説明

感圧制御弁

【課題】感圧制御弁において、簡単な加工で製造でき、軽量化を図るようにする。
【解決手段】本体ケース11にベローズケース12をかしめ結合する。ベローズ収容室12A内に、ベローズガイド14を備えた感圧用ベローズ13を配設する。感圧用ベローズ13に電磁コイル装置10のプランジャ10bを取り付ける。感圧用ベローズ13の伸縮により、弁部材16を変位させ、弁ポート11bを開閉して圧縮機の容量制御を行う。ベローズ収容室12Aを形成するベローズ収容函12aとプランジャ10bを内挿するプランジャケース12bを、ステンレス板のプレス加工により一体に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用空調装置などの冷凍サイクル中で冷媒を圧縮する容量可変型圧縮機等に用いられ、感圧用ベローズにより弁開度を制御して容量可変型圧縮機の容量制御を行う感圧制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用空調装置の冷凍サイクルに用いられる圧縮機は、エンジンにベルトで直結されているので回転数制御を行うことができない。そこで、エンジンの回転数に制約されることなく適切な冷房能力を得るために、圧縮機の容量(吐出量)を変えることのできる容量可変型圧縮機が用いられている。
【0003】
そのような容量可変型圧縮機においては、一般に、気密に形成されたクランク室内で傾斜角可変に設けられた揺動板が回転軸の回転運動によって駆動されて揺動運動をし、その揺動板の揺動運動により往復動するピストンが吸入圧力をシリンダ内に吸入して圧縮した後、吐出し、クランク室内の圧力を変化させることにより、揺動板の傾斜角度を変化させ、往復動するピストンの移動量を可変することによって、冷媒の吐出量を変化させるようになっている。
【0004】
このような容量可変型圧縮機の容量を可変制御する感圧制御弁として、例えば特開2000−337736号公報(特許文献1)及び特開2000−88132号公報(特許文献2)に開示されたものがある。特許文献1の感圧制御弁は、蓋体にプランジャケース(プランジャチューブ)を組み込んだ後、蓋体とプランジャケースをろう付けにて接合し、この後、感圧用ベローズ及びケージを収容した弁ハウジング本体(ベローズケース相当)の端部に対して、上記ろう付け品の蓋体をOリングと共にかしめ結合するようにしている。特許文献2の制御弁は、感圧用ベローズを収容したベローズケースの端部に対して、弁ハウジングをかしめ結合するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−337736号公報
【特許文献2】特開2000−88132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1における蓋体(2)や、特許文献2におけるベローズケース(53)は切削加工により形成されているので、加工に手間が掛かるとともに、重量が重くなるという問題がある。また、特許文献1のものはろう付けを行っているので、フラックスや焼けを落とすために、酸洗いを行う必要がある。酸洗いを行うことは環境保護や公害防止という観点から好ましくなかった。
【0007】
本発明は、感圧制御弁において、ベローズケースを改良し、簡単な加工で製造できるとともに軽量化を図ることができ、本体ケースとベローズケースとの結合にろう付け等を必要としないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の感圧制御弁は、入口ポートと出口ポートが形成されるとともに、該入口ポートと出口ポートとの間に弁ポートが形成された本体ケースと、前記本体ケースに結合されベローズ収容室を構成するベローズケースと、前記ベローズ収容室内に配置された感圧用ベローズと、前記感圧用ベローズの一端に当接され前記弁ポートに配置された弁部材とを備え、前記ベローズ収容室内の圧力の変化に対して前記感圧用ベローズを伸縮させ、前記弁部材により前記弁ポートを開閉するようにした感圧制御弁において、前記ベローズケースを金属板のプレス加工により円筒形状に形成し、該円筒形状の開口端部に前記本体ケースを結合するようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の感圧制御弁は、請求項1に記載の感圧制御弁であって、前記感圧用ベローズの前記弁部材とは他方の側に連結されたプランジャにより該感圧用ベローズを駆動する電磁駆動部を備え、前記ベローズケースが、前記ベローズ収容室を構成する大径円筒状のベローズ収容函と、前記プランジャを摺動可能に配設した小径円筒状のプランジャケースとを一体にして構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3の感圧制御弁は、請求項1に記載の感圧制御弁であって、前記感圧用ベローズの前記弁部材とは他方の側に連結された調整ねじにより前記感圧用ベローズの圧縮量を調整する調整部を備え、前記ベローズケースが、前記ベローズ収容室を構成する大径円筒状のベローズ収容函と、前記調整部を配設した小径円筒状の調整部ケースとを一体にして構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4の感圧制御弁は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の感圧制御弁であって、前記ベローズケースの外周に、前記金属板の曲げ加工により形成された一対のフランジ部が形成され、該一対のフランジ部の間にOリングを配設するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の感圧制御弁によれば、ベローズケースを金属板のプレス加工により形成したので、組み立て時にベローズケースの本体ケース側端部をかしめることによりベローズケースと本体ケースとを結合することができるとともに、切削加工等の必要がなく簡単な加工で製造でき、軽量化も図れる。
【0013】
請求項2の感圧制御弁によれば、請求項1の効果に加えて、ベローズ収容函とプランジャケースとを一体に形成できるので、このベローズ収容函とプランジャケースとの中心度のずれが低減して、精度を高めることができる。また、ろう付けを行う必要がなく、その後の酸洗いを行う必要がなくなり、環境保護や公害防止という効果が得られる。
【0014】
請求項3の感圧制御弁によれば、請求項1の効果に加えて、ベローズ収容函と調整部ケースとを一体に形成できるので、このベローズ収容函と調整部ケースとの中心度のずれが低減して、精度を高めることができる。また、ろう付けを行う必要がなく、その後の酸洗いを行う必要がなくなり、環境保護や公害防止という効果が得られる。
【0015】
請求項4の感圧制御弁によれば、請求項1乃至3のいずれか一項の効果に加えて、Oリングを取り付ける溝を切削加工で形成する必要がなく、さらに簡単な加工で製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態の感圧制御弁の非通電時の縦断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態の感圧制御弁の非通電時の縦断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態の感圧制御弁の縦断面図である。
【図4】本発明の第4実施形態の感圧制御弁の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の感圧制御弁の実施形態を図面を参照して説明する。以下の各実施形態の感圧制御弁は自動車用空調装置の冷凍サイクルに用いられる容量可変型圧縮機に取り付られ、クランク室圧力Pcを制御するものである。
【0018】
図1は第1実施形態の感圧制御弁の非通電時の縦断面図である。この第1実施形態の感圧制御弁は、本体ケース11と本体ケース11の上部にかしめ結合されたベローズケース12とにより弁ハウジングを構成している。本体ケース11は金属の切削加工等により形成されている。ベローズケース12はステンレス(SUS)板のプレス加工により形成したものであり、このベローズケース12は、大径円筒状で端部を本体ケース11にかしめ結合したベローズ収容函12aと、小径円筒状のプランジャケース12bとを一体に形成して構成されている。
【0019】
ベローズ収容函12aはその内部にベローズ収容室12Aを形成しており、ベローズ収容室12Aにはベローズガイド14を備えた感圧用ベローズ13が配置されている。また、ベローズ収容函12aの側部には吸入圧力側ポート12dが形成されており、この吸入圧力側ポート12dには圧縮機の吸入圧力Psが導入される。
【0020】
感圧用ベローズ13は、下側端部13aと、ベローズ本体13bと、ベローズカバー13cと、調整ばね13dと、ストッパ13eとで構成されている。下側端部13aとベローズ本体13bは一体に成形されており、ベローズ本体13bはベローズカバー13cと気密に溶接されて、その内部は真空気密室となっている。また、ストッパ当金13eとベローズカバー13cとの間に調整ばね13dが圧縮状態で配設されている。
【0021】
ベローズガイド14は、円筒函状をしており、その開口端部が感圧用ベローズ13のベローズカバー13cの外周にねじ込まれて固着されている。また、ベローズガイド14の側部には導通孔14aが形成されるとともに、ベローズカバー13cと反対側の底部に透孔14bが形成されている。
【0022】
本体ケース11のベローズケース12とは反対側には、弁室11aが形成され、この弁室11aとベローズ収容室12Aとの間には、円形の弁ポート11b、円筒形のガイド孔11c及びクランク室側ポート11d(出口ポート)が形成されている。このクランク室側ポート11dには圧縮機のクランク室圧力Pcが導入される。また、本体ケース11の下端部には、弁室11aを画定するばね受け部材15がかしめ固定されており、このばね受け部材15には吐出圧力側ポート15a(入口ポート)が形成されている。そして、圧縮機の吐出圧力Pdが吐出圧力側ポート15aを介して弁室11aに導入される。
【0023】
弁室11a、弁ポート11b及びガイド孔11c内には、ボール弁部16aと円柱状のロッド部16bとを一体形成した弁部材16が設けられている。ボール弁部16aにはボール受け17が係合しており、ボール受け17とばね受け部材15との間に、弁部材16を閉弁方向(上方)へ付勢する閉弁ばね18が設けられている。弁部材16は、図にて上下に変位することにより、ボール弁部16aを弁座11eに着座、離間して弁ポート11bを開閉し、弁リフトに応じて吐出圧力側ポート15aより弁ポート11bを経てクランク室側ポート11dへ流れる流体の流量を定量的に制御(可変制御)する。
【0024】
ベローズ収容函12aの外周には、ベローズケース12を形成するときのステンレス板の曲げ加工により、2つのフランジ部12c,12cが形成されている。このフランジ部12c,12cの間にはOリング4Aが配設されている。本体ケース11の外周2箇所には、溝111,112が形成されており、溝111にはOリング4Bが、溝112にはOリング4Cが配設されている。
【0025】
プランジャケース12bの端部には電磁コイル装置10の吸引子10aが固着されている。プランジャケース12bの内部にはプランジャ10bが配設されており、このプランジャ10bと吸引子10aとの間にはプランジャばね10cが圧縮して配設されている。プランジャ10bの下端部には感圧用ベローズ13のベローズカバー13cがねじ込まれて固着されている。これにより、感圧用ベローズ13がプランジャ10bに連結されている。プランジャケース12bの外周部には電磁コイル10dが設けられており、電磁コイル10dの励磁により、吸引子10aの下端面がプランジャ10bに対する磁気吸引面となる。
【0026】
以上の構成により、電磁コイル装置10が非通電時には、図1に示すように、プランジャ10bがプランジャばね10cのばね力により吸引子10aから離間し、ベローズガイド14がベローズ収容室12Aの底部に当接する。この状態で、吸入圧力Psが変化すると、感圧用ベローズ13はベローズカバー13c側を固定点として伸縮する。弁部材16のロッド部16bは透孔14bを介して感圧用ベローズ13の下側端部13aに当接しているので、弁部材16は、閉弁ばね18のばね力により感圧用ベローズ13の下側端部13aに追従して進退する。これにより、ボール弁部16aが弁ポート11bの弁開度を変化させ、圧縮機は容量制御運転となる。
【0027】
一方、電磁コイル装置10の通電時には、プランジャ10bがプランジャばね10cのばね力に抗して吸引子10aに吸着し、ベローズガイド14及び感圧用ベローズ13がベローズ収容室12Aの底部から離間する。これにより、弁部材16のボール弁部16aが弁ポート11bを全閉状態とし、吐出圧力側ポート15aとクランク室側ポート11dの連通が遮断され、圧縮機のクランク室の圧力が低くなって圧縮機はフルロード運転となる。
【0028】
ベローズケース12において、ベローズ収容函12aとプランジャケース12bとはプレス加工により一体に成型されているので、ベローズ収容函12aに対してプランジャケース12bの中心度のずれを低減して、精度を高めることができる。したがって、プランジャ10bの動作精度を高くすることができる。また、従来のようにろう付けを行う必要がなく、製造工程で酸洗いを行う必要がない。さらに、金属板のプレス加工で形成しているので、切削加工等の必要がなく簡単な加工で製造でき、軽量化も図れる。
【0029】
なお、ベローズ収容函12aの外周のフランジ部12c,12cの間に配設されたOリング4A、本体ケースの外周の溝111,112に配設されたOリング4B,4Cは、当該感圧制御弁を圧縮機の本体に取り付けたとき、その取り付け用孔の内面により押圧された状態となる。これにより、ベローズ収容函12aの吸入圧力側ポート12dの周囲はOリング4A,4Bにより気密に封止される。したがって、ベローズケース12と本体ケース11とのかしめ部分は気密に封止される必要はなく、ベローズケース12と本体ケース11とは横からの力に耐える程度に固着されていればよい。また、本体ケース11のクランク室側ポート11dの周囲はOリング4B,4Cにより気密に封止される。
【0030】
図2は第2実施形態の感圧制御弁の非通電時の縦断面図である。この第2実施形態の感圧制御弁は、本体ケース21と本体ケース21の上部にかしめ結合されたベローズケース22とにより弁ハウジングを構成している。本体ケース21は金属の切削加工等により形成されている。ベローズケース22はステンレス(SUS)板のプレス加工により形成したものであり、このベローズケース22は、大径円筒状で端部を本体ケース21にかしめ結合したベローズ収容函22aと、小径円筒状のプランジャケース22bとを一体に形成して構成されている。また、ベローズケース22(ベローズ収容函22a)の外周には蓋24が嵌合固着されている。蓋24はステンレス(SUS)板のプレス加工により形成したものであり、この蓋24とベローズケース22は溶接により固着されている。また、蓋24の上部及びプランジャケース22bの外周に電磁コイル装置20が設けられている。
【0031】
ベローズ収容函22aはその内部にベローズ収容室22Aを形成しており、ベローズ収容室22Aには感圧用ベローズ23が配置されている。また、ベローズ収容函22aの側部には吸入圧力側ポート22cが形成されており、この吸入圧力側ポート22cには圧縮機の吸入圧力Psが導入される。
【0032】
感圧用ベローズ23は、下側端部23aと、ベローズ本体23bと、ベローズカバー23cと、調整ばね23dと、ストッパ当金23eとで構成されている。下側端部23aとベローズ本体23bは一体に成形されており、ベローズ本体23bはベローズカバー23cと気密に溶接されて、その内部は真空気密室となっている。また、ストッパ当金23eとベローズカバー23cとの間に調整ばね23dが圧縮状態で配設されている。
【0033】
本体ケース21のベローズケース22とは反対側には、弁室21aが形成され、この弁室21aとベローズ収容室22Aとの間には、円形の弁ポート21b、円筒形のガイド孔21c及びクランク室側ポート21d(出口ポート)が形成されている。このクランク室側ポート21dには圧縮機のクランク室圧力Pcが導入される。また、本体ケース21の下端部には、弁室21aを画定するばね受け部材25がかしめ結合されており、このばね受け部材25には吐出圧力側ポート25a(入口ポート)が形成されている。そして、圧縮機の吐出圧力Pdが吐出圧力側ポート25aを介して弁室21aに導入される。
【0034】
弁室21a、弁ポート21b及びガイド孔21c内には、円錐状の弁体部26aと円柱状の弁ステム部26bとを一体形成した弁部材としてのニードル弁26が設けられている。弁体部26aにはフランジ部が形成されており、このフランジ部とばね受け部材25との間に、弁体部26aを閉弁方向(上方)へ付勢する閉弁ばね28が設けられている。また、弁ステム部26bと感圧用ベローズ23との間には、ボール27が配設されており、ボール27は、本体ケース21に形成されたガイド孔21cを摺動可能に貫通しており、ボール27の上端がベローズ収容室22A内に僅かに突出している。なお、ニードル弁26及びボール27が「弁部材」を構成している。ニードル弁26は、図にて上下に変位することにより、弁体部26aを弁座21eに着座、離間して弁ポート21bを開閉し、弁リフトに応じて吐出圧力側ポート25aより弁ポート21bを経てクランク室側ポート21dへ流れる流体の流量を定量的に制御(可変制御)する。
【0035】
蓋24の外周には、蓋24を形成するときのステンレス板の曲げ加工により、フランジ部24aが形成されるとともに、段部24bが形成されている。このフランジ部24aと段部24bの間にはOリング5Aが配設されている。本体ケース21の外周2箇所には、溝211,212が形成されており、溝211にはOリング5Bが、溝212にはOリング5Cが配設されている。
【0036】
プランジャケース22bの端部には電磁コイル装置20の吸引子20aが固着されている。プランジャケース22bの内部にはプランジャ20bが配設されており、このプランジャ20bと吸引子20aとの間にはプランジャばね20cが圧縮して配設されている。プランジャケース22bの外周部には電磁コイル20dが設けられており、電磁コイル20dの励磁により、吸引子20aの下端面がプランジャ20bに対する磁気吸引面となる。感圧用ベローズ23のベローズカバー23cの中心にはストレートな円筒状の保持部23c1が形成されており、この保持部23c1内にプランジャ20bの端部の円柱状のボス部20b1が嵌め込まれている。また、ベローズ収容室22Aの底部の円環状の溝内には、感圧用ベローズ23の下側端部23aに当接するように中間ばね29が圧縮された状態で配設されている。これにより、感圧用ベローズ23がプランジャ20bに連結されている。
【0037】
以上の構成により、電磁コイル装置20が非通電時には、図2に示すように、プランジャ20bがプランジャばね20cのばね力により吸引子20aから離間し、感圧用ベローズ23の下側端部23aがベローズ収容室22Aの底部に当接する。この位置状態では、ニードル弁26の弁体部26aにより弁ポート21bが全開となる。これにより、吐出圧力側ポート25aとクランク室側ポート21dが連通接続され、圧縮機のクランク室の圧力が高くなって圧縮機はアンロード運転となる。
【0038】
また、プランジャばね20cのばね力が閉弁ばね28のばね力より大きく設定されているので、非通電時の状態で吸入圧力Psに変化が生じても、下側端部23aがベローズ収容室22Aの底部に当接した状態で、感圧用ベローズ23はベローズ収容室22Aの底部を固定点として伸縮し、プランジャ20bもそれに応じて変位するだけである。これにより、感圧制御弁を非通電状態にすることで圧縮機のアンロード運転の状態が確実に維持される。
【0039】
一方、電磁コイル装置20の通電時には、プランジャ20bがプランジャばね20cのばね力に抗して吸引子20aに吸着する。この状態で、ベローズ収容室22Aの内圧(吸入圧力Ps)が低くなると、感圧用ベローズ23は、プランジャ20b側を固定点として伸長し、逆に吸入圧力Psが高くなると感圧用ベローズ23は、プランジャ20b側を固定点として収縮する。これにより、ニードル弁26が変位し、圧縮機は容量制御運転となる。さらに吸入圧力Psが高くなり、感圧用ベローズ23がさらに収縮すると、感圧用ベローズ23がボール27から切り離されて弁体部26aが弁ポート21bを全閉とし、フルロード運転となる。
【0040】
第1実施形態と同様に、ベローズ収容函22aとプランジャケース22bとがプレス加工により一体に成型されているので、ベローズ収容函22aに対してプランジャケース22bの中心度のずれを低減して精度を高めることができ、プランジャ20bの動作精度を高くすることができる。また、ろう付けを行う必要がなく、製造工程で酸洗いを行う必要がない。さらに、金属板のプレス加工で形成しているので、切削加工等の必要がなく簡単な加工で製造でき、軽量化も図れる。
【0041】
なお、第1実施形態と同様に、当該感圧制御弁を圧縮機の本体に取り付けたとき、ベローズ収容函22aの吸入圧力側ポート22cの周囲はOリング5A,5Bにより気密に封止されるので、ベローズケース22と本体ケース21とのかしめ部分は気密に封止される必要はなく、ベローズケース22と本体ケース21とは横からの力に耐える程度に固着されていればよい。また、本体ケース21のクランク室側ポート21dの周囲はOリング5B,5Cにより気密に封止される。
【0042】
さらに、この第2実施形態では、ベローズケース22の外周に蓋24が溶接により固着され、この蓋24の上部及びプランジャケース22bの外周に電磁コイル装置20が設けられているので、ベローズケース22に対して電磁コイル装置20を堅牢に固定することができる。
【0043】
図3は第3実施形態の感圧制御弁の縦断面図である。この第3実施形態の感圧制御弁は、本体ケース31と本体ケース31の上部にかしめ結合されたベローズケース32とにより弁ハウジングを構成している。本体ケース31は金属の切削加工等により形成されている。ベローズケース32はステンレス(SUS)板のプレス加工により形成したものであり、このベローズケース32は、大径円筒状で端部を本体ケース31にかしめ結合したベローズ収容函32aと、小径円筒状の調整部ケース32bとを一体に形成して構成されている。調整部ケース32b内には調整部30が設けられている。
【0044】
ベローズ収容函32aはその内部にベローズ収容室32Aを形成しており、ベローズ収容室32Aには感圧用ベローズ33が配置されている。また、ベローズ収容函32aの側部には吸入圧力側ポート32cが形成されており、この吸入圧力側ポート32cには圧縮機の吸入圧力Psが導入される。
【0045】
感圧用ベローズ33は、下側端部33aと、ベローズ本体33bと、ベローズカバー33cと、調整ばね33dと、ストッパ当金33eとで構成されている。下側端部33aとベローズ本体33bは一体に成形されており、ベローズ本体33bはベローズカバー33cと気密に溶接されて、その内部は真空気密室となっている。また、ストッパ当金33eとベローズカバー33cとの間に調整ばね33dが圧縮状態で配設されている。
【0046】
本体ケース31のベローズケース32とは反対側には、弁室31aが形成され、この弁室31aとベローズ収容室32Aとの間には、円形の弁ポート31b、円筒形のガイド孔31c及びクランク室側ポート31d(出口ポート)が形成されている。このクランク室側ポート31dには圧縮機のクランク室圧力Pcが導入される。また、本体ケース31の下端部には、弁室31aを画定するばね受け部材35がかしめ結合されており、このばね受け部材35には吐出圧力側ポート35a(入口ポート)が形成されている。また。ばね受け部材35の下部にはバルブフィルタ34が取り付けられており、圧縮機の吐出圧力Pdがバルブフィルタ34及び吐出圧力側ポート35aを介して弁室31aに導入される。
【0047】
弁室31a内にはボール状の弁体36が設けられている。弁体36の上には弁ステム部36a及びボール37が配設されており、この弁体36、弁ステム部36a及びボール37が「弁部材」を構成している。弁ステム部36aとボール37は、本体ケース31に形成されたガイド孔31cを摺動可能に貫通しており、ボール37の上端が後述するベローズ収容室32A内に僅かに突出している。弁体36にはボール受け36bが係合しており、ボール受け36bとばね受け部材35との間に、弁体36を閉弁方向(上方)へ付勢する閉弁ばね38が設けられている。弁体36は、図にて上下に変位することにより、弁座31eに着座、離間して弁ポート31bを開閉し、弁リフトに応じて吐出圧力側ポート35aより弁ポート31bを経てクランク室側ポート31dへ流れる流体の流量を定量的に制御(可変制御)する。
【0048】
ベローズ収容函32aの上端外周には、ベローズケース32を形成するときのステンレス板の曲げ加工により、2つのフランジ部32c,32cが形成されている。このフランジ部32c,32cの間にはOリング6Aが配設されている。本体ケース31の外周2箇所には、溝311,312が形成されており、溝311にはOリング6Bが、溝312にはOリング6Cが配設されている。
【0049】
調整部ケース32bには、ベローズ収容室32A内にかけて調整部30が取り付けられている。調整部30は、調整部ケース32b内に固着される略円筒形状のガイド部30aと、ガイド部30a内に挿通される調整ねじ30bと、調整ねじ30bの端部に係合するボール30cとから構成されている。ガイド部30aの上端内周にには雌ねじ部30a1が形成され、調整ねじ30bの上端外周には雄ねじ部30b1が形成されている。そして、雄ねじ部30b1と雌ねじ部30a1とが螺合されている。感圧用ベローズ33のベローズカバー33cの中心にはストレートな円筒状の保持部33c1が形成されており、この保持部33c1内に調整ねじ30b及びボール30cが嵌め込まれている。
【0050】
また、ベローズ収容室32Aの底部の円環状の溝内には、感圧用ベローズ33の下側端部33aに当接するように中間ばね39が圧縮された状態で配設されている。これにより、感圧用ベローズ33が調整ねじ30bに連結されている。
【0051】
以上の構成により、吸入圧力Psが低くなると、感圧用ベローズ33は調整ねじ30b側を固定点として伸長し、逆に吸入圧力Psが高くなると感圧用ベローズ33は、調整ねじ30b側を固定点として収縮する。これにより、ボール37、弁ステム36aを介し、弁体36が変位し、圧縮機は容量制御運転となる。さらに吸入圧力Psが高くなり、感圧用ベローズ33がさらに収縮すると、感圧用ベローズ33がボール37から切り離されて弁体36が弁ポート31bを全閉とし、フルロード運転となる。
【0052】
調整部30においては、ガイド30aに調整ねじ30bをねじ込み、感圧用ベローズ33を圧縮させ、規定のPs圧力で当該感圧制御弁が弁開するように感圧用ベローズ33の圧縮量(荷重)を調整する。
【0053】
ベローズ収容函32aと調整部ケース32bとがプレス加工により一体に成型されているので、ベローズ収容函32aに対して調整部ケース32bの中心度のずれを低減して精度を高めることができる。したがって、感圧用ベローズ33に対する調整ねじ30bの進退動作の動作精度を高くすることができる。また、ろう付けを行う必要がなく、製造工程で酸洗いを行う必要がない。さらに、金属板のプレス加工で形成しているので、切削加工等の必要がなく簡単な加工で製造でき、軽量化も図れる。
【0054】
また、前記実施形態と同様に、当該感圧制御弁を圧縮機の本体に取り付けたとき、ベローズ収容函32aの吸入圧力側ポート32cの周囲はOリング6A,6Bにより気密に封止されるので、ベローズケース32と本体ケース31とのかしめ部分は気密に封止される必要はなく、ベローズケース32と本体ケース31とは横からの力に耐える程度に固着されていればよい。また、本体ケース31のクランク室側ポート31dの周囲はOリング6B,6Cにより気密に封止される。
【0055】
図4は第4実施形態の感圧制御弁の縦断面図である。この第4実施形態の感圧制御弁は、本体ケース41と本体ケース41の上部にかしめ結合されたベローズケース42とにより弁ハウジングを構成している。本体ケース41は金属の切削加工等により形成されている。ベローズケース42はステンレス(SUS)板のプレス加工により形成したものであり、このベローズケース42は、大径円筒状で端部を本体ケース41にかしめ結合したベローズ収容函42aと、小径円筒状の調整部ケース42bとを一体に形成して構成されている。調整部ケース42b内には調整部30が設けられている。なお、調整部30は第3実施形態と同様であり詳細な説明は省略する。
【0056】
ベローズ収容函42aはその内部にベローズ収容室42Aを形成しており、ベローズ収容室42Aには感圧用ベローズ43が配置されている。感圧用ベローズ43は、下側端部43aと、ベローズ本体43bと、ベローズカバー43cと、調整ばね43dと、ストッパ当金43eとで構成されている。下側端部43aとベローズ本体43bは一体に成形されており、ベローズ本体43bはベローズカバー43cと気密に溶接されて、その内部は真空気密室となっている。また、ストッパ当金43eとベローズカバー43cとの間に調整ばね43dが圧縮状態で配設されている。また、ベローズカバー43cの中心にはストレートな円筒状の保持部43c1が形成されており、この保持部43c1内に調整部30の調整ねじ30b及びボール30cが嵌め込まれている。
【0057】
本体ケース41のベローズケース42側には、弁室41aが形成され、この弁室41aの底部から下端側には円形の弁ポート41bが形成されている。また、本体ケース41には、弁室41aを径方向に貫通する吸入圧力側ポート41c(出口ポート)と、弁ポート41bを径方向に貫通するクランク室側ポート41d(入口ポート)が形成されている。吸入圧力側ポート41cには圧縮機の吸入圧力Psが導入され、クランク室側ポート41dには圧縮機のクランク室圧力Pcが導入される。さらに、本体ケース41の下端側には弁ポート41bまで貫通して圧縮機の吐出圧力Pdが導入される本体ガイド孔41eが形成されている。
【0058】
弁室41a内には「弁部材」としてのボール状の弁体44が設けられている。弁体44の下には圧力導入管44aが溶接等により接合されており、この圧力導入管44aは本体ガイド孔41e内に摺動可能に挿通されている。また、弁ポート41b内の圧力導入管44aの周囲には、弁体44を開弁方向(上方)へ付勢する開弁ばね45が設けられている。弁体44は、図にて上下に変位することにより、弁座41fに着座、離間して弁ポート41bを開閉し、弁リフトに応じてクランク室側ポート41dより弁ポート41bを経て吸入圧力側ポート41cへ流れる流体の流量を定量的に制御(可変制御)する。
【0059】
ベローズ収容函42aの上端外周には、ベローズケース42を形成するときのステンレス板の曲げ加工により、2つのフランジ部42c,42cが形成されている。このフランジ部42c,42cの間にはOリング7Aが配設されている。本体ケース41の外周2箇所には、溝411,412が形成されており、溝411にはOリング7Bが、溝412にはOリング7Cが配設されている。
【0060】
以上の構成により、吸入圧力Psが低くなると、感圧用ベローズ43は調整ねじ30b側を固定点として伸長し、逆に吸入圧力Psが高くなると感圧用ベローズ43は、調整ねじ30b側を固定点として収縮する。これにより、弁体44が変位し、圧縮機は容量制御運転となる。さらに吸入圧力Psが高くなり、感圧用ベローズ43がさらに収縮すると、弁体44が弁ポート41bを全開とする。したがって、圧縮機のクランク室圧力Pcが吸入圧力Psと実質的に等しい圧力となり、圧縮機はフルロード運転となる。
【0061】
ベローズ収容函42aと調整部ケース42bとがプレス加工により一体に成型されているので、ベローズ収容函42aに対して調整部ケース42bの中心度のずれを低減して精度を高めることができる。したがって、感圧用ベローズ43に対する調整ねじ30bの進退動作の動作精度を高くすることができる。また、ろう付けを行う必要がなく、製造工程で酸洗いを行う必要がない。さらに、金属板のプレス加工で形成しているので、切削加工等の必要がなく簡単な加工で製造でき、軽量化も図れる。
【0062】
また、前記実施形態と同様に、当該感圧制御弁を圧縮機の本体に取り付けたとき、ベローズ収容函42aの吸入圧力側ポート41cの周囲はOリング7A,7Bにより気密に封止されるので、ベローズケース42と本体ケース41とのかしめ部分は気密に封止される必要はなく、ベローズケース42と本体ケース41とは横からの力に耐える程度に固着されていればよい。また、本体ケース41のクランク室側ポート41dの周囲はOリング7B,7Cにより気密に封止される。
【符号の説明】
【0063】
11,21,31,41 本体ケース
12,22,32,42 ベローズケース
12a,22a,32a,42a ベローズ収容函
12b,22b プランジャケース
32b,42b 調整部ケース
12A,22A,32A,42A ベローズ収容室
15a,25a,35a 吐出圧力側ポート(入口ポート)
11d,21d,31d クランク室側ポート(出口ポート)
41c 吸入圧力側ポート(出口ポート)
41d クランク室側ポート(入口ポート)
11b,21b,31b,41b 弁ポート
16 弁部材
26 ニードル弁(弁部材)
36 弁体(弁部材)
36a 弁ステム部(弁部材)
37 ボール(弁部材)
44 弁体(弁部材)
13,23,33,43 感圧用ベローズ
10,20 電磁コイル装置
30 調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口ポートと出口ポートが形成されるとともに、該入口ポートと出口ポートとの間に弁ポートが形成された本体ケースと、前記本体ケースに結合されベローズ収容室を構成するベローズケースと、前記ベローズ収容室内に配置された感圧用ベローズと、前記感圧用ベローズの一端に当接され前記弁ポートに配置された弁部材とを備え、前記ベローズ収容室内の圧力の変化に対して前記感圧用ベローズを伸縮させ、前記弁部材により前記弁ポートを開閉するようにした感圧制御弁において、
前記ベローズケースを金属板のプレス加工により円筒形状に形成し、該円筒形状の開口端部に前記本体ケースを結合するようにしたことを特徴とする感圧制御弁。
【請求項2】
前記感圧用ベローズの前記弁部材とは他方の側に連結されたプランジャにより該感圧用ベローズを駆動する電磁駆動部を備え、
前記ベローズケースが、前記ベローズ収容室を構成する大径円筒状のベローズ収容函と、前記プランジャを摺動可能に配設した小径円筒状のプランジャケースとを一体にして構成されていることを特徴とする請求項1に記載の感圧制御弁。
【請求項3】
前記感圧用ベローズの前記弁部材とは他方の側に連結された調整ねじにより前記感圧用ベローズの圧縮量を調整する調整部を備え、
前記ベローズケースが、前記ベローズ収容室を構成する大径円筒状のベローズ収容函と、前記調整部を配設した小径円筒状の調整部ケースとを一体にして構成されていることを特徴とする請求項1に記載の感圧制御弁。
【請求項4】
前記ベローズケースの外周に、前記金属板の曲げ加工により形成された一対のフランジ部が形成され、該一対のフランジ部の間にOリングを配設するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の感圧制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−24135(P2013−24135A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159733(P2011−159733)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000143949)株式会社鷺宮製作所 (253)
【Fターム(参考)】