説明

成膜装置

【課題】付帯設備や専有面積の過剰な増大を防止しつつスループットを増加し得る成膜装置を提供する。
【解決手段】開示の成膜装置は、直径300mmの基板が夫々載置される10個以上の載置領域を含む回転テーブルと、容器内の第1領域に配置され、回転テーブルへ第1反応ガスを供給する第1反応ガス供給部と、第1領域から回転テーブルの回転方向に離れた第2領域に配置され、回転テーブルへ第2反応ガスを供給する第2反応ガス供給部と、第1及び第2領域に対応する第1及び第2の排気口と、第1及び第2領域の間に配置され、第1及び第2反応ガスを分離する分離ガスを吐出する分離ガス供給部と、分離ガス供給部から供給される分離ガスが流れる空間を回転テーブルとの間に画成する天井面であって、その空間の圧力が第1及び第の領域における圧力よりも高く維持され得る高さを有する天井面とを含む分離領域とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内にて、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板に供給する供給サイクルを複数回実行することにより、反応生成物の複数の層を積層して薄膜を形成する成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路(IC)の製造プロセスの一つに、例えばALD(Atomic Layer Deposition)やMLD(Molecular Layer Deposition)と呼ばれる成膜方法がある。この成膜方法は、いわゆる回転テーブル式のALD装置で行われることが多い。そのようなALD装置の一例が、本出願の出願人により提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のALD装置では、たとえば5枚の基板が載置される回転テーブルが真空容器内に回転可能に配置されており、回転テーブルの上方には、回転テーブル上の基板に対して第1の反応ガスを供給する第1の反応ガス供給部と、第2の反応ガスを供給する第2の反応ガス供給部とが、回転テーブルの回転方向に沿って離間して設けられている。また、真空容器内には、第1の反応ガス供給部から第1の反応ガスが供給される第1の処理領域と、第2の反応ガス供給部から第2の反応ガスが供給される第2の処理領域とを分離するための分離領域が設けられている。分離領域には、分離ガスを供給する分離ガス供給部と、分離ガス供給部からの分離ガスによって、第1の処理領域や第2の処理領域よりも分離領域を高い圧力に維持するために、回転テーブルに対して狭い空間を提供する天井面とが設けられている。
【0004】
このような構成によれば、高い圧力に維持される分離領域によって第1の処理領域と第2の処理領域とが分離されるため、第1の反応ガスと第2の反応ガスとが十分に分離することが可能となる。しかも、回転テーブルを高速に回転した場合であっても、反応ガス同士を分離でき、製造スループットを向上することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−56470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ALDにおけるスループットを更に向上することが望まれている。このような要請に応えるため、ALD装置に複数の真空容器を設けることによりALD装置の実質的な大型化が検討されている。また、使用する基板を大口径化することによって、スループットの向上と、IC製造コストの低減とを図ろうという動きもある。
【0007】
しかし、ALD装置を実質的に大型化すると、反応ガスを供給する設備や、排気システムなども増強する必要が生じ、ALD装置の製造コストの増大やフットプリントの増大などを招きかねない。
【0008】
そこで、本発明は、付帯設備やフットプリントの過剰な増大を防止しつつスループットの増加を可能とする成膜装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、容器内にて、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板に向けて供給し、当該2種類の反応ガスの反応生成物の層を積層して薄膜を形成する成膜装置が提供される。この成膜装置は、前記容器内に回転可能に設けられ、直径300mmの基板がそれぞれ載置される10個以上の基板載置領域を含む第1の回転テーブルと、前記容器内の第1の領域に配置され、前記第1の回転テーブルの回転方向と交わる方向に延び、前記第1の回転テーブルへ向けて第1の反応ガスを供給する第1の反応ガス供給部と、前記第1の領域から前記第1の回転テーブルの前記回転方向に沿って離間する第2の領域に配置され、前記回転方向と交わる方向に延び、前記第1の回転テーブルへ向けて第2の反応ガスを供給する第2の反応ガス供給部と、前記第1の領域に対して設けられる第1の排気口と、前記第2の領域に対して設けられる第2の排気口と、前記第1の領域と前記第2の領域との間に配置され、前記第1の反応ガスと前記第2の反応ガスとを分離する分離ガスを吐出する分離ガス供給部と、該分離ガス供給部から供給される前記分離ガスが流れる空間を前記第1の回転テーブルとの間に画成する天井面であって、前記分離ガスが流れる当該空間の圧力が前記第1の領域および前記第2の領域における圧力よりも高く維持され得る高さを有する当該天井面とを含む分離領域とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、付帯設備やフットプリントの過剰な増大を防止しつつスループットの増加を可能とする成膜装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態による成膜装置を模式的に示す上面図である。
【図2】図1の成膜装置を模式的に示す断面図である。
【図3】図1の成膜装置の回転テーブルと、回転テーブルを固定するコア部とを説明する説明図である。
【図4】図1の補助線Sに沿った一部断面図である。
【図5】図1の成膜装置の回転テーブルの基板載置部を説明する説明図である。
【図6A】図1の成膜装置の利点を説明する説明図である。
【図6B】図1の成膜装置の利点を説明する他の説明図である。
【図7】図1の成膜装置の回転テーブルの変形例を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態による成膜装置を模式的に示す上面図である。
【図9】図8の成膜装置に備わるガスインジェクタを示す斜視図である。
【図10】図8の成膜装置に備わるガスインジェクタを示す断面図である。
【図11】図8の成膜装置に備わるガスインジェクタを示す、破断面を有する一部拡大斜視図である。
【図12】本発明の第3の実施形態による成膜装置を模式的に示す上面図である。
【図13】本発明の実施形態による成膜装置の利点を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は、部材もしくは部品間の相対比を示すことを目的とせず、したがって、具体的な厚さや寸法は、以下の限定的でない実施形態に照らし、当業者により決定されるべきものである。
【0013】
(第1の実施形態)
図1から図6Bまでを参照しながら、本発明の第1の実施形態による成膜装置を説明する。図1および図2に示すように、本実施形態による成膜装置10は、概ね円形の平面形状を有する扁平な真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、真空容器1の中心に回転中心を有する回転テーブル2と、を備えている。
【0014】
真空容器1は、図2(図1のI−I線の沿った断面図)に示すように、概ね扁平な有底円筒形状を有する容器本体12と、たとえばO−リングなどの封止部材13を介して容器本体12の上面に気密に載置される天板11とを有している。天板11および容器本体12は、たとえばアルミニウム(Al)などの金属により作製されている。
【0015】
図1を参照すると、回転テーブル2には、ウエハが載置される複数の載置部24が形成されている。具体的には、本実施形態においては、回転テーブル2の外周縁に沿うように外側に11個の載置部24と、その内側に5個の載置部24が設けられている。各載置部24は、本実施形態では凹部として構成され、300mmの直径を有するウエハが載置されるように、その直径よりも例えば4mm程度大きい内径を有し、そのウエハの厚さとほぼ等しい深さを有している。載置部24はこのように構成されるため、載置部24にウエハを載置したときには、ウエハの表面と回転テーブル2の表面(載置部24が形成されていない領域)とが同じ高さになる。すなわち、ウエハの厚さによる段差が生じないため、回転テーブル2上におけるガスの流れに乱れが生じるのを低減することができる。また、ウエハが載置部24に収まることとなるため、回転テーブル2が回転しても、載置部24に載置されるウエハは、回転テーブル2の外方へ飛び出すことなく、載置部24に留まることができる。ただし、載置部24にウエハを確実に留めておくため、後述するウエハガイドリングを用いても良い。
【0016】
なお、300mmの直径を有するウエハ(直径300mmのウエハ)とは、直径が厳密に300mmであることを意味するのではなく、直径300mmのウエハまたは直径12インチのウエハとして市販されているウエハを意味する。後述する450mmの直径を有するウエハ(直径450mmのウエハ)についても同様である。
【0017】
また、図2に示すように、回転テーブル2は、中央に円形の開口部を有しており、開口部の周りで円筒形状のコア部21により上下から挟まれ保持されている。具体的には、図3に示すように、コア部21は上ハブ21aと下ハブ21bとからなる。上ハブ21aには、コア部21の中心からずれた位置に貫通孔127が形成され、下ハブ21bには、貫通孔127と対応する位置にねじ穴128が形成されている。ボルト123がワッシャ124を介して貫通孔127に挿入され、ねじ穴128にねじ込まれることにより、上ハブ21aと下ハブ21bが回転テーブル2を上下から押さえつけ、これにより、回転テーブル2が固定される。たとえば回転テーブル2の交換は、ボルト123を取り外すことにより容易に行うことができる。なお、図3には1つのボルト123を示したが、複数の貫通孔127と対応するねじ穴128を設け、複数のボルト123により、コア部21を回転テーブル2に固定してもよい。
【0018】
コア部21の下ハブ21bは、回転軸221に固定されており、図2に示すとおり、回転軸221は回転シャフト222を介して駆動部23に接続されている。コア部21、回転軸221、および回転シャフト222は、互いに共通の回転軸を有し、よって、駆動部23の回転により、回転シャフト222、回転軸221、およびコア部21、ひいては回転テーブル2が回転することができる。
【0019】
なお、回転軸221及び駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。このケース体20はその上面に設けられたフランジ部20aを介して真空容器1の底部裏面に気密に取り付けられており、これにより、ケース体20の内部雰囲気が外部雰囲気から隔離されている。
【0020】
図1を再び参照すると、真空容器1には、回転テーブル2の上方に互いに離間した2個の凸状部4Aおよび4Bが設けられている。図示のとおり、凸状部4Aおよび4Bはほぼ扇形の上面形状を有している。扇形の凸状部4Aおよび4Bは、その頂部が、コア部21を取り囲むように天板11に取り付けられた突出部5の外周に近接し、その円弧が容器本体12の内周壁に沿うように配置されている。図1では説明の便宜上、天板11を省略しているが、凸状部4Aおよび4Bは、天板11の下面に取り付けられている(凸状部4Aついては図2に示されている)。凸状部4A,4Bは、たとえばアルミニウムなどの金属により形成することができる。
【0021】
なお、図示は省略するが、凸状部4Bも凸状部4Aと同様に配置されている。凸状部4Bは凸状部4Aとほぼ同一の構成を有しているため、凸状部4Bについて説明することとし、凸状部4Aについての重複する説明を省略する。
【0022】
図4を参照すると、凸状部4Bは、凸状部4Bが二分割されるように半径方向に延びる溝部43を有し、溝部43には分離ガスノズル42が収容されている。分離ガスノズル42は、図1に示すように、容器本体12の周壁部から真空容器1内へ導入されて真空容器1の半径方向に延びている。また、分離ガスノズル42は、その基端部が容器本体12の外周壁に取り付けられ、これにより、回転テーブル2の表面とほぼ平行に支持されている。なお、凸状部4Aには、同様にして分離ガスノズル41が配置されている。
【0023】
分離ガスノズル41(42)は、分離ガスのガス供給源(図示せず)に接続されている。分離ガスはチッ素(N)ガスや不活性ガスであって良く、また、成膜に影響を与えないガスであれば、分離ガスの種類は特に限定されない。本実施形態においては、分離ガスとしてNガスが利用される。また、分離ガスノズル41(42)は、回転テーブル2の表面に向けてNガスを吐出するための吐出孔41hを有している(図4)。吐出孔41hは、約0.5mmの口径を有し、分離ガスノズル41(42)の長さ方向に沿って約10mmの間隔で配列されている。また、分離ガスノズル41(42)の下端から回転テーブル2の表面までの間隔は0.5mm〜4mmであって良い。
【0024】
図4(図1の補助線Sに沿った断面図)に示すように、回転テーブル2と凸状部4Bとにより、高さh1(凸状部4Bの下面44の回転テーブル2の表面からの高さ)を有する分離空間Hが形成される。高さh1は、例えば0.5mmから10mmであると好ましく、できる限り小さくすると更に好ましい。ただし、回転テーブル2の回転ぶれによって回転テーブル2が天井面44に衝突するのを避けるため、高さh1は3.5mmから6.5mm程度であると好ましい。一方、凸状部4Bの両側の領域には、回転テーブル2の表面と天板11の下面とで画成される第1の領域481と第2の領域482とが形成されている。第1および第2の領域481,482の高さ(回転テーブル2から天板11までの高さ)は、たとえば15mm〜150mmである。第1の領域481には反応ガスノズル31が設けられ、第2の領域482には反応ガスノズル32が設けられている。これらの反応ガスノズル31,32は、図1に示すように、容器本体12の外周壁から真空容器1内へ導入され、真空容器1の半径方向に延びている。反応ガスノズル31,32には、これらの長さ方向に約10mmの間隔で配列され、約0.5mmの口径を有し、下向きに開口する複数の吐出孔33が形成されている(図4)。反応ガスノズル31からは第1の反応ガスが供給され、反応ガスノズル32からは第2の反応ガスが供給される。本実施形態では、反応ガスノズル31には、酸化シリコン膜のシリコン原料であるビスターシャルブチルアミノシラン(BTBAS)の供給源が接続され、反応ガスノズル32には、BTBASを酸化して酸化シリコンを生成する酸化ガスとしてのオゾンガス(O)の供給源が接続されている。
【0025】
分離ガスノズル41から窒素(N)ガスを供給すると、このNガスは分離空間Hから第1の領域481と第2の領域482とに向かって流れる。分離空間Hの高さが上記のように第1および第2の領域481,482に比べて低いため、分離空間Hにおける圧力を第1および第2の領域481,482における圧力よりも容易に高く維持することができる。換言すると、第1および第2の領域481,482における圧力よりも分離空間Hにおける圧力を高く維持することができるように、凸状部4Bの高さおよび幅、並びに分離ガスノズル41からのNガスの供給量を決定すると好ましい。この決定のため、第1および第2の反応ガスや回転テーブル2の回転速度等を考慮すると更に好ましい。このようにすれば、分離空間Hは、第1および第2の領域481,492に対して圧力障壁を提供することができ、これにより、第1および第2の領域481,482を確実に分離することができる。
【0026】
すなわち、図4において、反応ガスノズル31から第1の反応ガス(たとえばBTBASガス)が第1の領域481へ供給され、回転テーブル2の回転により凸状部4Bに向かって流れても、分離空間Hに形成される圧力障壁により、分離空間Hを通り抜けて第2の領域482へ到達することはできない。反応ガスノズル32から第2の領域482に供給される第2の反応ガス(たとえばOガス)もまた凸状部4A(図1)の下方の分離空間Hに形成される圧力障壁により、分離空間Hを通り抜けて第1の領域481へ到達することはできない。すなわち、第1の反応ガス(たとえばBTBASガス)と第2の反応ガス(たとえばOガス)が分離空間Hを通して混合するのを効果的に抑制することができる。本発明の発明者らの検討によれば、以上の構成により、回転テーブル2が例えば約240rpmの回転速度で回転した場合であっても、BTBASガスとOガスとをより確実に分離することができることが分かっている。
【0027】
再び図2を参照すると、天板11の下面に、回転テーブル2を固定するコア部21を取り囲むように取り付けられた突出部5は、回転テーブル2の表面に近接している。図示の例では、突出部5の下面は、凸状部4A(4B)の下面44とほぼ同じ高さにあり、したがって、突出部5の下面の回転テーブル2からの高さは、下面44の高さh1と同一である。また、コア部21と天板11との間隔と、コア部21の外周と突出部5の内周との間隔も、高さh1とほぼ同等に設定されている。一方、天板11の上部中央には分離ガス供給管51が接続されており、これにより、Nガスが供給される。分離ガス供給管51から供給されるNガスにより、コア部21と天板11との間の空間、コア部21の外周と突出部5の内周との間の空間、および突出部5と回転テーブル2との間の空間(以下、説明の便宜上、これらの空間を中央空間と呼ぶ場合がある)は、第1および第2の領域481,482に比べて、高い圧力を有することができる。すなわち、中央空間は、第1および第2の領域481,492に対して圧力障壁を提供することができ、これにより、第1および第2の領域481,482を確実に分離することができる。すなわち、第1の反応ガス(たとえばBTBASガス)と第2の反応ガス(たとえばOガス)が中央空間を通して混合するのを効果的に抑制することができる。
【0028】
図2に示すように、回転テーブル2と容器本体12の底部との間の空間には、加熱部としての環状のヒータユニット7が設けられ、これにより、回転テーブル2上のウエハWが、回転テーブル2を介して所定の温度に加熱される。また、ブロック部材71aが、回転テーブル2の下方及び外周の近くに、ヒータユニット7を取り囲むように設けられている。このため、ヒータユニット7が置かれている空間がヒータユニット7の外側の領域から区画されている。ブロック部材71aより内側にガスが流入することを防止するため、ブロック部材71aの上面と回転テーブル2の下面との間に僅かな間隙が維持されるように配置される。ヒータユニット7が収容される領域には、この領域をパージするため、複数のパージガス供給管73が、容器本体12の底部を貫通するように所定の間隔をおいて接続されている。なお、ヒータユニット7の上方には、ヒータユニット7を保護する保護プレート7aが、ブロック部材71aと、後述する隆起部Rとにより支持されており、これにより、ヒータユニット7が設けられる空間にBTBASガスやOガスが仮に流入したとしても、ヒータユニット7を保護することができる。保護プレート7aは、例えば石英から作製すると好ましい。
【0029】
なお、ヒータユニット7は、たとえば同心円状に配置される複数のランプヒータにより構成して良い。これによれば、各ランプヒータを独立に制御することにより、回転テーブル2の温度を均一化することができる。
【0030】
図2を更に参照すると、容器本体12の底部には、環状のヒータユニット7の内側に隆起部Rを有している。隆起部Rの上面は、回転テーブル2及びコア部21に接近しており、隆起部Rの上面と回転テーブル2の裏面との間、及び隆起部Rの上面とコア部21の裏面との間に僅かな隙間を残している。また、容器本体12の底部は、回転軸22が通り抜ける中心孔を有している。この中心孔の内径は、回転軸22の直径よりも僅かに大きく、フランジ部20aを通してケース体20と連通する隙間を残している。パージガス供給管72がフランジ部20aの上部に接続されている。
【0031】
このような構成により、図2に示すように、回転軸22と容器本体12の底部の中心孔との間の隙間、コア部21と回転テーブル2の底部の隆起部Rとの間の隙間、及び隆起部Rと回転テーブル2の裏面との間の隙間を通して、パージガス供給管72からヒータユニット7の下の空間へNガスが流れる。また、パージガス供給管73からヒータユニット7の下の空間へNガスが流れる。そして、これらのNガスは、ブロック部材71aと回転テーブル2の裏面との間の隙間を通して排気口61へ流れ込む。このように流れるNガスは、BTBASガス(Oガス)の反応ガスが回転テーブル2の下方の空間を回流してOガス(BTBASガス)と混合するのを抑制する分離ガスとして働く。
【0032】
また、図1を参照すると、容器本体12の内周面と回転テーブル2の外周縁との間の空間であって、かつ、凸状部4Aの下部に当たる位置に屈曲部46Aが設けられ、凸状部4Bの下部に当たる位置に屈曲部46Bが設けられている。屈曲部46Aと46Bは同様に構成されているため、図2を参照しながら、屈曲部46Aについて説明する。図示のとおり、屈曲部46Aは、本実施形態においては、凸状部4Aと一体に形成されている。屈曲部46Aは、回転テーブル2と容器本体12との間の空間を概ね埋めており、反応ガスノズル31からの第1の反応ガス(BTBASガス)この空間を通して混合するのを阻止する。屈曲部46と容器本体12との間の隙間、及び屈曲部46と回転テーブル2との間の隙間は、例えば、回転テーブル2から凸状部4の天井面44までの高さh1とほぼ同一であって良い。また、屈曲部46Aがあるため、分離ガスノズル41(図1)からのNガスは、回転テーブル2の外側に向かって流れ難い。よって、分離空間H(凸状部4Aの下面44と回転テーブル2との間の空間)の圧力を高く維持するのに資する。なお、屈曲部46の下方にブロック部材71bを設ければ、分離ガスが回転テーブル2の下方まで流れるのを更に抑制することができるため、更に好ましい。
【0033】
なお、屈曲部46A,46Bと回転テーブル2との間の隙間は、回転テーブル2の熱膨張を考慮し、回転テーブル2が後述のヒータユニットにより加熱された場合に、上記の間隔(h1程度)となるように設定することが好ましい。
【0034】
また、図1に示すように、第1の領域481において、容器本体12の一部が外方に広がっており、その下方に排気口61が形成され、第2の領域482においても、容器本体12の一部が外方に広がっており、その下方に排気口62が形成されている。排気口61,62は、たとえば圧力調整器およびターボ分子ポンプ等を含む排気システムに別途に又は共通に接続され、これにより、真空容器1内の圧力が調整される。排気口61および62は、それぞれ第1の領域481および第2の領域482に対して形成されているため、主に第1の領域481および第2の領域482が排気され、したがって、上述の通り、第1の領域481及び第2の領域482の圧力が分離空間Hの圧力よりも低くなる。また、排気口61は、反応ガスノズル31と、この反応ガスノズル31に対して回転テーブル2の回転方向Aに沿った下流側に位置する凸状部4Bとの間に設けられている。排気口62は、反応ガスノズル32と、この反応ガスノズル32に対して回転テーブル2の回転方向Aに沿った下流側に位置する凸状部4Aとの間において、凸状部4Aに近接して設けられている。これにより、反応ガスノズル31から供給される第1の反応ガス(たとえばBTBASガス)はもっぱら排気口61から排気され、反応ガスノズル32から供給される第2の反応ガス(Oガス)はもっぱら排気口62から排気される。すなわち、このような排気口61,62の配置は、両反応ガスの分離に寄与する。
【0035】
図1を参照すると、容器本体12の周壁部には搬送口15が形成されている。ウエハWは、搬送口15を通して搬送アーム10により真空容器1の中へ、又は真空容器1から外へと搬送される。この搬送口15にはゲートバルブ15aが設けられ、これにより搬送口15が開閉される。
【0036】
次に、図5を参照しながら、搬送アーム10と協働してウエハを回転テーブル2へ載置し、または回転テーブル2から搬出するリフトピンと、ウエハガイドリングとについて説明する。図5(a)は、回転テーブル2の一部を示す斜視図である。図示のとおり、回転テーブル2の載置部24には3つの貫通孔が形成され、これらの貫通孔のそれぞれを通して上下動可能なリフトピン16aが設けられている。3つのリフトピン16aはプッシャPを支持し、プッシャPを上下動することができる。また、載置部24には、プッシャPを収容可能な、プッシャPの形状に対応した形状を有する座繰り部24bが形成されている。リフトピン16aが降下してプッシャPを座繰り部24bに収容すると、プッシャPの上面と載置部24の底面とは同じ高さに位置する。また、図5(b)に示すように、載置部24の外周にウエハ支持部24aが形成されている。ウエハ支持部24aは、載置部24の外周に沿って複数個(たとえば8個)形成されており、載置部24へ載置されるウエハWは、ウエハ支持部24aにより支持されることとなる。これにより、ウエハWと載置部24の底面との間には一定の間隔が維持され、ウエハWの裏面が載置部24の底面に直接触れることがない。このため、載置部24の底面との間の空間を介して回転テーブル2によりウエハが加熱されるため、よって、ウエハWは均一に加熱されることとなる。
【0037】
再び図5(a)を参照すると、載置部24の周囲には円形のガイド溝18gが形成されており、ここにウエハガイドリング18が嵌合する。図5(c)は、ガイド溝18gに嵌合したウエハガイドリング18を示している。図示のとおり、ウエハガイドリング18は、ウエハWの外径よりも僅かに大きい内径を有しており、ウエハガイドリング18がガイド溝18gに嵌合したときに、ウエハWはウエハガイドリング18の内側に配置される。また、ウエハガイドリング18の上面には爪部18aが設けられている。爪部18aは、ウエハWに接することなく、ウエハガイドリング18の内方に向かってウエハWの外縁から僅か内側にまで延びている。たとえば真空容器1内で何らかの原因により急激な圧力変動があった場合には、その圧力変動により、ウエハWが載置部24から飛び出る可能性がある。しかし、ウエハガイドリング18に設けられた爪部18aによってウエハWは押さえられるため、載置部24に維持され得る。
【0038】
また、ガイド溝18gの外側には、ウエハガイドリング18を昇降するための4つの昇降ピン16bが設けられている。昇降ピン16bがウエハガイドリング18を持ち上げている間に、回転テーブル2とウエハガイドリング18との間に搬送アーム10(図1)によりウエハWが搬入される。リフトピン16aによりプッシャPが持ち上げられ、プッシャPが搬送アーム10からウエハWを受け取ると、搬送アーム10が退出し、リフトピン16aが降下してプッシャPを載置部24の座繰り部24bに収容する。これにより、ウエハWは、ウエハ支持部24aで支持されることにより載置部24に載置される。続いて、昇降ピン16bが降下してウエハガイドリング18をガイド溝18gに収容すると、ウエハWは、ウエハガイドリング18により確実に載置部24に収容されることとなる。
【0039】
また、この実施形態による成膜装置10には、図1に示すように、装置全体の動作のコントロールを行うための制御部100が設けられている。この制御部100は、例えばコンピュータで構成されるプロセスコントローラ100aと、ユーザインタフェース部100bと、メモリ装置100cとを有する。ユーザインタフェース部100bは、成膜装置の動作状況を表示するディスプレイや、成膜装置の操作者がプロセスレシピを選択したり、プロセス管理者がプロセスレシピのパラメータを変更したりするためのキーボードやタッチパネル(図示せず)などを有する。
【0040】
メモリ装置100cは、プロセスコントローラ100aに種々のプロセスを実施させる制御プログラム、プロセスレシピ、及び各種プロセスにおけるパラメータなどを記憶している。また、これらのプログラムには、例えば後述する成膜方法を行わせるためのステップ群を有しているものがある。これらの制御プログラムやプロセスレシピは、ユーザインタフェース部100bからの指示に従って、プロセスコントローラ100aにより読み出されて実行される。また、これらのプログラムは、コンピュータ可読記憶媒体100dに格納され、これらに対応した入出力装置(図示せず)を通してメモリ装置100cにインストールしてよい。コンピュータ可読記憶媒体100dは、ハードディスク、CD、CD−R/RW、DVD−R/RW、フレキシブルディスク、半導体メモリなどであってよい。また、プログラムは通信回線を通してメモリ装置100cへダウンロードしてもよい。
【0041】
次に、これまでに参照した図面を適宜参照しながら、本実施形態の成膜装置10の動作(成膜方法)について説明する。まず、回転テーブル2を回転し、その内側の5個の載置部24の一つを搬送口15に整列させ、ゲートバルブ15aを開ける。次に、昇降ピン16bによりウエハガイドリング18が持ち上げられると、搬送アーム10により搬送口15を通して真空容器1内へウエハWが搬入され、回転テーブル2とウエハガイドリング18との間に保持される。ウエハWは、リフトピン16aにより持ち上げられるプッシャPにより受け取られ、搬送アーム10が容器1から退出した後に、リフトピン16aおよびプッシャPによって載置部24に載置される。次いで、昇降ピン16bによりウエハガイドリング18がガイド溝18gに嵌合される。上記一連の動作が5回繰り返されて、回転テーブル2の内側の5個の載置部24にそれぞれウエハWが載置される。続けて、同様にして、回転テーブル2の外側の11個の載置部24にもそれぞれウエハWが載置されて、ウエハWの搬送が終了する。
【0042】
次に、真空容器1内が図示しない排気システムにより排気されると共に、分離ガスノズル41,42、分離ガス供給管51、パージガス供給管72,73からNガスが供給され、図示しない圧力調整器によって真空容器1内の圧力が予め設定した圧力に維持される。次いで、回転テーブル2が上から見て時計回りに回転を開始する。回転テーブル2は、ヒータユニット7により前もって所定の温度(例えば300℃)に加熱されており、ウエハWが回転テーブル2に載置されることで加熱される。ウエハWが加熱され、所定の温度に維持された後、BTBASガスが反応ガスノズル31を通して第1の領域481へ供給され、Oガスが反応ガスノズル32を通して第2の領域482へ供給される。
【0043】
ウエハWが反応ガスノズル31の下方を通過するときに、ウエハWの表面にBTBAS分子が吸着し、反応ガスノズル32の下方を通過するときに、ウエハWの表面にO分子が吸着され、OによりBTBAS分子が酸化される。したがって、回転テーブル2の回転によってウエハWが第1の領域481および第2の領域482の両方を一回通過すると、ウエハWの表面に酸化シリコンの一分子層(又は2以上の分子層)が形成される。これが繰り返され、所定の膜厚を有する酸化シリコン膜がウエハWの表面に堆積される。所定の膜厚を有する酸化シリコン膜が堆積された後、BTBASガスとOガスの供給を停止し、回転テーブル2の回転を停止する。そして、ウエハWは搬入動作と逆の動作により、搬送アーム10により真空容器1から搬出され、成膜プロセスが終了する。
【0044】
本実施形態の成膜装置10によれば、回転テーブル2には、300mmの直径を有する11枚のウエハを載置することができるため、回転テーブルにたとえば5枚のウエハを載置する場合に比べ、スループットを2.2倍に高くすることができる。
【0045】
また、たとえば5枚の300mmウエハを載置可能な回転テーブル2を備える真空容器を2個有する成膜システムと比較すると、本実施形態による成膜装置10には以下の利点がある。図6A(a)は、比較対象の成膜システムであって、2個の真空容器10cと、これらが接続される真空搬送室106と、真空搬送室106とロードロック室105a〜105cを介して接続する大気搬送室102と、大気搬送室102に結合されるFOUP(Front-Opening Unified Pod)などウエハキャリアが載置されるステージFとを備えている。図示のとおり、真空容器10c内には、300mmウエハを載置可能な5個の載置部240を有する回転テーブル200が設けられている。一方、図6A(b)に示す成膜システムは、本発明の実施形態による成膜装置10と、真空搬送室106と、真空搬送室106に対しロードロック室105a〜105cを介して接続する大気搬送室102と、大気搬送室102に結合されるウエハキャリアが載置されるステージFとを備えている。図6B(a)は、図6A(a)の成膜システムに対応して、たとえばクリーンルームの階下のスペースに配置される付帯設備を示す図である。図示のとおり、2個の真空容器10cに対応して、2個のトランスFS、2個のオゾン生成器OG、2個のチラーCH、4個の排気装置ES、および2個の除害設備TTが設けられている。また、これらの設備の周囲には、これらの設備を保守点検するためのスペースMSが設けられている。これらを合計すると、約5.4m×約4mから約21.6mものスペースが必要となる。一方、図6B(b)に示すように、本発明の実施形態による成膜装置10を有する成膜システム(図5A(b))によれば、各設備が僅かに大型化されるものの、それぞれ1個ずつで済むため、約5.4m×約3mから約16.2m程度のスペースで足りる。すなわち、約25%((21.6−16.2)/16.2=0.25)の省スペース化が可能となる。
【0046】
なお、図6A(a)および(b)にそれぞれ示す成膜システム同士のフットプリントの差は、真空搬送室106等がほぼ同一であるため、2個の真空容器10cと、1個の真空容器10との差に相当する。比較の真空容器10cの外径は約1.6mであるため、(1.6/2)×3.14×2から、2個の真空容器10cの専有面積は4.02mとなる。一方、真空容器10の外径は約2.4mであるため、(2.4/2)×3.14から、真空容器10の専有面積は4.52mmとなる。したがって、図6A(b)に示す成膜システムの方がフットプリントは大きくなる。しかし、たとえば真空搬送室106および真空容器10(10c)等、外部環境から隔離される装置は、クリーンルームのメンテナンスゾーンなどのクリーン度の低い環境に配置することも可能である。そうすると、クリーンルーム内の専有面積の増大に対する影響は殆ど無い。
【0047】
また、本実施形態の成膜装置10によれば、凸状部4A,4Bと回転テーブル2との間の分離空間H(図4参照)の高さh1は、第1の領域481および第2の領域482の高さに比べて低くため、分離ガスノズル41,42からのNガスの供給により、第1の領域481および第2の領域482における圧力よりも高い圧力に維持することができる。したがって、第1の領域481と第2の領域482とを容易に分離することが可能となる。換言すると、第1の反応ガスと第2の反応ガスが真空容器1内の気相中で混合されることは殆ど無い。なお、分離空間Hから第1の領域481および第2の領域482へ流出したNガスは、反応ガスノズル31,32が回転テーブル2の上面に近接し、天板11から離間しているため、反応ガスノズル31,32と天板11との間の空間を流れ易い。したがって、反応ガスノズル31,32から夫々供給される第1の反応ガスおよび第2の反応ガスがNガスによって大幅に希釈されることはない。
【0048】
なお、本実施形態においては、回転テーブル2は図1に示す11個の載置部24を有するものに限らず、種々に変形可能である。たとえば図7(a)に示すように、直径300mmを有するウエハを載置可能な載置部24を回転テーブル2の内側に5個、その外側に10個設けても良い。また、図7(b)に示すように、外側にのみ11個の載置部24を設けても良いし、10個の載置部24を設けても良い。外側にのみ載置部24を設けた場合であっても、5個の場合に比べスループットを増大できる。
【0049】
(第2の実施形態)
次に、図8から11までを参照しながら、本発明の第2の実施形態による成膜装置100を説明する。なお、以下では、第1の実施形態による成膜装置10との相違点を中心に説明し、実質的に同一な構成についての説明を省略する。
【0050】
図8に示すとおり、成膜装置100の回転テーブル2aには、直径450mmを有するウエハを載置可能な載置部24が5個設けられている。回転テーブル2aにおいても、図5を参照しながら説明したウエハ支持部24a、リフトピン16a、ウエハガイドリング18、爪部18a、および昇降ピン16b等を設けることができる。
【0051】
また、第1の反応ガス(たとえばBTBASガス)を供給する3本の反応ガスノズル31A,31B,31Cが設けられている。これらは、容器本体12の側周壁を貫通して真空容器1内へ導入され、回転テーブル2aの半径方法に沿って回転テーブル2aの上面とほぼ平行に支持されている。反応ガスノズル31A〜31Cの下端と回転テーブル2aの上面との間隔は、たとえば0.5mm〜4mmであって良い。図示のとおり、反応ガスノズル31A,31B,31Cはそれぞれ長さが異なり、反応ガスノズル31A、反応ガスノズル31B、および反応ガスノズル31Cの順に短くなっている。また、これらの反応ガスノズル31A〜31Cには、それぞれの長さ方向に沿って所定の間隔で配列され、回転テーブル2aに向かって開口する複数の吐出孔(図示省略)が設けられている。吐出孔の直径は約0.5mmであって良い。
【0052】
また、各反応ガスノズル31A,31B,31Cは、マスフローコントローラなどの流量制御器がそれぞれ設けられた配管(図示せず)によって、第1の反応ガスを供給する反応ガス供給源に接続されている。これにより、各反応ガスノズル31A,31B,31Cから供給される第1の反応ガスの流量を独立に制御することが可能となる。
【0053】
反応ガスノズル31A,31B,31Cによれば、反応ガスノズル31Aから回転テーブル2aの半径方向に沿って均一に第1の反応ガスを供給しつつ、たとえば反応ガスノズル31Bおよび31Cからも第1の反応ガスを供給することにより、回転テーブル2aの外縁に近い領域での第1の反応ガスの実質的な濃度の低下を抑制することが可能となる。回転テーブル2aの外縁に近い領域では、線速度が大きく、ガス流速が速いため、第1の反応ガスがウエハに吸着し難い事態ともなる。しかし、反応ガスノズル31Bや31Cからも第1の反応ガスを供給することにより、回転テーブル2aの外縁に近い領域における第1のガスの吸着を促進することができる。
【0054】
また、成膜装置100には、ガスインジェクタ320が設けられている。以下、図9から11までを参照しながらガスインジェクタ320を説明する。ガスインジェクタ320は、所定のガスをプラズマにより活性化してウエハへ供給する機能を有している。
【0055】
ガスインジェクタ320は、図9に示すように扁平で細長い直方体形状のガスインジェクタ本体321を備えており、図9および図10に示すように当該ガスインジェクタ本体321の内部は空洞となっている。ガスインジェクタ320は、たとえば例えばプラズマエッチング耐性に優れた石英で作製されている。内部の空洞には、長さ方向に延びる隔壁324によって区画された幅の異なる2つの空間が形成されており、一方は所定のガスをプラズマ化するためのガス活性化室323、他方側はこのガス活性化室323へ均一に所定のガスを供給するためのガス導入室322である。図11に示すように、ガス活性化室323の幅に対するガス導入室322の幅の比は例えばおよそ2:3となっていて、ガス導入室322の容積の方が大きくなっている。
【0056】
図10および図11に示すように、ガス導入室322内には、ガスインジェクタ本体321の側壁に沿って、すなわち隔壁324に沿って基端側から先端側へ向けて延びるように管状のガス導入ノズル34が配設されている。このガス導入ノズル34の隔壁324に対向する側周壁には、ガス孔341がノズル34の長さ方向に間隔をおいて穿設されており、ガス導入室322内へ向けて所定のガスを吐出することができる。一方、ガス導入ノズル34の基端側は、ガスインジェクタ本体321の側壁部にてガス導入ポート39(図9)と接続され、このガス導入ポート39は、不図示のガス供給源に接続されている。このガス供給源からガス導入ポート39を通してノズル34へ所定のガスが提供される。
【0057】
ガス導入ノズル34のガス孔341に対向する隔壁324の上部には、ガスインジェクタ本体321の天井面との接続部に相当する高さ位置に、長さ方向に細長い矩形状の連通孔である切欠部325が、ガス導入室322の長さ方向に沿って(後述する電極36a36bの長さ方向に沿って)間隔をおいて設けられており、ガス導入室322内に供給された所定のガスをガス活性化室323の上方部へと供給することができる。ここで例えばガス導入ノズル34のガス孔341から隔壁324までの距離「L1」は、例えば隣り合うガス孔341から吐出されたガスが、ガス導入室322内を長さ方向に拡散・混合して、当該長さ方向に均一な濃度となって各切欠部325へと流れ込むことができる距離に設定されている。
【0058】
ガス活性化室323内には、2本の誘電体からなる例えばセラミックス製のシース管35a、35bが当該空間323の基端側から先端側へ向けて隔壁324に沿って延びており、これらのシース管35a、35bは間隔をおいて水平方向に互いに並行に配置されている。各シース管35a、35bの管内には、基端部から先端部へかけて例えば耐熱性に優れたニッケル合金製の例えば直径5mm程度の電極36a、36bが貫挿されている(図10)。これにより一対の電極36a、36bはシース管35a、35bの材料であるセラミックスにより覆われた状態にて、例えば2mm〜10mmの間の例えば4mmの間隔をおいて互いに並行に伸びるように配置されている。各電極36a、36bの基端側はガスインジェクタ本体321の外部に引き出され、真空容器1の外部にて整合器を介して高周波電源(いずれも不図示)と接続されている。これらの電極36a、36bに対して、例えば13.56MHz、例えば10W〜200Wの範囲の例えば100Wの高周波電力を供給することにより、2本のシース管35a、35bの間のプラズマ発生部351を流れる所定のガスは、容量結合型プラズマ方式によりプラズマ化(活性化)される。なお、2本のシース管35a、35bはガスインジェクタ本体321の基端部側の側壁を貫通して外部に伸びだしており、これらのシース管35a、35bはガスインジェクタ本体321の側壁部に固定された、例えばセラミックス製の保護管37によって覆われている。
【0059】
そしてこのプラズマ発生部351の下方のガスインジェクタ本体321底面には、当該プラズマ発生部351にてプラズマ化して後の活性化された所定のガスを下方に吐出するためのガス吐出孔33がガスインジェクタ本体321の長さ方向に、即ち電極36a、36bの長さ方向に間隔をおいて配列されている。また図10に示すようにシース管35bの頂部からガス活性化室351の天井面までの距離「h2」と、シース管35bの側壁面から対向する隔壁324までの距離「w」との関係は、例えば「h2≧w」となっているため、ガス導入室322よりガス活性化室323へ流入した所定のガスは、隔壁324とシース管35bとの間よりも、主として、2つのシース管35a、35bとの間を通ってガス吐出孔33へと流れる。
【0060】
以上に説明した構成を備えたガスインジェクタ本体321は、たとえば既述の導入ポート39や保護管37を容器本体12の側周壁に固定することにより基端側を片持ち支持され、その先端側を回転テーブル2の中心部へ向けて伸びだした状態となるように配設されている。またガスインジェクタ本体321の底面は、ガス活性化室323のガス吐出孔33から回転テーブル2の凹部24に載置されるウエハW表面までの距離が例えば1mm〜10mmの範囲の例えば10mmとなる高さ位置に調節されている。ここでガスインジェクタ本体321は容器本体12から着脱自在に構成されており、保護管37と容器本体12との接続部には例えば不図示のOリングを用いて真空容器1内の気密状態を維持している。
【0061】
ガスインジェクタ320のガスノズル34へ供給される所定のガスとしては、たとえばOガスであって良い。この場合、活性化されたOガスをウエハWへ供給することができるため、ウエハに吸着したBTBAS分子がOガスにより酸化されて生じた酸化シリコン膜を緻密化したり、酸化シリコン膜中の有機物等の不純物を除去したりすることができる。また、所定のガスは、アンモニア(NH)ガスであっても良い。これによれば、BTBASとOとから生成された一分子(または複数分子)層の酸化シリコン膜に対して活性化されたNH分子、または窒素ラジカル等が吸着し、よって、酸窒化シリコン膜を堆積させることが可能となる。
【0062】
第2の実施形態による成膜装置100によれば、回転テーブル2aには、直径450mmのウエハを5枚載置することができるため、たとえば直径300mmのウエハを5枚載置する場合に比べ、実質的なスループットを高くすることができる。
【0063】
また、成膜装置100には、第1の反応ガスを供給する3本の反応ガスノズル31A,31B,31Cが設けられているため、回転テーブル2aの半径方向に沿って均一に第1の反応ガスを吸着させることが可能となり、よって、ウエハ上の膜厚や膜質を均一化することができる。
【0064】
さらに、成膜装置100にはガスインジェクタ320が設けられているため、ガスを活性化して供給でき、反応ガスノズル31,32からそれぞれ供給される第1および第2の反応ガスにより生成される膜を改質できるという利点が提供される。
【0065】
(第3の実施形態)
次に、図12を参照しながら、本発明の第3の実施形態による成膜装置ついて説明する。図示のとおり、本実施形態による成膜装置101においては、回転テーブルとして図7(b)に図示されるものが使用されている。この回転テーブル2には、その外周縁に沿って11個の載置部24が形成されており、内側には載置部24はない。本実施形態においては、回転テーブル2の載置部の無い内側に対応するように、突出部5の外径が大きくなっている。さらに、これに伴って凸状部4A,4Bの内円弧の長さも大きくなっている。これらの点で、本実施形態の成膜装置101は第1の実施形態による成膜装置10と相違し、他の構成の点では実質的に同一である。
【0066】
このような構成によれば、突出部5と回転テーブル2との間の空間が広くなるため、突出部5とコア部21の周辺の領域とを通して、反応ガスノズル31からの第1の反応ガスと反応ガスノズル32からの第2の反応ガスが混合するのを確実に抑制することが可能となる。また、凸状部4A,4Bの内円弧が長くなるため、突出部5と凸状部4A,4Bとの境界領域を通して、反応ガスノズル31からの第1の反応ガスと反応ガスノズル32からの第2の反応ガスが混合するのを確実に抑制することが可能となる。真空容器1内の圧力が低い場合(たとえば1Torr)には、凸状部4A,4Bと回転テーブル2との間の分離空間H(図4)の圧力と、第1および第2の領域481,482の圧力との差を小さくなり、分離効果が低下する可能性があるが、本実施形態によれば、分離空間Hの回転テーブル2の回転方向に沿った長さを長くすることができるため、十分な分離効果が得られる。
また、回転テーブル2上には11枚の直径300mmのウエハを載置できるので、たとえば5枚の場合に比べ、スループットを高めることができる。
【0067】
以上、幾つかの実施形態を参照しながら本発明を説明したが、本発明は開示した実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に照らし、種々に変更及び変形をすることができる。
【0068】
たとえば、第2の実施形態による成膜装置100の回転テーブル2aを第1の実施形態による成膜装置10に設けても良いし、第1の実施形態に成膜装置10の回転テーブル2を第2の実施形態による成膜装置100に設けても良い。また、図7に示す回転テーブル2を第2の実施形態による成膜装置100に設けても良い。すなわち、本発明の実施形態による成膜装置においては、300mmの直径を有するウエハを載置可能な回転テーブルと、450mmの直径を有するウエハを載置可能な回転テーブルとを交換することにより、300mの直径を有するウエハに膜を堆積することもできるし、450mmの直径を有するウエハに膜を堆積することもできる。すなわち、本発明の実施形態による成膜装置によれば、直径300mmのウエハから直径450mmのウエハへ移行した場合であっても、直径450mmのウエハ用の成膜装置を導入したり、大がかりなレトロフィットを行ったりすることなく、直径450mmのウエハに対応できるという利点が提供される。
なお、回転テーブルの交換は、図3を参照しながら説明したコア部21の取り外しにより容易に行うことができる。
【0069】
また、回転テーブルに形成される載置部24の数は例示のものに限ることなく、適宜変更してよい。たとえば載置部24の数を増やすと、ウエハ1枚当たりに要するNガスを低減することができ、製造コストの低減が図れる。図13は、凸状部4A,4Bと回転テーブル2(2a)との間の分離空間Hにより第1の反応ガスと第2の反応ガスとを分離するのに必要な、分離ガスノズル41,42から供給すべきNガスの流量をコンピュータシミュレーションにより求めた結果を示す。具体的には、ある枚数のウエハを載置可能な回転テーブルの直径、その回転テーブルを収容可能な真空容器の大きさ、およびその真空容器における凸状部4A,4Bの大きさ等を考慮し、ウエハ枚数を関数として示している。図示のとおり、回転テーブルの直径を大きくするに従って、回転テーブルに載置できるウエハ(直径300mm)の数もまた増加する。そうすると、真空容器も大きくなるため、供給すべきNガスの流量も増加すると考えられる。しかし、ウエハ枚数が増加する(真空容器も大きくなる)にもかかわらず、ウエハ1枚当たりに換算するとNガスの流量はむしろ減少している。
【0070】
また、溝部43は、上述の実施形態では、凸状部4を二等分するように形成されるが、他の実施形態においては、例えば、凸状部4における回転テーブル2の回転方向上流側が広くなるように溝部43を形成しても良い。
【0071】
また、成膜装置10,100,101において、反応ガスノズル31,32を容器本体12の周壁部から導入するのではなく、真空容器1の中心側から導入しても良い。さらに、反応ガスノズル31,32は、半径方向に対して所定の角度をなすように導入されてもよい。
【0072】
また、第2の実施形態においては、第1の反応ガス(たとえばBTBASガス)に対して3本の反応ガスノズル31A,31B,31Cが使用されたが、これに代わり又はこれに加えて、第2の反応ガス(たとえばOガス)に対して、互いに長さが異なる複数本のガスノズルを用いても良い。また、このような複数本のノズルを第1の実施形態による成膜装置10や第3の実施形態による成膜装置101に設けても良い。さらに、第2の実施形態におけるガスインジェクタ320を第1の実施形態による成膜装置10や第3の実施形態による成膜装置101に設けても良い。
【0073】
なお、凸状部4A,4Bの回転テーブル2の回転方向に沿った長さは、たとえば、回転テーブル2の内側の載置部24に載置されるウエハの中心が通る経路に対応する円弧の長さで、ウエハWの直径の約1/10〜約1/1、好ましくは約1/6以上であると好ましい。これにより、分離空間Hを高い圧力に維持するのが容易になる。
【0074】
本発明の実施形態による成膜装置は、酸化シリコン膜の成膜に限らず、窒化シリコンの分子層成膜にも適用することができる。また、トリメチルアルミニウム(TMA)とOガスを用いた酸化アルミニウム(Al)の分子層成膜、テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム(TEMAZr)とOガスを用いた酸化ジルコニウム(ZrO)の分子層成膜、テトラキスエチルメチルアミノハフニウム(TEMAHf)とOガスを用いた酸化ハフニウム(HfO)の分子層成膜、ストロンチウムビステトラメチルヘプタンジオナト(Sr(THD))とOガスを用いた酸化ストロンチウム(SrO)の分子層成膜、チタニウムメチルペンタンジオナトビステトラメチルヘプタンジオナト(Ti(MPD)(THD))とOガスを用いた酸化チタン(TiO)の分子層成膜などを行うことができる。また、Oガスではなく、酸素プラズマを利用することも可能である。これらのガスの組み合わせを用いても、上述の効果が奏されることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0075】
W・・・ウエハ、1・・・真空容器、2・・・回転テーブル、21・・・コア部、24・・・載置部、31,32・・・反応ガスノズル、481・・・第1の領域、482・・・第2の領域、H・・・分離空間、41,42・・・分離ガスノズル、320・・・ガスインジェクタ、4・・・凸状部、51・・・分離ガス供給管、61,62・・・排気口、7・・・ヒータユニット、72,73・・・パージガス供給管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内にて、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板に向けて供給し、当該2種類の反応ガスの反応生成物の層を積層して薄膜を形成する成膜装置であって、
前記容器内に回転可能に設けられ、直径300mmの基板がそれぞれ載置される10個以上の基板載置領域を含む第1の回転テーブルと、
前記容器内の第1の領域に配置され、前記第1の回転テーブルの回転方向と交わる方向に延び、前記第1の回転テーブルへ向けて第1の反応ガスを供給する第1の反応ガス供給部と、
前記第1の領域から前記第1の回転テーブルの前記回転方向に沿って離間する第2の領域に配置され、前記回転方向と交わる方向に延び、前記第1の回転テーブルへ向けて第2の反応ガスを供給する第2の反応ガス供給部と、
前記第1の領域に対して設けられる第1の排気口と、
前記第2の領域に対して設けられる第2の排気口と、
前記第1の領域と前記第2の領域との間に配置され、前記第1の反応ガスと前記第2の反応ガスとを分離する分離ガスを吐出する分離ガス供給部と、該分離ガス供給部から供給される前記分離ガスが流れる空間を前記第1の回転テーブルとの間に画成する天井面であって、前記分離ガスが流れる当該空間の圧力が前記第1の領域および前記第2の領域における圧力よりも高く維持され得る高さを有する当該天井面とを含む分離領域と
を備える成膜装置。
【請求項2】
前記第1の回転テーブルを着脱可能に支持し回転する支持部を更に備え、
前記支持部により、前記第1の回転テーブルが、直径450mmの基板がそれぞれ載置される5個以上の基板載置領域を含む第2の回転テーブルと交換可能である、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記第1および第2の反応ガス供給部のいずれか又は双方が、前記回転方向と交わる方向に延びる互いに長さが異なる複数のガスノズルを含む、請求項1又は2に記載の成膜装置。
【請求項4】
隔壁によりガス活性化室とガス導入室とに区画された流路形成部材と、
前記ガス導入室に処理ガスを導入するためのガス導入ポートと、
前記ガス活性化室内において前記隔壁に沿って互いに並行に延びるように設けられ、ガスを活性化させるための電力が印加される一対の電極と、
前記隔壁に電極の長さ方向に沿って設けられ、前記ガス導入室内のガスを前記ガス活性化室に供給するための連通孔と、
前記ガス活性化室にて活性化されたガスを吐出するために前記ガス活性室に前記電極の長さ方向に沿って設けられたガス吐出口と、
を含むガスインジェクタを更に備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記第1の回転テーブルが、
前記基板載置領域を取り囲む溝部と、
前記基板の直径よりも大きい内径を有し前記溝部に嵌合可能なウエハガイドリングと
を備え、
前記ウエハガイドリングが、前記ウエハガイドリングの内側に載置される前記基板の外縁よりも内側に延びる爪部を含む、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記第2の回転テーブルが、
前記基板載置領域を取り囲む溝部と、
前記基板の直径よりも大きい内径を有し前記溝部に嵌合可能なウエハガイドリングと
を備え、
前記ウエハガイドリングが、前記ウエハガイドリングの内側に載置される前記基板の外縁よりも内側に延びる爪部を含む、請求項2に記載の成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−54508(P2012−54508A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197953(P2010−197953)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】