説明

排気ガス後処理方法

【課題】排気ガスの温度を急速に上昇させるためのラピッドヒートアップロジックを行う際に、これがエラーなしに行われるか否かを判断する自己診断機能を有する排気ガス後処理方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る排気ガス後処理方法は、エンジンから排出されて排気ラインを通る排気ガスの温度を急速に上昇させるためのラピッドヒートアップ(RHU:rapid heat up)ロジックをモニターする運転領域に含まれるか否かを判断するステップと、ラピッドヒートアップロジックを行ったり中断するためのオン/オフ信号を感知するステップと、ラピッドヒートアップロジックを行うためのインジェクション信号が活性化したか否かを判断するステップと、ラピッドヒートアップロジックを行うための部品のエラーを感知するステップと、ラピッドヒートアップロジックが行われる間に排気ガスの温度を感知し、モデル値と比較するステップと、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排気ガス後処理方法に係り、より詳しくは、排気ガスに含まれている有害物質を低減させる触媒を活性化させるために排気ガスの温度を急速に上昇させるラピッドヒートアップ(RHU:rapid heat up)ロジックを含む排気ガス後処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の排気ガス浄化装置によれば、排気パイプに媒煙酸化触媒(DOC)、ディーゼル媒煙フィルター(DPF)及び選択的触媒還元(SCR)装置がこの順に取り付けられている。
エンジンから発生した排気ガスはディーゼル酸化触媒、ディーゼル媒煙フィルター及び選択的触媒還元装置をこの順に通過して排気ガスに含まれている有害物質が除去される。
すなわち、ディーゼル媒煙フィルターは排気ガスに含まれている粒子状物質(Particulate Material;PM)を捕集し、ディーゼル酸化触媒は排気ガスに含まれている一酸化炭素及び炭化水素を酸化させ、選択的触媒還元装置は排気ガスに含まれている窒素酸化物を窒素ガスに還元させる。
【0003】
一方、窒素酸化物が還元剤と反応するためには、選択的触媒還元装置前端の排気ガスの温度が200℃以上になる必要がある。しかしながら、選択的触媒還元装置は排気パイプの最後端に取り付けられているため、選択的触媒還元装置前端の排気ガスの温度が200℃以上になるには長時間を要し、選択的触媒還元装置前端の排気ガスの温度が200℃以上になる前には、排気ガスに含まれている窒素酸化物がほとんど還元せず外部に排出される問題がある。
上記問題の解決策として、触媒を速やかに昇温させるために、排気ガスの温度を急速に上昇させるラピッドヒートアップ(RHU)ロジックが次第に拡大適用されているが、このようなラピッドヒートアップを行うための運転領域を判断し、そのエラーを正確に判断する方法が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−202735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、排気ガスの温度を急速に上昇させるためのラピッドヒートアップロジックを行う際に、これがエラーなしに行われるか否かを判断する自己診断(on borad diagnosis:OBD)機能を有する排気ガス後処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る排気ガス後処理方法は、エンジンから排出されて排気ラインを通る排気ガスの温度を急速に上昇させるためのラピッドヒートアップ(RHU:rapid heat up)ロジックをモニターする運転領域に含まれるか否かを判断するステップと、前記ラピッドヒートアップロジックを行ったり中断するためのオン/オフ信号を感知するステップと、前記ラピッドヒートアップロジックを行うためのインジェクション信号が活性化したか否かを判断するステップと、前記ラピッドヒートアップロジックを行うための部品のエラーを感知するステップと、前記ラピッドヒートアップロジックが行われる間に排気ガスの温度を感知し、モデル値と比較するステップと、を含むことを特徴とする。
【0007】
前記ラピッドヒートアップロジックによって上昇した排気ガスの温度がモデル値から外れた場合にエラー信号を出力するステップをさらに含むことを特徴とする。
【0008】
前記エラー信号を累積するステップと、累積された値を保存し、その累積された値が設定値を超えれば、ラピッドヒートアップロジック警告灯(MIL:malfunction indicator lamp)を活性化させるステップと、をさらに含むことを特徴とする。
【0009】
前記ラピッドヒートアップロジックを行うための運転領域は、前記ラピッドヒートアップロジックに進入するための条件を満足する必要があり、前記ラピッドヒートアップロジックに進入するための条件は、大気圧、車速、エンジン回転数、吸気温、冷却水温、ギヤ段数及び燃料噴射量に基づいて判断されることを特徴とする。
【0010】
前記ラピッドヒートアップロジックに進入するための条件が満足されれば、エンジン回転数及び燃料噴射量に基づいて、前記ラピッドヒートアップを行うための後噴射量を決定し、燃料噴射量を増大させることを特徴とする。
【0011】
前記部品のエラーを感知するステップにおいて、前記部品は、燃料を噴射するインジェクター及び排気ガスの温度を感知する温度センサーであることを特徴とする。
【0012】
前記排気ラインには、排気ガスに含まれている有害物質を酸化させるディーゼル酸化触媒と、排気ガスに含まれている粒子状物質をろ過するディーゼル媒煙フィルターと、排気ラインを通る排気ガスに還元剤を噴射するドージングモジュールと、前記ドージングモジュールから噴射された還元剤を用いて、排気ガスに含まれている窒素酸化物を酸化/還元させる選択的触媒還元(SCR:selective catalyst reduction)ユニットと、がこの順に配置されることを特徴とする。
【0013】
前記温度センサーは、前記エンジンの後端部、前記ディーゼル酸化触媒の前端部、前記ディーゼル媒煙フィルターの前端部及び前記選択的触媒還元ユニットの前端部の温度を感知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ラピッドヒートアップロジックの誤作動を未然に防止してそのラピッドヒートアップロジックを一層安定的に実現することができ、エラー信号による誤作動をユーザーに知らせることにより自己診断機能を向上させる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る排気ガス後処理システムの概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る排気ガス後処理方法の概略フローチャートである。
【図3】本発明の実施形態に係る排気ガス後処理方法の詳細フローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係る排気ガス後処理方法において、ラピッドヒートアップロジックが行われる状態での排気ガスの温度と、その自己診断機能を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を詳しく説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る排気ガス後処理システムの概略構成図である。
図1に示す通り、排気ガス後処理システムは、エンジン100と、インジェクター110と、制御部120と、排気ライン130と、ディーゼル酸化触媒140と、ディーゼル媒煙フィルター150と、ドージングモジュール160と、ミキサー170と、選択的触媒還元ユニット180と、温度センサーT3、T4、T5、T6、T6及びT7と、を備える。
エンジン100にインジェクター110が配設され、インジェクター110は、燃料をシリンダー中に噴射し、ラピッドヒートアップ(RHU)のために後噴射を行う。
【0017】
エンジン100から排出される排気ガスは、排気ライン130のディーゼル酸化触媒140と、ディーゼル媒煙フィルター150と、ミキサー170及び選択的触媒還元ユニット180をこの順に通過し、マフラ(図示せず)を介して外部に排出される。
温度センサーT6、T7は、ディーゼル酸化触媒140に流入する排気ガスの温度、ディーゼル媒煙フィルター150に流入する排気ガスの温度、及び選択的触媒還元ユニット180に流入する排気ガスの温度を感知する。
【0018】
制御部120は、エンジン100の運転状態及び排気ライン130を通る排気ガスの温度を用いて、ラピッドヒートアップ(RHU)ロジックを行うか否かを判断し、ラピッドヒートアップロジックを行うための条件が満足されれば、インジェクター110により正常的な噴射を行うとともに、さらに後噴射を行う。
さらに、制御部120は、エンジン100の運転状態及び排気ライン130を通る排気ガスの温度を用いて、ラピッドヒートアップロジックの開始及び中断を制御する。
【0019】
図2は、本発明の実施形態に係る排気ガス後処理方法の概略フローチャートを示し、図3は、本発明の実施形態に係る排気ガス後処理方法の詳細フローチャートを示す。
図2に示す通り、S200において、ラピッドヒートアップ(RHU)機能モニター条件であるか否かを判断する。即ち、ここで、ラピッドヒートアップ機能をモニターする領域であるか否かを判断する。
ラピッドヒートアップ機能をモニターする領域は、ラピッドヒートアップ機能が行われる状態と見なされる。
より具体的に、図3における(1)において、制御部120は、大気圧、車速、エンジン回転数、吸気温、冷却水温、ギヤ段数、燃料噴射量及び排気ガス温度T6またはT7を感知し、ラピッドヒートアップ機能を行うか否かを判断し、ラピッドヒートアップ機能が行われる状態をモニターし続ける。
【0020】
図2におけるS210において、ラピッドヒートアップ機能が「オン」の状態であるか、「オフ」の状態であるかを判断し、S220において、ラピッドヒートアップのためのインジェクション信号が活性化したか否かを判断する。
インジェクション信号は、制御部120から印加されて、インジェクター110に後噴射を行わせる駆動信号を含む。
S230において、ラピッドヒートアップを行うための部品のエラーを判断する。
図3における(4)に示す通り、ラピッドヒートアップを行うために、インジェクター110及び温度センサーT3〜T7が用いられ、インジェクター110または温度センサーT3〜T7が誤作動または故障すると、制御部120は、ラピッドヒートアップのための部品のエラー信号を発生する。
【0021】
S240において、ラピッドヒートアップを行う間に、排気ガスの温度を感知し、これをモデリングされた温度領域と比較して、排気ガスの温度が設定された温度領域に含まれるか否かを判断する。
S250において、ラピッドヒートアップが終了すれば、モニター動作を終了し、結果を出力する。
図3における(5)及び(6)に示す通り、温度センサーを用いて排気ガスの温度を感知することにより、ラピッドヒートアップ戦略(strategy、機能)を評価(evaluation)する。
より具体的には、モニター期間中に、排気ガスの温度が設定された温度範囲を超えれば、エラー信号を発生し、その発生されたエラー信号を計数(累積)して、この計数された回数を保存する。
また、計数された回数が設定された数値を超えれば、ラピッドヒートアップ(RHU)ロジックが非正常的に作動すると判断して、警告灯(MIL:malfunction indicator lamp)を表示する。
【0022】
図4は、本発明の実施形態に係る排気ガス後処理方法において、ラピッドヒートアップロジックが行われる状態での排気ガスの温度と、その自己診断機能を示すグラフである。
図4に示す通り、横軸は時間を示し、縦軸は選択的触媒還元ユニット180に流入する排気ガスの温度を示す。
同図に示すように、設定されたマップデータによってRHUモデル温度400の範囲が設定され、RHUが行われる(ON)間に実際に選択的触媒還元ユニット180に流入する排気温410のグラフが形成される。なお、RUHが行われていない(OFF)間に排気温420のグラフも設定される。
さらに、エンジンの運転条件及びラピッドヒートアップ(RHU)ロジックによるモデリングされた排気ガスの温度430も形成され、モデリングされた温度430及び設定温度範囲400を超える部分においてエラー信号440が発生する。
制御部120は、エラー信号を計数し、その計数された回数を保存し、計数された回数が設定値から外れれば、警告灯(MIL)を表示させる。
【0023】
以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の属する技術範囲を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0024】
100 エンジン
110 インジェクター
120 制御部
130 排気ライン
140 ディーゼル酸化触媒(DOC)
150 ディーゼル媒煙フィルター(DPF)
160 ドージングモジュール
170 ミキサー
180 選択的触媒還元(SCR)ユニット
T3、T4、T5、T6、T7 温度センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから排出されて排気ラインを通る排気ガスの温度を急速に上昇させるためのラピッドヒートアップ(RHU:rapid heat up)ロジックをモニターする運転領域に含まれるか否かを判断するステップと、
前記ラピッドヒートアップロジックを行ったり中断するためのオン/オフ信号を感知するステップと、
前記ラピッドヒートアップロジックを行うためのインジェクション信号が活性化したか否かを判断するステップと、
前記ラピッドヒートアップロジックを行うための部品のエラーを感知するステップと、
前記ラピッドヒートアップロジックが行われる間に排気ガスの温度を感知し、モデル値と比較するステップと、
を含むことを特徴とする排気ガス後処理方法。
【請求項2】
前記ラピッドヒートアップロジックによって上昇した排気ガスの温度がモデル値から外れた場合にエラー信号を出力するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の排気ガス後処理方法。
【請求項3】
前記エラー信号を累積するステップと、
累積された値を保存し、その累積された値が設定値を超えれば、ラピッドヒートアップロジック警告灯(MIL:malfunction indicator lamp)を活性化させるステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の排気ガス後処理方法。
【請求項4】
前記ラピッドヒートアップロジックを行うための運転領域は、前記ラピッドヒートアップロジックに進入するための条件を満足する必要があり、
前記ラピッドヒートアップロジックに進入するための条件は、大気圧、車速、エンジン回転数、吸気温、冷却水温、ギヤ段数及び燃料噴射量に基づいて判断されることを特徴とする請求項1に記載の排気ガス後処理方法。
【請求項5】
前記ラピッドヒートアップロジックに進入するための条件が満足されれば、エンジン回転数及び燃料噴射量に基づいて、前記ラピッドヒートアップを行うための後噴射量を決定し、燃料噴射量を増大させることを特徴とする請求項4に記載の排気ガス後処理方法。
【請求項6】
前記部品のエラーを感知するステップにおいて、
前記部品は、燃料を噴射するインジェクター及び排気ガスの温度を感知する温度センサーであることを特徴とする請求項1に記載の排気ガス後処理方法。
【請求項7】
前記排気ラインには、
排気ガスに含まれている有害物質を酸化させるディーゼル酸化触媒と、
排気ガスに含まれている粒子状物質をろ過するディーゼル媒煙フィルターと、
排気ラインを通る排気ガスに還元剤を噴射するドージングモジュールと、
前記ドージングモジュールから噴射された還元剤を用いて、排気ガスに含まれている窒素酸化物を酸化/還元させる選択的触媒還元(SCR:selective catalyst reduction)ユニットと、
がこの順に配置されることを特徴とする請求項1に記載の排気ガス後処理方法。
【請求項8】
前記温度センサーは、前記エンジンの後端部、前記ディーゼル酸化触媒の前端部、前記ディーゼル媒煙フィルターの前端部及び前記選択的触媒還元ユニットの前端部の温度を感知することを特徴とする請求項7に記載の排気ガス後処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−117512(P2012−117512A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107326(P2011−107326)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【Fターム(参考)】