説明

指紋画像の回転角度算出装置、指紋画像回転装置、指紋照合装置、指紋画像の回転角度算出プログラム、指紋画像回転プログラム及び指紋照合プログラム

【課題】指紋センサのばらつきや指紋画質に影響され難い指紋画像の傾き角度を算出する指紋画像の回転角度算出装置及び指紋画像の回転角度算出プログラムを提供する。
【解決手段】入力指紋画像100から塗りつぶし画像200を作成する。塗りつぶし画像200における指紋領域202を近似した直線である領域近似直線221に基づいて回転角度θを算出する(説明図220)。回転角度θを補正した方がよい場合には補正する。そこで、塗りつぶし画像200において指紋領域202と背景領域201との境界線401,402を抽出する(境界線画像400)。境界線401,402の一部を近似した直線である境界線近似直線411,412を求める(説明用境界線画像410)。2本の近似直線の信頼性が判定され、信頼性のある近似直線がある場合には、信頼性のある近似直線を用いて角度を算出し(説明用境界線画像420)、回転角度θをこの角度に補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指紋画像の回転角度算出装置、指紋画像回転装置、指紋照合装置、指紋画像の回転角度算出プログラム、指紋画像回転プログラム及び指紋照合プログラムに関するものであり、詳細には、指紋画像の基準位置からの傾きの角度を正しく算出する指紋画像の回転角度算出装置、指紋画像回転装置、指紋照合装置、指紋画像の回転角度算出プログラム、指紋画像回転プログラム及び指紋照合プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、セキュリティ意識の高まりから、パーソナルコンピュータ、携帯電話、ATM(automated teller machine)など種々の装置において、ユーザの本人認証を行うために、指紋認証の技術が用いられている。指紋認証においては、まず、指紋センサでユーザの指紋がスキャンされ、指紋画像が作成される。そして、指紋照合装置において、指紋センサにおいて作成された指紋画像と、予め登録されている指紋画像との照合が行われ、ユーザの識別や本人認証が行われている。この指紋センサは、指紋照合装置に付属されている場合もあれば、ネットワークを介して指紋照合装置に接続している場合もあれば、指紋照合装置がスキャン機能を備えて一体化されている場合もある。
【0003】
指紋センサでは、ユーザの指紋をスキャンする際に、指の向きが一定となるように指の向きを固定するガイド部材が設けられていることがある。しかしながら、近年では、指紋センサの小型化への要望からガイド部材の設けられていない指紋センサもある。このようにガイド部材の設けられていない指紋センサでは特に、ユーザが指を置いた位置が本来指を置くべき位置(以下、基準位置という)から傾いていることがある。指紋画像が傾いていると、予め登録されている指紋画像と一致しないとみなされてしまう可能性があるため、スキャンされた指紋画像が傾いている場合には、照合の前にその傾きを補正する必要が生じる。そこで、特許文献1に記載の発明の縞パターン照合装置では、指紋の端点・分岐点(マニューシャ特徴量)を用いて指紋画像の傾きの角度を算出している。また、特許文献2に記載の発明の画像照合装置では、指紋画像から指紋領域を抽出し二値化を行った後、モーメント法により指紋画像の傾きの角度を算出し、指紋画像を傾いているだけ逆の方向に傾けて、基準位置へ戻すという処理を行っている。このモーメント法を用いた傾きの角度の検出方法では、端点・分岐点の抽出が不要なため、不明瞭な指紋画像からも回転角度を算出でき、処理も単純なため指紋照合装置のCPUに与える負荷も小さいという利点がある。
【特許文献1】特許第2944557号公報
【特許文献2】特開2001−76145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発明の縞パターン照合装置では、指紋画像が明瞭であれば、高い精度で正しい傾きの角度を算出することができるが、指紋画像が薄く明瞭でない場合には、マニューシャ特徴量の抽出が困難であり、よって、正しい傾きの角度を算出することができない場合があるという問題点がある。特に、老人や水仕事を頻繁に行う人物の指は乾燥していることが多く、乾燥した指から採取される指紋画像は薄く、明瞭でないことが多い。さらに、マニューシャ特徴量の抽出には、複雑な処理が必要であり、装置化には高速なCPUや専用LSIが必要なため装置のコストアップにつながる。
【0005】
また、特許文献2に記載の発明の画像照合装置では、モーメント法により指紋の回転角度を算出するために、指紋画像から指紋領域を抽出し二値化を行う必要がある。しかし、指紋画像の濃淡にばらつきがあり、二値化する際の濃淡の閾値の設定が困難であるという問題がある。例えば、前述したように、ユーザの指が乾燥気味であれば指紋画像は薄くなる。逆に、湿り気が多ければ指紋画像は濃くなる。ユーザの指の状態は個々の人物により様々であるので、入力される指紋画像の濃淡を均一にするのは困難である。また、工場で大量生産される指紋センサには製品のばらつきがあり、製品により指紋画像の濃淡も異なるものとなるのが現実である。
【0006】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、指紋センサのばらつきや指紋画質に影響され難い指紋画像の傾き角度を算出する指紋画像の回転角度算出装置及び指紋画像の回転角度算出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明の指紋画像の回転角度算出装置では、人の指紋が写されている画像である指紋画像のデータである指紋画像データを入力する指紋画像データ入力手段と、当該指紋画像データ入力手段から入力された前記指紋画像データの示す前記指紋画像、又は、前記指紋画像を構成する各画素の濃淡を示す階調値、若しくは、各画素の前記階調値と周囲の画素の前記階調値とから得られる差分情報に基づいて作成された抽出用画像において、前記指紋画像又は前記抽出用画像を二次元平面とみなし、当該二次元平面上において、指紋が映し出されているとされる画素に対応した座標上の点の集合を近似直線に近似する第一近似直線特定手段と、当該第一近似直線特定手段により近似された近似直線である第一近似直線と、前記指紋画像に対して予め定められた直線である基準線との傾きの差を、前記基準線に対して、指紋が存在する領域である指紋領域が傾いている角度である回転角度として算出する回転角度算出手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る発明の指紋画像の回転角度算出装置では、請求項1に記載の発明の構成に加えて、前記第一近似直線特定手段は、前記二次元平面上の当該画素に対応した座標に、前記指紋領域を構成する画素における階調値に応じた数の点を配置して、配置された点の集合が近似される近似直線を第一近似直線とすることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る発明の指紋画像の回転角度算出装置では、請求項1又は2に記載の発明の構成に加えて、前記指紋領域抽出手段により抽出された前記指紋領域と前記指紋画像における当該指紋領域以外の領域との境界線となる画素を境界画素として、当該境界画素の集合である境界画素集合を抽出する境界画素集合抽出手段と、前記指紋画像内の所定の領域である評価領域内に存在する前記境界画素を有効な画素である有効画素として抽出する有効画素抽出手段と、前記二次元平面上において、当該有効画素抽出手段により抽出された前記有効画素に対応した座標上の点の集合を近似直線に近似する第二近似直線特定手段と、当該第二近似直線特定手段により近似された近似直線である第二近似直線の傾きを用いて、前記回転角度算出手段により算出された前記回転角度を補正する補正手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る発明の指紋画像回転装置では、請求項1乃至3のいずれかに記載の指紋画像の回転角度算出装置と、当該指紋画像の回転角度算出装置の前記回転角度算出手段により算出された前記回転角度に基づいて、前記指紋画像入力手段から入力された前記指紋画像を回転させる指紋画像回転手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に係る発明の指紋照合装置では、登録用の指紋画像を記憶する登録指紋画像記憶手段と、請求項4に記載の指紋画像回転装置と、当該指紋画像回転装置の前記指紋画像回転手段により回転された結果である回転指紋画像と前記登録指紋画像記憶手段に記憶されている前記登録指紋画像とを照合する照合手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に係る発明の指紋画像の回転角度算出プログラムでは、請求項1乃至3のいずれかに記載の指紋画像の回転角度算出装置の各種処理手段としてコンピュータを動作させる。
【0013】
また、請求項7に係る発明の指紋画像回転プログラムでは、請求項4に記載の指紋画像回転装置の各種処理手段としてコンピュータを動作させる。
【0014】
また、請求項8に係る発明の指紋照合プログラムでは、請求項5に記載の指紋照合装置の各種処理手段としてコンピュータを動作させる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明の指紋画像の回転角度算出装置では、指紋画像データ入力手段は、人の指紋が写されている画像である指紋画像のデータである指紋画像データを入力し、第一近似直線特定手段は、指紋画像データ入力手段から入力された指紋画像データの示す指紋画像、又は、指紋画像を構成する各画素の濃淡を示す階調値、若しくは、各画素の階調値と周囲の画素の階調値とから得られる差分情報に基づいて作成された抽出用画像において、指紋画像又は抽出用画像を二次元平面とみなし、二次元平面上において、指紋が映し出されているとされる画素に対応した座標上の点の集合を近似直線に近似することができる。そして、回転角度算出手段は、第一近似直線特定手段により近似された近似直線である第一近似直線と、指紋画像に対して予め定められた直線である基準線との傾きの差を、基準線に対して指紋が存在する領域である指紋領域が傾いている角度である回転角度として算出することができる。指紋画像、階調値に基づいて作成された抽出用画像、又は、差分情報に基づいて作成された抽出用画像において指紋が映し出されているとされる画素は、その大部分が指紋領域に該当するので、第一近似直線は指紋領域を近似した直線であると捉えることができる。したがって、処理が複雑でなく、高速なCPUや専用LSIを用いることなく、回転角度を算出することができる。さらに、指紋画像として多値の画像を用いれば、薄く明瞭でない指紋画像や濃く明瞭な指紋画像など、様々な状態の指紋画像からでも回転角度を算出することができる。つまり、ユーザの手の乾燥具合による指紋画像の濃淡への影響、指紋画像を写した装置の設定や出力値のばらつきによる指紋画像の濃淡への影響を受けることがない。よって、様々な人物の指紋、様々な指紋読取装置で読み取られた指紋画像が混在していても対応することができる。
【0016】
また、請求項2に係る発明の指紋画像の回転角度算出装置では、請求項1に記載の発明の効果に加えて、第一近似直線特定手段は、二次元平面上の画素に対応した座標に、指紋領域を構成する画素における階調値に応じた数の点を配置して、配置された点の集合が近似される近似直線を第一近似直線とすることができる。したがって、指紋画像の濃淡を第一近似直線に反映させることができる。
【0017】
また、請求項3に係る発明の指紋画像の回転角度算出装置では、請求項1又は2に記載の発明の効果に加えて、境界画素集合抽出手段は、指紋領域抽出手段により抽出された指紋領域と指紋画像における指紋領域以外の領域との境界線となる画素を境界画素として、境界画素の集合である境界画素集合を抽出し、有効画素抽出手段は、指紋画像内の所定の領域である評価領域内に存在する境界画素を有効な画素である有効画素として抽出し、第二近似直線特定手段は、二次元平面上において、有効画素抽出手段により抽出された有効画素に対応した座標上の点の集合を近似直線に近似することができる。そして、補正手段は、第二近似直線特定手段により近似された近似直線である第二近似直線の傾きを用いて、回転角度算出手段により算出された回転角度を補正することができる。したがって、指紋領域から算出される第一近似直線と、指紋領域の境界線から算出される第二近似直線とに基づいて回転角度を算出することができるので、より精度の高い回転角度を得ることができる。
【0018】
また、請求項4に係る発明の指紋画像回転装置では、指紋画像回転手段は、請求項1乃至3のいずれかに記載の指紋画像の回転角度算出装置の回転角度算出手段により算出された回転角度に基づいて、指紋画像入力手段から入力された指紋画像を回転させることができる。したがって、指紋画像の階調値を用いて抽出された指紋領域の近似直線を用いて算出された回転角度に基づいて、指紋画像を回転させることができる。
【0019】
また、請求項5に係る発明の指紋照合装置では、登録指紋画像記憶手段は、登録用の指紋画像を記憶し、照合手段は、請求項4に記載の指紋画像回転装置の指紋画像回転手段により回転された結果である回転指紋画像と登録指紋画像記憶手段に記憶されている登録指紋画像とを照合することができる。したがって、指紋画像の階調値を用いて抽出された指紋領域の近似直線を用いて算出された回転角度に基づいて回転させた指紋画像を照合することができるので、様々な人物の指紋、様々な指紋読取装置で読み取られた指紋画像が混在していても照合することができる。
【0020】
また、請求項6に係る発明の指紋画像の回転角度算出プログラムでは、請求項1乃至3のいずれかに記載の指紋画像の回転角度算出装置の各種処理手段としてコンピュータを動作させることができる。したがって、請求項1乃至3のいずれかに記載の効果と同様の効果を得ることができる。
【0021】
また、請求項7に係る発明の指紋画像回転プログラムでは、請求項4に記載の指紋画像回転装置の各種処理手段としてコンピュータを動作させることができる。したがって、請求項4に記載の効果と同様の効果を得ることができる。
【0022】
また、請求項8に係る発明の指紋照合プログラムでは、請求項5に記載の指紋照合装置の各種処理手段としてコンピュータを動作させることができる。したがって、請求項5に記載の効果と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。まず、本実施の形態の指紋画像の回転角度の算出方法について、概略を説明する。図1は、指紋画像の回転角度の算出方法についての説明図である。図1に示すように、入力指紋画像100は、指紋の読み取られている領域である指紋領域102と、指紋の読み取られていない領域である背景領域101とで形成されている。入力指紋画像100は、指紋入力装置25(図2参照)により読み取られたり、すでに読み取られている指紋画像が入力されたりした画像である。この指紋領域102が「本来指紋が読み取られるべき向き」に対してどれくらい傾いて読み取られているのかを検出し、傾いているだけ入力指紋画像100を回転させて照合画像500を作成する。そして、予め登録されている登録指紋画像と比較して、入力指紋画像100の識別が行われる。入力指紋画像100における「本来指紋が読み取られるべき向き」は、基準線199に沿った向きである。つまり、入力指紋画像100は、基準線199よりも少し左に傾いて指が置かれた状態で指紋が読み取られており、指紋領域102が左に傾いている。なお、登録指紋画像は基準線199に沿った状態の指紋画像が用いられている。また、入力指紋画像100は0〜255の階調値で示される白黒画像である。
【0024】
本実施の形態の指紋画像の回転角度算出装置では、まず、入力指紋画像100から塗りつぶし画像200を作成する。この塗りつぶし画像200は、入力指紋画像100の1つの画素に対し、その周囲の画素の濃さ(階調値)を反映させた値が求められ、その値により形成される画像である。この処理により、塗りつぶし画像200は入力指紋画像100よりも指紋領域202と背景領域201との境界がより明確となる。
【0025】
そして、説明図220に示すように、塗りつぶし画像200の指紋領域202を近似した直線である領域近似直線221が決定され、この領域近似直線221に基づいて指紋領域202を基準線199に沿った向きに回転させるための回転角度θが算出される。
【0026】
さらに、領域近似直線221に基づいて決定されたθの補正が行われる場合がある。具体的には、境界線画像400に示すように、塗りつぶし画像200において、指紋領域202と背景領域201との境界線401,402が抽出される。そして、説明用境界線画像410に示すように、この境界線401,402の一部(後述する評価領域CDEF内を通る部分)を近似した直線である境界線近似直線411,412がそれぞれ求められる。そして、この2本の境界線近似直線411,412の信頼性等が判断され、所定の条件を満たす場合には、境界線近似直線411,412から算出される角度、境界線近似直線411から算出される角度、及び、境界線近似直線412から算出される角度のいずれかが、満たした条件に応じて、補正のための角度として使用される。
【0027】
そして、入力指紋画像100が回転角度θだけ回転され、照合画像500が作成される。つまり、入力指紋画像100を回転角度θだけ回転させることにより、基準線199と直線429,221とが重なり、本来指紋が読み取られるべき向きに指紋領域102が存在することとなる。
【0028】
次に、図2乃至図6を参照して、指紋画像の回転角度算出装置、指紋画像回転装置、指紋照合装置として機能するコンピュータ10の構成について説明する。図2は、コンピュータ10の概略構成を示すブロック図であり、図3は、コンピュータ10のハードディスク装置(HDD)40の構成を示す模式図であり、図4は、RAM32の構成を示す模式図である。図5は、第一直線関係記憶エリア3206に設けられている記憶エリアの構成を示す模式図であり、図6は、第二直線関係記憶エリア3207に設けられている記憶エリアの構成を示す模式図である。
【0029】
図2に示すように、コンピュータ10は、周知のパーソナルコンピュータの一般的な構成からなり、文字や各種の操作指令などを入力するためのキーボード21やマウス20、入力された結果等を表示するモニタ24を備えている。また、コンピュータ10には、CD−ROM23の内容を読み取るCD−ROMドライブ37が搭載されている。
【0030】
また、コンピュータ10は、中央演算処理装置としてのCPU30を中心にバスにより相互に接続されたROM31、RAM32、表示画像メモリ33、マウスインターフェース34、キーボードインターフェース35、ビデオコントローラ38、及びUSBインターフェース45を備えている。そして、マウスインターフェース34にはマウス20が接続され、キーボードインターフェース35にはキーボード21が接続され、ビデオコントローラ38にはモニタ24が接続されている。
【0031】
さらに、USBインターフェース45には、指紋入力装置25が接続されている。指紋入力装置25は、LEDからなる光源11と、指紋を撮像する撮像素子であるCCDカメラ12と、指が撮像位置にあることを検出するスイッチ13と、これらを制御するコントローラ15とから構成されている。指紋入力装置25では、スイッチ13の入力がコントローラ15に検出されると、CCDカメラ12により指の画像が撮像される。そして、撮像された画像(指紋画像)は、コントローラ15を経由して出力され、コンピュータ10のUSBインターフェース45から入力されてRAM32の入力指紋画像記憶エリア3201に記憶される。
【0032】
ROM31は、BIOS等の内蔵されている各種プログラム等を記憶する読み出し専用のメモリである。RAM32は、実行中のプログラムを一時的に記憶したり、各種データ等を記憶したりする読み出し・書き込み可能なメモリである。表示画像メモリ33は、モニタ24に表示する画像の画像データを記憶するメモリである。マウスインターフェース34は、マウス20とのデータ等のやりとりを司るインターフェースである。キーボードインターフェース35は、キーボード21からのキー入力を司るインターフェースである。ビデオコントローラ38は、表示画像メモリ33に記憶される表示画像データに基づいてモニタ24への画像の表示を制御するコントローラである。USBインターフェース45は、USBポート(図示せず)に接続された周辺機器を制御するインターフェースである。
【0033】
次に、図3を参照して、HDD40に設けられている記憶エリアについて説明する。図3に示すように、HDD40にはオペレーティングシステム記憶エリア41、指紋照合プログラム記憶エリア42、登録指紋画像記憶エリア43等が設けられている。なお、HDD40には、これらの他にも種々の記憶エリアが設けられている。オペレーティングシステム記憶エリア41には、コンピュータ10を動作させるためのオペレーティングシステムが記憶されている。指紋照合プログラム記憶エリア42には、指紋入力装置25により入力された指紋画像(入力指紋画像)と、予め登録指紋画像記憶エリア43に記憶されている登録済みの指紋画像とを照合するプログラムが記憶されている。なお、指紋照合プログラムでは、入力指紋画像の傾きを算出する指紋画像の回転角度算出プログラム、入力指紋画像の傾きを補正する指紋画像回転プログラムが組み込まれている。
【0034】
なお、本実施形態において、指紋照合プログラムはHDD40の指紋照合プログラム記憶エリア42に記憶されているが、ROM31に記憶されていてもよいし、CD−ROM23に記憶され、CD−ROMドライブ37から読み込まれて実行されるように構成してもよい。さらに、コンピュータ10をネットワークに接続し、ネットワーク上のサーバから指紋照合プログラムをダウンロードして実行するようにしてもよい。
【0035】
次に、図4を参照して、RAM32に設けられている記憶エリアについて説明する。図4に示すように、RAM32には、入力指紋画像記憶エリア3201、塗りつぶし画像記憶エリア3202、平均画素値記憶エリア3203、第一境界線画素集合記憶エリア3204、第二境界線画素集合記憶エリア3205、第一直線関係記憶エリア3206、第二直線関係記憶エリア3207、二直線ずれ記憶エリア3208、領域近似直線関係記憶エリア3209、回転角度記憶エリア3210、照合画像記憶エリア3211等が設けられている。なお、RAM32には、これらの記憶エリア以外にも種々の記憶エリアが設けられている。
【0036】
入力指紋画像記憶エリア3201には、指紋入力装置25により入力された入力指紋画像100を示す情報が記憶される。入力指紋画像100は、128画素×128画素の画素集合からなる白黒の画像であり、入力指紋画像記憶エリア3201は、128×128の二次元配列Fを備えており、各配列には各画素の色を示す階調値が記憶される。そして、塗りつぶし画像記憶エリア3202には、入力指紋画像を加工した塗りつぶし画像200を示す情報が記憶される。この塗りつぶし画像記憶エリア3202も128×128の二次元配列Mを備えており、各配列には入力指紋画像を加工して、入力指紋画像100をぼかしたような画像を示す階調値が各配列に記憶される。
【0037】
そして、平均画素値記憶エリア3203には、塗りつぶし画像200での指紋領域202と背景領域201との境界線を求めるための平均画素値が記憶される。この平均画素値記憶エリア3203は128×128の二次元配列Aで構成され、各配列には塗りつぶし画像200に基づいて算出された平均画素値が各配列に記憶される。そして、この平均画素値記憶エリア3203に記憶されている平均画素値に基づいて、指紋領域と背景領域との2本の境界線401,402が決定され、第一境界線画素集合記憶エリア3204及び第二境界線画素集合記憶エリア3205にそれぞれ、その境界線を示す情報が記憶される。
【0038】
なお、上記配列F,M,Aのj行i列の要素をFi,j,Mi,j,Ai,jと表すこととする。なお、上記配列F,M,Aにおいて、列方向(iの値が変わる方向)が図1における紙面左右方向を示し、行方向(jの値が変わる方向)が紙面上下方向を示すものとする。例えば、図1における入力指紋画像100の左上の画素を示す情報がF1,1に記憶され、左下の画素を示す情報がF1,128に記憶され、右上の画素を示す情報がF128,1に記憶され、右下の画素を示す情報がF128,128に記憶される。配列M,Aについても同様の位置関係である。
【0039】
第一境界線画素集合記憶エリア3204は、1×128の一次元配列B1とされている。一次元配列B1のj番目の要素をB1と表すこととする。塗りつぶし画像200のj行目のラインにおいて、境界線画素とされる画素を示すiの値がB1に記憶される。つまり、M12,34が境界線画素とされる場合にはB134に「12」が記憶される。なお、境界線画素とされる画素の決定には二次元配列Aが用いられる。この第一境界線画素集合記憶エリア3204に記憶される境界線を「第一境界線」と呼ぶこととする。
【0040】
第二境界線画素集合記憶エリア3205も同様に1×128の一次元配列B2とされており、一次元配列B2のj番目の要素をB2と表すこととする。この第二境界線画素集合記憶エリア3205に記憶される境界線を「第二境界線」と呼ぶこととする。なお、図1に示した境界線画像400は第一境界線画素集合記憶エリア3204に記憶されている第一境界線401及び第二境界線画素集合記憶エリア3205に記憶されている第二境界線402の両方を1つの画像として示したものである。
【0041】
そして、第一直線関係記憶エリア3206には、第一境界線に関する種々の情報が記憶され(図5参照)、第二直線関係記憶エリア3207には、第二境界線に関する種々の情報が記憶される(図6参照)。そして、二直線ずれ記憶エリア3208には、第一境界線と第二境界線との位置のずれを示す値が記憶される。そして、領域近似直線関係記憶エリア3209には、塗りつぶし画像200の指紋領域202を近似した直線である領域近似直線221に関する種々の情報が記憶される。そして、回転角度記憶エリア3210には、入力指紋画像100を回転させる角度(回転角度)が記憶され、照合画像記憶エリア3211には、入力指紋画像100を回転させて、本来あるべき向きに修正された画像が照合画像500として記憶される。
【0042】
次に、図5及び図6を参照して、第一直線関係記憶エリア3206及び第二直線関係記憶エリア3207について説明する。図5に示すように、第一直線関係記憶エリア3206には、第一計算値記憶エリア261,第一傾き記憶エリア262,第一y切片記憶エリア263,第一投影長さ記憶エリア264,第一直線フラグ記憶エリア265が設けられている。
【0043】
第一計算値記憶エリア261には、第一境界線を近似した直線(以下、「第一境界線近似直線」という)を求める際に算出される種々の値が記憶される。そして、第一傾き記憶エリア262には第一境界線近似直線411の傾きを示す値αB1が記憶され、第一y切片記憶エリア263には第一境界線近似直線411のy切片を示す値βB1が記憶される。そして、第一投影長さ記憶エリア264には、評価領域CDEF(図11参照)内に存在する第一境界線(線分431)をx軸上に投影した長さlB1xが記憶される。そして、第一直線フラグ記憶エリア265には、第一境界線近似直線が信頼できるか否かの判定結果を示す第一直線フラグが記憶される。
【0044】
また、図6に示すように、第二直線関係記憶エリア3207には、第二計算値記憶エリア271,第二傾き記憶エリア272,第二y切片記憶エリア273,第二投影長さ記憶エリア274,第二直線フラグ記憶エリア275が設けられている。それぞれに記憶されている情報は、第一直線の場合と同様の内容で、第二境界線に関する情報が記憶されている。
【0045】
次に、図7のフローチャートを参照して、指紋画像の回転角度算出装置、指紋画像回転装置、指紋照合装置として機能するコンピュータ10における指紋照合の処理の動作について説明する。図7は、コンピュータ10における指紋照合の処理のメイン処理のフローチャートである。
【0046】
図7に示すように、まず、指紋入力装置25により指紋画像が入力され、入力指紋画像100(図1参照)として、入力指紋画像記憶エリア3201に記憶される(S1)。なお、入力される指紋画像は指紋入力装置25により撮像された画像でなく、すでに撮像済みの画像をHDD40やCD−ROM23から読み出してもよいことはいうまでもない。また、コンピュータ10がネットワークに接続しており、他のコンピュータから指紋画像を読み出すことができれば、それにより指紋画像を入力してもよい。そして、入力指紋画像100から塗りつぶし画像200が作成される(S2)。
【0047】
ここで、この塗りつぶし画像200の作成について説明する。塗りつぶし画像200の各画素の階調値は、数1に示す式により決定される。数1のFi,jは入力指紋画像記憶エリア3201の二次元配列Fの要素を示しており、Mi,jは塗りつぶし画像記憶エリア3202の二次元配列Mの要素を示している。そして、m,nは定数であり、k、lは変数である。つまり、Fi,jの画素に対応するMi,jの階調値を決定する際には、Fi,jから行方向(i方向)にm個分、列方向(j方向)にn個分の各配列要素が参照される。そして、各々の配列要素に対して、隣の配列要素との差が求められ、求められた差の和がMi,jの値(階調値)とされる。なお、この値が255以上となる場合には、値は255とされる。また、定数m,nは例えば、「m=2,n=3」であり、Fi,jの画素からどれくらいの距離(数)の画素までを反映させてMi,jを算出するかを示す値となる。
【数1】

【0048】
このようにして、入力指紋画像100から塗りつぶし画像200が作成される(S2)。続いて、図7のフローチャートに示すように、塗りつぶし画像200の指紋領域202を近似する領域近似直線221の傾きに基づいて決定された、入力指紋画像100を回転させる角度(回転角度θ)が算出される(S3)。
【0049】
本実施の形態では最小二乗法により回帰直線が算出され、この回帰直線が領域近似直線221とされる。ここでは、数2〜数7に示す式が用いられる。数2〜数7に示す式は、塗りつぶし画像配列Mを対象とし、配列Mの要素Mi,jの値が「3」であればi−j座標系において(i,j)の座標に3つの点が存在するものと捉えて、i−j座標系に配置された複数の点の回帰直線を求めるための数式である。つまり、塗りつぶし画像200において色の濃い画素は、階調値が高いので点が多数存在することとなり、色の薄い画素は階調値が低いので点が少なくなる。よって、指紋領域202には多数の点が配置され、背景領域201にはほぼ点が配置されない。これにより、配列Mを対象とした回帰直線を、指紋領域202を近似する直線として捉えることができる。
【0050】
数2に示す式は、変数iの平均Uを求めるための式であり、数3に示す式は、変数jの平均Uを求めるための式であり、数4に示す式は、変数jの分散σを求めるための式であり、数5に示す式は変数i,jの共分散σi,jを求めるための式である。そして、数6に示す式は、変数iの変数jへの回帰直線を示す式であり、数7に示す式は、回帰直線(領域近似直線221)の傾きに基づいて決定される、入力指紋画像100を本来の向きとするために回転させる角度(回転角度θ)を求める式である。
【数2】

【数3】

【数4】

【数5】

【数6】

【数7】

【0051】
数2〜数5に示す式により算出された変数iの平均U,変数jの平均U,変数jの分散σ,変数i,jの共分散σi,jは、RAM32の領域近似直線関係記憶エリア3209の領域計算値記憶エリア291に記憶される。そして、数7に示す式により算出された回転角度θは、回転角度記憶エリア3210に記憶される。数6及び数7に示すように、回転角度θは傾きのアークタンジェントで与えられる。
【0052】
以上のようにして、塗りつぶし画像200の指紋領域202を近似する領域近似直線221に基づいて回転角度θが算出されると(S3)、境界線決定処理が行われ、境界線となる画素が決定され(S4)、境界線近似直線が決定される(S5)。このS4,S5は、後述する補正処理(S6)において、回転角度θを補正する際に使用される境界線近似直線411,412を算出するための処理である。
【0053】
ここで、図8の模式図及び図9のフローチャートを参照して、境界線の決定方法について説明する。図8は、境界線の決定方法を示す模式図であり、図9は、境界線決定処理のフローチャートである。
【0054】
図8に示すように、塗りつぶし画像200の向かい合った二辺208,209から塗りつぶし画像200の内側に向かって1行ごとに画素が探索される。そして、その画素が指紋領域202に属する画素であるか、背景領域201に属する画素であるかの判断が行われる。そして、初めて指紋領域202の画素であると判断された画素が境界線画素とされる。なお、向かい合った二辺208,209は、基準線199と平行な二辺が用いられる。
【0055】
具体的には、図9のフローチャートに示すように、まず、塗りつぶし画像200の各画素について数8に示す式により平均画素値が算出される(S21)。塗りつぶし画像記憶エリア3202に記憶されている二次元配列Mi,jに対応した平均画素値は平均画素値記憶エリア3203に記憶されている二次元配列Ai,jに記憶される。数8におけるMh,vは塗りつぶし画像を示す二次元配列の要素を示しており、Ai,jは平均画素値を示す二次元配列の要素を示している。そして、w,h,vは変数である。
【数8】

【0056】
例えば、「w=2」でF10,15を注目画素とした場合、F8,13〜F12,13、F8,14〜F12,14、F8,15〜F12,15、F8,16〜F12,16、F8,17〜F12,17の25個の配列要素の和が求められ、1/(2×2+1)=1/25を掛けた値が平均画素値Ai,jとして算出される。
【0057】
このようにして平均画素値配列Aの各配列要素Ai,jの値が算出されると(S21)、行ごとに配列要素の値が閾値THと比較され、閾値THよりも大きければ、その平均画素値配列Aの要素に対応した画素は指紋領域202内の画素であると判断され、最初に指紋領域202内の画素であると判断された画素が境界線画素であるとされる(S22〜S35)。ここでは、閾値THは例えば「100」とする。
【0058】
具体的には、変数i,jに初期値の「0」が記憶され(S22)、第一境界線画素集合記憶エリア3204の第一境界線画素集合配列B1及び第二境界線画素集合記憶エリア3205の第二境界線画素集合配列B2のすべての要素に「0」が記憶されて初期化される(S23)。そして、変数jに「1」が加算されて「1」とされ(S24)、変数jの値が「128」よりも大きいか否かの判断が行われる(S25)。変数jの値は「1」であり「128」よりも大きくないので(S25:NO)、変数iに初期値の「129」が与えられる(S26)。これにより、図8における辺208側からの探索が開始される。
【0059】
そして、変数iから「1」減算され「128」とされる(S27)。次いで、変数iが「0」よりも小さいか否かの判断が行われ(S28)、変数iの値は「128」であり「0」よりも小さくないので(S28:NO)、平均画素値配列Aの要素Ai,j、つまりA128,1の値が閾値THよりも大きいか否かの判断が行われる(S29)。
【0060】
閾値THよりも大きくなければ(S29:NO)、そのi=128,j=1の画素は塗りつぶし画像200において指紋領域202内の画素でないと判断され、次の画素の判断を行うためにS27へ戻る。そこで、変数iの値が「1」減算されて「127」とされる(S27)。そして、「0」よりも小さくないので(S28:NO)、平均画素値配列Aの要素Ai,j、つまりA127,1の値が閾値THよりも大きいか否かの判断が行われる(S29)。このようにして、S27〜S29の処理が繰り返し行われ、平均画素値配列Aの要素Ai,jの値が閾値THよりも大きくなれば(S28:YES)、Ai,jに対応する塗りつぶし画像200の画素が指紋領域202内の画素であると判断されて第一境界線画素集合配列B1の要素B1に変数iの示す値が記憶され境界線画素とされる(S30)。
【0061】
そして、変数iに初期値の「0」が与えられる(S31)。これにより、図8における辺209側からの探索が開始される。そして、変数iに「1」が加算されて「1」とされ、変数iの値が「128」よりも大きいか否かの判断が行われるが(S33)、「128」よりも大きくないので(S33:NO)、A1,1の値が参照され、閾値TH=100と比較される(S34)。そして、A1,1の値が「100」よりも大きくなければ(S34:NO)、そのi=1,j=1の画素は塗りつぶし画像200において指紋領域202内の画素でないと判断され、次の画素の判断を行うためにS32へ戻る。そこで、変数iの値が「1」加算されて「2」とされる(S32)。そして、「128」よりも大きくないので(S33:NO)、平均画素値配列Aの要素A2,1の値が閾値THよりも大きいか否かの判断が行われる(S34)。このようにして、S31〜S34の処理が繰り返し行われ、平均画素値配列Aの要素Ai,jの値が閾値THよりも大きくなれば(S34:YES)、Ai,jに対応する塗りつぶし画像200の画素が指紋領域202内の画素であると判断されて第二境界線画素集合配列B2の要素B2に変数iの示す値が記憶され境界線画素とされる(S35)。
【0062】
そして、次の行の境界線画素を決定するために、S24へ戻り、行を示す変数jに「1」が加算され「2」とされる(S24)。そして、2行目の画素の集合に対して、S24〜S35の処理が行われて、第一境界線となる画素、第二境界線となる画素がそれぞれ決定される。そして、S23〜S35の処理が繰り返し行われて、128行すべての行に対して、第一境界線となる画素、第二境界線となる画素がそれぞれ決定される。
【0063】
なお、S25、S33で「128」と比較しており、S26において「129」を初期値としているのは、入力指紋画像100及び塗りつぶし画像200が128×128の画素で構成されており、入力指紋画像配列F,塗りつぶし画像配列M及び平均画素値配列Aが128×128の二次元配列であるためである。したがって、入力指紋画像を構成する画素が128×128でない場合には、この値でなく画素構成に応じた値となることはいうまでもない。
【0064】
また、平均画素値配列Aが閾値THより小さい配列要素のみで構成されている場合には、変数iの値が「0」より小さくなったり(S28:YES)、変数iの値が「128」より大きくなったりする(S33:YES)。この場合には、その行の境界線画素は存在しないこととなる。
【0065】
以上のようにして、境界線決定処理において第一境界線401(図1参照)を示す情報が第一境界線画素集合配列B1に記憶され、第二境界線402(図1参照)を示す情報が第二境界線画素集合配列B2に記憶される。
【0066】
そして、図7のフローチャートに示すように、境界線決定処理が行われると(S4)、境界線近似直線の算出処理が行われる(S5)。ここでは、第一境界線401を構成する境界線画素のうち、後述する評価領域CDEF(図11参照)内に存在する有効画素が抽出され、この有効画素を近似する第一境界線近似直線411(図13参照)が決定される。さらに同様に、第二境界線402を構成する境界線画素のうち、評価領域CDEF内に存在する有効画素が抽出され、この有効画素を近似する第二境界線近似直線412(図13参照)が決定される。
【0067】
ここで、図10乃至図13を参照して、境界線近似直線の決定について説明する。図10は、第一境界線401及び第二境界線402をx−y座標系に投射したグラフであり、図11は、評価領域をx−y座標系に示したグラフであり、図12は、第一有効画素群421、第二有効画素群422をx−y座標系に示したグラフであり、図13は、第一境界線近似直線411、第二境界線近似直線412をx−y座標系に示したグラフである。
【0068】
第一境界線401及び第二境界線402を、i→y,j→xとしてx−y座標系に投射すると、図10に示す図になる。これは、図1に示した境界線画像400を左に90度回転させた図である。i→y,j→xとしているので、第一境界線画素集合配列B1において、j=20の要素B120に「98」という値が記憶されているとすると、(x,y)=(20,98)に点が打たれる。また、第一境界線画素集合配列B1の要素B1において、j=10の要素B110に「6」という値が記憶されているとすると、(x,y)=(10,6)に点が打たれる。なお、図10において、「×」印で示されているのが境界線画素を示す座標であり、図10における上側の点列が第一境界線401を示しており、下側の点列が第二境界線402を示している。
【0069】
次に、図11を参照して、境界線近似直線を決定する際に用いる評価領域CDEFについて説明する。評価領域CDEFは、図11に示す4本の直線lineC,lineD,lineE,lineFに囲まれた長方形の領域である。直線lineCは「y=122」、直線lineDは「y=5」,直線lineEは「x=15」、直線lineFは「x=112」である。すなわち、「15≦x≦112かつ5≦y≦122」である座標が評価領域CDEF内の座標であるとされる。そして、図12に示すように、第一境界線401では評価領域CDEF内に存在する点に対応した画素が第一有効画素群421とされ、第二境界線402では評価領域CDEF内に存在する点に対応した画素が第二有効画素群422とされる。そして、この第一有効画素群421が用いられて、図13に示す第一境界線近似直線411が作成され、第二有効画素群422が用いられて、図13に示す第二境界線近似直線412が作成される。
【0070】
具体的には、境界線近似直線の算出には、数9〜数14に示す式が用いられる。数9〜数14に示す式は、1次元配列Bが示す座標(x,B)に点を1つ配置して、配置された点の回帰直線を求めるための数式である。なお、xは1≦x≦128である整数であり、nは評価領域CDEF内に存在する座標の数、すなわち配列Bにおいて値が「0」でない要素の数である。
【0071】
数9に示す式は、x座標の平均avexを求めるための式であり、評価領域CDEF内に存在する座標(x,B)に対してx座標の平均avexが求められる。そして、数10に示す式は、y座標の平均aveyを求めるための式であり、評価領域CDEF内に存在する座標(x,B)に対してy座標である配列Bの要素Bの平均aveBが求められる。そして、数11に示す式は、x座標の分散σを求めるための式であり、評価領域CDEF内に存在する座標(x,B)に対して、x座標の平均avexを用いてx座標の分散σが求められる。そして、数12に示す式は、x座標とy座標の共分散σxBを求めるための式であり、評価領域CDEF内に存在する座標(x,B)に対して、x座標の平均avex及び配列Bの要素Bの平均aveBを用いてx座標とy座標の共分散σxBが求められる。そして、数13に示す式は、回帰直線の傾きαを求めるための式であり、x座標の分散σ及びx座標とy座標の共分散σxBを用いて、回帰直線の傾きαが求められる。数14に示す式は、回帰直線のy切片βを求めるための式であり、回帰直線の傾きα、x座標の平均avex及び配列Bの要素Bの平均aveBを用いて回帰直線のy切片βが求められる。
【数9】

【数10】

【数11】

【数12】

【数13】

【数14】

【0072】
そして、第一有効画素群421に対応する第一境界線近似直線411を算出する場合には、一次元配列Bとして第一境界線画素集合配列B1が用いられる。第一境界線近似直線411を表す式を「y=αB1x+βB1」と表すこととすると、数9〜数14に示す配列Bに第一境界線画素集合配列B1を代入して、回帰直線の傾きαがαB1として算出され、y切片βがβB1として算出される。この回帰直線が第一境界線近似直線411である。なお、数9〜数12に示す式で算出された値は第一直線関係記憶エリア3206の第一計算値記憶エリア261に記憶され、数13に示す式で算出された回帰直線の傾きは第一境界線近似直線411の傾きとして第一傾き記憶エリア262に記憶され、数14に示す式で算出された回帰直線のy切片は第一境界線近似直線411のy切片として第一y切片記憶エリア263に記憶される。
【0073】
さらに、第二有効画素群422に対する第二境界線近似直線412を算出する場合には、一次元配列Bとして第二境界線画素集合配列B2が用いられる。そして、第二境界線近似直線412を表す式を「y=αB2x+βB2」と表すこととすると、一次元配列Bに第二境界線画素集合配列B2を代入して、回帰直線の傾きαがαB2として算出され、y切片βがβB2として算出される。この回帰直線が第二境界線近似直線412である。なお、数9〜数12に示す式で算出された値は第二直線関係記憶エリア3207の第二計算値記憶エリア271に記憶される。数13に示す式で算出された回帰直線の傾きは第二境界線近似直線412の傾きとして第二傾き記憶エリア272に記憶され、数14に示す式で算出された回帰直線のy切片は第二境界線近似直線412のy切片として第二y切片記憶エリア273に記憶される。
【0074】
以上のようにして、最小二乗法により各境界線を近似する直線が決定されたら(図7、S5)、条件判定処理が行われる(S6)。この条件判定処理は、S5で算出された境界線近似直線411,412の信頼性を判定する処理である。本実施の形態では、後述する3つの判断条件をすべて満たしている場合に、その境界線近似直線を「信頼できる」と判断する。
【0075】
ここで、図14を参照して、3つの信頼性の判断条件について説明する。図14は、第一境界線近似直線411、第二境界線近似直線412をx−y座標系に示したグラフであり、評価領域CDEFをなす4本の直線との交点P1B1,P2B1,P1B2,P2B2を示している。
【0076】
ここで、第一の判断条件〜第三の判断条件について説明する。ここでは第一境界線近似直線411について説明する。また、直線lineC,直線lineD,直線lineE,直線lineFを表す式は、前述したように、直線lineCは「y=122」、直線lineDは「y=5」,直線lineEは「x=15」、直線lineFは「x=112」であるが、ここでは、一般的に直線lineCは「y=Y」、直線lineDは「y=Y」,直線lineEは「x=X」、直線lineFは「x=X」と表すこととする。つまり、Y=122、Y=5、X=112、X=15である。
【0077】
まず、第一の判断条件は、「境界線近似直線が評価領域CDEF内で直線lineC,直線lineD,直線lineE,直線lineFのいずれか2本と交差する」というものである。つまり、評価領域CDEF内を第一境界線近似直線411が通っている場合に第一の判断条件を満たす。4本の直線lineC,直線lineD,直線lineE,直線lineFと第一境界線近似直線411との交点の座標をそれぞれ算出し、交点の座標(x、y)が「X≦x≦X」かつ「Y≦y≦Y」を満たすものが2つあればよい。
【0078】
図14に示す例では、第一境界線近似直線411は、評価領域CDEFをなす直線lineE,lineCとそれぞれ点P1B1,P2B1で交わっている。よって、図14に示す第一境界線近似直線411の例は第一の判断条件を満たすとされる。なお、交点P1B1,P2B1の座標をそれぞれP1B1(x1B1,y1B1),P2B1(x2B1,y2B1)とする。
【0079】
次に、第二の判断条件について説明する。第二の判断条件では、第一境界線近似直線411が評価領域CDEFで切り取られた線分である第一線分431をx軸上に投影した長さ(以下、「第一投影長さ」という)lB1xが用いられる。第一投影長さlB1xは数15に示す式で算出される。数16に示す式が第二の判断条件であり、「第一投影長さlB1xが閾値THよりも大きい」場合に第二の判断条件を満たすと判断される。これは、第一投影長さlB1xが短い場合には、評価領域CDEF内を通過している第一境界線近似直線411が短すぎ、第一境界線近似直線411を使用するには信頼性が低いとされる。なお、本実施の形態では「閾値TH=10」とする。
【数15】

【数16】

【0080】
次に、第三の判断条件について説明する。第三の判断条件では、「第一境界線近似直線411と直線lineDとの交点のx座標がX<x<Xでない」というものである。よって、数17に示す式又は数18に示す式を満たす場合には第三の判断条件を満たすと判断される。例えば、第一境界線近似直線411の傾きαB1が極端に大きかったり、第一有効画素群421の一部の画素のy座標が「5」に近い値であったりする場合である。指紋領域202の第一境界線近似直線411側の余白が大きすぎる場合に第三の判断条件を満たさないと判断される。
【数17】

【数18】

【0081】
次に、第二境界線近似直線412について説明する。まず、第一の判断条件は、第一境界線近似直線411と同様に、「境界線近似直線が評価領域CDEF内で直線lineC,直線lineD,直線lineE,直線lineFのいずれか2本と交差する」というものである。図14に示す例では、第二境界線近似直線412は、評価領域CDEFをなす直線lineD,lineFとそれぞれ点P1B2,P2B2で交わっている。よって、図14に示す例は第一の判断条件を満たすとされる。なお、交点P1B2,P2B2の座標をそれぞれP1B2(x1B2,y1B2),P2B2(x2B2,y2B2)とする。
【0082】
次に、第二の判断条件について説明する。第二の判断条件では、第二境界線近似直線412が評価領域CDEFで切り取られた線分である第二線分432をx軸上に投影した長さ(以下、「第二投影長さ」という)lB2xが用いられる。第二投影長さlB2xは数19に示す式で算出される。数20に示す式が第二の判断条件であり、「第二投影長さlB2xが閾値THよりも大きい」場合に第二の判断条件を満たすと判断される。これは、第二投影長さlB1xが短い場合には、評価領域CDEF内を通過している第一境界線近似直線411が短すぎ、第二境界線近似直線412を使用するには信頼性が低いとされる。なお、本実施の形態では「閾値TH=10」とする。
【数19】

【数20】

【0083】
次に、第三の判断条件について説明する。第三の判断条件では、「第二境界線近似直線412と直線lineCとの交点のx座標がX<x<Xでない」というものである。よって、数21に示す式又は数22に示す式を満たす場合には第三の判断条件を満たすと判断される。例えば、第二境界線近似直線412の傾きαB2が極端に大きかったり、第二有効画素群422の一部の画素のy座標が「122」に近い値であったりする場合である。指紋領域202の第一境界線近似直線411側の余白が大きすぎる場合に第三の判断条件を満たさないと判断される。
【数21】

【数22】

【0084】
以上のように、第一境界線近似直線411及び第二境界線近似直線412に対する第一〜第三の判断条件が定められている。ここで、図15のフローチャートを参照して、メイン処理のS6における条件判断処理について説明する。図15は、条件判断処理のフローチャートである。
【0085】
図15に示すように、まず、第一境界線近似直線411に対して第一の判断条件を満たすか否かの判断が行われる(S41)。第一の判断条件では、上述したように、第一境界線近似直線411が評価領域CDEF内で直線lineC,直線lineD,直線lineE,直線lineFのいずれか2本と交差するか否かの判断が行われ(S41)、交差していなければ(S41:NO)、第一の判断条件と満たさないとして、S46へ進み、第一直線フラグ記憶エリア265に信頼性がないことを示す「0」が記憶されて第一直線フラグが「OFF」とされる(S46)。そして、S51へ進み、第二境界線近似直線412の信頼性の判断が行われる。
【0086】
2本の直線と交差しており、第一の判断条件を満たしてれば(S41:YES)、第一線分431の第一投影長さlB1xが数15に示す式に基づいて算出され、第一投影長さ記憶エリア264に記憶される(S42)。そして、第二の判断条件を満たすか否かの判断が行われる(S43)。上述したように、ここでは、数16に示す式を満たすか否かの判断が行われる。第一投影長さlB1xが閾値TH(10)よりも大きくなければ、第二の判断条件を満たさないとして(S43:NO)、S46へ進み、第一直線フラグが「OFF」とされる(S46)。そして、S51へ進み、第二境界線近似直線412の信頼性の判断が行われる。
【0087】
一方、第一投影長さlB1xが閾値TH(10)よりも大きく、第二の判断条件を満たせば(S43:YES)、第三の判断条件を満たすか否かの判断が行われる(S44)。数17に示す式又は数18に示す式を満たさない場合には、第三の判断条件を満たさないとして(S44:NO)、S46へ進み、第一直線フラグが「OFF」とされる(S46)。そして、S51へ進み、第二境界線近似直線412の信頼性の判断が行われる。
【0088】
一方、数17に示す式又は数18に示す式を満たし、第三の判断条件を満たす場合には(S44:YES)、第一の判断条件、第二の判断条件、第三の判断条件のすべてを満たしたので、第一境界線近似直線411は「信頼できる」とされる。そして、第一直線フラグ記憶エリア265に信頼性があることを示す「1」が記憶されて「ON」とされる(S45)。そして、S51へ進み、第二境界線近似直線412の信頼性の判断が行われる。
【0089】
第二境界線近似直線412に対して第一の判断条件を満たすか否かの判断が行われる(S51)。第一の判断条件では、上述したように、第二境界線近似直線412が評価領域CDEF内で直線lineC,直線lineD,直線lineE,直線lineFのいずれか2本と交差するか否かの判断が行われる(S51)。そこで、交差していなければ(S51:NO)、第一の判断条件と満たさないとして、S56へ進む。そして、第二直線フラグ記憶エリア275に信頼性がないことを示す「0」が記憶されて第二直線フラグが「OFF」とされる(S56)。そして、条件判断処理は終了し、メイン処理へ戻る。
【0090】
2本の直線と交差しており、第一の判断条件を満たしてれば(S51:YES)、第二線分432のxの第二投影長さlB2xが数19の式に基づいて算出され、第二投影長さ記憶エリア274に記憶される(S52)。そして、第二の判断条件を満たすか否かの判断が行われる(S53)。上述したように、ここでは、数20に示す式を満たすか否かの判断が行われる。第二投影長さlB2xが閾値TH(10)よりも大きくなければ、第二の判断条件を満たさないとして(S53:NO)、S56へ進み、第二直線フラグが「OFF」とされる(S56)。そして、条件判断処理は終了し、メイン処理へ戻る。
【0091】
一方、第二投影長さlB2xが閾値TH(10)よりも大きく、第二の判断条件を満たせば(S53:YES)、第三の判断条件を満たすか否かの判断が行われる(S54)。数21に示す式又は数22に示す式を満たさない場合には、第三の判断条件を満たさないとして(S54:NO)、S56へ進み、第二直線フラグが「OFF」とされる(S56)。そして、条件判断処理は終了し、メイン処理へ戻る。
【0092】
一方、数21に示す式又は数22に示す式を満たし、第三の判断条件を満たす場合には(S54:YES)、第一の判断条件、第二の判断条件、第三の判断条件のすべてを満たしたので、第二境界線近似直線412は「信頼できる」とされる。そして、第二直線フラグ「ON」とされる(S55)。そして、条件判断処理は終了し、メイン処理へ戻る。
【0093】
以上のようにして、条件判定処理(図7、S6)において、第一境界線近似直線411及び第二境界線近似直線412の信頼性の判断が行われて、第一直線フラグ記憶エリア265及び第二直線フラグ記憶エリア275にその結果が記憶されると、図7に示すメイン処理では、補正処理が行われる(S7)。ここでは、第一境界線近似直線411及び第二境界線近似直線412の信頼性の判断の結果に基づいて、入力指紋画像100を回転させる回転角度θが決定される。
【0094】
ここで、図16に示すフローチャートを参照して、補正処理について説明する。図16は、補正処理のフローチャートである。S3で、塗りつぶし画像200の指紋領域202を近似する領域近似直線221に基づいて回転角度θを決定したが、この補正処理では、この回転角度θの補正が行われる。指紋領域202の境界線の近似直線を用いて算出される角度の方がより回転角度にふさわしい場合には、指紋領域202の境界線の近似直線を用いて算出される角度が回転角度θとされる。
【0095】
図16に示すように、まず、第一境界線近似直線411に信頼性があるか否かの判断が行われる(S61)。この判断は第一直線フラグがONであるか否かにより行われる。第一直線フラグがON(第一直線フラグ記憶エリア265に「1」が記憶されている)であり、信頼性があるとされている場合には(S61:YES)、S62において、第二境界線近似直線412に信頼性があるか否かの判断が行われる(S62)。この判断は第二直線フラグがONであるか否かにより行われる。
【0096】
第二直線フラグがON(第二直線フラグ記憶エリア275に「1」が記憶されている)であり、信頼性があるとされている場合には(S62:YES)、第一境界線近似直線411と第二境界線近似直線412の両方とも信頼性がある。そこで、さらに第一線分431と第二線分432とのx座標のずれを示すLが閾値THLOよりも小さいか否かの判断が行われる(S63)。x座標のずれLは数23に示す式により算出され、二直線ずれ記憶エリア3208に記憶される。本実施の形態では「閾値THLO=50」とする。このx座標のずれLが閾値THLOよりも小さい場合には(S63:YES)、境界線近似直線411と境界線近似直線412とは相反する向きに傾いている可能性があるため、境界線近似直線411,412から入力指紋画像100の回転角度θを決定するのはふさわしくないとされる。つまり、補正の必要はないと判断される。そこで、回転角度記憶エリア3210に記憶されている回転角度θは、補正されずにそのまま回転角度θとされる。そして、補正処理は終了し、メイン処理へ戻る。
【数23】

【0097】
一方、x座標のずれLが閾値THLOよりも小さくない場合には(S63:NO)、第一境界線近似直線411と第二境界線近似直線412の両方とも信頼性があるが、第一境界線近似直線411と第二境界線近似直線412とは同一方向に傾いている可能性が高い。そこで、入力指紋画像100の回転角度θを、この二本の近似直線411,412を用いて算出した角度で補正した方がふさわしいということになる。そこで、この二直線の傾きに基づいて、入力指紋画像100の回転角度θが決定される。具体的には、数24に示す式に基づいて回転角度θが決定される。なお、数24のlB1xは、数15に示す式で与えられる第一線分431のxの第一投影長さlB1xであり、lB2xは、第二線分432の第二投影長さlB2xである。αB1は第一境界線近似直線411の傾き、αB2は第二境界線近似直線412の傾きである。このようにして、第一境界線近似直線411と第二境界線近似直線412との両方に信頼性がある場合には、それぞれの直線の傾きに、評価領域CDEF内に存在する直線の投影長さを重み付けした値が回転角度θとされ、回転角度記憶エリア3210に記憶される(S65)。そして、補正処理は終了し、メイン処理へ戻る。
【数24】

【0098】
また、第一直線フラグがONであり、信頼性があるとされているが(S61:YES)、第二直線フラグがOFF(第二直線フラグ記憶エリア275に「0」が記憶されている)であり、第二境界線近似直線412に信頼性がないと判断された場合には(S62:NO)、第一線分431の第一投影長さlB1xが閾値THLB1よりも小さいか否かの判断が行われる(S66)。本実施の形態では「閾値THLB1=50」とする。第一線分431の第一投影長さlB1xが閾値THLB1よりも小さいと判断された場合には(S66:YES)、第一線分431の長さが短い、又は、x軸に対する傾斜が大きいということになる。よって、第一境界線近似直線411に信頼性はあっても指紋領域202の回転角度θを決定するのに用いるのにはふさわしくないと判断される。つまり、補正の必要はないと判断される。そこで、回転角度記憶エリア3210に記憶されている回転角度θは、補正されずにそのまま回転角度θとされる。そして、補正処理は終了し、メイン処理へ戻る。
【0099】
また、第一線分431の第一投影長さlB1xが閾値THLB1よりも小さいと判断されなかった場合には(S66:NO)、第一境界線近似直線411に信頼性もあり、指紋領域202の回転角度θを、この第一境界線近似直線411に基づいて算出した角度で補正する方がふさわしいと判断される。そこで、第一境界線近似直線411の傾きαB2に基づいて、数25に示す式により回転角度θが決定され、回転角度記憶エリア3210に記憶される(S68)。そして、補正処理は終了し、メイン処理へ戻る。
【数25】

【0100】
一方、第一直線フラグがOFFであり、信頼性があると判断されていない場合には(S61:NO)、第二境界線近似直線412に信頼性があるか否かの判断が行われる(S72)。この判断も第二直線フラグがONであるか否かにより行われる。第二直線フラグがOFF(第二直線フラグ記憶エリア275に「0」が記憶されている)であり、信頼性があると判断されていない場合には(S72:NO)、第一境界線近似直線411、第二境界線近似直線412共に信頼性がないということになる。そこで、回転角度記憶エリア3210に記憶されている回転角度θは、補正されずにそのまま回転角度θとされる。そして、補正処理は終了し、メイン処理へ戻る。
【0101】
第二直線フラグがONであり、信頼性があるとされている場合には(S72:YES)、第二線分432の第二投影長さlB2xが閾値THLB2よりも小さいか否かの判断が行われる(S73)。本実施の形態では「閾値THLB2=50」とする。第二線分432の第二投影長さlB2xが閾値THLB2よりも小さいと判断された場合には(S73:YES)、第二線分432の長さが短い、又は、x軸に対する傾斜が大きいということになり、第二境界線近似直線412に信頼性があっても、指紋領域202の回転角度θを決定するのに用いるのにはふさわしくないと判断される。そこで、回転角度記憶エリア3210に記憶されている回転角度θは、補正されずにそのまま回転角度θとされる。そして、補正処理は終了し、メイン処理へ戻る。
【0102】
一方、第二線分432の第二投影長さlB2xが閾値THLB2よりも小さくないと判断された場合には(S73:NO)、第二境界線近似直線412に信頼性があり、指紋領域202の回転角度θを、この第二境界線近似直線412に基づいて算出した角度で補正した方がさわしいと判断される。そこで、第二境界線近似直線412の傾きαB2に基づいて、数26に示す式により回転角度θが決定され、回転角度記憶エリア3210に記憶される(S75)。そして、補正処理は終了し、メイン処理へ戻る。
【数26】

【0103】
そして、第一直線フラグが信頼性がないことを示しており(S61:NO)、第二直線フラグがOFFであり、第二境界線近似直線412に信頼性がないと判断された場合には(S72:NO)、第一境界線近似直線411、第二境界線近似直線412共に信頼性がないということになる。つまり、補正の必要はないと判断される。そこで、回転角度記憶エリア3210に記憶されている回転角度θは、補正されずにそのまま回転角度θとされる。そして、補正処理は終了し、メイン処理へ戻る。
【0104】
以上のようにして、第一境界線近似直線411及び第二境界線近似直線412の信頼性、第一線分431や第二線分432の投影長さlB1x,lB2x、第一線分431と第二線分432とのx座標のずれLに基づいて、回転角度θを補正するか否かの判断を行い、補正した方がよいと判断された場合には、信頼性のある第一境界線近似直線411及び第二境界線近似直線412に基づいて入力指紋画像100の回転角度θが決定され、補正される。
【0105】
このようにして、補正処理において、必要に応じて回転角度θが決定され、回転角度記憶エリア3210に記憶されたら(図7、S7)、入力指紋画像記憶エリア3201に記憶されている入力指紋画像配列Fに記憶されている情報の示す入力指紋画像100が回転角度θだけ回転される回転処理が行われる(S8)。具体的には、周知のアフィン変換により入力指紋画像100が回転角度θだけ回転され、照合画像記憶エリア3211に回転後の画像を示す情報が記憶される。アフィン変換では、数27に示す行列式が用いられる。x−y座標系において座標(x,y)にアフィン変換を施すと、座標(X,Y)が得られる。数27に示す行列式より、「X=xcosθ−ysinθ」、「Y=xsinθ+ycosθ」である。
【数27】

【0106】
そこで、入力指紋画像記憶エリア3201に記憶されている入力指紋画像配列Fに記憶されている情報の示す入力指紋画像100の各画素をx−y座標系に投射する。そして、各画素を示す座標が数27に示す行列式に代入されて、アフィン変換後の座標が決定される。そして、アフィン変換前の座標(x,y)の有していた階調値が座標(X,Y)の有する階調値とされ照合画像記憶エリア3211に記憶される。
【0107】
このようにして、入力指紋画像100が回転角度θだけ回転されて、照合画像500が作成されたら(S8)、予め登録指紋画像記憶エリア43に記憶されている登録指紋画像との照合処理が行われる(S9)。この照合処理では、例えば、周波数解析により各画像から抽出された特徴量が使用される。照合画像500から抽出された特徴量と、登録指紋画像から抽出された特徴量との比較が行われ、その差を示す距離値が算出される。そして、この距離値が所定の閾値よりも大きいか否かにより各画像の指紋が一致するか否かの判断が行われる。
【0108】
この周波数解析による特徴量の抽出では、指紋から特徴点(マニューシャ)を抽出するのではなく、隆線の情報そのものを利用して解析し、特徴量とする処理を行っている。すなわち、指紋画像を横方向に切り出して、横方向に指紋の位置を、縦方向に指紋の凹凸(濃淡)を取ると、指紋の切り出し1ラインを波形信号と見ることができる。そして、この波形信号に対して音声データ処理で一般的に行われるような周波数解析を行うことにより、パワースペクトルを得ることができる。
【0109】
具体的には、背景分離処理された指紋画像の各ラインを1フレームとして、フレームごとに特徴抽出処理を行う。まず、前処理として、ハミング窓掛けを行い、フレーム切り出しによる端部の影響を緩和する。次いで、ハミング窓掛けによる補正処理がなされたフレームデータを受け取り、その自己相関関数を求める。さらに、得られた自己相関関数に基づいて、線形予測法(LPC:Liner Predictive Cording)によるLPC係数を演算して求める。線形予測法は、携帯電話等で音声の圧縮に使用されている周知の技術であり、これを使用すると母音等の音声を全極型の伝達関数で推定することができ、そのスペクトルから声道の共振周波数(フォルマント周波数)等が推定できるものである。そして、LPC係数を線形結合演算してLPCケプストラムを求める。LPCケプストラムは、切り出された指紋画像の各ラインについて特徴量ベクトルとして算出される。この特徴量ベクトルは、RAM32の照合画像記憶エリア3211に設けられている記憶エリアに記憶される。なお、登録指紋画像の特徴量は登録指紋画像記憶エリア43に記憶されている。
【0110】
そして、抽出された特徴量と登録指紋画像の特徴量との比較には、DP比較(動的計画法)が用いられる。動的計画法はDPマッチング、ラバーマッチングともいわれ、若干変動したデータ列であってもスムースにマッチングができる特徴をもつことから、広く用いられている。DPマッチングは基準データとテストデータとの2つの系列をx−y平面上に描き、実際のデータの距離差を加味した上で最も累積距離の短くなるようなデータ系列の対応付けを選ぶアルゴリズムである。本実施形態では、LPCケプストラムを指紋ラインごとのスペクトルデータとみなし、入力指紋画像100のLPCケプストラムを指紋画像の縦方向に並べたものをテストデータ、登録指紋画像のLPCケプストラムを指紋画像の縦方向に並べたものを基準データとして相互のマッチング度合いを得る。基準データとテストデータではそれぞれ入力速度変化や変化具合が異なるが、DPマッチングによりそれらを加味しつつ最終的に基準データとテストデータが最も近くなるような縦方向の対応付けが検索され、最も近くなる縦方向対応のもとでのマッチング度合いが距離値とされ、RAM32の照合画像記憶エリア3211に設けられている記憶エリアに記憶される。距離値が小さくなれば双方のLPCケプストラム間の差異が小さいことを、距離値が大きくなれば双方のLPCケプストラム間の差異が大きいことを示している。
【0111】
このようにして、DP比較により距離値が求められると、予め設定されている閾値と比較される(S10)。そこで、距離値が閾値より小さい場合には入力指紋画像100と登録指紋画像とが一致していると判定され(S10:YES)、モニタ24に認証OKであることを示すメッセージが出力される(S11)。一方、距離値が閾値より小さくない場合には一致しないと判定され(S10:NO)、モニタ24に認証NGであることを示すメッセージが出力される(S12)。そして、メイン処理は終了する。
【0112】
以上のようにして、指紋入力装置25により入力された入力指紋画像100から作成された塗りつぶし画像200の指紋領域102の基準線199に対する角度に基づいて、入力指紋画像100の回転角度が決定され、入力指紋画像100が回転される。そして、回転後の照合画像が予め登録されている登録指紋画像と照合される。
【0113】
以上のようにして、指紋領域102が本来読み取られるべき向きでない向きに存在しても、どれくらい回転させれば本来読み取られるべき向きに修正することができるかを示す回転角度θを算出し、入力指紋画像100を回転させた後に登録指紋画像と照合するので、回転させずに照合を行う場合と比べて、照合の精度が上がる。
【0114】
回転角度θを算出する際には、指紋領域202を近似する領域近似直線221に基づいて算出することができる。さらに、第一境界線近似直線411又は第二境界線近似直線412に信頼性があり、回転角度θとしてよりふさわしい角度を算出できる場合には、信頼性のある境界線近似直線411,412を用いて角度を算出して、回転角度θを補正するので、より正確な回転角度を算出することができる。
【0115】
また、入力指紋画像100として、二値化画像でなく、0〜255の階調値で示される白黒画像を用いている。よって、指紋入力装置25の製品のばらつきやユーザの指の状態による入力指紋画像100の濃淡のばらつきの影響を受けずに回転角度を算出することができる。
【0116】
なお、上記実施の形態において、図7に示すメイン処理のS1の処理で指紋入力装置25から指紋画像を取得する処理を行うCPU30が「指紋画像データ入力手段」に相当する。そして、入力指紋画像記憶エリア3201に記憶されているデータが指紋画像データに該当する。そして、塗りつぶし画像200が「抽出用画像」に該当する。そして、数1の式で与えられるMi,jの値が「各画素の前記階調値と周囲の画素の前記階調値とから得られる差分情報」に該当する。また、上記実施の形態では、階調値が「0」でない画素が「指紋が映し出されているとされる画素」に該当する。
【0117】
そして、領域近似直線221が「第一近似直線」に該当し、図7に示すメインよりのS3において領域近似直線221を特定する処理を行うCPU30が「第一近似直線特定手段」に相当する。また、図7に示すメインよりのS3において回転角度θを算出する処理を行うCPU30が「回転角度算出手段」に相当する。
【0118】
そして、図7に示すメイン処理のS2で塗りつぶし画像を作成し、S4の境界線決定処理(図9参照)を行うCPU30が「境界画素集合抽出手段」に相当する。そして、図7に示すS5の処理で第一有効画素群421及び第二有効画素群422を決定する処理を行うCPU30が「有効画素抽出手段」に相当する。詳細には、数9〜数12に示す式において、総和を求める際の対象の条件を評価領域CDEFに含まれる座標(x,B)としている。この計算式において配列Bから値を読み出し、座標(x,B)が評価領域CDEF内にあるか否か、すなわち、「15≦x≦112かつ5≦B≦122」であるか否かを判断する処理を行うCPU30が「有効画素抽出手段」に相当する。
【0119】
また、第一境界線近似直線411及び第二境界線近似直線412が「第二近似直線」に該当する。そして、図7に示すS5の処理で数9〜数14に示す式を用いて第一境界線近似直線411の傾きαB1及びy切片βB1を算出し、第二境界線近似直線412の傾きαB2及びy切片βB2を算出する処理を行うCPU30が「第二近似直線特定手段」に相当する。そして、図7に示すメイン処理のS7の補正処理において、所定の条件を満たす場合に回転角度θを補正する処理を行うCPU30が「補正手段」に相当する。
【0120】
そして、図7に示すメイン処理のS8において入力指紋画像100を回転角度θだけ回転して照合画像500を作成する処理を行うCPU30が「指紋画像回転手段」に相当する。そして、登録指紋画像記憶エリア43が「登録指紋画像記憶手段」に該当し、図7に示すメイン処理のS9において予め登録指紋画像記憶エリア43に記憶されている登録指紋画像との照合処理を行うCPU30が「照合手段」に相当する。
【0121】
なお、本発明の指紋画像の回転角度算出装置、指紋画像回転装置、指紋照合装置、指紋画像の回転角度算出プログラム、指紋画像回転プログラム及び指紋照合プログラムは、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。上記実施の形態では、回転角度算出装置、指紋画像回転装置、指紋照合装置として機能するコンピュータ10において、指紋入力装置25から入力された入力指紋画像100を予め記憶されている照合画像と照合する例について説明した。しかしながら、指紋画像の回転角度算出装置、指紋画像回転装置、指紋照合装置は1つの端末でなくともよい。
【0122】
例えば、図17に示すように、指紋画像の回転角度算出装置1と指紋画像回転装置2とが同じコンピュータ50で構成され、別のコンピュータ51で構成されている指紋照合装置3に対して、照合画像のデータを引き渡すように構成してもよい。また、図18に示すように、指紋画像回転装置2と指紋照合装置3とが同じコンピュータ52で構成され、指紋画像の回転角度算出装置1を別のコンピュータ53で構成してもよい。この場合には、指紋画像の回転角度算出装置1から入力指紋画像及び算出された回転角度がコンピュータ53に引き渡される。さらに、図19に示すように、指紋画像の回転角度算出装置1、指紋画像回転装置2、指紋照合装置3をそれぞれ別のコンピュータ54,55,56で構成してもよい。このような図17乃至図19の例では、それぞれのコンピュータをネットワークで接続してもよい。これにより各コンピュータを離れた位置や遠隔地に設置することが可能となる。例えば、金融機関で主に使用されるATMやCDなどで本人認証を行う際のように、入力指紋画像を入力する端末と、登録指紋画像が記憶されている金融機関のホストコンピュータとが遠隔地にあるような場合にはこのような構成が有効である。
【0123】
また、図2に示したように、指紋画像の回転角度算出装置、指紋画像回転装置、指紋照合装置を1つのコンピュータ10で構成するが、指紋入力装置25を直接接続するのではなく、ネットワークを介して接続するようにしてもよい。また、上記実施の形態では、予め登録されている1つの登録指紋画像と照合を行っているが、照合対象となる登録指紋画像は複数であってもよいことはいうまでもない。また、上記実施の形態では、周波数解析により各画像から抽出された特徴量を用いて指紋の照合を行ったが、照合方法はこれに限らないことはいうまでもない。例えば、特徴点抽出照合法(マニューシャ法)や画像マッチング法(パタンマッチ法)等の周知の指紋照合方法のいずれかを用いればよい。
【0124】
また、上記実施の形態では、境界線画素を決定する際に、平均画素値配列Aの要素を閾値THと比較しており、閾値THを「100」としているが、閾値THはこの値に限らないことはいうまでもない。画素の階調値の最大値に応じて設定すればよい。また、第一の判断条件として、投影長さlB1x,lB2xを閾値THと比較しており、閾値THを「10」としているが、閾値THはこの値に限らないことはいうまでもない。入力指紋画像100の画素数に応じて設定すればよい。また、回転角度θを決定する際に、x座標のずれを示すLと閾値THLOとを比較しており、閾値THLOを「50」としているが、閾値THLOはこの値に限らないことはいうまでもない。入力指紋画像100の画素数に応じて設定すればよい。また、回転角度θを決定する際に、第一線分431の第一投影長さlB1xと閾値THLB1とを比較し、閾値THLB1を「50」としているが、閾値THLB1はこの値に限らないことはいうまでもない。入力指紋画像100の画素数に応じて設定すればよい。回転角度θを決定する際に、第二線分432の第二投影長さlB2xと閾値THLB2とを比較し、閾値THLB2を「50」としているが、閾値THLB2はこの値に限らないことはいうまでもない。入力指紋画像100の画素数に応じて設定すればよい。
【0125】
また、上記実施の形態では、図16に示す補正処理でS65の処理において、数24に示す式を用いて回転角度θを算出している。しかしながら、第一境界線近似直線411及び第二境界線近似直線412に基づいて決定される回転角度(合成角度)の算出方法は数24に示す式に限らないことはいうまでもない。数24に示す式では、第一境界線近似直線411及び第二境界線近似直線412の一部である第一線分421及び第二線分422の投影長さlB1x,lB2xを用いて重みを付けているが、重みとして用いる値は投影長さlB1x,lB2xに限らず、第一線分421及び第二線分422の長さであったり、第一線分421及び第二線分422をy軸上に投影した長さであったり、第一境界線401及び第二境界線402において、評価領域CDEF内に存在している画素の数であったりしてもよい。また、重みを付けることなく、単純に第一境界線近似直線411の傾きαB1と第二境界線近似直線412の傾きαB2との和を2で割った値(平均)を用いてもよい。
【0126】
また、上記実施の形態では、第二の判断条件において「切出線分の長さに関する情報」として第一線分431の第一投影長さlB1x,第二線分432の第二投影長さlB2xを用いたが、「切出線分の長さに関する情報」はこれに限らないことはいうまでもない。例えば、第一線分431,第二線分432の長さを用いてもよい。また、第一有効画素群421を構成する画素の数、第二有効画素群422を構成する画素の数(「有効画素抽出手段」により抽出された有効画素の数)を用いてもよい。また、第一線分431,第二線分432をy軸上に投影した長さを用いてもよい。
【0127】
また、上記実施の形態では塗りつぶし画像200を作成する際に数1に示す式を用いて塗りつぶし画像配列Mの要素Mi,jの値(階調値)を求めた。そして、Mi,jの値が255以上となる場合には、「255」としていた。しかしながら、塗りつぶし画像200の各画素の階調値を求める式は、数1に示す式に限らない。例えば、数28に示す式を用いて、塗りつぶし画像配列Mの要素Mi,jの値(階調値)を求めてもよい。数28に示すSは定数であり、実験的に求められる。そして、算出されたMi,jの値が定数T(実験的に求められた定数)よりも大きい場合には、Mi,jの値を「T」とする。
【数28】

【0128】
さらに、数29に示す式を用いて、塗りつぶし画像配列Mの要素Mi,jの値(階調値)を求めてもよい。数29に示すSは定数であり、実験的に求められる。そして、算出されたMi,jの値が定数T(実験的に求められた定数)よりも大きい場合には、Mi,jの値を「T」とする。
【数29】

【0129】
さらに、数30及び数31に示す式を用いて、塗りつぶし画像配列Mの要素Mi,jの値(階調値)を求めてもよい。数31に示すSは定数であり、実験的に求められる。そして、算出されたMi,jの値が定数T(実験的に求められた定数)よりも大きい場合には、Mi,jの値を「T」とする。
【数30】

【数31】

【0130】
また、上記実施の形態では、塗りつぶしが画像200の指紋領域202を近似した領域近似直線221の傾きを用いて算出された回転角度である回転角度θが算出された。しかしながら、回転角度θを決定するためには塗りつぶし画像200でなく、他の画像であってもよい。例えば、入力指紋画像100をそのまま用いてもよい。これにより、入力指紋画像100をそのまま用いるよりも、塗りつぶし画像200を用いた方が領域角度θの精度が高いが、塗りつぶし画像200を作成する処理が軽減されるので、CPU30への負荷は軽減され、処理時間も短くなるという効果がある。
【0131】
さらに、入力指紋画像100を二値化した画像(二値化画像)を用いて、回転角度θを求めてもよい。また、指紋入力装置25を多値の画像を取り込むものでなく、二値化画像を取り込むものとして、二値化画像を用いてもよい。これにより、画像データのサイズが小さくなるという効果がある。入力指紋画像100を二値化した場合には、二値化画像が「階調値に基づいて作成された抽出用画像」に該当し、二値化画像を指紋入力装置から入力した場合には、二値化画像が「指紋画像」に該当する。二値化画像を作成するCPU30が「抽出用画像作成手段」に相当する。
【0132】
二値化画像を用いる場合には、数2に示す式の代わりに数32に示す式を用い、数3に示す式の代わりに数33に示す式を用い、数4に示す式の代わりに数34に示す式を用い、数5に示す式の代わりに数35に示す式を用い、算出された変数iの平均U,変数jの平均U,変数jの分散σ,変数i,jの共分散σi,jを数7に示す式に代入して回転角度θを求めればよい。なお、数32乃至数35に示すSは、変数i,jのなす集合であり、本実施の形態では入力指紋画像は128×128の画素からなるので、変数i,jは共に「1〜128」の整数である。なお、評価領域CDEF内に含まれるi,jを対象として、S=評価領域CDEFとしてもよい。この場合には、変数iは「5〜122」の整数、変数jは「15〜112」の整数となる。
【数32】

【数33】

【数34】

【数35】

【0133】
また、上記実施の形態では、塗りつぶし画像200に対して最小二乗法を用いて、指紋領域202を近似する領域近似直線221が決定され、この傾きに基づいて回転角度θが算出された。しかしながら、領域近似直線221を決定する方法は最小二乗法に限らない。他の近似直線の算出方法を用いてもよいことはいうまでもない。例えば、主成分分析により領域近似直線221を決定してもよい。この場合には、数2〜数5の式に加えて、数36〜数43の式が用いられる。数2〜数5の式により算出された変数iの平均U,変数jの平均U,変数jの分散σ,変数i,jの共分散σi,jに加えて、数36に示す式により変数iの分散σを算出する。そして、変数iの分散σ,変数jの分散σ,jの共分散σi,jが数37に示す式に代入されて、分散・共分散行列(数37における左辺の4×4行列)の固有値λ、固有ベクトル(a,a)が算出される。
【数36】

【数37】

【0134】
固有値λは数38及び数39に示す式で示す値となる。固有値λは第一主成分の分散、固有値λは第二主成分の分散である。固有値λに対しては、固有ベクトルa=(a11,a21)が対応し、固有ベクトルaの成分a11は、数40に示す式で算出され、成分a21は数41に示す式で算出される。なお、固有ベクトルa=(a11,a21)と、固有値λ2に対応した固有ベクトルa=(a12,a22)とは直交するため、回転角度θの算出には固有値λ及びλのいずれを用いてもよいが、ここではλを用いて説明する。
【数38】

【数39】

【数40】

【数41】

【0135】
そして、数2及び数3に示す式により算出された変数iの平均U,変数jの平均U、数40及び数41に示す式により算出された固有ベクトルa=(a11,a21)を数42に代入することにより、領域近似直線221が決定され、回転角度θは数43に示す式に数40及び数41に示す式により算出された固有ベクトルa=(a11,a21)を代入することにより算出される。
【数42】

【数43】

【0136】
また、入力指紋画像100を二値化した画像(二値化画像)を用いて、回転角度θを求める場合にも、最小二乗法を用いるのではなく、他の近似直線の算出方法を用いてもよいことはいうまでもない。例えば、主成分分析を用いてもよい。この場合には、変数jの分散σは数44に示す式で与えられる。そして、変数iの平均U,変数jの平均U,変数i,jの共分散σi,jについては、数32〜数35に示す式を用いて算出し、数7に示す式に代入して回転角度θを求めればよい。
【数44】

【0137】
また、上記実施の形態では、数9〜数14に示した式を用いて最小二乗法により境界線近似直線を決定した。しかしながら、他の近似直線の算出方法を用いてもよいことはいうまでもない。そして、塗りつぶし画像200の領域近似直線221の算出と同様に、数36〜数43に示した式を用いて主成分分析法により境界線近似直線を決定してもよいことはいうまでもない。
【0138】
また、境界線画素集合配列B1,B2を求める際にも、塗りつぶし画像200を作成せずに、入力指紋画像100を用いてもよい。この場合、入力指紋画像100の各画素Fi,jに対して数8に示した平均画素値Ai,jを算出して第一境界線画素集合配列B1及び第二境界線画素集合配列B2を求める。
【0139】
また、上記実施の形態では、指紋入力装置に接触している部分(指紋の隆線部)の階調値が高く、接触していない部分(指紋の谷線部や背景)の階調値が低いポジ画像を用いている(図1参照)。しかしながら、指紋入力装置によっては、指紋入力装置に接触している部分の階調値が低く、接触していない部分の階調値が高い画像を出力するものがある。つまり、色相が補色で表されたり、白黒が反転されたりしているネガ画像もある。例えば、階調値が「0」〜「255」である白黒のネガ画像である場合には、階調値が「0」〜「254」である画素が「指紋が映し出されているとされる画素」に該当する。そして、階調値「0」を「255」、「1」を「244」、つまり階調値nを「255−n」に変換して上記処理を行えばよい。また、二値化画像のネガ画像であれば、階調値が「0」である画素が「指紋が映し出されているとされる画素」に該当する。そして、「0」を「1」とし、「1」を「0」として白黒を反転させて上記処理を行えばよい。つまり、「指紋が映し出されているとされる画素」は、入力指紋画像100がポジ画像であるか、ネガ画像であるかにより決定される。
【0140】
また、上記実施の形態では、登録指紋画像が「本来指紋が読み取られるべき向き」に配置されているものとして、基準線199を「本来指紋が読み取られるべき向き」を示す直線としている。しかし、基準線199はこれに限定されず、登録指紋画像と入力指紋画像とを比較する際の基準となる直線であればよい。例えば、登録指紋画像において、指紋領域の傾きを示す直線を算出し、その直線を基準線として用いてもよい。そして、回転角度θは、この直線に対する傾きとされる。なお、照合の都度、指紋領域の傾きを示す直線を算出するのではなく、予め指紋領域の傾きを示す直線を算出しておき登録指紋画像に対応して記憶しておいてもよい。
【0141】
上記実施の形態では、指紋領域102を近似する領域近似直線221に基づいて回転角度θを算出し、その後、必要に応じて境界線近似直線411,412を用いて回転角度θを補正している。しかしながら、境界線近似直線411,412を用いた補正を行わずに、領域近似直線211に基づいて算出された回転角度θをそのまま用いてもよいことはいうまでもない。特に、入力指紋画像の領域が指紋領域の全体を映し出すことができるだけの十分な大きさがある場合には、補正を行う必要性は低くなる。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明は、指紋領域が本来の位置から傾いている指紋画像を用いる装置及びプログラムに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】指紋画像の回転角度の算出方法についての説明図である。
【図2】コンピュータ10の概略構成を示すブロック図である。
【図3】コンピュータ10のハードディスク装置40の構成を示す模式図である。
【図4】RAM32の構成を示す模式図である。
【図5】第一直線関係記憶エリア3206に設けられている記憶エリアの構成を示す模式図である。
【図6】第二直線関係記憶エリア3207に設けられている記憶エリアの構成を示す模式図である。
【図7】指紋照合の処理のメイン処理のフローチャートである。
【図8】境界線の決定方法を示す模式図である。
【図9】境界線決定処理のフローチャートである。
【図10】第一境界線401及び第二境界線402をx−y座標系に投射したグラフである。
【図11】評価領域をx−y座標系に示したグラフである。
【図12】第一有効画素群421、第二有効画素群422をx−y座標系に示したグラフである。
【図13】第一境界線近似直線411、第二境界線近似直線412をx−y座標系に示したグラフである。
【図14】第一境界線近似直線411、第二境界線近似直線412をx−y座標系に示したグラフである。
【図15】条件判断処理のフローチャートである。
【図16】補正処理のフローチャートである。
【図17】指紋画像の回転角度算出装置、指紋画像回転装置、指紋照合装置の構成の変形例を示す模式図である。
【図18】指紋画像の回転角度算出装置、指紋画像回転装置、指紋照合装置の構成の変形例を示す模式図である。
【図19】指紋画像の回転角度算出装置、指紋画像回転装置、指紋照合装置の構成の変形例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0144】
1 回転角度算出装置
2 指紋画像回転装置
3 指紋照合装置
10 コンピュータ
25 指紋入力装置
30 CPU
32 RAM
40 ハードディスク装置
42 指紋照合プログラム記憶エリア
43 登録指紋画像記憶エリア
100 入力指紋画像
101 背景領域
102 指紋領域
199 基準線
200 塗りつぶし画像
201 背景領域
202 指紋領域
221 領域近似直線
400 境界線画像
401 第一境界線
402 第二境界線
411 第一境界線近似直線
412 第二境界線近似直線
421 第一有効画素群
422 第二有効画素群
431 第一線分
432 第二線分
500 照合画像
3201 入力指紋画像記憶エリア
3202 塗りつぶし画像記憶エリア
3203 平均画素値記憶エリア
3204 第一境界線画素集合記憶エリア
3205 第二境界線画素集合記憶エリア
3206 第一直線関係記憶エリア
3207 第二直線関係記憶エリア
3208 二直線ずれ記憶エリア
3209 領域近似直線関係記憶エリア
3210 回転角度記憶エリア
3211 照合画像記憶エリア
A 平均画素値配列
B1 第一境界線画素集合配列
B2 第二境界線画素集合配列
CDEF 評価領域
F 入力指紋画像配列
M 塗りつぶし画像配列
THLB1 閾値
THLB2 閾値
THLO 閾値
TH 閾値
TH 閾値
B1x 第一投影長さ
B2x 第二投影長さ
lineC,lineD,lineE,lineF 直線
α 傾き
αB1 第一境界線近似直線の傾き
αB2 第二境界線近似直線傾き
βB1 第一境界線近似直線のy切片
βB2 第二境界線近似直線のy切片
θ 回転角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の指紋が写されている画像である指紋画像のデータである指紋画像データを入力する指紋画像データ入力手段と、
当該指紋画像データ入力手段から入力された前記指紋画像データの示す前記指紋画像、又は、前記指紋画像を構成する各画素の濃淡を示す階調値、若しくは、各画素の前記階調値と周囲の画素の前記階調値とから得られる差分情報に基づいて作成された抽出用画像において、前記指紋画像又は前記抽出用画像を二次元平面とみなし、当該二次元平面上において、指紋が映し出されているとされる画素に対応した座標上の点の集合を近似直線に近似する第一近似直線特定手段と、
当該第一近似直線特定手段により近似された近似直線である第一近似直線と、前記指紋画像に対して予め定められた直線である基準線との傾きの差を、前記基準線に対して、指紋が存在する領域である指紋領域が傾いている角度である回転角度として算出する回転角度算出手段とを備えたことを特徴とする指紋画像の回転角度算出装置。
【請求項2】
前記第一近似直線特定手段は、前記二次元平面上の当該画素に対応した座標に、前記指紋領域を構成する画素における階調値に応じた数の点を配置して、配置された点の集合が近似される近似直線を第一近似直線とすることを特徴とする請求項1に記載の指紋画像の回転角度算出装置。
【請求項3】
前記指紋領域抽出手段により抽出された前記指紋領域と前記指紋画像における当該指紋領域以外の領域との境界線となる画素を境界画素として、当該境界画素の集合である境界画素集合を抽出する境界画素集合抽出手段と、
前記指紋画像内の所定の領域である評価領域内に存在する前記境界画素を有効な画素である有効画素として抽出する有効画素抽出手段と、
前記二次元平面上において、当該有効画素抽出手段により抽出された前記有効画素に対応した座標上の点の集合を近似直線に近似する第二近似直線特定手段と、
当該第二近似直線特定手段により近似された近似直線である第二近似直線の傾きを用いて、前記回転角度算出手段により算出された前記回転角度を補正する補正手段とを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の指紋画像の回転角度算出装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の指紋画像の回転角度算出装置と、
当該指紋画像の回転角度算出装置の前記回転角度算出手段により算出された前記回転角度に基づいて、前記指紋画像入力手段から入力された前記指紋画像を回転させる指紋画像回転手段とを備えたことを特徴とする指紋画像回転装置。
【請求項5】
登録用の指紋画像を記憶する登録指紋画像記憶手段と、
請求項4に記載の指紋画像回転装置と、
当該指紋画像回転装置の前記指紋画像回転手段により回転された結果である回転指紋画像と前記登録指紋画像記憶手段に記憶されている前記登録指紋画像とを照合する照合手段とを備えたことを特徴とする指紋照合装置。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれかに記載の指紋画像の回転角度算出装置の各種処理手段としてコンピュータを動作させる指紋画像の回転角度算出プログラム。
【請求項7】
請求項4に記載の指紋画像回転装置の各種処理手段としてコンピュータを動作させる指紋画像回転プログラム。
【請求項8】
請求項5に記載の指紋照合装置の各種処理手段としてコンピュータを動作させる指紋照合プログラム。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図1】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−217090(P2008−217090A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49694(P2007−49694)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(598072272)株式会社ディー・ディー・エス (14)
【出願人】(000210986)中央発條株式会社 (173)
【出願人】(399123926)梅テック 有限会社 (11)
【Fターム(参考)】