したものと類似のデータであるが、モデル化したシリコン構造及び0次反射係数のグラフを示す。同じ軸を使用するが、相対誤差の縦軸の対象となる範囲が狭くなり、時間の横軸の対象となる範囲が広くなっている。グラフ702はRCWAの結果であり、グラフ704は、本発明のある実施形態によるVIMを使用した結果である。この場合も、10−2の相対誤差に関して、矢印706で示すように本発明によって与えられるRCWAに対して20倍の改良がある。
【0060】
[0082] 図8は、本発明のある実施形態により再構築できる散乱幾何学的形状を概略的に図示している。基板802は、z方向に層状になった媒体の下部分である。他の層804及び806が示されている。x及びyに周期的な2次元格子808が、層状媒体の最上部に示されている。x、y及びz軸は810でも示されている。入射場812が構造802から808と相互作用し、それによって散乱し、反射場814をもたらす。したがって構造は少なくとも一方向x、yで周期的であり、異なる材料の間の材料境界において、入射場Einc及び散乱場ES、電磁場の成分の総和を備える電磁場Etotに不連続部を引き起こすように、様々な特性の材料を含む。
【0061】
[0083] 図9は、背景の構造を示し、入射場と層状媒体の相互作用を計算するために使用できるグリーン関数を概略的に図示する。層状媒体802から806は、図8と同じラベルが与えられている。x、y及びz軸も、入射場812とともに810で示されている。正反射場902も示されている。点源(x’,y’,z’)904は、グリーンの関数と場906を生成する背景との相互作用を表す。この場合、点源904が最上層806より上にあるので、周囲の媒体との最上界面806からの背景反射908が1つのみである。点源が層状媒体内にある場合は、上方向と下方向の両方に背景反射がある(図示せず)。
【0062】
[0084] 解くべきVIMの式は以下の通りである。
【数1】
【0063】
[0085] この式では、入射場Eincは入射角、分極及び振幅の既知の関数であり、Etotは未知で解が計算される全電場であり、Jcはコントラスト電流密度であり、=Gはグリーンの関数(3×3の行列)であり、χは(εr(x,y,z,)/εr,bac(z)−1)によって与えられるコントラスト関数であり、ここでεrは構造の比誘電率、εr,bacは背景媒体の比誘電率、χは格子の外側ではゼロである。
【0064】
[0086] グリーンの関数=G(x,x’,y,y’,z,z’)は、802から806を含む層状媒体について知られており、計算可能である。グリーンの関数は、xy面における畳み込み及び/又はモード分解(m1,m2)を示し、=Gのz軸に沿った主要な計算上の負担は畳み込みである。
【0065】
[0087] 離散の場合、全電場はブロッホ/フロケモードでxy面に拡張する。χを掛けると、(a)xy面における離散畳み込み(2次元FFT)及び(b)zにおける積になる。xy面におけるグリーンの関数の相互作用は、モード毎の相互作用である。zにおけるグリーンの関数の相互作用は、1次元(1D)FFTと複雑さO(NlogN)で実行できる畳み込みである。
【0066】
[0088] xyにおけるモード数はM1M2であり、zにおけるサンプル数はNである。
【0067】
[0089] 効率的な行列とベクトルの積は複雑さO(M1M2Nlog(M1M2N))を有し、記憶の複雑さはO(M1M2N)である。
【0068】
[0090] 反復的ソルバを使用し、クルイロフの部分空間法に基づいてAx=bのVIM解決法を実行する。例えばBiCGstab(1)法(Stabilized BiConjugate Gradient method)であり、これは通常、以下のステップを有する。
剰余誤差がrn=b−Axnと定義されるように定義する
剰余誤差を介して更新ベクトルνnを計算する
解を更新する:xn+1=xn+αnνn
剰余誤差を更新するrn+1=rn−αnAνn
【0069】
[0091] 図10は、VIM式に対応する線形系を解く高レベルの方法のフローチャートである。これは、体積積分を数値的に解くことによって構造の電磁散乱特性を計算する方法である。最高レベルでは、最初のステップは前処理1002であり、入力を読み、FFTを準備することを含む。次のステップは、解1004を計算することである。最後に、反射係数を計算する後処理1006を実行する。ステップ1004は様々なステップを含み、これは図10の右手側にも示されている。これらのステップは、入射場の計算1008、グリーンの関数の計算1010、更新ベクトルの計算1012、解及び剰余誤差の(例えばBiCGstabを使用した)更新1014、及び収束に到達したかを見る試験1016である。収束に到達していない場合は、制御が、更新ベクトルの計算であるステップ1012にループして戻る。
【0070】
[0092] 図11は、図10のステップ1012に対応する更新ベクトルの計算ステップを図示し、先行技術で知られている通りの体積積分法を使用し、これは電場Eの体積積分方程式を数値的に解くことによって構造の電磁散乱特性を計算する方法である。
【0071】
[0093] ステップ1102は、4次元(4D)アレイ内でベクトルを再編成する。このアレイでは、第1次元は3つの要素Ex、Ey及びEzを有する。第2次元はm1の全値の要素を有する。第3次元は、m2の全値の要素を有する。第4次元はzの各値の要素を有する。したがって4Dアレイは、全電場(Ex,Ey,Ez)(m2,m2,z)の(xy面における)スペクトル表示を記憶する。図11のステップ1102から下がる3つの平行な点線の矢印は、それぞれEx、Ey及びEzに1つずつ、各層zで実行されるステップ1104から1110による3つの2Dアレイの処理に対応する。これらのステップは、材料特性で電場(Ex,Ey,Ez)(m2,m2,z)の(xy面における)スペクトル表示の畳み込みを実行し、下式(1.3)に対応するコントラスト電流密度の(xy面における)スペクトル表示を計算する。詳細には、ステップ1104は、3つの2Dアレイ(2次元はm1及びm2に関する)を取り出すことを含む。ステップ1106で、3つのアレイのそれぞれについて2DのFFTを順方向に計算し、空間領域にする。ステップ1108で、3つのアレイそれぞれに、フーリエ表示の打ち切りによってフィルタリングしたコントラスト関数χ(x,y,z)の空間表示を掛ける。畳み込みは、ステップ1110で2DのFFTを(xy面における)スペクトル領域に戻し、スペクトルコントラスト電流密度(Jcx,Jcy,Jcz)(m1,m2,z)を生じることで終了する。ステップ1112で、計算したスペクトルコントラスト電流密度を4Dアレイに戻す。
【0072】
[0094] 次にモードごとに(すなわちzにおける全サンプルポイントで同時に)、ステップ1114から1122を実行する。ステップ1116の横から下がる3つの平行な点線の矢印は、下式(1.1)で積分項を計算することに対応し、これはコントラスト電流密度との背景相互作用であり、それ自体は構造との全電場の相互作用から生じる。これは、(z方向に関する)スペクトル領域での乗法を使用し、(z方向に関する)空間グリーンの関数での(Jcx,Jcy,Jcz)(m1,m2,z)の畳み込みによって実行される。
【0073】
[0095] 詳細には、ステップ1114でスペクトルコントラスト電流密度(Jcx,Jcy,Jcz)(m1,m2,z)をx、y及びzのそれぞれについて3つの1Dアレイとして取り出す。ステップ1116で、3つのアレイのそれぞれについて1DのFFTを順方向に計算して、z方向に関するスペクトル領域にし、(Jcx,Jcy,Jcz)(m1,m2,kz)を生成することによって、畳み込みを開始し、ここでkzはz方向に関するフーリエ変数である。ステップ1118で、コントラスト電流密度の打ち切ったフーリエ変換に、(z方向に関する)スペクトル領域内で空間グリーン関数=gfreeのフーリエ変換を掛ける。ステップ1120で、1DのFFTを逆方向に実行し、z方向に関する空間領域にする。ステップ1122で、zに関する空間領域内の背景反射(図9の908参照)を加える。このようにグリーン関数から背景反射を分離することは従来からの技術であり、このステップは、当業者に認識されるように、ランク1の投影を加えることによって実行することができる。各モードが処理されるので、このように計算された全電場(Ex,Ey,Ez)(m2,m2,z)の更新ベクトルをステップ1124で4Dアレイに戻す。
【0074】
[0096] 次のステップは、ベクトル内で4Dアレイを再編成し1126、これはステップ1102「4Dアレイ内でベクトルを再編成する」とは、逆の動作であるという点で異なり、各1次元指数は4次元指数に一意に関連する。最後にステップ1128で、ステップ1126からのベクトル出力を入力ベクトルから引き、これは式(1.1)の右手側の減算に対応する。入力ベクトルは、図11のステップ1102で入るベクトルであり、(Ex,Ey,Ez)(m2,m2,z)を含む。
【0075】
[0097] 図11で説明した方法の問題は、RCWAの結果に対して図10の方法を使用して収束のプロットを示す図19に関して以下で実証するように、不良な収束につながることである。この不良な収束は、打ち切ったフーリエ空間表示の誘電率及び電場に同時発生する飛越しによって引き起こされる。以上で検討したように、VIM法では、収束の問題を克服するためにリーの逆法則は適切ではない。というのは、VIMでは逆法則の複雑さが、VIMの数値的解に必要な大量の逆演算のせいで非常に大きい計算上の負担につながるからである。本発明の実施形態は、リーによって説明されたような逆法則の使用に頼ることなく、同時発生の飛越しによって引き起こされる収束の問題を克服する。逆法則を回避することにより、本発明はVIMのアプローチで反復的に線形系を解くために必要な行列ベクトル積の効率を犠牲にしない。
【0076】
[0098] 図12は、VIMの式を数値的に解くために連続的なベクトル場を使用する本発明のある実施形態を図示する。これは、基底の変換によって電場Eに関連するベクトル場Fの体積積分方程式を数値的に解くことを含み、ベクトル場Fは、ベクトル場Fの近似解を決定するように、1つ又は複数の材料境界にて連続している。ベクトル場Fが、少なくとも1つの方向x、yに対する少なくとも1つの有限フーリエ級数によって表され、体積積分方程式を数値的に解くステップは、畳み込み及び基底変換演算子Cでのベクトル場Fの畳み込みによって電場Eの成分を決定するステップと、畳み込み演算子Mでのベクトル場Fの畳み込みによって電流密度Jを決定するステップとを含む。畳み込み及び基底変換演算子Cは可逆的であり、少なくとも1つの方向x、yで構造の材料及び幾何学的特性を備え、材料及び幾何学的特性に従って基底変換を実行することにより、ベクトル場Fを電場Eに変換するように構成される。畳み込み演算子Mは、少なくとも一方向x、yで構造の材料及び幾何学的特性を備える。電流密度Jはコントラスト電流密度でよく、少なくとも1つの方向x、yに関する少なくとも1つの有限フーリエ級数で表される。畳み込みは、高速フーリエ変換(FFT)及び整数論変換(NTT)を含む組から選択されるような変換を使用して実行される。畳み込み及び基底変換演算子C及び畳み込み演算子Mは、有限の結果を生成するように有限の離散的畳み込みに従って演算する。
【0077】
[0099] 図12は、中間ベクトル場FについてVIMシステムを解くステップ1202を示し、後処理ステップ1204は畳み込み及び基底変換演算子Cでベクトル場Fの近似解を畳み込むことによって全電場Eを得る。畳み込みは、高速フーリエ変換(FFT)及び整数論変換(NTT)を含む組から選択されるような変換を使用して実行することができる。図12は、右手側にVIMシステムを反復的に解くために効率的な行列ベクトル積1206から1216を実行する略図も示す。これは、ステップ1206の中間ベクトル場Fで開始する。初めてFを設定する時には、それをゼロから開始することができる。その初期のステップの後、Fの推定は反復的ソルバ及び残差によって誘導される。次に、z方向の各サンプル点について2DのFFTにより中間ベクトル場Fでの畳み込み及び基底変換演算子Cの畳み込みを使用して、全電場Eを計算する1208。畳み込み及び基底変換演算子Cは、中間ベクトル場Fの基底を全電場Eの基底に変換するように構成される。また、ステップ1210で、中間ベクトル場Fでの材料畳み込み演算子Mの畳み込みを使用して、コントラスト電流密度Jを計算する。ステップ1210は、zの各サンプル点で実行され、畳み込みは2DのFFTにより実行される。ステップ1212では、畳み込み及びグリーン関数Gとコントラスト電流密度Jとの間のランク1の投影を計算して、散乱電場ESを生成する。畳み込みは、高速フーリエ変換(FFT)及び整数論変換(NTT)を含む組から選択されるような変換を使用して実行することができる。演算1214は、Eから2つの計算結果ESを引き、Eincの近似を得る1216。ステップ1202及び1206から1216は、以下で検討するように式(1.4)に対応する。ステップ1206から1216は更新ベクトルを生成するので、後処理ステップ1204を使用して、全電場Eの最終値を生成する。
【0078】
[0100] 全電場Eを計算するために、別個の後処理ステップ1204ではなく、ステップ1208ですべての更新ベクトルの総和を記録することができる。しかし、そのアプローチは方法の記憶要件を増大させ、その一方、後処理ステップ1204は反復的ステップ1206から1216と比較して、記憶又は処理時間の点で高くつかない。
【0079】
[0101] 図13は、本発明のある実施形態による更新ベクトルの計算のフローチャートである。図13のフローチャートは、図12の右手側(ステップ1206から1216)に対応する。
【0080】
[0102] ステップ1302で、4Dアレイ内でベクトルを再編成する。次に、zのサンプル点ごとにステップ1304から1318を実行する。ステップ1304では、3つの2Dアレイを4Dアレイから取り出す。これらの3つの2Dアレイ(Ft1,Ft2,Fn)(m1,m2,z)はそれぞれ、(下式(2.44)で説明するような)連続的なベクトル場Fの2つの接線成分Ft1、Ft2及び法線成分Fnに対応し、それぞれがm1及びm2に対応する2次元を有する。したがってベクトル場Fは、法線ベクトル場nを使用して少なくとも1つの材料境界に対して接線方向の電磁場Eの連続的成分をフィルタリングし、また少なくとも1つの材料境界に対して法線方向の電磁束密度Dの連続的成分をフィルタリングすることによって、電磁場E及び対応する電磁束密度Dの場の成分の組合せから構築される。ステップ1306で、(Ft1,Ft2,Fn)(m1,m2,z)で表されるスペクトル連続ベクトル場の畳み込みが、2DのFFTをステップ1306で順方向に計算し、(Ft1,Ft2,Fn)(x,y,z)で表される3つのアレイのそれぞれについて空間領域にすることによって開始する。ステップ1308では、ステップ1306から取得したフーリエ変換(Ft1,Ft2,Fn)(x,y,z)に、空間領域内で空間乗法演算子C(x,y,z)を掛ける。ステップ1310では、ステップ1308で取得した積を2DのFFT逆方向によってスペクトル領域に変換する。次に、ステップ1312でスペクトル全電場(Ex,Ey,Ez)を4Dアレイに戻す。さらに、コピーを以下で検討する減算演算1322へと順方向に送り込む。
【0081】
[0103] ステップ1314では、ステップ1306から取得したフーリエ変換(Ft1,Ft2,Fn)(x,y,z)に空間領域内で乗算演算子Mを掛ける。ステップ1314の計算の積をステップ1316で、2DのFFT逆方向によってスペクトル領域に変換し、(Jcx,Jcy,Jcz)(m1,m2,z)で表されるスペクトルコントラスト電流密度を生成する。ステップ1318で、スペクトルコントラスト電流密度を4Dアレイに戻す。
【0082】
[0104] 既知の入射電場Eincの近似の計算を終了するために、ステップ1114から1122で、図11の対応する同一の番号のステップに関して説明したのと同じ方法でモードm1、m2ごとにグリーン関数と背景との相互作用を計算する。
【0083】
[0105] ステップ1320では、背景=Gのスペクトルグリーン関数及びスペクトルコントラスト電流密度Jの結果としての畳み込みを4Dアレイに戻す。最後にステップ1322で、既知の入射電場Eincの近似の計算を、ステップ1312から順方向に送り込まれた全電場からステップ1320の結果を引くことで終了し、最終ステップ1324はベクトル内で4Dアレイを再編成する。すなわち4Dアレイの各4次元指数はベクトルの1次元指数に一意に関連付けられる。
【0084】
[0106] 図14は、本発明のある実施形態による方法を実行するために、プログラム及びデータで構成されたコンピュータシステムを概略的形態で示す。コンピュータシステムは、中央処理装置(CPU)1502、及びプログラムの実行中にプログラム命令1506及びデータ1508を記憶するために使用されるランダムアクセスメモリ(RAM)1504を備える。コンピュータシステムは、プログラムの実行前及び実行後にプログラム命令及びデータを記憶するために使用されるディスク記憶装置1510も含む。
【0085】
[0107] プログラム命令1506は高速フーリエ変換ルーチン1512、行列乗算関数1514、加算及び減算1516などの他の算術関数、及びアレイ編成関数1518を含む。データ1508は、VIMシステムを解く計算中に使用される4Dアレイ1520及び2Dアレイ1522を備える。入力及び出力用の他の従来からのコンピュータコンポーネントは示されていない。
【0086】
[0108] 図15は、均質な半分の空間上に楕円形の断面があるバイナリ格子セルの上面図1502及び側面図1504を示す。
【0087】
[0109] 図16は、均質な半分の空間上に楕円形の断面がある階段状格子セルの上面図1602及び側面図1604を示す。
【0088】
[0110] 図17は、次元ごとに奇数1706(白い支持体)及び偶数1708(中実/影の支持体)の投影演算子を導入することによって横断面内の階段状近似1704によって楕円1702を近似する手順を示す。一方向の投影演算子に他方向の投影演算子を掛けることにより、隔離されたボックスのパターンが現れる。これによって各隔離ボックスの支持体上に適切な挙動を有する連続関数を構築することができる。
【0089】
[0111] 図18は、ベンチマークモデル構造を示す。格子の1つのセルが、シリコン基板1802、底反射防止コーティング(BARC)1804及びレジスト格子要素1806で示されている。
【0090】
[0112] 放射及びモデルパラメータは以下の通りである。
波長:λ=500nm
ピッチx&y:λ×λ=500nm、×500nm
フットプリント:0.15λ×0.15λ=75nm×75nm
高さ:0.436λ=218nm
充填:レジスト
背景:Si上にBARC(90nm)
θ,φ:8.13°、45°
分極:平行
ここでθは、z軸に対する入射角であり、φは入射放射の方位角である。
【0091】
[0113] 図19は、図11に関して説明した方法を使用して計算する先行技術のVIMシステムの収束結果対RCWAの計算を示す。図11の縦軸は|Rp−Rp*|/|Rp*|によって与えられる相対誤差REであり、ここでRpは平行分極の反射係数であり、電場は入射面に平行であり、Rp*は5桁の精度を達成するのに十分なモードでのRCWAの収束解である。横軸はモード数NMであり、これは一方向で打ち切ったフーリエ級数の項の数であり、他の方向で同一のモード数を使用する。幾つかのグラフが示され、それぞれがzで異なる数のサンプル点に対応する。グラフ1902は2つのサンプル点、グラフ1904は4つのサンプル点、グラフ1906は8つのサンプル点、グラフ1908は16のサンプル点である。32、164及び128のサンプル点のグラフは、16のサンプル点のグラフ1908をオーバレイする。
【0092】
[0114] 通常、zの8又は16のサンプル点は、リソグラフィプロセス構造のシミュレーションでレジストを備える構造に使用され、7から9のモードは、−Nから+Nのモード指数に対応して使用され、ここでN=3又は4である。金属又はシリコンなどのさらに高いコントラストの材料には、場を適切に説明するためにさらに多数のモードが必要である。
【0093】
[0115] 図19の全グラフの大きい相対誤差は、体積積分法を使用した不良な収束を示し、これは上述したように誘電率及び電場で同時発生する飛越しの効果である。以上で検討したように、VIMシステムでは、収束の問題を克服するためにリーの逆法則を使用することが、計算を限定することになる多数の行列反転のせいで実際的ではない。
【0094】
[0116] 図20は、図19に示したものと同じデータから導出したが、縦軸が秒単位のCPU時間t、横軸がモード数NMであるグラフでタイミングの結果を示す。グラフ2002から2014は、それぞれzにある2、4、8、16、32、64及び128のサンプル点のプロットである。xの記号2016は、同じ構造のRCWA計算の結果である。
【0095】
[0117] 図21は、図12及び図13に関して以上で検討した方法を使用して、本発明のある実施形態により大幅に改良された収束を示す。図21のグラフを図19のグラフと比較されたい。しかし、図21の縦の縮尺の方が広い範囲にまたがり、図19に示したものより相対誤差が2桁以上少ないことを示すことに留意されたい。グラフ2102から2114は、それぞれzにある2、4、8、16、32、64及び128のサンプル点のプロットである。
【0096】
[0118] 図22は、図20と同じ軸であるが、図12及び図13に関して以上で検討した方法を使用して、本発明のある実施形態により生成されたデータのタイミング情報を示す。グラフ2202から2214は、それぞれzにある2、4、8、16、32、64及び128のサンプル点のプロットである。xの記号2216は、同じ構造のRCWA計算の結果である。
【0097】
[0119] CPU時間t対モード数NMは、図20に示したものと同様であることが分かる。
【0098】
[0120] したがって図21及び図22は、本発明が体積積分法を使用した数値的解の収束を大幅に改良することを明白に示す。
【0099】
[0121] 本発明の実施形態は、RCWAよりも必要とするメモリ資源もはるかに少ない。RCWAの記憶装置の要件は375*((M1*M2)2)*の精密度である。VIMの記憶装置の要件は、約60*(M1*M2*N)*の精密度である。ここで、xのモード数はM1、xのモード数はM2、zのサンプル数はNである。VIMの典型的な作業点は、N≒4*(M1,2/ピッチx,y)*の高さである。
表1は、メモリの使用のために取得した結果を示す。
【表1】
【0100】
[0122] 表1のデータを生成するために、以下の条件を使用した。
ピッチx=ピッチy
M1=M2
高さ/ピッチ=0.436
精密度=複合倍
VIM:作業点で演算
【0101】
[0123] 表1は、典型的な格子ではVIMの方がRCWAより記憶装置の要求が低いことを明白に示す。
【0102】
[0124] さらなる実施形態について以下で説明する。
【0103】
序
[0125] 体積積分方程式法(VIM)は、2つの式の組で構成される。最初の式は、入射場及びコントラスト電流密度に関して全電場を説明する積分表示であり、後者はグリーン関数と相互作用する。すなわち、
【数2】
の場合に下式となる。
【数3】
【0104】
[0126] さらに、=Gは背景媒体のスペクトルグリーン関数を指し、これはz方向に平面層化し、e(m1,m2,z)はxy面のスペクトル基底に書かれた全電場E(x,y,z)のスペクトル成分を指し、j(m1,m2,z)はこれもxy面のスペクトル基底に書かれたコントラスト電流密度Jc(x,y,z)のスペクトル成分を指す。
【0105】
[0127] 第2の式は全電場とコントラスト電流密度との関係であり、これは構成内に存在する材料によって画定された構成関係である。すなわち下式となる。
【数4】
【0106】
[0128] ここで、Jcはコントラスト電流密度を指し、ωは角周波数、ε(x,y,z)は構成の誘電率、εb(z)は層状背景の誘電率であり、Eは全電場を指し、全て空間基底で書かれている。後者の式をxy面のスペクトル基底に変換することが、本文書の主な焦点である。
【0107】
[0129] 単刀直入なアプローチは、[1,2]で提案されているように、式(1.2)をスペクトル領域に直接変換することである。すなわち下式になる。
【数5】
【0108】
[0130] ここでM1l及びM2lは、E及びJcという有限フーリエ表示を考慮したスペクトルの下限であり、M1h及びM2hはスペクトルの上限である。さらに、χs(k,l,z)は横(xy)面に対するコントラスト関数χ(x,y,z)のフーリエ係数である。しかし、スペクトル基底で場と材料の相互作用を扱う際の主な数値的問題の1つは、実空間の単純な積式が、(数値導入の場合のように)積変数の一方又は両方の表示が有限(又は打ち切った)フーリエ展開を有する場合に、常にフーリエ空間で畳み込みによって正確に再現されるわけではないことを観察することである。さらに詳細には、積の両方の変数がいわゆる同時発生の相補的飛越し状態を示す場合は、打ち切ったフーリエ展開にとって標準的な畳み込みである「ローランの法則」より、「逆法則」の方がはるかに良好な精度特性を有することが示されている。この観察は、RCWAの状況で2D及び3Dの場と材料の相互作用について、リー[3,4]によってさらに詳細に計算されている。
【0109】
[0131] VIM内では、これらの観察が等しく当てはまる。電場とコントラスト電流密度のスペクトル離散を採用しているので、類似の問題に直面している。E及びコントラスト関数の飛越しが同時発生するが、これらは相補的ではない。というのは、コントラスト関数が、背景に対して摂動する幾何学的形状の支持体の外側ではゼロだからである。したがって、リーの法則の基本原理を慎重に解釈する必要がある。さらに、VIM内の別の主な問題は、逆法則の効率である。ローランの法則は、FFT導入により計算の複雑さは低いが、逆法則は通常、完全な行列とベクトルの積につながり、これはローラン[5]によって提案された近似法則の[2]で観察されるように、VIMの効率を非常に低下させる。したがって、スペクトル基底の精度を犠牲にせずに、畳み込み構造を保持できる方法を探すことが望ましい。そのために、以下の形態の変更k空間リップマン・シュウィンガー方程式を公式化し、
【数6】
について下式を解くように提案する。
【数7】
【0110】
[0132] さらに、=Gは、背景媒体のスペクトルグリーン関数を指し、演算子Cε及びVεは、1D及び/又は2DのFFTにより効率的な行列とベクトルの積を可能にする演算子である。
【0111】
2 調査
2.1 準備
[0133] 全電場とコントラスト電流密度との関係は、マクスウェルの方程式及び背景構成の概念から導出される。背景の選択は、この背景に関してグリーン関数を探し出す能力に関係する。したがって通常、背景は平面層状媒体などの単純化した構成である。ここで、層化はz方向に生じ、全体に一定の透磁率を有して、したがって誘電率しか変動しない材料で構成されると仮定する。アンペア・マクスウェルの方程式を求めて、一次源がない状態で下式になる。
【数8】
【0112】
[0134] ここで、Hは磁場強度、ωは角周波数、Dは電束密度、εは誘電率、Eは電場強度である。
【0113】
[0135] 次に、背景の誘電率をεbで示すと、コントラスト電流密度Jは下式で定義される。
【数9】
【0114】
[0136] さらに、正規化した量qを下式のように定義したい。
【数10】
【0115】
[0137] ここで、χはコントラスト関数である。この概念で、下式を導入する。
【数11】
【0116】
[0138] ここで、Iは単位作用素である。
【0117】
2.2 逆法則の基本原理
[0139] 周期pで1D周期関数V(x)、及び係数νn,n∈Zで対応するフーリエ級数を考察してみる。これらの間の関係は下式によって与えられる。
【数12】
【0118】
[0140] さらに、これも周期pで1D周期関数K(x)、及び対応するフーリエ係数knを導入する。
【0119】
[0141] フーリエ係数kn及びνnに関して積K(x)V(x)を近似することに関心がある。K(x)及びV(x)が連続的な周期関数である場合、フーリエ理論は下式のことを伝えてくれる。
【数13】
【0120】
[0142] ここで、下式の通りである。
【数14】
【0121】
[0143] ここで、級数はK及びVの連続性により、ノルムで収束する。この法則はローランの法則又は畳み込み法則として知られている。さらに、例えば、
【数15】
のようにチルド記号で示すが、(全ての数値的導入のように)有限(又は打ち切った)フーリエ級数のK(x)V(x)の近似に関心がある場合は、
【0122】
[0144] 有限フーリエ級数V(x)から有限フーリエ級数のK(x)V(x)の収束する近似を作成できるかという疑問が生じる。したがって、下式になるように、係数cnを構築できるかである。
【数16】
【0123】
[0145] ここで、下式の通りである。
【数17】
【0124】
[0146] 〜V(x)の有限フーリエ級数の係数が集合{−N,・・・,N}に限定され、〜K(x)の係数が集合{−2N,・・・,2N}で必要であることに留意されたい。これは、多くの畳み込みの問題のケースであり、ここでVは規定された畳み込み核Kのフィルタで変換する必要がある信号を表す。この有限ローランの法則は、行列とベクトルの積を介して実施することができ、ここで係数knは行列内に配置され、係数νnは列ベクトルとして構成される。νnの係数がその指数nに従って構成されると、係数knの行列はテプリッツ行列である。このテプリッツ行列によって、順方向及び逆方向高速フーリエ変換(FFT)による効率的な行列とベクトルの積が可能になる。
【0125】
[0147] リーによる論文[3,4]は、関数V(x)及び/又は関数K(x)がいずれでも連続的である場合は、式(2.13)の有限ローランの法則を適用できることを実証している。さらに、V(x)が周期の有限数の点で不連続であり、K(x)がそれらの点の近傍で連続している場合は、有限ローランの法則も当てはまる。このような場合は、V(x)及びK(x)がフーリエ因数分解可能であると言う。しかし、V(x)及びK(x)が両方とも不連続の点がある、すなわち関数V(x)及びK(x)がいわゆる同時発生の飛越しを有する場合、有限ローランの法則は不良な近似特性を有する。
【0126】
[0148] 1つの特殊なケースでは、リーは、逆法則として知られ、近似特性の向上につながる別の法則があることを示している。この特殊なケースは、K(x)及びV(x)が同じ点に不連続部を有するが、その不連続部が相補的である、すなわちK(x)及びV(x)の不連続部は、K(x)とV(x)の積が連続であるような状況の周囲で繰り返す。法則を構築するために、関数W(x)=K(x)V(x)であることに気づく。これで、W(x)及び核1/K(x)に適用されたローランの法則は、V(x)の係数につながる。すなわち下式になる。
【数18】
【0127】
[0149] ここで、κnは1/K(x)のフーリエ級数の係数であり、wnはW(x)のフーリエ級数の係数である。W(x)が連続しているので、W(x)/K(x)の有限フーリエ級数の近似を得るために有限ローランの法則を適用することができ、これは係数κnのテプリッツ行列T及び係数wnのベクトルにつながり、従って下式となる。
【数19】
【0128】
[0150] したがってW(x)及び1/K(x)はフーリエ因数分解可能である。最後に、行列Tを反転させると、下式になる。
【数20】
【0129】
[0151] したがって、「逆法則」という名称になる。
【0130】
2.3 2Dの周期的単位セルの軸に沿って位置合わせされた縁部がある単一のブリックに関する変更リーの法則
[0152] xy面で周期的構成の長方形の単位セル内にある長方形領域上で、固定されたz位置での背景媒体が一定で、コントラスト関数が非ゼロの連続関数、例えば定数である構成を考察してみる。さらに、長方形領域が単位セルと同じ方位を有すると仮定する。χの支持体の形状を画定するために、下式を導入する。
【数21】
【0131】
[0153] 次に、z方向に沿った固定位置で、背景に対する誘電率及びその逆数を、(材料が等方性、すなわち誘電率がスカラーであると仮定して)以下のように定義することができる。
【数22】
【0132】
[0154] ここで、χcは連続的関数又は定数であり、(x0,y0)は長方形支持体の中心位置であり、下式になる。
【数23】
【0133】
[0155] これはεr,b・εr,b−1=1という条件の結果である。
【0134】
[0156] 次に、有限フーリエ空間に畳み込み演算子〜Px及び〜Pyを導入し、これは下式のように(スペクトルベースで)任意の場vに作用する。
【数24】
【0135】
[0157] これは、
【数25】
及び、
【数26】
の場合であり、これは2Dフーリエ係数の整数指数である。さらに下式がある。
【数27】
【0136】
[0158] ここで、a及びbはそれぞれx及びy方向の単位セルの寸法であり、x及びy方向のパルス関数の支持体が積分間隔内にあると仮定する。
【0137】
[0159] 空間領域内で、正規化した電束と電場のx成分間に以下の関係がある。
【数28】
【0138】
[0160] これは、下式のようなそのスペクトルの対応物に直接つながることになる。
【数29】
【0139】
[0161] ここで、Iは単位作用素を表し、Ex及び^Dxの上の〜は有限フーリエ表示を指す。しかし、この式は、誘電率関数及び電場が同時発生の飛越しを有するという事実を完全に無視し、それはこの近似の性能を甚だしく低下させる。したがって、次にローランの法則と逆法則の組合せに到達するために、リーの推論の方針[3,4]に従う。
以下の関係式から開始する。
【数30】
【0140】
[0162] ^Dxはx方向に連続し、したがってΠΔxの乗算をスペクトル領域内で演算子〜Pxと交換できることに気づく。しかしy方向では、上式に同時発生の飛越しが観察される。パルス関数ΠΔyは空間投影演算子であるので、等べき特性により、及び〜Pxがy方向では定数乗数としてのみ作用し、ΠΔyと交換可能であるという事実により逆に構築することができる。このような場合、I+AΠΔyの逆数はI+BΠΔyの形式であり、ここでBは以下の代数特性の結果である。
【数31】
【0141】
[0163] 上式から、(B+A+BA)=0となる、すなわちB=−A(I+A)−1である。さらに、〜Px〜^Dxの有限スペクトル表示の空間表示をPx^Dxとし、Pyでも類似の表記となる。これらの表記で、以上の推論の方針に従い、下式に到達する。
【数32】
【0142】
[0164] この時点で、乗算演算子ΠΔyはPyで表す有限ローランの法則に対してスペクトルの対応物を有する。さらに、Px及びPyが異なる指標で作用することから、演算子(I+^χcPx)−1はPyと交換可能である。
【0143】
[0165] これで、両方とも有限フーリエ級数に関して表された正規化した電束と電場は、以下の関係になる。
【数33】
ここで、z成分は、Ezがxy面で連続しているという観察により、こうなる。体積積分方程式の場合は、全電場E及び正規化したコントラスト電流密度qにしか関心がない。後者の場合は下式となる。
【数34】
【0144】
[0166] ここで、^χcとχcの間の関係を採用した。
【0145】
[0167] Eからqを得るために以上の行列とベクトルの積に逆演算子(I+^χcPx)−1及び(I+^χcPy)−1が存在するので、全体的な体積積分方程式の行列ベクトル積は数値的な複雑さが非常に増大してしまう。したがって、これらの逆関数がもたらす精度の上昇を犠牲にせずに、それを回避することが非常に好ましい。したがって、Eに対して以下の関係を有する新しいベクトル場Fを導入することを提案する。
【数35】
【0146】
[0168] これは、第1式についてはx方向に沿って、第2式についてはy方向に沿って1DのFFTにより実施することができる。
【0147】
[0169] これで、qとFの間の関係は下式のようになる。
【数36】
【0148】
[0170] これはxy面で2DのFFTにより実施することができる。
【0149】
[0171] これで、EとFの関係及びqとFの関係は両方とも、有限ローランの法則に従って畳み込み演算子を有し、これによってその行列ベクトル積が効率的になる。というのは、1D及び2DのFFT(の組合せ)によって実施できるからである。したがって、Eではなくベクトル場Fについて体積積分方程式を解き、追加の後処理ステップを介して式(2.36)から(2.38)へ電場Eを得る。先行技術の手順と比較したこの手順の変化は、今回は1つの(qのみの)演算子ではなく2つの(すなわちEに1つ、qに1つの)演算子を、及び後処理ステップを使用することである。しかし、本発明の実施形態による新しい手順のこれらの2つの演算子は、先行技術の手順で1つの演算子よりはるかに効率的に実施される。
【0150】
2.4 法線ベクトル場の定式化
[0172] 以上の変更リーの法則に関する検討は、FFTによる計算の低い複雑さは、コントラスト関数の幾何学的形状のタイプをかなり制限することを示す。したがって、FFTが場と材料の相互作用式の優勢な演算であり続けるフレームワークを探し出すことが最も重要である。論文[6]で適切な開始点を探し出した。それを進める概念の1つは、誘電率関数の幾何学的形状の縁部及び隅部に対応する隔離された点又は線という例外がある可能性があるが、どこでも連続的である補助ベクトル場を導入することである。これは、以前のセクションの状況と同様であり、そこでは有限ローランの法則の形態で収束が良好な畳み込みを可能にした(他の)中間連続ベクトル場Fも導入していた。しかし、有意の違いは、[6]が線形系を解くために補助ベクトル場を使用することを教示せず、かわりに[6]は線形系を解く基底としてEを使用するように教示していることである。
【0151】
[0173] 一方のコントラスト電流密度J(又はq)及び電場Eをスペクトル領域の畳み込みの形態で連続ベクトル場Fに関連させる1組の式を設定することが可能である。Fは連続的であるので、それで演算する畳み込みは有限ローランの法則の形態をとり、したがってFFTによって実行することができる。その方法で、Fが基本的未知数である1組の式に到達し、その未知数に対して系を解き、追加の後処理ステップによって電場及び/又はコントラスト電流密度を取得し、そこから構成の所望の散乱特性、例えば反射係数を導出することができる。
【0152】
[0174] 前置きの検討から、FとJの関係は一方ではEとDの、他方ではFの関係の結果である。[6]の表示では、その概念は以下の関係式を確立するものである。
【数37】
【0153】
[0175] ベクトル場Fは、電場の場の成分と電束密度の成分との組合せから構築される。材料界面での境界条件から、電場の接線成分と電束密度の法線成分とが連続し、材料界面の隅部及び縁部に対応する点及び線の例外がある可能性があることが分かっている。E及びDのこれらの連続成分をフィルタリングするために、実数値法線ベクトル場を導入する。この法線ベクトル場n(x,y,z)は以下の特性を有する。
・各材料界面と直交方向に向いている。
・空間内の各点に単位長を有する。
【0154】
[0176] 以上に加えて、このベクトル場を画定する他の制限はないが、何らかの形態の連続性など、他の特性を含むと都合がよい。
【0155】
[0177] ベクトル場nを使用して、電束密度の不連続成分をフィルタリングすることができ、その結果、連続的なスカラー場Dn=(n,D)となり、ここで(.,.)はスカラー積を表す。さらに、法線ベクトル場から、2つのいわゆる接線ベクトル場t1及びt2を探し出すことができ、これはnとともに3D空間の各点で正規直交基底を形成する。例えば、nx及びnyを下式のように構築できる法線ベクトル場t1のx及びy成分とする。
【数38】
ここで、ux及びuyはそれぞれx及びy方向に沿った単位ベクトルを指す。最後に、nとt1とのクロス乗積を介してベクトル場t2が生成される。
【0156】
[0178] 接線ベクトル場を使用して、下式のように電場の連続成分を抽出することができる。
【数39】
【0157】
[0179] [6]の後、次に下式のように連続ベクトル場Fを構築する。
【数40】
【0158】
[0180] 法線ベクトル場nは、下式のように演算子Pnの定義を生成する。
【数41】
【0159】
[0181] ここで、vは任意の3Dベクトル場である。法線ベクトル場nの特性から、Pnは投影演算子であり、したがって等べき、すなわちPnPn=Pnであることが分かる。同様に、下式のように演算子PTを導入することができる。
【数42】
これも投影演算子である。次に、ベクトル場Fから式(2.40)の演算子を構築するためにこれらの演算子Pn及びPTを使用できる方法を示す。
【0160】
[0182] 一方で電場と電束密度の間の空間領域関係、他方でベクトル場Fの定義から開始する。下式がある。
【数43】
【0161】
[0183] ここで、Mεは、通常は非等方性である誘電率テンソルεを掛けた乗算演算子であり、Mε−1は、誘電率関数の(点別)逆数を掛けた乗算演算子である。
【0162】
[0184] 最初に、EとFの関係を確立する。というのは、下式があるからである。
【数44】
【0163】
[0185] 後者の式を再構成し、Pnの等べきを採用すると、下式が得られる。
【数45】
【0164】
[0186] これで、上式では式の両辺が演算子Pnの範囲に属することが分かる。投影演算子の1つの重要な特性は、投影演算子がその等べきのせいでその範囲の単位作用素で一意に識別されることである。したがって、Pnの範囲からのマッピングとしての左辺をPnの範囲に制限すると、左辺の演算子を反転して、下式に到達することができ、ここで制限が可能であるのは、PnがEに作用する演算子の両辺に現れるからである。
【数46】
ここで、(PnMεPn)−1はPnの範囲の(PnMεPn)の逆数、すなわち(PnMεPn)−1(PnMεPn)=Pnである。逆演算子の存在について、以下で確立する。
【0165】
[0187] したがって式(2.40)の線形演算子Cεは下式によって与えられる。
【数47】
【0166】
[0188] 同様の方法で、電束密度とベクトル場Fの間の関係を導出することができる。
【数48】
【0167】
[0189] 第2の式では、次にEを除去するために式(2.54)を採用することができる。すなわち、下式である。
【数49】
【0168】
[0190] したがって、下式となる。
【数50】
【0169】
[0191] この時点で、(PnMεPn)−1という例外がある可能性があるが、全ての演算子、すなわちPn、PT及びMεは空間領域の点別乗算演算子であることを認識することが重要である。さらに、誘電率プロファイル内の飛越しは、法線ベクトル場の(生じ得る)飛越しと同じ位置では発生しない。しかし、複数の投影演算子(すなわちPn及び/又はPT)又は複数の材料演算子(例えばCε及びMε)が係わる積では、同時発生の飛越しが発生することが可能である。さらに、投影演算子の空間等べき特性は、有限フーリエ級数展開では維持されない。したがって、フーリエ領域で演算子を構築する前に、空間領域で全等べき特性を計算する。これを達成する最も単純な方法は、乗算演算子の各組合せ(積)が再び乗算演算子になることを認識することである。したがって、全演算子Cε及び演算子εCεの各項について、単一の乗算演算子を構築することを目指す。それが達成されると、空間領域の各乗算演算子がスペクトル領域の畳み込み演算子になり、これは全て連続ベクトル場Fで作用するので、有限ローランの法則によって実施することができる。
【0170】
2.4.1 演算子(PnMεPn)−1
[0192] 次に演算子(PnMεPn)−1に注目する。これが点別乗算演算子であることを示し、その式を導出する。
【0171】
[0193] 投影演算子Pnの定義から、下式を容易に導出することができる。
【数51】
【0172】
[0194] これは、(n,εn)が、誘電率関数のエネルギー特性により決してゼロにならないスカラー場であるからである。すなわち、可能な全ての電場Eの(E,ε*E*)は電力密度である。したがって、スカラー場の逆数は、単に(n,εn)−1=1/(n,εn)=ζによって与えられる。従って下式となる。
【数52】
【0173】
2.4.2 等方性の場合の法線ベクトル場の定式化
[0195] 等方性媒体の場合、演算子Mεはスカラー乗算であり、それにより一方の演算子Pn及びPTと他方のMεが交換可能である。さらに、演算子(PnMεPn)−1=PnM1/ε=M1/εPnであり、ここでM1/εは、εの(スカラー)逆数の乗算である。これらの観察から、演算子Cεは下式になる。
【数53】
【0174】
[0196] さらに、演算子εCεは下式になる。
【数54】
【0175】
2.4.3 バイナリ格子の法線ベクトル場の定式化
[0197] バイナリ格子とは、その全高にわたって均一な断面を有する格子である。zが媒質の層化の方向であり、格子が間隔z∈[zl,zh]内に画定されると仮定すると、後者の間隔内で格子構造の誘電率関数はx及びyのみの関数である。図15を参照されたい。zの空間離散、又は間隔z∈[zl,zh]に専用のスペクトル離散を使用すると、全体的にz方向に沿った単位ベクトルに平行な接線ベクトル場の1つを選択することができる。法線ベクトル場及び第2の接線ベクトル場は、これで基本的に2次元ベクトル場となる。すなわちz方向に垂直であり、x及びy座標にのみ依存する。法線ベクトル場を決定すると、第2の接線ベクトル場は法線ベクトル場とz方向の単位ベクトルとのクロス乗積の結果となる。このように、法線及び接線ベクトル場を生成する問題は、法線ベクトル場のみを生成することへと軽減される。さらに、場と材料の相互作用の計算は、xy面での2D畳み込みの形態をとり、これはz方向に対して分離される。法線ベクトル場は多くの方法で生成することができる。RCWAの状況で[7,8]で提案されている。
【0176】
2.4.4 実施例:等方性バイナリ格子の場と材料の相互作用行列の係数
[0198] 長方形の単位セルx∈[−a/2,a/2], y∈ [−b/2,b/2]を考察してみる。間隔z∈[z0,z1]の場合、誘電率関数はε(x,y)によって与えられる。さらに、nx(x,y)及びny(x,y)を法線ベクトル場のx及びy成分t1x(x,y)=−ny(x,y)、t1y(x,y)=nx(x,y),及びt2=uzとする。この場合、式(2.62)を参照すると、以下の演算子の式になる。
【数55】
【0177】
[0199] ここで畳み込み演算子Cの係数は下式によって与えられる。
【数56】
【0178】
[0200] 及びIは単位作用素を表す。
【0179】
2.4.5 階段状格子の法線ベクトル場の定式化
[0201] 格子構造は、層化の方向、すなわちz方向の階段近似によって幾何学的に近似することができる。図16を参照されたい。すなわち、z方向の独立した間隔(スライス)のシーケンスを選択し、これらの間隔ごとに、z方向から独立した誘電率関数によって誘電率関数を近似する。次に、間隔のそれぞれに専用の離散を使用することにより、バイナリ格子のシーケンスに到達し、それに上記のセクション2.4.3で示した手順を適用することができる。すなわちスライスごとに法線ベクトル場を生成し、スライスごとに場と材料の相互作用の演算子を構築するが、これは両方とも基本的に2次元である。
【0180】
2.5 畳み込み構造を維持する変更リーの法則と法線ベクトル場の定式化の代替方法
[0202] 前述のセクションで、スペクトル基底の精度を保持しながら、場と材料の相互作用の効率的な行列ベクトル積を構築するために、いわゆるk空間リップマン・シュウィンガー方程式を変更した。これは、Fを計算したら、非常に少ない追加の計算でEが取得されるように、Eによって示された電場と1対1対応する補助ベクトル場Fを導入することによって達成した。基本的に、下式の形態の1組の式を導出した。
【数57】
【0181】
[0203] ここで、Eiは入射場を指し、Gは層状背景媒体のグリーン関数の行列表示を指し、Cε及び(εCε)はFFTの形態の効率的な行列ベクトル積に対応する。
【0182】
[0204] 以上の場合、FとEの1対1対応によって、コンパクトで効率的な形式が可能になる。しかし、効率的な行列ベクトル積とともに高い精度というターゲットを達成するために、別の経路が存在する。これらの代替方法をさらに探求し、文書にすることが、本セクションの目的である。既存の形式を、Eと補助ベクトル場Fとの1対1対応を削除することによって拡張することができる。これは、例えばセクション2.5.2で示すように、例えば電場E内より補助ベクトル場F内に多くの自由度を導入する場合である。さらなる措置を執らないと、ベクトル場Fに関する線形方程式の結果となる組は決定が不十分であり、したがってFは一意ではなく、このことは反復的ソルバを使用する場合は通常望ましくない。というのは、これが通常、多数の反復又は反復プロセスのブレークダウンにつながるからである。この状況を克服するために、量F、E及び/又はJの間に追加の組の線形制約を見越す。この基本原理で、以下の一般化した組の変更リップマン・シュウィンガー方程式に到達する。
【数58】
【0183】
[0205] ここで、以上の行列方程式の各演算子は、例えばFFTによって効率的な行列ベクトル積を実施することができる。
【0184】
2.5.1 ラランの法則
[0206] 2D周期性の周期構造についてリーが導出した法則の前に、ララン[5]は誘電率行列Mεの重み付き平均式([5]でEと表す)及び逆誘電率行列(Minv(ε))−1の逆行列([5]でP−1と表す)を提案している。この作業方法のために、電場Eと補助ベクトル場Fの組合せで作業することができる。後者のベクトル場は、高速の行列とベクトルの積を獲得し、コントラスト電流密度J又はその縮尺した相対物qを計算するために、(Minv(ε))−1とEの間の積に遭遇した時点で導入される。
【数59】
【0185】
[0207] ここでFは下式を満足する。
【数60】
【0186】
[0208] MεとMinv(ε)は両方とも、FFTにより効率的な行列とベクトルの積を実施する。
【0187】
[0209] 式(2.73)と(2.74)の結果は、式(2.72)の形態でより大きい線形系として実施することができる。ここで、演算子I及びGを含む第1の組の式は元のままである。第2の組の式は、一方のJと他方のE及びFの間で関係式(2.73)をもたらす。すなわちC11=jωα(Mε−εbI)、C12=−I,及びC13=jω(1−α)Iである。次に、第3の組の式は式(2.74)のようにEとFを関連させる。すなわちC21=−I、C22=0及びC23=Minv(ε)である。最後に、C31、C32、C33を含む最終組の式、及び右辺の最終行はなくなる。これは、ベクトル場Fの近似解を決定するように、電磁場Eに関連し、それとは異なるベクトル場Fの体積積分方程式を数値的に解くことを含むことによって、構造の電磁散乱特性を計算することによって実施することができる。ここで、ベクトル場Fは、可逆演算子Minv(ε)によって電場Eに関連付けられる。
【0188】
2.5.2 連結のリーの法則
[0210] 交差した格子の場合、リーは対応する相互作用の行列が(ブロック)テプリッツ行列及び逆(ブロック)テプリッツ行列の積の合計で構成されている場合、スペクトル基底で場と材料の相互作用がよりよく捕捉されることを示している。(ブロック)テプリッツ行列は、FFTの形態で効率的な行列とベクトルの積を可能にするが、逆テプリッツ行列はテプリッツの形態を有していない。したがって、補助ベクトル場の概念を拡張することにより、制約とともに追加の補助場を導入し、(ブロック)テプリッツ行列の逆数も考慮に入れた効率的な行列とベクトルの積に到達することができる。
【0189】
[0211] バイナリ格子の等方性媒体の場合を考慮してみる。次に、リーの法則は、横面、すなわちxy面の場の成分にのみ変更が必要である。この状況は、単一の長方形ブロックの場合と同様であるが、ここでは隣接していても、していなくてもよい幾つかのブロックから誘電率関数を構築する。特に、誘電率関数及び対応する逆誘電率関数は、下式のように書かれる。
【数61】
【0190】
[0212] ここで、Παβは、方向βのパルス関数であり、ラベルαを伴う全間隔の支持体を有する。x方向にはI個の間隔があり、y方向にはJ個の間隔がある。さらに、χi,jは関数Πix(x)Πjy(y)の支持体の連続スカラー関数であり、^χi,j=−χi,j/(1+χi,j)である。
【0191】
[0213] 電場及び電束のx成分に関する関係式Ex=ε−1Dxから、下式が得られる。
【数62】
【0192】
[0214] ここで、リーの推論の方針により、ΠixDxはフーリエ空間内で因数分解可能であるが、ΠjyDxは因数分解可能でない。関数Παβは投影演算子として解釈できるので、以下を採用することができる。
【0193】
[0215] Iを単位作用素とし、Aiを相互に直交する投影演算子Piと交換可能な有界演算子のシーケンスとすると、演算子
【数63】
は、有界逆数
【数64】
を有し、ここでBi=−Ai(I+Ai)−1である。
【0194】
[0216] この代数を計算し、投影演算子の等べきを考慮に入れることによって証明となる。
【0195】
[0217] この結果で、次に電場の成分に関して電束の成分を下式のように表すことができる。
【数65】
【0196】
[0218] ここでAi及びBiとPiとの交換特性を使用している。
【0197】
[0219] 同様に、y成分について下式がある。
【数66】
【0198】
[0220] ここで、乗算演算子はそれぞれ、電場の成分を直接演算する逆行列演算を実行した後、フーリエ因数分解可能である。これらの関係式から通常の方法でコントラスト電流密度を導出することができる。
【0199】
[0221] 以上の関係式から、x及びy方向に沿った各間隔は逆演算子、すなわち合計I+J個の逆数を生じることが明白になる。これらの逆数はそれぞれ、セクション2.3の単一のブリックの場合のように、逆演算子を含む中間行列ベクトル積に補助変数(ベクトル場)を導入すると、回避することができる。この方法で、変数の増加という犠牲を払うが、FFTの形態で行列ベクトル積の効率が維持される。これは、I及びJが1より大きい場合に特に当てはまる。というのは、逆数がそれぞれ補助変数の量だけ増加し、それにより全行列ベクトル積のサイズを増大させるからである。
【0200】
2.5.3 リーの法則の逆演算子の数を減少させる
[0222] セクション2.5.2の結論は、投影演算子Παβがそれぞれ新しい補助ベクトル場を導入するということであり、それによってこの手順は、幾つかの投影演算子より多くを必要とする幾何学的形状ではかなり非効率になる。したがって、階段方式の幾何学的融通性を犠牲にせずに、この方式によって最初に導入されるより少ない投影演算子で作業できる方法があるかという疑問が生じる。
【0201】
[0223] 主な取り組みは、合計に含まれる投影演算子が少なくなるものとして、式(2.75)を書き換えることにある。すなわち、下式のように書き換える。
【数67】
【0202】
[0224] 出願人は有名な「4色問題」に触発されている。これは、平坦な地図は4つの異なる色のみで着色することができ、したがって地図のどの2つの隣接する区域も同じ色を有さないということである。本発明の場合、状況は多少類似している。すなわち隣接する支持体がある投影演算子は、乗算関数^χi,jがその相互接続する境界で連続している場合にのみ結合することができる。概して、このような制約は幾何学的形状では満たされない。したがって、隣接する支持体を有していない投影演算子を結合するようなグルーピングを導入する。これによって、結合した投影演算子の支持体上で乗算関数^χi,jが一致する連続的な乗算演算子を構築することができる。
【0203】
[0225] 最初にこれを1次元で実証してみる。x方向の(周期的)間隔を[0,a]として与え、この間隔を偶数の独立セグメントSi(i=0,・・・,2I)に分割し、セグメントの和集合が周期的間隔[0,a]に広がり、セグメントがこの間隔に沿った位置に従って指し示される、すなわちセグメントSi−1がセグメントSiへと進むようにする。これで、逆誘電率関数を下式のように書くことができる。
【数68】
【0204】
[0226] ここで、Πi(x)の支持体はi番目のセグメントに対応する。
【0205】
[0227] 次に、(相互に直交する)奇数及び偶数の投影演算子を導入する。
【数69】
【0206】
[0228] さらに、(スカラー)関数fo(x)及びfe(x)を導入する。これらの関数は間隔[0,a]で連続し、周期的連続性を有する。すなわちfo(0)=fo(a)及びfe(0)=fe(a)であり、k=1,・・・,Iについて、下式を満足する。
【数70】
【0207】
[0229] 偶数及び奇数の投影演算子が投影演算子を隣接する支持体と結合しないので、関数fo及びfeを連続関数として、例えば偶数及び奇数の投影演算子の支持体以外のセグメントに関する1次補間を介して構築することができる。したがって、逆誘電率関数を下式のように書くことができる。
【数71】
【0208】
[0230] 次にこの概念を2次元に、すなわち格子構造の横面に拡張する。(相互に直交する)偶数及び奇数の投影演算子を、次元ごとに偶数のセグメントがあるデカルト積グリッドのx及びy方向に導入する。さらに、4つの周期的に連続するスカラー関数を、foo(x,y)、foe(x,y)、feo(x,y)及びfee(x,y)で表される周期的領域[0,a]×[0,b]上に導入する。これらの関数は、乗数である投影演算子の支持体以外の双1次補間によって構築することができる。この手順は図17で実証されている。
【0209】
[0231] これで、逆誘電率関数を下式のように書くことができる。
【数72】
【0210】
[0232] これは関係する2次元投影演算子(色)が4つしかないことを示す。
【0211】
[0233] セクション2.5.2で概略した方法に従うと、以下のリーの法則に到達する。
【数73】
【0212】
[0234] またDyとEyの間の関係に関する類似の式にも到達する。
【0213】
[0235] 手順を締めくくるために、x成分が下式を満足し、y成分も類似の関係である状態で、2つの補助場Fe及びFoを導入する。
【数74】
【0214】
[0236] これらの条件で、及びy成分も類似の関係で、最終的に下式が得られる。
【数75】
【0215】
[0237] FとEを関連付ける演算子は、以前のセクションの逆演算子とは反対に2次元文字を有することに留意されたい。にもかかわらず、全ての演算子はここでは、2D(又は繰り返した1D)のFFTにより効率的な行列ベクトル積を実施する乗算演算子である。
【0216】
[0238] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。例えば、これは、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用誘導及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。こうした代替的な用途に照らして、本明細書で「ウェーハ」又は「ダイ」という用語を使用している場合、それぞれ、「基板」又は「目標部分」という、より一般的な用語と同義と見なしてよいことが、当業者には認識される。本明細書に述べている基板は、露光前又は露光後に、例えばトラック(通常はレジストの層を基板に塗布し、露光したレジストを現像するツール)、メトロロジーツール及び/又はインスペクションツールで処理することができる。適宜、本明細書の開示は、以上及びその他の基板処理ツールに適用することができる。さらに基板は、例えば多層ICを生成するために、複数回処理することができ、したがって本明細書で使用する基板という用語は、既に複数の処理済み層を含む基板も指すことができる。
【0217】
[0239] 上述した本発明の実施形態による方法は、図5に関して上述したように、放射によるオブジェクトの照明によって生成される回折パターンなどの、検出された電磁散乱特性からオブジェクト(1D周期性に限定されない)の近似構造を再構築する順方向回折モデルに組み込むことができる。図3及び図4に関して上述した処理ユニットPUは、この方法を使用してオブジェクトの近似構造を再構築するように構成することができる。
【0218】
[0240] 光リソグラフィの分野での本発明の実施形態の使用に特に言及してきたが、本発明は、他の用途、例えばインプリントリソグラフィにも使用することができ、文脈によっては、光リソグラフィに限定されないことを理解されたい。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイス内の微細構成(topography)が基板上に作成されるパターンを形成する。パターニングデバイスの微細構成は、基板に供給されたレジスト層内に押圧し、電磁放射、熱、圧力又はこれらの組合せを印加することによりレジストは硬化する。パターニングデバイスはレジストから取り除かれ、レジストが硬化すると、内部にパターンが残される。
【0219】
[0241] 本明細書で使用する「放射」及び「ビーム」という用語は、イオンビーム又は電子ビームなどの粒子ビームのみならず、紫外線(UV)放射(例えば、365nm、355nm、248nm、193nm、157nm若しくは126nm、又はこれら辺りの波長を有する)及び極端紫外線光(EUV)放射(例えば、5nm〜20nmの範囲の波長を有する)を含むあらゆるタイプの電磁放射を網羅する。
【0220】
[0242] 「レンズ」という用語は、状況が許せば、屈折、反射、磁気、電磁気及び静電気光学コンポーネントを含む様々なタイプの光学コンポーネントのいずれか一つ、又はその組合せを指すことができる。
【0221】
[0243] 「電磁」という用語は、電気及び磁気を包含する。
【0222】
[0244] 「電磁散乱特性」という用語は、スペクトル(波長の関数としての強度など)、回折パターン(位置/角度の関数としての強度)及び横方向磁気及び横方向電気偏光の相対強度及び/又は横方向磁気と横方向電気偏光との位相差を含む反射及び透過係数及びスキャトロメータ測定パラメータを包含する。回折パターン自体は、例えば反射係数を使用して計算することができる。
【0223】
[0245] したがって、本発明の実施形態は反射散乱に関して説明されているが、本発明は透過散乱にも適用可能である。
【0224】
[0246] 以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、説明とは異なる方法でも本発明を実践できることが理解される。例えば、本発明は、上記で開示したような方法を述べる機械読み取り式命令の1つ又は複数のシーケンスを含むコンピュータプログラム、又はこのようなコンピュータプログラムを内部に記憶したデータ記憶媒体(例えば半導体メモリ、磁気又は光ディスク)の形態をとることができる。
【0225】
[0247] 以下の参照文献は全て、参照により全体を本明細書に組み込むものとする。
[1] 「International Conference on Electromagnetics in Advanced Applications ICEAA '03」の議事録(R. D. Graglia、編集者)記載の、M. C. van Beurden氏及びB. P. de Hon氏の、「Electromagnetic modelling of antennas mounted on a bandgap slab - discretisation issues and domain and boundary integral equations」、637-640ページ、Politecnico di Torino、2003年。
[2] Yia-Chung Chang氏、Guangwei Li氏、Hanyou Chu氏及びJon Opsal氏の、「Efficient finite-element, Green's function approach for critical-dimension metrology of three-dimensional gratings on multilayer films」、J. Opt. Soc. Am. A, 23(3):638-6454ページ、2006年3月。
[3] Lifeng Li氏の、「Use of Fourier series in the analysis of discontinuous periodic structures」、J. Opt. Soc. Am. A, 13(9):1870-1876ページ、1996年9月。
[4] Lifeng Li氏の、「New formulation of the Fourier modal method for crossed surface-relief gratings」、J. Opt. Soc. Am. A, 14(10):2758-2767ページ、1997年10月。
[5] Philippe Lalanne氏の、「Improved formulation of the coupled-wave method for two-dimensional gratings」、J. Opt. Soc. Am. A, 14(7):1592-1598ページ、1997年7月。
[6] Evgeny Popov氏及びMichel Neviere氏の、「Maxwell equations in Fourier space: fast-converging formulation for diffraction by arbitrary shaped, periodic, anisotropic media」、J. Opt. Soc. Am. A, 18(11):2886-2894ページ、2001年11月。
[7] Thomas Schuster氏、Johannes Ruoff氏、Norbert Kerwien氏、Stephan Rafler氏及びWolfgang Osten氏の、「Normal vector method for convergence improvement using the RCWA for crossed gratings」、J. Opt. Soc. Am. A, 24(9):2880-2890ページ、2007年9月。
[8] Peter Goetz氏、Thomas Schuster氏、Karsten Frenner氏、Stephan Rafler氏、及びWolfgang Osten氏の、「Normal vector method for the RCWA with automated vector field generation」、OPTICS EXPRESS, 16(22):17295-17301ページ、2008年10月。
【0226】
結論
[0248] 特許請求の範囲を解釈するには、発明の概要及び要約の項目ではなく、「発明を実施するための形態」の項目を使用するよう意図されていることを認識されたい。発明の概要及び要約の項目は、発明者が想定するような本発明の1つ又は複数の例示的実施形態について述べることができるが、全部の例示的実施形態を述べることはできず、したがって本発明及び特許請求の範囲をいかなる意味でも限定しないものとする。
【0227】
[0249] 以上では、特定の機能の実施態様を例示する機能的構成要素及びその関係の助けにより、本発明について説明してきた。これらの機能的構成要素の境界は、本明細書では説明の便宜を図って任意に画定されている。特定の機能及びその関係が適切に実行される限り、代替的な境界を画定することができる。
【0228】
[0250] 特定の実施形態に関する以上の説明は、本発明の全体的性質を十分に明らかにしているので、当技術分野の知識を適用することにより、過度の実験をせず、本発明の全体的概念から逸脱することなく、このような特定の実施形態を容易に修正する、及び/又はこれを様々な用途に適応させることができる。したがって、このような適応及び修正は、本明細書に提示された教示及び案内に基づき、開示された実施形態の同等物の意味及び範囲に入るものとする。本明細書の言葉遣い又は用語は説明のためのもので、限定するものではなく、したがって本明細書の用語又は言葉遣いは、当業者には教示及び案内の観点から解釈されるべきことを理解されたい。
【0229】
[0251] 本発明の幅及び範囲は、上述した例示的実施形態のいずれによっても限定されず、特許請求の範囲及びその同等物によってのみ規定されるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造の電磁散乱特性を計算する方法であって、前記構造が少なくとも一方向に周期的であり、材料の境界で電磁場の不連続を引き起こすように様々な特性の材料を含み、前記方法が、基底の変換によって前記電磁場に関連するベクトル場の体積積分方程式を数値的に解くステップを含み、前記ベクトル場が、前記ベクトル場の近似解を決定するように前記材料境界にて連続している方法。
【請求項2】
前記電磁散乱特性が、反射係数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電磁場が、入射及び散乱電磁場成分の総和を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ベクトル場が、前記少なくとも一方向に関して少なくとも1つの有限フーリエ級数で表され、前記体積積分方程式を数値的に解く前記ステップが、畳み込み及び基底変換演算子での前記ベクトル場の畳み込みによって前記電磁場の成分を決定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
畳み込み及び基底変換演算子での前記ベクトル場の前記畳み込みが、高速フーリエ変換(FFT)及び整数論変換(NTT)を含む組から選択される変換を使用して実行される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記畳み込み及び基底変換演算子Cが、前記少なくとも1つの方向に前記構造の材料及び幾何学的特性を含み、前記材料及び幾何学的特性に従って基底変換を実行することにより、前記ベクトル場を前記電磁場に変換するように構成される、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記畳み込み及び基底変換演算子が、有限離散畳み込みに従って演算する、請求項4から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記体積積分方程式を数値的に解く前記ステップが、畳み込み演算子での前記ベクトル場の畳み込みによって電流密度を決定するステップを含む、請求項4から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
畳み込み演算子での前記ベクトル場の前記畳み込みが、高速フーリエ変換(FFT)及び整数論変換(NTT)を含む組から選択される変換を使用して実行される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記畳み込み演算子が、前記少なくとも1つの方向で前記構造の材料及び幾何学的特性を含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記畳み込み演算子が、有限離散畳み込みに従って演算する、請求項8から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記電流密度が、コントラスト電流密度である、請求項8から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記電流密度が、前記少なくとも1つの方向に関する少なくとも1つの有限フーリエ級数によって表される、請求項8から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記体積積分方程式を数値的に解く前記ステップが、グリーン関数演算子での前記電流密度の畳み込みによって散乱電磁場を決定するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
グリーン関数演算子での前記電流密度の前記畳み込みが、高速フーリエ変換(FFT)及び整数論変換(NTT)を含む組から選択される変換を使用して実行される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ベクトル場が、前記少なくとも1つの材料境界に対して接線方向の前記電磁場の連続成分、及び前記少なくとも1つの材料境界に対して法線方向の前記電磁束密度の前記連続成分をフィルタリングするために法線ベクトル場を使用することにより、前記電磁場及び対応する前記電磁束密度の場の成分の組合せから構築される、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
畳み込み及び基底変換演算子での前記ベクトル場の前記近似解の畳み込みによって、前記電磁場を決定するステップをさらに含む、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記畳み込みが、高速フーリエ変換(FFT)及び整数論変換(NTT)を含む組から選択される変換を使用して実行される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
放射によるオブジェクトの照明から生じて検出された電磁散乱特性から前記オブジェクトの近似構造を再構築する方法であって、
少なくとも1つのオブジェクト構造を推定するステップと、
前記少なくとも1つの推定されたオブジェクト構造から少なくとも1つのモデル電磁散乱特性を決定するステップと、
前記検出された電磁散乱特性を前記少なくとも1つのモデル電磁散乱特性と比較するステップと、
前記比較の結果に基づいて近似オブジェクト構造を決定するステップと、
を含み、
前記モデル電磁散乱特性が、構造の電磁散乱特性を計算する方法を使用して決定され、前記構造が少なくとも一方向に周期的であり、材料の境界で電磁場の不連続を引き起こすように様々な特性の材料を含み、前記方法が、基底の変換によって前記電磁場に関連するベクトル場の体積積分方程式を数値的に解くステップを含み、前記ベクトル場が、前記ベクトル場の近似解を決定するように前記材料境界にて連続している方法。
【請求項20】
ライブラリ内で複数の前記モデル電磁散乱特性を構成するステップをさらに含み、前記比較するステップが、前記検出された電磁散乱特性を前記ライブラリの内容と一致させるステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1つのオブジェクト構造を推定する前記ステップと、少なくとも1つのモデル電磁散乱特性を決定する前記ステップと、前記検出された電磁散乱を比較する前記ステップとを反復するステップをさらに含み、少なくとも1つのオブジェクト構造を推定する前記ステップが、以前の反復で比較した前記ステップの結果に基づく、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
オブジェクトの近似構造を再構築する検査装置であって、
放射で前記オブジェクトを照明するように構成された照明システムと、
前記照明から生じた電磁散乱特性を検出するように構成された検出システムと、
プロセッサであって、
少なくとも1つのオブジェクト構造を推定し、
前記少なくとも1つの推定されたオブジェクト構造から少なくとも1つのモデル電磁散乱特性を決定し、
前記検出された電磁散乱特性を前記少なくとも1つのモデル電磁散乱特性と比較し、
前記検出された電磁散乱特性と前記少なくとも1つのモデル電磁散乱特性との差から近似オブジェクト構造を決定する
ように構成されたプロセッサと、
を備え、
前記プロセッサが、構造の電磁散乱特性を計算する方法を使用して前記モデル電磁散乱特性を決定するように構成され、前記構造が少なくとも一方向に周期的であり、材料の境界で電磁場の不連続を引き起こすように様々な特性の材料を含み、前記方法が、基底の変換によって前記電磁場に関連するベクトル場の体積積分方程式を数値的に解くステップを含み、前記ベクトル場が、前記ベクトル場の近似解を決定するように前記材料境界にて連続している検査装置。
【請求項23】
構造の電磁散乱特性を計算するために機械読み取り式命令の1つ又は複数のシーケンスを含むコンピュータプログラムプロダクトであって、前記命令が、1つ又は複数のプロセッサに前記構造の電磁散乱特性を計算する方法を実行させるように構成され、前記構造が、少なくとも一方向に周期的であり、材料の境界で電磁場の不連続を引き起こすように様々な特性の材料を含み、前記方法が、基底の変換によって前記電磁場に関連するベクトル場の体積積分方程式を数値的に解くステップを含み、前記ベクトル場が、前記ベクトル場の近似解を決定するように前記材料境界にて連続しているコンピュータプログラムプロダクト。
【請求項24】
構造の電磁散乱特性を計算する方法であって、前記構造が少なくとも一方向に周期的であり、材料の境界で電磁場の不連続を引き起こすように様々な特性の材料を含み、前記方法が、ベクトル場の近似解を決定するように、前記電磁場に関連し、それとは異なる前記ベクトル場の体積積分方程式を数値的に解くステップを含む方法。
【請求項25】
前記ベクトル場が、可逆演算子によって前記電磁場に関連付けられる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ベクトル場が基底変換によって前記電磁場に関連付けられ、前記ベクトル場が前記材料境界にて連続している、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
構造の電磁散乱特性を計算する方法であって、前記構造が少なくとも一方向に周期的であり、材料の境界で電磁場の不連続を引き起こすように様々な特性の材料を含み、前記方法が、処理デバイスを使用して、基底変換によって前記電磁場に関連するベクトル場の体積積分方程式を数値的に解くステップを含み、前記ベクトル場が、前記ベクトル場の近似解を決定するように、前記材料境界で連続している方法。
【請求項28】
前記電磁散乱特性が、反射係数を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記電磁場が、入射及び散乱電磁場の成分の総和を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記ベクトル場が、前記少なくとも1つの方向に関する少なくとも1つの有限フーリエ級数によって表され、
前記体積積分方程式を前記数値的に解くステップが、畳み込み及び基底変換演算子での前記ベクトル場の畳み込みによって前記電磁場の成分を決定するステップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
畳み込み及び基底変換演算子での前記ベクトル場の前記畳み込みが、高速フーリエ変換(FFT)又は整数論変換(NTT)を含む変換を使用して実行される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記畳み込み及び基底変換演算子Cが、前記少なくとも1つの方向で前記構造の材料及び幾何学的特性を含み、前記材料及び幾何学的特性に従って基底変換を実行することによって前記ベクトル場を前記電磁場に変換するように構成される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記畳み込み及び基底変換演算子が、有限離散畳み込みに従って演算する、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記体積積分方程式を前記数値的に解くステップが、畳み込み演算子での前記ベクトル場の畳み込みによって電流密度を決定するステップを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
畳み込み演算子での前記ベクトル場の前記畳み込みが、高速フーリエ変換(FFT)又は整数論変換(NTT)を含む変換を使用して実行される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記畳み込み演算子が、前記少なくとも1つの方向で前記構造の材料及び幾何学的特性を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記畳み込み演算子が、有限離散畳み込みに従って演算する、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記電流密度が、コントラスト電流密度である、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記電流密度が、前記少なくとも1つの方向に関する少なくとも1つの有限フーリエ級数によって表される、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記体積積分方程式を前記数値的に解くステップが、グリーン関数演算子での前記電流密度の畳み込みによって散乱電磁場を決定するステップをさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
グリーン関数演算子での前記電流密度の前記畳み込みが、高速フーリエ変換(FFT)又は整数論変換(NTT)を含む変換を使用して実行される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記ベクトル場が、前記少なくとも1つの材料境界に対して接線方向の前記電磁場の連続成分、及び前記少なくとも1つの材料境界に対して法線方向の前記電磁束密度の前記連続成分をフィルタリングするために法線ベクトル場を使用することにより、前記電磁場及び対応する電磁束密度の場の成分の組合せから構築される、請求項27に記載の方法。
【請求項43】
畳み込み及び基底変換演算子での前記ベクトル場の前記近似解の畳み込みによって、前記電磁場を決定するステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項44】
前記畳み込みが、高速フーリエ変換(FFT)又は整数論変換(NTT)を含む変換を使用して実行される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
放射によるオブジェクトの照明から生じて検出された電磁散乱特性から前記オブジェクトの近似構造を再構築する方法であって、
処理デバイスを使用して、少なくとも1つのオブジェクト構造を推定するステップと、
前記処理デバイスを使用して、前記少なくとも1つの推定されたオブジェクト構造から少なくとも1つのモデル電磁散乱特性を決定するステップと、
前記処理デバイスを使用して、前記検出された電磁散乱特性を前記少なくとも1つのモデル電磁散乱特性と比較するステップと、
前記処理デバイスを使用して、前記比較の結果に基づいて近似オブジェクト構造を決定するステップと、
を含み、
前記モデル電磁散乱特性が、
構造の電磁散乱特性を計算するステップであって、前記構造が少なくとも一方向に周期的であり、材料の境界で電磁場の不連続を引き起こすように様々な特性の材料を含むステップと、
基底の変換によって前記電磁場に関連するベクトル場の体積積分方程式を数値的に解くステップであって、前記ベクトル場が、前記ベクトル場の近似解を決定するように前記材料境界にて連続しているステップと
によって決定される方法。
【請求項46】
ライブラリ内で複数の前記モデル電磁散乱特性を構成するステップをさらに含み、
前記比較するステップが、前記検出された電磁散乱特性を前記ライブラリの内容と一致させるステップを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
少なくとも1つのオブジェクト構造を推定する前記ステップと、少なくとも1つのモデル電磁散乱特性を決定する前記ステップと、前記検出された電磁散乱を比較する前記ステップとを反復するステップをさらに含み、
少なくとも1つのオブジェクト構造を推定する前記ステップが、以前の反復で比較した前記結果に基づく、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
オブジェクトの近似構造を再構築する検査装置であって、
放射で前記オブジェクトを照明するように構成された照明システムと、
前記照明から生じた電磁散乱特性を検出するように構成された検出システムと、
プロセッサであって、
少なくとも1つのオブジェクト構造を推定し、
前記少なくとも1つの推定されたオブジェクト構造から少なくとも1つのモデル電磁散乱特性を決定し、
前記検出された電磁散乱特性を前記少なくとも1つのモデル電磁散乱特性と比較し、
前記検出された電磁散乱特性と前記少なくとも1つのモデル電磁散乱特性との差から近似オブジェクト構造を決定する
ように構成されたプロセッサと、
を備え、
前記プロセッサが、
少なくとも一方向に周期的であり、材料の境界で電磁場の不連続を引き起こすように様々な特性の材料を含む構造の電磁散乱特性を計算するステップと、
基底の変換によって前記電磁場に関連するベクトル場の体積積分方程式を数値的に解くステップであって、前記ベクトル場が、前記ベクトル場の近似解を決定するように前記材料境界にて連続しているステップと、
によって前記モデル電磁散乱特性を決定するように構成される検査装置。
【請求項49】
自身上に記憶されたコンピュータ実行可能命令を有する有形のコンピュータ可読媒体であって、前記命令がコンピュータデバイスによって実行されると、計算デバイスに、
少なくとも一方向に周期的であり、材料の境界で電磁場の不連続を引き起こすように様々な特性の材料を含む構造の電磁散乱特性を計算するステップと、
基底の変換によって前記電磁場に関連するベクトル場の体積積分方程式を数値的に解くステップであって、前記ベクトル場が、前記ベクトル場の近似解を決定するように前記材料境界にて連続しているステップと
を含む方法を実行させるコンピュータ可読媒体。
【請求項50】
構造の電磁散乱特性を計算する方法であって、前記構造が少なくとも一方向に周期的であり、材料の境界で電磁場の不連続を引き起こすように様々な特性の材料を含み、前記方法が、計算デバイスを使用して、ベクトル場の近似解を決定するように、前記電磁場に関連し、それとは異なる前記ベクトル場の体積積分方程式を数値的に解くステップを含む方法。
【請求項51】
前記ベクトル場が、可逆演算子によって前記電磁場に関連付けられる、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記ベクトル場が、基底変換によって前記電磁場に関連付けられ、前記ベクトル場が、前記材料境界で連続している、請求項50に記載の方法。
【請求項1】
構造の電磁散乱特性を計算する方法であって、前記構造が少なくとも一方向に周期的であり、材料の境界で電磁場の不連続を引き起こすように様々な特性の材料を含み、前記方法が、基底の変換によって前記電磁場に関連するベクトル場の体積積分方程式を数値的に解くステップを含み、前記ベクトル場が、前記ベクトル場の近似解を決定するように前記材料境界にて連続している方法。
【請求項2】
前記電磁散乱特性が、反射係数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電磁場が、入射及び散乱電磁場成分の総和を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ベクトル場が、前記少なくとも一方向に関して少なくとも1つの有限フーリエ級数で表され、前記体積積分方程式を数値的に解く前記ステップが、畳み込み及び基底変換演算子での前記ベクトル場の畳み込みによって前記電磁場の成分を決定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
畳み込み及び基底変換演算子での前記ベクトル場の前記畳み込みが、高速フーリエ変換(FFT)及び整数論変換(NTT)を含む組から選択される変換を使用して実行される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記畳み込み及び基底変換演算子Cが、前記少なくとも1つの方向に前記構造の材料及び幾何学的特性を含み、前記材料及び幾何学的特性に従って基底変換を実行することにより、前記ベクトル場を前記電磁場に変換するように構成される、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記畳み込み及び基底変換演算子が、有限離散畳み込みに従って演算する、請求項4から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記体積積分方程式を数値的に解く前記ステップが、畳み込み演算子での前記ベクトル場の畳み込みによって電流密度を決定するステップを含む、請求項4から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
畳み込み演算子での前記ベクトル場の前記畳み込みが、高速フーリエ変換(FFT)及び整数論変換(NTT)を含む組から選択される変換を使用して実行される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記畳み込み演算子が、前記少なくとも1つの方向で前記構造の材料及び幾何学的特性を含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記畳み込み演算子が、有限離散畳み込みに従って演算する、請求項8から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記電流密度が、コントラスト電流密度である、請求項8から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記電流密度が、前記少なくとも1つの方向に関する少なくとも1つの有限フーリエ級数によって表される、請求項8から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記体積積分方程式を数値的に解く前記ステップが、グリーン関数演算子での前記電流密度の畳み込みによって散乱電磁場を決定するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
グリーン関数演算子での前記電流密度の前記畳み込みが、高速フーリエ変換(FFT)及び整数論変換(NTT)を含む組から選択される変換を使用して実行される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ベクトル場が、前記少なくとも1つの材料境界に対して接線方向の前記電磁場の連続成分、及び前記少なくとも1つの材料境界に対して法線方向の前記電磁束密度の前記連続成分をフィルタリングするために法線ベクトル場を使用することにより、前記電磁場及び対応する前記電磁束密度の場の成分の組合せから構築される、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
畳み込み及び基底変換演算子での前記ベクトル場の前記近似解の畳み込みによって、前記電磁場を決定するステップをさらに含む、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記畳み込みが、高速フーリエ変換(FFT)及び整数論変換(NTT)を含む組から選択される変換を使用して実行される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
放射によるオブジェクトの照明から生じて検出された電磁散乱特性から前記オブジェクトの近似構造を再構築する方法であって、
少なくとも1つのオブジェクト構造を推定するステップと、
前記少なくとも1つの推定されたオブジェクト構造から少なくとも1つのモデル電磁散乱特性を決定するステップと、
前記検出された電磁散乱特性を前記少なくとも1つのモデル電磁散乱特性と比較するステップと、
前記比較の結果に基づいて近似オブジェクト構造を決定するステップと、
を含み、
前記モデル電磁散乱特性が、構造の電磁散乱特性を計算する方法を使用して決定され、前記構造が少なくとも一方向に周期的であり、材料の境界で電磁場の不連続を引き起こすように様々な特性の材料を含み、前記方法が、基底の変換によって前記電磁場に関連するベクトル場の体積積分方程式を数値的に解くステップを含み、前記ベクトル場が、前記ベクトル場の近似解を決定するように前記材料境界にて連続している方法。
【請求項20】
ライブラリ内で複数の前記モデル電磁散乱特性を構成するステップをさらに含み、前記比較するステップが、前記検出された電磁散乱特性を前記ライブラリの内容と一致させるステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1つのオブジェクト構造を推定する前記ステップと、少なくとも1つのモデル電磁散乱特性を決定する前記ステップと、前記検出された電磁散乱を比較する前記ステップとを反復するステップをさらに含み、少なくとも1つのオブジェクト構造を推定する前記ステップが、以前の反復で比較した前記ステップの結果に基づく、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
オブジェクトの近似構造を再構築する検査装置であって、
放射で前記オブジェクトを照明するように構成された照明システムと、
前記照明から生じた電磁散乱特性を検出するように構成された検出システムと、
プロセッサであって、
少なくとも1つのオブジェクト構造を推定し、
前記少なくとも1つの推定されたオブジェクト構造から少なくとも1つのモデル電磁散乱特性を決定し、
前記検出された電磁散乱特性を前記少なくとも1つのモデル電磁散乱特性と比較し、
前記検出された電磁散乱特性と前記少なくとも1つのモデル電磁散乱特性との差から近似オブジェクト構造を決定する
ように構成されたプロセッサと、
を備え、
前記プロセッサが、構造の電磁散乱特性を計算する方法を使用して前記モデル電磁散乱特性を決定するように構成され、前記構造が少なくとも一方向に周期的であり、材料の境界で電磁場の不連続を引き起こすように様々な特性の材料を含み、前記方法が、基底の変換によって前記電磁場に関連するベクトル場の体積積分方程式を数値的に解くステップを含み、前記ベクトル場が、前記ベクトル場の近似解を決定するように前記材料境界にて連続している検査装置。
【請求項23】
構造の電磁散乱特性を計算するために機械読み取り式命令の1つ又は複数のシーケンスを含むコンピュータプログラムプロダクトであって、前記命令が、1つ又は複数のプロセッサに前記構造の電磁散乱特性を計算する方法を実行させるように構成され、前記構造が、少なくとも一方向に周期的であり、材料の境界で電磁場の不連続を引き起こすように様々な特性の材料を含み、前記方法が、基底の変換によって前記電磁場に関連するベクトル場の体積積分方程式を数値的に解くステップを含み、前記ベクトル場が、前記ベクトル場の近似解を決定するように前記材料境界にて連続しているコンピュータプログラムプロダクト。
【請求項24】
構造の電磁散乱特性を計算する方法であって、前記構造が少なくとも一方向に周期的であり、材料の境界で電磁場の不連続を引き起こすように様々な特性の材料を含み、前記方法が、ベクトル場の近似解を決定するように、前記電磁場に関連し、それとは異なる前記ベクトル場の体積積分方程式を数値的に解くステップを含む方法。
【請求項25】
前記ベクトル場が、可逆演算子によって前記電磁場に関連付けられる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ベクトル場が基底変換によって前記電磁場に関連付けられ、前記ベクトル場が前記材料境界にて連続している、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
構造の電磁散乱特性を計算する方法であって、前記構造が少なくとも一方向に周期的であり、材料の境界で電磁場の不連続を引き起こすように様々な特性の材料を含み、前記方法が、処理デバイスを使用して、基底変換によって前記電磁場に関連するベクトル場の体積積分方程式を数値的に解くステップを含み、前記ベクトル場が、前記ベクトル場の近似解を決定するように、前記材料境界で連続している方法。
【請求項28】
前記電磁散乱特性が、反射係数を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記電磁場が、入射及び散乱電磁場の成分の総和を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記ベクトル場が、前記少なくとも1つの方向に関する少なくとも1つの有限フーリエ級数によって表され、
前記体積積分方程式を前記数値的に解くステップが、畳み込み及び基底変換演算子での前記ベクトル場の畳み込みによって前記電磁場の成分を決定するステップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
畳み込み及び基底変換演算子での前記ベクトル場の前記畳み込みが、高速フーリエ変換(FFT)又は整数論変換(NTT)を含む変換を使用して実行される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記畳み込み及び基底変換演算子Cが、前記少なくとも1つの方向で前記構造の材料及び幾何学的特性を含み、前記材料及び幾何学的特性に従って基底変換を実行することによって前記ベクトル場を前記電磁場に変換するように構成される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記畳み込み及び基底変換演算子が、有限離散畳み込みに従って演算する、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記体積積分方程式を前記数値的に解くステップが、畳み込み演算子での前記ベクトル場の畳み込みによって電流密度を決定するステップを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
畳み込み演算子での前記ベクトル場の前記畳み込みが、高速フーリエ変換(FFT)又は整数論変換(NTT)を含む変換を使用して実行される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記畳み込み演算子が、前記少なくとも1つの方向で前記構造の材料及び幾何学的特性を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記畳み込み演算子が、有限離散畳み込みに従って演算する、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記電流密度が、コントラスト電流密度である、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記電流密度が、前記少なくとも1つの方向に関する少なくとも1つの有限フーリエ級数によって表される、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記体積積分方程式を前記数値的に解くステップが、グリーン関数演算子での前記電流密度の畳み込みによって散乱電磁場を決定するステップをさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
グリーン関数演算子での前記電流密度の前記畳み込みが、高速フーリエ変換(FFT)又は整数論変換(NTT)を含む変換を使用して実行される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記ベクトル場が、前記少なくとも1つの材料境界に対して接線方向の前記電磁場の連続成分、及び前記少なくとも1つの材料境界に対して法線方向の前記電磁束密度の前記連続成分をフィルタリングするために法線ベクトル場を使用することにより、前記電磁場及び対応する電磁束密度の場の成分の組合せから構築される、請求項27に記載の方法。
【請求項43】
畳み込み及び基底変換演算子での前記ベクトル場の前記近似解の畳み込みによって、前記電磁場を決定するステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項44】
前記畳み込みが、高速フーリエ変換(FFT)又は整数論変換(NTT)を含む変換を使用して実行される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
放射によるオブジェクトの照明から生じて検出された電磁散乱特性から前記オブジェクトの近似構造を再構築する方法であって、
処理デバイスを使用して、少なくとも1つのオブジェクト構造を推定するステップと、
前記処理デバイスを使用して、前記少なくとも1つの推定されたオブジェクト構造から少なくとも1つのモデル電磁散乱特性を決定するステップと、
前記処理デバイスを使用して、前記検出された電磁散乱特性を前記少なくとも1つのモデル電磁散乱特性と比較するステップと、
前記処理デバイスを使用して、前記比較の結果に基づいて近似オブジェクト構造を決定するステップと、
を含み、
前記モデル電磁散乱特性が、
構造の電磁散乱特性を計算するステップであって、前記構造が少なくとも一方向に周期的であり、材料の境界で電磁場の不連続を引き起こすように様々な特性の材料を含むステップと、
基底の変換によって前記電磁場に関連するベクトル場の体積積分方程式を数値的に解くステップであって、前記ベクトル場が、前記ベクトル場の近似解を決定するように前記材料境界にて連続しているステップと
によって決定される方法。
【請求項46】
ライブラリ内で複数の前記モデル電磁散乱特性を構成するステップをさらに含み、
前記比較するステップが、前記検出された電磁散乱特性を前記ライブラリの内容と一致させるステップを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
少なくとも1つのオブジェクト構造を推定する前記ステップと、少なくとも1つのモデル電磁散乱特性を決定する前記ステップと、前記検出された電磁散乱を比較する前記ステップとを反復するステップをさらに含み、
少なくとも1つのオブジェクト構造を推定する前記ステップが、以前の反復で比較した前記結果に基づく、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
オブジェクトの近似構造を再構築する検査装置であって、
放射で前記オブジェクトを照明するように構成された照明システムと、
前記照明から生じた電磁散乱特性を検出するように構成された検出システムと、
プロセッサであって、
少なくとも1つのオブジェクト構造を推定し、
前記少なくとも1つの推定されたオブジェクト構造から少なくとも1つのモデル電磁散乱特性を決定し、
前記検出された電磁散乱特性を前記少なくとも1つのモデル電磁散乱特性と比較し、
前記検出された電磁散乱特性と前記少なくとも1つのモデル電磁散乱特性との差から近似オブジェクト構造を決定する
ように構成されたプロセッサと、
を備え、
前記プロセッサが、
少なくとも一方向に周期的であり、材料の境界で電磁場の不連続を引き起こすように様々な特性の材料を含む構造の電磁散乱特性を計算するステップと、
基底の変換によって前記電磁場に関連するベクトル場の体積積分方程式を数値的に解くステップであって、前記ベクトル場が、前記ベクトル場の近似解を決定するように前記材料境界にて連続しているステップと、
によって前記モデル電磁散乱特性を決定するように構成される検査装置。
【請求項49】
自身上に記憶されたコンピュータ実行可能命令を有する有形のコンピュータ可読媒体であって、前記命令がコンピュータデバイスによって実行されると、計算デバイスに、
少なくとも一方向に周期的であり、材料の境界で電磁場の不連続を引き起こすように様々な特性の材料を含む構造の電磁散乱特性を計算するステップと、
基底の変換によって前記電磁場に関連するベクトル場の体積積分方程式を数値的に解くステップであって、前記ベクトル場が、前記ベクトル場の近似解を決定するように前記材料境界にて連続しているステップと
を含む方法を実行させるコンピュータ可読媒体。
【請求項50】
構造の電磁散乱特性を計算する方法であって、前記構造が少なくとも一方向に周期的であり、材料の境界で電磁場の不連続を引き起こすように様々な特性の材料を含み、前記方法が、計算デバイスを使用して、ベクトル場の近似解を決定するように、前記電磁場に関連し、それとは異なる前記ベクトル場の体積積分方程式を数値的に解くステップを含む方法。
【請求項51】
前記ベクトル場が、可逆演算子によって前記電磁場に関連付けられる、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記ベクトル場が、基底変換によって前記電磁場に関連付けられ、前記ベクトル場が、前記材料境界で連続している、請求項50に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2011−128137(P2011−128137A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−208657(P2010−208657)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(504151804)エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ. (1,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208657(P2010−208657)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(504151804)エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ. (1,856)
【Fターム(参考)】
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