説明

排気浄化装置

【課題】NOx触媒部11、酸化触媒部12、及びフィルタ13を排気上流側から下流側に向かってこの順で配置したエンジンの排気浄化装置において、燃費の悪化を防止しながら、フィルタ13の再生を確実に実行する。
【解決手段】エンジン2の排気通路を、NOx触媒部11の上流側において、排気をNOx触媒部へと導く第1通路27と排気をNOx触媒部11を介さずに酸化触媒部12へと導く第2通路28とに分岐させるとともに、該排気通路中に制御弁29を設けて、該制御弁29により、該第1通路27に流入する排気の流量と該第2通路28に流入する排気の流量との流量比率を変更可能にした

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
エンジンの排気浄化装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンの排気通路に配設される排気浄化装置として、排気上流側から排気下流側に向かって、NOx触媒部、酸化触媒部、及びフィルタを順に配置したものが知られている(例えば、特許文献1の図6参照)。この排気浄化装置は、NOx触媒部(HC−SCR触媒)の上流側に設けられた燃料添加装置から排気中に燃料(HC成分)を添加することで、添加燃料とNOxとを反応させて、排気中のNOxの浄化を図るように構成されている。
【0003】
上記排気浄化装置では、フィルタに排気微粒子(PM:Particulate Matter)が堆積することにより排気微粒子の捕集効率が低下するという問題があり、この問題を解決するべく、現在までに様々なフィルタ再生技術が提案されている。例えば、特許文献2に示すものでは、フィルタ再生時にエンジンの燃焼室にポスト噴射を行うことで、排気中のHC成分を増加させて酸化触媒部におけるHC成分の酸化反応を促進し、このとき生じる反応熱により、フィルタ温度(フィルタに供給される排気温度)を上昇させてフィルタの再生を図るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−75610号公報
【特許文献2】特開2010−265754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、NOx触媒部の下流側に酸化触媒部を配設するようにした上述の排気浄化装置では、フィルタ再生時に、ポスト噴射を実行することで酸化触媒部に流入する排気中のHC成分を増加させようとしても、排気がNOx触媒部を通過する際に排気中のNOxとHC成分とが反応するため、その反応分だけ酸化触媒部に流入するHC成分が減少して、該HC成分の酸化反応を利用したフィルタ昇温効果(排気昇温効果)を十分に得られない場合がある。このため、フィルタに堆積した排気微粒子を十分に燃焼除去することができず、フィルタを通過する排気の圧力損失が増加したり、フィルタによる排気微粒子の捕集効果が低下したりするという問題がある。
【0006】
これに対して、ポスト噴射による燃料噴射量を予め、NOxとの反応分だけ増量しておくことが考えられる。しかし、NOxとHC成分との反応量はNOx触媒部の温度等にも左右されるため、この反応量を正確に予測することは困難である。したがって、例えば、NOxとHC成分との実際の反応量が予測値よりも多いと、酸化触媒部に供給されるHC量が不足してフィルタの再生温度(フィルタに供給される排気温度)が目標温度を下回ってしまうという問題がある。逆に、NOxとHC成分との実際の反応量が予測値よりも少ないと、酸化触媒部に対して必要以上に多くのHC成分が供給されることとなって、燃費の悪化を招くという問題がある。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、NOx触媒部、酸化触媒部、及びフィルタを排気上流側から下流側に向かってこの順で配置したエンジンの排気浄化装置に対して、その構成に工夫を凝らすことで、燃費の悪化を防止しながら、フィルタの再生を確実に実行しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明では、エンジンの排気通路を、NOx触媒部の上流側において、排気をNOx触媒部へと導く第1通路と排気をNOx触媒部を介さずに酸化触媒部へと導く第2通路とに分岐させるとともに、該排気通路中に制御弁を設けて、該制御弁により、該第1通路に流入する排気の流量と該第2通路に流入する排気の流量との流量比率を変更可能にした。
【0009】
具体的には、請求項1の発明では、エンジンの排気通路に配設され、HCを還元剤として排気中のNOxを還元するNOx触媒部と、上記NOx触媒部の下流側に配設された酸化触媒部と、上記酸化触媒部の下流側に配設され、排気中に含まれる排気微粒子を捕集するフィルタと、を備えた排気浄化装置を対象とする。
【0010】
そして、上記排気通路は、上記NOx触媒部の上流側において、エンジンからの排気をNOx触媒部へと導く第1通路と、エンジンからの排気をNOx触媒部を介さずに酸化触媒部へと導く第2通路とに分岐して形成されており、上記排気通路には、上記第1通路に流入する排気の流量と上記第2通路に流入する排気の流量との流量比率を変更可能な制御弁が設けられているものとする。
【0011】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、上記フィルタの再生が必要か否かを判定する判定手段と、上記判定手段による判定結果を基に、上記制御弁の作動を制御する弁制御手段とを備えているものとする。
【0012】
請求項1及び請求項2の発明によれば、フィルタの再生が必要な場合には、制御弁の作動(位置)を制御することで、エンジンからの排気の一部(又は全部)を、第2通路に流入させることができる。第2通路に流入した排気流れは、NOx触媒部を通過することなく酸化触媒部に直接供給される。酸化触媒部では、第2通路から供給される排気中のHC成分の酸化反応が促進されて、このとき生じる反応熱によって排気の昇温が図られる。そして、この昇温された排気がフィルタに供給されることで、フィルタ温度が目標温度まで上昇してフィルタに堆積した排気微粒子が燃焼除去される。このように本発明では、フィルタの昇温(フィルタの再生)に必要なHC成分を、第2通路からNOx触媒部を介さずに酸化触媒部に直接、供給することができる。したがって、フィルタ再生時に酸化触媒部に供給されるHC量を正確に制御することができる。これにより、燃費の悪化を防止しつつ、フィルタの再生を確実に行うことができる。
【0013】
請求項3の発明では、請求項2の発明において、上記弁制御手段は、上記判定手段により上記フィルタの再生が必要ないと判定された場合には、上記制御弁により、エンジンからの排気を上記第1及び第2通路のうち1通路にのみ流入させる一方、上記判定手段により上記フィルタの再生が必要と判定された場合には、上記制御弁により、エンジンからの排気を上記第1及び第2通路の双方に流入させるように構成されているものとする。
【0014】
この構成によれば、上記判定手段によりフィルタの再生が必要ないと判定された場合には、制御弁により上記第2通路への排気の流入が遮断され、これにより、エンジンからの排気を全て第1通路からNOx触媒部を通じて大気中に排出させることができる。したがって、フィルタの再生が必要ない場合には、排気中のNOxをNOx触媒部にて十分に還元して、排気中のNOxの浄化効率を向上させることができる。
【0015】
一方、上記判定手段により上記フィルタの再生が必要と判定された場合には、上記制御弁により、上記第1及び第2通路の双方への排気の流入が許容されるため、排気の一部を第2通路からNOx触媒を通過させることなく酸化触媒に直接、供給することができ、これにより、上述した請求項1の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【0016】
請求項4の発明では、請求項3の発明において、上記フィルタに堆積した排気微粒子の量を検出する堆積量検出手段をさらに備え、上記弁制御手段は、上記判定手段によりフィルタの再生が必要と判定された場合において、上記堆積量検出手段により検出された排気微粒子の堆積量が多いほど、上記第2通路に流入する排気の流量を増加させるよう、制御弁の作動を制御するものとする。
【0017】
この構成によれば、フィルタに堆積した排気微粒子の量が多いほど、第2通路から酸化触媒部に流入する排気の流量を増加させて、延いては、該排気と共に酸化触媒部に流入するHC量を増加させることができる。したがって、フィルタに堆積した排気微粒子の堆積量が多いほど、酸化触媒部におけるHC成分の酸化反応を促進して、該酸化触媒部を通ってフィルタに供給される排気の温度を高めることができる。よって、フィルタに堆積した排気微粒子を、その堆積量に応じて効率良く確実に燃焼除去することができる。
【0018】
請求項5の発明では、請求項2乃至4のいずれか一つの発明において、上記NOx触媒部よりも下流側に配設され、排気中のNOx濃度を検出するNOx濃度検出手段をさらに備え、上記弁制御手段は、上記NOx濃度検出手段により検出されたNOx濃度を基に、上記制御弁を制御するように構成されているものとする。
【0019】
請求項6の発明では、請求項5の発明において、上記弁制御手段は、上記判定手段によりフィルタの再生が必要と判定された場合において、上記NOx濃度検出手段により検出されたNOx濃度が高いほど、上記第1通路に流入する排気の流量を増加させるよう、上記制御弁を制御するものとする。
【0020】
請求項5及び請求項6の発明によれば、NOx浄化率の低下を防止しながら、フィルタ再生を効率的に且つ確実に行うことができる。
【0021】
すなわち、フィルタ再生時には、上述の如く、エンジンからの排気の一部(又は全部)が第2通路からNOx触媒部を通らずに酸化触媒部に直接流入する。このため、この第2通路を通過する排気の量が多過ぎると、第1通路からNOx触媒部に供給される排気流量が減少してフィルタ再生中におけるNOx浄化効率が低下する虞がある。これに対して、本発明では、フィルタの再生に際して、NOx濃度検出手段により検出された排気のNOx濃度が高いほど、上記第1通路からNOx触媒部に流入する排気の流量を増加させるようにしたことで、フィルタ再生中におけるNOx浄化性能の低下を極力抑制しながら、フィルタ再生を効率良く確実に実行することができる。
【0022】
請求項7の発明では、請求項1乃至6のいずれか一つの発明において、上記エンジンの気筒内に燃料をポスト噴射又はアフター噴射することにより、上記エンジンから排出される排気中のHC量を制御するHC制御手段をさらに備えているものとする。
【0023】
この構成によれば、排気中のNOxの還元反応に必要なHC量、及び、フィルタの昇温に必要なHC量(酸化触媒部にて必要なHC量)を排気中に供給するために、別途、燃料(HC)添加装置等を設ける必要がないため、装置全体をコンパクト化することができる。
【0024】
請求項8の発明では、請求項1乃至7のいずれか一つの発明おいて、上記NOx触媒部は、NOx触媒を保持する円筒状のNOx触媒保持体を含み、上記酸化触媒部は、酸化触媒を保持する円筒状の酸化触媒保持体を含み、上記フィルタは円筒状に形成されており、上記NOx触媒保持体、上記酸化触媒保持体、及び上記フィルタは、直列に且つ同軸に配設されているものとする。
【0025】
この構成によれば、NOx触媒を保持する円筒状のNOx触媒保持体と、酸化触媒を保持する円筒状の酸化触媒保持体と、円筒状のフィルタとを直列に且つ同軸に配置するようにしたことで、装置全体をコンパクト化することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明の排気浄化装置によると、エンジンの排気通路を、NOx触媒部の上流側において、排気をNOx触媒部へと導く第1通路と排気をNOx触媒部を介さずに酸化触媒部へと導く第2通路とに分岐させるとともに、該排気通路中に制御弁を設けて、該制御弁により、該第1通路に流入する排気の流量と該第2通路に流入する排気の流量との流量比率を変更可能にしたことで、燃費の悪化を防止しながら、フィルタの再生を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る排気浄化装置が適用されるディーゼルエンジンを搭載した油圧ショベルのエンジンルーム内の機器配置を示す概略平面図である。
【図2】図1のII方向矢視図である。
【図3】排気浄化装置の内部構造を示す概略図である。
【図4】図3のIV-IV線断面図である。
【図5】ECUにおける通常運転制御及びフィルタ再生制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0029】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態に係る排気浄化装置1を備えた油圧ショベル100の上部旋回体101内の構造を示している。この排気浄化装置1(図1〜図3参照)は、油圧ショベル100に搭載されたディーゼルエンジン2(以下、単にエンジンという)の排気浄化処理に適用される。
【0030】
上記エンジン2は、例えば直列4気筒エンジンであって、油圧ショベル100の上部旋回体101に設けられたエンジンルーム3内に配設されている。エンジンルーム3内には、エンジン2の他にも、油圧ポンプ4や、ラジエータ5、排気浄化装置1等が収容されている。エンジン2から排出される排気は、排気マニホールド(図示省略)及び排気パイプ7を介して排気浄化装置本体6に導かれ、排気浄化装置本体6からテールパイプ8を介して大気中に排出される。
【0031】
排気浄化装置本体6は、略円筒状をなしていて、エンジン2の側方にて気筒配列方向に直交する方向に略水平に延びている。排気浄化装置本体6の長手方向の一端部には排気パイプ7が下方から接続され、排気浄化装置本体6の長手方向の他端部にはテールパイプ8が上側から接続されている。排気パイプ7及びテールパイプ8はそれぞれ排気浄化装置本体6に対して垂直に接続されている。
【0032】
上記排気浄化装置1は、エンジン2から排出される排気に含まれるNOxを還元して浄化するNOx触媒部11と、排気中に含まれるHC、CO等の有害物質を浄化する酸化触媒部12と、排気中に含まれる煤等の排気微粒子(PM)を捕集するフィルタ13と、を有しており、これらNOx触媒部11、酸化触媒部12、及びフィルタ13は、上記排気浄化装置本体6内に形成される排気通路に、上流側から下流側に向かってこの順で配設されている。
【0033】
上記NOx触媒部11は、酸素共存下でも選択的にNOxをHCと反応させ得るよう反応選択性を高めたHC選択還元型NOx触媒(以下、HC−SCR触媒と言う)を、円筒状のハニカム体(以下、NOx触媒保持体という)14のセル表面に保持して構成されている。このHC−SCR触媒には、例えば、銅・ゼオライト,鉄・ゼオライト等の周知の卑金属系酸化触媒を採用することができ、また、これらHC−SCR触媒を保持しているNOx触媒保持体14には、例えばアルミナ等を採用することができる。
【0034】
上記酸化触媒部12は、円筒状のハニカム体(以下、酸化触媒保持体という)15のセル表面にPt(白金)などの貴金属を保持して触媒層をコートしたものであって、排気中のCO、HCを酸化してCO及びHOを生成する酸化反応を促進するように構成されている。
【0035】
上記フィルタ13は、多孔質のセラミックス製のディーゼル・パティキュレート・フィルタ(DPF)であって、そのセル表面にはPtなどの貴金属を保持した触媒層をコートさせている。フィルタ13は円筒状に形成されており、該フィルタ13、上記NOx触媒保持体14、及び上記酸化触媒保持体15とは、互いに直列に且つ同軸に配設されている。各保持体14,15、及びフィルタ16はそれぞれ、排気浄化装置本体6の管壁に固定されている。
【0036】
上記排気通路におけるフィルタ13の上流側及び下流側は差圧検出通路21を介して連通しており、この差圧検出通路21には、フィルタ上流側及び下流側間の差圧ΔPを検出するべく差圧検出センサ22が設けられている。また、上記フィルタ13の下流側には、排気中のNOx濃度を検出するためのNOxセンサ23が設けられている。各センサ22,23の検出信号は不図示の電気接続ラインを介してECU(Engine Control Unit)25へと出力される。
【0037】
上記排気通路は、NOx触媒部11の上流側において、エンジン2からの排気をNOx触媒部11へと導く第1通路27と、エンジン2からの排気をNOx触媒部11を介さずに酸化触媒部12へと導く第2通路28とに分岐して形成されている(図3参照)。
【0038】
第1通路27と第2通路28とは、排気パイプ7の下流側端部に設けられた隔壁板26によって互い区画されている。隔壁板26は、排気パイプ7の下流側端部において、排気パイプ7内の通路空間を径方向に二分割するように配設されている(図4参照)。隔壁板26における排気下流側の端部は、NOx触媒保持体14の外周面に溶接して固定されている。
【0039】
上記排気通路における第1通路27と第2通路28とに分岐し始める部分には、第1通路27に流入する排気流量と、第2通路28に流入する排気流量との比率を変更するための制御弁29が設けられている。
【0040】
上記制御弁29は、図4に示すように、半円形の板状部材からなる弁体31と、該弁体31に対して回転一体に固定された回動ピン32とを有している。回動ピン32は、排気パイプ7内の通路空間を径方向に貫通するように配設されている。回動ピン32は、その両端部が排気パイプ7の管壁に回動可能に支持されていて、電動モータ33により弁体31と一体で回転駆動される。回動ピン32の外周面は、隔壁板26の排気上流側の端面に対し回転摺動可能に当接している。弁体31は、回動ピン32を電動モータ33により回動させることで、第1通路27の上流側開口を全閉する第1通路全閉位置と、第2通路28の上流側開口を全閉する第2通路全閉位置(後述する通常位置)との間の任意の位置に制御可能になっている。上記電動モータ33は、後述のECU25により作動制御される。
【0041】
上記ECU25は、CPUやROM及びRAM等からなる周知のマイクロコンピュータで構成されている。ECU25は、上記NOxセンサ23、差圧検出センサ22、及び、エンジン2に取り付けられた各種センサ(図示省略)からの検出信号を基に、エンジン2及び制御弁29(電動モータ33)の作動を制御する。
【0042】
ECU25は、差圧検出センサ22により検出された差圧ΔPが予め設定した第1閾圧力未満である場合には、フィルタ13の再生が必要ないと判断して通常運転制御を実行する。具体的には、ECU25は、フィルタ13の再生が必要ないと判断した場合には、制御弁29を通常位置(図3の二点鎖線で示す位置であって、本実施形態では第2通路全閉位置)に制御するとともに、エンジン2の運転状態を基にエンジン2から排出される排気中のNOx濃度を推定して、該推定したNOx濃度を基にNOx触媒部11におけるNOx還元に必要なHC量を算出し、該算出したHC量を排気中に供給するべくエンジン2の燃焼室内にポスト噴射を行う。このポスト噴射は、圧縮上死点付近のメイン噴射に先立って圧縮工程にて行われるものである。
【0043】
ECU25は、差圧検出センサ22により検出された差圧ΔPが第1閾圧力以上である場合には、フィルタ13の再生が必要と判断して、フィルタ再生制御を実行する。具体的には、ECU25は、フィルタ再生制御が必要と判断した場合には、差圧検出センサ22により検出された差圧ΔPを基にフィルタ13に堆積した排気微粒子の量を算出し、該算出した排気微粒子量に基づいて制御弁29の仮目標制御位置を算出する。この仮目標制御位置は、第1通路全閉位置と第2通路全閉位置との中間位置であって、排気微粒子の堆積量が多いほど第2通路28に流入する排気流量が増加するようにECU25により予め記憶されたマップデータを基に算出される。
【0044】
そして、ECU25は、上記算出した仮目標制御位置を、NOxセンサ23により検出されたNOx濃度に応じて修正する。本実施形態では、ECU25は、NOxセンサにより検出されたNOx濃度が高いほど第1通路27に流入する排気流量が増加するように仮目標制御位置を修正して、該修正した仮目標制御位置を制御弁29の真の目標制御位置として設定する。
【0045】
ECU25は、上記フィルタ再生制御時には、NOx触媒部11におけるNOx還元に必要なHC量、及び、酸化触媒部12における排気の昇温に必要なHC量を算出し、該算出したHC量を排気中に供給するべくエンジン2の燃焼室内にポスト噴射を行う。
【0046】
次に、ECU25における通常運転制御及びフィルタ再生制御について、図5のフローチャートを基に詳細に説明する。
【0047】
最初のステップS1では、NOxセンサ23からの濃度信号、差圧検出センサ22からの圧力信号、及びエンジン2に取り付けられた各種センサからの信号を読み込む。
【0048】
ステップS2では、ステップS1で読み込んだ差圧検出センサ22からの圧力信号を基に、フィルタ13の上流側及び下流側の差圧ΔPを算出するとともに、この差圧ΔPが第1閾圧力以上であるか否かを判定し、この判定がNOである場合にはステップS13に進む一方、YESである場合にはステップS3に進む。
【0049】
ステップS3では、フィルタ再生制御を開始するべく、ECU25のROM内に記憶されたフィルタ再生用のプログラムを実行する。
【0050】
ステップS4では、ステップS2で算出した差圧ΔPを基に、フィルタ13に堆積した排気微粒子の堆積量(PM堆積量)を算出する。
【0051】
ステップS5では、ステップS4で算出した排気微粒子の堆積量に基づいて、制御弁29の仮目標制御位置を算出する。
【0052】
ステップS6では、ステップS1で読み込んだNOxセンサからの検出信号を基に、フィルタ13の下流側のNOx濃度を算出する。
【0053】
ステップS7では、ステップS6で算出したのNOx濃度に応じて、上記算出した仮目標制御位置を修正して制御弁29の目標制御位置を決定する。
【0054】
ステップS8では、制御弁29を目標制御位置に制御するべく、電動モータ33に対して必要な制御信号を出力する。
【0055】
ステップS9では、エンジン2の各種センサからの検出信号を基に、NOx触媒部11の上流側における排気中のNOx濃度を算出するとともに、この算出したNOx濃度を基に、NOx触媒部11におけるNOxの還元反応に必要なHC量を算出する。さらに、ステップS4で算出した排気微粒子の堆積量を基に、該排気微粒子を燃焼除去するために酸化触媒部12にて必要なHC量を算出する。エンジン2の運転状態は、ステップS1にて読み込んだエンジン2に付属する各センサからの信号を基に推定すればよい。
【0056】
ステップS10では、エンジン2から排出された直後の排気中(NOx触媒部11の上流側の排気中)のHC量がステップS9で算出したHC量になるように、インジェクタ(燃料噴射弁)に対して必要な制御信号を出力してポスト噴射を実行する。
【0057】
ステップS11では、差圧検出センサ22からの検出信号を読み込んで、現時点における差圧ΔPを算出するとともに、該算出した差圧が第2閾圧力(<第1閾圧力)以下であるか否かを判定し、この判定がNOである場合にはステップS2に戻る一方、YESである場合にはステップS12に進み、ステップS12では、フィルタ再生制御を終了して、しかる後にリターンする。
【0058】
ステップS2の判定がNOである場合に進むステップS13では、制御弁29を上述の通常位置(第2通路全閉位置)に制御するべく、電動モータ33に対して必要な制御信号を出力する。
【0059】
ステップS14では、エンジン2の各種センサからの検出信号を基に、エンジン2から排出される排気中のNOx濃度を算出(推定)して、この算出したNOx濃度を基に、NOx触媒部11におけるNOxの還元反応に必要なHC量を算出する。
【0060】
ステップS15では、エンジン2から排出された直後の排気中のHC量がステップS9で算出したHC量になるように、インジェクタに対して必要な制御信号を出力してポスト噴射を実行し、しかる後にリターンする。
【0061】
以上のように構成された排気浄化装置1では、フィルタ13の再生要求がない通常運転時には(ステップS2の判定がNOである場合には)、ECU25にてステップS13の処理が実行され、ECU25により制御弁29が通常位置(第2通路全閉位置)に制御される。このため、制御弁29により第2通路28の上流側開口が全閉されて該第2通路28への排気の流入が遮断され、この結果、エンジン2からの排気は全て、第1通路27からNOx触媒部11へと供給された後、酸化触媒部12及びフィルタ13を介して大気中に排出される。一方、フィルタ13の再生要求がある場合には、ECU25にてステップS3〜ステップS8の処理が実行されて、制御弁29はECU25により第1通路全閉位置と第2通路全閉位置との間の目標制御位置に制御される。この結果、エンジン2からの排気は、第1通路27からNOx触媒部11に流入する流れと、第2通路28からNOx触媒部11を通らず酸化触媒部12に流入する流れとに分岐する。上記第1通路27からNOx触媒部11に流入する排気中のHC成分は、NOx触媒部11におけるNOxの還元反応に利用される。また、上記第2通路28から酸化触媒部12に流入する排気中のHC成分は酸化触媒部12における酸化反応に利用されて、このとき生じる反応熱により排気の昇温が図られる。そうして、昇温された排気がフィルタ13に供給されることにより、フィルタ13の温度が目標温度(排気微粒子を燃焼可能な温度)に達して、フィルタに堆積した排気微粒子が燃焼除去される。このように上記実施形態では、フィルタ再生時に酸化触媒部12にて必要なHC成分を、第2通路28からNOx触媒部11を介さずに酸化触媒部12に直接、供給するようにしたことで、フィルタ再生時に酸化触媒部12に供給されるHC量を正確に制御することができ、これにより、フィルタ再生に伴う燃費の悪化を防止しながらフィルタ13の再生を確実に実行することができる。
【0062】
さらに、上記実施形態では、フィルタ再生時には、ECU25にてステップS5(及びステップS8)の処理が実行されて、上記フィルタ13に堆積した排気微粒子の量が多いほど第2通路28に流入する排気流量が増加するようにECU25により制御弁29の位置が制御される。これにより、フィルタ13に堆積した排気微粒子の量が多いほど、第2通路28を介して酸化触媒部に供給されるHC成分を増加させることができ、延いては、酸化触媒部におけるHC成分の酸化反応を促進してフィルタ13に供給される排気の温度を高めることができる。よって、フィルタ13に堆積した排気微粒子を、その堆積量に応じて効率良く確実に燃焼除去することができる。
【0063】
さらに、上記実施形態では、フィルタ再生時には、ECU25にてステップS7の処理が実行されて、フィルタ13の下流側のNOx濃度に応じて制御弁29の位置が制御される。これにより、フィルタ再生中のNOx浄化率の低下を極力抑制することができる。すなわち、フィルタ再生時には、上述の如く、エンジン2からの排気の一部が第2通路28からNOx触媒部11を通らずに酸化触媒部12に直接流入する。このため、この第2通路28を通過する排気の量が多過ぎると、第1通路27からNOx触媒部11に供給される排気量が減少してフィルタ再生中におけるNOx浄化効率が低下する虞がある。これに対して、上記実施形態では、フィルタ再生時には、上記NOxセンサ23により検出されたフィルタ13の下流側のNOx濃度が高いほど、上記第1通路27からNOx触媒部11に流入する排気の流量を増加させて、排気中のNOxの還元反応を促進するようにしたことで、フィルタ再生に伴うNOx浄化性能の低下を極力抑制することができる。
【0064】
また、上記実施形態では、ECU25は、NOxの還元反応に必要なHC量、及び、フィルタ13の昇温に必要なHC量(酸化触媒部12にて必要なHC量)を排気中に供給するために、エンジン2の燃焼室にポスト噴射を行う(ステップS10及びステップS15の処理を実行する)ようにしている。したがって、これらの必要なHC量を確保するために、別途、HC添加装置等を設ける必要もない。よって、部品点数を削減して、排気浄化装置1のコンパクト化及び低コスト化を図ることができる。また、燃料添加装置を設けた場合に必要となる専用配管も不要になるので、燃料漏れ等のトラブルを防止して安全性の向上を図ることができる。
【0065】
また、ショベル100等の建設機械においては、上述の如く、排気浄化装置1を油圧ポンプ4等の付属機器と共に狭いエンジンルーム3内に収容する必要があるため、乗用車やトラック等に比べてその設置スペースが制限されるが、上記実施形態では、上述のように、燃料添加装置を別途設ける必要がないので、排気浄化装置1をコンパクト化して狭いエンジンルーム3内に効率良く配置することができる。
【0066】
(他の実施形態)
本発明の構成は、上記実施形態に限定されるものではなく、それ以外の種々の構成を包含するものである。すなわち、上記実施形態では、フィルタ再生時には、制御弁29を第1通路全閉位置と第2通路全閉位置との中間位置に制御して、第1通路27及び第2通路28の双方にエンジン2からの排気を流入させるようにしているが、これに限ったものではなく、例えば、フィルタ再生時に制御弁29を第1通路全閉位置に制御するようにしてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、制御弁29は1つの弁体31を有するものとされているが、これに限ったものではなく、例えば、制御弁29は、第1通路27と第2通路28とをそれぞれ独立に開閉可能な2つの弁体31を有するものであってもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、フィルタ13の再生が必要か否かの判定を、差圧検出センサ22により検出された差圧を基に行うようにしているが、これに限ったものではなく、例えば、ECU25において、エンジン2の運転状態(燃焼状態等)の履歴を基にフィルタ13に堆積した排気微粒子の量を推定して、この推定した排気微粒子量に基づいてフィルタ13の再生が必要か否かの判定を行うようにしてもよい。また、ECU25においてタイマ制御を実行することにより所定時間置きにフィルタ13の再生が必要と判定してフィルタ13の再生制御を実行するようにしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、NOxセンサ23をフィルタ13の下流側に配設するようにしているが、NOxセンサ23は、NOx触媒部11の下流側であればどこに配設してもよい。また、上記実施形態では、フィルタ13の下流側のNOx濃度をNOxセンサ23により検出するようにしているが、これに限ったものではなく、例えば、ECU25において、各種センサからの検出信号を基にエンジン2の運転状態を推定して、該推定した運転状態を基に上記NOx濃度を推定(検出)するようにしてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、NOxの還元に必要なHC量、及びフィルタ13の昇温に必要なHC量を排気中に供給するために、エンジン2の燃焼室にポスト噴射を行うようにしているが、例えば、ポスト噴射に代えてアフター噴射を行うようにしてもよいし、ポスト噴射に加えてさらにアフター噴射を行うようにしてもよい。また、必要なHC量を確保するために、燃料添加装置を別途設けるようにしてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、排気浄化装置1をディーゼルエンジン2に適用した例を示したが、これに限ったものではなく、例えば、ガソリンエンジンに適用するようにしてもよい。また、エンジン2は直列4気筒エンジンに限らず、水平対向型やV型エンジンであってもよく、気筒数も4気筒に限ったものではなく、例えば3気筒以下や5気筒以上であってもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、NOxを還元するための触媒としてHC−SCR触媒を使用するようにしているが、例えば、NOx吸蔵還元触媒を使用するようにしてもよい。この場合、エンジン2は、ガソリンエンジンであることが好ましい。
【0073】
また、上記実施形態では、排気浄化装置1を油圧ショベルのエンジン2に適用した例を示したが、これに限ったものではなく、例えば、自動車や船舶のエンジン2に適用するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、エンジンの排気浄化装置に有用であり、特に、ショベル等の建設機械に搭載されるエンジンの排気浄化装置に有用である
【符号の説明】
【0075】
1 排気浄化装置
2 エンジン
11 NOx触媒部
12 酸化触媒部
13 フィルタ
14 NOx触媒保持体
15 酸化触媒保持体
22 差圧検出センサ(判定手段、堆積量検出手段)
23 NOxセンサ(NOx検出手段)
25 ECU(弁制御手段、判定手段、HC制御手段、NOx検出手段、
堆積量検出手段)
27 第1通路
28 第2通路
29 制御弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気通路に配設され、HCを還元剤として排気中のNOxを還元するNOx触媒部と、上記NOx触媒部の下流側に配設された酸化触媒部と、上記酸化触媒部の下流側に配設され、排気中に含まれる排気微粒子を捕集するフィルタと、を備えた排気浄化装置であって、
上記排気通路は、上記NOx触媒部の上流側において、エンジンからの排気をNOx触媒部へと導く第1通路と、エンジンからの排気をNOx触媒部を介さずに酸化触媒部へと導く第2通路とに分岐して形成されており、
上記排気通路には、上記第1通路に流入する排気の流量と上記第2通路に流入する排気の流量との流量比率を変更可能な制御弁が設けられていることを特徴とする排気浄化装置。
【請求項2】
請求項1記載の排気浄化装置において、
上記フィルタの再生が必要か否かを判定する判定手段と、
上記判定手段による判定結果を基に、上記制御弁の作動を制御する弁制御手段とを備えていることを特徴とする排気浄化装置。
【請求項3】
請求項2記載の排気浄化装置において、
上記弁制御手段は、上記判定手段により上記フィルタの再生が必要ないと判定された場合には、上記制御弁により、エンジンからの排気を上記第1及び第2通路のうち第1通路にのみ流入させる一方、上記判定手段により上記フィルタの再生が必要と判定された場合には、上記制御弁により、エンジンからの排気を上記第1及び第2通路の双方に流入させるように構成されていることを特徴とする排気浄化装置。
【請求項4】
請求項3記載の排気浄化装置において、
上記フィルタに堆積した排気微粒子の量を検出する堆積量検出手段をさらに備え、
上記弁制御手段は、上記判定手段によりフィルタの再生が必要と判定された場合において、上記堆積量検出手段により検出された排気微粒子の堆積量が多いほど、上記第2通路に流入する排気の流量を増加させるよう上記制御弁の作動を制御することを特徴とする排気浄化装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか一項に記載の排気浄化装置において、
上記フィルタの下流側に配設され、排気中のNOx濃度を検出するNOx濃度検出手段をさらに備え、
上記弁制御手段は、上記NOx濃度検出手段により検出されたNOx濃度を基に、上記制御弁の作動を制御するように構成されていることを特徴とする排気浄化装置。
【請求項6】
請求項5記載の排気浄化装置において、
上記弁制御手段は、上記判定手段によりフィルタの再生が必要と判定された場合において、上記NOx濃度検出手段により検出されたNOx濃度が高いほど、上記第1通路に流入する排気の流量を増加させるよう上記制御弁を制御することを特徴とする排気浄化装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の排気浄化装置において、
上記エンジンの気筒内に燃料をポスト噴射又はアフター噴射することにより、上記エンジンから排出される排気中のHC量を制御するHC制御手段をさらに備えていることを特徴とする排気浄化装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の排気浄化装置において、
上記NOx触媒部は、NOx触媒を保持する円筒状のNOx触媒保持体を含み、
上記酸化触媒部は、酸化触媒を保持する円筒状の酸化触媒保持体を含み、
上記フィルタは円筒状に形成されており、
上記NOx触媒保持体、上記酸化触媒保持体、及び上記フィルタは、直列に且つ同軸に配設されていることを特徴とする排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−215083(P2012−215083A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79697(P2011−79697)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】