説明

成膜装置および成膜方法

【課題】搬送室とチャンバの温度差にかかわらず、基板をサセプタ上の所定位置に載置することのできる成膜装置および成膜方法を提供する。
【解決手段】ロボットハンドで基板をチャンバの内部へ搬送し(S101)、基板支持部へ受け渡す(S102)。基板支持部を下降させて、サセプタの上に基板を載置する(S103)。基板を回転させながら温度測定を行う(S104)。放射温度計による測定結果と、エンコーダによる検出結果とを用いて、温度データと位置データを作成する(S105)。これらから基板の位置ずれ量を求めて(S106)、この位置ずれ量が許容値以下であるか否かを判定する(S107)。位置ずれ量が許容値より大きい場合には、搬送室内でロボットハンドの位置調整を行った後(S108)、次に成膜予定の基板をチャンバの内部へ搬送し、基板支持部を介してサセプタの上に載置する(S109)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置および成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor;絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などのパワーデバイスのように、比較的膜厚の大きい結晶膜を必要とする半導体素子の製造には、エピタキシャル成長技術が利用されている。
【0003】
エピタキシャル成長技術に使用される気相成長方法では、反応室内に基板を載置した状態で反応室内の圧力を常圧または減圧にする。そして、基板を加熱しながら、反応室内に反応性のガスを供給する。すると、基板の表面でガスが熱分解反応または水素還元反応を起こして気相成長膜が形成される。反応によって生成したガスや、反応に使用されなかったガスは、反応室に設けられた排気口を通じて外部に排出される。基板上にエピタキシャル膜を形成した後は、反応室から基板を搬出する。次いで、新しい基板を反応室内に搬入し、同様にしてエピタキシャル膜の形成を行う。
【0004】
膜厚の大きいエピタキシャル膜を高い歩留まりで製造するには、均一に加熱されたウェハの表面に新たな反応ガスを次々に接触させて成膜速度を向上させる必要がある。そこで、従来の成膜装置においては、ウェハを高速で回転させながらエピタキシャル成長させることが行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
図10は、従来の成膜装置の模式的な断面図であり、基板が搬出(または搬入)される様子を示している。
【0006】
図10に示すように、成膜装置200において、チャンバ201は、ベースプレート301の上にベルジャ302が配置された構造を有する。ベースプレート301の上には、ベースプレート301の全面を被覆する形状と大きさを備えたベースプレートカバー303が取り外し可能に設置されている。ベースプレートカバー303は、例えば、石英からなるものとすることができる。ベースプレート301とベルジャ302は、フランジ210によって連結されており、フランジ210はパッキン211でシールされている。気相成長反応の際には、チャンバ201内が極めて高い温度になる。そこで、チャンバ201の冷却を目的として、ベースプレート301とベルジャ302の内部には、冷却水の流路203が設けられている。
【0007】
ベルジャ302には、反応ガス204を導入する供給口205が設けられている。一方、ベースプレート301には排気口206が設けられており、排気口206を通じて反応後や未反応の反応ガス204がチャンバ201の外部へ排出される。
【0008】
排気口206は、フランジ213によって配管212と連結している。また、フランジ213は、パッキン214でシールされている。
【0009】
チャンバ201の内部には、ライナ202が配置されている。ライナ202の内側には、回転軸216と、回転軸216の上端に設けられた回転筒217とが配置されている。回転筒217の上には、リング状のサセプタ208が取り付けられており、回転軸216が回転すると、回転筒217を介してサセプタ208が回転するようになっている。
【0010】
サセプタ208は、その内周側に設けられた座ぐり内に基板207の外周部を受け入れる構造となっている。気相成長反応時においては、基板207をサセプタ208上に載置することにより、サセプタ208の回転とともに基板207が回転する。
【0011】
ライナ202の上部開口部には、整流板であるシャワープレート215が設けられている。シャワープレート215を通過した反応ガス204は基板207の方へ流下する。そして、基板207の表面で熱分解反応または水素還元反応を起こしてエピタキシャル膜を形成する。
【0012】
基板207の加熱は、回転筒217の内部に配置されたヒータ209によって行われる。ヒータ209は、アーム形状をした導電性のブースバー220によって支持されている。また、ブースバー220は、ヒータ209を支持する側とは反対の側で、ヒータベース221によって支持されている。そして、導電性の連結部222によって、ブースバー220と電極棒223が連結されることにより、電極棒223からヒータ209へ給電が行われる。尚、基板207の表面温度は、放射温度計224a、224bによって測定される。
【0013】
基板207の上にエピタキシャル膜を形成した後は、チャンバ201内のガスを水素ガスや不活性ガスなどで置換する。その後、基板207をチャンバ201の外へ搬出する。
【0014】
ライナ202とベルジャ302には、それぞれ基板搬出入口246と基板搬出入口247が設けられている。また、チャンバ201には、基板搬出入口247を介して搬送室(図示せず)が隣接しており、この搬送室には搬送ロボットが配置されている。基板207を搬出する際には、回転筒217の内部に配置された基板支持部(図示せず)によって基板207が上方に突き上げられる。また、搬送ロボットのロボットハンド248が基板搬出入口246、247を介してチャンバ201の内部に挿入される。そして、基板支持部からロボットハンド248へ基板207が受け渡された後、基板搬出入口246、247を通じて基板207が搬出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2008−108983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
基板207を搬出した後は、次にエピタキシャル膜を形成する基板207をチャンバ201の内部へ搬入する。具体的には、基板207を保持したロボットハンド248を基板搬出入口246、247からチャンバ201の内部へ挿入する。次いで、ロボットハンド248から基板支持部へ基板207を受け渡す。その後、基板支持部を降下させて、基板207をサセプタ208の上へ載置する。このとき、基板207の中心とサセプタ208の中心とが一致するように、搬送室内においてロボットハンド248の位置が調整されている。
【0017】
ところで、上記のようにして基板207を搬入する際、搬送室内の温度は常温程度であるのに対し、チャンバ201内の温度はこれよりかなり高温(例えば、800℃程度)である。このため、搬送室からチャンバ201内に搬入された基板207は、急激な温度変化を受けて変形を起こす。すると、ロボットハンド248または基板支持部の上で基板207が動き、搬送室内で調整した位置からずれる。この状態でサセプタ208の上に基板207を載置すると、基板207の中心とサセプタ208の中心とが一致せず、基板207からサセプタ208の座ぐり側壁までの距離が周方向に不均一となる。
【0018】
基板207の中心とサセプタ208の中心とが一致しない状態でエピタキシャル反応を行うと、次のような問題が生じる。
【0019】
チャンバ201に導入された反応ガス204は、基板207の回転に伴う遠心力によって、基板207の上面中心部から放射状に流れて外周部に掃き出された後、排気口206を通じてチャンバ201の外部へ排出される。このとき、基板207からサセプタ208の座ぐり側壁までの距離が近いところでは、掃き出された反応ガス204の一部が滞留し、基板207とサセプタ208の間にエピタキシャル膜が形成される。すると、基板207がサセプタ208に貼り付いてしまい、基板207の搬送時の障害となるだけでなく、スリップと称される結晶欠陥が発生する原因ともなる。スリップは、ウェハに反りを生じさせたり、ICデバイスにリークを起こしたりして、ICデバイスの歩留まりを著しく減少させる。
【0020】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、搬送室とチャンバの温度差にかかわらず、基板をサセプタ上の所定位置に載置することのできる成膜装置および成膜方法を提供することにある。
【0021】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の第1の態様は、反応ガスが供給されて成膜処理が行われる反応室と、
反応室に配置されて基板が載置されるサセプタと、
サセプタの下方に設けられて基板を加熱する加熱部と、
反応室に隣接する搬送室と、
搬送室に配置されて、反応室に基板を搬送する搬送部と、
基板の温度を測定する温度測定部と、
サセプタを介して基板を回転させる回転部と、
回転部の回転方向と回転角度を検出する検出部とを有し、
基板を回転させながら温度測定部で測定した基板の温度データと、検出部で検出した回転方向と回転角度から作成した温度測定を行う座標の位置データとを用いて、基板の温度分布データを作成し、この温度分布データから基板の位置ずれの方向と位置ずれ量を求める解析部と、
位置ずれの方向と位置ずれ量を基に搬送部の位置を調整する制御部とを有することを特徴とする成膜装置に関する。
【0023】
本発明の第1の態様において、解析部は、位置ずれ量が許容値以下であるか否かを判定し、位置ずれ量が許容値を超える場合に制御部へ位置ずれの方向と位置ずれ量を送ることが好ましい。
【0024】
本発明の第1の態様において、温度測定部は、反応室の外部に設けられ、基板からの放射光を受光して基板の温度を測定する放射温度計を有することが好ましい。
【0025】
本発明の第1の態様において、放射温度計は、温度測定位置を変動させることが可能であることが好ましい。
【0026】
本発明の第1の態様において、温度測定位置は、所定のピッチで移動させることが可能であることが好ましい。
【0027】
本発明の第2の態様は、搬送部で反応室に基板を搬送し、基板支持部を介してサセプタ上に基板を載置する工程と、
基板を回転させながら基板の外周部の温度測定を行うとともに、基板の回転方向と回転角度を検出する工程と、
基板の温度、回転方向および回転角度のデータから基板の温度分布データを作成して基板の位置ずれの方向と位置ずれ量を求める工程と、
位置ずれの方向と位置ずれ量を基に搬送部の位置を調整する工程と、
基板を反応室から搬出し、
搬出された基板を、調整後の搬送部によって再び反応室に搬送し、基板支持部を介してサセプタ上に載置する工程と、
反応室に反応ガスを供給し、基板を加熱しながら、この基板の上に所定の膜を形成する工程とを有することを特徴とする成膜方法に関する。
【0028】
本発明の第3の態様は、搬送部で反応室に第1の基板を搬送し、基板支持部を介してサセプタ上に基板を載置する工程と、
基板を回転させながら基板の温度測定を行うとともに、基板の回転方向と回転角度を検出する工程と、
基板の温度、回転方向および回転角度のデータから基板の温度分布データを作成して基板の位置ずれの方向と位置ずれ量を求める工程と、
位置ずれの方向と位置ずれ量を基に搬送部の位置を調整する工程と、
第1の基板を反応室から搬出する工程と、
第1の基板と同じ材料からなる第2の基板を搬送部によって反応室に搬送する工程と、
基板支持部を介して第2の基板をサセプタ上に載置する工程と、
反応室に反応ガスを供給し、第2の基板を加熱しながら、第2の基板の上に所定の膜を形成する工程とを有することを特徴とする成膜方法に関する。
【0029】
本発明の第2の態様または第3の態様において、基板の温度測定は、基板の中心とサセプタの中心とが一致しているときの基板の外周部に位置する円周上で行うことが好ましい。
【0030】
本発明の第2の態様または第3の態様において、基板の温度測定は、基板の中心とサセプタの中心とが一致しているときの基板の外周部に位置する2つ以上の円周上で行うことが好ましい。
【0031】
本発明の第2の態様または第3の態様において、搬送部の位置を調整する工程は、位置ずれ量が許容値を超える場合に行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0032】
本発明の第1の態様によれば、基板の位置ずれ量を求める解析部と、この位置ずれ量を基に搬送部の位置を調整する制御部とを有するので、搬送室とチャンバの温度差にかかわらず、基板をサセプタ上の所定位置に載置することのできる成膜装置が提供される。
【0033】
本発明の第2の態様によれば、基板の位置ずれ量を求める工程と、この位置ずれ量を基に搬送部の位置を調整する工程とを有するので、搬送室とチャンバの温度差にかかわらず、基板をサセプタ上の所定位置に載置することのできる成膜方法が提供される。
【0034】
本発明の第3の態様によれば、基板の位置ずれ量を求める工程と、この位置ずれ量を基に搬送部の位置を調整する工程とを有するので、搬送室とチャンバの温度差にかかわらず、基板をサセプタ上の所定位置に載置することのできる成膜方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施の形態の成膜装置の断面図であり、基板がロボットハンドで保持された状態を示す図である。
【図2】図1で、基板が基板支持部に支持された状態の断面図である。
【図3】図1で、基板がサセプタ上に載置された状態の断面図である。
【図4】基板の温度測定位置を模式的に示した図である。
【図5】位置ずれが生じた基板と、温度測定点との関係を示す図である。
【図6】図5で基板の周縁部が7aにあるときの、円周701〜705上の温度分布を示す一例である。
【図7】図5で基板の周縁部が7bにあるときの、円周701上の温度分布を示す一例である。
【図8】本実施の形態の成膜装置におけるデータの流れを示す図である。
【図9】本実施の形態の成膜方法のフローチャートである。
【図10】従来の成膜装置の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、本実施の形態の成膜装置の模式的な部分断面図である。尚、この図では、説明のために必要な構成以外を省略している。また、縮尺についても、各構成部を明確に視認できるよう原寸大のものとは変えている。
【0037】
図1に示すように、成膜装置100は、反応室としてのチャンバ1を有する。チャンバ1は、ベースプレート101の上にベルジャ102が配置された構造を有する。ベースプレート101の上には、ベースプレート101の全面を被覆する形状と大きさを備えたベースプレートカバー103が取り外し可能に設置されている。ベースプレートカバー103は、例えば、石英からなるものとすることができる。ベースプレート101とベルジャ102は、フランジ10によって連結されており、フランジ10はパッキン11でシールされている。ベースプレート101は、例えば、SUS(Steel Use Stainless;ステンレス鋼)からなるものとすることができる。
【0038】
気相成長反応の際には、チャンバ1内が極めて高い温度になる。そこで、チャンバ1の冷却を目的として、ベースプレート101とベルジャ102の内部には、冷却水の流路3が設けられている。
【0039】
ベルジャ102には、反応ガス4を導入する供給口5が設けられている。一方、ベースプレート101には排気口6が設けられており、排気口6を通じて反応後や未反応の反応ガス4がチャンバ1の外部へ排出される。
【0040】
排気口6は、フランジ13によって配管12と連結している。また、フランジ13は、パッキン14でシールされている。尚、パッキン11およびパッキン14には、300℃程度の耐熱温度を有するフッ素ゴムなどが用いられる。
【0041】
チャンバ1の内部には、中空筒状のライナ2が配置されている。ライナ2は、チャンバ1の内壁1aと、基板7上への気相成長反応が行われる空間Aとを仕切る目的で設けられる。これにより、チャンバ1の内壁1aが反応ガス4で腐食されるのを防ぐことができる。気相成長反応は高温下で行われるので、ライナ2は、高い耐熱性を備える材料によって構成される。例えば、SiC部材またはカーボンにSiCをコートして構成された部材の使用が可能である。
【0042】
本実施の形態では、便宜上、ライナ2を胴部2aと頭部2bの2つの部分に分けて称する。胴部2aは、内部にサセプタ8が配置される部分であり、頭部2bは、胴部2aより内径の小さい部分である。胴部2aと頭部2bは、一体となってライナ2を構成しており、頭部2bは胴部2aの上方に位置する。
【0043】
頭部2bの上部開口部には、整流板であるシャワープレート15が設けられている。シャワープレート15は、基板7の表面に反応ガス4を均一に供給する機能を有する。このため、シャワープレート15には、複数個の貫通孔15aが設けられており、供給口5からチャンバ1に導入された反応ガス4は、貫通孔15aを通って基板7の方へ流下する。ここで、反応ガス4は、無駄に拡散することなく、効率よく基板7の表面に到達することが好ましい。それ故、頭部2bの内径は胴部2aより小さく設計されている。具体的には、頭部2bの内径は、貫通孔15aの位置と基板7の大きさを考慮して決められる。
【0044】
また、チャンバ1の内部、具体的には、ライナ2の胴部2aに、基板7を支持するサセプタ8が配置されている。サセプタ8は、高耐熱性の材料で構成される。例えば、基板7の上にSiCをエピタキシャル成長させる場合、基板7は1500℃以上の高温にする必要がある。このため、サセプタ8には、例えば、等方性黒鉛の表面にCVD(Chemical Vapor Deposition)法によってSiCを被覆したものなどが用いられる。尚、サセプタ8の形状は、基板7を載置可能な形状であれば特に限定されるものではなく、リング状や円盤状などから適宜選択して用いられる。
【0045】
基板7の加熱は、回転筒17の内部に配置されたヒータ9によって行われる。ヒータ9は、本発明における加熱部である。ヒータ9は、抵抗加熱型のヒータとすることができ、円盤状のインヒータ9aと、環状のアウトヒータ9bとを有する。インヒータ9aは、基板7に対応する位置に配置される。アウトヒータ9bは、インヒータ9aの上方であって、基板7の外周部に対応する位置に配置される。基板7の外周部は中央部に比べて温度が低下しやすいため、アウトヒータ9bを設けることで外周部の温度低下を防ぐことができる。
【0046】
インヒータ9aとアウトヒータ9bは、アーム形状をした導電性のブースバー20によって支持されている。ブースバー20は、例えば、カーボンをSiCで被覆してなる部材によって構成される。また、ブースバー20は、インヒータ9aとアウトヒータ9bを支持する側とは反対の側で、石英製のヒータベース21によって支持されている。そして、モリブデンなどの金属からなる導電性の連結部22によって、ブースバー20と電極棒23が連結されることにより、電極棒23からインヒータ9aとアウトヒータ9bへ給電が行われる。具体的には、電極棒23からこれらのヒータ(9a、9b)の発熱体に通電されて発熱体が昇温する。
【0047】
基板7の表面温度は、温度測定部としての放射温度計24a、24bによって測定することができる。図1において、放射温度計24aは、基板7の中央部付近の温度を測定するのに用いられる。一方、放射温度計24bは、基板7の外周部の温度を測定するのに用いられ、外周部における温度測定位置を移動させることができる。これらの放射温度計(24a、24b)は、図1に示すように、チャンバ1の上部に設けることができる。この場合、ベルジャ102の上部とシャワープレート15を透明石英製とすることにより、放射温度計24a、24bによる温度測定がこれらによって妨げられないようにすることができる。
【0048】
測定した温度データは、図示しない制御機構に送られ、インヒータ9aとアウトヒータ9bの各出力制御にフィードバックすることができる。一例として、SiCエピタキシャル成長を行う場合、各ヒータの設定温度は次のようにすることができる。これにより、基板7を1650℃程度に加熱することが可能である。
インヒータ9aの温度:1680℃
アウトヒータ9bの温度:1750℃
【0049】
ライナ2の胴部2aには、回転軸16と、回転軸16の上端に設けられた回転筒17とが配置されている。回転軸16と回転筒17は、本発明の回転部を構成する。サセプタ8は、回転筒17に取り付けられており、回転軸16が回転すると、回転筒17を介してサセプタ8が回転するようになっている。気相成長反応時においては、基板7をサセプタ8上に載置することにより、サセプタ8の回転とともに基板7が回転する。
【0050】
回転軸16と回転筒17は、ベースプレート101の下に配置された回転機構310まで伸びている。回転機構310の内部には、回転軸16と回転筒17の回転数をモニタするエンコーダ300が備えられている。エンコーダ300で回転数をモニタすることで、回転軸16と回転筒17が所定の回転数を保つように制御される。また、エンコーダ300は、回転軸16と回転筒17、ひいては、基板7の回転方向と回転角度を検出し、本発明の検出部に対応するものである。エンコーダ300は、回転軸16に取り付けられた回転板305の回転を検知するエンコーダヘッド304と、検知された信号を処理する回路基板を備えたエンコーダピックアップ306とを有する。
【0051】
シャワープレート15を通過した反応ガス4は、頭部2bを通って基板7の方へ流下する。基板7が回転していることにより、反応ガス4は基板7に引きつけられ、シャワープレート15から基板7に至る領域で縦フローになる。基板7に到達した反応ガス4は、基板7の表面で乱流を形成することなく、水平方向に略層流となって流れる。このようにして、基板7の表面には、新たな反応ガス4が次々と接触する。そして、基板7の表面で熱分解反応または水素還元反応を起こしてエピタキシャル膜を形成する。尚、成膜装置100では、基板7の外周部からライナ2までの距離を狭くして、基板7の表面における反応ガス4の流れがより均一になるようにしている。
【0052】
以上の構成とすることで、基板7を加熱し且つ回転させながら気相成長反応を行うことができる。基板7を回転させることにより、基板7の表面全体に効率よく反応ガス4が供給され、膜厚均一性の高いエピタキシャル膜を形成することが可能となる。また、新たな反応ガス4が次々と供給されるので、成膜速度の向上が図れる。
【0053】
反応ガス4の内で気相成長反応に使用されなかったガスや、気相成長反応により生成したガスは、ベースプレート101に設けられた排気口6から排出される。
【0054】
図1〜図3は、成膜装置100において、チャンバ1内に基板7が搬入されてサセプタ8の上に載置される様子を示している。
【0055】
ライナ2とベルジャ102には、それぞれ基板搬出入口46と基板搬出入口47が設けられている。また、チャンバ1には、基板搬出入口47を介して搬送室(図示せず)が隣接しており、この搬送室には、搬送部を構成する搬送ロボットが配置されている。搬送ロボットは、ロボットハンド48を有している。そして、基板7の中心とサセプタ8の中心とが一致した状態で、基板7がサセプタ8の上に載置されるよう、ロボットハンド48の位置が調整される。
【0056】
基板7は、ロボットハンド48により、搬送室から基板搬出入口46、47を介してチャンバ1の内部に搬入された後、図2に示すように、ロボットハンド48から基板支持部50へ受け渡される。このとき、搬送室で調整された位置関係、すなわち、基板7の中心とサセプタ8の中心とが一致した状態で、基板7がサセプタ8の上に載置されるように調整された、基板7、サセプタ8およびロボットハンド48の位置関係が、基板7、サセプタ8および基板支持部50の間にも受け継がれるよう、ロボットハンド48と基板支持部50の位置関係が調整されている。基板支持部50へ基板7が受け渡された後は、基板支持部50が降下して、図3に示すように、基板7はサセプタ8の上に載置される。
【0057】
かかる基板7の搬送工程において、搬送室内の温度は常温程度であるのに対して、チャンバ1内の温度は、エピタキシャル成長工程よりは低いものの、搬送室内に比べるとかなりの高温(例えば、800℃程度)である。このため、搬送室からチャンバ1内に搬入された基板7は、急激な温度変化によって変形し、ロボットハンド48上や基板支持部50上で僅かではあるが動く。その結果、基板7の位置は、基板7の中心とサセプタ8の中心とが一致するように調整された位置からずれる。
【0058】
そこで、かかる基板7の位置ずれを正すため、本実施の形態においては、エピタキシャル成長工程の前に、基板7の位置ずれ量を把握し、これを搬送ロボットにフィードバックする。
【0059】
そのために、まず、図3の状態でロボットハンド48をチャンバ1の外部へ退出させた後、基板7を低速(例えば、50rpm程度)で回転させながら、放射温度計24bで基板7の外周部の温度を測定する。外周部一周について温度測定を終えたら、基板7の中心からの距離を所定のピッチで変えて同様に測定する。これを複数回繰り返す。例えば、8インチのシリコンウェハについて、まず、中心から95mmの円周上の温度を測定する。一周の温度測定を終えたら、測定位置を変え、中心から96mmの円周上の温度を測定する。その後、一周の温度測定を終える度に、中心からの距離を1mmずつ大きくして測定位置を変える。これを5回繰り返す。
【0060】
図4は、基板7における温度測定位置を模式的に示した図である。符号7aは、基板7の周縁部、符号8aは、サセプタ8の座ぐり部、符号8bは、座ぐり部8aの側壁をそれぞれ示している。温度測定は、例えば、中心がいずれも基板7の中心に一致し、半径の異なる5つの円の各円周701〜705に沿って行うことができる。基板7の中心とサセプタ8の中心とが一致した状態で、サセプタ8の上に基板7が載置されている場合、各円周701〜705での測定結果に分布はないはずである。すなわち、円周701上で測定した温度は、円のどの位置であっても実質的に同じであり、局所的に高くなったり低くなったりすることはない。他の円周702〜705についても同様である。
【0061】
尚、測定箇所は、5つの円周上に限られるものではないが、2つ以上の円周上で行うことが好ましい。これは、次の理由による。
【0062】
基板7の表面は、水平面と平行であることが好ましいが、実際には、基板7の反りによって多少のうねりを有する。このため、微細に見ると、基板7はサセプタ8と完全に密着しているわけではなく、サセプタ8から部分的に浮いている。これにより、基板7の中心とサセプタ8の中心とが一致した状態で、サセプタ8の上に基板7が載置されていても、円周上で温度分布が生じることがある。したがって、基板7の外周部の温度を測定する際に、1つの円周上のみの測定では、温度分布の原因が、サセプタ8の中心と基板7の中心とが一致していないことによるものなのか、基板7の反りによるものなのかを区別することが困難である。それ故、本実施の形態では、少なくとも2つ以上の円周上で温度測定を行うことが好ましい。
【0063】
図5は、位置ずれが生じた基板7と、温度測定点との関係を示す図である。この図において、符号7aは、サセプタ8の中心と基板7の中心とが一致しているときの基板7の周縁部を示している。一方、符号7bは、図5で矢印の方向に基板7がずれ、サセプタ8の中心と基板7の中心とが一致しなくなったときの基板7の周縁部を示している。
【0064】
図5で、基板の周縁部7bから、サセプタの座ぐり側壁8bまでの距離は、矢印の方向で短くなり、矢印と反対の方向で長くなっている。したがって、この状態でエピタキシャル成長反応を行うと、周縁部7bと座ぐり側壁8bとの距離が短いところに反応ガス4の一部が滞留してエピタキシャル膜が形成される。すると、基板7がサセプタ8に貼り付いてしまい、基板7を搬送する際の支障となったり、スリップを発生させる原因となったりする。
【0065】
図5の符号700は、図4の符号700に対応している。すなわち、図5で符号700で囲まれた部分にある5つの点は、それぞれ、図4の円周701〜705の上にある。また、図5の符号700’で囲まれた部分にある5つの点も、それぞれ、図4の円周701〜705の上にある。例えば、符号700で囲まれた部分にある5つの点のうち、最も周縁部7aに近い位置にある点と、符号700’で囲まれた部分にある5つの点のうち、最も周縁部7aに近い位置にある点とは、いずれも円周701の上にある。
【0066】
本実施の形態において、基板7の外周部の温度測定は放射温度計24bで行っており、基板7が位置ずれを起こしても温度測定の位置に変更はない。これは、次のことを意味している。
【0067】
図4の5つの円周701〜705は、サセプタ8の中心と基板7の中心が一致したときの、基板7の外周部に位置している。一方、図5に示すように、基板7が位置ずれを起こしてその周縁部が7bとなったとき、基板7上に位置するのは、円周703〜705の3つであって、円周701〜702は部分的に基板7から外れる。すなわち、図5において、3つの点(700b)は、基板7上にあるが、2つの点(700a)は、基板7上にない。しかしながら、この場合であっても、温度測定は5つの円周701〜705の上で行う。
【0068】
図1で説明したように、基板7の加熱はヒータ9によって行われ、サセプタ8は基板7とヒータ9の間に位置する。したがって、サセプタ8の温度は、基板7の温度より高くなる。それ故、基板7の周縁部が7bにある状態で、図4の5つの円周701〜705上で温度測定を行うと、基板7から円周が外れた箇所では、放射温度計24bは、基板7ではなくサセプタ8の温度(具体的には、座ぐり部8aの温度)を測定することになる。このため、この箇所の温度は、基板7上に円周が位置する箇所の温度より高くなる。
【0069】
例えば、図5において、基板7の周縁部が7aにあれば、符号700で囲まれた部分にある5つの点は、符号700’で囲まれた部分にある対応する5つの点と、それぞれ、実質的に同じ温度になるはずである。しかし、基板7が位置ずれを起こし、周縁部が7bとなることにより、符号700で囲まれた部分は、相対的にサセプタ8が露出している側に移動する。そして、その一部は基板7の上から外れる。一方、符号700’で囲まれた部分は、相対的に基板7の中央部、すなわち、サセプタ8が露出している側とは反対の側に移動する。ここで、前述の通り、サセプタ9の温度は基板7の温度より高い。したがって、符号700で囲まれた部分の温度は、サセプタ8が露出している側に移動することで、位置ずれを起こしていないときの温度より全体に高くなる。これに対して、符号700’で囲まれた部分の温度は、サセプタ8が露出している側から遠ざかる方向に移動することで、位置ずれをおこしていないときの温度より全体に低くなる。
【0070】
図6は、図5で基板7の周縁部が7aにあるときの、図4の円周701〜705上の温度分布を示す一例である。図の横軸は、図1の回転軸16と回転筒17の回転角度を示しており、この回転角度によって円周上の位置が決められる。ここで、0°と360°は同じ位置である。そして、図5において、符号700で囲まれた部分にある各点の位置を90°とすれば、符号700’で囲まれた部分にある各点の位置は270°である。
【0071】
図6の横軸に示す回転角度は、図1のエンコーダ300によって検出される。また、エンコーダ300は、回転軸16と回転筒17の回転方向も検出する。温度測定を行う座標の位置データは、エンコーダ300によって検出された回転方向と回転角度を用いて作成される。
【0072】
図6において、符号T1、T2、T3、T4、T5は、それぞれ、図4の円周701、702、703、704、705上の温度分布を示している。各温度分布は、同じ円周であれば円周上の位置にかかわらず一定の温度である。しかし、円周が異なると温度も異なる。例えば、図4に示すように、円周701は、サセプタ8が露出している部分に最も近いことから、温度分布T1は、最も高い温度を示す。これに対して、円周705は、サセプタ8が露出している部分から最も遠いことから、温度分布T5は、最も低い温度を示す。
【0073】
図7は、図5で基板7の周縁部が7bにあるときの、円周701上の温度分布T1を示す一例である。図の横軸は、図6と同様である。尚、サセプタ8において、基板7に被覆されていない座ぐり部8a(図4)の温度は、場所にかかわらず一定とする。
【0074】
図7において、温度分布T1は、図4の円周701上の位置によって温度が変化している。温度分布T1において、最高温度を示すのは、領域P、すなわち、図4の円周701が基板7の上から外れている部分である。領域Pでは、基板7の温度でなく、サセプタ8の座ぐり部8aの温度を測定することになるため、高い温度になる。一方、領域P以外では、基板7の温度を測定するので、領域Pより温度は低くなる。また、さらに、図4の円周701が、サセプタ8の露出している部分から離れるほど、すなわち、基板7の中央部に近くなるほど、温度は低くなる。最低温度を示すのは、図5の領域700’で囲まれた部分にある点である。
【0075】
図6の温度分布T1と、図7の温度分布T1とを比較することにより、基板7の位置ずれの方向と位置ずれ量、すなわち、基板7の中心がサセプタ8の中心からどの方向にどの程度ずれているかを求めることができる。尚、実際には、基板7の周縁部が7bにあるときの温度分布を、円周702〜705についても求め、5つの円周について温度分布の平均を算出し、これと、図6の温度分布T1〜T5の平均とを比較して、基板7の位置ずれの方向と位置ずれ量を求める。
【0076】
図8は、本実施の形態の成膜装置におけるデータの流れを示したものである。
【0077】
図8に示すように、チャンバ1内に載置された基板7の温度は、温度測定部402で測定される。温度測定部402は、図1の放射温度計24a、24bを有する。温度測定部402で測定されたデータは、温度データ作成部403に送られる。温度データ作成部403は、基板7毎に温度データを作成する。
【0078】
また、チャンバ1内における回転軸16と回転筒17の回転方向と回転角度は、エンコーダ300によって検出される。検出されたデータは、位置データ作成部405に送られる。位置データ作成部405は、これらのデータから、温度測定を行う基板の座標の位置データを作成する。
【0079】
温度データ作成部403の温度データと、位置データ作成部405の位置データとは、データ解析部406に送られる。データ解析部406は、送られたデータを基に、図7に示すような温度分布データを作成する。そして、このデータと、図6に示すような基準となる温度分布データとを比較し、基板7の位置ずれの方向と位置ずれ量を求める。
【0080】
データ解析部406で得られた基板7の位置ずれの方向と位置ずれ量は、搬送ロボット制御部407へ送られる。搬送ロボット制御部407は、基板7の位置ずれの方向と位置ずれ量を基に、搬送ロボット408(具体的には、ロボットハンド48)の位置を調整する。これにより、搬送室とチャンバ1の温度差によって基板7が変形し、ロボットハンド48上または基板支持部50上で動いたとしても、この位置ずれ量を予め見込んだ位置にロボットハンド48が調整されるので、基板7は、サセプタ8上で、その中心がサセプタ8の中心と一致する位置に載置されるようになる。したがって、基板7からサセプタ8の座ぐり側壁8bまでの距離は周方向に均一となり、反応ガス4の一部がこれらの間に滞留してエピタキシャル膜が形成されるといった現象を回避できる。よって、基板7がサセプタ8に貼り付いてしまい、基板7の搬送時の障害となったり、スリップを発生する原因となったりするのを抑制できる。また、基板7がサセプタ8の中心に載置されることで、基板7上に均一な膜厚のエピタキシャル膜を形成することが可能となる。
【0081】
尚、本実施の形態では、データ解析部406で得られた基板7の位置ずれの方向と位置ずれ量を基に、作業者が搬送ロボット408の位置を手動で調整してもよい。
【0082】
次に、図1〜図3、図8および図9を参照しながら、本実施の形態における成膜方法の一例を述べる。尚、図9は、本実施の形態の成膜方法のフローチャートである。
【0083】
本実施の形態の成膜装置100は、例えば、SiCエピタキシャル膜の形成に好適である。そこで、以下では、SiCエピタキシャル膜の形成を例にとる。
【0084】
基板7としては、例えば、SiCウェハを用いることができる。但し、これに限られるものではなく、場合に応じて、他の材料からなるウェハなどを用いてもよい。例えば、Siウェハ、SiO(石英)などの他の絶縁性基板、高抵抗のGaAsなどの半絶縁性基板などを用いることもできる。
【0085】
本実施の形態においては、SiCエピタキシャル膜の成膜を行う前に、基板の位置調整を行う。まず、図1に示すように、ロボットハンド48で基板7をチャンバ1の内部へ搬送する(S101)。次いで、図2に示すように、ロボットハンド48から基板支持部50へ基板7を受け渡す(S102)。その後、基板支持部50を下降させて、図3に示すように、サセプタ8の上に基板7を載置する(S103)。
【0086】
次に、基板7を回転させながら温度測定を行う(S104)。具体的には、回転軸16を回転させることにより、回転筒17を介してサセプタ8を低速で回転させる。回転数は、例えば、50rpmとすることができる。そして、基板7を回転させた状態で、放射温度計24bにより基板7の外周部の温度測定を行う。例えば、外周部一周について温度測定を終えたら、基板7の中心からの距離を変えて同様に測定する。これを複数回繰り返す。また、このとき、回転軸16と回転筒17の回転方向と回転角度を、エンコーダ300によって検出する。尚、S104を終えた後は、基板7の回転を停止し、基板7をチャンバ1の外部へ搬出する。
【0087】
次に、放射温度計24bによる測定結果と、エンコーダ300による検出結果とを用いて、温度データと位置データを作成する(S105)。具体的には、放射温度計24bでの測定値が温度データ作成部403に送られ、温度データ作成部403で基板7毎に温度データが作成される。また、エンコーダ300で検出されたデータは、位置データ作成部405に送られる。位置データ作成部405は、送られたデータから、温度測定を行う座標の位置データを作成する。
【0088】
次に、温度データと位置データから基板7の位置ずれの方向と位置ずれ量を求める(S106)。具体的には、温度データ作成部403の温度データと、位置データ作成部405の位置データが、データ解析部406に送られる。データ解析部406は、送られたデータを基に、図7に示すような温度分布データを作成する。そして、このデータと、図6に示すような基準となるデータとを比較し、基板7の位置ずれの方向と位置ずれ量を求める。
【0089】
次に、S106で得られた位置ずれ量が許容値以下であるか否かを判定する(S107)。この判定は、図8のデータ解析部406で行う。
【0090】
位置ずれ量が許容値より大きい場合には、搬送室内でロボットハンド48の位置調整を行う(S108)。具体的には、まず、データ解析部406で得られた基板7の位置ずれの方向と位置ずれ量が搬送ロボット制御部407へ送られる。搬送ロボット制御部407は、基板7の位置ずれの方向と位置ずれ量を基に、搬送ロボット408(具体的には、ロボットハンド48)の位置を調整する。その後、位置ずれの方向と位置ずれ量の検出に用いた基板7の次に成膜予定の基板7をチャンバ1の内部へ搬送し、基板支持部50を介してサセプタ8の上に載置する(S109)。位置ずれの方向と位置ずれ量の検出に用いた基板7については、エピタキシャル膜を成膜することなく搬出する。あるいは、そのままエピタキシャル膜の成膜を行ってもよい。この場合、位置ずれによる膜の良否判定は、後の検査工程で行うことができる。
【0091】
一方、位置ずれ量が許容値以下である場合には、ロボットハンド48の位置調整は不要と判断し、ロボットハンド48の位置調整を行わずに、位置ずれの方向と位置ずれ量の検出に用いた基板7の次に成膜予定の基板7を搬送する(S109)。その後、エピタキシャル膜の成膜を行う(S110)。
【0092】
また、本実施の形態においては、位置ずれの方向と位置ずれ量の検出に使用した基板7に対して位置調整を行ってもよい。例えば、S107で位置ずれ量が許容値より大きいと判定された場合には、位置ずれの方向と位置ずれ量の検出に使用した基板7を、一旦チャンバ1から搬出し、搬送室内でロボットハンド48の位置調整を行う(S108)。この場合、位置ずれの方向と位置ずれ量を基に作業者が手動で位置調整を行ってもよく、あるいは、搬送ロボット制御部407により自動で位置調整を行ってもよい。位置調整を行った後は、ロボットハンド48で、位置ずれの方向と位置ずれ量の検出に使用した基板7を再度チャンバ1の内部へ搬送し、基板支持部50を介してサセプタ8の上に載置する(S109)。その後、エピタキシャル膜の成膜を行う(S110)。
【0093】
一方、位置ずれ量が許容値以下である場合には、ロボットハンド48の位置調整は不要と判断し、チャンバ1から基板7を搬出することなく、S107からS110に進んでエピタキシャル膜を形成する。
【0094】
このように、本実施の形態において、S109でチャンバ1の内部へ搬送する基板7は、位置ずれの方向と位置ずれ量の測定に用いた基板7と同一の基板であってもよく、また、基板7と同じ種類の異なる基板、例えば、位置ずれの方向と位置ずれ量の測定に用いた基板7の次に成膜予定の基板7であってもよい。前者であれば、位置ずれの調整を全ての基板について確実に行うことができるが、スループットの点からは後者が好ましい。一般に、同種類の基板であれば同一の基板でなくても、位置ずれの方向や程度は同様である。したがって、位置ずれの方向と位置ずれ量の測定に用いた基板と同一の基板でなくても、測定された位置ずれの方向と位置ずれ量を基にロボットハンド48の位置調整を行うことにより、基板の中心とサセプタの中心が一致するように載置することが可能である。
【0095】
また、本実施の形態では、データ解析部406で上記判定を行わずに、(位置ずれ量がゼロである場合を含めて)得られた位置ずれの方向と位置ずれ量を全て搬送ロボット制御部407へ送り、ロボットハンド48の位置調整を行ってもよい。
【0096】
以上の工程によれば、搬送室とチャンバ1の温度差によって基板7が変形し、ロボットハンド48上または基板支持部50上で動いたとしても、位置ずれの方向と位置ずれ量を予め見込んだ位置にロボットハンド48が調整されるので、基板7は、サセプタ8上で、その中心がサセプタ8の中心と一致する位置に載置されるようになる。こうして基板の位置調整は、成膜処理工程で連続して搬送される同じ種類の複数の基板の最初の基板に対して行うことができるが、成膜する基板1枚毎に行うことも可能である。
【0097】
サセプタ8の上に基板7を載置した後は、エピタキシャル成長反応を行い、基板7の上にエピタキシャル膜を形成する(S110)。
【0098】
エピタキシャル反応に使用する反応ガス4としては、例えば、プロパン(C)、シラン(SiH)およびキャリアガスとしての水素ガスを用いることができる。この場合、シランに代えて用いることができるものとして、ジシラン(SiH)、モノクロロシラン(SiHCl)、ジクロロシラン(SiHCl)、トリクロロシラン(SiHCl)、テトラクロロシラン(SiCl)などが挙げられる。
【0099】
次に、チャンバ1の内部を常圧または適当な減圧にした状態で、基板7を回転させる。基板7が載置されたサセプタ8は、回転筒17の上端に配置されている。したがって、回転軸16を通じて回転筒17を回転させると、サセプタ8が回転し、同時に基板7も回転する。回転数は、例えば50rpm程度とすることができる。
【0100】
次に、ヒータ9によって基板7を加熱する。SiCエピタキシャル成長では、基板7は、例えば、1500℃〜1700℃までの間の所定の温度に加熱される。また、基板7の加熱によってチャンバ1内は高温になるので、ベースプレート101とベルジャ102の内部に設けた流路3に冷却水を流す。これにより、チャンバ1が過度に昇温するのを防止できる。
【0101】
放射温度計24a、24bにより、基板7の温度が例えば1650℃に達したことを確認した後は、基板7の回転数を徐々に上げていく。例えば、900rpm程度の回転数まで上げることができる。また、供給口5より反応ガス4を導入する。
【0102】
反応ガス4は、シャワープレート15の貫通孔15aを通り、基板7への気相成長反応が行われる空間Aへ流入する。シャワープレート15を通過することで、反応ガス4は整流され、下方で回転する基板7へ向かって略鉛直に流下して、いわゆる縦フローを形成する。
【0103】
基板7の表面に到達した反応ガス4は、この表面で熱分解反応または水素還元反応を起こしてSiCエピタキシャル膜を形成する。気相成長反応に使用されなかった余剰の反応ガス4や、気相成長反応により生成したガスは、チャンバ1の下方に設けられた排気口6を通じて外部に排気される。
【0104】
基板7の上に、所定の膜厚のSiC膜を形成した後は、反応ガス4の供給を終了する。続いて、ヒータ9による加熱を停止し、基板7が所定の温度まで下がるのを待つ。また、チャンバ1内のガスを水素ガスや不活性ガスなどで置換する。尚、基板7が所定の温度以下となるまで、供給口5からキャリアガスの供給を続けてもよい。
【0105】
放射温度計24a、24bにより、基板7が所定の温度まで冷却されたことを確認した後は、チャンバ1の外部に基板7を搬出する。
【0106】
具体的には、基板支持部50を上方に移動させて基板7に接触させた後、さらにそのまま移動させて、図2に示すように、基板7を上方に突き上げる。次いで、基板支持部50からロボットハンド48へ基板7を受け渡し、ロボットハンド48で基板7を保持して、基板搬出入口47からチャンバ1の外部へ基板7を搬出する。
【0107】
続いて成膜処理を行う際には、新たな基板7をチャンバ1の内部へ搬入する。前述のように、同種類の基板であれば同一の基板でなくても、位置ずれの方向や程度は同様であるので、ロボットハンド48の位置調整を改めて行わずに搬入することが可能である。尚、図9(または図10)のA101〜S109により、改めて基板7の位置調整を行ってから、上述した手順にしたがって、基板7の上へエピタキシャル膜を形成することもできる。
【0108】
本実施の形態の成膜方法によれば、搬送室とチャンバ1の温度差によって基板7が変形し、ロボットハンド48上または基板支持部50上で動いたとしても、位置ずれの方向と位置ずれ量を予め見込んだ位置にロボットハンド48が調整されるので、基板7は、サセプタ8上で、その中心がサセプタ8の中心と一致する位置に載置されるようになる。したがって、基板7からサセプタ8の座ぐり側壁8bまでの距離は周方向に均一となり、反応ガス4の一部がこれらの間に滞留してエピタキシャル膜が形成されるといった現象を回避できる。よって、基板7がサセプタ8に貼り付いてしまい、基板7の搬送時の障害となったり、スリップを発生する原因となったりするのを抑制できる。また、基板7がサセプタ8の中心に載置されることで、基板7上に均一な膜厚のエピタキシャル膜を形成することが可能となる。
【0109】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上述の実施の形態では、基板を回転させながら基板上に膜を形成する例について述べたが、本発明では、基板を回転させない状態で膜を形成してもよい。
【0110】
また、上記実施の形態では、成膜装置の一例としてエピタキシャル成長装置を挙げ、SiC結晶膜の形成について説明したが、これに限られるものではない。反応室内に反応ガスを供給し、反応室内に載置される基板を加熱して基板の表面に膜を形成するものであれば、他の成膜装置であってもよく、また、他のエピタキシャル膜の形成に用いることもできる。
【0111】
さらに、装置の構成や制御の手法など、本発明に直接必要としない部分などについては記載を省略したが、実施に必要とされる装置の構成や、制御の手法などを適宜選択して用いることができる。
【0112】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更し得る全ての成膜装置および各部材の形状は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0113】
1、201 チャンバ
1a 内壁
2、202 ライナ
2a 胴部
2b 頭部
3、203 流路
4、204 反応ガス
5、205 供給口
6、206 排気口
7、207 基板
7a、7b 周縁部
8、208 サセプタ
8a 座ぐり部
8b 座ぐり側壁
9、209 ヒータ
9a インヒータ
9b アウトヒータ
10、13、210、213 フランジ
11、14、211、214 パッキン
12、212 配管
15、215 シャワープレート
15a 貫通孔
16、216 回転軸
17、217 回転筒
20、220 ブースバー
21、221 ヒータベース
22、222 連結部
23、223 電極棒
24a、24b、224a、224b 放射温度計
46、47、246、247 基板搬出入口
48、248 ロボットハンド
50 基板支持部
100、200 成膜装置
101、301 ベースプレート
102、302 ベルジャ
103、303 ベースプレートカバー
300 エンコーダ
304 エンコーダヘッド
305 回転板
306 エンコーダピックアップ
310 回転機構
402 温度測定部
403 温度データ作成部
405 位置データ作成部
406 データ解析部
407 搬送ロボット制御部
408 搬送ロボット
701、702、703、704、705 円周

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応ガスが供給されて成膜処理が行われる反応室と、
前記反応室に配置されて基板が載置されるサセプタと、
前記サセプタの下方に設けられて前記基板を加熱する加熱部と、
前記反応室に隣接する搬送室と、
前記搬送室に配置されて、前記反応室に前記基板を搬送する搬送部と、
前記基板の温度を測定する温度測定部と、
前記サセプタを介して前記基板を回転させる回転部と、
前記回転部の回転方向と回転角度を検出する検出部とを有し、
前記基板を回転させながら前記温度測定部で測定した該基板の温度データと、前記検出
部で検出した回転方向と回転角度から作成した前記温度測定を行う座標の位置データとを
用いて、前記基板の温度分布データを作成し、該温度分布データから前記基板の位置ずれの方向と位置ずれ量を求める解析部と、
前記位置ずれの方向と前記位置ずれ量を基に前記搬送部の位置を調整する制御部とを有することを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記解析部は、前記位置ずれ量が許容値以下であるか否かを判定し、前記位置ずれ量が
許容値を超える場合に前記制御部へ前記位置ずれの方向と前記位置ずれ量を送ることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記温度測定部は、前記反応室の外部に設けられ、前記基板からの放射光を受光して前記基板の温度を測定する放射温度計を有することを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記放射温度計は、温度測定位置を変動させることが可能である請求項3に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記温度測定位置は、所定のピッチで移動させることが可能である請求項4に記載の成膜装置。
【請求項6】
搬送部で反応室に基板を搬送し、基板支持部を介してサセプタ上に該基板を載置する工
程と、
前記基板を回転させながら前記基板の外周部の温度測定を行うとともに、前記基板の回転方向と回転角度を検出する工程と、
前記基板の温度、回転方向および回転角度のデータから前記基板の温度分布データを作成して前記基板の位置ずれの方向と位置ずれ量を求める工程と、
前記位置ずれの方向と前記位置ずれ量を基に前記搬送部の位置を調整する工程と、
前記基板を前記反応室から搬出し、
搬出された前記基板を、前記調整後の搬送部によって再び前記反応室に搬送し、前記基板支持部を介して前記サセプタ上に載置する工程と、
前記反応室に反応ガスを供給し、該基板を加熱しながら、該基板の上に所定の膜を形成する工程とを有することを特徴とする成膜方法。
【請求項7】
搬送部で反応室に第1の基板を搬送し、基板支持部を介してサセプタ上に該基板を載置する工程と、
前記基板を回転させながら前記基板の温度測定を行うとともに、前記基板の回転方向と
回転角度を検出する工程と、
前記基板の温度、回転方向および回転角度のデータから前記基板の温度分布データを作成して前記基板の位置ずれの方向と位置ずれ量を求める工程と、
前記位置ずれの方向と前記位置ずれ量を基に前記搬送部の位置を調整する工程と、
前記第1の基板を前記反応室から搬出する工程と、
前記第1の基板と同じ材料からなる第2の基板を前記搬送部によって前記反応室に搬送する工程と、
前記基板支持部を介して前記第2の基板を前記サセプタ上に載置する工程と、
前記反応室に反応ガスを供給し、該第2の基板を加熱しながら、該第2の基板の上に所定の膜を形成する工程とを有することを特徴とする成膜方法。
【請求項8】
前記基板の温度測定は、前記基板の中心と前記サセプタの中心とが一致しているときの前記基板の外周部に位置する円周上で行うことを特徴とする請求項6または7に記載の成膜方法。
【請求項9】
前記基板の温度測定は、前記基板の中心と前記サセプタの中心とが一致しているときの前記基板の外周部に位置する2つ以上の円周上で行うことを特徴とする請求項6または7に記載の成膜方法。
【請求項10】
前記搬送部の位置を調整する工程は、前記位置ずれ量が許容値を超える場合に行うこと
を特徴とする請求項6または7に記載の成膜方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−84943(P2013−84943A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−211863(P2012−211863)
【出願日】平成24年9月26日(2012.9.26)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】