説明

成形装置および搬送装置

【課題】多様な形状の成形素材の正確な位置決めおよび搬送時間の短縮を実現する。
【解決手段】光学素子材料20を吸着保持する吸着パッド13と、光学素子材料20を把持して位置決めするチャック3を共通の吸着筒1に共通に固定し、吸着筒上下シリンダ12および吸着筒上下スライドステージ6によって同時に昇降させ、吸着パッド13は吸着パッド上下機構13aによって独立に吸着高さ位置を制御可能にし、光学素子位置決め台8に載置された光学素子材料20の外周部を一対のチャック3の間に把持して位置決めした後、吸着パッド13のみを降下させて光学素子材料20の上面を吸着保持させ、吸着パッド13およびチャック3によって位置決めされて保持された状態の光学素子材料20を、脱落させることなく、高速かつ正確に成形下型11に載置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形装置および搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、光学素子の製造分野では、型成形による量産が行われており、このような量産工程では、成形機に対する成形素材の供給も自動化されている。
この場合、成形機に対する成形素材の供給動作の正確さや、高速化が、不良品の低減、タクトタイム(成形素材の供給から成形完了までの所要時間)の短縮等による生産性の向上を実現する上で重要となる。
【0003】
従来、このような成形前の光学素材の供給工程における位置決め技術として、特許文献1に開示された技術が知られている。
この従来技術を、図12、図13及び図14を用いて説明する。図12は、光学素材を把持した状態での上面図、図13は図12の断面図をそれぞれ示している。
【0004】
図12に示すように、この光学素材中心位置決め装置101は基準部材111と、移動する3つのチャック113a、113b、113cと、これらのチャックの各々を駆動する3つの駆動部112a、112b、112cと、各チャックの先端部に配置されたセンサ115a、115b、115cを備えて構成されている。
【0005】
すなわち、基準部材111は、円盤状部材の中央に円柱状の凹が形成された形状を有している。中央の凹部の底面は平坦な面である支持部111aを構成し、支持部111aの外周側には円環状の外枠部111bが設けられている。
【0006】
円形の支持部111aの中心位置は、その三次元座標等が既知であり、位置決め点に相当している。また、位置決め点を通り支持部111aに垂直な直線は、位置決め軸に相当している。
【0007】
外枠部111bには、円周の3等分位置、すなわち円周角120°毎に、上記の位置決め軸に垂直かつ放射状に向かう3つの貫通孔114a、114b、114cが開設されている。これらの貫通孔には、それぞれ長さの等しい直線棒状のチャック113a、113b、113cが挿入され、各貫通孔の軸方向に前後に移動可能な構成となっている。
【0008】
各駆動部112a、112b、112cは、エアシリンダ、モータ等の駆動源(図示せず)と、減速・電動機構(図示せず)を有している。
センサ115a、115b、115cは、各チャック113a、113b、113cの接近方向の先端に設けられている。このセンサ位置は当接端部に相当している。
【0009】
各センサ115a、115b、115cは各チャック113a、113b、113cの先端が物体に当接したことを検知し、当接検出信号を駆動部112a、112b、112cの内部等に設けられた制御装置(図示せず)に出力する。
【0010】
次に、このような構成の従来技術の光学素材中心位置決め装置101の動作について説明する。
位置決めの対象となる光学素材Pは図12および図13に示すように、光学ガラス等の光学材料からなる略円盤状の素材であり、凸曲面状の2つの盤面を有し、外周部の側面が円筒状の凸レンズ形状に形成されている。各盤面の投影形状は円形であり、この円の中心がこの光学素材Pの素材中心となる。
【0011】
まず、光学素材Pを基準部材111の支持部111aに載置する。この場合、光学素材Pの載置位置は、支持部111a上であればよく、位置決め点から偏心していてもかまわない。支持部111a上に光学素材Pが載置されると、光学素材Pの盤面のうち支持部111a側の盤面は、その中心、すなわち素材中心によって支持部111a上に点接触で支持される。
【0012】
次に、制御装置(図示せず)を操作することにより、駆動部のON/OFFスイッチをONさせ、回転方向スイッチをいずれかに切り換えて、各駆動部112a、112b、112cの移動を開始させる。これにより、チャック113a、113b、113cは、同一速度で互いに接近する方向へ同時に直線的に移動する。この場合には、光学素材Pの載置位置が位置決め点から偏心していると、少なくとも一つのチャックの先端センサが、最初に光学素材Pの外周部に当接する。この場合、当接したセンサからは、当接検出信号が制御装置に出力される。
【0013】
次に、光学素材Pに当接したチャックは、接近方向への移動を継続するので、光学素材Pは、このチャックに押されて移動する。他のチャックについても同様である。この結果、最終的には全てのチャック113a、113b、113cの先端のセンサ115a、115b、115cから当接検出信号が制御装置へ出力される。この場合には、制御装置は、ON/OFFスイッチをOFFさせ、チャック113a、113b、113cの全てを停止させる。
【0014】
位置決め点の三次元座標値等は前述の通り、既知であるから、産業用のロボットアーム等に装着された吸着パッド等を移動させ、光学素材Pの素材中心が吸着パッドの中心位置と合致するようにして吸着・保持させることができる。
【0015】
但し、吸着が完了するまでにチャックを緩めると、光学素材Pの位置がずれるおそれがあるから、各チャックは、吸着の完了後に離隔方向へ後退させて緩める。その後は、光学素材Pを吸着パッドにより保持して持ち上げる等の操作を行い、産業用ロボットのアーム等を駆動して、光学素材Pの素材中心位置が吸着パッドの中心位置と一致しているから、中心位置の座標等が既知な凹形状の成形型へ移動させて載置すれば、光学素材Pを成形型の凹部上に偏心することなく正確に載置することができる。
【0016】
上述の従来技術では、光学素材中心位置決め装置で光学素材Pを位置決めした後、光学素材Pを吸着パッドで吸着しながら、タクトタイム短縮のために位置決め軸方向へ離隔し、搬送方向へ高速移動した場合、上下方向の移動に伴う加速度及び水平方向の移動に伴う加速度により光学素材Pの位置が微妙にずれてしまい、最悪の場合、移動中に光学素材Pが落下してしまう懸念があった。
【0017】
また、図14のように、凹状に弯曲した光学素材の位置決めを行おうとした際、支持部111aに対する位置決めチャックの高さが固定されているため、光学素材Pの最大径の高さ位置よりも、チャック113a〜113cの当接位置が低い場合には、位置決めした際に、光学素材Pが上方向に押し上げられてしまい位置決めに失敗するという懸念もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開平10−29826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、多様な形状の成形素材の正確な位置決めおよび搬送時間の短縮を実現することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の第1の観点は、少なくとも一つの成形機と、前記成形機に成形素材を搬送する搬送装置と、を備えた成形装置であって、
前記搬送装置は、
前記成形素材が載置される載置台と、
前記載置台に位置する前記成形素材を把持する把持機構と、
前記載置台に位置する前記成形素材を吸着保持する吸着機構と、
前記把持機構および前記吸着機構を同時に三次元的に変位させる第1移動機構と、
前記把持機構に対して前記吸着機構を独立に変位させる第2移動機構と、
を備えた成形装置を提供する。
【0021】
本発明の第2の観点は、成形素材を成形機へ搬送する搬送装置であって、
前記成形素材が載置される載置台と、
前記載置台に位置する前記成形素材を把持する把持機構と、
前記載置台に位置する前記成形素材を吸着保持する吸着機構と、
前記把持機構および前記吸着機構を同時に三次元的に変位させる第1移動機構と、
前記把持機構に対して前記吸着機構を独立に変位させる第2移動機構と、
を備えた搬送装置を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、多様な形状の成形素材の正確な位置決めおよび搬送時間の短縮を実現することが可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態である搬送装置を備えた成形装置の構成の一例を示す略側断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態である搬送装置を備えた成形装置の構成の一例を示す略平面図である。
【図3】本発明の一実施の形態である搬送装置の位置決め動作を説明する概念図である。
【図4】本発明の一実施の形態である搬送装置の位置決め動作を説明する概念図である。
【図5】本発明の一実施の形態である成形装置において、光学素子搬送ユニットによる光学素子材料の位置決めおよび供給動作の一例を示す概念図である。
【図6】本発明の一実施の形態である成形装置において、光学素子搬送ユニットによる光学素子材料の位置決めおよび供給動作の一例を示す概念図である。
【図7】本発明の一実施の形態である成形装置において、光学素子搬送ユニットによる光学素子材料の位置決めおよび供給動作の一例を示す概念図である。
【図8】本発明の一実施の形態である成形装置において、光学素子搬送ユニットによる光学素子材料の位置決めおよび供給動作の一例を示す概念図である。
【図9】本発明の一実施の形態である成形装置において、光学素子搬送ユニットによる光学素子材料の位置決めおよび供給動作の一例を示す概念図である。
【図10】本発明の一実施の形態である成形装置において、光学素子搬送ユニットによる光学素子材料の位置決めおよび供給動作の一例を示す概念図である。
【図11】本発明の一実施の形態である成形装置において、光学素子搬送ユニットによる光学素子材料の位置決めおよび供給動作の一例を示す概念図である。
【図12】従来技術を説明する平面図である。
【図13】従来技術を説明する断面図である。
【図14】従来技術の技術的課題を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本実施の形態では、一態様として、光学素子等の成形装置における搬送機構において、前後スライドステージ及び上下スライドステージと光学素材の位置決めチャックおよび吸着パッドを備えた吸着筒とを一体化した構成を開示する。
【0025】
本態様の搬送機構を備えた成形装置においては、光学素材の位置決めチャックは、前後スライドステージ及び、上下スライドステージによる吸着筒の変位と連動して動作する。
すなわち、光学素子を位置決めチャックに把持した状態で吸着筒の吸着パッドにより光学素材を吸着し、前後スライドステージと上下スライドステージを動作させることにより、光学素材を成形型内に高精度に位置決めして載置できる。
【0026】
また、光学素材は、位置決めチャックによる把持と吸着パッドによる吸着によって、互いに直交する2方向から確実に保持されるため、成形型内への搬入速度を高速化しても、光学素材の位置ずれ等が発生せず、光学素材の搬送速度の高速化を実現できる。
【0027】
これにより、成形型に対する光学素材の位置決めミスを無くしつつ、光学素材の搬送時間の短縮を実現できる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0028】
図1は、本発明の一実施の形態である搬送装置を備えた成形装置の構成の一例を示す略側断面図である。
図2は、本発明の一実施の形態である搬送装置を備えた成形装置の構成の一例を示す略平面図である。
【0029】
図3および図4は、本実施の形態の搬送装置の位置決め動作を説明する概念図である。
なお、本実施の形態では、図1において、左右方向をX方向、上下方向をZ方向、紙面に垂直な方向をY方向として説明する。また、一例として、Z方向は鉛直方向、X−Y平面は水平面とする。
【0030】
(構成)
図1および図2に例示されるように、本実施の形態の成形装置Mは、所定の方向(この場合、Y方向)に一列に配列された複数の光学素子成形機16(成形機)、光学素子成形機17(成形機)、光学素子成形機18(成形機)、光学素子成形機19(成形機)と、これらに共通に設けられた光学素子パレット15と、光学素子パレット15と、光学素子成形機16〜19の各々との間における光学素子材料20(成形素材)や成形後の光学素子20aの搬送動作を行う光学素子搬送ユニットH(搬送装置)を備えている。
【0031】
成形装置Mおよび光学素子搬送ユニットHの動作および、光学素子成形機16〜19と連携した動作は、制御装置30によって制御される。
光学素子成形機16〜19の各々には、鉛直方向(この場合、Z方向)に対向して配置された成形上型10および成形下型11が設けられ、成形上型10の成形面10aと成形下型11の成形面11aとの間に供給された光学素子材料20を挟圧して、成形面10aと成形面11aの形状が転写された光学素子20aを成形する動作を行う。
【0032】
本実施の形態の成形装置Mに備えられた光学素子搬送ユニットHは、図1に示すように、ベース板9の上に吸着筒上下スライドステージ固定板7が固定されており、この吸着筒上下スライドステージ固定板7の上面には、吸着筒上下スライドステージ6(第1移動機構)が固定されている。
【0033】
この吸着筒上下スライドステージ6の側面には吸着筒前後スライドステージ5(第1移動機構)が支持されており、この吸着筒前後スライドステージ5は、吸着筒上下スライドステージ6に沿って、鉛直方向(Z方向)に昇降する構成となっている。
【0034】
この吸着筒前後スライドステージ5は、光学素子成形機16〜19の配列領域に臨むX方向に伸縮するように変位する。
さらに、吸着筒前後スライドステージ5の、光学素子成形機16〜19に近い側の端部の下面には、吸着筒上下シリンダ12(第1移動機構)の上端が固定されている。
【0035】
この吸着筒上下シリンダ12の下端には吸着筒1が固定されている。そして、吸着筒上下シリンダ12の伸縮により、吸着筒1の鉛直方向(Z方向に)における昇降動作が行われる。
【0036】
吸着筒1の下方には、ベース板9と光学素子成形機16〜19の配列領域との間に位置するように光学素子位置決め台8(載置台)が、ベース板9の側面に固定されて配置されている。
【0037】
この光学素子位置決め台8には、光学素子材料20が載置される。光学素子位置決め台8の上面である光学素子材料20の載置面8aのZ方向の高さは、制御装置30に予め入力されて記憶されている。
【0038】
さらに、吸着筒1には、吸着筒1を抱き込むようにチャック固定板取り付け治具2が水平に固定されている。
また、チャック固定板取り付け治具2の、吸着筒1と反対側の端部にはチャック駆動板4の上端部が固定されており、このチャック駆動板4の下端部には図1の紙面に垂直なY方向に対向する一対のチャック3(把持機構)が設けられている。
【0039】
この一対のチャック3の各々の対向側面には、図3に例示されるように、V字形の把持溝3aが設けられているとともに、一対のチャック3の各々は、チャック駆動板4に設けられた図示しない移動機構により、対向方向(Y方向)に相互に接近および離間するように変位する。
【0040】
これにより、図3および図4に例示されるように、吸着筒1に支持された一対のチャック3の把持溝3aの間に、光学素子位置決め台8に載置された光学素子材料20の外周部を把持するとともに、水平面(X−Y平面)内における光学素子材料20の光軸中心20cの位置決め動作が行われる。
【0041】
なお、図4のような、一対のチャック3による把持および位置決め後の、水平面(X−Y平面)内での光学素子材料20の光軸中心20cの、光学素子搬送ユニットHにおけるX−Y平面内の位置決め中心位置座標Gは、制御装置30に予め記憶されている。
【0042】
すなわち、制御装置30は、一対のチャック3の把持により、光学素子材料20の光軸中心20cを、既定の位置決め中心位置座標Gに一致させるように位置決め動作を行う。
そして、本実施の形態の場合、光学素子位置決め台8に載置された光学素子材料20の素材最大径D0の高さ位置(Z方向の位置)で一対のチャック3による光学素子材料20の把持および位置決め動作が行われる。
【0043】
光学素子材料20の種類に応じて、素材最大径D0(Y方向の直径)の部分の載置面8aからの高さ(以下、把持高さh0と記す)は、異なる。
すなわち、複数の光学素子成形機16〜光学素子成形機19の各々において異なる種類の光学素子材料20を成形する場合、個々の成形機において光学素子材料20における把持高さh0は異なる。
【0044】
このため、本実施の形態の場合、制御装置30に対してティーチング等の方法で、複数の光学素子成形機16〜光学素子成形機19の各々における把持高さh0を予め記憶させている。
【0045】
そして、制御装置30は、各種類の光学素子材料20の各々毎に、Z方向において素材最大径D0に対応した把持高さh0にチャック3を位置決めする。
なお、図3は光学素子材料20が光学素子位置決め台8に置かれた直後の位置決め(把持)前の状態を示し、図4は図3の状態から一対のチャック3の把持溝3aにより、光学素子材料20の位置決めを行っている状態を示している。
【0046】
上述のように、本実施の形態では、吸着筒1、および当該吸着筒1にチャック固定板取り付け治具2、チャック駆動板4を介して支持されている一対のチャック3は、吸着筒上下シリンダ12を介して、吸着筒前後スライドステージ5および吸着筒上下スライドステージ6に共通に支持されている。
【0047】
これにより、吸着筒1とチャック3は、吸着筒前後スライドステージ5、吸着筒上下スライドステージ6、吸着筒上下シリンダ12によって同時に同一方向に変位する。
また、吸着筒1の下端には吸着パッド13(吸着機構)が内蔵されている。この吸着パッド13は、吸着筒1の内部に設けられたシリンダ等の吸着パッド上下機構13a(第2移動機構)によって、吸着筒上下シリンダ12による吸着筒1およびチャック3の昇降動作とは独立に、上下方向(Z方向)に移動可能になっている。
【0048】
図2に例示されるように、光学素子搬送ユニットHのベース板9は、複数の光学素子成形機16〜19と光学素子パレット15の配列方向に沿う方向(Y方向)に配置された左右スライドステージ14(第1移動機構)上に載置されており、光学素子搬送ユニットHの全体が左右スライドステージ14に沿ってY方向に移動することにより、光学素子パレット15または、光学素子成形機16〜19の任意の一つにX方向に正対するように光学素子搬送ユニットHを位置決めすることが可能になっている。
【0049】
ここで、本実施の形態の場合、光学素子搬送ユニットHを、複数の光学素子成形機16〜光学素子成形機19の任意の一つに正対させる、とは、光学素子搬送ユニットHの光学素子位置決め台8の位置決め中心位置座標Gが、目的の光学素子成形機の成形下型11のZ方向の中心軸を含むZ−X平面内に含まれる(一致する)ように、Y方向に光学素子搬送ユニットHを位置決めすることをいう。
【0050】
光学素子パレット15には複数の素材収納凹部15aが設けられ、個々の素材収納凹部15aには、成形前の光学素子材料20、または成形後の光学素子20aが収納される構成となっている。
【0051】
上述のように、本実施の形態の成形装置Mおよび光学素子搬送ユニットHの動作は、制御装置30によって制御される。
この制御装置30は、たとえば、コンピュータで構成され、制御装置30に実装された制御プログラム31を実行することによって、成形装置Mおよび光学素子搬送ユニットHの制御動作が行われる構成となっている。
【0052】
また、本実施の形態の成形装置Mの場合、制御装置30には、制御テーブル32が設けられている。
この制御テーブル32には、一例として、個々の成形機番号32aに対応して、把持高さデータ32b、素材最大径データ32cが対応付けられて格納される。
【0053】
すなわち、成形機番号32aには、複数の光学素子成形機16〜光学素子成形機19の各々にユニークに付与された番号が格納されている。
制御装置30は、この成形機番号32aによって個々の光学素子成形機16〜光学素子成形機19を認識する。制御装置30には、成形機番号32aと、個々の光学素子成形機16〜光学素子成形機19のY方向における配列位置(光学素子搬送ユニットHに対する正対位置)との対応関係が予め設定されている。
【0054】
そして、ティーチング等の方法で制御装置30に入力された、個々の成形機(光学素子材料20の種類)毎の把持高さh0、素材最大径D0等のデータが、成形機番号32aに対応して記憶される。
【0055】
制御装置30は、光学素子成形機16〜光学素子成形機19の各々に対する光学素子材料20の位置決めおよび供給動作に際して、制御テーブル32から対応する把持高さh0、素材最大径D0等のデータを読み出して光学素子搬送ユニットHや成形装置Mの動作を制御する。
(作用)
以下、本実施の形態の成形装置Mおよび光学素子搬送ユニットHの作用の一例を説明する。
【0056】
図5、図6、図7、図8、図9、図10、図11は、本実施の形態の成形装置Mにおいて、光学素子搬送ユニットHによって光学素子材料20がどのように搬送されるかを工程順に示す略側断面図である。
【0057】
まず、制御装置30は、光学素子搬送ユニットHを、左右スライドステージ14上を光学素子パレット15の位置まで移動させる。
次に、制御装置30は、吸着パッド13が光学素子パレット15に載置されている目的の光学素子材料20の直上に位置するまで、吸着筒前後スライドステージ5をX方向に光学素子パレット15に向かって伸長移動させる。
【0058】
次に、制御装置30は、吸着筒上下シリンダ12を下降(伸長)させ、さらに吸着パッド13を吸着パッド上下機構13aにより下降させる。吸着パッド13が光学素子材料20の上側の表面と接触した後、図示しない真空発生装置による負圧を吸着パッド13内に導くことにより、光学素子材料20を吸着パッド13に吸着保持させる。
【0059】
この状態で、制御装置30は、光学素子搬送ユニットHの吸着筒上下シリンダ12を上昇(縮退)させ、光学素子材料20を光学素子パレット15から浮上させるとともに、吸着筒前後スライドステージ5をX方向に光学素子搬送ユニットHの側に引き込むように後退させる。
【0060】
このとき、制御装置30は、必要に応じて、光学素子材料20の素材最大径D0の外周位置を一対のチャック3で把持する動作を行わせることができる。
さらに、制御装置30は、左右スライドステージ14上で、光学素子材料20を保持した光学素子搬送ユニットHを、Y方向に、光学素子成形機16〜19の中の目的の成形機(すなわち、現在成形作業を行っていない成形機)に正対する位置まで移動させる。
【0061】
次に、制御装置30は、吸着筒前後スライドステージ5を、X方向に、光学素子位置決め台8の上方まで前進(伸長)させ、吸着筒上下スライドステージ6の降下移動によって吸着筒前後スライドステージ5の全体を下降させた後、吸着筒上下シリンダ12を下降(伸長)させ、さらに吸着パッド13を吸着パッド上下機構13aにより下降させる。
【0062】
そして、制御装置30は、光学素子材料20の下面と光学素子位置決め台8の載置面8aとの接触を検知した後、図示しない真空装置により吸着パッド13内に作用している負圧を遮断する。
【0063】
また、チャック3による光学素子材料20の把持を併用している場合には、チャック3を開いて光学素子材料20の把持状態を解除する。
なお、制御装置30は、吸着筒上下シリンダ12や吸着筒上下スライドステージ6に作用するZ方向の荷重の変化等の情報に基づいて、光学素子材料20が載置面8aに接触した(載置された)ことを検知できる。
【0064】
この状態で、制御装置30は光学素子搬送ユニットHの吸着筒上下シリンダ12を上昇(縮退)させる。この際、光学素子材料20は光学素子位置決め台8のおおよその位置に置かれればよい。
【0065】
これにより、図5のように、光学素子材料20は、吸着パッド13による吸着保持状態から解放され、光学素子位置決め台8の載置面8aに載置される。
次に、制御装置30は、図6のように、一対のチャック3が、光学素子材料20の素材最大径D0よりも開いた状態で、チャック3が把持高さh0の位置になるように、吸着筒上下シリンダ12を下降させる。
【0066】
そして、制御装置30は、チャック駆動板4によって、チャック3を、上述の図3のように開いた状態から、図4のように閉じる。
すなわち、本実施の形態の場合、制御装置30は、吸着筒上下シリンダ12のZ方向の下降位置を、光学素子材料20の形状に応じて変化させ、チャック3による位置決めの際に光学素子材料20が上方に押し上げられたりしないよう、光学素子材料20の素材最大径D0の部分、つまり光学素子材料20をチャック3が確実に把持および位置決めできる高さ位置(把持高さh0)に制御する。
【0067】
これにより、図4のように一対のチャック3を閉じることにより、素材最大径D0の位置を把持溝3aによって把持し、光学素子材料20の光軸中心20cを、光学素子位置決め台8の位置決め中心位置座標Gに一致させる位置決めがなされる。
【0068】
次に、制御装置30は、図7のように吸着パッド上下機構13aにより吸着パッド13のみを降下させ、光学素子材料20の表面と吸着パッド13との接触を検知した後、図示しない真空発生装置による負圧を吸着パッド13内に作用させることにより、光学素子材料20を吸着パッド13に吸着保持する。
【0069】
なお、制御装置30は、吸着パッド13を支持する吸着パッド上下機構13aのZ方向の荷重の変化等に基づいて、吸着パッド13が光学素子材料20の上面に接触したことを検知できる。
【0070】
このように、本実施の形態の場合には、チャック3による水平面(X−Y平面)内における把持(固定)と、この水平面に直交する鉛直方向(Z方向)における吸着パッド13による吸着保持により、光学素子材料20は、チャック3および吸着パッド13によって互いに直交する方向から固定されるため、光学素子材料20の確実な位置決めおよび固定が可能となる。
【0071】
次に、制御装置30は、図8のように、吸着筒上下シリンダ12を上昇(収縮方向に作動)させることにより、チャック3による位置決めと吸着パッド13による吸着保持がなされた状態のまま光学素子材料20を、成形機の成形下型11の高さに応じた所定の搬入高さに上昇させる。
【0072】
次に、制御装置30は、図9のように成形上型10と成形下型11との間に光学素子材料20が位置するように、すなわち、光学素子材料20の光軸中心20cが、成形下型11のZ方向の中心軸に一致するように、吸着筒前後スライドステージ5を成形下型11の方向に前進させる。
【0073】
次に、制御装置30は、図10のように、吸着筒1等を支持した吸着筒前後スライドステージ5の全体を、吸着筒上下スライドステージ6によりZ方向の下方に移動させ、成形下型11の凹面(成形面11a)に光学素子材料20の下面が接触したところで下降を停止する。
【0074】
なお、制御装置30は、たとえば、吸着筒上下スライドステージ6における支持荷重の変化により、光学素子材料20の下面が成形下型11に接触したことを検知できる。
次に、制御装置30は、図示しない真空発生装置から吸着パッド13に導かれていた負圧を遮断することにより、吸着パッド13による光学素子材料20の吸着解除を行う。
【0075】
そして制御装置30は、吸着パッド上下機構13aにより吸着パッド13を上昇させて光学素子材料20から離間させた後、上述の図3のように一対のチャック3を開き、光学素子材料20の把持状態を解除する。
【0076】
これにより、光学素子搬送ユニットHによって、光学素子材料20を成形下型11に位置決めして載置する動作が完了し、制御装置30は、吸着筒上下スライドステージ6をZ方向に上昇移動させ、吸着筒1やチャック3等が支持されている吸着筒前後スライドステージ5を上昇させ、さらに吸着筒前後スライドステージ5をX方向に成形下型11から離間する方向に後退させる。
【0077】
このように、本実施の形態の場合には、チャック3と吸着パッド13の2つの機構により光学素子材料20を位置決めおよび保持しながら光学素子成形機16〜光学素子成形機19の成形下型11および成形上型10に供給するため、光学素子材料20の位置ずれ及び落下を確実に防止することができる。
【0078】
制御装置30は、吸着筒前後スライドステージ5が光学素子搬送ユニットHの内部に後退したこと(すなわち、成形下型11と成形上型10の間から退避したこと)を図示しない位置検出機によって確認し、光学素子材料20を供給した光学素子成形機(たとえば光学素子成形機16)に対して成形開始の指令を出す。
【0079】
この指令を受けた光学素子成形機16では、成形上型10をZ方向に下方向へ下降させ、図11のように、成形下型11の成形面11aと成形上型10の成形面10aとの間で光学素子材料20を挟圧し、成形面11aおよび成形面10aの形状を光学素子材料20に転写して光学素子20aに成形する成形動作を行う。
【0080】
この成形動作の後、光学素子成形機16では、成形上型10をZ方向に上昇させ、重力により、成形後の光学素子20aは、成形下型11の成形面11aに位置する状態となる。
【0081】
このタイミングで、光学素子成形機16は、制御装置30に対して成形完了を通知する。
この通知を受けた制御装置30は、上述の図5〜図11の一連の供給動作とは逆に光学素子搬送ユニットHを作動させ、成形下型11の光学素子20aを吸着パッド13に吸着保持して、光学素子パレット15の素材収納凹部15aもしくは図示しない成形後専用の収納パレットに搬送処理する。
【0082】
なお、この成形下型11(光学素子成形機16)から光学素子パレット15の素材収納凹部15aへの光学素子20aの搬送(回収)においては、光学素子パレット15の目的の素材収納凹部15aに成形後の光学素子20aが収納されればよく、制御装置30は、当該回収時における一対のチャック3による光学素子20aの把持および位置決めを必要に応じて行う。
【0083】
たとえば、光学素子成形機16から光学素子パレット15への光学素子20aの搬送速度を大きくする場合には、吸着パッド13による光学素子20aの吸着保持と、チャック3による光学素子20aの外周部の把持とを組み合わせることで、より確実に光学素子20aを光学素子搬送ユニットHに保持することができ、搬送中の光学素子20aの脱落を確実に防止できる。
【0084】
これにより、光学素子20aの光学素子パレット15への高速な回収搬送が可能になり、成形工程全体の時間を短縮できる。
以上説明したように、本実施の形態の成形装置Mおよび光学素子搬送ユニットHによれば、成形前の光学素子材料20の光学素子成形機16〜光学素子成形機19の各々に対する供給に際して、一対のチャック3の把持溝3aによって光学素子20aを把持することで、光学素子材料20を水平面(X−Y平面)内で位置決めした後、吸着パッド13によって光学素子材料20を吸着保持するので、光学素子成形機16〜光学素子成形機19の一つの成形下型11に対して、光学素子材料20を正確に位置決めして載置することが可能となり、光学素子の搬送により発生する位置ズレや落下を防ぐことができる。
【0085】
さらに、光学素子材料20や光学素子20aを、吸着パッド13およびチャック3によって保持する場合には、光学素子材料20および光学素子20aの脱落等を懸念することなく、光学素子パレット15と光学素子成形機16〜光学素子成形機19との間における光学素子材料20および光学素子20aの搬送速度を大きくして、搬送所要時間を短縮することが可能となる。
【0086】
この結果、タクトタイムタイム(光学素子パレット15と光学素子成形機16〜光学素子成形機19との間における一つの光学素子材料20の供給から、成形、成形された光学素子20aの回収までの所要時間)の大幅な短縮が可能となる。
【0087】
また、光学素子搬送ユニットHによる光学素子材料20の成形下型11への正確な供給により、光学素子成形機16〜光学素子成形機19における光学素子20aの成形不良も減少する。
【0088】
この結果、本実施の形態の成形装置Mの生産性が大幅に向上する。
また、素材最大径D0の高さ位置、すなわち把持高さh0の異なる多様な形状の光学素子材料20を成形する場合でも、個々の光学素子材料20の把持高さh0に合わせてチャック3の把持動作における高さ位置が設定されるので、多様な形状の光学素子材料20をチャック3によって位置決めする場合においても位置決め動作の失敗が発生せず、正確な光学素子材料20の位置決めを行うことができる。
【0089】
すなわち、本実施の形態の成形装置Mおよび光学素子搬送ユニットHによれば、多様な形状の成形素材の正確な位置決めおよび搬送時間の短縮を実現することが可能となる。
なお、本発明は、上述の実施の形態に例示した構成に限らず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0090】
成形素材としては、光学素子材料20に限らず、一般の物品の成形工程に広く適用できる。
[付記1]
光学素子材料を成形装置へ搬送する光学素子搬送装置であって、
前記光学素子材料を位置決めする位置決め台と、
前記位置決め台により位置決めされた光学素子材料を把持する把持機構と、
前記位置決め台により位置決めされた光学素子材料を吸着する吸着機構と、
前記光学素子材料を前記成形装置へ移動させる移動機構と、を備え、
前記移動機構により光学素子材料を移動する際、前記把持機構と吸着機構とを用いて、前記光学素子材料を成形装置へ移動させることを特徴とする光学素子搬送装置。
【0091】
[付記2]
前記光学素子材料は、前記把持機構による把持方向と、当該把持方向と略直行する方向を前記吸着機構により吸着されることを特徴とする付記1記載の光学素子搬送装置。
【0092】
[付記3]
搬送の機構について、横方向に可動可能な光学素子位置決め機構と光学素子位置決め機構と連動する機構を有することを特徴とする光学素子搬送装置。
【符号の説明】
【0093】
1 吸着筒
2 チャック固定板取り付け治具
3 チャック
3a 把持溝
4 チャック駆動板
5 吸着筒前後スライドステージ
6 吸着筒上下スライドステージ
7 吸着筒上下スライドステージ固定板
8 光学素子位置決め台
8a 載置面
9 ベース板
10 成形上型
10a 成形面
11 成形下型
11a 成形面
12 吸着筒上下シリンダ
13 吸着パッド
13a 吸着パッド上下機構
14 左右スライドステージ
15 光学素子パレット
15a 素材収納凹部
16〜19 光学素子成形機
20 光学素子材料
20a 光学素子
20c 光軸中心
30 制御装置
31 制御プログラム
32 制御テーブル
32a 成形機番号
32b 把持高さデータ
32c 素材最大径データ
D0 素材最大径
h0 把持高さ
G 位置決め中心位置座標
H 光学素子搬送ユニット
M 成形装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの成形機と、前記成形機に成形素材を搬送する搬送装置と、を備えた成形装置であって、
前記搬送装置は、
前記成形素材が載置される載置台と、
前記載置台に位置する前記成形素材を把持する把持機構と、
前記載置台に位置する前記成形素材を吸着保持する吸着機構と、
前記把持機構および前記吸着機構を同時に三次元的に変位させる第1移動機構と、
前記把持機構に対して前記吸着機構を独立に変位させる第2移動機構と、
を備えたことを特徴とする成形装置。
【請求項2】
前記把持機構による前記成形素材の把持方向と、前記吸着機構による前記成形素材の吸着方向と、がほぼ直交していることを特徴とする請求項1記載の成形装置。
【請求項3】
前記第1移動機構によって前記把持機構を前記成形素材に位置決めして把持した後、前記第2移動機構によって前記吸着機構を前記成形素材に当接させて吸着保持する動作が行われることを特徴とする請求項1または請求項2記載の成形装置。
【請求項4】
成形素材を成形機へ搬送する搬送装置であって、
前記成形素材が載置される載置台と、
前記載置台に位置する前記成形素材を把持する把持機構と、
前記載置台に位置する前記成形素材を吸着保持する吸着機構と、
前記把持機構および前記吸着機構を同時に三次元的に変位させる第1移動機構と、
前記把持機構に対して前記吸着機構を独立に変位させる第2移動機構と、
を備えたことを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
前記把持機構による前記成形素材の把持方向と、前記吸着機構による前記成形素材の吸着方向と、がほぼ直交していることを特徴とする請求項4記載の搬送装置。
【請求項6】
前記第1移動機構によって前記把持機構を前記成形素材に位置決めして把持した後、前記第2移動機構によって前記吸着機構を前記成形素材に当接させて吸着保持する動作が行われることを特徴とする請求項4または請求項5記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−201847(P2010−201847A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51789(P2009−51789)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】