説明

感光性樹脂積層体及びそれを用いた新聞用印刷原版

【課題】水系現像液で現像でき、また、水性インキに対する耐性があり、且つ現像速度を早くすることができ、高速印刷に耐え得る機械的強伸度を有する新聞用フレキソ印刷原版。
【解決手段】(1)なくとも支持体、感光性樹脂層、IRアブレーション層およびカバーフィルムを有する感光性樹脂積層体において、前記支持体が金属であって、かつ前記感光性樹脂層の厚みが1000μm以下であることを特徴とする感光性樹脂積層体。(2)感光性樹脂積層体が新聞印刷用原版である前記(1)記載の感光性樹脂積層体。(3)感光性樹脂層に水分散ラテックスから得られる疎水性重合体が含有されていることを特徴とする前記(1)記載の感光性樹脂積層体。(4)IRアブレーション層とカバーフィルムとの間に、有機高分子層を有する前記(1)記載の感光性樹脂積層体。(5)IRアブレーション層が、IR吸収性金属層のみからなる、前記(1)記載の感光性樹脂積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新聞印刷の用途に使用される感光性樹脂組積層体に関するものであり、特に水系現像液で現像可能なフレキソ印刷用感光性樹脂印刷原版に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、レタープレスやフレキソなどの凸版印刷やその他レリーフ板の分野において、デジタル画像形成技術としても知られているコンピュータ製版技術(コンピュータ・トゥ・プレート(CTP)技術)は、極めて一般的なものとなってきている。CTP技術では、感光性印刷版の重合すべきでない領域を覆うために従来から使用されている写真マスク(フォトマスクやネガフィルムともいう)は、印刷版内で形成統合されるマスクに取って代わられている。このような統合マスクを得るための方法として、市場には2つの技術が存在する。一つは感光性印刷原版上にインクジェットプリンターでマスクを印刷する方法であり、もう一つは感光層上に紫外線に対して実質的に不透明で(即ち紫外線を実質的に通さない)、かつ、IRレーザの照射により融除可能な層(この層は、一般に「IRアブレーション層」や「赤外融除層」等と呼ばれており、本明細書では「IRアブレーション層」と呼ぶこととする。)を設け、当該層にIRレーザで画像形成をすることでマスクを形成する方法である。これらの技術を用いることで画像(マスク)が版上に直接形成され、次の工程で当該画像(マスク)を介して紫外線が照射され、製版へといたる。
【0003】
なお、CTP技術はネガフィルムが必要でないという利便性を有するだけでなく、ネガフィルムを使用する従来技術に比べて遙かに高い解像度を与え得る。
【0004】
ところで、上記IRアブレーション層を有する感光性樹脂積層体において、IRアブレーション層には、一般に、高分子バインダにカーボンブラックを多量に含有させた組成物が使用されている。また、通常、IRアブレーション層上には、原版の保存時や取り扱いの際のIRアブレーション層の保護のためにカバーフィルムが設けられており、このカバーフィルムはIRレーザの照射前またはIRレーザの照射後(通常、主露光後、現像前の時点)に除去される。しかし、本発明者等の研究の結果、カバーフィルムを剥がす際にIRアブレーション層に破れ(破損)やキズを生じ、それが最終的に得られる印刷画像に悪影響を及ぼしていることが判った。また、IRアブレーションを実施後、主露光し(紫外線の照射を行い)、現像液で現像する際に、IRアブレーション層中のカーボンブラックが現像液へ移行して現像液が汚れ、現像液を一回の製版作業毎に交換しなければならず、これが印刷コストの上昇の原因になっている。
【0005】
また従来から、新聞印刷はオフセット印刷により行なわれてきたが、改善困難な課題を抱えていた。まず、オフセット印刷では油性インキを使用するため、乾燥中に溶剤を大気中に放出するため、環境、人体に好ましくなく、また、乾燥後も充分にインキ溶剤が除去することが難しいため、新聞読者が印刷文字を触ると、インキが付着してしまう問題があった。さらに、印刷は、オフセット版はブランケットロールを介して被写体にインキを転写したり、浸し水を使用するなど印刷立ち上げに時間がかかる。また、その時に使用する紙にも大きなロスが生じていた。
【0006】
そのために、近年、オフセット印刷に代わり、フレキソ 印刷が行なわれ始めている。フレキソ印刷では水性インキの使用が可能であるために、乾燥後のインキの付着も防ぐことができる。また、フレキソ印刷では、ロールを介さず、直接版材にインキを載せ、版材から被印刷体に直接転写する方式であるため、印刷立ち上げ時間やコストも低減できるメリットがある。
【0007】
フレキソ印刷では、有機溶剤で現像する溶剤現像フレキソ版が一般的に使用されている。しかし、溶剤現像版では、溶剤の臭気が発生するために、作業環境が悪く、また、現像廃液を排水に流すことはできず、廃棄処理するための手間とコストが乗じていた。こういった背景や近年の環境意識の高揚、環境規制の追い風を受けて、種々の水現像性フレキソ版の提案がなされている。例えば以下特許文献1〜5等が知られている。
【0008】
ところが、これらの水現像性フレキソ版は未だ開発途上にあることから既存の溶剤現像型フレキソ版に比べてト−タル性能、中でも印刷性能が劣るという欠点を有している。例えば、水性インキを用いて網点の印刷を行った場合、特に高線数ハイライト部の印刷太り(ドットゲイン)が大きく、高画質が得られないと言うものである。これは、フレキソ印刷特有の印圧に対するレリ−フ頂部の変形に加え、水現像性を付与するために版の極性が高くなっていることに起因すると考えられる。
【0009】
水現像性フレキソ版として、水系現像液で現像でき、且つ水性インキに対する耐性を付与したフレキソ版材に、疎水性ポリマーを主成分とする相1、親水性ポリマ−を主成分とする相2を有する粒子を分散相として、親水性成分と疎水性成分とを有する相を連続相とする相構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平1−108542号公報
【特許文献2】特開平2−175702号公報
【特許文献3】特開平1−300246号公報
【特許文献4】特開平6−289610号公報
【特許文献5】ヨーロッパ特許明細書584970号
【特許文献6】特開平03−136052号公報
【0010】
このような水現像性フレキソ版を新聞印刷に使用した場合、オフセット印刷版と比較して、版準備時間の長さが問題になる。一般的な水現像フレキソ版の版準備時間が1時間なのに対し、実作業には30分以内という大幅な時間短縮が求められる。
そこで、新聞印刷に使用される水現像性フレキソ版は、その組成内に比較的分子量の低いエラストマーや水溶性物質を比較的多く使用し、現像速度を高める必要がある。ところが、水溶性物質を増やすと、版の水膨潤率が高くなり、水性インキを使用した一般的なフレキソ新聞印刷において、画像が太ってしまう問題が生じる。さらに、深刻な問題として、エラストマーなど使用する原料で、架橋反応性のない物質が増えたり、分子量が低下すると版の機械的強伸度特性が低下し、高速印刷時の耐刷性が著しく低下してしまう問題が生じていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情に鑑み、従来よりも感光性樹脂層が加工性や硬化物の透明性及び低温時の弾性などに優れ、高品位の印刷画像が得られ、IRアブレーション層が高感度であり、かつ両層が水又は水系液体の現像液で現像可能なうえ、水性インキに対する膨潤耐性があり、高速印刷に耐え得る機械的強伸度を兼ね備え、従来の新聞印刷用シリンダーに装着可能な感光性樹脂印刷用原版を得ることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意、研究、検討した結果、遂に本発明を完成するに到った。すなわち本発明は、(1)なくとも支持体、感光性樹脂層、IRアブレーション層およびカバーフィルムを有する感光性樹脂積層体において、前記支持体が金属であって、かつ前記感光性樹脂層の厚みが1000μm以下であることを特徴とする感光性樹脂積層体。(2)感光性樹脂積層体が新聞印刷用原版である前記(1)記載の感光性樹脂積層体。(3)感光性樹脂層に水分散ラテックスから得られる疎水性重合体が含有されていることを特徴とする前記(1)記載の感光性樹脂積層体。(4)IRアブレーション層とカバーフィルムとの間に、有機高分子層を有する前記(1)記載の感光性樹脂積層体。(5)IRアブレーション層が、IR吸収性金属層のみからなる、前記(1)記載の感光性樹脂積層体。(6)IR吸収性金属層が感光性樹脂層に接触配置されている前記(1)記載の感光性樹脂積層体。(7)IR吸収性金属層がアルミ蒸着層である前記(1)記載の感光性樹脂積層体。(8)感光性樹脂層の水膨潤率が8%以下である請求項1記載の感光性 樹脂積層体。(9)接着層にハレーション防止剤を含む前記(1)記載の感光性樹脂積層体。(10)前記(1)〜(9)のいずれかに記載の感光性樹脂積層体を用いることを特徴とする新聞用印刷原版。
【発明の効果】
【0013】
本発明感光性樹脂組成物を用いることにより、CTPによりネガを形成し水系現像液で現像でき、また、水性インキに対する耐性があり、且つ高速印刷に耐え得る機械的強伸度を有するため、画像再現性の良好な新聞印刷用フレキソ印刷原版を得ることができるので、産業界に寄与すること大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施態様例を説明する。
まず、本発明感光性樹脂積層体(以下、「感光性印刷原版」または単に「フレキソ印刷原版」や「原版」ともいう。)の積層構成の一実施態様例としては、支持体、感光性樹脂層、IR吸収性金属層、有機高分子層およびカバーフィルムを順次積層した構成が挙げられる。
【0015】
本発明感光性樹脂積層体におけるIRアブレーション層としては、実質的に紫外線(化学線)を透過させない。すなわち、化学線に対する光学濃度が2.0を超える値であり、好ましくは2.5を超える値である。本発明においてはIR吸収性金属層であり、該IR吸収性金属層であることから、IRアブレーション層の膜強度が高く、カバーフィルムの剥離作業によっても、IRアブレーション層に破れやキズが発生しにくい。さらに、本発明においては、IR吸収性金属層を感光性樹脂層に接触配置(直接積層)することが好ましく、つまりIR吸収性金属層と感光性樹脂層との間に他の層(有機高分子の層や有機高分子を含む組成物の層)を介在させないので、IRアブレーション層の破れがより起こりにくく、しかも、IRアブレーション後、主露光および現像して得られるレリーフの解像度が充分に高いものとなる。
【0016】
本発明において、前記構成は、露光時におけるIRアブレーション層の感度(すなわち、IRを吸収して融除される時間の短さ)の点から好ましい構成であるが、あくまで例示であり、前記の特徴を有するならば、その他の部分については、公知のこの種のフレキソ印刷原版の技術を適用できることはいうまでもない。
【0017】
本発明において、「IR吸収性金属」とは、IRを吸収して融除され得る、金属、合金または含金属化合物を意味し、ここでの合金とは、2種以上の金属元素の融合物だけでなく、2種以上の金属元素とともに金属元素以外の元素を含む融合物も含む。また、「IR吸収性金属」は1種の材料でも2種以上の材料を併用してもよい。
【0018】
上記金属の好ましい例としては、Al、Zn、Cuが挙げられる。また、上記合金の好ましい例としては、Ca、Sc、Tl、V、Sb、Cr、Mn、Fe、Al、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Ta、W、Au、BiおよびPbから選ばれる2種以上の金属の合金や、かかる2種以上の金属とともに、さらに非金属元素(炭素、ケイ素等)および/または希土類元素(Nd、Sm、Gd、Tb等)を含む合金、が挙げられる。また、含金属化合物としては、IRを吸収して融除され得るものであれば、金属酸化物、金属窒化物等の各種化合物を使用できるが、それらの中でも、亜クロム酸銅、酸化クロム、アルミン酸コバルト−クロム等の暗色無機顔料が好ましい。
本発明において、特に好ましくはAl、Zn、Cu、Bi−In−Cu合金であり、とりわけ好ましくはAlである。
【0019】
次に、本発明において必要に応じてカバーフィルムと前記IRアブレーション層との間に設置され得る有機高分子層の構成材料としては、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、両性インターポリマー、アルキルセルローズ、セルローズ系ポリマー(特にヒドロキシプロピルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、ニトロセルローズ)、エチレンとビニルアセテートのコポリマー、セルローズアセテートブチレート、ポリブチラール、環状ゴム等が挙げられる。これらは、いずれか1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。なお、両性インターポリマーは米国特許第4,293,635号等に記載されているものである。
【0020】
上記の例示の材料の中でも、重合度500〜4000、好ましくは1000〜3000で、かつ、ケン化度70%以上、好ましくは80〜99%、さらに好ましくは80〜90%のポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールが望ましい。ここで、変性ポリビニルアルコールとは、ポリビニルアルコールの水酸基と反応性を有する化合物(例えば、カルボキシル基、二重結合、芳香族環等を有する化合物)を二次的に反応させたり、酢酸ビニルと他のビニルモノマーとの共重合体をケン化したりして、末端や主鎖中にカルボキシル基、カルボニル基、ポリオキシアルキレン基、アセトアセチル基、スルホン基、シラノール基を導入したものである。
なお、前記有機高分子層は、透明であれば、IRにアブレーションせず、そのまま残っていてもよい。
【0021】
有機高分子層の厚みは、0.01〜200μm、好ましくは0.1〜100μm、特に好ましくは0.1〜50μmである。厚みが200μmを超えると、IRアブレーションをする際に用いるドラムへの装着が困難となったり、また、主露光および現像して得られるレリーフの解像度が低下する虞があり、好ましくない。
【0022】
IRアブレーション層をIR吸収性金属層のみで構成する場合、IR吸収性金属層の厚みは、70〜20000Åが好ましく、特に好ましくは100〜8000Å、とりわけ好ましくは100〜5000Åである。厚みが70Å未満であると、IRアブレーション後のマスクとしての機能が劣るので好ましくなく、また、2000Åを超えると、画像形成用のIRではアブレーション(融除)することが困難になるので、好ましくない。
【0023】
一方、IRアブレーション層をIR吸収性金属層と他の有機高分子層とで構成する場合、IR吸収性金属層の厚みは、50〜15000Åが好ましく、特に好ましくは70〜8000Å、とりわけ好ましくは100〜5000Åである。厚みが50Å未満であると、IRアブレーション後のマスクとしての機能が劣るので好ましくなく、また、15000Åを超えると、画像形成用のIRではアブレーション(融除)することが困難になるので、好ましくない。
【0024】
本発明におけるカバーフィルムは原版の貯蔵および取り扱いの間のIRアブレーション層の保護のために設けられるものであり、IR照射前またはIR照射後に除去(剥離)される。本発明の原版においては、カバーフィルムの除去、すなわち、剥離作業時に、IRアブレーション層の破れやキズが防止される。
【0025】
カバーフィルムをIR照射前に除去する場合、そのようなカバーフィルムの構成材料としては、ポリアミド;ポリビニルアルコール;エチレンとビニルアセテートとのコポリマー;両性インターポリマー;ヒドロキシアルキルセルローズ、セルローズアセテートのようなセルローズ系ポリマー;ポリブチラール;環状ゴム等が好適である。ここで、両性インターポリマーは米国特許第4,293,635号に記載されているものである。当該材料はいずれか1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。また、ニトロセルローズとニトログリセリンのような自己酸化性化合物;アルキルセルローズ(例、エチルセルローズ)、ポリアクリル酸およびそのアルカリ金属塩のような非自己酸化性ポリマー;ポリアセタール;ポリイミド;ポリカーボネート;ポリエステル;ポリエチレン、ポリブチレンのようなポリアルキレン;ポリフェニレンエーテル;ポリエチレンオキサイド;ポリラクトンおよびこれらの組合せ等も使用できる。
【0026】
一方、カバーフィルムをIR照射後に除去する場合(IR照射時に存在させる場合)、そのようなカバーフィルムの材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ナイロン6、ナイロン4、ナイロン66、ナイロン12、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキサイド等が好適である。これらはいずれかを単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。また、これらに他の有機重合体を少量共重合したり、ブレンドしたりしてもよい。
【0027】
カバーフィルムの厚みは10〜300μmが好ましく、特に好ましくは10〜200μmである。
【0028】
本発明において感光性樹脂層の厚みは1000μm以下であり、1000μmを超えると印刷太りが生じるので好ましくない。好ましくは50μm〜700μm、さらに好ましくは300μm〜550μmである。
【0029】
また、本発明の感光性樹脂は、フレキソ新聞印刷に用いられる水性インキに対して膨潤耐性があり、シャープな画像を印刷するために、水膨潤率が8%以下、好ましくは7%以下、特に6%以下が望ましい。なお、水系現像性には、水膨潤率は0.1%以上が好ましい。
水膨潤率が8%よりも高ければ、水性インキによる膨潤のために網点が太ったり、絡んだりするために、シャープで繊細な画像が再現できないので好ましくない。
【0030】
上記本発明で用いられる感光性樹脂層としては、エラストマーバインダ等も含む公知の可溶性合成高分子化合物、光重合性不飽和化合物(以下、架橋剤ともいう)及び光重合開始剤を少なくとも含む組成物の層である。さらに添加剤、例えば可塑剤、熱重合防止剤、染料、顔料、紫外線吸収剤、香料または酸化防止剤を含んでよい。
【0031】
本発明において、可溶性合成高分子化合物としては公知の可溶性合成高分子化合物を使用できる。例えばポリエーテルアミド(例えば特開昭55−79437号公報等)、ポリエーテルエステルアミド(例えば特開昭58−113537号公報等)、三級窒素含有ポリアミド(例えば特開昭50−76055公報等)、アンモニウム塩型三級窒素原子含有ポリアミド(例えば特開昭53−36555公報等)、アミド結合を1つ以上有するアミド化合物と有機ジイソシアネート化合物の付加重合体(例えば特開昭58−140737号公報等)、アミド結合を有しないジアミンと有機ジイソシアネート化合物の付加重合体(例えば特開平4-97154号公報等)などが挙げられ、そのなかでも三級窒素原子含有ポリアミドおよびアンモニウム塩型三級窒素原子含有ポリアミドが好ましい。
【0032】
また、可溶性合成高分子化合物としてエラストマーバインダの場合は、単一のポリマーでも、ポリマー混合物でもよい。また、疎水性のポリマーでも、親水性のポリマーでも、疎水性のポリマーと親水性のポリマーの混合物でもよい。疎水性ポリマーとしては、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、1,2−ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステルコポリマー、アクリロニトリル−(メタ)アクリル酸エステルコポリマー、エピクロロヒドリンゴム、塩素化ポリエチレン、シリコーンゴム、ウレタンゴムが好適である。これらはそれぞれを単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0033】
また、その他に、ポリブタジエンラテックス、天然ゴムラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス、ポリクロロプレンラテックス、ポリイソプレンラテックス、ポリウレタンラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、ビニルピリジン重合体ラテックス、ブチル重合体ラテックス、チオコール重合体ラテックス、アクリレート重合体ラテックスなどの水分散ラテックス重合体やこれら重合体にアクリル酸やメタクリル酸などの他の成分を共重合して得られる重合体が挙げられる。この中でも分子鎖中にブタジエン骨格またはイソプレン骨格を含有する水分散ラテックス重合体が、硬度やゴム弾性の点から好ましく用いられる。具体的には、ポリブタジエンラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、ポリイソプレンラテックスが好ましい。
【0034】
必要に応じて配合される親水性ポリマーとしては、−COOH、−COOM(Mは1価、2価、或いは3価の金属イオンまたは置換または無置換のアンモニウムイオン)、−OH、−NH2、−SO3H、リン酸エステル基などの親水基を有するものが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸またはその塩類の重合体、(メタ)アクリル酸またはその塩類とアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体、(メタ)アクリル酸またはその塩類とスチレンとの共重合体、(メタ)アクリル酸またはその塩類と酢酸ビニルとの共重合体、(メタ)アクリル酸またはその塩類とアクリロニトリルとの共重合体、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンイミン、−COOM基を有するポリウレタン、−COOM基を有するポリウレアウレタン、−COOM基を有するポリアミド酸およびこれらの塩類または誘導体が挙げられる。これらはそれぞれを単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0035】
可溶性合成高分子化合物がエラストマーバインダの場合、好適に用いられる光重合性不飽和化合物としては、重合性印刷版の製造に使用でき且つエラストマーバインダと相溶性である慣用の重合可能なエチレン性モノ又はポリ不飽和有機化合物である。
【0036】
また光開始剤の例としては、ベンゾフェノン類、ベンゾイン類、アセトフェノン類、ベンジル類、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンジルアルキルケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類などが挙げられる。
なお、本発明における感光性樹脂層は、可溶性合成高分子化合物、重合性化合物及び光開始剤以外に、添加剤、例えば、可塑剤、熱重合防止剤、染料、酸化防止剤等を含んでもよい。
【0037】
次に本発明においては、オフセット版を用いた新聞印刷機の印刷シリンダーに装着できるよう、金属の支持体を使用するものである。支持体に使用する金属として具体的には、アルミニウム、スチール、チタン、ニッケル、亜鉛、鉛、錫、銅などが挙げられる。また、純金属に限らず、前記金属を含む2種類以上の合金や合板、酸化金属板も使用することができる。一般的には、比較的低コストで可塑性に優れたスチール又はアルミニウムから作製された支持体が好ましい。さらには、寸法安定性に優れたスチールが特に好ましい。
【0038】
また、支持体と感光性樹脂層を接着させるために、これらの二層間に接着層を設けることができる。接着層成分は、印刷時に剥離しない充分な接着があれば特に限定されない。接着層の成分としては、例えば、バインダーポリマー、イソシアネート化合物、その他の添加剤からなり、主成分であるバインダーポリマーとして、イソシアネート基と反応し得る官能基を有しているポリマーが好ましく、具体的には、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、メルカプト基などが挙げられ、それらを主鎖(末端基も含む)あるいは側鎖に有するオリゴマーまたはポリマーとして、具体的にはテレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバチン酸などの酸成分とエチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、4,4'−ジ(2−ヒドロキシエトキシフェニル)2,2' −プロパンなどのグリコール成分とから、あるいはカプロラクトンから得られるポリエステル、2量化した乾性油脂肪酸(ダイマー酸など)とジアミンまたはポリアミンとの反応物、メトキシメチル−6,6−ナイロン、メトキシメチル−6−ナイロン、ナイロン6/ナイロン6,6/ナイロン6,10などのポリアミド、ポリ酢酸ビニルのケン化物、アクリル変性ポリオール(ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなど)、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物などのビニル系ポリマー、ビスフェノール型、o−クレゾール・ノボラック型、トリス(エポキシプロピル)イソシアヌレート型などのエポキシ樹脂あるいはそれらアミン変性したポリオール、アジピン酸とトリオールおよび/またはブチレングリコールよりなるポリエステルポリオールと4,4' −ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートあるいはトリイソシアネートなどの各種イソシアネートよりなるウレタン結合を有するオリゴマーまたはポリマー、尿素とホルマリンとより得られる、あるいはジメチロール尿素縮合体などの尿素系樹脂、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラールなどのホルマール樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、プロピルセルロース、ニトロセルロースなどのセルロース誘導体、フェノールとホルムアルデヒドよりなるレゾール樹脂またはノボラック樹脂、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテル1,6ーヘキサンジオールとエチレンカーボとより得られるポリカーボネートジオール、末端に水酸基あるいはアミノ基を有する液状ポリブタジエンなどの共役ジオレフィン系ポリマー、フォスフェート系、フォスフォネート系、あるいはフォスフォロアミデート系含リンポリオールなどが挙げられる。
【0039】
また接着層中のイソシアネート化合物としては、イソシアネート基を2個以上有する化合物であり、例えば、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−または2、6−シクロヘキサンジイソシアネート−1−メチル、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、4,4' −ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4' −ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、m−またはp−キシリレンジイソシアネート、1,3−または1,4−シクロヘキサンジメチルイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマラート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、3,3' −ジメトキシー4,4' −ジフェニルジイソシアネート、2,4−トリレンダイマー、トリス(4−フェニルイソシアネート)チオフォスフェート、ジフェニルエーテル2,4,4'ートリイソシアネート、2,4' −トリレンジイソシアネートの3量体、トリレンジイソシアネートと多官能アルコールの反応物から得られるオリゴイソシアネート(例えばトリメチロールプロパン−1−メチル−2−イソシアノ−4−カルバメートなど)、トリフェニルメタンp,p',p”トリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートの2量体、3量体(例えばDESMODUR−N〔BAYER社商標〕、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、3−ヒドロキシメチルペンタン−2,4−ジオールとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応物、あるいは前記イソシアネート類のオキシム、フェノールなどのブロックイソシアネート類などが挙げられる。
【0040】
本発明では、上記の接着層には、ハレーション防止剤を含むことが好ましい。この化合物により、露光時に支持体金属から反射される紫外線に従来未露光部であるべき箇所の光硬化を抑制し、レリーフ深度のより大きく、また、よりシャープ印刷画像にすることができる。ハレーション防止効果がある理想的なUV吸収剤としてはλmaxが360nmで、UV吸収端が400nm付近まで有し、かつ経時による感光性樹脂層中への抽出を防ぐため、接着層中のイソシアネートと反応する官能基(−NH2,−OH等)を有する化合物をハレーション防止剤として添加すれば良い。
また、ハレーション防止剤またはUV吸収剤である360nm付近に吸収を持つ化合物Aと、経時安定性のためにイソシアネート化合物と結合し、かつそれが、ベースポリマーと結合するような官能基を有している380〜400nmに吸収を持つ化合物Bを含むことが好ましい。イソシアネートと反応し得る官能基としてはヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、メルカプト基等が挙げられ、反応性や効果の安定性などを考慮すると、アミノ基やヒドロキシル基が好ましい。また、これらと結合しているUV吸収能を有するUV吸収剤の基本分子骨格としてはベンゼン、ナフタリン、アントラセン、クマリン、キノリン、ベンジイミダゾールやベンゾチアゾール、ベンゾフェノンやベンゾトリアゾールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これら以外の分子構造を有していてもよい。
【0041】
これらの中で、360nm付近に吸収を持つ化合物Aとして具体的には、ジヒドロチオ−p−トルイジン、4−アミノベンゾフェノン、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸エチレングリコールエステル、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸エチレングリコールエステル等が挙げられ、特にジヒドロチオ-p-トルイジン、4−アミノベンゾフェノンが好ましい。また、特に380〜400nmに吸収を持つ化合物Bとして具体的には、2−アミノベンゾフェノン、3,4−ジアミノベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸ヒドラジド、2−アミノ−3−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸エチレングリコールエステル、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸プロピレングリコールエステル、プレムリン、9−アントラセンメタノール、9−アントラセンエタノール、9−アントラセンプロパノール等挙げられ、特に、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸エチレングリコールエステル、2−ヒドロキシ−3ーナフトエ酸プロピレングリコールエステル、9−アントラセンメタノールが好ましい。
【0042】
なお、これらを溶解させる溶剤としては、ベンゼンやトルエンなどのベンゼン系有機溶剤、メチルエチルケトン、アセトンなどのケトン系有機溶剤、酢酸エチルなどのエステル系溶剤、エチレングリコール系溶剤、ジメチルアミノホルムアルデヒド、ジメチルアミノアセトアミドなどの有機溶剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
本発明の感光性樹脂積層体を作製する方法は特に限定されないが、一般的には、支持体上に塗布、スプレーコーティング等で感光性樹脂層を形成するか、若しくは、市販の感光性フレキソ印刷版から保護フィルムを剥がすことで一方の積層体を作成し、さらにこれとは別に、基材フィルム(カバーフィルム)に真空蒸着、スパッタリング等でIR吸収性金属層を形成するか、若しくは、基材フィルム(カバーフィルム)に塗布、スプレーコーティング等で有機高分子層を形成後、これに続けて真空蒸着、スパッタリング等でIR吸収性金属層を形成して他方の積層体を形成し、このようにして得られた2つの積層体をヒートプレス機等を用いてラミネートすることにより作製する。ラミネート条件は、温度を室温〜150℃、好ましくは50〜120℃とし、圧力を20〜200kg重/cm2、好ましくは50〜150kg重/cm2とするのがよい。
【0044】
本発明感光性樹脂積層体から、例えば印刷版またはレリーフ板の作製は以下のようにして行うことができる。
カバーフィルムを剥がした後、または、残したまま、IRアブレーション層にIRレーザによる画像照射を行うことでIRアブレーションを実施し、感光性樹脂層上にマスクを形成する。適当なIRレーザの例としては、ND/YAGレーザ(1064nm)又はダイオードレーザ(例、830nm)を挙げることができる。コンピュータ製版技術に適当なレーザシステムは、市販されており、例えばダイオードレーザシステムOmniSetter(登録商標)(Fa. Misomex;レーザ波長:830nm;作業幅:1800mm)或いはND/YAGレーザシステムDigilas(登録商標)(Fa. Schepers)を挙げることができる。これらは、それぞれ感光性フレキソ印刷原版を保持する回転円筒ドラム、IRレーザの照射装置およびレイアウトコンピュータを含む。画像情報は、レイアウトコンピュータからレーザ装置に直接移される。
【0045】
次に、上記のようにして、マスクをIRアブレーション層に書き込んだ後、感光性フレキソ印刷版にマスクを介して化学線を全面照射する。これはレーザシリンダ上において直接行うことが有利である。或いは、版を、レーザ装置から取り外し、慣用の平板な照射ユニットで照射してもよい。照射工程の間、感光性樹脂層は上記マスクの形成工程(融除工程)で露出した領域において重合し、一方照射光を通さないIRアブレーション層によりなお被覆されているIRアブレーション層領域では、重合は起こらない。化学線の照射は、慣用の真空フレームで酸素を除去して行うことも可能であるが、大気酸素の存在下に行うことが有利である。
【0046】
上記のようにして化学線が照射された版は、現像工程に供される。現像工程は、慣用の現像ユニットで実施することができ、版の性質に応じて、水、有機溶剤またはこれらの混合物を使用することができる。現像の間に、感光性樹脂層の非重合領域及びIRアブレーション層の残留部は除去される。IRアブレーション層を1種の溶剤又は溶剤混合物でまず除去し、別の現像剤で感光性樹脂層を現像することも可能である。現像工程後、得られた印刷版は乾燥させる。版の乾燥条件は、例えば、45〜80℃で15分〜4時間である。乾燥後に、幾つかの後処理操作をさらに行ってもよい。例えば、印刷版を非粘着性にするために、殺菌灯の照射又はBr2による処理を行うことができる。
【実施例】
【0047】
次に、本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されることはない。
なお、実施例における特性値は以下の測定方法によって得られた値である。
(1)反発弾性率:φ10m/mm/m(重さ4.16g)の鋼鉄製ボールを20cm地の高さより落下させ、跳ね戻る高さ(a)を読みとり、(a/20)×100%表示とした。
(2)硬度:JIS−K6301に準ずるスプリング式硬さ試験(A形)法により20℃で測定した値である。
(3)水膨潤率:厚み1mmにヒートプレスした感光性樹脂組成物を光硬化させたのち、水に20℃で1時間あるいは24時間浸漬させた後の重量増加率(%)を測定した。
(4)機械的強伸度:厚み1mmにヒートプレスした感光性樹脂組成物を光硬化させたのち、金型で抜き取り、テンシロン(クロスヘッド100kg使用)の引っ張り試験により、試験速度200mm/分で測定した伸度と強度を掛け合わせた値である。
実施例1
(感光性樹脂組成物の作製)
(A)成分であるエラストマー系バインダーとして、疎水性重合体(α):アクリロニトリル−ブタジエンラテックス(Nipol SX1503 不揮発分42% 日本ゼオン(株)製)20重量部、疎水性重合体(β):ブタジエンラテックス(Nipol LX111NF 不揮発分55% 日本ゼオン(株)製)36重量部、(B)成分として、ラウリルメタクリレート(ライトエステルL 共栄社化学(株)製)4重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート4重量部、オリゴブタジエンアクリレート(ABU−2S 共栄社化学(株)製)12重量部、(C)成分の光重合開始剤1重量部、(D)成分である親水性重合体(PFT−3 不揮発分25% 共栄社化学(株)製)12重量部、可塑剤として、共役ジエンオリゴマー(B2000 日本石油化学(株)製)6重量部、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.1重量部、をトルエン5重量部とともに容器中で混合してから、次に加圧ニーダーを用いて105℃で混練し、その後トルエンと水を減圧除去することにより、感光性樹脂組成物を得た。
【0048】
A.蒸着シートの作製
PETフィルム(原反は東洋紡績(株)製のE5002で厚さ100μm)にポリビニルアルコール(東洋紡績(株)製PA223/山南合成化学(株)サンナロンMW022/富士アミドケミカル(株)N-エチル-0 and P-トルエンスルホンアミド/純水/ナカライテクス(株)イソプロピルアルコール/旭電化工業(株)プロピレングリコール=5.64%/1.17%/1.17%/31.2%/53.13%/7.86%の比率で溶解した水溶液をバーコーター#26で塗布し、100℃、3分間乾燥して、乾燥後の厚みが2μmの塗膜を形成し、次いで、この塗膜の面に、真空蒸着法により、アルミニウムを500Åの厚みに蒸着した。この時の光学濃度(OD)は3.0であった。この光学濃度(OD)は白黒透過濃度計DM−520(大日本スクリーン(株)製造)によって測定した。
【0049】
B.原版の作製
上記感光性樹脂組成物をスチール版(厚さ170μm)にポリエステル系接着剤が塗布された支持体と、上記Aで作製したアルミニウム蒸着フィルムの蒸着面を重ね合わせ、ヒートプレス機を用いて100℃、100kg重/cm2でラミネートし、PET支持体、感光性樹脂層、アルミニウム蒸着層、ポリビニルアルコール層およびケミカルマット化PET保護フィルム(カバーフィルム)からなる版を得た。この版の感光性樹脂層の厚みは353μmであり、総厚みは0.63mmであった。
【0050】
C.IRアブレーション
まず、レリーフ深度を通常用いられる約0.8mmにするため上記フレキソ版のPET支持体側から化学線(光源Philips10R、365nmにおける照度7.5mW/cm2)を20秒間照射することによって、裏露光を実施し、次にケミカルマット化PET保護フィルム(カバーフィルム)を剥離した。この時保護フィルム(カバーフィルム)のみが剥がれ、ポリビニルアルコール層とアルミニウム蒸着層は感光性樹脂層上に残っていた。この感光性樹脂層上を10倍ルーペで拡大して観察したところ、ポリビニルアルコール層とアルミニウム蒸着層に破れやキズは認められなかった。この版を、Cyrel Digital Imager Spark(BARCO社製)の回転ドラムにポリビニルアルコール層が表側に、支持体のPETフィルムが裏側なるように巻き付け、真空引き後、ダイオードレーザで画像形成を行った。使用した本装置のレーザー出力は4.8mW、レーザー解像度は2540dpi、レーザースポット径は直径15μmであった。回転ドラムは1500rpmで回転させた。IRアブレーション後、版を取り出して10倍ルーペで拡大して観察したところ、問題なくアルミニウム蒸着層がアブレーションされていることを確認した。
【0051】
D.製版の実施
上記IRアブレーションした、デジタル画像マスクで覆われた感光性フレキソ印刷版全面に、化学線を15分間照射し、その後A&V(株)製現像機(Stuck System)で、40℃、6分間現像した。現像液には、アルキルナフタレンスルホン酸ソーダ4重量%を添加した水道水を用いた。現像工程中、IRアブレーション層の残部(アルミニウム蒸着層、ポリビニルアルコール層)および感光性樹脂層の非照射領域は除去され、化学線の照射領域が残った。現像後、60℃で10分間乾燥し、化学線で5分間照射し、最後に表面粘着を除去するため殺菌灯を5分間照射した。
【0052】
得られた印刷版は、レリーフ深度が 0.30mmであり、水性インキによる印刷で、網点150線1%〜95%、最小独立点直径100μm、最小独立線幅が30μm、最小抜き線幅100μm、最小凸文字1ポイント、最小抜き文字1ポイントを再現することができた。
【0053】
得られた印刷版のショアA硬度は60、反発弾性は60%、24時間後の水膨潤率は5.0%であった。
【0054】
得られた印刷版の機械的強伸度特性は、165kgf/cm2・%であり、10万部印刷後も版は損傷することなく、良好な印刷品が得られた。
【0055】
実施例2
A.蒸着シートの作製
ケミカルマット処理を施したPETフィルム(原反は東洋紡績製のE5002で厚さ100μm、ケミカルマット処理は東洋クロスで実施)にシリコーン離型剤(日本工材製NUCシリコーン)を約2秒間、約20cmの距離からスプレーした。その後、実施例1と同様にしてシリコーン離型剤のスプレー面に真空蒸着法により、アルミニウムを500Åの厚みに蒸着した。この時の光学濃度(OD)は3.0であった。
【0056】
B.原版の作製
実施例1と同様に、上記支持体と、前記アルミニウム蒸着フィルムの蒸着面を重ね合わせ、ヒートプレス機を用いて100℃、100kg重/cm2でラミネートし、PET支持体、感光性樹脂層、アルミニウム蒸着層およびケミカルマット化PET保護フィルム(カバーフィルム)からなる版を得た。この版の感光性樹脂層の厚みは253μmであり、総厚みは0.53mmであった。
【0057】
上記作製した原版に、実施例1と同様にして、裏露光を実施し、次にケミカルマット化PET保護フィルム(カバーフィルム)を剥離した。この時保護フィルムのみが剥がれ、アルミニウム蒸着層は感光性樹脂層上に残っていた。また、この感光性樹脂層上を10倍ルーペで拡大して観察したところ、アルミニウム蒸着層に破れやキズは認められなかった。次に、この裏露光後の版に、実施例1と同様にして、ダイオードレーザで画像形成(IRアブレーション)を行い、版を取り出して10倍ルーペで拡大して観察したところ問題なくアルミニウム蒸着層がアブレーションされていることを確認した。
この後、実施例1と同様にして、版の全面に化学線を照射し、さらに現像を行い、出来上がったフレキソ印刷版を10倍の拡大ルーペで検査したところ、2ポイントの凸部および凹文字、30μm幅の細線、100μmの直径の独立点および156lpi、1%網点全ての試験パターンが正確に形成されていた。
【0058】
比較例1
下記表1に示す成分を用いて、カーボンブラック、ポリビニルアルコール(日本合成化学社製ゴーセノールGH−23、熱分解開始温度220℃、極限酸素指数22.5)及び可塑剤を含む分散液を調製した。該分散液を、ナンバー26のバーコーターでPETフィルム(厚さ125μm)に塗布し、100℃、3分間乾燥して、水を蒸発させ、平滑で無粘着の塗布膜(4.1g/m2の塗布量及び4.8の化学線領域の光学濃度)を得、つまりIRアブレーション層が設けられたカバーフィルムを得た。
【0059】
【表1】

【0060】
原版の作製
上記作製したIRアブレーション層が設けられたPETフィルム(カバーフィルム)及び実施例1と同じ感光性フレキソ印刷原版を使用し、ヒートプレス機を用いて約100℃、100kg重/cm2でラミネートし、上記支持体、感光性樹脂層、IRアブレーション層およびPETフィルム(カバーフィルム)からなる原版を得た。
次に、得られた原版のカバーフィルムであるPETフィルム(カバーフィルム)を剥がし、実施例1と同様にして化学線照射をする前に、IRアブレーション層を10倍ルーペで拡大して観察すると、一部が破れていたり、多数のキズが発生していた。
さらに、実施例1と同様にして、化学線照射後、現像したところ、現像液が多量のカーボンブラックで汚されたため、その現像液を次の版製造には使用できなかった。また、出来上がったフレキソ印刷版を10倍の拡大ルーペで検査したところ、前記のIRアブレーション層に発生したキズ等の影響により、所望とする画像以外の微小な凸部や、レリーフの欠損部が認められ、画像再現性の悪いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上の説明により、本発明によれば、カバーフィルムを剥がす際のIRアブレーション層の破れやキズの発生を防止できるので、高精度のマスク形成が可能であり、従って、高品位の印刷画像が得られる印刷版を得ることができる。また、水系現像液で現像でき、かつ現像液の汚れが少なく、複数枚を連続して現像することができ、且つ水性インキに対する耐性があり、画像再現性の良好な新聞用印刷原版に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも支持体、感光性樹脂層、IRアブレーション層およびカバーフィルムを有する感光性樹脂積層体において、前記支持体が金属であって、前記IRアブレーション層がIR吸収性金属層であり、かつ前記感光性樹脂層の厚みが1000μm以下であることを特徴とする感光性樹脂積層体。
【請求項2】
感光性樹脂積層体が新聞印刷用原版である請求項1記載の感光性樹脂積層体。
【請求項3】
感光性樹脂層に水分散ラテックスから得られる疎水性重合体が含有されている請求項1記載の感光性樹脂積層体。
【請求項4】
IRアブレーション層とカバーフィルムとの間に、有機高分子層を有する請求項1記載の感光性樹脂積層体。
【請求項5】
IRアブレーション層が、IR吸収性金属層のみからなる、請求項1記載の感光性樹脂積層体。
【請求項6】
IR吸収性金属層が感光性樹脂層に接触配置されている請求項1記載の感光性樹脂積層体。
【請求項7】
IR吸収性金属層がアルミ蒸着層である請求項1記載の感光性樹脂積層体。
【請求項8】
感光性樹脂層の水膨潤率が8%以下である請求項1記載の感光性樹脂積層体。
【請求項9】
支持体及び感光性樹脂層との間に接着層を設け、該接着層にハレーション防止剤が含まれている請求項1記載の感光性樹脂積層体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の感光性樹脂積層体を用いることを特徴とする新聞用印刷原版。

【公開番号】特開2007−108476(P2007−108476A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−299935(P2005−299935)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】