説明

微細構造体の製造方法

【課題】 高アスペクト比な金属微細構造体を高精度で容易に得ることができる微細構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】 微細構造体の製造方法は、Si基板に第1の絶縁膜を形成する第1工程と、第1の絶縁膜の一部を除去してSi表面を露出する第2工程と、露出されたSi表面からSi基板をエッチングして凹部を形成する第3工程と、凹部の側壁及び底部に第2の絶縁膜を形成する第4工程と、凹部の底部に形成された第2の絶縁膜の少なくとも一部を除去してSiの露出面を形成する第5工程と、Siの露出面より凹部に金属を電解めっきにより充填する第6工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微細構造体の製造方法に関し、モールドを用いる金属の電解めっきによる微細構造体、特に高アスペクト比の微細構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周期構造を有するマイクロ微細構造体、特に高アスペクト比構造は、多くの分野で必要とされている。例えば、X線の吸収特性を利用した金からなるマイクロ構造体は、工業的利用として物体の非破壊検査、医療的利用としてレントゲン撮影等に用いられている。これらは、物体や生体内の構成元素や密度差によりX線透過時の吸収の違いを利用してコントラスト画像を形成するものであり、X線吸収コントラスト法と言われる。
【0003】
また、X線の位相差を用いた位相コントラスト法は軽元素までイメージングできるために、研究が盛んに行なわれ、伝播法やタルボ干渉法等が原理的に可能となっている。タルボ干渉を用いる方法では、X線吸収の大きな周期構造の金からなる吸収格子を使用する方法が一般的である。金の高アスペクト比(アスペクト比とは、構造体の高さまたは深さhと横幅wの比(h/w)である。)の微細構造体の直接形成が困難であるため、金の周期構造からなる吸収格子の作製方法としては、モールドにメッキにより金を充填する方法が好適である。
【0004】
特許文献1には、前記位相コントラスト法用のX線光学透過格子の構造が開示されている。また、構造のアスペクト比が高まると、製造精度が著しく低下する課題に対して、部分格子を組合せて1つの格子の機能を果たすことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−203066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1においては、高アスペクト比の微細構造体の製造方法に関して開示されていない。
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、高アスペクト比な金属微細構造体を高精度で容易に得ることができる微細構造体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としての微細構造体の製造方法は、Si基板に第1の絶縁膜を形成する第1工程と、前記第1の絶縁膜の一部を除去してSi表面を露出する第2工程と、該露出されたSi表面から前記Si基板をエッチングして凹部を形成する第3工程と、前記凹部の側壁及び底部に第2の絶縁膜を形成する第4工程と、前記凹部の底部に形成された前記第2の絶縁膜の少なくとも一部を除去してSiの露出面を形成する第5工程と、前記Siの露出面より前記凹部に金属を電解めっきにより充填する第6工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高アスペクト比な金属微細構造体を高精度で容易に得ることができる微細構造体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る微細構造体の製造方法を説明する図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る微細構造体の製造方法を説明する図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る微細構造体の製造方法を説明する図である。
【図4】(a)は本発明の実施例に係る基板(ウエハ)の模式図であり、(b)は本発明の実施例に係る基板上のパターンを表す図である。
【図5】本発明の微細構造体の製造方法の第3の実施態様を説明する図である。
【図6】本発明の実施形態に係る撮像装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態の微細構造体の製造方法では、まず、微細加工技術でSi微細構造体を形成する。そして、該Si微細構造体をモールドにして、その内部に電解めっきで金属の微細構造体を形成する。この方法によって、高アスペクト比な金属微細格子構造を高精度且つ容易に製造することが可能になる。
【0011】
以下、図面を参照して、本実施形態を詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の微細構造体の製造方法の第1の実施態様を説明する図である。この製造方法は、Si基板の片面に微細構造体を形成して、該微細構造体をモールドにして、その内部に電解めっきで金属の微細構造体を形成する方法である。
まず、Si基板の表面および裏面に第1の絶縁膜を形成する(第1工程)。図1(A)に示すように、Si基板10の表面1および裏面2に第1の絶縁膜20を形成する。Si基板10のサイズや厚みは、所望の微細構造体に対応して決めることができる。また、Si基板10の抵抗率は10Ωcm以下、好ましくは0.1Ωcm以下が最適である。
【0013】
第1の絶縁膜20の材質は、Si基板10に対して十分に抵抗率が高い絶縁材である。第1の絶縁膜20の抵抗率が、Si基板10の抵抗率の10倍以上であることが好ましい。第1の絶縁膜20は、後の工程のSi微細構造体の加工で十分な選択比が取れ、マスク材として使用可能であることが好ましい。第1の絶縁膜20の材質は、例えば、SiOまたはSi窒化膜が好ましい。第1の絶縁膜20の厚みは、0.1μm以上5μm以下が好ましい。SiOの成膜方法は、例えば、熱酸化法や化学気相堆積法(CVD)がある。Si窒化膜の成膜方法は、例えば、化学気相堆積法(CVD)がある。基板の表面および裏面にも第1の絶縁膜20を形成しておくことが好適である。
【0014】
次に、前記Si基板の表面の第1の絶縁膜の一部を除去してSi基板のSi表面を露出する(第2工程)。図1(B)に示すように、第1の絶縁膜20の一部を除去し、マスクパターン21を形成すると同時に、Si基板10の表面を部分的に露出させ、Si表面11の部分を形成する。第1の絶縁膜20の部分除去を、第1の絶縁膜20の材質がSiOの場合を例にして説明する。例えば、第1の絶縁膜20の上に金属膜(例えば、Cr)を形成した後、フォトレジスト(例えば、AZ1500:AZ エレクトロニック マテリアルズ社製)を塗布する。そして、フォトレジストを露光して、パターンを形成する。パターンの形状やサイズは、目的とする金属の微細構造体によって決まる。例えば、周期構造で、周期が1μmから100μm程度で、一辺の長さが0.5μmから80μmの正方形のパターンを用いることができる。そして、エッチングによって、フォトレジストパターンを金属膜に転写する。金属膜のエッチング方法としては、溶液使用のウェットエッチング法とイオンスパッタや反応性ガスプラズマ等のドライエッチング法がある。そして、パターンが転写された金属膜をマスクにして、第1の絶縁膜20をエッチングする。第1の絶縁膜20のエッチングは、例えば、ドライエッチング法が好ましい。SiOの場合、CHFプラズマによるドライエッチング法が好ましい。
【0015】
次に、前記Si基板の表面の第1の絶縁膜をマスクとして露出されたSi表面からSi基板をエッチングしてSiの凹部を形成する(第3工程)。図1(C)に示すように、前記第1の絶縁膜20の部分除去によって露出されたSi表面11の部分から、前記加工で形成された第1の絶縁膜のパターン21をマスクにして、Si基板10を加工してSiの凹部12を形成する。図には、前記Siの凹部12の側壁13と底部14をそれぞれ表記している。Si基板10の加工方法として、溶液使用のウェットエッチング法とイオンスパッタや反応性ガスプラズマ等のドライエッチング法がある。反応性ガスプラズマによるドライエッチングの中でも、反応性イオンエッチング(RIE)が高アスペクト比構造の形成に適している。RIEの中でも、SFガスによるエッチングとCガスによる側壁保護膜堆積を交互に行うBoschプロセスRIEが、より高アスペクト比構造の形成に適している。BoschプロセスRIEを用いれば、アスペクト比が100程度の構造を加工することが可能である。BoschプロセスRIEを用いた場合、RIE後に、側壁保護膜を除去することが望ましい。除去の方法として、例えば、ハイドロフルオロエーテル(HFE)溶液による洗浄がある。
【0016】
次に、前記Siの凹部の側壁及び底部に第2の絶縁膜を形成する(第4工程)。図1(D)に示すように、前記加工により形成されたSiの凹部12の側壁13及び底部14に第2の絶縁膜30を形成する。第2の絶縁膜30の材質は、前記第1の絶縁膜20と同じでもよく、異なっても良い。例えば、第1の絶縁膜20と第2の絶縁膜30の材質は共にSiOが用いられる。または、第1の絶縁膜20の材質はSiOであり、第2の絶縁膜30の材質はSiの窒化膜である。または、第1の絶縁膜20の材質はSiの窒化膜であり、第2の絶縁膜30の材質はSiOである。第2の絶縁膜30の厚みは、5nmから5000nmの範囲で、好ましくは10nmから1000nmで、最も好ましくは20nmから200nmである。第2の絶縁膜30の厚みは、Siの凹部12と側壁13の領域で均等である必要がなく、最も薄いところで10nm以上であればよい。更に好ましくは、第2の絶縁膜30の厚みが34の部分(Siの凹部12の底部14)で最も薄くなる。第2の絶縁膜30は、側壁13と底部14以外の部分(例えば、基板の上部21または基板の裏面)に形成されても不都合がない。
【0017】
次に、前記Siの凹部の底部に形成された第2の絶縁膜を少なくとも部分的に除去してSiの露出面を形成する(第5工程)。図1(E)に示すように、前記Siの凹部12の底部14に形成された第2の絶縁膜34を少なくとも部分的に除去し、Siの露出面15を形成する。第2の絶縁膜34の部分除去は、異方性の強いドライエッチング法が好ましい。例えば、イオンスパッタや反応性ガスプラズマエッチング法がある。エッチングの異方性により、底部の第2の絶縁膜34が優先的に除去されるが、側壁の第2の絶縁膜34が少なくとも薄く残され、側壁のSiが露出されないことが可能である。また、基板の表面にある絶縁膜を底部の第2の絶縁膜34より十分に厚くしておけば、第2の絶縁膜34が除去されても、基板の表面からSiの表面が露出することがない。第2の絶縁膜34がSiOの場合、CHFプラズマによるドライエッチング法が好ましい。図1(E)に示したSiの露出面15は、Siの凹部12の底部14に対応する。底部14が露出後、必要に応じて、図1(G)で示すように、底部14を更に加工して、底部14と隣接するSi凹部の側壁17を更に露出しても、本実施形態の実施に好都合である。以上の工程で、めっき用Siモールド40が形成される。
【0018】
次に、前記Siの露出面よりSiの凹部に金属を電解めっきにより充填して金属の微細構造体を形成する(第6工程)。図1(F)に示すように、Siモールド40をモールドにして、前記Siの露出面15より前記Si構造の内部12に金属を電解めっきして、金属の微細構造体50を形成する。Siモールド40では、Siの露出面15であるSiの凹部の底部の表面だけが露出され、基板の裏面を含めた他の部分は全部絶縁膜によって覆われている。そのために、電解めっきのとき、金属がSiの露出面15よりしか析出できない。その結果、Siモールド40の凹部12の内部に緻密な金属の微細構造体が形成できる。金属は、電解めっきで微細構造体が形成可能な金属であればよく、例えば、Au、Niが好ましい。電解めっき用モールド側の電極パッドは、例えば、Si基板10の表面の外周、或いは裏面に形成すればよい。形成方法として、図1(E)までのSiモールド40の形成が完了後、Si基板10の外周、或いは裏面の適宜な個所で前記第1の絶縁膜20および第2の絶縁膜30を除去して、Si基板の表面を露出させる方法が挙げられる。また、図1(A)から(E)で示したSiの凹部12を形成すると同時に、Si基板10の表面の外周の適宜な個所で電極パッドに適する面積のSiの凹部を形成してもよい。
【0019】
以上に説明した製造方法の工程は、どれでも良く知られているMEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を使用しており、容易に実施できる。また、本実施形態では、通常の電解めっきで必要とするシード電極を新たに形成する必要がなく、製造工程が少ない。特に、高アスペクト比構造の底部へシード電極を選択的に形成する難しい技術が不要で、製造が容易である。
【0020】
本実施形態によって、アスペクト比が0.1から150、好ましくは5から100の金属微細格子構造をサブμmの高精度で製造できる。
図2は、本発明の微細構造体の製造方法の第2の実施態様を説明する図である。図2には、本発明の第2実施形態を示す。ここでは、Si基板の両面に微細構造体を形成して、該微細構造体をモールドにして、その内部に電解めっきで金属の微細構造体を形成する方法を開示する。
【0021】
まず、Si基板の表面1および裏面2に第1の絶縁膜を形成する(第1工程)。次に、前記Si基板の表面の第1の絶縁膜の一部を除去してSi基板のSi表面を露出した後、前記Si基板の表面の第1の絶縁膜をマスクとして露出されたSi表面からSi基板をエッチングして、前記Si基板の表面にSiの凹部を形成する(第2工程)。
【0022】
具体的には、図2(A)から(C)に示すように、Si基板10の表面にSi微細構造体を形成する。形成方法は、第1実施形態において図1(A)から(C)で示した方法と同様に行うことができる。
【0023】
次に、前記Si基板の裏面の第1の絶縁膜の一部を除去してSi基板のSi表面を露出した後、前記Si基板の裏面の第1の絶縁膜をマスクとして露出されたSi表面からSi基板をエッチングして、前記Si基板の裏面にSiの凹部を形成する(第3工程)。
【0024】
図2(D)に示すように、前記Si基板10の表面に形成されたSiの凹部に対応したSiの凹部を、裏面からの加工によりSi基板10の裏面に略鏡面対称に形成する。すなわち、前記Si基板の表面および裏面にSiの凹部を鏡面対称になる様に形成する。裏面のSi微細構造体は、平面形状的には表面のSi微細構造体と略鏡面対称であることが好ましい。表裏のSiの凹部の位置関係を正確に組めるために、裏面のフォトレジストパターンを形成するとき、Si基板の表面にあらかじめ形成した位置合わせマークを用いて、位置合わせを行う。一方、表裏のSiの凹部は、深さは同じである必要がない。表裏のSiの凹部の中間に残る中間層16は、十分に薄いことが好ましい。例えば、中間層16の厚さが500μm以下であり、より好ましくは50μm以下である。中間層16の厚さを考慮して、Si基板10の厚みを決めればよい。
【0025】
次に、前記Si基板の表面および裏面のSiの凹部の側壁及び底部に第2の絶縁膜を形成する(第4工程)。図2(E)に示すように、前記加工により形成されたSiの凹部12の側壁13及び底部14に第2の絶縁膜30を形成する。このとき、表裏のSiの凹部へ第2の絶縁膜30を同時に形成してもよく、それぞれ別に形成しても良い。また、表裏のSiの凹部へ形成される第2の絶縁膜30の材質がほぼ同様でもよく、異なっても良い。第2の絶縁膜30の形成方法及び厚み等は、第1実施形態において図1(D)で説明したものと同様でもよい。
【0026】
次に、前記Si基板の表面および裏面のSiの凹部の底部に形成された第2の絶縁膜を少なくとも部分的に除去してSiの露出面を形成する(第5工程)。図2(F)に示すように、前記Siの凹部12の底部14に形成された第2の絶縁膜34を少なくとも部分的に除去し、Siの露出面15を形成する。この工程を、表裏のSiの凹部に対してそれぞれ実施する。第2の絶縁膜34の部分除去方法は、第1実施形態において図1(E)で説明したものと同様でもよい。以上の図2(A)から(F)で示した工程で、基板の両面にSiの凹部からなるSi微細構造体のめっき用Siモールド40が形成される。
【0027】
次に、前記Si基板の表面および裏面のSiの露出面よりSiの凹部に金属を電解めっきにより充填して金属の微細構造体を形成する(第6工程)。図2(G)から(H)に示すように、Siモールド40をモールドにして、前記Siの露出面15より前記Siの凹部の内部12に金属を電解めっきして、金属の微細構造体50をSi基板の両面に形成する。金属の電解めっき方法は、第1実施形態において図1(F)で説明したものと同様でもよい。
【0028】
本実施形態によれば、高アスペクト比の金属構造をSi基板の両面に形成することが可能である。多くの応用では、例えば、X線吸収格子の場合、X線の総合吸収効果は、表裏の金属微細構造体の吸収効果のほぼ単純足し算になる。すなわち、Si基板の両面に金属微細構造体を形成した場合、金属微細構造体のアスペクト比は、表裏の金属微細構造体のアスペクト比の和になる。例えば、表裏の金属微細構造体がほぼ同じな場合、金属微細構造体の全体アスペクト比が片面の場合のほぼ2倍になる。
【0029】
また、めっきはモールドの両面からの同時進行なので、めっきに要する時間が片面ずつで行う場合より大幅に短縮できる。本実施形態のもう一つの効果は、加工精度の確保である。この方法では、金属微細構造体の加工精度は、Si微細構造体によってほぼ決まる。Si微細構造体の加工は、片面の場合とほぼ同様であるので、その加工精度も片面の場合とほぼ同様である。また、片面に形成可能なアスペクト比の金属構造でも、両面形成によって、加工難度の低減と加工精度の向上ができる。加工の難度の増加と加工精度の低下は、まず、高アスペクト比のSi微細構造体モールドの加工で生じ、アスペクト比の増加にしたがって顕著になる。特に構造のアスペクト比が50以上では、Si微細構造体の乱れと倒れ等の問題が生じやすく、その加工条件が厳しくなり、加工レートも落ちる。
【0030】
そして、Si微細構造体モールドへの金属のめっきでは、アスペクト比が高いほど、めっき液がSiの凹部の底部まで入りにくく、凹部の中での循環が悪い。そのために、めっきレートを抑えてめっきするしかなく、生産性が悪い。更に、Siの凹部でのめっきが不均一になりやすく、金属構造体にボイドができやすい。本実施形態は、上記課題の低減に顕著な効果がある。本実施形態によれば、高アスペクト比が200程度の金属微細格子構造をサブμmの高精度で比較的に容易に製造できる。
【0031】
図3は本発明の微細構造体の製造方法の第3の実施態様を説明する図である。ここでは、Si基板の両面に形成した微細構造体を貫通してSiモールドを作製し、その内部に電解めっきで金属の微細構造体を形成する方法である。
【0032】
具体的には、Si基板の表面および裏面の第1の絶縁膜をマスクとして露出されたSi表面からSi基板をエッチングして、前記Si基板の表面および裏面にSiの凹部を各々の凹部が貫通するか、または貫通しない様に形成することができる。本実施態様はSiの凹部を各々の凹部を貫通して形成する方法である。前記Siの露出面は前記Siの凹部の底部の一部、側壁の一部、またはその両方であることができる。
【0033】
まず、図3(A)から(G)に示すように、Si基板10からSiの凹部を形成して、Siモールド40を作製する。図3(A)から(F)に示す工程は、第2実施形態において図2(A)から(F)で示した方法と同様でもよい。本実施形態では、図3(F)の状態から、図3(G)に示すように、表裏のSiの凹部の中間にある中間層16を少なくとも部分的に除去し、表裏のSiの凹部を貫通する。この工程によって、Siの凹部の側面に露出面17ができる。ここでのSi中間層16の除去は、第1実施形態において図1(C)で示した方法と同様でもよい。図3(A)から(G)の工程により、貫通したSiの凹部を持つSiモールド40が形成される。
【0034】
次に、図3(H)から(J)に示すように、前記貫通したSiの凹部を持つSiモールド40を用いて、前記Siの露出面17より前記Si構造の内部12に金属を電解めっきして、金属の微細構造体50を形成する。金属の電解めっき方法は、第1実施形態および第2実施形態とほぼ同様でもよいので、差異だけ説明する。まず、第1実施形態および第2実施形態と異なって、本実施形態では、Siの凹部からなるSi微細構造体が貫通しており、Siの露出面17が主にSi微細構造体の凹部の側壁に形成されている。よって、金属を電解めっきするとき、図3(H)に示すように、最初の段階では、金属の析出がSiの露出面17からしか発生しない。やがて、図3(I)に示すように、析出した金属50よりSi微細構造体内のめっき液の通路を閉鎖される。そして、図3(J)に示すように、金属めっきを継続して、所望の金属微細構造体50を形成する。
【0035】
本実施形態によれば、貫通したSiモールドに高アスペクト比の金属微細構造体を形成することが可能である。この場合、第2実施形態に加えて、下記の効果がある。つまり、Si微細構造体が貫通しているので、Siの凹部からなるSi微細構造体内部におけるめっき液の循環は、Si微細構造体が貫通していない場合よりよくなっている。これは、Si微細構造体内部でのめっきをより容易にすることになる。特に、めっき初期のめっき核形成がより迅速にできる。この状態は、Si微細構造体内の通路が金属50より閉鎖される(図3(I))まで続く。また、本実施形態で製造する金属の微細構造体は、一体化になっているので、よりよい素子特性が期待できる。
【実施例1】
【0036】
本実施例では、図1に示すように、Si基板の片面にSi微細構造体を形成して、該微細構造体をモールドにして、その内部に電解めっきでAuの微細構造体を形成した。
まず、図1(A)に示すように、Si基板10の上に第1の絶縁膜20を形成する。Si基板は、100mmφ、400μm厚で、抵抗率が0.02Ωcmである。第1の絶縁膜20の材質は、SiOである。SiOの成膜方法はウェット熱酸化法を用いた。1050℃で4時間の熱酸化によって、Si基板10の表裏にそれぞれ1.2μm程度のSiO膜を形成した。SiO膜の抵抗率は、1000Ωcm以上であった。
【0037】
次に、図1(B)に示すように、前記第1の絶縁膜SiOの一部を除去し、マスクパターン21を形成すると同時に、Si基板10の表面を部分的に露出させ、Si表面11の部分を形成した。具体的に、まず、SiOの上に金属膜として100nm厚のCr膜を真空蒸着法で堆積した。そして、Cr膜の上にフォトレジストとして約3μm厚のAZ1500を塗布した。そして、フォトレジストを露光して、所望のパターンを形成した。図4(A)に示すように、パターン60は、基板10の表面のほぼ中央に配置され、面積が50mmφ程度であった。パターンは周期構造で、図4(B)に示すように、周期p=8μmで、一辺の長さw=4μmの正方形のアレイであった。
【0038】
そして、市販のCrエッチング液によってCrをエッチングし、フォトレジストパターンをCrに転写した。そして、Crパターンをマスクにして、CHFプラズマによるドライエッチング法でSiOをエッチングし、Si表面部分11を露出させた。そして、Cr膜を前記エッチング液にて全部取り除いて、図4に示すように、SiOのパターン21で被覆され、Si基板10の表面部分11が露出された状態にした。ここで、図4Aに示すように、電極パッド70を形成するために、基板10の周辺部に約1mm角のパターンを同時に形成した。
【0039】
次に、図1(C)に示すように、SiOのパターン21でマスクにして、Si基板10を加工してSiの四角柱アレイ構造を形成した。Si基板10の加工方法として、SFガスによるエッチングとCガスによる側壁保護膜堆積を交互に行うBoschプロセスRIEを用いた。BoschプロセスRIE後、側壁保護膜を除去するために、ハイドロフルオロエーテル(HFE)溶液、そして硫酸と過酸化水素の混合液によって、基板洗浄を行った。
【0040】
走査電子顕微鏡(SEM)によるSi構造の断面観察によって、Si四角柱の高さ約240μmであると確認した。また、収束イオンビーム(FIB)でSi四角柱を切断して、その断面形状を調べたところ、Si四角柱の断面がほぼ正方形であった。凹部の表面近傍では、正方形の一辺の長さwがほぼ4μmであったが、凹部の底部近傍では、正方形の一辺の長さwが約3.6μmとなった。よって、得られたSi四角柱のアスペクト比が約60であった。また、Si四角柱上にSiO膜21の厚みが0.2μm以上残っていることも、SEM断面観察によって確認した。
【0041】
次に、図1(D)に示すように、前記加工により形成されたSiの凹部12の側壁13及び底部14に第2の絶縁膜30を形成する。ここでは、第2の絶縁膜30をもSiOにした。第2の絶縁膜30の膜厚は、約100nmであった。第2の絶縁膜30の形成方法は、図1(A)で説明した熱酸化であった。熱酸化の好ましい点は、得られたSiO膜の緻密性が高く、厚みが比較的に均等である。熱酸化によって、13と14以外の部分、つまり、SiO膜に覆われている基板の上部21または基板の裏面部分においても、熱酸化が進行して、SiO膜の膜厚が増える。これは、後の工程にとって好都合である。
【0042】
次に、図1(E)に示すように、前記Siの凹部12の底部14に形成されたSiO膜34を除去し、Siの露出面15を形成した。SiO膜34の部分除去は、CHFプラズマによるドライエッチング法を用いた。このエッチングは高い異方性があり、基板にほぼ垂直の方向で進行する。よって、底部のSiO膜34が完全に除去されても、側壁にSiO膜が残され、側壁のSiが露出されなかった。また、基板の上面にあるSiO膜21は、図1(D)に示した熱酸化より、図1(C)の時点の0.2μm以上よりも厚くなり、34が完全に除去されても、SiO膜21が残され、その部分からSiの表面が露出することがなかった。以上の工程で、凹部の底面にのみSiの露出面があり、それ以外の部分が高抵抗率のSiO膜に覆われているめっき用Siモールド40が形成された。
【0043】
次に、図1(F)に示すように、40をモールドにして、前記Siの露出面15より前記Si構造の内部12にAuを電解めっきして、Auの微細構造体50を形成した。Auのめっき液として、ミクロファブAu1101(メーカー:日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース株式会社)を使用した。めっき時、めっき液の温度を60℃に保持し、電流密度を0.2A/dmにした。めっきの均一性を確保するために、めっき液を攪拌した。電解めっき用モールド側の電極パッドとして、図4(A)に示したSi露出面70を利用した。
【0044】
Siモールド40は、Siの露出面15で示したSiの凹部の底部の表面が露出され、他の部分は全部絶縁膜であるSiO膜によって覆われている。よって、Au電解めっきのとき、AuがSiの露出面15よりしか析出しなかった。その結果、Siモールド40の凹部12の内部に緻密なAuの微細構造体が形成できた。
【0045】
Au微細構造体50の高さは、めっき時間で制御し、200μm程度とした。つまり、得られたAu微細構造体のアスペクト比が約50であった。SEMなどによる断面観察では、Au微細構造体が緻密でボイドがなかった。また、X線顕微鏡評価では、コントラストが鮮明な格子像を得られ、Au微細構造体によるX線の吸収を確認できた。
【0046】
本実施例に示すように、本実施形態は、必要とする要素技術はどれでも良く知られているMEMS技術であり、容易に実施できる。特に、加工性の良いSi基板をモールドにし、モールドの表面を絶縁性SiO膜で覆って、導電性の良いモールド凹部の底部のみからAuを析出させる発想によって、少ない製造工程で高アスペクト比の金属微細格子構造をサブμmの高精度で製造できる。更に、SiO膜の使用によって、モールドの側壁等への不要なAu析出を防ぐことができ、Auめっき時のめっき液の選択性を高めた。
【実施例2】
【0047】
本実施例では、図2に示すように、Si基板の両面にSi微細構造体を形成して、該微細構造体をモールドにして、その内部に電解めっきでAuの微細構造体を形成した。
まず、図2(A)から(C)に示すように、Si基板10の表面にSi微細構造体を形成した。形成方法は、第1実施形態において図1(A)から(C)で示した方法と同様でもよいので、差異部分だけを説明する。
【0048】
Si基板は、100mmφ、300μm厚で、抵抗率が0.02Ωcmであった。形成したSi微細構造体パターンは、周期p=6μmで、幅w=3μmのラインとスペース(L/S)構造であった。Si微細構造体の凹部の深さは約130μmで、幅は表面近傍ではほぼ3μmで、底部近傍では約2.8μmであった。よって、得られたSi溝(凹部)のアスペクト比が約43であった。ここで、後続のSi裏面加工における裏面Si微細構造体の位置決めのために、図4Aに示すように、位置合わせマーク80を同時に形成した。
【0049】
次に、図2(D)に示すように、前記Si基板10の表面に形成されたSi構造に対応した形状を、裏面からの加工により10の裏面に略鏡面対称に形成した。裏面のSi微細構造体は、表面のSi微細構造体とほぼ同じ形状を有し、Si基板の表面の位置合わせマーク80を用いて、位置決めをした。裏面のSi溝(凹部)も、深さが約130μmで、アスペクト比が約43であった。表裏のSi微細構造体の中間に残る層16は、厚さが約40μmであった。
【0050】
次に、図2(E)に示すように、前記加工により形成されたSiの凹部12の側壁13及び底部14に第2の絶縁膜として約50nm厚のSiO膜を熱酸化で形成した。熱酸化方法によって、表裏のSi微細構造体内に同時にSiO膜を均等に形成できた。このとき、SiO膜に覆われている基板の部分においても、熱酸化が進行して、SiO膜の膜厚が増えた。
【0051】
次に、図2(F)に示すように、前記Siの凹部12の底部14に形成されたSiO膜34を選択的に除去し、Siの露出面15を形成する。この工程を、表裏のSi微細構造体に対してそれぞれ実施する。34の部分除去方法は、実施例1において図1(E)で説明したものと同様でもよいので、ここで詳細説明を省略する。図2(A)から(F)で示した以上の工程で、基板の両面にSi微細構造体をもつめっき用Siモールド40が形成された。
【0052】
次に、図2(G)から(H)に示すように、Siモールド40をモールドにして、前記Siの露出面15より前記Si構造の内部12にAuを電解めっきして、金属の微細構造体50をSi基板の両面に形成した。金属の電解めっき方法は、実施例1において図1Fで説明したものと同様でもよいので、ここで詳細説明を省略する。表裏のSi微細構造体に形成したAu微細構造体50の高さは、めっき時間で制御し、それぞれ120μm程度とした。つまり、得られたAu微細構造体のアスペクト比は、表裏面でそれぞれ約43、総じて約86であった。SEMなどによる断面観察では、Au微細構造体が緻密でボイドがなかった。また、X線顕微鏡評価では、コントラストが鮮明な格子像を得られ、Au微細構造体によるX線の吸収を確認できた。
【0053】
本実施例に示すように、本実施形態は、高アスペクト比の金属構造をSi基板の両面に同時に形成できる。これは、製造時間の大幅な短縮だけではなく、加工精度の大幅な向上をももたらす効果がある。
【実施例3】
【0054】
本実施例では、図3に示すように、Si基板の両面に形成した微細構造体を貫通してSiモールドを作製し、その内部に電解めっきでAuの微細構造体を形成した。
まず、図3(A)から(G)に示すように、Si基板10からSi微細構造体を形成して、Siモールド40を作製する。図3(A)から(F)に示す工程は、実施例2において図2(A)から(F)で示した方法と同様でもよいので、ここで詳細説明を省略する。
【0055】
本実施例では、図3(F)の状態から、図3(G)に示すように、表裏のSi微細構造体の中間にある中間層16を除去し、表裏のSi微細構造体を貫通する。この工程によって、Si微細構造体の側面に露出面17ができる。ここでのSi中間層16の除去は、実施例1において図1(C)で示したSiのエッチング方法と同様に行なうことができる。Si中間層16を除去した後、洗浄によって、露出面17でSiが十分に露出するようにした。図3(A)から(G)の工程により、貫通したSi微細構造を持つSiモールド40を形成した。ここで、Si溝(凹部)の深さがSi基板の厚みと同じなので、300μmである。つまり、Si溝(凹部)のアスペクト比が約100である。
【0056】
次に、図3(H)から(J)に示すように、前記貫通したSi微細構造を持つSiモールド40を用いて、前記Siの露出面17より前記Si構造の内部12にAuを電解めっきして、Auの微細構造体50を形成した。Auの電解めっき方法は、実施例1および実施例2とほぼ同様でもよいので、差異だけ説明する。まず、本実施例では、Si微細構造体が貫通しており、Siの露出面17が主にSi微細構造体の凹部の側壁に形成されている。よって、Auを電解めっきするとき、図3(H)に示すように、最初の段階では、金属の析出がSiの露出面17からしか発生しない。つまり、図3(I)に示すように、析出したAu50よりSi微細構造体内の通路を閉鎖するまで、めっき液がSi微細構造体の貫通穴の中を通り抜くことが可能である。このことによって、Si微細構造体の内部におけるめっき液の循環が良く、実施例1および実施例2よりも、めっき効率がよくなっている。
【0057】
そして、図3(J)に示すように、Auめっきを継続して、Au微細構造体50の厚みが約210μmになるようにした。つまり、アスペクト比が約70のAu微細構造体を得た。SEMなどによる断面観察では、Au微細構造体が緻密でボイドがなかった。また、X線顕微鏡評価では、コントラストが鮮明な格子像を得られ、Au微細構造体によるX線の吸収を確認できた。
【0058】
本実施例に示すように、本実施形態は、貫通したSiモールドを用いて、高アスペクト比のAu微細構造体を形成することが可能である。実施例1および実施例2と比較して、さらに下記の効果がある。まず、Si微細構造体が貫通しているので、めっき初期の段階では、めっき核の形成がより迅速で、めっきの効率がよい。また、金の微細構造体が一体化になって、実施例2にあった中間層16がない。これによって、よりよい応用性能が期待できる。
【実施例4】
【0059】
本実施例を図5を用いて説明する。100mmφ、400μm厚で、抵抗率が0.02ΩcmのSi基板10を用いた。Si基板10を1050℃で4時間の熱酸化によって、Si基板10の表裏にそれぞれ約1.0μmの熱酸化膜を形成し第1の絶縁膜20とした(図5(A))。その片面のみを電子ビーム蒸着装置にてクロムを200nm成膜した。その上にポジ型レジストを塗布し、半導体フォトリソグラフィにて50mm角の領域に4μm角のレジストパターンが8μmピッチで2次元状に配置されるようにパターニングを行った。その後、クロムエッチング水溶液にてクロムをエッチングし、続いてCHFを用いた反応性エッチングで熱酸化膜をエッチングした。これにより4μm角のパターンが8μmのピッチで2次元状に配置されたレジストパターンの周囲にSiの露出面が形成された(図5(B))。
【0060】
続いて、図5(C)に示すようにICP−RIEにて露出したSiを異方性の深堀りエッチングを行った。70μmの深堀りエッチングを行ったところで深堀りエッチングを停止した。これにより高さ70μmのSiからなる2次元格子が形成された。続いてUVオゾンアッシングとクロムエッチング水溶液にてレジストとクロムを除去した。さらにハイドロフルオロエーテル、そして硫酸と過酸化水素水の混合液によって、基板洗浄を行った。
【0061】
次に、図5(D)に示すように1050℃で15分間の熱酸化によって、上述のエッチングによって形成されたSiの凹部の側壁13に約0.15μmの熱酸化膜を形成し、これを第2の絶縁膜30とした。次に、図5(E)に示すように、Siの凹部の底部14に形成された熱酸化膜を除去し、Siの露出面15を形成した。熱酸化膜の部分的な除去は、CHFプラズマによるドライエッチング法を用いた。このエッチングは高い異方性があり、基板にほぼ垂直の方向で進行する。そのために、Siの凹部の底部の熱酸化膜34が完全に除去されても、Siの凹部の側壁の熱酸化膜33は残され、側壁のSiが露出されなかった。
【0062】
次に電子ビーム蒸着装置にてクロム、金の順番でそれぞれ約7.5nm、約55nm成膜する。これにより図5(F)に示すようにSiの露出面15にクロムと金からなる金属膜41が付与され、よりめっき核が発生しやすくなる。なお、この結果、Siの凹部の底部において、Si表面と金との間にクロムおよび銅を含む金属膜が介在することになる。
【0063】
次に、上述のエッチングが施された面の裏側に形成された熱酸化膜をCHFプラズマによるドライエッチング法にて除去しSiを露出させた。本実施例ではこれをモールド40として用いた。
【0064】
次に、図5(G)に示すように露出させたSi基板の裏側18を通じて通電させ、金めっきを行ない金属の微細構造体50を形成した。金めっきはノンシアン金めっき液(ミクロファブAu1101、日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース)にてめっき液温度60℃、電流密度0.2A/dmにて8時間のめっきを行った。これにより約50μmの厚さの金からなる金属の微細構造体50が形成された。SEMによる断面観察では、金からなる金属の微細構造体50は緻密でボイドがなく高さも揃っていた。また、X線顕微鏡評価では、コントラストが鮮明な格子像を得られ、金からなる金属の微細構造体50によるX線の吸収を確認できた。
【実施例5】
【0065】
本実施例を図5を用いて説明する。100mmφ、400μm厚で、抵抗率が0.02ΩcmのSi基板10を用いた。Si基板10を1050℃で4時間の熱酸化によって、Si基板10の表裏にそれぞれ約1.0μmの熱酸化膜を形成し第1の絶縁膜20とした(図5(A))。その片面のみを電子ビーム蒸着装置にてクロムを200nm成膜した。その上にポジ型レジストを塗布し、半導体フォトリソグラフィにて50mm角の領域に2μm角のレジストパターンが4μmピッチで2次元状に配置されるようにパターニングを行った。その後、クロムエッチング水溶液にてクロムをエッチングし、続いてCHFを用いた反応性エッチングで熱酸化膜をエッチングした。これにより2μm角のパターンが4μmのピッチで2次元状に配置されたレジストパターンの周囲にSiの露出面が形成された(図5(B))。
【0066】
続いて、図5(C)に示すようにICP−RIEにて露出したSiを異方性の深堀りエッチングを行った。70μmの深堀りエッチングを行ったところで深堀りエッチングを停止した。これにより高さ70μmのSiからなる2次元格子が形成された。続いてUVオゾンアッシングとクロムエッチング水溶液にてレジストとクロムを除去した。さらにハイドロフルオロエーテル、そして硫酸と過酸化水素水の混合液によって、基板洗浄を行った。水洗後、イソプロピルアルコールに基板を浸し超臨界二酸化炭素を用いた超臨界乾燥にて基板を乾燥させた。
【0067】
次に、図5(D)に示すように1050℃で15分間の熱酸化によって、上述のエッチングによって形成されたSiの凹部の側壁13に約0.15μmの熱酸化膜を形成し、これを第2の絶縁膜30とした。次に、図5(E)に示すように、Siの凹部の底部14に形成された熱酸化膜を除去し、Siの露出面15を形成した。熱酸化膜の部分的な除去は、CHFプラズマによるドライエッチング法を用いた。このエッチングは高い異方性があり、基板にほぼ垂直の方向で進行する。そのために、Siの凹部の底部の熱酸化膜34が完全に除去されても、Siの凹部の側壁の熱酸化膜33は残され、側壁のSiが露出されなかった。
【0068】
次に電子ビーム蒸着装置にてクロム、銅の順番でそれぞれ約7.5nm、約50nm成膜する。これにより図5(F)に示すようにSiの露出面15にクロムと銅からなる金属膜41を付与した。銅は金よりもイオン化傾向が大きいためSiの凹部の底部14上の銅の表面は金めっき液に浸したときに金に置換されより金めっき核が発生しやすくなる。また、電子ビーム蒸着の際にSiの凹部の側壁13に僅かに付着してしまった銅は溶解され除去される。これによりSiの凹部の底部14上からめっき成長が促進される。なお、この結果、Siの凹部の底部において、Si表面と金との間にクロムおよび銅を含む金属膜が介在することになる。
【0069】
次に、上述のエッチングが施された面の裏側に形成された熱酸化膜をCHFプラズマによるドライエッチング法にて除去しSiを露出させた。本実施例ではこれをモールド40として用いた。
【0070】
次に、図5(G)に示すように露出させたSi基板の裏側18を通じて通電させ、金めっきを行ない金属の微細構造体50を形成した。金めっきはノンシアン金めっき液(ミクロファブAu1101、日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース)にてめっき液温度60℃、電流密度0.2A/dmにて8時間のめっきを行った。これにより約50μmの厚さの金からなる金属の微細構造体50が形成された。SEMによる断面観察では、金からなる金属の微細構造体50は緻密でボイドがなく高さも揃っており、各Siの凹部12内の金属の微細構造体50表面は平坦であった。また、X線顕微鏡評価では、コントラストが鮮明な格子像を得られ、金からなる金属の微細構造体50によるX線の吸収を確認できた。
【0071】
本実施形態の微細構造体の製造方法は、高アスペクト比な金属微細構造体を高精度で容易に得ることができるので、X線吸収格子や、X線ビームスプリッターや、フォトニック結晶や、メタマテリアルや、透過電子顕微鏡用金属メッシュなどに利用することができる。
【0072】
次に、X線タルボ干渉法を用いた撮像装置について図6を用いて説明する。図6は、前述の実施形態または実施例で製造した微細構造体をX線吸収格子として用いた撮像装置の構成図である。
【0073】
本実施形態の撮像装置は、空間的に可干渉なX線を放出するX線源100、X線の位相を周期的に変調するための回折格子200、X線の吸収部(遮蔽部)と透過部が配列された吸収格子300、X線を検出する検出器400を備えている。吸収格子300は、前述の実施形態または実施例で製造した微細構造体である。
【0074】
X線源100と回折格子200の間に被検体500を配置すると、被検体500によるX線の位相シフト情報がモアレとして検出器に検出される。つまりこの撮像装置は被検体500の位相情報を持つモアレを撮像することで被検体500を撮像している。この検出結果に基づいてフーリエ変換等の位相回復処理を行うと、被検体の位相像を得ることができる。
本実施形態の撮像装置によれば、より欠陥の少ない吸収格子を用いているため、被検体の位相像をより正確に得ることができる。
【0075】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【0076】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0077】
1 Si基板の表面
2 Si基板の裏面
10 Si基板
11 部分的に露出されたSi基板の表面
12 Siの凹部
13 Siの凹部の側壁
14 Siの凹部の底部
15 Siの露出面
20 第1の絶縁膜
21 第1の絶縁膜のパターン
30 第2の絶縁膜
33 Siの凹部の側壁に形成された第2の絶縁膜
34 Siの凹部の底部に形成された第2の絶縁膜
40 Siモールド
41 金属膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si基板に第1の絶縁膜を形成する第1工程と、
前記第1の絶縁膜の一部を除去してSi表面を露出する第2工程と、
該露出されたSi表面から前記Si基板をエッチングして凹部を形成する第3工程と、
前記凹部の側壁及び底部に第2の絶縁膜を形成する第4工程と、
前記凹部の底部に形成された前記第2の絶縁膜の少なくとも一部を除去してSiの露出面を形成する第5工程と、
前記Siの露出面より前記凹部に金属を電解めっきにより充填する第6工程と、を有することを特徴とする微細構造体の製造方法。
【請求項2】
前記第1工程において、前記第1の絶縁膜を前記Si基板の表面および裏面に形成し、
前記第2工程において、前記Si基板の表面の前記第1の絶縁膜の一部を除去して前記Si表面を露出し、
前記第3工程において、前記Si基板の表面の第1の絶縁膜をマスクとして露出されたSi表面からSi基板をエッチングしてSiの凹部を形成し、
前記第4工程において、第2の絶縁膜を前記Siの凹部の側壁及び底部に形成し、
前記第5工程において、前記Siの凹部の底部に形成された前記第2の絶縁膜を少なくとも部分的に除去してSiの露出面を形成し、
前記第6工程において、前記Siの露出面よりSiの凹部に金属を電解めっきにより充填して金属の微細構造体を形成することを特徴とする請求項1に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項3】
前記第1工程において、第1の絶縁膜をSi基板の表面および裏面に形成し、
前記第2工程において、前記Si基板の表面の前記第1の絶縁膜の一部を除去してSi基板のSi表面を露出した後、前記Si基板の表面の第1の絶縁膜をマスクとして露出されたSi表面からSi基板をエッチングして、前記Si基板の表面にSiの凹部を形成し、
前記第3工程において、前記Si基板の裏面の第1の絶縁膜の一部を除去してSi基板のSi表面を露出した後、前記Si基板の裏面の第1の絶縁膜をマスクとして露出されたSi表面からSi基板をエッチングして、前記Si基板の裏面にSiの凹部を形成し、
前記第4工程において、第2の絶縁膜を前記Si基板の表面および裏面のSiの凹部の側壁及び底部に形成し、
前記第5工程において、前記Si基板の表面および裏面のSiの凹部の底部に形成された前記第2の絶縁膜を少なくとも部分的に除去してSiの露出面を形成し、
前記第6工程において、前記Si基板の表面および裏面のSiの露出面よりSiの凹部に金属を電解めっきにより充填して金属の微細構造体を形成することを特徴とする請求項1に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項4】
前記Si基板の表面および裏面にSiの凹部を鏡面対称になる様に形成することを特徴とする請求項3に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項5】
前記Si基板の表面および裏面の第1の絶縁膜をマスクとして露出されたSi表面からSi基板をエッチングして、前記Si基板の表面および裏面にSiの凹部を各々の凹部が貫通するか、または貫通しない様に形成することを特徴とする請求項3または4に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項6】
前記第5工程において、前記Siの露出面は前記Siの凹部の側壁の一部を含む請求項1乃至5のいずれか1項に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項7】
前記Si基板は、抵抗率が10Ωcm以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項8】
Si基板の表面に第1の絶縁膜を形成する工程と、
前記第1の絶縁膜の一部を除去してSi表面を露出させる工程と、
該露出したSi表面から前記Si基板をエッチングして凹部を形成する工程と、
前記凹部の側壁および底部に第2の絶縁膜を形成する工程と、
前記凹部の底部に形成されている前記第2の絶縁膜の少なくとも一部を除去してSi表面を露出させる工程と、
前記底部の該露出したSi表面の上に金属膜を付与する工程と、
前記金属膜から電解めっきにより前記凹部に金属を充填する工程と、を有することを特徴とする微細構造体の製造方法。
【請求項9】
電子ビーム蒸着装置を使用して、前記金属膜を付与することを特徴とする請求項8に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項10】
前記金属膜は、前記金属よりイオン化傾向が大きい金属を含むことを特徴とする請求項8に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項11】
複数の凹部が設けられているSi基板と、
前記複数の凹部のそれぞれに絶縁膜を介して充填されている金属と、を備え、
前記絶縁膜は、前記凹部の底部の少なくとも一部には設けられておらず、
前記少なくとも一部において、前記Si基板のSi表面と前記金属とが接していることを特徴とする微細構造体。
【請求項12】
複数の穴が設けられているSi基板と、
前記複数の穴のそれぞれに絶縁膜を介して充填されている金属と、を備え、
前記絶縁膜は、前記穴の側面の一部には設けられておらず、
前記一部において、前記Si基板のSi表面と前記金属とが接していることを特徴とする微細構造体。
【請求項13】
複数の凹部が設けられているSi基板と、
前記複数の凹部のそれぞれに絶縁膜を介して充填されている金属と、を備え、
前記絶縁膜は、前記凹部の底部の少なくとも一部には設けられておらず、
前記少なくとも一部において、前記Si基板のSi表面と前記金属との間に金属膜が介在していることを特徴とする微細構造体。
【請求項14】
前記金属膜は、前記金属よりイオン化傾向が大きい金属を含むことを特徴とする請求項13に記載の微細構造体。
【請求項15】
被検体を撮像する撮像装置であって、
X線源と、
前記X線源からのX線を回折する回折格子と、
前記回折格子によって回折された前記X線の一部を吸収する吸収格子と、
前記吸収格子を経たX線を検出する検出器と、を備え、
前記吸収格子は、請求項11乃至13のいずれか1項に記載の微細構造体であることを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−157622(P2011−157622A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265093(P2010−265093)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】