説明

振動デバイス、振動デバイスの製造方法、モーションセンサー、および電子機器

【課題】振動素子のチューニングの際に用いるレーザー光による半導体基板の能動領域へのダメージを抑制し、電気的特性の安定した振動デバイスを提供する。
【解決手段】センサーデバイス1において、半導体基板としてのシリコン基板10は、能動面10a側に半導体素子を含んで構成される集積回路が形成された能動領域を有している。シリコン基板10上に振動ジャイロ素子20が配置されたセンサーデバイス1において、能動領域は、振動ジャイロ素子20の駆動用振動腕25a,25bの先端側の錘部28a,28b上に設けられた質量調整部としての錘電極41と平面視で重なる領域を回避して形成されている。これにより、錘電極41にレーザーを照射して周波数調整を行う際に、レーザーが能動面10aに到達したときに集積回路にダメージが加わるのを回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動デバイス、振動デバイスの製造方法、振動デバイスを用いたモーションセンサー、およびこれらを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加速度や角速度などをセンシングする振動デバイスとしてのセンサーデバイスにおいては、振動素子としてのセンサー素子と、該センサー素子を駆動する機能を有する回路素子とを備えたセンサーデバイスが知られている。
また、このようなセンサーデバイスとして、振動素子としてのジャイロ振動片と回路素子としての半導体装置(以下、半導体基板という)とを備えたセンサーデバイスがパッケージに収納された角速度センサー(ジャイロセンサー)が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
この構成では、半導体基板が支持基板に固着され、支持基板に形成されたリード配線部と電気的に接続されている。また、センサー素子(ジャイロセンサー素子)は、センサー素子と半導体基板との間に配置されたポリイミドフィルムに固着されたインナーリード部に接続されることによって、半導体基板と空隙を保ち、該半導体基板と平面視で重なるように配置されている。なお、インナーリード部は、ポリイミドフィルムに固着されるとともに支持基板に固着されている。
そして、センサー素子は、レーザー光などを用い、センサー素子の主面(表裏面)に形成された錘層(質量調整部)を除去するチューニング(周波数調整)が行われ、高精度の機能を有することとなる(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−281341号公報(図1)
【特許文献2】特開2008−151633号公報(図10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述したセンサーデバイスの構成では、センサー素子のチューニングの際に用いるレーザー光が、錘層の除去とともにセンサー素子を透過し、半導体基板の能動面に達することがあった。半導体基板の能動面には、トランジスターやメモリー素子などの半導体素子や配線などを含んで構成される集積回路が形成された能動領域が含まれ、この能動領域にレーザー光が当たると、前記半導体素子や配線などにダメージを与えて半導体基板を故障させ、センサーデバイスが正常に動作しなくなる虞があるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例に係る振動デバイスは、一方の主面に能動領域を含んでいる半導体基板と、振動部、および、前記振動部に設けられている質量調整部、を含む振動素子と、を備え、前記半導体基板の前記一方の主面側に前記振動素子が配置されている振動デバイスであって、平面視で、前記半導体基板上、且つ、前記能動領域とは異なる領域に、前記質量調整部が配置されていることを特徴とする。
【0007】
上記構成で、能動領域とは、半導体基板の一方の主面側(能動面側)において、回路素子および回路配線の少なくとも一方が形成されている領域のことである。
上記適用例によれば、質量調整部にレーザー光を照射することにより周波数調整を行う際に、レーザー光が振動素子を透過して半導体基板の一方の主面に到達した場合でも、能動領域にレーザー光が照射されるのを防ぐことができる。したがって、レーザー光によってトランジスターやメモリー素子などの半導体素子や配線などを含んで構成される集積回路が溶融して特性を損なうことなどを回避できる。
【0008】
[適用例2]上記適用例に記載の振動デバイスにおいて、前記半導体基板の前記一方の主面側、且つ平面視で前記質量調整部と前記能動領域との間にガードリングが設けられていることを特徴とする。
【0009】
本適用例によれば、レーザー光による周波数調整時に、レーザー光が半導体基板の一方の主面に到達してしまった場合でも、ガードリングにより、レーザー光の熱が能動領域に伝搬するのを抑える効果を奏する。また、ガードリングを金属により形成した場合には、レーザー光により能動面にチャージされた電荷が能動領域に広がるのを抑える効果を奏する遮蔽物になり得る。
したがって、上記適用例の能動領域の配置による効果に加えて、周波数調整用のレーザー光が半導体基板の能動領域に及ぼす悪影響を抑制する効果をより絶大に得ることができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例に記載の振動デバイスにおいて、前記一方の主面と前記振動素子との間、且つ、平面視で前記質量調整部と重なる領域に、レーザー光の透過光を少なくとも減衰させることが可能な遮蔽膜が設けられていることを特徴とする。
【0011】
本適用例によれば、遮蔽膜によって、周波数調整時に一方の主面に到達するレーザー光が抑制されるので、レーザー光による能動領域への悪影響がより抑えられる。
【0012】
[適用例4]上記適用例に記載の振動デバイスにおいて、前記半導体基板の前記一方の主面側に設けられている外部接続端子を備え、前記振動素子が、前記外部接続端子を介して前記半導体基板に保持されていることを特徴とする。
【0013】
本適用例によれば、外部接続端子によって、半導体基板と振動素子との電気的な接続をはかるとともに、半導体基板上での振動素子の保持をはかることができるので、従来のように振動素子を支持するための支持基板を別途用意する必要がなく、また、低背化に有利な支持構造を得ることができる。
【0014】
[適用例5]上記適用例に記載の振動デバイスにおいて、前記半導体基板と前記外部接続端子との間に応力緩和層が設けられていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、半導体基板と外部接続端子との間に設けられている応力緩和層によって、外部から加わる衝撃などが吸収され緩和されるので、振動デバイスの耐衝撃性を向上させることができる。
【0016】
[適用例6]上記適用例に記載の振動デバイスにおいて、前記半導体基板の前記一方の主面側に設けられ、前記外部接続端子に電気的に接続されている第1の電極を備え、前記第1の電極と前記外部接続端子との電気的接続が、前記一方の主面側に設けられている再配置配線によってなされていることを特徴とする。
【0017】
本適用例によれば、振動デバイスは、再配置配線によって外部接続端子の位置やその配列を自由(任意)に設計することができる。
【0018】
[適用例7]上記適用例に記載の振動デバイスにおいて、前記外部接続端子は、突起電極であることを特徴とする。
【0019】
本適用例によれば、振動デバイスは、外部接続端子が突起電極であることから、センサー素子と半導体基板との間に隙間を設けることが可能となり、センサー素子と半導体基板との接触を回避することが可能となる。これにより、振動デバイスは、センサー素子の安定的な駆動を行うことが可能となる。
【0020】
[適用例8]上記適用例に記載の振動デバイスにおいて、前記振動素子の前記振動部が、駆動用振動部と、検出用振動部とを含むことを特徴とする。
【0021】
本適用例によれば、半導体基板の能動領域にダメージを与えることなく、駆動用振動部と検出用振動部とのバランスチューニングを行うことができることにより、高感度を有する振動デバイスとしてのセンサーデバイスを提供することができる。
【0022】
[適用例9]本適用例に記載のモーションセンサーは、上記適用例のいずれかに記載の振動デバイスと、前記振動デバイスを収納するパッケージと、を備えていることを特徴とする。
【0023】
本適用例に記載のモーションセンサーによれば、上記適用例に記載の効果を奏する振動デバイスを備えたモーションセンサーを提供できる。加えて、モーションセンサーは、薄型化された振動デバイスを用いることから、薄型化を実現することが可能となる。
【0024】
[適用例10]本適用例に記載のモーションセンサーは、上記適用例のいずれかに記載の振動デバイスと、複数の前記振動デバイスを収容するパッケージと、を備え、前記複数の振動デバイスは、前記各振動素子の主面同士の成す角度が略直角となるように前記パッケージ内に配置され収容されていることを特徴とする。
【0025】
本適用例に記載のモーションセンサーによれば、上記適用例に記載の効果を奏する複数の振動デバイスを備えたモーションセンサーを提供できる。
また、モーションセンサーは、各振動デバイスが各センサー素子の主面同士の成す角度が略直角となるようにパッケージ内に配置され、収納されていることから、1つで、複数軸に対応したセンシングが可能となる。
【0026】
[適用例11]上記適用例に記載のモーションセンサーにおいて、少なくとも1つの前記振動素子の主面は、前記パッケージの外部部材に接続される被接続面と略平行であることを特徴とする。
【0027】
本適用例に記載のモーションセンサーによれば、1つのモーションセンサーで、パッケージの被接続面と略直交する軸を含む複数軸に対応したセンシングが可能となる。
【0028】
[適用例12]本適用例に記載の振動デバイスの製造方法は、一方の主面に能動領域を含んでいる半導体基板と、振動部、および、前記振動部に設けられている質量調整部、を含む振動素子と、を備え、前記半導体基板の前記一方の主面側に前記振動素子が配置され、平面視で、前記半導体基板上、且つ、前記能動領域とは異なる領域に、前記質量調整部が配置されている振動デバイスの製造方法であって、前記半導体基板の前記一方の主面側に前記振動素子を接続する振動素子接続工程と、前記振動素子接続工程の後で、前記質量調整部にレーザー光を照射することにより、前記振動部の共振周波数が所望の値となるように前記質量調整部の質量を調整する周波数調整工程と、を含むことを特徴とする。
【0029】
本適用例によれば、振動素子接続工程の後で、即ち、半導体基板の上方に振動素子を配置した状態で、質量調整部にレーザー光を照射することにより周波数調整を行った際に、レーザー光が振動素子の一方の主面に到達してしまった場合にも、レーザー光によってトランジスターやメモリー素子などの半導体素子や配線などを含んで構成される集積回路が溶融することなどにより、その特性を損なうことを回避することができる。
したがって、精緻な周波数調整がなされていることにより優れた振動特性を有するとともに、高信頼性を備えた振動デバイスを製造することができる。
【0030】
[適用例13]本適用例に記載の振動デバイスの製造方法は、一方の主面に能動領域を含んでいる半導体基板と、振動部、および、前記振動部に設けられている質量調整部、を含む振動素子と、を備え、前記振動部は、駆動用振動部と、検出用振動部とを含み、前記半導体基板の前記一方の主面側に前記振動素子が配置され、平面視で、前記半導体基板上、且つ、前記能動領域とは異なる領域に、前記質量調整部が配置されている振動デバイスの製造方法であって、前記振動素子を前記半導体基板と接続する前に、前記駆動用振動部の前記質量調整部と、前記検出用振動部の前記質量調整部とに、レーザー光を照射して前記質量調整部の質量を調整することにより、前記駆動用振動部の屈曲振動周波数と、前記検出用振動部の屈曲振動周波数との差を補正する離調周波数調整工程と、前記半導体基板の前記一方の主面側に前記振動素子を接続する振動素子接続工程と、前記振動素子接続工程の後で、前記駆動用振動部の前記質量調整部にレーザー光を照射することにより、前記振動素子が慣性力を受けていない状態において前記駆動用振動部を振動させたときに、前記検出用振動部が振動しないように前記駆動用振動部の前記質量調整部の質量を調整する周波数調整工程と、を含むことを特徴とする。
【0031】
本適用例によれば、半導体基板の能動領域にダメージを与えることなく、駆動用振動部と検出用振動部との周波数特性のバランスが精緻に調整された、高信頼性を有する振動デバイスとしてのセンサーデバイスを製造することができる。
【0032】
[適用例14]本適用例に記載の電子機器は、上記適用例のいずれかに記載の振動デバイス、または上記適用例のいずれかに記載のモーションセンサーを備えていることを特徴とする。
【0033】
本適用例に記載の電子機器によれば、電気的特性の安定した、加えて小型、薄型の電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】振動デバイスとしてのセンサーデバイスの一実施形態の概略構成を示す模式図であり、振動素子としての振動ジャイロ素子側(上側)から俯瞰した平面図。
【図2】センサーデバイスの一実施形態の概略構成を示す模式図であり、(a)は、図1の矢印F側からみた側面図、(b)は、図1の矢印S側から見た側面図。
【図3】センサーデバイスのシリコン基板を上側から俯瞰した平面図。
【図4】振動ジャイロ素子の動作を説明する模式平面図。
【図5】振動ジャイロ素子の動作を説明する模式平面図。
【図6】第1実施形態のセンサーデバイスの製造工程を示すフローチャート。
【図7】第1実施形態のセンサーデバイスの製造工程で用いる振動ジャイロ素子ウェハーを上側から俯瞰した平面図。
【図8】センサーデバイスの変形例1の概略構成の一部を拡大して示す模式図であり、(a)は、上側からみた部分拡大平面図、(b)は、(a)の正断面図。
【図9】センサーデバイスの変形例2の概略構成を示す模式図であり、振動ジャイロ素子側(上側)から俯瞰した平面図。
【図10】センサーデバイスの変形例2の概略構成を示す模式図であり、図9のB−B線断面図。
【図11】(a),(b)は、センサーデバイスの変形例3の概略構成のバリエーションを模式的に示す正断面図。
【図12】第2実施形態のモーションセンサーの概略構成を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は正断面図。
【図13】(a)〜(c)は、センサーデバイス、およびモーションセンサーを搭載した電子機器の概略を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。
【0036】
(第1実施形態)
図1および図2は、第1実施形態にかかる振動デバイスとしてのセンサーデバイスの概略構成を示す模式図であり、図1は、振動素子としての振動ジャイロ素子側(上側)から俯瞰した平面図、図2(a)は、図1の矢印F側からみた側面図、図2(b)は、図1の矢印S側から見た側面図である。また、図3は、センサーデバイスのシリコン基板を上側から俯瞰した平面図である。
【0037】
図1および図2に示すように、振動デバイスとしてのセンサーデバイス1は、半導体基板としてのシリコン基板10と、振動素子としての振動ジャイロ素子(ジャイロ振動片)20と、ベース基板85と、ワイヤー45と、を備えている。
【0038】
振動ジャイロ素子20は、圧電材料である水晶を基材(主要部分を構成する材料)として形成されている。水晶は、電気軸と呼ばれるX軸、機械軸と呼ばれるY軸及び光学軸と呼ばれるZ軸を有している。
そして、振動ジャイロ素子20は、水晶結晶軸において直交するX軸及びY軸で規定される平面に沿って切り出されて平板状に加工され、平面と直交するZ軸方向に所定の厚みを有している。なお、所定の厚みは、発振周波数(共振周波数)、外形サイズ、加工性などにより適宜設定される。
【0039】
また、振動ジャイロ素子20を成す平板は、水晶からの切り出し角度の誤差を、X軸、Y軸及びZ軸の各々につき多少の範囲で許容できる。例えば、X軸を回転軸として0度から5度の範囲で回転して切り出したものを使用することができる。Y軸及びZ軸についても同様である。
振動ジャイロ素子20は、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチング(ウエットエッチングまたはドライエッチング)により形成されている。なお、振動ジャイロ素子20は、1枚の水晶ウェハーから複数個取りすることが可能である。
【0040】
図1に示すように、本実施形態の振動ジャイロ素子20は、ダブルT型と呼ばれる構成となっている。
振動ジャイロ素子20は、中心部分に位置する基部21と、基部21からY軸に沿って延伸された振動部としての1対の検出用振動腕22a,22bと、検出用振動腕22a,22bと直交するように、基部21からX軸に沿って延伸された1対の連結腕23a,23bと、検出用振動腕22a,22bと平行になるように、各連結腕23a,23bの先端側からY軸に沿って延伸された振動部としての各1対の駆動用振動腕24a,24b,25a,25bとを備えている。
さらに、振動ジャイロ素子20は、基部21からY軸に沿って延伸された複数(本例では4本)の保持腕47と、保持腕47から延設された2つの素子接続部48a,48bとを備えている。
【0041】
また、振動ジャイロ素子20は、検出用振動腕22a,22bに、図示しない検出電極が形成され、駆動用振動腕24a,24b,25a,25bに、図示しない駆動電極が形成されている。
振動ジャイロ素子20は、検出用振動腕22a,22bで、角速度を検出する検出振動系を構成し、連結腕23a,23bと駆動用振動腕24a,24b,25a,25bとで、振動ジャイロ素子20を駆動する駆動振動系を構成している。
【0042】
また、検出用振動腕22a,22bのそれぞれの先端部には、幅広形状を成す錘部26a,26bが形成されている。同様に、駆動用振動腕24a,24b,25a,25bのそれぞれの先端部には、幅広形状を成す錘部27a,27b,28a,28bが形成されている。
錘部26a,26b,27a,27b,28a,28bのそれぞれの面上には、質量調整部としての錘電極41が形成されている。
これらの構成を用いることにより、振動ジャイロ素子20は、小型化および角速度の検出感度の向上が図られている。
また、錘電極41が形成された錘部26a,26b,27a,27b,28a,28bは、振動ジャイロ素子20の周波数調整の際に利用される。即ち、各振動腕の錘部26a,26b,27a,27b,28a,28bにレーザーを照射する方法などにより、錘電極41の一部を除去して質量を変化(減少)させて各振動腕の周波数を変化(上昇)させることにより、所望の周波数に調整することができる(詳細は後述する)。
【0043】
図1〜図3に示すように、シリコン基板10は、能動面10a側にトランジスターやメモリー素子などの半導体素子、及び、回路配線を含んで構成される集積回路(図示せず)が形成された能動領域を有している。この能動領域に形成された集積回路には、振動ジャイロ素子20を駆動振動させるための駆動回路と、角速度が加わったときに振動ジャイロ素子20に生じる検出振動を検出する検出回路とが備えられている。
【0044】
本発明では、半導体基板としてのシリコン基板10上に振動素子としての振動ジャイロ素子20が配置されたセンサーデバイス1において、能動領域が、振動ジャイロ素子20の質量調整部と平面視で重ならない領域となっている。具体的には、図3に示すシリコン基板10の能動面10aにおいてドットの網掛けにて図示している能動領域は、上方に配置される振動ジャイロ素子20の質量調整部としての錘電極41と平面視で重なる領域と異なる領域となっており、前記錘電極41と平面視で重なる領域は能動領域と異なる非能動領域となっている。換言すると、センサーデバイス1において、シリコン基板10の能動面10aに形成する集積回路は、質量調整部としての錘電極41と平面視で重なる領域を回避して形成されている。
このように、シリコン基板10の能動面10aにおいて、振動ジャイロ素子20の質量調整部としての錘電極41と平面視で重なる領域を非能動領域とすることにより、錘電極41にレーザーを照射して周波数調整を行う際に、レーザーが振動ジャイロ素子20を透過して能動面10aに到達したときに、能動領域の集積回路にダメージが加わるのを回避することができる。
なお、本実施形態のセンサーデバイス1では、シリコン基板10の能動面10aにおいて、振動ジャイロ素子20の振動腕のうち、駆動用振動腕24a,24b,25a,25bの質量調整部としての錘電極41を含む錘部27a,27b,28a,28bと平面視で重なる領域を非能動領域としている。ここで、検出用振動腕22a,22bの錘部26a,26bに設けられた質量調整部としての錘電極41と平面視で重なる領域を能動領域に含めているのは、検出用振動腕22a,22bの周波数調整(離調周波数調整)を実施するのが、後述するように、シリコン基板10上に接合する前の振動ジャイロ素子20単独の状態の時であるためである。仮に、シリコン基板10上に振動ジャイロ素子20を接合した後で検出用振動腕22a,22bの周波数調整を行う必要がある場合には、シリコン基板10の能動面10aの、検出用振動腕22a,22bの錘部26a,26b、若しくは錘部26a,26bに設けられた錘電極41と平面視で重なる領域を非能動領域とする構成にすることができる。
また、本実施形態では、シリコン基板10の能動面10aにおいて、各駆動用振動腕24a,24b,25a,25bの錘電極41を含む錘部27a,27b,28a,28bと平面視で重なる領域を非能動領域としている。非能動領域は、少なくとも質量調整部としての錘電極41と平面視で重なる領域を含めばよいが、本実施形態では、製造マージンを考慮してこのようにしている。
【0045】
シリコン基板10は、能動面10a側に設けられた第1の電極11を有している。第1の電極11は、シリコン基板10の集積回路に直接導通して形成されたものである。また、能動面10a上には、パッシベーション膜となる第1絶縁膜が形成されており(不図示)、この第1絶縁膜には、第1の電極11上に開口部(不図示)が形成されている。
このような構成によって第1の電極11は、開口部内にて外側に露出した状態となっている。
【0046】
図1および図2に示すように、上記第1絶縁膜の開口部内に露出した第1の電極11上には、外部接続端子12が配設されている。この外部接続端子12は、例えば、Auスタッドバンプで形成された突起電極となっている。なお、外部接続端子12は、Auスタッドバンプの他に銅、アルミやはんだボールなど他の導電性材料にて形成することもできる。
このような構成のもとに、シリコン基板10に形成された集積回路は、第1の電極11および外部接続端子12を介して振動ジャイロ素子20と電気的に接続されるようになっている。
この際、センサーデバイス1は、外部接続端子12が突起電極となっていることから、振動ジャイロ素子20とシリコン基板10との間に隙間が設けられる。
【0047】
また、シリコン基板10に形成された集積回路には、第1の電極11以外に図示しない他の電極が形成されている。この他の電極には図示しない配線が接続され、その配線を介して、上記第1絶縁膜の開口部内にて外部に露出する接続用端子13と接続されている。
接続用端子13は、電気的、あるいは機械的な接続を成すためのパッド状のものであって、例えば、金(Au)、アルミニウム(Al)などの金属が用いられたワイヤー(ボンディングワイヤー)45などの接続部材によって、外部基板(ベース基板85)と接続される。
なお、本例では、接続用端子13とベース基板85との接続にワイヤー45を用いる構成で説明したが、ワイヤー45に替えてフレキシブル配線基板(FPC:Flexible Printed Circuits)を用いて接続することもできる。
【0048】
第1の電極11、他の電極、接続用端子13は、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、または、これらを含む合金などによって形成されている。特に接続用端子13については、ワイヤーボンディングの際の接合性を高めるため、その表面にニッケル(Ni)、金(Au)のメッキを施しておくのが好ましい。
このようにすることで、特にさびによる接触性、接合性の低下を防止することができる。また、ハンダメッキ、ハンダプリコートなどの最表面処理を施したものとしてもよい。
【0049】
また、第1絶縁膜は、酸化珪素(SiO2)、窒化珪素(Si34)などの無機絶縁材料によって形成することができる。この他の第1絶縁膜を形成する材料としては、例えばポリイミド樹脂、シリコーン変性ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、BCB(benzocyclobutene)及びPBO(polybenzoxazole)などの樹脂を用いることができる。
【0050】
シリコン基板10の能動面10aと対向する面側(非能動面10b側)には、ベース基板85が図示しない接着剤などの接合部材により接合(接続)されている。
ベース基板85は、例えばセラミック基板のような絶縁性材料で形成されており、シリコン基板10と接合される接続面には接続部82が形成され、この接続部82には、金(Au)、銀(Ag)などの金属被膜が形成されている。
そして、接続部82とシリコン基板10に形成された接続用端子13とがワイヤー45によって接続されている。
【0051】
なお、ベース基板85は、板状の基板、周囲に側壁を有し中央部が凹形状のパッケージ(収納容器)を例示することができる。
ベース基板85が板状の基板である場合は、ベース基板85上に接続されたシリコン基板10や振動ジャイロ素子20などは、ベース基板85に接続される図示しない金属製キャップなどにより気密的に封止される。
また、ベース基板85が、周囲に側壁を有し中央部が凹形状のパッケージ(収納容器)である場合は、パッケージ内に収納されたシリコン基板10や振動ジャイロ素子20などは、パッケージの外壁に開口面に接合される図示しない金属製リッドなどを用いて気密的に封止される。
【0052】
振動ジャイロ素子20は、平面視において、シリコン基板10と重なるようにシリコン基板10の能動面10a側に配置されている。
なお、振動ジャイロ素子20は、基部21及び各振動腕の表裏面を主面とする。ここでは、基部21において外部と電気的に接続する面を一方の主面20aといい、一方の主面20aと対向する面を他方の主面20bという。
【0053】
振動ジャイロ素子20の素子接続部48a,48bの一方の主面20aには、上記各検出電極、各駆動電極から引き出された、接続電極としての引き出し電極29が形成されており、各引き出し電極29とシリコン基板10の外部接続端子12とが、導電性接着剤48によって電気的及び機械的に接続されている。
これにより、振動ジャイロ素子20は、シリコン基板10に保持されている。
【0054】
〔振動ジャイロ素子の動作〕
ここで、センサーデバイス1の振動ジャイロ素子20の動作について説明する。
図4及び図5は、振動ジャイロ素子の動作を説明する模式平面図である。図4は駆動振動状態を示し、図5(a)、図5(b)は、角速度が加わった状態における検出振動状態を示している。
なお、図4及び図5において、振動状態を簡易に表現するために、各振動腕は線で表してあり、保持腕47および接続部は省略している。
【0055】
図4において、振動ジャイロ素子20の駆動振動状態を説明する。
まず、シリコン基板10の集積回路(駆動回路)から駆動信号が印加されることにより、振動ジャイロ素子20は角速度が加わらない状態において、駆動用振動腕24a,24b,25a,25bが矢印Eで示す方向に屈曲振動を行う。この屈曲振動は、実線で示す振動姿態と2点鎖線で示す振動姿態とを所定の周波数で繰り返している。
【0056】
次に、この駆動振動を行っている状態で、振動ジャイロ素子20にZ軸回りの角速度ωが加わると、振動ジャイロ素子20は、図5に示すような振動を行う。
まず、図5(a)に示すように、駆動振動系を構成する駆動用振動腕24a,24b,25a,25b及び連結腕23a,23bには、矢印B方向のコリオリ力が働く。また同時に、検出用振動腕22a,22bは、矢印B方向のコリオリ力に呼応して、矢印C方向に変形する。
【0057】
その後、図5(b)に示すように、駆動用振動腕24a,24b,25a,25b及び連結腕23a,23bには、矢印B’方向に戻る力が働く。また同時に、検出用振動腕22a,22bは、矢印B’方向の力に呼応して、矢印C’方向に変形する。
振動ジャイロ素子20は、この一連の動作を交互に繰り返して新たな振動が励起される。
なお、矢印B,B’方向の振動は、重心Gに対して周方向の振動である。そして、振動ジャイロ素子20は、検出用振動腕22a,22bに形成された検出電極が、振動により発生した水晶の歪を検出することで角速度が求められる。
【0058】
(センサーデバイスの製造方法)
ここで、第1実施形態のセンサーデバイス1の製造方法について説明する。
なお、本実施形態では、図1に示すセンサーデバイス1において、ベース基板85として凹部を有するパッケージを用いて、そのパッケージ内にセンサーデバイス1を接合し蓋体により封止する態様のセンサーデバイスの製造方法を説明する。
図6は、センサーデバイスの製造工程を示すフローチャートであり、図7は、センサーデバイスの製造工程で用いる振動ジャイロ素子用ウェハーを上側から俯瞰した平面図である。
【0059】
図6に示すように、センサーデバイス1の製造方法は、ベース基板85を準備する工程(ベース基板準備工程S1)と、シリコン基板10を形成する工程(シリコンウェハー製造工程S2−1、ダイシング工程S2−2)と、振動ジャイロ素子20を形成する工程(外形形成工程S3−1、電極形成工程S3−2)と、振動ジャイロ素子20の各振動腕の屈曲振動周波数の差を補正する離調周波数調整工程S3−3と、振動ジャイロ素子20を振動ジャイロ素子用ウェハー2から個片化するブレイク工程S3−4と、シリコン基板10をベース基板85に接合して電気的に接続するシリコン基板接続工程S4と、シリコン基板10上に振動ジャイロ素子20を接合して電気的に接続する振動ジャイロ素子接続工程S5と、センサーデバイス1における振動ジャイロ素子20の周波数を所望の値に調整する周波数調整工程S6と、を含んでいる。
【0060】
[ベース基板準備工程]
まず、セラミック基板などで形成されたベース基板85を準備する。ベース基板85の一面には、シリコン基板10との電気的接続を行うための接続部82が形成されている(ステップS1)。
【0061】
[シリコン基板形成工程]
次に、シリコン基板10を形成する工程について説明する。
シリコン基板10は、半導体製造プロセスを用いて、シリコンウェハーに複数一括して形成する。この工程において、シリコンウェハーに形成される各シリコン基板10の能動面10a上の、集積回路の導電部となる位置に、第1の電極11、接続用端子13、及び図示しない他の電極を形成する。
【0062】
ついで、第1の電極11及び他の電極を覆ってシリコン基板10上に第1絶縁膜を形成する。
ついで、周知のフォトリソグラフィー法及びエッチング法によって第1の電極11及び他の電極を覆う第1絶縁膜の一部を除去し、開口部を形成する。これにより、これら開口部内に第1の電極11、他の電極、および接続用端子13を露出させる。
接続用端子13については、その表面にニッケル(Ni)、金(Au)のメッキを施すことにより、ワイヤーボンディングの際の接合性を高めておく。なお、ハンダメッキ、ハンダプリコートなどの最表面処理を施したものとしてもよい。
ついで、第1の電極11上に、Auスタッドバンプで形成された外部接続端子12を形成する。なお、外部接続端子12は、Auスタッドバンプの他に銅、アルミ(Al)やはんだボール、はんだペーストの印刷など他の導電性材料にて形成することもできる(ステップS2−1)。
【0063】
次に、シリコンウェハーに複数個取りされて形成されたシリコン基板10を個片化するために、ダイシング装置などによってダイシング(切断)する(ステップS2−2)。
【0064】
[シリコン基板接続工程]
ついで、シリコン基板10の非能動面10b側を、ベース基板85の接続部82の形成されている一面に接着剤などの接合部材(図示せず)を介して接合する。
ついで、シリコン基板10の接続用端子13とベース基板85の接続部82とを、ワイヤーボンディング法によりワイヤー45を用いて接続する(ステップS4)。
【0065】
[振動ジャイロ素子形成工程]
ついで、前述した構成にて振動ジャイロ素子20を形成する。
振動ジャイロ素子20は、図7に示す振動ジャイロ素子用ウェハー2を用いて多数個取りにて形成することができる。
まず、振動ジャイロ素子用ウェハー2にフォトリソグラフィー技術を用いたエッチングにより複数の振動ジャイロ素子20の外形を形成する(ステップS3−1)。
ついで、フォトリソグラフィー技術を用いたスパッタリングや蒸着により、振動ジャイロ素子に、駆動電極、検出電極、引き出し電極29などの電極や配線を形成する。この電極形成工程にて、振動ジャイロ素子20の駆動用振動腕24a,24b,25a,25bの錘部27a,27b,28a,28b、および、検出用振動腕22a,22bの錘部26a,26bに質量調整部としての錘電極41を同時に形成することができる(ステップS3−2)。
【0066】
[離調周波数調整工程]
ついで、レーザー光を用いて振動ジャイロ素子20の離調周波数調整を行う。
離調周波数調整工程では、検出用振動腕22a,22bと、駆動用振動腕24a,24b,25a,25bとの屈曲振動周波数の差をみて、その差を補正するバランス調整(チューニング)を行うものであり、振動ジャイロ素子用ウェハー2の状態で行うことができる。
チューニングは、振動ジャイロ素子20の錘部26a,26b,27a,27b,28a,28bのそれぞれに形成された錘電極41に、集光されたレーザー光を照射して行う。レーザー光が照射された錘電極41は、レーザー光のエネルギーによりその一部が溶融、蒸発する。この錘電極41の溶融、蒸発により、検出用振動腕22a,22b、駆動用振動腕24a,24b,25a,25bの質量が変化する。これによって、検出用振動腕22a,22b、駆動用振動腕24a,24b,25a,25bの共振周波数が変化するので、各振動腕のバランス調整(チューニング)を行うことができる(ステップS3−3)。
【0067】
[振動ジャイロ素子ブレイク工程]
ついで、振動ジャイロ素子用ウェハー2をブレイクして個片の振動ジャイロ素子20を得る個片化を行う。個片化は、ステップS3−1の外形形成工程にて振動ジャイロ素子用ウェハー2の振動ジャイロ素子20の外形の一部の連結部分にミシン目や溝を形成しておくことにより、そのミシン目や溝に沿ってブレイクすることによって行うことができる(ステップS3−4)。
【0068】
[振動ジャイロ素子接続工程]
ついで、振動ジャイロ素子20をシリコン基板10に載置し、シリコン基板10の外部接続端子12と、振動ジャイロ素子20の素子接続部48a,48bの一方の主面20aに形成された引き出し電極29とを接続する(ステップS5)。
【0069】
[周波数調整工程]
ついで、レーザー光を用いて振動ジャイロ素子20の周波数調整(バランスチューニング)を行う。
バランスチューニングは、振動ジャイロ素子20の各振動腕のうち、駆動用振動腕24a,24b,25a,25bの錘部27a,27b,28a,28bのそれぞれに形成された錘電極41に、上記ステップS3−3の離調周波数調整と同様に、集光されたレーザー光を照射して行う。レーザー光が照射された錘電極41は、レーザー光のエネルギーにより溶融、蒸発し、その質量変化により駆動用振動腕24a,24b,25a,25bの共振周波数が変化させることによって、各振動腕のバランス調整(チューニング)を行うことができる(ステップS6)。具体的には、センサーデバイス1(振動ジャイロ素子20)が回転していない状態において駆動用振動腕24a,24b,25a,25bを励振して振動させたときに、検出用振動腕22a,22bが振動しないように各駆動用振動腕24a,24b,25a,25bの錘電極41(質量調整部)の質量調整による周波数調整を行う。
【0070】
このとき、錘電極41を溶融、蒸発させたレーザー光が、振動ジャイロ素子20を透過することがあるが、本例の構成では、シリコン基板10の能動面10aにおいて、駆動用振動腕24a,24b,25a,25bの錘部27a,27b,28a,28bと平面視で重なる領域とは異なる領域を能動領域としている。これにより、レーザー光によって、トランジスターやメモリー素子などの半導体素子や配線などを含んで構成される集積回路が溶融して特性が損なわれることを回避することができる。
なお、本実施形態のセンサーデバイス1の製造方法において、半導体基板としてのシリコン基板10上に振動ジャイロ素子20を配置してから行う周波数調整(ステップS6)では、駆動用振動腕24a,24b,25a,25bのみ質量調整を行うことによりバランス調整行う構成について説明している。上述したとおり、検出用振動腕22a,22bの錘部26a,26bと平面視で重なる領域は、能動領域に含めているが、シリコン基板10上に振動ジャイロ素子を配置する振動ジャイロ接続工程(ステップS5)の後で、検出用振動腕22a,22bの錘部26a,26bの質量調整(周波数調整)が必要な場合は、錘部26a,26bと平面視で重なる領域も非能動領域とする必要がある。
【0071】
[封止工程]
ついで、ベース基板(パッケージ)85上に蓋体としてのリッドを接合することにより、シリコン基板10および振動ジャイロ素子が接合されたベース基板85の凹部を封止する。例えば、金属製のリッド(蓋体)を、鉄(Fe)−ニッケル(Ni)合金等からなるシールリングを介してシーム溶接することにより接合することができる。このとき、必要に応じて、ベース基板85の凹部とリッドとにより形成されるキャビティーを減圧空間、または不活性ガス雰囲気にして密閉・封止することができる(ステップS7)。
また、別のリッド接合方法としては、リッドをはんだ等の金属ろう材を介してベース基板85上に接合したり、または、ガラス製のリッドを用いて、低融点ガラス等でベース基板85上に接合することもできる。
【0072】
[ベーキング工程、特性検査工程]
ついで、封止された状態のセンサーデバイス1を、所定温度のオーブンに所定時間投入するベーキングを行う(ステップS8)。
そして、電気特性検査や外観検査などの特性検査を行って、規格外の不良品を取り除き(ステップS9)、一連のセンサーデバイス1の製造工程が終了する。
【0073】
上述したように、第1実施形態のセンサーデバイス1は、シリコン基板10の能動面10aにおいて、駆動用振動腕24a,24b,25a,25bの錘部27a,27b,28a,28bと平面視で重なる領域とは異なる領域を能動領域としている。これにより、振動ジャイロ素子接続工程(ステップS5)の後で行う周波数調整工程(ステップS6)において、錘電極41を溶融、蒸発させたレーザー光が、振動ジャイロ素子20を透過してシリコン基板10の能動面10aに到達した場合にも、レーザー光によってトランジスターやメモリー素子などの半導体素子や配線などを含んで構成される集積回路が溶融して特性を損なうことを回避することができる。
【0074】
また、第1実施形態のセンサーデバイス1は、シリコン基板10の外部接続端子12と振動ジャイロ素子20とが、従来のようなリード線などを介さず直接的に接続する構成となっている。これにより、センサーデバイス1は、リード線の撓み量を考慮した空隙が不要となることから、従来の構成と比較して、厚さを低減することが可能となる。上記構成は、更なる薄型を要求されるセンサーデバイスにおいて、特に好適である。
【0075】
また、センサーデバイス1の製造方法は、上記の効果を奏するセンサーデバイス1を製造し、提供することができる。
【0076】
なお、接続電極としての引き出し電極29は、素子接続部48a,48b以外の部分、例えば基部21の主面20aに形成されていてもよい。
なお、この形態は、以降の実施形態にも適用される。
【0077】
(変形例1)
図8を用いて、センサーデバイスの変形例1について説明する。図8は、センサーデバイスの変形例1の概略構成の一部を拡大して示す模式図であり、(a)は、上側からみた部分拡大平面図、(b)は、(a)の正断面図である。なお、本変形例にかかるセンサーデバイスは、上記第1実施形態の構成と能動領域と非能動領域との境界部分に新たな構成を加えた点が異なるものである。よって、シリコン基板の上方に配置される振動ジャイロ素子、および、シリコン基板が載置されるベース基板は図示を省略している。また、上記第1実施形態との共通部分については、同一符号を付して説明を省略し、上記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0078】
図8に示すように、本変形例1のセンサーデバイス120のシリコン基板110には、能動面110a側にトランジスターやメモリー素子などの半導体素子を含んで構成される集積回路(不図示)が形成された能動領域を有している。この能動領域は、上記第1実施形態のセンサーデバイス1と同様に、上方に配置される振動ジャイロ素子20の質量調整部、即ち、駆動用振動腕の先端に設けられた質量調整部としての錘電極を含む錘部と平面視で重ならない領域に設けられている。
ここで、シリコン基板110の能動面110aにおいて、駆動用振動腕の錘部(質量調整部)と平面視で重なる領域を、非能動領域と呼ぶ。
【0079】
本変形例1のセンサーデバイス120において、能動領域と、上記非能動領域との間には、ガードリング40が設けられている。
以下、ガードリング40構造の一例について説明する。
シリコン基板110の能動面110a上には、第1絶縁膜111が形成されている。また、第1絶縁膜111上には、第1層間絶縁膜112、配線18、第2層間絶縁膜113、およびパッシベーション膜となる第2絶縁膜114が順次積層されている。アルミや銅などからなる配線18は能動領域に形成され、図示しない第1の電極あるいはシリコン基板110に形成されたトランジスターやメモリー素子などの半導体素子と接続されている。
【0080】
第1絶縁膜111と第1層間絶縁膜112との間にはベースガードリング31が形成され、ベースガードリング31から第1絶縁膜111を貫通して能動面110aに接するベース貫通ガードリング30が形成されている。
また、第1層間絶縁膜112と第2層間絶縁膜113との間には、ガードリング33が形成され、ガードリング33から第1層間絶縁膜112を貫通してベースガードリング31に全周を接する貫通ガードリング32が形成されている。
さらに、第2層間絶縁膜113と第2絶縁膜114との間にはガードリング35が形成され、ガードリング35から第2層間絶縁膜113を貫通してガードリング33と全周を接する貫通ガードリング34が形成されている。
これらベースガードリング31、ガードリング33,35、貫通ガードリング32,34により構成されたガードリング40は、上記非能動領域と能動領域との間に、上記非能動領域を囲むような形状にて形成されている。
【0081】
ガードリング40の形成材料には、例えば、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、銅(Cu)などの金属の他に、ポリシリコンなどを用いることができるが、本変形例1のガードリング40は、金属材料を用いて形成することが好ましい。
【0082】
上述した変形例1のセンサーデバイス120によれば、振動ジャイロ素子の質量調整部と平面視で重なる領域(非能動領域)と、能動領域との間に、金属材料を用いて形成されたガードリング40が設けられている。
これにより、振動ジャイロ素子接続工程(ステップS5)後にレーザー光により周波数調整を行う際に、質量調整部としての錘電極41を溶融、蒸発させたレーザー光が、振動ジャイロ素子20を透過してシリコン基板110の能動面110aの上記非能動領域に到達した場合に、レーザー光の熱が能動領域に伝搬するのを抑える効果とともに、レーザーによるチャージされた電荷が能動領域に広がるのを抑える効果を奏する遮蔽物になる。よって、例えば、メモリー素子に格納されているデータの不要な書き換えを抑制することが可能である。
したがって、本変形例1のセンサーデバイス120によれば、上記実施形態のセンサーデバイス1の効果に加えて、周波数調整用のレーザー光が半導体基板としてのシリコン基板の能動領域に及ぼす悪影響を抑制する効果をより絶大に得ることができる。
【0083】
(変形例2)
次に、図9および図10を用いて、センサーデバイスの変形例2について説明する。
図9および図10は、センサーデバイスの変形例2の概略構成を示す模式図であり、図9は、シリコン基板側(上側)から俯瞰した平面図、図10は、図9のB−B線断面図である。
なお、本変形例2にかかるセンサーデバイスは、上記第1実施形態の構成のうち、シリコン基板と振動ジャイロ素子との接合構造が異なるものであるので、上記第1実施形態との共通部分については、同一符号を付して説明を省略し、上記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。また、図9および図10では、シリコン基板を載置するベース基板は図示を省略している。
【0084】
図9および図10に示すように、本変形例2のセンサーデバイス60は、能動面10a側に応力緩和層15が設けられたシリコン基板100と、そのシリコン基板100上に接合された振動ジャイロ素子20と、を備えている。
【0085】
シリコン基板100は、能動面10a側に設けられた第1の電極11と、第1の電極11に電気的に接続されて能動面10a側に設けられた外部接続端子12と、能動面10aと外部接続端子12との間に設けられた応力緩和層15と、能動面10a側に設けられた接続用端子13とを備えている。
【0086】
第1の電極11は、シリコン基板100の集積回路に直接導通して形成されたものである。また、能動面10a上には、パッシベーション膜となる第1絶縁膜14が形成されており、この第1絶縁膜14には、第1の電極11上に開口部14aが形成されている。
このような構成によって第1の電極11は、開口部14a内にて外側に露出した状態となっている。
【0087】
第1絶縁膜14上には、第1の電極11や他の電極を避けた位置に、絶縁樹脂からなる応力緩和層15が形成されている。
また、応力緩和層15上には、再配置配線としての配線16が形成されている。配線16は、応力緩和層15を貫通して設けられたビアホール14bによって、第1絶縁膜14の開口部14a内にて第1の電極11と接続されている。この配線16は、集積回路の電極の再配置を行うためのもので、シリコン基板100の所定部に配置された第1の電極11からビアホール14bを介して中央部側に延びて形成されている。
この配線16は、シリコン基板100の第1の電極11と外部接続端子12との間を配線することから、一般的には再配置配線とよばれ、微細設計によって位置の制約が大きい第1の電極11に対して、外部接続端子12の位置を任意にずらして配置し、シリコン基板100における振動ジャイロ素子20との接続位置の自由度を高めるための重要な構成要素である。
【0088】
シリコン基板100上に振動ジャイロ素子20が配置されたセンサーデバイス60において、図9のシリコン基板100の能動面10aにドットの網掛けで示した能動領域は、上方に配置される振動ジャイロ素子20の質量調整部としての錘電極41と平面視で重なる領域を非能動領域として画定され、シリコン基板100の能動面10aに形成する集積回路は、質量調整部としての錘電極41と平面視で重なる領域である非能動領域を回避して形成されている。
【0089】
なお、シリコン基板100の能動面10a側には、配線16や応力緩和層15上に樹脂からなる耐熱性の第2絶縁膜を形成する構成としてもよい。第2絶縁膜は、ソルダーレジストでもよい。この第2絶縁膜には、応力緩和層15上にて配線16上に開口部を形成することにより、配線16が開口部内にて外側に露出した状態とすることができる。
【0090】
そして、露出した配線16上には、外部接続端子12が配設されている。この外部接続端子12は、例えば、Auスタッドバンプで形成された突起電極となっている。なお、外部接続端子12は、Auスタッドバンプの他に銅、アルミやはんだボールなど他の導電性材料にて形成することもできる。
このような構成のもとに、シリコン基板100に形成された集積回路は、第1の電極11、配線16、外部接続端子12を介して振動ジャイロ素子20と電気的に接続されるようになっている。
この際、センサーデバイス60は、外部接続端子12が突起電極となっていることから、振動ジャイロ素子20とシリコン基板100との間に隙間が設けられる。
【0091】
また、シリコン基板100に形成された集積回路には、第1の電極11以外に図示しない他の電極が形成されている。この他の電極は、第1の電極11の場合と同様に、再配置配線が接続され、接続用端子13と接続されている。
【0092】
振動ジャイロ素子20の素子接続部48a,48bの一方の主面20aに形成され、上記各検出電極、各駆動電極から引き出された接続電極としての引き出し電極29と、シリコン基板100の外部接続端子12とが、導電性接着剤48によって電気的及び機械的に接続されている。
これにより、振動ジャイロ素子20は、シリコン基板100に保持されている。
【0093】
上述したように、本変形例2のセンサーデバイス60は、シリコン基板100の能動面10a側に設けられた応力緩和層15を介して第1の電極11と電気的に接続された外部接続端子12と、振動ジャイロ素子20の基部21の引き出し電極29とが接続されている。
これらにより、センサーデバイス60は、シリコン基板100と外部接続端子12との間に設けられている応力緩和層15によって、外部から加わる衝撃などが吸収され緩和される。
【0094】
この結果、センサーデバイス60は、外部から加わる衝撃などが振動ジャイロ素子20に伝達され難くなることから、シリコン基板100の外部接続端子12と振動ジャイロ素子20とが、従来のようなリード線などを介さず直接的に接続することが可能となる。
したがって、センサーデバイス60は、従来の構成と比較して、厚さを低減することが可能となる。
【0095】
また、センサーデバイス60は、第1の電極11と外部接続端子12との電気的接続が、シリコン基板100の能動面10a側に設けられた再配置配線(配線16など)によってなされていることから、再配置配線によって外部接続端子12の位置やその配列を自由(任意)に設計することができる。
【0096】
また、上記第1実施形態のセンサーデバイス1と同様に、センサーデバイス60は、外部接続端子12が突起電極であることから、振動ジャイロ素子20とシリコン基板100との間に隙間を設けることが可能となり、振動ジャイロ素子20とシリコン基板100との接触を回避することが可能となり、振動ジャイロ素子20の安定的な駆動を行うことが可能となる。
【0097】
(変形例3)
次に、図11を用いて、センサーデバイスの変形例3について説明する。
図11(a)および(b)は、センサーデバイスの変形例3の概略構成のバリエーションを模式的に示す正断面図である。具体的には、図11(a)は、図10と同じ断面を示し、図11(b)は、図2(a)と同じ断面を示している。
なお、本変形例3にかかるセンサーデバイスは、上記第1実施形態および上記変形例2の構成のうち、シリコン基板と振動ジャイロ素子との間に遮蔽層を設ける点が異なるものであるので、上記第1実施形態および上記変形例2との共通部分については、同一符号を付して説明を省略し、上記第1実施形態および上記変形例2と異なる部分を中心に説明する。また、図11では、シリコン基板を載置するベース基板は図示を省略している。
【0098】
まず、本変形例3のセンサーデバイスのバリエーションのうち、上記変形例2のセンサーデバイス60をベースにしたバリエーションを説明する。
図11(a)に示す本変形例3のセンサーデバイス90の一つのバリエーションは、上記変形例2のセンサーデバイス60と同一の構成を有している。即ち、センサーデバイス90は、能動面10a側に応力緩和層15が設けられたシリコン基板100’と、そのシリコン基板100’上に接合された振動ジャイロ素子20と、を備えている。応力緩和層15上には、再配置配線としての配線16が形成されている。配線16は、応力緩和層15を貫通して設けられたビアホール14bによって第1の電極11と接続されている。
【0099】
シリコン基板100’上に振動ジャイロ素子20が配置されたセンサーデバイス90において、シリコン基板100’の能動面10aの能動領域は、上方に配置される振動ジャイロ素子20の質量調整部としての錘電極41と平面視で重なる領域(非能動領域)を回避して形成されている。
【0100】
さらに、本変形例3のシリコン基板100’と振動ジャイロ素子20との間の非能動領域と平面視で重なる領域に、即ち、振動ジャイロ素子20の駆動用振動腕24a,24b,25a,25bの質量調整部としての錘電極41が設けられた錘部27a,27b,28a,28b(図1、図2、図9、図10を参照)と平面視で重なる領域を含む領域には、レーザー光を遮蔽可能な遮蔽膜70が設けられている。ここでいう「レーザー光を遮蔽可能な」とは、レーザー光を完全に遮断するということではなく、一定の弱さに減衰させるものを含む。
図11(a)のセンサーデバイス90においては、遮蔽膜70は、応力緩和層15上に設けられている。
遮蔽膜70は、上述のような位置に設けられることにより、応力緩和層15やシリコン基板100’の能動面10aに対するレーザー光の遮蔽効果を生じることになる。
【0101】
また、遮蔽膜70は、配線16などの再配置配線と同一工程にて形成することができる。
さらに、金属などの導電体により形成された遮蔽膜70は、図示しないビアホールなどを介してグランド(GND)電位に接続することができる。このようにすれば、電源、或いは導体基板の能動領域に形成されている配線などに対して伝搬するノイズをグランド(GND)電位に接続された遮蔽膜70によって遮蔽することができるため、安定した電源電位の供給を行うこと、或いはノイズによる半導体基板の電気的特性への影響を抑制する効果を奏する。
【0102】
ついで、図11(b)に示す本変形例3のセンサーデバイス90の他のバリエーションは、上記第1実施形態のセンサーデバイス1と同一の構成をベースとして有している。即ち、センサーデバイス90’は、シリコン基板10’の能動面10aに形成された第1の電極11上に外部接続端子12が配設され、この外部接続端子12と、振動ジャイロ素子20の引き出し電極29とが位置合わせされ、電気的に接続されている。シリコン基板10´の能動面10aの能動領域は、上方に配置される振動ジャイロ素子20の質量調整部としての錘電極41と平面視で重なる領域(非能動領域)を回避して形成されている。
【0103】
さらに、本変形例3のシリコン基板10’と振動ジャイロ素子20との間の非能動領域と平面視で重なる領域には、レーザー光を遮蔽可能な遮蔽膜70が設けられている。なお、図示はしないが、シリコン基板10’の能動面10a上にはパッシベーション膜となる第1絶縁膜が形成されており、遮蔽膜70はその第1絶縁膜上に設けられる。
【0104】
上述のように、本変形例3のセンサーデバイス90、センサーデバイス90’によれば、シリコン基板100’またはシリコン基板10’の能動面10aにおいて、振動ジャイロ素子20の質量調整部としての錘電極41と平面視で重なる領域を非能動領域として、半導体素子を含んで構成される集積回路を形成しないようにしているとともに、能動面10aの非能動領域にレーザー光を遮蔽可能な遮蔽膜を設けている。
遮蔽膜70は、上述のような位置に設けられることにより、応力緩和層15やシリコン基板100’の能動面10aに対するレーザー光の遮蔽効果を生じるので、非能動領域にレーザー光が到達した場合に発生し得る熱や電荷が、能動領域に伝搬して半導体回路の誤動作を引き起こしたり、破損したりする不具合を回避することができる。
【0105】
(第2実施形態)
図12は、第2実施形態のモーションセンサーとしてのジャイロセンサーの概略構成を示す模式図である。図12(a)は、ジャイロセンサーをパッケージ上面から俯瞰した平面図であり、図12(b)は、(a)の正断面図である。
なお、図12(a)では、リッドを便宜上省略してある。また、上記第1実施形態との共通部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0106】
図12に示すように、モーションセンサーとしてのジャイロセンサー150は、3つのセンサーデバイス(以下、センサーデバイス1A、センサーデバイス1B、センサーデバイス1Cと称すが、上記第1実施形態で説明したセンサーデバイス1と同一である)と、各センサーデバイスを内部に収納する略直方体形状のパッケージ80と、を有し、センサーデバイス1A、センサーデバイス1B、センサーデバイス1Cがパッケージ80の内部に配置され収納されている。
なお、各センサーデバイス1A,1B,1Cは、後述するように、互いの主面どうしが所定の角度を有してジャイロセンサー150内に収容させる必要がある。このため、各センサーデバイス1A,1B,1Cのベース基板85には、パッケージ80の凹部内で所定の角度でセンサーデバイスを載置できるように形成された保持基板85a,85b,85cが装着されている。
【0107】
パッケージ80は、底面93と壁面91,92とを含む内面を有する凹部が形成されている。この凹部は、センサーデバイス1A、センサーデバイス1B、センサーデバイス1Cの収納後、リッド(蓋体)94によって覆われる。
パッケージ(パッケージベース)80は、セラミックグリーンシートを成形して積層し、焼成した酸化アルミニウム質焼結体などが用いられている。また、リッド94には、コバールなどの金属、ガラス、セラミックなどが用いられている。
【0108】
センサーデバイス1Aは、振動ジャイロ素子201の一方の主面20a(図2参照、以下参照の記載は省略する)または他方の主面20b(図2参照、以下参照の記載は省略する)と、パッケージ80の凹部の底面93とが、略平行になるようにパッケージ80の底面93に固定、接続されている。そして、センサーデバイス1Aは、図示しないパッケージ内部電極と電気的に接続されている。
【0109】
他の2つのセンサーデバイス1B,1Cは、それぞれの振動ジャイロ素子202,203の一方の主面20aまたは他方の主面20b同士の成す角度が略直角となるように、パッケージ80の内部に配置され収納されている。
センサーデバイス1Bは、パッケージ80の壁面91に固定、接続され、センサーデバイス1Cは、パッケージ80の壁面92に固定、接続されている。2つのセンサーデバイス1B,1Cも、図示しないパッケージ内部電極と電気的に接続されている。
なお、パッケージ内部電極は、パッケージ80の外部に設けられた外部電極(図示せず)と電気的に接続されている。外部電極、内部電極は、タングステン(W)などのメタライズ層に、ニッケル(Ni)、金(Au)などの各被膜をメッキなどにより積層した金属被膜からなる。
【0110】
ジャイロセンサー150は、各センサーデバイス1A,1B,1Cが、パッケージ80の内部に上記のように配置され収納された状態で、リッド94がシームリング、低融点ガラスなどの接合部材によってパッケージ80の上面に接合される。
これにより、パッケージ80の内部は、気密に封止される。なお、パッケージ80の内部は、各センサーデバイスの振動ジャイロ素子201,202,203の振動が阻害されないように、真空状態(真空度が高い状態)、または、不活性ガス雰囲気に保持されていることが好ましい。
【0111】
ここで、ジャイロセンサー150の動作について概略を説明する。
ここでは、パッケージ80の底面93が、互いに直交する3軸であるX’軸、Y’軸、Z’軸に対して、X’軸及びY’軸と平行で、Z’軸と直交しているものとする。
これにより、外力などによってジャイロセンサー150の姿勢が変化し、角速度が加わった場合、振動ジャイロ素子201の一方の主面20aまたは他方の主面20bとパッケージ80の底面93とが、略平行になるようにパッケージ80の内部に収納されているセンサーデバイス1Aは、振動ジャイロ素子201の一方の主面20aまたは他方の主面20bとZ’軸とが略直交していることから、Z’軸回りに対する角速度を検出する。
【0112】
一方、振動ジャイロ素子202,203の一方の主面20aまたは他方の主面20b同士の成す角度が略直角となるとともに、各振動ジャイロ素子202,203の一方の主面20aまたは他方の主面20bとセンサーデバイス1Aの振動ジャイロ素子201の一方の主面20aまたは他方の主面20bとの成す角度が略直角となるように、パッケージ80の内部に収納されている2つのセンサーデバイス1B,1Cは、一方が、振動ジャイロ素子202の一方の主面20aまたは他方の主面20bとX’軸とが略直交していることから、X’軸回りに対する角速度を検出し、他方が、振動ジャイロ素子203の一方の主面20aまたは他方の主面20bとY’軸とが略直交していることから、Y’軸回りに対する角速度を検出する。
【0113】
これらにより、ジャイロセンサー150は、互いに直交する3軸であるX’軸、Y’軸、Z’軸回りに対する角速度を、1つのジャイロセンサー150で検出することができる。
このことから、ジャイロセンサー150は、撮像機器の手ぶれ補正や、GPS(Global Positioning System)衛星信号を用いた移動体ナビゲーションシステムにおける車両などの姿勢検出、姿勢制御などに好適に用いられる。
【0114】
また、ジャイロセンサー150は、上記第1実施形態に記載のセンサーデバイスを用いているため、上記第1実施形態に記載のセンサーデバイスと同等の効果を有している。すなわち、ジャイロセンサー150は、電気的特性の安定した小型、薄型化を実現することが可能となる。
【0115】
なお、上記第2実施形態のモーションセンサーとしてのジャイロセンサー150では、3つのセンサーデバイス1A,1B,1Cを用いた例で説明したが、センサーデバイスの数はこれに限らず、1つ以上であればよい。例えば、センサーデバイスを、1つ用いれば、1軸方向の角速度の検出が可能であり、例えば、2つのセンサーデバイスを用いれば、異なる2軸方向の角速度の検出が可能となる。
【0116】
(電子機器)
以下、上記センサーデバイス、およびモーションセンサーを搭載した電子機器について、図13を参照して説明する。図13(a)〜(c)は、センサーデバイス、およびモーションセンサーを搭載した電子機器について説明するための概略図である。
【0117】
図13(a)は、携帯電話への適用例である。携帯電話230は、アンテナ部231、音声出力部232、音声入力部233、操作部234、及び表示部200を備えており、図示しない制御回路部に上記センサーデバイス、およびモーションセンサーが搭載されている。
図13(b)は、ビデオカメラへの適用例である。ビデオカメラ240は、受像部241、操作部242、音声入力部243、及び表示部200を備えており、図示しない制御回路部に上記センサーデバイス、およびモーションセンサーが搭載されている。
図13(c)は、情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistants)への適用例である。情報携帯端末400は、複数の操作ボタン401及び電源スイッチ402、および表示部200を備えており、図示しない制御回路部に上記センサーデバイス、およびモーションセンサーが搭載されている。
【0118】
このように搭載されているセンサーデバイス、およびモーションセンサーは、小型であるとともに安定した電気特性を有しており、電子機器の小型化、特性の安定化に寄与することができる。
【0119】
なお、上記センサーデバイス、およびモーションセンサーが搭載される電子機器としては、図13に示すものの他、ゲーム機、ゲーム機端末、デジタルスチールカメラ、カーナビゲーション装置、ワークステーション、テレビ電話などが挙げられる。そして、これらの各種電子機器のモーションセンシング機能を果たす部材として好適である。
【0120】
以上、発明者によってなされた本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。
【0121】
例えば、上記実施形態および変形例では、振動素子としての振動ジャイロ素子形成材料として、結晶X軸及び結晶Y軸で規定される平面に沿って切り出された水晶を用いた例を説明したが、他の切り出し角度の水晶を用いても良い。また、水晶以外の圧電体材料を用いることができる。例えば、窒化アルミニウム(AlN)や、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、四ほう酸リチウム(Li247)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)などの酸化物基板や、ガラス基板上に窒化アルミニウムや五酸化タンタル(Ta25)などの圧電体材料を積層させて構成された積層圧電基板、あるいはジルコン酸チタン酸鉛(Pb(Zrx,Ti1-x)O3)などの圧電セラミックスを用いることができる。
また、圧電体材料以外の材料を用いて振動片を形成することができる。例えば、シリコン半導体材料などを用いて振動素子を形成することもできる。
また、振動素子の駆動振動の励振方式や検出振動の検出方式は、圧電効果によるものだけに限らない。静電気力(クーロン力)を用いた静電駆動型や、磁力を利用したローレンツ駆動型などの振動片においても、本発明の構成およびその効果を発揮させることができる。
【0122】
また、振動素子としての振動ジャイロ素子の形状は、上記実施形態および変形例で説明した所謂ダブルT型に限らない。音叉型、H型音叉、あるいは、MEMSジャイロのように櫛歯電極で静電検出する振動素子においても、本発明の半導体基板の能動領域の配置によれば、上述した実施形態および変形例に記載したものと同様な効果を得ることができる。
【0123】
また、本発明のセンサーデバイスを利用したモーションセンサーは、上記第2実施形態で説明した角速度を検出するジャイロセンサー150に限らない。角速度の他に、角加速度、加速度、力、温度、磁気など、種々の物理量を検出するセンサー素子に利用することができる。
【0124】
また、本発明のセンサーデバイスやモーションセンサーに用いる振動素子は、上記実施形態および変形例で説明した振動ジャイロ素子20などのセンサー素子に限らず、例えば、発振器などに用いられる共振子であってもよい。
【符号の説明】
【0125】
1,1A,1B,1C,60,90,90’,120…センサーデバイス、2…振動ジャイロ素子用ウェハー、10,10’,100,100’,110…半導体基板としてのシリコン基板、10a,110a…能動面、10b…非能動面、11…第1の電極、12…外部接続端子、13…接続用端子、14…第1絶縁膜、14a…開口部、14b…ビアホール、15…応力緩和層、16,18…配線、20,201,202,203…振動素子としての振動ジャイロ素子、20a…一方の主面、20b…他方の主面、21…基部、22a,22b…検出用振動腕、23a,23b…連結腕、24a,24b,25a,25b…駆動用振動腕、26a,26b,27a,27b,28a,28b…錘部、29…接続電極としての引き出し電極、30…ベース貫通ガードリング、31…ベースガードリング、32,34…貫通ガードリング、33,35,40…ガードリング、41…質量調整部としての錘電極、45…ワイヤー、47…保持腕、48…導電性接着剤、48a,48b…素子接続部、70…遮蔽膜、80…パッケージ、82…接続部、85…ベース基板、85a…保持基板、91,92…壁面、93…底面、94…蓋体としてのリッド、111…第1絶縁膜、112…第1層間絶縁膜、113…第2層間絶縁膜、114…第2絶縁膜、150…モーションセンサーとしてのジャイロセンサー、200…表示部、230…電子機器としての携帯電話、231…アンテナ部、232…音声出力部、233…音声入力部、234…操作部、240…電子機器としてのビデオカメラ、241…受像部、242…操作部、243…音声入力部、400…電子機器としての情報携帯端末、401…複数の操作ボタン、402…電源スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の主面に能動領域を含んでいる半導体基板と、
振動部、および、前記振動部に設けられている質量調整部、を含む振動素子と、を備え、
前記半導体基板の前記一方の主面側に前記振動素子が配置されている振動デバイスであって、
平面視で、前記半導体基板上、且つ、前記能動領域とは異なる領域に、前記質量調整部が配置されていることを特徴とする振動デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の振動デバイスにおいて、
前記半導体基板の前記一方の主面側、且つ平面視で前記質量調整部と前記能動領域との間にガードリングが設けられていることを特徴とする振動デバイス。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の振動デバイスにおいて、
前記一方の主面と前記振動素子との間、且つ、平面視で前記質量調整部と重なる領域に、レーザー光の透過光を少なくとも減衰させることが可能な遮蔽膜が設けられていることを特徴とする振動デバイス。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の振動デバイスにおいて、
前記半導体基板の前記一方の主面側に設けられている外部接続端子を備え、
前記振動素子が、前記外部接続端子を介して前記半導体基板に保持されていることを特徴とする振動デバイス。
【請求項5】
請求項4に記載の振動デバイスにおいて、
前記半導体基板と前記外部接続端子との間に応力緩和層が設けられていることを特徴とする振動デバイス。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の振動デバイスにおいて、
前記半導体基板の前記一方の主面側に設けられ、前記外部接続端子に電気的に接続されている第1の電極を備え、
前記第1の電極と前記外部接続端子との電気的接続が、前記一方の主面側に設けられている再配置配線によってなされていることを特徴とする振動デバイス。
【請求項7】
請求項4ないし請求項6のいずれか一項に記載の振動デバイスにおいて、前記外部接続端子は、突起電極であることを特徴とする振動デバイス。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の振動デバイスにおいて、
前記振動素子の前記振動部が、駆動用振動部と、検出用振動部とを含むことを特徴とする振動デバイス。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の振動デバイスと、
前記振動デバイスを収納するパッケージと、を備えていることを特徴とするモーションセンサー。
【請求項10】
請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の振動デバイスと、
複数の前記振動デバイスを収容するパッケージと、を備え、
前記複数の振動デバイスは、前記各振動素子の主面同士の成す角度が略直角となるように前記パッケージ内に配置され収容されていることを特徴とするモーションセンサー。
【請求項11】
請求項10に記載のモーションセンサーにおいて、
少なくとも1つの前記振動素子の主面は、前記パッケージの外部部材に接続される被接続面と略平行であることを特徴とするモーションセンサー。
【請求項12】
一方の主面に能動領域を含んでいる半導体基板と、
振動部、および、前記振動部に設けられている質量調整部、を含む振動素子と、を備え、
前記半導体基板の前記一方の主面側に前記振動素子が配置され、平面視で、前記半導体基板上、且つ、前記能動領域とは異なる領域に、前記質量調整部が配置されている振動デバイスの製造方法であって、
前記半導体基板の前記一方の主面側に前記振動素子を接続する振動素子接続工程と、
前記振動素子接続工程の後で、前記質量調整部にレーザー光を照射することにより、前記振動部の共振周波数が所望の値となるように前記質量調整部の質量を調整する周波数調整工程と、を含むことを特徴とする振動デバイスの製造方法。
【請求項13】
一方の主面に能動領域を含んでいる半導体基板と、
振動部、および、前記振動部に設けられている質量調整部、を含む振動素子と、を備え、
前記振動部は、駆動用振動部と、検出用振動部とを含み、
前記半導体基板の前記一方の主面側に前記振動素子が配置され、平面視で、前記半導体基板上、且つ、前記能動領域とは異なる領域に、前記質量調整部が配置されている振動デバイスの製造方法であって、
前記振動素子を前記半導体基板と接続する前に、前記駆動用振動部の前記質量調整部と、前記検出用振動部の前記質量調整部とに、レーザー光を照射して前記質量調整部の質量を調整することにより、前記駆動用振動部の屈曲振動周波数と、前記検出用振動部の屈曲振動周波数との差を補正する離調周波数調整工程と、
前記半導体基板の前記一方の主面側に前記振動素子を接続する振動素子接続工程と、
前記振動素子接続工程の後で、前記駆動用振動部の前記質量調整部にレーザー光を照射することにより、前記振動素子が慣性力を受けていない状態において前記駆動用振動部を振動させたときに、前記検出用振動部が振動しないように前記駆動用振動部の前記質量調整部の質量を調整する周波数調整工程と、を含むことを特徴とする振動デバイスの製造方法。
【請求項14】
請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の振動デバイス、または請求項9ないし請求項11のいずれか一項に記載のモーションセンサーを備えていることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−172970(P2012−172970A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31711(P2011−31711)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】