説明

心肺の全面的な支援を必要とすることなく心臓弁又は周辺組織を治療又は交換するための装置

体外心肺バイパスを必要とすることなく、実行又は使用可能な外科的処置を行うため、患者の心臓の血管内、心内膜、又は内腔内の対処をするための方法及び複合的な機械器具に関するものである。更に、これらの処置は、比較的少ない数の小さな切開部を介して実施することができる。これらの処置には、実例として、心臓弁移植、心臓弁治療、罹患した心臓弁の切除、心臓弁の置換、心室瘤の治療、不整脈の治療、大動脈解離の治療等が含まれる。このような低浸襲的処置は経心尖で(即ち、左心室心尖部又は右心室心尖部で心筋を介して)行われるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2004年10月2日付けでアメリカ合衆国に出願されたプロビジョナル(仮)特許出願第60/615,009号の利益を主張し、これによって前記プロビジョナル(仮)特許出願の内容は完全に本願中に組み込まれる。
【0002】
本発明は、全体として、心臓血管処置を行うための複数の方法及び装置に関し、この心臓血管処置では、大動脈の心臓弁又はセグメントは、生体外の心肺支援処置を使用することなく(一般的には「オフ・ポンプ」処置と呼ばれている。)、治療され、又は、交換される。例えば、本発明は、心臓弁のうちの一つに、特に、大動脈弁に到達し、その一部を切除し、治療し、交換するという処置のいずれか一つ又は二つ以上の処置を行うための複数の装置又は方法に関する。本発明は、また、例えば、心臓弁の血管内、心臓内、管腔内の配置、移植又は除去、及び、心臓弁の連続的な交換のような、器具などを生体内に最小限に挿入することを要する心臓病の処置を行うための複数の方法及び複合的な装置に関する。これらの技術は、一般的には、直接アクセスによる経皮的な弁交換(“DAPVR”)と呼ばれている。
【背景技術】
【0003】
胸骨切開のように、生体外のバイパス形成手術や侵襲的な外科治療手術を用いる必要のない、特に、心臓弁の配置や除去及び交換というような、種々の心臓血管処置を満足に実行するための複合的な装置と複数の方法を開発することが望ましい。更に、患者の極めて小さい複数の切開を介して(例えば、幾つかの小さな開胸術によって)、このような処置を行うことが望ましい。このような複数の装置や方法は、病気にかかった心内構造物(例えば、一つ又はそれ以上の心臓弁)へのアクセス、切除、治療、移植、交換のうちのいずれか一つ又は二つ以上を容易にすることが好ましい。このような複数の装置や方法は、好ましくは、閉胸心処置の間に要求される動静脈穿通の数を最小にするべきであり、そして、望ましくは、一回の心臓穿通も一回の大腿動脈穿通も必要とすべきでない。本発明はこれらの要求を満たし、その他の要求も満たす。
【0004】
カテーテルに搭載された弁は、ステントのような折り畳み可能な円筒構造体に組み込まれる(通常は、弁付きステントと呼ばれる。)。
順行性及び逆行性という記述的な用語は、この明細書で患者の脈管構造(血管系)に関して使用されるときには、それぞれ、血液が流れる方向と、血液が流れる方向とは逆の方向とを意味する。動脈系においては、順行性とは下流方向(即ち、生理学的な血流と同じ方向)を指示するのに対し、逆行性とは上流方向(即ち、生理学的な血流とは反対の方向)を指示する。近位及び遠位という用語は、この明細書で処置に使用される器具に関して使用されるときには、それぞれ、より心臓に近い方向と、心臓から遠ざかる方向とを指示する。置換という用語は、通常は、罹患した弁の除去と新しい弁の移植とを意味する。しかしながら、新しい弁は罹患した弁の先端部の上に、直接、移植されることもできる。移植処置は、罹患した弁の除去を除けば、置換処置と同様であろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主題は、生体外の心肺バイパス回路を必要とせず、かつ、限られた数の小さな切開を介して実行し得る、手術を行うために、患者の心臓に血管内、心内膜、又は、管腔内から接近し、これにより、胸骨切開の必要性を減少させる方法に使用される複合的な装置にある。本発明は、少なくとも本発明の好ましい実施形態においては、大動脈弁移植、大動脈弁治療、大動脈弁切除、大動脈弁置換術の全てを、生体外の心肺バイパス、胸骨正中切開、又は、その他の肉眼で見える程の胸部切開を必要とすることなく、有効に行う可能性を企図している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、心臓の4つの弁のいずれの弁をも、適当な心室の壁を介して、順行性アプローチによって置換することを企図している。好ましくは、弁は、経心尖で(すなわち、心筋をその左心室心尖部又は右心室心尖部で通過して)、移植される。しかしながら、この場合には、僧帽弁及び三尖弁の置換は、逆行性アプローチによって実行可能である。その理由は、左心室心尖部又は右心室心尖部を介してこれらの弁に到達するには、その弁を通過する血流に逆らって、これらの弁に接近する必要があるからである。
【0007】
本発明によれば、患者に最小限の侵襲性の手術を実施可能であり、この手術は、患者の心臓に到達して、その心臓壁にアクセス器具を取付け、このアクセス器具は、このアクセス器具を介して出血することを防止する手段を有する。新しい心臓弁は、このアクセス器具を通って移植することができる。このような処置の間に心臓弁を移植することに加えて、外科医は罹患した自己心臓弁を切除することもできる。外科医は、また、このような処理を利用して、大動脈解離を治療することができる。外科医は、また、類似する技術を使用して、損傷した心臓弁を治療することを選択することができる。前述のアクセス器具は、心臓の心尖部に取り付けられることが好ましい。
【0008】
移植装置は、新しい心臓弁が自己弁の内部に取り付けられている間に、自己弁の葉状器官を下方に引っ張るための機構を有することができる。
【0009】
罹患した心臓弁を切除するための本発明の装置は、環状に拡張可能な第1の構成部品の組と、環状に拡張可能な第2の構成部品の組とを有し、前述の第1の組は、第1の長手方向軸と近位切断刃とを有し、前述の第2の組は、第2の長手方向軸と遠位切断歯とを有する。この装置は、第1の構成部品の組が罹患した心臓弁の遠位側で拡張され、第1の構成部品の組が罹患した心臓弁の近位側で拡張され、第1及び第2の構成部品の組が、それぞれの長手方向軸に沿って、同時に軸方向に引張られると、罹患した心臓弁を切除する。これらの第1及び第2の組の環状に拡張可能な構成要素は、同軸であることができる。
【0010】
本発明によれば、患者に取り付けられた(例えば、患者の大動脈の内部に)外科的な装置を通る血流は、心室補助装置のような人造装置によって補充される。その手術部位はダイレクト・オプティカル・テクノロジーによって視覚化され得る。例えば、透明な酸素運搬流体を患者の循環系の一部に注入することが可能であり、そして、手術部位の画像を伝送するために、この透明な流体中に光学装置を挿入することができる。このような技術を使用して、患者の循環系の全血液は前述の透明な酸素運搬流体と一時的に交換され得る。
【0011】
患者の心臓の心室に到達するための器具類にはカテーテルが含まれ、このカテーテルは、心筋の近位面に対してカテーテルを密封させるための近位密封装置を有する。この器具類には、また、カテーテルを介しての出血を防止する手段が含まれる。いくつかの実施形態においては、この器具類には、心筋の遠位面に対してカテーテルを密封させるための遠位密封装置が含まれる。
【0012】
本発明によれば、移植可能な心臓弁は、組織支持構造体と、この組織支持構造体の内部に遺伝子工学によって成長させた生体弁尖(生体弁小葉)とを含むことができる。この遺伝子工学の産物である弁尖(弁小葉)は、ステンレススチールのステントや、ニチノールのステントや、その他の適当な組織支持構造体の内部で成長させることができる。少なくとも3つの弁尖を含むロー・プロファイルの心臓弁を使用することも可能である。これらの弁尖が連続的に開き、連続的に閉じるように、各弁尖の一方の側面は隣接する弁尖に部分的に重なっている。過度に拡張した心臓弁輪を治す代替心臓弁を使用することも可能である。このような心臓弁は、心臓弁の弁尖によって画成された内周と、流体密封ダイヤフラムの外側限界によって画成された外周とを含む。このダイヤフラムは、この内周と外周の間の空間を満たす。
【0013】
外科医は、患者に二本以上のガイドワイヤーを挿入するための装置によって補助される。このような装置は、環状ワイヤー配置装置と、この環状ワイヤー配置装置に着脱可能に取り付けられた一つ又はそれ以上のガイドワイヤーとを含む。この環状ワイヤー配置装置は、既に配置されたガイドワイヤーを追跡するように構成されている。
【0014】
本発明によれば、心臓弁の石灰化は、カテーテル・ベースの超音波装置を石灰化心臓弁に挿入し、かつ、超音波照射を石灰化した心臓弁に集中させて、石灰化した部位を破壊することにより、破壊することができる。このような処置は、石灰化した心臓弁に反射器を挿入し、超音波照射を増幅することによって、より優れたものになり得る。
【0015】
本発明の僧帽弁治療装置は、手術面を画成する第1ヘッドと、第1ヘッドに動作可能に取り付けられた第2ヘッドとを含むことができる。第2のヘッドは、手術面に関して弁尖を置換するように構成される。第1ヘッドはU字形を成し、僧帽弁弁尖の少なくとも二つの部分に付着する付着装置を含む。この治療装置は、第1ヘッドに関して第2ヘッドを操作するためのハンドルを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、大動脈解離は、患者の心臓に到達し、かつ、アクセス器具を通って出血することを防止するように構成されたアクセス器具を心臓壁に配置することによって、治療することができる。大動脈解離を治療するため、解離治療装置がアクセス器具を介して挿入される。この装置は、患者の大動脈に挿入されるように構成された環状拡張コンポーネントと、大動脈解離によって形成された空間を閉鎖する手段とを含むことができる。この空間は、ニードル(注射針)を介して、生物学的に適合した接着剤(例えば、フィブリン、トロンビン、又は、その他の適当な化学的又は生物学的な物質)を、前記空間内に注入することによって閉鎖することができる。この空間は、例えば、機械的縫合や外科的止め金によっても閉鎖可能である。
【0017】
本発明の更に他の特徴、その本質、及び、種々の利点は、以下の詳細な説明と添付図面とから、より明らかになるであろう。この詳細な説明と添付図面を通じて、類似する参照文字は類似する構成要素を表す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は多くの異なる用途を有し、器具の寸法及び形状のような複数の要因の幾つかを、各用途に合わせて、変更することを保証するのは当然であるから、やや包括的な概略図を参照して、本発明の幾つかの態様を記載するのが最良であると信ずる。しかしながら、この議論が抽象的になり過ぎることを避けるために、そして、本発明がより良く理解され、正しく認識されることの助けとして、本発明の具体的使用について頻繁に言及される。ほとんどの場合、これらの参照は、順行性の外科的アプローチによって大動脈弁を切除し、かつ、置換又は移植するために、本発明を使用することについてなされる。しかしながら、この使用は、本発明の考えられる数多の用途のうちの一つに過ぎないということを、再度、強調しておく。
【実施例】
【0019】
本発明が大動脈弁を切除し、かつ、置換又は移植するために使用されると仮定して、その処置は、外科医がその処置中に種々の基準点を設定し、使用することを可能にするため、透視装置を調整することによって開始することができる。外科医は、外科処置のためのアクセス部位を生成するための開胸術を実行することにより開始することができる。本発明の血管内の、心内膜の、又は、管腔内の外科用の複合的な装置は、心筋を直接貫通することによって、好ましくは、左心室心尖部又は右心室心尖部で心筋を貫通することによって(以下、「尖部貫通」という。)、連携して心臓の内部に入る。開胸部位は、図1に示されているように、患者11の第3肋間間隙12、第4肋間間隙14、第5肋間間隙16、又は、剣状突起の下の部位18(すなわち、剣状突起19の直ぐ下の部位)のいずれにも準備することができる。いずれの肋間間隙も適当な手術部位としての要求を満たすことができ、本発明のいくつかの実施形態では、第4、第5、第6肋間間隙が好ましい部位である。これらの部位の全てが、手術によって心臓10の心尖部17に到達する部位である。これらの部位のうちのいずれかひとつに形成された5乃至10cmの切開によって、外科医は、一つのアクセス部位を介して、全ての処置を行うことができる。しかしながら、もう一つの方法として、外科医は内視鏡の技法を使用し、複数の部位に形成された1乃至3cmの切開を利用して、種々の器具を挿入することもできる。
【0020】
心臓が露出されると、心尖部の手術部位の周りに、一つ又は複数の巾着縫合を施すことができる。これにより、外科医は、出血を防止するため、手術中に心臓壁を貫通させられるあらゆる器具の周りに、心筋を同期させることができる。手術のためにアクセスされた心腔からの出血を防止するための他の技法は、以下に、より詳細に記述される。
【0021】
図2は、心臓10の4つの心腔である、右心房24、左心房25、左心室26、及び、右心室27を示す。図2は、また、心臓10の4つの弁である、大動脈弁20、僧帽弁21、肺動脈弁22、及び、三尖弁23を示す。上行大動脈28及び下行大動脈29も、また、図示されている。大動脈弁20を置換するための処置は、左開胸と、心筋に到達するまでの左経心尖切開とを必要とするかも知れない。また、肺動脈弁22を置換するための処置は、右開胸と、心筋に達するまでの右心尖切開とを必要とするかも知れない。三尖弁23と僧帽弁21とに順行性アプローチを可能にするため、複数の切開を介して、右心房24と左心房25とに同様に直接アクセスすることができる。この処置が、患者のいずれの心臓弁の順行性及び逆行性治療に使用可能であるのに対して、次の実施形態としての処置は、大動脈弁20の切除及び順行性置換に関する。この切除措置は、次の処置では省くことが可能であり、そして、置換弁は、また、罹患弁の内部に同軸に配置可能である。
【0022】
この開胸アクセス部位に加えて、外科医は、また、管腔内への(例えば、経皮的な)アクセス部位、好ましくは、患者の大腿部の静脈又は動脈を介してのアクセス部位を必要とするかも知れない。大腿部の静脈アクセス部位は、図3に示すように、大動脈弁20とシノ・チューブラー・ジャンクション(バルサルバ洞と上行大動脈の接合部)36の付近の患者の右心房の内部に、超音波機器34を配置するために使用することができる。超音波機器34は、例えば、AcuNav(商標)診断用超音波カテーテルであることができる。超音波機器34は、また、内頚静脈(IJV)を介して配置可能である。大腿部又は腸骨のアクセス部位を介して超音波機器34を配置するのと、内頚静脈(IJV)部位を介して超音波機器34を配置するのとでは、超音波装置34の向きが逆になる場合がある(すなわち、いずれの方向から超音波機器34が患者の右心房に入るかによって)。経皮的な超音波装置に代わるものとして、外科医は、例えば、標的の弁置換部位の画像を提供する経食道心エコー図(“TEE”)のような、食道経由の視覚化技術を使用することを選択することができる。
【0023】
上述のように、一又はそれ以上の開胸を介して心筋に到達した後、アクセス部位32の心膜30に切開が施される。次に、図4に示すように、心筋40がニードル42又はその他の適当な器具で刺され、心臓の内部構造(この実施例では、左心室26)にアクセスする。ガイドワイヤー44は、左心室26の内部に、順行性の方向46に供給される。血流方向に進んで、ガイドワイヤー44は大動脈弁20を通って前進し、大動脈28に進入する。ガイドワイヤー44は、更に前進して、腸骨動脈又は大腿動脈に進入する。このような実施形態において、係蹄ループを備えたワイヤーが、ガイドワイヤー44を回収するために、大腿部の管腔内部アクセス部位から前進し、ガイドワイヤー44を大腿部の管腔内部アクセス部位から引き出す。これは、患者の脈管構造を通して、ガイドワイヤー44を経心尖アクセス部位から大腿部の管腔内部アクセス部位まで通すことを可能にする。
【0024】
ガイドワイヤー44は、比較的薄くかつ可撓性を有するガイドワイヤーであることができる。外科器具の交換に、よりしっかりした支持を提供するため、ガイドワイヤー44を、より堅いガイドワイヤーと交換することが必要とされる場合がある。これは、図5に示すように、カテーテル50をガイドワイヤー44に被せて挿入し、カテーテル50がその位置を保持している間に、ガイドワイヤー44を患者から取り外し、そして、より堅いガイドワイヤーを挿入することによって達成される。この堅いガイドワイヤーがカテーテル50を貫通すると、堅いガイドワイヤーをその場所に置いたまま、カテーテル50を取り外すことができる。両端を患者の外部に(すなわち、経心尖アクセス部位と大腿部の管腔内部アクセス部位とに)突出させたガイドワイヤーは、双方向使用を可能にするであろう。ワイヤーに案内された器具を両端から挿入することが可能であろうし、ワイヤーで案内された器具を順行性及び逆行性の方向から挿入することができる。
【0025】
本発明の幾つかの実施形態では、より多くの外科器具がアクセスできるように、複数のガイドワイヤーを配置することができる。複数のガイドワイヤーを使用すると、2つの器具を隣り合わせに配置することができる(例えば、血管内超音波法を弁配置装置の次に作動させることができる。)というような利点を提供することができる。複数のガイドワイヤーは、図19及び19Aに示したように、同時に配置することができる。ガイドワイヤー198は、既に配置された最初のガイドワイヤーである(例えば、図6のガイドワイヤー66)。ワイヤー配置装置190又は195は、中空の開口部191又は197によって、ガイドワイヤー198上を滑るように進む。追加のガイドワイヤー192、194及び196は、3本のガイドワイヤーの全てが同時に配置されるように、ワイヤー配置装置190に取り付けられる。追加のガイドワイヤー193はワイヤー配置装置195に取り付けられる。ワイヤー配置装置190又は195には何本のガイドワイヤーでも取り付けることが可能であり、この結果、所望の数の追加のガイドワイヤーを同時に配置することができる。ワイヤー配置装置190又は195は、追加のガイドワイヤーが人体を貫通して設置されると、追加のガイドワイヤーから取り除かれ又は切り取られる。ワイヤー配置装置190又は195は、また、固定装置を内蔵することができる。これにより、追加のガイドワイヤーが人体を貫通しないように、第2の端部で表面に出てくるような場合には、これらのワイヤーは適当な位置に固定可能である(例えば、ワイヤー配置装置190又は195は、追加のガイドワイヤーを適切な位置に保持するために、最初に配置されたガイドワイヤーに固定することができる。)。
【0026】
次に、ニードル42(図4)によって心筋40に形成された開口部を拡張するため、より堅いガイドワイヤー66(図6)上の拡張器(図示せず。)を前進させることができる。心筋40の開口部が必要な寸法まで拡張されると、アクセス器具60を取付けることができる。アクセス器具60は、心腔からの出血を防止する一方で、左心室26の内部の手術部位に到るアクセス・ポートを提供する。アクセス器具60(図6参照)は、工具、装置、器具、ワイヤー、カテーテル、及び、運搬システムを、容易に、かつ、迅速に、挿入することを可能にし、罹患した心臓弁の治療又は切除、又は、新しい心臓弁の移植又は交換を可能にする。
【0027】
第2のアクセス器具又は導入器を末梢動脈(例えば、管腔内部アクセス部位の大腿動脈)の内部に配置することができる。更に、追加のガイドワイヤーを管腔内部アクセス部位から配置することができる。上記に、より詳細に記載されたピギーバック・アプローチを使用して、一つ又はそれ以上の追加のガイドワイヤーを取付けることができる。
【0028】
アクセス器具60は、先端バルーン61と基端バルーン62を有するカテーテル64を含むことができる。バルーン61及び62は、左心室26からの出血を防止するように、心筋40を挟むことができる。アクセス器具60は、出血を防止するために左心室26が適当に密封されるのであれば、冠状動脈を通る血流が妨げられないように、他の適当な方法で固定することができる。アクセス器具60は、また、弁63を含む。弁63は、カテーテル64を介して出血するのを防止する一方で、ガイドワイヤー66の通過と外科器具の挿入を許容する。弁63は、虹彩絞りのように(例えば、レンズの絞りのように)機械的に動作可能である。弁63は、また、小さな中央開口を備えた弾性材料で構成可能であり、この中央開口は、どのような機器が挿通されても拡張するが、挿通された機器によって常に流体密封を維持する。弁63は、いずれかの流体密封弁構造を構成する。
【0029】
アクセス器具60は、弁63のような、一つ又は複数の弁状構造体を含むことができる。直列に配置された複数の弁は、心腔からの漏れに対する別の防御装置として機能することができる。更に、複数の工具の周囲から漏れる可能性があるから、アクセス器具60は並列に配置された複数の弁を含むことができる。このようにして、各器具はそれ自身の弁を通って挿入可能であろう。これは、手術中に使用される各工具の周囲に適当なシールが形成されることを確実にする。
【0030】
本発明の幾つかの実施形態では、血管内、心内膜、及び、管腔内部のうちのいずれか一つ又は二つ以上の視覚化を補助する種々の器械を使用することができる。このような器械は、図7に示されている。更に、体外X線に基づくX線写真撮影装置を使用することができる。好ましくは、心腔内超音波装置34が大腿静脈を介して右心房に配置され、そして、血管内超音波法(IVUS)装置70がガイドワイヤー66上に配置されて、心腔内又は罹患した弁内に挿入される。外部透視装置は、また、手術部位の地図を作り、視覚化するために利用される。
【0031】
IVUS70は、大動脈弁20、シノ・チューブラー・ジャンクション36、及び、腕頭動脈72の位置を見つけて示すために使用可能である。各々の正確な位置を決定するために、IVUSプローブ70の位置はAcuNav(商標)34及び透視法によって同時に追跡される。各目標の位置が確認されると、生体外の透視法が、手術部位の内部の場所を取るIVUS70を用いることなく、これらのポイントを再配置するために後で使用可能であるように、放射線不透過性の標識が患者の皮膚の上か、心臓の表面上に配置される。収縮期の自己弁尖の端部も、また、一時的に標的領域を画成するために、放射線不透過性の標識でマークされ得る。心臓及び大動脈の内部の目標は、人体の外部の患者の皮膚上又は鼓動を打っている心臓の表面上に配置された放射線不透過性の目標によってマークされているから、この技術は、患者及び透視機器が処置中に動かされないことを必要とする。これらの放射線不透過性の目標は、心臓又は大動脈上に直接配置される必要がある。
【0032】
IVUS70、AcuNav(商標)34及び前述の透視機器は、また、罹患した弁を計測するために使用可能である。これは、外科医が適当な寸法の交換用心臓弁を選択することを可能にする。透視法に代わるものとして、外科医は血管造影法のような通常の染料による視覚化技術の使用を選択することができる。この交換用の心臓弁を製造するには材料上の限界が生じるであろうが、標的の手術部位を視覚化する代替手段として、MRI技術を使用することができる。更に、血液を通して見ることができるカメラの進歩によって、標的となる部位の像を生成するためにダイレクト光技術を使用することが可能であろう。超音波データの同時三次元構造は、現在のところ開発途上であるが、適当な代替手段を提供することができると思われる他の視覚化手段である。
【0033】
ダイレクト光技術に関して、標的部位付近の循環系の大動脈その他の構成要素に、澄んだ液体(クリアー・リキッド)が導入され得る。患者の循環系に酸素を運ぶことができる(即ち、一時的に血液の生物学的機能を維持することができる)澄んだ液体を使用することは、ダイレクト光技術を使用する能力を向上させるであろう。更に、心臓は鼓動を打っているから、患者は、処置継続期間中、酸素運搬流体の輸血を受けることが可能であり、その結果、処置の間中、ダイレクトな光学的視覚化を行うことができる。患者の正規の血液は、処置の終わりに返血される。
【0034】
ダイレクトな視覚化技術の他の選択は、(水のような透明な流体で満たされた)透明なバルーンをカメラの前に配置することを含む。カメラと液体を充填されたバルーンは、外科医の見たい表面に対して押し付けられる。透明なバルーンはカメラの視線から血液を排除し、バルーンを介してカメラが見ている像は外科医に伝達される。
【0035】
更に、図8に示すように、本発明は、カテーテルの手段によって、上行大動脈中に塞栓症予防器具80を配置することを含むことができる。塞栓症予防器具80は、大腿部の管腔内部アクセス部位から大動脈弁部位まで、逆向性アプローチで配置されることが好ましい。塞栓症予防器具80は、いずれかの適当な材料で作られたろ過メッシュ又はネットを有することができる。選択された材料は、複数回にわたって、潰され、広げられ、そして、再度、潰されることができる材料でなければならない。塞栓症予防器具80は、代替的に、順行性方向から配置されることができる。本発明に従って挿入されたガイドワイヤー66又は追加のガイドワイヤーを使用して、どちらかのアプローチを実施することができる。
【0036】
単一の塞栓症予防器具80は、大動脈28と環状静脈洞82、84に供給する大動脈弁の流出領域を保護するための固有の特性を有することができる。器具80は、円錐状に形成された密なメッシュ200(図20参照)を有することができる。円錐形のメッシュ200は、大動脈28の壁に半径方向外方への力を及ぼす周辺部204で終端することができる。器具80はカテーテル202を介して動作し、前述の大動脈及び環状静脈洞への供給血液をろ過することができるような寸法を有する。
【0037】
幾つかの実施形態では、塞栓症予防器具80は、図9に示すように、複数の塞栓症予防器具90、92、及び94によって置換可能である。図9においては、冠状静脈洞82及び84は、それぞれ、それ自身の塞栓症予防器具によって(塞栓症予防器具92及び94によって個々に)保護され、そして、大動脈28は塞栓症予防器具90によって保護される。塞栓症予防器具92及び94は、大動脈の内部の手術部位をできる限り透明に維持するため、更に、冠状動脈の内部に配置することもできる。図8の塞栓症予防器具80は、単一の保護器具を適切に配置することにより、塞栓症物質の流れが大動脈28及び冠状静脈洞82及び84のいずれにも流入することを防止するように設計されている。
【0038】
本発明の実施形態のいくつかにおいては、この塞栓症予防器具は順行性のアプローチで配置され得る。例えば、図10は、順行性方向に挿入された塞栓症予防器具92’及び94’を示す。順行性方向から冠状静脈洞内に機器92’及び94’を配置するには、ガイドワイヤー101及び102を開胸アクセス部位で患者から出るままにしておく。冠状静脈洞82及び84は、新しい大動脈弁を配置するのに有用な目標を提供する。このように、器具92’及び94’をこのやり方で配置することにより、外科医は新しい弁を適切に配置するための案内(すなわち、冠状静脈洞82及び84で終端するガイドワイヤー101及び102)を手に入れる。新しい弁は、適切に配置されることを確実にするため、ガイドワイヤー101及び102に沿って順行性方向に挿入可能である。
【0039】
更に、大動脈弓の腕頭動脈、左総頸動脈、及び左鎖骨下動脈に、塞栓症フィルターを配置することができる。
【0040】
本発明の幾つかの実施形態は、切除又は除去の間及びその後に、新しい弁が配置されて作動するまで、自己弁の機能を一時的に果たすことができる、弁が先端に付いたカテーテルや他の一時的な弁装置を使用する。このような一時的な弁装置は、条件を満たす場所にいくつでも配置可能である。例えば、大動脈弁の機能を置換するときには、当該暫定弁を、自己の大動脈弁のすぐ遠位にある上行大動脈に配置することが好ましい場合がある。しかし、下行大動脈に配置された装置によって、大動脈弁の機能を一時的に置換させることができる。このような配置は、心臓をより激しく働かせることになるという不利益を有するが、かかる配置は、前述の外科処置で容認できるという実績がある。
【0041】
更に、本発明の幾つかの実施形態は、経皮的に配置される、回転翼を有する小型の孔型血液ポンプ(例えば、VAD(心室補助装置))の使用を含むことができる。VADは、ガイドワイヤー66上を、逆向性又は順行性の方向に挿入される。あるいは、VADは第2のガイドワイヤー上に挿入可能である。順行方向に挿入される切除及び移植機器のために、経皮的な大腿部アクセス部位から逆行性アプローチでVADを配置することが必要な場合がある。VAD又は他の一時的なポンプ装置は、自己弁が切除又は治療されている間、心臓の自然な機能を支持するために使用される。この暫定的な補助装置は、新しい装置が配置されて機能するまで、所定の位置に配置されている。
【0042】
図39は、塞栓症フィルターと暫定弁とVADの可能な組合せの一つを示す。図39の実施例は、塞栓症フィルター394と暫定弁395を貫通するVAD393を示す。これらの構成要素は、上行大動脈396の大動脈弁392よりも遠位に配置される。塞栓症フィルター394は、また、冠状動脈390及び391を保護するように設計されている。塞栓症フィルター394、VAD393、及び暫定弁395は、全て、ガイドワイヤー397におって案内され得る。これは、弁の治療又は交換処置に使用可能な、ほんの一つの構成要素配置例にすぎない。
【0043】
本発明の幾つかの実施形態では、新しい弁の配置は、第1に、罹患した弁や心内構造物の全体又は部分の切除を含む。罹患した弁の切除を行うために、外科医は、図11に示すような弁除去器具110を使用することができる。弁除去器具110は、外部膨張ルーメン111と、外部膨張ルーメン111の内部に同軸に配置された内部膨張ルーメン112とを合体させている。外部膨張ルーメン111は基部バルーン113で終端する。内部膨張ルーメン112は末端バルーン114で終端する。同軸のカテーテル111及び112は、ガイドワイヤー66上を前進して、アクセス器具60の弁63を通過することができる。半径方向に膨張可能な基部切断装置115は、基部バルーン113の表面に搭載される。半径方向に膨張可能な末端切断装置116は、末端バルーン114の表面に搭載される。弁除去器具110は、末端切断装置116が罹患した大動脈弁20の直ぐ遠位に位置し、かつ、基部切断装置115が罹患した大動脈弁20の直ぐ近位に配置されるまで、下向きに湾曲した状態のバルーン113及び114と折り畳まれた状態の切断装置115及び116と共に、前進させられる。
【0044】
図12に示されているように、バルーン113及び114は、切断装置115及び116が半径方向に拡大し、罹患した弁のほぼ直径の大きさになるまで膨張させられる。次に、内部膨張ルーメン112、末端バルーン114、及び末端切断装置116が、逆向性方向に引張られる。これによって、切断装置115及び116を協働させ、図13に示すように、罹患した大動脈弁の葉状部分130を切断する。バルーン113及び114は収縮可能であり、切断装置115及び116は折り畳み可能であり、バルーン113及び114が収縮状態を維持し、切断装置115及び116が折り畳まれた状態を維持している間に、弁の葉状部分130を切断する。こうして、弁除去器具110と切除された葉状部分130は、アクセス器具60を介して取り去られる。
【0045】
更に、弁除去装置110はセルフ・センタリング(自己心出し)特性を有することができる。弁除去装置110の切断機構は、弁除去装置110によって、心臓腔内又は血管系内の石灰化した、又は、罹患した如何なる組織をも切断又は切除することを可能にする。弁除去装置の各切断動作による切断寸法及び切取り量並びに切取り形状は、弁除去装置を調整することによって、外科医が決定可能である。
【0046】
患者の血管系の内部に外科手術手技を実施するとき、血液がバルーンを通って循環することができるように、環状のバルーンを使用すると有益である。また、リング状のバルーンを使用する場合も、より標準化されたバルーンを使用する場合も、バルーンを選択的に膨張させることができるように、一つ以上の室を有するバルーンを使用すると有益である。図37及び38に、一つ又はそれ以上の膨張室を有するリング形状のバルーンと円筒状のバルーンの例が、それぞれ、図示されている。
【0047】
図37は、リング形状のバルーン370を示す。バルーン370は、仕切板373’、373’’、及び373’’’によって、3つの膨張室に分割可能である。各膨張室は、膨張フランジ(例えば、フランジ374’、374’’、及び374’’’)に取付けられている。各膨張フランジは、カテーテル371の対応する膨張ルーメン(例えば、膨張ルーメン372、372、及び372)に取付けられる。こうして、血流は、膨張フランジ374’、374’’、及び374’’’の間に残存する3つの開口を通って、連続することができる。更に、外科用器具(例えば、VIDs等)は、これらの開口を通過することができる。バルーン370はガイドワイヤー375によって案内され得る。
【0048】
図38は、膨張室381、382、及び383を有する、円筒状のバルーン380を示す。これらの膨張室は、カテーテル387の膨張ルーメン384、385、及び386によって、それぞれ、選択的に膨張可能である。バルーン380は、ガイドワイヤー388によって案内され得る。いずれの形式のバルーンにおいても選択的に膨張可能な室を設けることにより、外科医は、例えば、患者の脈管構造の内部で組織を操作し、又は、外科用器具と人工器官を適切に配置する能力を持つことができる。
【0049】
本発明の幾つかの実施形態においては、ロンジュール装置210のような弁除去用具が使用可能である(図21参照)。ロンジュール装置210は、ハンドル216及び214によってヒンジ211を介して手術可能に制御することができる、スプーン形のヘッド216及び214を有することができる。スプーン形のヘッド212及び214は、それぞれ、先端部213及び215を鋭利にすることができる。ロンジュール装置210は、罹患した弁の葉状部分を切断し、切り裂かれた組織をスプーン形のヘッド212及び214の内部に捕捉するために使用可能である。ロンジュール装置210はアクセス器具60を介して動作可能である。
【0050】
本発明の他の実施形態では、図22の弁切除器220を罹患した弁を切除するのに使用することができる。弁切除器220は、ハンドル222、軸224、凹所226、及び切除器の先端部228を有する。切除器の先端部228は、自己弁の罹患した葉状部分を切り取り、又は、むしり取るために使用可能である。凹所226は、切除された組織を取り除くために保持するように使用可能である。切除器の先端部228は、また、罹患した葉状部分を切り取るために、機械的に動作可能である。切除器220は、また、アクセス器具60を介して動作可能である。罹患した弁を切除するための他の適当な技術技法を、新しい弁を移植する前に使用することもできる。
【0051】
弁切除のための準備において、罹患した弁の石灰化を軟化させ、又は、破砕させることは有益な場合がある。集中的な超音波は、弁の石灰化を破砕するために使用可能であろう。同様の処置は、患者の腎臓結石を破砕するために使用されている。大動脈弁の石灰化は、しばしば、組織片用のポケットに捕捉される。よって、破砕された石灰が弁の葉状部分によって保持されるおそれがある。しかしながら、これらの葉状部分は、既に、曲げやすくなっており、新しい弁の裏で圧縮し、又は、取り除くことが容易になっている。管腔内超音波装置は、前述の集中的な超音波を供給するために使用可能である。更に、管腔内反射器は、超音波の強度を増幅し、カルシウム沈積物をより迅速に破砕するために使用可能である。
【0052】
更に、あるいは、罹患した弁を切除する代わりに、罹患した弁のプラーク又は石灰化は化学的に溶解可能である。所定の位置に配置された塞栓症予防装置90、92、及び94によって、プラーク沈積物を溶解し、又は、解放する化学物質を罹患した弁に導入することができる。標的弁の部位は、この処置中、当該化学物質を包含するように、最初に隔離されることができる。この隔離は、2つのバルーンを膨張させ、大動脈壁と2つのバルーンとによって画成される化学的除去(アブレーション)室を生成することによって、達成可能である。
【0053】
隔離は、また、図36に示す除去室360のような装置によっても行うことができる。除去室360は、患者の脈管構造(例えば、大動脈362)の内部に配置される。この室は、直接アクセスによって経皮的に配置可能であり、又は、これ以外の適当な技法手法によっても配置可能である。除去室360は環状のバルーン361及び363を有する。バルーン361及び363は、血液に除去室をバイパスさせる溝を生成する、管状部材367によって連結されている。心室補助装置は、患者の血流が一時的に細い通路を流れることを補助するため、開口365から管状部材367の内部に挿入可能である。除去室360は、化学物質を除去部位に導入するための化学物質導入装置364と、処置が終了したとき、除去部位から化学物質を一掃するための化学物質排出装置366とを有する。このようにして、この化学的除去処置は、通常の血液循環を行いつつ、大動脈の隔離された区画である前述の室内で実行される。このような技法手法は、使用されている化学物質が患者の循環系に入らないように隔離する。この治療は、罹患した弁を治療し、罹患した弁を弁除去用具で切除する前に罹患した弁から石灰を除去し、又は、罹患した弁の内部に又は先端部上に新しい弁を配置する前に罹患した弁から石灰を除去するために、実行可能である。レーザー光線による切断は、弁の石灰化を崩壊させ、又は、罹患弁の葉状部分を除去及び破壊するために、使用することができる。
【0054】
他の代替手段として、罹患しかつ石灰化した弁はそのまま残しておくことができ、新しい弁をその罹患した弁の内部に又は先端部上に移植することができる。本発明のいくつかの実施形態においては、罹患弁の葉状部分を経皮的に破壊するために、弁形成術を実行する必要がある場合がある。罹患した弁の一部が破壊されていれば、この新しい弁で罹患した弁を拡張することは容易であろう。
【0055】
罹患した弁の操作が完了すると(例えば、複数の目標位置に印を付けたり、罹患した葉状器官を切除したり、石灰化した部分を化学的に溶解させたり等)、塞栓症予防器具90、92、及び94を取り外すことができる(図14)。罹患した葉状器官130(図13)の切除は、弁の縁部141(図14)を置き去りにすることができる。塞栓症予防器具が取り除かれると、弁搬送装置142がアクセス器具60を介して左心室26の内部に挿入され得る。弁搬送装置142は、半径方向に圧縮された状態の新しい弁140を搬送する。弁140は、搬送装置142の上に丸められている。あるいは、弁140は、その他のいずれかの適当な方法で、折られ又は折り畳まれていることができる。弁搬送装置142はガイドワイヤー66に沿って前進させられる。
【0056】
図10に示したような実施形態において、弁搬送装置142は、弁140を解放し配置する前に弁140の安全な方向付けを確実に行うため、ガイドワイヤー101及び102によって案内することができる。このような配送のための進入は、ガイドワイヤー101及び102が管状静脈洞82及び84で終端しているから、冠状動脈閉塞の危険を減少させるであろう。弁140の継ぎ目支持部の間の複数の空間は、冠状動脈に流れる血流量を最大にするために、冠状動脈洞82及び84と適正に整列することができる。
【0057】
本発明の他の実施形態においては、弁140の配置は、心臓内超音波装置(例えば、図7の超音波装置34)と蛍光透視装置とによって補助することができる。弁140の配置、解放、及び、展開は、心臓内の超音波及び透視装置によって同時に監視することができるであろう。この蛍光透視装置は、この処置のより早い段階で配置された放射線不透過性の標識に基づいて、標的領域を監視するであろう。蛍光透視(標識位置)の標的部位と超音波(心臓内超音波)の標的部位とが一致すると、弁を展開するための適正な位置が決定される。その瞬間に、弁140は下記のように展開される。
【0058】
更に、弁搬送装置142は、2つの放射線不透過性の標識を含むことができる。透視によって視覚化された冠状動脈によって、外科医は、搬送装置142上の2つの標識の組の配列を視覚化することが可能であろう。こうして、外科医は、接合部ポスト(commissure posts)が弁配置上に正しく置かれるように、弁を適正に配置することができるであろう。
【0059】
弁搬送装置142は、図15に示すように、二相バルーン150内で終端することができる。或いは、弁140を支持する装置142の端部は、別々に動作可能な2つのバルーンを有することができる。バルーン150の第一相は、膨張させられて、弁140を配置するための案内を提供することにある。バルーン150の第一相は緩衝装置を提供し、バルーン150(即ち、バルーン150の第一相)の近位端が大動脈弁部位の直近位にある左心室の領域に達するとき、搬送装置142が更に前進することを防止するように構成される。
【0060】
バルーン150の連続した膨張は、弁140のベースリング154を膨張させる。ベースリング154が膨張すると、複数のフック156が残存する大動脈弁の縁部141に食い込む。或いは、フック156が縁部141を貫通することはできないが、正しくは、縁部141を強く挟む。接合部支持組織158は、また、開き始める。本発明の幾つかの実施形態では、シノ・チューブラー・ジャンクション36で環状静脈洞82及び84より遠位の交換大動脈弁を支持するために、弁140は末端のステント状構造152を含む。
【0061】
膨張中、心臓内の超音波及び傾向透視は、弁140の姿勢及び配置を監視するために使用可能である。弁140が完全に膨張する前に、外科医は、接合部支持部158の間の空間が環状静脈洞82及び84に整列するように、搬送装置142を回転させることができる。リング154(図16参照)が完全に膨張すると、複数のフック156の全てが縁部141に係合し、そして、フック156及び縁部141は大動脈壁151に部分的に埋め込まれる。ステント状構造体152は、シノ・チューブラー・ジャンクション36で大動脈壁151と係合することができる。接合部支持部158は、また、完全に膨張する。支持部構造体152はベースリング154と調和して膨張可能である。或いは、弁配置は段階的なプロセスによって実行され、このプロセスでは、支持構造体152が膨張して弁の遠位端を固定する前に、ベースリング154が膨張して弁の基部を固定する。新しい弁140の位置と機能は、IVUS、心臓内超音波、及び、蛍光透視のいずれか又は幾つかによって、確認され、監視される。外科医が弁の配置と機能に満足すると、バルーン150は縮小され、そして、弁運搬装置142は左心室26から取り除かれる。
【0062】
大動脈の完全閉鎖が短時間行われるから、この移植プロセスは迅速に行われなければならない。心臓への血流の流入を遮断する必要がある場合がある。これにより、心臓は血液を押し出すために緊張せず、患者の心拍が危険なほど低下することを防止することができる。
【0063】
弁搬送装置142は、新しい弁が現在の自己弁の先端部上に移植されるとき、自己弁の葉状器官を下方へ引張るように設計されることができる。これらの自己の葉状器官は、環状動脈に流入する血液を遮断する可能性がある。しかしながら、自己の葉状器官を大動脈壁に押圧する前に下方へ引張ると、このような閉塞は防止されるであろう。
【0064】
本発明の幾つかの実施形態においては、新しい弁140は、バルーンを使用することなく移植可能な自己膨張式弁であることができる。ベースリング154、フック156、及び、ステント状構造体152は、ニチノール又はその他の形状記憶材料又は自己展開材料によって構成可能である。幾つかの実施形態においては、弁140は、弁140の外面を包囲する輪縄を解放したり、また、弁140の内部に配置された機械的な展開装置を作動させる等の機械的な手段によって、展開可能である。
【0065】
本発明の実施形態のうちのある形態では、弁140はその末端部にステント状支持構造(即ち、ステント状構造体152)を有することができない。もしも、接合部支持部材158が十分に堅い支持柱で構成されるか、このような支持柱で支持されている場合には、弁140はその末端部で大動脈に固定され得ない。ベースリング154に取付けると、弁140を正常に動作させ、かつ、冠状動脈への血流を阻害することなく、弁140を所定の場所に十分に堅固に固定することができる。
【0066】
弁140は、体内に組織を固定するためのいずれかの適当な方法によって、所定位置に固定され得る。ベースリング154の半径方向への展開力は、放射方向強度のみによる所定位置からの移動に対して、弁140を固定するために十分に強固であり得る。もしも、自己弁の縁部が残存していない場合には、大動脈壁151をしっかりとつかむように、フック156を設計することができる。弁140を所定位置に固定するために、機械的に配置される縫い目や止め金を使用することができるであろう。更に、弁140を適当な位置に固定するために、生体適合性接着剤を使用することができるであろう。
【0067】
弁移植処置中に、新しい弁140の展開を収縮させる能力が必要とされる場合がある。接合面が冠状動脈に適正に整列していない場合や、前述の弁が自己の環体の内部に適正に配置されていない場合には、弁の展開を収縮させることによって弁の再配置や再整列が可能になるであろう。このような収縮のための技術は、図23に示されており、ここで、弁230は弁140の可能な実施形態の一つの図解である。
【0068】
弁230は、放射方向に展開可能な支持リング232と、放射方向に転回可能な搭載構造231とを有する。搭載構造231は、ニチノール製ワイヤーで作られた正弦曲線リングである。搭載構造231は、ポイント234、235、及び236で、それぞれ、ワイヤー237、238、及び239に取付けられている。チューブ233を前進させるか、又は、ワイヤー237、238、及び239を引っ込めることによって、搭載構造231は半径方向の内方に引かれ、弁230の展開を効果的に収縮させることができる。弁の展開を収縮させるための他の手段は、本発明の原理・原則に従って使用可能であろう。
【0069】
本発明の或る実施形態では、心筋40の拡張された開口は、自動閉鎖装置で密封される。この自動閉鎖装置は、アクセス器具60の一部であることができる。或いは、アクセス器具60を取り外すと自動閉鎖装置が残されるように、自動閉鎖装置をアクセス器具60を介して挿入することができる。
【0070】
例えば、図17は、閉鎖体搬送装置170と共に納入された自動閉鎖装置172を示す。閉鎖装置172は、近位かさ174と、遠位かさ178と、これらの間の連結軸176とを有することができる。配送軸171は、近位かさ174が開くように、搬送装置170から近位かさ174を前進させるために使用可能である。アクセス器具60のバルーン61及び62は萎まされている。次いで、アクセス器具60と搬送装置170が心臓10から引抜かれる。かさ174は、図18に示すように、心筋40の内面に接触する。アクセス器具60と搬送装置170が更に引抜かれると、遠位かさ178は展開可能になる。かさ178が展開すると、心筋40に形成された孔は密封される。心筋40は、条件に合ういずれかの自動閉鎖装置を使用して閉鎖することができる。或いは、心筋40は縫合によって閉鎖可能である。更に、心筋40は、Amplatzer(商標)閉塞装置、他のダブルーボタンの装置、プラグ、又は、レーザープラグのような、既知のいずれかの閉鎖装置によって閉鎖可能である。
【0071】
心筋と心膜の間の空間への出血は防止されなければならない。心筋は、心膜を閉鎖する必要なく、閉鎖可能である。しかしながら、心膜が自動閉鎖装置で密封されるのであれば、その密封は、心筋と心膜の間の空間に出血することを防止するのに十分に緊密でなければならない。
【0072】
経皮的な大腿部アクセス部位も、また、密封される必要がある。これは、縫合によって、又は、Angioseal(商標)収斂性孔閉鎖装置のような自己閉鎖装置によって、行われ得る。
【0073】
本発明の好ましい実施形態による移植可能な弁は、種々の形態を持つことができる。しかしながら、この移植可能な弁は、いくつかの有益な特徴を提示するであろう。移植可能な弁は、できる限り少ない材料で構成されることが好ましく、容易に折り畳むことができなければならない。この弁は、搬送するために、その展開された直径よりも遙かに小さな寸法まで半径方向に圧縮可能である。この移植可能な弁又はこの弁の支持要素は、この弁が移植されたときに、この弁を効果的に支持し、保持するように、ゴシックアーチ型の構造支持要素を含むことができる。
【0074】
この移植可能な弁は、この弁構造を展開する前に設置される外部ステントを有することができる。本発明の原理・原則に従って製造された弁は、生体適合性を備えた材料で構成されることが好ましい。これらの材料の幾つかは生体吸収性であり、この結果、移植処置直後には、その固着装置と生体人工弁のみが移植されて取り外せないように残る。その弁尖(弁小葉)は、同綴異義語である弁組織(バルブ・ティッシュ)、動物性組織、弁復元材料、心膜、合成繊維、又は、薄いニチノール製メッシュのような合金によって構成可能である。
【0075】
本発明の原理・原則による移植可能な弁は、細胞分裂を抑止することによって、又は、カルシウムの再成長を防止することによって、再狭窄を防止するために薬物を投与することを巧みに避けることができる。これらの薬剤は、弁にカルシウムが形成されることを防止する積極的な防壁として機能することができる。更に、これらの薬剤は大動脈に付けられた新しい弁の回復を刺激することができる。更に、これらの移植可能な弁は、石灰化を阻止するための処理が施されることが好ましい。この移植可能な弁の支持要素は、弁の外に(例えば、新しい弁組織と大動脈壁との間に)位置することも、弁の内に(例えば、弁組織が前記支持要素と大動脈壁の間に位置する等)位置することも可能であり、又は、前記弁の内骨格を形成する(例えば、前記弁の支持要素は、前記移植可能な弁の組織内に位置することが可能である。)ことができる。
【0076】
図24乃至26は、本発明の原理・原則に従って、置換又は移植処置に使用可能な新しい弁を示す。図24の弁240は、接合部ポスト242、243、及び244の基部を取り囲む正弦曲線の取付け部材241を有する。取付け部材241は、半径方向に圧縮可能でかつ拡張可能ないずれかの部材であることができる。図24の部材241は、複数の近位突出部245と、外方へ折り曲げ可能な複数の遠位突出部246とを有する。突出部245及び246は、これらの突出部が外方へ折り曲げられたときには、大動脈壁に係合するためにより適した状態になる。突出部245及び246は、また、これらの突出部が大動脈壁を貫通するように、先の尖った状態、又は、先を鋭利にすることができる。切除後に、自己弁の小さな縁部が残す実施形態では、突起部245及び246は、残された組織の縁部を効果的にかみ合うように、外部に向かって終端するように偏向されている。搬送のため部材241が放射方向に圧縮されているときには、接合部ポスト242、243、及び244とこの弁の弁尖(弁小葉)とは折り畳まれている。
【0077】
弁240は、幾つかの実施形態では、末端部取付けリング248を有することができる。リング248は、シノ・チューブラー・ジャンクションの末端部に係合する。リング248は複数のセグメント249を有し、これらのセグメント249は、大動脈壁により強固に係合するように放射方向の外方へ偏向されている。置換弁は、シノ・チューブラー・ジャンクションの自然湾曲によく似るように設計されている。この湾曲は自然隆起を生成し、ここで前述の置換弁は固定位置から無理に移動させられることのないように堅固に固定可能である。
【0078】
図25の弁250は、ステントフレーム254の内部の組織252を示す。移植弁の弁尖(弁小葉)を形成する組織252は、ステントフレーム254の内部で技術的に処理されるか、直接成長させられ、或いは、技術的に処理されて直接成長させられる。或いは、組織252は、ステントフレーム254に接着され、又は、縫合される。ステントフレーム254は、外部方向に曲がった複数の突起部を組み込むことが可能であり、これらの突起部は、図24の弁240に関して記載された突出部のように、先の尖った先端部、又は、先を鋭利にした先端部を有することができる。また、リング256は、図15のフック156のようなフックの特徴を有することができる。ステントフレーム254は、形状記憶材料又はその他の自己拡張型材料で構成することができる。或いは、ステントフレーム254は、ステンレススチールで構成することが可能であり、又は、バルーンで拡張され又は機械的に拡張される、他の材料で構成することが可能である。
【0079】
図26の弁260は、薄型弁の一実施例を示す。このような薄型弁は、冠状動脈狭窄の可能性を減少させることができる。弁260は、何枚の小葉を含んでも良い。弁260は、実例として、5枚の小葉(即ち、小葉261、262、263、264、及び265)を有するものが示されている。これらの小葉は、ドミノ型の配列で、互いに一部が重なり合っている。小葉265は最上部の小葉であり、小葉264の左側に重なっている。小葉264の右側は小葉263の左側に重なり、以下同様に、小葉261が最下部の小葉になるように重なり合う。これらの小葉は、時計方向又は反時計方向に互いに一部重複するようにして配置可能である。弁260は、上部から見ると(図26に示されているように)、写真機の絞りのように開くように見える。これらの小葉は、実際には、弁輪の面から飛び出している。しかしながら、この弁は極めて薄型であるから、接合部支持部材を必要としない。
【0080】
更に、これらの移植又は置換処置では、スパイラル弁やロール弁を使用することができる。これらの弁は、放射方向に拡張される代わりに、巻いたものを解き放つ。ロール弁は、弁材料を螺旋状に巻回することにより、経皮的な又は浸襲の少ない移植のために、直径を減じられる。
【0081】
不適当な弁を、罹患弁の寸法まで膨張しないように設計された新しい弁と交換することは、有益な場合がある。不適当な弁は、完全に閉鎖することはなく、血流に逆流を可能にする。これは、複数の弁尖(弁小葉)が中央部で衝突することを不可能にする、拡張弁輪の結果として、しばしば起こることである。それ故、この新しい弁がより小さな輪(アニュラス)を塞ぐことが必要な場合がある。これは、図27の弁270のような弁を設計することによって達成することができる。弁270は、流体密封メンブレイン276を有する。これにより、支持構造体272が罹患した弁の輪(アニュラス)の直径まで拡張されるが、置換弁の弁尖(弁小葉)274は、メンブレイン276によって決定された固定寸法の輪(アニュラス)内で機能する。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態においては、新しい弁は交換可能なように設計することができる。置換心臓弁の多くは、推定で、10乃至20年の製品寿命を有する。このため、多くの患者は、将来、追加の弁置換を求めることになる。心臓弁のいくつかの構造部品(例えば、ベースリング、フック等)は交換不要にすることができるであろうが、弁尖組織は交換可能である必要がある。新しい弁で古い弁を単に拡張させるのが好ましいかも知れない。
【0083】
本発明の幾つかの実施形態においては、弁移植処置は「オフ・ポンプ」で行われるが、患者の心臓は一時的に停止させられる。患者の心臓は、細動を使用して停止される。外科医は、患者を害する危険を冒さずにこの外科手術を行うには、3分未満の時間を有するのみである。しかしながら、脳障害の危険を増加させることなく、外科医により多くの時間を提供するため、麻酔をかけられた患者を冷やすことが可能であろう。
【0084】
患者の心臓が停止させられると、大動脈弁のすく遠位の大動脈に切開が施される。外科医が弁部位を視認することができるように、血液はこの領域から除去される。前述したような搬送装置を使用して(この場合、逆行性アプローチを行うことを除いて)、新しい弁は罹患弁上に直接移植される。この弁は逆行性アプローチで取付けられるから、自己の弁尖(弁小葉)は、大動脈壁に押し付けられる前に、下方へ押圧されることになる。このため、冠状動脈閉塞の心配はない。
【0085】
新しい弁が取付けられると、大動脈内部の手術部位は空気が除去され、そして、側部咬合クランプが病巣に配置される。この心臓は、心臓を停止させるために使われた電極によって再始動される。再び心臓が鼓動を開始すると、クランプされた病巣は縫合されて閉じられる。導入装置(アクセス器具60に類似する)は、手術部位から血液を除去し、その後、空気を除去する必要を回避するため、切開部位で使用可能である。
【0086】
本発明の本質に従って経心尖で実行可能な数多の処置が存在する。以下に、経心尖アクセス装置によって実行可能な実例となる処置の幾つかを記載する。
【0087】
不適当な僧帽弁は、しばしば、拡張された後尖に起因する。図28乃至30は、経心尖アクセス装置を介して、不適当な僧帽弁を治療するために使用することが可能な器具を示す。治療器具280は、U字型のヘッド282と、単一の叉のあるヘッド284とを有することができる。ヘッド282及び284は、ヒンジ288によって、動作可能に取付けられている。後尖290(図29)がヘッド282及び284の間に挿入されると、ハンドル282及び284を共にきつく握り、後尖290の一部を下方へ引下げることができる。ここで、後尖290を束縛された状態に保持し、僧帽弁輪の過度の拡張を治療するため、取付け器具286が連結器300(図30)を配置することができる。連結器300は、手術用ステープル、機械的な縫合、又は他の適当な連結手段で構成することができる。
【0088】
大動脈解離は、心臓に対する経心尖アクセスによって治療可能な他の欠点である。大動脈解離は、裂傷又は損傷から大動脈の内壁まで発生する。大動脈解離は、外傷や、例えば、マルファン症候群やエーラー・ダンロス症候群のような結合組織の疾患によって生じる可能性がある。大動脈解離は、アステローム性動脈硬化や高血圧症をもたらす可能性がある。図31に示すように、大動脈解離318は間隙319をもたらす可能性がある。
【0089】
大動脈解離治療器具310は、アクセス器具311(図6のアクセス器具60と実質的に同一)を介して、経心尖で患者に挿入される。治療装置310はバルーン312とカテーテル314を含むことができ、ガイドワイヤー316によって案内され得る。図示されていないが、カテーテル314は幾つかのルーメンを含むことができる(例えば、バルーン膨張ルーメン、ガイドワイヤー・ルーメン、及び接着剤送出ルーメン)。
【0090】
治療装置310が適正に配置されると、バルーン312は、図32に示すように、膨張可能である。バルーン312の膨張は、ニードル320の先端が間隙319に露出するように、ニードル320を大動脈解離318に貫通させる。生物学的に適合した接着剤が、カテーテル314の接着剤送出ルーメン(図示せず。)を介して、ニードル320を通って射出可能である。バルーン312が更に膨張することにより、生物学的に適合した接着剤によって大動脈解離318が大動脈壁に堅固に付着されることを確実にすることができる。
【0091】
生物学的に適合した接着剤が間隙319にのみ注入され、大動脈の残りの部分(これは、生物学的に適合した接着剤を循環系に導入する可能性がある。)には注入されないことを確実にするため、選択した溝(例えば、ニードル320)を介して、染料を最初に注入することができる。これは、外科医が、注入された接着剤が所望の場所にのみ達するか否かを決定することを可能にする。次いで、治療装置310は、生物学的に適合する接着剤を間隙319に注入するニードルに整列するように回転され得る。或いは、接着剤を注入するために使用される複数のニードルが選択可能であり、この結果、外科医は間隙319と整合したニードルのみを作動させる。
【0092】
バルーン312は大動脈を完全に閉塞するから、図33のバルーン330のように、バルーン312は、血液を通過可能にするために、ドーナツ形であることができる。更に、バルーン330は、バルーン330の近位側(複数の入口ポート334で)から、バルーン330の遠位側(複数の出口ポート336で)まで、血液を送り込むために血管アクセス装置(VAD)332を含むことができる。治療装置は、更に、ニードル338を含むことができる。この大動脈解離治療処置は、より詳細に前述したいずれかの視覚化装置によって視認可能である。大動脈解離が治療されると、バルーン312又は330は収縮され、そして、治療装置310は患者から取り除かれる。
【0093】
左心室瘤は、経心尖処置を受けた心臓の他の奇形である。血管閉塞の領域の心筋は、時間の経過と共に死滅する可能性がある。治癒過程では、薄くなることができると共に、心室瘤を形成するように延びることができる、瘢痕が形成され得る。このような動脈瘤は、以下に記載されるように、治療することができる。
【0094】
左心室瘤340は、図34に示すように、患者の左心室341に形成される。動脈瘤340は時間の経過と共により激しく心臓を働かせ、最終的には心臓麻痺をもたらすから、左心室瘤は処置されなければならない。動脈瘤治療装置336は、アクセス装置344(図6のアクセス器具60と実質的に同じ)を介して挿入される。治療装置346は、左心室瘤340の内部に装着される、液体が充填されたボルスター342を有することができる。ボルスター342は、生物学的に適合する接着剤、機械的な手段、又は、その他の適当な取付け技術によって、装着される。
【0095】
本発明の幾つかの実施形態においては、動脈瘤340は、図35に示すように、動脈瘤340の両端を一緒に引張ることによって、治療され得る。このような実施形態では、動脈瘤治療装置350は、フック352及び354を展開して使用される。フック352及び354は、動脈瘤の両極端で心臓の内面をしっかりとつかみ、次いで、動脈瘤を引張って閉鎖させる。動脈瘤が一緒に引張られると、いずれかの適当な技術が使用されて、動脈瘤を閉鎖位置に固定する(例えば、生物学的に適合する接着剤、機械的に配置される縫合等)。動脈瘤が完全に密封されると、治療装置350は患者から引抜かれる。
【0096】
本発明の幾つかの実施形態においては、内部人工器官が、経皮的に、経心尖で、又は、外科的なアプローチの組合せによって、配置され得る。内部人工器官は、上行大動脈に配置され、冠状動脈に伸びることができる複数のアームを有する。上行大動脈のための内部人工器官は、また、置換弁又は弁付きステントを含むことができる。下行大動脈のための内部人工器官は、また、例えば、腹部大動脈瘤を治療するために、経心尖で又は経皮的に配置可能である。
【0097】
更に、内部人工器官は大動脈弓に配置することもできる。大動脈弓のための内部人工器官は、図40に示されている。内部人工器官402は大動脈弓400の内部に配置されている。更に、内部人工器官402はアーム403、405、及び407を有することが可能であり、これらのアームは、腕頭動脈、左総頸動脈、及び左鎖骨下動脈に、それぞれ、進入している。
【0098】
内部人工器官402は、図41に示すように、ガイドワイヤー410、412、414、及び416を使用して、配置することができる。ガイドワイヤー410は内部人工器官402の本体を貫通することが可能であり、これに対して、ガイドワイヤー412、414、及び416は、アーム403、405、及び407の端部の孔403’、405’、及び407’を貫通することができる。内部人工器官402が大動脈弓400の内部に適正に配置されると、アーム403、405、及び407は、内部人工器官402の本体にほぼ直角をなす位置まで延長可能である。内部人工器官402のこれらのアームを各々の動脈枝に挿入することを補助するために、小さなカテーテル又はその他の押圧装置が、内部人工器官のアームを操作する(例えば、押す)ために、ガイドワイヤー412、414、及び416上に挿入され得る。これらのアームと内部人工器官402の本体とは、内部人工器官が適正に配置されると、放射方向に延長され得る。
【0099】
近年、心室性不整脈は、障害を起こしている組織に経皮的に高周波、低温、熱、又はマイクロ波を適用して不整脈源を破壊し、治療されている。心室性不整脈は、本発明の本質に従って、経心尖で治療することができるであろう。高周波装置、低温装置、加熱装置、又はマイクロ波装置は、図6のアクセス器具60に類似のアクセス装置を介して導入することができる。
【0100】
肥大性閉塞症(即ち、心臓弁に対して末梢側の閉塞症)及び弁下部狭窄(即ち、心臓弁の近位の閉塞症)は、また、経心尖で治療可能である。罹患した弁を切除するための前述の切除用具のような装置は、肥大性又は弁下部の障害を切り取るため、経心尖で挿入され得るであろう。余分な組織は、罹患した弁が切除され、取り除かれるのと同様なやり方で、心臓から取り除くことができる。
【0101】
近年、手術室で使用されているロボット利用技術に類似する技術は、心臓弁の除去及び置換又は移植処置を行う幾つかの段階を実施するために使用可能であろう。例えば、ロボットに、アクセス器具を介して繊細な切除処置を実行させることが必要な場合がある。更に、ロボットは、置換弁を正確に回転させ、接合部ポストを適正に整列させて、正確に配置することができるであろう。
【0102】
心臓弁の操作は一つ又はそれ以上の心室内で行われているから、前述した全ての機器は、心臓の内皮壁に対する損傷を最小限にするため、組織を傷つけないものでなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0103】
前述の事項は。本発明の本質の単なる実例であり、本発明の範囲と精神とから離れることなく、種々の変更態様が当業者によって実施可能であることが理解されるであろう。不可欠ではないと記述されている処置の幾つかの段階の順序は、必要な場合には、変更することができる。また、種々の段階は種々の技術技量で実行可能である。例えば、罹患した弁は、置換弁が経皮的に移植されている間に、経心尖で取り除かれることが可能であり、また、この逆も可である。視覚化装置及び技術が患者の内部の装置の監視に使用される方法は、変更可能である。多くの外科的な治療処置が、本発明の本質に従って、心臓で又は心臓付近で実行可能である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明による手術部位を表す図である。
【図2】図1に表された手術部位の詳細な切断図である。
【図3】本発明による装置を説明するための実施例の斜視図である。
【図4】図3によって部分的に描かれた、本発明の実施形態としての処置のより後の段階を、関連する装置と共に示す、図3に類似する図である。
【図5】図3及び4によって部分的に描かれた、本発明の実施形態としての処置の更に後の段階を、関連する装置と共に示す図である。
【図6】図3乃至5によって部分的に描かれた、本発明の実施形態としての処置の更に後の段階を、関連する装置と共に示す図である。
【図7】図3乃至6によって部分的に描かれた、本発明の実施形態としての処置の更に後の段階を、関連する装置と共に示す図である。
【図8】図3乃至7によって部分的に描かれた、本発明の実施形態としての処置の更に後の段階を、関連する装置と共に示す図である。
【図9】図8に示した装置の代替となる関連する装置を示す図であり、かつ、図3乃至7によって部分的に描かれた、本発明の実施形態としての処置の更に後の段階を、関連する装置と共に示す図である。
【図10】図8及び9に示された装置の代替となる関連する装置を示す図であり、かつ、図3乃至7によって部分的に描かれた、本発明の実施形態としての処置の更に後の段階を、関連する装置と共に示す図である。
【図11】図3乃至10によって部分的に描かれた、本発明の実施形態としての処置の更に後の段階を、関連する装置と共に示す図である。
【図12】図3乃至11によって部分的に描かれた、本発明の実施形態としての処置の更に後の段階を、関連する装置と共に示す図である。
【図13】図3乃至12によって部分的に描かれた、本発明の実施形態としての処置の更に後の段階を、関連する装置と共に示す図である。
【図14】図3乃至13によって部分的に描かれた、本発明の実施形態としての処置の更に後の段階を、関連する装置と共に示す図である。
【図15】図3乃至14によって部分的に描かれた、本発明の実施形態としての処置の更に後の段階を、関連する装置と共に示す図である。
【図16】図3乃至15によって部分的に描かれた、本発明の実施形態としての処置の更に後の段階を、関連する装置と共に示す図である。
【図17】図3乃至16によって部分的に描かれた、本発明の実施形態としての処置の更に後の段階を、関連する装置と共に示す図である。
【図18】図3乃至17によって部分的に描かれた、本発明の実施形態としての処置の更に後の段階を、関連する装置と共に示す図である。
【図19】本発明の装置の一実施形態の斜視図である。
【図19A】本発明の装置の一実施形態の斜視図である。
【図20】本発明の装置の一実施形態の斜視図である。
【図21】本発明の装置の一実施形態の斜視図である。
【図22】本発明の装置の一実施形態の斜視図である。
【図23】本発明の装置の一実施形態の斜視図である。
【図24】本発明の装置の一実施形態の斜視図である。
【図25】本発明の装置の一実施形態の斜視図である。
【図26】本発明の装置の一実施形態の斜視図である。
【図27】本発明の装置の一実施形態の斜視図である。
【図28】本発明の装置の一実施形態の斜視図である。
【図29】本発明の装置の一実施形態の斜視図である。
【図30】図29によって部分的に描かれた、本発明の実施形態としての処置のより後の段階を、関連する装置と共に示す、図29に類似する図である。
【図31】関連する装置と共に描かれた、本発明の実施形態としての処置の初期の段階を示す図である。
【図32】図31によって部分的に描かれた、本発明の実施形態としての処置のより後の段階を、関連する装置と共に示す、図31に類似する図である。
【図33】本発明の装置の一実施形態の斜視図である。
【図34】本発明の実施形態としての処置の初期の段階を、関連する装置と共に示す図である。
【図35】本発明の実施形態としての処置の初期の段階を、関連する装置と共に示す図である。
【図36】本発明の装置の一実施形態の斜視図である。
【図37】本発明の装置の一実施形態の斜視図である。
【図38】本発明の装置の一実施形態の斜視図である。
【図39】本発明の装置の一実施形態の斜視図である。
【図40】本発明の装置の一実施形態の斜視図である。
【図41】図40によって部分的に描かれた、本発明の実施形態としての処置の初期の段階を、関連する装置と共に示す、図40に類似する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓弁を移植するための装置であって、前記心臓弁を半径方向に拡張させる手段と、前記心臓弁の移植中に前記装置を介して血流量を補充するための手段とを有する、心臓弁を移植するための装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、前記装置は、更に、自己弁の弁尖を下方に引っ張る手段を有する、前記装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の装置において、前記心臓弁の放射方向への拡張は、好ましくは多段バルーンによって、二以上の段階で生じる、前記装置。
【請求項4】
患者の心臓の心室にアクセスするための器械器具であって、前記心臓は心筋を有し、前記器械器具はカテーテルを有し、前記カテーテルは、前記心筋の近位面に対して前記カテーテルを密封するための近位面密封装置を有し、前記器械器具は、前記カテーテルを介して出血するのを防止するための手段を有する、患者の心臓の心室にアクセスするための器械器具。
【請求項5】
請求項4に記載の器械器具において、前記器械器具は、更に、前記心筋の遠位面に対して前記カテーテルを密封するための遠位面密封装置を有する、前記器械器具。
【請求項6】
組織支持構造と、生体弁の弁尖とを有する、移植可能な心臓弁であって、前記生体弁の弁尖は、遺伝子工学によって、前記組織支持構造の内部で成長させられる、前記心臓弁。
【請求項7】
請求項6に記載の心臓弁において、前記組織支持構造はステントであり、前記ステントは、好ましくは自己拡張材料によって構成され、特に、ニチノール又はスレンレススチールによって構成されている、前記心臓弁。
【請求項8】
患者の体内に二本以上のガイドワイヤーを挿入するためのガイドワイヤー挿入装置であって、前記ガイドワイヤー挿入装置は、ワイヤー配置装置と、前記ワイヤー配置装置に取り付けられたガイドワイヤーとを有し、前記ワイヤー配置装置は、既に配置されたガイドワイヤーの跡をたどるように構成されている、前記ガイドワイヤー挿入装置。
【請求項9】
請求項8に記載のガイドワイヤー挿入装置において、前記ガイドワイヤーは、前記ワイヤー配置装置に取り外し可能に取り付けられ、前記ワイヤー配置装置は、好ましくは、固定機構を有する、前記ガイドワイヤー挿入装置。
【請求項10】
薄型の心臓弁であって、前記心臓弁は、少なくとも三つの弁尖を有し、前記各弁尖の一方の側面は、前記少なくとも三つの弁尖が、連続して開き、かつ、連続して閉じるように、隣接する弁尖に部分的に重なっている、前記心臓弁。
【請求項11】
内周縁と外周縁とを有する心臓弁であって、前記内周縁は、前記心臓弁の複数の弁尖によって形成された環帯の周縁であり、前記外周縁は、流体密封隔壁の周縁であり、前記隔壁が前記内周縁と前記外周縁の間の空間を占有する、前記心臓弁。
【請求項12】
手術面を画成する第1ヘッドと、前記第1ヘッドに操作可能に取り付けられ、かつ、前記手術面に関して弁尖を移動させるように構成された、第2ヘッドとを有する、僧帽弁治療装置。
【請求項13】
請求項12に記載の治療装置において、前記第1ヘッドは、U字形のヘッドであり、そして、好ましくは、前記弁尖の少なくとも二つの部分に付着するための付着機構と、前記第1ヘッドに関して前記第2ヘッドを操作するためのハンドルとの、いずれか一方又は双方を有する、前記治療装置。
【請求項14】
患者の大動脈の内部に挿入されるように構成された、環状に拡張可能な構成要素と、大動脈解離によって生じた空所を閉鎖するための手段とを有する、大動脈解離治療装置。
【請求項15】
請求項14に記載の装置において、前記空所を閉鎖する手段は、組織シーラントを注入するための複数のニードルを有する、前記装置。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の装置において、前記組織シーラントは生物学的に親和性を有する接着剤と、機械的な縫合と、外科的な留め金のうちのいずれか一つ又は二つ以上である、前記装置。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の装置において、前記環状に拡張可能な構成要素は、治療中に前記構成要素を介して血流を補うための手段を有する、前記装置。
【請求項18】
罹患した心臓弁を切除するための装置であって、前記装置は、第1の長手方向軸と近位切断歯とを有する、環状に拡張可能な第1の構成要素の組と、第2の長手方向軸と遠位切断歯とを有する、環状に拡張可能な第2の構成要素の組とを有し、前記装置は、前記第1の構成要素の組が前記罹患した心臓弁の遠位側面で拡張され、前記第2の構成要素の組が前記罹患した心臓弁の近位側面で拡張され、そして、前記第1及び第2の構成要素が前記第1及び第2の長手方向軸に沿って軸方向に同時に引っ張られると、前記病気の心臓弁を切除するように構成された、前記装置。
【請求項19】
請求項18に記載の装置において、前記第1の長手方向軸と前記第2の長手方向軸は同軸に配置されている、前記装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図19A】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【公表番号】特表2008−514345(P2008−514345A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534559(P2007−534559)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/043794
【国際公開番号】WO2006/041505
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(507107947)
【Fターム(参考)】