説明

抗原虫化合物

アメーバ目の少なくとも1つの生物の増殖の制御における化合物の使用であって、当該化合物は当該生物におけるヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路および/またはメチオニン生合成経路から分岐する経路を調節することができる、使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アメーバ目におけるヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路を調節する化合物、アメーバ目のメンバーによって引き起こされ、またはこれらによる寄与を受ける疾患の治療または予防におけるこのような化合物の使用ならびに非治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アカントアメーバ(Acanthamoeba)種は環境のいたるところで見出される自由生活性の原虫である。アカントアメーバ種は、二相性の生活環を有し、活動的な栄養体または休眠中の被覆体のいずれかとして存在する。この種は、水道水、水槽、コンタクトレンズの入れ物および洗眼液を含めて、環境の中で遍在的に見出される。
【0003】
アカントアメーバはヒトに寄生して、アカントアメーバ角膜炎と呼ばれる健常な個体における重篤な衰弱性の眼疾患および易感染性のヒトにおいて死にかかわる疾患である肉芽腫性アメーバ性脳炎(granulomatous Acanthamoeba encephalitis、GAE)を引き起こす。
【0004】
アカントアメーバ角膜炎の発生率は、1年あたりで30000人のコンタクトレンズ着用者あたり1であると推定されてきたが、別個の研究では、連続装用レンズ、1日使い捨てレンズおよび酸素透過性ハードレンズに対して、それぞれ10,000人あたり20、3.3および1.1ほどに高い可能性があるということが見出されている。
【0005】
「ワンステップ」コンタクトレンズ液はアカントアメーバを撲滅することができず、過酸化水素を含有する「ツーステップ」液の正しい使用によってのみ、眼へのアカントアメーバの伝染に対してわずかの保護がもたらされる。個体がアカントアメーバに感染すると、治療は非常に苦痛でかつ極めてつらいものであることが多く、入院を伴い、そしてしばしば角膜移植が必要になる。移植された角膜で再賦活が起こって失明に至る可能性もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アメーバ目に対して有効な新しい化合物が至急必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ヒスチジン経路が細菌、真菌および植物の中に存在するということがこれまでに示されてきた一方で、アカントアメーバなどの原虫の中に存在するとは考えられていなかった。本発明者らは、驚くべきことに、アカントアメーバにおけるヒスチジン生合成経路を同定し、そしてアカントアメーバの増殖はヒスチジン経路の公知の阻害剤によって用量依存的に阻害されうるということ、および阻害はヒスチジンをアカントアメーバ増殖培地に加えることによって用量依存的に取り除かれるということの両方を実証した。
【0008】
従って、本発明の第1の態様では、アメーバ目におけるヒスチジン生合成経路および/またはヒスチジン生合成経路から分岐するいずれかの経路を調節するための化合物の使用が提供される。
【0009】
細菌、真菌および植物は、コバラミン非依存的にシステインからメチオニンを合成することができる(図6)。本発明者らはカステラーニアメーバ(A.castellanii)がメチオニン生合成、メチオニンシンターゼおよびシスタチオン(cystathione) γ−シンターゼに関与する2つの遺伝子を発現するということを同定したため、本発明者らは、カステラーニアメーバもこの代謝経路を有することを確立し、そして本発明者らは、カステラーニアメーバ栄養体をメチオニン不含限定培地の中で維持することができ、従ってコバラミン非依存性メチオニン生合成経路を抗菌療法のために利用することができるということを確立した。従って、アカントアメーバの増殖は、メチオニン経路の阻害剤によっても用量依存的に阻害することができ、阻害はメチオニンをアカントアメーバ増殖培地に加えることによって用量依存的に取り除かれうる。
【0010】
従って、本発明の第2の態様では、アメーバ目におけるメチオニン生合成経路および/またはメチオニン生合成経路から分岐するいずれかの経路を調節するための化合物の使用が提供される。
【0011】
本発明の第3の態様では、キットであって、アメーバ目、特にカステラーニアメーバ(Acanthamoeba castellanii)および多食アメーバ(Acanthamoeba polyphaga)における、
ヒスチジン生合成経路および/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路を調節するため、例えば阻害するための化合物と、
メチオニン生合成経路および/またはメチオニン生合成経路から分岐する経路を調節するため、例えば阻害するための化合物と
を含み、i)およびii)の別々の、同時の、または逐次的な投与のためのものであるキットが提供される。このキットは、人工涙液製剤または他のアイケア製品の中で、および洗浄用製剤の中で眼用人工器官(eye prosthesis)、コンタクトレンズ、眼用人工器官またはコンタクトレンズ用の保存用ホルダーなどの製品を消毒するために使用してもよい。あるいは、このキットは、アメーバ目、特にカステラーニアメーバおよび多食アメーバによって引き起こされる疾患の治療において使用することができる。
【0012】
アメーバ目は原生動物門の中の目であり、この門には、Vahlkampfidae(バールカンプフィア科)、Pelomyxidae、Paramoebidae(パラメーバ科)、Mastigamoebidae(マスチゴアメーバ科)、Hartmannellidae(ハルトマネラ科)、Flabellulidae(フラベルラ科)、Entamoebidae(エントアメーバ科)、Amoebidae(アメーバ科)およびAcanthamoebidae(アカントアメーバ科)の科が含まれる。
【0013】
ヒスチジンおよびメチオニンはヒトおよび他の哺乳動物における必須アミノ酸である。これは、ヒトはこのような生化学的経路を持たないということ、およびヒスチジンおよびメチオニンは食事から得なければならないということを意味する。これを考慮すれば、ヒスチジン生合成経路およびメチオニン生合成経路は、有利な薬物標的を提示する。なぜなら、このような経路を標的指向化することによって増殖を阻害するように設計された抗アカントアメーバ化合物は、ヒト宿主に対してほとんど副作用をもたらさないかまたはまったく副作用をもたらさないと予想されるであろうからである。
【0014】
本発明の実施形態では、アカントアメーバ科におけるヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路を調節するための化合物の使用が提供される。特定の実施形態では、アカントアメーバ、特定すれば例えばカステラーニアメーバおよび多食アメーバにおける上記経路を調節するための化合物の使用が提供される。
【0015】
用語「分岐する」は、ヒスチジンまたはメチオニン生合成経路から誘導される特定の産物を代謝する経路を意味すると解釈されうる。
【0016】
ヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路を調節することができる化合物の使用は、アメーバ目のメンバーによるそれぞれヒスチジン/メチオニンの産生を調節すると予想される可能性があり、そしてアメーバ目が増殖および/または生存する能力に対してある効果を有する可能性があるであろう。
【0017】
ヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐をする経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路を調節することができる化合物の使用は、アメーバ目の増殖が阻害される(すなわち増殖阻害性である(microbistatic)(アメーバ増殖阻害性である(amoebidastaic)))程度まで当該経路を調節する可能性があり、かつ/または、あるいはアメーバ目を死滅させる(すなわち殺菌性である(殺アメーバ性である(amoebidacidal))可能性がある。
【0018】
実施形態では、本発明で使用される化合物は、ヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路の酵素(1種または複数種)の阻害剤である可能性がある。
【0019】
実施形態では、本発明で使用するための化合物は、ヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路の酵素の活性および/または発現を調節することにより、ヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐をする経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路を調節しうる。
【0020】
適切には、実施形態では、本発明で使用するための化合物は、酵素調節因子、例えば酵素阻害剤または酵素発現の調節因子であってもよい。
【0021】
実施形態では、酵素発現の調節因子としては、ヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路に関与する酵素をコードする、アメーバ目のメンバーのゲノムのセクションに相補的なオリゴヌクレオチド配列を含んでもよい。適切には、実施形態では、このオリゴヌクレオチドはRNAiまたはアンチセンスであってもよい。このアンチセンス分子は天然物または合成物であってもよい。合成アンチセンス分子は未変性の核酸からの化学修飾を有してもよい。アンチセンス分子は、種々の機序を通して、例えば翻訳に利用できるmRNAの量をRNAse Hの活性化を通してまたは立体障害を通して低下させることによって、遺伝子発現を阻害する。1つまたは組み合わせのアンチセンス分子が投与されてもよく、1つの組み合わせは複数の異なる配列を含んでもよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、一般に、長さが約7ヌクレオチド、通常少なくとも約12ヌクレオチド、より通常は少なくとも約16ヌクレオチド、そして長さが通常約50ヌクレオチド以下、好ましくは約35ヌクレオチド以下であろう。
【0022】
本発明の、そして本発明で使用するための好ましいRNAi剤は、長さが15〜25ヌクレオチド、好ましくは19〜22ヌクレオチド、最も好ましくは長さが21ヌクレオチドである。実施形態では、本発明は、発現を調節するために、好ましくはヒスチジンおよび/またはメチオニン生合成経路における酵素の発現を低下させるためにRNAi剤を用いる方法を提供する。発現を低下させることとは、標的遺伝子またはコード配列の発現のレベルが対照と比較して少なくとも約2倍、通常少なくとも約5倍、例えば10倍、15倍、20倍、50倍、100倍またはこれよりも多く低下または阻害されるということを意味する。本発明の好ましい実施形態で用いられうるRNAi剤は、二本鎖構造で、例えば互いにハイブリダイズした2つの別個のオリゴリボヌクレオチドで存在するか、または二本鎖構造を生成するために小ヘアピン構造をとる一本のリボオリゴヌクレオチドで存在する小リボ核酸分子(本願明細書中では干渉性リボ核酸とも呼ばれる)である。好ましいオリゴリボヌクレオチドは、長さが100nt以下、典型的には長さが75nt以下のリボ核酸である。RNAがsiRNAである場合、二本鎖構造の長さは、典型的には約15〜30bp、通常約20〜29bpの範囲にあり、最も好ましくは21bpである。RNA剤がヘアピン構造で存在する一本のリボ核酸の二本鎖構造、すなわちshRNAである場合、このヘアピンのハイブリダイズした部分の長さは典型的にはsiRNA剤についての長さと同じであるか、または4〜8ヌクレオチドだけ長い。
【0023】
ある実施形態では、干渉性リボ核酸であるRNAi剤、例えば上記のとおりのsiRNAまたはshRNAの代わりに、このRNAi剤が干渉性リボ核酸をコードしてもよい。これらの実施形態では、このRNAi剤は、典型的には干渉性リボ核酸をコードするDNAである。このDNAは、ベクターの中に存在してもよい。
【0024】
このRNAiは、当該技術分野で公知のいずれかの適切なプロトコルを使用して宿主に投与することができる。例えば、この核酸は、ウイルス感染、微量注入(マイクロインジェクション)、小胞の融合、微粒子銃、または流体力学的な(hydrodynamic)核酸投与によって組織または宿主細胞の中へと導入されてもよい。
【0025】
DNA指向性RNA干渉(DNA directed RNA interference、ddRNAi)は、本発明の方法で使用されてもよいRNAi技術である。
【0026】
他の実施形態では、アンチセンス技術を使用して遺伝子発現を下方制御するためにモルホリノが使用されてもよい。このような実施形態では、ホスホロジアミダートで連結されたモルホリノオリゴマー(PMO)は、ヒスチジンおよびメチオニン生合成経路のうちの少なくとも1つ、好ましくはその両方、ならびに/またはそれらから分岐する経路における遺伝子発現をノックダウンするために使用することができる。これは、典型的には、RNAを立体的にブロックするPMOによって成し遂げることができる。ホスホロジアミダートで連結されたモルホリノオリゴマーはペプチドに接合されてもよい。これらのものはアカントアメーバ角膜炎のための治療様式として使用できる可能性があり、すでに眼におけるHSV−1感染症を阻害することが成功裏に実証された(Moerdyk−Schauweckerら、Antiviral Res. 2009)。
【0027】
実施形態では、このオリゴヌクレオチド配列は、アメーバ目におけるヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路の酵素をコードする機能配列に干渉するDNAまたはRNA、ならびに/または機能的酵素遺伝子のRNA転写物に干渉するオリゴヌクレオチド配列、例えば干渉RNA(iRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)またはアンチセンスオリゴヌクレオチドであってもよい。
【0028】
BIOPRED57などのアルゴリズムは、ヒスチジン生合成経路および/またはメチオニン生合成経路の与えられた遺伝子の最適のノックダウン効果を有するsiRNA配列をコンピューターにより予測するために使用してよい。
【0029】
ヒスチジン生合成経路またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路の酵素阻害剤は当業者に周知であり、例えば3−アミノ−1,2,4−トリアゾール(3AT)がある。酵素阻害剤は、例えば、特異的、非特異的、可逆的、不可逆的、競合的および非競合的と分類されてもよい。
【0030】
メチオニン生合成経路またはメチオニン生合成経路から分岐する経路の調節に潜在的に有用な化合物としては、dl−E−アミノ−5−ホスホノ−3−ペンテン酸、3−(ホスホノメチル)ピリジン−2−カルボン酸および5−カルボキシメチルチオ−3−(3’−クロロフェニル)−1,2,4−オキサジアゾールなどのシスタチオニン γ−シンターゼの阻害剤を挙げることができる。
【0031】
本発明では、ヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路のいずれかの酵素(1種または複数種)を阻害することができるいずれの化合物も、アメーバ目におけるそれぞれヒスチジン/メチオニンの産生を調節するために潜在的に使用してよい。
【0032】
特定の実施形態では、本発明で使用するための化合物は、ヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路の酵素(1種または複数種)の機能を調節することができる小有機分子であってもよい。典型的には、小有機分子は、このような経路で利用される酵素の基質のうちのいずれかの類似体であってもよい。好都合なことには、この基質類似体は、ヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路における特定の酵素反応の進行を阻害しかつ防止するか、または阻害もしくは防止するかのいずれかのように修飾されてもよい。
【0033】
加えてまたはあるいは、アメーバ目におけるヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路を調節する際に使用するための化合物、例えば小さい有機の酵素基質類似体は、その経路の特定の酵素(1種もしくは複数種)または基質と相互作用してもよく、ひいてはヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路の別の酵素によって利用されえない産物の産生をもたらしてもよい。こうなると、さらなる酵素反応は可能ではないであろうし、この経路は進行しえないであろう。
【0034】
ヒスチジン生合成経路および/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路を調節するために本発明で使用するために適切な化合物としては3−アミノトリアゾール(3−AT)が挙げられる。当業者は、例えば除草剤に関連してこれまでに明らかにされた他の適切な化合物を熟知しているであろう。
【0035】
有利なことには、本発明で使用するための化合物は細菌増殖を防止するために使用することもでき、従って細菌増殖を防止するための、例えばコンタクトレンズ用の溶液などの溶液の中の成分として使用されてもよい。それらはまた、手術器具上の抗生物性コーティングにおいて、および薬用石鹸などの製品において使用されてもよい。従って、本発明は、細菌増殖を阻害する上での本発明の化合物の非治療的使用を提供する。アメーバ目におけるヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路を調節することができる化合物を含むコンタクトレンズ液、アイケア製品または薬用石鹸も提供される。さらには、本発明は、アメーバ目における、特にアカントアメーバにおけるヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路を調節することができる化合物を含む抗生物性コーティングを外面に有する手術器具または人工器官を提供する。
【0036】
理解されるであろうように、アメーバ目における、特にアカントアメーバにおけるさらなる薬物標的の決定は、ヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路の酵素の活性および/または発現を調節することができる化合物を含む活性薬剤と、少なくとも1つの第2の化合物との組み合わせを含む新規な組成物を提供し、このような新規な組成物は相加的なまたは相乗的な抗細菌効果および/または抗原虫効果を提供する。
【0037】
本発明の好ましい実施形態では、ヒスチジン生合成経路の阻害剤およびメチオニン生合成経路の阻害剤またはアメーバ目または別の病原体の別の公知の阻害剤を増強比で投与することができる。用語「増強比(potentiating ratio)」は、本発明に関しては、その組み合わせのアメーバ目の数の減少が、いずれかの阻害剤単独のアメーバ目の数の減少または個々の阻害剤の活性に基づいてその組み合わせに対して予測されるであろう相加的な活性のアメーバ目の数の減少よりも大きいような比で、ヒスチジン阻害剤およびメチオニン阻害剤または他の阻害剤が存在するということを示すために使用される。従って、増強比では、個々の阻害剤は相乗的に作用する。
【0038】
相乗作用は、いくつかの方法を使用して定義することができる。例えば、相乗作用は、1を超えるRIとして定義されてもよい。このRIは、AおよびBの組み合わせについての、観察された細胞生存(Sobs)に対する予想される細胞生存(Sexp、阻害剤A単独を用いて観察される生存と阻害剤B単独を用いて観察される生存との積として定義される)の比として算出されてもよい(RI=Sexp/Sobs)。相乗作用は、その場合、1を超えるRIとして定義されてもよい。当該技術分野で公知であろう、相乗効果を判定するための他の方法も使用されてもよい。本発明の好ましい実施形態では、この複合阻害剤は1.5を超える、より好ましくは2.0を超える、最も好ましくは2.25を超えるRIをもたらすのに十分な濃度で与えられる。
【0039】
従って、本発明の第4の態様は、ヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路を調節することにおいて使用するための組成物であって、当該組成物は、ヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路の酵素の活性および/または発現を調節することができる化合物と、少なくとも第2の化合物とを含む、組成物を提供する。
【0040】
特定の実施形態では、第2の化合物は、アメーバ目、特にアカントアメーバ、特定すれば例えばカステラーニアメーバおよび多食アメーバに存在するさらなる生合成経路を調節することができ、かつ/または抗菌剤として作用することができる。実施形態では、この第2の化合物は、活性であってもよいが、すなわちアメーバ目、特にアカントアメーバの増殖を阻害するかまたは死を導くかしてもよいが、この組成物が第2の化合物単独に勝って改善した作用の範囲を提供するように、他の病原体に作用してもよい。
【0041】
例として、このような組成物は、ヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路を調節することにおいて使用するための化合物と、シキミ酸経路の酵素を調節することができる化合物または葉酸経路の酵素を調節することができる化合物とを含んでもよい。
【0042】
シキミ酸経路の調節に潜在的に有用な化合物は、当業者にとって周知であると思われ、グリフォセート、スルホセート(sulfosate)およびEPSPシンターゼに対する修飾された前駆体を挙げることができる。
【0043】
葉酸経路の酵素の調節に潜在的に有用な化合物は、当業者にとって周知であると思われ、例えば、スルホンアミド、ピリメタミンまたは葉酸合成に干渉することが知られているいずれかの他の化合物、例えば、プログアニル、シクログアニルまたはトリメトプリムおよびいくつかの誘導体、WR99210によって例示されるトリアジンならびにプロドラッグ PS−15(Kinyanjuiら 1999)を挙げることができる。
【0044】
本発明の実施形態では、ヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路の酵素の活性および/または発現を調節することができる化合物との複合組成物において使用するための抗菌性化合物としては、ヘキサミジン、ビグアニドまたはグルコン酸クロルヘキシジンを挙げることができる。適切には、このような実施形態では、ヘキサミジンは0.1%で与えられてもよく、ポリヘキサメチレンビグアニドは0.02%で与えられてもよい。
【0045】
非治療的使用に加えて、本発明はまた、ヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路の酵素の活性および/または発現を調節することができる化合物の治療的使用を提供する。
【0046】
従って、本発明の第5の態様は、アメーバ目によって引き起こされ、かつ/またはアメーバ目によって寄与を受ける疾患の治療のための医薬の調製のための、アメーバ目における、特にアカントアメーバ、特定すれば例えばカステラーニアメーバおよび多食アメーバにおけるヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路を調節することができる化合物の使用を提供する。
【0047】
例えば、このような医薬を用いて潜在的に治療可能である疾患としては、ヒトにおける角膜炎および/または脳炎、特定すれば肉芽腫性アメーバ性脳炎(GAE)を挙げることができる。
【0048】
本発明の第6の態様では、アメーバ目、特にアカントアメーバ、特定すれば例えばカステラーニアメーバおよび多食アメーバによって引き起こされ、かつ/またはこれらによって寄与を受ける疾患を患っているかまたはその疾患に対して感受性である対象を治療する方法であって、当該方法は、a)必要とする対象に、アメーバ目におけるヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路を調節すること、好ましくは阻害することができる化合物の治療上有効量を投与する工程を含む、方法が提供される。
【0049】
上記の障害を治療するために使用される場合、アメーバ目におけるヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路、ならびに/またはヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路を調節することができる化合物は、様々な剤形で投与されてもよい。従って、例えばそれらは、水系または油性の懸濁液として、または溶液またはいずれかの他の適した形態で投与することができる。
【0050】
別個にまたは逐次的に投与される場合、本願明細書に記載される調節因子、例えば阻害剤は、いずれの適切な期間内、例えば互いの1時間以内、2時間以内、3時間以内、6時間以内、12時間以内、24時間以内、48時間以内または72時間以内に投与されてもよい。好ましい実施形態では、それらは、互いの6時間以内、好ましくは2時間以内、より好ましくは1時間以内、最も好ましくは20分以内に投与される。
【0051】
本発明の医学的処置の方法において使用される化合物が何であれ、投与は、好ましくは「予防上有効量」または「治療上有効量」(よくあることかもしれないが、予防は治療と考えてよい)でされ、これは個体に対して恩恵を示すのに十分なものである。投与される実際の量、および投与の速度および時間的経過は、治療しようとするもの性質および重症度に依存するであろう。治療の処方、例えば投薬量の決定などは、一般開業医および他の医師の職責の範囲内にある。
【0052】
アメーバ目におけるヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路、ならびに/またはヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路を調節することができる化合物、例えばペプチド、ポリペプチド、核酸調節因子、小さい分子、物質または組成物は、治療されるべき状態に応じて、単独で、または同時にもしくは逐次的に他の治療法と組み合わせて投与されてもよい。例えば、ヒスチジン経路を阻害することができる化合物およびメチオニン生合成経路を阻害することができる化合物は、相乗効果をもたらすために、同時にまたは逐次的に与えられてもよい。あるいは、ヒスチジンおよび/またはメチオニン生合成経路を阻害することができる化合物は、相乗効果をもたらすために、調節因子、例えば葉酸経路またはシキミ酸経路の阻害剤と同時または逐次的に組み合わせて与えられてもよい。
【0053】
本発明の第7の態様では、アメーバ目のメンバーによって引き起こされ、またはこれらによる寄与を受ける角膜炎を治療することにおいて使用するためのヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路を調節することができる化合物を、薬学的に許容できる担体または希釈剤と合わせて含む医薬製剤が提供される。適切な実施形態では、ヒスチジン生合成経路を阻害することができる化合物は、角膜炎を治療することにおいて使用するための相乗効果をもたらすために、メチオニン経路の阻害剤と組み合わせて与えられる。
【0054】
実施形態では、本発明の医薬製剤は、例えば局所投与に適した形態で調合されてもよい。例えば、局所投与用の製剤は、水系もしくは非水系液体中の溶液または懸濁液として、または水中油型液体エマルションとして与えられてもよい。特定の実施形態では、本発明の医薬製剤は、リウェッティング用点眼液(rewetting drops)および人工涙液を含めてよいアイケア製品など、それが眼に対して使用できるように調合されてもよい。
【0055】
好都合なことには、この医薬製剤は、眼への直接の使用が可能であるような容器内に包装されてもよい。例えばこの医薬製剤は、感染の部位、例えば眼への当該製剤の所定量を送達することができる容器内に包装されてもよい。
【0056】
本発明に係るそして本発明に従って使用するための医薬組成物は、活性成分に加えて、薬学的に許容できる賦形剤、担体、緩衝液、安定剤または当業者にとっては周知である他の物質を含んでもよい。このような物質は無毒であるべきであり、かつ活性成分の有効性を妨げてはいけない。担体または他の物質の厳密な性質は投与経路に依るであろう。防腐剤、安定剤、緩衝液、抗酸化物質および/または他の添加剤が必要に応じて含まれてもよい。
【0057】
本発明で使用するための化合物は、所望の部位に局在化した様式で投与されてもよいし、またはその化合物が原虫を標的にするようにして送達されてもよい。標的指向化療法は、抗体または細胞特異的リガンドなどの標的指向化系の使用によって本発明の化合物を原虫に対してより特異的に送達するために、使用されてもよい。標的指向化は、様々な理由から所望される可能性があり、例えば、標的指向化を用いなければ当該化合物があまりに高い投薬量を必要とする場合、などがそうである。
【0058】
このような物質を直接投与する代わりに、それらは、原虫の中に導入されたコード核酸から、例えばベクターからの発現によって原虫の中で産生されてもよい。このベクターは、処置しようとする原虫を標的にしたものでもよく、またはそれは原虫が程度の差はあるが選択的に作動させる調節エレメントを含有してもよい。従って、本発明の化合物をコードする核酸は、遺伝子治療の方法において、例えば個体の治療において、例えば障害を予防することまたは(全体的にまたは部分的に)治癒することを目的として使用されてもよい。
【0059】
本発明の第8の態様では、コンタクトレンズを洗浄するためおよび/またはコンタクトレンズを保存するための組成物であって、当該組成物は、ヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路を調節することができる化合物を含む、組成物が提供される。
【0060】
このような組成物は、有利に、アメーバ目のメンバー、例えばカステラーニアメーバおよび多食アメーバによって引き起こされ、かつ/またはこれらによって寄与を受ける感染症を低減しうる。
【0061】
実施形態では、コンタクトレンズを洗浄するためおよび/またはコンタクトレンズを保存するための組成物は、溶液として与えられてもよい。特定の実施形態では、このような溶液は、ヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路を調節することにおいて使用するための化合物と組み合わせて中性の生理食塩水溶液を含んでもよい。適切には、特定の実施形態では、「ワンステップ」コンタクトレンズ洗浄/保存溶液は、ヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路において使用するための化合物を具えていてもよい。例えば、非イオン性、アニオン性または両性界面活性剤から選択される界面活性剤および/または界面活性剤の組み合わせと、ヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路を調節することにおいて使用するための化合物とを含むコンタクトレンズ洗浄保存溶液が提供されてもよい。
【0062】
本発明の第9の態様では、少なくとも1つのコンタクトレンズと、コンタクトレンズを洗浄することおよび/またはコンタクトレンズを保存することに適した組成物とを含有する容器であって、この組成物はヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路を調節することができる化合物を含む、容器が提供される。
【0063】
実施形態では、この容器は、容器が開けられるまで内容物が滅菌状態で保たれるように、密封されていてもよい。特定の実施形態では、この容器は再密封可能であってもよい。
【0064】
本発明の第10の態様によれば、試料の中のアメーバ目、例えばアカントアメーバ、特にカステラーニアメーバおよび多食アメーバを検出するインビトロ方法であって、a)試料を準備する工程と、b)アメーバ目におけるヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路のいずれかの遺伝子および/またはタンパク質の存在を検出する工程とを含む方法が提供される。
【0065】
実施形態では、試料は、アメーバ目に感染していると疑われる対象に由来する細胞または他の体液を含んでもよい。体液としては、例えば、全血、血清、血漿、脳脊髄液(CSF)、唾液または涙を挙げることができる。
【0066】
アメーバ目におけるヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路のいずれかの遺伝子および/またはタンパク質の存在を検出するために、当該技術分野のいずれの公知の技術が使用されてもよい。実施形態では、mRNAまたはタンパク質のいずれかは、遺伝子の発現の上方制御または下方制御を判定する手段として,測定することができる。定量的技術が好ましい。しかしながら、半定量的なまたは定性的な技術も使用することができる。遺伝子産物を測定するための適切な技術としては、SAGE分析、DNAマイクロアレイ解析、ノーザンブロット、ウエスタンブロット、免疫細胞化学分析、ELISA、(PCR)または逆転写酵素PCR(RT−PCR)またはリアルタイムPCRが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
アメーバ目におけるヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路のタンパク質をコードする遺伝子への結合特異性を有するオリゴヌクレオチドプローブが、このような遺伝子を同定するために使用されてもよい。適切なプローブは、本願で記載されるヒスチジン経路またはメチオニン経路の遺伝子のいずれかの部分からなっていてもよい。これらは、合成によってまたはランダムプライミング技術を通して生成されてもよい。このような方法では、プローブの可視化/測定を可能にするために、オリゴヌクレオチドプローブは、例えば化学発光標識、蛍光標識または放射活性標識で標識されてもよいし、またはアメーバ目におけるヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路のタンパク質をコードする遺伝子に対する結合特異性を有するオリゴヌクレオチドプローブを可視化する/測定するために二次プローブが使用されてもよい。
【0068】
アメーバ目におけるヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路のタンパク質を検出するために、当業者に公知の方法が使用されてもよく、例えば未変性または変性SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動による抽出されたタンパク質の分割、次いで例えば銀染料、クマシー・ブルー染料、コロイダルブルーおよびコロイダルゴールド染料を使用したこの分割されたタンパク質の検出が行われてもよい。
【0069】
加えてまたはあるいは、タンパク質は、例えば特定のタンパク質(1種または複数種)に特異的な抗体を使用して検出されてもよい。このような場合には、この抗体は、タンパク質への抗体の結合が検出できるように、例えば蛍光標識、化学発光標識または放射活性標識で標識されてもよい。
【0070】
本発明の第11の態様では、アメーバ目におけるヒスチジン生合成経路の酵素(1種もしくは複数種)を調節すること、例えば阻害することができる薬剤、ならびに/またはメチオニン生合成経路を調節すること、例えば阻害することができる薬剤、ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐するいずれかの経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路の酵素(1種もしくは複数種)を調節すること、例えば阻害することができる薬剤を同定する方法であって、
(a)試験薬剤を、アメーバ目の種からのヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路の1以上の酵素を発現することができる系と接触させる工程と、
(b)ヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路の1以上の酵素の発現および/または活性のいずれかの調節を検出する工程と、
を含み
(c)ヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路の1以上の酵素の発現および/または活性の調節は、その試験薬剤が、アメーバ目におけるヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路の酵素を調節することができる薬剤であることを示す、方法が提供される。
【0071】
特定の実施形態では、ヒスチジン生合成経路および/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路の当該1以上の酵素の発現および/または活性のいずれかの調節を検出する工程は、アメーバ目におけるイミダゾールグリセロール−リン酸デヒドラターゼ(IGPD)ポリペプチドの発現および/または活性の調節の検出を含んでもよく、当該方法は、
− 宿主細胞を、適切な調節配列(1つまたは複数)に操作可能に結合された、アメーバ目由来のイミダゾールグリセロール−リン酸デヒドラターゼをコードする核酸断片で形質転換する工程と、
− アメーバ目由来のイミダゾールグリセロール−リン酸デヒドラターゼの発現に適した条件下で、この形質転換された宿主細胞を増殖させる工程であって、このアメーバ目由来のイミダゾールグリセロール−リン酸デヒドラターゼの発現は、その形質転換された宿主細胞の中でイミダゾールグリセロール−リン酸デヒドラターゼの産生をもたらす、工程と、
− 形質転換された宿主細胞によって発現されるこのイミダゾールグリセロール−リン酸デヒドラターゼを任意に精製する工程と、
− このイミダゾールグリセロール−リン酸デヒドラターゼを試験されるべき化合物で処理する工程と、
− 試験化合物で処理されたイミダゾールグリセロール−リン酸デヒドラターゼの活性を未処理のイミダゾールグリセロール−リン酸デヒドラターゼの活性と比較する工程であって、差が検出され、これにより調節活性、例えば、阻害活性についての潜在性を有する化合物を選択する工程と、
を含む。
【0072】
理解されるであろうように、この方法論は、アメーバ目の中で同定されるヒスチジン生合成経路もしくはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路の酵素のいずれに適用されてもよい。
【0073】
薬剤としては、試験されるべき小有機分子、アミノ酸、ペプチド、タンパク質または別の適切な化合物、例えば核酸(DNAまたはRNA)などを挙げることができる。理解されるであろうように、このような薬剤は、ライブラリー(化学物質のライブラリーまたはタンパク質ライブラリー)から得てもよい。
【0074】
自由生活性のアカントアメーバはMRSAおよびレジオネラ属(Legionella)などの病原菌を宿している可能性があるということが考えられる。これは、病院の環境では特に危険である。なぜなら、易感染性の個体がこれに曝露されるからである。
【0075】
従って、本発明の第12の態様では、MRSAおよびレジオネラ属を含めた病原菌を処置することにおける使用に適した抗菌性化合物と組み合わせた、アメーバ目におけるヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路の酵素を調節することができる化合物が提供される。本発明のさらなる態様では、MRSAおよびレジオネラ属を含めた病原菌を処置するための、アメーバ目におけるヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路の酵素を調節することができる化合物の使用が提供される。本発明のなおさらなる態様では、アメーバ目におけるヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路の酵素を調節することができる化合物を含む殺菌薬(bactericidal agent)、抗菌薬(antibacterial agent)、抗感染薬、抗菌薬(antimicrobial agent)、殺胞子薬、消毒薬、抗真菌薬、殺菌薬(germicidal agent)および抗ウイルス薬が提供される。
【0076】
上で示されたように、アカントアメーバ種は、ヒトに寄生して重篤な衰弱性の眼疾患、例えばアカントアメーバ角膜炎、を個体で引き起こす可能性があり、感染はコンタクトレンズ着用者では増加する。アカントアメーバおよび他の細菌または他の微生物の増殖を阻害するコンタクトレンズを製造することが有利であろう。従って、アメーバ目におけるヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路の酵素を調節することができる化合物を含む眼用人工器官、コンタクトレンズ、眼用人工器官またはコンタクトレンズ保存容器が提供される。さらなる態様では、抗菌性のレンズまたは眼用人工器官を調製する方法であって、(a)コンタクトレンズまたは眼用人工器官を、アメーバ目におけるヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路の酵素のうちの少なくとも1つを調節することができる化合物で処理する工程と、(b)当該化合物をコンタクトレンズまたは人工器官の表面に結合させるように、工程(a)のレンズまたは眼用人工器官を処理する工程と、を含む方法が提供される。適切には、実施形態では、当該化合物を結合することは、コンタクトレンズまたは人工器官の表面上に適切な官能基を提供する工程によってもたらされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
本発明は、これより、図面を参照して例のみとして説明される。
【図1】10種の酵素反応からなるヒスチジン生合成経路を図示する。
【図2】ヒスチジンの不存在下でのアカントアメーバの増殖阻害を図示する。アカントアメーバの増殖は用量依存的に − IC50は0.015mM〜0.031mMの間である − 阻害される。X軸は3−ATの用量(mM単位)を表し、Y軸はミトコンドリア活性に正比例するアラマーブルー(AlamarBlue)還元の百分率である。
【図3】アカントアメーバの増殖阻害がヒスチジンの存在下で取り除かれるということを図示する。10mM ヒスチジンの添加は0.98mM(IC20) 3−ATの存在下でアカントアメーバが増殖することを可能にすることができ、 −x軸はヒスチジンの量を表し、y軸はアラマーブルー還元の百分率を表し、そして100mM ヒスチジンはアカントアメーバに対して毒性であったが、10mM ヒスチジンでは3ATの効果は有意に(p<0.05)取り除かれた。
【図4】3ATの濃度のある範囲にわたるアラマーブルーの還元を図示する。3AT()は、0.00095mM以上の濃度で用量依存的に、未処理の対照培養物と比較して有意に(p<0.05)カステラーニアメーバの増殖を阻害した。1mM ヒスチジンの存在下で()、これは還元され、カステラーニアメーバの増殖を有意に(p<0.05)阻害するために、0.06mM以上の3ATが必要であった。
【図5】アカントアメーバのIGPD遺伝子の配列比較を図示する。
【図6】コバラミン非依存性メチオニン生合成経路およびその酵素反応を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0078】
(定義された用語)
用語「阻害」は、酵素の活性を阻害する可能性がある化合物にすでに接触および/または曝露された酵素と比較したときに、特定の基質からの特定の化合物の産生を酵素が触媒する速度が低下しているということを意味すると解釈されうる。
【0079】
用語「非特異的」は、化合物の効果が特定の酵素または酵素の類に限定されず、実質的にすべての酵素の活性に全般的に影響を及ぼす、その化合物を意味すると解釈されうる。典型的には、非特異的阻害剤は、温度、pHなどの変化によって酵素が変性するという事実の結果として機能しうる。しかしながら、非特異的阻害剤はまた、酵素の活性部位に不可逆的に結合しそれをブロックし、そのようにしてその酵素の活性部位が特定の化合物の産生を触媒するという機能を果たすことを防止してもよい。
【0080】
用語「特異的阻害剤」は、特定の酵素を阻害しうるが別の酵素の活性に対しては効果を有しない化合物を指すと解釈されうる。特異的酵素阻害剤は、特定の酵素に、例えば酵素の活性部位で、またはその周囲で結合して、活性部位がブロックされることを引き起こすか、またはその活性部位への基質の近づきを立体的に妨害することにより、機能を果たす可能性がある。あるいは、または加えて、阻害剤は、活性部位以外の領域で酵素に結合して、その酵素がもはや特定の基質を受け容れて特定の基質の転化を触媒することができないような立体構造の変化をその酵素が受けることを引き起こしてもよい。
【0081】
用語「競合的阻害剤」は、特定の酵素の活性部位を占めて正しい基質の排除を生じることができ、そのためその酵素が反応を触媒する速度が減少する、そのような化合物を含むと解釈されうる。特定の実施形態では、このような化合物は、その酵素の未変性の(天然の/正しい)基質と非常に類似している可能性がある。
【0082】
用語「非競合的阻害剤」は、酵素が特定の化合物の産生を触媒する速度に影響を及ぼす化合物を包含すると解釈されうる。競合的阻害剤とは対照的に、非競合的阻害剤は酵素の活性部位以外の位置で酵素と相互作用しうる。例えば、非競合的阻害剤は、酵素に結合して、その酵素の結合部位がもはや基質を受け容れないかもしれないようなその酵素の立体構造の変化を誘導する可能性がある。
【0083】
「アメーバ目の種からのヒスチジン生合成経路および/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路の1以上の酵素を発現することができる系」は、無細胞系または細胞ベースの系であってもよい。この「系」は、ヒスチジン生合成経路および/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路に由来する1以上の酵素を含んでもよい。加えて、この「系」は、当該酵素(1種または複数種)が相互作用することができる基質(1種または複数種)を含んでもよい。
【0084】
用語「調節」は、試験薬剤または化合物に曝露されたことがない同じ酵素の活性または発現と比較したときの、酵素活性の増加もしくは減少および/または酵素発現の増加もしくは減少を意味すると解釈されうる。
【0085】
発現の調節は、例えばヒスチジン生合成経路の酵素および/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路の酵素と、検出可能なタグ、例えば化学発光タグ、生物発光タグ、蛍光タグ、HisもしくはGSTタグまたは抗体もしくはこれと類似のものによって検出されうる別の適切なタグとを含む融合タンパク質を作製することにより検出されてもよい。このような方法論を適切に使用すれば、酵素の発現の増加は、より多くのタグが検出されるということをもたらすであろう。酵素(1種または複数種)の発現のレベルは、例えば定量的リアルタイムPCR、アガロースゲル電気泳動および/またはノーザン/サザンブロッティングを使用して、存在する特異的mRNAの量を定量することによって決定されてもよい。
【0086】
本願明細書全体を通して、文脈からそうではないことが要求される場合を除いて、用語「comprise(を含む)」または「include(を包含する)」、または「comprises」または「comprising」、「includes」または「including」などの派生語は、それらが明記された整数または整数の群を包含しいずれの他の整数または整数の群も排除しないということを意味すると理解されよう。
【0087】
本発明の実施形態では、本願明細書に開示される本発明のすべての態様について、上記生合成経路の調節因子は阻害剤であってもよい。
【0088】
本発明の各態様の好ましい特徴および実施形態は、文脈からそうではないことが要求される場合を除いて、変更すべきところは変更して他の態様の各々のためにも適用される。
【実施例】
【0089】
(実施例1)
本発明者らは、カステラーニアメーバ由来のヒスチジン生合成経路の中の6番目の酵素、イミダゾールグリセロール−リン酸デヒドラターゼ(IGPD)(EC4.2.1.19)(図1を参照)をクローン化し、配列決定した。この酵素は、市販の除草剤で一般に使用されている3−アミノ−1,2,4−トリアゾール(3AT)についての分子標的である。アカントアメーバのイミダゾールグリセロール−リン酸デヒドラターゼ(IGPD)遺伝子(hisB)は、以下のプロトコルに従って入手することができる。
【0090】
全量25μlの中で、1μl cDNA(ヒスチジンの不存在下で増殖させたアカントアメーバに由来する)を、1単位のPlatinum Taq High Fidelityおよび10×High Fidelity Bufferの存在下で、1μlの10mM dNTP混合物、2mM MgSO、25pmolの順方向プライマー(5’ GAAAAGAGGGAGGCACAGGT 3’)(配列番号:1)および25pmolの逆方向プライマー(5’ ATCACTCGAGTACGCCCTTGG 3’)(配列番号:2)に加えた。熱サイクル条件は、95℃で3分間の初期変性、次いで35サイクルの、95℃で30秒間の変性、62℃でのアニーリングおよび72℃での伸張、からなる。最終の伸張工程は72℃で10分間である。これらの熱サイクル条件は、ヒスチジン生合成経路に属する酵素の他の遺伝子の断片を入手するためにも使用した。
【0091】
アカントアメーバのイミダゾールグリセロール−リン酸デヒドラターゼ(IGPD)遺伝子(hisB)
【化1】

【0092】
(実施例2)
図2および図3に図示するように、本発明者らは、アカントアメーバはヒスチジンの不存在下で増殖することができるということ、および3−アミノトリアゾール(ヒスチジン生合成経路の6番目の酵素であるIGPDの阻害剤)がアカントアメーバの増殖を阻害するということを見つけ出した。さらには、阻害は、ヒスチジンを培地に添加することによって用量依存的に取り除かれた。これは、3ATがIGPDを阻害するように特異的に作用するということ、およびカステラーニアメーバにおけるヒスチジン生合成経路を実証する。これは、原虫におけるヒスチジン生合成経路の最初の証拠を提供し、そしてアカントアメーバ感染の間の治療的介入のための標的としてのその潜在性を実証する。
【0093】
(実施例3)
本発明者らはさらに、ヒスチジン経路に属する酵素を転写する遺伝子の部分を同定した。これは、ヒスチジン生合成経路がアカントアメーバの中に存在するということのさらなる支持を与える。
【0094】
ATPホスホリボシルトランスフェラーゼ部分的ゲノム配列
【化2】

ホスホリボシルATPピロホスファターゼ部分的コード配列
【化3】

ホスホリボシル−5−アミノ−1−ホスホリボシル−イミダゾールカルボキシアミド異性化酵素部分的ゲノム配列
【化4】

イミダゾールグリセロール−リン酸デヒドラターゼ、部分的コード配列
【化5】

ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ部分的ゲノム配列
【化6】

【0095】
(実施例4)
本発明者らはまた、コバラミン非依存的にシステインからメチオニンを合成することができるメチオニン経路(図6を参照)に属する酵素を転写する遺伝子の部分を決定した。
【0096】
本発明者らはさらに、カステラーニアメーバがこの代謝経路を保有するということを確立した。というのも、本発明者らは、カステラーニアメーバがメチオニン生合成に関与する酵素、つまり、メチオニンシンターゼおよびシスタチオン γ−シンターゼを転写する2つの遺伝子を発現するということを同定したためである。
【0097】
現在、コバラミン非依存性メチオニンシンターゼに対する公知の阻害剤は存在しないが、真菌種由来のコバラミン非依存性メチオニンシンターゼに集中した研究によって、妥当と思われる候補が同定されると予想される。
【0098】
シスタチオニン γ−シンターゼの阻害剤としては、dl−E−2−アミノ−5−ホスホノ−3−ペンテン酸、3−(ホスホノメチル)ピリジン−2−カルボン酸および5−カルボキシメチルチオ−3−(3’−クロロフェニル)−1,2,4−オキサジアゾールが挙げられる。
【0099】
実施例1のプロトコルおよび熱サイクル条件を使用して、メチオニン生合成経路に属するメチオニンシンターゼおよびシスタチオン γ−シンターゼの遺伝子の断片を入手した。ここで使用するための逆方向および順方向プライマーを下記の表1に示す。
【0100】
【表1】

【0101】
AcCGS − シスタチオニン γ−シンターゼ部分的ゲノム配列
【化7】

【0102】
上記のプロトコルを使用して、メチオニンシンターゼ遺伝子の異なるセクションを、後述するようにして決定した。
【0103】
MS1 − メチオニンシンターゼ部分的ゲノム配列
【化8】

MS2 − メチオニンシンターゼ部分的ゲノム配列
【化9】

MS5 − メチオニンシンターゼ部分的ゲノム配列
【化10】

【0104】
実施例5
本発明者らは、ヒスチジンおよび/またはメチオニン経路の阻害剤は人工涙液およびリウェッティング用点眼液を含めたアイケア製品において有用であるということを見出した。このような調剤では、当該阻害剤は、アカントアメーバによる汚染を予防することによって、一般に防腐剤として機能することができ、そうして製品の貯蔵寿命を延ばすことができる。
【0105】
典型的なアイケア製品製剤は、水、ならびにカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG400)およびHP−グアーのうちの1以上との塩を含んでもよい。このような製剤の重要な態様は、潤滑および浸透圧保護であり、当該製剤は眼用コンタクトレンズ液として考えられるであろうから、当該製剤はコンタクトレンズ着用と適合性でなければならない。
【0106】
特に、特定の実施例を参照して本発明を示しかつ説明してきたが、本発明の範囲から逸脱せずに形態および細部の種々の変更がなされてもよいということは当業者なら分かるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アメーバ目の少なくとも1つの生物の増殖の制御における、ヒスチジン生合成経路、および/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路を調節することができる化合物の使用。
【請求項2】
請求項1に記載のアメーバ目の少なくとも1つの生物の増殖の制御における使用であって、
前記化合物は、前記生物におけるヒスチジン生合成経路を調節することができる、使用。
【請求項3】
請求項1に記載のアメーバ目の少なくとも1つの生物の増殖の制御における使用であって、
前記化合物は、前記生物におけるメチオニン生合成経路を調節することができる、使用。
【請求項4】
前記少なくとも1つの生物は、アカントアメーバの科の生物である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記少なくとも1つの生物はアカントアメーバ属の生物である、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記少なくとも1つの生物はカステラーニアメーバまたは多食アメーバである、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記化合物は、
i)ヒスチジン生合成経路もしくはメチオニン生合成経路の少なくとも1つの酵素の阻害剤、
ii)ヒスチジン生合成経路もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路の少なくとも1つの酵素の阻害剤、
iii)ヒスチジン生合成経路もしくはメチオニン生合成経路の酵素の発現の阻害剤、または
iv)ヒスチジン生合成経路もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路の酵素の発現の阻害剤、
から選択される、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記化合物は、
ヒスチジン生合成経路の少なくとも1つの酵素をコードする核酸配列、
メチオニン生合成経路の少なくとも1つの酵素をコードする核酸配列、
ヒスチジン生合成経路から分岐する経路の少なくとも1つの酵素をコードする核酸配列、
メチオニン生合成経路から分岐する少なくとも1つの酵素をコードする核酸配列、または
ヒスチジンもしくはメチオニン生合成経路の酵素をコードする核酸配列の発現を制御する核酸配列、
に結合するオリゴヌクレオチド配列である、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記オリゴヌクレオチド配列はRNAi、siRNAまたは少なくとも1つのアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記化合物は小有機分子である、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記小有機分子は、ヒスチジン生合成経路で利用される酵素のうちの少なくとも1つの少なくとも1つの基質の類似体、またはメチオニン生合成経路で利用される酵素のうちの少なくとも1つの少なくとも1つの基質の類似体、またはヒスチジン生合成経路もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路の酵素の少なくとも1つの基質の類似体である、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記小分子は3−アミノ−1,2,4−トリアゾール(3AT)である、請求項10または請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記化合物は、コンタクトレンズ液中、手術器具上のコーティング、人工器官上のコーティングおよび/または薬用石鹸中、のうちの少なくとも1つにおいて提供される、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
アメーバ目におけるヒスチジン生合成経路および/もしくはヒスチジン生合成経路から分岐する経路ならびに/またはアメーバ目におけるメチオニン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路を調節することにおいて使用するための組成物であって、前記組成物は、
i)ヒスチジン生合成経路および/またはメチオニン生合成経路の少なくとも1つの酵素、
ii)ヒスチジンおよび/またはメチオニン生合成経路から分岐する経路の少なくとも1つの酵素、
の活性および/または発現を調節することができる第1の化合物と、
少なくとも第2の化合物であって、前記第2の化合物は、アメーバ目に存在するさらなる生合成経路を調節することができる、第2の化合物と、
を含む組成物。
【請求項15】
前記第2の化合物は、シキミ酸経路または葉酸経路の酵素を調節することができる、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記第2の化合物は、スルホンアミド、ピリメタミン、プログアニル、シクログアニルまたはトリメトプリムまたはその誘導体、トリアジン、PS−15、ヘキサミジン、ビグアニドまたはグルコン酸クロルヘキシジンからなる群から選択される、請求項14または請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記第1の化合物は、i)ヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路の少なくとも1つの酵素、ならびに/またはii)ヒスチジンおよび/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路の少なくとも1つの酵素、の阻害剤である、請求項14または請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
アメーバ目の少なくとも1つの生物によって引き起こされ、かつ/またはこれらによる寄与を受ける疾患の治療のために、ヒスチジン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路、ならびに/またはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路を調節すること、好ましくは阻害することができることを特徴とする化合物。
【請求項19】
アメーバ目によって引き起こされ、かつ/またはこれらによる寄与を受ける疾患の治療のための、請求項14から請求項17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記疾患は角膜炎または脳炎である、請求項18または請求項19に記載の化合物または組成物。
【請求項21】
アメーバ目によって引き起こされ、かつ/またはこれらによる寄与を受ける疾患を患っているかまたはその疾患に対して感受性である対象を治療する方法であって、前記方法は、必要とする対象に、
(a)治療上有効量の、ヒスチジン生合成経路を調節すること、好ましくは阻害することができる化合物、および/または
(b)治療上有効量の、メチオニン生合成経路を調節すること、好ましくは阻害することができる化合物、および/または
(c)治療上有効量の、アメーバ目におけるヒスチジンもしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路を調節すること、好ましくは阻害することができる化合物を投与する工程を含む、方法。
【請求項22】
前記アメーバ目はカステラーニアメーバまたは多食アメーバである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項14から請求項17のいずれか1項に記載の組成物を含む、医薬製剤。
【請求項24】
コンタクトレンズを洗浄するためおよび/またはコンタクトレンズを保存するための組成物であって、ヒスチジン生合成経路および/もしくはヒスチジン生合成経路から分岐する経路および抗菌剤ならびに/またはメチオニン生合成経路および/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路を調節すること、好ましくは阻害することができる化合物を含む、組成物。
【請求項25】
コンタクトレンズを洗浄および/または保存するための容器であって、前記容器は少なくとも1つのコンタクトレンズおよび請求項24に記載の組成物を含有する、容器。
【請求項26】
試料の中のアメーバ目を検出するインビトロ方法であって、
a)試料を準備する工程と、
b)i)ヒスチジン生合成経路の遺伝子および/もしくはタンパク質、
ii)メチオニン生合成経路の遺伝子および/もしくはタンパク質、
iii)ヒスチジン生合成経路から分岐する経路の遺伝子および/もしくはタンパク質、または
iv)メチオニン生合成経路から分岐する経路の遺伝子および/もしくはタンパク質
の存在を検出する工程と
を含み、前記遺伝子はアメーバ目によってコードされる遺伝子であり、かつ前記タンパク質はアメーバ目によってコードされるタンパク質である、インビトロ方法。
【請求項27】
前記試料は、アメーバ目に感染していると疑われる対象に由来する細胞および/または体液を含む、請求項26に記載のインビトロ方法。
【請求項28】
アメーバ目におけるヒスチジンおよび/もしくはメチオニン生合成経路の酵素(1種または複数種)ならびに/またはヒスチジンもしくはメチオニン生合成経路から分岐するいずれかの経路の酵素(1種または複数種)を調節することができる薬剤を同定する方法であって、
(a)試験薬剤を、アメーバ目の種からのヒスチジンおよび/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジンおよび/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路の1以上の酵素を発現することができる系と接触させる工程と、
(b)ヒスチジンおよび/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジンおよび/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路の1以上の酵素の発現および/または活性の調節を検出する工程と、
を含み、工程(b)における前記1以上の酵素の発現および/または活性の調節の検出は、前記試験薬剤が、アメーバ目におけるヒスチジンおよび/もしくはメチオニン生合成経路の酵素ならびに/またはヒスチジンおよび/もしくはメチオニン生合成経路から分岐するいずれかの経路の酵素を調節することができる薬剤であることを示す、方法。
【請求項29】
工程(b)は、アメーバ目におけるイミダゾールグリセロール−リン酸デヒドラターゼ(IGPD)ポリペプチドの発現および/または活性の調節の検出を含み、前記方法は、
a)宿主細胞を、適切な調節配列に操作可能に結合された、アメーバ目由来のイミダゾールグリセロール−リン酸デヒドラターゼをコードする核酸断片で形質転換する工程と、
b)アメーバ目由来の前記イミダゾールグリセロール−リン酸デヒドラターゼの発現に適した条件下で、前記形質転換された宿主細胞を増殖させる工程であって、アメーバ目由来の前記イミダゾールグリセロール−リン酸デヒドラターゼの発現は、前記形質転換された宿主細胞の中でイミダゾールグリセロール−リン酸デヒドラターゼの産生をもたらす、工程と、
c)前記イミダゾールグリセロール−リン酸デヒドラターゼを試験されるべき化合物で処理する工程と、
d)試験化合物で処理された前記イミダゾールグリセロール−リン酸デヒドラターゼの活性を未処理のイミダゾールグリセロール−リン酸デヒドラターゼの活性と比較する工程と、
を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
工程c)に先だって、前記形質転換された宿主細胞によって発現される前記イミダゾールグリセロール−リン酸デヒドラターゼを精製する工程をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
ヒスチジンおよび/もしくはメチオニン生合成経路またはヒスチジンおよび/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路を調節すること、好ましくは阻害することができる化合物と、第2の抗菌性化合物であって、前記抗菌性化合物は、MRSAまたはレジオネラ属の増殖を低下させることにおいて有効である第2の抗菌性化合物、とを含む組成物。
【請求項32】
MRSAまたはレジオネラ属の処理のための組成物の使用であって、前記組成物は、ヒスチジンおよび/もしくはメチオニン生合成経路ならびに/またはヒスチジンおよび/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路を調節すること、好ましくは阻害することができる化合物と、第2の抗菌性化合物であって、前記抗菌性化合物は、MRSAまたはレジオネラ属の増殖を低下させることにおいて有効である第2の抗菌性化合物、とを含む、使用。
【請求項33】
アメーバ目におけるヒスチジンおよび/もしくはメチオニン生合成経路、ならびに/またはヒスチジンおよび/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路の少なくとも1つの酵素、を調節すること、好ましくは阻害することができる化合物を含む、コンタクトレンズまたは眼用人工器官。
【請求項34】
請求項33に記載のコンタクトレンズまたは眼用人工器官を調製する方法であって、
(a)コンタクトレンズまたは眼用人工器官を、アメーバ目におけるヒスチジンおよび/もしくはメチオニン生合成経路の酵素のうちの少なくとも1つ、ならびに/またはヒスチジンおよび/もしくはメチオニン生合成経路から分岐する経路の酵素のうちの少なくとも1つを調節すること、好ましくは阻害することができる化合物で処理する工程と、
(b)工程(a)の前記レンズまたは眼用人工器官を、前記化合物を前記コンタクトレンズまたは眼用人工器官の表面に結合するための結合剤で処理する工程と、
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−502897(P2012−502897A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526576(P2011−526576)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【国際出願番号】PCT/GB2009/051197
【国際公開番号】WO2010/029378
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(511068061)ユニバーシティ オブ ザ ウェスト オブ スコットランド (1)
【出願人】(598097622)ユニバーシティ オブ ストラスクライド (15)
【氏名又は名称原語表記】University of Strathclyde
【Fターム(参考)】