説明

接着シート、及び当該接着シートを使用して得られる多層プリント基板

【目的】密着性、耐熱性、低熱膨張性を有する接着シート及び当該接着シートを用いて得られる高密度の多層プリント基板を提供すること。
【解決手段】150℃での貯蔵弾性率が2〜10GPaで、熱膨張係数が0〜6ppmのポリイミドフィルム(1)上に、150℃での貯蔵弾性率が2.0MPa〜0.2GPaであるエポキシ樹脂接着剤硬化膜層(2)が設けられた、熱膨張係数が10ppm以下の接着シート;当該接着シートに、無電解メッキ処理することにより得られる多層プリント基板を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着シート、及び当該接着シートを使用して得られる多層プリント基板に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル型パソコン、携帯電話、ICカード等の携帯可能な電子機器の普及が急速に進むにつれ、ポリイミドフィルムを用いて得られるFPC(フレキシブルプリント基板)やCOF(チップ・オン・フィルム)などの用途では、電子基板の高密度化、多層化が進み、絶縁層の寸法安定性がますます求められるようになってきている。
【0003】
また、ICを搭載する多層プリント基板の分野では、一般にエポキシ接着フィルムが層間絶縁材料として使用されているが、当該分野でも高密度化が進むにつれ、層間絶縁層に耐熱性と低熱膨張性が求められるようになってきている。
【0004】
このようなニーズに対し、低熱膨張性と剛性に優れた層間絶縁層接着フィルムとして、エポキシ系接着フィルムが提案されている(特許文献1及び2参照)。しかしながら、当該接着フィルムを用いても、低熱膨張性は十分とは言えず、特に高温環境下においては高い熱膨張を示すことから高密度化したプリント配線板ではその効果は十分とは言えなかった。
【0005】
一方、ポリイミドフィルムと接着剤層からなる2層の接着シートが提案されている(特許文献3参照)が、この場合にもICに用いられるシリコンウエハ(熱膨張係数3〜4ppm)と接着シートの熱膨張係数の差のために、低熱膨張性においては満足できるものではなかった。
【0006】
今後、これらの精密プリント基板においては、層数がますます増加すると推定され、加熱−冷却が繰り返される環境下での、耐熱性の確保、低熱膨張性が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−298508号公報
【特許文献2】特開平11−323272公報
【特許文献3】国際公開第2005/027597号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、密着性、耐熱性、低熱膨張性を有する接着シート及び当該接着シートを用いて得られる高密度の多層プリント基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の貯蔵弾性率を有するポリイミドフィルム上に特定の貯蔵弾性率を有するエポキシ樹脂接着剤硬化膜層を用いることにより、前記課題を解決し得ることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、150℃での貯蔵弾性率が2〜10GPaで、熱膨張係数が0〜6ppmのポリイミドフィルム(1)上に、150℃での貯蔵弾性率が2.0MPa〜0.2GPaであるエポキシ樹脂接着剤硬化膜層(2)が設けられた、熱膨張係数が10ppm以下の接着シート;当該接着シートに、無電解メッキ処理することにより得られる多層プリント基板に関する
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、密着性、耐熱性、低熱膨張性(特に高温環境下での低熱膨張性)を有し、多層化が可能な接着シートを得ることができる。また、本発明の接着シートはハロゲン系難燃剤を用いたり、原料としてハロゲンを有する化合物を用いたりしない場合であってもUL規格による難燃性VTM−0とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の接着シートは、150℃での貯蔵弾性率が2〜10GPaで、熱膨張係数が0〜6ppmのポリイミドフィルム(1)上に、150℃での貯蔵弾性率が2.0MPa〜0.2GPaであるエポキシ樹脂接着剤硬化膜層(2)が設けられたものであり、熱膨張係数が10ppm以下のものである。
【0013】
本発明に用いるポリイミドフィルム(1)としては、貯蔵弾性率が2〜10GPaで熱膨張係数が0〜6ppmの条件を満たす非熱可塑性ポリイミドフィルムであれば特に制限はなく、従来公知のポリイミドフィルムをそのまま使用することができる。熱膨張係数が6を超える場合には、層間絶縁材として十分な低熱膨張性が得られない点で好ましくない。また、弾性率が2GPa未満の場合には、ブロッキングする恐れがある点で好ましくなく、10GPaを超える場合には、柔軟性が失われ、クラックが生じる恐れがある点で好ましくない。ここで貯蔵弾性率とは、フィルム膜厚25μmのポリイミドフィルムを動的粘弾性測定装置(チャック間距離:10mm、試片の幅:5mm、周波数:10Hz)で測定した時の150℃での貯蔵弾性率の値であり、熱膨張係数とは熱機械分析装置(チャック間距離:20mm、試片の幅:4mm、荷重:10mg、昇温レート:10℃/minの引張モード)を用いて測定した100℃〜200℃の値を意味する。
【0014】
このようなポリイミドフィルムの作製方法としては、たとえば、特開平5−70590号公報、特開2000−119419号公報、特開2007−56198号公報、特開2005−68408号公報等に記載の従来公知の方法が挙げられる。また市販のポリイミドフィルムとしては、東洋紡績(株)製のXENOMAX、荒川化学工業(株)製のポミランTなどを挙げることができる。
【0015】
上記ポリイミドフィルムの中でも、多層化の際のエポキシ樹脂接着剤硬化膜層(2)との密着性やメッキ、スパッターなど金属化が容易となること、寸法安定性が良好なことから、ブロック共重合ポリイミド−シリカハイブリッドフィルム(市販品としては、たとえば、荒川化学工業(株)製 商品名 ポミランT)が最も好ましい。
【0016】
前記のブロック共重合型ポリイミド−シリカハイブリッドフィルムは、特開2005−68408号公報の方法によって、アルコキシ基含有シラン変性ブロック共重合型ポリアミック酸を熱硬化してできる。アルコキシ基含有シラン変性ブロック共重合型ポリアミック酸(b)(以下、(b)成分という)は、たとえば、テトラカルボン酸二無水物、ジアミンを反応させて得られるポリアミック酸とエポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物を反応させて得られるポリアミック酸(a)(以下、(a)成分という)に、別途、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン類を反応させることにより得られるポリアミック酸を混合し、縮合させることにより得られる。(a)成分のセグメントはアルコキシシラン部分縮合物を側鎖に持ち、ゾル−ゲル反応によってシリカを形成する。また(b)成分のセグメントは、シリカを有さず、ブロック共重合型ポリイミド−シリカハイブリッドフィルムの高弾性率、低熱膨張性の発現に寄与する。
【0017】
この時、ポリアミック酸を構成するテトラカルボン酸二無水物とジアミンは、ポリイミドフィルムの弾性率が2〜10GPa、熱膨張係数が0〜6ppmとなるようにそれらの種類と使用量を調整すれば、従来公知のものを使用することが可能である。
【0018】
(a)成分及び(b)成分の調製に用いるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,3’,4,4’−テトラカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシフェニル)スルホン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物などを例示できる。
【0019】
また(a)成分及び(b)成分の調製に用いるジアミン類としては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジ(m−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,4−ジアミノベンゼン、2,5−ジアミノトルエン、イソホロンジアミン、4−(2−アミノフェノキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、4−(4−アミノフェノキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、2−アミノ−4−(4−アミノフェニル)チアゾール、2−アミノ−4−フェニル−5−(4−アミノフェニル)チアゾール、ベンジジン、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン、オクタフルオロベンジジン、o−トリジン、m−トリジン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,2−ビス(アニリノ)エタン、2,2−ビス(p−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(p−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,6−ジアミノナフタレン、ジアミノベンゾトリフルオライド、1,4−ビス(p−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(p−アミノフェノキシ)ビフェニル、ジアミノアントラキノン、1,3−ビス(アニリノ)ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(アニリノ)オクタフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(p−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパンなどを例示できる。これらのジアミン類の中でも、特にp−フェニレンジアミンが熱膨張係数を低下させるのに有効であることから、(b)成分中に含まれるジアミンの60〜100モル%程度をp−フェニレンジアミンとすることが好ましい。
【0020】
(a)成分の原料となるポリアミック酸の製造は、生成するポリアミック酸及び後述するエポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物を溶解する有機溶剤中で、ポリイミド換算固形残分5〜60%で製造することが好ましい。ここでポリイミド換算固形残分とは、ポリアミック酸が完全にポリイミドに硬化した時の、ポリアミック酸溶液に対するポリイミドの重量%を表す。ポリイミド換算固形残分が5%未満では、ポリアミック酸溶液の製造コストが高くなる。一方、60%を超えると、ポリアミック酸溶液が室温で高粘度となるためハンドリングが悪くなる傾向がある。用いる有機溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコール、ヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトン等の有機極性溶剤を挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが好ましいが、更にキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素を前記極性溶剤と併用できる。これらの中では、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンを単独又は混合物として用いるのが好ましい。
【0021】
反応温度は、アミド酸基が残存する温度であれば特に限定されないが、−20〜80℃程度に調整するのが好ましい。−20℃未満の製造は反応速度が遅くなり、長時間を必要とするため不経済であるし、80℃を超えるとポリアミック酸中のアミド酸基がイミド基に閉環する割合が増え、エポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物との反応点が減少する傾向があるため好ましくない。
【0022】
(a)成分を調製する際に用いられるエポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物は、たとえば、1分子中に1つの水酸基を有するエポキシ化合物とアルコキシシラン部分縮合物との脱アルコール反応によって得られる。エポキシ化合物としては、1分子中に水酸基を1つ有するエポキシ化合物であれば、エポキシ基の数は特に限定されない。また、エポキシ化合物としては、分子量が小さいもの程、アルコキシシラン部分縮合物に対する相溶性がよく、耐熱性や密着性付与効果が高いことから、炭素数が15以下のものが好適であり、特に、グリシドールや、エポキシアルコール等を用いることが好ましい。なお、これらは、日本油脂(株)製、商品名「エピオールOH」、やクラレ(株)製、商品名「EOA」などを用いてもよい。
【0023】
アルコキシシラン部分縮合物としては、一般式(2):R1Si(OR2(4-m)(式中、R1は炭素数8以下のアルキル基又はアリール基、R2は炭素数4以下のアルキル基、mは0又は1の整数を示す。)で表される加水分解性アルコキシシランモノマーを、酸又は塩基触媒、及び水の存在下で加水分解し、部分的に縮合させて得られるものが用いられる。
【0024】
アルコキシシラン部分縮合物の構成原料である加水分解性アルコキシシランモノマーの具体的としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類などがあげられる。これらのなかでは、特に、1分子中に1つの水酸基を有するエポキシ化合物との反応性が高いことから、アルコキシシラン部分縮合物としてはテトラメトキシシラン又はメチルトリメトキシシランを70モル%以上用いて合成されたものが好ましい。
【0025】
なお、これらアルコキシシラン部分縮合物としては、前記例示のものを特に限定なく使用出来るが、これら例示物のうちの2種以上を混合使用する場合には、アルコキシシラン部分縮合物の総量中でテトラメトキシシラン部分縮合物又はメチルトリメトキシシラン部分縮合物を70重量%以上用いることが好ましい。
【0026】
当該アルコキシシラン部分縮合物の数平均分子量は、230〜2000程度、1分子中のSiの平均個数は2〜11程度であることが好ましい。
【0027】
エポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物は、1分子中に1つの水酸基を有するエポキシ化合物とアルコキシシラン部分縮合物を脱アルコール反応させることにより得られる。エポキシ化合物とアルコキシシラン部分縮合物との使用割合は、アルコキシ基が実質的に残存するような割合であれば特に制限されないが、得られるエポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物中のエポキシ基の割合が、通常は、1分子中に1つの水酸基を有するエポキシ化合物の水酸基の当量/アルコキシシラン部分縮合物のアルコキシ基の当量=0.01/1〜0.3/1程度となる仕込み比率で、アルコキシシラン縮合物と1分子中に1つの水酸基を有するエポキシ化合物を脱アルコール反応させることが好ましい。前記仕込み比率が少なくなるとエポキシ変性されていないアルコキシシラン部分縮合物の割合が増加し、ブロック共重合型ポリイミド−シリカハイブリッドフィルムが不透明化する傾向があるため、前記仕込み比率は、0.03以上/1程度とするのがより好ましい。
【0028】
アルコキシシラン部分縮合物と1分子中に1つの水酸基を有するエポキシ化合物の反応は、たとえば、前記各成分を仕込み、加熱して生成するアルコールを留去しながら、脱アルコール反応を行う。反応温度は50〜150℃程度、好ましくは70〜110℃であり、全反応時間は1〜15時間程度である。
【0029】
(a)成分は、前記ポリアミック酸と前記エポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物とを反応させて得られる。ポリアミック酸とエポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物の使用割合は、特に制限されないが、(エポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物のエポキシ基の当量/ポリアミック酸に使用したテトラカルボン酸二無水物(A)のモル数)が0.01〜0.6の範囲とするのが好ましい。上記数値が0.01未満であると本発明の効果が得られにくく、0.6を超えるとポリイミド−シリカハイブリッドフィルムが不透明になる傾向があるため好ましくない。
【0030】
(b)成分は、(a)成分に前記テトラカルボン酸二無水物及びジアミン類を反応させることにより得られる。なお、(b)成分を調製する際に用いるテトラカルボン酸二無水物及びジアミン類は(a)成分を調製する際に用いたものと異なるものとすることが好ましい。(b)成分を得るための反応条件は、(a)成分の調製の際の条件と同様にすればよい。(b)成分の分子量は特に限定されないが、数平均分子量(ゲルパーメーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算値)が10000〜1000000程度であることが好ましい。
【0031】
前記(b)成分からポリイミドフィルム(1)を製造する方法としては、特開平5−70590号公報、特開2000−119419号公報、特開2007−56198号公報、特開2005−68408号公報等に記載の公知の方法を採用することができるが、生産性及び低熱膨張性を得る観点から、触媒を用いた硬化方法を用いるのが好ましい。具体的には、たとえば、特開平5−70590号公報に記載のように、上記ポリアミック酸重合体又はその溶液に化学量論以上の脱水剤と触媒量の第3級アミンを加えた溶液をエンドレスベルト上に流延又は塗布して膜状とし、その膜を150℃以下の温度で約5〜90分間乾燥し、自己支持性のポリアミック酸の膜を得、ついで、これを支持体より引き剥がし端部を固定させた後、約100〜500℃まで徐々に加熱することによりイミド化させ、冷却後ドラム又はエンドレスベルトより取り外し、本発明のポリイミドフィルムを得る方法を採用できる。ここで言う脱水剤としては、例えば無水酢酸等の脂肪族酸無水物、無水安息香酸等の芳香族酸無水物などが挙げられる。また触媒としては、例えばトリエチルアミンなどの脂肪族第3級アミン類、ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン類、ピリジン、ピコリン、イソキノリン等の複素環式第3級アミン類などが挙げられる。
【0032】
本発明の接着シートに用いるエポキシ接着剤硬化膜層としては、エポキシ樹脂組成物層のみから得られる硬化膜で、150℃での貯蔵弾性率が2.0MPa〜0.2GPaとなることが必要である。尚、貯蔵弾性率を測定する際に用いるエポキシ樹脂層のみからなる硬化膜は、シリコーン処理を施したセパレートPETフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製
商品名ピューレックス膜厚25μm)上に、エポキシ接着剤硬化膜層の基となる接着剤組成物を硬化膜厚が25μmになるように塗布して、140℃で3分間乾燥後、50mm×70mmの金具に固定、190℃で60分間、オーブンで硬化させることにより得られる。また弾性率の測定方法は、上記のポリイミドフィルムの測定方法と同じである。
【0033】
本発明の接着剤組成物は、通常、エポキシ樹脂(A)(以下、(A)成分という)、エポキシ用硬化剤(B)(以下、(B)成分という)、エラストマー(C)(以下、(C)成分という)及び難燃剤(D)(以下、(D)成分という)を含有するものである。
【0034】
(A)成分としては、特に限定されず、従来公知のエポキシ樹脂を用いることができる。ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂などが例示でき、複数の種類のエポキシ樹脂を混合して用いても構わない。これらのエポキシ樹脂の分子量としては、300以上、2000未満のものが回路への浸み込み性が良く、特に好ましい。
【0035】
なお、(A)成分として、特開2001−59013号公報記載のアルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を一部併用すると、半硬化状態でのエポキシ接着剤硬化膜層の表面タックが軽減し、また回路を形成する銅との密着性が向上するため更に好ましい。(A)成分に対するアルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂の使用割合としては、0.5〜50重量%程度とするのが良い。50重量%を超えると回路への浸み込み性が悪化する傾向がある。
【0036】
(B)成分としては従来公知の潜在性を有する硬化剤が使用できる。例えば、アミン硬化系としては、ジシアンジアミド(DICY)、芳香族ジアミン等が挙げられ、フェノール硬化系としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、トリアジン変性フェノールノボラック樹脂等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0037】
本発明に用いる(C)成分としては、エポキシ樹脂組成物層を低弾性率にし、耐熱性を損なわないものであれば、公知のものを制限なく使用することができる。アクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴム等の各種合成ゴム、ゴム変性の高分子量化合物等が挙げられ、これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。ポリイミドフィルム(1)への密着性が優れることから、アクリルゴム、カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴムを使用することが好ましい。(C)成分のガラス転移温度が20℃以下であると、室温以上で弾性率の変化が生じにくく、より好ましい。
【0038】
(D)成分としては、従来公知の無機フィラー系難燃剤、リン系などの非ハロゲン系難燃剤が挙げられ、これらを併用してもよい。無機フィラー系難燃剤としては、たとえば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルク、シリカ、アルミナ、硼酸亜鉛、炭酸カルシウム等が例示できるが、高密度プリント基板に用いられるファインピッチ回路の場合には、導体間の絶縁性を保つために、平均粒子径が0.1μm〜5μm位のものを用いることが好ましい。リン系難燃剤としては、ポリリン酸、リン酸エステル、ホスファゼン誘導体などが挙げられるが、室温で固形のものが耐熱性や密着性に悪影響を与えないため好ましい。難燃材の使用量は特に限定されないが、不燃性を求められる用途には、接着剤組成物の固形分中30〜70重量%程度用いることが好ましい。
【0039】
上記成分の他、接着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、硬化触媒、溶剤、無機充填剤、シランカップリング剤、レベリング剤、離型剤、表面処理剤、粘度調節剤、可塑剤、抗菌剤、防黴剤、消泡剤、着色剤、安定剤、カップリング剤等を配合してもよい。
【0040】
硬化触媒は、(A)成分と(B)成分との硬化反応を促進させ、貼り合わせ後に行う硬化の温度を下げ、硬化時間を短縮することができる。例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの三級アミン類;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、などのイミダゾール類;トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィンなどの有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレートなどのテトラフェニルボロン塩などをあげることができる。当該硬化促進剤は(A)成分に対して、0.05〜5重量%程度の割合で使用するのが好ましい。
【0041】
溶剤は、接着剤組成物の粘度を調整するために用いる。例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート等のエステル系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等のアルコール類、ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶媒があげられる。これらの中では、半硬化状態のエポキシ接着剤硬化膜層に残存しにくいことから、沸点が70〜150℃程度のものを用いることが好ましい。なお、溶剤の配合割合は特に限定されず、接着剤組成物の塗布方法に応じて適宜決定すればよい。
【0042】
本発明において接着剤組成物を構成する各成分の使用割合は特に限定されないが、(C)成分を接着剤組成物の固形分中5〜50重量%とした場合、硬化膜の150℃での弾性率が2.0MPa〜0.2GPaの範囲となりやすく、低熱膨張性の接着シートとなりやすい。
【0043】
当該接着剤組成物は、通常、基材に塗布後、加熱することにより硬化しエポキシ接着剤硬化膜層(2)とすることができる。なお、硬化においては、まず、70〜150℃程度で硬化を行った後、さらに150℃〜250℃程度で硬化を行う2段階硬化とすることが急激な硬化収縮による密着力低下を抑制する点から好ましい。硬化時間は特に限定されず、エポキシ接着剤硬化膜層(2)の膜厚、接着剤組成物に用いた(B)成分や硬化触媒の種類、量によって調整できるが、通常、第一段階(70〜150℃)で1〜5分間程度、第二段階(150℃〜210℃)で10分〜3時間程度硬化させることが好ましい。
【0044】
本発明においては、ポリイミドフィルム(1)の150℃での貯蔵弾性率(E´)を2〜10GPaとし、エポキシ接着剤硬化膜層(2)の150℃での貯蔵弾性率(E´)を2.0MPa〜0.2GPaとして、エポキシ接着剤硬化膜層(2)の貯蔵弾性率の値をポリイミド(1)より十分に小さくすることにより、接着シートの低熱膨張性を実現することができる。エポキシ接着剤硬化膜層(2)の150℃での貯蔵弾性率(E´)が0.2GPaを超えると、接着シートの低熱膨張性を実現する事ができず、2.0MPaより小さくなると、十分な耐熱性を得ることができなくなる。また当該硬化膜は、通常、周波数が1MHzでの誘電率が3〜4、線膨張係数が80〜300ppm/℃である。
【0045】
本発明の接着シートは、ポリイミドフィルム(1)とエポキシ接着剤硬化膜層(2)の2層で構成される。このような接着シートの作製方法としては、ポリイミドフィルム(1)上に前記接着剤組成物を塗布し、70〜150℃程度にて半硬化させることにより得られる。ポリイミドフィルム(1)の膜厚は特に限定されず、接着シートが回路基板として使用される際に負荷される電圧、ポリイミドフィルム(1)の絶縁性や力学強度などを考慮して適宜決定すればよいが、ポリイミドフィルム(1)の作りやすさ、多層プリント基板の作製時の作業性を考慮すると、通常、ポリイミドフィルム(1)の膜厚は5〜40μm程度とするのが好ましい。またエポキシ接着剤硬化膜層(2)の膜厚についても回路を形成している導電層の厚さより厚くなれば、特に限定はないが、ポリイミドフィルム(1)とエポキシ接着剤硬化膜層(2)の膜厚比が1:0.5〜3になるように調整すれば、十分な導電層の厚みと接着シートの低熱膨張性が発現されるため好ましい。
【0046】
本発明の接着シートにおいては、ポリイミドフィルム(1)として、貯蔵弾性率が2〜10GPaで熱膨張係数が0〜6ppmのポリイミドフィルム、エポキシ接着剤硬化膜層(2)の150℃での弾性率が2.0MPa〜0.2GPaを満たす必要がある。エポキシ接着剤硬化膜層(2)の150℃での貯蔵弾性率(E´)が0.2GPaを超えると、接着シートの低熱膨張性を実現することができず、2.0MPaより小さくなると、十分な耐熱性を得ることができなくなる。本発明の接着シートを積層してできる多層プリント基板の熱膨張性を低くするためには、積層に用いる接着シートの熱膨張係数を主にポリイミドフィルムに支配させることが有効であり、そのため低い熱膨張係数を有するポリイミドフィルムを用い、ポリイミドフィルム(1)とエポキシ接着剤硬化膜層(2)の弾性率の差を大きくしている。
【0047】
本発明の接着フィルムの熱膨張性は、上記の方法で作製した接着シートを、ポリイミドフィルム(1)とエポキシ接着剤硬化膜層(2)が交互になるように2層積層し、最後に接着シートの作製に使用したのと同じポリイミドフィルム(1)を積層、140℃で1分、圧力8MPaで加熱プレスを行い、その後、オーブンでエポキシ接着剤硬化膜層(2)を完全に硬化させてできる積層フィルム(構成(1)/(2)/(1)/(2)/(1))の熱膨張係数を測定することで評価する。本発明においては、上記値が10ppm以下となるように、ポリイミドフィルム(1)の組成、接着剤組成物を構成する各成分、ポリイミドフィルム(1)とエポキシ接着剤硬化膜層(2)のそれぞれの膜厚を適宜決定する。
【0048】
本発明の多層プリント基板を作製する方法としては、コア材に本発明の接着シートを積層することにより得られ、例えば特開2008−277384号公報記載の方法が例示できる。
【0049】
コア材(内層基板)にサブトラクティブ法やセミアディティブ法で、両面の回路パターンを形成したものを用いる。サブトラクティブ法では、ガラス繊維やアラミド繊維などにエポキシ樹脂を含浸させたものに銅箔を張り合わせたCCLや本発明で使用したポリイミドフィルム(1)に銅箔を張り合わせたもの、特開2003−136632号公報記載の方法でブロック共重合型ポリイミド−シリカハイブリッドに湿式メッキを行ったもの、或いはポリイミドフィルム(1)にスパッターでシード層を形成した後、電解メッキを行うなどしてできる両面CCLが挙げられる。またセミアディティブ法としては、ガラス繊維やアラミド繊維などにエポキシ樹脂を含浸、硬化させたものやポリイミドフィルム(1)に湿式無電解メッキ或いはスパッターを行いシード層を形成させた後、レジストフィルムでパターニングを行った後、電解銅メッキを行い、レジストを除去、シード層をエッチングするなどの工程でできるコア材を挙げることができる。このようなコア材の中では、ファインピッチが容易であることから、セミアディティブ法で作製したものが好ましい。
【0050】
上記方法でパターニングしたコア材に本発明の半硬化状態のエポキシ接着剤硬化膜層(2)を有する接着シートを張り合わせ、ビルドアップ型多層基板用接着シートに穴あけ後、穴内及びビルドアップ型多層基板用接着シートのポリイミドフィルム(1)表面に回路形成を行うことでビルドアップ層を形成する。より具体的には、回路パターンを形成した内層基板の表面に上記の接着シートを重ねた後、加熱プレスにより一体化し、更にエポキシ接着剤硬化膜層(2)を完全硬化させる。その後、張り合わせた接着シートに複数の回路パターンを接続するための信号伝達用のビアホールを形成する。接着シート表面のポリイミドフィルム(1)のパターニングは、スパッター或いは湿式無電解メッキ法によって形成したシード層を使い、前記と同様の方法で、セミアディティブ法で行う。この時スパッター或いは湿式無電解メッキの密着性が優れることから、ポリイミド(1)としては、ブロック共重合ポリイミド−シリカハイブリッドフィルムを用いることが好ましい。またビアホールのメッキをポリイミドフィルム(1)表面のメッキと同時にできることから、シード層の形成法として湿式無電解メッキを用いることが好ましい。なお、上記のビルドアップ層は必要に応じて回路パターンを形成した積層板の片面にのみ形成しても良い。
【実施例】
【0051】
以下、実施例及び比較例をあげて本発明を具体的に説明する。なお、各例中、部及び%は特記無い限り重量基準である。
【0052】
(接着剤組成物の調製)
表1に示す配合比率で、各成分を混合、溶解させ、エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0053】
【表1】

表中、ビフェニル型エポキシ樹脂は、商品名:YX−4000(ジャパンエポキシレジン(株)製)、ノボラック型エポキシ樹脂は、商品名:YDPN−638(東都化成(株)製)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、商品名:YD014(東都化成(株)製)、フォスファゼン誘導体は、商品名:SPH−100(大塚化学(株)製)、フェノールノボラック樹脂は、商品名:タマノル759(荒川化学工業(株)製)、カルボキシNBRは、商品名:XER−32C(JSR(株)製)、水酸化アルミニウムは、商品名:ハイジライトH−42M(昭和電工(株)製)、2−エチル−4−メチルイミダゾールは、商品名:2E4MZ(四国化成(株)製)を表す。
【0054】
実施例1(半硬化のエポキシ接着層(2)を持つ接着シートの製造)
ブロック共重合ポリイミド−シリカハイブリッドフィルム(荒川化学工業(株)製 商品名 ポミランT25 ジアミン成分中のp-フェニレンジアミンのモル%=80%、熱膨張係数=4ppm、貯蔵弾性率=9.3GPa、膜厚25μm)上に、表1に記載した接着剤組成物Aを塗布、140℃で3分乾燥させ、硬化膜厚25μmの接着シートを作製した。硬化したエポキシ接着剤層の150℃での貯蔵弾性率=0.05GPa、膜厚比=1:1。
【0055】
実施例2(半硬化のエポキシ接着層(2)を持つ接着シートの製造)
ブロック共重合ポリイミド−シリカハイブリッドフィルム(荒川化学工業(株)製 商品名 ポミランT25 ジアミン成分中のp-フェニレンジアミンのモル%=80%、熱膨張係数=4ppm、貯蔵弾性率=9.3GPa、膜厚25μm)上に、表1に記載した接着剤組成物Bを塗布、140℃で3分乾燥させ、硬化膜厚75μmの接着シートを作製した。硬化したエポキシ接着剤層の150℃での貯蔵弾性率=0.02GPa、膜厚比=1:3。
【0056】
実施例3(半硬化のエポキシ接着層(2)を持つ接着シートの製造)
ブロック共重合ポリイミド−シリカハイブリッドフィルム(荒川化学工業(株)製 商品名 ポミランT12 ジアミン成分中のp-フェニレンジアミンのモル%=80%、熱膨張係数=6ppm、貯蔵弾性率=9.1GPa、膜厚12μm)上に、表1に記載した接着剤組成物Cを塗布、140℃で3分間乾燥させ、硬化膜厚12.5μmの接着シートを作製した。硬化したエポキシ接着剤層の150℃での貯蔵弾性率=0.2GPa、膜厚比=1:0.5。
【0057】
比較例1(半硬化のエポキシ接着層(2)を持つ接着シートの製造)
市販のポリイミドフィルム(東レデュポンフィルム製 商品名 カプトンH、ジアミン成分中のp-フェニレンジアミンのモル%=0%、熱膨張係数=43ppm、弾性率=3.5GPa、膜厚25μm)に接着剤組成物Aを塗布し、乾燥させ、硬化膜厚50μmの接着シートを作製した。
【0058】
比較例2(半硬化のエポキシ接着層(2)を持つ接着シートの製造)
ブロック共重合ポリイミド−シリカハイブリッドフィルム(荒川化学工業(株)製 商品名 ポミランT25 ジアミン成分中のp-フェニレンジアミンのモル%=80%、熱膨張係数=4ppm、貯蔵弾性率=9.3GPa、膜厚25μm)上に、表1に記載した接着剤組成物Dを塗布、140℃で3分乾燥させ、硬化膜厚75μmの接着シートを作製した。硬化したエポキシ接着剤層の150℃での貯蔵弾性率=8.0GPa、膜厚比=1:3。
【0059】
比較例3(半硬化のエポキシ接着層(2)を持つ接着シートの製造)
ブロック共重合ポリイミド−シリカハイブリッドフィルム(荒川化学工業(株)製 商品名 ポミランT25 ジアミン成分中のp-フェニレンジアミンのモル%=80%、熱膨張係数=4ppm、貯蔵弾性率=9.3GPa、膜厚25μm)上に、表1に記載した接着剤組成物Eを塗布、140℃で3分間乾燥させ、硬化膜厚75μmの接着シートを作製した。硬化したエポキシ接着剤層の150℃での貯蔵弾性率=1.0MPa、膜厚比=1:0.5。
【0060】
(熱膨張性)
実施例、及び比較例の接着シート作製の際に用いたポリイミドフィルム上に、接着シートを2枚重ね、圧力8MPa、140℃、1分間、加熱プレスした後、180℃、3時間、硬化して、ポリイミドフィルム/接着剤組成物層/ポリイミドフィルム/接着剤組成物層/ポリイミドフィルムの5層からなる積層体を得た。得られた積層体の熱膨張性を、熱機械分析装置(チャック間距離20mm、試片の幅4mm、荷重10mg、昇温レート:10℃/minの引張モード)を用いて測定した、100℃〜200℃における熱膨張係数で評価した。測定結果を表2に示す。
【0061】
【表2】

【0062】
表2から、実施例により得られた積層体は、低熱膨張性に優れている事が明らかである。
【0063】
(接着性)
18μm厚の電解銅箔上(古河サーキットフォイル(株)製「F2−WS」(18
μm))に前記の樹脂付きフィルムを重ね合わせた後に、圧力1MPa、140℃、1分間、加熱プレスした後、180℃、3時間、硬化して、ポリイミドフィルムと銅箔間に接着剤硬化物層を持つ積層体を作製した。 実施例、及び比較例の積層体をJIS C−6481に準じて、銅箔とフィルムとの剥離強度を測定した。測定結果を表3に示す。
【0064】
【表3】

【0065】
表3から、実施例により得られた積層体は、接着性に優れている事が明らかである。
【0066】
(耐熱性)
接着性を測定したときに用いた銅箔と積層一体化した試料を、25mm×25mmに切断し、260℃のはんだ浴に180秒間浮べた。180秒後に膨れ、剥がれ等の異常がある場合を×、異常が無い場合を○とした。測定結果を表4に示す。
【0067】
【表4】

【0068】
表4から、実施例により得られた積層体は、比較例と異なり耐熱性に優れている事が明らかである。
【0069】
(難燃性)
実施例、及び比較例の接着シートを、180℃、3時間で硬化させた。硬化した接着シートについて、UL規格(UL94 VTM)試験に基づき、試験を行った。基準条件がVTM−0を満たす場合に○とし、満たさない場合に×とした。測定結果を表5に示す。
【0070】
【表5】

【0071】
表5から、実施例により得られた積層体は、比較例と異なり難燃性に優れている事が明らかである。
【0072】
実施例4 (多層プリント基板の製造)
【0073】
特開2003−136632号公報記載の方法でブロック共重合型ポリイミド−シリカハイブリッドに湿式メッキを行い、回路パターンを形成した内層基板の表面に上記の半硬化状態のエポキシ接着剤硬化膜層(2)を有する接着シートを重ねた後、加熱プレスにより一体化し、更にエポキシ接着剤硬化膜層(2)を完全硬化させた。その後、貼り合わせた接着シートに複数の回路パターンを接続するための信号伝達用のビアホールをUV−YAGレーザーによって形成した。接着シート表面のポリイミドフィルム(1)のパターニングは、湿式無電解メッキ法によって形成したシード層を使い、セミアディティブ法で行った。以上の工程を繰り返す事で、多層プリント基板を作製する事ができた。
【0074】
表2〜表5から明らかなように、本発明による積層体は、密着性、耐熱性に優れており、通常のプリント配線板はもちろん、多層プリント配線板の製造に最適であることが明らかである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
150℃での貯蔵弾性率が2〜10GPaで、熱膨張係数が0〜6ppmのポリイミドフィルム(1)上に、150℃での貯蔵弾性率が2.0MPa〜0.2GPaであるエポキシ樹脂接着剤硬化膜層(2)が設けられた、熱膨張係数が10ppm以下の接着シート。
【請求項2】
エポキシ樹脂接着剤硬化膜層(2)が、エポキシ樹脂(A)、エポキシ用硬化剤(B)、エラストマー(C)及び難燃剤(D)を含有する接着剤組成物を硬化させて得られるものである請求項1に記載の接着シート。
【請求項3】
ポリイミドフィルム(1)がアルコキシ基含有シラン変性ブロック共重合型ポリアミック酸(b)を熱硬化して得られるブロック共重合ポリイミド−シリカハイブリッドフィルムである請求項1又は2に記載の接着シート。
【請求項4】
アルコキシ基含有シラン変性ブロック共重合型ポリアミック酸(b)を構成するジアミンの60〜100モル%がp−フェニレンジアミンである請求項3に記載の接着シート。
【請求項5】
接着剤組成物が、固形分としてエラストマー(C)を5〜50重量%含有する請求項2〜4のいずれかに記載の接着シート。
【請求項6】
ハロゲンを含まず、難燃性VTM−0である請求項1〜5のいずれか記載の接着シート。
【請求項7】
ポリイミドフィルム(1)とエポキシ接着剤硬化膜層(2)の膜厚比が1:0.5〜3である請求項1〜6のいずれか記載の接着シート。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか記載の接着シートに、無電解メッキ処理することにより得られる多層プリント基板。

【公開番号】特開2010−235744(P2010−235744A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84685(P2009−84685)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】