説明

感光性樹脂組成物

【課題】200oC以下の低温で硬化可能でありながら、十分な膜物性及び化学薬品耐性を示す感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)マレイミドを含む構成単位及び下記一般式(1b)で表される構成単位を有する重合体、(B)光重合性化合物、(C)光重合開始剤、並びに(D)溶剤、を含有する感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子の表面保護膜及び層間絶縁膜には感光性のポリイミド樹脂が用いられている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
一般に、ポリイミド樹脂膜は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを極性溶媒中で常温常圧にて反応させてポリイミド前駆体(ポリアミド酸)の溶液を調製し、得られた溶液をスピンコート等で薄膜化した後、約350℃にて脱水閉環(いわゆる硬化)して形成する(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
一方、次世代メモリとして有望なMRAM(MagnetoresistiveRAM)は高温プロセスに弱いため、250℃以下、更に望ましくは200℃以下の低温で硬化可能な感光性樹脂組成物によって表面保護膜を形成することが求められている。低温硬化可能な感光性樹脂組成物としては、マレイミド誘導体、無水マレイン酸、又は変性無水マレイン酸共重合体を含むものが知られている。(例えば、特許文献4〜8参照)。
【特許文献1】特開昭49−115541号公報
【特許文献2】特開昭59−108031号公報
【特許文献3】特開昭59−219330号公報
【特許文献4】特開2004−190008号公報
【特許文献5】特公平7−82237号公報
【特許文献6】特公平4−20923号公報
【特許文献7】特開2005−331610号公報
【特許文献8】特開平6−828号公報
【非特許文献1】日本ポリイミド研究会編、「最新ポリイミド〜基礎と応用〜」、2002年、p.328‐338
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、200℃以下の低温で硬化可能な従来の感光性樹脂組成物の場合、得られる硬化膜の膜物性や化学薬品耐性が十分でないという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は、200oC以下の低温で硬化可能でありながら、十分な膜物性及び化学薬品耐性を示す感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(A)下記一般式(1a)で表される構成単位及び下記一般式(1b)で表される構成単位を有する重合体、(B)光重合性化合物、(C)光重合開始剤、並びに(D)溶剤、を含有する感光性樹脂組成物である。このような成分を組み合わせることにより、200oC以下の低温で硬化可能でありながら、十分な膜物性及び化学薬品耐性を示す感光性樹脂組成物が得られる。
【0008】
【化1】

【0009】
式(1a)中、Xは単結合、−C(CH−CH−、−O−、−CH−、−S−、又は−CHCH−を示す。
【0010】
【化2】

【0011】
式(1b)中、Yは単結合、−C(CH3)−CH−、−O−、−CH−、−S−、又は−CHCH−を示し、Zは−CH−、−CHCH−、−NHCO−、又は−C(CH−を示し、Rはメチル基又は水素原子を示す。
【0012】
(B)光重合性化合物は、不飽和基及びイソシアヌル環を有することが好ましい。このような光重合性化合物を用いることにより、ウエハ表面や硬化膜表面の状態及び化学薬品耐性がより良好となる。
【0013】
(C)光重合開始剤は、α-アミノケトン化合物であることが好ましい。このような光重合開始剤を用いることにより、光架橋反応が効率よく進行し、より良好な形状のパターンが形成される。
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物は、(E)加熱により酸を発生する熱酸発生剤を更に含むことが好ましい。熱酸発生剤を含有させることにより、ネガ型の感光性樹脂組成物が得られる。
【0015】
また、本発明は、上記感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂膜を露光後現像する工程と、当該現像後の感光性樹脂膜を加熱する工程と、を含むパターン形成方法である。このような工程を経ることによって、従来のポリイミド材料に匹敵するような膜物性及び化学薬品耐性を示す硬化膜が得られる。
【0016】
上記現像後の感光性樹脂膜を加熱する工程において、加熱温度は200℃以下であることが好ましい。加熱温度を200℃以下にすることで、再配線プロセス対応低温硬化型感光性耐熱材料としての感光性樹脂組成物の利用価値がより向上する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、200oC以下の低温で硬化可能でありながら、十分な膜物性及び化学薬品耐性を示す感光性樹脂組成物を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0019】
[感光性樹脂組成物]
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)式(1a)で表される構成単位及び式(1b)で表される構成単位を有する重合体、(B)光重合性化合物、(C)光重合開始剤、並びに(D)溶剤、を含有する。
【0020】
(A)成分である重合体は、式(1a)で表される構成単位及び式(1b)で表される構成単位を有する重合体であれば特に制限はない。重合体中に含まれる式(1a)で表される構成単位の数は、1〜10000であることが好ましい。式(1a)で表される構成単位の数が10000を超えると、現像時に未露光部が膨潤し、パターン形成が困難になる傾向がある。重合体中に含まれる式(1b)で表される構成単位の数は、1〜10000であることが好ましい。式(1b)で表される構成単位の数が10000を超えると、感光性樹脂組成物がゲル化する傾向がある。
【0021】
重合体中に含まれる式(1a)で表される構成単位の数(a)及び式(1b)で表される構成単位の数(b)の割合は、(a):(b)=30:70〜70:30であることが好ましい。(a)がこの割合より大きくなると、光架橋性を有する部分の割合が減少するため、良好なパターンが得られにくくなる傾向があり、(b)がこの割合より大きくなると、硬化後の膜の耐熱性が低下する傾向がある。重合体の重量平均分子量は、10000〜100000であることが好ましい。重量平均分子量が10000未満だと、硬化後の膜強度向上の効果が得られにくくなる傾向があり、100000より大きいと、未露光部の溶解速度が低下し、良好なパターン形成が困難となる傾向がある。また式中、X及びYはそれぞれ、−CH−(メチレン基)、−CHCH−(エチレン基)又は−C(CH−CH−(イソブチレン基)であることが好ましく、イソブチレン基であることがより好ましい。
【0022】
(A)成分は、例えば、式(1a)で表される構成単位及び下記一般式(10b)で表される構成単位を有するポリマーの酸無水物基に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させる方法で得られる。式(10b)中、Yは単結合、−C(CH−CH−、−O−、−CH−、−S−、又は−CHCH−を示す。上記ポリマーのうち、式中のX及びYがイソブチレン基である市販品としては、ISOBAM304、ISOBAM306、ISOBAM110(クラレ(株)商品名)が挙げられる。
【0023】
【化3】

【0024】
本発明の特性を損ねない程度に、(A)成分以外の重合体を併用してもよい。(A)成分以外の重合体としては、スチレンと無水マレイン酸の共重合体であるSMAレジン(アトフィナ・ジャパン(株)商品名)、ビニルアルキルエーテルと無水マレイン酸の共重合体であるGantrez(International specialty Products Japan(株)商品名)等が挙げられる。これらは単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
(A)成分の含有割合は、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、30〜90質量部であることが好ましく、40〜80質量部であることがより好ましい。この含有割合が30質量部未満であると、含有割合が上記範囲内にある場合と比較して、膜形成が困難となる傾向にあり、含有割合が90質量部を超えると、含有割合が上記範囲内にある場合と比較して、ゲル状になりやすくなる。
【0026】
(B)成分である光重合性化合物は、エチレン性不飽和基を有し光重合可能なものであれば特に制限はない。エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリレート基等のα,β−不飽和カルボニル基が挙げられる。エチレン性不飽和基としてα,β−不飽和カルボニル基を有する光重合性化合物としては、多価アルコールのα,β−不飽和カルボン酸エステル、ビスフェノールA骨格含有(メタ)アクリレート化合物、グリシジル基含有化合物のα,β−不飽和カルボン酸付加物、ウレタン結合含有(メタ)アクリレート化合物、ノニルフェノキシポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート、フタル酸骨格含有(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、不飽和基及びイソシアヌル環を有する化合物等が挙げられ、これらを単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
エチレン性不飽和基としてα,β−不飽和カルボニル基を有する光重合性化合物としては、これらの中でも、耐めっき性、密着性の観点から、ビスフェノールA骨格含有(メタ)アクリレート化合物及びウレタン結合含有(メタ)アクリレート化合物が好ましく、ビスフェノールA骨格含有(メタ)アクリレート化合物が特に好ましい。
【0028】
多価アルコールのα,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜14でありプロピレン基の数が2〜14であるポリエチレン・ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO,PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらを単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。なお、上記化合物名において、「EO変性」とはエチレンオキサイド基のブロック構造を有するものであることを意味し、「PO変性」とはプロピレンオキサイド基のブロック構造を有するものであることを意味する。
【0029】
ビスフェノールA骨格含有(メタ)アクリレート化合物としては、ビスフェノール骨格(ビスフェノールAの2つのフェノール性水酸基から水素原子を除いた構造)を含有し、且つ、メタクリレート基及びアクリレート基のうち少なくとも一方を有するものであれば特に制限はなく、具体的には、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。
【0030】
ここで、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンは、エチレンオキサイド基の数が4〜20個であることが好ましく、8〜15個であることがより好ましい。具体的には、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとして、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカエトキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。
【0031】
上記化合物のうち、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、「BPE−500」(新中村化学工業(株)製、製品名)として商業的に入手可能であり、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパンは、「BPE−1300」(新中村化学工業(株)製、製品名)として商業的に入手可能である。
【0032】
ウレタン結合含有(メタ)アクリレート化合物としては、β位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーとジイソシアネート化合物(イソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等)との付加反応物や、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレート、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、EO,PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、「UA−11」(新中村化学工業(株)製、製品名)が挙げられる。また、EO,PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、「UA−13」(新中村化学工業(株)製、製品名)が挙げられる。これらは単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレートとしては、ノニルフェノキシテトラエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシペンタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシヘキサエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシヘプタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシオクタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシノナエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシデカエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシウンデカエチレンオキシアクリレート等が挙げられ、これらを単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
フタル酸骨格含有(メタ)アクリレート化合物としては、フタル酸骨格(フタル酸の二つのカルボキシル基から水素原子を除いた構造)を含有し、且つ、メタクリレート基及びアクリレート基のうち少なくとも一方を有する化合物であれば特に制限はなく、具体的には、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシアルキル−β’−(メタ)アクリロルオキシアルキル−o−フタレート等が挙げられる。
【0035】
(B)成分である光重合性化合物は、不飽和基及びイソシアヌル環を有する化合物であることが光架橋の観点から好ましい。より詳細には、化学薬品耐性の観点から好ましい。不飽和基及びイソシアヌル環を有する光重合性化合物としては、密着性の観点から、例えば、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。
【0036】
【化4】

【0037】
式(2)中、R、R及びRは、それぞれ独立に下記一般式(20a)、(20b)又は(20c)で表される基を示す。但し、R、R及びRのうち少なくとも1つは、式(20a)又は式(20b)で表される基であることが好ましい。
【0038】
【化5】

式(20a)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、mは1〜14の整数を示す。
【0039】
【化6】

式(20b)中、mは1〜14の整数を示す。
【0040】
【化7】

式(20c)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、nは1〜9の整数を示し、mは1〜14の整数を示す。
【0041】
式(20a)、式(20b)又は式(20c)中、mが14を超えると、耐薬品性が低下する場合がある。同様の観点から、mは1〜6の整数であることが好ましい。また、式(20c)中、nが9を超えると、機械強度が低下する場合がある。同様の観点から、nは3〜6の整数であることが好ましい。
【0042】
不飽和基及びイソシアヌル環を有する光重合性化合物としては、下記一般式(2a)で表される化合物が特に好ましい。
【0043】
【化8】

【0044】
(B)成分である光重合性化合物は、水酸基、不飽和基及びイソシアヌル環を有してもよい。その場合、式(2)において、R、R及びRのうち少なくとも1つは式(20b)で表される基であり、少なくとも1つは式(20a)又は式(20c)で表される基である。
【0045】
水酸基、不飽和基及びイソシアヌル環を有する光重合性化合物としては、式(2b)で表される化合物が特に好ましい。
【化9】

【0046】
式(2)で表される化合物のうち、市販のものとしては、例えば、NKオリゴUA−21(新中村化学工業(株)商品名、式(2)中、R、R及びRが全て式(20b)で表される基を示す)、M−315(東亜合成(株)商品名、式(2)中、R、R及びRが全て式(20a)で表される基を示す)、M−215(東亜合成(株)商品名、式(2)中、R、R及びRのうち2つが式(20a)で表される基を示し、1つが式(20b)で表される基を示す)が挙げられる。これらは単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
(B)成分の含有割合は、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、10〜70質量部であることが好ましく、20〜60質量部であることがより好ましい。この含有割合が20質量部未満であると、含有割合が上記範囲内にある場合と比較して、露光部が膨潤し、硬化膜の機械特性が低下する傾向にあり、含有割合が60質量部を超えると、含有割合が上記範囲内にある場合と比較して、ゲル化する傾向にある。
【0048】
(C)成分である光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン;N,N’−テトラアルキル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物;2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパノン−1等のα-アミノケトン化合物;アルキルアントラキノン等のキノン類;ベンゾインアルキルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンゾイン、アルキルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物が挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。この中でも、光架橋を促進させるという観点からα-アミノケトン化合物が好ましい。
【0049】
(C)成分の含有割合は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましく、0.5〜3質量部であることがより好ましい。この含有割合が、0.1質量部未満では、露光による光架橋が不十分となる傾向があり、5質量部を超えると、未露光部の溶解速度が不十分となる傾向がある。
【0050】
(D)成分である溶剤としては、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ベンジル、n−ブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、3−メチルメトキシプロピオネート、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリルアミド、テトラメチレンスルホン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられるが、これらに限られるものではない。これらの溶剤は単独で又は2種以上併用して用いることができる。(D)成分の含有割合については特に制限はないが、一般に感光性樹脂組成物中の溶剤の割合が20〜90質量%となるのが好ましい。
【0051】
本発明の感光性樹脂組成物は、(E)加熱により酸を発生する熱酸発生剤を更に含むことが好ましい。(E)熱酸発生剤を用いることで、硬化膜の化学薬品耐性が向上する。(E)熱酸発生剤としては、有機過酸化物が挙げられる。有機化酸化物としては、パーヘキシン25B、パーブチルD、パーメンタH、パークミルP、パーオクタH、パークミルH、パーブチルH(日本油脂(株))が挙げられる。
【0052】
(E)成分の含有割合は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.2〜5質量部であることがより好ましい。この含有割合が、0.1質量部未満では、硬化が不十分となる傾向があり、10質量部を超えると、硬化膜が脆くなる傾向がある。
【0053】
本発明の感光性樹脂組成物は、更に必要に応じて、可塑剤、顔料、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤等を含有することができる。これらは単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0054】
[パターン形成方法]
本発明のパターン形成方法は、上記感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂膜を露光後アルカリ現像する工程と、当該現像後の感光性樹脂膜を加熱する工程とを含む。
【0055】
(感光性樹脂膜の作製)
ガラス基板、半導体、金属酸化物絶縁体(例えばTiO2、SiO2等)、窒化ケイ素等の支持基板上に、上記感光性樹脂組成物を、スピナー等を用いて回転塗布する。塗布後、支持基板をホットプレート、オーブン等を用いて80〜120℃に昇温させ、その状態で10分間乾燥する。これにより、支持基板上に感光性樹脂組成物の被膜(感光性樹脂膜)が形成される。
【0056】
(露光)
支持基板上の感光性樹脂膜に、マスクを介して紫外線、可視光線、放射線等の活性光線を照射する。また必要に応じて、露光後にPEBを行う。
【0057】
(現像)
感光性樹脂組成物の未露光部を、現像液で除去することによりパターンを形成する。現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ水溶液が好ましい。これらの水溶液の塩基濃度は、0.1〜10質量%とすることが好ましい。更に、上記現像液にアルコール類や界面活性剤を添加して用いることもできる。これらはそれぞれ、現像液100質量部に対して、0.01〜10質量部の範囲で配合することが好ましく、0.1〜5質量部の範囲で配合することがより好ましい。
【0058】
(加熱)
現像後の感光性樹脂膜を加熱する。加熱温度は、200℃以下とすることが好ましく、140〜200℃の範囲とすることがより好ましい。加熱は、石英チューブ炉、ホットプレート、ラピッドサーマルアニール、縦型拡散炉、赤外線硬化炉、電子線硬化炉、マイクロ波硬化炉等を用いて行なう。また、加熱は、大気中、又は窒素等の不活性雰囲気中のいずれでも行うことができるが、窒素中で行う方が感光性樹脂膜の酸化を防ぐことができるので好ましい。加熱時間は、作業効率との兼ね合いから概ね5時間以下であることが好ましい。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
(ポリマA1の合成)
撹拌機及び温度計を備えた0.5Lフラスコに、ISOBAM304((株)クラレ製、商品名)5g、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル(以下HEMAと略す)2.5g、及びメチルセロソルブ10gを入れ、反応液を調製した。反応液を80℃に昇温させ、その状態で5時間撹拌して、ポリマA1の溶液を得た。得られたポリマA1の重量平均分子量は60000、分散度は2であった。
【0061】
(ポリマA2の合成)
撹拌機を備えた0.5Lフラスコに、ISOBAM304((株)クラレ製、商品名)5g、HEMA2.5g、及びメチルセロソルブ10gを入れ、反応液を調製した。反応液を80℃に昇温させ、その状態で5時間攪拌した。撹拌後、室温に戻した反応液に、グリシジルメタクリレート(以下、GMAと略す。)2gを加え、室温にて更に3時間攪拌して、ポリマA2の溶液を得た。得られたポリマA2の重量平均分子量は62000、分散度は1.9であった。
【0062】
(ポリマA3の合成)
撹拌機を備えた0.5Lフラスコに、ISOBAM304((株)クラレ製、商品名)5g、HEMA2.5g、及びγ―ブチロラクトン(BLO)10gを入れ、反応液を調製した。反応液を室温にて6時間攪拌して、ポリマA3の溶液を得た。得られたポリマA3の重量平均分子量は63000、分散度は2であった。
【0063】
(ポリマA4の合成)
撹拌機を備えた0.5Lフラスコに、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体(GantrezAN119、ISP Japan社製、商品名)5g、HEMA2.5g、及びメチルセロソルブ10gを入れ、反応液を調製した。反応液を室温にて6時間撹拌して、ポリマA4の溶液を得た。得られたポリマA4の重量平均分子量は63000、分散度は2であった。
【0064】
(感光性樹脂組成物の調製)
実施例1〜10及び比較例1において、(A)〜(E)成分を表1に示す割合で配合し、感光性樹脂組成物M1〜M11を得た。(A)成分には、上記合成によって得られたポリマA1〜A4を用いた。表1中、(A)成分の割合は、ポリマAの質量比を示す。(B)成分には、(I)ビスフェノールA骨格EO変性ジメタクリレート、日立化成工業社製、商品名、FA321M、(II)東亜合成(株)社製、商品名、M−315、(III)新中村化学工業(株)社製、商品名、UA−11、(IV)新中村化学工業(株)社製、商品名、UA−21、(V)日本化薬(株)社製、商品名、KARAYAD R−684、(VI)日本化薬(株)社製、商品名、KARAYAD R−604を用いた。(C)成分には、(VII)チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)社製、商品名、I−369を用いた。(E)成分には、(VIII)日本油脂(株)社製、商品名、パーヘキシン25Bを用いた。
【0065】
【表1】

【0066】
(感光特性の評価)
得られた感光性樹脂組成物(M1〜M11)をシリコン基板(支持基板)上にスピンコートして、100℃で10分間加熱し、膜厚10μmの感光性樹脂膜を形成した。その感光性樹脂膜に対して、i線ステッパー(キャノン製FPA−3000iW)を用い、マスクを介してi線(365nm)での縮小投影露光を行った。露光後の感光性樹脂膜に対し、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38%水溶液にて60秒間現像を行った。
【0067】
現像後、水でリンスした感光性樹脂膜を観察して、解像度、剥がれ、感度及び残膜率の評価を行った。開口している最小の正方形ホールパターンのサイズ(μm)を解像度とした。剥がれは、10μmライン/スペースパターンが剥離しているか否かによって評価した。露光量を段階的に増やしながら露光していき、現像による露光部の膜厚の変化が最小となる露光量(mJ/cm)を感度とした。プリベイク後の膜厚と硬化後の膜厚を測定し、下記式によって求めた値を残膜率とした。評価結果を表2に示す。
残膜率(%)=(硬化後の膜厚/プリベイク後の膜厚)×100
【0068】
【表2】

【0069】
表2から明らかなように、実施例1〜10で得られた感光性樹脂組成物(M1〜M10)は、比較例1で得られた感光性樹脂組成物(M11)に比べて良好な感度、残膜率、解像度、及び剥がれを示した。
【0070】
(パターン形成)
感光性樹脂組成物(M1〜M11)をシリコン基板(支持基板)上にスピンコートして、100℃で10分間加熱し、膜厚約15μmの感光性樹脂膜を形成した。その感光性樹脂膜に対して、プロキシミティ露光機(キャノン製PLA−600FA)を用い、マスクを介してi線(365nm)で露光を行った。露光後の感光性樹脂膜に対し、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38%水溶液にて現像を行い、10mm幅の矩形パターンを形成した。
【0071】
(硬化)
縦型拡散炉(光洋サーモシステム製μ−TF)を用いて、パターン形成された感光性樹脂膜を、以下の3つの条件でそれぞれ加熱(硬化)し、膜厚約10μmの硬化膜を得た。
(i)窒素中、温度200℃(昇温時間1.5時間)で1時間加熱した。
(ii)窒素中、温度180℃(昇温時間1.5時間)で1時間加熱した。
(iii)窒素中、温度160℃(昇温時間1.5時間)で1時間加熱した。
【0072】
(膜物性の評価)
得られた膜厚約10μmの硬化膜をシリコン基板(支持基板)から剥離し、剥離した硬化膜(剥離膜)のガラス転移温度(Tg)をセイコーインスツルメンツ社製TMA/SS600で測定した。ガラス転移温度の測定は、試料(剥離膜)の幅を2mm、膜厚を10μmとし、チャック間距離10mm、荷重10g、昇温速度5℃/分にて行った。
【0073】
また、剥離膜の破断伸度及び破断応力を島津製作所製オートグラフAGS−H100Nで測定した。破断伸度及び破断応力の測定は、試料(剥離膜)の幅を10mm、膜厚を10μmとし、チャック間距離20mm、引っ張り速度5mm/分、測定温度23℃にて行った。同一条件で得た5つ以上の剥離膜についての破断伸度及び破断応力の測定値の平均をそれぞれ平均破断伸度、平均応力とし、破断伸度の最大値を最大破断伸度とした。M1〜M11のそれぞれについて、硬化条件、ガラス転移温度、平均破断伸度、最大破断伸度、及び平均応力を表3に示す。
【0074】
【表3】

【0075】
表3より明らかなように、実施例1〜10で得られた感光性樹脂組成物(M1〜M10)は、比較例1で得られた感光性樹脂組成物(M11)に比べて良好な平均破断伸度、最大破断伸度、及び平均応力を示した。また、実施例1〜10の感光性樹脂組成物(M1〜M10)は、十分な耐熱性(ガラス転移温度)を示した。
【0076】
(化学薬品耐性の評価)
上記の膜厚約10μmの硬化膜を用いて、以下の薬品及び条件で試験を行い、膜表面の状態、及び膜厚の状態の変化を評価した。評価結果を表4に示す。表4中、膜表面の状態に変化がなく、膜厚の増減がないものをA、膜表面には遜色ないが、膜厚が1〜2μm変化したものをB、それ以外をCとした。
薬品及び条件
N―メチル−2−ピロリドン(NMP)(23℃、15分)、γ―ブチロラクトン(BLO)(23℃、15分)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)(23℃、15分)、アセトン(23℃、15分)、0.27%フッ化水素水溶液(23℃、10分)、10%硫酸水溶液(23℃、3時間)
【0077】
【表4】

【0078】
表4より明らかなように、実施例1〜10から得られた硬化膜は、比較例1から得られた硬化膜に比べて、良好な化学薬品耐性を示した。
【0079】
以上に示したとおり、本発明によれば、200oC以下の低温で硬化可能でありながら、十分な膜物性及び化学薬品耐性を示す感光性樹脂組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1a)で表される構成単位及び下記一般式(1b)で表される構成単位を有する重合体、(B)光重合性化合物、(C)光重合開始剤、並びに(D)溶剤、を含有する感光性樹脂組成物。
【化1】

[式(1a)中、Xは単結合、−C(CH−CH−、−O−、−CH−、−S−、又は−CHCH−を示す。]
【化2】

[式(1b)中、Yは単結合、−C(CH−CH−、−O−、−CH−、−S−、又は−CHCH−を示し、Zは−CH−、−CHCH−、−NHCO−、又は−C(CH−を示し、Rはメチル基又は水素原子を示す。]
【請求項2】
(B)光重合性化合物が不飽和基及びイソシアヌル環を有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
(C)光重合開始剤がα−アミノケトン化合物である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
(E)加熱により酸を発生する熱酸発生剤を更に含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂膜を露光後現像する工程と、
当該現像後の感光性樹脂膜を加熱する工程と、を含むパターン形成方法。
【請求項6】
前記現像後の感光性樹脂膜を加熱する工程において、感光性樹脂膜を200℃以下に加熱する、請求項5に記載のパターン形成方法。

【公開番号】特開2008−134449(P2008−134449A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−320537(P2006−320537)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】